WO2010122990A1 - 生体関連物質測定用チューブおよび定量システム - Google Patents
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Abstract
Description
また、本発明の定量システムは、上記のチューブと、前記チューブ内のマイクロ粒子から発するシグナルを検出する検出部と、前記検出されたシグナルに基づき検量線を作成する検量線作成部と、前記作成された検量線を参照して生体関連物質を定量する演算部と、を有することを特徴とする。
目的の生体関連物質と結合可能な第1のマイクロ粒子、所定量の目的の生体関連物質が予め結合しポジティブコントロールとして機能する第2のマイクロ粒子、および、ネガティブコントロールとして機能する第3のマイクロ粒子に蛍光標識を付与し蛍光標識が付与されたこれら第1~第3のマイクロ粒子に励起光を照射して蛍光強度を演算する蛍光強度演算手段と、
蛍光強度演算手段から送出される蛍光強度信号を受けて第1のマイクロ粒子に結合した前記生体関連物質を定量する演算手段と、を備える。
また、ポジティブコントロール用の第2ビーズ、ネガティブコントロール用の第3ビーズ、補正用の第4ビーズを用いることにより、測定用チューブのロット番号や製造番号、定量システムの形式や型番、定量時に使用される試薬などが異なる場合でも、システムの較正にかかる手間を省きながらより正確に目的の生体関連物質を定量することができる。
このように、本発明のチューブおよびシステムを用いることで、目的生体関連物質の有無を定性的に検出できるだけでなく、目的生体関連物質の量を定量することが可能となり、より利便性の高い定量システムを提供することができる。このことは、イムノクロマトグラフィ等で行なわれていた定性反応を確認することができると同時に、反応結果物の量を定量することができるため、イムノクロマトグラフィーに変わる測定系として有用であることを意味する。
従って、本名発明の測定用チューブおよび定量システムを用いることで、より利便性の高い定量システムを提供することができる。さらに、本発明の測定用チューブやこの測定用チューブを用いる定量システムでは、システムの保守やメンテナンスにかかる手間を省くことができ、患者の近傍で検査を実行して迅速に診断するポイント・オブ・ケアの実行に十分に対応することができる。
本発明の生体関連物質測定用チューブは、測定目的の生体関連物質と結合することができる物質が固定された第1のマイクロ粒子と、前記生体関連物質が所定量で固定された第2のマイクロ粒子と、ネガティブコントロール用の第3のマイクロ粒子と、をチューブ内に配列したことを特徴とするものである。本発明の生体関連物質測定用チューブを使用することで、生体関連物質に関して2つの異なる定量手法を実践することができる。即ち、第1の定量手法(i)は、既に作成された検量線を利用して目的の生体関連物質の測定値を補正してより正確な定量を行うものであり、第2の定量手法(ii)は、検量線の作成と目的の生体関連物質の定量とを同時に実行してより正確な定量を行うものである。第1の定量手法(i)では、測定目的の生体関連物質の量が予め規定されているときのシグナル曲線を検量線として使用し、この検量線上のいずれかの位置に該当する量の生体関連物質をマイクロ粒子に固定した場合を考えており、このマイクロ粒子は測定値補正用として使用される。また、第2の定量手法(ii)では、異なる量の生体関連物質が複数のマイクロ粒子に固定された場合を考えており、それぞれ異なる量の生体関連物質が固定されたマイクロ粒子が検量線作成用として使用される。
以上のような定量を実行することにより、生体関連物質の測定に関して補正を行うことができ、生体関連物質をより正確に定量することができる。
また、生体関連物質を捕捉する第1のマイクロ粒子、所定量の生体関連物質が予め固定された第2のマイクロ粒子、およびネガティブコントロール用の第3のマイクロ粒子を用いることにより、測定用チューブのロット番号や製造番号、定量システムの形式や型番、定量時に使用される試薬、などが異なる場合でも、システムの較正にかかる手間を省きながらより正確に目的の生体関連物質を定量することができる。このように、本名発明の測定用チューブおよび定量システムを用いることで、より利便性の高い定量システムを提供することができる。
さらに、本発明の測定用チューブやこの測定用チューブを用いる定量システムでは、システムの保守やメンテナンスにかかる手間を省くことができ、患者の近傍で検査を実行して迅速に診断するポイント・オブ・ケアの実行に十分に対応することができる。
化学発光を用いて生体関連物質を定量する場合では、化学反応により励起された化学発光物質が基底状態に移行するときに外部に電磁波を放出する。タンパク質を定量する場合において、このような現象を発生させる発光系の代表的な例としては、ルミノールを用いるものと、ジオキセタンを用いるものとがある。
ルミノール応用化学発光において、ルミノールは過酸化水素の存在下で分解することにより発光するものであり、ペルオキシダーゼを触媒とすることでより強く発光させることができる。さらに、ヨードフェノール化合物を添加することにより発光強度を略1000倍に強めることができ、このようなエンハンサーを利用することで発光強度の増強だけでなく発光時間も長くすることができる。このように発光させる市販品としては、例えば、ピアスケミカル(Pierce Chemical)社のスーパーシグナル(登録商標)シリーズ、和光純薬工業社のImmunoStar Kit、ロシュ・ダイアグノスティック社のBMケミルミネッセンスなどがある。
ジオキセタン応用化学発光においては、化学発光物質(例えば、AMPPD(登録商標))がアルカリ性フォスファターゼと反応して中間体が生成され、この中間体が自然に開裂してアダマンタノンと励起状態の発光物質が生成されてこの発光物質が基底状態に移行するまで発光する。このように発光を実行するための市販品としては、例えば、バイオ・ラッドラボラトリーズ社のイミュンスターキット、New England Bio Labs社のPhototope(登録商標)などがある。
他方、蛍光を用いて目的の生体関連物質を定量する場合では、目的の生体関連物質に蛍光標識を付与し、この付与された蛍光標識に特定波長の励起光を照射して蛍光標識を蛍光させる。このため、上記の化学発光を用いた測定装置とは必要な構成が異なってくる。一般に蛍光を利用する場合、生体関連物質を多重に染色できることや、所望するときにいつでも蛍光させられることなどの特徴により、種類の異なる複数の生体関連物質について同時に検出することができる。この蛍光を用いた測定装置の詳細については後述する。
このようにして、本発明では目的の生体関連物質を定性的に検出するだけでなく、同時に定量することが可能となる。
2.生体関連物質
本発明において「生体関連物質」とは、試料中に含まれる定量又は検出の対象となる物質であり、微生物(細菌)、ウイルス、寄生生物、細胞、核酸、多糖、タンパク質(ペプチド、ホルモン、レセプター、酵素)、抗原、抗体、毒素、病原体、低分子などのあらゆる生体物質を意味する。
微生物には真菌及び真正細菌及び古細菌が含まれる。真菌としては、例えば、サッカロマイセス属、アスペルギルス属、カンジダ属などが挙げられる。真正細菌としては、例えば、マイコバクテリウム属、エッシェリヒア属、バチルス属、リステリア属、ビブリオ属、サルモネラ属、シュードモナス属、スタフィロコッカス属、マイコプラズマ属、リケッチア属、クラミジア属などに属する微生物が挙げられる。古細菌としては、例えば、サーモプラズマ属、ハロバクテリウム属、メタノバクテリウム属などが挙げられる。具体的には、サッカロマイセス・セレビシエ種、アスペルギルス・ニデュランス種、カンジダ・アルビカンス種、マイコバクテリウム・ツベルクローシス種、マイコバクテリウム・アビウム種、マイコバクテリウム・イントラセルラー種、マイコバクテリウム・カンサシー種、エッシェリヒア・コリ種 、バチルス・セレウス種、バチルス・アンスラシス種、リステリア・モノサイトゲネス種、ビブリオ・パラヘモリティカス種、ビブリオ・コレラ種、サルモネラ・チフス種、シュードモナス・エレギノーサ種、スタフィロコッカス・アウレウス属、マイコプラズマ・ニューモニア種、リケッチア・プロワツェキイ種、クラミジア・トラコマチス種などを例示し得る。
ウイルスとしては、例えば、アデノウイルス科、バクテリオファージ科、レトロウイルス科などが挙げられる。具体的には、アデノウイルス、T7様ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ノロウイルス、ヒトロタウイルス、インフルエンザウイルスなどを例示し得る。
また、細胞は動物細胞、植物細胞、昆虫細胞のいずれも含まれる。
核酸としては、DNA、RNA、人工核酸などが挙げられる。
多糖としては、デンプン、グリコーゲン、キチン、カラギーナンなどが挙げられる。
タンパク質としては、抗原、抗体、酵素、色素タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、ホルモン、レセプター、アレルゲンなどが挙げられる。
低分子としては、ヌクレオチド三リン酸又はデオキシヌクレオチド三リン酸などのヌクレオチド、グルコース又はガラクトースなどの糖、グルタミン酸又はリジンなどのアミノ酸、フルオロセイン又はエチジウムブロマイドなどの色素、エピネフリン又はペプチドホルモン又はステロイドなどのホルモンが挙げられる。
但し、上記生体関連物質は例示であり、これらの物質に限定されるものではない。
既に述べたとおり、本発明の生体関連物質測定用チューブは、測定目的の生体関連物質と結合することができる物質が固定された第1のマイクロ粒子と、前記生体関連物質が所定量で固定された第2のマイクロ粒子と、ネガティブコントロール用の第3のマイクロ粒子とをチューブ内に備えており、これにより、目的の生体関連物質の測定と、この測定値の補正とを同時にかつ一貫して行うことができ、さらにより正確な定量を簡便に行うことを可能とするものである。このような本発明の生体関連物質測定用チューブに関する第3の態様として、遮光性を有するビーズをさらに設けた生体関連物質測定用チューブを図5に示す。
生体関連物質測定用チューブ13は、その内腔に、検体中に含まれる例えばタンパクなどの目的とする生体関連物質を検出し定量するための目的物質捕捉ビーズ(第1のマイクロ粒子)14、ネガティブコントロールビーズ(第3のマイクロ粒子)15、補正ビーズ(第2のマイクロ粒子)16、遮光ビーズ17の間に光を透過しない遮光ビーズ17を備える。目的物質捕捉ビーズ14、ネガティブコントロールビーズ15、補正ビーズ16のそれぞれの間に遮光性を有する遮光ビーズ17を備えることで自己発光するビーズの測定・定量を、隣設ビーズの発光に干渉されず、効率よくかつ正確に実行することができる。
次に、上記に説明した本発明の生体関連物質測定用チューブ13を備えた定量システム(化学発光強度補正型の測定用チューブを用いる定量システム)について説明する。本発明の定量システムは、上記の生体関連物質測定チューブ13のほか、このチューブ13内の各ビーズ(マイクロ粒子)から発するシグナルを検出する検出部と、予め作成された検量線を参照して前記検出されたシグナルのデータを補正する補正部と、この補正されたデータに基づき生体関連物質を定量する演算部とを有することを特徴とする。以下にその一つの形態について説明する。
本発明の生体関連物質測定用チューブは、検量線の作成と目的物質の定量とを同時に実行することができる。検量線の作成および目的生体関連物質の定量を同時に実行することで定量時の条件をさらに好ましいものとすることができる。以下に、検量線を作成するとともに目的の生体関連物質の定量を行う定量手法(ii)を用いて生体関連物質を定量する第2実施形態について説明する。
検量線を作成するために生体関連物質測定用チューブは、異なる量の生体関連物質が固定された複数のマイクロ粒子を備えており、これら異なる量の生体関連物質が予め固定された複数の第2のマイクロ粒子の発光強度データに基づき検量線が作成される。図10に示すように、生体関連物質測定用チューブ160は、タンパク等の目的物質と結合可能な目的物質捕捉ビーズ(第1のマイクロ粒子)163、異なる量の目的物質予めが固定された第1、第2標準ビーズ(第2のマイクロ粒子)165、167、ブランクビーズ(第3のマイクロ粒子)171を有し、これら目的物質捕捉ビーズ163、第1、第2標準ビーズ165、167、ブランクビーズ171は遮光ビーズ169を介して一列に配列されている。この第1、第2標準ビーズ165、167の発光強度および生体関連物質の固定量から検量線を作成することができる。作成された検量線を用いて、目的物質捕捉ビーズ163の発光強度に基づき目的の生体関連物質の量を算出することができる。なお、標準ビーズの個数は2つに限らず3つ以上でもよい。
上記の生体関連物質測定用チューブ160を備えた定量システムについて概略的に説明する。本発明の第2の定量システムは、生体関連物質測定用チューブと、このチューブ内のマイクロ粒子から発するシグナルを検出する検出部と、検出されたシグナルに基づき検量線を作成する検量線作成部と、作成された検量線を参照して生体関連物質を定量する演算部と、を有することを特徴とする。このような定量システムの機能ブロック図を図11に示す。なお、図6のブロック図と同じ構成部分については図6における説明と同様であり同じ符号を付して説明を省略する。
このようなマイクロ粒子を用いた定量システムとして、例えば、定量システム275(図14参照)に装着された測定用チューブ260に検体を導入した後、標識液を測定用チューブ260内に導入する。標識液が導入された測定用チューブ260内にさらに基質液が導入され、化学発光が引き起こされる。
精度管理部280は、ポジティブコントロール用の第2ビーズ263とネガティブコントロール用の第3ビーズ264との発光強度差を演算する。
また、ROM278には精度管理用の基準発光強度が記憶されており、精度管理部280は、発光強度演算部56で算出された第4ビーズ265の発光強度とROM278に記憶された基準発光強度とを比較し例えばその発光強度差を演算する。
補正定量演算部282は、読み出された補正プログラムに基づき、第1ビーズ262の発光強度を補正し、補正された発光強度値を検量線に照らし合わせて目的の生体関連物質を定量する。
また、本発明においては、システムの保守やメンテナンスにかかる手間を省くことができ、患者の近傍で検査を実行して迅速に診断するポイント・オブ・ケアの実行に十分に対応することができる。
上記では単項目の生体関連物質について定量する測定用チューブおよび定量システムを示したが、複数項目の生体関連物質を定量できるように測定用チューブおよび定量システムを構成してもよい。
以下に、第1~第3のマイクロ粒子からの化学発光に基づき多項目の生体関連物質を定量する測定用チューブおよび定量システムについて説明する。複数項目の生体関連物質について定量する1つの方法として、ここでは第1測定系と第2測定系との2つの測定系を用いる。それぞれ独立した第1、第2の2つの測定系を用いて複数項目の生体関連物質について定量する場合、第1、第2測定系を関連付けるための基準となる手段が必要となる。この基準としては、例えば、第1、第2測定系で共通して使用されるマイクロ粒子をあげることができる。この基準として用いられるマイクロ粒子としては、例えば、既知濃度の物質が結合した基準マイクロ粒子を使用することができ、この基準マイクロ粒子を測定用チューブに備えることにより、第1、第2測定系の両系で測定された発光強度を関連付けることができる。
基準マイクロ粒子を備えた測定用チューブの一例を図15に示す。図15(a)に示すように、第1測定系に用いられる測定用チューブは、ビーズ番号1、3、5、7に代表される基準ビーズ(基準マイクロ粒子)と、目的の生体関連物質を測定するための複数の第1ビーズ(第1のマイクロ粒子;ビーズ番号11、13、15、17)とを備える。基準マイクロ粒子としては、例えば、例えばビオチン化タンパクタンパク質コートビーズがあげられ、基準マイクロ粒子には、例えば、段階的に濃度の異なる既知の物質を予め結合させる。複数項目の生体関連物質を捕捉するための第1ビーズとしては、例えば抗アレルゲン抗体コートビーズが挙げられる。第1ビーズは図中に4個示し、これにより4項目の生体関連物質について定量可能としている。但し、第1ビーズの個数は4つに限らず4つ未満でも5つ以上でもよい。
第2ビーズには、例えば、既知濃度の目的生体関連物質を結合させ、これにより第2ビーズは第1ビーズで捕捉された目的の生体関連物質に関するポジティブコントロールとして機能する。ビーズ番号9は第3のマイクロ粒子であるブランクビーズとすることができ、図中の偶数番号のビーズは遮光性を備えたマイクロ粒子を示す。
発光強度に基づき各生体関連物質を定量する場合は、単項目の生体関連物質の定量時と同様に、例えば、メモリから読み出されたそれぞれの生体関連物質に対応する検量線に照らし合わせて各生体関連物質について定量する。
以上のように複数の測定系を用いて複数項目の生体関連物質について定量してもよい。
本発明においては、目的の生体関連物質を第1のマイクロ粒子であるサンプル捕獲ビーズで捕獲し、発光試薬を含有した基質液にサンプル捕獲ビーズを浸してサンプル捕獲ビーズに付与された標識を発光させ、この発光の強度を測定して目的生体関連物質の定量を行うことができるが、この化学発光を利用する定量システムのほかに、本発明においては各マイクロ粒子からの蛍光を検出して目的の生体関連物質を定量することもできる。
以下に、蛍光を利用して目的の生体関連物質を定量する本発明の形態について説明する。
目的の生体関連物質と結合可能な第1のマイクロ粒子、
所定量の目的の生体関連物質が結合した第2のマイクロ粒子、
および、ネガティブコントロールとして機能する第3のマイクロ粒子、
に蛍光標識を付与する標識化手段と、
蛍光標識が付与された第1~第3のマイクロ粒子に励起光を照射して蛍光強度を検出する蛍光強度検出手段と、
蛍光強度検出手段によって検出された蛍光強度を、蛍光強度に対して生体関連物質量を割り出すための検量線に照らし合わせて目的の生体関連物質を定量する演算手段と、
を備えた定量システムがあげられる。
従って、蛍光強度に基づき生体関連物質量を割り出すための検量線は、第1のマイクロ粒子に結合した生体関連物質の定量前に予め作成してメモリなどの記憶素子に記憶しておいてもよいし、第1のマイクロ粒子に結合した生体関連物質の測定時に、生体関連物質の結合量が異なる複数の第2のマイクロ粒子の蛍光強度を測定して作成して用いてもよい。
第1のマイクロ粒子に結合した生体関連物質の定量前に検量線を予め作成して記憶素子に記憶する場合には、第2、第3のマイクロ粒子の蛍光強度値に基づき第1のマイクロ粒子の蛍光強度を較正することが好ましく、また、第1のマイクロ粒子に結合した生体関連物質の測定時に生体関連物質の結合量が異なる複数の第2のマイクロ粒子の蛍光強度を用いて検量線を作成する場合には、第3のマイクロ粒子の蛍光強度値も参照した上で検量線を作成することが好ましい。
ネガティブコントロールとして機能する第3のマイクロ粒子としては、例えば目的の生体関連物質が結合していないマイクロ粒子(ブランク粒子)が挙げられる。このような粒子を用いることで目的の生体関連物質の測定時のバックグランドノイズなどを検知して測定強度の補正、予め作成された検量線の較正、あるいは検量線を作成することが可能となる。
本システムでは、測定用チューブ内で一列に配列された第1~第3のマイクロ粒子に励起光が照射されて蛍光強度が検出される。測定用チューブは、単数あるいは複数を同時に使用してもよい。また、本定量システムは測定用チューブを装着するためのノズルを備えており、複数の検体について生体関連物質を定量する場合には、検体ごとに測定用チューブを付け替えて実行することが好ましい。
図16、17に示すように、定量システム200は、透明な筒状に形成された測定用チューブ202、第1~第3のマイクロ粒子204a~204c、測定用チューブ202内の第1~第3のマイクロ粒子204a~204cに励起光を照射して目的の生体関連物質を検出する検出装置206、検出装置206からの検出信号に基づき生体関連物質の定量を行う後述する演算部などを備える。
第1~第3のマイクロ粒子204a~204cの形状およびサイズは、例えば直径0.05mm~10.0mmの球状であり、好ましくは0.1mm~5.0mmの直径を有する球状に形成するとよい。また、各マイクロ粒子は、直径0.01μm~300μmの球状、好ましくは0.1μm~50μmの直径を有する球状に形成してもよい。
マイクロ粒子の着色態様としては、例えば、第1~第3のマイクロ粒子204a~204cに、階調が異なるカラー系(例えば、段階的に彩度の異なる赤色系)の蛍光着色料を混合あるいは表面結合させる、または、階調の異なる第1カラー系とこの第1カラー系とは別系統の階調の異なる第2カラー系とを混ぜて形成される混合カラー系の蛍光着色料を混合あるいは表面結合させることもできる。
第1~第3のマイクロ粒子の合計が数十個など多数になる場合は、上記に示した混合カラー系を用いてそれぞれのマイクロ粒子で明度、色相、彩度を相違させることにより各マイクロ粒子を識別することができる。また、第1~第3のマイクロ粒子204a~204cのサイズは同径でも異径でもよいが、第1~第3のマイクロ粒子を、蛍光時の明度、色相、彩度についてだけでなくその粒子サイズについても相違させ、各マイクロ粒子の粒子サイズを判別することで各マイクロ粒子のより確実な識別が可能となる。
例えば上記のように目的の生体関連物質として抗原を定めた場合では、目的の生体関連物質である抗原が第1のマイクロ粒子に結合した後、この抗原と特異的に結合可能であってかつ蛍光色素が付された抗体(二次抗体)を抗原に結合させる。
識別部253は、前方散乱光検出部232からの検知信号に基づき第1~第3のマイクロ粒子204a~204cを識別する。
RAM250に予め記憶された検量線を用いて生体関連物質を定量する場合は、第2、第3のマイクロ粒子204b、204cの蛍光強度を基にして第1のマイクロ粒子の蛍光強度を較正する。
また、検量線を作成して生体関連物質を定量する場合は、予め結合された生体関連物質の量が段階的に異なる複数の第2のマイクロ粒子204bの蛍光強度を用い、この第2、第3のマイクロ粒子204b、204cの蛍光強度を基にして目的の生体関連物質の定量時に検量線を作成する。
検量線の形成後、定量演算部247は蛍光強度演算部245で算出された第1のマイクロ粒子204aの蛍光強度を検量線に照らし合わせて目的の生体関連物質の濃度を定量する。
なお、マイクロ粒子204a~204cの蛍光スペクトルと二次抗体の蛍光色素の蛍光スペクトルとが重複して抗原の定量に影響することを防ぐため、定量演算部247はコンペンセーション(蛍光補正)してそれぞれの蛍光スペクトルの相互作用分を修正して抗原量を算出する。
分注ノズル220に装着された測定用チューブ202の先端が検体を収容した容器に浸漬され、測定用チューブ202内に検体が吸い込まれる。第1のマイクロ粒子204aとしては、例えば、表面に第1抗原と結合可能な一次抗体が固定されたもの、第2抗原と結合可能な一次抗体が固定されたもの、などが測定用チューブ202内に設けられている。
第1~第3のマイクロ粒子204a~204cからの前方散乱光を受けた前方散乱光検出器232から検出信号が識別部に送出され、識別部253は前方散乱光検出器232からの検出信号を基に各マイクロ粒子204a~cを識別する。
予め作成された検量線がRAM250に記憶されている場合は、第2、第3のマイクロ粒子204b、204cの蛍光強度を基にして第1のマイクロ粒子204aの蛍光強度を較正して生体関連物質を定量する。
また、目的の生体関連物質の定量時に、予め結合された生体関連物質の量が段階的に異なる複数の第2のマイクロ粒子204bの蛍光強度を用いて検量線を作成する場合では、第2、第3のマイクロ粒子204b、204cの蛍光強度を基にして検量線を作成し、第1のマイクロ粒子204aの蛍光強度を作成された検量線に照らし合せて目的の生体関連物質の定量を行う。
また、同様の機能を有するフローサイトメトリ(サイトメトリックビーズアッセイ)と比較して、個々の粒子を移動させる一定で乱れのないラミナーフローを形成する必要がないため装置構成の簡略化が期待できる。
また、検量線の補正または作成と、複数項目の生体関連物質の定量とを同時に一括して実行することができるため、実験精度の向上とともに利便性を高めることができる。
このような測定用チューブとしては、例えば、粒径数μm~数十μmのマイクロ粒子の使用に対応して1つのマイクロ粒子が流通可能な孔径数μm~数十μmの細長い内腔を有するものがあげられる。測定用チューブを形成する材料としては、例えば、石英ガラスなどのガラス材料、プラスチックなどの高分子材料があげられる。
ノズルに装着された測定用チューブの先端から第1~第3のマイクロ粒子を測定用チューブの内腔に吸い上げ内腔内で一列に配列保持し、この配列された第1~第3のマイクロ粒子に励起光を照射して蛍光測定する。
このような態様によっても測定システムは第1~第3のマイクロ粒子を予め保持した測定用チューブを用いて第1~第3のマイクロ粒子を用いた場合と同等の機能を達成することができ、目的の生体関連物質の定量を実行することができる。
なお、上記では第1~第3のマイクロ粒子を測定用チューブの内腔内に保持して励起光を照射したが、蛍光強度データのばらつき低減のために第1~第3のマイクロ粒子を吸い上げながらあるいは一旦吸い上げた第1~第3のマイクロ粒子を吐き出しながら各マイクロ粒子に励起光を照射してもよい。このような態様で各マイクロ粒子の蛍光強度を測定することにより、蛍光強度データのばらつきの低減が期待できる。
[実施例1]
(a) 測定目的の生体関連物質と結合することができる物質が固定された第1のマイクロ粒子と、前記生体関連物質が所定量で固定された第2のマイクロ粒子と、ネガティブコントロール用の第3のマイクロ粒子が内腔に導入された光透過性を有する測定用チューブに、検体を導入する工程、
(b) 検体が導入された測定用チューブ内に標識液を導入して各マイクロ粒子に標識を付与する工程、
(c) 標識を発光させる基質液を測定用チューブ内に導入して第1~第3のマイクロ粒子を発光させる工程、および
(d) 第1~第3のマイクロ粒子の発光強度を基にして生体関連物質を定量する工程。
生体関連物質として卵白リゾチーム(HEL)を定量する場合、測定対象抗原に対する抗体として例えば、抗卵白リゾチームモノクローナル抗体1(以降、HELmAB1という)を用い、酵素標識として例えば、抗卵白リゾチームモノクローナル抗体2(抗HELmAB2)を用いた。
上記に例示した定量システム30を用いて卵白リゾチームを定量するために、測定用チューブ13の内腔に保持される第1~第3のマイクロ粒子14~16(図5参照)を調製した。
第1~第3のマイクロ粒子14~16の調製を以下のとおり行った。なお、以下に示す説明は一例であり、本発明を以下の内容に限定するものではない。
(1) ビーズ洗浄
定量に必要な粗研磨窒化ビーズを1.5ml容量の試験管に移しアセトンで洗浄した後、1mlの0.05%アジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液で3回洗浄した。
(2) ビーズの固定化
卵白リゾチーム測定用ビーズ(第1のマイクロ粒子):原料ビーズを収容した試験管に0.05%アジ化ナトリウム含有緩衝液で10μg/mlに希釈した1mlの抗HEL C1mAB 溶液を加えて4℃で一晩静置した(固定化)。また、必要に応じてビーズおよびアジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液を収容した試験管をボルテックスミキサーで撹拌した。
内部標準用ビーズ1(発光強度補正用の第2のマイクロ粒子):原料ビーズを収容した試験管に0.05%アジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液で0.6ng/mlに調製した精製HELタンパク質(抗原)溶液を加えて4℃で一晩静置した(固定化)。また、必要に応じてビーズおよびアジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液を収容した試験管をボルテックスミキサーで撹拌した。
内部標準用ビーズ2(発光強度補正用の第2のマイクロ粒子):原料ビーズを収容した試験管に0.05%アジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液で10.0ng/mlに調製した精製HELタンパク質(抗原)溶液を加えて4℃で一晩静置した(固定化)。また、必要に応じてビーズおよびアジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液を収容した試験管をボルテックスミキサーで撹拌した。
検体ブランク用ビーズ(ネガティブコントロール用の第3のマイクロ粒子):原料ビーズを収容した試験管に0.05%アジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液1mlを加えて4℃で一晩静置した(固定化)。また、必要に応じてビーズおよびアジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液を収容した試験管をボルテックスミキサーで撹拌した。
(3) 固定化した3種類のビーズは、0.05%アジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液で複数回洗浄後、1%BSA(ウシ血清アルブミン)含有リン酸緩衝液200μlで室温に静置してブロッキングした。
上記の3種類のビーズは、洗浄液(0.05%Tween20含有緩衝液)で2回洗浄後、内部標準用ビーズ、遮光ビーズ、卵白リゾチーム測定用ビーズ、遮光ビーズ、検体ブランク用ビーズ、遮光ビーズ、の順に測定用チューブに挿入しチューブ内腔に固定した。
なお、上記では第2のマイクロ粒子は2種用意したが、1種でも3種以上でもよい。
上記の定量システム175に基づき、以下の手順を実行した。
(a) 測定目的の生体関連物質と結合することができる物質が固定された第1のマイクロ粒子と、前記生体関連物質が異なる量で固定された複数の第2のマイクロ粒子と、ネガティブコントロール用の第3のマイクロ粒子が内腔に導入された光透過性を有する測定用チューブに、検体を導入する工程、
(b) 検体が導入された測定用チューブ内に標識液を導入して各マイクロ粒子に標識を付与する工程、
(c) 標識を発光させる基質液を測定用チューブ内に導入して第1~第3のマイクロ粒子を発光させる工程、および
(d) 第1~第3のマイクロ粒子の発光強度を基にして生体関連物質を定量する工程。
なお、チューブ内への第1~第3のマイクロ粒子の配列態様は、例えば第1~第3のマイクロ粒子を1つのチューブ内に配列してもよいし、複数のチューブに分けて配列してもよい。定量精度を高めるため、第1~第3のマイクロ粒子の発光測定は同時かあるいは連続的に行うことが望ましい。
測定対象抗原として、卵白リゾチーム(以降、HELという)を定量する場合、測定対象抗原に対する抗体に抗卵白リゾチームモノクローナル抗体1(以降、HELmAB1という)を用い、酵素標識として抗HELmAB2を用いた。なお、ここで示す詳しい説明はあくまでも一例であり本発明の内容を限定するものではない。
(1) 例えば、粗研磨窒化ビーズ50個を1.5ml容量の試験管に収容し、アセトンで洗浄した後、1mlの0.05%アジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液で3回洗浄した。
(2) 次に、0.05%アジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液で20ng/mlから倍々希釈して調製した濃度の異なる複数の精製HELタンパク質(抗原)溶液を各100μlずつ小型試験管に分注し、各濃度のアジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液を収容した試験管にアセトン洗浄済みの粗研磨窒化ビーズを適量混合し、4℃を維持しつつ一晩静置した(固定化)。また、必要に応じてビーズおよびアジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液を収容した試験管をボルテックスミキサーで撹拌した。
(3) 一晩静置後、0.05%アジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液で洗浄し、さらに1%BSA(ウシ血清アルブミン)含有リン酸緩衝液200μlでブロッキングした。
(4) 洗浄液(0.05%Tween20含有リン酸緩衝液)で2回洗浄した後、ビーズを測定用チューブに導入した。なお、各ビーズ間には遮光性を有するビーズを介挿した。
(1) ビーズ洗浄
定量に必要な粗研磨窒化ビーズを1.5ml容量の試験管に移しアセトンで洗浄した後、1mlの0.05%アジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液で複数回洗浄した。
(2) ビーズ固定化
卵白リゾチーム測定用ビーズ(第1のマイクロ粒子):原料ビーズを入れた試験管に0.05%アジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液で2.5ng/mlに調製した精製HELタンパク質(抗原)溶液を加えて4℃を維持しつつ一晩静置した(固定化)。また、必要に応じてビーズおよびアジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液を収容した試験管をボルテックスミキサーで撹拌した。
ポジティブコントロール用ビーズ(第2のマイクロ粒子):原料ビーズを収容した試験管に0.05%アジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液で2.5ng/mlに調製した精製HELタンパク質(抗原)溶液を加えて4℃で一晩静置した(固定化)。また、必要に応じてビーズおよびアジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液を収容した試験管をボルテックスミキサーで撹拌した。
ネガティブコントロール用ブランクビーズ(第3のマイクロ粒子):原料ビーズを収容した試験管に0.05%アジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液1mlを加えて4℃で一晩静置した(固定化)。また、必要に応じてビーズおよびアジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液を収容した試験管をボルテックスミキサーで撹拌した。
(3) 各ビーズは、0.05%アジ化ナトリウム含有リン酸緩衝液で2回洗浄後、1%BSA(ウシ血清アルブミン)含有リン酸緩衝液200μlで、室温に静置してブロッキングした。
次に、第1~第3のマイクロ粒子からの化学発光に基づき多項目の生体関連物質を定量する測定用チューブおよび定量システムの実施例について説明する。
複数項目の生体関連物質について定量する1つの方法として、ここでは第1測定系と第2測定系との2つの測定系を用い、目的の生体関連物質として抗原を選択した。
[概要]
図15(a)に示すように、第1測定系に用いられる測定用チューブは、ビーズ番号1、3、5、7に代表される基準ビーズ(基準マイクロ粒子)と、未知の生体関連物質を測定するための複数の第1ビーズ(ビーズ番号11、13、15、17)とを備える。
さらに、図15(b)に示すように、第2測定系に用いられる測定用チューブは、ビーズ番号1、3、5、7に代表される基準ビーズ(基準マイクロ粒子)と、第1測定系で定量項目とされた4つの生体関連物質に関するポジティブコントロール用の第2ビーズ(ビーズ番号11、13、15、17)とを備える。
1.第1ビーズ(第1のマイクロ粒子)の作製
目的の生体関連物質が例えば複数の抗原である場合には、それぞれの抗原と特異的に反応する複数の抗体をそれぞれ別個に窒化珪素ビーズに固定した。
(1)ビーズの洗浄
例えば、第2ビーズのベースとなる窒化珪素ビーズ(例えばツバキ・ナカシマ製)を洗浄した。この洗浄は、例えばPBS中で10分間超音波洗浄して実行した。
(2)ビーズの固定
洗浄された窒化珪素ビーズにタンパク質を固定した。タンパク質としては、例えばハプテンである4-hydroxy-3-nitrophenylacetyl(以降、NPという)にHuman Serum Albumin(以降、HSAという)を結合させたものを用いた。このNP-HSAを窒化珪素ビーズに固定した。
NP-HSA溶液は段階的に異なる複数の濃度で調製してもよく、例えば、10、5、2.5、1.2、0.6、0.3、0.1μg/mlの7つを用いた。
なお、ネガティブコントロール用の第3ビーズ(第3のマイクロ粒子)としては、目的の生体関連物質が反応しないものであればよく、例えば目的の生体関連物質が結合不能に処理されたブランクビーズを用いた。
第1~第3ビーズを、遮光用炭化珪素ビーズを介して配列した。
例えば、測定用チューブの内腔に、NP-HSA濃度10μg/ml溶液に浸漬して調製された第2ビーズ、同様に5μg/ml溶液に浸漬して調製された第2ビーズ、同様に2.5μg/ml溶液に浸漬して調製された第2ビーズ、同様に1.2μg/ml溶液に浸漬して調製された第2ビーズ、同様に0.6μg/ml溶液に浸漬して調製された第2ビーズ、同様に0.3μg/ml溶液に浸漬して調製された第2ビーズ、同様に0.1μg/ml溶液に浸漬して調製された第2ビーズ、ブランクビーズ、及び第1ビーズの順に配列し、各ビーズ間には遮光ビーズを介挿し固定した。
複数項目の生体関連物質の定量と同時に各生体関連物質を定量するための検量線を作成して定量システムのメモリに記憶した。
各ビーズを備えた測定用チューブを定量システムのノズルにセットした後、以下のように測定チューブ内への検体、標識抗体、基質液の導入を行った。まず濃度未知検体の反応を行い、次いで標識液(Biotin標識抗NP抗体及びBiotin標識抗検体抗体の混合液)との反応、最後に基質液を測定用チューブ内に吸い込み発光させた。各ビーズからの化学発光は光ファイバなどの伝達光学系を介して検出器に検出され、検出器からの出力信号に基づいて発光強度を算出した。
第1の測定終了後、既知量の上記複数の抗原が固定された複数の第2ビーズが導入された測定用チューブを定量システムにセットして各ビーズの発光強度を測定した。
このとき、上記の第1測定系で使用された測定用チューブに所定の処理を施して使用した。第1測定系で使用した測定用チューブを再び使用するため、測定用チューブに酸性溶液を吸引し、各ビーズを酸性溶液に接触させて第1の測定時にビーズ上に捕獲された抗原、標識抗体などを除去した。測定用チューブ再生後、各生体関連物質を定量するためのビーズに濃度既知の生体関連物質(精製抗原コントロール)を捕獲させることで、そのビーズが正常に定量的に機能していることを確認するための第2の測定を実施した。一度検体中の生体関連物質の測定に使用した複数の窒化珪素ビーズを再生し、濃度既知の抗原と反応させることで、ポジティブコントロールとして機能させた。このように、第1測定系で使用した測定用チューブに所定の処理を施して第2測定系で再使用した。
第1、第2測定系で検出された各生体関連物質の発光強度を、メモリから読み出されたそれぞれ物質に対応する検量線に照らし合わせ各生体関連物質について定量した。以上のように複数項目の生体関連物質について定量を行った。
[概要]
窒化珪素ビーズに4-hydroxy-3-nitrophenylacety(NP)-Human Serum Albumin(HSA)の濃度を変えて固定し補正ビーズとして使用した。目的物質捕捉ビーズは、抗オボアルブミン(OVA)抗体を固定化したものを使用し、抗原としてOVAを検出できるものとした。
[実験で使用した主な材料]
窒化珪素ビーズ(ツバキ・ナカシマ製):補正ビーズおよびOVA検出用ビーズに使用
炭化珪素ビーズ(ツバキ・ナカシマ製):遮光ビーズとして使用
NP-HSA
OVA
Biotin標識抗NP抗体
Biotin標識抗OVA抗体(検出用)、抗OVA抗体(ビーズ固定用)
Avidin-HRP
Lumi-Light (Roche社製 発光基質)
[第2ビーズの作製]
(1) 窒化珪素ビーズの洗浄:PBS(バッファー)中で10分間超音波洗浄した。
(2) タンパク質(NP-HSA)の固定:NP6-HSAを10、5、2.5、1.2、0.6、0.3、0.1μg/mlの濃度で200μlずつ準備した。
(3) チューブにNP-HSAを200μl入れ、洗浄済みビーズを10個ずつ加え、一晩振とうして固定した。
(4) PBSで2回洗浄後、1%BSA入りPBSで2時間振とうしながらブロッキングした。
[OVA捕捉用の第1ビーズの作製]
(1) 1.64mg/mlの濃度で準備した抗OVA抗体液200μlに、洗浄済みビーズを10個加え、一晩振とうして固定した。
(2) PBSで2回洗浄後、1%BSA入りPBSで1時間振とうしながらブロッキングした。
バッファー除去後、OVA1μg/ml溶液200μlを加え、反応させた。
[測定用チューブへの充填]
第1のマイクロ粒子であるOVA捕捉用第1ビーズと、7つの第2ビーズとを、遮光用炭化珪素ビーズを介して配列した。
図18に示すように、測定用チューブ180の内腔に、NP-HSA濃度10μg/ml溶液に浸漬して調製された第2ビーズ181、同様に5μg/ml溶液に浸漬して調製された第2ビーズ182、同様に2.5μg/ml溶液に浸漬して調製された第2ビーズ183、同様に1.2μg/ml溶液に浸漬して調製された第2ビーズ184、同様に0.6μg/ml溶液に浸漬して調製された第2ビーズ185、同様に0.3μg/ml溶液に浸漬して調製された第2ビーズ186、同様に0.1μg/ml溶液に浸漬して調製された第2ビーズ187、OVA捕捉用第1ビーズ190、ブランクビーズ195の順に、各粒子間に2個の遮光ビーズ192を介して装填した。
[自動化装置を用いた反応]
Biotin標識抗NP抗体(5μg/ml)、Biotin標識抗OVA抗体(0.5μg/ml)を100μlずつ用意し、試薬カートリッジに入れて、GEヘルスケア社製のクロマトグラフ装置(Purelumn(登録商標))にセットして、チューブの洗浄工程、ビオチン化抗体、StreptAvidin-HRPの反応工程を自動で行った。
[専用検出器による測定]
自動反応後のチューブに発光基質(Lumi-Light)を吸引し専用の検出器(プレシジョン・システム・サイエンス社製 BISTnner(登録商標))で測定した。
[測定結果]
図19に示すように、左からNP-HSAの濃度10μg/ml、5μg/ml、2.5μg/ml、1.2μg/ml、0.6μg/ml、0.3μg/ml、0.1μg/mlを有するNP-HSA固定ビーズの発光シグナル、および第1ビーズの発光シグナルを得た。
予め取得しておいたOVA定量用のグラフ(図20参照)に基づき、OVA捕捉用の第1ビーズの蛍光強度が、OVA濃度が1μg/mlの発光シグナルに相当すると判断できる。
3 第1のマイクロ粒子
4 第2のマイクロ粒子
5 第3のマイクロ粒子
10 チューブチップ本体
12 マウント部
13 生体関連物質測定チューブ
14 目的物質捕捉ビーズ(第1のマイクロ粒子)
15 ネガティブコントロールビーズ(第3のマイクロ粒子)
16 補正ビーズ(第2のマイクロ粒子)
17 遮光ビーズ
30 定量システム
32 中央制御部
34 チップ位置制御部
36 受光部
46 RAM
48 ROM
54 信号処理回路
56 発光強度演算部
58 補正定量演算部
160 生体関連物質測定チューブ
163 目的物質捕捉ビーズ
165 第1標準ビーズ
167 第2標準ビーズ
175 定量システム
178 検量線作成部
179 定量演算部
200 定量システム
202 生体関連物質測定用チューブ
204 マイクロ粒子
206 検出装置
220 分注ノズル
228 中央演算部
230 レーザ光原
234 蛍光検出器
235 分光機構
240 ダイクロイックミラー
247 定量演算部
Claims (9)
- 生体関連物質測定用チューブであって、
測定目的の生体関連物質と結合することができる物質が固定された第1のマイクロ粒子と、
前記生体関連物質が所定量で固定された第2のマイクロ粒子と、
ネガティブコントロール用の第3のマイクロ粒子と、
をチューブ内に配列したことを特徴とする前記チューブ。 - 前記第2のマイクロ粒子が生体関連物質の測定データの補正用マイクロ粒子である請求項1に記載のチューブ。
- 前記第2のマイクロ粒子が、異なる量の生体関連物質が固定された複数のマイクロ粒子である請求項1に記載のチューブ。
- 前記複数のマイクロ粒子が検量線の作成用マイクロ粒子である請求項3に記載のチューブ。
- 前記第1~第3のマイクロ粒子間に、さらに遮光性を有する部材を備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のチューブ。
- 生体関連物質の定量システムであって、
請求項1~5のいずれか1項に記載のチューブと、
前記チューブ内のマイクロ粒子から発するシグナルを検出する検出部と、
予め作成された検量線を参照して前記検出されたシグナルのデータを補正する補正部と、
前記補正されたデータに基づき生体関連物質を定量する演算部と、
を有することを特徴とする前記システム。 - 生体関連物質の定量システムであって、
請求項1~5のいずれか1項に記載のチューブと、
前記チューブ内のマイクロ粒子から発するシグナルを検出する検出部と、
前記検出されたシグナルに基づき検量線を作成する検量線作成部と、
前記作成された検量線を参照して生体関連物質を定量する演算部と、
を有することを特徴とする前記システム。 - 請求項1~5のいずれか1項に記載のチューブに検体を接触させ、検体中の目的生体関連物質を測定することを特徴とする生体関連物質の測定方法。
- 測定は、目的生体関連物質の定性的検出及び定量を同時に行なうものである請求項8に記載の方法。
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