本発明の課題は、被検体の所定部位をより高精度に、且つ、より高速に検出する放射線治療装置制御装置および放射線照射方法を提供することにある。
本発明による放射線治療装置制御装置は、互いに異なる複数の方向のうちの所定方向を除く複数不完全方向からそれぞれ撮像された複数不完全透過画像に基づいて不完全3次元データを算出する不完全3次元データ算出部と、イメージャシステムを用いてその所定方向から追加透過画像を撮像する撮像部と、その追加透過画像とその不完全3次元データとに基づいて完全3次元データを算出する完全3次元データ算出部と、その完全3次元データに基づいて被写体の内部の一部の位置を算出する位置算出部とを備えている。その完全3次元データは、一般的に、複数の方向からそれぞれ撮像された複数の透過画像に基づいて算出されることに比較して、その追加透過画像とその不完全3次元データとに基づいてより速く算出されることができる。このため、放射線治療装置制御装置は、追加透過画像を撮像してからその位置をより速く算出することができる。さらに、放射線治療装置制御装置は、複数不完全透過画像を用いないでその所定方向から撮像された追加透過画像のみを用いてその位置を算出することに比較して、その位置をより高精度に算出することができる。
その位置算出部は、その複数の方向からそれぞれ撮像された複数完全透過画像に基づいて算出された基準完全3次元データをその完全3次元データに比較することにより、その被検体の一部の位置を算出することが好ましい。
本発明による放射線治療装置制御装置は、その追加透過画像とその不完全3次元データとに基づいてシフト量を算出するシフト量算出部をさらに備えている。このとき、その完全3次元データ算出部は、その追加透過画像に映し出される像がそのシフト量だけずれて映し出されるシフト後透過画像に基づいてその完全3次元データを算出する。たとえば、放射線治療装置制御装置は、その透過画像に基づいて算出される完全3次元データのボケの程度が小さくなるようにそのシフト量を算出するときに、より尤もらしい完全3次元データを算出することができる。
その不完全3次元データは、第1不完全3次元データと、その第1不完全3次元データと異なる第2不完全3次元データとを含んでいる。このとき、その完全3次元データ算出部は、その追加透過画像とその第1不完全3次元データとに基づいて第1完全3次元データを作成し、その追加透過画像とその第2不完全3次元データとに基づいて第2完全3次元データを算出する。その位置算出部は、その第1不完全3次元データまたはその第2不完全3次元データのいずれかに基づいてその位置を算出する。たとえば、放射線治療装置制御装置は、その第1不完全3次元データとその第2不完全3次元データとのうちのボケの程度が小さい不完全3次元データを用いて算出された完全3次元データを用いてその位置を算出するときに、より尤もらしい位置を算出することができる。
その不完全3次元データ算出部は、その複数の方向のうちのその所定方向と異なる他の所定方向を除く他の複数不完全方向からそれぞれ撮像された他の複数不完全透過画像に基づいて他の不完全3次元データを算出する。このとき、その撮像部は、そのイメージャシステムを用いてその他の所定方向から他の追加透過画像を撮像する。その完全3次元データ算出部は、その他の追加透過画像とその他の不完全3次元データとに基づいて他の完全3次元データを算出する。その位置算出部は、その他の完全3次元データに基づいてその被写体の内部の一部の位置を算出する。このため、放射線治療装置制御装置は、その所定方向と異なる他の所定方向から透過画像を撮像するようにイメージャシステムが移動したときにも、その被写体の内部の一部の位置を算出することができる。
本発明による放射線治療装置制御装置は、その位置に基づいて治療用放射線を照射する治療用放射線照射装置を駆動する照射制御部をさらに備えている。このとき、放射線治療装置制御装置は、その所定方向から撮像された追加透過画像のみに基づいて算出された位置に基づいて治療用放射線照射装置を駆動することに比較して、治療用放射線が照射される位置をより高精度に制御することができる。
その治療用放射線照射装置は、そのイメージャシステムと同体に運動するように支持されることが好ましい。
本発明による放射線治療システムは、本発明による放射線治療装置制御装置と、その治療用放射線照射装置と、そのイメージャシステムとを備えていることが好ましい。
本発明による放射線照射方法は、互いに異なる複数の方向のうちの所定方向を除く複数不完全方向からそれぞれ撮像された複数不完全透過画像に基づいて不完全3次元データを算出するステップと、イメージャシステムを用いてその所定方向から追加透過画像を撮像するステップと、その追加透過画像とその不完全3次元データとに基づいて完全3次元データを算出するステップと、その完全3次元データに基づいて被写体の内部の一部の位置を算出するステップとを備えている。その完全3次元データは、一般的に、複数の方向からそれぞれ撮像された複数の透過画像に基づいて算出されることに比較して、その追加透過画像とその不完全3次元データとに基づいてより速く算出されることができる。このため、本発明による放射線照射方法は、追加透過画像を撮像してからその位置をより速く算出することができる。さらに、本発明による放射線照射方法は、複数不完全透過画像を用いないでその所定方向から撮像された追加透過画像のみを用いてその位置を算出することに比較して、その位置をより高精度に算出することができる。
その位置は、その複数の方向からそれぞれ撮像された複数完全透過画像に基づいて算出された基準完全3次元データをその完全3次元データに比較することにより算出されることが好ましい。
本発明による放射線照射方法は、その追加透過画像とその不完全3次元データとに基づいてシフト量を算出するステップをさらに備えている。このとき、その完全3次元データは、その追加透過画像に映し出される像がそのシフト量だけずれて映し出されるシフト後透過画像に基づいて算出される。たとえば、本発明による放射線照射方法は、その透過画像に基づいて算出される完全3次元データのボケの程度が小さくなるようにそのシフト量を算出するときに、より尤もらしい完全3次元データを算出することができる。
その不完全3次元データは、第1不完全3次元データと、その第1不完全3次元データと異なる第2不完全3次元データとを含んでいる。このとき、その位置は、その追加透過画像とその第1不完全3次元データとに基づいて作成される第1完全3次元データまたはその追加透過画像とその第2不完全3次元データとに基づいて作成される第2完全3次元データのいずれかに基づいて算出される。たとえば、本発明による放射線照射方法は、その第1不完全3次元データとその第2不完全3次元データとのうちのボケの程度が小さい不完全3次元データを用いて算出された完全3次元データを用いてその位置を算出するときに、より尤もらしい位置を算出することができる。
本発明による放射線照射方法は、その複数の方向のうちのその所定方向と異なる他の所定方向を除く他の複数不完全方向からそれぞれ撮像された他の複数不完全透過画像に基づいて他の不完全3次元データを算出するステップと、そのイメージャシステムを用いてその他の所定方向から他の追加透過画像を撮像するステップと、その他の追加透過画像とその他の不完全3次元データとに基づいて他の完全3次元データを算出するステップと、その他の完全3次元データに基づいてその被写体の内部の一部の位置を算出するステップとをさらに備えている。このとき、本発明による放射線照射方法は、その所定方向と異なる他の所定方向から透過画像を撮像するようにイメージャシステムが移動したときにも、その被写体の内部の一部の位置を算出することができる。
本発明による放射線照射方法は、その位置に基づいて治療用放射線を照射する治療用放射線照射装置を駆動するステップをさらに備えている。このとき、本発明による放射線照射方法は、その所定方向から撮像された追加透過画像のみに基づいて算出された位置に基づいて治療用放射線照射装置を駆動することに比較して、治療用放射線が照射される位置をより高精度に制御することができる。
図面を参照して、本発明による放射線治療装置制御装置の実施の形態を記載する。その放射線治療装置制御装置2は、図1に示されているように、放射線治療システム1に適用されている。放射線治療システム1は、放射線治療装置制御装置2と放射線治療装置3とを備えている。放射線治療装置制御装置2は、パーソナルコンピュータに例示されるコンピュータである。放射線治療装置制御装置2は、双方向に情報を伝送することができるように、放射線治療装置3に接続されている。
図2は、放射線治療装置3を示している。放射線治療装置3は、旋回駆動装置11とOリング12と走行ガントリ14と首振り機構15と治療用放射線照射装置16とを備えている。旋回駆動装置11は、回転軸17を中心に回転可能にOリング12を土台に支持し、放射線治療装置制御装置2により制御されて回転軸17を中心にOリング12を回転させる。回転軸17は、鉛直方向に平行である。Oリング12は、回転軸18を中心とするリング状に形成され、回転軸18を中心に回転可能に走行ガントリ14を支持している。回転軸18は、鉛直方向に垂直であり、回転軸17に含まれるアイソセンタ19を通る。回転軸18は、さらに、Oリング12に対して固定され、すなわち、Oリング12とともに回転軸17を中心に回転する。走行ガントリ14は、回転軸18を中心とするリング状に形成され、Oリング12のリングと同心円になるように配置されている。放射線治療装置3は、さらに、図示されていない走行駆動装置を備えている。その走行駆動装置は、放射線治療装置制御装置2により制御されて回転軸18を中心に走行ガントリ14を回転させる。
首振り機構15は、走行ガントリ14のリングの内側に固定され、治療用放射線照射装置16が走行ガントリ14の内側に配置されるように、治療用放射線照射装置16を走行ガントリ14に支持している。首振り機構15は、パン軸21およびチルト軸22を有している。チルト軸22は、走行ガントリ14に対して固定され、回転軸18に交差しないで回転軸18に平行である。パン軸21は、チルト軸22に直交している。首振り機構15は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、パン軸21を中心に治療用放射線照射装置16を回転させ、チルト軸22を中心に治療用放射線照射装置16を回転させる。
治療用放射線照射装置16は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、治療用放射線23を放射する。治療用放射線23は、パン軸21とチルト軸22とが交差する交点を通る直線に概ね沿って放射される。治療用放射線23は、一様強度分布を持つように形成されている。治療用放射線照射装置16は、MLC(マルチリーフコリメータ)20を備えている。そのMLC20は、放射線治療装置制御装置2により制御され、治療用放射線23の一部を遮蔽することにより、治療用放射線23が患者に照射されるときの照射野の形状を変更する。
治療用放射線23は、このように治療用放射線照射装置16が走行ガントリ14に支持されることにより、首振り機構15で治療用放射線照射装置16がアイソセンタ19に向かうように一旦調整されると、旋回駆動装置11によりOリング12が回転し、または、その走行駆動装置により走行ガントリ14が回転しても、常に概ねアイソセンタ19を通る。即ち、走行・旋回を行うことで任意方向からアイソセンタ19に向けて治療用放射線23の照射が可能になる。
放射線治療装置3は、さらに、複数のイメージャシステムを備えている。すなわち、放射線治療装置3は、診断用X線源24、25とセンサアレイ32、33とを備えている。診断用X線源24は、走行ガントリ14に支持されている。診断用X線源24は、走行ガントリ14のリングの内側に配置され、アイソセンタ19から診断用X線源24を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置されている。診断用X線源24は、放射線治療装置制御装置2により制御されてアイソセンタ19に向けて診断用X線35を放射する。診断用X線35は、診断用X線源24が有する1点から放射され、その1点を頂点とする円錐状のコーンビームである。診断用X線源25は、走行ガントリ14に支持されている。診断用X線源25は、走行ガントリ14のリングの内側に配置され、アイソセンタ19から診断用X線源25を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置されている。診断用X線源25は、放射線治療装置制御装置2により制御されてアイソセンタ19に向けて診断用X線36を放射する。診断用X線36は、診断用X線源25が有する1点から放射され、その1点を頂点とする円錐状のコーンビームである。
センサアレイ32は、走行ガントリ14に支持されている。センサアレイ32は、診断用X線源24により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した診断用X線35を受光して、その被写体の透過画像を生成する。センサアレイ33は、走行ガントリ14に支持されている。センサアレイ33は、診断用X線源25により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した診断用X線36を受光して、その被写体の透過画像を生成する。センサアレイ32、33としては、FPD(Flat Panel Detector)、X線II(Image Intensifier)が例示される。
このようなイメージャシステムによれば、センサアレイ32、33により得た画像信号に基づき、アイソセンタ19を中心とする透過画像を生成することができる。
放射線治療装置3は、さらに、センサアレイ31を備えている。センサアレイ31は、センサアレイ31と治療用放射線照射装置16とを結ぶ線分がアイソセンタ19を通るように配置されて、走行ガントリ14のリングの内側に固定されている。センサアレイ31は、治療用放射線照射装置16により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した治療用放射線23を受光して、その被写体の透過画像を生成する。センサアレイ31としては、FPD、X線IIが例示される。
放射線治療装置3は、さらに、カウチ41とカウチ駆動装置42とを備えている。カウチ41は、放射線治療システム1により治療される患者43が横臥することに利用される。カウチ41は、図示されていない固定具を備えている。その固定具は、その患者が動かないように、その患者をカウチ41に固定する。カウチ駆動装置42は、カウチ41を土台に支持し、放射線治療装置制御装置2により制御されてカウチ41を移動させる。
図3は、放射線治療装置制御装置2を示している。その放射線治療装置制御装置2は、コンピュータであり、図示されていないCPUと記憶装置と入力装置と出力装置とインターフェースとを備えている。そのCPUは、放射線治療装置制御装置2にインストールされるコンピュータプログラムを実行して、その記憶装置と入力装置と出力装置とを制御する。その記憶装置は、そのコンピュータプログラムを記録し、そのCPUに利用される情報を記録し、そのCPUにより生成される情報を記録する。その入力装置は、ユーザに操作されることにより生成される情報をそのCPUに出力する。その入力装置としては、キーボード、マウスが例示される。その出力装置は、そのCPUにより生成された情報をユーザに認識可能に出力する。その出力装置としては、ディスプレイが例示される。そのインターフェースは、放射線治療装置制御装置2に接続される外部機器により生成される情報をそのCPUに出力し、そのCPUにより生成された情報をその外部機器に出力する。その外部機器は、放射線治療装置3の旋回駆動装置11と走行駆動装置と首振り機構15と治療用放射線照射装置16とMLC20とイメージャシステム(診断用X線源24、25、センサアレイ31、32、33)とカウチ駆動装置42とを含んでいる。
そのコンピュータプログラムは、治療計画部50と第1撮像部51と不完全3次元データ算出部52と第2撮像部53とシフト量算出部54と完全3次元データ算出部55とスライス画像表示部56と位置算出部57と照射制御部58とを含んでいる。
治療計画部50は、図示されていないコンピュータ断層撮影装置により生成された患者43の3次元データをユーザにより閲覧可能に出力装置に表示する。治療計画部50は、さらに、入力装置を用いて入力される情報に基づいて治療計画を作成する。その治療計画は、患者43の3次元データを示し、照射角度と線量との組み合わせを示している。その照射角度は、患者43の患部に治療用放射線23を照射する方向を示し、Oリング回転角とガントリ回転角とを示している。そのOリング回転角は、土台に対するOリング12の位置を示している。そのガントリ回転角は、Oリング12に対する走行ガントリ14の位置を示している。その線量は、その各照射角度から患者43に照射される治療用放射線23の線量を示している。
第1撮像部51は、旋回駆動装置11を用いて回転軸17を中心にOリング12を回転させて、Oリング12を治療計画部50により作成された治療計画が示すOリング回転角に配置する。第1撮像部51は、放射線治療装置3の走行駆動装置を用いて回転軸18を中心に走行ガントリ14を200度回転させる。このとき、第1撮像部51は、走行ガントリ14が0.5度回転するごとに、放射線治療装置3のイメージャシステムを用いて患者43の透過画像を撮像する。すなわち、第1撮像部51は、互いに異なる400の方向から患者43に照射された診断用X線35、36を用いて400枚の透過画像を撮像する。
第1撮像部51は、さらに、その複数の透過画像を角度情報に対応付けて記憶装置に一時的に記録する。すなわち、その複数の透過画像のうちの任意の要素は、角度情報のうちの1つの要素に対応している。その角度情報は、その透過画像が撮像されるときに、その患者43に診断用X線35または診断用X線36が照射される方向を示している。
不完全3次元データ算出部52は、第1撮像部51により撮像された複数の透過画像のうちの一部の透過画像を除く透過画像を再構成することにより不完全3次元データを算出する。その一部の透過画像は、治療計画部50により作成された治療計画が示す照射角度から治療用放射線23が照射されるように治療用放射線照射装置16が配置されたときに、放射線治療装置3のイメージャシステムにより撮像される透過画像を示している。
第2撮像部53は、治療計画部50により作成された治療計画が示す照射角度から治療用放射線23が照射されるように治療用放射線照射装置16が配置されているときに、放射線治療装置3のイメージャシステムを用いて患者43の透過画像を撮像する。その透過画像は、患者43を映し出している。
シフト量算出部54は、第2撮像部53により撮像された透過画像に映し出される像が少しだけずれて映し出されるシフト後透過画像を複数算出する。シフト量算出部54は、その算出された複数のシフト後透過画像ごとに、その算出されたシフト後透過画像の各々と不完全3次元データ算出部52により算出された不完全3次元データとに基づいて複数の完全3次元データを算出する。シフト量算出部54は、その算出された複数の完全3次元データのうちから第1撮像部53により撮像された複数の透過画像のみに基づいて算出された基準完全3次元データとの差が最小である完全3次元データを選択する。シフト量算出部54は、その選択された完全3次元データの算出に用いられたシフト後透過画像と第2撮像部53により撮像された透過画像とに基づいてシフト量を算出する。そのシフト量は、ある像がそのシフト後透過画像に映し出された位置からその像が第2撮像部53により撮像された透過画像に映し出された位置までずれた方向と距離とを示している。すなわち、シフト量算出部54は、第2撮像部53により撮像された透過画像と不完全3次元データ算出部52により算出された不完全3次元データとに基づいてそのシフト量を算出する。
完全3次元データ算出部55は、第1撮像部51により撮像された複数の透過画像を再構成することにより基準完全3次元データを算出する。その基準完全3次元データは、第1撮像部51により複数の透過画像が撮像された時の患者43を立体的に示している。
完全3次元データ算出部55は、さらに、第2撮像部53により撮像された透過画像とシフト量算出部54により算出されたシフト量とに基づいてシフト後透過画像を算出する。そのシフト後透過画像は、第2撮像部53により撮像された透過画像に映し出される像がシフト量算出部54により算出されたシフト量だけずれて映し出される透過画像を示している。
完全3次元データ算出部55は、そのシフト後透過画像と不完全3次元データ算出部52により算出された不完全3次元データとに基づいて完全3次元データを算出する。その完全3次元データは、第2撮像部53により複数の透過画像が撮像された時の患者43を立体的に示している。
スライス画像表示部56は、完全3次元データ算出部55により算出された完全3次元データに基づいて患者43の内部の状態をユーザに認識可能に表示装置に表示する。たとえば、スライス画像表示部56は、完全3次元データ算出部55により算出された完全3次元データに基づいてスライス画像を算出する。そのスライス画像は、第2撮像部53により透過画像が撮像された時刻の患者43の断面の画像を示している。スライス画像表示部56は、さらに、そのスライス画像を表示装置に表示する。
位置算出部57は、完全3次元データ算出部55により算出された基準完全3次元データと完全3次元データとを比較することにより、患者43の患部の位置を算出する。なお、位置算出部57は、その基準完全3次元データを用いない他の算出方法により患者43の患部の位置を算出することもできる。その算出方法としては、完全3次元データに映し出される患部の像のボケの程度を示すボケ量と患部の位置との関係を予め測定し、その関係を参照して、算出された完全3次元データに映し出される患部の像のボケ量に基づいて患部の位置を算出する方法が例示される。
照射制御部58は、位置算出部57により算出された患部の位置を治療用放射線23が透過するように、首振り機構15を用いて治療用放射線照射装置16を駆動し、MLC20を用いて治療用放射線23の照射野の形状を制御する。照射制御部58は、首振り機構15とMLC20とを駆動した後で、治療用放射線照射装置16を用いて治療用放射線23を出射する。なお、照射制御部58は、その患部位置を治療用放射線23が透過するように、旋回駆動装置11または走行駆動装置またはカウチ駆動装置42をさらに用いて、患者43と治療用放射線照射装置16との位置関係を変更することもできる。
図4は、完全3次元データ算出部55により算出される完全3次元データを示している。その完全3次元データ45は、複数のボクセルに複数の透過率を対応付けている。その複数のボクセルは、それぞれ、患者43が配置される空間を隙間なく充填する複数の立方体に対応している。その立方体の一辺の長さとしては、0.4mmが例示される。その各ボクセルに対応する透過率は、その各ボクセルに対応する位置の立方体のX線の透過率を示している。このとき、完全3次元データ45に基づいて算出される患者43の患部の位置は、2枚の透過画像だけに基づいて算出される患者43の患部の位置に比較して、より高精度である。
完全3次元データ45は、互いに異なる複数の方向から患者43に照射される診断用X線35(36)に基づいてそれぞれ撮像された複数の透過画像に基づいて算出され、または、不完全3次元データと2枚の透過画像とに基づいて算出される。その不完全3次元データは、その2枚の透過画像の撮像に用いられる診断用X線35(36)の方向を除く複数の方向から患者43に照射される診断用X線35(36)に基づいてそれぞれ撮像された複数の透過画像に基づいて算出される。完全3次元データ45は、不完全3次元データに基づいて算出されるときの計算量が複数の透過画像のみに基づいて算出されるときの計算量より小さい。このため、完全3次元データ45は、複数の透過画像のみに基づいて算出されることに比較して、不完全3次元データに基づいてより速く算出されることができる。
本発明による放射線照射方法の実施の形態は、放射線治療システム1を用いて実行され、治療計画を作成する動作と、不完全3次元データを作成する動作と、放射線治療する動作とを備えている。
その治療計画を作成する動作では、まず、ユーザは、コンピュータ断層撮影装置により生成された患者43の3次元データを放射線治療装置制御装置2に入力する。放射線治療装置制御装置2は、その3次元データに基づいて、その患者の患部とその患部の周辺の臓器とを示す画像を生成する。ユーザは、放射線治療装置制御装置2を用いてその画像を閲覧し、その患部の位置を特定する。ユーザは、さらに、その画像に基づいて治療計画を作成し、その治療計画を放射線治療装置制御装置2に入力する。その治療計画は、その患者の患部に治療用放射線を照射する照射角度と、その各照射角度から照射する治療用放射線の線量および性状とを示している。
図5は、不完全3次元データを作成する動作を示している。ユーザは、まず、治療計画を作成したときと同様の姿勢に放射線治療装置3のカウチ41に患者43を固定する。放射線治療装置制御装置2は、旋回駆動装置11を用いて回転軸17を中心にOリング12を回転させて、Oリング12を治療計画が示すOリング回転角に配置する。放射線治療装置制御装置2は、放射線治療装置3の走行駆動装置を用いて回転軸18を中心に走行ガントリ14を0.5度回転させるごとに、放射線治療装置3のイメージャシステムを用いて患者43の透過画像を撮像する(ステップS1)。放射線治療装置制御装置2は、さらに、その複数の透過画像を角度情報に対応付けて記憶装置に一時的に記録する。
放射線治療装置制御装置2は、その撮像された複数の透過画像のうちの一部の透過画像を除く透過画像に基づいて不完全3次元データを算出する(ステップS2)。その一部の透過画像は、治療計画が示す照射角度から治療用放射線23が照射されるように治療用放射線照射装置16が配置されたときに、放射線治療装置3のイメージャシステムにより撮像される透過画像を示している。
放射線治療装置制御装置2は、治療計画が示す照射角度が複数であるときに、その複数の照射角度ごとに複数の不完全3次元データを算出する。その不完全3次元データは、その対応する照射角度から治療用放射線23が照射されるように治療用放射線照射装置16が配置されたときに、放射線治療装置3のイメージャシステムにより撮像される透過画像を除く複数の透過画像に基づいて算出される。
放射線治療装置制御装置2は、ステップS1とステップS2とを複数回繰り返して実行する。このような繰り返しによれば、放射線治療装置制御装置2は、患者43の患部の位置が異なるときに透過画像を撮像することができ、互いに異なる複数の位置に配置される患部を示す複数の不完全3次元データを算出することできる。
放射線治療装置制御装置2は、ステップS1で撮像された複数の透過画像の全部を用いて1つの基準完全3次元データを算出する(ステップS3)。
図6は、放射線治療する動作を示している。放射線治療装置制御装置2は、不完全3次元データを作成する動作が実行された後に、治療計画部50により作成された治療計画が示す照射角度から治療用放射線23が照射されるように治療用放射線照射装置16を駆動する。すなわち、放射線治療装置制御装置2は、旋回駆動装置11を用いて回転軸17を中心にOリング12を回転させて、Oリング12を治療計画が示すOリング回転角に配置し、放射線治療装置3の走行駆動装置を用いて回転軸18を中心に走行ガントリ14を回転させて、走行ガントリ14を治療計画が示すガントリ回転角に配置する。
放射線治療装置制御装置2は、治療用放射線照射装置16が駆動された後に、放射線治療装置3のイメージャシステムを用いて患者43の透過画像を撮像する(ステップS11)。
放射線治療装置制御装置2は、不完全3次元データを作成する動作で算出された不完全3次元データとその撮像された透過画像とに基づいてそのシフト量を算出する(ステップS12)。すなわち、放射線治療装置制御装置2は、その透過画像に映し出される像が少しだけずれて映し出されるシフト後透過画像を複数算出する。放射線治療装置制御装置2は、その算出された複数のシフト後透過画像ごとに、その算出されたシフト後透過画像の各々とその不完全3次元データとに基づいて複数の完全3次元データを算出する。放射線治療装置制御装置2は、その算出された複数の完全3次元データのうちから不完全3次元データを作成する動作で算出された基準完全3次元データとの差が最小である完全3次元データを選択する。放射線治療装置制御装置2は、その選択された完全3次元データの算出に用いられたシフト後透過画像とステップS11で撮像された透過画像とに基づいてシフト量を算出する。
放射線治療装置制御装置2は、ステップS11で撮像された透過画像に映し出される像がそのシフト量だけずれて映し出されるシフト後透過画像を算出する。放射線治療装置制御装置2は、そのシフト後透過画像とその不完全3次元データとに基づいて完全3次元データを算出する(ステップS13)。放射線治療装置制御装置2は、その不完全3次元データが複数ある場合には、その複数の不完全3次元データごとに、そのシフト後透過画像とその不完全3次元データの各々とに基づいて複数の完全3次元データを生成し、その複数の完全3次元データのうちからその基準完全3次元データとの差が最小である完全3次元データを算出する。放射線治療装置制御装置2は、その算出された完全3次元データに基づいて患者43の断面のスライス画像を算出し、そのスライス画像を表示装置に表示する。
放射線治療装置制御装置2は、その完全3次元データに基づいて患者43の患部の位置を算出する(ステップS14)。放射線治療装置制御装置2は、その算出された位置を治療用放射線23が透過するように、首振り機構15を用いて治療用放射線照射装置16を駆動し、MLC20を用いて治療用放射線23の照射野の形状を制御する。放射線治療装置制御装置2は、首振り機構15とMLC20とを駆動した後で、診断用X線35、36が出射していない期間に、治療用放射線照射装置16を用いて治療用放射線23を出射する(ステップS16)。
放射線治療装置制御装置2は、治療計画に示される線量の治療用放射線23が患者43の患部に照射されるまで、ステップS11~ステップS16の動作を周期的に繰り返して実行する。その周期としては、0.2秒が例示される。
その完全3次元データは、一般的に、複数の方向からそれぞれ撮像された複数の透過画像に基づいて算出されることに比較して、その追加透過画像とその不完全3次元データとに基づいてより速く算出されることができる。このため、このような動作によれば、放射線治療装置制御装置2は、運動する患部の位置を動体追尾照射することに十分な程度に高速に、完全3次元データを算出することができ、患部の位置を算出することができる。
このような3次元データにより算出される患部の位置は、一般に、2枚の透過画像により算出される患部の位置に比較して、より高精度である。このため、このような動作によれば、放射線治療装置制御装置2は、事前に撮像された複数の透過画像を用いないでステップS11で撮像された透過画像のみを用いてその位置を算出することに比較して、その位置をより高精度に算出することができる。この結果、放射線治療システム1は、患者43の患部に治療用放射線23をより高精度に照射することができ、患部と異なる正常な細胞に照射される治療用放射線の線量を低減することができる。
患者43の患部の位置が異なる複数の不完全3次元データからそれぞれ算出される複数の完全3次元データから1つの完全3次元データを選択することによれば、放射線治療装置制御装置2は、ボケの程度が小さい完全3次元データを患部の位置の算出に用いることができ、患部の位置をより高精度に算出することができる。
なお、放射線治療装置制御装置2は、治療計画が示す複数の照射角度ごとに算出された複数の不完全3次元データを記録するときに、ステップS11で撮像された透過画像と同じ方向から撮像された透過画像を除いて算出された不完全3次元データを用いて、完全3次元データを算出する。すなわち、このような動作は、放射線治療する動作が実行されている最中に治療用放射線照射装置16が移動する、いわゆるArc照射治療に適用することができる。
なお、放射線治療装置制御装置2は、ステップS16で、患部が所定の位置に配置されていないときに治療用放射線23を照射しないで、患部が所定の位置に配置されているときに治療用放射線23を照射することもできる。すなわち、本発明による放射線照射方法は、呼吸同期照射(ゲイテッドイラディエイション)が実行される放射線治療にも適用されることができる。このとき、本発明による放射線照射方法は、既述の実施の形態と同様にして、患者43の患部の位置をより高精度に、且つ、より高速に検出することができ、患者43の患部に治療用放射線23をより高精度に照射することができる。
なお、放射線治療装置制御装置2は、治療用放射線照射装置とイメージャシステムとを独立に駆動する放射線治療装置を用いて本発明による放射線照射方法を実行することもできる。このような放射線治療装置は、周知であり、たとえば、特開2006-21046号公報に開示されている。このとき、本発明による放射線照射方法は、既述の実施の形態と同様にして、患者43の患部の位置をより高精度に、且つ、より高速に検出することができ、患者43の患部に治療用放射線23をより高精度に照射することができる。
本発明による放射線治療装置制御装置および放射線照射方法は、被検体の所定部位をより高精度に、且つ、より高速に検出することができる。この結果、本発明による放射線治療装置制御装置または放射線照射方法が適用された放射線治療装置は、被検体の所定部位に治療用放射線をより高精度に照射することができる。