明 細 書
MIMOデコーダ及び MIMO復号法
技術分野
[0001] 本発明は、移動通信などにおいて用いられる MIMO (多数入力 Z多数出力; Multi ple-Input/Multiple-Output)空間多重伝送における最尤検出法に関し、特に、電波 伝搬環境等の移り変わりによって変化するチャネル行列により送信信号ベクトルの探 索範囲が変化する場合に適した MIMOデコーダ及び MIMO復号法に関する。 背景技術
[0002] 移動通信における電波伝搬路では、送信アンテナ力も到来する電波は、周囲の地 形などに応じて反射や散乱を受け、一群の素波の集まりとなって受信機に到着する。 各素波の伝搬経路長や位相は相互に異なることから、このように、反射や散乱を受け たことによる一群の素波が到着することによって、フェージング現象が生じる。フエ一 ジング現象は、品質の高い移動通信を実現する上で、常に障害となっている。このフ ージングによる劣悪な電波伝搬環境の克服力 長年にわたる移動通信技術におけ る課題であり、そのため、これまでにも色々な対応策が実用化されてきた。
[0003] 近年、このフェージング現象を悪者扱いするのではなぐ逆にフェージングを移動 通信における電波伝搬に内在する可能性を秘めた環境資源として見直す動きが活 発化している。その詳しい記載が、 Gerard J. Foschini [1] (非特許文献 1)あるいは、 E mre Telatar [2] (非特許文献 2)に開示されている。
[0004] また、近年、複数ユーザダイバーシチ (Multi-USER Diversity)と呼ばれる、フェージ ング変動における空間的位置独立性を利用して電波伝搬路に内在する環境資源を 活用する動きも有り、これも上述したものと同様の動向の 1つとも言える。
[0005] MIMOシステムでは、送信側において、相互に相関がない複数のアンテナを用い て送信系列を空間多重して送出し、受信側においては、相互に相関がない複数のァ ンテナを用いてこれらの信号系列を受信し、受信された信号系列に基づいて、送信 側でそもそも送信したであろう送信系列を最尤推定によって求めるものである。このよ うな MIMOシステムは、フェージング現象に関する従来の考え方を覆すものである。
[0006] MIMOシステムについて先鞭をつけた上述の各文献には、移動通信における伝 送媒体である空間に内在する伝搬路資源を活用する手だてとして、空間多重化処理 された信号を効率的に活用する BLASTと呼ばれる空間伝送処理が開示されている 。また、この BLASTの空間多重分離を低複雑度で実現するアーキテクチャとして、 線形フィルタリングと干渉キャンセラとを組み合わせた V— BLASTと呼ばれる手法も 開示されている。線形フィルタリングとしては、干渉成分を抑圧 (ヌリング: nulling)する ゼロフォーシング(Zero-Forcing ;ZF)規範のもの、ある!/、は最小平均自乗誤差(MM SE : Minimum Mean Square Error)規範のものが一般的である。 ZF規範にしたがいヌ リングを行う線形変換としては、ムーヮペンローズ(Moore-Penrose ; MP)の一般逆行 列が知られており、干渉キャンセラの特性向上を目的として、検出後の SNR (信号対 雑音比; singa卜 to-noise ratio)が最も高いと簡易推定される順に検出する順序付け 処理 (オーダリング)がなされる。このシンボルの順序付けを行う操作として、ムーヮぺ ンローズ一般逆行列の重みベクトルに相当する最小ノルムを有する列ベクトルを優先 して使うことが知られて 、る。
[0007] あるいは、さらに低複雑度の手法として、 QR分解による方法がある。すなわち、通 信路行列(チャネル行列) Hを QR分解により H = Q'Rとすると、 n次元の送信アンテ
T
ナ信号ベクトル
[0008] [数 1]
X G C X1
と、 n次元の受信アンテナ信号ベクトル
R
[0009] [数 2]
γ G ¾ x l との間に以下の関係が成り立つ。
[0010] QH-Y=R-X+QH-v
なお、行列やベクトルは、慣習上、ボールド体で記載されることが多いが、本明細書 では表記の都合上、活字体で記載したところがある。また、送信アンテナ信号べタト ルのことを送信信号ベクトルと呼び、受信アンテナ信号ベクトルのことを受信信号べク トノレと呼ぶ。ここで、
[0011] [数 3]
Q e C nR /,lRはュニタリ一行列、 R e C ½ x は上三角行列
であり、雑音成分ベクトル
[0012] 画 v e C ¾ xl
はュ-タリー変換されるので、 QR分解によっては雑音強調は生ぜず、信号点間距離 を維持したまま変換されることになる。この QRによる分解過程においては、 SNRが高 V、順序で処理できるように行列内ベクトルの並び替えが可能で、 SNRが最大化され るような順序 (オーダリング)で検出するステップ処理を実現できる。このような方法は 、 ZF規範によるヌリング処理にあたるため、本質的に、受信アンテナの本数 nが送信
R
アンテナの本数 nと同数であるかそれ以上であることを前提として 、る。
T
[0013] しかしながらこれらの方法は、初回のステップでのヌリングによる線形処理で n— 1
T
次のヌル生成を行うため、ダイバーシティ利得が n— n + 1のオーダーでしか得られ
R T
ない、という問題点を有する。したがって初回のステップにおける検出誤りが起こりや すぐその影響によって、後段の検出誤りを引き起こす誤り伝搬が生じることがある。
[0014] 一方、最適検出を行うには、下式における最尤検出(most likelihood detection;以 下、 MLDと略す)を行うことになる。
[0015] [数 5]
XMLD = arg min ||Υ - Η · Χ||2
Xe|Aにリ
[0016] し力しながら、 MLDでは、アンテナの本数と変調信号点のサイズ I A Iとに対して 指数関数的に複雑度が増大するので、符号化を考慮に入れると、 MLDは事実上不 可能である。そこで、低複雑度化の手法として、ターボ原理に基づく手法などが検討 されている。上式は検出器にのみついての MLDを示している力 この複雑度を回避 するため及び上述の V— BLASTにおける初段力 後段への誤り伝搬による特性劣 ィ匕を回避するため、言 、換えるとフェージング環境におけるダイバーシティ利得を得 る目的で、球内復号 (Sphere Decoding;以下、 SDと略す。)と呼ばれる復号法の適用
が提案されている。 SDの基本的な考え方は、受信信号点を中心とした適当な半径 r の球に含まれる信号点にっ 、て尤度計算を行 、、限定された範囲内で MLDを行う といったものである。 SDでは、半径 rの選び方によって、効率が決まってくる。あるい は。信号点の数を尤度の大きさによって限定することによって、複雑度を回避する方 法もある。
[0017] なお、 MMSEとターボ原理による推定については、文献 [3] (特許文献 1)に開示さ れているが、ここでは、最尤推定については触れられていない。また、推定対象もチ ャネルであって、送信系列ではない。同様に、文献 [4] (特許文献 2)〖こも、 MMSEと ターボ原理による推定が開示されている力 ここではでは、最尤推定については触れ られていない。
[0018] また、電波伝搬状態がよくない環境下で SNRを向上させる技術としては、従来より 、アレイアンテナを用いる方法がある [5] (特許文献 3)。し力しながら、アレーアンテナ を用いる方法は、アレーアンテナを構成するアンテナ間で相関があることが前提であ り、複数のアンテナ間で相関がないことを前提とする MIMOによる方法とは、本質的 に異なっている。
[0019] ここで、本明細書中で引用した文献を列挙しておく。
特干文献 1: [1」 Gerard J. Foschini, Layered space-time architecture for wireless communications in a fading enverironment when using multiple antennas," Bell Labs Technical Journal, Vol. 6, No. 2, pp. 41-59, Autumn 1996
非特許文献 2 : [2] Emre Telatar, "Capacity of multi-antenna Gaussian channels," Eu ropean Transaction on Telecomunication, Vol. 10, No. 6, pp. 585-595, November/ December 1999
特許文献 1 : [3]特開 2003— 348057号公報
特許文献 2 : [4]特開 2003— 152603号公報
特許文献 3 : [5]特開 2000— 209018号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0020] 移動通信における究極の目的である"!/、つでも、どこでも、だれとでも"を実現する
ためには、時々刻々と移り変わる電波伝搬環境において、たとえ特異な反射物によ つて MIMOに適さない偏りのある散乱状態が生じたとしても、通信路容量拡大策で ある空間信号多重における信号分離を、高性能化による安定した品質で、しかも低 複雑度で実現する必要がある。
[0021] 一方、上述の V— BLASTは、低複雑度で実現できるものの、その方式自体に内在 する誤り伝搬のために特性劣化を引き起こす、という課題を有する。また最適検出で ある MLDは、高性能化は実現できるものの複雑度が高ぐそのままでは採用すること ができない、という課題を有する。
[0022] MLDの複雑度を低減するために、送信信号ベクトルの信号点探索範囲を削減す ることが考えられており、探索範囲を限定する Mアルゴリズム (M-Algorithm)や球内復 号 (SD) t ヽつた色々な手法の提案がこれまでにもなされてきた。
[0023] ところで、空間信号多重により通信路容量の拡大を図った MIMOシステムでは、そ の性能が電波伝搬環境に依存しやす 、と 、う特徴を有して 、る。し力しながら MIM Oシステムに関する現在までの検討は、主に、 i. i. dチャネル (independent identically distributed channel),すなわち、送受アンテナ素子間の伝搬路特性が統計的に同 一でかつ無相関のチャネル)に対するものであり、上記の信号点探索範囲を限定し た各種アルゴリズムも、この i. i. dチャネルを前提として検討されている場合が多い。 すなわち、一般的な MIMO伝搬環境は i. i. dチャネルであり、その分散行列の固有 値の確率分布はゥヱシヤード分布となる。
[0024] し力しながら実環境では、特異な反射物によって散乱が制限される場合が多いが、 そのような場合、もはや i. i. d環境とはならず特異な固有値分布となる。その結果とし て適切となるべき探索範囲に偏りが生じる。したがって、 i. i. dチャネルを仮定して最 適な探索範囲の限定を行った上記の各種簡易化アルゴリズムも、一様でな!、反射物 による MIMOに適さない散乱状態の電波伝搬環境に移ってきた場合には、もはや最 適な探索範囲を限定することとはならず、 MLD本来の高性能化による安定した品質 を実現できないといった問題を有する。あるいは逆に、 MIMOに適さない偏りのある 散乱状態の電波伝搬環境を想定して、探索範囲の限定の度合いを緩くし、特性劣化 を食い止めようとすることも考えられる。しかしながらこの場合は、アルゴリズムの簡易
化の効果がなくなって高複雑度の MLDに近づき、もはや低複雑度で実現できなくな つてしまう。
[0025] 本発明は、以上の問題に鑑みなされたものであり、移動通信における究極の目的 である"いつでも、どこでも、だれとでも"を実現するために、時々刻々と移り変わる電 波伝搬環境でたとえ MIMOに適さない偏りのある散乱状態に移ってきた場合でも、 通信路容量拡大策である空間信号多重における信号分離を、高性能化による安定 した品質でしかも低複雑度で実現する MIMOレコーダを提供することを目的とする。 言い換えれば、 MIMOに適さない偏りのある散乱状態に移ってきた場合でも、最小 限の探索範囲、すなわち回路規模で最も効率的に探索することにより MIMOを効果 的に動作させることを目的としている。
[0026] このような MIMOレコーダを実現するにあたっては、固有値並びに固有ベクトルの 抽出を低複雑度で実現することがポイントとなるが、本発明は、低複雑度でしかも高 速に構成したヤコビ回転計算を実行することにより、全体でみた複雑度を上げること なく固有値並びに固有ベクトルの抽出処理を実行できる手段を提供することも目的と する。
課題を解決するための手段
[0027] 本発明の第 1の様相に従えば、 MIMOデコーダは、電波伝搬環境を示すチャネル 行列または仮想伝搬路を表す仮想チャネル行列より得られるムーヮペンローズの一 般逆行列を計算する一般逆行列計算手段と、一般逆行列計算手段によって計算さ れた一般逆行列解を中心として送信信号べ外ルを探索する探索手段と、を有し、送 信信号ベクトルの探索範囲はチャネル行列または仮想チャネル行列の変化に応じて 変化可能であり、探索手段は、チャネル行列または仮想チャネル行列力 計算され た固有ベクトルごとに、その固有ベクトルに対応する固有値の平方根に反比例する 重み付けを行 、、重み付けされた結果に基づ 、て送信信号ベクトルの探索範囲を決 定する。
[0028] 本発明の第 2の様相に従えば、 MIMOデコーダは、電波伝搬環境を示すチャネル 行列または仮想伝搬路を表す仮想チャネル行列より最小平均自乗誤差規範に基づ く処理を実行する最小平均自乗誤差規範計算手段と、最小平均自乗誤差規範計算
手段によって計算された検出結果を中心として送信信号べ外ルを探索する探索手 段と、を有し、送信信号ベクトルの探索範囲はチャネル行列または仮想チャネル行列 の変化に応じて変化可能であり、探索手段は、チャネル行列または仮想チャネル行 列から計算された固有ベクトルごとに、その固有ベクトルに対応する固有値の平方根 に反比例する重み付けを行 、、重み付けされた結果に基づ 、て送信信号ベクトルの 探索範囲を決定する。
[0029] 本発明において、探索手段は、計算された固有値のうち、最小の固有値に対応す る固有ベクトルに対しては最小の固有値の平方根に反比例する重み付けを行い、最 小の固有値以外の固有値に対応する各固有ベクトルに対しては、それら各固有べク トルに対応するスカラー量に対してそれら各固有ベクトルに対応する各固有値の平 方根に反比例する重み付けを行うようにしてもよい。その場合、探索手段は、最小の 固有値に対応する固有ベクトルを選択してその選択された固有ベクトル内の各要素 関係を維持しつつ、最小の固有値以外の各固有値の平方根に反比例した形態で、 選択された固有ベクトル内の各要素に探索範囲の幅を持たせるようにしてもよい。
[0030] 本発明にお!/、て、チャネル行列または仮想チャネル行列に基づ!/、て固有値'固有 ベクトルを求める際に、ヤコビ回転を用いて固有値及び固有ベクトルを計算するととも に、ヤコビ回転における回転角を 2の負の冪に対する複数の逆正接の極性付き和と してグループ毎に逐次的に分解する分解手段を設け、分解手段により得られたダル ープ毎の複数の極性を基に構成された 2の負の冪の線形和を要素とする回転行列 をヤコビ回転に用いるようにするとよい。このような分解手段は、例えば、互いに異な る複数の 2の負の冪に対する逆正接をグループ毎に値として持つメモリと、メモリのグ ループを示すアドレスを発生する手段と、メモリから読み出された複数の逆正接デー タの極性付き和及び前回までの極性付き和の蓄積結果とヤコビ回転角を比較する手 段と、を有し、比較の結果をもって今回のグループ内逆正接の極性とする。
[0031] 本発明にお ヽて、上述した仮想チャネル行列は、送受信機の不完全性に基づく寄 与を含んでいてもよい。
[0032] 本発明の第 3の様相に従えば、 MIMO復号法は、送信信号を受信して送信信号 ベクトルを得る段階と、電波伝搬環境を示すチャネル行列または仮想伝搬路を表す
仮想チャネル行列より得られるムーヮペンローズの一般逆行列を計算する段階と、チ ャネル行列または仮想チャネル行列を基に固有値及び固有ベクトルを計算する段階 と、ムーヮペンローズの一般逆行列解を中心として送信信号ベクトルを探索する探索 段階と、を有し、送信信号ベクトルの探索範囲はチャネル行列または仮想チャネル行 列の変化に応じて変化可能であり、探索段階において、チャネル行列または仮想チ ャネル行列カゝら計算された固有ベクトルごとに、その固有ベクトルに対応する固有値 の平方根に反比例する重み付けを行 、、重み付けされた結果に基づ 、て送信信号 ベクトルの探索範囲が決定される。
[0033] 本発明の第 4の様相に従えば、 MIMO復号法は、送信信号を受信して送信信号 ベクトルを得る段階と、電波伝搬環境を示すチャネル行列または仮想伝搬路を表す 仮想チャネル行列より最小平均自乗誤差規範に基づく処理を実行する段階と、チヤ ネル行列または仮想チャネル行列を基に固有値及び固有ベクトルを計算する段階と 、最小平均自乗誤差規範に基づく処理による検出結果を中心として送信信号べタト ルの探索する探索段階と、を有し、送信信号べ外ルの探索範囲はチャネル行列ま たは仮想チャネル行列の変化に応じて変化可能であり、探索段階において、チヤネ ル行列または仮想チャネル行列から計算された固有ベクトルごとに、その固有べタト ルに対応する固有値の平方根に反比例する重み付けを行 、、重み付けされた結果 に基づ!/、て送信信号ベクトルの探索範囲が決定される。
[0034] 本発明では、送信信号ベクトルの探索範囲が、電波伝搬環境の移り変わりによって 変化するチャネル行列または仮想チャネル行列に応じて変化することが可能であり、 その探索範囲がチャネル行列または仮想チャネル行列を基に計算された固有値の 平方根に反比例する如く重み付けされた固有ベクトルによって決定されるので、たと え MIMOに適さない偏りのある散乱状態に陥った場合であっても、通信路容量拡大 策である空間信号多重における信号分離を、高性能化による安定した品質でしかも 低複雑度で具現化できる。したがって、本発明は、移動通信の究極目的である"いつ でも、どこでも、だれとでも"を実現するための手段を提供する。
[0035] このような MIMOデコーダにお!/、ては、時々刻々と移り変わるチャネル行列または 仮想チャネル行列に合わせてムーヮペンローズの一般逆行列解を中心として送信信
号ベクトルを探索する際に、送信信号ベクトルの探索範囲が、チャネル行列または仮 想チャネル行列を基に得られた固有値の平方根に反比例する如く重み付けされた 固有ベクトルを軸とした超楕円によって決定される。このとき処理のネックとなるのが 固有値並びに固有ベクトルの検出である力 本発明では、ヤコビ回転によって固有 値並びに固有ベクトルを抽出する際に、回転角を 2の負の冪に対する複数の逆正接 の極性付き和としてグループ毎に逐次的に分解し (Factorization & Grouping),その 結果得られたグループ毎の複数の極性を基に構成された 2の負の冪の線形和を要 素とする回転行列を用いてヤコビ回転を行う。このように構成したことによって、ヤコビ 回転の計算は、ハードウェア構成として回路上の配線入れ替え (スィッチ)による 2の 負の冪の処理と加算器のみで行うことができ、したがって、低複雑化とグループ化〖こ よる高速ィ匕の両方が同時に達成される。このようにして本発明は、移動通信における 究極の目的である"いつでも、どこでも、だれとでも"を MIMOシステムでも実現できる ようにしている。
[0036] 上述したような構成を採用することにより、本発明によれば、移動通信における究極 の目的である"いつでも、どこでも、だれとでも"が、 MIMOシステムでも実現できるよ うになる。本発明によれば、時々刻々と移り変わる電波伝搬環境下で、たとえ MIMO に適さない偏りのある散乱状態に移ってきた場合でも、通信容量拡大策である空間 信号多重における信号分離を。高性能化による安定した品質でしかも低複雑度で実 現できる。
[0037] 本発明は、チャネル行列または仮想チャネル行列の固有値と固有ベクトルの抽出 をヤコビ回転により低複雑度でしかも高速に実行する手段を提供する。この固有値と 固有ベクトルの抽出処理は、 1フレーム当たり 1回行えば良いので、毎回処理が必要 な MLDに比べて相対的に低複雑度となる特徴があり、全体としてみた複雑度がさら に低くなる。上述したように、ヤコビ回転によって固有値 ·固有ベクトルを求める際、回 転角を 2の負の冪に対する複数の逆正接の極性付き和としてグループ毎に逐次的に 分解し、その結果得られた該グループ毎の複数の極性を基に構成された 2の負の冪 の線形和を要素とする回転行列をヤコビ回転に用いることができるので、上述したよ うに、 2の負の冪の線形和を要素とする行列演算は、ハードウェア構成として、回路上
配線の入れ替えと加算器のみで実現できる。したがって、本発明は、グループィ匕によ る高速ィ匕が可能で低複雑度かつ高速な実現手段を提供できる。
[0038] 本発明では、ムーヮペンローズの一般逆行列を計算する代わりに最小平均自乗誤 差 (MMSE規範)規範に基づく検出結果を中心として送信信号ベクトルを探索するこ とによって、さらに高性能化による安定した品質を有する MIMOデコーダを低複雑度 で実現することができる。
[0039] 本発明では、送信信号ベクトルの探索範囲の設定を行う際、計算された固有値のう ち、最小の固有値に対応する固有ベクトルに対しては最小の固有値の平方根に反 比例する重み付けを行い、最小の固有値以外の固有値に対応する各固有ベクトル に対しては、それら各固有ベクトルに対応するスカラー量に対してそれら各固有べク トルに対応する各固有値の平方根に反比例する重み付けを行うようにすることにより 、送信信号ベクトルの探索範囲決定の処理を簡略ィ匕できる。その際、最小の固有値 に対応する固有ベクトルを選択してその選択された固有ベクトル内の各要素関係を 維持しつつ、最小の固有値以外の各固有値の平方根に反比例した形態で、選択さ れた固有ベクトル内の各要素に探索範囲の幅を持たせるようにすることにより、送信 信号ベクトルの探索範囲決定の処理をさらに簡略ィ匕できる。
図面の簡単な説明
[0040] [図 1]二次元の実数の場合で示した固有値と固有ベクトルによる探索範囲限定処理 の例を示す図である。
[図 2]本発明の第 1の実施形態の MIMOデコーダの構成を示すブロック図である。
[図 3]二次元の複素数の場合で示した固有値と固有ベクトルによる探索範囲限定処 理の例を示す図であり、固有ベクトルが単一要素の場合を示して 、る。
[図 4]チャネル行列による固有値の例を示す図である。
[図 5]二次元の複素数の場合で示した固有値と固有ベクトルによる探索範囲限定処 理の例を示す図であり、固有ベクトルの複数の要素が存在している場合を示している
[図 6A]ヤコビ回転演算部の構成を示すとともにヤコビ回転を説明する図である。
[図 6B]ヤコビ回転演算部内の ω 極性検出部を説明する図である。
圆 6C]ヤコビ回転演算部内のュ-タリー行列演算部を説明する図である。
圆 6D]ヤコビ回転演算部内の 2 Θ極性検出部を説明する図である。
[図 6E]ヤコビ回転演算部内の 2 Θ復元部を説明する図である。
圆 6F]ヤコビ回転演算部内の Θ極性検出部を説明する図である。
圆 6G]ヤコビ回転演算部内の回転行列演算部を説明する図である。
圆 7]固有値 ·固有べタトル計算部の構成を示すとともにヤコビ回転による固有値と固 有ベクトルの演算を説明する図である。
[図 8]逆正接量子化回路(ASC ; Angle to Sine Converter)の構成を示すブロック図で ある。
[図 9]角度復元回路(SAC ; Sign to Angle Converter)の構成を示すブロック図である 符号の説明
101 チャネル行列計算部
102 一般逆行列計算部
103 固有値,固有ベクトル計算部
104 探索範囲限定処理部
105 最尤推定部
106 復号器
107 切り替えスウィッチ
108 受 f— フノアナ
601 ω 極性検出部
pq
602 ュニタリー行列演算部
603 2 Θ極性検出部
604 2 Θ復元部
605 Θ極性検出部
606 回転行列演算部
607 完了条件比較処理
701 固有ベクトル計算部
702 固有値計算部
703 ヤコビ回転演算部
801 901 メモリ
802 902 アドレス発生回路
803 極性付き加算器
804 906 レジスタ
805 比較器
806 極性選択器
807
808, 904, 905 カロ算器
809 選択器
903 極性付け回路
発明を実施するための最良の形態
[0042] 次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、本 発明の理論的な裏付けを解析的に示す。
[0043] MIMOシステムにおける MLDの計算量削減技術には、従来から種々のものが知 られているが、その複雑度は、送信アンテナから送信されたであろう送信信号べタト ルの探索範囲、あるいは送信ベクトル内各要素の探索範囲の適正な限定処理に帰 着する。そこでまず、その適正な探索範囲が電波伝搬環境の違いによって異なること を解析的に示す。
[0044] サンプリング時刻 iにおける n個の受信アンテナを持つ受信信号ベクトル y(i)を
'2(
y( = -(1 )
とし、 n個の送信アンテナを持つ送信信号ベクトル s(i)を
[0047] [数 8]
¾" 1
HeC ½x を用いて、
[0048] [数 9]
y() = H-S( + v( ί = \ 'Ν ー(3)
,, «]2
[0049] ここで v(i)は、 N (0,1 )を要素にもつベクトルである。
c nR
[0050] 以下、表記上の混乱のおそれがない場合には、 y(0などを、単に yのように書くこと がある。
[0051] このような条件で送信信号ベクトル s(i)を最尤検出(MLD)するのであるから、以下 のようになる。
[0052] [数 10]
arg min ■ (5)
seA "T
ここで、
-y^ y-s^ y-y^ H s + sff H^ H s
一方、
(s = sf•Hi-H-(s = s)={s = (Hi.H)"l-Hff-y}/.Hi.H.{s = (Hii-H)"l-Hff-y
ここで s = (llw Il)r' IIW y
= -: ^ · H . (H^ · Hjr1 }. (Hff . H)小 (Hff . HjT1 · Hff . y}
ここで ·,·Ω = Η" Η, thenla'f =n l
=s" .(ΗΛ .H).S_s" .H" .y- y" .H.s + y" ·Η·(Η" .H)— 1.H" -y
[0053] (6)式と (7)式の両辺を引き算すると、
[0054] [数 11]
(s- H" となり、 こ
I y-H s
が得られる。既に受信済みの受信信号ベクトル yの基で送信信号ベクトル sの最尤推 定を行うのであるから、(9)式の右辺第 2項は確定済みであり、また、
[0055] [数 12] s = (HFF HI ' HFF y ー(10) はムーヮペンローズの一般逆行列解で確定済みである。したがって (5)式は、以下の( 11)式に帰着する。
[0056] [数 13] arg min (s - s) . H H is-si = arg min is-s Ω-is-s) ここで S = (HFF H) 1 HFF y , Ω = Ηΰ H
[0057] (11)式にお!、てムーヮペンローズの一般逆行列解
[0058] [数 14] s
を中心に単位ユークリッド自乗距離の拘束条件の下で極小を与える
[0059] [数 15]
(")
は、以下のように、ラグランジュの未定乗数法を用いて解析的に求めることができる。 すなわち、
[0060] [数 16] 拘束条件式を^^ s— sj=0として φ(^-ή=[^-^)Η -(s-s)-l =0 ー(12)
[0061] この条件の下での評価関数を
[0062] [数 17]
/(s— として f(s~s)=(s-i)H -il-(s-s) ー(13) が得られる。したがって、定数えを用いて
[0063] [数 18] u = f (s-s)- λ· (s-s)
= (s-s)ff-a.(s-s)-A.((s-sf -(s-s)-l) "'(14) が得られる。この uを条件なしで極値にする
[0064] [数 19]
(s-s) を求めればよい。
[0065] ベクトノレ
[0066] [数 20]
(s-s) に関する微分は、共役導関数
[0067] [数 21]
によって解くことができ、
を満足する
[0069] [数 23] (s-s) を求めれば良いから、
[0070] [数 24]
£l-\s-s)= -( -s)
ここで S = (Hff .H)_1.Hff .y , Q = Hff .H … 6) が得られる。(16)式は、固有ベクトルと固有値の定義そのものに他ならない。
[0071] したがって、評価関数
を拘束条件
[0073] [数 26]
の下に最小 (最大)にするベクトル
[0074] [数 27]
(s-s)
は、 Ω ΗΗ·Ηの固有値え ,λ ,…,え に対応する固有ベクトル
1 2 η
の中にある。(16)式の両辺に左から
を乗算すると、
[0077] [数 30]
(s-sY -£l-(s-s)= A-(s-s)H -(s-s)= 〜(17) であるから、評価関数
[0078] [数 31]
/(s -s)—(s— s) . Ω .、s _ s) の最小値 (最大値)は、最小固有値 (最大固有値) λ ( λ )そのものであり、その時
min max
のべクトノレ
[0079] [数 32]
(s-s)
は、 λ (λ
min max )に対する固有ベクトルである。
[0080] 以上の関係を使って送信信号ベクトル sを最尤推定するわけであるが、実はこの問 題は NP完全問題として知られており、これ以上解析的に解くことは期待できない。そ こで探索によって解を見いだすことになる。
[0081] 今、エルミート行列 Ω =ΗΗ·Ηをスペクトル分解すると、
[0082] [数 33] n = Hff -H= ー(18)
ここで、 は固有値、 enは正規ィ匕された固有ベクトルであり、 {en}は正規直交系であ る。任意の送信信号ベクトル sに対して、
[0083] [数 34]
Λ'
(s-s) · Ω · (s - s) = > A„ · (s - s) . e„ - e„ · (s - s)
ここで = min{nTfnR]
[0084] Ωはエルミート行列であるから、その固有値 は、全て必ず実数で非負である [0085] 今、任意の cに対して
[0086] [数 35]
,s_s," · Ω · - s) = c2 を満足する送信信号ベクトル Sに対してスカラー値
[0087] [数 36] tn = (s - ήΗ - e„ « = 1~/V - (20) とすると、(19)式より、
[0088] [数 37] c = I, · ί, + λ
2 -
+■■■ + λレ W ΓΝ
'Λ'
.: 1=
ー(21)
( c 、 ,丄、 2
ノ 、 ' ノ 、Λ / ノ は超楕円である。したがって、
[0089] [数 38]
(s - s) = ,
は、 e方向での適当な距離を与えることになる。
2
[0090] すなわち、
[0091] [数 39]
、s_s) · Ω · (s -s)= c2 を満足する送信信号ベクトル Sは、ムーヮペンローズの一般逆行列解
[0092] [数 40]
を中心として固有値の平方根に逆比例する長さを持ち、軸が Ω =ΗΗ·Ηの固有べク トルで与えられる超楕円上に存在することになる。
[0093] 直感的理解の説明のしゃすさから二次元の実数の要素の場合で示した簡単な例 を図 1に示す。図 1より、
[0094] [数 41] s_S)" '(s— S) = c2以内の探索範固は、 = +ス 2 s_S)'e2|2 の軸が固有ベクトルで与えられる楕円となる。
[0095] [数 42] A1
[0096] [数 43]
(s_s =
となって e方向での最適な探索範囲を示す。すなわち、固有値の平方根に反比例す
2
る長さで軸が固有ベクトルで与えられる楕円上の探索領域 c2= -It +
1 1 f λ '|t I2 2 2 が
、最適な探索範囲となる。
[0097] 一方、従来の探索範囲は、全方位で探索を行っているため、図 2で記された円とな る。したがって本発明の固有値を使った探索範囲と同様の性能を従来の方法で出そ
うとすると、最適範囲である楕円を含む広い円の領域となって、探索範囲の適正な限 定処理がなされていないことが分かる。逆に同等の領域で探索を実行した場合、円 の半径が狭くなつて、本来の探索すべき領域が外れることによる特性劣化を生じるこ とになる。
[0098] これらの固有値並びに固有ベクトルは、電波伝搬環境を表すチャネル行列 Hより求 めたものである。したがって時々刻々と移り変わる電波伝搬環境で MIMOに適さな い偏りのある散乱環境に移ってきた場合、固有値分布が変わってくる。図 2の場合、 λ < λを仮定して書かれている力 電波伝搬環境が MIMOに適さない偏りのある
1 2
散乱状態 (アンテナ間の相関が出てくる状態であって、もはや i. i. d.チャネルではな い状態)になると、固有値の分布に広が生じる。すなわち図 2でいうならば、 λとえ
1 2 の差がさらに開いてゆくことになる。すると、本発明の固有値を使った探索範囲と従 来の全方位型の円の探索範囲との差がさらに広がる結果となり、同じ
[0099] [数 44]
(s - s) · Ω■ (s - s) = c2 の領域を確保しょうとすると、従来の方法では、円半径を増力!]させて MLDに近い複 雑度での対処を余儀なくされるか、あるいは同じ探索範囲で特性劣化を生じさせるか といった問題を生じることになる。
[0100] それに対して本発明の固有値を用いた方法では、必要最小限度の
[0101] [数 45] is - s ' Ω -、 s - s) = c- によって規定された最適な探索範囲となっているため、複雑度を増加させることなく 高性能で安定した品質を実現できるのである。
[0102] 以上、送信信号ベクトルの適正な探索範囲、あるいは送信ベクトル内各要素の適 正な探索範囲が電波伝搬環境の違いによって異なることを示した。
[0103] 次に、本発明の第 1の実施形態の MIMOデコーダの構成について説明する。図 2 は、この MIMOデコーダの全体構成を示すブロック図である。
[0104] MIMOデコーダには、 n個の受信アンテナ 108が接続している。 MIMOデコーダ
には、各受信アンテナ 108からの受信信号 (受信系列)が入力してチャネル行列 Hを 計算し Ω =ΗΗ·Ηを計算するチャネル行列計算部 101と、チャネル行列 Ηに関する ムーヮペンローズ (MP)の一般逆行列を計算する一般逆行列計算部 102と、チヤネ ル行列 Hの固有値及び固有ベクトルを計算する固有値'固有ベクトル計算部 103と、 一般逆行列計算部 102で計算されたムーヮペンローズ一般逆行列と固有値'固有べ タトル計算部 103で計算された固有値及び固有べ外ルとに基づいて探索範囲を限 定する処理を実行する探索範囲限定処理部 104と、受信アンテナ 108から受信系列 が入力し、探索範囲限定処理部 104で限定された探索範囲内で最尤推定を行う最 尤推定部 105と、信号系列の復号を行う復号器 106と、復号器 106への入力を切り 替える切替スィッチ 107と、を備えている。
[0105] ここでは特に図示はしていないが、送信側の n個の送信アンテナより送出された送
T
信信号ベクトルは、時々刻々と変化する電波伝搬路を経て、 n個の受信アンテナ 10
R
8に到着する。この入力信号である n個の信号を受信信号ベクトル yとして扱うが、送
R
信機力 電波伝搬路を経て受信機の RF (無線周波数)フロントエンド、さらに整合フ ィルタや白色化フィルタまでも含めて仮想伝搬路として扱い、その仮想伝搬路をモデ ルイ匕した仮想チャネル行列の乗算結果をもって受信信号ベクトル yとして扱ってもよ い。また、送受信機の不完全性もこの仮想チャネル行列に含ませて扱ってもよい。
[0106] この MIMOデコーダでは、電波伝搬環境などの移り変わりによってチャネル行列あ るいは仮想チャネル行列が変化した場合に、そのように変化したチャネル行列ある ヽ は仮想チャネル行列に応じて送信ベクトルの探索範囲が変化する。そのため、探索 範囲限定処理部 104は、ムーヮペンローズの一般逆行列解を中心として送信信号べ タトルが探索されるようにする力 その際、チャネル行列(あるいは仮想チャネル行列 )の固有ベクトルに対し、そのチャネル行列(あるいは仮想チャネル行列)の固有値の 平方根に反比例するように重み付けを行い、重み付けがなされた固有ベクトルによつ て探索範囲が決定されるようにする。
[0107] 次に、図 2に示した MIMOデコーダの動作について説明する。
[0108] 送信側は、チャネル行列 Hを受信側で推定できるようにするために、ユーザーデー タを送る前に、送信アンテナごとに異なる直交したパイロット信号を送信する。このパ
ィロット信号は受信アンテン 108で受信され、その結果、チャネル行列計算部 101は
Ω =ΗΗ·Η ー(22)
の計算が実行される。ここで Ηは、チャネル行列あるいは上述の仮想チャネル行列で ある。また同時に一般逆行列計算部 102は、この演算結果を用いて
(ΗΗ·Η)_1·ΗΗ 〜(23)
を計算し、固有値 ·固有べタトル計算部 103は、後述するヤコビ回転により、固有値 λ , λ ,.,., λ並びにそれに対応する固有ベクトル e ,e ,...,eを Ωより計算する。
1 2 n 1 2 n
[0109] 探索範囲限定処理部 104は、固有値'固有ベクトル計算部 103より送られてきた固 有値え , λ ,.,., λ並びに固有ベクトル e ,e ,...,eを基に、予め設定されてある探索
1 2 n 1 2 n
領域定数
[0110] [数 46]
(s - s) ■ Ω · (s - s) = c
2 に合うように、中心を原点とした探索範囲を計算する。すなわち探索範囲限定処理部 104は、上述のように各固有ベクトルを軸として固有値の平方根に反比例する長さで [0111] [数 47]
によって形成される超楕円を決定する。これらの処理は 1フレーム当たり 1回行えばよ いので、後述するように毎回の処理が必要な最尤推定 (MLD)に比べて、相対的に ゆっくりした処理が可能である。
[0112] 次に、送信機からユーザーデータが送られて来るので、探索範囲限定処理部 104 は、受信信号べ外ル yと一般逆行列計算部 102からの演算結果である (ΗΗ·Η)_1·ΗΗ を用いて、一般逆行列解 (ΗΗ·Η)— i 'H^yを計算し、その結果を探索範囲の中心値
[0113] [数 48] = (nH n) HH y ...(24) として用いる。これによつて最終的な探索範囲が決定したことになる。その後、最尤推
定部 105は、探索範囲限定処理部 104で設定した探索範囲内で探索を実行し、最 も近い送信信号ベクトルの絞り込みを行い、必要に応じて対数尤度比として復号器 1 06へ出力する。また限定された探索範囲内に推定対象の送信信号べ外ルが存在 しな力つた場合、切り替えスィッチ 107が復号器 106への入力を探索範囲限定処理 部 104へ切り替え、探索範囲限定処理部 104において計算されたムーヮペンローズ の一般逆行列解 (ΗΗ · H)"1 · HH · yある ヽは必要に応じて対数尤度比化した信号が復 号器 106へ出力されるようにする。
[0114] 以上の説明では、ムーヮペンローズの一般逆行列解を探索範囲の中心あるいは探 索範囲内の送信信号ベクトルが存在しな力つた場合の推定値として用いていたが、 さらに高性能で安定した品質を実現するために、(25)式で計算される最小平均自乗 誤差 (MMSE規範)規範に基づく処理をムーヮペンローズの一般逆行列計算と入れ 替えてもよい。
[0115] [数 49] ー(25)
[0116] 次に、本発明の第 2の実施形態の MIMOデコーダについて説明する。第 1の実施 形態では、直感的理解と説明のし易さから実数の要素の場合で説明したが、ここで は、二次元変調も考慮した複素数の要素の場合で説明する。本実施形態の特徴は、 ベクトルとスカラーの組み合わせによる低複雑度の実現方法を示した点である。
[0117] まず簡単な例を想定して説明する。行列の要素が複素数となるので、説明の都合 上、各固有ベクトルが単一要素の直交関係にある場合とし、二次元のチャネル行列 を例にとって説明する。
[0118] [数 50]
H = :で /lj < L, •(26)
を考える。 Ω = Η
Η · Ηより、
が得られ、これより固有値と固有ベクトルは、
の関係から、以下のようになる。
[数 52] 第 1の固有値及び固有べクトル;
0
— 0·
第 2の固有値及び固有べクトル;
y
[0121] この場合、送信信号ベクトルの探索は、要素ごとに独立に行うことができ、
[0122] [数 53]
とすると、上述の説明より最適な探索範囲は固有値の平方根に反比例するから、第: の固有値及び固有ベクトルすなわち Xに対しては、
[0123] [数 54] の探索範囲
第 2の固有値及び固有ベクトルすなわち yに対しては
[0124] [数 55] の探索範囲 e2
となる。この関係を図 3に示す。図 3において Reは実軸を示し、 Imは虚軸を示してい る。図 3では、 λ < λを仮定して書かれているので、要素 Xに対する探索範囲が要
1 2
素 yに対する探索範囲に比べて広くなつている。二次元変調された送信信号ベクトル の第 1の要素 Xに相当する信号点をこの複素平面上で探索することになるが、要素 y に対する探索範囲が狭くなり、低複雑度で探索が効率的に行われることが分かる。二
次元変調された送信信号ベクトルの第 2の要素 yにつ 、ては、この狭 、探索範囲であ る複素平面上で信号点を探索するだけでよ!、。
[0125] 次に、チャネル行列内要素が互いに関連しあった状態で探索範囲の限定を行う場 合、すなわち、上述の各例とは異なり固有値ベクトルの複数の要素成分が存在して いる場合について、具体的な実施形態を基に説明する。この実施形態は、最小固有 値に対してはベクトルで、その他の固有値に対してはスカラーで各固有値の平方根 に反比例する如く重み付けを行うことにより、固有ベクトルの探索範囲決定のための 機構を簡単ィ匕して回路規模の削減を図ったものある。説明のし易さを考慮して、以下 では二次元のチャネル行列 Hで説明する。
[0126] [数 56] e, ]
H = ここで < (28) とする
と、 · Ηより、
[0127] [数 57]
2 _ exp[j θ1 ]- {1 + exp[j φ\ )
= 0 - (30)
exp [- y ^ ]■ (l + exp [- j φ] ) 2 - λ
の関係より、
-(31 )
[0128] これをえについて解くと、 λ , λが以下の様に求まる c
1 2
[0129] [数 58] = 2 ±
= 2 ± 十 2 · cos φ - (32)
[0130] このときの、 φを + 180度から一 180度まで変化させたときの φとえ , λ との関係を
図 4に示す。図 4から分かるように、え とえ の差の大きくなる状態が、 φの小さい領域
1 2
で存在する。
[0131] この固有値えに対する固有ベクトル
[0132] [数 59]
は、
[0133] [数 60]
2 - λ
- (33) exp [-ゾ 6*ι ] · + exp [- j φ] ) 2 - λ
の関係より、 (32)式を用いて、
となる。したがって、
[0134] [数 61]
第 1の固有値及び固有べクトル
第 2の固有値及び固有べクトル;
が得られる。送信信号ベクトルの最適な探索範囲はこの固有ベクトルを固有値の平 方根に逆比例する形で重み付けした軸による楕円となる。したがって任意の Cに対し て
[数 62]
で決定される楕円内を探索範囲とすればよいことが分かる。
[0136] しかしここでは、もっと簡単化して低複雑度で実現した実施形態を説明する。すな わち、もっとも影響力のある最小固有値に対してはベクトルで、その他の固有値に対 してはスカラーで、各固有値の平方根に反比例する重み付けを行い、探索範囲限定 処理の回路規模の削減を図った方法である。
[0137] 探索範囲内の観測点を互いに直交する上述した固有ベクトル e ,eを軸として表現
1 2
すると、
[0138] [数 63]
となる。(37)式の両辺に左力も e
Hを乗じて exを、また e
Hを乗じて βを以下のように得 ることがでさる。
[0139] [数 64] a - tx * is - s)
(38) これは上記の t , tに相当するものであるから (複素共役になっているが本質的に同
1 2
じものである)、上述と同様の同じ楕円の探索範囲を構成する。
[0140] そこで複素平面上の単位円内に限定した複素変数
を用いて上記関係を表現し直すと、以下のようになる c
[0142] [数 66]
.で λ^ λ, •(39) ここで、(39)式は複数のベクトルを使った任意の組み合わせによる構成となるものであ るから、(39)式を処理することとなる探索範囲限定処理部の複雑度が大きくなる。そこ で探索範囲限定処理結果への寄与度の少ない (39)式の右辺第 2項をスカラー化す ることとして複雑度の削減を考えると、以下のようになる。
ここで λχ < Λ -,
したがって is-sl
:で λ, <λ
2 -(41)
■ + b-
となる。この結果をチャネル行列の φ =36度の状態で見ると、図 4より、 λ =0. 1、 λ
1
=3. 9である。したがって、探索用の信号ベクトル
の要素 Xについての探索範囲は、図 5の要素 Xに示すように、そのほとんどが λ 0. 1で決まる成分となって、半径が
[数 69]
の円の領域となる。それにスカラー成分である
[0146] [数 70]
1 c
2 Λ2 が少し 1わるだけで要素 Xに対する探索領域は決定される。このとき、要素 Xに連動し て要素 yの探索も行われる。複素平面上における要素 Xの探索点を
[0147] [数 71]
1 c
厂- 厂 -" ここで a = e とすると、連動して行われる yの探索は、
[0148] [数 72]
a · exp を中心に半径
あるいはより厳密【
[0149] [数 73]
で全方位探索を行うことになる。図 5の要素 に示す領域がそのときの探索範囲であ る。
[0150] 図 5より、要素 に連動して要素 の探索範囲は、半径
によりかなり絞り込まれた領域になることが分かる。このように絞り込まれた領域を探索 範囲に限定しても
[0152] [数 75]
(s - s) · Ω■ (s - s) < c2 を満たす領域は全て網羅して 、るのである。
[0153] 本実施形態では、探索範囲の設定に際し、最小固有値に対応する固有ベクトルの みをベクトルとして扱い、その他の固有値に対してはスカラー値で探索範囲に寄与さ せることによって処理規模の削減が図られ、さらに、同ベクトルとしての扱いは、ベタト ル内各要素がベクトルとしての関係を維持しつつ他の固有値に対するスカラー値を 各固有値の平方根に反比例した形で各要素の探索範囲に幅をもたせることによって 、さらに低複雑度で具現ィ匕が可能となっているのである。
[0154] 次に、図 2に示した MIMOデコーダの固有値.固有ベクトル計算部 103で行われる
、 Ω力 ヤコビ回転により固有値え ,λ ,.,.,λ並びにそれに対応する固有ベクトル e
1 2 n 1
,e ,...,eを計算する方法について説明する。すなわち、このヤコビ回転を低複雑度で 高速に実現する固有値 ·固有べタトル計算部を持つ MIMOデコーダの実施形態を 説明する。他の実施形態と異なる特徴的な部分について詳細に説明する。
[0155] 本実施形態の特徴は、固有値 ·固有べタトル計算部においてヤコビ回転を実施す る際に、回転角を 2の負の冪 (べき)に対する複数の逆正接 (アークタンジ ント; arct anまたは tan の極性付き和として分解し、このように分解した時に得られる極性を 基に構成された 2の負の冪の線形和を要素とする回転行列を用いて、ヤコビ回転を 実施した点にある。本実施形態の構成を説明する前に、まず、ヤコビ回転によって固 有値並びに固有ベクトルを得る過程を説明する。
[0156] 固有値'固有ベクトル計算部の入力は、 Ω =ΗΗ·Ηである。ヤコビ回転は、この Ωに 対して、
Ω ·Χ= λ ·Χ ---(42)
となるスカラー値である固有値 λと固有ベクトルである Xとを出力する処理である。
[0157] (42)式の両辺に左から正則行列 Μを乗ずると、
Μ· Ω ·Χ= λ ·Μ·Χ 〜(43)
となる。ここで、 y=M'Xとおくと、 X=M_1'yであるから、
Μ· Ω -M_1-y= λ -y ---(44)
が得られる。すなわち、 Ωを Μ· Ω ·Μ_1に置き換えても固有値並びに固有ベクトルは 変わらな 、ことが示されて 、る。この変換を何回力繰り返して簡単な形に変形すること を考える。今、この正則行列 Μとして、次のような要素を考える。
[0158] [数 76]
= j = q のとき
qのとき)
Ρのとき ー(45)
とき
とき ここで p, qは行番号である。角度 Θの決め方は後述する。 Mを図解すると以下のよう
になる。
[0159] [数 77]
第 P行
仃
第 ρ列 第 q列
[0160] 実際に計算してみれば分力るように、行列 Mには以下の性質がある。
[0161] [数 78]
-(46) すなわち、 Μ·Μ
Η = Ιであって、
、(44)式における逆行列をわざわざ計 算する必要がなぐ以下のような簡単な計算で済ませることができる。
[0162] [数 79]
•(47)
[0163] (47)式に対してさらに右力も Μ— i = MHを乗じて、
[0164] [数 80]
-n + n …
…
一 n,^ ,。」, …
-(48)
を得る。 :の変換後の行列 Μ · Ω · Μ— 1を新たに new Qとおくと、以下の関係が成り立 つ。
[0165] [数 81] new Ω = Ω ϋ ( J≠ p,q、
new Pi cos θ + Ω ({j sin θ (ゾ≠ ρ, q)
new C0S 9 ≠
new Ω cos θ + Ω iq sin θ ( ≠ ρ, q)
new sin θ -h Ω iq cos θ (ί≠ p, q)
new Ω = Ω cos 2 θ + Ω qp sin θ cos θ + Ω Μ cos θ sin θ + Ω w sin 2 θ
= Ω ^ cos 2 θ + (Ω Μ + Ω qp )sin θ cos θ + Ω qq sin 2 θ
new Ω
ρ(} =— Ω
ρρ cos θ sin θ - Ω
qp sin
2 θ + Ω
pq cos
2 θ + Ω
(fq sin θ cos θ
new Ω 一 Ω pj} sin θ cos θ + Ω cos 2 θ - Ω sin 2 θ + Ω qq cos θ sin θ
= (Ω ^— Ω pp )sin θ cos θ + Ω ^ cos 2 θ - Ω ^ sin 2 θ
new Ω ^ = Ω ρρ sin 2 θ— Ω cos θ sin θ一 Ω pq sin θ cos θ + Ω ^ cos 2 θ
= Ω sin 2 θ - ίΩ + )sin θ cos θ + Ω cos 2 θ
(49) この新たな行列 new Ωもエルミート行列であるから、対角要素は全て実数となる。しか し非対角要素については複素数の場合もある。ヤコビ回転では、全ての非対角要素 の内の任意の要素である new Ω , new Q を" 0"になるように Θを決める。非対角要 素は複素数の場合もあるので、まず対象となる要素を実数に変換して力もヤコビ回転 を行う方法をこの実施形態では用いることにする。 Ω 及び Ω をターゲットとしている のであるから、以下のュ-タリー行列 M (― ω )を用いる。ここで、
[0166] [数 82]
である。
第 p列
•(50)
[0168] Μ(-ω )による変換後の Ωは、
[0169] [数 84]
1(- ).Ω.Μ (- f
となり、これもエルミート行列であるから、上述の関係力 置き換えても、固有値並び に固有ベクトルは変わらない。また対角要素はそのままで、ターゲットとしている Ω 及び Ω の変換後の値はともに等しい実数となる。この変換後の行列を Ωとして扱うも のとする。すると (47)式から (48)式の変換によって得られた new Ωのターゲット要素は、 (49)式より、
[0170] [数 85]
Ω,. -Ω.
new Ω„„ = new Ω,.„ = sinie)+ lp lcosie) ー(52)
2 となる。ヤコビ回転はこの値を" 0"になるように Θを決めるのであるから、
[0171] [数 86]
sinie) Ω 2Ω— 2Ω—
θ =— arctan\ ■(53) cos(20) Ω,, -Ω„ 2 Ω,, -Ω
2 となる。この回転角 Θを使ったヤコビ回転の具体的手順は、本実施形態では、 Ωの 非対角要素の中でその絶対値が最大のものを上述のターゲット Ω 及び Ω とし、そ して新しい変換後の newQ , newQ カ ' 0"になるように 0を決めるという操作を非対 角要素が十分小さくなるまで繰り返す。すると固有値は、変換後の新しい newQの対 角要素上に並ぶようになる。この反復処理は必ず収束する。その収束過程を以下に 説明する。
[0172] 今、 1回分の変換後の新しい new Ωの行列を Bとすると、
[0173] [数 87]
B" ·Β = (Μ·Ω·Μ"1)σ ·ΙΜ·Ω Μ"1)=ΙΜ·Ω·Μ")Ζί ·(Μ·Ω·Μ")=(Μ·Ω" ·Μ")·(Μ.Ω.Μ")
=Μ Ω" Ω Μ" ^ ここで Μ"=Μ—リ ■••C54) 行列のトレースの関係として、任意の正方行列 A, Bについて、
tr[A-B]=tr[B-A]
の関係があるから、
[0174] [数 88] か |BFF · B] = tr\M ilH il MH\ = tr\MH · Μ · · Ω| = tr\ilH ••(55) が成り立つ。また、任意の正方行列 Aについて、
[0175] [数 89]
したがって、 か [B . B】 = |b I , /Γ[ΩΓ .Ω] =∑∑|Ω ー(57)
./=1 i=l 7=1 ''=ι であるから、次の結果を得る c
[0176] [数 90]
ΣΣ| -(58)
[0177] (58)式は、変換後の新しい new Ωの行列の全ての要素のパワー和が変換前の行列 の全ての要素のパワー和と同じで一定の値に保たれて 、ることを示して 、る。(49)式 と (58)式の関係を用いると、
[0178] [数 91]
= Ω;/ ( p,q、
= Ωρ] cos θ + Ω¾. sin θ U≠ p,q、
-< κ = -Ωί; sin9 + Ω^. cos6 U≠ p,q) (59)
κ =Ω. cos6 + Q. sin6 (/≠ p,q)
= -Ω. sinQ + Ω. cos9 (i≠ p^q) が得られる。これらの式のうち、最初の 1式は、各要素の変更がないから、そのパワー 和も変わらない。次の 2式は、
となって、そのパワー和は変わらない。次の 2式も、
[0180] [数 93]
+ ii
l *COSG)
= \nlp\2 +\nlq\2 (i≠P,q) 〜(61) となってそのパワー和は変わらない。そして残りは、
[0181] [数 94] bpr = Ώ.1ψ cos2 Θ 2 | sine cos θ + Ω¾ϊ sin2 θ = —— ^ +—^—— ^cos(2e) |Ω Jsin(2e) fi„ =«^Ω¾, =(Q?i-Qw)sinecose + |QM|(cos2e-sin2e sin 2Θ + Ω..„ cos 2Θ
(62)
, , Ω +Ω Ω -Ω , , , ,
Θ-2 Ω」 sin Θ cos θ + Ω cos2 Θ = —— ^ - —— ^cos(26)- Ω J sin(2e) であり、以下の式の組み合わせを見ると、
[0182] [数 95]
K\+K\ +2 \
Ω„ +Ω„, ( Ω„ -Ω,. ヽヽ Ω +Ω 1 f
-cos(2e)+|Qw|sin(2e) 一 Ω -Ω
8(2θ)+|Ω„ lsin(29,
2 ) 2 2 2
'Ω„„— Ω„
+ 2|
m ίη(2θ)+|Ω
0φθ)| (· 全ての項が実数) (63)
Ω +Ω ^
+ 2ΙΩ...Ι =Ω. +Ω..., +2ΙΩ となって、
が導かれる。上述したように、 b =0となるように Θを選んだのであるから、結局
が得られる。すなわちこの変換によって対角成分のパワー和が増加したことになる。 一方、行列全体の要素のパワー和は、(58)式の関係に示されるように、変わらずに 定に保たれているのであるから、非対角成分のパワー和は、結局この増加した分だ け減少したことになる。したがって非対角要素のパワー和は、
[0183] [数 96] という表記を用いて、 上式より、
ΣΝ2=Σ - Ά\2+Κΐ+Κΐ =Σ Γ-∑Ω"2+- 2+Ω™2+2Ι ,Γ =Σ Γ-2ΙΩ
■(65) となる。ここで、 p, qは、
[0184] [数 97]
Ω」 = max|Q •(66)
' '*)
となるように選んだのであるから、少なくとも、
である。非対角要素の全体のパワー和は、
[0186] [数 99]
-
(68) となる。このような回転の繰り返しにより非対角要素は全体として減少し、 "0"に収束 する。
[0187] すなわち、 Ωの非対角要素の中でその絶対値が最大のものをターゲット Ω 及び Ω とし、そして新しい変換後の new Ω , new Q を" 0"になるように Θを決めるという操 作を非対角要素が十分小さくなるまで繰り返す。この反復過程において、固有値は、 変換後の新しい行列 new Ωの対角要素上に並ぶようになるのである。この反復処理 を式で表すと以下のようになる。
[0188] [数 100]
■■ . Mi%J- M (― »«2 )· Μ , )· M (- , ) ω μ (- f · M( , )· M (- Τ · Md 一
ここで Μは、
[0189] [数 101]
- · ·Μ )· Μ (- ,― )■ Μ(ΘΜ] )■ Μ (- ωΜ)= Μ - -, (70)
Μ( θ pq)は、
[0190] [数 102]
一 Ω
[0191] 次に、固有ベクトルの算出を説明する。まず、(69)式を以下のように簡略ィ匕して書き 直す。
[0192] [数 103]
Μν ····· Μ, ·Μ, Ω Μ,
[0193] (74)式から最小固有値え を与える固有ベクトル e を抽出するために、(74)式の M
• Ω ·Μ Λの両辺に左から ΜΗを乗ずる。(46)式及び (50)式より、 ΜΗ=Μ— 1である力 ら、
[0194] [数 104]
となる。 :で、 MH= [m m … m ]とすると、
[0195] [数 105]
m, ιηΊ
となる。したがって、 Ω ·πι = λ ·πι (ここで i= 1,2,..., η)でこの中から最小固有値え
1 1 1 min に対する固有値ベクトル mを選択すれば、それが求める最小固有値に対する固有
m
ベクトルである。他の固有ベクトルも同様である。すなわち MHの列ベクトルを抽出して いる。(74)式より、 ΜΗ = Μ Η·Μ Η · · ·· · Μ Ηであり、ヤコビ回転の反復処理と平行して
1 2 Ν
逐次的に
[0196] [数 106]
ΜΗ =匿 )畏" )■ ) --… )- IVl„■" )■ Μ、 " ) のように計算している。この計算も、後述する 2の負の冪の線形和を要素とするヤコビ の回転行列により低複雑度で具現ィ匕できるので、本実施形態の本質は、後述する部 分となる。
[0197] 以上がヤコビ回転によって固有値並びに固有ベクトルを得る過程の説明である。
[0198] 次に、この回転角を 2の負の冪に対する複数の逆正接の極性付き和として分解した 時に得られる極性を基に構成された 2の負の冪の線形和を要素とするヤコビの回転
行列により低複雑度で具現ィ匕した実施形態について説明する。
[0199] まず、ヤコビ回転での処理の順を追って、低複雑度で具現化した本実施形態を説 明する。
[0200] (48)式に示すように、ヤコビ回転の前半の処理で変化を受けるのは p行目と q行目の みである。またそこで用いられる変換対象の行列の成分も、 p行目と q行目のみである 。そこで、 p行目と p行目をベクトルとして抽出し以下のように表す。
cosG + Q(/1 sin9 Ω 08θ + |Ω ηθ w|cos0 + Qf/(/sin9 cosG + Q(/n sinG -Ωη| βίηθ + Ω,, cosG -Qnnsin6 + IcosO — |Ω」 sin θ + cos Θ Ω„.. βίηθ + Ω—.. cos6
•(76)
[0202] ここで、上記の 2 X 2とした回転行列を R( Θ )とおき、以下のように表す。
[0203] [数 108]
1 1 tan^
R (の =
•••(77) cos cos2 Θ
1 tan^
:で <6><+—
VI + tan26» tan 6» 1 また上記の Θを逆正接で量子化して、以下のように表す。
[0204] [数 109]
[0205] 回転行列は、
[0206] [数 110]
cos92 sin92 cosG! cos02 -s \θι sin θ2 cosGj sin02 +sin θ: cos02
-sin9, cos6. -sin Θ. cosBo -sin Θ, cosBo一 )s9, sin - sin9, sin +cos0, cosG cos(e, +θ2) sin(9, +θ2)
= R(01 +θ2)
'•'(79) であるから、
R )=R •(80)
したがって、回転行列は以下のように分解することができる。
[0207] [数 111]
- Qk )
[0208] (81)式にぉ 、て、ビット精度を Κビットまでとし、
を分割し、複数個ごとにまとめてグループィ匕を行う。この実施形態では、 2個ごとにま とめてグループ化しているが、 3個以上をまとめても同様である。以下、 2個をグルー プとしてまとめた例で、
[0210] [数 113]
,(82)
となる。これを (76)式に適用すると、
[数 114]
ー(83) となって、本来、 Κ回行われる逐次処理が、 ΚΖ2回の繰り返し行列処理で完了でき る。すなわち 2倍のスピードを実現できることになる。これは、説明のしゃすさから 2個
ごとにまとめてグループィ匕した実施形態だ力もであって、例えば、 4個ごとにまとめて グループィ匕した場合ならば、 4倍のスピードで実現できることは 、うまでもな 、。
[0212] また、グループィ匕した各繰り返し処理のうち、任意の 1回の処理を見てみると、複数 の極性 (この場合は s ,s )を基に構成された 2の負の冪の線形和を要素とする行
2k' 2k'+l
列演算となっている。 2の負の冪の線形和は、それを求めるためのハードウェア回路 を構成した場合に、回路上配線の入れ替え部 (スィッチ)と加算器のみで実現でき、 回路規模が一般に大きい乗算器を必要としない。したがって、複雑でない回路を用 V、て高速での処理が可能となるのである。
[0213] 以上が、ヤコビ回転の前半の処理である。次に後半の処理について説明する。 (48) 式に示すように、ヤコビ回転の後半の処理で変化を受けるのは、 p行目と q行目及び p 列目と q列目のみである。また、このヤコビ回転が行われる前に、ュ-タリー行列 M( ω )によって、(51)式に基づくターゲット要素 Ω 及び Ω を等しくする処理が行わ れている。その結果得られる行列もまたエルミート行列である。したがって (48)式から 分力るように、 4つの対角要素を除き、全ての p列目と q列目の成分力 ¾行目と q行目 の成分と複素共役の関係になる。すなわち、上述の計算結果の虚数部の符号を変え るだけで、そのまま使えることになる。残る 4つの成分の計算も、上記と同様にグルー プ化による高速ィ匕が可能であって、上述の実施形態と同様に、 2個ごとにまとめてグ ループ化した場合には、以下のようにして行われる。まず、変換前の 4つの要素を行 列として表すと以下のようになる。
[0215] この行列の要素は、全て実数である。これにより、残る 4つの対角要素の後半の処 理は、変換後の行列もエルミート行列であってこの 4つの要素に対しては実数である から、対称行列となることを考慮すると、
(85) となる。したがって、上述と同様に、 2倍のスピードを実現できている。また 4個ごとまと に纏めてグループィ匕した場合ならば、 4倍のスピードで実現出来ることは 、うまでもな い。 1回での処理を見ても、複数の極性 (この場合は、 s ,s )を基に構成された 2の
2k 2k +l
負の冪の線形和を要素とする行列演算となっているので、ハードウェア構成として、 回路上配線の入れ替え部 (スィッチ)と加算器のみで実現でき、低複雑度で高速ィ匕 が可能である。
[0217] このように複数個まとめてグループィ匕した場合、グループごとの極性 Sを複数個まと
k
めて供給する必要がある。例えば上記の例では、 s ,s の 2つを一度に供給する必 要がある。(78)式より
[0218] [数 117]
であるから、 θ -∑ (s · Θ + s +1 · Θ +1) - (s2k, . tan—' l—lk' + s2k,+l . tan—' 2—
k'=0
+ 1, + 1 + 1, - 1 ここで tan B^ - 2~ , s2A,, s2
- 1, + 1 - 1, - 1 ー(87) となって、 4つの値ごとの逐次比較による更新で、 Θを逆正接で量子化できる。
[0219] ここでこの Θは、(54)式より、ターゲット要素を" 0"になるように設定されたものである から、
である。(88)式より Θを求め、(87)式により逆正接で量子化するといつた方法になるが 、もっと直接的なやり方を含め、 2通りの実施形態を説明する。その前に、逆正接演 算によって Θを求める方法を説明する。
[0221] (81),(82)式より、回転行列を用いた以下のベクトル操作を考える。
[0222] [数 119]
X cos Θ
π 1一
[0223] (89)式の各 k'における逐次処理
[0224] [数 120]
の過程で yに相当する要素を、極性 s ,s の選択の基で" 0"にもっていくことを考え
2k 2k +l
る。
[0225] 極性 s ,s は、それぞれ" + 1"ど 1"の二値をとるから、組み合わせとして 4種
2k' 2k'+l
類有り、その中から最も" 0"に近い組み合わせを用いて、(90)式の更新を繰り返す。 すると、(89)式の
[0226] [数 121]
の関係より、 0 = sin Θ +t- cos θ、すなわち
[0227] [数 122]
sine _
COS 0
となるべく回転角 Θが結果として設定されることになる。この Θは、上述の説明より明 らかなように、逐次処理における個別の回転角の総和であり、極性 s ,s によって、
2k' 2k'+l
[0228] [数 123]
Θ =∑(¾■ · ΘΜ, + ·θ2,,+1 ) = —(91 )
として得ることができる。 tの逆正接である Θ =tan—
1 を求めたい場合には、(89)式の 初期値として tを使い、(90)式による逐次処理を、 yが" 0"になるように極性 s ,s を
2k' 2k'+l 選択し続けて実行することによって、最終的に (91)式により求める Θが得られるのであ る。この実施形態も、 2の負の冪の線形和を要素とする行列演算となっているので、 回路上の配線入れ替え部 (スィッチ)と加算器のみで実現でき、回路規模の大き!ヽ乗 算器は使わない。また、本来は K回行われるはずの逐次処理が KZ2回となるので、 低複雑度で高速ィ匕が可能となるのである。以上を基に 2通りの実施形態について説 明する。
[0229] [I] (88)式より 2 Θを求め 1ビットシフトして Θとした後,(87)式より極性を求める方法
(88)式より上記の方法で得ることができるのは、
[0230] [数 124]
〔 -ω
とおいて 2 Θなので、 1ビットシフトして Θとした後、(87)式による逆正接による量子化 で極性 s ,s を得る。
2k' 2k'+l
[0231] [II] 直接的に Θの逆正接の量子化極性をグループごとに求めると同時に、それを ヤコビ回転によどみなく用いる方法:
(88)式より
[0232] [数 125]
tan 29 = である。 一方、
Ω„ - Ω,. sin 29 2 sin Θ cos Θ 2 tan 9 ■1 ± ·χ/卜 tan2 26 tan 29 tan 6 •(92) cos 20 cos2 Θ - sin2 Θ 1 - tan2 Θ tan2G
(ここで、 根号の前の土の符号は θが存在する範囲 (象限) によって決まる) の結果を tとして用い、(90)式による逐次処理を行うと、最後の結果を待たずに、その 途中結果の極性 s ,s を (83)式や (85)式において
[0233] [数 126]
のように逐次的に計算される回転行列の極性 s ,s に、そのまま用いることができる
[0234] [I] , [II]のいずれの方法を用いてもよい。なお、これらの手法は、ュ-タリー行列 M (― ω )の計算にも、下記のようにして用いることができる。
[0235] (52)式における M (― Ω )による Ωの変換にお!、て、ュ-タリー行列を左力 乗ずる 場合と右から乗ずる場合があるが、これらは、複素共役関係で行ベクトルに作用させ るか列ベクトルに作用させるかの違いのみであるので、ここでは、左から乗ずる場合 で説明する。同様なことは、右力 乗ずる場合の処理にも当てはまる。すなわち、
[0236] [数 127]
ここで w ...(94) において、変化を受けるのは P行目のみであるから、その P行目のみを実数部と虚数
部の二次元の複素数ベクトルとして抽出し、以下のように表現する。
[数 128]
V · t ,
^ 薩
Λ'_ ■ y 0 _- sin 薩 ■ y
ここで ^ ]w = cos ω <1 ゾ J y
= +ゾ • = cos(ropq) - jsin(ropq)J- \xpi + )ypi
cos(topq) + ypi - sin((Bpq))+ j (- xpi - sin(ropq) + y≠ . cos(ropq (95)
fぶ = ■ cos(copq) + ypi - sin(copq)
1 y≠ ' = sin(ropq ) + y≠ - cos((Bpq ) の関係である。この複素数を演算している行列の要素は、全て実数である。上述と同 じ方法を採用することで、
[0238] [数 129]
•(96) となり、上述同様に 2倍のスピードを実現できている。また 4個ごとになとめてグループ 化した場合ならば、 4倍のスピードで実現出来ることはいうまでもない。 1回での処理 を見ても、複数の極性 (この場合、 s ,s )を基に構成された 2の負の冪の線形和を
2k 2k +l
要素とする行列演算となっていので、ハードウェア構成として、回路上配線の入れ替 え部 (スィッチ部)と加算器のみで実現でき、低複雑度で高速ィ匕が可能である。
[0239] このように複数個まとめてグループィ匕した場合、グループごとの極性 Sを複数個まと
k
めて供給する必要がある。例えば上記の例では、 s ,s の 2つを一度に供給する必
2k' 2k'+l
要がある。ュ-タリー行列 M (— Ω )による変換の場合、ターゲットの
[0240] [数 130]
Ω ,, = |Ω w | exP [· · ] = Q P * を打ち消す位相廻りであるから、
となる。この場合、(88)式と違って 1Z2の係数がないので、 ω の逆正接の量子化極 性をグループごとに直接求めることができるとともに、同時にそれを (96)式の逐次回転 によどみなく供給できる。すなわち、(89)式において
とおき、極性 s ,s の選択の基で yを" 0"にもっていくように (90)式の逐次処理を行う 極性 s ,s は、それぞれ、"- "ど ' 1"の二値をとるから、組み合わせとして 4種 類有り、その中から最も yが" 0"に近 、組み合わせを用いて (90)式の更新を繰り返す
。更新を行うたびに得られた極性 s ,s 力 (96)式に基づいて更新動作にしたとき
2k' 2k'+l
に供給する値となる。したがって、(90)式による逐次処理の完了を待たずに、その途 中結果であるところの極性 s ,s を
[0243] [数 133]
' 2_リ.2-
. 2— . 2_2A
の逐次的処理にそのまま用いることができる。これらの処理は、 2の負の冪の線形和 を要素とする行列演算となっているので、ハードウェア構成としては、回路上配線の 入れ替え部 (スィッチ)と加算器のみで実現でき、低複雑度でグループ化による高速 化が可能である。
[0244] 図 6Αは、以上の関係を基にして構成されるヤコビ回転の処理を示している。図 6Α において、図示左側はシーケンサーによるフロー処理を示しており、図示右側は、ャ コビ回転演算を行うヤコビ回転演算部としてハードウェアで構成されたブロックを示し ている。ヤコビ回転演算部は、 ω 極性検出部 601と、ュ-タリー行列 Μ (— ω )の演 算を行うュ-タリー行列演算部 602と、 2 Θの極性を検出する 2 Θ極性検出部 603と 、 2 Θを復元しシー多を算出する 2 Θ復元部 604と、 Θの極性を検出する Θ極性検出
部 605と、回転行列
[0245] [数 134]
の演算を行う回転行列演算部 606と、を備えている。ヤコビ回転演算部は、図 7を用 V、て後述するように、固有値 1 ·固有ベクトル計算部 103内に設けられて 、る。
[0246] 次に、このヤコビ回転演算部の動作を説明する。
[0247] 図示されるものは、ヤコビ回転を行うものであるから、まず Ωの非対角要素のうち、 絶対値の最大のものをターゲット Ω として選択する (ステップ 610)。選択した要素が 複素数の場合、ュ-タリー行列 M (— ω )による演算が必要になる (ステップ 611)。 そのためのブロックが、 ω 極性検出部 601とュ-タリー行列演算部 602である。 ω 極性検出部 601は、(89)式に (98)式を適用して、極性 s ,s を算出する。図 6Bは、
2k' 2k'+l
ω 極性検出部 601で行われる計算処理を示している。ュ-タリー行列演算部 602 は、 ω 極性検出部 601で得られた極性 s ,s を基に、 M (— ω ) · Ωの演算を行い pq 2k, 2k,+l pq
、さらに、変化対称の行ベクトルを計算し、さらに左からの行列演算で変化対称の列 ベクトルを計算する。図 6Cは、ュニタリー行列演算部 602で行われる計算処理を示 している。これらの処理は同様の処理なので、行ベクトルのみの説明となっている。
[0248] 本実施形態では、乗算器を使うことなく 2の負の冪の線形和を要素とする行列演算 を行うこととし、回路上配線の入れ替え部 (スィッチ)と加算器のみで行列演算を実行 するように構成されて 、るが、複素乗算器を直接用いて複素共役演算を行ってもょ ヽ
[0249] このようにしてターゲット要素を含む行列力 ステップ 611の実数化処理により
[0250] [数 135]
M (- (·)„„ )· Ω · ΜΙ V- ( „„ )" となった後、ステップ 612での、
[0251] [数 136]
M )· M (― , )· Ω ' Μ (― ω Μ, Υ · Μ „ Υ
の演算となる。その演算を行うブロック力 2 Θ極性検出部 603 2 Θ復元部 604 Θ 極性検出部 605、及び回転行列演算部 606である。 2 Θ極性検出部 603は、ターゲ ット要素 Ω を" 0"とするための回転角を検出する機能を有する。図 6Dは、 2 Θ極性 検出部 603で行われる計算処理を示している。この実施形態では、上述の [I]〖こよる ( 88)式より 2 Θを求め(2 Θ復元部 604) 1ビットシフトして Θとした後、(87)式より極性 を求める方法を用いている。すなわち、
[0252] [数 137]
2|Ω„„
Ω„ - Ω,. として、(89)式の逐次処理
[0253] [数 138] - 、 ' 2 ' 2パ 2 ' J
を行う。極性 s s の選択の基で、上式の yを" 0"にもっていくように処理される。極 性 s ,s は、それぞれ" + 1"ど 1"の二値をとるから、組み合わせとして 4種類有 り、その中力 最も" 0"に近い組み合わせを用いて更新を繰り返すのである。その出 力である極性 s ,s を基に 2 Θ復元部 604は、(91)式より 2 Θを復元し、配線入れ替 え(配線スィッチ)によって 1ビットシフトして Θを出力する。図 6Eは、 2 Θ復元部 604 で行われる計算処理を示している。 Θ極性検出部 605は、(87)式によりこの Θを 4値 ごとの逐次比較による更新で逆正接により量子化し、極性 s ,s を出力する。図 6F は、 0極性検出部 605はで行われる計算処理を示している。回転行列演算部 606は 、この入力してくる極性 s ,s を基に、(83)式による逐次処理によって、最後の結果 を待たずに逐次処理を実行し、 p行目と q行目、またその複素共役をとつて p列目と q 列目を計算し、残る 4つの対角要素も (85)式により計算する。図 6Gは、回転行列演算 部 606で行われる計算処理を示して 、る。
[0254] これによつて、ステップ 612の
[0255] [数 139]
Μ(Θ„„ )· Μ (- to , ,, )· Ω · Μ(- (!)„„ )" · Μ(Θ„„ )" の演算が完了する。この結果をエルミート行列である Ωとおいて、さらに同様の処理 を続けるかをステップ 613において予め決められたヤコビ回転の完了条件と比較し、 必要なら同様の処理を繰り返す。このようにしてヤコビ回転が実行される。
[0256] 図 7は、固有値'固有ベクトル計算部 103の内部構成を示したものであって、上記 のヤコビ回転と同時に計算される固有ベクトルの演算過程を示したものである。固有 値 ·固有ベクトル計算部 103には、固有ベクトル計算部 701及び固有値計算部 702 と、図 6Αを用いて既に説明したヤコビ回転演算部 703が設けられている。
[0257] 図 7において、固有値計算部 702とヤコビ回転演算部 703を結ぶ矢印は上述のャ コビ回転の様子を示したものである。固有値計算部 702によって Ωの更新が行われ 、 Μ · Ω ·Μ Ηを新たに Ωとして、この Ωはヤコビ回転部 703に送られる。ヤコビ回 i-l i-1
転部 703は、送られてきた Ωに対して M · Ω ·ΜΗの処理を施し、それをまた固有値計 算部 702に送り返す。この一連の逐次処理によって、固有値計算部 702には、〜Μ
2
•Μ · Ω ·Μ Η·Μ Η· ··の値が蓄積され、(69)式による
1 1 2
[0258] [数 140]
の関係より、固有値計算部 702は、固有値え ,.,., λを得ることができる。この処理と
1 η
平行して、固有ベクトル計算部 701にはヤコビ回転演算部 703より回転行列
が入力され、単位行列 Iを初期値として、 M Η·Μ Η· ··の値が蓄積される。その結果、 (
1 2
74)ズ75)式の関係より、
Μ Η·Μ Η·〜 → [m … m ]または [e … e ]
となって、固有ベクトル計算部 701は固有ベクトル e ,...,eを得ることができる。
[0260] 図 8は、図 6Fに示した Θ極性検出部 605の実施形態の一例である逆正接量子化 回路を示している。逆正接量子化回路は、読み出し専用のメモリ 801と、メモリ 801に 対するアドレスを発生するアドレス発生回路 802と、メモリ 801の出力側に設けられた 4個の極性付き加算器 803と、データを一時保存するレジスタ 804と、極性付き加算 器 803ごとに設けられた比較器 805と、極性選択器 806と、減算器 807と、加算器 80 8と、 4個の極性付き加算器 803の出力のいずれかを選択する選択器 809と、を備え ている。この逆正接量子化回路は、入力した Angle Θに対して、(87)式に基づき、 4 つの値ごとの逐次比較による更新で逆正接により量子化し、極性 s ,s を出力する
2k, 2k,+l
回路である。
[0261] ここでは、 2つごとにグループ分けがなされているものとしているので、メモリ 801に は、互いに異なる 2つの 2の負の冪に対する逆正接 tan— 1 2"2k', s -tan"1 2"2k'_1 (k'
2k'+l
= 1〜KZ2)が格納されている。アドレス発生回路 802は、 1から KZ2までのァドレ ス発生を行うが、アドレス発生回路 802の出力がメモリ 801のアドレス入力に接続され ているので、発生したアドレスが k'に相当することになる。そのようにして出力された ta n— 1 2— 2k', s -tan"1 2— 2k'— 1は、極性付き加算器 803によって、以下の 4つの組合せで
2k,+l
加算され、極性付き和として、それぞれ比較器 805へと入力する。その 4つの値は、 [0262] [数 142] 一 1 一 2A'+1
である。各比較器 805のもう一方の入力には Θが供給される力 そのとき、レジスタ 8 04に蓄積されていた前回の選択された極性付き和を減算器 807によって差し引いた 値、すなわち
[0263] [数 143]
Θ - , ' tan 1 2— + - tan 1 2— が供給される。したがって 4個の比較器 805の出力は、 4つの出力のどこかで値が変
わること〖こなる。その値が変わる境をもって今回の極性 s ,s とする処理を極性選
2k, 2k,+l
択器 806は行い、これが逆正接量子化回路の出力となる。その時の出力は、選択器 809にも入力しており、その結果、(99)式に基づいてその s ,s に対応した値が選
2k' 2k'+l
択されることになる。そして逐次処理の次の処理のために、加算器 808とレジスタ 80 4で構成されるアキュムレータにより、次回分の極性付き和の蓄積結果がレジスタ 80 4に保存される。
[0264] 図 9は、図 6Eに示した 2 Θ復元部 604の実施形態の一例である角度復元回路を示 している。角度復元部は、入力してくる極性 s , s に対して、例えば図 6Eの場合、(
2k' 2k'+l
91)式より 2 Θを復元する回路である。角度復元部は、読み出し専用のメモリ 901と、メ モリ 901に対するアドレスを発生するアドレス発生回路 902と、メモリ 901の出力側に 設けられた極性付け回路 903と、極性付け回路 903の 2つの出力を加算する加算器 904と、データを一時保存するレジスタ 906と、加算器 904の出力とレジスタ 906の出 力を加算する加算器 905と、を備えている。
[0265] メモリ 901には、図 8の場合と同様に、互いに異なる 2つの 2の負の冪に対する逆正 接 tan—1 2"2k', s - tan"1 2"2k'_1 (k' = l〜K/2)が格納されて ヽる。アドレス発生回
2k,+l
路 902は、入力してくる極性 s ,s に合わせてアドレスを発生し、これによつて、極
2k, 2k,+l
性付け回路 903と加算器 904によって極性付き和となったメモリ 901の出力は、(s ·
2k tan"1 2"2k' + s ' tan— 1 2— 2k'— となる。ここで s ,s は、極性付け回路 903に入力し
2k'+l 2k' 2k'+l
ている極性である。加算器 905とレジスタ 906で構成されるアキュムレータには、それ までの極性付き和の蓄積結果が存在して 、るので、 KZ2まで終了した時の出力で ある Angle【ま、
[0266] [数 144]
κ
2
∑(¾. - tan-' 2_2*' + ,+ tan—1 2_2 ' + 1 となる。
[0267] すなわちこれらの回路による処理は、 2の負の冪に対する逆正接で構成される領域 に、角度極性変換回路であるところの逆正接量子化回路を使用して角度を変換する ことによって、ヤコビ回転等の三角関数演算を簡単ィ匕しているとみることができる。角
度極性変換の逆変換が、極性角度変換であり、これは角度復元回路によって実現さ れる。
以上説明した処理は、ヤコビ回転を説明する図 6A及び図 7に示したものも含めて、 グループに分割した複数の極性を基にした 2の負の冪の線形和を要素とする行列演 算となって!/、るので、回路上の配線入れ替えによる 2の負の冪の処理と加算器のみ で実現でき、低複雑度で高速ィ匕が可能である。また、角度極性変換あるいはその逆 変換において、 2の負の冪に対する逆正接を用いている力 これはメモリをあるいは ルックアップテーブルを用いて実現でき、そのアドレスもビット幅に相当する深さで済 むから、少ないメモリ量で実現できる。