WO2010103743A1

WO2010103743A1 - 歯科用切削チップ

Info

Publication number: WO2010103743A1
Application number: PCT/JP2010/001392
Authority: WO
Inventors: 田沼正弘
Original assignee: Tanuma Masahiro
Priority date: 2009-03-11
Filing date: 2010-03-02
Publication date: 2010-09-16
Also published as: JP4341042B1; JP2010207431A

Abstract

う蝕象牙質を短時間に除去し、健全歯質と歯髄を可及的に保存して歯の寿命を高め、ＭＩ(ミニマルインターベンション)の考え方に基づいた治療ができる歯科用切削チップを提供する。歯科用切削チップ（１）は、複数のブレード（１１０）が配列されることによって曲面を有する外形輪郭が形成される刃部（１００）と、刃部（１００）に連結される軸部（２００）とを備え、複数のブレード（１１０）は、方向が異なり交差して配列される縦ブレード（１１１）及び横ブレード（１１２）を含んで構成される。ブレード（１１０）の先端部には、複数のブレード先端凹部（１４０）が形成されている。さまざまな方向に動かして切削できる。

Description

歯科用切削チップ

　本発明は、歯科治療に使用する歯科用切削チップに関する。

　う蝕(むし歯)の象牙質における病変である、う蝕象牙質は、感染象牙質または軟化象牙質とも呼ばれており、う蝕象牙質を除去するために、従来からさまざまな工夫がなされてきた。

　従来において、う蝕象牙質を除去する器具として、エキスカベーターが知られている。エキスカベーターは、把持部の両端に、把持部と一体成形された一枚の扁平な刃を有する手用切削器具であり、軟化度の高いう蝕象牙質に対しては、う蝕象牙質の中に刃を深く入れて、う蝕象牙質を引き剥がすように除去し、軟化度の低いう蝕象牙質に対しては、刃の先端部で、かき取るように除去する。また、エキスカベーターには、複雑な形態を有するう蝕に対応するため、さまざまな形状の刃が付与された、多くの種類があり、過去から現在に至る長い間、基本的な構造の変更なしに、世界中で一般的に使われているものである。

　また、従来において、う蝕象牙質を除去する方法として、回転装置である歯科用エアタービンハンドピースおよび歯科用マイクロエンジンハンドピースに切削用バーを装着して、切削用バーの先端に形成された刃部を回転させることで、う蝕象牙質を切削する方法が知られている。

　特許文献１に開示されている歯科用チップは、歯科用超音波スケーラーなどの振動装置のハンドピースに装着して、該歯科用チップの先端部に形成されたエッジ(刃)により、歯牙、歯槽骨等を切削するために用いる。また、歯科用超音波スケーラーなどの振動装置のハンドピースに装着して、歯牙を切削するために用いる治療用チップとしては、他に、初期う蝕除去用チップＶ－Ｇ７０（株式会社ナカニシ）があり、ダイアモンドコーティングされた該治療用チップ先端部で、う蝕を除去する。

特開２００６－３０５２２７号公報

　う蝕は、最初、歯の表面にあるエナメル質に小さな穴を形成して歯の内部に進行し、象牙質に至ると周囲に拡大して進行する。さらに、歯の内部にある歯髄まで進行すると、歯髄の炎症を起こして強い疼痛が生じる。そのため、歯髄の除去治療が必要となり、歯の命を低下させてしまう。それを防ぐためには、う蝕象牙質を確実に除去して、歯髄への進行を防がなくてはならないが、う蝕が象牙質において周囲に拡大して進行する性質を有しているため、アンダーカット部を有する穴が生じやすい。しかし、アンダーカット部のう蝕象牙質を確実に除去するには、かなりの労力と時間が必要となる場合や、このアンダーカット部の上部にある、健全なエナメル質を、削除する必要が生じてしまうことが多い。

　う蝕象牙質を除去する目的で使用されている、エキスカベーターは、一枚の扁平な刃が限定された方向に、しかも切削可能な刃面が片側面にしか付与されておらず、切削可能な方向が、かなり限定されてしまう。そのため、複雑な形態を有するう蝕の穴や、深いアンダーカット部のう蝕象牙質を除去することは困難であり、異なった形態の刃を有する、複数のエキスカベーターを使用することが必要となることが多く、また、確実にう蝕象牙質を除去するためには、かなりの時間と労力を必要とする場合が多い。

　また、歯科用マイクロエンジンハンドピースに切削用バーを装着して、う蝕象牙質を切削する方法は、歯科用マイクロエンジンハンドピースの切削用バーの装着部である、ヘッド部の形状が大きいため、智歯（親知らず）等の口腔内の狭い部位には不向きである。また、歯科用マイクロエンジンハンドピースの有する重さのため、口腔内での細かい切削コントロールがしづらい。

　また、従来、う蝕象牙質の切削効率を高めるために、麻酔注射後に、歯科用エアタービンハンドピースに切削用バーを装着して、う蝕象牙質を切削する高速回転切削法が行なわれていた。しかし、この高速回転切削法は、細かい切削コントロールが難しく、また、麻酔注射により、切削時における患者さんの疼痛が生じないため、う蝕象牙質のみならず、健全象牙質も切削除去してしまいやすい。また、麻酔注射下の切削は、切削刺激に対する生体の正常な防御反応を妨げるため、歯の内部にある歯髄の炎症が生じやすい。

　また、歯科用エアタービンハンドピースおよび、歯科用マイクロエンジンハンドピースに、切削用バーを装着し、切削用バーの刃部を回転させて、う蝕象牙質を切削する方法は、切削時に振動や発熱が生ずるため、患者さんに、疼痛や恐怖感を与えやすい。また、このような回転装置に装着して用いる切削用バーの軸部は、回転によるブレが生じるため、使用できる軸部は、ストレート形状のみである。そのため、う蝕の穴の深いアンダーカット部にある、う蝕象牙質を切削することが出来ない。

　特開２００６－３０５２２７号に開示されている歯科用チップは、う蝕象牙質を、効率的に切削するための形態を有していない。また、初期う蝕除去用チップＶ－Ｇ７０（株式会社ナカニシ）は、該チップ先端部表面に付与された微細なダイヤモンド粒子で歯牙を削って除去するものである。しかし、該チップは、硬い歯質を削ることには向いているが、う蝕によって軟らかくなった象牙質に用いた場合、チップ表面の微細なダイヤモンド粒子が、軟化したう蝕象牙質に深く入り込んで引き剥がすことが出来ないため、この目的での使用には適していない。

　本発明の目的は、上記の従来の問題点を解決して、出来るだけ、患者さんに痛みを与えずに、う蝕象牙質を短時間に確実に除去し、健全歯質と歯髄を可及的に保存して歯の寿命を高めることにある。

　本発明は、上記の目的を達成するために、把持部を有する手用切削器具及び、振動装置によって振動される治療用チップとして、う蝕象牙質を除去するために使用する歯科用切削チップであって、歯科用切削チップは、複数のブレードが配列することによって曲面を有する外形輪郭が形成される刃部と刃部に連結される軸部より構成され、ブレードには、方向が異なり交差して配列するブレードを有し、また、ブレードの先端部に複数のブレード先端凹部及び複数の補助ブレードが形成されていることを特徴とする。

　本発明の歯科用切削チップは、一例としては、把持部を有する手用切削器具として該把持部の両端に取り付けて用いる。また、歯科用超音波スケーラーや歯科用エアスケーラー等の振動装置のハンドピースの治療用チップとして用いることが出来る。

　本発明の歯科用切削チップは、軸部と刃部から成り、刃部には、複数のブレードが形成され、ブレードには、方向が異なり交差して配列するブレードを有する。

　ブレードは、エキスカベーターの刃部に相当するもので、特に、軟化度の高いう蝕象牙質に用いると効果的で、ブレードを、軟化したう蝕象牙質の中に深く入れて、引き剥がすことが出来るためのブレードの高さを有している。また、ブレードには、ブレードの両面を使用して、切削が出来るように切削面が形成されている。また、ブレードの先端部には、複数の凹部が形成されており、凹部が形成されていない部分が、ブレードの切削を補助する機能を有する補助ブレードとなっていて、該補助ブレードにより、ブレードが軟化したう蝕象牙質に入りやすくなる。

　例えば、説明上、方向が異なり交差して配列するブレードの内、片方のブレードを縦ブレードとし、縦ブレードに対して、ほぼ直角を成す方向に形成される、もう片方のブレードを横ブレードとする。縦ブレードの切削面を用いて、う蝕象牙質を切削する場合、縦ブレードに対して、ほぼ直角を成す方向に形成される横ブレードが、う蝕象牙質に入りづらいため、横ブレードによる切削障害を受ける。しかし、補助ブレードが付与されていることにより、縦ブレード使用時に、縦ブレードのみならず横ブレードも、う蝕象牙質に入りやすくなる。そのため、横ブレードによる切削障害を受けにくくなる。また、補助ブレードは、極小の刃であるため、刃の向きの違いによる切削障害を受けにくく、さまざまな方向に対して切削することが出来ると共に、比較的硬いう蝕象牙質を浅く切削するための使用に適している。

　したがって、う蝕象牙質の内、表層の軟化度の高いう蝕象牙質に対して、縦ブレードと横ブレードを用いた後、深部の健全象牙質に近い、比較的硬いう蝕象牙質に対して、補助ブレードを用いることで、効率的な、う蝕象牙質の除去が出来る。

　本発明の歯科用切削チップを、把持部を有する手用切削器具として用いた場合、上述したように、方向が異なり交差して配列するブレードを用いて、さまざまな方向に動かしての切削が可能となる。また、本発明の歯科用切削チップは、複数のブレードによって形成される曲面を有する外形輪郭の刃部を有するため、刃部の外形輪郭全面での切削が可能であり、従来の手用切削器具であるエキスカベーターに比較して、大幅に切削効率を向上させることが出来る。

　また、特に、歯髄に近接したう蝕象牙質の切削においては、歯髄に傷害を与えず、患者さんに痛みを与えないために、細かい切削コントロールが要求され、う蝕象牙質の硬さを手指に感じながら切削することが出来るエキスカベーターの使用が推奨されている。本発明の歯科用切削チップを手用切削器具として用いた場合、細かい切削コントロールを有すると共に、エキスカベーターに比較して、大幅に切削効率を向上させることが出来る。

　本発明の歯科用切削チップを、振動装置である歯科用超音波スケーラーのハンドピースに、治療用チップとして装着した場合、その超音波振動エネルギーを、歯科用切削チップの刃部に伝達させて用いることが出来る。そのため、歯科用切削チップを、手用切削器具として用いた場合と比較して、より少ない手指の力で効率的に切削が出来る。また、歯科用切削チップのブレードの刃先部に、複数の凹部が形成されていることにより、特に超音波スケーラーの注水機能を活用した場合、注水による刃先部における水の流れが善くなるため、超音波エネルギーによる切削時に生じる発熱を冷却しやすくなり、患者さんに与える疼痛を軽減すると共に、切削時に生じる切削片を排出しやすくなる。

　また、一般的に、歯科用超音波スケーラーのハンドピースは、歯科用エアタービンハンドピースおよび、歯科用マイクロエンジンハンドピースに比べて、軽量であり、歯科用超音波スケーラーのハンドピースのヘッド部もコンパクトであるため、口腔内の狭い部位への挿入がしやすい。また、歯科用超音波スケーラーは、非回転装置であるため、本発明の歯科用切削チップを、手用切削器具として用いた場合と同様に、屈曲した軸部形態を有する歯科用切削チップを使用することが出来る。そのため、従来の器具では、器具の治療部位への到達が困難であるため、抜歯された親知らず(智歯)等に対して、う蝕象牙質を切削除去して、歯を保存することが出来る可能性が大きく向上すると共に、う蝕の穴の深いアンダーカット部に挿入しての切削が容易になる。

　このことは、非常に重要なことである。一般的に、歯科治療は、外科的処置の程度が大きい程、治療後に問題を起こして、再治療が必要になることが多いことが、歯科医療関係者の間で知られており、これからの歯科治療のあり方として、ＭＩ(ミニマルインターべンション)という考え方が、重視されている。

　ＭＩ(ミニマルインターべンション)とは、必要最小限の外科的介入ということであり、具体的には、出来るだけ歯を抜かない治療、出来るだけ歯の内部の歯髄を除去しない治療、出来るだけ歯を削らない治療を、行なおうとする考え方である。

　むし歯は、最初、歯の表面のエナメル質に小さな穴として起こり、歯の内部に進行して象牙質に達すると、周囲に拡大して進行する。その結果、アンダーカット部を有する、むし歯の穴を形成する特徴を有し、従来、深いアンダーカット部にある、う蝕象牙質を確実に取り除くために、深いアンダーカット部の上方にある健全なエナメル質を、広範囲に切削除去しなくてはならないことが多かった。しかし、エナメル質は、皮膚の上皮にあたる組織で、歯の内部の組織を保護している重要な組織であり、このエナメル質を可及的に保存することは歯の寿命を高めることに寄与する。

　例えば、歯髄に近接した深いう蝕の穴と、深いアンダーカット部を共に有するう蝕の治療に対して、歯科用超音波スケーラーのハンドピースに、本発明の歯科用切削チップを装着して、う蝕象牙質を切削除去する方法を用いた場合、超音波エネルギーと共に、歯科用超音波スケーラーのハンドピースが軽量、コンパクトであることを活用して、まず、超音波エネルギーを、歯科用切削チップの刃部に伝達させて、象牙質上部にあるう蝕象牙質を切削除去する。その後、超音波エネルギーを歯科用切削チップに伝達させないで、すなわち、歯科用切削チップを、把持部を有する手用切削器具として用いた場合と同じように用いて、歯髄に障害を与えないように、細かい切削コントロールで、歯髄に近接した、う蝕象牙質を切削除去する。さらに、屈曲した軸部形態を有する本発明の歯科用切削チップを用いて、深いアンダーカット部の上部の健全エナメル質を可及的に保存して、う蝕象牙質を切削除去することが出来れば、う蝕象牙質の除去後のアンダーカット部を有効活用して、う蝕象牙質除去後の、アンダーカット部を有する穴に、接着性充填材であるコンポジットレジンを緊密に充填することで、アンダーカット部を有する穴からコンポジットレジンが抜け出ることを防ぐことが出来る。そのため、治療後の再治療を防ぎ、歯の寿命が高まることが、充分期待出来る。

　さらに、本発明の歯科用切削チップは、歯科用超音波スケーラーと類似の歯科用エアスケーラーに装着して使用することが可能である。そのため、チップの購入のみで、ほとんどの歯科医院において所有している歯科用超音波スケーラーと歯科用エアスケーラーをそのまま利用することが出来、導入コストの軽減により、本発明の歯科用切削チップを歯科用超音波スケーラーおよび歯科用エアスケーラーに装着して、う蝕象牙質を切削除去する方法の普及が期待される。

　上記のように、う蝕象牙質を除去する場合、本発明の歯科用切削チップは、振動装置に治療用チップとして装着して使用することで、顕著な効果を得ている。

　以上説明したように、本発明の歯科用切削チップを、把持部を有する手用切削器具及び、振動装置によって振動される治療用チップとして、う蝕象牙質の切削除去に用いた場合、切削能率を向上させ、従来の器具では到達が困難であった、う蝕の穴の深いアンダーカット部や親知らず(智歯)等における、器具の到達性が改善されることで、健全歯質、歯髄及び歯牙を保存し、歯の寿命を高めることに寄与すると共に、普及の障害となる高額な費用を必要としないため、歯科医院におけるＭＩ(ミニマルインターベンション)の考え方に基づいた治療が促進されることが期待される。

実施例の歯科用切削チップの外観を示す斜視図である。同歯科用切削チップのブレード先端部の拡大図である。同歯科用切削チップのブレードが波形状に形成されている状態を示す図である。同歯科用切削チップの球状の外形輪郭の刃部と楕円形の外形輪郭の刃部におけるブレードの異なる配列構成を示す図である。同歯科用切削チップを手用切削器具として用いるために、把持部の両端に、それぞれ異なった軸部形態を有する同歯科用切削チップを装着した状態を示す側面図である。同歯科用切削チップを，歯科用超音波スケーラーのハンドピースに装着した状態を示す図である。

　以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。

　図１は、本発明の歯科用切削チップの実施例の外観を示す斜視図、図２は、歯科用切削チップ１のブレード先端部の拡大図、図３は、歯科用切削チップのブレードが波形状に形成されている状態を示す図、図４は、歯科用切削チップの球状の外形輪郭の刃部１００と楕円形の外形輪郭の刃部１００におけるブレードの異なる配列構成を示す図、図５は、歯科用切削チップ１を手用切削器具として用いるために、把持部３００の両端に、それぞれ異なった軸部形態を有する歯科用切削チップ１を装着した状態を示す側面図、図６は、歯科用切削チップ１を，歯科用超音波スケーラーのハンドピース４００に装着した状態を示す図である。

　本実施例の歯科用切削チップ１は、図１に示すように、複数のブレード１１０によって球状の外形輪郭に形成された刃部１００と、刃部１００に連結されている軸部２００によって構成され、ステンレス等の金属で一体成形されている。

　図１に示すように、刃部１００には、球状の外形輪郭を形成するブレード１１０として、刃部１００における軸部２００との連結部周囲の異なる位置から放射状に延び、球状の外形輪郭の頂点に向かって配列する複数の縦ブレード１１１と、縦ブレード１１１に対して、ほぼ直角を成す角度に配列する横ブレード１１２が形成されている。縦ブレード１１１と横ブレード１１２は同一の高さで交差して、球状外形輪郭を形成している。また、縦ブレード１１１と横ブレード１１２の先端部には、凹状に形成された複数のブレード先端凹部１４０を有し、ブレード先端凹部１４０が形成されていない部分が、縦ブレード１１１と横ブレード１１２の切削を補助する機能を有する補助ブレード１３０となっている。

　従来のエキスカベーターのような、一枚の扁平な刃による一方向の切削のみでは、切削効率が善くないため、歯科用切削チップ１は、刃部１００を、さまざまな方向に動かして切削することが出来るように、大きく方向の異なった複数のブレードを配置している。図１に示した実施例は、方向の異なる縦ブレード１１１と横ブレード１１２が、ほぼ直角で交差して配列している。このように大きく方向が異なった場合、縦ブレード１１１と横ブレード１１２の間で切削障害が生じる。例えば縦ブレード１１１のブレード側面を該ブレード側面に対して直角を成す方向に動かして、う蝕象牙質を切削した場合、横ブレード１１２の先端部がう蝕象牙質表面に接触するため、縦ブレード１１１の先端部が、う蝕象牙質の中に入りづらくなり、切削能力は明らかに低下する。また、該切削障害は、硬い象牙質ほど程度が大きい。

　歯科用切削チップ１は、切削障害を改善するために、縦ブレード１１１と横ブレード１１２の先端部に、複数の凹部１４０を形成してあり、ブレード先端凹部１４０が形成されていない部分である補助ブレード１３０が縦ブレード１１１と横ブレード１１２の切削を補助する機能を有している。特に、図２に示した補助ブレード１３０の先端の偶角部である補助ブレード先端偶角部１３１において切削機能を有する。

　例えば、図１に示した実施例において、縦ブレード１１１のブレード側面１２０を該ブレード側面１２０に対して直角に動かして、う蝕象牙質を切削した場合、横ブレード１１２の補助ブレード先端偶角部１３１が、う蝕象牙質の中に入り、う蝕象牙質を切削すると共に、縦ブレード１１１の補助ブレード１３０も、う蝕象牙質の中に入り、う蝕象牙質を切削するため、縦ブレード１１１の切削能力の低下を改善することが出来る。また、補助ブレード１３０を有していないブレードに比較して、補助ブレード１３０を有しているブレード１１０は、う蝕象牙質表面に小さな補助ブレード１３０が接触するため、切削時の抵抗が、より少なく、また補助ブレード先端偶角部１３１を活用できるため、特に、比較的硬いう蝕象牙質における切削能力が高い。

　歯科用切削チップ１は、上述したように、ブレード１１０の先端部に、複数のブレード先端凹部１４０が形成され、補助ブレード１３０を有することで、方向の異なった複数のブレード１１０の有する切削能力を有効活用することが出来るため、刃部１００におけるブレード１１０の、より自由な配置構成を可能にする。

　歯科用切削チップ１は、補助ブレード１３０を有することで、曲面を有する外形輪郭の刃部１００の全面に、方向が異なる複数のブレード１１０を配置することが出来るため、刃部１００の全面を用いて、刃部１００を、さまざまな方向に動かして切削することが可能である。そのため、一枚の扁平な刃のみの従来のエキスカベーターに比較して、大幅に切削能率を向上させることが出来る。

　図１に示されている歯科用切削チップ１の縦ブレード１１１及び横ブレード１１２のブレード側面１２０が平らな形状を有しているのに対して、図３には、歯科用切削チップの縦ブレード１１１及び横ブレード１１２のブレード側面１２０が波形状に形成されている状態が示されている。

　図１に示されている歯科用切削チップ１の、平らなブレード側面１２０の形状を有する縦ブレード１１１及び横ブレード１１２は、ブレード側面１２０と直角を成す方向に刃部１００を動かした場合に最も切削能力が高い。それに対して、縦ブレード１１１の配列方向と横ブレード１１２の配列方向の中間の方向に刃部１００を動かした場合は、切削能力が低下するが、縦ブレード１１１及び横ブレード１１２の先端部に補助ブレード１３０を有しているため、刃部１００を動かす方向の違いによる切削能力に対する影響は緩和される。

　それに対して、図３には、さらに刃部１００を動かす方向の違いによる切削能力に対する影響を緩和するために、歯科用切削チップの縦ブレード１１１及び横ブレード１１２のブレード側面１２０が波形状に形成された状態が示されている。

　図３に示されている歯科用切削チップ２の縦ブレード１１１と横ブレード１１２は、共に、ブレード側面１２０が縦ブレード１１１と横ブレード１１２の配列方向に対して左右交互に湾曲した、波形状に形成されている。そのため、ブレード側面１２０に対して直角の方向に刃部１００を動かした場合は、図１に示されている歯科用切削チップ１の平らなブレード側面１２０の形状を有する縦ブレード１１１及び横ブレード１１２ほどの切削能力は有していないが、縦ブレード１１１の配列方向と横ブレード１１２の配列方向の中間の方向に刃部１００を動かした場合においては、平らなブレード側面１２０の形状を有する縦ブレード１１１及び横ブレード１１２ほどの切削能力の低下は起こらず、さまざまな異なった方向の刃部１００の動きに、バランスよく対応出来る。

　歯科用切削チップ１，２の刃部１００は、曲面を有する外形輪郭に形成されていることが特徴であるが、縦ブレード１１１と横ブレード１１２の配列構成を決める場合、具体的に、どのような外形輪郭であるかを考慮する必要がある。

　図４には、歯科用切削チップの球状の外形輪郭の刃部１００と楕円形の外形輪郭の刃部１００における、縦ブレード１１１と横ブレード１１２の異なる配列構成が示されている。図４（Ａ）～（Ｄ）は、縦ブレード１１１における配列構成の比較を示す図である。図４（Ａ）は球状の外形輪郭の刃部１００、図４（Ｂ）は楕円形の外形輪郭の刃部１００を有しており、図４（Ａ）及び（Ｂ）は、共に、刃部１００の任意の一点である刃部ａ点１００ａと、刃部ａ点１００ａと刃部１００の中心である刃部ｃ点１００ｃを結ぶ直線延長上の刃部１００の一点である刃部ｂ点１００ｂとの間に、放射状に複数の縦ブレード１１１を配列させた場合であり、該配列構成の特徴は、全ての縦ブレード１１１を同じ長さに、配列させることが出来る点である。それに対して、図４（Ｃ）及び（Ｄ）は、刃部ａ点１００ａと刃部ｂ点１００ｂとの間に配列する一枚の縦ブレード１１１に対して、平行に複数の縦ブレード１１１を配列させた場合であり、該一枚の縦ブレード１１１以外の縦ブレード１１１は、該一枚の縦ブレード１１１に比べて短く配列される特徴を有する。

　図４（Ｅ）～（Ｈ）は、横ブレード１１２における配列構成の比較を示す図である。図４（Ｅ）及び（Ｆ）は、刃部ａ点１００ａと刃部ｃ点１００ｃを結ぶ直線に対して、直角を成す角度で刃部ｃ点１００ｃを通る直線の直線延長上の刃部１００の２点である刃部ｄ点１００ｄと刃部ｅ点１００ｅの間に、放射状に複数の横ブレード１１２を配列させた場合である。図４（Ｅ）の刃部１００は、球状の外形輪郭を有しているため、図４（Ａ）と同様に、すべての横ブレード１１２を同じ長さに、配列させることが出来る。図４（Ｆ）の刃部１００は、図４（Ｂ）の刃部１００と同様に、楕円形の外形輪郭を有しているが、図４（Ｂ）の刃部１００の配列方向とは異なっているため、中心ｃから離れている横ブレード１１２程、湾曲が強くなってしまう。また、図４（Ｇ）及び（Ｈ）の横ブレード１１２においては、中心ｃから離れている横ブレード１１２程、短くなってしまう。

　以上のように、縦ブレード１１１と横ブレード１１２の配列構成を決めるに当たって、刃部１００の形態を考慮しなくてはならないが、使用目的や使用方法等、特に、う蝕象牙質を切削する場合の刃部１００の動かす方向を考慮することが大切である。従来の手用切削器具であるエキスカベーターは、把持部の長手方向に対して直角を成す方向に把持部先端を動かして切削するための、刃の方向の設定がされており、このエキスカベーターの切削方向の習慣を考慮することが大切である。したがって、歯科用切削チップ１，２を、把持部を有する手用切削器具及び歯科用超音波スケーラーのハンドピース等に治療用チップとして、う蝕象牙質の切削に用いる場合においても、把持部及びハンドピースの長手方向に対して直角を成す方向に把持部先端を動かして切削するための、ブレードの配列構成を重視する必要がある。このことを考慮すると、把持部及びハンドピースの長手方向に、ブレードを長く設定できる、図４の（Ａ）及び（Ｂ）の縦ブレード１１１における配列構成が、一般的使用に適している。

　また、う蝕象牙質の切削において、歯科用切削チップ１，２の刃部１００の外形輪郭として、球状が最も適応範囲が広いが、例えば、う蝕の穴が狭く、深い場合や、根菅内にあるう蝕象牙質を切削する場合等は、細長の楕円もしくは、細長い円柱状の方が有利である。

　このように、本実施例の歯科用切削チップ１，２の外形輪郭は、球状に限定するものではなく、歯科用切削チップ１，２の外形輪郭の特徴は、曲面を持っていることである。

　図５には、本実施例の歯科用切削チップ１，２を手用切削器具として用いるために、把持部３００の両端に、それぞれ異なった軸部形態を有する歯科用切削チップを装着した実施形態が示されている。

　把持部３００の両端には、歯科用切削チップを着脱可能に連結固定するための機能を有する、第１切削チップ着脱部３０１と第２切削チップ着脱部３０２を有している。図５に示すように、第１切削チップ着脱部３０１には、ストレートの軸部形態を有する第１切削チップ３１０が装着されている。また、第２切削チップ着脱部３０２には、把持部３００側に屈曲した軸部形態を有する、第２切削チップ３２０が装着されている。第１切削チップ３１０は、う窩の、あまりアンダーカットの強くない部位のう蝕象牙質の切削に適しており、第２切削チップ３２０は、う窩の、強いアンダーカット部の、う蝕象牙質の切削に適している。なお、第１切削チップ３１０及び第２切削チップ３２０としては、上述した歯科用切削チップ１，２が好適に用いられる。

　図６には、本実施例の歯科用切削チップ１を、振動装置の一種である、歯科用超音波スケーラーのハンドピース４００に、装着した実施形態が示されている。歯科用超音波スケーラーのハンドピース４００には、歯科用切削チップ１をハンドピース４００に装着するための補助器具である、チップホルダー４１０が着脱可能に装着されており、また、歯科用切削チップ１は、チップホルダー４１０のチップ固定具４２０によって着脱可能に装着されている。なお、歯科用切削チップ１に代えて、歯科用切削チップ２を用いてもよい。

　１，２　歯科用切削チップ
　１００　刃部
　１００ａ　刃部ａ点
　１００ｂ　刃部ｂ点
　１００ｃ　刃部ｃ点
　１００ｄ　刃部ｄ点
　１００ｅ　刃部ｅ点
　１１０　ブレード
　１１１　縦ブレード
　１１２　横ブレード
　１２０　ブレード側面
　１３０　補助ブレード
　１３１　補助ブレード先端偶角部
　１４０　ブレード先端凹部
　２００　軸部
　３００　把持部
　３０１　第１切削チップ着脱部
　３０２　第２切削チップ着脱部
　３１０　第１切削チップ
　３２０　第２切削チップ
　４００　ハンドピース
　４１０　チップホルダー
　４２０　チップ固定具

Claims

　把持部を有する手用切削器具及び、振動装置によって振動される治療用チップとして、う蝕象牙質を除去するために使用する歯科用切削チップであって、前記歯科用切削チップは、複数のブレード（１１０）が配列することによって曲面を有する外形輪郭が形成される刃部（１００）と前記刃部（１００）に連結される軸部（２００）より構成され、前記ブレード（１１０）には、方向が異なり交差して配列する前記ブレード（１１０）を有し、また、前記ブレード（１１０）の先端部に複数のブレード先端凹部（１４０）及び複数の補助ブレード（１３０）が形成されていることを特徴とする歯科用切削チップ。
　前記ブレード（１１０）が波形状に形成されていることを特徴とする請求項１に記載の歯科用切削チップ。
　前記ブレード（１１０）が、軟化したう蝕象牙質の中に深く入れて引き剥がすように除去するための前記ブレード（１１０）の高さを有した扁平な形状に形成されていることを特徴とする請求項１または請求項２に記載の歯科用切削チップ。