明 細 書 ウイッカロール (wi ckerol) 及びその製造法 技術分野
本発明は、 インフルエンザウイルスの増殖阻害活性を有するため医薬品、 動物薬に 有効な新規ウイッカロール (wi ckerol) 及びその製造法に関する。 背景技術
ィンフルェンザウィルスは、 変異を繰り返しながら毎年のように世界中で流行し、 またそれに加えて数十年に一度、 数百万〜数千万の死者を出す世界規模の大流行が起 こっている疾病である。 現在、 アジアを中心として家禽類に大規模な流行を起こして いる高病原性鳥ィンフルェンザ H 5 N 1なども、 次の世界的流行を引き起こすウィル スとして危惧されていることは周知の通りである。 し力、し、 現状ではヒトへの被害を 食い止める手段は、 ワクチンの接種もしくは薬剤の投与となるが、 新型ウィルスの大 流行にあたっては流行予測が必要なワクチンによる対応が極めて困難であり、 また、 発症後の治療には利用することができない。
しかしながら、 治療薬の存在は不可欠であるが、 現在、 利用可能な抗インフルェン ザ薬は、 2つの作用点、 すなわちノィラミニダ一ゼ及び M 2イオンチャンネルに対す る 4種、 具体的な薬剤としては、 ォセルタミビル (スイス国、 ロッシュ社) 、 ザナミ ビル (英国、 グラクソ ·スミスクライン社) 、 アマン夕ジン (スイス国、 ノバルティ ス社) 、 リマンタジン (米国、 フォレスト社) が挙げられる。
これらの内、 日本国における治療薬の認可は 3種のみである。 しかし、 前記いずれ の治療薬にも既に耐性種が出現しており、 投与方法やウィルス亜型に対するスぺクト ル、 副作用などの問題点もあることから、 大流行時の備えとして充分とは言い難い。 こうした中、 新たな抗インフルエンザ薬の開発に対する社会的関心は非常に高い。 そして、 新型や薬剤耐性のウィルス対策としては作用点や構造の異なる薬剤を複数も つことが重要である。 しかし、 このような作用点や構造の異なる薬剤は未だ提案され
ていないことから、 新しい薬剤が熱望されている。
インフルエンザの発症は、 インフルエンザウイルスが爆発的に増殖して炎症、 発熱 などを引き起こすことによる。 ィンフルェンザウィルスは、 次々と新しい細胞に感染 しては増殖を繰り返すことから、 その細胞への接着から発芽 ·成熟までのいずれかの 生活環を阻害することができれば、 爆発的なウィルスの増殖を阻害することができ、 ひいてはィンフルェンザの発症を抑える若しくは症状を緩和するすることができるィ ンフルェンザウィルスの増殖阻害活性物質およぴ抗ィンフルェンザ薬として大いに期 待される。
本発明は、 このような事情に鑑みて研究開発されたものであり、 インフルエンザゥ ィルスの增殖阻害活性物質およぴ抗ィンフルェンザ薬としての期待を満足し得るもの である。 すなわち、 本発明によるトリコデルマ 'アト口ビリデ (Tr ichoderma atrovi ride) F K I - 3 7 3 7 (FERM ABP- 11099) 菌株を用いて培養し、 培養物から単離、 精製した物質ウイッカロール (wickerol) を得、 該ゥイツ力ロールを有効成分とする インフルエンザウイルスの増殖阻害活性物質およびウイッカロール (wickerol) を有 効成分とする抗ィンフルェンザ薬として提供することを目的とするものである。 発明の開示
本発明者らは、 微生物の培養物中からインフルエンザウイルスが細胞への感染を介 して増殖する過程を阻害する物質の探索を続けた結果、 本発明者らが土壌より採取し た糸状菌 F K 1 - 3 7 3 7株の生産する新規ウイッカロール (wi ckero l) が細胞への 感染を介して増殖する過程を阻害する活性を有することを見出した。 本発明はこのよ うな知見に基づいて完成するに至ったものである。
本発明は係る知見に基づいて完成されたものであって、 請求め範囲 1記載の下記式
で表されるゥイツカロ一ル (wickerol) を提供するものである。
本発明は、 請求の範囲 2記載の糸状菌に属し請求の範囲 1に記載のウイッカロール (wickerol) を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、 培養物中にウイッカロ ール (wickerol) を蓄積せしめ、 該培養物からウイッカロール (wickerol) を採取す ることを特徴とするウイッカロール (wickerol) の製造法を提供するものである。 本発明は、 請求の範囲 2に記載のウイッカロール (wickerol) を生産する能力を有 する微生物が、 トリコデルマ 'アト口ビリデ (Trichoderma atroviride) F K I - 3 7 3 7 (FE腹 ΑΒΡ- 11099) である製造法を提供するものである。
本発明は、 請求の範囲 4に記載のトリコデルマ 'アト口ビリデ (Tr ichoderma atro viride) F K I - 3 7 3 7 (FERM ABP-11099) 株を提供するものである。
本発明は、 請求の範囲 5に記載の下記式
で表されるウイッカロール (
wickerol) を有効成分とするィ
増殖阻害活性物質を提供するものである。
本発明は、 請求の範囲 6に記載の下記式
で表されるウイッカロール (wickerol) を有効成分とする抗インフルエンザ薬を提供 するものである。
本発明のウイッカロール (wi ckerol) を生産する能力を有する微生物 (以下時とし て 「F K I— 3 7 3 7物質生産菌」 と称する場合もある) は、 トリコデルマ 'アト口 ビリデ (Tr ichoderma atrovi ride) 属に属するが、 例えば本発明者らが新たに土壌か ら分離したトリコデルマ 'アト口ビリデ (Tr ichoderma atrovir ide) F K I - 3 7 3 7株は、 本発明において最も有効に使用される菌株の一例である。 本発明のトリコデ ルマ 'アトロビリデ (Tr ichoderma atroviride) F K I - 3 7 3 7株の菌学的性状を 示すと以下のとおりである。
1 . 形態的特徴 ·
本菌株は、 ポテト 'デキストロ一ス寒天培地、 コーンミール ·デキストロ一ス寒天 培地、 麦芽汁寒天培地などで良好に生育し、 各種寒天培地で分生子の着生は良好であ つた。 ポテト 'デキストロース寒天培地に生育したコロニーを顕微鏡で観察すると、 菌糸は透明で隔壁を有している。 分生子柄は基底菌糸より直生し、 分生子柄の先端に フィアライ ドを生じる。 フィアライ ドの大きさは 7. 5-12. 5 X 2. 0- 2. 8 m で、 3〜5 本輪生して生じ、 ずんぐりして短い。 フィアラィ ドの先端から分生子が生じ、 粘性球 形を形成する。 分生子は球形〜亜球形で大きさは 2. 3-2. 8 X 2. 3-3. 0 u rn で、 その表 面は滑面である。
2 . 各種寒天培地上での性状
本菌株を各種寒天培地上で、 2 5 °C、 3日間培養した場合の肉眼的観察結果を下記 の第 1表に示す。
第 1表 培地 培地上の生育状態 コロニー表面 コロニー裏面 可溶性
(コロニーの半径) の色調 の色調 色素
ポテト 'デキストロース寒天培地
良好 (65-69 mm)
羊毛状 白色 白色 なし 周辺菌糸状
コーン . ミール .デキス卜ロース寒天培地
良好 (34-37 mm)
羊毛状 無色〜白色 無色〜白色 なし 周辺菌糸状
麦芽汁寒天培地
良好 (65-67 mm)
羊毛状 白色 白色 なし 周辺菌糸状 \
合成ニュートリエント寒天培地
良好 (53-55 mm)
羊毛状 無色 無色 なし 周辺菌糸状
3. 生理的性質
( 1 ) 最適生育条件
本菌株の最適生育条件は、 p H 3〜6、 温度 16.0 〜 30.0 °Cである。
( 2 ) 生育の範囲
本菌株の生育範囲は、 p H 2〜8、 温度 10.0 〜 32.0 °Cである。
( 3 ) 好気性、 嫌気性の区別
好気性。 上記の FK 1 - 3 7 3 7株は、 その形態的特徴、 培養性状および生理的性状に基づ き、 既知菌種との比較を試みた結果、 本菌株はトリコデルマ ·アト口ビリデ (Tricho derma atroviride) に属するー菌株と同定し、 トリコデルマ 'アト口ビリデ (Tricho derma atroviride) F K I - 3 7 3 7と命名した。 本菌株はトリコデルマ 'アトロビ リデ (Trichoderma atroviride) FK I— 3 7 3 7として、 日本国茨城県つくば巿東 1丁目 1番地 1 中央第 6 (郵便番号 305- 8566) [AIST Tsukuba Central 6, 1 - 1, Higashi 1-chome, Tsukuba - shi, Ibaraki-ken, 305-8566 Japan ] の独立行政法人産
業技術総合研究所 特許生物寄託センタ一 [International Patent Organism Deposi tary National Institute of Advanced Industrial Science and Technology ] に北 里大学北里生命科学研究所 微生物資源センターによって 2 0 0 8年 3月 6日に寄託 された。 受託番号は FERM P- 2 1 5 2 0が付与された。 その後、 本菌株は特許 手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタぺスト条約に基づき、 上述の独立行 政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに平成 2 1年 ( 0 9 ) 2月 2 3日 に国際寄託へ移管請求され、 移管申請の受理がなされた。 受領番号は F ERM AB P- 1 1 0 9 9が付与された。 本発明で使用される FK 1 - 3 7 3 7物質生産菌は、 前述のトリコデルマ 'アト口 ビリデ OYichoderma atroviride) FK I - 3 7 3 7株が最も好ましい例として挙げ られるが、 菌の一般的性状として菌学上の性状は極めて変異しやすく、 一定したもの ではなく、 自然的にあるいは通常行われる紫外線照射、 X線照射、 遺伝子操作株、 自 然変異株も含め、 糸状菌に属し、 本発明による物質ウイッカロ一ル (wickerol) を生 産する能力を有する菌株はすべて本発明に使用することができる。 本発明のゥイツカロ一ル (wickerol) を製造するにあたっては、 先ず糸状菌に属す るゥイツ力ロール (wickerol) を生産する能力を有する微生物を培養し、 その培養物 から分離 ·精製すればよい。 本発明に用いることのできる菌株は上記の菌株、 その変 異株をはじめ、 糸状菌に属する FK I— 3 7 3 7物質生産菌のすべてが使用できる。
FK I - 3 7 3 7物質生産菌に適した栄養源としては、 糸状菌の栄養源として使用 し得るのものであればよい。 例えば、 市販のペプトン、 肉エキス、 コーン 'スティー プ ' リカ一、 綿実粉、 落花生粉、 大豆粉、 酵母エキス、 NZ—ァミン、 カゼインの水 和物、 硝酸ソーダ、 硝酸アンモン二ゥム、 硫酸アンモニゥムなどの窒素源、 グリセリ ン、 澱粉、 グルコース、 ガラク 卜一ス、 マンノースなどの炭水化物、 あるいは脂肪な どの炭素源、 および食塩、 リン酸塩、 炭酸カルシウム、 硫酸マグネシウムなどの無機 塩を単独あるいは組み合わせて使用できる。
その他必要に応じて微量の金属塩、 消泡剤として動 ·植 .鉱物油などを添加するこ
ともできる。 これらのものは、 生産菌が利用し、 ゥイツカロ一ル (wickerol) の生産 に役立つものであればよく、 公知の糸状菌の培養材料はすべて用いることができる。 また、 ウイッカロール (wickerol) の培養温度は、 生産菌が発育し、 ウイッカロール (wickerol) を生産できる範囲で適用できる。 培養は、 以上に述べた条件を使用する F I - 3 7 3 7物質生産菌の性質に応じて適宜選択して行うことができる。 ウイッカロール (wickerol) は、 培養液よりクロ口ホルム、 酢酸ェチルなどの水不 混和性の有機溶媒で抽出することができる。 上記の抽出法に加え、 脂溶性物質の採取 に用いられる公知の方法、 例えば吸着クロマトグラフィー、 ゲル濾過クロマトグラフ ィー、 薄層クロマトグラフィ一よりのかき取り、 遠心向流分配クロマトグラフィー、 高速液体クロマトグラフィ一等を適宜組み合わせ或いは繰り返すことによつて純粋に 採取することができる。 本発明によるウイッカロ一ル (wickerol) の理化学的性状は次の通りである。 ( 1 ) 性状 :白色粉末
( 2 ) 分子量: 290.2605 (M+ 、 高分解能電子イオン化質量分析による)
( 3 ) 分子式: C2。H340
( 4 ) 比旋光度: [α] 3Ι =—2.8 ° (c =0.1 、 メタノール)
( 5 ) 紫外部吸収極大 (メタノール中) :末端吸収のみ観測された
( 6 ) 赤外部吸収極大 (K B r錠) : 3 3 1 9、 2 9 5 4 , 2 9 2 9、 2 8 7 5、 2
3 6 0、 1 7 3 4 cm— 1に極大吸収を有する
( 7 ) プロトン核磁気共鳴スぺク トル:重クロ口ホルム中の化学シフト (p pm) 及 びスピン結合定数 (Hz) を第 2表に示す
( 8 ) 13C核磁気共鳴スペク トル:重クロ口ホルム中の化学シフト (p pm) を第 2 表に示す
( 9 ) 溶剤に対する溶解性: ノルマルへキサン、 クロ口ホルム、 アセトン、 エタノー ルに易溶。 メタノール、 2—プロパノールに可溶。 水に難溶
(10) 呈色反応: リンモリブデン硫酸に陽性。
2表
I 3C-NMR lH -NMR
73.9 s
52.0 d 1.27 d (IH, J-13.4)
44.4 d 1.87 ddd (IH, J=6.1, 10.0, 13.4)
43.9 t 1.41 brd (IH, J=ll.2)
1,00 brd (IH, J=ll.2)
43.0 t 1.68 dd (IH, J=4.2, 12.3)
1.49 m (IH)
41.1 d 1.48 m (IH)
40.8 t 1.58 ddd (1H, J=3.5, 3.6, 12.8)
1.44 m (IH)
39.2 s
38.8 s
38.7 s
28.8 t 2.00 dddd (IH, J=2.6, 11.2, 11.2, 15.5)
1.46 m (IH)
26.6 d 2.11 m (IH)
26.4 t 1.69 m (IH)
1.21 ddd (IH, J=3, 5, 14.2, 14.2)
25.7 t 2.09 m (IH)
1.62 m (IH)
25.6 q 0.94 s (3H)
24.6 q 1.05 s (3H)
22.9 d 1.02 d (3H, J=7.0)
21.6 t 1.79 m (IH)
1.58 m (IH)
20.5 d 1.17 s (3H)
19. 9 d 1. 05 s (3H)
. 注: sはシングレツ ト、 dはダブレツ ト、 ddはダブルダブレツ ト、 ddd はダブルダ ブルダブレツ ト、 ddddはダブルダブルダブルダブレツ ト、 tはトリプレッ ト、 qは力 ルテツ ト、 m はマルチプレツ ト、 brd はブロードダブレツ ト、 Hはプロトンの数、 J はスピン結合定数 (Hz) を示す。 本発明のウイッカロール (wickerol ) の各種理化学的性状やスペクトルデータを検 討した結果、 ゥイツカロールは下記の式で表される構造であることが決定された。
以上のとおり、 ウイッカロール (wi ckerol) の各種理化学的性状について詳述した が、 このような性質に一致する化合物はこれまでに報告されておらず、 ゥイツカロー ル (wi ckero l) は新規物質であると決定した。 次に、 本発明のウイッカロール (wickero l) の細胞への感染を介したインフルェン ザウィルスの増殖を阻害する活性について以下に説明する。
インフルエンザウイルスの細胞への感染を介した増殖の検定は、 以下のようにして 行った。 48穴マイクロプレート (米国、 べクトン .ディッキンソン社) に 1穴あたり 500 u l の細胞培養用培地 [MEM (米国、 ギブコ社 61100- 053) 9. 5 g/l、 ゥシ胎児血 清 (米国、 ハイクローン社) 10 %] に、 50, 000個づっ懸濁させたィヌ腎臓由来 MDCK細 胞を蒔いた。 そのプレートを 37°C、 5 %二酸化炭素の条件下で 2日間培養した。
次に、 培地を除き、 500 1のリン酸緩衝液 (PBS ; 塩化ナトリゥム 137 m , リン 酸水素ニナトリゥム 8. 1 mM、 塩化力リウム 2. 68 mM 、 リン酸ニ水素力リゥム L 47 mM) で 2回洗浄後、 1穴あたり 500 1の感染用培地 [イーグル MEM培地 (日本国、 ニッ
スィ社 05901) 9.4 g/1 、 ブドウ糖 0.1 ァセチルトリブシン 3 Ug/mし L—グル タミン 0.3 mg/ml 、 ビタミン溶液 (米国、 ギブコ社 11120- 052) 1 ml/1 、 葉酸 1 wg/ ral、 ピオチン l g/ml、 HEPBS 3 mg/ml,アムホテリシン B 2.5wg/mk ゲンタミシン 200 lig/mU 炭酸水素ナトリゥム 2.25 mg/raし ゥシ血清アルブミン 2 rag/ml を添力 Pし たもの] に懸濁させたィンフルェンザウィルスを添加した。
ここにサンプルを溶媒に溶解させて直径 6 mraのバラフィン紙にしみ込ませた後に乾 燥させたものを添加し、 そのプレートをシヱ一力一 (日本国、 タイテック社、 WAVE - P R ) 上で緩やかに撹拌しながら 37° (:、 5%二酸化炭素の条件下で更に 3日間培養した 。 培養終了後、 培地を除去してから 500 j l の PBS で 2回洗浄後、 72.5^ 1 の 25 %グ ルタルアルデヒドを添加して、 室温で 10分間細胞を固定した。 上清を除去して 500 a 1 の PBS で 2回洗浄し、 125 u I の 0.05 %クリスタルバイオレッ ト液を添加して、 室 温で 15分間発色反応を行った。
上清を除去後、 500 \ の PBS で 4回洗浄し、 500 " I の 0.5 % SDS溶液を添加し 、 撹拌して溶解後、 各溶解液を 100 il l ずつ 96穴プレ一卜にとり、 100 1 の PBSを 添加し、 マイクロプレートリーダー (米国、 バイオテックインスツルメンッ社、 EL X 808 ) にて 595 nmの紫外吸収を測定することにより細胞生存率を検定した。 ウイ、 J、 力 ロール (wickerol) の細胞への感染を介したインフルエンザウイルスの増殖を阻害す る活性は、 サンプル添加時に溶媒のみをしみ込ませて乾燥させたパラフィン紙を添加 して同様に処理したものをコントロールとして比較し、 算出した。
その結果、 ウイッカロール (wickerol) は、 インフルエンザウイルス A/PR/8/34 の MDCK細胞への感染を介した増殖を [C5。 = 70 ng/ml で阻害した。 一方、 MDCK細胞単独 での増殖に対しては、 IC5。 = 7 g/mlで阻害活性を示した。 したがって、 ゥイツカロ ール (wickerol) は細胞毒性よりも約 100倍強いインフルエンザウイルス増殖阻害活 性を示した。 本発明のウイッカロール (wickerol) の抗菌活性は以下のとおりである。
濾紙円板 (アドバンテック社、 直径 6 mm) にゥイツ力ロール (wickerol) の 1 mg/m 1 のメタノール溶液をそれぞれ 10 1 浸潰し、 一定時間、 風乾して溶媒を除去後、 下 記の試験菌含菌寒天平板に張り付け、 35°Cで 24時間培養後、 濾紙円板の周りにできた
生育阻止円の直径を測定し、 その結果を第 3表に示し/ i .
第 3表 試験菌 阻止円径(mm) スタフイロコッカス ·ァゥレウス (Staphylococcus aureus) ATCC6538p 一 バチルス ·サプチリス (Bacillus subti 1 is) ATCC6633 ― ミクロコツカス ·ルテウス (Micrococcus luteus) ATCC9341 土 ミコパクテリゥム ·スメグマチス (Mycobacterium smegmatis) ATCC6Q7 一 ェシエリヒア ·コリ (Escherichia colQNIHJ 一 ェシエリヒア 'コリ (Escherichia colQNIHJ JC-2 (IP012734) 一 シユ-ドモナス 'エルギノ-ザ (Pseudomonas aeruginosa) IP03080 ― キサントモナス -カンペストリス pv.才リゼ (Xanthomonas campestris pv. oryzae) KB88 一 パクテロイデス ·フラジリス (Bacteroides fragi 1 is) ATCC23745 一 アコレプラズマ · レイドロウィ (Acholeplasma laidrawii) KB 174 一 カンジダ ·アルビカンス (Candida albicans) KF1 ― サッカロミセス ·セレビジァェ (Saccharomyces cerevisiae;KF26 一 ピリキユラリア ·ォリゼ (Pyricularia oryzae) KF 180 土 ァスペルギルス ·ニガー(Aspergillus niger)ATCC6275 一 ムコール ·ラセモサス (Mucor raceraosus) IF04581 — 本発明のウイッカロール (wickerol) は、 第 3表の微生物に対してほとんど抗菌活 性を示さなかった。 したがって、 本発明のゥイツカロ一ル (wickerol) は細胞への感 染を介したィンフルェンザの増殖を阻害する物質あるいは抗ィンフルェンザ薬などの 薬剤として使用し得る。 発明の効果
以上説明したように、 本発明による新規なウイッカロール (wickerol) ならびに糸 状菌 FK 1 - 3 7 3 7株からの物質および該物質の製造法が微生物法によって得られ 、 そして、 得られた物質はインフルエンザウイルスの増殖阻害活性物質、 インフルェ
ンザ薬などの薬剤として有効に使用し得る。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、 本発明はこれに限定されるも のではない。
寒天斜面培地で培養したトリコデルマ 'アト口ビリデ (Trichoderma atroviride) FK I - 3 7 3 7 (FERM ABP-11099) より、 グルコース 2.0 %、 ポリペプトン (日本 国、 日本製薬社) 0.5 %、 酵母エキス (日本国、 オリエンタル酵母工業社) 0.2 %、 寒天 0.1 %、 リン酸ニ水素力リウム 0.1 %、 硫酸マグネシゥ厶七水和物 0.05%からな る液体培地 (pH 6.0) が、 100 m l入った 500 m 1容三角フラスコに 1白金耳接種し 、 27°Cで 2日間振盪培養した。
得られた種培養液を可溶性デンプン 3.0 %、 グリセロール 1.0 %、 大豆粉 2.0 %、 乾燥酵母 [Fermipan、 GBィングレディェンッ社、 オランダ国] 0.3 %、 炭酸カルシゥ ム 0.2 %、 リン酸二水素カリウム 0.05 %、 硫酸マグネシウム七水和物 0.05 %から なる液体培地 (pH 6.5) が、 100 m l入った 500 m 1容三角フラスコ 90本に各 1 m 1 ずつ植菌し、 27°Cで 4日間振盪培養した。
培養の終了した 500 m 1容三角フラスコ 90本にそれぞれ 100 m lのエタノールを加 えて 1時間激しく撹拌した。 次に、 その抽出液中のエタノールを減圧留去し、 得られ た水溶液の P Hを水酸化ナトリゥムで 9に調整した後、 等量のノルマルへキサンで抽 出し、 濃縮乾固して 1.38 gの粗物質を得た。 このうち、 0.70gをノルマルへキサンで 充填したシリカゲルカラム ( 2.2 X 15.0cm) にのせ、 ノルマルへキサン一ァセト ン (100 : 5) で溶出し、 目的とする活性の見られた画分を回収し、 減圧濃縮により 25.3mgのゥイツカロ一ル (wickerol) を白色粉末として得た。 産業上の利用可能性
本発明は、 糸状菌に属しウイッカロール (wickerol) を生産する能力を有する微生 物を培地で培養し、 培養物中にウイッカロール (wickerol) を蓄積せしめ、 該培養物 からウイッカロール (wickerol) を採取することを特徴とするウイッカロールおよび その製造法である。 得られたウイッカロールはィンフルェンザウィルスの増殖阻害活 性物質、 およびィンフルェンザ薬などの薬剤として有効に使用し得る。