明 細 書
微生物培養用培地および微生物培養方法
技術分野
[0001] 本発明は、微生物培養用培地および微生物培養方法(以下、それぞれ単に「培地
」および「培養方法」とも称する)に関し、詳しくは、抗菌作用を有する被検試料に含ま れる標的菌を増殖させるための微生物培養用培地、および、抗菌作用を有する被検 試料に含まれる標的菌を増殖させる微生物培養方法に関する。
背景技術
[0002] 日本薬局方収載の微生物限度試験法にお!/、て、被検試料である漢方生薬製剤や 生薬中の微生物試験を行う場合、通常の市販培地での培養では、当該被検試料中 に含まれる抗菌性物質 (発育阻止物質)の存在のために、標的菌の増殖が悪ぐ試 験法として機能しな!/、場合があることが知られて!/、る。
[0003] このような場合、 日本薬局方では、希釈'ろ過、中和または不活化などの手段によつ て、抗菌性物質の影響を除去しなければならないとの記載があるが、この場合、被検 試料が完全に溶媒に溶解する製剤の場合にはメンブランフィルターによるろ過法等 が適用できるものの、不溶物の場合には不活化か希釈しか手段がない。したがって、 実際上は希釈以外の選択肢は少ないのが現状である。
[0004] また、例えば、非特許文献 1では生薬や漢方エキスについて、また、非特許文献 2 では切断および粉末生薬にっレ、て、それぞれ抗菌性があることが示されて!/、るが、 V、ずれにお!/、ても希釈による抗菌性物質の除去以外の解決法は提示されて!/、な!/ヽ
[0005] さらに、医薬、化粧品業界では、抗菌性物質の不活化のため、培地にレシチンとポ リソルベートを添加する手法が汎用されており、レシチンとポリソルベートが予め添加 されている培地(SCDLP培地等)も市販されている力 S、この培地は高価であり、また、 ノ^ベン類や水銀系等の防腐剤の不活化に対しては効果が高いものの、漢方生薬 製剤の不活化には効果が低レ、ケースが多!/、。
[0006] さらに、発育阻害物質を吸着するための吸着材として活性炭を用いた培地が特殊
培地として市販されているが、漢方生薬製剤、生薬、または香辛料等の抗菌作用を 有する食品中の抗菌性物質の除去という点では必ずしも十分とはいえなかった。 非特許文献 1 :防菌防黴 Vol.25, No.8,pp. 467-473, 1997
非特許文献 2 :防菌防黴 Vol.31, No.9,pp. 517-525, 2003
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] 漢方生薬製剤、生薬、または香辛料等の抗菌作用を有する食品中の微生物限度 試験を行うに際し被検試料を希釈する場合、希釈を重ねることは、試験規模が同じ 場合には感度が下がることを意味するため、品質保証上の問題、すなわち、疑陰性 で出荷してしまうことによる経済的損失というリスクを、完全に解消することはできなか つた。この点は、被検試料の希釈以外の抗菌性物質の影響除去手段においても同 様であった。
[0008] そこで本発明の目的は、抗菌作用を有する被検試料に含まれる標的菌を的確に増 殖させることのできる微生物培養用培地および微生物培養方法を提供することにあ 課題を解決するための手段
[0009] 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、微生物培養用培地 、または、被検試料調製時に使用する溶液に対し、酸性白土または活性白土を添加 し、特には、さらに活性炭を添加することで、漢方生薬製剤や生薬等の被検試料中 の抗菌性物質を吸着、低減して、抗菌性を減弱することが可能となることを見出して、 本発明を完成するに至った。
[0010] 即ち、本発明の微生物培養用培地は、抗菌作用を有する被検試料に含まれる標 的菌を増殖させるための微生物培養用培地において、微生物培養用基礎培地中に 、酸性白土または活性白土を含有することを特徴とするものである。本発明の培地に おいては好適には、前記微生物培養用基礎培地中に、さらに活性炭を含有させる。
[0011] また、本発明の微生物培養方法は、微生物培養用培地にて、抗菌作用を有する被 検試料に含まれる標的菌を増殖させる微生物培養方法において、前記被検試料の 溶液中に、酸性白土または活性白土を添加することを特徴とするものである。本発明
の培養方法において好適には、前記溶液中に、さらに活性炭を添加する。
発明の効果
[0012] 本発明によれば、上記構成としたことにより、漢方生薬製剤、生薬、または香辛料等 の抗菌作用を有する食品等の抗菌作用を有する被検試料中の標的菌を的確に増殖 させることができ、結果としてこれら被検試料中に含まれる標的菌を容易に検出する ことができる微生物培養用培地および微生物培養方法を実現することが可能となつ た。
発明を実施するための最良の形態
[0013] 以下、本発明の好適実施形態について、詳細に説明する。
本発明においては、抗菌作用を有する被検試料に含まれる標的菌を増殖させるに 際し、使用する微生物培養用培地、または、被検試料の溶液中に、酸性白土または 活性白土を含有させる点が重要である。
[0014] これにより、酸性白土または活性白土の吸着作用によって被検試料中に含まれる 抗菌性物質を吸着することで、被検試料の抗菌性を低減させることができ、標的菌を 的確に増殖させることができるため、従来のような希釈等の手段を用いることなぐ容 易に標的菌を検出することが可能となる。かかる酸性白土とは、モンモリロナイトを主 とする白色または灰色の粘土であって、大きな比表面積と吸着能を有する多孔質構 造を持つ物質であり、また、活性白土は、酸性白土を原料として、これを鉱酸で処理 して得られる、酸性白土と同様に大きな比表面積と吸着能を有する多孔質構造を持 つ物質である。酸性白土および活性白土はいずれも安価であるため、コスト的な観 点からも、本発明のメリットは大きい。
[0015] 具体的には、本発明の培地においては、微生物培養用基礎培地中に酸性白土ま たは活性白土を含有させる。酸性白土または活性白土の添加量としては、被検試料 や標的菌の種類、特性にもよる力 好適には培地の 1〜20重量%、より好適には 3〜 10重量%程度である。酸性白土または活性白土の添加量が少なすぎると抗菌性の 低減効果が不十分で、標的菌が十分増殖せず、検出が適切に行えなくなるおそれ がある。一方、添加量が多すぎてもそれ以上の効果は望めない。
[0016] この場合、微生物培養用基礎培地中に、酸性白土または活性白土とともに、さらに
活性炭を添加することで、抗菌性の低減効果をより高めることができ、標的菌の増殖 をより促進すること力 Sできる。活性炭の添加量としては、被検試料や標的菌の種類、 特性にもよる力 好適には培地の 1重量%以上 5重量%未満、特には;!〜 3重量%と する。活性炭の添加量が 1重量%未満では、添加による有意な増殖促進効果が得ら れず、一方、 5重量%以上であると、却って標的菌の増殖が妨げられるおそれがある
〇
[0017] また、本発明の培養方法において具体的には、抗菌作用を有する被検試料の溶 液中に酸性白土または活性白土を添加する。この場合の酸性白土または活性白土 の添加量としては、被検試料や標的菌の種類、特性にもよる力 好適には上記溶液 の 1〜20重量%、より好適には 3〜; 10重量%である。酸性白土または活性白土の添 加量が少なすぎると抗菌性の低減効果が不十分で、標的菌が十分増殖せず、検出 が適切に行えなくなるおそれがある。一方、添加量が多すぎてもそれ以上の効果は 望めない。
[0018] この場合も、上記溶液中に、酸性白土または活性白土とともに、さらに活性炭を添 加することで、抗菌性の低減効果をより高めて、標的菌の増殖をより促進することが できる。活性炭の添加量としては、被検試料や標的菌の種類、特性にもよる力 好適 には上記溶液の 1重量%以上 5重量%以下、特には;!〜 3重量%程度とする。活性 炭の添加量が 1重量%未満では、添加による有意な増殖促進効果が得られず、一方 、 5重量%より多いと、却って標的菌の増殖が妨げられるおそれがある。
[0019] 本発明においては、酸性白土または活性白土を用いて被検試料中の抗菌性物質 を吸着することで、被検試料中の標的菌の増殖抑制因子を除去する点のみが重要 であり、それ以外の点については、常法に従い適宜実施することができ、特に制限さ れるものではない。
[0020] 例えば、本発明において用いる微生物培養用基礎培地としては、 日本薬局方に収 載されている培地など、被検試料や標的菌に応じ通常使用される一般的な培地を適 宜用いることができ、例えば、 SCD (ソィビーン'カゼイン ·ダイジェスト 'ブロス)培地等 を用いること力 Sでさる。
[0021] 本発明を適用し得る抗菌作用を有する被検試料としては、例えば、漢方生薬製剤
、生薬、または香辛料等の抗菌作用を有する食品等が挙げられ、本発明は、このよう な従来法では十分増殖させることができなかったこれら被検試料中の標的菌につい ても的確に増殖させることができる点で特に有用である。したがって本発明によれば 、これら漢方生薬製剤、生薬、または抗菌作用を有する食品中に特定の菌が含まれ るか否力、を容易に検出することが可能となる。この場合、漢方生薬製剤、生薬、また は抗菌作用を有する食品を被検試料とする場合の溶液作成に用いる溶媒としては、 例えば、リン酸緩衝液、ペプトン食塩緩衝液、培養に使用する液体培地などを用いる こと力 Sでさる。
実施例
[0022] (実施例 1)
培地に対する酸性白土または活性白土の添加による効果を確認するために、被検 試料として漢方エキス製剤である三物黄ゴン湯および大承気湯を用い、下記の表 1 中にそれぞれ示す条件で酸性白土または活性白土を添加したソィビーン 'カゼイン' ダイジェスト 'ブロス培地(以下、 SCD培地)において、 日本薬局方収載の微生物限 度試験法に記載されて!/、る「培地の性能試験及び発育阻止物質の確認試験」に準じ 、培地の組成による標的菌の増殖状況を確認するために黄色ブドウ球菌(Staphyloc occus aureus IFO 13276)を添加して、増菌培養後にフォーゲル 'ジョンソン培地へ塗 抹培養を行い、黄色ブドウ球菌定性反応が認められるかの判定を行った。
[0023] (従来例 1)
従来例として、活性炭を添加した培地において、実施例と同様にして培養試験を行 つた。
[0024] (比較例 1 1 3)
比較例として、活性炭または活性白土のいずれも添加しない培地において、被検 試料のみ、標的菌のみ、被検試料および標的菌の双方を、それぞれ添加して、培養 試験を行った。
[0025] (比較例 1 4, 1 - 5)
比較例として、代表的なイオン吸着剤であるセパビーズ SP— 700を添加した培地 にお!/、て、実施例と同様にして培養試験を行った。
[0026] 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を〇、コロニー産生のみまたは弱い 定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を Xとした。得られた結果を、下 記の表 1中に示す。
[0027] [表 1]
[0028] 上記表 1に示す結果より、通常の培地に被検試料としての漢方エキス製剤および 標的菌を添加しても、標的菌の増殖は見られなかった。これに対し、培地に活性白 土を添加した実施例においては、従来の活性炭 (粉末)を用いた場合と同様に標的 菌の増殖が確認され、また、酸性白土を添加した実施例においては、漢方エキス製 剤の処方により標的菌の増殖が確認された。従って、酸性白土または活性白土の添 加により、抗菌作用を有する漢方エキス製剤中の標的菌を的確に増殖させ得ること
が確認できた。なお、顆粒状の活性炭およびイオン吸着剤においても、漢方エキス 製剤の処方により効果が得られないものが観察された。
[0029] (実施例 2,比較例 2)
被検試料を変えた場合の活性白土添加培地の効果を確認するために、被検試料 として漢方エキス製剤である五淋散および竜胆瀉肝湯をそれぞれ用い、下記の表 2 中に示す量で活性白土を添加した培地(基礎培地: SCD培地)に黄色ブドウ球菌(St aphylococcus aureus IFO 13276)を添加し、上記実施例 1と同様に試験.評価した。
[0030] 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を〇、コロニー産生のみまたは弱い 定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を Xとした。得られた結果を、下 記の表 2中に示す。
[0031] [表 2]
[0032] 上記表 2に示す結果より、五淋散および竜胆瀉肝湯についても、培地に活性白土 を添加することにより抗菌作用が抑制され、標的菌を増殖させることができることが確 認できた。
[0033] (従来例 3,実施例 3,比較例 3)
培地に活性白土に加えて活性炭を添加した場合の効果を確認するために、被検 試料として漢方エキス製剤である潤腸湯、五淋散、竜胆瀉肝湯、通導散および大承 気湯をそれぞれ用い、下記の表 3中に示す量で活性白土および活性炭を添加した 培地(基礎培地: SCD培地)において黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO 1 3276)を添加し、上記実施例 1と同様に試験 ·評価した。
[0034] 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を〇、コロニー産生のみまたは弱い 定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を Xとした。得られた結果を、下
記の表 3中に示す。
[表 3]
上記表 3に示す結果より、培地に活性白土に加えて活性炭を添加した実施例にお いては、活性炭のみを用いた場合以上に標的菌の増殖が確認され、活性白土ととも に活性炭を添加することで、被検試料の抗菌作用をより効果的に抑制できることが確
かめられた。
[0037] (実施例 4,比較例 4)
被検試料として桂枝茯苓丸、抑肝散、大建中湯をそれぞれ用い、下記の表 4中に 示す量で活性白土および活性炭を添加した培地(基礎培地: SCD培地)にお!/、て黄 色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO 13276)を添加し、上記実施例 1と同様に 試験 '評価した。
[0038] 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を〇、コロニー産生のみまたは弱い 定性反応有の場合を△、コロニー産生なしの場合を Xとした。得られた結果を、下記 の表 4に示す。
[0039] [表 4]
[0040] 上記表 4に示す結果より、培地に活性白土に加えて活性炭を添加した実施例にお いては標的菌の良好な増殖による定性反応が常時確認されたが、活性炭のみを用 Vヽた場合や何も添加しなレヽ場合では安定的な定性反応が確認できず、活性白土とと もに活性炭を添加することで、被検試料の抗菌作用をより効果的に抑制し、安定的な 試験結果を得られることが確かめられた。
[0041] (実施例 5,比較例 5)
被検試料として桂枝茯苓丸、抑肝散、大建中湯をそれぞれ用い、下記の表 5中に
示す量で活性白土および活性炭を添加した培地(基礎培地: SCD培地)にお!/、て黄 色ブトウ ¾klA (Staphylococcus aureus IFO 13276)を添加し、 United States Pharmaco peia 30,<62>MICROBIOLOGICAL EXAMINATION OF NONSTERILE PRODUCTS : TESTS FOR SPECIFIED MICROORGANISMSに準拠して試験.評価した。
[0042] 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を〇、コロニー産生のみまたは弱い 定性反応有の場合を△、コロニー産生なしの場合を Xとした。得られた結果を、下記 の表 5に示す。
[0043] [表 5]
[0044] 上記表 5に示す結果より、培地に活性白土に加えて活性炭を添加した実施例にお いては標的菌の良好な増殖による定性反応が常時確認されたが、活性炭のみを用 Vヽた場合や何も添加しなレヽ場合では安定的な定性反応が確認できず、活性白土とと もに活性炭を添加することで、被検試料の抗菌作用をより効果的に抑制し、安定的な 試験結果が得られることが確かめられた。
[0045] (比較例 6,実施例 6,従来例 6)
活性炭(粉末)のみを 5重量%で培地に添加した場合と、活性白土のみを 5重量% で培地に添加した場合の微生物の生育に対する影響を確認するために、 SCD培地 と、これに活性白土または活性炭を各 5重量%添加した培地とをそれぞれ準備し、 日
本薬局方収載の微生物限度試験法に記載されてレ、る「培地の性能試験及び発育阻 止物質の確認試験」に準じ、標的菌の増殖状況を確認した。使用菌種は黄色ブドウ 球困 (Staphylococcus aureus IFO 13276)および 膿菌 (Pseudomonas aeruginosa IF O 13275)とし、増菌培養後に、黄色ブドウ球菌はフォーゲル.ジョンソンカンテン培地 へ、緑膿菌は NACカンテン培地へ塗抹、培養を行い、黄色ブドウ球菌または緑膿菌 の定性反応が認められるか否かの判定を行った。
[0046] 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を〇、コロニー産生のみまたは弱い 定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を Xとした。実施例、比較例およ び従来例の各々に対し、 10サンプルずつ試験を行なった。得られた結果を、下記の 表 6中に示す。
[0047] [表 6]
[0048] 上記表 6に示す結果より、活性炭を 5重量%添加した培地では、黄色ブドウ球菌の コロニー産生が弱くなつているサンプルがあることがわかる。これは、活性炭の添加量 が多すぎると、培地成分の吸着が生じ、これにより、増殖に悪影響を与えているものと 考えられる。一方、活性白土については、添加量を 10重量%に増加した場合でも、 悪影響は見られな力、つた。
[0049] (実施例 7,比較例 7,従来例 7)
活性炭および活性白土の培地に対する影響をより詳細に確認するために、 SCD培 地と、これに活性白土および/または活性炭を下記表 7中に示す所定量にて添加し た培地とをそれぞれ準備して、 日本薬局方収載の微生物限度試験法に準じて、 24 時間振とう培養後培地内の菌濃度測定を行った。標的菌としては、黄色ブドウ球菌( ^tapnylococcus aureus iFu 13276)ま 7こ (ま緑膽菌 (Pseudomonas aeruginosa IJ^ U 132 75)を用い、約 lOOcfuの菌数を初発菌として添加した。得られた結果を、下記の表 7 中に示す。なお、下記表中の「%」は「重量%」を示す。
[0050] [表 7]
[0051] 上記表 7に示す結果より、活性炭 3重量%と活性白土 5重量%の 2つを同時に添加 した培地では、黄色ブドウ球菌および緑膿菌のいずれについても、試験菌の増殖能 は無添加の培地とほぼ同等であった。これに対し、活性炭のみを添加した培地では 特に黄色ブドウ球菌にて増殖能が低下していることから、活性白土を添加することで 、活性炭の添加による増殖能の低下を抑制できることが確認できた。
[0052] (実施例 8,比較例 8)
被検試料として桂枝茯苓丸を用い、米国薬局方収載の微生物限度試験を想定し たケースとして、 SCD培地に活性炭 3重量%および活性白土 5重量%を添加したも の(ISCD培地)、無添加の SCD培地、 SCD培地に 0. 5重量%レシチンおよび 4. 0
重量%ポリソルベート 20を添加したもの(LPSCD培地)をそれぞれ準備して、これを 試料溶解溶液として用い、 United StatesPharmacopeia 28,く 61〉 MICROBIAL LIMIT TESTSに準拠して試験を行い、定型集落の生成を比較した。培養時試料濃度は 0. 01g/mLとし、標的菌としては、 Staphylococcus aureusATCC6538を用いた。
[0053] 結果はコロニー産生且つ定性反応ありの場合を〇、コロニー産生のみまたは弱い 定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を Xとした。得られた結果を、下 記の表 8中に示す。
[0054] [表 8]
[0055] 上記表 8に示す結果より、米国薬局方にて例示されている不活化培地である LPS CD培地を試料溶解溶液として用い、さらにそれでの培養を実施した場合、定型集落 は見られず、抗菌性物質による影響を抑制することはできな力、つたのに対し、活性白 土および活性炭を添加した ISCD培地をそれに用いた場合では定型集落が形成さ れており、抗菌性物質の影響が抑制されていることが確かめられた。
[0056] (実施例 9,比較例 9)
被検試料として桂枝茯苓丸を用い、下記の表 9中に示す量で活性白土および活性 炭を添加した培地(基礎培地: SCD培地)において Salmonella enterica spp. enterica serotype abony ACM5080を添加し、 United States Pharmacopeia30,<62>MICROBI OLOGICAL EXAMINATION OF NONSTERILE PRODUCTS:TESTS FOR SPECIFI ED MICROORGANISMSに準拠して試験 ·評価した。
[0057] 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を〇、コロニー産生のみまたは弱い 定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を Xとした。得られた結果を、下
記の表 9中に示す。
[0058] [表 9]
[0059] 上記表 9に示す結果より、培地に活性白土に加えて活性炭を添加した実施例にお Vヽては標的菌の増殖が確認された力 活性炭のみを用いた場合では増殖が確認で きず、活性白土とともに活性炭を添加することで、被検試料の抗菌作用をより効果的 に抑制できることが確かめられた。
[0060] (実施例 10,比較例 10)
被検試料として食品である山葵または茶を用いた場合の培地による標的菌の培養 状況を確認するために、ペプトン緩衝液中に、チューブ山葵または茶(夾雑菌の妨 害を防止するためオートクレーブ滅菌したもの)をそれぞれ 10g, lg, 0. lgにて添加 して、溶液量が lOOmLとなるよう調製し、 10倍, 100倍, 1000倍の被検試料溶液を 作製した。 SCD培地,レシチン 'ポリソルベート添加 SCD培地(SCDLP培地), SC D培地に活性炭 3重量%および活性白土 5重量%を添加したもの(ISCD培地)の各 培地 90mLに試料溶液 10mLを添加し、 日本薬局方収載の微生物限度試験法に記 載されている「培地の性能試験及び発育阻止物質の確認試験」に準じ、試験菌の増 殖状況を確認した。使用菌種は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO 13276) とし、上記実施例 1と同様に試験 ·評価した。
[0061] 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を〇、コロニー産生のみまたは弱い 定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を Xとした。得られた結果を、下 記の表 10中に示す。
[0062] [表 10]
比較例 10- 1 比較例 10-2 実施例 10
SCD培地 SCDLP培地 ISCD培地
山葵 10倍液 X X 〇
山葵 100倍液 〇 〇 〇
試
料 山葵 1000倍液 〇 〇 〇
溶 X X
液 茶 10倍液 〇
茶 100倍液 Δ 〇 〇
茶 1000倍液 〇 〇 〇
[0063] 上記表 10に示す結果より、 SCD培地および SCDLP培地においては、山葵および 茶のいずれについても高濃度の 10倍液については標的菌のコロニーが生成せず、 抗菌性物質の影響を抑制できな力、つたのに対し、活性白土および活性炭を添加した
ISCD培地においては、全濃度の溶液についてコロニーが生成しており、抗菌性物 質の影響が抑制されていることが確かめられた。これにより、本発明の培地において は、漢方生薬製剤のみならず、山葵や茶に含まれる抗菌性物質についても吸着、低 減して、抗菌性を抑制でき、食品微生物試験の改良へも応用できることが確認された
[0064] (実施例 11 ,比較例 11)
被検試料として食品の乾燥香辛料を用いた場合の培地による標的菌の培養状況 を確認するために、以下の試験を実施した。ターメリック粉末、粉末胡椒、乾燥バジ ノレリーフをそれぞれ 10g, 5g, 0. 5g秤取し、溶液量が lOOmLとなるよう調製し、 10 倍, 20倍, 200倍の被検試料溶液を作製した。この被検試料溶液それぞれ 10mLを 日本薬局方収載の生薬の微生物限度試験法に記載されている 7. 5%食塩加 SCD 培地、 7. 5%食塩加 SCD培地に活性炭 3重量%および活性白土 5重量%を添加し たもの(7. 5%食塩加 SCDAA培地)、 7. 5%食塩加 SCDB培地に活性白土 5重量 %を添加したもの(7. 5%食塩加 SCDA培地) 90mLに添加し、 日本薬局方収載の 生薬の微生物限度試験法に記載されて!/、る「培地の性能試験及び発育阻止物質の 確認試験」に準じて、試験菌の増殖状況を確認した。使用菌種は黄色ブドウ球菌(St aphylococcus aureus IFO 13276)とし、上記実施例 1と同様に試験.評価した。
[0065] 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を〇、コロニー産生のみまたは弱い
定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を Xとした。得られた結果を、下 記の表 11中に示す。
[0066] [表 11]
[0067] 上記表 11に示す結果より、 7. 5%食塩加 SCD培地においては、ターメリック粉末、 粉末胡椒、乾燥バジルリーフのいずれについても高濃度の 10倍液、 20倍液に関し て標的菌のコロニーが生成せず、抗菌性物質の影響を抑制できなかったのに対し、 活性白土および活性炭を添加した 7. 5%食塩加 SCDAA培地にお!/、ては全サンプ ル全濃度の溶液について、活性白土を添加した 7. 5%食塩加 SCDA培地において は乾燥バジルリーフ全濃度の溶液について、コロニーが生成しており、抗菌性物質 の影響が抑制されていることが確かめられた。これにより、本発明の培地においては 、漢方生薬製剤のみならず、乾燥香辛料に含まれる抗菌性物質についても吸着、低
減して、抗菌性を抑制でき、食品微生物試験の改良へも応用できることが確認された
〇
[0068] (実施例 12,比較例 12)
被検試料として抗生物質を用いた場合の培地による標的菌の培養状況を確認する ために、以下の試験を実施した。クロラムフエ二コールを、 250mg/L、 50mg/L、 5 mg/L、 0. 5mg/L、 0. 05mg/Lの濃度で、 日本薬局方収載の微生物限度試験 法に記載されている SCD培地、 SCD培地に活性炭 3重量%および活性白土 5重量 %を添加したもの(ISCD培地)、乳糖ブイヨン培地(以下、 LB培地)、 LB培地に活性 炭 3重量%および活性白土 5重量%を添加したもの(ILB培地)にそれぞれ添加した 。 日本薬局方収載の微生物限度試験法に記載されて!、る「培地の性能試験及び発 育阻止物質の確認試験」に準じ、試験菌の増殖状況を確認した。使用菌種は、 SCD 培地および ISCD培地には黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO 13276)、 LB 培地及び ILB培地には大腸菌(Escherichia coli IFO 3972)を使用し、増菌培養後は フォーゲル 'ジョンソンカンテン培地(黄色ブドウ球菌)およびマッコンキーカンテン培 地(大腸菌)へ塗抹、培養を行い、定性反応が認められるか否かの判定を行った。
[0069] 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を〇、コロニー産生のみまたは弱い 定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を Xとした。得られた結果を、下 記の表 12中に示す。なお、下記表中の「%」は「重量%」を示す。
[0070] [表 12] 比較例 12 - 1 実施例 12— 1 比較例 12— 2 実施例 12— 2 黄色ブドウ球菌 大月昜菌
クロラムフ iニコ-ル濃度 ISCD(3%活性炭 + ILB(3%活性炭 +
SCD培地 LB培地
(mg/L) 5%活性白土)培地 5%活性白土)培地
250 X X ―
50 X 〇 一
5 X 〇 〇
0.5 〇 〇 X 〇
0.05 〇 〇 〇 〇
[0071] 上記表 12に示す結果より、黄色ブドウ球菌、大腸菌ともに、通常の SCD培地およ び LB培地と比較して、 ISCD培地および ILB培地において 100倍高い濃度の抗生 物質が含まれる培地の培養においても集落生成および定性反応が生じており、抗生 物質の影響が抑制されていることが確かめられた。これにより、本発明の培地におい ては、漢方生薬製剤のみならず、抗生物質含有の試料についても抗菌性を抑制でき ることが確認され、一般医薬品微生物試験の改良へも応用できることが確認された。
[0072] (実施例 13)
活性白土と活性炭を配合した培地にお!/、て、活性白土 5%に対して活性炭を 1 %ま たは 2%配合した際の微生物培養効果を確認するため、被検試料として漢方エキス 製剤である潤腸湯、五淋散、竜胆瀉肝湯、通導散および大承気湯をそれぞれ用いて 、実施例 3に記載の方法で試験 ·評価を行った。
[0073] 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を〇、コロニー産生のみまたは弱い 定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を Xとした。得られた結果を、下 記の表 13中に示す。
[0074] [表 13]
[0075] 上記表 13に示す結果より、培地に活性白土を 5重量%加えた場合には、活性炭の 配合量が 1重量%であったとしても十分に標的菌の増殖が確認され、被検試料の抗
菌作用を効果的に抑制できることが確かめられた。