明 細 書
船舶バラスト水の処理装置
技術分野
[0001] 本発明は、船舶バラスト水の処理装置に関し、詳しくは、船舶の既設のバラスト水系 配管に容易に組み込んで、バラスト水中に含まれる水生生物を殺滅することのできる 船舶バラスト水の処理装置に関する。
背景技術
[0002] 原油やコンテナ等を輸送する貨物用船舶には、航行時の船体の安定性を保った めにバラストタンクが設けられている。通常、原油等が積載されていないときには、バ ラストタンク内をバラスト水で満たし、原油やコンテナ等を積み込む際にバラスト水を 排出することにより、船体の浮力を調整し、船体を安定化させている。
[0003] このようにバラスト水は、船舶の安全な航行のために必要な水であり、通常、荷役を 行う港湾の海水が利用される。その量は、世界的にみると年間 30〜40億トンと推計 されている。
[0004] ところで、バラスト水中には、それを取水した港湾に生息する水生生物が混入して おり、船舶の移動に伴い、これら水生生物が同時に異国に運ばれることになる。
[0005] 従って、もともとその海域には生息して!/、なかった生物種力 既存生物種に取って 代わるとレ、つた生態系の破壊が深刻化して!/、る。
[0006] このような背景の中、国際海事機関(IMO)の外交会議において、船舶のバラスト 水及び沈殿物の規制及び管理のための条約(以下、条約という)が採択され、ノ ラス ト水処理装置を用いたバラスト水管理の実施義務が 2009年以降の建造船から適用 される予定となっている。
[0007] また、条約によりバラスト水の排出基準は、以下の表 1に示すように定められている
[0008] [表 1]
項目' パラスト水質基準 大きさ
水生生物 1 0儸 /m 1 10~50 μ πι
水生生物 1 0鵂/ m3 50μ πι以上
« 大腸菌 250cfu/l(Mml
i 病原性コレラ菌 (01,0139) l cfu/ 100ml
m
腸球菌 1 OOcfii/ 100ml
[0009] 以上のような背景から、上記のような問題を解決できるバラスト水の処理技術の開 発が急務となっている。
[0010] 従来、プランクトン等の水生生物を含む水を物理的に処理する手法としては、バラ スト水に対してオゾンガスを注入することにより、バラスト水中の水生生物を殺菌ある いは除菌する技術が特許文献 1に開示されて!/、る。
[0011] また、水生生物が含まれた水を高圧のポンプによりスリット板に通過させ、水生生物 を機械的に破壊して殺滅する技術が特許文献 2に開示されている。
[0012] 現在、海洋を航行する船舶内には、バラスト水を取り込むためのバラストポンプと、 そのバラスト水をバラストタンクに供給するためのバラスト水系配管が設けられている 。既設のバラストポンプは、一例で見れば、 600m3/h、 0. 25MPaの仕様で、高流 量 ·低圧力のポンプが使用されている。
[0013] 本発明者らは、かかるバラスト水系配管に、特許文献 2に記載のスリット板を適用す ることを試みた力';、既設のバラストポンプでは圧力不足で、スリット板が機能しないこと がわかった。処理水量を少なくすることも考えられるが、バラストタンクにバラスト水を 供給するには、時間的な制約があり(例えば、港湾に停泊できる時間の制約など)、 処理水量を極端に少なくすることは困難である。
[0014] また、既設バラストポンプには、バラスト水の取り込みの配管やバラスト水を排出す るための配管等が複雑に設置されており、処理水量を少なくすれば、これらの配管の 径も変えなければならず、バルブによって流量を変えようとしても、バルブを設置する のは狭いスペースの中で作業上困難であり、コストも上昇する問題がある。
[0015] そこで、本発明者らは、既設のバラストポンプや既設のバラスト水系配管をそのまま 有効利用して、必要最少限の改造で、バラスト水を効率的に処理し、実用性に優れ る技術の開発を試み、本発明に至った。
特許文献 1:特開 2004— 160437号公報
特許文献 2 :特開 2003— 200156号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0016] 本発明は、船舶の既設のバラスト水系配管に容易に組み込んで、ノ ラスト水中に含 まれる水生生物を殺滅することのできる実用的な船舶バラスト水の処理装置を提供 することを課題とする。
[0017] 本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
課題を解決するための手段
[0018] 上記課題は、以下の各発明によって解決される。
[0019] 請求項 1記載の発明は、高流量 '低圧力の第 1のバラストポンプによってバラスト水 を船舶内に取り込みバラストタンクに移送する既設のバラスト水系配管から分岐され た分岐管に、前記バラスト水中に、オゾン発生器によって生成されたオゾンを混入さ せるオゾン混合装置と、前記バラスト水を前記第 1のバラストポンプよりも低流量 '高圧 力で吐出する第 2のバラストポンプと、前記第 2のバラストポンプの二次側に設けられ 、前記バラスト水を通過させることにより、該バラスト水中の水生生物を剪断力によつ て破壊するための複数のスリット状の開口を有するスリット板と、前記オゾン混合装置 によってオゾンが混入されたバラスト水中から未溶解オゾンを脱気するための脱気槽 とを設け、前記脱気槽から排出された脱気後のバラスト水を前記バラスト水系配管に 返送するように構成したことを特徴とする船舶バラスト水の処理装置である。
[0020] 請求項 2記載の発明は、前記脱気槽から排出されたバラスト水を前記バラスト水系 配管に流入させる管の途中からバラスト水を前記オゾン混合装置の一次側に返送し て循環させる返送管を設けると共に、前記スリット板よりも二次側のライン中に所定圧 以上の圧力が加わった場合に開弁する安全弁を前記返送管に設けたことを特徴と する請求項 1記載の船舶バラスト水の処理装置である。
[0021] 請求項 3記載の発明は、前記脱気槽によってバラスト水中から分離されたオゾンを 分解して大気中に排出する排オゾン分解塔を有することを特徴とする請求項 1又は 2 記載の船舶バラスト水の処理装置である。
[0022] 請求項 4記載の発明は、前記バラストタンク内のバラスト水を排出する前記バラスト 水系配管中に排出管を有し、該排出管に、バラスト水中の臭素酸化物を含むォキシ ダントを活性炭により除去する除去装置を設けたことを特徴とする請求項 1、 2又は 3 記載の船舶バラスト水の処理装置である。
発明の効果
[0023] 本発明によれば、船舶の既設のバラスト水系配管に容易に組み込んで、ノ ラスト水 中に含まれる水生生物を殺滅することのできる実用的な船舶バラスト水の処理装置 を提供すること力できる。
図面の簡単な説明
[0024] [図 1]本発明に係る船舶バラスト水の処理装置が設けられた船舶の主要部の概略を 平面視で示す構成図
[図 2]本発明に係る船舶バラスト水の処理装置が設けられた船舶の主要部の概略を 側面視で示す構成図
[図 3]図 1中の a— a線断面図
[図 4]分岐管内のスリット板を示す断面図
[図 5]図 4の b— b線断面図
[図 6]スリット板の開口の他の態様を示す断面図
[図 7]スリット板の開口の更に他の態様を示す断面図
[図 8]分岐管内のスリット板の他の態様を示す断面図
符号の説明
[0025] 1 :船体
2 :バラストタンク
3 :シーチェスト
4:バラストポンプ(第 1のバラストポンプ)
5 :取水管
6 :ストレーナ一
7 :排水管
8 :排水口
9:主配管
10:注排水ノズル
11:バイパス管
12a〜12i:開閉弁
13:処理装置
13a, 13b、 13c, 13e:開閉弁
13d:安全弁
131:分岐管
132:プレフィルタユニット
132a:フイノレタ
133:オゾン混合装置
133a:オゾン発生器
133b:移送管
134:バラストポンプ(第 2のバラストポンプ)
135、 135A、 135B:スリツ卜板
135a:スリット状の開口
136:脱気槽
137:排オゾン分解塔
138:返送管
139:除去装置
139a:活性炭槽
139b:配管
100:荷室
200:機関室
発明を実施するための最良の形態
[0026] 以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
[0027] 図 1は本発明に係る船舶バラスト水の処理装置が設けられた船舶の主要部の概略 を平面視で示す構成図、図 2は側面視で示す構成図、図 3は図 1中の a— a線断面図
である。ここでは船舶としてコンテナを積載するコンテナ船を例示している。図中、 1 は船体、 2は船体 1の船首付近に配設されたバラストタンク、 100はコンテナを収容す る荷室、 200は機関室である。
[0028] 各バラストタンク 2には、船底部付近に設けられたシーチェスト 3から、バラストポンプ
(第 1のバラストポンプ) 4の運転によってバラスト水 (海水又は淡水)が取り込まれる。 バラスト水には、動物プランクトン、植物プランクトン、細菌類などの水生生物が含ま れている。バラストポンプ 4は、シーチェスト 3から船体 1内にバラスト水を取り込む取 水管 5に設けられており、その一次側(バラストポンプ 4の手前側、吸込み側)にはスト レーナ一 6が介設されて!/、る。
[0029] このストレーナ一 6は、バラストポンプ 4に流入するバラスト水中の比較的大きな夾雑 物を取り除くためのものであり、例えば 5〜10πιιη φ、好ましくは 8mm φの穴力 5〜 15mmピッチ、好ましくは 11mmピッチで開いているものを使用することができる。
[0030] 7は船体 1を横断するように配設された排水管であり、両端が船体 1の両側部にそ れぞれ設けられた排水口 8、 8 'に接続されている。バラストポンプ 4の二次側(出口側 、吐出側)の取水管 5 'は、この排水管 7の中途部に接続されている。
[0031] 9はバラスト水を移送する主配管であり、その一端は上記排水管 7の中途部に接続 されている。その他端には、各バラストタンク 2の注水及び排水を行うべく各バラストタ ンク 2内に配設された注排水ノズル 10がそれぞれ接続されている。
[0032] 11は各バラストタンク 2内のバラスト水を、バラストポンプ 4の運転によって船体 1外 部に排水するために使用するバイパス管であり、主配管 9とバラストポンプ 4の一次側 (入口側、吸込み側)の取水管 5との間を接続するように配設されている。
[0033] なお、符号 12a〜12iの構成部品は開閉弁である。
[0034] 力、かるバラスト水系配管によって各バラストタンク 2にバラスト水を注水する場合、開 閉弁 12a、 12b、 12c、 12e、 12f、 12hをそれぞれ開状態、開閉弁 12d、 12g、 12iを それぞれ閉状態とした後、ノ ラストポンプ 4を運転させ、シーチェスト 3から取水管 5、 5 'を介してバラスト水を取水する。シーチェスト 3から取水管 5に流入したバラスト水は 、ストレーナ一 6によって大きなゴミが取り除かれた後、排水管 7を通って主配管 9に 流入する。主配管 9に流入したバラスト水は、各バラストタンク 2内に設けられた注排
水ノズル 10力も各バラストタンク 2内に注水される。
[0035] また、各バラストタンク 2内のバラスト水を排水する場合、今度は、開閉弁 12b、 12c 、 12d、 12e、 12f、 12g、 12iを開状態、開閉弁 12a、 12e、 12fを閉状態とした後、バ ラストポンプ 4を運転させると、各バラストタンク 2内のバラスト水は、注排水ノズル 10か ら主配管 9、バイパス管 11、取水管 5、 5 '、ストレーナ一 6、バラストポンプ 4を通って 排水管 7に流入し、船体 1の両側部の排水口 8、 8 'から外部に排水される。
[0036] 力、かる既設のバラスト水系配管に、本発明に係る船舶バラスト水の処理装置 13が 設けられる。
[0037] 処理装置 13は、以上説明したバラスト水系配管の排水管 7の中途部から分岐され た分岐管 131に、順次、プレフィルタユニット 132、オゾン混合装置 133、バラストポン プ(第 2のバラストポンプ) 134、スリット板 135及び脱気槽 136が介設されている。
[0038] 分岐管 131は、排水管 7にそれぞれ接続された取水管 5 'と主配管 9との間の排水 管 7から分岐され、その他端は、脱気槽 136から排出されたバラスト水を再び排水管 7に返送するべぐ上記分岐部分と主配管 9との間の排水管 7に接続されている。
[0039] プレフィルタユニット 132は、並列に接続された複数のフィルタ 132a (図 1では 4つ を示す。)により構成されており、取水管 5に設けられたストレーナ一 6では除去しきれ ずに処理装置 13に取り込まれた夾雑物をバラスト水中から取り除く。特に、バラスト水 が後段に設けられたスリット板 135のスリット状の開口を通過する際に目詰まりを起こ すことがないように、各フィルタ 132aのメッシュは、ストレーナ一 6よりも微細なフィルタ が使用され、例えば 200〜300 μ m、好ましくは 250 μ mのメッシュのフィルタが使用 される。
[0040] 複数のフィノレタ 132aは、そのうちのいずれ力、 1つを予備として、残りのフィノレタ 132a によりバラスト水中から夾雑物を取り除き、その間に予備の 1つのフィルタ 132aの逆 洗を行うことにより目詰まりを解消させるように動作させることが好ましい。複数のフィ ルタ 132aのうちで予備として逆洗するフィルタ 132aを定期的に交代することで、長 期に亘つて目詰まりなく連続運転することができる。
[0041] オゾン混合装置 133は、プレフィルタユニット 132を通過したバラスト水に、オゾン発 生器 133aによって生成されたオゾンを混入させる。オゾン発生器 133aには、無声放
電型、紫外線照射型等を用いることができ、図 2に示すように、船体 1内の船尾に配 置され、図示しないポンプによって移送管 133bを介してオゾン混合装置 133に移送 されるようになつている。
[0042] このオゾン混合装置 133は、プレフィルタユニット 132を通過した後の分岐管 131 ' 中を移送されるバラスト水とオゾンもしくはオゾンと酸素の混合気体とを気液混合する 気液混合装置 (オゾンインジェクター)を用いた例を示して!/、るが、ノ ラスト水中に所 定濃度のオゾンを混入させることができるものであれば特に問わない。例えば、スタテ イツクミキサー、ラインミキサーなどの静的混合機を使用することもできる。また、予め ノ ラスト水中に所定の濃度となるようにオゾンもしくはオゾンと酸素の混合気体を混入 させたオゾン水を作成しておき、このオゾン水を、プレフィルタユニット 132を通過した 後の分岐管 131 '中を移送されるバラスト水に所定の割合となるように混合させること により、ノ ラスト水に所定濃度のオゾンが混入されるようにしてもよい。
[0043] このバラスト水中へのオゾンの混入によって、バラスト水中の水生生物の殺菌が行 われる。バラスト水中のオゾン濃度は、殺菌効果を発揮する上で、最大で 5ppm (gォ ゾン/ m3バラスト水)とすることが好ましい。 5ppmを超えるようになると、オゾンによつ てバラストタンク 2等の腐食が懸念されるようになる。より好ましくは 0. 5〜5ppmの範 囲とすることである。
[0044] 分岐管 131 '中のバラスト水は、バラストポンプ(第 2のバラストポンプ) 134の運転に よって移送される。
[0045] 取水管 5に介設された既設のバラストポンプ(第 1のバラストポンプ) 4は、高流量'低 圧力のポンプである。この既設のバラストポンプ 4は、バラストタンクへバラスト水を移 送できればよいので、圧力損失を生じる部位は少ないため、低圧力で十分であった 。また。ノ ラスト水の移送を短時間で行うために高流量に設定されていた。具体的に は、一つの既設船舶の例で見れば、 600m3/h、 0. 25MPaであった。一般には、 4 万〜 6万トンのノ ノレクキャリアで 500〜700m3/h、 0. 2—0. 3MPaの範囲である。
[0046] 一方、第 2のバラストポンプ 134は、第 1のバラストポンプ 4に比べ、低流量'高圧力 のものが使用される。流量は、本発明による処理によって得られる処理済みバラスト 水をバラストタンクに満たすために必要な時間、例えば船舶が港湾に停泊可能な時
間の限度内で適宜決定できる力 既設の第 1のバラストポンプ 4に比べれば低流量に 設定される。これにより分岐管の径を小さくして、低コスト化も図れる。
[0047] 第 2のバラストポンプ 134の吐出圧力は、第 1のバラストポンプ 4に比べれば、高圧 である。スリット板 135による圧力損失分を補填し、更にその他の圧力損失分を考慮 する必要があるからである。具体的には、一つの改造例で見れば、 300m3/h、 1. 3 5MPaの仕様の第 2のバラストポンプ 134によって、良好な処理結果が得られた。好 ましレヽ範囲 (ま、 150〜450m3/h、 0. 5—2. OMPaである。
[0048] 第 2のバラストポンプ 134を第 1のバラストポンプ 4と同じ流量で高圧力とすると、ポ ンプが第 1のバラストポンプ 4よりも大型化して大きな設置スペースが必要となる。しか し、狭い船舶内では設置スペースを確保することは極めて困難である。この第 2のバ ラストポンプ 134を第 1のバラストポンプ 4よりも低流量のものとすることによって、ポン プの大型化を防いで設置スペースの確保も容易となる。
[0049] 本発明で、第 2のバラストポンプ 134の低流量.高圧力の仕様は、具体例で挙げた 数値に限定されるものではなぐ既設の第 1のノ ラストポンプ 4との対比において技術 的意義を有するものである。
[0050] スリット板 135は、オゾン混合装置 133によってオゾンが混入されたバラスト水を高 圧で通過させることにより、ノ ラスト水中の水生生物を更に剪断力によって破壊する。
[0051] このスリット板 135の詳細を図 4〜図 8に示す。
[0052] 図 4は、分岐管 131 '内のスリット板 135を示す断面図、図 5は、図 4の b— b線断面 図であり、これらに示すように、スリット板 135は分岐管 131 'の内部に、該分岐管 13 1,の流路全体を塞ぐようにして配設されて!/、る。
[0053] スリット板 135には複数のスリット状の開口 135aが形成されている。開口 135aの開 口幅は、バラスト水中の水生生物を剪断力によって破壊する効果が充分に発揮され 得る幅に設定されるが、好ましくは 200 H m〜500 μ mとすることである。
[0054] 分岐管 131 '内を移送されるバラスト水は、バラストポンプ 134によってこのスリ ット板 135に向かって高圧で圧送される。圧送されたバラスト水は乱流状態のままスリ ット板 135のスリット状の開口 135aを通過しようとし、この開口 135aを通過する際に 剪断現象が生じることで、バラスト水中の水生生物を破壊して殺滅する。
[0055] 力、かる剪断力による破壊、殺滅効果をより発揮させるために、スリット板 135は、バラ スト水の流れ方向に対して直交する方向に取り付けることが好ましい。
[0056] また、スリット板 135は、分岐管 131 '内に密接して取り付けられる力 図示しないが 、容易に取り外し可能として洗浄することができるように、フランジ等によって分岐管 1 31 'に介設することが好ましい。
[0057] スリット板 135に形成される複数のスリット状の開口 135aの形状は、図 5に例示する ように、細長い長方形状からなるものが好ましい態様として挙げられる。開口 135aの 本数は特に限定されず、バラスト水の圧力損失、剪断現象の発生状況に応じて適宜 設定される。
[0058] なお、各開口 135aは、図 5に示すように全て同じ長さに形成してもよいが、図 6に示 すように、分岐管 131 'の断面形状に合わせて、中央部の開口 135aを長ぐ端部に 行くほど短く形成してもよい。
[0059] また、各開口 135aの形状は直線状に限らず、図 7に示すように曲線状でもよい。図 7は曲線状の一例である円弧状に配置した態様を示している。
[0060] 更に、分岐管 131 '内に配設されるスリット板 135の枚数は 1枚に限らず、複数枚を 間隔をおいて配設してもよい。図 8は分岐管 131内に 2枚のスリット板 135A、 135B を配設した例を示している。このように複数枚のスリット板 135を配設する場合、各スリ ット板 135のそれぞれ開口 135aの幅、大きさ、本数、形状を異ならせることが好まし い。これにより、剪断現象をより一層効果的に発揮させることができ、バラスト水中の 水生生物の破壊、殺滅効果をより向上させることができる。
[0061] このようにして、分岐管 131 '内を移送されるバラスト水中の水生生物は、オゾン混 合装置 133によるバラスト水中へのオゾン混入及びスリット板 135による剪断力によつ て殺滅される。
[0062] 脱気槽 136は、スリット板 135を通過したバラスト水中から未溶解オゾンを脱気、分 離する。これによつて、ノ ラストタンク 2等に未溶解オゾン含有のバラスト水が移送され ることが防止され、ノ ラストタンク 2等の腐食が避けられる。
[0063] 脱気槽 136によってバラスト水中から分離されたオゾンを含むガスは、脱気槽 136 力、ら大気排出される。この排出ラインには、排オゾンを分解するための排オゾン分解
塔 137を設けておき、この排オゾン分解塔 137によって排ガス中のオゾンを分解した 後に、船体 1のデッキ上から大気中に排出することが好ましい。
[0064] 脱気槽 136によって未溶解オゾンを含むガスが脱気、分離されたバラスト水は、再 び排水管 7に返送される。分岐管 131 'と排水管 7とが接続される 2箇所の分岐部分 の間には、開閉弁 13aが設けられており、この開閉弁 13aが閉じられることにより、取 水管 5から取り込まれたバラスト水が分岐管 131側に流入されるようになっている。
[0065] また、分岐管 131 'の流入端付近及び流出端付近にも、それぞれ開閉弁 13b、 13c が設けられ、取水管 5、 5 'から排水管 7に移送されたバラスト水を処理装置 13に流入 させるか否かを切り替えるようになってレ、る。
[0066] 力、かる処理装置 13によってバラスト水の処理を行う場合、開閉弁 12a、 12b、 12c, 12e、 12f、 12h、 13b、 13cをそれぞれ開状態、開閉弁 12d、 12g、 12i、 13aをそれ ぞれ閉状態とした後、ノ ラストポンプ 4を運転させ、シーチェスト 3から取水管 5を介し てバラスト水を取水する。シーチェスト 3から取水管 5に流入したバラスト水は、ストレ ーナー 6によって大きなゴミが取り除かれた後、排水管 7から分岐管 131に流入し、プ レフィルタユニット 132によって夾雑物が除去された後、オゾン混合装置 133によって オゾンが混入され、バラストポンプ 134の運転によって高圧でスリット板 135に向けて 吐出されることによって水生生物が破壊、殺滅される。その後、脱気槽 136で未溶解 オゾンが脱気、分離されたバラスト水が、再び排水管 7に返送され、主配管 9を通って 各バラストタンク 2内に設けられた注排水ノズル 10から各バラストタンク 2内に注水さ れる。
[0067] これによつて、各バラストタンク 2内には、水生生物が殺滅されたバラスト水が貯留さ れることになる。処理装置 13は、排水管 7に分岐管 131の一端及び 131 'の一端をそ れぞれ接続し、その 2箇所の分岐部分の間に開閉弁 13aを介設するだけで設置可能 であるため、既設のバラスト水系配管に簡単に装備することができる。
[0068] なお、第 1のバラストポンプ 4は既設のポンプであり、これはシーチェスト 3から取水 したバラスト水を各バラストタンク 2に移送するに必要十分な吐出圧力を有していれば よいため、前述したように、処理装置 13内に配設される第 2のバラストポンプ 134に比 ベて吐出圧力は小さい。そして、この第 1のバラストポンプ 4の運転によりバラスト水を
各バラストタンク 2に移送するために使用される排水管 7及び主配管 9等の既設のバ ラスト水系配管は、この第 1のバラストポンプ 4の吐出圧力に応じた耐圧を有するよう に設計されている。
[0069] これに対し、第 2のバラストポンプ 134は、第 1のバラストポンプ 4よりも高圧であるた め、バラスト水を第 2のバラストポンプ 134を運転させて処理装置 13によって処理す る際、第 2のバラストポンプ 134の高い吐出圧力 第 1のバラストポンプ 4の吐出圧に 応じて比較的低圧に設計されている既設のバラスト水系配管に掛カ、ることになる。こ のため、処理装置 13には、脱気槽 136から排出されたバラスト水を既設のバラスト水 系配管の排水管 7に流入させる管の途中から、バラスト水をオゾン混合装置 133の一 次側に返送して循環させる返送管 138を設けると共に、スリット板 135よりも二次側( 下流側)のライン 131"中に所定圧以上の圧力が加わった場合に開弁する安全弁 13 dを返送管 138に設けておくことが好ましい。
[0070] これにより、第 2のバラストポンプ 134の運転中に、何らかの原因によってスリット板 1 35の二次側(下流側)のライン中の圧力が、既設のバラスト水系配管の設計耐圧より も高くなると、安全弁 13dが開弁して、脱気槽 136から排出されたバラスト水の一部を 返送管 138を通してオゾン混合装置 133の一次側に返送させて循環させ、既設のバ ラスト水系配管に設計耐圧を超える高い吐出圧が掛カ、ることを回避することができる
〇
[0071] また、これに加えて、処理装置 13の分岐管 131,、 131"は、少なくとも第 2のバラス 力に応じた高い耐圧を有していれば済み、必ずしも分岐管 131の全体の設計耐圧を 第 2のバラストポンプ 134の吐出圧力に応じて高くする必要がなくなる。
[0072] 安全弁 13dは、例えばスリット板 135の二次側にバラスト水の圧力を計測する図示 しない圧力センサを設けておき、その計測値が所定値以上となった場合に開弁動作 するように構成しておくことカでさる。
[0073] 処理装置 13には、該処理装置 13によって処理されたバラスト水を各バラストタンク 2から排水管 7の各排水口 8、 8 'から船体 1の外部に排出する際にバラスト水中の臭 素酸化物を含むオキシダントを活性炭により除去する除去装置 139を設けておくこと
が好ましい。除去装置 139により、処理済みバラスト水中に含まれる有害なォキシダ ント等の酸化性物質 (例えば臭素酸化物)を除去できる。
[0074] 図 1では、 2つの活性炭槽 139a、 139aが並列に設けられており、それらが排水管 7 に接続された配管 139bに介設されている。配管 139bは、排水管 7からバラスト水を 取り込み、活性炭槽 139a、 139aを通過させた後、再び排水管 7に返送するように設 けられている。配管 139bの 2箇所の接続部分の間には開閉弁 13eが設けられており 、この開閉弁 13eが閉じられることにより、排水管 7内を移送されるバラスト水が配管 1 39b側に流入し、除去装置 139に移送されるようになっている。
[0075] この除去装置 139において設けられる活性炭槽 139aは、何ら 2つに限らない。また 、除去装置 139は、排水管 7と主配管 9との接続部位を挟んで、各排水口 8、 8側にそ れぞれ配設しておき、活性炭処理済のバラスト水の排水を各排水口 8、 8 'からそれぞ れ fiえるようにすることがより好まし!/、。
[0076] 以上説明した実施形態では、オゾン混合装置 133をプレフィルタユニット 132とバラ ストポンプ(第 2のバラストポンプ) 134の間の分岐管 131 'に介設することで、オゾン 混入後のバラスト水をスリット板 135に移送するようにした力 オゾン混合装置 133は スリット板 135の二次側 (排出側)に介設し、スリット板 135を通過した後のバラスト水 に対してオゾンを混入するようにしてもよ!/、。