明 細 書
不純物濃度分布の予測方法及び不純物濃度分布を決定するプログラム 技術分野
[0001] 本発明は、不純物濃度分布の予測方法及び不純物濃度分布を決定するプロダラ ムに関し、特にイオン注入を行ったときに、横方向に関する不純物濃度を予測するこ とができる予測方法、及び横方向に関する不純物濃度分布を決定するプログラムに 関する。
背景技術
[0002] MOS型トランジスタのソース及びドレイン形成のためのイオン注入を行った際に、 注入された不純物は、基板を構成する原子に衝突して横方向に広がり、ゲート電極 の下方にも分布する。ゲート長が短くなるに従って、横方向に関する不純物濃度分 布が素子特性に大きな影響を与えるようになる。このため、素子の設計に当たり、ゲ ート電極下の領域における横方向に関する不純物濃度分布を知ることが重要になる 。ところが、横方向に関する不純物濃度分布を直接的に測定することは困難である。
[0003] 下記の非特許文献 1に、横方向に関する不純物濃度分布を評価する手法が記載さ れている。以下、この手法について簡単に説明する。
[0004] 図 1に示す xy直交座標系及び st直交座標系を定義する。両者の原点は一致し、半 導体基板の表面 1上に位置する。 y軸は、イオン注入するイオンビーム 2の進行方向 と平行であり、 s軸は半導体基板の表面 1に垂直である。 y軸及び s軸共に、基板の内 部に向力 向きを正とする。イオンビームの入射角を Θとすると、 y軸と s軸とのなす角 が Θに等しくなる。
[0005] X軸及び t軸は、 y軸と s軸とで画定される平面内に配置される。基板の内部に向かう 向きを X軸の正の向きとする。 t軸は半導体基板の表面 1内に含まれ、イオンビーム源 に近づく向きを t軸の正の向きとする。
[0006] 原点に入射するイオンビームにより形成される不純物濃度分布を D (x, y)とする。 X
=uの位置に入射するイオンビームにより形成される不純物濃度分布は、 D (x-u, y
+u X tan 0 )となる。
[0007] x=uと u + duとの間に入射するイオンビームによる座標(x, y)の位置における不 純物濃度 dN(x, y)は、
[0008] [数 1]
dN x, y) = D(x -u,y + u tan 0)du
[0009] と表される。
[0010] 半導体基板の表面の大きさを無限大と仮定し、 X軸の全領域をイオンビームで走査 することによりイオン注入を行う場合、座標 (X, y)の位置の不純物濃度 N(x, y)は、 [0011] [数 2]
N x. V) = D(x -u,y + u tan 0)du
[0012] となる。
[0013] 座標 (x, y)と座標 (s, t)とは、下記の関係を有している。
[0014] [数 3]
x-t cos θ s^ O
y - cos Θ -t O
[0015] 従って、座標 (s, t)の位置における不純物濃度 N (s, t)は、
[0016] [数 4]
D{t cos 0 + ssm0- ,s cos θ -ί ηθ + u tan 0)du
[0017] と表される。
[0018] 不純物濃度は、 tに依存しな 、はずであるから、式 (4)力 変数 tを消去するために
、下記のダミー変数 kを定義する。
[0019] [数 5]
[0020] 変数 kを用いて式 (4)を書き直すと、下記の式が得られる
[0021] [数 6]
N(s)
「 D s sin θ-u.s cos θ + u tan
[0022] yく 0のとき、 D(x, y) =0であるから、式(6)において、
[0024] となる領域のみについて積分すればよい。従って、式 (6)の積分範囲の下限値を [0025] [数 8]
[0026] としてちよい。
[0027] 不純物濃度分布 D(x, y)が、深さ方向 yのみに依存する関数 n(y)と、横方向 xにも 依存する関数 g(x, y)との積で現される場合について考える。関数 n(y)及び g(x, y )は、ドーズ量で正規化されているとする。深さ方向に関する正規化不純物濃度分布 n(y)として、公知のデュアルピアソン IV分布を採用してもよいし、下記の非特許文献 2に記載されて ヽる分布を採用してもよ!/ヽ。横方向に関する正規化不純物濃度分布 g (X, y)として、例えば、 Xに関して正規分布であり、その標準偏差力 に依存するよう な関数を採用することができる。
[0028] ドーズ量を Φとすると、式 (6)は、下記のように表すことができる。
[0029] [数 9] V( = Φ n(s cos6 + tan 0)g(s sin Θ - ,scos6 + tan 6)du
J
[0030] イオンビームの入射角 0が 0° のときの不純物濃度分布 N 0 (s)は、式(9)から、下 記のように表される。
[0031] [数 10]
[0032] 不純物濃度分布 N (s)は、二次イオン質量分析 (SIMS)等により実測することができ る。このため、深さ方向に関する正規ィ匕不純物濃度分布 n (s)を決定することができる
[0033] イオンビームの入射角 Θを 0° 以外にして、斜め方向力もイオン注入を行い、深さ 方向に関する不純物濃度分布 N (s)を SIMS等により実測する。垂直方向からイオン 注入したときの不純物濃度分布の測定により、深さ方向に関する正規化不純物濃度 分布 n (s)の形状が決定されているため、式 (9)と、実測された不純物濃度分布 N (s) とに基づいて、横方向に関する正規化不純物濃度分布 g (x, y)を決定することがで きる。
[0034] 横方向に関する不純物濃度分布を直接的に測定することなぐ深さ方向の不純物 濃度分布を測定するのみで、不純物の横方向に関する広がり情報を得ることができ る。
非特干文献 1 : K. buzu i, R. Suao, and M. Nagase, Estimatinglateral straggling or ι mpurity profiles of ions implanted into crystallinesilicon, IEEE Trans. Electron Devi ces, ED-48,pp. 2803-2807, 2001.
非特許文献 2 : K. SUZUKI and R. Sudo, Analytical expression for ion- implantedimpur ity concentration profiles," Solid— State Electronics, vol. 44, pp.2253— 2257, 2001. 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0035] 上記特許文献 1に記載された方法は、垂直方向からイオン注入を行った場合の深 さ方向、すなわちイオンビームの延長線上における不純物濃度分布 n (y)と、斜め方 向からイオン注入を行ったときの、イオンビームの延長線上における不純物濃度分布 n (y)とが等 、と 、う前提条件が成り立つ場合にのみ適用可能である。
[0036] (100)面を主表面とするシリコン単結晶基板 (以下、(100)基板と呼ぶ。)を用いる 場合には、チャネリング現象を抑制するために、イオンビームの入射角を 7° にしてィ オン注入を行う方法が採用される場合がある。イオンビームの入射角を、例えば約 25 ° にしても、チャネリング現象が抑制される。そのときのイオンビームの延長線上にお ける正規ィ匕不純物濃度分布 n (y)は、入射角を 7° にした場合のイオンビームの延長
線上における正規ィ匕不純物濃度分布 n (y)に近似すると考えられる。
[0037] イオンビームの入射角を 7° にした場合、イオンビームの進行方向と基板の深さ方 向とのずれは極わずかである。このため、入射角を 7° としたときの深さ方向の不純 物濃度分布 N (s)の形状から、イオンビームの延長線上における正規化不純物濃度 分布 n (y)を推定することができる。
[0038] 従って、入射角を 7° としたときの深さ方向に関する不純物濃度分布と、入射角を 2 5° としたときの深さ方向に関する不純物濃度分布を実測することにより、横方向へ の広がりを評価することができる。すなわち、横方向に関する正規化不純物濃度分布 g (x, y)を決定することができる。
[0039] ところ力 (100)基板に、入射角を 0° としてイオン注入を行うと、チャネリング現象 が生じやすい。これと同程度のチャネリング現象が生じる入射角条件は存在しない。 このため、特許文献 1に記載された方法では、(100)基板に入射角 0° でイオン注 入するときの、不純物の横方向への広がりを評価することはできない。
[0040] 本発明の目的は、イオン注入時の不純物の横方向への広がりを評価することがで き、かつ制約条件の少ない不純物濃度分布の予測方法を提供することである。本発 明の他の目的は、この予測方法を用いて、横方向に関する不純物濃度分布を決定 するコンピュータプログラムを提供することである。
課題を解決するための手段
[0041] 本発明の一観点によると、(a)表面に垂直な方向、または表面に垂直な方向から第 1の角度だけずれた方向が第 1の指数で与えられる第 1の評価用基板と、該第 1の指 数で与えられる方向が表面の法線方向から該第 1の角度よりも大きな角度傾斜して いる第 2の評価用基板とを準備する工程と、(b)前記第 1の評価用基板に、前記第 1 の指数で与えられる方向と平行か、または該第 1の指数で与えられる方向から第 2の 角度だけずれた方向に進行するイオンビームを用いて不純物を注入する工程と、 (c )前記第 2の評価用基板に、前記第 1の指数で与えられる方向と平行か、または該第 1の指数で与えられる方向力 第 3の角度だけずれた方向に進行するイオンビームを 用いて不純物を注入する工程と、(d)前記第 1の評価用基板及び第 2の評価用基板 について、深さ方向に関する不純物濃度分布を測定する工程と、(e)前記工程 dで
測定された第 1の評価用基板の不純物濃度分布と第 2の評価用基板の不純物濃度 分布とに基づいて、イオンビームの延長線上における第 1の不純物濃度分布と、該 延長線に直交する方向に関する第 2の不純物濃度分布とを予測する工程とを有し、 前記第 1の指数で与えられる方向が表面に垂直な第 3の評価用基板に、垂直方向か らイオン注入を行ったときの、深さ方向に関する不純物濃度分布と、前記工程 bで不 純物を注入された前記第 1の評価用基板の深さ方向に関する不純物濃度分布との 差が、実質的に無視できる大きさになるように前記第 1の角度及び第 2の角度が選択 されており、前記第 2の評価用基板に、前記第 1の指数で与えられる方向と平行な方 向に進行するイオンビームを用いて不純物を注入したときのイオンビームの延長線 上及びそれに直交する方向に関する不純物濃度分布と、該第 1の指数で与えられる 方向から第 3の角度だけずれた方向に進行するイオンビームを用いて不純物を注入 したときのイオンビームの延長線上及びそれに直交する方向に関する不純物濃度分 布との差が、実質的に無視できる大きさになるように前記第 3の角度が選択されてい る不純物濃度分布の予測方法が提供される。
[0042] 本発明の他の観点によると、上記方法を用いて不純物濃度分布を決定するプログ ラムが提供される。
発明の効果
[0043] 表面の結晶面方位が異なる 2つの評価用基板を準備して、イオンビームの延長線 上における不純物濃度分布が実質的に等しくなる条件でイオン注入を行うことにより 、横方向に関する不純物濃度分布の情報を得ることができる。
図面の簡単な説明
[0044] [図 1]基板及びイオンビームと、座標系との関係を示す線図である。
[図 2]深さ方向に関する不純物濃度分布の一例を示すグラフである。
[図 3]イオン注入する基板の結晶軸方向とイオンビームの進行方向との相対位置関 係を示す線図である。
[図 4]不純物濃度分布の実測値と計算値とを比較して示すグラフである。
[図 5]実施例による評価方法で採用した関数の各種パラメータの評価値を示す図表 である。
[図 6]MOSトランジスタと座標系との関係を示す線図である。
[図 7] (A)は、コンピュータシステムの概略斜視図であり、(B)は、コンピュータシステ ムの本体部のブロック図である。
符号の説明
[0045] 1、 2 評価用基板
10 半導体基板
11 ゲート電極
発明を実施するための最良の形態
[0046] 図 1〜図 3を参照して、実施例による不純物濃度分布の評価方法について説明す る。図 1に示した xy直交座標系及び st直交座標系の定義については既に説明した ので、ここでは説明を省略する。
[0047] まず、図 1に示したイオンビームの入射角 Θが 0° 、すなわち垂直入射の場合につ いて考える。
[0048] 図 2に、深さ方向に関する不純物濃度分布の典型例を示す。半導体基板に不純物 イオンを注入すると、その深さ方向の不純物濃度分布力 アモルファスパートとチヤネ リングパートとの合成で表されることが知られている。アモルファスパートは、基板がァ モルファスであると仮定したときに想定される不純物濃度分布を表し、チャネリングパ ートは、チャネリング現象によって、より深い領域まで到達する不純物の濃度分布を 表す。図 1において、 X座標が uと u+duとの間にイオンビームが入射するとき、座標( X, y)の位置における不純物濃度 dN (x, y)は、
[0049] [数 11]
dN(x, ) = (Φ— ^chan )na (y)ga (χ - ΐί, y)du + ΰ1ίαηηΰ (y)gc (x - u, y)du [0050] と表される。ここで、 Φは、総ドーズ量を表し、 Φ は、チャネリングパートのドーズ量
c an
を表す。 nは、イオンビームの延長線上におけるアモルファスパートの正規化不純物
a
濃度分布であり、 nは、イオンビームの延長線 (以下、「ビーム軸」と表記する。)上に おけるチャネリングパートの正規ィ匕不純物濃度分布である。 g
aは、ビーム軸に直交す る方向(以下、「横方向」と表記する。)に関するアモルファスパートの正規ィ匕不純物 濃度分布であり、 gは、横方向に関するチャネリングパートの正規ィ匕不純物濃度分布
である。正規化不純物濃度分布 n及び nは、一例としてピアソン IV分布で近似する
a c
ことができる。
[0051] 半導体基板の表面の大きさを無限大と仮定し、 X軸の全領域をイオンビームで走査 することによりイオン注入を行う場合、座標 (X, y)の位置の不純物濃度 N (x, y)は、 [0052] [数 12]
N(x, y)
= (φ - φ ^ ) | ηα (y)ga (Χ - U, y)du + ^ chan I ^y)g c {x ~ U, y)du
= (Φ— ( + Φ (
[0053] となる。
[0054] 図 3 (A)に示すように、(100)面が露出したシリコン単結晶からなる第 1の評価用基 板 1を準備する。第 1の評価用基板 1においては、その [100]方向が基板 1の表面に 対して垂直になる。第 1の評価用基板基板 1に、その表面に垂直な方向に進行する イオンビームを用いて不純物を注入する。この場合、図 1に示した座標系の y軸と s軸 とが一致し、 X軸と t軸とがー致する。このため、 SIMS等で深さ方向に関する不純物 濃度分布を実測することにより、ピアソン IV分布で近似される正規ィ匕不純物濃度分 布 n (y)と n (y)、及び Φ / Φを決定することができる。
a c chan
[0055] 図 3 (B)に示すように、 [100]方向が表面に対して角度 0だけ傾いたシリコン単結晶 力もなる第 2の評価用基板 2を準備する。イオンビームの進行方向が、第 2の評価用 基板 2の [100]方向と平行になる条件で、第 2の評価用基板 2にイオン注入を行う。す なわち、 y軸が [100]方向と平行になる。ドーズ量及び加速エネルギは、図 3 (A)に示 した垂直方向からイオン注入を行う場合の条件と同一とする。
[0056] 第 2の評価用基板 2の結晶格子の配置と、イオンビームの進行方向との相対位置 関係は、図 3 (A)に示した第 1の評価用基板 1の結晶格子の配置とイオンビームの進 行方向との相対位置関係と同一である。従って、図 3 (B)に示したように、斜め方向か らイオン注入を行う場合でも、正規化不純物濃度分布 n (y)、 g (x, y)、 n (y)、及び
a a c
gc (x, y)は、図 3 (A)に示した垂直入射を行う場合と同一であると考えることができる [0057] X座標が uと u+duとの間にイオンビームが入射するとき、座標(X, y)の位置におけ
る不純物濃度 dN(x, y)は、
[0058] [数 13]
dN(x,y)
= (Φ- ^αη )ηα (y + u tan 0)ga (x-u,y + u tan 6)du
+ Φ channc (y + u tan 6)gc (x-u,y + u tan 6)du
[0059] と表される。従って、座標 (x, y)の位置の不純物濃度 N (x, y)は、
[0060] [数 14]
= (φ— ^chan ) Γ " "( + " tan 0)ga (x-u,y + u tan 0)du
+ ^chan \ nc y + u tan 6)gc (x-u,y + u tan 6)du
[0061] と表される。なお、積分範囲の下限値として、上述の式 (8)の値を採用してもよい。式
(3)に示した座標の関係式を、式(14)に適用すると、以下の式が得られる。
[0062] [数 15]
x ga (t cos Θ -- s in Θ -u,s cos θ -ί ηθ + u tan 0)du
+ ^chan cos6>— sin< + z tanの
x gc (t cos Θ + s i O -u,s cos θ -ί ηθ + u tan 9)du
[0063] 不純物濃度分布 N(s, t)は、座標 sに依存する力 座標 tには依存しないはずであ る。式(15)に変数 tが明示的に現れないようにするために、上述の式(5)で定義され る変数 kを導入する。変数 kを用いて、式(15)を下記のように表すことができる。
[0064] [数 16]
= (Φ - Φ^αη ) «Ω cos 6> + tan 0)ga sin 6> _ , * cos 6> + tan 0)dk
+ οΙ,αη nc (s cos θ + ktm 0)gc (s sin Θ _ k,s cos ^十 tan 0)dk
[0065] 不純物を注入した第 2の評価用基板 2の深さ方向に関する不純物濃度分布 N (s) を、 SIMS等により実測する。上式(16)において、ビーム軸上における正規ィ匕不純 物濃度分布 n、 n、及び Φ ΖΦは、図 3 (Α)の工程で既に決定されている。実測
a c chan
された不純物濃度分布 N (s)と、式(16)とに基づいて、横方向に関する正規ィ匕不純 物濃度分布 g g
a及び cを決定することができる。
[0066] 上述のように、図 3 (A)に示した第 1の評価用基板 1と、図 3 (B)に示した第 2の評価 用基板 2とを準備することにより、垂直方向からイオン注入する場合のビーム軸上に おける正規化不純物濃度分布 n及び nと、斜め方向からイオン注入する場合のビー
a c
ム軸上における正規化不純物濃度分布 n及び nとが同一になる条件が実現される。
a c
これにより、横方向に関する正規ィ匕不純物濃度分布を決定することが可能になる。
[0067] 上記実施例では、図 3 (A)に示したように、第 1の評価用基板 1の [100]方向が基板 表面に垂直であつたが、後述する条件が満たされれば、 [100]方向が基板表面に垂 直な方向から第 1の角度だけずれていてもよい。また、第 1の評価用基板 1に入射さ せるイオンビームの進行方向が、その [100]方向と平行であった力 後述する条件が 満たされれば、 [100]方向とイオンビームの進行方向とが第 2の角度だけずれていて ちょい。
[0068] また、上記実施例では、図 3 (B)に示した第 2の評価用基板 2に入射させるイオンビ ームの進行方向力 その [100]方向と平行であった力 後述する条件が満たされれ ば、イオンビームの進行方向と [100]方向とが第 3の角度だけずれていてもよい。
[0069] 以下、第 1〜第 3の角度に課される条件について説明する。 [100]方向が表面に垂 直な第 3の評価用基板に、垂直方向からイオン注入を行ったときの、深さ方向に関す る不純物濃度分布と、第 1の評価用基板にイオン注入を行ったときの深さ方向に関 する不純物濃度分布との差が、実質的に無視できる大きさになるように、第 1の角度 及び第 2の角度が選択されて 、ればよ 、。
[0070] また、第 2の評価用基板に、 [100]方向と平行な方向に進行するイオンビームを用 いて不純物を注入したときのビーム軸上における不純物濃度分布及び横方向に関 する不純物濃度分布と、 [100]方向から第 3の角度だけずれた方向に進行するィォ ンビームを用いて不純物を注入したときのこれらの不純物濃度分布との差力 実質 的に無視できる大きさになるように第 3の角度が選択されて 、ればよ 、。
[0071] 一例として、第 1の角度が 0. 5° 以下、第 2の角度が 0. 5° 以下、第 3の角度が 0.
5° 以下であれば、上述の条件が満たされるであろう。
[0072] 十分な評価精度を得るために、第 2の評価用基板の [100]方向と、その表面に垂直 な方向との成す角度を、 0° 以上 1° 以下にすることが好ましい。
[0073] 上記実施例では、シリコンの [100]方向が基板面に垂直である基板にイオン注入を 行う場合を例に挙げて説明したが、その他の半導体結晶基板を用いる場合や、その 他の指数で表される方向が基板面に垂直である場合にも、上記実施例を適用するこ とが可能である。
[0074] 次に、ビーム軸における不純物濃度分布を、上記非特許文献 2に記載された関数 で表現した場合にっ 、て、横方向に関する不純物濃度分布を評価する方法にっ 、 て具体的に説明する。なお、ビーム軸上における不純物濃度分布をその他の関数で 近似しても、同様の評価を行うことができる。例えば、アモルファスパートとチヤネリン グパートとを、異なる 2つのピアソン IV分布で表すデュアルピアソン IV分布で近似す ることち可會である。
[0075] 式(11)の正規化不純物濃度分布 n (y)及び n (y)は、下記のように表すことができ a c
る。
[0076] [数 17]
[0077] ここで、関数 h 及び h は、ピアソン IV分布であり、両者は同じモーメントを持つが
、両者の正規ィ匕ファクタ一は異なる。ボロン (B)を高工ネルギで注入すると、不純物 濃度分布が 2つのピークを示す場合がある。このように 2つのピークを示す分布にも 上記近似が適用できるようにするために、関数 h と h とのプロジェクトレンジを別パ ma mc
ラメータとし、それぞれ Rp及び Rp2とする。なお、一般的には、 Rp=Rp2と仮定して も、十分精度の高い近似を行うことができる。
[0078] イオンビームの進行方向に沿った標準偏差を ARpとしたとき、 yは、 Rp2+ ARp
T
である。ピアソン IV分布 h 及び h は、 Rp、 Rp2、 ARp、 γ、及び βの 5つのパラメ ma mc
ータで特定することができる。 Rp=Rp2と仮定した場合には、 4つのパラメータで特 定することができる。
[0079] 係数 κは、 y=yにおいて関数の連続性を保っために導入されたものである。関数
T
h (y)として、パラメータ 7?を導入して、下記の関数形を採用する。
TC
[0080] [数 18]
ここで、 yは、不純物濃度が最大になる深さである。パラメータ Lは、チャネリングの
P
深さを表し、指数 αは、チャネリング部分の分布の形状を現す。より具体的には、深さ
= 1のとき、関数 h は指数関数になる。横軸を深さとし、縦軸を対数目盛で表した不
TC
純物濃度としたときのグラフは、ほぼ右下がりの直線になる。 α > 1の場合には、この 直線から上に向力つて膨らんだ曲線になり、 a < 1の場合には、この直線から下に向 力つて膨らんだ曲線になる。
[0082] 横方向に関する正規化不純物濃度分布 g (X, y)及び g (x, y)は、正規分布で近 a c
似されると仮定する。その標準偏差が深さ yに依存すると仮定すると、正規化不純物 濃度分布 g
a及び g
cは、以下のように表すことができる。
[0084] 標準偏差 及び AR を、下記のように定める c
pta ptc
[0085] [数 20]
+ wバ - yP) (y<yP-
-yP) (y>yP
f(y- yP) (y<yP
[0086] ここで、 AR は、不純物濃度が最大となる位置における標準偏差に相当する。 m ptO f は、不純物濃度が最大となる位置よりも浅い領域における 及び AR の傾きに pta ptc 相当する。 m 及び m は、それぞれ不純物濃度が最大となる位置よりも深い領域に ba be
おける AR 及び AR の傾きに相当する。
pta ptc
[0087] 式(17)で表されるビーム軸上における正規化不純物濃度分布 n (y)及び n (y)を a c 特定するパラメータは、図 3(A)に示したように垂直方向からイオン注入を行った場合 の深さ方向に関する不純物濃度分布を実測した結果力も決定することができる。式( 19)で表される横方向に関する正規化不純物濃度分布 g (x, y)及び g (x, y)を特 a c
定するパラメータは、図 3(B)に示したように斜め方向からイオン注入を行った場合の 深さ方向に関する不純物濃度分布を実測した結果 N (s)と、式(16)とに基づ 、て決 定することができる。
[0088] 図 4に、深さ方向に関する不純物濃度分布の実測結果と、この実測結果に適合す るように正規ィ匕不純物濃度分布のパラメータを決定し、式(16)に基づいて計算した
深さ方向に関する不純物濃度分布とを対比して示す。図 4の横軸は深さを単位「 m 」で表し、縦軸は不純物濃度を単位「cm_3」で表す。注入した不純物はボロン (B)で あり、カロ速エネルギを 20keV、ドーズ量 Φを 1 X 1014cm_2とした。
[0089] 図中の白丸記号、黒丸記号、及び四角記号は、それぞれイオンビームの入射角 Θ を 0° 、30° 、及び 60° にした場合の実測結果を示す。入射角 0が 0° のときの実 測値に、式(12)の不純物濃度分布 N (x, y)が整合するように、式(17)に示すピアソ ン IV分布 h 及び h の 5つのパラメータ、チャネリングドース量 Φ 、及び式(18) ma mc chan
に示した関数 h を特定するパラメータ 7?、 L、及び を決定した。ピアソン IV分布の
TC
ノ ラメータ Rpを 98nm、Rp2を 176nm、 A Rpを 38nm、 γを一 0. 3、 βを 3. 2とし、 関数 h のパラメータ 7?を 1000、 Lを 175nm、 aを 5とすると、図 4に実線で示すよう
TC
に、計算値と実測値とがよく整合した。
[0090] 次に、入射角 Θを 30° にしてイオン注入を行った試料の不純物濃度分布の実測 値に、式(16)の不純物濃度分布 N (s)が整合するように、正規化不純物濃度分布 g a 及び gのパラメータ A R 、 m、 m 、及び m を決定した。図 4に実線で示した計算 c ptO f ba be
値は、 A R = 34nm、m =— 0. 1、 m =—0. 1、及び m =—0. 2とした場合の ptO f ba be
計算結果を示す。計算結果と実測値とがよく整合して 、ることがわ力る。
[0091] なお、参考のために、 m =m =m = 0とした場合の計算結果を破線で示す。 m f ba be f
=m =m = 0は、横方向への広がりの標準偏差が、深さに依存しないことを意味 ba be
する。
[0092] 上述のように、イオンビームの入射角 0を 0° とした場合及び 30° とした場合の深 さ方向に関する不純物濃度分布を実測することにより、深さ方向のみならず、横方向 に関する不純物の分布情報を得ることができる。
[0093] 求められたパラメータを用いて、入射角 0を 60° とした場合の不純物濃度分布を 計算した。計算結果を実線で示す。この計算結果も、実測値によく整合している。な お、参考のために、 m =m =m = 0とした場合の計算結果を破線で示す。
f ba be
[0094] イオン注入時の加速エネルギを 40keV、 80keV、及び 160keVにし、その各々に ついてイオンビームの入射角 0を 0° 、 30° 、及び 60° にしてイオン注入を行い、 不純物濃度分布を評価した。
[0095] 図 5に、これらの実測値力 決定された各種パラメータの値を示す。加速エネルギ を高くすると、 AR が大きくなることがわかる。これは、加速エネルギを高くすると、横 ptO
方向に関する不純物濃度分布のばらつきの程度が大きくなることを意味する。
[0096] 次に、 MOSトランジスタのソース及びドレインへイオン注入する場合の、ゲート電極 直下への不純物の侵入の度合 、を評価する方法につ 、て説明する。
[0097] 図 6に示すように、半導体基板 10の表面上に、ゲート電極 11が形成されている。半 導体基板 10の深さ方向 ¾y軸、ゲート長方向(チャネル内のキャリアの移動方向)を X 軸とする xy直交座標系を定義する。ゲート電極 11の一方の縁を原点とし、チャネル 側に向力 向きを X軸の正方向とする。ゲート長を Gとする。
し
[0098] 図 1〜図 3を参照して説明した不純物濃度分布の評価方法により、式(11)の正規 化不純物濃度分布 n 、 n 、 g、及び gが決定されている。式(11)の右辺の数式を、 a c a c
変数 uに関して、 ∞から 0まで、及び G力 +∞まで積分することにより、座標(X, y し
)の位置における不純物濃度を求めることができる。
[0099] 次に、上記実施例による不純物濃度分布の評価方法を実行するコンピュータプロ グラムについて説明する。
[0100] 図 7 (A)に、コンピュータシステムの概略斜視図を示し、図 7 (B)に、コンピュータシ ステムの本体部のブロック図を示す。
[0101] 図 7 (A)に示した本体部 101に、図 7 (B)に示すよう〖こ、 CPU101a、 RAM101b、 ROM101c、ハードディスクドライブ 101d、 CD— ROMドライブ 101e、フロッピデイス クドライブ 101f、入出力インタフェース 101g、 LANインタフェース 101h、及びモデ ム 101iが内蔵されている。入出力インタフェース lOlgに、ディスプレイ 102、キーボ ード 103、マウス 104が接続されている。コンピュータシステムは、 LANインタフエ一 ス 101hを介して LAN113に接続されている。さらに、モデム 101iを介して公衆回線 112に接続されている。
[0102] 本体部 101からの指示により、ディスプレイ 102の表示画面 102aに画像等の情報 が表示される。キーボード 103から、コンピュータシステムに種々の情報が入力される 。マウス 104は、表示面 102a上の任意の位置を指定する。コンピュータシステムは、 LANや公衆回線を介して、データベースシステム 108や他のコンピュータシステム 1
09に接続されている。
[0103] CD— ROM110、フロッピディスク 111等の可般型記録媒体に記録されたコンビュ ータプログラム力 CD— ROMドライブ lOleやフロッピディスクドライブ lOlfを通して コンピュータシステムにインストールされる。可搬型記録媒体には、その他に、 DVD ディスク、光磁気ディスク、 ICカード等が含まれる。
[0104] また、 LAN等に接続されたデータベース 108や他のコンピュータシステム 109等の 記録媒体に格納されているコンピュータプログラム力 LAN等を経由してコンビユー タシステムにインスト一ノレされる。
[0105] インストールされたコンピュータプログラムは、ハードディスクドラブ 101dに記憶され 、 RAMlOlb等を利用して CPUlOlaで実行される。
[0106] コンピュータシステムにインストールされたプログラムは、図 3 (A)に示した第 1の評 価用基板 1にイオン注入して実測された不純物濃度分布を、キーボード等から入力 する手順を実行する。次に、図 3 (B)に示した第 2の評価用基板 2にイオン注入して 実測された不純物濃度分布を、キーボード等から入力する手順を実行する。
[0107] その後、入力された不純物濃度分布の実測値に基づいて、イオンビームの延長線 の第 1の不純物濃度分布、及びイオンビームの延長線と交差する方向に関する第 2 の不純物濃度分布を決定する手順を実行する。この決定は、上述の実施例で説明し た方法により、各種関数のパラメータを決定することにより行われる。決定された第 1 及び第 2の不純物濃度分布は、表示画面 102aに表示される。
[0108] 次に、図 6を参照して説明したように、イオン注入を行う範囲を入力する手順が実行 される。入力された範囲に基づいて、イオン注入されない範囲まで横方向に広がった 不純物濃度分布を計算する手順を実行する。計算された不純物濃度分布は、表示 画面 102aに表示される。
[0109] 以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものでは ない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であ ろう。