WO2011161762A1

WO2011161762A1 - 小ピッチサイレントチェーン

Info

Publication number: WO2011161762A1
Application number: PCT/JP2010/060529
Authority: WO
Inventors: 良雄黒川; 洋平通
Original assignee: 大同工業株式会社
Priority date: 2010-06-22
Filing date: 2010-06-22
Publication date: 2011-12-29

Abstract

【課題】　複数枚のリンクプレートをピンを介して屈曲可能に連結し、両側にはサイドプレートを取付け、小ピッチであるが強度の高いサイレントチェーンの提供。【解決手段】　サイレントチェーンのチェーンピッチＰを４．５ｍｍ～５．５ｍｍとし、ピンの外径を１．８ｍｍ～２．２ｍｍとし、そして該ピン２の表面にはバナジューム・カーバイト皮膜を形成している。

Description

小ピッチサイレントチェーン

　本発明はピッチが小さく、強度並びに耐摩耗性に優れたサイレントチェーンに関するものである。

　車両のエンジン内に取付けているタイミングチェーンとしてサイレントチェーンが多用されている。すなわち、タイミングチェーンとはエンジンの吸気弁と排気弁を開閉するタイミングをピストン運動に同期させる為のチェーンである。そして、自動二輪車のエンジン内にはチェーンピッチが６．３５ｍｍのサイレントチェーンが主流と成っている。

　近年、エンジンに対してコンパクト化、低燃費、低騒音などが求められ、その為に、サイレントチェーンにはチェーン駆動時における多角形運動の変動をより小さくすることが１つの手法として必要となる。多角形運動の変動を小さくする為にはチェーンピッチを小さくしなくてはならず、しかし小ピッチとするならばサイレントチェーンの摩耗性能及び強度が低下するといった新たな問題が発生する。

　図４は従来の一般的なサイレントチェーンを表している具体例であり、複数枚のリンクプレート（イ）、（イ）・・・がピン（ロ）、（ロ）・・・によって回転可能に連結され、両側にはサイドプレート（ハ）、（ハ）・・・が連結されている。リンクプレート（イ）は両側に歯を形成し、該歯はスプロケットに噛み合い、サイドプレート（ハ）はサイレントチェーンがスプロケットから外れることなく噛み合うようにガイドすることが出来る。

　サイレントチェーンは複数枚のリンクプレート（イ）、（イ）・・・が重なり合った状態でピン（ロ）、（ロ）・・・にて連結され、単位長さ当りの重量はローラチェーンに比較して大きい。その為に、スプロケットに巻き付く際の多角形運動に伴う運動量が大きくなり、このことはエンジン動力の伝達効率の低下をもたらす。従って、チェーンピッチＰが小さい方が多角形運動に伴う運動量は小さくなることから、強度が維持され摩耗伸びが抑制されるならば、小ピッチのサイレントチェーンの方が好ましい。

　従来においても、強度と摩耗伸びを考慮したサイレントチェーンは色々知られている。例えば、特開２００８－２２３８５９号に係る「チェーン」は、リンクプレートの引っ張り強度を低下させること無く、リンクプレートの摩耗を低減できるチェーンである。そこで、一対のピン孔を備える複数のリンクプレートと、複数のピン孔を貫通し、複数のリンクプレートを無端状に連結する複数の連結ピンとを備えたチェーンにおいて、一対の内の一方のピン孔の内周面は、低硬度面と、低硬度面より硬度が高く、一対の内の他方のピン孔からの距離が前記低硬度面より遠い高硬度面とを有している。

　特開２００７－４６６１５号に係る「サイレントチェーン」は、直噴型エンジンのタイミングチェーンとして用いた場合であってもリンクプレートのピン孔内面の摩耗を抑制してチェーン摩耗伸びを低減することができ、しかも、疲労強度を向上せしめたサイレントチェーンである。そこで、スプロケットとの噛み合い面、ピン孔内面及び背面を備えた多数のリンクプレートが連結ピンによってチェーン長手方向に編成されているとともに、前記リンクプレートのピン孔内面にショットピーニング加工を用いた多数の微細ディンプルが形成されている。
特開２００８－２２３８５９号に係る「チェーン」特開２００７－４６６１５号に係る「サイレントチェーン」

　このように、サイレントチェーンのピッチを小さくすることで、エンジンのコンパクト化、低燃費、低騒音に寄与することは出来るが、耐摩耗性及び強度の低下といった別の問題が発生する。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、従来技術とは異なる手段を用いることで、ピッチを小さくしても、耐摩耗性に優れ、強度が低下することのない小ピッチサイレントチェーンを提供する。

　本発明に係る小ピッチサイレントチェーンとはチェーンピッチＰ＝４．０ｍｍ～５．５ｍｍとし、自動二輪車のエンジン用タイミングチェーンとして従来から主流であるチェーンピッチＰ＝６．３５ｍｍのサイレントチェーンからの変換を目的としている。そこで、本発明のサイレントチェーンはチェーンピッチが小さくなることで各リンクプレートを連結するピンの外径は小さくなり（１．８ｍｍ～２．２ｍｍ）、その結果、各リンクプレートに作用する張力に対して面圧は高くなる。そこで、本発明ではピン表面にバナジウム・カーバイト（ＶＣ）の硬い皮膜を形成して、耐摩耗性を向上させて伸びを抑制している。

　そして、チェーンピッチを小さくすることで低下する強度を維持する為に、本発明ではリンクプレートの背面を凹状化してクビレを設けている。リンクプレート背面を凹状化してクビレを設けることでリンクプレートの股部に作用する応力集中を緩和することが出来る。ただし、クビレの具体的な大きさは特に限定しないことにする。

　本発明に係るサイレントチェーンはそのチェーンピッチＰが４．０ｍｍ～５．５ｍｍと小さく、そしてピン径は１．８ｍｍ～２．２ｍｍと細いが、ピン表面にはバナジウム・カーバイト（ＶＣ）の硬い皮膜を形成している。従って、細いピンに高い面圧が作用しても所望の耐摩耗性を得ることが出来る。従って、小ピッチサイレントチェーンであるが耐摩耗性に優れ、伸びは抑制される。

　又、サイレントチェーンを構成するリンクプレートの背面は凹状にクビレさせるならば、リンクプレートに作用する張力に対して、より均等に応力が働き、特に股部に発生する集中応力を緩和する効果がある。そこで、従来自動二輪車のタイミングチェーンとして多用されているチェーンピッチＰが６．３５ｍｍのサイレントチェーンに比較して性能面において劣ることはない。

　そして、リンクプレートを組み合わせてサイレントチェーンとして構成した状態で所定の張力を付加し、ピン穴内周面に部分的に塑性変形を与えるならば、残留応力並びに残留歪が残って該サイレントチェーンの強度は更に高くなり、小ピッチとしてもチェーンピッチＰが６．３５ｍｍのサイレントチェーンの強度をもたせることが出来る。従って、本発明の小ピッチサイレントチェーンは自動二輪車のエンジンに要求されるコンパクト化、低燃費、低騒音に貢献することが可能となる。

本発明に係る小ピッチサイレントチェーンを示す具体例。サイレントチェーンを構成するリンクプレートであり、（ａ）は背面が平坦な場合、（ｂ）は背面が僅かな凹状にクビレた場合、（ｃ）は背面が凹状に大きくクビレた場合をそれぞれ示している。本発明のピッチ４．７６２５ｍｍのサイレントチェーンと従来のピッチ６．３５ｍｍのサイレントチェーンを比較した伸び線図。従来の一般的なサイレントチェーン。

　図１は本発明に係る小ピッチサイレントチェーンを示す実施例であり、同図の１はリンクプレート、２はピン、３はサイドプレートをそれぞれ表している。このサイレントチェーンは４枚のリンクプレート１ａ，１ａ・・・と３枚のリンクプレート１ｂ，１ｂ・・・がピン２，２・・・を介して交互に連結し、両側にはサイドプレート３，３・・・が取付けられている。

　そして、４枚のリンクプレート１ａ，１ａ・・・の間に３枚のリンクプレート１ｂが挟まれた状態でピン２，２・・・にて連結されている。又、サイドプレート３，３・・・はリンクプレート１ｂ，１ｂ・・・と同じピン２，２・・・によって取付けられ、リンクプレート１ａ，１ａ・・・はリンクプレート１ｂ，１ｂ・・・及びサイドプレート３，３・・・とピン２，２・・・を中心として屈曲することが出来る。

　サイレントチェーンは両スプロケット（駆動側スプロケットと従動側スプロケット）に巻き掛けられて、駆動側スプロケットの動力を従動側スプロケットへ伝達することが出来る。この場合、サイレントチェーンを構成するリンクプレート１ａ，１・・・、１ｂ，１ｂ・・・に形成している歯がスプロケット歯と噛み合う。この点は従来のサイレントチェーンと同じであるが、本発明のサイレントチェーンはチェーンピッチＰが小さくてＰ＝４．７６２５ｍｍとしているが、１ランク大きなチェーンピッチ６．３５ｍｍの従来のサイレントチェーンに比較して、その強度を維持しながら摩耗伸びを抑制している。

　ところで、本発明のサイレントチェーンではそのピッチＰ＝４．７６２５ｍｍとし、ピン２の外径Ｄ＝１．９０ｍｍと成っている。ピン長さＬ＝８．１５ｍｍ（ＭＡＸ）、リンクプレート１ａ，１ｂの厚さＴ＝１．０ｍｍ、サイドプレート３の厚さｔ＝０．７２ｍｍと成っている。又、リンクプレート１ａ，１ｂの高さＨ＝５．３０、ピン中心からリンク背面までの距離ｈ＝２．２０ｍｍとしている。

　ところで、実施例に示すリンクプレート１ａ，１ｂは図２に示すように、先細りした２本の歯４，４を有しており、歯４，４の先端には丸みを形成している。そして、両側には２個のピン穴５，５が貫通して設けられ、これらピン穴５，５にはピン２，２が嵌って図１に示すサイレントチェーンが構成される。図１に示すサイレントチェーンでは４枚のリンクプレート１ａ，１ａ・・・と３枚のリンクプレート１ｂ，１ｂ・・・で構成しているが、このリンクプレート１ａ，１ａ・・・、１ｂ，１ｂ・・・の組合せ枚数は限定しない。

　図２（ａ）に示すリンクプレート１は、その背面６が平坦面と成っている。（ｂ）に示すリンクプレート１はその背面６が凹状にクビレた形状と成っているが、クビレ底７はピン穴５まで達していない。これに対して（ｃ）に示すリンクプレート１はその背面６が大きくクビレた形状と成っており、クビレ底７はピン穴５まで達している。すなわち、ピン穴中心を通るピッチ線Ｏ－Ｏからクビレ底７までの距離Ｍ，ｍは、（ｂ）の場合にはピン穴半径より大きく、（ｃ）の場合にはピン穴半径より小さく成っている。

　本発明のサイレントチェーンを構成するリンクプレート１は図２（ａ）、（ｂ）、（ｃ）の何れも対象としているが、特に（ｃ）に示しているように背面７を大きくクビレさせることで、単純引張り時の股部８に発生する応力は（ａ）のリンクプレート１より大きく低下する。これは、クビレを大きくすることで股部８に発生する集中応力を緩和する効果があると考えられる。

　又、本発明に係るサイレントチェーンは、小ピッチ（４．７６２５ｍｍ）であるにも係わらず、高い耐摩耗性を備えるために、ピン２の表面はバナジウム・カーバイト硬化処理され、硬い皮膜を形成したピン２としている。すなわち、ピン径が小さくなって面圧は高くなるが、上記バナジウム・カーバイト皮膜によってこの面圧に耐えることが出来、サイレントチェーンの摩耗伸びは抑制される。

　一方、本発明のサイレントチェーンには初期張力を付加し、その結果、ピン２が嵌るピン穴５の内周の一部は塑性変形して残留応力及び残留歪が形成される。このことで、サイレントチェーンの疲労強度を向上させる効果が得られる。従って、図１に示す本発明の小ピッチサイレントチェーンの疲労強度は１．７４ｋＮとなり、従来の図４に示す１ランク大きなチェーンピッチのサイレントチェーンの疲労強度１．７４ｋＮに比較して同等である。又、ピッチを小さくしていることで図１に示す本発明のサイレントチェーンの質量は０．２４０ｋｇ／ｍとなり、図４に示すチェーンピッチの大きいサイレントチェーンの質量０．２５５ｋｇ／ｍに比較して小さく成っている。

　図３は本発明に係るサイレントチェーンの摩耗テスト結果を示すグラフである。
同図において●印の線図は本発明に係るサイレントチェーンでチェーンピッチＰが４．７６２５ｍｍサイレントチェーンの伸びを示し、△印の線図は従来のサイレントチェーンでチェーンピッチＰが６．３５ｍｍサイレントチェーンの伸びを示している。このように、従来の大きなチェーンピッチＰのサイレントチェーンに比較して本発明の小ピッチＰのサイレントチェーンの伸びが小さく成っていることが分かる。

　１　リンクプレート
　２　ピン
　３　サイドプレート
　４　歯
　５　ピン穴
　６　背面
　７　クビレ底
　８　股部

Claims

スプロケット歯に噛み合う２本の歯を有した複数枚のリンクプレートをピンを介して屈曲可能に連結し、両側にはサイドプレートを取付けたサイレントチェーンにおいて、該サイレントチェーンのチェーンピッチＰを４．０ｍｍ～５．５ｍｍとし、ピンの外径を１．８ｍｍ～２．２ｍｍとし、そして該ピンの表面にはバナジウム・カーバイト皮膜を形成したことを特徴とする小ピッチサイレントチェーン。
上記リンクプレート背面を凹状にクビレさせた請求項１記載の小ピッチサイレントチェーン。