電動パワーステアリング装置 技術分野
' , 本発明は、 自動車や車両の操舵系にモータによる操舵補助力を付与す るようにした電動パワーステアリング装置の制御装置に関し、 特に電源停 止後も電源を自己保持し、 温度推明定を継続させるようにした電動パワース テアリング 置の制御装置に関する。田
書
背景技術
自動車や車両のステアリング装置をモータの回転力で補助負荷付勢す る電動パワーステアリ,,ング装置は、 モータの駆動力を、 減速機構を介して ステアリングシャフト或いはラック軸などの操舵機構に補助負荷付勢する ようになつている。 かかる従来の電動パワーステアリング装置は、 操舵補 助トルクを正確に発生させるため、 モ一夕電流のフィ一ドバック制御を行 つている。 フィードバック制御は、 電流指令値とモータ電流検出値との差 が小さくなるようにモータ印加電圧を調整するものであり、 モータ印加電 圧の調整は、 一般的に P WM ひ \°ルス幅変調) 制御のデューティ比の調整 で行っている。
ここで、 電動パワーステアリング装置の一般的な構成を第 1図に示し て説明すると、 操向ハンドル 1に連結されたステアリングシャフ卜 2は減 速ギア 3、 ユニバーサルジョイント 4 aおよび 4 b、 ピニオンラック機構 5を経て操向車輪のタイロッ ド 6に連結されている。 ステアリングシャフ ト 2には、 操向ハンドル 1の操舵トルクを検出するトルクセンサ 1 0が設 けられており、 操向ハンドル 1の操舵力を補助するモー夕 2 0が減速ギア 3を介してステアリングシャフト 2に連結されている。 電動パヮ一ステア
リング装置を制御するコントロ一ルュニット 3 0には、 バッテリ 1 4から I Gスィッチ (イダニッシヨンスィッチ) 1 1を経て電力が供給され、 コ ントロールュニット 3 0は、 トルクセンサ 1 0で検出された操舵トルク T と車速センサ 1 2で検出された車速 Vとに基づいて操舵補助指令値 Iの演 算を行い、 演算された操舵補助指令値 Iに基づいてモー夕 2 0に供給する 電流を制御する。
コントロールュニット 3 0は主として C P Uで構成されるが、 その C P U内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと第 2図の ようになる。 例えば位相補償器 3 1は独立したハードウェアとしての位相 補償器を示すものではなく、 C P Uで実行される位相補償機能を示してい る。
コントロールュニット 3 0の機能および動作を説明すると、 トルクセ ンサ 1 0で検出されて入力される操舵トルク Tは、 操舵系の安定性を高め るために位相補償器 3 1で位相補償され、 位相補償された操舵トルク T A が操舵補助指令値演算器 3 2に入力される。 また、 車速センサ 1 2で検出 された車速 Vも操舵補助指令値演算器 3 2に入力される。 操舵補助指令値 演算器 3 2は、 入力された操舵トルク T Aおよび車速 Vに基いてモータ 2 0に供給する電流の制御目標値である操舵補助指令値 Iを決定する。 操舵 補助指令値 Iは減算器 3 O Aに入力されるとともに、 応答速度を高めるた めのフィードフォワード系の微分補償器 3 4に入力され、 減算器 3 O Aの 偏差 ( I 一 i ) は比例演算器 3 5に入力されるとともに、 フィードバック 系の特性を改善するための積分演算器 3 6に入力される。 微分補償器 3 4 、 比例演算器 3 5、 および積分補償器 3 6の出力が加算器 3 0 Bに加算入 力され、 加算器 3 0 Bでの加算結果である電流制御値 Eが、 モータ駆動信 号としてモ一夕駆動回路 3 7に入力される。
モータ駆動回路 3 7は、 駆動素子としての 4個の F E T (電界効果ト
ランジス夕) を H状に結線した Hブリッジ回路で構成されている。 モ一夕 2 0のモ一夕電流値 iはモータ電流検出回路 3 8で検出され、 モー夕電流 値 iは減算器 3 O Aに入力されてフィードバックされる。
このような電動パワーステアリング装置において、 長時間の車庫入れ の繰り返し等で、 モータ 2 0に大電流が流れ続けるような過度のモー夕使 用によりモ一夕 2 0が過熱し、 発煙、 更にはモータ 2 0が焼損する危険性 がある。 このような問題に対して、 モー夕 2 0に温度センサを配設し、 過 熱保護制御を行うことが容易に考えられるが、 乗用車用の電動パワーステ ァリング装置においては、 コストゃレイァゥト性により安易にモ一夕 2 0 に温度センサを取付けることができない。
このため、 従来は、. 日本国特開平 1 0— 1 0 0 9 1 3号公報に示すよ うにモ一夕の巻き線温度を推定し、 この温度推定値に基づいてモ一夕の過 熱保護制御を行っていた。
しかしながら、 従来の巻き線温度推定は、 一度推定を始め、 そのまま 推定を続ければ、 比較的安定した推定を行うことができるが、 推定開始後 に中断、 再開を繰り返すと、 温度推定精度が著しく悪くなるという問題が あった。
これを実際の使用状況に置き換えて説明すると、 電源投入後、 通常の 操舵を行い、 全ての操作が終了した状態で電源を停止すれば、 温度推定に よっても意図した過熱保護制御を行うことができる。 しかしながら、 電源 投入後、 頻繁な車庫入れのような操舵を行い、 過熱保護制御が作動し、 そ の状態で電源停止、 電源再投入、 再び車庫入れのような操舵を行い、 それ により温度保護制御が作動、 その状態でまた電源停止、 電源再投入、 再び 操舵などの操作を繰り返したような場合、 温度推定値と実際のモ一夕温度 にズレが生じ、 過熱保護制御が充分に働かないという問題があつた。
そこで、 本出願人は、 上述のような問題点を改良するために、 日本国
特開 2 0 0 2— 3 6 2 3 9 3号公報において、 電源停止後も電源を自己保 持し、 温度推定を継続させ、 温度保持制御を継続できるようにした電動パ ヮ一ステアリング装置の制御装置を提案している。 以下、 第 3 A図〜第 3 B図を参照にしながら、 同文献に開示されるような従来の電動パワーステ ァリング装置の制御動作の一例について説明する。 なお、 第 3 A図〜第 3 B図のフローチャートは、 同文献に開示されているものと一部異なる点が あるが、 同文献に開示されている発明を実施するための制御動作の一例で ある。
同図において、 I Gスィッチが O Nされると、 まず制御装置の初期化 ·初期診断が行われて、 モータ温度推定値として所定の初期値が設定され (ステップ S l )、 続いてモ一夕温度の推定が開始され'る (ステップ S 2 ) 。 その後、 操舵トルク信号が入力されるとともに (ステップ S 3 )、 車速 信号が入力され (ステップ S 4 )、 故障診断が実行される (ステップ S 5 ) 。 続いて、 モータ温度推定値が読み込まれ (ステップ S 6 )、 このモー夕 温度推定値に基づいてモータ過熱が発生しているか否かが判定される (ス テツプ S 7 )。
ステップ S 7においてモータ過熱が発生していないと判定された場合 には、 ステップ S 3で入力された操舵トルク信号およびステップ S 4で入 力された車速信号に基づいてモータ制御信号が演算される (ステップ S 9 )。 一方、 ステップ S 7においてモ一タ過熱が発生していると判定された 場合には、 過熱保護ゲインが演算され (ステップ S 8 )、 その後、 ステツ プ S 9の処理において、 上述した操舵トルク信号および車速信号に加え、 過熱保護ゲインを考慮してモータ制御信号が演算される。 ここで、 上述し たステップ S 1〜S 9の各処理は、 種々ある公知の方法のいずれかを用い て実行される。
続いて、 I Gスィツチの入カイン夕フェースから I Gスィッチ検出信
号の入力が行われ、 I Gスィッチの ON/OF Fが判定される (ステップ S 1 0)。 ここで、 I Gスィッチが ONである、 すなわち I G— OF Fが 検出されなければ、 ステップ S 9で演算されたモータ制御信号が出力され (ステップ S 1 1)、 該モ一夕制御信号に基づいてモー夕が駆動制御され る。 上述したステップ S 3〜ステップ S 1 1の処理は、 I Gスィッチが 0 F Fになるまで繰り返される。
—方、 ステップ S 1 0において I Gスィッチの OF Fが検出された場 合には、 モ一夕制御信号の出力が停止される (ステップ S 1 2)。 そして 、 モータ温度推定値が読み取られ (ステップ S 1 3)、 このモータ温度推 定値が所定値以下に下がったか否かが判定される (ステップ S 1 4)。 こ のステップ S 1 3〜S 14の処理は、 モータ温度推定値が所定値以下に下 がるまで繰り返される。 ここで、 ステップ S 1 4における判定は、 モー夕 制御信号の出力停止から所定の時間が経過したか否かという点に基づいて 行われても良い。
また、 上述したステップ S 1 3〜S 1 4の処理が実行されている間、
I Gスィツチは OF Fであるが、 電源自己保持手段が機能することによつ てコントロールユニットには電源が供給されている。 すなわち、 この電源 自己保持手段によって供給される電源により、 モ一夕温度推定が中断する ことなく実行される。
ステップ S 1 4においてモータ温度推定値が所定値以下まで下がると
、 モータ温度推定が停止される (ステップ S 1 5)。 その後、 電源自己保 持手段を OF Fにすることによりコントロールユニットに対するバッテリ からの電力供給が停止され (ステップ S 1 6)、 電動パワーステアリング 装置の制御が停止される (ステップ S 1 7)。
この日本国特開 2 0 0 2— 36 2 3 9 3号公報に開示されている制御 装置では、 I Gスィッチが 0 F Fされた場合、 操舵補助制御は中止される
が、 モー夕温度推定値が所定値以下になるまで、 あるいは、 モ一タ温度推 定値と温度センサの温度測定値の差が所定値以下になるまで、 上述した電 源自己保持手段により供給される電源によって、 モータの温度推定が継続 されるようになつている。 これにより、 モータが過熱している状態で I G スィッチを O F Fし、 モー夕が冷える前に I Gスィッチを O Nした場合に 生じる実モ一夕温度と推定値のズレに起因して過熱保護が働かないという 不具合を解消し、 過熱保護制御が不完全になることを防止している。
しかしながら、 上記従来の制御装置では、 I Gスィッチを O F Fした 後に電源自己保持手段が作動したとしても、 バッテリからの電源供給が、 外部要因 (エンジンのクランキング始動、 バッテリの劣化 ·消費過多、 バ ッテリ電源の断線など) によって瞬時に低下 '停止した場合には、 コント ロールユニット (E C U ) の演算処理器が電源不足により停止してしまい 、 モータ温度推定演算に関連する R A M上の数値データが消失してしまう 可能性があり、 これにより、 モー夕温度推定および過熱保護制御に支障を 来たし、 過熱保護が働かないという不具合を引き起こす虞があった。 発明の開示
本発明は、 上記事情に鑑みて成されたものであり、 その目的とすると ころは、 モータなどの発熱部位の温度推定処理が不完全に終了したとして も、 再び I Gスィッチが O Nされた際に過熱保護制御が充分に働き、 発熱 部位が過熱状態に至るのを防止することができる電動パワーステアリング 装置を提供することにある。
本発明の上記目的は、 操舵機構に対して操舵補助力を付与するモータ と、 前記モ一夕の駆動電流を制御するコントロールュニットとを備えた電 動パワーステアリング装置において、 前記コントロールユニットが、 I G スィッチにより電源投入された後に、 自らの電源停止を制御できる電源自
己保持手段と、 発熱部位の温度を推定し、 その温度推定値で温度制御を行 う温度推定手段と、 前記温度推定手段が停止する前に、 温度推定処理の状 態を示す所定のデータを前記コントロールュニット内の記憶部に記憶する 温度推定状態記憶手段と、 再び前記 I Gスィッチが O Nされて前記温度推 定手段が作動した際に、 前記所定のデータに基づいて前記温度推定値の初 期値を設定する初期値設定手段とを備えていることにより、 達成される。
また、 上記目的は、 前記発熱部位が前記モータであることにより、 効 果的に達成される。
また、 上記目的は、 前記温度推定状態記憶手段が、 前記 I Gスィッチ が O F Fされ、 前記電源自己保持手段によって前記温度推定処理が継続し ている場合に、 前記温度推定値が所定値以下になった時点で前記温度推定 処理が正常に終了したことを示す完了フラグを前記記憶部に記憶する温度 推定処理完了フラグ記憶手段であり、 かつ、 前記初期値設定手段が、 再び 前記 I Gスィッチが O Nされて前記温度推定手段が作動した際に、 前記温 度推定処理完了フラグの有無を確認し、 前記温度推定処理完了フラグが無 い場合には、 予め設定されている状態量を読み出し、 前記温度推定値の初 期値を設定することにより、 効果的に達成される。
また、 上記目的は、 前記コントロールユニットが、 制御駆動回路周辺 に配設された温度センサを備え、 かつ、 前記初期値設定手段が、 前記温度 センサの初期検出値に基づいて、 予め設定されている複数のデ一夕の中か ら前記温度推定値の初期値を設定することにより、 効果的に達成される。
また、 上記目的は、 前記温度推定状態記憶手段が、 前記 I Gスィッチ が O F Fされ、 前記電源自己保持手段によって前記温度推定処理が継続し ている場合に、 前記温度推定値が属している温度ステージを前記記憶部に 記憶する温度ステージ記憶手段であり、 かつ、 前記初期値設定手段が、 再 び前記 I Gスィッチが O Nされて前記温度推定手段が作動した際に、 前記
温度ステ一ジに基づいて、 予め設定されている複数のデータの中から前記 温度推定値の初期値を設定することにより、 効果的に達成される。
また、 上記目的は、 前記温度ステージ記憶手段が、 温度推定値が所定 値以下になるまで前記温度ステージを前記記憶部に記憶することにより、 効果的に達成される。
また、 上記目的は、 前記温度推定状態記憶手段が、 前記モータによる 操舵補助が終了し、 前記電源自己保持手段によって前記温度推定処理が継 続している場合に、 前記温度推定値が属している温度ステージを前記記憶 部に記憶する温度ステージ記憶手段であり、 かつ、 前記初期値設定手段が 、 再び前記 I Gスィッチが O Nされて前記温度推定手段が作動した際に、 前記温度ステージに基づいて、 予め設定されている複数のデータの中から 前記温度推定値の初期値を設定することにより、 効果的に達成される。
また、 上記目的は、 前記温度ステージ記憶手段が、 前記 I Gスィッチ が O F Fされるまで前記温度ステージを前記記憶部に記憶することにより 、 効果的に達成される。
また、 上記目的は、 前記温度ステージ記憶手段が、 前記温度ステージ が所定のステージに達するまで前記温度ステージを前記記憶部に記憶する ことにより、 効果的に達成される。
また、 上記目的は、 前記温度ステージ記憶手段が、 前記 I Gスィッチ が O F Fされ、 かつ、 前記温度ステージが所定のステージに達するまで前 記温度ステージを前記記憶部に記憶することにより、 効果的に達成される また、 上記目的は、 前記温度ステージ記憶手段が、 前記温度ステージ が移行する度に現在の温度ステージを前記記憶部に上書き保存することに より、 効果的に達成される。
さらに、 上記目的は、 前記コントロールユニッ トが、 前記温度ステー
ジが正常に記憶されたことを示す完了フラグを、 前記記憶部における前記 温度ステージ用の領域とは別の領域に記憶するステージ書込完了フラグ記 憶手段をさらに備え、 かつ、 前記初期値設定手段は、 再び前記 I Gスイツ チが O Nされて前記温度推定手段が作動した際に、 前記ステージ書込完了 フラグの有無を確認し、 前記ステージ書込完了フラグが無い場合には、 前 記温度ステージを予め設定されている複数の温度ステージの中で最大状態 量の温度ステージに設定し、 前記最大状態量の温度ステージに基づいて前 記温度推定値の初期値を設定することにより、 効果的に達成される。
本発明に係る電動パワーステアリング装置によれば、 I Gスィツチが O F Fされ、 電源自己保持手段によって温度推定処理が継続している場合 において、 温度推定手段が停止する前に、 温度推定処理の状態を示す所定 のデータ、 例えば、 温度推定処理が正常に終了したことを示す完了フラグ や前回の温度推定処理の終了時に温度推定値が属していた温度ステージな どを記憶部に記憶し、 その後、 再び I Gスィッチが O Nされて温度推定手 段が作動した際に、 記憶部に記憶されている所定のデ一夕に基づいて温度 推定値の初期値を設定するようになっている。 これにより、 バッテリから の電源供給が瞬時に低下 ·停止して温度推定処理が正常に終了できず、 温 度推定演算に関連する R A M上の数値データが消失してしまったとしても 、 予め設定されている温度推定処理の初期状態が温度推定値の初期値とし て設定されるので、 安全な過熱保護制御を実行することができる。 図面の簡単な説明
第 1図は、 一般的な電動パワーステアリング装置の構成例を示す図で ある。
第 2図は、 一般的なコン卜ロールュニットの構成例を示すブロック図 である。
第 3 A図は、 従来の電動パワーステアリング装置の制御動作例を示す フロ一チヤ一トである。
第 3 B図は、 第 3 A図の続きを示すフロ一チャートである。
第 4図は、 本発明の第 1および第 2実施形態に係る電動パワーステア リング装置の制御構成を示すブロック図である。
第 5 A図は、 本発明の第 1実施形態に係る電動パワーステアリング装 置の制御動作例を示すフローチヤ一卜である。
第 5 B図は、 第 5 A図の続きを示すフローチャートである。
第 6図は、 温度推定オフセット値を与えるブロック図である。
第 7図は、 状態量を与えるブロック図である。
第 8 A図は、 本発明の第 2実施形態に係る電動パワーステアリング装 置の制御動作例を示すフローチヤ一トである。
第 8 B図は、 第 8 A図の続きを示すフローチャートである。
第 9図は、 本発明の第 2実施形態における温度ステージ状態を説明す る図である。
第 1 0図は、 本発明の第 3および第 4実施形態に係る電動パワーステ ァリング装置の制御構成を示すブロック図である。
第 1 1 A図は、 本発明の第 3実施形態に係る電動パヮ一ステアリング 装置の制御動作例を示すフローチャートである。
第 1 1 B図は、 第 1 0 A図の続きを示すフローチヤ一トである。 第 1 2 A図は、 本発明の第 4実施形態に係る電動パヮ一ステアリング 装置の制御動作例を示すフローチャートである。
第 1 2 B図は、 第 1 1 A図の続きを示すフローチャートである。 発明を実施するための最良の形態
[第 1実施形態]
以下、 図面を参照にしながら本発明の実施形態について説明する。 第 4図は、 本発明の第 1および第 2実施形態に係る電動パワーステア リング装置の制御構成を示すブロック図である。 なお、 以下に説明する本 発明の実施形態において、 上述した従来例と共通の構成要素には同一の符 号を付して、 その説明を省略する。
第 4図において、 全体の制御を行う C P U等で成るコントロールュニ ット (E CU) 40には、 ノ ッテリ 41から I Gスィッチ 42、 ダイォー ド D l、 電源回路 (安定化回路) 43を経て電源が供給される。 さらに、 バッテリ 4 1からリレー接点 CRA、 ダイオード D 2、 電源回路 (安定化 回路) 43を経て電源が供給される。 また、 モータ 2 0の駆動は、 上述し た公知技術と同様に、 トルクセンサ 1 0で検出された操舵トルク信号と車 速センサ 1 2で検出された車速信号とに基づいて、 コントロールュニット 40で制御される。 そして、 コントロールユニッ ト 40には、 I Gスイツ チ入カイン夕フェース 44を介して I Gスィッチ 42の ON/OF F信号 が入力され、 リレー CRが駆動手段としてのトランジスタ 45を介して接 続されている。 リレー CRはトランジスタ 4 5を介してコントロ一ルュニ ット 40で駆動され、 その駆動 Z遮断に応じて、 リレー CRの接点 CRA が ONZO F Fするようになつている。 また、 コントロールユニット 40 の内部、 例えば発熱部品である FET近傍には、 温度センサ 46が設置さ れている。
このような制御構成を有する電動パワーステアリング装置では、 リレ 一 C Rおよびその接点 C R A、 トランジスタ 45で電源自己保持手段が構 成され、 一度電源投入された後に自らの電源停止を制御できるようになつ ている。 また、 コントロールユニッ ト 40には、 モータ 2 0の温度を推定 するための上述の公知技術を用いた温度推定手段が設けられている。
次に、 第 5 A図〜第 5 B図のフローチャートを参照にしながら、 本発
明の第 1実施形態に係る電動パワーステアリング装置の制御動作例につい て説明する。 なお、 同図において、 上述した第 3 A図〜第 3 B図のフロー チヤ一トと同一のステップ (ルーチン) には同一のステップ番号を付して 説明を省略し、 ここでは主として異なる部分についてのみ説明する。
第 1実施形態の制御では、 I G—〇 F F時の処理として、 ステップ S
1 3で読み取られたモータ温度推定値が、 ステップ S 1 4において所定値 以下に下がったと判定された場合に、 温度推定処理完了フラグ T Fとして 1がコント口一ルュニット 4 0内に設けられた記憶部 (E E P R O M等) に記憶され (ステップ S 1 0 5 )、 モータの温度推定が停止される (ステ ップ S 1 5 )。
そして、 I Gスィッチ 4 2が O Nされると、 制御装置の初期化 ·初期 診断が行われ (ステップ S l )、 その後、 上記温度推定処理完了フラグ T Fが 1であるか否かが判定される (ステップ S 1 0 1 )。 このステップ S 1 0 1において T F = 1の場合には、 前回の制御処理時にステツプ S 1 4 でモ一夕温度推定値が所定値以下に下がったと判定された後に温度推定が 停止されたことを意味している。 この場合、 通常時 (前回の制御処理が正 常に終了した場合) の温度推定に用いられるデータに信頼性があるので、 この通常時用のモー夕温度推定値がモ一夕温度推定値の初期値として設定 される (ステップ S 1 0 3 )。
—方、 ステップ S 1 0 1において T F = 0の場合には、 前回の制御処 理時に何らかの原因でモータ温度推定値が所定値以下に下がる前に温度推 定が停止されたことを意味している。 この場合、 温度推定に用いるデータ が消失してしまっている可能性があるため、 モータ過熱保護が正常に機能 しない虞がある。 そこで、 コントロールユニット 4 0内に設置された温度 センサ 4 6の初期検出値に応じて予め設定されたモー夕温度推定オフセッ ト値が読み込まれ (ステップ S 1 0 2 )、 続いて、 ステップ S 1 0 3の処
理において、 T F = 1の場合に設定されるモータ温度推定値にこのモー夕 温度推定オフセット値が加算された値が、 モー夕温度推定値の初期値とし て設定される。 これにより、 T F = 0の場合のモー夕温度推定値の初期値 は、 T F = 1の場合よりも高温となるように設定される。
ここで、 ステップ S 1 0 2の処理で読み込まれるモータ温度推定オフ セット値は、 温度センサ 4 6の初期検出値に応じて予め設定されたモータ 温度推定ゲインでも良い。 モー夕温度推定ゲインを用いる場合には、 ステ ップ S 1 0 3の処理において、 T F = 1の場合に設定されるモータ温度推 定値にこのモ一タ温度推定ゲインが乗算された値が、 モータ温度推定値の 初期値として設定される。
また、 ステップ S 1 0 2の処理において、 モータ温度推定値の代わり に、 温度センサ 4 6の初期検出値に応じて予め設定された温度推定処理の 各状態変数の初期値が読み込まれても良い。 各状態変数の初期値を用いる 場合には、 ステップ S 1 0 3の処理において、 読み込まれた各状態変数の 初期値がモ一夕温度推定値の初期値として設定される。
そして、 上述したようにステップ S 1 0 3で設定されたモータ温度推 定値の初期値に基づいて、 モータ温度推定が開始され (ステップ S 2 )、 次回の制御処理の停止に備えて、 温度推定処理完了フラグ T Fとして 0が コントロールュニット 4 0内の記憶部に記憶される (ステツプ S 1 0 4 ) 以上のように、 第 1実施形態に係る電動パワーステアリング装置では 、 I Gスィッチ 4 2が O F Fされた後も、 電源自己保持手段によって供給 される電源で温度推定手段の温度推定処理が継続し、 温度推定手段が停止 する前にモー夕 2 0の温度推定処理が正常に終了したことを示す完了フラ グをコントロールユニット 4 0の記憶部に記憶する。 その後、 再び I Gス ィツチ 4 2が O Nされて温度推定手段が作動した際に、 完了フラグの有無
を確認し、 完了フラグが記憶部に記憶されていない場合には、 コント口一 ルュニット 4 0内に配設された温度センサ 4 6の初期検出値に基づいて、 予め設定されている複数のデータの中からモー夕 2 0の温度推定オフセッ ト値を読み出し、 温度推定処理の初期値に加算するようになっている。 こ れにより、 バッテリ 4 1からの電源供給が瞬時に低下 ·停止して温度推定 処理が正常に終了できず、 モー夕 2 0の温度推定演算に関連する記憶部の 数値データが消失してしまったとしても、 予め設定されているモータ温度 推定オフセット値が温度推定処理の初期値に加算されるので、 安全な過熱 保護制御を実行することができる。
また、 精度の良い温度推定を行なうため高次のフィルタや数個のフィ ル夕が必要となる場合がある。 このときは、 各フィルタの状態量 (内部演 算値) を設定する必要があるためである。 第 6図は温度オフセット値を初 期に与えるブロック図であり、 第 7図は状態量を初期に与える場合のプロ ック図である。 これらの図に示されている温度推定部の構造は、 説明を簡 単にするために、 1次のフィルタで構成されたものであり、 符号 6 0の部 位の状態量を温度推定処理の状態量として初期に設定するようになってい る。
[第 2実施形態]
次に、 本発明の第 2実施形態に係る電動パワーステアリング装置の制 御動作例について、 第 8 A図〜第 8 B図のフローチャートを参照して説明 する。 なお、 同図において、 上述した第 3 A図〜第 3 B図、 および第 5 A 図〜第 5 B図のフローチヤ一卜と同一のステップ (ルーチン) には同一の ステップ番号を付して説明を省略し、 ここでは主として異なる部分につい てのみ説明する。.
第 2実施形態の制御では、 I G— 0 F F時の処理として、 ステップ S
1 5でモー夕温度推定が停止される前に、 その時点で温度推定値が属して いる温度ステージ S Tがコン卜ロールュニッ卜 4 0内に設けられた記憶部 に記憶される (ステップ S 2 0 7 )。 この温度ステージ S Tは、 第 9図に 示すように、 温度 (温度推定値) に基づいて複数のステージに区切られて いる。 なお、 ここでは、 温度ステージ S Tを温度に基づいて区切られたも のとして説明するが、 これに限定されず、 例えば I G— O F Fからの経過 時間に基づいて複数のステージに区切られたものであってもよい。 I G— O F F後のモータ温度は指数関数のように下がるため、 各温度ステージの 時間間隔は、 温度変化の大きいところでは短く、 逆に温度変化が緩やかな ところでは長く設定される。 各温度ステージ S Tに相当する温度推定処理 の状態量のデータは、 予めマップ化されてコントロールュニット 4 0の記 憶部に記憶されている。 ステップ S 2 0 7では、 その時点での温度推定値 に基づいて現在の温度ステージ S Tが判断され、 そのステージ番号が温度 ステージ S Tとして記憶部に記憶される。
そして、 I Gスィッチ 4 2が O Nされると、 制御装置の初期化 ·初期 診断が行われ (ステップ S l )、 その後、 記憶部に記憶されている前回の 制御処理時の温度ステージ S Tが読み取られ (ステップ S 2 0 1 )、 該温 度ステージ S Tに基づいてモ一夕温度推定値の初期値が設定される (ステ ップ S 2 0 2 )。 ここで、 S T = nの場合には、 ステップ S 1 4でモー夕 温度推定値が所定値以下に下がったと判定された後に温度推定が停止され たことを意味している。 この場合、 通常時 (前回の制御処理が正常に終了 した場合) の温度推定に用いられるデータに信頼性があるので、 この通常 時用のモータ温度推定値がモータ温度推定値の初期値として設定される ( ステップ S 2 0 2 )。
一方、 ステップ S 2 0 1で読み取られた温度ステージが S T = 0の場 合には、 前回の制御処理時に何らかの原因 (例えば、 電源瞬停など) によ
り、 モータ制御が途中で終了したことを意味している。 この場合、 温度推 定値に用いるデータが消失してしまっており、 かつ、 今回の始動直前まで 制御処理が行なわれていてモータが高温になっている可能性があるため、 ステップ S 2 0 2の処理において、 モ一タ温度推定値の初期値として最高 温度の状態が設定される。
また、 ステツプ S 2 0 1で読み取られた温度ステージが S T≠ nかつ S T≠ 0の場合には、 前回の制御処理時に何らかの原因でモー夕温度推定 値が所定値以下に下がる前に温度推定が停止されたことを意味している。 この場合、 温度推定に用いるデータが消失してしまっている可能性がある ため、 モー夕過熱保護が正常に機能しない虞がある。 そこで、 ステップ S 2 0 2の処理において、 温度ステージ S Τに基づいて、 予め設定されてい る複数のデータの中からモ一タ温度推定オフセット値が読み出され、 温度 推定処理の初期値に加算される。
そして、 上述したようにステップ S 2 0 2で設定されたモ一夕温度推 定初期値に基づいて、 モータ温度推定が開始され (ステップ S 2 )、 次回 の制御処理の停止に備えて、 温度ステージ S Τとして 0がコントロ一ルュ ニット 4 0内の記憶部に記憶される (ステップ S 2 0 3 )。 その後、 上述 した制御動作例と同様、 ステップ S 3〜ステップ S 1 1のモータ駆動制御 が実行される。
ステップ S 1 0において、 I G— O F Fが検出された場合には、 モー 夕制御信号の出力が停止され (ステップ S 1 2 )、 モー夕温度推定値の閾 値が初期化される (ステップ S 2 0 4 )。 ここでは、 温度ステージが S T = 0から S Τ == 1に変わる閾値が、 モ一夕温度推定値の初期閾値として設 定される。
続いて、 モー夕温度推定値が読み取られ (ステップ S 2 0 5 )、 その モータ温度推定値が閾値以下である否かが判定される (ステップ S 2 0 6
) c この判定の結果、 モ一夕温度推定値が閾値以下に下がっていれば、 温 度ステージ S Tが変わったことを意味するので、 その時の温度ステージ S Tが記憶され (ステップ S 2 0 7 )、 モータ温度推定値の閾値が次の温度 ステージ S Tに変わる閾値、 すなわち S T = 1から S T = 2に変わる閾値 に変更される (ステップ S 2 0 8 )。
一方、 ステップ S 2 0 6の判定の結果、 モータ温度推定値が閾値以下 に下がっていない場合には、 温度ステージ S Tは現在記憶されている温度 ステージのままなので、 ステップ S 2 0 7, S 2 0 8の処理は行なわれな い。
続いて、 現在の温度ステージが S T = nであるか否かが判定される ( ステップ S 2 0 9 )。 この判定の結果、 温度ステージが S Τ = ηでなけれ ば、 まだモータ 2 0が充分に冷えていないことを意味しているので、 ステ ップ S 2 0 5に戻って現在の温度ステージ S Τが常に更新記憶される。
一方、 ステップ S 2 0 9の判定の結果、 温度ステージが S Τ = ηであ れば、 モータ 2 0が充分に冷えたことを意味している。 したがって、 モー 夕温度推定が停止され (ステップ S 1 5 )、 トランジスタ 4 5を介して電 源自己保持手段のリレー C Rが O F Fされてコントロールュニット 4 0に 対するバッテリ 4 1からの電力供給が停止され (ステップ S 1 6 )、 電動 パワーステアリング装置の制御が停止される (ステップ S 1 7 )。
以上のように、 第 2実施形態に係る電動パワーステアリング装置では
、 I Gスィッチ 4 2が O F Fされ、 電源自己保持手段によって温度推定手 段の温度推定処理が終了するまでの間に、 温度推定手段の推定値が属して いた少なくとも 1つの温度ステージ状態をコントロールュニット 4 0の記 憶部に記憶し、 その後、 再び I Gスィッチ 4 2が O Nされて温度推定手段 が作動した際に、 温度ステージ状態に基づいて、 予め設定されている複数 のデータの中からモータ温度推定オフセット値を読み出し、 温度推定処理
の初期値に加算するようになっている。 これにより、 上述した第 1実施形 態と同様の作用効果が得られることはもとより、 記憶部に記憶するデータ を温度ステージ状態とすることで、 記憶容量の削減化を図ることができ、 温度推定における処理能力の向上を図ることができる。
また、 第 2実施形態の制御では、 モータの駆動制御が実行されている 間に、 温度推定値が最大になっている時の温度ステージ (S T = 0 ) がコ ントロールュニット 4 0内の記憶部に記憶されるようになっている。 例え ば、 バッテリ 4 1の電圧が瞬時に低下 ·停止するなどの異常事態が発生し た場合には、 コントロールユニット 4 0の C P Uがリセットされ、 その後 バッテリ 4 1の電圧が復帰すると、 C P Uは I G— O Nと判断し、 初期化 •初期診断から制御処理フローを再開するようになっているが、 その際に モータ温度推定初期値が安全サイドである最大値に設定されることにより 、 安全で確実なモータ 2 0の過熱保護を実行することができる。
さらに、 第 2実施形態の制御では、 I G— O F Fからモー夕温度推定 停止までの間、 すなわちモータ 2 0の温度が低下していく間、 温度ステ一 ジ S Tが移行する度に現在の温度ステージが上書き保存され、 I G— O N 時のモ一夕温度推定初期値は、 モー夕温度推定値が記憶されている温度ス テ一ジ S Tに応じて設定されるようになっている。 これにより、 モー夕温 度推定初期値を過剰に安全サイ ドに設定することなく、 モ一夕 2 0の過熱 保護を実行することができる。
なお、 上述した第 2実施形態の説明では、 温度推定オフセット値を与 えるようにしたが、 温度推定処理の各状態変数の初期値を設定してもよい 。 精度の良い温度推定を行なうため高次のフィルタや数個のフィル夕が必 要となる場合がある。 このときは、 各フィル夕の状態量 (内部演算値) を 設定する必要がある。
また、 別の実施形態として、 温度ステージ状態の代わりに、 温度推定
処理の状態量を記憶して、 同様の処理を実行するようにしても良い
[第 3実施形態]
'第 1 0図は、 本発明の第 3および第 4実施形態に係る電動パワーステ ァリング装置の制御構成を示すブロック図である。 なお、 以下に説明する 本発明の実施形態において、 上述した従来例ならびに第 1および第 2実施 形態と共通の構成要素には同一の符号を付して、 その説明を省略し、 ここ では主として異なる部分についてのみ説明する。
第 1 0図に示されるように、 第 3および第 4実施形態に係る電動パヮ ーステアリング装置の制御構成では、 この装置が搭載される車両のェンジ ン回転数を検出するエンジン回転数センサ 5 0からの検出信号が、 コント ロールュニット 4 0に入力されるという点で、 上述した第 1および第 2実 施形態とは相違している。 このエンジン回転数センサ 5 0は、 一般的な車 両のエンジンに実装されているものであり、 車両に装置を搭載する際にコ ントロールュニット 4 0と電気的に接続される。
次に、 第 1 1 A図〜第 1 1 B図のフローチャートを参照にしながら、 本発明の第 3実施形態に係る電動パワーステアリング装置の制御動作例に ついて説明する。 なお、 同図において、 上述した第 3 A図〜第 3 B図、 第 5 A図〜第 5 B図、 および第 8 A〜第 8 B図のフロ一チヤ一トと同一のス テツプ (ルーチン) には同一のステップ番号を付して説明を省略し、 ここ では主として異なる部分についてのみ説明する。
第 3実施形態の制御では、 I Gスィッチ 4 2が O Nされると、 まず制 御装置の初期化 ·初期診断が行われ (ステップ S l )、 その後コントロー ルュニット 4 0内の記憶部に記憶されている温度ステージ S Tが読み取ら れる 、 (ステップ S 2 0 1 )。 そして、 読み取られた温度ステージ S Tに応 じてモータ温度推定値の初期値が設定され (ステップ S 2 0 2 )、 この初
期値に基づいてモー夕温度推定が開始される (ステップ S 2 )。 続いて、 モータ 2 0による操舵補助を実行するアシスト (操舵補助) 開始条件が成立しているか否かの判定が行われる (ステップ S 3 0 1 )。 ここでは、 I G— O Nであり、 かつ、 エンジン回転数センサ 5 0によって 検出されたエンジン回転数が規定値以上であった場合に、 アシスト開始条 件が成立したと判定される。 エンジン回転数の規定値は、 アイドリング時 のエンジン回転数以下 (例えば 3 0 0 r p m以下) に設定される。 このァ シスト開始条件が成立するまでは、 待機状態となり、 モー夕 2 0の制御は 行われない。
ステップ S 3 0 1においてアシス卜成立条件が成立したと判定された 場合には、 温度ステージが安全サイ ドである S T == 0に設定され (ステツ プ S 2 0 3 )、 上述した制御動作例と同様、 ステップ S 3〜ステップ S 1 1のモ一夕駆動制御が実行される。 ただし、 上述した制御動作例では、 ス テツプ S 1 0で I G—〇N / 0 F Fの判定が行われていたが、 この第 3実 施形態の制御では、 アシスト継続条件が成立しているか否かの判定が行わ れる (ステップ S 3 0 2 )。 ここでは、 ステップ S 3 0 1のアシスト開始 成立条件の成立判定と同様に、 I G— O Nであり、 かつ、 エンジン回転数 センサ 5 0によって検出されたエンジン回転数が規定値以上であった場合 に、 アシスト継続条件が成立したと判定される。 すなわち、 I G— O F F 時に加え、 エンストなどによりエンジン回転数が規定値以下になった場合 にもモ一夕 2 0の制御が停止され、 モータ温度が低下する状態が記憶され るようになっている。
ステップ S 3 0 2において、 アシスト継続条件が成立していないと判 定された場合には、 モータ制御信号の出力が停止され (ステップ S 1 2 ) 、 乇一夕温度推定値の闘値が初期化される (ステップ S 2 0 4 )。 ここで は、 上述した第 2実施形態の制御動作例 (第 8 A図、 第 8 B図) と同様、
温度ステージが S T = 0から S Τ == 1に変わる閾値がモ一夕温度推定値の 初期閾値として設定され、 その後、 ステップ S 2 0 5〜ステップ S 2 0 8 で現在の温度ステージ S Τを更新記憶する処理が実行される。
続いて、 I Gスィッチ 4 2の入カインタフェース 4 4から I Gスイツ チ検出信号の入力が行われ、 I Gスィッチ 4 2の O N Z〇 F Fが判定され る (ステップ S 3 0 3 )。 この判定の結果が I G— O Nであれば、 ステツ プ S 3 0 2でエンジン回転数が規定値以下と判定されたか、 あるいは、 ス テツプ S 3 0 2で I Gスィツチ 4 2が O F Fであると判定されたが、 その 後、 モータ 2 0が充分に冷える前に操縦者によって I Gスィッチ 4 2が〇 Nされたことを意味している。 したがって、 このステップ S 3 0 3の判定 の結果が I G— O Nである場合には、 アシスト継続条件が成立しているか 否かが再度判定される (ステップ S 3 0 4 )。 ここでの判定条件は、 上述 したステップ S 3 0 1 , S 3 0 2の処理と同様である。
ステップ S 3 0 4の判定の結果、 アシス卜継続条件が成立していれば 、 ステップ S 2以降のモ一夕温度推定が継続されていて、 現在のモータ温 度推定値が信頼性の高いデ一夕であることを意味している。 したがって、 この場合、 このまま温度推定値の修正は行われず、 ステップ S 2 0 3に戻 つて温度ステージを S T = 0にした後、 ステップ S 3〜S 1 1の通常のモ 一夕制御が実行される。
一方、 ステップ S 3 0 4の判定の結果、 アシスト継続条件が成立して いなければ、 エンジン回転数が所定値以下に下がっていることを意味して いる。 したがって、 この場合、 ステップ S 2 0 5に戻って現在の温度ステ ージ S Tが常に更新記憶される。
ステップ S 3 0 3で I G—〇 F Fと判定された場合には、 さらに現在 の温度ステージが S nであるか否かが判定される (ステップ S 2 0 9 )。 この判定の結果、 温度ステージが S T = nでなければ、 まだモー夕 2
0が充分に冷えていないことを意味しているので、 ステップ S 2 0 5に戻 つて現在の温度ステージ S Tが常に更新記憶される。
一方、 ステップ S 2 0 9の判定の結果、 温度ステージが S T = nであ れば、 モー夕 2 0が充分に冷えたことを意味している。 したがって、 モー 夕温度推定が停止され (ステップ S 1 5 )、 トランジスタ 4 5を介して電 源自己保持手段のリレ一 C Rが〇 F Fされてコントロールュニット 4 0に 対するバッテリ 4 1からの電力供給が停止され (ステップ S 1 6 )、 電動 パワーステアリング装置の制御が停止される (ステップ S 1 7 )。
以上のように、 第 3実施形態に係る電動パワーステアリング装置の制 御では、 上述した第 2実施形態と比較すると、 アシスト成立条件の判定が 加えられている。 これにより、 上述した第 1実施形態および第 2実施形態 と同様の作用効果が得られることはもとより、 例えばマニュアル · トラン スミッション車 (M T車) でのエンスト時に、 I G— O N状態でエンジン 再起動によるクランキングにより、 パッテリ電圧が瞬低、 瞬停するなどの 異常事態が発生しても、 正常に過熱保護を実行できるようになつている。
また、 第 3実施形態の制御では、 アシス卜継続条件の不成立からモー 夕温度推定停止までの間、 温度ステージ S Tが移行する度に現在の温度ス テ一ジが上書き保存され、 I G— O N時のモータ温度推定初期値は、 モー 夕温度推定値が記憶されている温度ステージ S Tに応じて設定されるよう になっている。 これにより、 モ一夕温度推定初期値を過剰に安全サイドに 設定することなく、 モー夕 2 0の過熱保護をより確実に実行することがで きる。
[第 4実施形態]
次に、 本発明の第 4実施形態に係る電動パヮ一ステアリング装置の制 御動作例について、 第 1 2 A図〜第 1 2 B図のフローチヤ一トを参照して
説明する。 なお、 同図において、 上述した第 3 A図〜第 3 B図、 第 5 A図 〜第 5 B図、 第 8 A〜第 8 B図、 および第 1 1 A図〜第 1 1 B図のフロー チヤ一卜と同一のステップ (ルーチン) には同一のステップ番号を付して 説明を省略し、 ここでは主として異なる部分についてのみ説明する。
第 4実施形態の制御では、 ステップ S 3 0 2でアシスト継続条件が成 立しなかった場合に、 乇一夕制御信号の出力が停止され (ステップ S 1 2 )、 温度ステージ S Tの書込完了フラグ S F= 1が、 コントロールュニッ ト 4 0内の記憶部における温度ステージ S T用の領域とは別の領域に記憶 される (ステップ S 404)。 このステ一ジ書込完了フラグ S F= 1は、 前回の制御処理において、 モー夕 2 0の制御が正常に停止され、 温度ステ —ジ S Tとして少なくとも S T= 0が記憶されており、 かつ、 温度ステー ジ S Tが移行する度に現在の温度ステージが上書き保存されていたことを 意味している。
そして、 I Gスィッチ 42が ONされると、 制御装置の初期化 ·初期 診断が行われ (ステップ S l )、 その後、 上記ステージ書込完了フラグ S Fが 1であるか否かが判定される (ステップ S 40 1 )。 このステップ S 40 1において S F = 1の場合には、 記憶部に記憶されている前回の制御 処理終了時の温度ステージ S Tに信頼性があるので、 その温度ステージ S Tが読み取られ (ステップ S 2 0 1 )、 該温度ステージ S Tに基づいてモ 一夕温度推定値の初期値が設定される (ステップ S 2 0 2)。
一方、 ステップ S 40 1において S F= 1ではない場合 (すなわち S F= 0の場合) には、 前回の制御処理終了時にモ一タ制御が途中で終了し たことを意味している。 この場合、 今回の始動直前まで制御処理が行なわ れていて、 モータが高温になっている可能性があるため、 温度ステージが 最高温度時の S T= 0に設定され (ステップ S 40 2 )、 ステップ S 2 0 2の処理において S T = 0に基づく最高温度の状態がモー夕温度推定値の
初期値として設定される。
ステップ S 3 0 1でアシス卜成立条件が成立したと判定された場合に は、 次回の制御処理の停止に備えて、 温度ステージが安全サイドである S T = 0に設定され (ステップ S 2 0 3 )、 ステージ書込完了フラグが S F = 0にクリアされる (ステップ S 4 0 3 )。 その後、 第 3実施形態と同様 にモータ駆動制御が実行され、 ステップ S 3 0 2でアシスト継続条件が不 成立になると、 モータ駆動制御が停止されて (ステップ S 1 2 )、 温度ス テージ S Tの書込完了フラグ S F = 1が記憶される (ステップ S 4 0 4 ) 。 なお、 このステップ S 4 0 4以降の処理については、 第 3実施形態で説 明した処理と同様であるため、 ここでは説明を省略する。
以上のように、 第 4実施形態に係る電動パワーステアリング装置の制 御では、 上述した第 3実施形態と比較すると、 温度ステージ S Tの書き込 みが正常に完了したか否かを示す完了フラグ S Fが加えられ、 該ステージ 書込完了フラグ S Fが、 コントロールュニット 4 0の記憶部における温度 ステージ S T用の領域とは別の領域に記憶されるようになっている。 これ により、 上述した第 1〜第 3実施形態と同様の作用効果が得られることは もとより、 例えばバッテリ 4 1の電圧が瞬停するなどの異常事態が発生し て温度推定値のリセットおよぴ温度ステージ S Tが書込み不良となった場 合でも、 モー夕 2 0の異常過熱を防止することができる。 以上、 本発明の実施形態について具体的に説明してきたが、 本発明は これに限定されるものではなく、 その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可 能である。
なお、 本実施形態ではモー夕 2 0を温度推定対象として説明したが、 本発明の温度推定対象はモータ 2 0に限定されるものではなくず、 リレー やその他の発熱部位でもよい。
また、 本発明は、 コラム式およびピニオン式電動パワーステアリング 装置に適用できることは勿論、 ラックアシスト式電動パワーステアリング 装置にも適用可能である。 産業上の利用可能性
本発明に係る電動パワーステアリング装置は、 電源停止後も電源を自 己保持し、 温度推定を継続させることができるので、 例えばモータなどの 発熱部位が過熱状態に至るのを防止する場合に有用である。