明 細 書
X線 CT装置
技術分野
[0001] 本発明は、 X線 CT装置及びその撮像条件決定方法に関し、特に、マルチエネルギ 一型 X線 CT装置における最適な撮像条件決定技術に関する。
背景技術
[0002] マルチエネルギー型 X線 CT装置は、 1以上の X線源と、 X線源に対向して配置され る 1以上の X線検出器とを X線を照射して回転移動させながら X線源と X線検出器との 間に配置された被検体を、 2つ以上の異なるエネルギースペクトルで撮影し、得られ た被検体透過データを用いて、断層像 (画像)を生成するものである。(より具体的には 特許文献 1参照。 )
マルチエネルギー型 X線 CT装置では、 2つ以上の異なるエネルギースペクトルで撮 影して差分演算等をすることにより、前記断層像上で識別したい識別組織と、前記識 別組織の背景にある分離組織とを、それらの X線減弱特性のエネルギー依存性を考 慮に入れて、よりコントラスト良く表示可能とするもので、識別組織を識別しやすい (識 別能が高い、読影者が所望の識別組織を発見しやすレ、)利点があると考えられて!/ヽ
[0003] 特許文献 1:特開 2004— 174253号公報。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0004] しかしながら、特許文献 1記載の従来技術では、マルチエネルギー型 X線 CT装置 における最適な撮像条件の決定方法につ!/、て考慮されて!/、なレ、。
本発明の目的は、マルチエネルギー型 X線 CT装置において最適な撮像条件を決 定することが可能な X線 CT装置及びその撮像条件決定方法を提供することにある。 課題を解決するための手段
[0005] 本発明によれば、複数の異なるエネルギースペクトルの X線を被検体に照射可能な 少なくとも 1以上の X線源と、 X線源に対向配置され前記被検体の透過 X線データを
検出する X線検出器とを、 X線を照射しながら前記被検体の周囲を回転移動させるス キヤナ部と、
前記スキャナ部によって 2つ以上の異なるエネルギースペクトルの前記被検体の透 過 X線データを得て前記被検体の断層像を再構成する再構成手段と、
前記再構成された断層像を表示する表示手段とを備えた X線 CT装置において、 前記断層像上より、識別すべき前記被検体の識別組織及び前記識別組織と分離 したい分離組織に関する情報を入力する入力手段と、
前記断層像より前記識別組織を識別するための撮像条件を決定する撮像条件決定 手段を備えたことを特徴とする X線 CT装置が提供される。
また、 X線 CT装置における撮像条件決定方法において、
[0006] (1)前記 X線 CT装置で得られた断層像上で、識別すべき前記被検体の識別組織及 び前記識別組織と分離したい分離組織に関する情報を入力する工程と、
(2)前記断層像より前記識別組織を識別するための撮像条件を決定する工程を備 えたことを特徴とする X線 CT装置における撮像条件決定方法が提供される。
発明の効果
[0007] 本発明によれば、マルチエネルギー型 X線 CT装置にお!/、て最適な撮像条件を決 定することが可能な X線 CT装置及びその撮像条件決定方法が提供される。
図面の簡単な説明
[0008] [図 1]マルチエネルギー型 X線 CT装置の概要構成図。
[図 2]画像処理装置 10を含む画像処理システムの概要構成図。
[図 3]マルチエネルギー撮影において操作者の所望の識別組織を最も良く分離組織 に対して識別する撮影条件 (より具体的には 2つの管電圧の組み合わせ)を選定する 工程、及びそれによるマルチエネルギー撮影の工程の処理を示す一例のフローチヤ ート。
[図 4]識別組織を指定する画像処理装置 9による画像表示装置 18の画面例を示す図
[図 5]図 4で指定した識別すべき組織と分離すべき分離組織を選択するための選択リ スト。
[図 6]組織テーブルを示す図。
[図 7]2つの管電圧を組み合わせて撮影を行って得られた 2枚の差分画像より識別組 織を識別する識別率のテーブル。
[図 8]X線源から発生され対向する X線検出器 12で検出される X線の実効スペクトル、 実効エネルギーおよびその減弱を説明するための図。
[図 9]管電圧 80kV、 100kV、 140kVの時に得られる照射 X線実効スペクトルの分布をそ れぞれ、一点鎖線、実線、点線で表したグラフ。
[図 10]作成した差分画像上で各組織につ!/、てヒストグラムを求めた図。
[図 11]ヒストグラム上で、識別能を求める識別組織以外の他の組織 (分離組織)の成分 力 識別組織の分布と重なる割合力 所定割合以下になるような閾値を求める図。
[図 12]閾値以上 (あるいは以下)の識別組織の面積 S1 (画素数)を求める図。
[図 13]識別組織の総面積 S2(画素数)を求める図。
[図 14]高エネルギー条件 (High-kV)、低エネルギー条件 (Low— kV)の組み合わせ毎 に求めた識別率のグラフ。
[図 15]識別組織 A、 B、 C、 D…に対して、差分処理とか、加算処理とか、比例配分処 理とかの処理例をデータとして記憶することを示す図。
発明を実施するための最良の形態
以下、添付図面に従って本発明に係る X線 CT装置の好ましい実施形態について 説明する。
図 1はマルチエネルギー型 X線 CT装置の概要構成図である。マルチエネルギー型 X線 CT装置は、ガントリ (スキャナ) 1と、それに搭載された X線源 2、 X線検出器 3、テー ブル 4と、 X線源 2の照射を制御する X線制御器 5と、ガントリを制御するガントリ制御器 6と、テーブル 4を制御するテーブル制御器 7と、 X線検出器 3に入射された X線の強度 を電気信号に変換するデータ解析システム (DAS)8と、 DAS8で変換した電気信号を 入力し再構成演算を行う再構成演算器 9と画像処理装置 10から構成される。 X線源 2 は、被検体 0をはさんで対向配置される X線検出器 3に向かって X線を照射し、 X線検 出器 3が被検体を透過した X線を検出し、その強度に従った電気信号を発生する。 X 線源 2と X線検出器 3は 1回の走査の間に被検体 0の周りを回転する。
[0010] X線源 2及びガントリ 1の動作は X線制御器 5とガントリ制御器 6によって制御される。 X 線制御器 5は X線源 2に電力信号及び X線発生タイミング信号を供給し、ガントリ制御 器 6はガントリ 1上の構成要素の回転速度及び位置を制御する。テーブル 4はテープ ル制御器 7によって制御され、テーブル 4の移動速度及び位置を制御する。
[0011] X線検出器 3に入射された X線は DAS8によってディジタル信号に変換され、再構成 演算器 9はディジタル変換された X線データを受け取って画像再構成を実行し、被検 体 0の断層像 (画像データ)を生成する。再構成された画像データは画像処理装置 10 に入力され、後述するデータ記録装置に記録される。
[0012] 図 2は画像処理装置 10を含む画像処理システムの概要構成図である。画像処理装 置 10は主として各構成要素の動作を制御する中央処理装置 (CPU)l lと、画像処理装 置の制御プログラムが格納された主メモリ 12と、画像データを格納するデータ記録装 置 13と、ネットワークとの接続インターフェースであるネットワークアダプタ 14と、被検 体の画像データを一時記憶する表示メモリ 15と、マウス 17につながるコントローラ 16と を備える。
[0013] また、画像システムには、表示メモリ 15からの画像データに基づいて画像を表示す る画像表示装置 18と、画像表示装置上のソフトスィッチを操作するためのマウス 17(ポ インティングデバイスを含む)と、各種パラメータ設定用のキーやスィッチを備えたキー ボード等の外部入力装置 21とがさらに接続されている。ネットワークアダプタ 14は画 像処理装置 10をローカルエリアネットワーク、電話回線、インターネット等のネットヮー クに接続する手段である。データ記録装置 13は、磁気ディスク等の記憶装置や、取り 出し可能な外部メディアに対してデータの書込みや読み出しを行う装置でもよい。画 像処理装置 10はネットワークアダプタ 14及びネットワーク 19を介して外部の画像デー タベース 20と接続して、それらとの間で画像データを送受信する。
[0014] (実施例 1)
次に本発明の実施例 1について説明する。
図 3(a)及び図 3(b)は以上のように構成された画像処理装置によって、マルチエネノレ ギー撮影において操作者の所望の識別組織を最も良く分離組織に対して識別する 撮影条件 (より具体的には 2つの管電圧の組み合わせ)を選定する工程、及びそれに
よるマルチエネルギー撮影の工程の処理を示す一例のフローチャートである。
[0015] 以下、図 3(a)及び図 3(b)に示すフローチャートの手段 (ステップ 1〜ステップ 5)に従つ て処理の詳細を説明する。
(ステップ 1)識別組織指定
本ステップでは識別の対象とする識別組織及び前記識別組織の背景にある分離 組織を指定する。
マウスなどのポインティングデバイスを用いて識別組織を指定する。図 4は識別組織 を指定する画像処理装置 10に接続された画像表示装置 18の画面例を示す図である 。本画面には識別したい組織を選択するための選択リスト (例えば、下肢造影血管、 頭部造影血管、石灰化プラーク、海綿骨、〜)を表示する。操作者は選択リストに表 示されてレ、る組織の中からマルチエネルギー撮影によって識別した!/、組織を選択す
[0016] また図 5は図 4で指定した識別すべき組織と分離すべき分離組織を選択するための 選択リストを表示する。図 5の例においても、分離組織を下肢造影血管、頭部造影血 管、石灰化プラーク、海綿骨等の中から選択する。図 5では、識別組織として下肢造 影血管、分離組織として海綿骨を選択する表示例を示した。その他、脂肪と軟組織、 脳の白質と灰白質、等が選択すべき組織として考えられる。また、肺野における造影 ガスと吸気との識別も、識別が必要な例である。
なお本処理における組織指定のための画面は図 4及び図 5に限られるものではなく 、識別組織及び分離組織が設定できる画面構成であれば何れでも良レ、。
[0017] (ステップ 2)撮影条件選択
本ステップでは識別組織指定処理によって設定された識別組織を最も良く識別す るためのマルチエネルギー撮影条件、より具体的には 2つの管電圧の組み合わせを 求める。
撮影条件算出処理では、図 6の組織テーブル 30を利用する。このテーブル 30は、 予めステップ 1で指定した組織の組み合わせ (例えば図 6の場合には、識別組織が図 4で示した 4つの組織の!/、ずれかであり、分離組織が図 4で示した 4つの組織以外の!/ヽ ずれかである組み合わせ)毎に撮影条件 (具体的には 2つの管電圧の組み合わせ)で
撮影を行って生成した差分画像上での識別組織の識別率 (識別組織を識別する正 確性に関する指標)を求めたテーブルであり、テーブル 31〜42の中から先ずステップ 1で指定した 2つの組織 (識別組織と分離組織)のテーブルを検索する。各テーブルは 、図 7のようなものであり、 2つの管電圧を組み合わせて撮影を行って得られた 2枚の 画像の差分画像等より識別組織を識別する際の識別率をテーブル状で表示したも のである。次にその組織の組み合わせのテーブル (例えば 31)から識別率が最も高い 撮影条件 (より具体的には 2つの異なる管電圧)を検索して最適な撮影条件 (2つの異 なる管電圧の組み合わせ)を求める。
[0018] 識別率は事前に求めておく値であり、組織を識別する正確さを示す指標として定義 し、その値が高いほど組織を正確に識別できることを意味する値である。例えば、識 別率が 90%である場合には、該当する撮影条件 (2つの管電圧の組み合わせ)でマル チエネルギーの撮像を行って識別組織を識別する場合、 90%の確率で画像上より識 別組織を発見できることを意味する。
以下、本ステップで用いられる各撮影条件 (2つの管電圧の組み合わせ)での識別 率の算出方法の一例を図 3(b)に示す。
[0019] (ステップ 2— 1)照射 X線実効スペクトル及び X線実効エネルギーの算出
対象とする X線 CT装置が持つ印加可能な複数の管電圧 (例えば、低エネルギー側 では、 50kV、 60kV、 70kV、 80kV、 90kV、 lOOkV等、高エネルギー側では 100kV、 110k V、 120kV、 130kV、 140kV、 150kV)のそれぞれの各組み合わせについて、(ステップ 1) にお!/、て各管電圧の X線が照射され、 X線検出器で検出される照射 X線実効スぺタト ル及び X線実効エネルギーを算出する。なお、管電圧毎の照射 X線実効スぺクトノレ およびそれぞれの X線実効エネルギーの算出は事前に行い、前もってその結果をデ ータ記録装置 13の中にデータベースとして格納してお!/、てもよ!/、。
[0020] 図 8は、 X線源から発生され対向する X線検出器 3で検出される X線の実効スぺタト ル、実効エネルギーおよびその減弱を説明するための図である。ステップ 2—1では、 X線 CT装置自体の固有特性、識別率を計算したい撮影条件を基に、式 1から制動 X 線のスペクトル、式 2から特性 X線のスペクトルを推定し、これらを組み合わせて照射 X 線のスペクトルを推定する。
IE = N P /A j ET0(l+T/(m0c2)Q(dT/dl)-lex (- μ (E)ltcot a )dT . . - (1)
Ich ^ (T0/T ,L)1.63 · ' · (2)
ただし、 IEはフオトンエネルギー E( = h v )を持つ制動放射 X線のエネルギー強度、 I chは特性 X線のエネルギー強度、 Nはアポガド口数、 p、 Aはそれぞれターゲットの密 度および原子量、 m0は電子の質量、 cは光速、 TOは入射電子のエネルギー、 Qは 1 つの電子力、ら放射される X線のエネルギー強度で、フオトンエネルギー Eと電子エネ ルギー Tの比 E/Tで近似的に決まる値、 dT/dlは Bethe等による阻止能に関する理論 式、 Itは電子の入射距離、 TK,LttK、 L電子軌道から電子を除去するのに必要なエネ ノレギーである。なお、 X線スペクトルの算出には、既知である他の方法を使用しても構 わない。
[0021] 図 8に示すように、陰極 (フィラメント) 81aからターゲット角度 αをもつ陽極 (ターゲット)
81bに対して熱電子が照射され、ターゲット 81bで生成されたフオトンは、熱電子の入 射角度に対してほぼ垂直な角度で発生する。フオトンは、 X線管の固有ろ過アルミ当 量 81c、補償フィルタ (ボウタイフィルタ) 81d、銅フィルタ 81eを透過し、被検体の対象組 織および背景組織を含む検査部位に照射される。 X線の実効スペクトルはこのような X線の照射経路を考慮して算出され、撮影計画段階の初めに撮られたスキヤノグラム から擬似被検体として生成された水換算の楕円体 82などの、 X線吸収体を透過し、シ ンチレータ 82aに入射し、光に変換される。その光はフォトダイオード 82bによって検出 される。算出された照射 X線実効スペクトルから全スペクトルに対するエネルギー毎の 比率を寄与率として算出し、算出した寄与率に基づいて実効エネルギーを算出する
〇
図 9のグラフ 90は、例えば、管電圧 80kV、 100kV、 140kVの時に得られる照射 X線実 効スペクトルの分布をそれぞれ、一点鎖線、実線、点線で表したグラフである。各管 電圧の照射 X線実効スペクトルの分布を用いて公知の平均化処理を行うことにより、 管電圧毎の実効エネルギー 91、 92、 93(それぞれ 80kV、 100kV、 140kVに相当)と算出 される。
[0022] (ステップ 2— 2)識別組織と分離組織の CT値算出
当該 X線 CT装置で印加可能な管電圧 (例えば、低エネルギー側では、 50kV、 60kV
、 70kV、 80kV、 90kV、 lOOkV等、高エネルギー側では 100kV、 110kV、 120kV、 130kV 、 140kV、 150kV)においてマルチエネルギーの撮像を行った場合の識別組織 (A)とそ れに対応する分離組織 (B)の CT値 PVA、 PVBを、その減弱係数 Α、 μ Β、識別組織 Αとそれに対応する分離組織 Βの密度 (DA、 DB)、同一条件下における水の減弱係数 〃Wを用いて、以下の式 3— 1、 3— 2により算出する。
PVA= (DA ^ A- ^ w) · 1000/ μ w ' · · (3— 1)
PVB = (DB ^ B- ^ w) - 1000/ , w · ' · (3— 2)
[0023] (ステップ 2— 3)識別組織 Aと分離組織 Bのコントラスト算出
(ステップ 2— 2)により得られた 2つの式 (3— 1)、(3— 2)を用いて、被検体の識別組織 Aおよびその分離組織 B間のコントラスト C(CT値差)を算出する。
C = (DA ^ A-DB a B) - 1000/ μ w · ' · (4)
[0024] (ステップ 2— 4)2種類の管電圧について模擬画像を生成
管電流値が所定の場合にお!/、て、 X線源 2から照射される X線の照射線量を規定す る管電流時間積 mAsに基づいて投影データ上でのノイズ量が計算する。次に、投影 データ上でのノイズ量を画像データ上におけるものに変換して模擬画像を高工ネル ギー側の管電圧のものと低エネルギー側の管電圧のもの 2つについて作成する。模 擬画像は、識別組織が分離組織上で、ステップ (2— 3)で得られたコントラスト及び本 ステップで計算したノイズ量を持つように画像生成される。当該模擬画像は、 2種類の 管電圧である場合それぞれにつ!/、て求める。
[0025] (ステップ 2— 5)差分画像を作成
低エネルギー条件 (Low— kV)で撮影した模擬画像と高エネルギー条件 (High-kV) で撮影した模擬画像の差分画像を作成する。
[0026] (ステップ 2— 6)ヒストグラムを作成
作成した差分画像上で各組織について図 10に示すようなヒストグラムを求める。図 1 0で横軸が CT値、縦軸が画素頻度である。図は識別率を求める識別組織 Aと分離組 織 (識別組織に対して分離させたい組織で識別組織の背景に位置している組織) Bと のヒストグラムを示してある。これを各組織、例えば図 6で示された 4つの組織間の組 み合わせについて求める。
[0027] (ステップ 2— 7)閾値 CT値を導出
図 11に示すようにヒストグラムで、識別能を求める識別組織以外の他の組織 (分離組 織)の成分が、識別組織の分布と重なる割合が、所定割合以下になるような閾値を求 める。これは、図 11の斜線で示す面積 SO (—定割合以下)となるべき CT値を、閾値 CT rとして求めるものである。
[0028] (ステップ 2— 8)閾値以上の識別組織の面積を導出
図 12に示すように閾値以上 (あるいは以下)の識別組織の面積 S1 (画素数)を求める。 これは、図 8で選択した閾値 CTr以上の CT値 (即ち CTr以下のものをカットした残りの もの)を有する、識別組織 Aの面積 S 1を求めるものである。
[0029] (ステップ 2— 9)識別組織の総面積を導出
図 13に示すように識別組織の総面積 S2(画素数)を求める。これは、 CTrでカットしな い前の識別組織 Aの面積 S2を求めるものである。
[0030] (ステップ 2— 10)識別率 Kを導出
閾値以上の識別組織 Aの面積 S1と識別組織の総面積 S2との比 S1/S2を識別率 と する。なお算出方法については組織を識別する割合を算出する方法であればよぐ この一例に限らない。
この算出方法にしたがって識別率を高エネルギー条件 (High-kV)、低エネルギー条 件 (Low— kV)の組み合わせ毎に求める。図 14は上記算出方法によって求めた識別 率のグラフである。
[0031] 図 14は、ある識別組織 A (例えば下肢造影血管)にたいする具体例であって、横軸を 高エネルギー (High-kV)の電圧値 (90kV〜160kV)、縦軸が識別率 Kを示し、パラメ一 タとして低エネルギー V1〜V6(50、 60、 70、 80、 90、 100kV)を採用した例である。この 図から、低エネルギー側の管電圧の中でも低!/、側のエネルギー (50〜70kV)では識 別率 Kは大きぐ低エネルギー側の管電圧の中で高い側のエネルギーに近づく程 (8 0kV〜100kV)に識別率が低下していることがわかる。また高エネルギー側の管電圧 では、低エネルギー側 (100、 110kV)で識別率が比較的低いことがわ力、る。
[0032] 図 14のようなグラフは、識別組織と分離組織の組み合わせ毎に求めておく。そして それをテーブル上にデータとして記録させておく。図 7は、図 14のデータをテーブルと
して記憶した例である。
[0033] ステップ 2では撮影条件の決定と共に、そのように識別のための画像処理態様を求 める。識別のための画像処理態様とは、上記算出した撮影条件によって、高エネノレ ギー撮影画像と低エネルギー撮影画像が得られる力 これ力 識別組織を識別する ための実施する画像処理のことである。この際、識別率を求めたときの画像処理を記 憶させておき、この記憶した画像処理によって、高エネルギー撮影画像と低エネルギ 一撮影画像との間での処理を行って、識別した!/、組織が明確になる画像を得る。 かかる記憶データ例を図 15に示す。識別組織 A、 B、 C、 D…に対して、差分処理と 、、加算処理とか、比例配分処理とかの処理例をデータとして記憶してある。
[0034] また識別能を上記のようにテーブルとして保持せずとも、その都度過去の類似画像 を検索して識別率を算出する方法や、計算機で擬似的に作成した画像を用いて算 出することも考えられる。
[0035] ここで、最適識別条件の抽出について述べる。
図 14や図 7の事例では、識別能の最も高い値は 100%である、高エネルギーと低ェ ネルギ一との組合せは下記となる。
(H)130kV— (L)60kV、(H)140kV— (L)60kV、(H)150kV— (L)60kV
この中から 1つを最適識別条件として選ぶやり方がある。
[0036] 一方、識別率力 100%ではなくても 90%以上である組合せの中から 1つを選択する 方法がある。図 7の事例では、 16通りであり、この中から、例えば高エネルギーの電圧 として例えば 120kVとし、低エネルギーの中で高エネルギー側が 120kVである場合と の組合せで最も高!/、識別率の電圧を選ぶ。
[0037] 図 7の例では、最も識別率の高い組み合わせは低エネルギー側が 60kVとなる。逆 に低エネルギーを 70kVというように固定して、最適な高エネルギーの電圧を選ぶ。図 7の例では 150kVとなる。
また最も高い識別率ではなぐ 50%程度の識別率でも判別するのに十分であると操 作者が判断すれば、(H)130kV— (L)90kVのような組合せを選択する例もある。
[0038] またハードウェアとして、電圧が制限されていたり、 X線照射量を少なくしたいとか、 消費電力に制限のあるような事例にあっては、そのような各種の制限の中で、最適と
操作者が判断する例もある。
[0039] 更に、識別したい識別組織力 ¾つ以上あってこれらを併存して画像中で識別したい 場合がある。そのような場合には、この 2つ以上の識別組織のそれぞれの識別率の平 均値等を利用してその値が高くなるようなものを選択可能になるようにすれば良い。
[0040] 以上より、最適な管電圧を選択する場合には、識別率の高い組み合わせを選んで も良いし、その他の事情 (例えば高エネルギー側の電圧を予め定めた値にしたい、低 エネルギー側の電圧を予め定めた値にしたい、識別組織の判別のために必要な識 別率はこの程度である等)を考慮して、選定すれば良!/、。
[0041] (ステップ 3)撮影条件提示
本ステップでは撮影条件算出処理で、テーブル 30から求めた識別組織の撮影条件 とその条件での識別率を表示する。
[0042] (ステップ4)マルチエネルギー撮影
本ステップでは 2ステップ 2で得られた撮影条件により、マルチエネルギー撮影によ り同一被検体の 2つ以上の異なるエネルギースペクトルで撮影された透過データを得 る。マルチエネルギー撮影には様々な方法があり、例えばガントリ内に 2つの X線源と X線検出器を有し、それぞれの X線源から異なる管電圧を付加することにより 2つの異 なるエネルギースペクトルを持つ透過データを得る方法や、 X線源の前にフィルター を付加し、フィルターの有無によって異なるエネルギーを発生させる方法などが知ら れている。
[0043] 本発明で用いるマルチエネルギー撮影の方法は 2つ以上の異なるエネルギースぺ タトルを有する被検体透過データが得られる方法であれば何れでもよい。
(ステップ 5)組織識別画像作成
本処理工程では、マルチエネルギー撮影で得た 2つ以上の異なるエネルギースぺ タトルを有する被検体透過データを用いて識別組織指定で指定した組織を最も良く 識別するための画像を作成する。識別組織指定で指定した組織を最も良く識別する 画像は、撮影条件算出処理の識別率算出で用いた画像であるので、その画像を作 成するための画像処理を用レ、る。
[0044] この画像処理は図 15にても説明したが、上記撮影条件算出処理の識別率算出方
法の一例で示した差分処理の他に High-kV画像、 Low— kV画像の加算平均処理や 重みつき差分または加算平均処理、コンプトン/光電分解処理など様々な画像処理 力 sある。
[0045] 尚、撮影条件として、電圧を示したが、電流を付加することもありうる。またスライス幅 の指定の事例もありうる。
[0046] 本発明の実施例に係る X線 CT装置は、上記図 3(b)で示されたようなフローチャート を実行するためのプログラムを、 X線 CT装置で得られた断層像より識別組織を識別 するための撮像条件を決定するための撮像条件設定手段として図 3(a)のステップ 2を 実行するために備えている。プログラム等として備えられる撮像条件設定手段は、前 記複数の異なるエネルギースペクトルより任意の 2つ以上を選択する選択する照射 X 線スペクトル選択手段であっても良ぐ該照射 X線スペクトル選択手段は、前記複数 の異なるエネルギースペクトルの管電圧を選択するようになっていても良い。
[0047] より具体的に例えば、前記撮像条件決定手段は、任意の 2つ以上の選択された複 数のエネルギースペクトルで透過 X線データ得て画像再構成した断層像上で、前記 識別組織を識別する正確性に関する指標を算出する算出手段を備えるようになって いても良い。また、前記算出手段は、前記複数の異なるエネルギースペクトルの複数 の管電圧の組み合わせにつ!/、て、前記指標を算出するようになって!/、ても良!/、。
[0048] また、前記照射 X線スペクトル選択手段は、前記指標より、正確性の高!/、指標を持 つ管電圧の組み合わせを選択するようになっていても良い。また、前記表示手段は、 前記指標を、前記複数の管電圧の組み合わせにつ!/、てテーブル状に表示するよう になっていても良い。
[0049] また、前記撮像条件決定手段は、複数の異なるエネルギースペクトル及び前記被 検体の!/、くつかの組織の X線減弱係数を記憶する記憶手段と、前記!/、くつかの組織 より所望の識別組織と、前記識別組織と分離した!/、分離組織を選択する組織選択手 段を備え、前記算出手段は、前記複数の異なるエネルギースペクトルと前記識別組 織と分離組織の X線減弱係数を用いて、模擬画像を生成する模擬画像生成手段と、 前記模擬画像生成手段より前記識別組織と分離組織の画素分布を表すヒストグラム を生成するヒストグラム生成手段と、前記識別組織と分離組織の前記ヒストグラムでの
重なり具合より、前記指標を算出する指標算出手段を備えるようになっていても良い 。また、該模擬画像生成手段は、前記複数の異なるエネルギースペクトルそれぞれ の実効エネルギーを算出する実効エネルギー算出手段と、該算出された実効エネル ギ一での X線減弱係数を用いて前記識別組織と分離組織の CT値を算出する CT値 算出手段と、管電流値に基づいて算出された前記断層像上でのノイズ量を算出する 断層像上ノイズ算出手段と、前記 CT値と、前記断層像上でのノイズ量を基に、模擬 画像を生成する手段を備えるようになつていても良い。また、前記断層像上ノイズ算 出手段は、前記管電流値に基づいて、投影データ上でのノイズ量を計算する手段と 、前記投影データ上でのノイズ量を、投影データ上でのノイズ量に換算する換算手 段を備えるようになって!/、れば良レ、。
[0050] また、本発明に係る X線 CT装置における撮像条件決定方法は、)前記 X線 CT装置 で得られた断層像上で、識別すべき前記被検体の識別組織及び前記識別組織と分 離した!/、分離組織に関する情報を入力する工程 (1)と、前記断層像より前記識別組織 を識別するための撮像条件を決定する工程 (2)を備えている。例えば、前記工程 (2)は 、前記複数の異なるエネルギースペクトルより任意の 2つ以上を選択する選択するェ 程であっても良い。
[0051] 例えば、前記工程 (2)は、前記複数の異なるエネルギースペクトルの管電圧を選択 する工程であっても良い。
[0052] 例えば、前記工程 (2)は、任意の 2つ以上の選択された複数のエネルギースペクトル で透過 X線データ得て画像再構成した断層像上で、前記識別組織を識別する正確 性に関する指標を算出する工程 (3)を含んでいても良い。
[0053] 例えば、前記工程 (3)は、前記複数の異なるエネルギースペクトルの複数の管電圧 の組み合わせにつ!/、て、前記指標を算出するようになって!/、ても良レ、。
[0054] 例えば、前記工程 (2)は、前記指標より、正確性の高!/、指標を持つ管電圧の組み合 わせを選択するようになって!/、ても良レ、。
[0055] 例えば、前記工程 (2)は、前記指標を、前記複数の管電圧の組み合わせについて テーブル状に表示する工程を含んで!/、ても良レ、。
[0056] 例えば、前記工程 (2)は、複数の異なるエネルギースペクトル及び前記被検体の!/、
くつかの組織の X線減弱係数を記憶する工程 (4)と、前記!/、くつかの組織より所望の 識別組織と、前記識別組織と分離した!/ヽ分離組織を選択する工程 (5)を備え、前記ェ 程 (3)は、)前記複数の異なるエネルギースペクトルと前記識別組織と分離組織の X線 減弱係数を用いて、模擬画像を生成する工程 (6)と、前記工程 (6)で得られた前記模 擬画像より前記識別組織と分離組織の画素分布を表すヒストグラムを生成する工程 (7 )と、前記識別組織と分離組織の前記ヒストグラムでの重なり具合より、前記指標を算 出する工程 (8)を含んで!/、ても良!/、。
[0057] また、例えば前記工程 (6)、前記複数の異なるエネルギースペクトルそれぞれの実 効エネルギーを算出する工程 (9)と、該算出された実効エネルギーでの X線減弱係数 を用いて前記識別組織と分離組織の CT値を算出する工程 (10)と、管電流値に基づ いて算出された前記断層像上でのノイズ量を算出する工程 (11)と、断層像上ノイズ算 出手段と、前記 CT値と、前記断層像上でのノイズ量を基に、模擬画像を生成するェ 程 (12)を備えていても良い。
[0058] また、例えば前記工程 (11)は、前記管電流値に基づいて、投影データ上でのノイズ 量を計算する工程 (13)と、前記投影データ上でのノイズ量を、画像データ上でのノィ ズ量に換算する工程 (14)を含んで!/、ても良!/、。
[0059] また、本発明は上記実施例に限定されるものではなぐ本発明の要旨を逸脱しない 範囲で種々に変形して実施できる。例えば、 2つの照射 X線を管電圧で選ぶようにし ても良いが、同じ管電圧でも照射 X線エネルギースペクトルが異なることがあるので、 エネルギースペクトルで選ぶようにしても良い。また識別の正確性に関する指標とし て識別率を用いた力 ROC解析における TPF(True Positive Fraction)を各撮像条件 にお!/、て予めデータとして求めて記憶してぉレ、て、そのデータを参照することができ るようにしても良!/、ことは言うまでもな!/、。