明 細 書
難燃性ポリエステル繊維とその製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、非ハロゲン系有機リンィ匕合物を後加工により繊維に固着させた、耐光堅 牢度、摩擦堅牢度、難燃性、耐熱性、耐加水分解性、洗濯耐久性に優れた難燃性 ポリエステル繊維とその製造方法に関する。
背景技術
[0002] ポリエステル繊維は、その優れた力学特性、易加工性カゝら衣類、インテリア、詰め綿 、不織布、産業用資材など、様々な分野で使用されている。例えば、ポリエステル繊 維製品は、ホテル、病院、映画館などにおけるインテリア材料として使用されている。 しかしながら、ポリエステル繊維製品は易燃性であり、前記用途においては、マッチ やタバコなどを出火源とする火災の被害を最小限に抑えるため、消防法により厳しい 規制が設けられている。近年、防災意識の高まりの中で、安全性が高く快適な生活 環境をつくる上で、難燃性を備えたポリエステル繊維製品の開発が望まれている。
[0003] ポリエステル繊維用難燃剤としては、へキサブ口モシクロドデカン (HBCD)を代表と するハロゲン系化合物が主に使用されている。しかしながら、最近では難燃加工され た製品が燃焼するときに発生するハロゲンィ匕水素などの環境負荷物質が懸念されて おり、ハロゲン系化合物は使用されない傾向にある。したがって、ポリエステル繊維用 難燃剤としては、リンィ匕合物の研究が盛んに行われるようになった。
[0004] 英国特許第 1156588号明細書 (特許文献 1)および米国特許第 3597242号明細 書 (特許文献 2)には、それぞれ難燃剤として次式で表される化合物 (A)を用いて、ビ スコースレーヨン繊維および酢酸セルロース繊維を紡糸しながら繊維に難燃性を付 与する技術が開示されて ヽる。
[0006] この化合物 (A)は、本発明の一般式 (I)で表されるリンィ匕合物に含まれる。
し力しながら、これらの特許に記載されている技術は、難燃ィ匕の対象がポリエステル 繊維ではなぐ難燃性を付与する方法も本発明とは異なる。
[0007] 特開昭 61— 197653号公報 (特許文献 3)には、難燃剤として上記の化合物 (A)を ポリフエ-レンエーテル (PPE)系榭脂に配合して、榭脂を難燃ィ匕する技術が開示さ れている。
しカゝしながら、この公報に記載されている技術は、難燃ィ匕の対象がポリエステル繊 維ではなぐ難燃性を付与する方法も本発明とは異なる。また、この公報には、ポリエ ステル繊維の難燃ィ匕に関しては記載されておらず、その示唆もな!/、。
[0008] 一方、米国特許第 3703495号明細書 (特許文献 4)には、上記の化合物 (A)をポ リエステルの一種であるポリアリレート榭脂に配合して、榭脂の低流動性を改善する 技術が開示されている。
しカゝしながら、この特許に記載されている技術は、ポリエステル繊維の難燃ィ匕に関し ては記載されておらず、その示唆もない。
[0009] 現在の主流であるポリエステル繊維の難燃ィ匕方法は、例えば、特開 2001— 2542 68号公報 (特許文献 5)に開示されている。この公報に記載されている方法は、難燃 剤として芳香族骨格のみ力もなる縮合系リンィ匕合物と染料とを用いて、難燃化と染色 とを同時に施す、いわゆる同浴処理によりポリエステル繊維を難燃ィ匕する技術である
[0010] し力しながら、この公報に記載のリン化合物と染料とを用いて処理すると、用いるリ ン化合物と染料との相溶性が高過ぎるために、得られたポリエステル繊維は染料が 抜け落ち易ぐ摩耗堅牢度に劣る傾向がある。したがって、濃い色の染色を施すポリ エステル繊維には、付与された難燃性と染色とを長期にわたつて維持できな 、と!/、う
問題がある。また、洗濯耐久性も悪ぐ初期の難燃性や染色を維持できないという問 題もある。
[0011] 特許文献 1 :英国特許第 1156588号明細書
特許文献 2 :米国特許第 3597242号明細書
特許文献 3:特開昭 61— 197653号公報
特許文献 4:米国特許第 3703495号明細書
特許文献 5:特開 2001— 254268号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0012] 難燃剤としてリン含有率の高いリンィ匕合物を用いてポリエステル繊維を難燃ィ匕処理 しても、リンィ匕合物が繊維の奥深くまで入らず、繊維表面に付着している状態であれ ば、リンィ匕合物は繊維力も脱離し易ぐ難燃性の持続は期待できない。例えば、ポリ エステル繊維を衣類などに用いた場合には、洗濯により繊維からリン化合物が容易 に脱離する。
他方、難燃剤としてリン含有率の低 、リンィ匕合物を用いてポリエステル繊維を難燃 化処理した場合でも、繊維へのリンィ匕合物の浸透性および繊維とリンィ匕合物との物 理的密着力が大きければ、難燃性の持続は期待できる。
[0013] したがって、ポリエステル繊維の難燃ィ匕にぉ ヽては、繊維に十分な難燃性を付与し
、かつ難燃剤の使用量を減量するという観点から、リン含有率が高ぐかつ繊維から 容易に脱離し難!、リンィ匕合物が望まれて!/、る。
[0014] 本発明は、水や熱に対する安定性を有し、かつ洗濯耐久性を維持した難燃性ポリ エステル繊維を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
[0015] 本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、難燃剤と して、ハロゲンを含有しない特定のリンィ匕合物で後加工することにより、染色性に優 れ、光に対する安定性を有し、摩擦時の色移りが少なぐまた水や熱に対する安定性 を有し、かつ洗濯耐久性を維持した難燃性ポリエステル繊維、すなわち染色性、耐 光堅牢度、摩擦堅牢度、耐加水分解性および耐熱性に優れ、かつ洗濯耐久性のよ
うな繊維としての諸物性を維持した難燃性ポリエステル繊維が得られることを見出し、 本発明を完成するに至った。
[0016] カゝくして、本発明によれば、難燃剤として、式 (I):
(式中、 Arは C アルキル基で置換されていてもよいフエ-ルまたはナフチル基を示
1-4
し、 nは 1〜3の整数を示す)
で表されるリンィ匕合物を含有する難燃性付与液でポリエステル繊維を含浸処理し、 含浸処理後または含浸処理と同時にポリエステル繊維を常圧または加圧下で熱処 理することにより、ポリエステル繊維に難燃性を付与することからなる難燃性ポリエス テル繊維の製造方法が提供される。
[0017] また、本発明によれば、上記の製造方法により得られる難燃性ポリエステル繊維が 提供される。
発明の効果
[0018] 本発明において、リンィ匕合物 (I)は、燃焼時に有害なハロゲンィ匕ガスなどを発生す る原因となるハロゲンを含有せず、耐光堅牢度、摩擦堅牢度、洗濯耐久性のような繊 維としての諸物性を維持しつつ、優れた難燃性をポリエステル繊維に付与することが できる。
したがって、本発明によれば、光、摩擦、水や熱に対する安定性を有し、かつ洗濯 耐久性を維持した難燃性ポリエステル繊維を提供することができる。
発明を実施するための最良の形態
[0019] 本発明の難燃性ポリエステル繊維は、式 (I)で表される、ハロゲンを含まない有機リ ン化合物(以下、「リン化合物 (I)」と略称する)を後加工によりポリエステル繊維に固 着させること〖こより得られる。
[0020] 式 (I)の Arのフエ-ル基およびナフチル基における置換分として存在してもよ!/ヽ「C アルキル基」としては、メチル、ェチル、 n-プロピル、 n-ブチルのような直鎖状のァ
ルキル基、イソプロピル、イソブチル、 sec-ブチル、 tert-ブチルのような分岐鎖状のァ ルキル基が挙げられる。
[0021] 本発明で用いられるリンィ匕合物 (I)を以下に例示するが、これらの化合物により本 発明の範囲が限定されるものではない。
2—ビフエ-リルジフエ-ルホスフェート、 4ービフエ-リルジフエ-ルホスフェート、ジ (2—ビフエ-リル)フエ-ノレホスフェート、ジ(4—ビフエ-リル)フエ-ノレホスフェート、 トリ(2—ビフエ-リル)ホスフェート、トリ(4—ビフエ-リル)ホスフェート、
2—ビフエ-リルジクレジノレホスフェート、 4ービフエ-リルジクレジノレホスフェート、ジ (2—ビフエ-リル)クレジルホスフェート、ジ(4—ビフエ-リル)クレジルホスフェート、
2—ビフエ-リルジキシリルホスフェート、 4ービフエ-リルジキシリルホスフェート、ジ (2—ビフエ-リル)キシリルホスフェート、ジ(4—ビフエ-リル)キシリルホスフェート、 [0022] (2—ビフエ-リル)ジ(ェチルフエ-ル)ホスフェート、 (4ービフエ-リル)ジ(ェチルフ ェ -ル)ホスフェート、ジ(2—ビフエ-リル)ェチルフエ-ノレホスフェート、ジ(4ービフエ 二リノレ)ェチノレフエ二ノレホスフェート、
(2—ビフエ-リル)ジ(n-プロピルフエ-ル)ホスフェート、 (4—ビフエ-リル)ジ(n-プ 口ピルフエ-ル)ホスフェート、ジ(2—ビフエ-リル) n-プロピルフエ-ルホスフェート、 ジ(4—ビフエ-リル) n-プロピルフエ-ルホスフェート、
(2—ビフエ-リル)ジ (イソプロピルフエ-ル)ホスフェート、 (4—ビフエ-リル)ジ(イソ プロピルフエ-ル)ホスフェート、ジ(2—ビフエ-リル)イソプロピルフエ-ルホスフエー ト、ジ(4ービフエ-リル)イソプロピルフエ-ルホスフェート、
[0023] (2—ビフエ-リル)ジ(n-ブチルフエ-ル)ホスフェート、 (4ービフエ-リル)ジ(n-ブ チルフエ-ル)ホスフェート、ジ(2—ビフエ-リル) n-ブチルフエ-ルホスフェート、ジ( 4—ビフエ-リル) n-ブチルフエ-ルホスフェート、
(2—ビフエ-リル)ジ (イソブチルフエ-ル)ホスフェート、 (4—ビフエ-リル)ジ (イソ ブチルフエ-ル)ホスフェート、ジ(2—ビフエ-リル)イソブチルフエ-ルホスフェート、 ジ(4ービフエ-リル)イソブチルフエ-ルホスフェート、
(2—ビフエ-リル)ジ(sec-ブチルフエ-ル)ホスフェート、 (4—ビフエ-リル)ジ(sec- ブチルフエ-ル)ホスフェート、ジ(2—ビフエ-リル) sec-ブチルフエ-ルホスフェート、
ジ(4ービフエ-リル) sec-ブチルフエ-ルホスフェート、
(2 ビフエ-リル)ジ(tert-ブチルフエ-ル)ホスフェート、(4 ビフエ-リル)ジ(tert
-ブチルフエ-ル)ホスフェート、ジ(2—ビフエ-リル) tert-ブチルフエ-ルホスフェート
、ジ(4ービフエ-リル) tert-ブチルフエ-ルホスフェート、
[0024] 2 ビフエ-リルジ(1 ナフチル)ホスフェート、 4ービフエ-リルジ(1 ナフチル)ホ スフエート、ジ(2 ビフエ-リル)(1—ナフチル)ホスフェート、ジ(4 ビフエ-リル)(1 ナフチノレ)ホスフェート、
2 -ビフエ-リルジ(2 ナフチル)ホスフェート、 4 -ビフエ-リルジ(2 ナフチル)ホ スフエート、ジ(2 ビフエ-リル)(2 ナフチル)ホスフェート、ジ(4 ビフエ-リル) (2 ナフチノレ)ホスフェート。
[0025] これらのリンィ匕合物 (I)をポリエステル繊維用難燃剤として用いる場合には、それら を単独で、または 2種以上の混合物として用いることができる。このような混合物は、 高純度の化合物を混合して得られたものであっても、合成によって得られた精製前の 混合物であってもよい。
[0026] 本発明のリン化合物(I)のうち、 n= 1、 Ar=フエ-ル基の化合物((2 または 4 ビフエ-リル)ジフエニルホスフェート)は、例えば、次の方法により製造すれば、高純 度で得ることができる。
(1) 1モルのジフエ-ルホスホロクロリデートに対して 1モルの 2 または 4 フエ-ル フエノールを反応させる方法。
(2) 1モルの 2 または 4 ビフエ-リルフエノールに対して 1. 1〜10モルのォキシ 塩化リンを反応させ、未反応のォキシ塩化リンを除去した後に、さらに 2モルのフエノ ールを反応させる方法。
[0027] また、リン化合物(I)のうち、 n= 2、 Ar=フエ-ル基の化合物(ジ(2 または 4ービ フエ-リル)フエ-ルホスフェート)は、例えば、次の方法により製造すれば、高純度で 得ることができる。
(3) 1モルのフエ-ルホスホロジクロリデートに対して 2モルの 2 または 4 フエ-ル フエノールを反応させる方法。
(4) 1モルのフ ノールに対して 1. 1〜 10モルのォキシ塩化リンを反応させ、未反
応のォキシ塩化リンを除去した後に、さらに 2モルの 2 または 4 フエニルフエノー ルを反応させる方法。
[0028] また、リンィ匕合物(I)のうち、 n= 3の化合物(トリ(2 または 4ービフエ-リル)ホスフ エートは、例えば、次の方法により製造すれば、高純度で得ることができる。
(5) 1モルのォキシ塩化リンに対して 3モルを超える 2 または 4 フエ-ルフエノー ルを反応させ、未反応の 2 または 4 フエ-ルフヱノールを除去する方法。
[0029] 上記の反応によって得られるリン化合物(I)は n=0、 n= l、 n= 2および n= 3の混 合物となることがある。これらの各成分のうち、 n=0で表わされるホスフェートの含有 量が多いと、沸点が低くなり揮発性が高くなるので、繊維の難燃性付与工程中に揮 発して作業環境を悪化させるおそれがある。
したがって、本発明のリンィ匕合物(I)に含まれる n=0の成分は少ないほどよいが、 本発明の難燃性ポリエステル繊維の物性を損なわな 、範囲であれば、少々含まれて いてもよい。
[0030] 上記の反応により得られるリン化合物 (I)は、式 (I)の定義に含まれる化合物であれ ば特に限定されないが、 Arがフエ-ル基であり、かつ nが 1または 2の整数である化 合物が好ましぐ中でも次式の化合物が特に好ましい。
[0031] [化 3]
O
」2
[0032] ポリエステル繊維としては、公知のものを使用することができる ΟΡその材料としては、 例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチ レンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチ レンナフタレート、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸変性ポリ ブチレンテレフタレートなどが挙げられ、これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート が特に好ましい。
[0033] ポリエステル繊維の断面形状としては、任意の形状を採用することができ、円形、異 形の 、ずれであってもよ 、が、円形が特に好ま 、。
ポリエステル繊維の太さは特に限定されず、リン化合物 (I)は、任意の太さのポリェ ステル繊維に適用できる。例えば、 0. 001〜3000D (デニール:長さ 9000mあたり のグラム数)、好ましくは 0. 01〜200Dのポリエステル繊維が挙げられる。
ポリエステル繊維の形態は特に限定されない。例えば、糸、織物、編物、不織布、 紐、ロープ、糸、トウ、トップ、カセ、編織物などが挙げられる。
[0034] また、ポリエステル繊維は、他の繊維を含んで 、てもよ 、。このようなポリエステル繊 維としては、ポリエステル繊維と、例えば、天然、再生、半合成、合成の他の繊維との
混紡、交織織物などが挙げられる。
ポリエステル繊維の用途も特に限定されず、例えば、インテリア用、被服用、工業用
、漁網などが挙げられる
[0035] 本発明の難燃性ポリエステル繊維における、リン化合物 (I)の固着量は、難燃性ポ リエステル繊維の 0. 1〜30重量%が好ましぐ 0. 3〜10重量%がより好ましぐ 0. 5 〜5重量%がさらに好ましい。
リンィ匕合物 (I)の固着量が 0. 1重量%未満であると、ポリエステル繊維に十分な難 燃性を付与することが困難となるので好ましくない。一方、リン化合物 (I)の固着量が 30重量%を超えると、リン化合物 (I)の増加分に応じた難燃性の増大効果が得られ 難くなるば力りでなぐ繊維表面にブリードアウトを生じやすくなり、逆に繊維表面に生 じた難燃剤成分が繊維を容易に燃焼させる要因を引き起こすおそれがあるので好ま しくない。
[0036] 本発明の難燃性ポリエステル繊維は、後加工によりリンィ匕合物 (I)をポリエステル繊 維に固着させることにより得られる。
具体的には、本発明の難燃性ポリエステル繊維の製造方法は、リンィ匕合物 (I)を含 有する難燃性付与液でポリエステル繊維を含浸処理し、含浸処理後または含浸処理 と同時にポリエステル繊維を常圧または加圧下で熱処理する、換言すれば、リン化合 物をポリエステル繊維に接触させ (接触工程)、常圧または加圧下で熱処理する(熱 処理工程)ことにより、ポリエステル繊維に難燃性を付与することからなる。
したがって、本発明の難燃性ポリエステル繊維の製造方法は、ポリエステル繊維に 難燃性を付与する後処理であり、ポリエステル繊維を形成するポリエステル材料自体 を難燃化する前処理とは異なる。
[0037] 難燃性付与液は、通常、リン化合物 (I)を水に乳化もしくは分散させた乳化液もしく は分散液であるか、またはリンィ匕合物 (I)を有機溶媒に分散もしくは溶解させた分散 液もしくは溶液であるのが好まし 、。
リンィ匕合物 (I)を水に分散させる方法としては、公知の方法、例えばリンィ匕合物 (1)、 界面活性剤および有機溶剤、必要に応じて分散安定化剤を配合して攪拌し、徐々 に温水を加えて乳化分散させる方法が挙げられる。
[0038] 界面活性剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、 ァ-オン界面活性剤、非イオン界面活性剤などが挙げられる。
ァ-オン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケンなどのカルボン酸塩、高級 アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルポリアルキレングリコールエーテル硫酸ェ ステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化脂肪酸、硫酸化ォレフインなど の硫酸エステル塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸 塩、ナフタレンスルホン酸などのホルマリン縮合物、 a—ォレフインスルホン酸塩、ノ ラフインスルホン酸塩、ィゲポン T型(ォレイン酸クロリドと N—メチルタウリンとの反応 によって得られる化合物)、スルホコハク酸ジエステル塩などのスルホン酸塩;高級ァ ルコールリン酸エステル塩などのリン酸エステル塩などが挙げられる。
[0039] 非イオン界面活性剤としては、例えば、高級アルコールアルキレンオキサイド付カロ 物、アルキルフエノールアルキレンオキサイド付カ卩物、スチレン化アルキルフエノール アルキレンオキサイド付加物、スチレン化フエノールアルキレンオキサイド付加物、脂 肪酸アルキレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンォキサ イド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドアルキレ ンオキサイド付加物、油脂のアルキレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコール エチレンオキサイド付加物などのポリアルキレングリコール型;グリセロールの脂肪酸 エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂 肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アル カノールァミン類の脂肪酸アミドなどの多価アルコール型などが挙げられる。
[0040] 有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アルキルナフタレンなどの芳香族 炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどのァ ルコール類;アセトン、メチルェチルケトンなどのケトン類;ジォキサン、ェチルセロソ ルブなどのエーテル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドな どのスルホキシド類;メチレンクロライド、クロ口ホルムなどのハロゲン系炭化水素類な どが挙げられる。これらは単独でまたは 2種以上の混合物として用いることができる。
[0041] 分散安定化剤としては、例えば、ポリビュルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキ シメチルセルロース、ザンタンガム、デンプン糊などが挙げられる。
分散安定化剤の配合量は、難燃性付与液 100重量部に対して、 0. 05〜5重量部 、好ましくは 0. 1〜3重量部である。
分散安定化剤の配合量が少ないと、リンィ匕合物 (I)の凝集や沈降が生じ易い。一方 、分散安定化剤の配合量が多すぎると、分散液の粘性が増大し、その結果、リン化合 物 (I)がポリエステル繊維の奥深くまで入り込むことが困難になり、ポリエステル繊維 に難燃性を付与し難くなる。
[0042] 難燃性付与液は、キャリア (膨潤剤)を含むのが好ま 、。
キャリアとは、ポリエステル繊維を膨潤させて、リン化合物 (I)がポリエステル繊維の 分子配列中に良好に固着することを促進する物質を意味する。
このようなキャリアとしては、キャリア染色で使用されている公知の染色助剤(キヤリ ァ)を使用することができる。例えば、クロルベンゼン系、芳香族エステル系、メチルナ フタレン系、ジフエ-ル系、安息香酸系、オルソフエ-ルフエノール系などの化合物が 挙げられる。これらの化合物は単独でまたは 2種以上の混合物として用いることがで きる。
[0043] キャリアの配合量は、加工されるポリエステル繊維の重量に対して、 0. 1〜10%ο. w.f . (on the weight of fiber)、好ましくは 1. 0〜5. 0%o.w.f.である。
キャリアの配合量が少ないと、ポリエステル繊維へのリンィ匕合物 (I)の固着が十分に 促進され難くなり、その結果、ポリエステル繊維に難燃性を付与し難くなる。一方、キ ャリアの配合量が多すぎると、キャリアが難燃性付与液中に乳化または分散され難く なる。
[0044] キャリアを難燃性付与液中に良好に乳化または分散させるために、界面活性剤とし て、ヒマシ油硫酸化油、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸 塩、ポリオキシエチレン(POE)ヒマシ油エーテル、 POEアルキルフエ-ルエーテルな どを適宜添加してもよい。
[0045] 上記のように、本発明において、難燃性付与液は、水や有機溶媒の他に、界面活 性剤、分散安定化剤、キャリアおよび染料から選択される少なくとも 1つをさらに含む のが好ましい。
[0046] 難燃性付与液が水性の乳化液または分散液である場合には、乳化型または分散
型の難燃性付与液の製造に用いられている公知の装置、例えば、ホモジナイザー、 コロイドミル、ボールミル、サンドグラインダーなどの乳化機や分散機を用いて難燃性 付与液を調製することができる。
[0047] ポリエステル繊維において、難燃性以外にも耐光堅牢度などが要求される場合に は、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフエノン系などの紫外線吸収剤や公知の繊維用処 理剤を、難燃性を損なわな ヽ程度に難燃性付与液と併用してもよ!ヽ。
このような繊維用処理剤としては、紫外線吸収剤以外に、帯電防止剤、撥水撥油 剤、防汚剤、硬仕上剤、風合調整剤、柔軟剤、抗菌剤、吸水剤、スリップ防止剤など が挙げられる。
これらの繊維用処理剤は、上記の難燃性付与液に配合して、難燃性と共にその機 能を付与してもよぐまた予めポリエステル繊維に付着あるいは吸着させておいてもよ い。
[0048] ポリエステル繊維は、染色して用いられることが多ぐ本発明の難燃性ポリエステル 繊維は、染料を含んでいてもよい。本発明においては、予め染色したポリエステル繊 維をリンィ匕合物 (I)で難燃ィ匕してもよぐまた染色されていないポリエステル繊維に、リ ン化合物 (I)と染料とを同時あるいは別々に用いて、難燃化と染色を施してもよい。
[0049] 上記の難燃性付与液を用いたポリエステル繊維の難燃処理方法にっ 、て具体的 に説明する。
[0050] 方法 1
方法 1は、含浸処理がスプレー処理またはパッド処理であり、熱処理が温度 100〜 220°C、好ましくは 160〜190°C、常圧下で、数十秒〜数分間程度行われる。
含浸処理後であって、かつ熱処理前に乾燥処理が行われてもよいが、含浸処理と 熱処理とは同時に行われるのが好ましい。乾燥工程は、ポリエステル繊維に含浸す る難燃性付与液中の溶媒などを予め除去する工程である。
このような方法としては、公知の方法を適用でき、例えば、スプレー処理 ドライ キュア方式、パッド ドライ スチーム方式、パッド スチーム方式、ノ ッドードライ キュア方式などの乾熱または湿熱法などが挙げられる。
[0051] 熱処理温度が低すぎると、ポリエステル繊維の分子中の非結晶領域が難燃性付与
液中に存在するリンィ匕合物 (I)の分子を受け入れ得る程に弛緩または膨張し難くなり
、その結果、ポリエステル繊維に十分な難燃性を付与することが困難となるので好ま しくない。一方、熱処理温度が高すぎると、リン化合物 (I)のポリエステル繊維への固 着をより強固にすることができる力 加熱条件によって差異があるものの、ポリエステ ル繊維自体の繊維強度が低下したり熱変性が生じたりするおそれがあるので好ましく ない。
[0052] 上記の好適な温度範囲で熱処理することにより、難燃性付与液中に存在するリン化 合物 (I)が、常圧においてもポリエステル繊維の分子中の非結晶領域に安定に、か つより多く固着する。したがって、方法 1によれば、ポリエステル繊維に対して十分な 難燃性および洗濯耐久性を与えることができる。
[0053] 方法 2
方法 2は、含浸処理が難燃性付与液にポリエステル繊維を浸漬する処理であり、熱 処理が含浸処理と同時に、温度 90〜150°C、常圧〜 0. 4MPaの高温常圧下もしく は高温加圧下、好ましくは温度 110〜140°C、0. 05〜0. 3MPaの高温加圧下で、 数分〜数十分間程度で行われる。
このような方法には、公知の装置を用いることができ、例えば、液流染色機、ビーム 染色機、チーズ染色機などのパッケージ染色機が挙げられる。
[0054] 熱処理温度が低すぎると、ポリエステル繊維の分子中の非結晶領域が難燃性付与 液中に存在するリンィ匕合物 (I)の分子を受け入れ得る程に弛緩または膨張し難くなり 、その結果、ポリエステル繊維に十分な難燃性を付与することが困難となるので好ま しくない。一方、熱処理温度が高すぎると、リン化合物 (I)のポリエステル繊維への固 着をより強固にすることができる力 加熱条件によって差異があるものの、ポリエステ ル繊維自体の繊維強度が低下したり熱変性が生じたりするおそれがあるので好ましく ない。
[0055] 上記の好適な温度範囲で熱処理工程を行うことにより、方法 1と同様、難燃性付与 液中に存在するリン化合物 (I) ポリエステル繊維の分子中の非結晶領域に安定 に、かつより多く固着する。したがって、方法 2によれば、ポリエステル繊維に対して十 分な難燃性および洗濯耐久性を付与することができる。なお、難燃性付与液にポリェ
ステル繊維を浸漬する前に、予め難燃性付与液を上記の好適な温度範囲に加熱し ておいてもよい。
[0056] 方法 3
方法 3は、方法 2において、難燃性付与液がキャリアを含み、熱処理が温度 80〜1 30°C、常圧〜 0. 2MPaの高温常圧下もしくは高温加圧下で、数分〜数十分間行わ れる。
、数分〜数十分間浸漬処理することからなる。
[0057] 方法 3では、難燃性付与液中に乳化または分散されたキャリアがポリエステル繊維 に吸着することにより、ポリエステル繊維の分子配列中へのリンィ匕合物 (I)の固着が 促進される。その結果、方法 2よりも穏やかな条件で熱処理を行っても、難燃化を発 揮し得るに十分な量のリン化合物 (I)をポリエステル繊維の内部に安定的に固着させ ることがでさる。
[0058] また、上記のように熱処理時の条件が穏やかであるため、熱処理工程におけるポリ エステル繊維に対する熱的な影響 (熱負荷、熱履歴など)が軽減される。よって、熱 処理工程におけるポリエステル繊維の強度低下や熱変性を十分に防止することがで きる。
方法 2と同様に、キャリアを配合した難燃性付与液にポリエステル繊維を浸漬する 前に、予め難燃性付与液を上記の好適な温度範囲に加熱しておいてもよい。
[0059] 上記の処理により、難燃性付与液中に存在するリンィ匕合物 (I)をポリエステル繊維 に固着させる時期は、ポリエステル繊維を染色する前、染色と同時、染色した後のい ずれであってもよぐ工程数および作業工数を低減して作業効率を高める観点から は、染色と同時が特に好ましい。
[0060] また、上記の方法において、熱処理後に、公知の方法によってポリエステル繊維の ソービング処理を行い、ポリエステル繊維に強固に固着せず、表面に緩や力に (ルー スに)付着して 、るリンィ匕合物 (I)を除去するのが好ま 、。
このソービング処理に用いられる洗浄剤としては、通常の陰イオン系、非イオン系、 両性系の界面活性剤およびこれらが配合された洗剤を用いることができる。
[0061] なお、ポリエステル繊維に高度の洗濯耐久性が必要とされな ヽ場合には、難燃性
付与液中に存在するリン化合物 (I)がポリエステル繊維の表面に強固に固着される 必要はなぐリンィ匕合物 (I)が繊維の表面に緩く付着するだけでもよい。この場合には 、熱処理を実質的に省略してもよい。また、リンィ匕合物 (I)がポリエステル繊維の表面 に緩く付着して 、るだけの状態でも、ポリエステル繊維に難燃性を付与することがで きる。
[0062] (実施例)
本発明を以下の合成例、実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、こ れらの実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。
[0063] 合成例 1 (リン化合物 1の合成)
攪拌機、還流管および温度計を備えた 1リットルの四つ口フラスコに、 2—フエ-ル フエノーノレ 170. Og (l. 0モノレ)、才キシ塩ィ匕ジン 307. 0g (2. 0モノレ)および無水塩 化マグネシウム 0. 9gを充填した。この混合溶液を窒素雰囲気下で攪拌しながら 120 °Cまで 2時間かけて加熱昇温し、同温度(120°C)で 1時間攪拌した。その後、同温度 (120°C)にて減圧を開始し、約 1. 3kPaに到達するまで過剰のォキシ塩化リンを回 収した。反応混合物を室温まで冷却し、さらにフエノール 188. 0g (2. 0モル)および トルエン 30gをカ卩え、窒素雰囲気下で攪拌しながら 2時間かけて 150°Cまで加熱昇温 し、同温度(150°C)の減圧下 (約 6. 5kPa)で 2時間反応を行った。反応終了後、反 応混合物を 80°Cまで冷却し、窒素を用いて常圧にし、同温度(80°C)で 3. 5%塩酸 および 1%水酸ィ匕ナトリウム水溶液で順次洗浄し、最後に水洗を行った。さらに、 150 °Cの減圧下 (約 2. 7kPa)で水蒸気蒸留を行い、反応生成物から低沸点の成分を除 去し、無色透明の液体 392. Ogを得た。液体のすべてが目的化合物であると仮定し た場合の粗収率は 97. 5%であった。
[0064] 得られた生成物の組成を液体クロマトグラフィーにより測定した。
組成: 2 -ビフエ-リルジフエ-ルホスフェート 94%
ジ(2—ビフエ-リル)フエ-ルホスフェート 5%
トリフエ二ノレホスフェート 1%
トリ(2—ビフエ-リル)ホスフェート 0%
また、得られた生成物のリン含有率を測定した。
リン含有率: 7. 7%
[0065] 合成例 2 (リン化合物 2の合成)
2—フエ-ルフエノール 170. Og (l. 0モル)の代わりに 4—フエ-ルフエノール 170 . Og (l. 0モル)を使用すること以外は合成例 1と同様にして、白色の固体 383. 9gを 得た。固体のすべてが目的化合物であると仮定した場合の祖収率は 95. 5%であつ た。
[0066] 得られた生成物について、合成例 1と同様にして、組成およびリン含有率を測定し た。また、融点も測定した。
組成: 4 -ビフエ-リルジフエ-ルホスフェート 91 %
ジ(4—ビフエ-リル)フエ-ルホスフェート 7%
トリフエ二ノレホスフェート 2%
トリ(4—ビフエ-リル)ホスフェート 0%
リン含有率: 7. 6%
融点: 61〜63°C
[0067] 実施例および比較例にぉ 、て用いたポリエステル繊維の配合成分を下記する。
(a)リン化合物成分
リン化合物 1 : (合成例 1参照)
リン化合物 2 : (合成例 2参照)
リン化合物 3:トリフエ-ルホスフェート
(大八化学工業株式会社製、商品名: TPP)融点 :49〜50°C リン化合物 4:縮合系リン酸エステル (次式参照)
(大八化学工業株式会社製、商品名: CR— 733S) 液体(25°C)
[0068] [化 4]
(式中、 1. 4は平均縮合度を示す)
[0069] (b)ポリエステル繊維
ポリエチレンテレフタレート 100%のポリエステル繊維織物(目付 250gZm2、ポリエ ステルトロピカル、帝人株式会社製)
織物(1):厚さ 0. 42mm
織物(2):厚さ 0. 24mm
[0070] ポリエステル繊維織物を難燃処理するための難燃性付与液を調製した。
(1)難燃性付与液 1の調製
リンィ匕合物 1の 10gと分散安定化剤として、明成化学工業株式会社製、商品名: Dis per N-700 1. 5gを混合し、水を数滴ずつ約 20g加え、得られた混合物となじませる ことを繰り返してペースト状にした。そのペーストを高速攪拌機にて攪拌しながら更に 少しずつ約 80gの水を加え、白色分散液状の難燃性付与液 1を得た。
[0071] (2)難燃性付与液 2の調製
リンィ匕合物 2の 5gと分散安定化剤として、伯東株式会社製、商品名: Alcaseagum) 0 . 5gをめのう乳鉢で混合し粒径を細カゝくした。その後、水を数滴ずつ約 20g加え、得 られた混合物となじませることを繰り返してペースト状にした。そのペーストを高速攪 拌機にて攪拌しながら更に少しずつ約 80gの水を加え、白色分散液状の難燃性付 与液 2を得た。
[0072] (3)難燃性付与液 3の調製
リンィ匕合物 2の代わりに、リンィ匕合物 3を用いること以外は、難燃性付与液 2の調製 と同様にして、白色分散液状の難燃性付与液 3を得た。
[0073] (4)難燃性付与液 4の調製
リンィ匕合物 1の代わりに、リンィ匕合物 4を用いること以外は、難燃性付与液 1の調製
と同様にして、白色分散液状の難燃性付与液 4を得た。
[0074] 処理方法 1 (実施例 1〜4および比較例 1〜4)
調製した難燃性付与液 1〜2および難燃性付与液 3〜4を用いてポリエステル繊維 織物( 1)を難燃処理した (実施例 1〜2および比較例 1〜2)。
同様にして、調製した難燃性付与液 1〜2および難燃性付与液 3〜4を用いてポリ エステル繊維織物(2)を難燃処理した(実施例 3〜4および比較例 3〜4)。
分散染料 (Dianix Blue U- SE;三菱ィ匕成工業株式会社製) 4%o.w.f.の染浴中に、難 燃性付与液を濃度 8%o.w.f.〖こなるように添加した。得られた浴中にポリエステル繊維 織物を浴比 1: 30で、ミニカラー試験機 (株式会社テクサム技研社製)を使用して 130 °Cで 60分間処理し、還元洗浄を 70°Cで 20分間行い、湯洗い、乾燥した。その後、 1 50°Cで 3分間熱処理した。
[0075] 難燃処理したポリエステル繊維織物(1)および(2)を下記の方法で評価した。
(1)吸尽性試験
次工程での分解を促進するために、ポリエステル繊維織物の加工上がりの試験片 を予め約 2mm角に切断し、これを約 lg精評し、力 す口付き三角フラスコに入れた 。次いで、三角フラスコに濃硫酸 5ml、濃硝酸 25mlおよび 70%過塩素酸 3mlをカロえ 、三角フラスコに時計皿で蓋をして、混合溶液が 5〜: LOmlになり白煙を生じるまでカロ 熱し、試験片を分解させた。次いで、混合溶液を冷却し、 250mlのメスフラスコに移し 入れ、メスフラスコの標線まで蒸留水を加えて、希釈した。得られた溶液 10mlを 100 mlのメスフラスコに入れ、硝酸 (濃硝酸 Z水 = 1Z2 容積比) 10ml、0. 5%バナジ ン酸アンモ-ゥム溶液 5mlおよび 5. 0%モリブデン酸アンモ-ゥム溶液 10mlをカロえ 、メスフラスコの標線まで蒸留水を加えて、希釈した。次いで、得られた溶液を振り混 ぜ、約 30分間放置した。得られた溶液 (発色液)の吸光度を分光光度計 (株式会社 島津製作所製、 UVmini— 1240)を用いて、波長 440nmの条件下で測定した。難 燃処理をして 、な 、試験片の発光液の吸光度をブランクとして対照した。
得られた吸光度とリン標準溶液の吸光度との比較から、試験片中のリン分 (P%)を 求め、このリン分が総て難燃剤に由来するものと仮定して、試験片中の難燃剤固着 量を求めた。試験には織物(1)を用いた。得られた結果を表 1に示す。
[0076] (2)難燃性試験
難燃処理したポリエステル繊維織物の加工上がりのもの、 JIS L 1018の 8. 58. 4b) 6. 2)の F— 2法で規定される洗濯を 5回行ったもの、および JIS L
1018の 8. 58. 4b) 5. 2)の E— 2法で規定されるドライクリーニング(DLC)を 5回 行ったものについて、 JIS L 1091に規定される D法に準拠して防炎性能試験を行 つた。試験には厚さの異なる織物(1)および織物(2)を用いた。得られた結果を表 1 および表 2に示す。
[0077] (3)染色性
難燃処理したポリエステル繊維織物の加工上がりのものにっ 、て、目視で評価した 。染色性に応じて良好、やや良好、不良で判定した。試験には織物(1)を用いた。得 られた結果を表 1に示す。
「染色性」は、染色剤 (染料)カ^、かにうまぐ想定通りの色で生地 (繊維)にのるかを 評価するものである。
[0078] (4)風合い
難燃処理したポリエステル繊維織物の加工上がりのものについて、手触りで評価し た。風合いに応じて良好、やや良好、不良で判定した。試験には織物(1)を用いた。 得られた結果を表 1に示す。
[0079] (5)発煙性
熱処理(150°C)時に、難燃剤に由来する発煙の有無を確認する。低分子量タイプ の難燃剤の場合、激しい発煙が確認される。試験には織物(1)を用いた。得られた 結果を表 1に示す。
[0080] (6)耐光堅牢度
JIS L0842 紫外線カーボンアーク灯光による染色堅牢度試験に準じて測定した 。試験には織物(1)を用いた。得られた結果を表 1に示す。
[0081] [表 1]
処理方法 1における織物 (1 ) の試験結果
[0082] [表 2]
1における織物 (2 ) の試験結果
[0083] 処理方法 2 (実施例 5〜8および比較例 5〜8)
調製した難燃性付与液 1〜2および難燃性付与液 3〜4を用いてポリエステル繊維 織物(1)を難燃処理した (実施例 5〜6および比較例 5〜6)。
同様にして、調製した難燃性付与液 1〜2および難燃性付与液 3〜4を用いてポリ エステル繊維織物(2)を難燃処理した(実施例 7〜8および比較例 7〜8)。
難燃性付与液を濃度 7. 5%o.w.f.に調整した水分散液に、濃色顔料で染色された ポリエステル繊維織物を浸漬し、マンダルでピックアップが 70〜80%になるように絞 つた後、 110°Cで 3分間乾燥し、 180°Cで 1分間熱処理した。その後、水洗'乾燥した 難燃処理したポリエステル繊維織物を実施例 1〜4および比較例 1〜4と同様にし て評価した。得られた結果を表 3および表 4に示す。
[0084] [表 3]
処理方法 2における織物—( 1 )—の試験結果
吸尽性 難燃性
処理方法 ホ'リエステル 耐光 f) D法 接炎回数(回) 染色性 風合い 発煙性
2 繊維 付与液 堅牢度 加工上がり 加工上がり 洗濯 5回後 D L C後
実施例 5 織物(1) 付 ^液 1 2 . 5 5 4 4 良好 良好 なし 4級 実施例 6 織物(1) 付与液 2 3 . 0 5 4 4 良好 良好 なし 4級 比較例 5 織物(1) 付与液 3 2 . 9 3 4 4 良好 良好 あり 4級 比較例 6 織物(1) 付与液 4 0 . 9 3 3 3 不良 良好 なし 4級
[0085] [表 4]
処理方法 2における織物 (2 ) の試験結果
[0086] 使用したリンィ匕合物 1〜4の耐加水分解性を下記の方法で評価した。
リンィ匕合物約 30gを開口直径 3cm、底直径 4cm、高さ 10cmのガラス製サンプル瓶 に取り、これをプレッシャータッカー試験機 (株式会社平山製作所製 PC- 362M) を用いて、 121°C、飽和水蒸気圧下 (圧力約 0. 2MPa)で、 6時間加水分解処理を 行った。
次!、で、処理後のリン化合物の酸価 (mgKOH/g)を酸価測定機(平沼産業株式 会社製、タイトレーター COMTITE— 101)を用いて測定した。
同様にして、加水分解処理前のリン化合物の酸価を測定し、処理後の酸価と比較 した。酸価の上昇が多いほど、リンィ匕合物の加水分解が多く起こっていると考えられ る。得られた結果を表 5に示す。
[0087] [表 5]
[0088] 表 1〜5の結果から次のことがわ力る。
(1)実施例 1〜8のポリエステル繊維織物は、比較例 1〜8において同じ処理方法お よび同じポリエステル繊維織物を用いた場合と比較して、洗濯前、洗濯後およびドラ イクリー-ング後のいずれの状態においても、優れた難燃性を示し、染色性、風合い などの繊維としての諸物性も良好であることがわかる。
(2)比較例で使用した難燃性付与液により処理したポリエステル繊維織物 (比較例 1 〜8)は、その難燃性付与液を製造するために用いたリンィ匕合物が低分子量であるが ために、処理中で発煙 (比較例 1, 5)したり、あるいは吸尽量が低く難燃性が悪ぐ染 色の吸着を阻害したりする(比較例 2, 6)ことがわかる。
すなわち難燃性付与液 1および 2は、難燃性付与液 3および 4より優れた難燃性お よび諸物性を示す。これは、リンィ匕合物 1および 2は、リン化合物 3および 4より優れた 難燃性および諸物性を有して 、ることを示して 、る。
(3)リンィ匕合物 1および 2は、リンィ匕合物 3および 4と同等かそれ以上の耐加水分解性 を有していることがわかる。
これらの結果から、本発明のポリエステル繊維用の難燃剤、すなわちリン化合物 (I) を後加工により繊維に固着させる難燃性ポリエステル繊維の製造方法は、染色と同 時に難燃性を付与する処理、および予め染色された繊維に難燃性を付与する処理 のいずれにも適用できることがわかる。しかも、染色性、風合いなどの繊維としての諸 物性を低下させることがなぐ難燃剤が非ハロゲン系化合物であることから、その弊害 ち解消でさることがゎカゝる。