WO2009104811A9 - 超音波計測装置及び超音波計測方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)Cスキャン超音波探傷法
集束ビームを送受信する超音波送受信子を被検体に対し2次元走査する、Cスキャン超音波探傷法があり(例えば非特許文献1参照)、高分解能が必要な内部欠陥検出には、この探傷法が多用されている。
(2)開口合成法
上記したCスキャン超音波探傷法の他に高分解能な映像化を目的とした技術として開口合成法がある(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。この開口合成法の原理を、図30に示される振動子アレイ120を被検体110の表面に接触させて欠陥映像化を行う場合を例に挙げて説明する。振動子アレイ120の各々の振動子から超音波を送信して欠陥エコーを検出し、超音波の送信からエコー受信までの時間から欠陥エコーの被検体110中でのビーム路程を測定する。個々の振動子120p(p=1,2,・・・)から送信され受信される超音波は空間的に拡がりをもっているので、振動子120pで検出したエコーのビーム路程がWp(p=1,2,・・・)であるとすると、半径Wpの中空の球Sp(p=1,2,・・・)のうち、振動子120pが送受信する超音波の指向角範囲のどこかに反射源が存在する。全ての振動子を用いてエコーを検出し、中空の球Spの交点を求めると、この交点が欠陥像となる。図30の例では、振動子アレイ120中A、B、C、D、Eが検出したエコーのビーム路程から欠陥像を合成する様子を示している。
このようなアレイ型超音波プローブを用いた開口合成法では、アレイ振動子の配置、形状に対応した一定の領域で欠陥像の合成が可能であり、超音波プローブの機械的な走査が不要であり、高速に超音波探傷を行うことができる。そして、ある深さ位置に焦点を設定して開口合成処理を行えば、前記(1)の集束ビームを用いたCスキャン超音波探傷法と同等の探傷が可能である。
(3)集束ビームを用いた開口合成法
前記(1)(2)を組み合わせた方法として集束ビームを用いた開口合成法がある(例えば特許文献3参照)。この方法は、集束型超音波プローブを走査し、各測定点で受信した信号を開口合成処理して、一層の高分解能化を行うものである。図31に示されるように、被検体の再構成像を同じ大きさの微小要素に分け,各測定点Pi,jごとに計測したビーム路程Wi,jから欠陥エコー源となりうる微小要素PFk,l,mを選び出すことを特徴とする方法であり、この方法により集束ビームを用いた探傷において分解能を向上させることができる。
また、アレイ型超音波プローブを用いて、ある位置に焦点を設定して各振動子の信号を用いて前記(2)の開口合成を行うことにより得られた波形を、集束型超音波プローブの集束ビームを用いた探傷で得られた波形と同等とみなせば、アレイ型超音波プローブを用いた開口合成法と組み合わせることができる。
[特許文献]
(社)日本非破壊検査協会編集、「超音波探傷試験II」、(社)日本非破壊検査協会(2000)、p.151~152
(1)Cスキャン超音波探傷法
集束ビームを用いた探傷の分解能は焦点におけるビーム直径dwで表せる。ビーム直径dwは、超音波ビームの焦点距離F、波長λ、振動子(超音波送受信子)の直径Dを用いると(1)の式で近似的に表せる。
dw=(F λ)/ D …(1)
従って、分解能を上げるためには、
(a)焦点距離Fを短くする。
(b)波長λを短くする。
(c)超音波送受信子の直径Dを大きくする。
という3つの方法がある。
しかし、(a)の方法では、被検体の表面に近い部分しか探傷できなくなるという問題が起きる。(b)の方法では、超音波の減衰が大きくなり、欠陥の検出が難しくなるという問題が起きる。そして、(c)の方法では、超音波送受信子の電気インピーダンスが低くなりすぎてしまい、使用できなくなるという問題が起きる。従って、集束ビームの使用による高分解能化には限界がある。
(2)開口合成法
この開口合成法は、図30にも示されているように、広い範囲にわたって欠陥エコーを検出するために、超音波送受信子には広い指向角が必要とされ、超音波ビームを狭い領域に集束させて測定を行うCスキャン探傷法とは相容れない技術とされてきた。
(3)集束ビームを用いた開口合成法
この方法においても、高集束な超音波ビームを用いた場合には、分解能が向上しないという問題点があった。具体的には、超音波振動子が大きい集束型超音波プローブや開口合成処理に用いる超音波振動子アレイ列の領域が大きいアレイ型超音波プローブを用い、かつ、焦点距離、被検体までの距離、プローブからの接触媒質換算距離が、超音波プローブのサイズに対して十分に長くない場合に問題があった。
以下にその理由を示す。
この方法では、超音波の送受信は超音波振動子の中心の一点でなされていると仮定し、超音波プローブから微小要素までの往復伝搬時間を、図32に示されるように、送受信点から微小要素までの唯一の経路上を超音波が伝搬するものとして算出している。しかし、実際には超音波の送受信は超音波振動子全面で行われている。このため、特に超音波振動子が大きく焦点距離が短い集束型超音波プローブを用いる場合には、一点での送受信という仮定から大きく外れるため、上記の特許文献3に記載されているような技術で内部欠陥映像化の分解能を上げることは困難であった。
上記目的を達成するために、本発明は以下からなる超音波計測装置を提供する:
超音波プローブが形成する焦点を被検体に対して相対的に走査しつつ、超音波を前記被検体に向けて送信し、前記被検体の内部欠陥からの反射波を受信する送受信手段と、
前記超音波プローブと内部欠陥との間を伝搬する超音波の波形を、送受信面の全面にて合成した超音波の波形として扱って求められた参照伝搬時間を用いて、各測定位置で受信した信号の開口合成処理を行う開口合成処理手段。
また、本発明に係る超音波計測装置は、以下であるのが好ましい。
各測定位置において、前記反射波に基づいて内部欠陥までの伝搬時間を測定する伝搬時間測定手段を備え、
前記開口合成処理手段が、前記参照伝搬時間が等しくなる被検体内部の位置を結んで形成された等伝搬時間面を、前記伝搬時間測定手段で測定した伝搬時間に対応して抽出して、等伝搬時間面の位置を欠陥位置とする。
また、本発明に係る超音波計測装置は、前記開口合成処理手段で求められた欠陥候補位置毎に、前記走査を行った間に抽出された回数を算出して、該算出した回数を欠陥候補位置に対応させて表示を行う表示手段を有するのが好ましい。
また、本発明に係る超音波計測装置において、前記開口合成処理手段が、前記参照伝搬時間に基づいて算出された遅延時間により、前記送受信手段で受信した反射波を遅延させた後、加算して信号を生成するのが好ましい。
また、本発明に係る超音波計測装置は、前記開口合成処理手段で生成された信号データを表示する表示手段を有するのが好ましい。
また、本発明に係る超音波計測装置において、前記参照伝搬時間を以下のように算出するのが好ましい:
超音波プローブの送受信面の全面を、複数領域に分割し、
該分割された各領域と内部欠陥との間を送受信される超音波の波形を求め、
該波形を前記超音波プローブ全面について合成した波形から参照伝搬時間を算出する。
また、本発明に係る超音波計測装置において、前記参照伝搬時間を以下のように算出するのが好ましい:
予め、人工的に作成した内部欠陥を有する被検体を用いて、前記超音波プローブが形成する焦点と前記被検体とを相対的に走査しつつ、超音波を前記被検体に向けて送信し、前記被検体の内部欠陥からの反射波を受信することに参照伝搬時間をより求める。
また、本発明に係る超音波計測装置において、前記超音波プローブは、集束型超音波プローブであるのが好ましい。
また、本発明に係る超音波計測装置において、前記超音波プローブは、複数の振動子が配列されたアレイ型超音波プローブであるのが好ましい。さらに、本発明に係る超音波計測装置は前記各振動子の信号を開口合成処理によって焦点を形成して、前記各測定点で受信した信号とする信号処理手段を有するのが好ましい。
また、本発明に係る超音波計測装置は、前記開口合成処理手段で、開口合成処理された信号を用いて欠陥判定を行う欠陥判定手段を有するのが好ましい。
また、本発明に係る超音波計測方法は、
超音波を前記被検体に向けて送信し、前記被検体の内部欠陥からの反射波を受信する送受信ステップと、
前記超音波プローブと内部欠陥との間を伝搬する超音波の波形を、送受信面の全面にて合成した超音波の波形として扱って求められた参照伝搬時間を用いて、各測定点で受信した信号の開口合成処理を行う開口合成処理ステップと、
を備えたものである。
発明の効果
本発明は、超音波プローブが形成する焦点を前記被検体に対して相対的に走査しつつ、超音波を前記被検体に向けて送信し、前記被検体の内部欠陥からの反射波を受信する送受信手段と、前記超音波プローブと内部欠陥との間を伝搬する超音波の波形を、送受信面の全面にて合成した超音波の波形として扱って求められた参照伝搬時間を用いて、各測定点で受信した信号の開口合成処理を行う開口合成処理手段とを備えており、このため、内部欠陥の計測分解能を向上させることができる。
図2は、本発明の等伝搬時間面の説明図である。
図3は、超音波伝搬解析により超音波伝搬時間を得るための処理方法を示したフローチャートである。
図4A~図4Cは、伝搬時間を得る方法の手順を示した説明図である。
図5は、等伝搬時間面を用意する際の処理方法を示したフローチャートである。
図6は、伝搬時間の変化量と等伝搬時間面との関係を示した説明図である。
図7は、等伝搬時間面のデータの例である。
図8は、欠陥像を合成する際の処理を示したフローチャートである。
図9は、水伝搬時間と被検査体伝搬時間の説明図である。
図10は、1つの等伝搬時間面を用いて異なる伝搬時間での等伝搬時間面を描く方法の説明図である。
図11は、映像化処理の説明図である。
図12A~図12Cは、本発明の実施例の効果を従来方法の結果とを対比して示した図である。
図13は、本発明の実施形態2における開口合成の説明図である。
図14は、本発明の実施形態3に係る超音波による内部欠陥の映像化装置の構成図である。
図15は、本発明の等伝搬時間面の説明図である。
図16は、超音波伝搬解析により超音波伝搬時間を得るための処理方法を示したフローチャートである。
図17は、欠陥位置での超音波波形を取得するための処理方法を示したフローチャートである。
図18は、アレイ型超音波プローブで受信し、開口合成処理を行って出力波形を取得するための処理方法を示したフローチャートである。
図19は、伝搬時間を得る方法の手順を示した説明図である。
図20は、等伝搬時間面を用意する際の処理方法を示したフローチャートである。
図21は、伝搬時間の変化量と等伝搬時間面との関係を示した説明図である。
図22は、等伝搬時間面のデータの例である。
図23は、欠陥像を合成する際の処理を示したフローチャートである。
図24は、水伝搬時間と被検査体伝搬時間の説明図である。
図25は、1つの等伝搬時間面を用いて異なる伝搬時間での等伝搬時間面を描く方法の説明図である。
図26は、映像化処理の説明図である。
図27A~図27Cは、本発明の実施例の効果を従来方法の結果とを対比して示した図である。
図28は、本発明の実施形態4において、伝搬時間変化量のプロファイルから遅延時間を構成して波形再合成を行う方法の説明図である。
図29は、線集束型リニアアレイ型超音波プローブを示した図である。
図30は、従来の開口合成方法の原理説明図である。
図31は、従来技術(特許文献3)における欠陥像合成方法の説明図である。
図32は、従来技術における超音波プローブと微小要素の経路を示す説明図である。
計測超音波振動子が大きい集束型超音波プローブや開口合成処理に用いる超音波振動子アレイ列の領域が大きいアレイ型超音波プローブを用いて、焦点距離、被検体までの距離、超音波プローブからの接触媒質換算距離が超音波プローブの送受信を行う振動子領域のサイズに対して、十分に長くない場合には、
従来技術では、高分解能に計測を行うことができないとの知見を得た。
具体的には、特許文献3の実施例に示される条件(焦点距離、被検体距離、接触媒質換算距離が、振動子領域(送受信を行う振動子領域のサイズ)に対して約8倍)であれば、特許文献3の技術であっても分解能的には問題ない。しかし、その条件よりも、焦点距離、被検体距離、接触媒質換算距離の、振動子領域に対する比が小さくなると、分解能が悪くなることがわかった。
なお、接触媒質換算距離Lとは、下記式で表され、超音波が複数の媒質中を伝搬する場合、超音波プローブと任意の位置(例えば、内部欠陥までの距離など)までの実際の距離をプローブの振動子が接触している媒質での距離に換算して表す距離であり、換算は屈折を考慮して幾何学的に行う。実質的には、焦点距離と同等の値である。
L=L1+L2x(C2/C1)+L3x(C3/C1)+−−−−−−−−−−
ただし、L1,L2,L3,…;媒質1,2,3,…(媒質1は接触媒質)中の実際の伝搬距離、
C1,C2,C3,…;媒質1,2,3,…(媒質1は接触媒質)中の音速
その分解能が悪くなる原因としては、従来の方法では、超音波の送受信は、超音波プローブの中で送受信を行う領域の中心の一点でなされていると仮定し、その領域の中心から微小要素までの伝搬時間を元に、伝搬距離を算出し、その伝搬距離を半径とする球面上に、反射源(内部欠陥)が存在する可能性があるとして、開口合成を行っている。しかしながら、焦点距離、被検体距離、接触媒質距離の、振動子領域に対する比が小さくなってくると、内部欠陥と超音波プローブの中心までの距離と、内部欠陥と超音波プローブの中心以外の点(中心周辺から端部までの領域)との距離とが異なっている場合の差が、伝搬距離に対して、その比率が大きくなってくる。
また、超音波の送受信は、超音波プローブの全面で行われ、全面の各領域で受信した信号の合成されたものが、受信信号となっていると考えられる。つまり、従来の開口合成処理は、伝搬時間そのものが伝搬距離として、超音波プローブ中心の一点から、その伝搬距離を半径として球面を描き、それを反射源である欠陥の存在する可能性のある位置としているので、超音波プローブの中心以外の周辺領域における送受信の影響を無視していることになるので、上述のような条件では高分解能な計測が困難となる。
よって、焦点距離、被検体距離、接触媒質距離の、振動子領域に対する比が小さくなるという条件で、高分解能な計測を行うためには、超音波プローブの中心以外の周辺から端部までの領域における送受信の影響を考慮する必要があるとの知見を得たのである。
上述のように、本発明は、超音波プローブでは超音波の送受信が超音波プローブの全面でなされている点に着目し、超音波プローブの位置と内部欠陥の位置によって、内部欠陥からの反射波の伝搬時間がどのように変わるかを予め解析しておいて、その解析結果を用いた信号処理を行うことにより、大口径、短焦点の超音波プローブを用いた探傷に開口合成法を組み合わせることが可能であるという知見に基づくものである。その具体例を実施形態1及び実施形態2としてそれそれぞれ説明する。
実施形態1.
図1は、本発明の実施形態1に係る超音波計測装置の一例である、超音波映像化装置の構成を示すブロック図である。
図1において、1は検査対象である被検体を示す。この例では被検体1は静止被検体であり、媒体は水を用いており、液浸法を用いて内部欠陥のイメージングを行う。10は集束ビームを送受信する集束型超音波プローブ(以下、単に超音波プローブともいう)であり、送信回路11からの一定周期の電気パルスにより超音波集束ビームを被検体1に向け送信するとともに、被検体1の表面及び内部からの反射波(エコー)を受信する。受信された信号は、受信増幅器12により後の信号処理に都合のよい適正レベルに増幅される。
なお、送信回路11及び受信増幅器12は本発明の送受信手段に相当する。超音波プローブ10は、適当な走査手段によって被検体1上で2次元走査(x−y走査)され、その位置はx方向位置検出手段21及びy方向位置検出手段22によってそれぞれ検出され、反射波形データ部13に送られる。なお、集束ビームを送受信する超音波プローブ10は、曲面形状の送受信面をもつ1つの超音波振動子で集束ビームを形成する構成としてもよいし、複数の超音波振動子を曲率を持たせて配列させ、それによって集束ビームを形成する構成としてもよい。
反射波形データ部13は、受信増幅器12、x方向位置検出手段21及びy方向位置検出手段22の出力に基づいて各位置Pi,jに対応した反射波形データを検出し、その出力は欠陥像合成処理部14に送られる。欠陥像合成処理部14は、本発明の開口合成手段に相当するものであり、超音波の伝搬時間を計測する。送信パルスと被検体表面での反射した表面エコー51を受信するまでタイミングの差、すなわち水伝搬時間を、表面エコー51と欠陥エコー52との受信タイミングの差、すなわち超音波の被検体伝搬時間を計測する。なお、被検体表面と超音波プローブ10の走査面がほぼ平行であれば、水伝搬時間は一定と考えてよいので、水伝搬時間を1回測定(あるいは、配置関係からもとめてもよい)しておけば、以降は表面エコー51と欠陥エコー52との受信タイミングの差である被検体伝搬時間のみを測定すればよい。計測された各伝搬時間(以下、測定伝搬時間という)は、このときの超音波プローブ10の中心の位置Pi,j(i:x方向の位置、j:y方向の位置)と対応付けて記録される。
また、等伝搬時間面データ部15には、記憶装置から構成されており、例えば超音波伝搬解析によって予め求めておいた等伝搬時間面のデータを保存しておくものとする。この等伝搬時間面とは、図2に示されるように、プローブの表面からその点にある微小欠陥までの往復の伝搬時間が等しくなるような点を結んで作られた面である。この等伝搬時間面は、超音波プローブ10の被検体表面までの距離および被検体表面からの欠陥の深さによって変化するため、欠陥の深さ毎の複数の等伝搬時間面のデータを用意する。
本実施形態1では、欠陥像合成処理に先立ち超音波伝搬解析による等伝搬時間面の作成を行う。なお、本発明はこれに限るものではなく、等伝搬時間面の作成は欠陥像合成中に行ってもよい。
図2に示されるような等伝搬時間面の作成が必要であるが、その一例として超音波伝搬解析による伝搬時間の算出手順を、図3のフローチャート及び図4の説明図に基づいて説明する。
図3は、超音波伝搬解析により超音波伝搬時間(以下、参照伝搬時間という)を得る方法のフローチャートであり、図4は、参照伝搬時間を得る方法の手順を示した説明図である。ここで、図4では簡単のためプローブや経路を2次元で表しているが、本実施形態1においては、プローブや経路は3次元空間中にあるとして解析を行っている。但し、本発明はこれに限るものではなく2次元上で処理を行ってもよい。
(S1)超音波プローブ表面を微小面積の領域(以下、微小要素という)に分ける。
(S2)微小要素から送信される超音波波形を設定する。
(S3)超音波プローブの表面上の各領域から、予め設定された微小欠陥(本発明の設定内部欠陥に相当する)までの経路を求める。図4の上段では、4つの領域A−Dについてその経路を示している。ここでは微小要素の中心において、点で送受信がされるものとして経路を求める。なお、A−Dは、説明のために、微小要素の一部を示したものである。
(S4)1つの領域から送信された超音波が経路を伝搬して微小欠陥に到達したときの波形を求める。このとき経路上を伝搬するときの伝搬時間と減衰を考慮する。
(S5)図4の中段のようにして、順に、上記の(S4)の計算を全ての微小要素(図では、A~Dを順番に)に対して行い、順次求められた波形を足し合わせる。
(S6)全ての領域に対して計算を行うまで、上記の(S4)及び(S5)の処理を繰り返し、全ての領域に対しての計算が終了すると、処理(S7)に移行する。
(S7)上記の(S5)で得られた波形の超音波を微小欠陥から出射させる。
(S8)そして、このとき1つの領域で受信される波形を求める。
(S9)得られた超音波波形を足し合わせる。
(S10)図4の下段のようにして、上記の(S8)及び(S9)の計算を全ての領域に対して行うまで繰り返す。
(S11)上記の(S9)で得られた合成波形から到達時刻を読み取る。このとき、時刻を読み取る方法は、閾値を設定して立ち上がり時刻を取得する、同様に閾値を取得して立下り時刻を取得する、波形がピーク値となる時刻を取得するなどがあり、この中から適切な方法を選ぶ。
(S12)プローブからの出射時刻と到達時刻との差から伝搬時間を求める。このとき、時刻を読み取る方法は、閾値を設定して立ち上がり時刻を取得する、同様に閾値を取得して立ち下り時刻を取得する、波形がピーク値となる時刻を取得するなどがあり、この中から適切な方法を選ぶ。
次に、前記の方法を用いて等伝搬時間面のデータを準備する方法を説明する。図5はその方法を示したフローチャートである。この手順を以下に示す。
(S21)水距離(図4の上段参照)を設定する。
(S22)被検体距離(図4の上段参照)を設定する。
(S23)被検体内部欠陥とプローブ中心軸とのずれ(図4上段参照)を設定する。
(S24)参照伝搬時間を計算する(図3のフローチャート参照)。
(S25)欠陥信号を受信し得る範囲でプローブ中心軸とのずれを変化させ、等伝搬時間面を作成するのに十分なデータが得られるまで、上記の(S23)(S24)の操作を繰り返す。なお、被検体とプローブ中心軸とのずれを1回に変化させる量(移動ピッチ)は、例えば、測定に要求される空間分解能程度以下とするのがよく、内部欠陥からの信号が得られる範囲までプローブを移動させればよい。
(S26)上記の(S23)(S24)(S25)で得られたプローブ中心軸とのずれと参照伝搬時間の変化量との関係から、超音波の伝搬速度を用いて参照伝搬時間が等しくなる位置を求めて、それらの位置を結んで、等伝搬時間面のデータを作成する。例えば、被検体内部欠陥とプローブ中心軸とのずれが0のときを基準として、プローブ中心軸の各位置における参照伝搬時間の差から伝搬速度を用いて深さ方向の距離の差を求めて、その距離の差から深さ位置を求めればよい。等伝搬時間面のデータは、図6に示されるように、結果として参照伝搬時間の増減を打ち消すように微小欠陥の深さを調整することにより得られることになる。このとき、本実施形態1においては、参照伝搬時間及び等伝搬時間面はプローブ中心軸とのずれが0のときの値との差として求めている。なお、上記等伝搬時間面の算出手順は、一例であり、これに限定されない。例えば、プローブ中心軸の位置に加えて、内部欠陥深さも変数として、複数の内部欠陥深さにおいて参照伝搬時間を求めて、その結果から参照伝搬時間が等しくなる位置を結んで、等伝搬時間面としてもよい。また、計算で求めてもよいし、実験により求めてもよい。
(S27)必要となり得る(例えば、測定対象において想定し得る)全ての水距離、被検体距離に対応する等伝搬時間面が揃うまで上記の(S21)から(S26)までの操作を繰り返す。
上記の方法により、必要となり得る全ての水距離、被検体距離における等伝搬時間面が準備できる。但し本発明における等伝搬時間面の作成方法は前記の超音波伝搬解析を用いた等伝搬時間面の作成方法に限るものではなく、他の解析方法を用いても良いし、実験により求めても良い。
図7は、上記のようにして求められる等伝搬時間面のデータの一例であり、これは図1の等伝搬時間面データ部15に格納されて、欠陥像合成処理部14において欠陥像を合成する際に用いられる。なお、図7において、計測時に計測した伝搬時間と比較参照する参照伝搬時間は、プローブ中心とのずれが0の欄に該当する伝搬時間である。
次に、上記のように求めた等伝搬時間面を用いて計測を行う、図1の超音波映像化装置の動作を説明する。
図8は、図1の超音波映像化装置において欠陥像を合成する際の処理を示したフローチャートである。
(S31)超音波プローブ10を操作してCスキャン探傷を行い、反射波形データ部13は、受信増幅器12、x方向位置検出手段21及びy方向位置検出手段22の出力に基づいて、各位置Pi,jに対応した反射波形データを検出する。
(S32)欠陥像合成処理部14は、反射波形データの中で欠陥エコーの最も大きいPi,jでの反射波形から、図9に示されるように、水伝搬時間と被検体伝搬時間を検出し、それらの測定伝搬時間から水距離・被検体距離(欠陥深さ)を取得する。
(S33)欠陥像合成処理部14は、等伝搬時間面データ部15に格納されて用意してある等伝搬時間面のデータ(図7参照)のなかで水距離・被検体距離が上記の(S32)で得られた水距離・被検体距離と近いものを選択する。本実施形態1においては、図10に示されるように、ここで選んだ1つの等伝搬時間面形状データのみを用いて以後の処理を行う。なお、図10においては、1つの等伝搬時間面データを用いて異なる参照伝搬時間での等伝搬時間面を描く(求める)方法を示したものであり、参照伝搬時間T2の等伝搬時間面データに対して、参照伝搬時間が異なっている場合(T1、T3)においても、誤差が大きくなければ、深さ位置を変えるだけで、参照伝搬時間T2の等伝搬時間面と同じ形状の等伝搬時間面を利用することができる。この場合には、1個の等伝搬時間面のデータがあれば足りることになる。なお、検出対象となる内部欠陥の存在する深さ範囲が広く、等伝搬時間面が同じ形状として扱えない場合には、計測した伝搬時間に対応する参照伝搬時間を参照して、対応する等伝搬時間面のデータを用いればよい。
(S34)欠陥像合成処理部14は、上記の(S33)で選択した等伝搬時間面のデータを用いて映像化処理を行う。本実施形態1における映像化処理方法を図11に示す。ここで、図11においては簡単のため2次元で記述しているが、本実施形態1においては3次元的に処理を行っている。但し、本発明はこれに限定されるものではなく2次元で処理を行ってもよい。本実施形態1における映像化処理方法の手順を以下に示す。なお、欠陥像合成処理部14は、図11の構成に相当する画像メモリを保有しているものとする。
(a)各位置Pi,jのなかで欠陥エコーが検出できているプローブ中心位置Pi,jについて、図11のように伝搬時間(以下、測定伝搬時間ともいう)を検出する。
(b)被検体1中で欠陥が存在し得る領域を微小体積要素にわけ、それぞれの微小体積要素に3次元のアドレスPfk,l,m(k:x方向の位置,l:y方向の位置,m:Z方向の位置)をつける。
(c)各位置Pi,jでの測定伝搬時間から水距離と被検体距離を算出し、欠陥がプローブ中心軸上にあったと仮定したときの欠陥位置(深さ)を算出し、その欠陥位置に対応するPfk,l,mを図11のように測定伝搬時間に対応する等伝搬時間面の中心として設定する。
(d)上記の(c)で設定された等伝搬時間面の中心から等伝搬時間面(図10参照)を形成し、その等伝搬時間面の位置に対応する各微小要素Pfk,l,mに対し、Pfk,l,mに設けたカウンタCk,l,mにカウント1を加算する。
(e)上記の(c)、(d)の操作を、欠陥エコーが検出できている全ての位置Pi,jについて行う。
(S35)上記の(S34)で得られたデータを映像化する。本実施形態1における映像化の方法は以下に示すとおりである。
(a)全(k,l)に対し、それぞれ(k,l)を固定したときのCk,l,mの最大値Cmax(k,l)を求める。
(b)Cmax(k,l)が閾値以上になる各(k,l)に対し、別の閾値を決めてカウンタCk,l,mをmの小さい側からチェックしていったときに初めて閾値以上となるmをm(k,l)とする。
(c)上記の(b)で得られたm(k,l)を用い、各(k,l,m(k,l))に対応する各微小要素の隣り合う中心同士を線で結んでポリゴンを構成する。
(d)上記の(c)で得られたポリゴンを3次元表示する。
なお、映像化方法は前記のような3次元ポリゴン表示方法に限るものではなく、その他の3次元表示方法や2次元表示方法であってもよい。
ここで、周波数50MHz、送受信子直径6mm、水中焦点距離15mmの超音波プローブを用い、鋼片サンプルに直径300μmの人工穴を空けて、その穴を図12(a)のようにCスキャン探傷し、前記欠陥像合成方法で映像化して欠陥像表示装置16に表示した例を図12(b)に示す。図12(c)は上記の特許文献3記載の方法で映像化処理を行い、前記欠陥像合成法(S35)の方法で3次元表示した図である。この実施例では、水中焦点距離、接触媒質換算距離Lが、振動子領域(振動子径)の約2.5である。図12(c)では人工穴の映像がz方向に平らになっているのに対して、図12(b)では人工穴の曲面が再現されていて、形状の分解能が向上していることがわかる。
なお、上記の説明では、欠陥像合成方法で映像化し欠陥像表示装置16に表示する例について説明したが、本実施形態1においては、それに加えて、欠陥判定装置17が、欠陥像合成処理部14により開口処理された上記の信号に基づいて欠陥判定を行う。また、欠陥判定をするだけであれば、合成結果を映像化し表示する欠陥像表示装置16は必ずしもなくてもよく、欠陥像合成処理部14からの合成結果を欠陥判定装置17が入力し、その判定結果のみを出力するような構成にしてもよい。逆に、欠陥自動判定をしなければ、欠陥判定装置17はなくてもよい。
上述したように、本実施形態1においては、集束型超音波プローブ10と被検体1との間に水を介在させ、集束型超音波プローブ10を被検体1に対して相対的に走査しつつ、超音波を被検体1に向けて送信し、被検体1の内部欠陥からの反射波を受信する送信回路11・受信増幅器12(送受信手段)と、各測定点において、反射波に基づいて内部欠陥までの伝搬時間を測定する反射波形データ部13(伝搬時間測定手段)と、該測定した伝搬時間に対応する等伝搬時間面データを用いて欠陥候補の位置を抽出する欠陥像合成処理部14(欠陥位置抽出手段)と、前記位置毎に、走査を行った間に抽出された回数を算出して、表示用画像メモリの位置に対応するアドレスに、算出した回数を書き込んで、画像表示を行う欠陥像表示装置16(表示手段)とを備えた内部欠陥の超音波映像化装置であって、欠陥像合成処理部14(欠陥位置抽出手段)において、前記等伝搬時間面データは、前記集束型超音波プローブ10と設定内部欠陥との間を伝搬する超音波の伝搬時間を、前記集束型超音波プローブ10の送受信面の全面を複数領域に分割し、該分割された各領域と設定内部欠陥との間を送受信される超音波の波形を求め、該波形を前記集束型超音波プローブ10の全面について合成した信号波形から算出するようにして、集束型超音波プローブ10と設定内部欠陥との相対位置に対する伝搬時間の変化量を求めて、伝搬時間の変化量に基づいて伝搬時間が等しくなる位置を結んで形成したデータを求めており、このデータによって内部欠陥の形状を高分解能で映像化することが可能になっている。
実施形態2.
本実施形態2は、図1の欠陥像合成処理部14を上記の演算処理とは異なった処理をするようにした例である。本実施形態2の欠陥像合成処理部14は、上記の等伝搬時間面データに代えて、遅延時間データを用いる。このため、等伝搬時間面データ部15に代えて、遅延時間データが格納される記憶装置(図示せず)が設けられる。この遅延時間データ(遅延時間群)は、伝搬時間の変化量データ(図6の変換を行う前のデータ)から求めるものであり、図13の概念図に示されるように、伝搬時間の変化量データが長いほど遅延時間を小さく、変化量データが短いほど遅延時間を大きくしたデータである。等伝搬時間面データと同様にして、水距離・欠陥深さの各値に対応して求められて記憶装置に記憶されている。
欠陥像合成処理部14は、図8に示されるフローチャートのうち、等伝搬時間面選択の処理(S33)とデータ映像化処理(S34)の具体的内容が異なるが、それ以外の処理は同じである。
等伝搬時間面選択の処理(S33)は、遅延時間データ選択処理になる。具体的には、超音波プローブで測定した受信波形の水距離・欠陥深さに対応する、遅延時間データ(遅延時間群)を選択する処理を行う。
データ映像化処理(S34)は、その遅延時間データ選択処理で選択した遅延時間データを用いて、図13のように開口合成処理を行う。
具体的には、プローブ走査した多数点のうち、隣接した所定数のプローブ位置(図29の例では10点)を選択し、その10点で測定した反射波形データに対し、選択した遅延時間データ(遅延時間群)に対応して、各プローブ位置に波形を遅延処理をする。図13に示される場合においては、外側のプローブに信号には遅延時間を小さくし、内側のプローブには遅延時間を大きくしている。これによって、所定数のプローブのうち、その中心に位置するプローブの下に欠陥があれば、欠陥波形が揃うことにより、欠陥信号が強調されて、欠陥の存在を検知できる。一方、中心に位置するプローブの下に欠陥が無ければ、例えば、外側のプローブの直下に欠陥があれば、各プローブで受信した欠陥の信号は、遅延しても位相が揃わないので、相殺され、強調されずに、欠陥信号を検出できない。つまり、中心に位置するプローブの直下には欠陥が無い、ということになる。
このような処理を多数点測定したデータに対して、選択範囲を移動させながら順に所定数のデータを選択して、繰り返すことにより開口合成波形を得る。そして、遅延時間データ(遅延時間群)を選択する際には、複数の深さに対応した遅延時間データ(遅延時間群)をそれぞれ選択して、上記の演算処理を繰り返す。そして、得られた波形を適当な方法(Aスコープ、Bスコープ、Cスコープ、三次元表示)で表示する。
なお、本実施形態2も、欠陥像合成方法で映像化し欠陥像表示装置16に表示する例について説明したが、それに加えて、欠陥判定装置17が、欠陥像合成処理部14により開口処理された上記の信号に基づいて欠陥判定を行う。また、欠陥判定をするだけであれば、合成結果を映像化し表示する欠陥像表示装置16は必ずしもなくてもよく、欠陥像合成処理部14からの合成結果を欠陥判定装置17が入力し、その判定結果のみを出力するような構成にしてもよい。逆に、欠陥自動判定をしなければ、欠陥判定装置17はなくてもよい。
上述したように、本実施形態2においては、集束型超音波プローブ10と被検体1との間に水を介在させ、集束型超音波プローブ10を被検体1に対して相対的に走査しつつ、超音波を被検体1に向けて送信し、被検体1の内部欠陥からの反射波を受信する送信回路11・受信増幅器12(送受信手段)と、該受信した反射波を遅延させたのち加算して信号を生成する欠陥像合成処理部14(信号生成手段)と、該生成された信号データを画像メモリに出力して表示する欠陥像合成処理部14(表示手段)とを備えた内部欠陥の超音波映像化装置であって、欠陥像合成処理部14(信号生成手段)において、集束型超音波プローブ10と設定内部欠陥との間を伝搬する超音波の伝搬時間を、集束型超音波プローブ10の送受信面の全面を複数領域に分割し、該分割された各領域と設定内部欠陥との間を送受信される超音波の波形を求め、該波形を前記集束型超音波プローブ10の全面について合成した信号波形から算出するようにして、集束型超音波プローブ10と設定内部欠陥との相対位置に対する伝搬時間の変化量を求めて、該伝搬時間の変化量から遅延時間を求め、該遅延時間により反射波を遅延して内部欠陥の映像信号を生成するようにしたことにより、内部欠陥を高分解能で映像化することができる。
次に、本発明をアレイ型超音波プローブに適用した実施形態を説明する。
下記の実施形態3、4では、実施形態の1、2の集束型超音波プローブを走査して、各測定点の受信信号を得るのに代えて、アレイ型超音波プローブの各振動子の信号を開口合成処理により焦点を形成して各測定点での受信信号とするものである。そして、その各測定点での受信信号を、更に開口合成処理するものである。つまり、実施形態1及び2と同様に、アレイ型超音波プローブでは超音波の送受信が複数の振動子のアレイ列でなされている点に着目し、アレイ型超音波プローブが開口合成または集束によって形成する焦点の位置と内部欠陥の位置によって、内部欠陥からの反射波の伝搬時間がどのように変わるかを予め解析しておいて、その解析結果を用いた信号処理を行うことにより、超音波振動子アレイ列全体の面積が大きく焦点距離が短いプローブ及び開口合成の設定を用いた探傷の分解能を向上させることが可能であるという知見に基づくものである。その具体例を実施形態3及び実施形態4としてそれぞれ説明する。
実施形態3.
図14は本発明の実施形態3に係る超音波計測装置の一例である、超音波映像化装置の構成を示すブロック図である。図14において、1は検査対象である被検体を示す。この例では被検体1は静止被検体であり、媒体は水を用いており、液浸法を用いて内部欠陥のイメージングを行う。10は超音波を送受信するアレイ型超音波プローブであり、送信回路111からの一定周期の電気パルスが駆動素子選択回路112を通り各振動子に送信される電気信号により超音波ビームを被検体1に向け送信するとともに、被検体1の表面及び内部からの反射波(エコー)を受信する。受信された信号は、受信回路113及びアレイ信号処理回路114により、開口合成処理が行われ、また、後の信号処理に都合のよい適正レベルに増幅される。アレイ型超音波プローブ10aは、適当な走査手段によって被検体1上で2次元走査(x−y走査)または1次元走査(y走査)され、その位置はx方向位置検出手段21及びy方向位置検出手段22によってそれぞれ検出され、出力波形データ部115に送られる。
出力波形データ部115は、アレイ信号処理回路114、x方向位置検出手段21及びy方向位置検出手段22の出力に基づいてこのときのアレイ型超音波プローブ10aが開口合成によって形成する焦点Pi,j(i:x方向の位置、j:y方向の位置)に対応した出力波形データ(実施形態1,2における集束型超音波プローブの出力波形データに相当)を検出し、その出力は欠陥像合成処理部116に送られる。欠陥像合成処理部116は、送信時刻と欠陥エコー52の受信時刻の差、すなわち超音波の伝搬時間を計測する。ここで計測される伝搬時間は、送信時刻と被検体表面での反射した表面エコー51の受信時刻の差、すなわち水伝搬時間と、表面エコー51と欠陥エコー52との受信タイミングの差、すなわち超音波の被検体伝搬時間である。なお、被検体表面とアレイ型超音波プローブ10aの走査面がほぼ平行であれば、水伝搬時間は一定と考えてよいので、水伝搬時間を1回測定(あるいは、配置関係からもとめてもよい)しておけば、以降は表面エコー51と欠陥エコー52との受信タイミングの差である被検体伝搬時間のみを測定すればよい。計測された各伝搬時間(以下、測定伝搬時間ともいう)は、各位置Pi,jと対応付けて記録される。
また、等伝搬時間面データ部117は記憶装置であり、例えば超音波伝搬解析によって予め求めておいた等伝搬時間面のデータを保存しておくものとする。この等伝搬時間面とは、図15に示されるように、開口合成によって得られる、その点にある微小欠陥までの往復の伝搬時間が等しくなるような点を結んで作られた面である。この等伝搬時間面は、アレイ型超音波プローブ10aの焦点に対する欠陥の深さによって変化するため、欠陥の深さ毎の複数の等伝搬時間面のデータを用意する。なお、上記の出力波形データ部115、欠陥像合成処理部116及び等伝搬時間面データ部117は、欠陥像再構成信号処理部200を構成している。
なお、アレイ信号処理回路114と欠陥像合成処理部116は、ともに開口合成処理を行うという点で同じ機能を有するが、アレイ信号処理回路114は、各測定点でアレイ型超音波プローブの各振動子が受信した信号に対して、開口合成処理を行うものであり、これにより各測定点で、集束ビームによって受信した信号を得るものであり、請求項9に記載された信号処理手段(前記各振動子の信号を開口合成処理によって焦点を形成して、前記各測定点で受信した信号とする信号処理手段)に対応する。一方、欠陥像合成処理部116は、各測定点で、このアレイ信号処理回路114で開口合成処理された信号を、開口合成処理をして欠陥像を合成するものである。この欠陥像合成処理部116では、本発明の等伝搬時間面データが必須であるが、アレイ信号処理回路114では、振動子が小さいので、本願発明の等伝搬時間面データを用いなくても、従来法の合成開口処理(振動子中心から等距離に反射源が存在して扱う)を用いればよい。
また、アレイ型超音波プローブ10aは、送受信する領域範囲に含まれる各振動子を全て行うとして説明したが、全てでなくても、1つ間隔や2つ間隔などで隙間をあけて送受信をする振動子を選択して、それを用いて送受信を行うようにしてもよい。
本実施形態3では、欠陥像合成処理に先立ち超音波伝搬解析による等伝搬時間面の作成を行う。なお、本発明はこれに限るものではなく、等伝搬時間面の作成は欠陥像合成中に行ってもよい。
図15に示されるような等伝搬時間面の作成は、超音波伝搬解析による伝搬時間W(参照伝搬時間という)の算出により行うことができる。これを図16、図17、図18のフローチャート及び図19の説明図に基づいて説明する。
図16は、超音波伝搬解析により参照伝搬時間を得る方法全体のフローチャートであり、図17は、図16の処理S43(欠陥位置での超音波波形取得)の詳細を示すフローチャートであり、図18は、図16の処理S44(アレイプローブで受信し、開口合成処理を行った超音波波形取得)の詳細を示すフローチャートであり、図19は、参照伝搬時間を得る方法の手順を示した説明図である。ここで、図19ではリニアアレイプローブにおける2次元上の解析を示している。但し、本発明はこれに限るものではなく、アレイプローブの形状はリニアでなくてもよいし、解析は3次元上で行ってもよい。
(S41)振動子から送信される超音波波形を設定する。
(S42)超音波プローブの各振動子から、予め設定された微小欠陥(本発明の設定内部欠陥に相当する)までの経路を求める。図19の上段では、2つの振動子についてその経路を示している。
(S43)欠陥位置での超音波波形を取得する。
(S43)の詳細な処理としては、図17のフローチャートに示されるように次の処理を行う。
(S43−1)出力用超音波波形データの初期化
(S43−2)計算する振動子を決定
(S43−3)計算している振動子による微小欠陥位置での超音波波形を計算する。このとき振動子によって送信のタイミングが違う場合は、図19のように振動子に対応した時刻に送信されるよう設定する。また、経路上を伝搬するときの伝搬時間と減衰を考慮する。(図19参照)
(S43−4)得られた超音波波形を、順に出力用超音波波形データに足し合わせる。
(S43−5)送信に使用している全ての振動子に対して計算を行うまで、(S43−2)から(S43−4)までを繰り返す。
(S43−6)出力用超音波波形データを欠陥位置での超音波波形として出力
このような図17の処理の後、図16の処理(S44)に移行する。
(S44)アレイプローブで受信し、開口合成処理を行った出力波形を取得する。
(S44)の詳細としては、図18のフローチャートに示されるように次の処理を行う。
(S44−1)欠陥位置での超音波波形を微小欠陥位置から出射
(S44−2)受信に使用する全振動子の受信波形データを初期化
(S44−3)計算する振動子を決定
(S44−4)計算している振動子で受信される超音波波形を計算(図19参照)
(S44−5)受信に用いる全ての振動子に対して計算を行うまで、(S44−3)から(S44−4)までを繰り返す。
(S44−6)集束ビーム処理後の出力波形データを初期化
(S44−7)全振動子の受信波形データに、実際の集束ビーム処理に即した遅延処理を行う(図19参照)。
(S44−8)遅延処理を行った全振動子の受信波形データをそれぞれ出力波形データに足し合わせる(図19参照)。
このような図18の処理の後、図16の処理(S45)に移行する。
(S45)上記の(S44)で得られた出力波形から到達時刻を読み取る。このとき、時刻を読み取る方法は、閾値を設定して立ち上がり時刻を取得する、閾値を設定して立下り時刻を取得する、波形がピーク値となる時刻を取得するなどがあるが、特に限定されず得られた波形等に応じて適宜適切な方法を使用する。
(S46)プローブからの出射時刻と到達時刻との差から参照伝搬時間を求める。このとき、時刻を読み取る方法は、閾値を設定して立ち上がり時刻を取得する、同様に閾値を取得して立ち下り時刻を取得する、波形がピーク値となる時刻を取得するなどがあり、この中から適切な方法を選ぶ。
次に、前記の方法を用いて等伝搬時間面のデータを準備する方法を説明する。
図20はその方法を示したフローチャートである。この手順を以下に示す。
(S51)水距離(図19の上段参照)を設定する。
(S52)被検体距離(図19の上段参照)を設定する。
(S53)開口合成焦点深さ(例えば、被検体内での深さ位置、図19の上段参照)を設定する。
(S54)被検体内部欠陥と開口合成焦点とのずれ(深さ方向に直交する面内)を設定する。
(S55)開口合成処理した波形から参照伝搬時間を計算する(図16、図17及び図18のフローチャート参照)。
(S56)欠陥信号を受信し得る範囲で開口合成焦点との深さ方向に直交する面内のずれを変化させ、等伝搬時間面を作成するのに十分なデータが得られるまで、上記の処理(S54)(S55)の操作を繰り返す。なお、被検体と開口合成焦点とのずれを1回に変化させる量(移動ピッチ)は、例えば、測定に要求される空間分解能程度以下とするのがよく、内部欠陥からの信号が得られる範囲までプローブを移動させればよい。
(S57)上記の処理(S54)(S55)(S56)で得られた被検体と開口合成焦点との深さ方向に直交する面内のずれに対する参照伝搬時間の変化量の関係から、超音波の伝搬速度を用いて参照伝搬時間が等しくなる位置を求めて、それらの位置を結んで、等伝搬時間面のデータを作成する。例えば、被検体内部欠陥と開口合成焦点とのずれが0のときを基準として、プローブ中心軸の各位置における参照伝搬時間の差から伝搬速度を用いて深さ方向の距離の差を求めて、その距離の差から深さ位置を求めればよい。等伝搬時間面のデータは、図21に示されるように、結果として参照伝搬時間の増減を打ち消すように微小欠陥の深さを調整することにより得られることになる。このとき、本実施形態3においては、参照伝搬時間及び等伝搬時間面は開口合成焦点軸とのずれが0のときの値との差として求めている。なお、上記等伝搬時間面の算出手順は、一例であり、これに限定されない。例えば、開口合成焦点の位置に加えて、内部欠陥深さも変数として、複数の内部欠陥深さにおいて参照伝搬時間を求めて、その結果から参照伝搬時間が等しくなる位置を結んで、等伝搬時間面としてもよい。
(S58)必要となり得る(例えば、測定対象において想定し得る)全ての水距離、被検体距離および開口合成焦点深さに対応する等伝搬時間面が揃うまで上記の(S51)から(S57)までの操作を繰り返す。
上記の方法により、必要となり得る全ての水距離、被検体距離および開口合成焦点深さにおける等伝搬時間面が準備できる。但し、本発明における等伝搬時間面の作成方法は前記の方法に限るものではなく、実測定によるデータや超音波伝搬シミュレーションを利用しても良い。また、参照伝搬時間の計算方法は図16、図17、図18及び図19で示された方法に限るものではない。
また、各振動子の面積が、被検体に対して十分に大きい場合には、さらに振動子を複数の微小領域に分割し、各微小領域の信号を各振動子単位で加算することで処理すれば良い。
また、アレイ列方向と直交方向(図20の紙面奥行き方向)に面積が大きい場合にも、その直交方向に微小領域に分割して、行えば良い。(例えば図17のようなプローブで、Y方向に対して複数に分割する。)
また、振動子が1次元方向にのみ配列された例で説明したが、2次元に配列されたアレイ型プローブでも、適用可能である。
図22は、上記のようにして求められる等伝搬時間面のデータの例であり、これは図14の等伝搬時間面データ部117に格納されて、欠陥像合成処理部116において欠陥像を合成する際に用いられる。なお、図22において、計測した伝搬時間と比較参照する参照伝搬時間は、開口合成焦点とのずれが0の欄に該当する伝搬時間である。
次に、上記のように求めた等伝搬時間面のデータを用いて計測を行う、図14の超音波映像化装置の動作を説明する。
図23は、図14の超音波映像化装置において欠陥像を合成する際の処理を示したフローチャートである。
(S61)アレイ型超音波プローブ10a、駆動素子選択回路およびアレイ信号処理回路を操作して開口合成によって形成する焦点を走査しながら探傷を行い、出力波形データ部115は、駆動素子選択回路112、受信回路113、アレイ信号処理回路114、x方向位置検出手段21及びy方向位置検出手段22の出力に基づいて、各位置Pi,jに対応した出力波形データを検出する。
(S62)アレイ信号処理回路114または欠陥像合成処理部116は、出力波形データの中で欠陥エコーの最も大きいPi,jでの反射波形から、図24に示されるように、水伝搬時間と被検体伝搬時間を検出し、それらの伝搬時間から水距離・被検体距離(欠陥深さ)を取得する。
(S63)欠陥像合成処理部116は、等伝搬時間面データ部117に格納されて用意してある等伝搬時間面のデータ(図22参照)のなかで水距離・被検体距離と開口合成焦点深さの設定値が上記の(S62)で得られた水距離・被検体距離、開口合成焦点深さと近いものを選択する。本実施形態3においては、図25に示されるように、ここで選んだ1つの等伝搬時間面形状のみを用いて以後の処理を行う。なお、図25においては、1つの等伝搬時間面を用いて異なる参照伝搬時間での等伝搬時間面を描く(求める)方法を示したものであり、参照伝搬時間T2の等伝搬時間面に対して、参照伝搬時間が異なっている場合(T1、T3)においても、伝搬時間の差が大きくなければ、深さ位置を変えるだけで、参照伝搬時間T2の等伝搬時間面と同じ形状の等伝搬時間面を利用することができる(この場合には、1個の等伝搬時間面のデータがあれば足りることになる)。なお、検出対象となる内部欠陥の存在する深さ範囲が広く、等伝搬時間面が同じ形状として扱えない場合には、計測した伝搬時間に対応する参照伝搬時間を参照して、対応する等伝搬時間面のデータを用いればよい。
(S64)欠陥像合成処理部116は、上記の(S63)で選択した等伝搬時間面のデータを用いて映像化処理を行う。本実施形態3における映像化処理方法を図26に示す。ここで、図26においては簡単のため2次元で記述しているが、本実施形態3においては3次元的に処理を行っている。但し、本発明はこれに限定されるものではなく2次元で処理を行ってもよい。本実施形態1における映像化処理方法の手順を以下に示す。
(a)各焦点位置Pi,j(深さ方向に対して直交する面内における座標で、送受信する振動子群の中心位置にも相当)のなかで欠陥エコーが検出できている焦点位置Pi,jについて、図24のように伝搬時間(以下、測定伝搬時間ともいう)を検出する。測定伝搬時間の検出は、図14におけるアレイ信号処理回路114で行っても欠陥像合成処理部116で行ってもよく、本実施形態においてはアレイ信号処理回路114で行っている。
(b)被検体1中で欠陥が存在し得る領域を微小体積要素にわけ、それぞれの微小体積要素に3次元のアドレスPfk,l,m(k:x方向の位置,l:y方向の位置,m:Z方向の位置)をつける。
(c)各位置Pi,jでの測定伝搬時間から水距離と被検体距離を算出し、欠陥が送受信する振動子群の中心軸上(深さ方向に対して直交する面内における座標がPi,j)にあったと仮定したときの欠陥位置(深さ)を算出し、その欠陥位置に対応するPfk,l,mを図26のように測定伝搬時間に対応する等伝搬時間面の中心として設定する。
(d)上記の(c)で設定された等伝搬時間面の中心から等伝搬時間面(図25参照)を形成し、その等伝搬時間面の位置に対応する各微小領域Pfk,l,mに対し、Pfk,l,mに設けたカウンタCk,l,mにカウント1を加算する。
(e)上記の(c)、(d)の操作を、欠陥エコーが検出できている全ての位置Pi,jについて行う。
(S65)上記の(S64)で得られたデータを映像化する。本実施形態3における映像化の方法は以下に示すとおりである。
(a)全(k,l)に対し、それぞれ(k,l)を固定したときのCk,l,mの最大値Cmax(k,l)を求める。
(b)Cmax(k,l)が閾値以上になる各(k,l)に対し、別の閾値を決めてカウンタCk,l,mをmの小さい側からチェックしていったときに初めて閾値以上となるmをm(k,l)とする。
(c)上記の(b)で得られたm(k,l)を用い、各(k,l,m(k,l))に対応する各微小領域の隣り合う中心同士を線で結んでポリゴンを構成する。
(d)上記の(c)で得られたポリゴンを3次元表示する。
なお、映像化方法は前記のような3次元ポリゴン表示方法に限るものではなく、その他の3次元表示方法や2次元表示方法であってもよい。
ここで、周波数50MHz、アレイピッチ100μm、開口合成に用いるチャンネル数32、線集束ビームの水中焦点距離15mmの超音波線集束型アレイプローブ(図29に示すようなアレイ配列方向と直交方向に大きさ10mmの振動子面が曲率をもっており、その方向に集束する。)を用い、鋼片サンプルに直径300μmの人工穴を空けて、その穴を図27(a)のように探傷し、前記欠陥像合成方法で映像化した例を図27(b)に示す。なお、図27(b)は各振動子をさらに微小領域に分割して作成した等伝搬時間面を用いている。図27(c)は上記の特許文献3記載の方法で映像化処理を行い、前記欠陥像合成法(S65)の方法で3次元表示した図である。この実施例では、水中焦点距離、接触媒質換算距離Lが、振動子領域(振動子径)の約1.5である。図27(c)では人工穴の映像がz方向に平らになっているのに対して、図27(b)では人工穴の曲面が再現されていて、形状の分解能が向上していることがわかる。
なお、本実施形態3も、欠陥像合成方法で映像化し欠陥像表示装置16に表示する例について説明したが、それに加えて、欠陥判定装置17が、欠陥像合成処理部116により開口処理された上記の信号に基づいて欠陥判定を行う。また、欠陥判定をするだけであれば、合成結果を映像化し表示する欠陥像表示装置16は必ずしもなくてもよく、欠陥像合成処理部116からの合成結果を欠陥判定装置17が入力し、その判定結果のみを出力するような構成にしてもよい。逆に、欠陥自動判定をしなければ、欠陥判定装置17はなくてもよい。
上述のとおり、本実施形態3においては、アレイ型超音波プローブ10aと被検体1との間に水を介在させ、アレイ型超音波プローブ10aの受信信号に開口合成処理を行って形成される焦点を、被検体1に対して相対的に走査しつつ、超音波を被検体1に向けて送信し、被検体1の内部欠陥からの反射波を受信する送受信工程と、アレイ型超音波プローブ10aの各振動子で受信された信号に開口合成処理を行う信号処理工程と、得られた開口合成波形を設定された遅延時間により遅延させたのち加算して信号を生成する信号生成工程と、該生成された信号の表示を行う表示工程とを備えた内部欠陥の超音波映像方法であって、前記遅延時間は、伝搬時間を開口合成波形に基づいて算出することとして、アレイ型超音波プローブ10aの各振動子の受信信号に行われる開口合成処理の焦点と設定内部欠陥との相対位置に対する伝搬時間の変化量を求め、該伝搬時間の変化量から内部欠陥の映像化信号を生成するようにしており、内部欠陥を高分解能に映像化できる。
実施形態4.
本実施形態4は、図14の欠陥像合成処理部116を上記の演算処理とは異なった処理をするようにした例である。本実施形態4の欠陥像合成処理部116は、上記の等伝搬時間面データに代えて、遅延時間データを用いる。このため、等伝搬時間面データ部117に代えて、遅延時間データが格納される記憶装置(図示せず)が設けられる。この遅延時間データ(遅延時間群)は、伝搬時間の変化量データ(図21の変換を行う前のデータ)から求めるものであり、図28の概念図に示されるように、伝搬時間の変化量が大きいほど遅延時間を小さく、変化量が小さいほど遅延時間を大きくしたデータである。等伝搬時間面データと同様にして、水距離・被検体距離・開口合成焦点深さの各値に対応して求められて記憶装置に記憶されている。
欠陥像合成処理部116は、図23に示されるフローチャートのうち、等伝搬時間面選択の処理(S63)とデータ映像化処理(S64)の具体的内容が異なるが、それ以外の処理は同じである。
等伝搬時間面選択の処理(S63)は、遅延時間データの選択処理になる。具体的には、アレイ型超音波プローブで測定した受信波形の水距離・欠陥深さに対応する、遅延時間データ(遅延時間群)を選択する処理を行う。
データ映像化処理(S64)は、その遅延時間データ選択処理で選択した遅延時間データを用いて、図28のように波形再合成処理を行う。
具体的には、焦点走査した多数点のうち、隣接した所定数の焦点位置(図28の例では10点)を選択し、その10点で測定した反射波形データ(アレイ型超音波プローブの各振動子の信号を焦点を形成するための開口合成処理を行った信号で、実施形態1,2における集束型超音波プローブの出力波形データに相当)に対し、選択した遅延時間データ(遅延時間群)に対応して、各プローブ位置に波形を遅延処理をする。図28に示されるように、外側の焦点の信号には遅延時間を小さくし、内側の焦点には遅延時間を大きくしている。これによって、所定数の焦点位置のうち、その中心に位置する焦点の上下に欠陥があれば、欠陥波形が揃うことにより、欠陥信号が強調されて、欠陥の存在を検知できる。一方、中心に位置する焦点の上下に欠陥が無ければ、例えば、外側の焦点の直上または直下に欠陥があれば、各焦点で受信した欠陥の信号は、遅延しても位相が揃わないので、相殺され、強調されずに、欠陥信号を検出できない。つまり、中心に位置する焦点の直上または直下には欠陥が無い、ということになる。
このような処理を多数点測定したデータに対して、選択範囲を移動させながら順に所定数のデータを選択して、繰り返すことにより開口合成波形を得る。そして、遅延時間データ(遅延時間群)を選択する際には、複数の深さに対応した遅延時間データ(遅延時間群)をそれぞれ選択して、上記の演算処理を繰り返す。そして、得られた波形を適当な方法(Aスコープ、Bスコープ、Cスコープ、三次元表示)で表示する。
なお、本実施形態4も、欠陥像合成方法で映像化し欠陥像表示装置16に表示する例について説明したが、それに加えて、欠陥判定装置17が、欠陥像合成処理部116により開口処理された上記の信号に基づいて欠陥判定を行う。また、欠陥判定をするだけであれば、合成結果を映像化し表示する欠陥像表示装置16は必ずしもなくてもよく、欠陥像合成処理部116からの合成結果を欠陥判定装置17が入力し、その判定結果のみを出力するような構成にしてもよい。逆に、欠陥自動判定をしなければ、欠陥判定装置17はなくてもよい。
上述のとおり、本実施形態4においては、アレイ型超音波プローブ10aと被検体1との間に水を介在させ、アレイ型超音波プローブ10aの受信信号に開口合成処理を行って形成される焦点を、被検体1に対して相対的に走査しつつ、超音波を被検体1に向けて送信し、被検体の内部欠陥からの反射波を受信する送信回路111・駆動素子選択回路112・受信回路113(送受信手段)と、アレイ型超音波プローブ10aの各振動子で受信された信号に開口合成処理を行うアレイ信号処理回路114(信号処理手段)と、得られた開口合成波形を設定された遅延時間データにより遅延させたのち加算して信号を生成する欠陥像合成処理部116(信号生成手段)と、該生成された信号データを画像メモリに出力して表示する欠陥像表示装置16(表示手段)とを備えた内部欠陥の超音波映像方法であって、前記遅延時間データは、伝搬時間を開口合成波形に基づいて算出することとして、アレイ型超音波プローブ10aの各振動子の受信信号に行われる開口合成処理の焦点と設定内部欠陥との相対位置に対する伝搬時間の変化量から求め、該伝搬時間の変化量から内部欠陥の映像信号を生成するようにしており、内部欠陥を高分解能で映像化できる。
なお、上記実施形態1から4に示した本発明は、焦点距離、被検体距離、接触媒質距離の、振動子領域に対する比が十分大きい場合であっても適用してもよいが、焦点距離、被検体距離、接触媒質距離の、振動子領域に対する比が小さくなるという条件において、その効果が顕著となる。具体的には、焦点距離の、送受信を行う振動子のサイズに対する比が0.5より大きく、8より小さい範囲において適用可能であり、好ましくは0.5より大きく、6より小さい範囲、より好ましくは0.5より大きく、3より小さい範囲が好適である。なお、本発明が適用される、被検体距離、接触媒質距離の、送受信を行う振動子のサイズに対する比の範囲も、焦点距離と同様である。
また、上記実施形態1から4の説明は、超音波計測装置の一形態である、映像化装置として説明したが、本発明の適用は、それに限らず、求めたカウンタの値や遅延時間により合成した波形データを入力し、それらデータを用いて欠陥の種類や程度を判定して欠陥の検出を行う欠陥検出装置などにも適用可能である。
Claims (11)
- 超音波プローブが形成する焦点を被検体に対して相対的に走査しつつ、超音波を前記被検体に向けて送信し、前記被検体の内部欠陥からの反射波を受信する送受信手段と、
前記超音波プローブと内部欠陥との間を伝搬する超音波の波形を、送受信面の全面にて合成した超音波の波形として扱って求められた参照伝搬時間を用いて、各測定位置で受信した信号の開口合成処理を行う開口合成処理手段と
を備えた超音波計測装置。 - 各測定位置において、前記反射波に基づいて内部欠陥までの伝搬時間を測定する伝搬時間測定手段を備え、
前記開口合成処理手段が、前記参照伝搬時間が等しくなる被検体内部の位置を結んで形成された等伝搬時間面を、前記伝搬時間測定手段で測定した伝搬時間に対応して抽出して、等伝搬時間面の位置を欠陥候補位置とすることを特徴とする請求項1記載の超音波計測装置。 - 前記開口合成処理手段で求められた欠陥候補位置毎に、前記走査を行った間に抽出された回数を算出し、該算出した回数を位置に対応させて表示を行う表示手段を備えた請求項2に記載の超音波計測装置。
- 前記開口合成処理手段が、前記参照伝搬時間に基づいて算出された遅延時間により、前記送受信手段で受信した反射波を遅延させた後、加算して信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の超音波計測装置。
- 前記開口合成処理手段で生成された信号データを表示する表示手段を備えた請求項4に記載の超音波計測装置。
- 前記参照伝搬時間は、超音波プローブの送受信面の全面を、複数領域に分割し、該分割された各領域と内部欠陥との間を送受信される超音波の波形を求め、該波形を前記超音波プローブ全面について合成した波形から算出することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の超音波計測装置。
- 前記参照伝搬時間は、予め、人工的に作成した内部欠陥を有する被検体を用いて、前記超音波プローブが形成する焦点と前記被検体とを相対的に走査しつつ、超音波を前記被検体に向けて送信し、前記被検体の内部欠陥からの反射波を受信することにより求めることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の超音波計測装置。
- 前記超音波プローブは、集束型超音波プローブであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の超音波計測装置。
- 前記超音波プローブは、複数の振動子が配列されたアレイ型超音波プローブであり、
前記各振動子の信号を開口合成処理によって焦点を形成して、前記各測定点で受信した信号とする信号処理手段を備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の超音波計測装置。 - 前記開口合成処理手段で開口合成処理された信号を用いて欠陥判定を行う欠陥判定手段を備えた請求項1から9のいずれかに記載の超音波計測装置。
- 超音波を前記被検体に向けて送信し、前記被検体の内部欠陥からの反射波を受信する送受信ステップと、
前記超音波プローブと内部欠陥との間を伝搬する超音波の波形を、送受信面の全面にて合成した超音波の波形として扱って求められた参照伝搬時間を用いて、各測定点で受信した信号の開口合成処理を行う開口合成処理ステップと
を備えた超音波計測方法。
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