WO2012081442A1 - 有機led素子の製造方法、散乱層で散乱される光の散乱特性をミー散乱およびレイリー散乱の間で制御する方法、ならびに透光性基板を製造する方法 - Google Patents

有機led素子の製造方法、散乱層で散乱される光の散乱特性をミー散乱およびレイリー散乱の間で制御する方法、ならびに透光性基板を製造する方法 Download PDF

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  • Haze measurement was carried out using a Lambda 950 spectrophotometer manufactured by PerkinElmer.
  • the thermal expansion coefficient of the scattering layer is an important characteristic when the scattering layer is fired. That is, by adjusting the thermal expansion coefficient of the scattering layer in a desired range in advance, after the transparent substrate on which the scattering layer is installed is heat-treated, the transparent substrate is deformed, or the cracking between the transparent substrate and the scattering layer occurs. It is possible to avoid the problem that occurs.
  • the refractive index of the first electrode 130 is in the range of 1.9 to 2.2.
  • the refractive index of the first electrode 130 can be reduced by increasing the carrier concentration.
  • Commercially available ITO contains 10 wt% SnO 2 as standard, but the refractive index of ITO can be lowered by further increasing the Sn concentration.
  • the Sn amount may be determined in consideration of the overall balance.
  • DBP dibutyl phthalate
  • DMP dimethyl phthalate
  • DOP dioctyl phthalate
  • FIG. 10 shows the measurement result of the haze value in the scattering layer according to Example 5. From the results of FIG. 10, it can be seen that when the average particle diameter D of the cordierite filler satisfies the formula (1) (in the case of Example 5), the wavelength dependency of light on the haze value is significantly suppressed.

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Abstract

 有機LED素子を製造する方法は、透明基板上に散乱層を形成する工程と、前記散乱層上に、第1の電極を設置する工程と、前記第1の電極上に、有機発光層を設置する工程と、前記有機発光層上に、第2の電極を設置する工程とを有し、前記散乱層は、ガラスからなるマトリクス材料と、該マトリクス材料中に分散されたセラミックフィラーとを有し、前記セラミックフィラーの平均粒径をD(μm)とし、前記有機発光層から生じる光の波長をλ(nm)とし、前記散乱層のマトリクス材料の屈折率とセラミックフィラーの屈折率の差の絶対値をΔnとしたとき、前記マトリクス材料およびセラミックフィラーは、前記散乱層で散乱される光の散乱強度の周波数依存性を着目波長領域において抑制する場合、D≧3×D、ただし、D=λ/(2π×Δn)、を前記着目波長領域において満たすように選定され、前記散乱層で散乱される光の、前記着目波長領域における短波長側での散乱強度を向上させる場合、D<D、を前記着目波長領域において満たすように選定されることを特徴とする。

Description

有機LED素子の製造方法、散乱層で散乱される光の散乱特性をミー散乱およびレイリー散乱の間で制御する方法、ならびに透光性基板を製造する方法
 本願開示は、有機LED素子に関する。
 有機LED(Light Emitting Diode)素子は、ディスプレイ、バックライト、および照明用途等に広く用いられている。
 一般的な有機LED素子は、透明基板上に設置された第1の電極(陽極)と、第2の電極(陰極)と、これらの電極間に設置された有機発光層とを有する。電極間に電圧を印加すると、それぞれの電極から、有機発光層にホールおよび電子が注入される。このホールと電子が有機発光層内で再結合された際に、結合エネルギーが生じ、この結合エネルギーによって有機発光層中の発光材料が励起される。励起した発光材料が基底状態に戻る際に発光が生じるため、これを利用することにより、発光(LED)素子が得られる。
 通常、第1の電極、すなわち陽極には、ITO(Indium Tin Oxide)のような透明電極が使用され、第2の電極、すなわち陰極には、アルミニウムおよび銀等の反射性の電極が使用される。
 最近では、第1の電極(ITO電極)と透明基板の間に、散乱物質を有する散乱層を設置することが提案されている(例えば特許文献1)。このような構成では、有機発光層で生じた光の一部は、散乱層中の散乱物質によって散乱されるため、ITO電極や透明基板内に閉じ込められる光の量(全反射の光量)が少なくなり、有機LED素子の光取り出し効率を高めることができることが報告されている。
国際公開第2009/060916号パンフレット
 一般に、散乱層で散乱される光の強度は、波長依存性を有する。これは、前述の特許文献1のような散乱層を有する有機LED素子では、有機発光層で生じた光が散乱層によって散乱された場合、その強度は、光の波長によって変化することを意味する。すなわち、有機LED素子から取り出される光は、特定の色の発光のみが強くなり、あるいは逆に特定の色の発光のみが弱くなってしまう可能性がある。また、これにより、例えば白色光を得る場合などにおいて、発色の調整が煩雑になるという問題が生じ得る。
 従って、特許文献1のような散乱層を有する有機LED素子においては、光の散乱強度の波長依存性を抑制することが必要となる。
 一方、通常の有機LED素子においては、有機発光層に使用される発光材料の中で、良好な青色発光特性を有する青色発光用の材料は、あまり多くはなく、このため、可視光領域の中で、特に青色光の強度のみを強くすることは比較的難しいという問題がある。このような状況では、有機LED素子内で発光され散乱される光のうち、特に青色光の散乱強度のみを強くすることに対して、強い要望がある。
 このように、現在の有機LED素子の技術では、光の散乱強度の波長依存性を全体的に抑制したり、特定の波長域の光の散乱強度を選択的に大きくすること、すなわち光の散乱強度の波長依存性を制御することに対して、大きなニーズがある。
 以上を鑑みると、発光される光の散乱強度の波長依存性を制御することの可能な有機LED素子の製造方法を提供することが望ましい。また、散乱層で散乱される光の散乱特性をミー散乱およびレイリー散乱の間で制御する方法を提供することが望ましい。また、光の散乱強度の波長依存性を制御することの可能な透光性基板を製造する方法を提供することが望ましい。
 ある実施例によれば、有機LED素子を製造する方法は、透明基板上に散乱層を形成する工程と、前記散乱層上に、第1の電極を設置する工程と、前記第1の電極上に、有機発光層を設置する工程と、前記有機発光層上に、第2の電極を設置する工程とを有し、前記散乱層は、ガラスからなるマトリクス材料と、該マトリクス材料中に分散されたセラミックフィラーとを有し、前記セラミックフィラーの平均粒径をD(μm)とし、前記有機発光層から生じる光の波長をλ(nm)とし、前記散乱層のマトリクス材料の屈折率とセラミックフィラーの屈折率の差の絶対値をΔnとしたとき、前記マトリクス材料およびセラミックフィラーは、前記散乱層で散乱される光の散乱強度の周波数依存性を着目波長領域において抑制する場合、D≧3×D、ただし、D=λ/(2π×Δn)、を前記着目波長領域において満たすように選定され、前記散乱層で散乱される光の、前記着目波長領域における短波長側での散乱強度を向上させる場合、D<D、を前記着目波長領域において満たすように選定されることを特徴とする。
 セラミックフィラーが分散されたガラス製のマトリクス材料で構成された散乱層において、散乱される光の散乱特性を、ミー散乱およびレイリー散乱の間で制御する方法は、前記セラミックフィラーの平均粒径をD(μm)とし、前記光の波長をλ(nm)とし、前記マトリクス材料の屈折率とセラミックフィラーの屈折率の差の絶対値をΔnとしたとき、前記マトリクス材料およびセラミックフィラーは、着目波長領域においてミー散乱を発現させる場合、D≧3×D、ただし、D=λ/(2π×Δn)、を前記着目波長領域において満たすように選定され、前記着目波長領域においてレイリー散乱を発現させる場合、D<D、を前記着目波長領域において満たすように選定される。
 透光性基板を製造する方法は、透明基板上に散乱層を形成する工程と、前記散乱層上に、第1の電極を設置する工程とを有し、前記散乱層は、ガラスからなるマトリクス材料と、該マトリクス材料中に分散されたセラミックフィラーとを有し、前記散乱層は、光を散乱し、前記セラミックフィラーの平均粒径をD(μm)とし、前記光の波長をλ(nm)とし、前記散乱層のマトリクス材料の屈折率とセラミックフィラーの屈折率の差の絶対値をΔnとしたとき、前記マトリクス材料およびセラミックフィラーは、前記散乱層で散乱される光の散乱強度の周波数依存性を着目波長領域において抑制する場合、D≧3×D、ただし、D=λ/(2π×Δn)、を前記着目波長領域において満たすように選定され、前記散乱層で散乱される光の、前記着目波長領域における短波長側での散乱強度を向上させる場合、D<D、を前記着目波長領域において満たすように選定される。
 少なくとも1つの実施例によれば、発光される光の散乱強度の波長依存性を制御することの可能な有機LED素子の製造方法を提供することが可能となる。また、散乱層で散乱される光の散乱特性をミー散乱およびレイリー散乱の間で制御する方法を提供することができる。さらに、光の散乱強度の波長依存性を制御することの可能な透光性基板を製造する方法を提供することができる。
有機LED素子の概略的な断面図である。 (1)式~(3)式に基づいて、光の波長λ(nm)とシリカ粒子の平均粒径Dの関係を示したグラフである。 散乱光のヘイズ値の波長依存性を示したグラフである。 マトリクス中のセラミックフィラーの添加量と熱膨張係数の関係を示したグラフである。 有機LED素子の製造方法の一例を概略的に示したフロー図である。 (1)式~(3)式に基づいて、光の波長λ(nm)とシリカ粒子の平均粒径Dの関係を示したグラフである。 (1)式~(3)式に基づいて、光の波長λ(nm)とアルミナ粒子の平均粒径Dの関係を示したグラフである。 (1)式~(3)式に基づいて、光の波長λ(nm)とコージェライト粒子の平均粒径Dの関係を示したグラフである。 シリカフィラーを用いた実施例1~実施例3、および比較例2に係る散乱層における、ヘイズ値の波長依存性を示したグラフである。 コージェライトフィラーを用いた実施例5に係る散乱層における、ヘイズ値の波長依存性を示したグラフである。
 以下、図面を参照して、本発明の実施例について詳しく説明する。
 図1には、有機LED素子の簡略的な断面図を示す。
 図1に示すように、有機LED素子100は、透明基板110と、散乱層120と、第1の電極(陽極)130と、有機発光層140と、第2の電極(陰極)150とをこの順に積層することにより構成される。図1の例では、有機LED素子100の下側の表面(すなわち透明基板110の露出面)が光取り出し面190となる。
 第1の電極130は、例えばITO(インジウムスズ酸化物)のような透明金属酸化物薄膜で構成され、厚さは、50nm~1.0μm程度である。一方、第2の電極150は、例えばアルミニウムや銀のような金属で構成される。
 有機発光層140は、通常の場合、発光層の他、電子輸送層、電子注入層、ホール輸送層、ホール注入層など、複数の層で構成される。
 散乱層120は、有機層140で生じた光を複数の方向に散乱する特性を有する。すなわち、散乱層120は、入射光を散乱させ、散乱層120に隣接する層との界面での光の反射を軽減する役割を果たす。このため、有機LED素子100では、有機LED素子100内で全反射される光の量が少なくなり、散乱層120を有さない構成に比べて、光取り出し面190から出射される光量を増加させることができる。
 散乱層120は、例えば、ガラスのような透明なマトリクス材料122中に、該マトリクス材料122とは屈折率の異なる散乱粒子(セラミックフィラー)125を分散させることにより構成される。
 ここで、一般に、散乱層で散乱される光の強度は、波長依存性を有する。従って、従来の有機LED素子の場合、有機発光層で生じた光が散乱層によって散乱された際、その強度は、光の波長によって変化してしまう。このため、有機LED素子から取り出される光は、特定の色の発光のみが強くなり、あるいは逆に特定の色の発光のみが弱くなってしまう可能性がある。また、これにより、例えば白色光を得る場合などにおいて、発色の調整が煩雑になるという問題が生じ得る。
 一方、通常の有機LED素子においては、有機発光層に使用される発光材料の中で、良好な青色発光特性を有する青色発光用の材料は、あまり多くはなく、このため、可視光領域の中で、特に青色光の強度のみを強くすることは比較的難しいという問題がある。
 これに対して、有機LED素子100の場合、以下に詳細に示すように、散乱層120は、有機発光層140で生じた光の散乱強度の波長依存性を抑制するようにして構成されているという特徴を有する。あるいは、散乱層120は、有機発光層140で生じた光のうち、特に短波長(青色)域の光の散乱強度を選択的に大きくするようにして構成されていても良い。
 換言すれば、有機LED素子100では、散乱層120で散乱される光の強度が所望の波長依存性を有するように、散乱層120の特性を予め調整しておくことができるという特徴を有する。これにより、有機LED素子100では、光の散乱強度の波長依存性を全体的に抑制したり、あるいは特定の波長域の光の散乱強度を選択的に大きくしたりすることが可能となり、前述のような問題を軽減または解消することが可能となる。
 以下、光の散乱強度の波長依存性を制御する方法について説明する。
 (光の散乱強度の波長依存性を制御する方法について)
 本願発明者らは、有機LED素子から取り出される光量を向上させることを目的として、散乱層120に含まれるマトリクス材料122とセラミックフィラー125との最適な組み合わせについて鋭意研究開発を進めてきた。その結果、セラミックフィラー125およびマトリクス材料122が特定の条件を満たすときに、散乱層120によって散乱された光について、散乱強度の波長依存性が抑制されることを見出した。
 すなわち、セラミックフィラー125の平均粒径をD(μm)としたとき、

     D≧3×D          (1)式

ただし、

     D=λ/(2π×Δn)    (2)式

の関係が得られるように、セラミックフィラー125およびマトリクス材料122を選定して、散乱層120を構成することにより、散乱層120で散乱された光の散乱強度の波長依存性を有意に抑制することができる。
 ここで、λは、光の波長(nm)であり、Δnは、散乱層120のマトリクス材料122の屈折率nとセラミックフィラー125の屈折率nの差の絶対値である(すなわち、Δn=|n-n|)。
 また、本願発明者らは、セラミックフィラー125およびマトリクス材料122が以下の条件を満たす場合に、短波長(青色)域の光の散乱強度が大きくなることを見出した。

     D≦D          (3)式

 従って、(3)式の条件を満たすようにして、散乱層120のセラミックフィラー125およびマトリクス材料122を選定することにより、特に、青色光の散乱強度を大きくすることが可能となる。
 なお、上述のような条件によって、散乱された光の散乱強度の波長依存性を抑制したり、短波長(青色)域の光の散乱強度を大きくしたりすることができる理由として、以下のことが考えられる。すなわち、(1)式を満たす条件では、マトリクス中の散乱物質の散乱断面積が幾何学的な断面積よりも大きくなり、散乱物質のサイズが波長に対して十分大きくなるため、ミー散乱の挙動が顕著になり、光の散乱に及ぼす波長依存性が弱くなるのに対して、(3)式を満たす条件では、ミー散乱とは逆に、マトリクス中の散乱物質の散乱断面積が幾何的な断面積よりも小さくなり、散乱物質のサイズが波長に対して小さくなるため、レイリー散乱の挙動が顕著になり、光の散乱に及ぼす波長依存性が大きくなるものと考えられる。
 図2には、散乱層120のマトリクス材料122として、ガラス(屈折率n=2.0)を使用し、セラミックフィラー125として、シリカ粒子(屈折率n=1.47)を使用した際の、(1)式および(3)式の関係を同時に示したグラフを示す。
 図2において、横軸は、光の波長λ(nm)であり、縦軸は、シリカ粒子の平均粒径D(μm)を示している。また、図2において、実線で示す直線11は、D=3×Dの関係を示しており、破線で示す直線12は、D=Dの関係を示している。従って、直線11よりも上の領域が(1)式を満たす領域となり、直線12よりも下側の領域が(3)式を満たす領域となる。
 この図から、例えば、散乱層120で散乱される光の散乱強度の波長依存性を抑制したい場合、シリカ粒子の平均直径を、0.7μm以上(例えば、1.0μm、1.5μmなど)に選定すれば良いことがわかる。この場合、着目波長領域(例えば可視光の波長領域:400nm≦λ≦800nm)では、波長に依らず、(1)式を満たすようになるからである。この条件では、ミー散乱の挙動が顕著となり、着目波長領域において光の散乱強度の波長依存性を抑制することが可能となる。
 一方、同図から、例えば、短波長(青色)域の光の散乱強度を大きくしたい場合は、シリカ粒子の平均直径を、0.1μm以下(例えば、0.05μmなど)に選定すれば良いことがわかる。この場合、着目波長領域(例えば可視光の波長領域:400nm≦λ≦800nm)では、波長に依らず、(3)式を満たすようになるからである。この条件では、着目波長領域においてレイリー散乱の挙動が顕著となり、光の散乱に及ぼす波長依存性が大きくなる。
 図3には、マトリクス材料122としてガラス(屈折率n=2.0)を使用し、セラミックフィラー125としてシリカ粒子(屈折率n=1.47)を使用した散乱層120における、ヘイズ測定結果の一例を示す。この材料系では、Δn=n-n=0.53である。
 ヘイズ測定は、パーキンエルマー製Lambda950の分光光度計により実施した。
 なお、図において、縦軸は、セラミックフィラーを有さない(すなわちガラスのみからなる)散乱層におけるヘイズ値を1として、規格化して示している。シリカ粒子の平均粒径Dは、0.1μmおよび1.5μmである。
 この図から、シリカ粒子の平均粒径Dが1.5μmの場合、すなわち、前述の(1)式を満たす場合、ヘイズ値は、あまり周波数に依存していないことがわかる。一方、シリカ粒子の平均粒径Dが0.1μmの場合、すなわち、前述の(3)式を満たす場合、ヘイズ値は、周波数に依存し、ヘイズ値は短波長側で大きくなる傾向にあることがわかる。
 このように、(1)式および(3)式を利用して、散乱層120のマトリクス材料122およびセラミックフィラー125を選定することにより、散乱層120で散乱される光の波長依存性を制御することが可能となる。
 (有機LED素子100の構成部材)
 次に、有機LED素子100を構成する各部材について簡単に説明する。
 (透明基板110)
 透明基板110は、可視光に対する透過率が高い材料で構成される。透明基板110は、例えば、ガラス基板またはプラスチック基板であっても良い。
 ガラス基板の材料としては、アルカリガラス、無アルカリガラスまたは石英ガラスなどの無機ガラスが挙げられる。また、プラスチック基板の材料としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコールならびにポリフッ化ビニリデンおよびポリフッ化ビニルなどのフッ素含有ポリマーが挙げられる。
 透明基板110の厚さは、特に限られないが、例えば、0.1mm~2.0mmの範囲であっても良い。強度および重量を考慮すると、透明基板110の厚さは、0.5mm~1.4mmであることが好ましい。
 (散乱層120)
 散乱層120は、マトリクス材料122と、該マトリクス材料122中に分散されたセラミックフィラー125とを有する。マトリクス材料122は、第1の屈折率nを有し、セラミックフィラー125は、マトリクス材料122とは異なる第2の屈折率nを有する。
 マトリクス材料122は、ガラスで構成され、ガラスの材料としては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸塩ガラス、無アルカリガラス、および石英ガラスなどの無機ガラスが使用される。
 セラミックフィラー125には、例えば、アルミナ(Al)粒子(屈折率n=1.76)、シリカ(SiO)粒子(屈折率n=1.47)、ジルコニア(ZrO)粒子(屈折率n=2.3)、コージェライト(屈折率n=1.54)粒子、および/またはリン酸ジルコニウム((ZrO))粒子(屈折率n=1.66)等が使用される。
 このうち、コージェライトおよびリン酸ジルコニウム((ZrO))は、熱膨張係数が低いという特徴を有する。(コージェライトの熱膨張係数は、25×10-7/Kであり、リン酸ジルコニウムの熱膨張係数は、5×10-7/Kである。)
 従って、セラミックフィラー125として、これらの粒子を添加した場合、散乱層の熱膨張係数を抑制することができる。また、散乱層の熱膨張係数は、これらの粒子の添加量によって変化するため、このことを利用することにより、散乱層の熱膨張係数を所望の値に調整することが可能になる。
 図4には、マトリクス材料中に含まれるセラミックフィラーの含有量と熱膨張係数の関係を示す。熱膨張係数は、マトリクス材料であるガラス粉末と規定量のフィラーを混ぜ合わせて、プレスしたものを焼結させて作製した試料を熱機械分析装置によって50℃から400℃までの線熱膨張率で示した。
 この図に示すように、アルミナ、コージェライトおよびリン酸ジルコニウムの添加量を増加させていくと、これに伴い、熱膨張係数が低下する傾向にあることがわかる。特に、コージェライトおよびリン酸ジルコニウムは、少量の添加でも、散乱層の熱膨張係数が大きく変化することがわかる。
 なお、散乱層の熱膨張係数は、散乱層の焼成処理の際に重要な特性となる。すなわち、予め散乱層の熱膨張係数を所望の範囲に調整しておくことにより、散乱層が設置された透明基板を熱処理した後に、透明基板が変形したり、透明基板と散乱層の間でワレが生じたりする問題を回避することが可能となる。
 (第1の電極130)
 第1の電極130には、有機発光層140で生じた光を外部に取り出すため、80%以上の透光性が要求される。また、多くの正孔を注入するため、仕事関数が高いことが要求される。
 第1の電極130には、例えば、ITO、SnO、ZnO、IZO(Indium Zinc Oxide)、AZO(ZnO-Al:アルミニウムがドーピングされた亜鉛酸化物)、GZO(ZnO-Ga:ガリウムがドーピングされた亜鉛酸化物)、NbドープTiO、およびTaドープTiOなどの材料が用いられる。
 第1の電極130の厚さは、100nm以上であることが好ましい。
 第1の電極130の屈折率は、1.9~2.2の範囲である。例えば、第1の電極130としてITOを使用した場合、キャリア濃度を増加させることにより、第1の電極130の屈折率を低下させることができる。市販のITOでは、SnOが10wt%含まれるものが標準となっているが、Sn濃度をさらに増加させることにより、ITOの屈折率を下げることができる。ただし、Sn濃度の増加により、キャリア濃度は増加するが、移動度および透過率は、低下する。従って、全体のバランスを考慮して、Sn量を決めてよい。
 (有機発光層140)
 有機発光層140は、発光機能を有する層であり、通常の場合、ホール注入層と、ホール輸送層と、発光層と、電子輸送層と、電子注入層とにより構成される。ただし、有機発光層140は、発光層を有していれば、必ずしも他の層の全てを有していなくともよい。なお、通常の場合、有機発光層140の屈折率は、1.7~1.8の範囲である。
 ホール注入層は、第1の電極130からのホール注入の障壁を低くするため、イオン化ポテンシャルの差が小さいものが好ましい。電極からホール注入層への電荷の注入効率が高まると、有機LED素子100の駆動電圧が下がり、電荷の注入効率が高まる。
 ホール注入層の材料としては、高分子材料または低分子材料が使用される。高分子材料の中では、ポリスチレンスルフォン酸(PSS)がドープされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT:PSS)が良く使用され、低分子材料の中では、フタロシアニン系の銅フタロシアニン(CuPc)が広く用いられる。 
 ホール輸送層は、前述のホール注入層から注入されたホールを発光層に輸送する役割をする。ホール輸送層には、例えば、トリフェニルアミン誘導体、N,N'-ビス(1-ナフチル)-N,N'-ジフェニル-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン(NPD)、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-(2-ナフチル)-4'-アミノビフェニル-4-イル] -1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン(NPTE)、1,1'-ビス[(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(HTM2)、およびN,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-1,1'-ジフェニル-4,4'-ジアミン(TPD)などが用いられる。
 ホール輸送層の厚さは、例えば10nm~150nmの範囲である。ホール輸送層の厚さが薄いほど、有機LED素子を低電圧化できるが、電極間短絡の問題から、通常は、10nm~150nmの範囲である。 
 発光層は、注入された電子とホールが再結合する場を提供する役割を有する。有機発光材料としては、低分子系または高分子系のものが使用される。
 発光層には、例えば、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム錯体(Alq3)、ビス(8-ヒドロキシ)キナルジンアルミニウムフェノキサイド(Alq'2OPh)、ビス(8-ヒドロキシ)キナルジンアルミニウム-2,5-ジメチルフェノキサイド(BAlq)、モノ(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)リチウム錯体(Liq)、モノ(8-キノリノラート)ナトリウム錯体(Naq)、モノ(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)リチウム錯体、モノ(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)ナトリウム錯体およびビス(8-キノリノラート)カルシウム錯体(Caq2)などのキノリン誘導体の金属錯体、テトラフェニルブタジエン、フェニルキナクドリン(QD)、アントラセン、ペリレン、並びにコロネンなどの蛍光性物質が挙げられる。
 ホスト材料としては、キノリノラート錯体を使用しても良く、特に、8-キノリノールおよびその誘導体を配位子としたアルミニウム錯体が使用されても良い。 
 電子輸送層は、電極から注入された電子を輸送する役割をする。電子輸送層には、例えば、キノリノールアルミニウム錯体(Alq3)、オキサジアゾール誘導体(例えば、2,5-ビス(1-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール(END)、および2-(4-t-ブチルフェニル) -5-(4-ビフェニル))-1,3,4-オキサジアゾール(PBD)など)、トリアゾール誘導体、バソフェナントロリン誘導体、およびシロール誘導体などが用いられる。 
 電子注入層は、例えば、第2の電極150との界面に、リチウム(Li)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属をドープした層を設けることにより構成される。
 (第2の電極150)
 第2の電極150には、仕事関数の小さな金属またはその合金が用いられる。第2の電極150は、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および周期表第3属の金属などであっても良い。第2の電極150には、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、またはこれらの合金などが用いられる。
 また、アルミニウム(Al)、マグネシウム銀(MgAg)の共蒸着膜、フッ化リチウム(LiF)または酸化リチウム(LiO)の薄膜上に、アルミニウム(Al)を蒸着した積層電極が用いられても良い。さらに、カルシウム(Ca)またはバリウム(Ba)と、アルミニウム(Al)との積層膜が用いられても良い。
 (有機LED素子の製造方法)
 次に、図5を参照して、有機LED素子の製造方法の一例について説明する。図5には、有機LED素子を製造する際の概略的なフロー図を示す。
 図5に示すように、有機LED素子の製造方法は、透明基板上に散乱層を形成する工程(ステップS110)と、前記散乱層上に、第1の電極を設置する工程(ステップS120)と、前記第1の電極上に、有機発光層を設置する工程(ステップS130)と、前記有機発光層上に、第2の電極を設置する工程(ステップS140)と、を有する。以下、各ステップについて詳しく説明する。
 (ステップS110)
 まず、透明基板が準備される。前述のように、通常、透明基板には、ガラス基板やプラスチック基板が用いられる。
 次に、透明基板上に、ガラス製のマトリクス材料中に、セラミックフィラーが分散された散乱層が形成される。
 前述のように、マトリクス材料およびセラミックフィラーは、(1)式または(3)式を満たすように選定される。一般的に言えば、製造しようとしている有機LED素子に対して、散乱強度の波長依存性の小さい散乱層が好ましいか、或いは、短波長域の光の散乱強度が相対的に大きい散乱層が好ましいか、を判定する。散乱強度の波長依存性の小さい散乱層が好ましいと判定した場合には、マトリクス材料およびセラミックフィラーとして、(1)式を満たすものを選定する。また短波長域の光の散乱強度が相対的に大きい散乱層が好ましいと判定した場合には、マトリクス材料およびセラミックフィラーとして、(3)式を満たすものを選定する。即ち、判定結果に応じたマトリクス材料およびセラミックフィラーを選定する。例えば、RGBの3色の発光強度が均一に近い有機発光層を用いる場合、散乱強度の波長依存性を有意に抑制するように、即ち(1)式を満たすように選定すればよい。また例えば、RGBの3色の発光強度のうちで青色光の発光強度が他色の発光強度に対して比較的弱い有機発光層を用いる場合、短波長(青色)域の光の散乱強度が相対的に大きくなるように、即ち(3)式を満たすような散乱層の材料及び構成を選定すればよい。具体的には、製造しようとしている有機LED素子に用いる有機発光層が、3色の発光強度が均一に近いものであるか、或いは、青色光の発光強度が他色の発光強度に対して比較的弱いものであるか、を判定する。3色の発光強度が均一に近い有機発光層を用いると判定した場合には、マトリクス材料およびセラミックフィラーとして、(1)式を満たすものを選定してよい。また青色光の発光強度が他色の発光強度に対して比較的弱いものである有機発光層を用いると判定した場合には、マトリクス材料およびセラミックフィラーとして、(3)式を満たすものを選定してよい。
 散乱層の形成方法は、特に限られないが、ここでは、特に、「フリットペースト法」により、散乱層を形成する方法について説明する。ただし、その他の方法で散乱層を形成しても良いことは、当業者には明らかである。
 フリットペースト法とは、フリットペーストと呼ばれるガラス材料を含むペーストを調製し(調製工程)、このフリットペーストを被設置基板の表面に塗布して、パターン化し(パターン形成工程)、さらにフリットペーストを焼成すること(焼成工程)により、被設置基板の表面に、所望のガラス製の膜を形成する方法である。以下、各工程について簡単に説明する。
 (調製工程)
 まず、ガラス粉末、セラミックフィラー粒子、樹脂、および溶剤等を含むフリットペーストが調製される。
 ガラス粉末は、最終的に散乱層のマトリクス材料となる材料で構成される。ガラス粉末の組成は、所望の散乱特性が得られ、フリットペースト化して焼成することが可能なものであれば特に限られない。ガラス粉末の組成は、例えば、Pを20~30mol%、Bを3~14mol%、Biを10~20mol%、TiOを0~15mol%、Nbを0~20mol%、WOを0~15mol%含み、LiOとNaOとKOの総量が0~20mol%であり、以上の成分の総量が、90mol%以上のものであっても良い。ガラス粉末の粒径は、例えば、1μm~100μmの範囲である。
 セラミックフィラー粒子には、例えば前述のような金属酸化物粒子が使用される。
 樹脂には、例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、アクリル樹脂、酢酸ビニル、ブチラール樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、およびロジン樹脂などが用いられる。主剤として、エチルセルロースおよびニトロセルロースを使用しても良い。なお、ブチラール樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、およびロジン樹脂を添加すると、フリットペースト塗布膜の強度が向上する。
 溶剤は、樹脂を溶解し、粘度を調整する役割を有する。溶剤には、例えば、エーテル系溶剤(ブチルカルビトール(BC)、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル、酢酸ブチルセロソルブ)、アルコール系溶剤(α-テルピネオール、パインオイル、ダワノール)、エステル系溶剤(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート)、フタル酸エステル系溶剤(DBP(ジブチルフタレート)、DMP(ジメチルフタレート)、DOP(ジオクチルフタレート))がある。主に用いられているのは、α-テルピネオールや2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート)である。なお、DBP(ジブチルフタレート)、DMP(ジメチルフタレート)、DOP(ジオクチルフタレート)は、可塑剤としても機能する。
 その他、フリットペーストには、粘度の調整やフリット分散促進のため、界面活性剤を添加しても良い。また、表面改質のため、シランカップリング剤を使用しても良い。
 次に、これらの原料を混合し、セラミックフィラー粒子が均一に分散されたフリットペーストを調製する。
 (パターン形成工程)
 次に、前述の方法で調製したフリットペーストを、透明基板上に塗布し、パターン化する。塗布の方法およびパターン化の方法は、特に限られない。例えば、スクリーン印刷機を用いて、透明基板上にフリットペーストをパターン印刷しても良い。あるいは、ドクターブレード印刷法またはダイコート印刷法を利用しても良い。
 その後、フリットペースト膜は、乾燥される。
 (焼成工程)
 次に、フリットペースト膜が焼成される。通常、焼成は、2段階のステップで行われる。第1のステップでは、フリットペースト膜中の樹脂が分解、消失され、第2のステップでは、ガラス粉末が焼結、軟化される。
 第1のステップは、大気雰囲気下で、フリットペースト膜を200℃~400℃の温度範囲に保持することにより行われる。ただし、処理温度は、フリットペーストに含まれる樹脂の材料によって変化する。例えば、樹脂がエチルセルロースの場合は、処理温度は、350℃~400℃程度であり、樹脂がニトロセルロースの場合は、処理温度は、200℃~300℃程度であっても良い。なお処理時間は、通常、30分から1時間程度である。
 第2のステップは、大気雰囲気下で、フリットペースト膜を、含まれるガラス粉末の軟化温度±30℃の温度範囲に保持することにより行われる。処理温度は、例えば、450℃~600℃の範囲である。また、処理時間は、特に限られないが、例えば、30分~1時間である。
 第2のステップでは、ガラス粉末が軟化、焼結するとともに、セラミックフィラーがマトリクス材料中に均一に分散される。従って、第2のステップ後に、散乱層が形成される。
 最終的に得られる散乱層の厚さは、5μm~50μmの範囲であっても良い。
 なお、上記記載では、単一層の散乱層を例に、その形成方法を説明した。しかしながら、散乱層は、複数の層で構成されても良い。
 例えば、2層構造の散乱層を形成する場合、前述の(調製工程)~(焼成工程)のサイクルが2回繰り返される。この際、第1のサイクルでは、前述のフリットペーストを使用し、第2のサイクルでは、セラミックフィラーを含まないフリットペーストを使用しても良い。このような方法で形成された散乱層は、最表面にセラミックフィラーを有さない。このため、散乱層の最表面にセラミックフィラーが露出して、これにより表面が非平坦な状態になるという問題が回避される。またこれにより、その後上部に形成される第1の電極と散乱層の間の界面は、平坦となり、該界面に凹凸が発生することを有意に抑制することができる。
 (ステップS120)
 次に、前記工程で得られた散乱層上に、透明な第1の電極(陽極)が設置される。
 第1の電極の設置方法は、特に限られず、例えば、スパッタ法、蒸着法、および気相成膜法等の成膜法を利用しても良い。また、第1の電極は、パターン化しても良い。
 前述のように、第1の電極の材料は、ITO等であっても良い。また、第1の電極の厚さは、特に限られず、第1の電極の厚さは、例えば50nm~1.0μmの範囲であっても良い。
 なお、ここまでの工程で得られた、透明基板、散乱層、および第1の電極を有する積層体は、「透光性基板」と呼ばれる。次工程で設置される有機発光層の仕様は、最終的に得られる有機LED素子の適用用途によって、様々に変化する。従って、慣用的には、この「透光性基板」は、この状態のまま、中間製品として市場に流通される場合も多く、これ以降の工程が省略される場合も多々ある。
 (ステップS130)
 有機LED素子を製造する場合は、次に、第1の電極を覆うように、有機発光層が設置される。有機発光層の設置方法は、特に限られず、例えば、蒸着法および/または塗布法を使用しても良い。
 (ステップS140)
 次に、有機発光層上に第2の電極が設置される。第2の電極の設置方法は、特に限られず、例えば、蒸着法、スパッタ法、気相成膜法等を使用しても良い。
 以上の工程により、図1に示したような有機LED素子100が製造される。
 ただし、前述の有機LED素子の製造方法は、一例であって、その他の方法で有機LED素子を製造しても良いことは、当業者には明らかである。
 以下、実施例について説明する。
 (実施例1)
 以下の方法で、評価用の散乱層を作製した。
 まず、ガラス粉末(屈折率n=2.0)と、シリカ粒子(平均粒径1.0μm)(屈折率n=1.47)と、ビヒクル(樹脂と溶剤の混合物)とを混合し、この混合物を自転・交点ミキサーで混練し、第1のペーストを得た。ガラス粉末に対するシリカ粒子の含有量は、5vol%とした。
 次に、この第1のペーストをガラス基板(屈折率1.5)上にスクリーン印刷した。その後、このガラス基板を475℃で30分間熱処理して、有機成分を分解除去した。さらに、ガラス基板を575℃で30分間焼成し、厚さが15μm程度の第1の層を得た。
 次に、第1のペーストと同様の方法で、第2のペーストを調製した。ただし、第2のペーストには、セラミックフィラーとしてのシリカ粒子は含まれていない。
 この第2のペーストを第1の層上にスクリーン印刷した。その後、ガラス基板を475℃で30分間熱処理し、さらに575℃で30分間焼成した。これにより厚さが15μm程度の第2の層を得た。
 以上の工程により、ガラス基板上に、総厚さが約30μmの散乱層(以下、「実施例1に係る散乱層」と称する)を形成した。
 さらに、以下の方法により、評価用のLED素子を作製した。
 前述の方法で作製した実施例1に係る散乱層の上部に、厚さが150nmのITO電極を成膜した。また、このITO電極上に、100nmのα-NPD(N,N'-diphenyl-N,N'-bis(l-naphthyl)-l,l'biphenyl-4,4''diamine)と、60nmのAlq3(tris8-hydroxyquinoline aluminum)と、0.5nmのLiFと、80nmのAlとを連続的に成膜した。これにより、実施例1に係る有機LED素子が得られた。
 図6には、前述の(1)式~(3)式に基づく、光の波長λ(nm)とシリカ粒子の平均粒径D(μm)の関係を示す。図2と同様に、実線で示す直線11は、D=3×Dの関係を示しており、破線で示す直線12は、D=Dの関係を示している。実施例1では、シリカ粒子の平均粒径は、1.0μmであり、このグラフから、実施例1の条件は、(1)式を満たす領域にあることがわかる。
 (実施例2)
 前述の実施例1と同様の方法により、実施例2に係る散乱層を作製した。ただし、実施例2に係る散乱層では、セラミックフィラーとして添加されるシリカ粒子の平均粒径は、1.5μmとした。その他の製作条件は、実施例1の場合と同様である。
 前述の図6から、実施例2の条件(シリカ粒子の平均粒径=1.5μm)は、(1)式を満たす領域にあることがわかる。
 (実施例3)
 前述の実施例1と同様の方法により、実施例3に係る散乱層を作製した。ただし、実施例3に係る散乱層では、セラミックフィラーとして添加されるシリカ粒子の平均粒径は、0.1μmとした。その他の製作条件は、実施例1の場合と同様である。
 前述の図6から、実施例3の条件(シリカ粒子の平均粒径=0.1μm)は、(3)式を満たす領域にあることがわかる。
 (実施例4)
 前述の実施例1と同様の方法により、実施例4に係る散乱層を作製した。ただし、実施例4に係る散乱層では、セラミックフィラーとして、平均粒径が3.0μmのアルミナ粒子(屈折率n=1.76)を使用した。その他の製作条件は、実施例1の場合と同様である。
 図7には、前述の(1)式~(3)式に基づく、光の波長λ(nm)とアルミナ粒子の平均粒径D(μm)の関係を示す。図2と同様に、実線で示す直線11は、D=3×Dの関係を示しており、破線で示す直線12は、D=Dの関係を示している。実施例4では、アルミナ粒子の平均粒径は、3.0μmであり、このグラフから、実施例4の条件は、(1)式を満たす領域にあることがわかる。
 (実施例5)
 前述の実施例1と同様の方法により、実施例5に係る散乱層を作製した。ただし、実施例5に係る散乱層では、セラミックフィラーとして、平均粒径が1.0μmのコージェライト粒子(屈折率n=1.54)を使用した。その他の製作条件は、実施例1の場合と同様である。
 図8には、前述の(1)式~(3)式に基づく、光の波長λ(nm)とコージェライト粒子の平均粒径D(μm)の関係を示す。図2と同様に、実線で示す直線11は、D=3×Dの関係を示しており、破線で示す直線12は、D=Dの関係を示している。実施例5では、コージェライト粒子の平均粒径は、1.0μmであり、このグラフから、実施例5の条件は、(1)式を満たす領域にあることがわかる。
 (比較例1)
 前述の実施例1と同様の方法により、比較例1に係る散乱層、および比較例1に係る有機LED素子を作製した。ただし、比較例1に係る散乱層では、セラミックフィラーを添加していない。その他の製作条件は、実施例1の場合と同様である。
 (比較例2)
 前述の実施例1と同様の方法により、比較例2に係る散乱層を作製した。ただし、比較例2に係る散乱層では、セラミックフィラーとして添加されるシリカ粒子の平均粒径は、0.5μmとした。その他の製作条件は、実施例1の場合と同様である。
 前述の図6から、比較例2の条件(シリカ粒子の平均粒径=0.5μm)は、(1)式および(3)式のいずれも満たさない領域にあることがわかる。
 表1には、実施例1~5および比較例1~2に係る散乱層のセラミックフィラーの材質、セラミックフィラーの平均粒径、およびマトリクス材料とセラミックフィラーの屈折率の差Δnをまとめて示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 (散乱強度の波長依存性の評価)
 前述の方法で作製した実施例1~5、および比較例2に係る散乱層において、反射される光の散乱強度の波長依存性を評価した。光の散乱強度は、ヘイズ測定によって得られたヘイズ値を用いて評価した。なお、ヘイズ値は、以下の(4)式から算出した:

   ヘイズ(%)=拡散透過率/前方透過率×100   (4)式

ここで、拡散透過率は、積分球の前に試料を固定させ、分光光度計で任意の波長の光を入射させ、測定時にライト・トラップを設置し、平行光線が吸収されて拡散透過光のみが積分球で集められて受光部に入って得られた透過率である。また、前方透過率は、ライト・トラップを設置しないで積分球の前に試料を固定させ、任意の波長の光を入射させ積分球で集められた透過率である。
 実施例1~3および比較例2に係る散乱層での測定結果を図9に示す。
 図9の結果から、シリカフィラーの平均粒径Dが(1)式を満たす場合(実施例1、2の場合)、ヘイズ値に及ぼす光の波長依存性が有意に抑制されていることがわかる。一方、シリカフィラーの平均粒径Dが(3)式を満たす場合(実施例3の場合)、ヘイズ値に及ぼす光の波長依存性が大きくなり、短波長側ほど、ヘイズ値が大きくなる傾向にあることがわかる。さらに、シリカフィラーの平均粒径Dが(1)式および(3)式のいずれも満たさない場合(比較例2の場合)は、前述の両者の中間的な傾向を示し、長波長側において、ヘイズ値がある程度小さくなる傾向にあることがわかる。
 図10には、実施例5に係る散乱層でのヘイズ値の測定結果を示す。図10の結果から、コージェライトフィラーの平均粒径Dが(1)式を満たす場合(実施例5の場合)、ヘイズ値に及ぼす光の波長依存性が有意に抑制されていることがわかる。
 なお、アルミナフィラー(平均粒径3.0μm)を使用した実施例4に係る散乱層においても、ヘイズ値に及ぼす光の波長依存性は、抑制される傾向を示した。
 このように、散乱層に使用されるセラミックフィラーとマトリクス材料の関係を(1)~(3)式を満たすように調整することにより、発光される光の散乱強度の波長依存性を制御することができることがわかった。
 (光透過性の評価)
 次に、実施例1および比較例1に係る散乱層を用いて、光透過性を評価した。光透過性は、各散乱層のサンプルにおいて、ガラス基板の反対側(すなわち散乱層の側)から自然光を照射した際に、ガラス基板の側から放射される光量を、積分球を用いて測定することにより実施した。全光線透過率は、前方放射される光を積分球で集光し測定した。
 測定結果を前述の表1にまとめて示す。
 この結果から、実施例1に係る散乱層の光透過性は、セラミックフィラーを有さない比較例1に係る散乱層と同等であることが確認された。従って、添加セラミックフィラーの量が5vol%の範囲内では、散乱層内のセラミックフィラーの存在が、光の透過性に及ぼす影響は小さいと言える。
 (光取り出し効率の評価)
次に、実施例1および比較例1に係るLED素子を用いて、光取り出し効率の測定を行った。光取り出し効率は、実際にLED素子の両電極間に、1mAの電流を印加した際に、外部に放射される光量を測定して算出した。
 前述の表1に、測定結果を示す。なお、表1の光取り出し効率は、散乱層を有さない同様のLED素子において得られる光量を1としたときの、規格化された値で示されている。
 この結果から、散乱層がセラミックフィラーを有さない実施例1に係るLED素子は、散乱層がセラミックフィラーを有さない比較例1に係るLED素子に比べて、光取り出し効率が向上することがわかる。
 開示の技術は、発光デバイス等に使用される有機LED素子に適用することができる。
 なお本出願は、日本特許庁に2010年12月17日に出願された基礎出願第2010-282372号に基づくものであり、その全内容はここに参照により含まれる。
 100 有機LED素子
 110 透明基板
 120 散乱層
 122 マトリクス材料
 125 セラミックフィラー
 130 第1の電極(陽極)
 140 有機発光層
 150 第2の電極(陰極)
 190 光取り出し面。

Claims (7)

  1.  有機LED素子を製造する方法であって、
     透明基板上に散乱層を形成する工程と、
     前記散乱層上に、第1の電極を設置する工程と、
     前記第1の電極上に、有機発光層を設置する工程と、
     前記有機発光層上に、第2の電極を設置する工程と、
     を有し、
     前記散乱層は、ガラスからなるマトリクス材料と、該マトリクス材料中に分散されたセラミックフィラーとを有し、
     前記セラミックフィラーの平均粒径をD(μm)とし、前記有機発光層から生じる光の波長をλ(nm)とし、前記散乱層のマトリクス材料の屈折率とセラミックフィラーの屈折率の差の絶対値をΔnとしたとき、
     前記マトリクス材料およびセラミックフィラーは、
     前記散乱層で散乱される光の散乱強度の周波数依存性を着目波長領域において抑制する場合、
         D≧3×D、          

    ただし、

         D=λ/(2π×Δn)、    

     を前記着目波長領域において満たすように選定され、

     前記散乱層で散乱される光の、前記着目波長領域における短波長側での散乱強度を向上させる場合、

         D<D、          

     を前記着目波長領域において満たすように選定されることを特徴とする方法。
  2.  前記マトリクス材料は、1.5~2.2の範囲の屈折率を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3.  前記セラミックフィラーは、アルミナ粒子、シリカ粒子、ジルコニア粒子、コージェライト粒子、およびリン酸ジルコニウム粒子からなる群から選定された少なくとも一つであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4.  前記透明基板上に散乱層を形成する工程は、
     前記透明基板上に、第1の層を形成する工程と、
     前記第1の層上に、第2の層を形成する工程と、
     を有し、
     前記第1の層は、前記マトリクス材料および前記セラミックフィラーを有し、前記第2の層は、前記マトリクス材料を有するが、セラミックフィラーを有さないことを特徴とする請求項1記載の方法。
  5.  前記透明基板上に散乱層を形成する工程は、
     前記透明基板上に、前記散乱層をスクリーン印刷した後、前記透明基板を熱処理する工程を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
  6.  セラミックフィラーが分散されたガラス製のマトリクス材料で構成された散乱層において、散乱される光の散乱特性を、ミー散乱およびレイリー散乱の間で制御する方法であって、
     前記セラミックフィラーの平均粒径をD(μm)とし、前記光の波長をλ(nm)とし、前記マトリクス材料の屈折率とセラミックフィラーの屈折率の差の絶対値をΔnとしたとき、
     前記マトリクス材料およびセラミックフィラーは、
     着目波長領域においてミー散乱を発現させる場合、
         D≧3×D、          

    ただし、

         D=λ/(2π×Δn)、    

     を前記着目波長領域において満たすように選定され、

     前記着目波長領域においてレイリー散乱を発現させる場合、

         D<D、          

     を前記着目波長領域において満たすように選定されることを特徴とする方法。
  7.  透光性基板を製造する方法であって、
     透明基板上に散乱層を形成する工程と、
     前記散乱層上に、第1の電極を設置する工程と、
     を有し、
     前記散乱層は、ガラスからなるマトリクス材料と、該マトリクス材料中に分散されたセラミックフィラーとを有し、
     前記散乱層は、光を散乱し、
     前記セラミックフィラーの平均粒径をD(μm)とし、前記光の波長をλ(nm)とし、前記散乱層のマトリクス材料の屈折率とセラミックフィラーの屈折率の差の絶対値をΔnとしたとき、
     前記マトリクス材料およびセラミックフィラーは、
     前記散乱層で散乱される光の散乱強度の周波数依存性を着目波長領域において抑制する場合、
         D≧3×D、          

    ただし、

         D=λ/(2π×Δn)、    

     を前記着目波長領域において満たすように選定され、

     前記散乱層で散乱される光の、前記着目波長領域における短波長側での散乱強度を向上させる場合、

         D<D、          

     を前記着目波長領域において満たすように選定されることを特徴とする方法。
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