WO2009130744A1 - 抵抗膜式タッチパネル装置、プログラム、抵抗膜式タッチパネル装置の接触検出方法 - Google Patents
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Abstract
複数箇所が同時接触された場合の接触点数およびそれらの接触点位置を検出することができるアナログ抵抗膜式タッチパネル装置を提供することを課題とする。本発明の抵抗膜式タッチパネル装置は、複数の微小な弾性体を介して隔てられた2枚の抵抗膜11,12と、2枚の抵抗膜11,12上に設けられた複数の局所電極と、を備え、電圧印加する一対の局所電極の組み合わせを複数回変更することにより得られる複数の測定電圧値を用いて、接触点数および接触点位置を求める。この場合、複数の測定電圧値と、非線形方程式に基づく計算電圧値とが略同一となるように数値演算を繰り返すことにより、接触点数および接触点位置を同時に求める。
Description
本発明は、多点検出可能な抵抗膜式タッチパネル装置、プログラム、抵抗膜式タッチパネル装置の接触検出方法に関する。
従来、抵抗膜式タッチパネル装置として、アナログ型のタッチパネル装置とデジタル型(マトリクス型)のタッチパネル装置が知られている。前者のアナログ型は、デジタル型(マトリクス型)と比べて、分解能が高く、現在タッチパネル装置の主流となっている。
ところで、アナログ型のタッチパネル装置の一般的な構成として、同一形状且つ矩形の2枚の抵抗膜が、各抵抗膜の一対の対向辺に沿って形成された辺電極が互いに直交する向きになるように、ドットスペーサを介して重ねられたものが知られている(例えば、特許文献1)。この特許文献1の図2に記載の抵抗膜式タッチパネル装置は、一対の辺電極のうち一方の辺電極に電圧を印加し、他方の辺電極を接地することで、辺電極と平行に変化する電位が生じる。すなわち、電位は平行である(線形性を有する)ので、抵抗膜式タッチパネル装置が指等で接触されたときの電位を、電圧印加されていない辺電極で検出した場合、接触点位置は電圧に比例したものとして求めることができるため、複雑な演算処理を必要とすることなく接触点位置を検出することができる。
また、特許文献1の図3では、電極が辺電極でなく、局所的な場合も記載されており、実際に普及しているタッチパネルでも局所電極を使用したものが存在するが、これは辺電極の代わりとして用いられており、ある局所電極に電圧を印加する場合はその電極の存在する辺の他の電極にも同時に電圧を印加し、辺電極に電圧を印加した時とほぼ同様の平行電位を発生させる。つまり、図3の例でも、複雑な演算処理を必要とすることなく接触点位置を検出することができる。
特開2000-513433号公報(図2、図3等)
ところが、この種の抗膜式タッチパネル装置は、印加電極が辺全体に設けられて(分割された局所電極であっても同時に電圧を印加し辺全体に電極があるのと同様の効果をもつように構成されて)おり、線形性を利用して接触点位置を検出する構成であるため、複数箇所が同時に接触された場合、複数の接触点の重心位置の電圧値が出力される。つまり、2点以上が接触された場合に、それらの接触点位置を正確に求めることができないといった問題があった。
現在、すでにタッチパネル装置が使用されている分野では、複数の指で同時に操作できることで効率が上がる機器や、複数の人が同時に操作することで利便性が増す機器が多く存在する。また、複数箇所が同時検出できないためにタッチパネル装置を使用できない分野もある。このように、同時接触された複数箇所の位置検出が可能なタッチパネル装置の市場ニーズは高まっている。
本発明は、上記の問題点に鑑み、複数箇所が同時接触された場合の接触点数およびそれらの接触点位置を検出することができる抵抗膜式タッチパネル装置、プログラム、抵抗膜式タッチパネル装置の接触検出方法を提供することを目的とする。
本発明の抵抗膜式タッチパネル装置は、微小な間隙で隔てられた略同一形状の2枚の抵抗膜と、2枚の抵抗膜上に設けられた複数の局所電極と、複数の局所電極に対し、選択的に電圧印加する電圧印加手段と、複数の局所電極のうち、電圧印加していない他の電極により電圧値を測定する電圧測定手段と、電圧印加手段により局所電極を少なくとも1組以上選択的に電圧印加することによって、電圧測定手段により得られる複数の測定電圧値を用いて、接触点数および接触点位置を求める演算手段と、をさらに備え、演算手段は、複数の測定電圧値と、非線形方程式に基づく計算電圧値と、が略同一となるように数値演算を繰り返すことにより、接触点数および接触点位置を求めることを特徴とする。
本発明の抵抗膜式タッチパネル装置の接触検出方法は、微小な間隙で隔てられた略同一形状の2枚の抵抗膜と、2枚の抵抗膜上に設けられた複数の局所電極と、を有する抵抗膜式タッチパネル装置の接触検出方法であって、複数の局所電極に対し、選択的に電圧印加する電圧印加ステップと、複数の局所電極のうち、電圧印加していない他の電極により電圧値を測定する電圧測定ステップと、電圧印加する一対の局所電極の組み合わせを複数回変更することにより得られる複数の測定電圧値と、非線形方程式に基づく計算電圧値と、が略同一となるように数値演算を繰り返すことにより、接触点数および接触点位置を求める演算ステップと、を備えたことを特徴とする。
これらの構成によれば、各抵抗膜上には複数の局所電極が設けられ、当該複数の局所電極に対して選択的に電圧印加することができるため、非線形な電位を発生させることができる。また、電圧印加する一対の局所電極の組み合わせを複数回変更することにより複数の測定電圧値を得ることができる。この測定電圧値と、非線形方程式に基づく計算電圧値とが略同一となるように数値演算を繰り返すことで、複数箇所が同時接触された場合でも、正確に接触点数および接触点位置を求めることができる。
なお、2枚の抵抗膜が「略同一形状」とは、少なくとも2次元的(平面的)にほぼ同一形状であることを指す。その形状は、「辺」を有する矩形、平行四辺形、三角形などであっても良いし、「辺」を有しない円形や楕円形などであっても良い。また、2枚の抵抗膜は、同一形状だけでなく、同一サイズであることが好ましい。また、「局所電極」とは、点状の電極を指すものである。
なお、2枚の抵抗膜が「略同一形状」とは、少なくとも2次元的(平面的)にほぼ同一形状であることを指す。その形状は、「辺」を有する矩形、平行四辺形、三角形などであっても良いし、「辺」を有しない円形や楕円形などであっても良い。また、2枚の抵抗膜は、同一形状だけでなく、同一サイズであることが好ましい。また、「局所電極」とは、点状の電極を指すものである。
上記に記載の抵抗膜式タッチパネル装置において、電圧印加手段は、一対の局所電極として、同一の抵抗膜上に設けられた2つの局所電極に電圧印加しても良い。
この構成によれば、従来の一般的なアナログ抵抗膜式タッチパネル装置の電極配置に近い構成とすることができる。
上記に記載の抵抗膜式タッチパネル装置において、電圧印加手段は、一対の局所電極として、異なる抵抗膜上に設けられた2つの局所電極に電圧印加しても良い。
この構成によれば、同一の抵抗膜上に設けられた2つの局所電極に電圧印加する場合と比べて、強い非線形性を得ることができる。これにより、接触点位置の検出精度を高めることができる。
上記に記載の抵抗膜式タッチパネル装置において、電圧印加手段は、抵抗膜の中点に対して点対称な位置にある一対の局所電極に対して電圧印加しても良い。
この構成によれば、タッチパネル装置上のできるだけ離れた位置にある一対の局所電極に電圧印加することになるため、タッチパネル装置に対し全体的に(できるだけ均一となるように)非線形な電位を発生させることができる。これにより、タッチパネル装置上のどの位置を接触した場合でも、安定した精度で接触点位置を検出することができる。
上記に記載の抵抗膜式タッチパネル装置において、2枚の抵抗膜が矩形(長方形)であって、且つ少なくとも一組の対向する頂点に局所電極が配置されている場合、電圧印加手段は、一対の局所電極の組み合わせの一つとして、対向する頂点にある一対の局所電極に対して電圧印加しても良い。
この構成によれば、抵抗膜が矩形の場合、対向する頂点に局所電極を配置することが、最も離れた位置となるため、上記と同様の理由により、タッチパネル装置上のどの位置を接触した場合でも、安定した精度で接触点位置を検出することができる。
上記に記載の抵抗膜式タッチパネル装置において、2枚の抵抗膜は、複数の局所電極が各辺上に等分配置しても良い。
この構成によれば、電圧印加する一対の局所電極の組み合わせを複数回変更することを想定すると、一対の局所電極が、他の組み合わせとなる一対の局所電極の位置からできるだけ離れた位置にある方が、より異なる電圧値を測定することができる。一方、局所電極は、抵抗膜の辺上に設けることが、操作領域の確保および配線等の理由により望ましい。つまり、局所電極が各辺上に等分配置されていることが、現実的であり、且つ検出精度の面においても好ましい。
上記に記載の抵抗膜式タッチパネル装置において、2枚の抵抗膜は、一対の局所電極の組み合わせを結ぶ線分同士の交角が等分となるように、複数の局所電極が各辺上に配置されても良い。
この構成によれば、一対の局所電極の組み合わせを結ぶ線分同士の交角が等分となることで、タッチパネル装置に対し全体的に(できるだけ均一となるように)非線形な電位を発生させることができる。これにより、タッチパネル装置上のどの位置を接触した場合でも、安定した精度で接触点位置を検出することができる。
上記に記載の抵抗膜式タッチパネル装置において、演算手段は、接触点数を最初にN点(但し、NはN≧1となる定数)とし、接触点位置を変更しながら非線形方程式に基づく数値演算を繰り返し、所定回数以内に測定電圧値と計算電圧値とが一定誤差範囲内に収束しない場合、収束するまで接触点数を1ずつ増減させて数値演算を繰り返すことにより、接触点数および接触点位置を同時に求めても良い。
非線形方程式を解いて接触点位置を求めるには、接触点数が既知でなければならない。この構成によれば、接触点数の初期値を定数とすることで、その後は接触点数を1ずつ増加させたり減少させたりして数値演算を繰り返せばよいため、計算が容易である。
上記に記載の抵抗膜式タッチパネル装置において、演算手段の前回の演算結果である接触点数を記憶する接触点数記憶手段をさらに備え、演算手段は、接触点数記憶手段に記憶されている接触点数を初期値として、接触点位置を変更しながら非線形方程式に基づく数値演算を繰り返し、所定回数以内に測定電圧値と計算電圧値とが一定誤差範囲内に収束しない場合、収束するまで接触点数を1ずつ増減させて数値演算を繰り返すことにより、接触点数および接触点位置を同時に求めても良い。
前回の接触点数がn点の場合、今回の接触点数もn点、またはその近傍の数である可能性が高い。この構成によれば、前回の演算結果である接触点数を初期値とすることで、演算回数を減らすことができる。
本発明のプログラムは、コンピュータを、上記に記載の抵抗膜式タッチパネル装置における各手段として機能させるためのものであることを特徴とする。
このプログラムを用いることにより、複数箇所が同時接触された場合の接触点数およびそれらの接触点位置を検出することができるアナログ型の抵抗膜式タッチパネル装置を実現することができる。
1…抵抗膜式タッチパネル装置 11,12…抵抗膜 20…インターフェース装置 21…電極切り替えスイッチ 22…ノイズフィルタ 23…A/D変換器 24…CPU 25…RAM 26…インターフェースドライバ 30,31,32,33…等電位線 100…上位装置 TP…タッチパネル
以下、本発明の一実施形態に係る抵抗膜式タッチパネル装置、プログラム、抵抗膜式タッチパネル装置の接触検出方法について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の抵抗膜式タッチパネル装置1(以下、単に「タッチパネル装置1」と記載する)に適用されるタッチパネルTPの概要を説明する図である。
本実施形態のタッチパネルTPは、ドットスペーサ(複数の微小な弾性体)により微小な間隙(通常数μm~数百μm)を介して対向配置された2枚の抵抗膜(ITO(Indium Tin Oxide)膜)11,12と、当該2枚の抵抗膜11,12の辺上(周縁部)に設けられた複数の電極と、を有する抵抗膜式タッチパネルである。なお、2枚の抵抗膜11,12は、それぞれ基板(可透性の透明フィルムおよびガラス板)に貼り付けられた状態で対向配置されるが、当該基板については、図示を省略する。
2枚の抵抗膜11,12は、略同一形状且つ同サイズであり、平面視矩形に形成されている。また、複数の電極は、全て局所電極(点電極)を採用している。また、本実施形態のタッチパネルTPは、一方の抵抗膜11(図示下側の抵抗膜)の右辺に沿って配置された4個の電圧印加用電極P1~P4と、同抵抗膜11の上辺(図示手前側の辺)上に配置された1個の電圧測定用電極Q0と、他方の抵抗膜12(図示上側の抵抗膜)の左辺に沿って配置された4個の電圧印加用電極PG1~PG4と、同抵抗膜12の下辺(図示奥側の辺)上に配置された1個の電圧測定用電極Q1と、の合計10個の局所電極を備えている。
電圧印加用電極P1~P4,PG1~PG4は、各辺上においてY方向(図示奥行き方向)に等分配置されている。また、それぞれ4個の局所電極のうち、2個の電極は各抵抗膜11の頂点に配置されている。このように、電圧印加用の局所電極をできるだけ離間した状態で、且つ等分配置することで、効率良く1箇所以上の接触点位置(例えば、E1,E2の2箇所)を検出することができる。一方、電圧測定用電極は、X方向(図示幅方向)における各辺の中点に配置されている。
以上のように、局所電極が配置されている場合、例えば局所電極P1-PG1、局所電極P2-PG2、局所電極P3-PG3、局所電極P4-PG4、の組み合わせで電圧を印加して、2個の電圧測定用電極Q0,Q1で電圧測定を行うと、8つの電圧(点対称位置にある電圧印加用電極の組み合わせ数「4」×電圧測定用電極の個数「2」)が測定でき、8つの測定電圧を用いて数値演算することで4箇所の同時接触点の2次元位置座標を検出することができる。このように、抵抗膜11,12上のできるだけ離れた位置にある一対の局所電極を選択して電圧印加することで、タッチパネルTPに対し全体的且つ均一に非線形な電位を発生させることができる。これにより、タッチパネルTP上のどの位置を接触した場合でも、安定した精度で接触点位置を検出することができる。また、異なる抵抗膜11,12上に設けられた2つの局所電極を組み合わせることで、同一の抵抗膜上に設けられた2つの局所電極に電圧印加する場合と比べて、強い非線形性を得ることができる。これにより、接触点位置の検出精度を高めることができる。
なお、電圧印加していない電圧印加用電極は、電圧測定用の電極として用いることもできるため、図1に示した電極配置でも8箇所以上の同時接触を検出することが可能である。また、電圧印加用電極は、上記4つの組み合わせに限らず、他の組み合わせを採用することもできるため(例えば、局所電極P1-PG2、局所電極P2-PG3など)、組み合わせ数を増やすことでさらに多くの同時接触を検出可能である。
次に、図2を参照し、タッチパネル装置1の制御構成について説明する。同図に示すように、タッチパネル装置1は、図1に示したタッチパネルTPと、インターフェース装置20と、から成る。インターフェース装置20は、電極切り替えスイッチ21と、ノイズフィルタ22と、A/D変換器23と、CPU(Central Processing Unit)24と、RAM25と、インターフェースドライバ26と、を有している。また、タッチパネル装置1は、インターフェースドライバ26を介して、上位装置100(ホスト装置)と接続される。
CPU24は、2枚の抵抗膜11,12に設けられた複数の電圧印加用電極に対し、選択的に電圧を印加する(電圧印加手段)。電極切り替えスイッチ21は、CPU24の制御下で、電圧印加用電極の組み合わせを切り替えるためのものである。また、CPU24は、電圧測定用電極により電圧値を測定し(電圧測定手段)、当該測定結果を用いて、タッチパネルTPへの接触点数(同時接触された箇所数)およびそれらの接触点位置を求める(演算手段)。
具体的に、CPU24は、例えば上記の4つの電圧印加用電極の組み合わせのうち、1つを選択して電圧を印加し、電圧測定用電極Q0,Q1で電圧値を測定する。同様に、電圧印加用電極の組み合わせを変更して電圧を印加し、電圧測定用電極Q0,Q1で電圧値を測定する。これを複数回繰り返して得られる複数の測定電圧値と、後述する非線形方程式(偏微分方程式)に基づく計算電圧値とが略同一となるように数値演算を繰り返すことにより、接触点数(図1の例では、E1,E2の2点)および接触点位置(図1の例では、(x1,y1)、(x2,y2))を求める。
一方、RAM25は、CPU24が各種演算処理を行うためのワークエリアとして用いられる。また、CPU24が非線形方程式に基づいて接触点位置を求める場合、接触点数nを仮値として代入する必要があるが、本実施形態では、前回検出した(前回の演算結果である)接触点数を初期値として用いる。したがって、RAM25は、この初期値(前回の接触点数)を記憶するためにも用いられる(接触点数記憶手段)。通常、前回検出した接触点数がn点の場合、今回の接触点数もn点、またはその近傍の数である可能性が高い。したがって、前回検出した接触点数を初期値として用いることで、演算回数を減らすことができ、ひいてはCPU24の制御負荷を軽減できる。
なお、電源投入後は、RAM25内のデータが初期化されているため、CPU24は、予め設定された定数(例えば、接触点数「1」)を初期値として、非線形方程式を解くこととなる。
また、図2のブロック図では、インターフェース装置20内にCPU24を設けた構成としたが、これを省略することも可能である。この場合、上位装置100内のCPU(図示省略)によって、タッチパネルTPが制御されることとなる。また、この場合、前回検出した接触点数も、上位装置100内のCPUに接続されたRAMに記憶されることとなる。
次に、図3を参照し、タッチパネルTPに生じる電位について説明する。同図は、電圧印加用電極の組み合わせが2組(局所電極P2-PG2および局所電極P4-PG4)で、同時に2点(E1,E2)が接触された場合の電位分布を示したものである。また、同図では、局所電極P2-PG2(図示点線直線)による等電位線を点線太線30で示し、局所電極P4-PG4(図示実線直線)による等電位線を実線太線31,32,33で示している。各等電位線30,31,32,33は、いずれもタッチパネルTP(抵抗膜11,12)の各辺に対して垂直に交わっている。なお、局所電極は、分かり易くするため、拡大して示している(図4および図6についても同様)。
同図の例において、例えば、局所電極P2に5v、局所電極PG2に0vの電圧印加を行った場合、点線太線30は略3vの等電位線を示す。このように、本実施形態のタッチパネルTPは、局所電極を採用しているため、生じる電位が非線形となる。この非線形に生じる電位を利用して、接触点数の2倍以上の異なる電圧値を測定し、電位の非線形方程式を、測定電圧値と略同一になるまで繰り返し法により解くことで、接触点位置を個別に(接触点ごとに)検出することが可能となっている。
そこで、以下、接触点数および接触点位置を求めるための演算処理(接触点数および接触点位置の検出方法)について具体的に説明する。まず、抵抗膜11,12に生じる電位は、電場のスカラーポテンシャルであるため、(1)式が成り立つ。また、一様な薄い導電板(抵抗膜11,12)に定常な電流を流したときの電位は、下記のラプラス方程式を満たす。
ここで、タッチパネルTP周辺部の境界条件について言及する。局所電極に電圧を印加している場合、電極部は等電位部分となり、第1種境界条件(4)式が成り立つ。また、電圧を印加していない部分(電流の出入りがない部分)では、第2種境界条件(5)式が成り立つ。
図4は、(4)式、(5)式の境界条件を図示したものである。例えば、局所電極Pp-PGpで、5v-0vを印加した場合、第1種境界条件に基づき、2つの局所電極での静電ポテンシャル(電位)は一定値となる(Φ=5v、Φ=0v)。また、電圧印加電極以外のタッチパネル境界部では、第2種境界条件が成り立つ。第2種境界条件は等電位線が境界と垂直であることを示しているので、第2種境界条件が成り立つ部分境界部ではその法線上のタッチパネル内部電位と同じと看做すことができる(Φ=Φa)。また、境界内のグリッド電位は、ラプラス方程式が成り立つ(∇2Φ=0)。ラプラス方程式は、今2次元平面で考えればよいので、x,yの2次の偏微分方程式(6)となる。
(6)式の偏微分方程式は、(4)式、(5)式のような境界条件の元では解析解を持たず、数値的にしか解けない。そこで、電位を一定間隔で求めることにし、数値的に電圧値を求めるグリッドを、図5(a)のように考える。隣接するグリッドは、図5(b)のようになる。このグリッドごとの電位を用いて差分近似すると、X方向の2階偏微分は(7)式となり、同様にY方向の2階偏微分は(8)式となる。ここで、(7)式および(8)式を(6)式に代入し、Φi,jについて解くと、(9)式が得られる。
(9)式より、グリッドの電位を数値的に求めるには、そのグリッド周囲の4グリッド電位の平均値として計算すればよいことが分かる。そこで、各グリッドに初期電圧値を設定し、(9)式を全グリッドについて計算した値を再び初期値として(9)式が静定するまで繰り返し計算する。但し、境界上のグリッドに関しては、(9)式ではなく、以下(10)式~(14)式に示す境界条件式に従うものとする。
上記の通り、電極上のグリッド電位は、第1種境界条件に従うため、(10)式に示す通りである。また、電極以外の抵抗膜エッジ上のグリッド電位は、第2種境界条件に従うため、(11)式~(14)式に示す通りである。
以上のように、1点以下が接触されたときの各グリッド電位は、(1)式~(14)式により数値計算で求めることができる。しかしながら、2点以上接触された場合は、接触点電位が2枚の抵抗膜11,12の電位に依存するため、2枚の抵抗膜11,12の電位を同時に解く必要がある。そこで、以下2枚の抵抗膜11,12の関係についての数値演算方法を記す。
本実施形態では、2枚の抵抗膜11,12のそれぞれの電位について、電場のスカラーポテンシャルであることから(20)式および(21)式が成り立つ。また、抵抗膜11,12の電導率をρとすると、オームの法則により(22)式および(23)式が成り立つ。
また、1点接触時と、複数点接触時の接触点以外では、電荷保存の法則([数式2]参照)から、非接触時と同様に考えることができるが、複数点接触時の接触点においては、2枚の抵抗膜11,12間で電流が流れ、流れ出しと流れ込みの絶対値が等しいので、k番目の接触点において、(24)式および(25)式が成り立つ。また、これらに(22)式および(23)式を代入すると、(26)式および(27)式が得られる。さらに、(20)式および(21)式を代入すると、(28)式および(29)式が得られる。ここで、2枚の抵抗膜11,12の電導率ρが等しいとすると、(30)式および(31)式が得られる。
ここで、グリッドの電位を数値的に解くため、(31)式の差分方程式を(9)式と同様に考えると、(32)式が得られる。また、(32)式の左辺の2つの電位は、接触により短絡しているので等しいため、(33)式が成り立つ。
続いて、n点(k=1,・・・n)が同時に接触されている場合を想定する。このn点の接触点位置を求めるためには、2n組(l=1,・・・2n)の異なる局所電極の組み合わせを用いて出力電位を測定する必要がある。また、上記の通り、電圧測定用電極の電位は位置x,yの非線形な方程式であり、解析解を持たずに微分方程式と境界条件で表されるが、形式的には電圧測定用電極の出力電圧を(34)式に示すように、2nの未知変数を持つ2nの非線形連立方程式で表すことができる。
ここで、(34)式の非線形連立方程式を解くと、同時に接触しているn点の接触点位置を求めることができる。しかし、前述の通りこの非線形方程式自体を解析的に求めることができない。解析的に解くことが困難な非線形連立方程式は、パラメータに適当な初期値をセットし、初期値の周りで(34)式を展開し、パラメータの初期値からの誤差についての線形な方程式にして解くのが一般的である。線形化した方程式を解いたパラメータ初期値からの誤差をパラメータ初期値に加えた値は、通常パラメータ真値に対してまだ誤差を持っている。そこで、その値を初期値として再び線形化してパラメータ誤差を求め、求まるパラメータ誤差が十分小さくなるまで(所定誤差範囲に収まるまで)、その手順を繰り返す。以下、その計算に用いる数式を示す。(34)式をパラメータ(接触点位置)初期値周りで展開し、パラメータ誤差に関して線形な方程式としたものが、(35)式である。
(35)式は、座標誤差に対して線形なので、掃きだし法等で数値的に解くことができる。(36)式に示すように、求めた座標誤差を初期値に加えたものを新たな初期値とすると、新たな初期値について(37)式が成り立つ。
(37)式を(35)式と同様に解いて、座標誤差を求める。これを座標誤差が十分に小さくなるまで繰り返し、座標値を求める。(35)式において、出力電圧、出力電圧の偏微分値などは解析解がないので、上記の通り数値的に求めた値を用いる。
以上の説明から明らかなように、通常、接触点数は接触点位置(座標値)を求めるために必要である。したがって、前サンプリングにおける接触点数nをRAM25から読み出して(すなわち今回の接触点数をnと仮定して)解く。この接触点数nが正しくない場合は、精度の良い解が求まらないため、nの値を増減させながら(例えば、n、n+1、n-1、n+2、n-2・・・)、精度の良い解が求まるまで繰り返し解いていく。これにより、接触点数nと、それらの接触点位置とを同時に求めることができる。なお、上記の数値演算方法以外のCG法(共役勾配法)など、他の数値演算方法によって接触点位置座標を求めても良い。
以上、説明したとおり、本実施形態によれば、2枚の抵抗膜11,12上に、複数の局所電極を配置して非線形な電位を生じさせ、その測定結果を上記の演算処理によって解くことで、アナログ抵抗膜式タッチパネル装置においても、複数箇所を同時接触した場合の接触点位置を正確に求めることができる。つまり、本実施形態のタッチパネル装置1を採用することで、複数箇所の同時操作が可能となる。
これにより、例えばDJ機器(プレイヤー、ミキサー等)、電子楽器、MIDIコントローラなど、複雑な操作、且つ直感的な操作が求められる分野において、アナログ抵抗膜式タッチパネル装置の適用が可能となる。また、現在既にタッチパネルが用いられている様々な分野(ゲーム機、タッチパネル式コンピュータ、PDA、携帯電話、銀行ATM等)においても、利便性の向上を図ることができる。さらに、複数点を同時検出できないためにタッチパネルの使用が敬遠されてきた分野においても、人が操作する機器操作盤などとして適用することが可能となる。
なお、上記の実施形態では、図1に示したように、電圧印加用の複数の局所電極が各辺上に等分配置されているものとしたが、図6(a)に示すように、一対の局所電極の組み合わせを結ぶ線分同士の交角が等分となるように配置しても良い。また、この場合も、タッチパネルTPの中点に対して点対称な位置にある一対の局所電極に対して電圧印加することが好ましい。この構成によれば、タッチパネルTPに対し全体的に(できるだけ均一となるように)非線形な電位を発生させることができるため、タッチパネルTP上のどの位置を接触した場合でも、安定した精度で接触点位置を検出することができる。
但し、一対の局所電極の組み合わせを結ぶ線分同士の交角が等分となるように配置した場合でも、電圧印加用の複数の局所電極が各辺上に等分配置されていることが好ましいため、図6(b)に示す配置を採用しても良い。
また、上記の実施形態では、異なる抵抗膜上に設けられた2つの局所電極に電圧印加するものとしたが、同一の抵抗膜上に設けられた2つの局所電極に電圧印加するようにしても良い。この場合は、他の抵抗膜上に設けられた局所電極で、電圧を測定することとなる。
また、上記の実施形態では、電圧印加用電極および電圧測定用電極のいずれも、局所電極を採用するものとしたが、電圧測定用電極を辺電極とするなどの設計変更も可能である。また、電圧測定用電極の数を増やしたり、その配置を変更することも可能である。また、電圧測定用電極は、1個だけで測定するのではなく、複数個を用いて測定しても良い。すなわち、電圧印加されていない電極の1個以上を用いて電圧測定が可能である。
また、上記の実施形態では、前回の接触点数を初期値として非線形方程式を解くものとしたが、接触点数を最初に1点とし、接触点位置を1ずつ増加させながら数値演算を繰り返しても良い。その他、タッチパネル装置1の用途に応じて、初期値を1点ではなく2点以上の定数とすることも可能である。
また、上記の実施形態では、電圧印加する一対の局所電極の組み合わせを複数回変更することにより得られる複数の測定電圧値を用いて非線形方程式を解くものとしたが、複数回の変更を行うのではなく、1回の電圧印加時に異なる複数の電極で測定した複数の電圧値を用いて非線形方程式を解くようにしても良い。
また、上記の例に示したタッチパネル装置1における各部をプログラムとして提供しても良い。また、そのプログラムを記録媒体(図示省略)に格納して提供することも可能である。すなわち、コンピュータを、タッチパネル装置1の各部として機能させるためのプログラム、およびそれを記録した記録媒体も、本発明の権利範囲に含まれるものである。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
Claims (11)
- 微小な間隙で隔てられた略同一形状の2枚の抵抗膜と、
前記2枚の抵抗膜上に設けられた複数の局所電極と、
前記複数の局所電極に対し、選択的に電圧印加する電圧印加手段と、
前記複数の局所電極のうち、電圧印加していない他の電極により電圧値を測定する電圧測定手段と、
前記電圧印加手段により局所電極を少なくとも1組以上選択的に電圧印加することによって、前記電圧測定手段により得られる複数の測定電圧値を用いて、接触点数および接触点位置を求める演算手段と、をさらに備え、
前記演算手段は、前記複数の測定電圧値と、非線形方程式に基づく計算電圧値とが略同一となるように数値演算を繰り返すことにより、前記接触点数および前記接触点位置を求めることを特徴とする抵抗膜式タッチパネル装置。 - 前記電圧印加手段は、前記一対の局所電極として、同一の前記抵抗膜上に設けられた2つの局所電極に電圧印加することを特徴とする請求項1に記載の抵抗膜式タッチパネル装置。
- 前記電圧印加手段は、前記一対の局所電極として、異なる前記抵抗膜上に設けられた2つの局所電極に電圧印加することを特徴とする請求項1に記載の抵抗膜式タッチパネル装置。
- 前記電圧印加手段は、前記抵抗膜の中点に対して点対称な位置にある前記一対の局所電極に対して電圧印加することを特徴とする請求項1に記載の抵抗膜式タッチパネル装置。
- 前記2枚の抵抗膜が矩形であって、且つ少なくとも一組の対向する頂点に前記局所電極が配置されている場合、
前記電圧印加手段は、前記一対の局所電極の組み合わせの一つとして、対向する頂点にある前記一対の局所電極に対して電圧印加することを特徴とする請求項1に記載の抵抗膜式タッチパネル装置。 - 前記2枚の抵抗膜は、複数の前記局所電極が各辺上に等分配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載の抵抗膜式タッチパネル装置。
- 前記2枚の抵抗膜は、前記一対の局所電極の組み合わせを結ぶ線分同士の交角が等分となるように、複数の前記局所電極が各辺上に配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載の抵抗膜式タッチパネル装置。
- 前記演算手段は、前記接触点数を最初にN点(但し、NはN≧1となる定数)とし、前記接触点位置を変更しながら前記非線形方程式に基づく数値演算を繰り返し、所定回数以内に前記測定電圧値と前記計算電圧値とが一定誤差範囲内に収束しない場合、収束するまで前記接触点数を1ずつ増減させて数値演算を繰り返すことにより、前記接触点数および前記接触点位置を同時に求めることを特徴とする請求項1に記載の抵抗膜式タッチパネル装置。
- 前記演算手段の前回の演算結果である前記接触点数を記憶する接触点数記憶手段をさらに備え、
前記演算手段は、前記接触点数記憶手段に記憶されている前記接触点数を初期値として、前記接触点位置を変更しながら前記非線形方程式に基づく数値演算を繰り返し、所定回数以内に前記測定電圧値と前記計算電圧値とが一定誤差範囲内に収束しない場合、収束するまで前記接触点数を1ずつ増減させて数値演算を繰り返すことにより、前記接触点数および前記接触点位置を同時に求めることを特徴とする請求項1に記載の抵抗膜式タッチパネル装置。 - コンピュータを、請求項1に記載の抵抗膜式タッチパネル装置における各手段として機能させるためのプログラム。
- 微小な間隙で隔てられた略同一形状の2枚の抵抗膜と、
前記2枚の抵抗膜上に設けられた複数の局所電極と、を有する抵抗膜式タッチパネル装置の接触検出方法であって、
前記複数の局所電極に対し、選択的に電圧印加する電圧印加ステップと、
前記複数の局所電極のうち、電圧印加していない他の電極により電圧値を測定する電圧測定ステップと、
電圧印加する一対の局所電極の組み合わせを複数回変更することにより得られる複数の測定電圧値と、非線形方程式に基づく計算電圧値とが略同一となるように数値演算を繰り返すことにより、接触点数および接触点位置を求める演算ステップと、を備えたことを特徴とする抵抗膜式タッチパネル装置の接触検出方法。
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