明 細 書
新規ポリペプチドおよびそのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、並 びにそれらの利用
技術分野
[0001] 本発明は、糖鎖、特に高マンノース型糖鎖に結合する新規ポリペプチド、およびそ のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、並びにそれらの代表的利用に関するも のである。
背景技術
[0002] 糖鎖と結合するタンパク質 (ポリペプチド)としては、マンノース結合タンパク質、線 維芽細胞増殖因子、上皮細胞増殖因子等の糖結合タンパク質、レクチン、レクチン 様物質が知られている。上記レクチンは、特定の糖鎖構造に対して特異的に結合す る性質を有するため、糖、糖鎖もしくは複合糖質を固定ィ匕したカラムを用いて精製す ることができる。レクチンの例としては、小麦胚芽レクチン、レンズマメレクチンなどが 挙げられる。
[0003] 小麦胚芽レクチンと糖鎖または糖ペプチドとの結合活性を調べたところ、小麦胚芽 レクチンは N—グリコシド結合糖鎖のうちハイブリッド型糖鎖あるいはシアル酸を有す る糖鎖または糖ペプチドとの結合性が高いことが示唆されている (非特許文献 1、 2参 照)。また、小麦胚芽レクチンは、バイセクティング N—ァセチルダルコサミンを有する 糖鎖構造を有する糖ペプチドに対し、より強い結合活性を有することが示唆されてい る (非特許文献 3参照)。
[0004] レンズマメレクチンは、単糖である a—D—マンノース、 a—D—グルコースを認識 することが知られている(非特許文献 4参照)。また、レンズマメレクチン力 Ν—グリコ シド結合糖鎖のァスパラギンに最も近 ヽ Ν -ァセチルダルコサミン残基に、 L—フコ ースが ex 1 , 6—結合した糖鎖構造を有する糖ペプチドに対して、強い結合性を示す ことが知られている (非特許文献 5、 6参照)。
[0005] ところで、抗体はその Fc領域に特異な糖鎖構造を有して 、ることが知られて 、る。
したがって、レクチンと糖鎖との結合を利用すれば抗体の精製に利用することが可能
である。レクチンを用いて抗体 (特にヒト抗体)を精製する方法としては、例えば特許 文献 1が知られている。
[0006] ニヮトリは系統発生学的には哺乳類動物よりも下等であるが、哺乳類動物と同様に 精緻な免疫システムを備えている動物である。特に哺乳類動物と系統発生学的に離 れているため、多くの哺乳類動物で保存されているタンパク質に対して特異的抗体を 作製するのに有用である。すなわちマウスやラットを用いて作製が困難なタンパク質( 抗原)に対する特異的抗体が、 -ヮトリでは作製可能であるということである。例えば、 ヒトの癌マーカーとなる抗原である N—グリコリルノィラミン酸は、ヒトを除くほとんどの 哺乳類動物に存在しているため、マウスやラット等では抗体を作製することはできな いが、 -ヮトリをはじめとする鳥類では N—グリコリルノィラミン酸が存在しないために 抗体を作製することが可能である。また、クロイツフェルト 'ヤコブ病ゃ狂牛病の病原 体となるプリオンタンパク質は、哺乳類動物間で 90%以上の相同性が有るため、哺 乳類動物では抗体を作製することは困難であるが、哺乳類動物と-ヮトリ間の相同性 は 30%台であるため、 -ヮトリにおいてその抗体の作製は可能である。事実、本発明 者等は、細胞融合法によって上記 N—グリコリルノィラミン酸、プリオンタンパク質に対 する-ヮトリ型モノクローナル抗体の作製に成功して 、る。またその他の-ヮトリ型抗 体のメリットとしては、哺乳類動物型の抗体との交叉反応性が無いため、 -ヮトリ型モ ノクローナル抗体と哺乳類動物型モノクローナル抗体を用いることによって、非特異 的反応のない高感度抗原検出系を確立することが可能なことである。
[0007] 上記のように、ニヮトリ型抗体 (ニヮトリが生産する抗体、ニヮトリが生産する抗体と同 じ構造を有する抗体)の有用性 (検査用途、医療用途等)について注目されており、 その効率的生産方法および精製方法の確立が求められている。 -ヮトリ型抗体の生 産方法については、細胞融合法、ファージディスプレイ法等の技術により確立されつ つある。しかし、その精製方法についてはいまだ確立されていないのが現状である。
[0008] -ヮトリ型抗体は、哺乳類動物の IgG抗体の精製用リガンドとして用いられるプロテ イン Aおよび Gには結合しない。したがって、哺乳類動物の方法をそのまま適用する ことができない。
[0009] 本発明者らは、ニヮトリ型抗体の精製技術を開発すベぐまずマウスモノクローナル
抗体を用いたァフィユティーカラムによる-ヮトリ型抗体の精製を試みた。しかし当該 方法では、 -ヮトリ型抗体を精製することはできな力つた。次に本発明者らは、ゲルろ 過およびイオン交換カラムを用いて-ヮトリ型抗体の精製を行なった。その結果、電 気泳動的に単一な抗体の精製に成功した。しかし当該方法は、多くのステップを要し 、煩雑であること、回収率が著しく低いこと、精製した抗体の力価が低いこと等の問題 点がめった。
[0010] そこで本発明者らは、上記問題点を解決すベぐ -ヮトリ型抗体には高マンノース 型糖鎖が結合していることを利用し、高マンノース型糖鎖と特異的に結合する植物由 来レクチン(ユキノシタ由来レクチン、レンズマメ由来レクチン、および ConA)を用い て、 -ヮトリ型抗体の精製を試みた。し力しユキノシタ由来レクチン、レンズマメ由来レ クチンを用いた場合は、 -ヮトリ型抗体がレクチンに吸着するものの、当該抗体を溶 出させることができな力つた。また ConAを用いた場合は、 -ヮトリ型抗体が吸着し、 a—メチルダルコシドによって当該抗体を溶出することができた。しかし、電気泳動的 に単一な抗体を得ることができな力つた。このことは、 -ヮトリ型抗体に結合する糖鎖 の特異的な構造に起因するものと考えられた。
[0011] -ヮトリ型抗体 (ニヮトリ型モノクローナル抗体)の糖鎖構造にっ 、ては、ほとんど解 祈されていないのが現状である。最近、 -ヮトリ卵黄抗体 (以下、「IgY抗体」という)の N—ァスパラギン結合型糖鎖(以下「N型糖鎖」という)には、 10数%のグルコースが 存在するということが報告された(Ohta, M. et al., Glycoconj. J., 8, 400-413 (1991)) 。哺乳類動物の IgG抗体の N型糖鎖にはグルコースが存在しないことから、 -ヮトリ型 抗体の糖鎖構造が特異であるということが伺える。したがって、哺乳類動物の抗体を 精製することが可能なレクチンを-ヮトリ型抗体の精製にそのまま流用することは、困 難であるといえる。なお本発明者らの糖鎖解析によれば、 -ヮトリ型抗体には、高マン ノース型糖鎖および複合型糖鎖が結合しており、糖鎖の非還元末端には複数個のグ ルコースが存在していること、特に-ヮトリ型 IgY抗体の糖鎖の非還元末端には 1個 のグルコースが存在するということが推察された。
[0012] 本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は糖鎖、特に抗体 に結合して 、る高マンノース型糖鎖、より好ましくは-ヮトリ型抗体に結合して 、る糖
鎖に結合するポリペプチド (例えば、レクチン)を発見すること、および当該ポリべプチ ドの代表的な利用例として、抗体 (特にニヮトリ型抗体)の精製方法、同精製手段を提 供することにある。さらには、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および当 該ポリペプチドと結合する抗体、並びにそれらの利用方法を提供することを目的とし ている。
〔特許文献 1〕
国際公開第 02Z30954号パンフレット (公開日:2002年 4月 18日)
〔非特許文献 1〕
Biochemistry, 16, 4426, 1977
〔非特許文献 2〕
The Journal of Biological Chemistry, 254, 4000, 1979
〔非特許文献 3〕
Biochemistry, 20, 5894, 1981
〔非特許文献 4〕
The Journal of Biologicalし hemistry, 268, 7668, 1993
〔非特許文献 5〕
Carbohydrate Research, 40, 111, 1975
〔非特許文献 6〕
Carbohydrate Research, 110, 283, 1975
発明の開示
[0013] 本発明者らは上記課題を解決すベぐレクチン、特に藻類 (海藻)由来レクチンに着 目し、 -ヮトリ型抗体に特異的な非還元末端にグルコースを有する高マンノース型糖 鎖と結合することが可能なレクチンの検索を行なった。その結果、本発明にかかるポ リペプチドを発見するに至った。
[0014] すなわち本発明にかかるポリペプチドは、上記課題を解決すベぐ糖鎖と結合する ポリペプチドであって、(a)配列番号 2に示されるアミノ酸配列;または (b)配列番号 2 に示されるアミノ酸配列において、 1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、も しくは付加されたアミノ酸配列、力 なることを特徴として 、る。
[0015] また本発明にかかるポリペプチドは、上記課題を解決すベぐ上記糖鎖が、高マン ノース型糖鎖であってもよ 、。
[0016] また本発明にかかるポリペプチドは、上記課題を解決すベぐ上記糖鎖が、非還元 末端にグルコースが少なくとも 1つ以上結合した糖鎖であってもよい。
[0017] 一方、本発明にかかる抗体は、上記課題を解決すベぐ上記本発明にかかるポリべ プチドと結合することを特徴として 、る。
[0018] 一方、本発明にかかるポリヌクレオチドは、上記課題を解決すベぐ上記本発明に 力かるポリペプチドをコードすることを特徴としている。
[0019] また、本発明に力かるポリヌクレオチドは、上記課題を解決すベぐ下記の(a)また は (b)の 、ずれかであることを特徴とする上記のポリヌクレオチド:(a)配列番号 1に示 される塩基配列力もなるポリヌクレオチド;または (b)以下の(i)もしくは (ii)の 、ずれ かとストリンジェントな条件下でノヽイブリダィズするポリヌクレオチド:(i)配列番号 1に 示される塩基配列力 なるポリヌクレオチド;もしくは (ii)配列番号 1に示される塩基配 列と相補的な塩基配列力もなるものであってもよい。
[0020] 一方、本発明にかかるベクターは、上記課題を解決すベぐ上記本発明にかかるポ リヌクレオチドを含むことを特徴として!/、る。
[0021] 一方、本発明にかかるポリペプチドの生産方法は、上記課題を解決すベぐ上記本 発明に力かるベクターを用いることを特徴として 、る。
[0022] 一方、本発明にかかる形質転換体は、上記課題を解決すベぐ上記本発明にかか るポリヌクレオチドが導入されて 、ることを特徴として!/、る。
[0023] 一方、本発明にかかるポリペプチドの生産方法は、上記課題を解決すベぐ上記本 発明にカゝかる形質転換体を用いることを特徴とする構成であってもよ 、。
[0024] 一方、本発明にかかる検出器具は、上記課題を解決すベぐ上記本発明にかかる ポリヌクレオチドが基板上に固定ィ匕されて!、ることを特徴として!/、る。
[0025] また、本発明にかかる検出器具は、上記課題を解決すベぐ上記本発明にかかる ポリペプチドが基板上に固定ィ匕されて 、る構成であってもよ!/、。
[0026] また、本発明にかかる検出器具は、上記課題を解決すベぐ上記本発明にかかる 抗体が基板上に固定化されている構成であってもよい。
[0027] 一方、ポリペプチドの精製方法は、上記課題を解決すベぐ上記本発明にかかる抗 体を用いることを特徴として 、る。
[0028] また本発明にかかる抗体の精製方法は、上記課題を解決すベぐ上記本発明にか 力るポリペプチドを用いることを特徴として 、る。また本発明に力かる抗体の精製方法 は、上記課題を解決すベぐ上記本発明に力かるポリペプチドに加え、さらに Carnin を用いる方法であってもよい。また本発明にかかる抗体の精製方法は、上記課題を 解決すベぐ上記本発明に力かるポリペプチド、および Carninのいずれか一方または 両方を用いる方法であってもよ 、。
[0029] また本発明にかかる抗体の精製方法は、上記課題を解決すベぐ上記抗体が-ヮ トリ型抗体であることを特徴として 、る。
[0030] 一方、本発明にかかる担体は、上記課題を解決すベぐ上記本発明にかかるポリべ プチドが固定ィ匕されていることを特徴としている。また本発明にかかる担体は、上記 課題を解決すベぐ上記本発明にカゝかるポリペプチドにカ卩え、さらに Carninが固定ィ匕 されていてもよい。また本発明にかかる担体は、上記課題を解決すベぐ上記本発明 にかかるポリペプチド、および Carninのいずれか一方または両方を用いるものであつ てもよい。
[0031] 本発明にかかるポリペプチドは、糖鎖、特に高マンノース型糖鎖に結合することが 可能であるため、当該ポリペプチドを用いて各種抗体の精製を行なうことができる。さ らに本発明にかかるポリペプチドは、 -ヮトリ型抗体に特異的な糖鎖、すなわち非還 元末端に少なくとも 1つ以上のグルコースが存在する高マンノース型糖鎖と結合する ことができるために、 -ヮトリ型抗体の精製に特に好適であり、精製を効率よく行なうこ とができるという効果を奏する。なお、公知のレクチン Carninについても同様に利用可 能である。
[0032] 本発明に力かるポリヌクレオチドは、上記本発明に力かるポリペプチドをコードして いる。したがって、本発明に力かるポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドを含むベタ ター、当該ポリヌクレオチドが導入された形質転換体を用いることによって、上記本発 明にかかるポリペプチドを簡便かつ大量に調製することが可能となる。
[0033] また本発明に力かる抗体は、本発明に力かるポリペプチドと結合することができる。
それゆえ当該抗体を例えば、担体に固定ィ匕しァフィ二ティークロマトグラフィーを行な うことによって、本発明に力かるポリペプチドを含む粗溶液から、当該ペプチドを効率 良く精製することができるという効果を奏する。
[0034] 本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十 分わ力るであろう。また、本発明の利益は、次の説明で明白になるであろう。
図面の簡単な説明
[0035] [図 1]ニヮトリ型抗体の糖鎖構造を示す図である。
[図 2]BML-17の全長 cDNAの塩基配列、およびその塩基配列から求めたアミノ酸配 列を示す図である。
[図 3]実施例 5において、ゥシチログロブリン固定ィ匕チップに対して各種レクチン (ESA -2、 Solnin B、 BML- 17、 Carnin、 Hypnin A- 1、 Con A)の結合、解離、溶離を行なった 結果を示すヒストグラムである。
[図 4(a)]実施例 6に示す実験において、レクチンを固定ィ匕したカラム (BML-17カラム) に、 -ヮトリ卵黄抗体を通塔し、 D—マンノースで溶離した場合のタンパク質の挙動を UV280nmの吸収 (A )でモニターした結果を示す図である。
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[図 4(b)]実施例 6に示す実験において、レクチンを固定ィ匕したカラム (Carninカラム) に、 -ヮトリ卵黄抗体を通塔し、 D—マンノースで溶離した場合のタンパク質の挙動を UV280nmの吸収 (A )でモニターした結果を示す図である。
280
[図 4(c)]実施例 6に示す実験において、レクチンを固定ィ匕したカラム (Con Aカラム)に 、 -ヮトリ卵黄抗体を通塔し、 D—マンノースで溶離した場合のタンパク質の挙動を U V280nmの吸収 (A )でモニターした結果を示す図である。
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[図 4(d)]実施例 6に示す実験において、 IgY精製用カラム (市販品)に、 -ヮトリ卵黄 抗体を通塔し、溶出ノ ッファー(市販品)で溶離した場合のタンパク質の挙動を UV2 80nmの吸収 (A )でモニターした結果を示す図である。
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[図 5(a)]実施例 7に示す実験において、レクチンを固定ィ匕したカラム (BML-17カラム) に、ハイプリドーマ培養上清を通塔し、 500mM D—マンノースで溶離した場合の、 タンパク質の挙動を UV280nmの吸収 (A )でモニターした結果を示す図である。
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[図 5(b)]実施例 7に示す実験において、レクチンを固定ィ匕したカラム (Carninカラム)
に、ハイプリドーマ培養上清を通塔し、 500mM D—マンノースで溶離した場合の、 タンパク質の挙動を UV280nmの吸収 (A )でモニターした結果を示す図である。
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[図 5(c)]実施例 7に示す実験において、レクチンを固定ィ匕したカラム (Con Aカラム) に、ハイプリドーマ培養上清を通塔し、 500mM D—マンノースで溶離した場合の、 タンパク質の挙動を UV280nmの吸収 (A )でモニターした結果を示す図である。
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[図 5(d)]実施例 7に示す実験において、レクチンを固定ィ匕したカラム(Con A-HiTrap カラム)に、ハイプリドーマ培養上清を通塔し、 500mM D—マンノースで溶離した場 合の、タンパク質の挙動を UV280nmの吸収(A )でモニターした結果を示す図で
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ある。
[図 5(e)]実施例 7に示す実験において、 IgY精製用カラム (市販品)に、ノ、イブリドー マ培養上清を通塔し、溶出バッファー (市販品)で溶離した場合の、タンパク質の挙 動を UV280nmの吸収 (A )でモニターした結果を示す図である。
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[図 6(a)]実施例 7において、各種レクチンを固定化したカラム(BML-17カラム、 Carnin カラム、 Con Aカラム、 Con A-HiTrapカラム)および IgY精製用カラムに、ハイブリド 一マ培養上清を通塔し、 500mM D—マンノースまたは溶出バッファーで溶離した場 合の溶出液を、ウェスタンプロットに供した結果を示す図である。
[図 6(b)]実施例 7において、各種レクチンを固定化したカラム(BML-17カラム、 Carnin カラム、 Con Aカラム、 Con A-HiTrapカラム)および IgY精製用カラムに、ハイブリド 一マ培養上清を通塔し、 500mM D—マンノースまたは溶出バッファーで溶離した場 合の溶出液を、 SDS— PAGEに供した結果を示す図である。
[図 7]実施例 1において、藻類(Bryopsis maxima)力 の精製画分を SDS— PAGE (1 0%ゲル)に供した結果を示す図である。
[図 8]BML-17の N末端アミノ酸の配列および、これまでに単離されたハネモ属レクチ ン(BCL、 BPL、 Bry-1、 Bry-2)の N末端アミノ酸の配列を示す図である。
[図 9]固定ィ匕チログロブリンと各種レクチンの相互作用を示すセンサーグラムである。 発明を実施するための最良の形態
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明は 、これに限定されるものではない。
[0037] 本発明にかかるポリペプチド、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、およ びこれらの利用につ 、て詳述する。
[0038] (1)ポリペプチド
本発明者らは、海藻(ォオハネモ: Bryopsis maxima)から単離したポリペプチド(以 下「BML-17」という)が、糖鎖、特に高マンノース型糖鎖、さらには、 -ヮトリ型抗体に 特異的な糖鎖 (すなわち非還元末端にグルコースが少なくとも 1つ以上結合した高マ ンノース型糖鎖)と結合すること、および当該 BML- 17が、 -ヮトリ型抗体 (IgY抗体等 )の精製に好適に利用が可能であるということを発見し、発明を完成するに至った。ま ァこ従来公知の藻類 (Carpopeltis flabellata=C. prorifera)由来レクチンでめる Carnin につ ヽても同様の効果があることを確認した。
[0039] 本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、「ペプチド」または「タンパク 質」と交換可能に使用される。本発明にかかるポリペプチドはまた、天然供給源より単 離されても、化学合成されてもよい。
[0040] 用語「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質は、その天然の環境から取り出さ れたポリペプチドまたはタンパク質が意図される。例えば、宿主細胞中で発現された 組換え産生されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の適切な技術によって実質 的に精製されている天然または組換えのポリペプチドおよびタンパク質と同様に、単 離されていると考えられる。
[0041] 本発明にかかるポリペプチドは、天然の精製産物、化学合成手順の産物、および 原核生物宿主または真核生物宿主 (例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、 昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む)力 組換え技術によって産生された産物を 含む。組換え産生手順において用いられる宿主に依存して、本発明に力かるポリべ プチドは、グリコシルイ匕され得るカゝ、または非グリコシルイ匕され得る。さら〖こ、本発明に かかるポリペプチドはまた、いくつかの場合、宿主媒介プロセスの結果として、開始の 改変メチォニン残基を含み得る。
[0042] 本発明は、本発明にかかるポリペプチドを提供する。一実施形態において、本発明 にかかるポリペプチドは、配列番号 2に示されるアミノ酸配列力 なるポリペプチド、ま たは配列番号 2に示されるアミノ酸配列力 なるポリペプチドの変異体でありかつ本
発明に力かるポリペプチドである。
[0043] 変異体としては、欠失、挿入、逆転、反復、およびタイプ置換 (例えば、親水性の残 基の別の残基への置換、し力し通常は強く親水性の残基を強く疎水性の残基には置 換しない)を含む変異体が挙げられる。特に、ポリペプチドにおける「中性」アミノ酸置 換は、一般的にそのポリペプチドの活性にほとんど影響しない。
[0044] ポリペプチドのアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸力 このポリペプチドの構造また は機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周 知である。さらに、人為的に改変させるだけではぐ天然のタンパク質において、当該 タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周 知である。
[0045] 当業者は、周知技術を使用してポリペプチドのアミノ酸配列において 1または数個 のアミノ酸を容易に変異させることができる。例えば、公知の点変異導入法に従えば 、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の塩基を変異させることができる。 また、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の部位に対応するプライマー を設計して欠失変異体または付加変異体を作製することができる。さらに、本明細書 中に記載される方法を用いれば、作製した変異体が所望の本発明にかかるか否かを 容易に決定し得る。
[0046] 好まし 、変異体は、保存性もしくは非保存性アミノ酸置換、欠失、または添加を有 する。好ましくは、サイレント置換、添加、および欠失であり、特に好ましくは、保存性 置換である。これらは、本発明にかかるポリペプチド活性を変化させない。
[0047] 代表的に保存性置換と見られるのは、脂肪族アミノ酸 Ala、 Val、 Leu,および lieの 中での 1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換;ヒドロキシル残基 Serおよび Thrの交 換、酸性残基 Aspおよび Gluの交換、アミド残基 Asnおよび Ginの間の置換、塩基性 残基 Lysおよび Argの交換、ならびに芳香族残基 Phe、 Tyrの間の置換である。
[0048] 上記に詳細に示されるように、どのアミノ酸の変化が表現型的にサイレントでありそう 力 (すなわち、機能に対して有意に有害な効果を有しそうにないか)に関するさらなる ガイダンスは、 Bowie, J. U.り「Deciphering the Message in Protein Se quences: Tolerance to Amino Acid SubstitutionsJ , Science 247 : 13
06 - 1310 (1990) (本明細書中に参考として援用される)に見出され得る。
[0049] 本実施形態に力かるポリペプチドは、糖鎖と結合するポリペプチドであって、
(a)配列番号 2に示されるアミノ酸配列;または
(b)配列番号 2に示されるアミノ酸配列において、 1個もしくは数個のアミノ酸が置換 、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列、
力もなるポリペプチドであることが好ま U、。
[0050] 上記「1個もしくはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加された」とは 、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ポリペプチド作製法により置換、欠失 、挿入、もしくは付加できる程度の数 (好ましくは 10個以下、より好ましくは 7個以下、 最も好ましくは 5個以下)のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されていることを 意味する。このような変異ポリペプチドは、上述したように、公知の変異ポリペプチド 作製法により人為的に導入された変異を有するポリペプチドに限定されるものではな ぐ天然に存在するポリペプチドを単離精製したものであってもよい。
[0051] なお、本発明にかかるポリペプチドは、アミノ酸がペプチド結合しているポリべプチ ドであればよいが、これに限定されるものではなぐポリペプチド以外の構造を含む複 合ポリペプチドであってもよい。本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド以外の 構造」としては、糖鎖やイソプレノイド基等を挙げることができるが、特に限定されるも のではない。
[0052] また、本発明にかかるポリペプチドは、付カ卩的なポリペプチドを含むものであっても よい。付カ卩的なポリペプチドとしては、例えば、 Hisや Myc、 Flag等のェピトープ標識 ポリペプチドが挙げられる。
[0053] また、本発明にかかるポリペプチドは、後述する本発明に力かるポリヌクレオチド (本 発明に力かるポリペプチドをコードする遺伝子)を宿主細胞に導入して、そのポリぺプ チドを細胞内発現させた状態であってもよいし、細胞、組織などから単離精製された 場合であってもよい。また、本発明にかかるポリペプチドは、化学合成されたものであ つてもよい。
[0054] 他の実施形態において、本発明にかかるポリペプチドは、融合タンパク質のような 改変された形態で組換え発現され得る。例えば、本発明にかかるポリペプチドの付
加的なアミノ酸、特に荷電性アミノ酸の領域が、宿主細胞内での、精製の間または引 き続く操作および保存の間の安定性および持続性を改善するために、ポリペプチド の N末端に付加され得る。
[0055] 本実施形態に力かるポリペプチドは、例えば、融合されたポリペプチドの精製を容 易にするペプチドをコードする配列であるタグ標識 (タグ配列またはマーカー配列)に N末端または C末端へ付加され得る。このような配列は、ポリペプチドの最終調製の 前に除去され得る。本発明のこの局面の特定の好ましい実施態様において、タグアミ ノ酸配列は、へキサ一ヒスチジンペプチド(例えば、 pQEベクター(Qiagen, Inc. )に おいて提供されるタグ)であり、他の中では、それらの多くは公的および Zまたは商業 的に入手可能である。例えば、 Gentzら、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 : 821 -824 (1989) (本明細書中に参考として援用される)において記載されるように、へ キサヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製を提供する。「HA」タグは、インフル ェンザ赤血球凝集素 (HA)タンパク質由来のェピトープに対応する精製のために有 用な別のペプチドであり、それは、 Wilsonら、 Cell 37 : 767 (1984) (本明細書中に 参考として援用される)によって記載されている。他のそのような融合タンパク質は、 N または C末端にて Fcに融合される本実施形態に力かるポリペプチドまたはそのフラグ メントを含む。
[0056] 別の実施形態において、本発明にかかるポリペプチドは、下記で詳述されるように 組換え生成されても、化学合成されてもよい。
[0057] 組換え生成は、当該分野において周知の方法を使用して行なうことができ、例えば 、以下に詳述されるようなベクターおよび細胞を用いて行なうことができる。
[0058] 合成ペプチドは、化学合成の公知の方法を使用して合成され得る。例えば、 Houg htenは、 4週間未満で調製されそして特徴付けられた HA1ポリペプチドセグメントの 単一アミノ酸改変体を示す 10〜20mgの 248の異なる 13残基ペプチドのような多数 のペプチドの合成のための簡単な方法を記載している。 Houghten, R. A. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82 : 5131— 5135 (1985)。この「Simultaneous Multi pie Peptide Synthesis (SMPS)」プロセスは、さらに Houghtenら(1986)の米 国特許第 4, 631, 211号に記載される。この手順において、種々のペプチドの固相
合成のための個々の榭脂は、別々の溶媒透過性パケットに含まれ、固相法に関連す る多くの同一の反復工程の最適な使用を可能にする。完全なマニュアル手順は、 50 0〜: L000以上の合成が同時に行われるのを可能にする(Houghtenら、前出、 513 4)。これらの文献は、本明細書中に参考として援用される。
[0059] 下記に詳細に記載するように、本発明にかかるポリペプチドは、抗体 (特に-ヮトリ 型抗体)の精製方法およびキットにぉ 、て有用である。
[0060] 本発明者らは、上記本発明にかかるポリペプチドが、糖鎖、特に高マンノース型糖 鎖、さらには非還元末端にグルコースが少なくとも 1つ以上結合した高マンノース型 糖鎖と結合することを見出した。ここで「糖鎖」とは、直鎖または分岐したオリゴ糖また は多糖を意味する。また上記糖鎖には、タンパク質との結合様式によって、ァスパラ ギンと結合する N—グリコシド結合糖鎖(以下、「N型糖鎖」という)、およびセリン、スレ ォニンなどと結合する O—グリコシド結合糖鎖 (以下、「0型糖鎖」という)に大別される 。さらに N型糖鎖には高マンノース型糖鎖、複合型糖鎖、混成型糖鎖がある。本発明 においては、上記糖鎖は全て含まれる。
[0061] なおオリゴ糖とは、単糖または単糖の置換誘導体が 2〜10個脱水結合して生じたも のをいう。さらに多数の単糖が結合している糖質を多糖という。多糖は、構成糖の種 類によって異なるが、ゥロン酸やエステル硫酸を多く含む糖質を酸性多糖、中性糖の みのものを中性多糖という。多糖のうち、ムコ多糖とよばれる一群の多糖は、ほとんど 力 Sタンパク質と結合しており、プロテオダリカンという。単糖とは、糖鎖の構成単位とな るもので、加水分解によってそれ以上簡単な分子にならない基本的物質である。
[0062] さらに単糖は、カルボキシル基などの酸性側鎖を有する酸性糖、ヒドロキシル基が ァミノ基で置換されたァミノ糖、それ以外の中性糖の 3つに大別される。生体内に存 在する単糖としては、酸性糖は N—ァセチルノイラミン酸や N—グリコリルノィラミン酸 (以下、「Neu5Gc」という)などのシアル酸や、ゥロン酸などがあり、アミノ糖としては N ーァセチルダルコサミン(以下、「GlcNAc」という)や N—ァセチルガラタトサミンなど があり、中性糖としてはグルコース、マンノース、ガラクトース、フコースなどがあげられ る。
[0063] また抗体に結合する糖鎖としては、 N型糖鎖の 3つの型の 、ずれも包含する。 N型
糖鎖は全て、「トリマンノシルコア」と呼ばれる〔Man a 1-6 (Man a 1-3) Man β 1- 4GlcN AC j8 1-4GlcNAc〕からなる共通母核構造を持っている。高マンノース型糖鎖とは、トリ マンノシルコアに加え、分岐構造部分に α—マンノース残基のみを含む。この糖鎖に は [Man a 1—6 (Man a 1—3) Man a 1—6 (Man a 1—3 ) Man β 1— 4GlcNAc β 1— 4GlcNAc
〕という七糖が共通の母核として含まれている。また混成型糖鎖は、複合型と高マンノ ース型の両方の特徴を併せ持つていることからそう呼ばれている。 1つまたは 2つの a—マンノシル基力 高マンノース型の場合と同様に、トリマンノシルコアの Man a 1- 6腕と結合し、複合型糖鎖の側鎖と同じものがコアの Man α 1-3腕に結合している。ト リマンノシルコアの還元末端に位置する GlcNAcの C-6位へのフコースの結合の有 無、また 13マンノシル残基の C- 4位への 13 -GlcNAcの結合(バイセクティング GlcNAc と呼ばれる)の有無は、複合型や混成型糖鎖の構造の多様性に寄与している。 3つ の N—型糖鎖の間で、複合型が最も多様な構造を含んでいる。この多様性は、主に 2つの要素で作り出され、トリマンノシルコアに 1個から 5個の側鎖がそれぞれ異なる 結合位置で結合しており、一、二、三、四、または五本側鎖糖鎖を形成している。三 本側鎖の複合型糖鎖には、 [GlcNAc β 1- 4 (GlcNAc j8 1— 2 ) Man α 1— 3〕あるい i [GlcNAc β 1- 6 (GlcNAc β 1- 2 ) Man a 1- 6〕のどちらかを含む 2つの異性体 が見つかつている。
なお上記トリマンノシルコアにぉ 、て、ァスパラギンと結合する糖鎖の末端、すなわ ち GlcNAc側の末端を還元末端、その反対側、すなわち Man側の末端を非還元末端 という。本発明者らの糖鎖解析によれば、 -ヮトリ型抗体 (ニヮトリ型 IgY抗体等)には 、高マンノース型糖鎖および複合型糖鎖が結合しており、また高マンノース型糖鎖の 非還元末端には少なくとも 1個以上のグルコースが存在しているということが分力つて いる。特に-ヮトリ型 IgY抗体の高マンノース型糖鎖の非還元末端には 1個のダルコ ースが存在すると!/、うことが分力つて 、る。図 1に-ヮトリ型抗体の糖鎖構造を示す。 図 1左側に-ヮトリ型抗体に結合する高マンノース型糖鎖の構造を示し、同図右に複 合型糖鎖の構造を示す。上述の通り、 -ヮトリ型抗体には非還元末端に 1個のダルコ ースまたは 2個のグルコースが存在している。特に-ヮトリ型 IgY抗体の糖鎖の非還 元末端には、 1個のグルコースが存在している。なお複合型糖鎖の結合については、
免疫グロブリンのクラスを問わず共通である。
[0065] ポリペプチドが糖鎖と結合するか否かは、例えば標的となる糖鎖、または糖鎖が結 合した抗体あるいは糖タンパク質等を固定ィ匕したカラムに、試験対象であるポリぺプ チドを通し、当該カラムにポリペプチドが結合した力否かをその通過液に含まれるポリ ペプチドの量、または特異的溶出剤でカラム力 溶出したポリペプチドの量により評 価することができる。また標的となる糖鎖が結合した抗体をメンブレン等に固定ィ匕し、 ピオチン、フルォレセインイソチオシァネート、ペルォキシダーゼ等で標識したポリべ プチドを用いて検出するウェスタンプロット法 (法医学の実際と研究、 37, 155, 1994 参照)、ドットブロット法 (Analytical Biochemistry, 204(1), 198, 1992参照)を用いて評 価することができる。また標的となる糖鎖、または糖鎖が結合した抗体あるいは糖タン パク質等を固定ィ匕したチップと、試験対象であるポリペプチドとの親和性を表面ブラ ズモン共鳴法 (SPR法)を用いて測定すればよい。上記方法によれば、その親和性 の有無のみならず、その強度まで測定できるために好ましい方法であるといえる。こ のとき得られる親和定数 (K )が、 10 (M— 以上、より好ましくは 103 (M— 以上、最も
A
好ましくは 104 (M— 以上であればポリペプチドと糖鎖とが結合していると判断できる
[0066] なお本発明にかかるポリペプチドは、少なくとも、配列番号 2に示されるアミノ酸配列 を含んでいればよいといえる。すなわち、配列番号 2に示されるアミノ酸配列と特定の 機能 (例えば、タグ)を有する任意のアミノ酸配列とからなるポリペプチドも本発明に 含まれることに留意すべきである。また、配列番号 2に示されるアミノ酸配列および当 該任意のアミノ酸配列は、それぞれの機能を阻害しな 、ように適切なリンカーぺプチ ドで連結されていてもよい。
[0067] つまり、本発明の目的は、本発明に力かるポリペプチドを提供することにあるのであ つて、本明細書中に具体的に記載したポリペプチド作製方法等に存するのではな 、 。したがって、上記各方法以外によって取得される本発明に力かるポリペプチドも本 発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
[0068] (2)ポリヌクレオチド
本発明は、糖鎖と結合するポリペプチド(以下「本発明にかかるポリペプチド」 t 、う
)をコードするポリヌクレオチドを提供する。本明細書中で使用される場合、用語「ポリ ヌクレオチド」は「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重 合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「核酸配列」 または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用され、デォキシリボヌクレオチド (A、 G、 Cおよび Tと省略される)の配列として示される。
[0069] 本発明に力かるポリヌクレオチドは、 RNA (例えば、 mRNA)の形態、または DNA の形態(例えば、 cDNAまたはゲノム DNA)で存在し得る。 DNAは、二本鎖または 一本鎖であり得る。一本鎖 DNAまたは RNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる) であり得るか、またはそれは、非コード鎖 (アンチセンス鎖としても知られる)であり得る
[0070] 本明細書中で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドが数個な いし数十個結合したものが意図され、「ポリヌクレオチド」と交換可能に使用される。ォ リゴヌクレオチドは、短いものはジヌクレオチド(二量体)、トリヌクレオチド (三量体)と V、われ、長 、ものは 30マーまたは 100マーと!/、うように重合して!/、るヌクレオチドの数 で表される。オリゴヌクレオチドは、より長いポリヌクレオチドのフラグメントとして生成さ れても、化合合成されてもよい。
[0071] 本発明に力かるポリヌクレオチドのフラグメントは、少なくとも 12nt (ヌクレオチド)、好 ましくは約 15nt、そしてより好ましくは少なくとも約 20nt、なおより好ましくは少なくとも 約 30nt、そしてさらにより好ましくは少なくとも約 40ntの長さのフラグメントが意図され る。少なくとも 20ntの長さのフラグメントによって、例えば、配列番号 1に示される塩基 配列からの 20以上の連続した塩基を含むフラグメントが意図される。本明細書を参 照すれば配列番号 1に示される塩基配列が提供されるので、当業者は、配列番号 1 に基づく DNAフラグメントを容易に作製することができる。例えば、制限エンドヌクレ ァーゼ切断または超音波による剪断は、種々のサイズのフラグメントを作製するため に容易に使用され得る。あるいは、このようなフラグメントは、合成的に作製され得る。 適切なフラグメント(オリゴヌクレオチド)力 Applied Bio systems Incorporated ( ABI, 850 Lincoln Center Dr. , Foster City, CA 94404) 392型シンセサ ィザ一などによって合成される。
[0072] また本発明に力かるポリヌクレオチドは、その 5 '側または 3 '側で上述のタグ標識 (タ グ配列またはマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合され得る。
[0073] 本発明はさらに、本発明に力かるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの変異 体に関する。変異体は、天然の対立遺伝子変異体のように、天然に生じ得る。「対立 遺伝子変異体」によって、生物の染色体上の所定の遺伝子座を占める遺伝子のいく つかの交換可能な形態の 1つが意図される。天然に存在しない変異体は、例えば当 該分野で周知の変異誘発技術を用いて生成され得る。
[0074] このような変異体としては、本発明に力かるポリペプチドをコードするポリヌクレオチ ドの塩基配列において 1または数個の塩基が欠失、置換、または付加した変異体が 挙げられる。変異体は、コードもしくは非コード領域、またはその両方において変異さ れ得る。コード領域における変異は、保存的もしくは非保存的なアミノ酸欠失、置換、 または付加を生成し得る。
[0075] 本発明はさらに、ストリンジェントなハイブリダィゼーシヨン条件下で、本発明にかか るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは当該ポリヌクレオチドにハイブリダィ ズするポリヌクレオチドを含む、単離したポリヌクレオチドを提供する。
[0076] 一実施形態において、本発明に力かるポリヌクレオチドは、本発明にかかるポリべ プチドをコードするポリヌクレオチドであり、かつ
(a)配列番号 2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;または
(b)配列番号 2に示されるアミノ酸配列において、 1個もしくは数個のアミノ酸が置換 、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列力もなるポリペプチドをコードするポリ ヌクレ才チド
の!、ずれかであることが好まし!/、。
[0077] 他の実施形態において、本発明に力かるポリヌクレオチドは、本発明に力かるポリ ペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、以下の(a)または (b):
(a)配列番号 1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;または
(b)以下の(i)もしくは (ii)のいずれかとストリンジェントな条件下でノヽイブリダィズす るポリヌクレ才チド:
(i)配列番号 1に示される塩基配列力 なるポリヌクレオチド;もしくは
(ii)配列番号 1に示される塩基配列と相補的な塩基配列力 なるポリヌクレオチ ド、、
の!、ずれかであることが好まし!/、。
[0078] なお、上記「ストリンジェントな条件」とは、少なくとも 90%以上の同一性、好ましくは 少なくとも 95%以上の同一性、最も好ましくは 97%の同一性が配列間に存在する時 にのみハイブリダィゼーシヨンが起こることを意味する。
[0079] 上記ハイブリダィゼーシヨンは、 Sambrookら、 Molecular Cloning, A Laborat ory Manual, 2d Ed. , Cold Spring Harbor Laboratory (1989)に記載さ れている方法のような周知の方法で行なうことができる。通常、温度が高いほど、塩濃 度が低いほどストリンジエンシーは高くなり(ハイブリダィズし難くなる)、より相同なポリ ヌクレオチドを取得することができる。ノ、イブリダィゼーシヨンの条件としては、従来公 知の条件を好適に用いることができ、特に限定しないが、例えば、 42°C、 6 X SSPE 、 50%ホルムアミド、 1%SDS、 100 /z gZml サケ精子 DNA、 5 Xデンハルト液(た だし、 1 X SSPE ;0. 18M 塩ィ匕ナトリウム、 10mMリン酸ナトリウム、 pH7. 7、 ImM EDTA。 5 Xデンハルト液; 0. 1% 牛血清アルブミン、 0. 1% フイコール、 0. 1% ポリビュルピロリドン)が挙げられる。
[0080] 本発明に力かるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、 2本鎖 DNAのみなら ず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖と!、つた各 1本鎖 DNAや RNAを 包含する。また DNAには例えばクローニングゃィ匕学合成技術またはそれらの組み合 わせで得られるような cDNAやゲノム DNAなどが含まれる。さら〖こ、本発明にかかる ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、非翻訳領域 (UTR)の配列やベクター 配列 (発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよ!/ヽ。
[0081] 本発明に力かるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを取得する方法として、公 知の技術により、本発明に力かるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを含む DN A断片を単離し、クローユングする方法が挙げられる。例えば、本発明におけるポリヌ クレオチドの塩基配列の一部と特異的にノ、イブリダィズするプローブを調製し、ゲノム DNAライブラリーや cDNAライブラリーをスクリーニングすればよ!、。このようなプロ ーブとしては、本発明に力かるポリヌクレオチドの塩基配列またはその相補配列の少
なくとも一部に特異的にハイブリダィズするプローブであれば、 、ずれの配列および
Zまたは長さのものを用いてもょ 、。
[0082] あるいは、本発明に力かるポリヌクレオチドを取得する方法として、 PCR等の増幅手 段を用いる方法を挙げることができる。例えば、本発明におけるポリヌクレオチドの cD NAのうち、 5,側および 3,側の配列(またはその相補配列)の中力もそれぞれプライ マーを調製し、これらプライマーを用いてゲノム DNA (または cDNA)等を铸型にし て PCR等を行ない、両プライマー間に挟まれる DNA領域を増幅することで、本発明 にかかるポリヌクレオチドを含む DNA断片を大量に取得できる。
[0083] 本発明に力かるポリヌクレオチドを取得するための供給源としては、特に限定されな いが、所望のポリヌクレオチドを含む生物材料であることが好ましい。特に、本発明に かかるポリペプチドの起源であるォオハネモ(Bryopsis maxima )が好ましい。ただし、 これに限定されるものではない。
[0084] なお本発明の目的は、本発明に力かるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、 および当該ポリヌクレオチドとハイブリダィズするオリゴヌクレオチドを提供することに あるのであって、本明細書中に具体的に記載したポリヌクレオチドおよびオリゴヌタレ ォチドの作製方法等に存するのではない。したがって、上記各方法以外によって取 得される本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドもまた本発明の技 術的範囲に属することに留意しなければならない。
[0085] (3)抗体
本発明は、本発明にかかるポリペプチドと特異的に結合する抗体を提供する。本明 細書中で使用される場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン (IgA、 IgD、 IgE、 IgY、 Ig G、 IgMおよびこれらの Fabフラグメント、 F (ab,) フラグメント、 Fcフラグメント)を意味
2
し、例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体、抗イディォタイ プ抗体およびヒト化抗体が挙げられるがこれらに限定されな 、。本発明に力かる抗体 は、本発明にかかるポリペプチドを発現する生物材料を選択する際に有用であり得る 。また本発明にかかるポリペプチドを含む粗溶液から、当該ペプチドを精製する際に も有用である。
[0086] 「抗体」は、種々の公知の方法(例えば、 HarLowら、「Antibodies :A laborator
y manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1988)」、岩崎ら 、「単クローン抗体 ノ、イブリドーマと ELISA、講談社(1991)」)に従えば作製するこ とがでさる。
[0087] ペプチド抗体は、当該分野に周知の方法によって作製される。例えば、 Chow, M .ら、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82 : 910— 914 ;および Bittle, F. J.ら、 J. G en. Virol. 66 : 2347— 2354 (1985) (本明細書中に参考として援用される)を参照 のこと。一般には、動物は遊離ペプチドで免疫化され得る;しかし、抗ペプチド抗体 力価はペプチドを高分子キャリア(例えば、キーホールリンペットへモシァニン (KLH )または破傷風トキソイド)にカップリングすることにより追加免疫され得る。例えば、シ スティンを含有するペプチドは、 m—マレイミドベンゾィル N ヒドロキシスクシンイミ ドエステル (MBS)のようなリンカ一を使用してキャリアにカップリングされ得、一方、 他のペプチドは、ダルタルアルデヒドのようなより一般的な連結剤を使用してキャリア にカップリングされ得る。ゥサギ、ラット、およびマウスのような動物は、遊離またはキヤ リア カップリングペプチドのいずれかで、例えば、約 100 μ gのペプチドまたはキヤ リアタンパク質および Freundのアジュバントを含むェマルジヨンの腹腔内および Zま たは皮内注射により免疫化される。いくつかの追加免疫注射が、例えば、固体表面 に吸着された遊離ペプチドを使用して ELISA法により検出され得る有用な力価の抗 ペプチド抗体を提供するために、例えば、約 2週間の間隔で必要とされ得る。免疫化 動物からの血清における抗ペプチド抗体の力価は、抗ペプチド抗体の選択により、 例えば、当該分野で周知の方法による固体支持体上のペプチドへの吸着および選 択された抗体の溶出により増加され得る。
[0088] 本明細書中で使用される場合、用語「本発明にかかるポリペプチドと特異的に結合 する抗体」は、本発明にかかるポリペプチド抗原に特異的に結合し得る完全な抗体 分子および抗体フラグメント(例えば、 Fabおよび F (ab' ) フラグメント)を含むことを
2
意味する。 Fabおよび F (ab' ) フラグメントは完全な抗体の Fc部分を欠いており、循
2
環によってさらに迅速に除去され、そして完全な抗体の非特異的組織結合をほとん ど有し得ない(Wahlら、 J. Nucl. Med. 24 : 316— 325 (1983) (本明細書中に参考 として援用される))。従って、これらのフラグメントが好ましい。
[0089] さらに、本発明に力かるポリペプチドのペプチド抗原に結合し得るさらなる抗体が、 抗イディォタイプ抗体の使用を通じて二工程手順で産生され得る。このような方法は 、抗体それ自体が抗原であるという事実を使用し、従って、二次抗体に結合する抗体 を得ることが可能である。この方法に従って、本発明にかかるポリペプチドと特異的に 結合する抗体は、動物 (好ましくは、マウス)を免疫するために使用される。次いで、こ のような動物の脾細胞はハイプリドーマ細胞を産生するために使用され、そしてハイ プリドーマ細胞は、本発明にかかるポリペプチドと特異的に結合する抗体に結合する 能力が本発明にかかるポリペプチド抗原によってブロックされ得る抗体を産生するク ローンを同定するためにスクリーニングされる。このような抗体は、本発明に力かるポリ ペプチドと特異的に結合する抗体に対する抗ィディォタイプ抗体を含み、そしてさら なる本発明にかかるポリペプチドと特異的に結合する抗体の形成を誘導するために 動物を免疫するために使用され得る。
[0090] Fabおよび F (ab' ) ならびに本発明に力かる抗体の他のフラグメントは、本明細書
2
中で開示される方法に従って使用され得ることが、明らかである。このようなフラグメン トは、代表的には、ノパイン (Fabフラグメントを生じる)またはペプシン (F (ab,) フラ
2 グメントを生じる)のような酵素を使用するタンパク質分解による切断によって産生され る。あるいは、本発明に力かるポリペプチド結合フラグメントは、組換え DNA技術の 適用または合成化学によって産生され得る。
[0091] このように、本発明にかかる抗体は、少なくとも、本発明にかかるポリペプチドを認識 する抗体フラグメント (例えば、 Fabおよび F (ab,) フラグメント)を備えていればよいと
2
いえる。すなわち、本発明にかかるポリペプチドを認識する抗体フラグメントと、異なる 抗体分子の Fcフラグメントとからなる免疫グロブリンも本発明に含まれることに留意す べきである。
[0092] つまり、本発明の目的は、本発明に力かるポリペプチドを認識する抗体を提供する ことにあるのであって、本明細書中に具体的に記載した個々の免疫グロブリンの種類 (IgA、 IgD、 IgE、 IgY、 IgGまたは IgM)、キメラ抗体作製方法、ペプチド抗原作製 方法等に存するのではない。したがって、上記各方法以外によって取得される抗体も 本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
[0093] (4)本発明にかかるポリペプチドおよび Zまたはポリヌクレオチドの利用 (4 1)ベクター
本発明は、本発明にかかるポリペプチドを生成するために使用されるベクターを提 供する。本発明に力かるベクターは、インビトロ翻訳に用いるベクターであっても組換 え発現に用いるベクターであってもよ 、。
[0094] 本発明に力かるベクターは、上述した本発明に力かるポリヌクレオチドを含むもので あれば、特に限定されない。例えば、本発明に力かるポリペプチドをコードするポリヌ クレオチドの cDNAが挿入された組換え発現ベクターなどが挙げられる。組換え発現 ベクターの作製方法としては、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどを用いる方法 が挙げられるが特に限定されない。
[0095] ベクターの具体的な種類は特に限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターを 適宜選択すればよい。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に本発明にかかる ポリヌクレオチドを発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明に 力かるポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだベクターを発現ベクターとし て用いればよい。
[0096] 発現ベクターは、好ましくは少なくとも 1つの選択マーカーを含む。このようなマーカ 一としては、真核生物細胞培養につ 、てはジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイ シン耐性、および E. coliおよび他の細菌における培養についてはテトラサイクリン耐 性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
[0097] 上記選択マーカーを用いれば、本発明に力かるポリヌクレオチドが宿主細胞に導 入されたか否か、さらには宿主細胞中で確実に発現しているカゝ否かを確認することが できる。あるいは、本発明に力かるポリペプチドを融合ポリペプチドとして発現させて もよぐ例えば、ォワンクラゲ由来の緑色蛍光ポリペプチド GFP (Green Fluoresce nt Protein)をマーカーとして用い、本発明に力かるポリペプチドを GFP融合ポリべ プチドとして発現させてもよ!、。
[0098] 上記の宿主細胞は、特に限定されるものではなぐ従来公知の各種細胞を好適に 用いることができる。具体的には、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等の細菌、 酵母 (出 酵母 Saccharomyces cerevisiae^分裂酵母; schizosaccharomvces
pombe)、線虫 (Caenorhabditis elegans)、アフリカッメガエノレ (Xenopus laevis )の卵母細胞等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。上記の宿主 細胞のための適切な培養培地および条件は当分野で周知である。
[0099] 上記発現ベクターを宿主細胞に導入する方法、すなわち形質転換法も特に限定さ れるものではなぐ電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リボソーム法、 DEAEデキストラ ン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。また、例えば、本発明にかか るポリペプチドを昆虫で転移発現させる場合には、バキュロウィルスを用いた発現系 を用いればよい。
[0100] このように、本発明に力かるベクターは、少なくとも、本発明にかかるポリペプチドを コードするポリヌクレオチドを含めばよいといえる。すなわち、発現ベクター以外のベ クタ一も、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
[0101] つまり、本発明の目的は、本発明に力かるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド を含有するベクターを提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載し た個々のベクター種および細胞種、ならびにベクター作製方法および細胞導入方法 に存するのではない。したがって、上記以外のベクター種およびベクター作製方法を 用いて取得したベクターも本発明の技術的範囲に属することに留意しなければなら ない。
[0102] (4 2)形質転換体または細胞
本発明は、上述した本発明に力かるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導 入された形質転換体または細胞を提供する。ここで「形質転換体」とは、組織または 器官だけでなぐ生物個体を含むことを意味する。
[0103] 形質転換体または細胞の作製方法 (生産方法)は特に限定されるものではな 、が、 例えば、上述した組換えベクターを宿主に導入して形質転換する方法を挙げること ができる。また、形質転換の対象となる生物も特に限定されるものではなぐ上記宿主 細胞で例示した各種微生物、植物または動物を挙げることができる。
[0104] 本発明にかかる形質転換体または細胞は、藻類もしくはその子孫、またはこれら由 来の組織であることが好ましぐォオハネモ(Bryopsis maxima)であることが特に好ま しい。
[0105] 本発明に力かるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む形質転換体は、当 該ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、当該遺伝子が発現し得るように宿主細 胞中に導入することにより得ることができる。
[0106] 以下宿主細胞として植物を用いた場合を例にして説明する。なお本発明にお!/、て 使用する宿主細胞は植物に限定されるものではない。植物体の形質転換に用いら れる組換え発現ベクターは、当該植物内で本発明に力かるポリヌクレオチドを発現さ せることが可能なベクターであれば特に限定されな 、。このようなベクターとしては、 例えば、植物細胞内でポリヌクレオチドを構成的に発現させるプロモーター(例えば、 カリフラワーモザイクウィルスの 35Sプロモーター)を有するベクター、または外的な 刺激によって誘導性に活性ィ匕されるプロモーターを有するベクターが挙げられる。
[0107] 本発明にお ヽて形質転換の対象となる植物は、植物体全体、植物器官 (例えば葉 、花弁、茎、根、種子など)、植物組織 (例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束、 柵状組織、海綿状組織など)または植物培養細胞、あるいは種々の形態の植物細胞 (例えば、懸濁培養細胞)、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどのいずれをも意味す る。形質転換に用いられる植物としては、特に限定されず、単子葉植物綱または双 子葉植物綱に属する植物の!/ヽずれでもよ 、。
[0108] 植物への遺伝子の導入には、当業者に公知の形質転換方法 (例えば、ァグロパク テリゥム法、遺伝子銃、 PEG法、エレクト口ポレーシヨン法など)が用いられる。例えば 、ァグロパクテリゥムを介する方法と直接植物細胞に導入する方法が周知である。ァ グロバタテリゥム法を用いる場合は、構築した植物用発現ベクターを適当なァグロバ クテリゥム(例えば、ァグロバタテリゥム'チュメファシエンス(Agrobacterium tumef aciens) )に導入し、この株をリーフディスク法(内宫博文著,植物遺伝子操作マ-ュ アル, 1990, 27- 31PP,講談社サイエンティフィック,東京)などに従って無菌培養 葉片に感染させ、形質転 ^¾物を得ることができる。また、 Nagelらの方法 (Micribio 1. Lett.、 67、 325 (1990) )が用いられ得る。この方法は、まず、例えば発現べクタ ーをァグロバタテリゥムに導入し、次いで、形質転換されたァグロバタテリゥムを Plant Molecular Biology Manual (S. B. Geivmら、 Academic Press Publishers )に記載の方法で植物細胞または植物組織に導入する方法である。ここで、「植物組
織」とは、植物細胞の培養によって得られるカルスを含む。ァグロパクテリゥム法を用 いて形質転換を行なう場合には、バイナリーベクター(pBI121または pPZP202など )を使用することができる。
[0109] また、遺伝子を直接植物細胞または植物組織に導入する方法としては、エレクト口 ポレーシヨン法、遺伝子銃法が知られている。遺伝子銃を用いる場合は、植物体、植 物器官、植物組織自体をそのまま使用してもよぐ切片を調製した後に使用してもよく 、プロトプラストを調製して使用してもよい。このように調製した試料を遺伝子導入装 置(例えば PDS— 1000 (BIO— RAD社)など)を用いて処理することができる。処理 条件は植物または試料によって異なる力 通常は 450〜2000psi程度の圧力、 4〜 12cm程度の距離で行なう。
[0110] 遺伝子が導入された細胞または植物組織は、まずノヽィグロマイシン耐性などの薬 剤耐性で選択され、次いで定法によって植物体に再生される。形質転換細胞から植 物体の再生は、植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行なうことが可能で ある。
[0111] 植物培養細胞を宿主として用いる場合は、形質転換は、組換えベクターを遺伝子 銃、エレクト口ポレーシヨン法などで培養細胞に導入する。形質転換の結果得られる カルスやシュート、毛状根などは、そのまま細胞培養、組織培養または器官培養に用 いることが可能であり、また従来知られている植物組織培養法を用い、適当な濃度の 植物ホルモン(オーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、アブシジン酸、エチレン、ブラ シノライドなど)の投与などによって植物体に再生させることができる。
[0112] 遺伝子が植物に導入されたカゝ否かの確認は、 PCR法、サザンハイブリダィゼーショ ン法、ノーザンノヽイブリダィゼーシヨン法などによって行なうことができる。例えば、形 質転^ ¾物から DNAを調製し、 DNA特異的プライマーを設計して PCRを行なう。 P CRは、前記プラスミドを調製するために使用した条件と同様の条件で行なうことがで きる。その後は、増幅産物についてァガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル 電気泳動またはキヤピラリー電気泳動などを行ない、臭化工チジゥム、 SYBR Gree n液などによって染色し、そして増幅産物を 1本のバンドとして検出することによって、 形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素などによって標識し
たプライマーを用いて PCRを行ない、増幅産物を検出することもできる。さら〖こ、マイ クロプレートなどの固相に増幅産物を結合させ、蛍光または酵素反応などによって増 幅産物を確認する方法も採用することができる。
[0113] 本発明に力かるポリヌクレオチドがゲノム内に組み込まれた形質転^ ¾物体カ^、つ たん得られれば、当該植物体の有性生殖または無性生殖によって子孫を得ることが できる。また、当該植物体またはその子孫、あるいはこれらのクローンから、例えば、 種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラストなどを得て、それらを基に 当該植物体を量産することができる。したがって、本発明には、本発明に力かるポリヌ クレオチドが発現可能に導入された植物体、もしくは、当該植物体と同一の性質を有 する当該植物体の子孫、またはこれら由来の組織も含まれる。
[0114] このように、本発明にかかる形質転換体または細胞は、少なくとも、本発明にかかる ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入されて 、ればよ 、と!/、える。すなわち 、組換え発現ベクター以外の手段によって生成された形質転換体または細胞も、本 発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
[0115] 本発明の目的は、本発明に力かるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入 されていることを特徴とする形質転換体または細胞を提供することにあるのであって、 本明細書中に具体的に記載した個々のベクター種および導入方法に存するのでは ない。したがって、上記以外のベクター種および細胞種、ならびにベクター作製方法 および細胞導入方法を用いて取得した形質転換体または細胞も本発明の技術的範 囲に属することに留意しなければならない。
[0116] (4 3)ポリペプチドの生産方法
本発明は、本発明にかかるポリペプチドを生産する方法を提供する。
[0117] 一実施形態において、本発明にかかるポリペプチドの生産方法は、本発明にかか るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いることを特徴とする
[0118] 本実施形態の 1つの局面において、本実施形態に力かるポリペプチドの生産方法 は、上記ベクターを無細胞タンパク質合成系に用いることが好ましい。無細胞タンパ ク質合成系を用いる場合、種々の市販のキットを用いればよい。好ましくは、本実施
形態に力かるポリペプチドの生産方法は、上記ベクターと無細胞タンパク質合成液と をインキュベートする工程を包含する。
[0119] 本実施形態の他の局面において、本実施形態に力かるポリペプチドの生産方法は 、組換え発現系を用いることが好ましい。組換え発現系を用いる場合、本発明にかか るポリヌクレオチドを組換え発現ベクターに組み込んだ後、公知の方法により発現可 能な宿主に導入し、宿主内で翻訳されて得られる上記ポリペプチドを精製すると 、う 方法などを採用することができる。組換え発現ベクターは、プラスミドであってもなくて もよぐ宿主に目的ポリヌクレオチドを導入することができればよい。好ましくは、本実 施形態に力かるポリペプチドの生産方法は、上記ベクターを宿主に導入する工程を 包含する。
[0120] このように宿主に外来ポリヌクレオチドを導入する場合、発現ベクターは、外来ポリ ヌクレオチドを発現するように宿主内で機能するプロモーターを^ aみ込んであること が好ましい。組換え的に産生されたポリペプチドを精製する方法は、用いた宿主、ポ リペプチドの性質によって異なる力 タグの利用等によって比較的容易に目的のポリ ペプチドを精製することが可能である。
[0121] 本実施形態にかかるポリペプチドの生産方法は、本発明にかかるポリペプチドを含 む細胞または組織の抽出液から当該ポリペプチドを精製する工程をさらに包含する ことが好ましい。ポリペプチドを精製する工程は、周知の方法 (例えば、細胞または組 織を破壊した後に遠心分離して可溶性画分を回収する方法)で細胞や組織から細 胞抽出液を調製した後、この細胞抽出液力 周知の方法 (例えば、硫安沈殿または エタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセル ロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ァフィユティークロマト グラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィー) によって精製する工程が好ましいが、これらに限定されない。最も好ましくは、高速液 体クロマトグラフィー(「HPLC」 )が精製のために用いられる。
[0122] 別の実施形態において、本発明にかかるポリペプチドの生産方法は、本発明にか 力るポリペプチドを天然に発現する細胞または糸且織から当該ポリペプチドを精製する ことを特徴とする。本実施形態に力かるポリペプチドの生産方法は、上述した抗体ま
たはオリゴヌクレオチドを用いて本発明に力かるポリペプチドを天然に発現する細胞 または組織を同定する工程を包含することが好ましい。また、本実施形態に力かるポ リペプチドの生産方法は、上述したポリペプチドを精製する工程をさらに包含すること が好ましい。
[0123] さらに他の実施形態において、本発明にかかるポリペプチドの生産方法は、本発明 にかかるポリペプチドをィ匕学合成することを特徴とする。当業者は、本明細書中に記 載される本発明にかかるポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて周知の化学合成技 術を適用すれば、本発明にかかるポリペプチドをィ匕学合成できることを、容易に理解 する。
[0124] 以上のように、本発明に力かるポリペプチドを生産する方法によって取得されるポリ ペプチドは、天然に存在する変異ポリペプチドであっても、人為的に作製された変異 ポリペプチドであってもよ 、。
[0125] 変異ポリペプチドを作製する方法につ!、ても、特に限定されるものではな 、。例え ば、部位特異的変異誘発法(例えば、 Hashimoto— Gotoh, Gene 152, 271— 2 75 (1995)参照)、 PCR法を利用して塩基配列に点変異を導入し変異ポリペプチド を作製する方法、またはトランスポゾンの挿入による突然変異株作製法などの周知の 変異ポリペプチド作製法を用いることによって、変異ポリペプチドを作製することがで きる。変異ポリペプチドの作製には市販のキットを利用してもよい。
[0126] このように、本発明にかかるポリペプチドの生産方法は、少なくとも、本発明にかか るポリペプチドのアミノ酸配列、または本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌ クレオチドの塩基配列に基づ 、て公知慣用技術を用いればょ 、と 、える。
[0127] つまり、本発明の目的は、本発明にかかるポリペプチドの生産方法を提供すること にあるのであって、上述した種々の工程以外の工程を包含する生産方法も本発明の 技術的範囲に属することに留意しなければならない。
[0128] (4 4)検出器具
本発明は、種々の検出器具をも提供する。本発明にかかる検出器具は、本発明に 力かるポリヌクレオチドもしくはフラグメントが基板上に固定ィ匕されたもの、または、本 発明にかかるポリペプチドもしくは抗体が基板上に固定ィ匕されたものであり、種々の
条件下において、本発明に力かるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現パター ンの検出 '測定などに利用することができる。
[0129] 一実施形態において、本発明に力かる検出器具は、本発明に力かるポリヌクレオチ ドおよび Zまたはオリゴヌクレオチドが基板上に固定ィ匕されていることを特徴とする。 本実施形態の好ましい局面において、本実施形態に力かる検出器具は、いわゆる D NAチップである。本明細書中で使用される場合、用語「DNAチップ」とは、合成した オリゴヌクレオチドを基板上に固定ィ匕した合成型 DNAチップを意味するが、これに限 定されず、 PCR産物などの cDNAを基板上に固定ィ匕した貼付け型 DNAマイクロア レイもまた包含する。 DNAチップとしては、例えば、本発明の遺伝子と特異的にハイ ブリダィズするプローブ (すなわち、本発明にカゝかるオリゴヌクレオチド)を基板 (担体) 上に固定化した DN Aチップが挙げられる。
[0130] プローブとして用いる配列は、 cDNA配列の中力 特徴的な配列を特定する公知 の方法(例えば、 SAGE法(Serial Analysis of Gene Expression法)(Scienc e 276 : 1268, 1997 ;Cell 88 : 243, 1997 ; Science 270 :484, 1995 ;Natur e 389 : 300, 1997 ;米国特許第 5, 695, 937号)等力 S挙げ、られる力 Sこれらに限定さ れない)によって決定することができる。
[0131] なお、 DNAチップの製造には、公知の方法を採用すればよい。例えば、オリゴヌク レオチドとして、合成オリゴヌクレオチドを使用する場合には、フィトリオグラフィー技術 と固相法 DNA合成技術との組み合わせにより、基板上でオリゴヌクレオチドを合成 すればよい。一方、オリゴヌクレオチドとして cDNAを用いる場合は、アレイ機を用い て基板上に張り付ければよい。
[0132] また、一般的な DNAチップと同様、パーフェクトマッチプローブ (オリゴヌクレオチド )と、当該パーフェクトマッチプローブにおいて一塩基置換されたミスマッチプローブ とを配置してポリヌクレオチドの検出精度をより向上させてもよい。さらに、異なるポリ ヌクレオチドを並行して検出するために、複数種のオリゴヌクレオチドを同一の基板上 に固定ィ匕して DNAチップを構成してもよ 、。
[0133] 本実施形態に力かる検出器具に用いる基板の材質としては、ポリヌクレオチドまた はオリゴヌクレオチドを安定して固定ィ匕することができるものであればよい。上記した
基板以外には、例えば、ポリカーボネートやブラスティックなどの合成樹脂、ガラス等 を挙げることができるが、これらに限定されない。基板の形態も特に限定されないが、 例えば、板状、フィルム状等の基板を好適に用いることができる。本実施形態の好ま しい局面において、本実施形態に力かる検出器具は、種々の生物またはその組織も しくは細胞カゝら作製した cDNAライブラリーを標的サンプルとする検出に用いられる。
[0134] 他の実施形態において、本発明に力かる検出器具は、本発明にかかるポリべプチ ドまたは抗体が基板上に固定化されていることを特徴とする。本実施形態の好ましい 局面において、本実施形態に力かる検出器具は、いわゆるプロテインチップである。
[0135] 本明細書中で使用される場合、用語「基板」は、 目的物(例えば、ポリヌクレオチド、 オリゴヌクレオチド、ポリペプチドまたはタンパク質)を担持することのできる物質が意 図され、用語「支持体」と交換可能に使用される。好ましい基板 (支持体)としては、ビ ーズ (例えば、ポリスチレンビーズ)、固相(例えば、ガラスチューブ、試薬ストリップ、 ポリスチレン製のマイクロタイタープレートまたはアミノ基結合型のマイクロタイタープ レート)などが挙げられる力 これらに限定されない。 目的物をこれらの基板に固定ィ匕 する方法は、当業者に周知であり、例えば、 Nature 357 : 519— 520 (1992) (本 明細書中に参考として援用される)に記載される。
[0136] 本実施形態に力かる検出器具に用いる基板の材質としては、ポリペプチドまたは抗 体を安定して固定ィ匕することができるものであればよい。上記した基板以外には、例 えば、ポリカーボネートやブラスティックなどの合成樹脂、ガラス等を挙げることができ るが、これらに限定されない。基板の形態も特に限定されないが、例えば、板状、フィ ルム状等の基板を好適に用いることができる。
[0137] 上記の方法以外のポリペプチドまたは抗体を基板上に固定ィ匕する方法としては、 例えば、ニトロセルロース膜や PDVF膜にポリペプチドや抗体をドットブロットの要領 でスポットする物理吸着法、または、ポリペプチドや抗体の変性を軽減するために、ス ライドガラス上にポリアクリルアミドのパッドを接合して、これにポリペプチドや抗体をス ポットする方法が挙げられる。さらに、ポリペプチドや抗体を基板表面に吸着させるだ けでなく、強固に結合させるため、アルデヒド修飾ガラスを利用した方法 (G. MacBe ath, S. L. Schreiber, Science, 289, 1760 (2000) )を用!ヽることもできる。また
、基板上でのポリペプチドの配向を揃えて固定ィ匕する方法としては、オリゴヒスチジン タグを介して、ニッケル錯体で表面修飾した基板へ固定ィ匕する方法 (H. Zhu, M. B llgm, R. Bangham, D. Hall, A. Casamayor, P. Bertone, N. Lan, R. Janse n, S. Bidlingmaier, T. Houfek, T. Mitchell, P. Miller, R. A. Dean, M. Ge rstein, M. Snyder, Science, 293, 2101 (2001) )を用いることができる。
[0138] 本実施形態の好ましい局面において、本実施形態に力かる検出器具は、種々の生 物またはその組織もしくは細胞からの抽出液を標的サンプルとする検出に用いられる
[0139] このように、本発明に力かる検出器具は、少なくとも、本発明に力かるポリヌクレオチ ドもしくはオリゴヌクレオチド、または本発明に力かるポリペプチドもしくは当該ポリべ プチドと結合する抗体が支持体上に固定化されていればよいといえる。また、本発明 にかかる検出器具は、本発明に力かるポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド、ま たは本発明にかかるポリペプチドもしくは当該ポリペプチドと結合する抗体が固定ィ匕 されている基板を備えていればよいといえる。すなわち、これらの支持体 (基板を含む )以外の構成部材を備える場合も、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべき である。
[0140] つまり、本発明の目的は、本発明に力かるポリペプチドまたは本発明に力かるポリヌ クレオチド、あるいは本発明にかかる抗体に結合するポリペプチドを検出する器具を 提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載した個々の支持体の種 類、固定ィ匕方法に存するのではない。したがって、上記支持体以外の構成部材を包 含する検出器具も本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
[0141] (4- 5)本発明に力かるポリペプチドを用いた抗体の精製
本発明で精製される抗体としては、動物に抗原を免疫することにより得られた抗血 清、動物に抗原を免疫し免疫動物の脾臓細胞より作製したハイプリドーマ細胞が分 泌するモノクローナル抗体、遺伝子組換え技術により作製された抗体、すなわち抗体 遺伝子を挿入した抗体発現ベクターを宿主細胞へ導入することにより取得された抗 体などいかなるものでもよい。また、抗体の Fc領域を融合させた融合タンパク質など も本発明では抗体として含まれる。なお精製される抗体としては、 -ヮトリ型抗体が好
ましい。本発明にかかるポリペプチドは、 -ヮトリ抗体に結合する糖鎖との親和性が高 いからである。なお-ヮトリ型抗体とは、抗原を免疫された-ヮトリが生産する抗体 (Ig Y、 IgE等)、および-ヮトリ以外の動物において生産される-ヮトリ由来の抗体と同一 構造を有する抗体をも含む。また上記抗体はモノクローナル抗体であっても、ポリクロ ーナル抗体であってもよい。その抗体については、「(3)抗体」の記載を適宜参照で きる。
[0142] 本発明にかかる抗体の精製方法は、例えば本発明にかかるポリペプチドを固定し た担体を用いたクロマトグラフィーにより達成される。本発明にかかるポリペプチドが 固定ィ匕される担体としては、ァガロース、アクリル系合成樹脂のポリマー等があげられ 、好ましくはアクリル酸エステルのポリマーがあげられる。そのほか市販のァフィ二ティ 一担体を適宜選択の上使用すればよい。例えば、 HiTrap NHS-activated HP column s Amersham Bioscienceし orp製)、 CNBr- activated Sepharose 4 Past Flow Lab Pac ks (Amersham Bioscience Corp製)が利用可能である。また、高速液体クロマトグラフ ィー(以下、「HPLC」と表記する)システムを使用する場合は、一般に市販されている HPLCシステムであれば、いかなるものでもよい。例えば、 LC— 6A (Shimadzu社製 )などがあげられる。固定ィヒの方法については、担体に応じて適宜最適な方法を適 用すればよい。
[0143] 以下に HPLCシステムを使用した精製方法の一例を示す。溶離液は、 10〜100 ( mmol/1)トリス—塩酸緩衝液、 10〜: LOO (mmol/1)リン酸緩衝液などを用いる。 pHは 7 〜8程度の間が好ましい。まず、 10〜: L00(mmol/1)トリス—塩酸緩衝液、または 10〜 100 (mmol/1)リン酸緩衝液などの初期緩衝液でカラムを充分に平衡ィ匕する。 HPLC システムにより試料を通塔し、溶出糖を含む 10〜: LOO (mmol/1)トリス—塩酸緩衝液、 または 10〜: LOO (mmol/1)リン酸緩衝液を用いて溶出させる。溶出に用いる糖は、適 宜検討の上適用すればよいが、本発明にかかるポリペプチドを固定ィ匕した場合は、 溶出に用いる糖として、 0. 02〜0. 5mol/l D—マンノースや 0. 02〜0. 5mol/l メチル - a—D—マンノシドを用いる。溶出はステップワイズ法、またはグラジェント 法により溶出する。タンパク質 (抗体)は、例えば紫外線吸収、電気泳動(SDS— PA GE等)、 ELISA法、ウェスタンプロット法などの方法により検出することができる。
[0144] なお、本発明にカゝかる抗体の精製方法は、本発明にかかるポリペプチドの代わりに 、または本発明に力かるポリペプチドにカ卩えて、従来公知のレクチンである Carninを 用いることによつても達成される。つまり本発明にかかる抗体の精製方法は、上記課 題を解決すベぐ上記本発明にかかるポリペプチドを用いる方法、上記本発明にか 力るポリペプチドにカ卩えさらに Carninを用いる方法、または、上記本発明に力かるポリ ペプチド、および Carninの!、ずれか一方または両方を用いる方法であってもよ!/、。
[0145] また本発明に力かる担体についても、同様に、上記本発明にかかるポリペプチドが 固定ィ匕されているもの、上記本発明に力かるポリペプチドに加えさらに Carninが固定 化されているもの、または、上記本発明に力かるポリペプチド、および Carninのいず れか一方または両方を用いるものであってもよい。藻類(Carpopeltis flabellata = C. p rorifera)由来 Carninにつ ヽ" t f 、『Hon, K., Matsuda, H., iyazawa, K. and Ito, K.: A mitogenic agglutinin from the red alga Carpopeltis flabellata. Phytochemistry, 26, 1335-1338 (1987)』に記載されており、本明細書中に参考として援用される。
[0146] 本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に説明される力 これに限定されるべ きではない。
実施例
[0147] [実施例 1 :藻類(Bryopsis maxima)からポリペプチド(BML-17)の単離]
(抽出液の調製および硫安沈殿)
緑藻ォオハネモ(Bryopsis maxima)の凍結乾燥粉末 12. 2gに 200mlの 20mMPB SA(Phosphate— buffer saline sodium azide ;0. 2%アジィ匕ナトリウム入り 20mM PBS ; pH7. 0)を加え、 4°Cで一晩撹拌した後、遠心分離を行なって抽出液を得た。この 操作を 3回繰り返し、抽出液 1〜3を得た。
[0148] 上記抽出液に硫安粉末を 20%飽和となるように少しずつ撹拌しながらカ卩え、この混 合液を 4°Cでー晚静置した。これを遠心分離(10, OOOrpm, 30分間)して得られた 沈殿を、 PBSAに溶解後、同溶媒に対し十分透析した。透析終了後、内液を遠心分 離し、得られた上清を 20%飽和硫安塩析沈殿画分とした。一方、 20%飽和硫安塩 析処理で得られた上清に、硫安粉末を 60%飽和となるようにカ卩え、同様に処理して、 20〜60%飽和硫安塩析沈殿画分を得た。
[0149] (凝集活性の検討)
赤血球凝集活性は、マイクロタイター法を用いて測定した。生理食塩水にて調製し た各精製画分溶液の 2倍段階希釈液、各 25 μ 1をマイクロタイタープレート上に作製 した。各希釈液に 2%赤血球浮遊液 25 1を加えて軽く撹拌し、室温で 1. 5時間静 置後、凝集能を観察した。凝集能は肉眼で判定し、赤血球の 50%以上が凝集して いる場合を陽性とした。凝集活性は凝集素価 (力価)、すなわち凝集活性を示す最大 希釈液のタンパク質の濃度で示した。
[0150] 本実施例にお!、ては、赤血球としてトリプシン処理ゥサギ赤血球 (TRBC)を用いた 。なお、赤血球浮遊液の調製は次のように行なった。まず、実験室で飼育中のゥサギ の耳から血液 2mlを採取し、これを約 50mlの生理食塩水で 3回洗浄後、 50mlの生 理食塩水をカ卩えて 2%のゥサギ赤血球浮遊液を調製した。これに 1Z10容の 0. 5% トリプシン—生理食塩水をカ卩え、 37°Cで 1. 5時間静置した。このトリプシン処理赤血 球を生理食塩水で 3回洗浄後、 45mlの生理食塩水を加え、トリプシン処理 2%ゥサ ギ赤血球浮遊液 (TRBC)とした。
[0151] トリプシン処理ゥサギ赤血球 (TRBC)に対する凝集活性成分を検討したところ、上 記抽出液 1〜3に同凝集活性が検出された。抽出液 1の総凝集活性 (THA)、および 可溶性タンパク質の含量は、抽出液 2および 3に比べて高い値を示したことから、凝 集活性成分の多くは、抽出液 1に回収されるということがわかった。また THAおよび 可溶性タンパク質の多くが 20〜60%飽和硫安塩析沈殿画分に回収されているとい うことがわ力つた。
[0152] (ゲルろ過)
抽出液 1の 20〜60%飽和硫安塩析沈殿画分を、ゲルろ過カラム (東ソ一社製、 To yopearl HW-55カラム、 4.4 X 900cm、 Vt= 1368ml)に供した。具体的には、同沈殿 画分 16mlを、 20mM PBSA (pH7. 0)で平衡化した Toyopearl HW- 55カラムに添 加し、 PBSAを用いて流速 60mlZhで溶出した。溶出液は 15ml分取し、各フラクシ ヨンの UV280nmおよび凝集活性を測定した。
[0153] (疎水クロマトグラフィー)
ゲルろ過で得られた凝集活性を有する画分 110mlを、 0. 86M硫安を含む 20mM
トリス一塩酸緩衝液 (pH7. 0)に対して透析を行ない、内液 80mlを得た。得られた 内液を、同緩衝液で平衡化した TSKgel Pheny卜 5PWカラム(7.5 X 75mm)に注入し、 20mMトリス—塩酸緩衝液, pH7.0 (溶媒 A)と、 0. 86M硫安を含む同緩衝液 (溶媒 B)の 2液を用いる濃度勾配法により溶出した。濃度勾配 [溶媒 B100% (20分)、溶 媒: BO%—溶媒 A100% (20— 60分)、溶媒 A100% (60— 90分) ]は、グラジ ント プログラマー(CCPコントローラー、東ソ一社製)を用いて設定し、流速は 0、 5mlZ分 とした。溶出液は、 UV280nmをモニターするとともに、各ピークを分取し、凝集活性 を測定した。
[0154] (SDS-PAGE)
上記疎水クロマトグラフィーで得られた凝集活性を有する画分 (精製画分)を SDS PAGE (10%ゲル)に供した。
[0155] 結果を図 7に示した。同図中レーン 1は分子量マーカー(各バンドは上から 94kDa 、 67kDa、 43kDa、 30kDa、 20. lkDa、 14. 4kDa)を示し、レーン 2は非還元下(2 —メルカプトエタノール処理なし)の精製画分を示し、レーン 3は還元下(2—メルカプ トエタノール処理あり)の精製画分を示し、同図中レーン 4は分子量マーカー(各バン ドは上力も 16. 9kDa、 14. 4kDa、 10. 7kDa、 8. 2kDa、 6. 2kDa、 2. 5kDa)を示 している。なおタンパク染色は CBB (Coomassie brilliant blue R-250)染色を行なった
[0156] 図 7より精製画分は、 SDS— PAGEにおいて非還元下で比較分子量約 17kDaの 、還元下で 18kDaの単一バンドを与えるものであった。また還元下、非還元下で分 子量が異なることから、同精製画分内にジスルフイド結合 (S— S結合)の存在が示唆 された。上記精製過程により最終的に 2.1mgの精製画分が得られた。本発明者らは 、当該精製画分を「BML-17」と命名した。
[0157] (BML-17の分子量の検討)
BML- 17、およびピリジルェチル化(PE)処理した BML- 17の 0. 1TFA— 70%ァセ トニトリル溶液(500 g/ml)を、エレクトロンスプレイイオン化質量分析 (ESI— MS、 LCQ、 Finigan)に供し分子量を測定した。
[0158] PE処理は、以下のようにした。 BML- 17 (200 §)を、 100 1の緩衝液(6Mグァ-
ジン塩酸塩および ImM EDTAを含む 0. 25M トリス一塩酸緩衝液、 pH8. 5)に 溶解し、 200 gのジチオスレィトールを添加して、容器内を窒素で置換し、 2時間静 置した。次に 2 1の 4—ビュルピリジン (ナカライテスタ製)を添加して、よく混合した。 この混合溶液を暗所でー晚静置して十分に反応させた後、超純水に対して十分透 析を行ない、塩および過剰の試薬を除去し、内液を「ピリジルェチルイ匕 (PE)処理し た BML-17Jとした。
[0159] BML-17の比較分子量は、 SDS— PAGEの結果から、非還元条件下では約 17kD a、還元条件下では 18kDaと推定された。上記 ESI— MSでの分子量測定値は 17, 293Daであった。また、 PE処理した BML-17の分子量は、 17, 945Daであった。両 者の分子量の差は 6個のピリジルェチル基の分子量にほぼ相当することから、 BML- 17は、システィン 6残基を含むと推定された。
[0160] (BML- 17のアミノ酸組成分析)
BML-17のアミノ酸組成分析は、ダブシルイ匕法を用いて行なった。なおアミノ酸組成 分析には、 PE処理した BML-17を用いた。
[0161] 上記アミノ酸組成分析の結果、 BML-17のアミノ酸組成は以下の通りであった。ァス パラギンまたはァスパラギン酸 (Asx)が 11. 8mol%、グルタミンまたはグルタミン酸( Glx)が 6. 8mol%、セリン(Ser)が 9. 6mol%、トレオニン (Thr)が 6. Omol%、グリ シン(Gly)が 11.4mol%、ァラニン (Ala)が 7. 9mol%、プロリン(Pro)が 3. 4mol% 、ノ リン (Val)が 6. 9mol%、アルギニン (Arg)が 3. 9mol%、メチォニン(Met)が 2 . 7mol%、イソロイシン(lie)が 4. 5mol%、ロイシン(Leu)が 4. 4mol%であり、フエ 二ルァラニン(Phe)が 3. 7mol%であり、リジン(Lys)が 4. 6mol%であり、ヒスチジン (His)が 2. 6mol%であり、チロシン(Tyr)が 4. 9mol%であり、トリプトファン (Trp) が 3. 4mol%であった。なおシスティン(Cys)については分析を行なわなかった。
[0162] 以上の結果力 BML-17は、従来公知のレクチンと同様にグリシンおよび酸性アミノ 酸を多く含むものであった。またセリンを多量に含むものであった。
[0163] (BML-17の N末端アミノ酸分析)
BML-17の N末端アミノ酸配列はエドマン法によるヒューレットパッカード社製の自動 分析装置:プロテインシーケンサー (G1005A型)を用いて分析を行なった。なお BML-
17の lOOpmol相当量を上記 N末端アミノ酸分析に用 、た。
[0164] 図 8に BML-17の N末端アミノ酸の配列(図中 BMLと表記)および、これまでに単離 されたハネモ属レクチン(BCL、 BPL、 Bry-1、 Bry-2)の N末端アミノ酸の配列を示した 。同図より、 BML-17は従来公知のハネモ属由来のレクチンとは N末端アミノ酸配列 が全く異なる新規レクチンであると 、うことが分力つた。 BML-17の N末端アミノ酸の配 列を配列番号 13に示し、 BCLの N末端アミノ酸の配列を配列番号 14に示し、 BPLの N末端アミノ酸の配列を配列番号 15に示し、 Bry-1の N末端アミノ酸の配列を配列番 号 16に示し、 Bry-2の N末端アミノ酸の配列を配列番号 17に示した。
[0165] (BML- 17の温度安定性および pH安定性)
トリプシン処理ゥサギ赤血球 (TRBC)に対する凝集活性を指標として、 BML-17の 温度安定性および pH安定性の検討を行なった。
[0166] BML-17の凝集活性は 60°C以上、 30分間の熱処理によって低下したことから、耐 熱性は低いということが分力つた。また同活性は pH4. 0〜: L 1. 0で安定であった。
[0167] (BML-17の 2価金属イオン要求性)
BML-17の凝集活性は、 EDTA処理後も変化しな力つた。また EDTA処理溶液の 凝集活性は 2価金属イオンを添加後も変化しな力つたことからことから、 BML-17は凝 集活性の発現に 2価金属イオンを必要としな 、と 、うことが分力つた。
[0168] (赤血球凝集阻害試験)
赤血球凝集阻害試験は以下のようにして行なった。まず生理食塩水にて調製した 糖溶液の 2倍段階希釈液、各 25 1をマイクロタイタープレート上に作製した。なお、 使用した糖類の原液の濃度は単糖および少糖の場合は 100mM、糖タンパク質の 場合は 2mgZmlとした。これに凝集素価 (力価) 4に調整した BML-17溶液、各 25 1 を加えて軽く撹拌後、室温で 1. 5時間静置した。これに 25 1の TRBCをカ卩え、室温 で 2時間静置後、凝集阻害能を観察した。凝集阻止能の有無は肉眼で判定し、赤血 球の約 100%が凝集していない場合を陽性とした。凝集阻害能 (凝集阻害活性)は、 最小阻害濃度すなわち凝集阻害能を示す最小濃度 (mMまたは mgZml)で表示し た。
[0169] なお、本赤血球凝集阻害試験には、単糖類および少糖類として D—グルコース、 D
ガラクトース、 D—マンノース、 N ァセチノレー D グノレコサミン、 N ァセチノレー D —ガラクトサミン、 D キシロース、 L フコース、フルクトース、ラタトース、ラフイノース を用い、糖タンパク質としてムチン (牛顎下腺)および該ァシァロ体、フェツェン (タイ プ III、子牛血清)および該ァシァロ体、トランスフェリン(ヒト)および該ァシァロ体、 a 1 酸性糖タンパク質 (ヒト)および該ァシァロ体、並びにイーストマンナンを用いた。
[0170] 結果を表 2に示す。 BML-17の凝集活性は、単糖類の中では D マンノースによつ て阻害された。二糖類では阻害されなカゝつた。また、糖タンパク質のなかではトランス フェリン、フニツイン、ムチン、およびそれらのァシァ口体、並びにイーストマンナンに より阻害されることがわ力 た。糖タンパク質の阻止能はムチンを除きシァロ体よりもァ シァロ体の方が強力つた。また、イーストマンナンが最も強い阻害能を示した。以上の 結果から、 BML-17は N-グリコシド型糖鎖の高マンノース型糖鎖に高 、親和性を有 するということが示唆された。
[0171] (糖鎖結合性試験)
供試糖鎖としてピリジルァミノ化糖鎖 (以下、「PA化糖鎖」 t 、う)を 44種使用した。 より具体的には、 N グリコシド型糖鎖の複合型 12種、高マンノース型 13種、混成型 3種、共通コア構造 1種および共通コア関連糖鎖 1種、糖脂質系糖鎖 8種、オリゴマン ノース 5種および PA—マンノースを用いた。上記供試糖を表 3、 4に示した。表 3、 4 には各種供試糖の糖鎖構造と、その右側に各種糖鎖の番号(1〜44)を付している。 これは各種供試糖このうち PA—オリゴマンノースを除き、他の PAィ匕糖鎖は市販品( タカラバィォ社製、 Ajinoki社製)を用いた。 PA—オリゴマンノースは、発明者らが合 成したものを用いた。
[0172] 当該糖鎖結合性試験は、遠心限外ろ過法を用いた。具体的には以下のようにした 。 50mM トリス—塩酸緩衝液(pH7. 0)で調製した 500nM BML- 17溶液 90 1 (4 5pmol)と 300nM PA化糖鎖溶液 10 l (3pmol)とを軽く混合後、室温で 60分間、 保温した。この反応液を微量遠心限外ろ過器 (NanoSpinPlus、分画分子量 10, 000、 GelmanScience)を用いて遠心ろ過(10, 000g、 30秒)し、ろ液の 1を HPLCに 供し、溶出する PA化糖鎖量を測定して遊離糖鎖量とした。次に、 50mM トリス-塩 酸緩衝液 (pH7. 0)の 90 1と PAィ匕糖鎖水溶液 10 μ 1を混合後、上記と同様の処理
を行ない、その後のろ液の 20 1を HPLCに供し、溶出する PAィ匕糖鎖量を測定して 添加糖鎖量とした。結合糖鎖量は、添加糖鎖量から反応後の遊離糖鎖量を差し引い た値として算出した。 BML-17の糖鎖結合活性は、結合率、すなわち添加糖鎖量に 対する結合糖鎖量の割合 (Binding activity (%) )で示した。なお、当該糖鎖結合性 試験は各糖鎖につき 2回ずつ行ない、糖鎖結合活性はその平均値とした。
[0173] 結果を表 5に示す。なお表 5における「01igosaccharide」の欄の 1〜44は、表 3、 4の 各種供試糖の番号に対応する。
[0174] 表 5から BML-17は、供試糖鎖中、 N グリコシド型糖鎖の高マンノース型糖鎖 (番 号 18〜28)に対して、高い結合活性を有するということがわ力つた。高マンノース型 糖鎖に対する結合活性は、非還元末端に oc 1 2マンノース(以下「 α 1— 2Manjと 表記)残基を最も多く有する糖鎖 (番号 20)が最も高カゝつたが、非還元末端の ex 1-2 Man残基の有無に関わらず結合することがわ力つた。また BML-17は、 N グリコシド 型糖鎖の共通コア構造 (番号 13)および L-Fuc含有共通コア構造 (番号 14)に結合 するだけでなぐ分岐糖鎖部分の遊離のマンノペンタサッカライド (番号 35)とも弱い ながら結合した。しかし、共通コア構造や分岐糖鎖を構成する遊離のトリマンノース( 34)やマンノジサッカライド(31〜33)とは全く結合しな力つた。さらに、番号 13の糖 鎖 (結合活性 19. 8%)と番号 34の糖鎖(同 0%)および番号 18の糖鎖(同 32.7%)、 番号 35の糖鎖(同 14. 2%)間での結合活性の比較から、 BML-17の高マンノース型 糖鎖結合性に関して分岐糖鎖部分を認識するが、還元末端部分の GlcNAc |8 1-4 GlcNAc部分も同結合に補助的に寄与していることがわかった。さらに、 BML-17の 高マンノース型糖鎖との結合には、共通コア構造の Man α 1—6アームに Man α 1 6 (Man α 1— 3)残基が付加したもの(番号 28)が最小糖鎖構造として必要である ことが、糖鎖番号 28 (同 19. 1 %)と番号 29 (同 0%)および番号 30 (同 0%)との間の 結合活性の比較から示唆された。なお、 Ν グリコシド型糖鎖の複合型糖鎖 (番号 1 、 5、 6、 10)とも弱い結合活性を示した。これは、 BML-17が共通コア構造を弱いなが ら認識することに起因すると思われる。
[0175] これまでに明らかにされている海藻由来の高マンノース型糖鎖特異的レクチンは、 いずれもマンノースを含む単糖、オリゴマンノース、高マンノース型糖鎖の共通コア構
造とは結合しない。また、それらは高マンノース型糖鎖の分岐部分を認識部位とし、 非還元末端に ex l-2Man残基を持たないものに強い結合活性を示すもの、非還元 末端にひ l— 2Man残基を持つものとのみ結合活性を示すものの 2種類に分類され ている。し力し BML-17は高マンノース型糖鎖結合特異性を持つ力 コア構造および オリゴマンノースにも弱い親和性を示し、非還元末端のひ 1— 2Man残基の有無に関 わらず結合することから、従来公知の高マンノース型糖鎖特異的レクチンとは異なる 新規レクチンであるということがわかった。したがって、 BML-17は新規の糖鎖プロ一 ブとして応用価値が高!、と!、える。
[0176] なお興味深いことに、ゲルろ過における精製画分の凝集活性は、 D— Manおよび イーストマンナンでは全く阻止されず、同画分には Con A結合性の糖タンパク質の存 在力 ウェスタンブロッテイングの結果により認められた。したがって、レクチンタンパ ク質は混在する高マンノース型糖鎖含有の糖タンパク質と会合し、疎水環境下での み解離する可能性も示唆された。
[0177] ところで、「レクチン」とは一般に、「動植物あるいは細菌で見出される免疫学的産物 にあらざる糖結合性タンパク質で、結合価が 2価以上で動植物細胞を凝集し、多糖 類や複合糖質を沈降させ、その結合特異性は単糖やオリゴ糖を用いた凝集もしくは 沈降阻害試験等で規定することができるもの」とされて ヽる。
[0178] [実施例 2 : BML- 17の cDNAのクロー-ング]
以下に示す操作を行なって、 cDNAライブラリーから BML- 17の cDNAのクロー- ングを行なった。なお特に示さない限り、標準の条件にて操作を行なった。また各種 キットを用いた場合においては、当該キットのマニュアルに記載された方法に準じて 操作を行なった。
[0179] ォオハネモ(Bryopsis maxima)の培養藻体から、 AGPC法 (Acid Guanidiumu- Phen o卜 Chloroform method )を利用して全 RNAを抽出後、 OligotexTM- dt30 mRNA Purif ication Kit (タカラバイオ製)を用いて mRNAを精製した。
[0180] 次に RT— PCRを用いて 2本鎖 cDNAを合成し、プラスミドベクターに pBSK(+)/E/ N (STRATAGENE製)の導入した。当該プラスミドベクターをコンビテントセル( E.coli DH10B )に ElectroMaxDH10B (GIBCO BRL製)を用いて導入し、 cDNAライブラリー
を構築した。
[0181] 次に、 BML-17の N末端領域のアミノ酸配列情報を基に縮重プライマーを設計した 。 BML- 17の N末端領域 10〜20残基目のアミノ酸配列(DMFAKIPMPGH:配列 番号 3)を基に縮重プライマー SP1-17を設計した。また BML-17の N末端領域 46〜5 4残基目のアミノ酸配列(AKGMVEAY:配列番号 4)を基に縮重プライマー SP2-17を 設計した。また BML-17の N末端領域 3〜13残基目のアミノ酸配列(YQDPVTSDMF E:配列番号 5)を基に縮重プライマー SP3- 17を設計した。
[0182] SP1- 17の塩基配列は、 GACATGTTCGCNAAGATYCCNATGCCNGGNCA (配列 番号 6)である。
[0183] SP2- 17の塩基配列は、 GTACGCCTCGACCACCACGCCCTTAGCATCCA (配列 番号 7)である。
[0184] SP3- 17の塩基配列は、 CCAAGACCCCGTAACTTCAGATATGTTCG (配列番号 8 )である。
[0185] SP1-17とベクターの塩基配列から設計したプライマー AP2を用いて 3 'RACEを行 ない、 3'側の未知領域を決定した。
[0186] また SP2-17とベクターの塩基配列から設計したプライマー AP3を用いて 5 'RACEを 行ない、 5'側の未知領域を決定した。
[0187] さらに SP3-17と AP3を用いて nested PCRを行なった。
[0188] なお AP2の塩基配列は、 AACCCTCACTAAAGGGAACAAAAGCTGGA (配列番 号 9)である。
[0189] また AP3の塩基配列は、 TTGTAATACGACTCACTATAGGGCGA (配列番号 10) である。
[0190] 得られた PCR産物を低融点ァガロースにより精製後、 pGEM- T Easy Vector Syste m (PROMEGA製)を用いてサブクロー-ングを行な!、、得られたクローンから精製プ ラスミドを回収して、ダイデォキシ法により塩基配列の決定を行なった。
[0191] BML-17の cDNAの塩基配列、およびその塩基配列から求めたアミノ酸配列を図 2 に示す。クロー-ングされた BML-17の cDNAは、 23アミノ酸残基からなるシグナル ペプチドの一部(図 2中、四角で囲んだ部分)と、 168アミノ酸残基力もなるポリべプチ
ドをコードして 、ることが分かった。なお上記クローユングされた cDNAの全塩基配列 を配列番号 11に示し、その推定アミノ酸配列を配列番号 12に示す。また BML-17の 塩基配列を配列番号 1に示し、その推定アミノ酸配列を配列番号 2に示した。
[0192] [実施例 3:ニヮトリ卵黄抗体 (ニヮトリ型 IgY抗体)と結合するレクチンの検索]
(供試レクチン)
藻類(海藻)由来レクチン: Eucheuma serra由来レクチン ESA- 2 (Kawakubo, A., Ma kino, H., uhnishi, J., Hirohara, H. and Hon, K.: The marine red alga Eucheuma ser ra J. Agardh, a high yielding source of two isolectins. J. Appl. PhycoL, 9, 331-338 ( 1997)参照)、 Solieria robusta由来レクチン Solnin B (Hori, K., Ikegami, S., Miyazawa, K. and Ito, K.: Mitogenic and antineoplastic isoagglutinins from the red alga Solieria robusta. Phytochemistry, 27, 2063-2067 (1988)参照。;)、 Boodlea coacta由来レクチ ン BCL (Hori, K., Miyazawa, K., and Ito, K.: Isolation and characterization of glycoc onjugate- specific isoagglutinins from a marine green alga Boodlea coacta (Dickieノ M urray et De Toni. Bot. Mar., 29, 323-328 (1986)参照。 )、 Carpopeltis flabellata由 来レクチン Carnin (Hori, K., Matsuda, H., Miyazawa, K. and Ito, K.: A mitogenic ag glutinin from the red alga Carpopeltis flabellata. Phytochemistry, 26, 1335-1338 (1 987)参照。 Hypnea japonica由来レクチン Hypnin A- 1 (Hori, K., Miyazawa, K., F usetani, N., Hashimoto, K. and Ito, K.: Hypnins, low-molecular weight peptidic aggl utinins isolated from a marine red alga, Hypnea japonica. Biochim. Biophys. Acta, 8 73, 228-236 (1986); Hori, K., Matsubara, K. and Miyazawa, K.: Primary structures of two hemagglutinins from the marine red alga, Hypnea japonica. Biocnim. Biophys . Acta, 28, 226-236 (2000)参照)、 BML- 17、 Bryopsis plumosa由来レクチン BPL- 54 、 Codium fragile由来レクチン CFA。
[0193] 陸上植物由来レクチン: Canavallia ensiformis由来レクチン Con A (Edelman, G. M. et al., PNAS, USA, 62, 2580- 2585(1972))、 Ulex europaeus由来レクチン UEA- I(Hore jsi, V. and Kocourek, J., Biochim. Biophys. Acta, 336, 329—337 (1974》、 Arachis hy pogaea由来レクチン PNA(Lotan, R. Et al., J. Biol. Chem., 250, 8518-8523(1975))、 G lycine max由来レクチン SBA(Pereira, M.E.A. et al., Crabohydr. Res., 37, 89—102(19
74》、 Triticum aestivum由来レクチン WGA(Peumans, W.J. et al, Planta, 154, 562—5 68(1982》、 Maackia amurensis由来レクチン MAH(Kawaguchi, T. et al., J. Biol. Chem ., 249, 2768-2792(1974)), Galanthus nivalis由来レクチン GNA(Van Damme, E.J.M. e t al" FEBS lett., 215, 140—144(1987》。
[0194] なお、上記陸上植物由来レクチンは、コスモノィォ株式会社等から購入した。
[0195] (方法)
上記各種レクチンと-ヮトリ卵黄抗体 (ニヮトリ型 IgY抗体)との結合性を調べた。簡 単には、表面プラズモン共鳴法(以下、「SPR法」という)を原理とする Biacore 2000 (BI ACORE社)を用いて、リガンドとして-ヮトリ卵黄抗体 (-ヮトリ型 IgY抗体)をセンサー チップ上に固定し、アナライトとして各レクチン溶液を用い、マニュアルに従って測定 した。 SPR法では、生体分子を標識することなぐ生体分子間の特異的な相互作用を 微量かつ短時間で定量的に測定できる。本法では、リガンドをセンサーチップ表面上 に固定ィ匕し、これに作用する物質 (アナライト)を含む溶液を添加すると、分子の結合 •解離により生ずる微量の質量変化が SPRシグナルの変化として検出される。質量変 ィ匕はレゾナンスゥユニット(RU)で表され、 1000RUは共鳴による反射角度 0. 1° の変 化に相当し、アナライトがリガンドに 1 ng/mm2結合したことを意味する。センサーチッ プ表面の金薄膜上にはデキストランがコーティングされており、主としてこのデキストラ ン内に導入されたカルボキシル基を介してリガンドを固定ィ匕する。
[0196] なお、アナライトとして供試したレクチンは、可能なかぎり互いに糖結合特異性が異 なるものを選択し、リガンドとして供試した-ヮトリ卵黄抗体 (ニヮトリ型 IgY抗体)は、二 ヮトリ卵黄より Eggcellent Chicken IgY Purification Kit(Pierce Chem. Co. USA)を用い て精製したものを使用した。
[0197] (結果)
上記検討の結果、藻類 (海藻)由来レクチンである ESA-2、 Solnin B、 BCL、 Carnin 、 Hypnin A-l、 BML-17、および陸上植物由来レクチンである Con A、 UEA-Iが-ヮト リ卵黄抗体 (ニヮトリ型 IgY抗体)と結合するということが分力つた。これら結合性を示し たものは、 Hypnin A-1と UEA-Iを除き、すべて高マンノース型糖鎖結合性をもつレク チンであった。
[0198] [実施例 4: -ヮトリ卵黄抗体 (ニヮトリ型 IgY抗体)とレクチンとの親和性の検討] (供試レクチン)
藻類(海藻)由来レクチン: ESA- 2、 Solnin B 、 Carnin、 Hypnin A- 1 、 BML-17 陸上植物由来レクチン: Con A
(方法)
高マンノース型糖鎖のみを有するタカアミラーゼ A (タカジアスターゼ (コウジカビ由 来、 Sankyo製)から Con A固定ィ匕カラムを用いるァフニティークロマトグラフィーにより 精製したもの)、複合型糖鎖のみを有するァシァロトランスフェリン(トランスフェリン (ヒ ト由来、 SIGMA製)から希酸処理物(脱シァルイ匕物)を ODSカラムを用いる逆相系 HP LCにより精製したもの)、高マンノース型糖鎖と複合型糖鎖の両方を有するゥシチ口 グロブリン (ゥシ由来、 SIGMA社製)、抗体 (-ヮトリ型 IgY抗体)、およびコントロールと して牛血清アルブミン(BSA、 SIGMA社製)をそれぞれ、 CM5センサーチップ(BIAC ORE製)上に固定ィ匕した。なお固定ィ匕の方法は、マニュアルに従って行なった。より 具体的にはタカアミラーゼ Aは表面チオールカップリン法で固定ィ匕を行な 、、ァシァ 口フェツイン、ゥシチログロブリン、抗体、および BSAはァミンカップリング法を用いて 固定化を行なった。なお固定化量は、 1000〜1500RUの範囲〖こなるようマニュアル インジェクション法で調整した。なお、上記糖タンパク質の純度は、 SDS— PAGEま たは MALDI - TOF - MSで確認した。
[0199] 各種糖タンパク質と各種レクチンとの親和性は SPR法で解析した。同解析に先立ち 、予備実験で解析法を検討し、非線形最小二乗法によるカイネテイクス解析が適当と 判断した。そこで、得られたセンサーグラム力もおおよその K値を算出し、 0. 1〜10
D
K [M]を濃度の目安として、 2倍希釈列で 5段階以上のアナライト (各種レクチン)溶
D
液を調製した。分析プログラムの作成には、マニュアルに従って" Customaized Applic ation"を用い、センサーチップ内の 4つのフローセルのうち、何も固定化していないフ ローセル 1をコントロールとして、糖タンパク質を固定化したフローセルからの差し引き 機能を使用した。本分析プログラム下で、アナライト (各種レクチン)溶液をそれぞれ センサーチップ上に流速 30 1/minで 3分間流した後、ノ ッファーを 3分間流し、レク チンの結合'解離量を測定した。なお、アナライト添カ卩開始 10秒前力も添加終了後 1
0秒前までの RUの増加量を結合量、ノ ッファー添カ卩開始後 10秒から添カ卩終了 10秒 前までの RU減少量を解離量とした。
[0200] 次に、 0. 5M D—マンノース、 10 mM glycine— HCl (pH4. 0)、 50mM HC1およ び lOmM NaOHを用いて、センサーチップを洗浄して再生した。得られたセンサー グラムについて、結合相と解離相を同時にカーブフィッティングさせ、結合速度定数 Ka、解離速度定数 Kd、親和定数 K、および解離定数 Kを算出した。
A D
[0201] (結果)
ニヮトリ卵黄抗体と各種レクチンとの親和定数を表 1に示した。表 1には、結合速度 定数 Ka(M— ― 、解離速度定数 Kd(s— 、親和定数 K (Μ"1),および解離定数 Κ (Μ)を
A D
示した。なお親和定数は、その値が大きくなればなるほど、親和性が高い (結合力が 強い)ことを意味する。
[0202] 表 1の結果より、試験した全てのレクチンが-ヮトリ卵黄抗体 (親和定数 K = 107〜
A
ιο τ 、およびゥシチログロブリン (親和定数 κ A =ιο7〜ιο τ と高い親和性を示 した。一方、 Carnin (親和定数 K =
A lo — と Con A (親和定数 K = 106M— はァシ
A
ァロトランスフェリンに対しても高い親和性を示した。また、 HypninA-1を除く全ての供 試レクチンはタカアミラーゼ A (親和定数 K = 107〜108M— に対して高い親和性を
A
示した。
[0203] 以上の結果より、 -ヮトリ卵黄抗体とのみ特異的に結合するレクチンを見いだすに は至らなかった。し力し、海藻レクチン 4種(ESA- 2、 Solnin B、 BML- 17、 Carnin)と- ヮトリ卵黄抗体との結合は、高マンノース型糖鎖との結合を介していることが判明した 。なお、 -ゥトリ卵黄抗体との親和性は、 BML- 17、 ESA- 2、 Hypnin A- 1、 Carnin, Con Aの j噴で高かった。
[0204] [実施例 5:各種レクチンとゥシチログロブリンとの溶離性の検討]
(方法)
-ヮトリ卵黄抗体と同様に、高マンノース型糖鎖と複合型糖鎖を有するゥシチログ口 ブリン固定ィ匕チップを用い、同チップに結合したレクチンの溶離性を検討した。なお、 チログロブリンの固定ィ匕に際しては、特異的結合および溶離を確認しやすいように C M5センサーチップ上に最大限固定化(12, 095RU)した。 HBS-EP (平衡化)バッフ
ァー(BIACORE社製)中、各 100 g/ml濃度のアナライト(レクチン)溶液を流速 5 μ 1 /minで、結合量が平衡に達するまで流した。この後、 HBS-EPバッファーで洗浄し、解 離が平衡に達した後、同バッファ一中 0. 5M D—マンノースを 50 1注入した。セン サーグラムを基に、アナライト(レクチン)溶液を 50 μ \ (5 μ &)注入した時点での結合 量 (RU)を測定した。次に、バッファー洗浄および 50 1の 0. 5Μ D—マンノース溶 液での溶出後のアナライト (レクチン)の残存結合量 (RU)を測定した。残存結合量を 最大結合量に対する割合 (%)で表示した。
[0205] (結果)
図 9に固定ィ匕チログロブリンと各種レクチンの相互作用のセンサーグラムを、図 3に 結合、洗浄および 0. 5Μ D—マンノースでの溶離後のアナライト(レクチン)の残存 結合量(%)を示した。図 3はゥシチログロブリン固定ィ匕チップに、各種レクチンを結合 させた時のチップと結合しているレクチン量を 100%とした場合において、 HBS-EPバ ッファーで解離させた後のチップと結合しているレクチン量の相対値、および 0.5Μ D —マンノースで溶離させた後のレクチン量の相対値を示している。
[0206] この結果より、 BML-17と Carninが、 D—マンノースで特異的かつ定量的に溶離する ということが分かった。一方、 ESA- 2、 Solnin B、 Hypnin A- 1は D—マンノースおよび 他の溶離液 (結果は示さず)では溶離せず、 Con Aは、 D—マンノースで一部溶離し た。
[0207] 以上の結果から、 BML-17と Carninが-ヮトリ型抗体の精製用リガンドとして利用可 能であると 、うことが分力つた。
[0208] [実施例 6 : BML- 17カラム、 Carninカラムおよび Con Aカラムを用いた-ヮトリ卵黄抗 体の精製]
(方法)
BML- 17、 Carnin, Con Aを、それぞれ HiTrap NHS- activated HP Column ( lml容ゲ ル、 (Amersham Bioscience Corp製)に固定化した。固定化の方法は、同 HiTrapカラ ムに添付のマニュアルに従って行なった。なお、 BML-17および Con Aの場合は、そ れぞれ阻害単糖である D—マンノースおよびメチル- a -D—マンノシドを終濃度 0. 2 Mとなるようにリガンド溶液に加え、活性サイトをブロックした状態で固定ィ匕した。平衡
化バッファー(0. 15M NaClおよび 0. 02% NaNを含む 0. 05Mトリス—塩酸バッ
3
ファー(pH7. 5) )で十分洗浄した後の各カラムのレクチン固定ィ匕量は、 400 /ζ 8 (ΒΜ L— 17)、 570 μ g(Carnin八 270 μ g (Con Aで &)つた。 3;た、 Hi 1'rap IgY Purification HP Column (Amersham Bioscience Corp製、 5ml容ゲル、以下「IgY精製用カラム」と いう)を比較対照として用いた。
[0209] なお、以下各種レクチンを固定化したカラムを、それぞれ「BML-17カラム」、「Carni nカラム」、「Con Aカラム」と称する。
[0210] (結果)
図 4に各種レクチンを固定化したカラム(BML- 17カラム、 Carninカラム、 Con Aカラ ム)および IgY精製用カラムに、 -ヮトリ卵黄抗体を通塔し、 D—マンノースまたは溶 出バッファーで溶離した場合の、タンパク質の挙動を UV280nmの吸収(図中「A 」
280 で示す。以下同じ。)でモニターした結果を示す。図 4 (a)は BML-17カラムの結果を 示し、図 4 (b)は Carninカラムの結果を示し、図 4 (c)は Con Aカラムの結果を示し、図 4 (d)は IgY精製用カラムの結果を示す。
[0211] -ヮトリ卵黄抗体を上記 4種類のカラムに供した結果、全てのカラムに同抗体が結 合した。また 20mM、 200mM、 500mMの D—マンノースで溶離を行なった結果、 B ML-17カラムおよび Carninカラムは、 D—マンノースで-ヮトリ卵黄抗体を特異的に溶 離させることが可能であるということが分力つた(図 4 (a)、(b)参照)。なお、後出する 図 5に示すように、 -ヮトリ卵黄抗体の回収率の点から、 BML-17カラムが最も有効で めつに。
[0212] 一方、 Con Aカラムでは 200mMメチル- a -D—マンノシドで溶離がみられたが、( 図 4 (c)参照)、チオール親和性をァフィユティー原理とする市販品の IgY精製用カラ ムでの精製効率は、著しく低力つた(図 4 (d)、および後出する図 5参照)。
[0213] [実施例 7 : BML- 17カラム、 Carninカラムおよび Con Aカラムを用いたハイプリドーマ 培養上清からの-ヮトリモノクローナル抗体の精製]
(方法)
上記 BML- 17カラム、 Carninカラム、 Con Aカラム、 IgY精製用カラムおよび Con A S epharose 4B Lab Packsカフム、 mersham Bioscience Corp製、 下「市 ¾Con Aカフ
ム」という)(5ml容ゲル、固定化 Con A量 10〜16mg/ml)を用いて、ハイプリドーマ培 養上清力も-ヮトリモノクローナル抗体の精製を試みた。
[0214] より具体的には、ハイプリドーマ培養上清の 5ml (巿販 Con Aカラムの場合は 2. 5ml )を各カラムに直接添加し、カラムを 1M NaClで十分洗浄後、レクチンを固定ィ匕した カラムの場合は 500mM D—マンノースまたは 500mMメチル - a - D—マンノシド、 I gY精製用カラムの場合はマニュアル指定の溶出バッファーで溶出し、各溶出液を S DS- PAGE (4〜20%グラジェントゲル(e-パジエル、 ATTO製))に供した。バンド検 出は、 CBB染色およびウェスタンプロット法で行なった。また溶出液の活性-ヮトリ型 モノクローナル抗体の定量は、サンドイッチ ELIS A法を用いて行なった。なお、ゥェ スタンプロッテイングでは、西洋ヮサビパーォキシダーゼ (HRP)標識ャギ抗-ヮトリ Ig G抗体 (コスモバイオ社製)、発色にはコ-カイムノスティン— HRP (生化学工業製)を 用いた。
[0215] ノヽイブリドーマは、 -ヮトリ B細胞株由来の MUH1と DNP- KLH免疫-ヮトリ脾細胞と の融合によって得られた抗 DNP抗体産生の B4Cellで、これを 10% FBSイスコブ培 地中、 38. 5°Cで 5% CO下、 4〜5日培養した培養液の遠心上清を上記試験に供
2
した。本ハイブリドーマは本発明者等が作製した。
[0216] なおサンドイッチ ELISA法は、マイクロプレートを用いて行なった。 50 μ 1の DNP— BSA溶液(10 μ g/ml)をプレート内の各ゥエルに添カ卩し、 4°Cで 16時間静置して同 抗原を固相化した。各ゥエルを 0. 2%スキムミルク含有 PBSでブロッキングし、 0. 5% Tween20を含む PBSで洗浄後、 0. 1%スキムミルクを含む PBSで調製した検液 50 1を各ゥエルに添カ卩し、 37°Cで 1時間静置した。このプレートを洗浄後、 0. 1%スキ ムミルクを含む PBSで調製した HRP標識ャギ抗-ヮトリ IgG抗体溶液(1 μ g/ml) 50 1を各ゥエルに添加し、 37°Cで 1時間静置した。このプレートを十分洗浄後、各ゥエル に 100 1の発色液 (コ-カイムノスティン)をカ卩え、室温で 10分静置した。各ゥエルの 415nmの吸光度をマイクロプレートリーダー(BIO- RAD Nodel 550)で測定した。なお 、標準検量線は、 -ヮトリ型抗 DNP-KLHモノクローナル抗体標品を同様の測定に供 して作成した。
[0217] (結果)
図 5に各種レクチンを固定化したカラム(BML- 17カラム、 Carninカラム、 Con Aカラ ム、 Con A-HiTrapカラム)および IgY精製用カラムに、ハイプリドーマ培養上清を通 塔し、 500mM D—マンノースまたは溶出バッファーで溶離した場合の、タンパク質 の挙動を UV280nmの吸収(図中「A 」で示す)でモニターした結果を示す。図 5 (a
280
)は BML-17カラムの結果を示し、図 5 (b)は Carninカラムの結果を示し、図 5 (c)は Co n Aカラムの結果を示し、図 5 (d)は巿販 Con Aカラムの結果を示し、図 5 (e)は IgY精 製用カラムの結果を示す。
[0218] また図 6に溶出液をウェスタンブロット(図 6 (a) )および SDS— PAGE (図 6 (b) )で 分析した結果を示した。レーン 1および 11は分子量マーカーを示し、レーン 2および 10は-ヮトリモノクローナル抗体標品を示し、レーン 3は 10% FBSイスコブ培地を示 し、レーン 4はハイブリドーマ培養上清を示し、レーン 5は BML- 17カラムの溶出画分 を示し、レーン 6は Carninカラムの溶出画分を示し、レーン 7は Con Aカラムの溶出画 分を示し、レーン 8は IgY精製用カラムの溶出画分を示し、レーン 9は巿販 Con Aカラ ムの溶出画分を示した。
[0219] 図 5、 6によれば、 BML-17カラムおよび Carninカラムを用いることにより、ハイブリド 一マ培養上清力もワンステップで高純度の-ヮトリモノクローナル抗体を精製すること ができるということがわかった。一方、市販されている Con A-HiTrapカラムや IgY精 製用カラムでの精製標品は多量の夾雑物を含むものであった。
[0220] また表 6に、各種カラムについて、ハイプリドーマ培養上清力も活性型の-ヮトリ型 モノクローナル抗体の精製効率を示した。
[0221] 表 6より、固定化リガンド量当たりの活性-ヮトリ型モノクローナル抗体の収率は BML -17カラムが最も高ぐ次 、で Carninカラムが高!、ことがわかった。
[0222] 以上の結果より、 BML-17カラムおよび Carninカラムを用いることにより、従来のよう に-ヮトリモノクローナル抗体をハイプリドーマ培養上清力も古典的なタンパク質精製 法を多段階組み合わせて精製する必要が無ぐきわめて簡便に精製を行なうことが できる。
[0223] 本発明は上述した実施形態に限定されるものではなぐ請求項に示した範囲で種 々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段
を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる,
[0224] [各実施例における表]
[0225] [表 1] 結合速度定数 解離速度定数 親和定数 解離定数 レクチン
katM-'s"1] kd[s -】] ΚΑ[Μ-ι] KD[M]
ESA-2 3.52 105 4.55 x 10-3 7.73 107 1.29 10-8
Solnin B 1.62 105 5.64 x 10- 3 2.88 107 3.47 x 10-8
BML-17 4.90 X 10s 5.86 X 10-3 8.36 107 1.20 Χ 10·8
Carnin 1.13 X 105 1.72 x 10-3 6.57 107 1.52 x 10-8
Hypnin A-l 2.12 104 2.98 10-4 7.10 107 1.41 10-8
Con A 4.67 X 102 2.49 10-5 1.87 X 107 5.34 lO"8
[0226] [表 2]
Carbohydrate and glycoprotein Minimum inhibitory
concentration (mM or ig/ml)
Monosaccharide (mM )
D-Glucose
D-Galactose
D-Mannose 12.5
N-Acetyl-D gkicosamine
N-Acetyl-D-galactosamine
Fructose
D-Xylose
L-Fucose
Oligosaccharide (mM )
Lactose
Raffinose
Glycoprotein (^ g/mi )
Transferrin
Asialotransfeirin
Fetuin
Asialofetuin
ot I -Acid glycoprotein
Asialo- l-acid glycoprotein
Yeast mannan
Mucin
Asialomucin
-; No inhibition at lOOraM of mono- or oligosaccharides, or at 2mg/ml of glycoproteins
R, GN β 1-4GN-PA; R*, GN β l-4(Fuc a 1-6)GN-PA; GA, Galactose; GAN, N-acetyl galactosamine; G, Glucose; GN, N-acetyl glucosamine; M, Mannose; PA, Pyridylaminated.
Complex type N-glycan Core and relative
GAil-4GN^l-2Mal
GA01- 4GN;51-2Ma "5
GN51-2 al
11
Mai
12
R GN β 1-4GN-PA; R*, GN β l-4(Fuc a 1-6)GN-PA; GA, Galactose; GAN, N-acetyl galactosamine; G, Glucose; GN, N-acetyl glucosamine; M, Mannose; PA, Pyndylaminated.
High mannose type N- lycan Oligomannose
Μα1/ΰ \ ^l-R 23 Sugar chain of glycoapid
α1-2Μαί-2 α:1'/ι
GA - 3GAN - 4GA/31-4G - PA 37
GAN31-4GAi31-4G-f>A 38
GAN β 1 -3GA a 1 -4GA β 1 -4G-PA 40 Mal/3 \6 Μβΐ-R 26 GAN a l-3GANi 1-3GA a 1-4GA^ 1-4G-PA 41
M0!
Ma
Oligosaccharide Binding activity (%) Oligosaccharide Binding activity (%)
Com lex type High mannose type
13.5 32.6
7.0 49.4
1.5 47.5
1.0 28.1
10.2 53.0
10.6 54.1
0.9 19.1
0 0
9.0 0
13.6
Oligpmannose
8.3
2 7.0 3 1 0
21 41.0 7.: a; Not tested
ァフィ二ティ-カラム カラム容量 リガンド量 ミ翻ニヮトリ型モノクローナル抗体量 1 m ' mg ) 添加試料 溶出(精製 )画分
BML - 17固定化カラム 1 0.40 9.63 2.17
Carnin固定化カラム 1 0.57 9.63 1.85
IgY精製 m刀フ厶 5 1 R 9.63 0.67 市販 Con A刀フム 5 50-60 4.82 2.06
産業上の利用可能性
以上のように、本発明のペプチドは抗体、特に-ヮトリ型抗体 (ポリクローナル抗体、 モノクローナル抗体等)の精製に利用が可能である。 -ヮトリ型抗体を始めとする抗 体は医療分野において有用であるため、本発明は、医療産業、薬品産業、検査薬に 関する産業等広く利用が可能である。