本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明は、これに限定されるものではない。
本発明にかかるポリペプチド、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、およびこれらの利用について詳述する。
(1)ポリペプチド
本発明者らは、海藻(オオハネモ:Bryopsis maxima)から単離したポリペプチド(以下「BML−17」という)が、糖鎖、特に高マンノース型糖鎖、さらには、ニワトリ型抗体に特異的な糖鎖(すなわち非還元末端にグルコースが少なくとも1つ以上結合した高マンノース型糖鎖)と結合すること、および当該BML−17が、ニワトリ型抗体(IgY抗体等)の精製に好適に利用が可能であるということを発見し、発明を完成するに至った。また従来公知の藻類(Carpopeltis flabellata=C.prorifera)由来レクチンであるCarninについても同様の効果があることを確認した。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、「ペプチド」または「タンパク質」と交換可能に使用される。本発明にかかるポリペプチドはまた、天然供給源より単離されても、化学合成されてもよい。
用語「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質は、その天然の環境から取り出されたポリペプチドまたはタンパク質が意図される。例えば、宿主細胞中で発現された組換え産生されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の適切な技術によって実質的に精製されている天然または組換えのポリペプチドおよびタンパク質と同様に、単離されていると考えられる。
本発明にかかるポリペプチドは、天然の精製産物、化学合成手順の産物、および原核生物宿主または真核生物宿主(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生された産物を含む。組換え産生手順において用いられる宿主に依存して、本発明にかかるポリペプチドは、グリコシル化され得るか、または非グリコシル化され得る。さらに、本発明にかかるポリペプチドはまた、いくつかの場合、宿主媒介プロセスの結果として、開始の改変メチオニン残基を含み得る。
本発明は、本発明にかかるポリペプチドを提供する。一実施形態において、本発明にかかるポリペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの変異体でありかつ本発明にかかるポリペプチドである。
変異体としては、欠失、挿入、逆転、反復、およびタイプ置換(例えば、親水性の残基の別の残基への置換、しかし通常は強く親水性の残基を強く疎水性の残基には置換しない)を含む変異体が挙げられる。特に、ポリペプチドにおける「中性」アミノ酸置換は、一般的にそのポリペプチドの活性にほとんど影響しない。
ポリペプチドのアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、このポリペプチドの構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけではく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。
当業者は、周知技術を使用してポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸を容易に変異させることができる。例えば、公知の点変異導入法に従えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の塩基を変異させることができる。また、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の部位に対応するプライマーを設計して欠失変異体または付加変異体を作製することができる。さらに、本明細書中に記載される方法を用いれば、作製した変異体が所望の本発明にかかるか否かを容易に決定し得る。
好ましい変異体は、保存性もしくは非保存性アミノ酸置換、欠失、または添加を有する。好ましくは、サイレント置換、添加、および欠失であり、特に好ましくは、保存性置換である。これらは、本発明にかかるポリペプチド活性を変化させない。
代表的に保存性置換と見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの中での1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換;ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基Phe、Tyrの間の置換である。
上記に詳細に示されるように、どのアミノ酸の変化が表現型的にサイレントでありそうか(すなわち、機能に対して有意に有害な効果を有しそうにないか)に関するさらなるガイダンスは、Bowie,J.U.ら「Deciphering the Message in Protein Sequences:Tolerance to Amino Acid Substitutions」,Science 247:1306−1310(1990)(本明細書中に参考として援用される)に見出され得る。
本実施形態にかかるポリペプチドは、糖鎖と結合するポリペプチドであって、
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列;または
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列、
からなるポリペプチドであることが好ましい。
上記「1個もしくはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ポリペプチド作製法により置換、欠失、挿入、もしくは付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、最も好ましくは5個以下)のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されていることを意味する。このような変異ポリペプチドは、上述したように、公知の変異ポリペプチド作製法により人為的に導入された変異を有するポリペプチドに限定されるものではなく、天然に存在するポリペプチドを単離精製したものであってもよい。
なお、本発明にかかるポリペプチドは、アミノ酸がペプチド結合しているポリペプチドであればよいが、これに限定されるものではなく、ポリペプチド以外の構造を含む複合ポリペプチドであってもよい。本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド以外の構造」としては、糖鎖やイソプレノイド基等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
また、本発明にかかるポリペプチドは、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。付加的なポリペプチドとしては、例えば、HisやMyc、Flag等のエピトープ標識ポリペプチドが挙げられる。
また、本発明にかかるポリペプチドは、後述する本発明にかかるポリヌクレオチド(本発明にかかるポリペプチドをコードする遺伝子)を宿主細胞に導入して、そのポリペプチドを細胞内発現させた状態であってもよいし、細胞、組織などから単離精製された場合であってもよい。また、本発明にかかるポリペプチドは、化学合成されたものであってもよい。
他の実施形態において、本発明にかかるポリペプチドは、融合タンパク質のような改変された形態で組換え発現され得る。例えば、本発明にかかるポリペプチドの付加的なアミノ酸、特に荷電性アミノ酸の領域が、宿主細胞内での、精製の間または引き続く操作および保存の間の安定性および持続性を改善するために、ポリペプチドのN末端に付加され得る。
本実施形態にかかるポリペプチドは、例えば、融合されたポリペプチドの精製を容易にするペプチドをコードする配列であるタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)にN末端またはC末端へ付加され得る。このような配列は、ポリペプチドの最終調製の前に除去され得る。本発明のこの局面の特定の好ましい実施態様において、タグアミノ酸配列は、ヘキサ−ヒスチジンペプチド(例えば、pQEベクター(Qiagen,Inc.)において提供されるタグ)であり、他の中では、それらの多くは公的および/または商業的に入手可能である。例えば、Gentzら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821−824(1989)(本明細書中に参考として援用される)において記載されるように、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製を提供する。「HA」タグは、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)タンパク質由来のエピトープに対応する精製のために有用な別のペプチドであり、それは、Wilsonら、Cell 37:767(1984)(本明細書中に参考として援用される)によって記載されている。他のそのような融合タンパク質は、NまたはC末端にてFcに融合される本実施形態にかかるポリペプチドまたはそのフラグメントを含む。
別の実施形態において、本発明にかかるポリペプチドは、下記で詳述されるように組換え生成されても、化学合成されてもよい。
組換え生成は、当該分野において周知の方法を使用して行なうことができ、例えば、以下に詳述されるようなベクターおよび細胞を用いて行なうことができる。
合成ペプチドは、化学合成の公知の方法を使用して合成され得る。例えば、Houghtenは、4週間未満で調製されそして特徴付けられたHA1ポリペプチドセグメントの単一アミノ酸改変体を示す10〜20mgの248の異なる13残基ペプチドのような多数のペプチドの合成のための簡単な方法を記載している。Houghten,R.A.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5131−5135(1985)。この「Simultaneous Multiple Peptide Synthesis(SMPS)」プロセスは、さらにHoughtenら(1986)の米国特許第4,631,211号に記載される。この手順において、種々のペプチドの固相合成のための個々の樹脂は、別々の溶媒透過性パケットに含まれ、固相法に関連する多くの同一の反復工程の最適な使用を可能にする。完全なマニュアル手順は、500〜1000以上の合成が同時に行われるのを可能にする(Houghtenら、前出、5134)。これらの文献は、本明細書中に参考として援用される。
下記に詳細に記載するように、本発明にかかるポリペプチドは、抗体(特にニワトリ型抗体)の精製方法およびキットにおいて有用である。
本発明者らは、上記本発明にかかるポリペプチドが、糖鎖、特に高マンノース型糖鎖、さらには非還元末端にグルコースが少なくとも1つ以上結合した高マンノース型糖鎖と結合することを見出した。ここで「糖鎖」とは、直鎖または分岐したオリゴ糖または多糖を意味する。また上記糖鎖には、タンパク質との結合様式によって、アスパラギンと結合するN−グリコシド結合糖鎖(以下、「N型糖鎖」という)、およびセリン、スレオニンなどと結合するO−グリコシド結合糖鎖(以下、「O型糖鎖」という)に大別される。さらにN型糖鎖には高マンノース型糖鎖、複合型糖鎖、混成型糖鎖がある。本発明においては、上記糖鎖は全て含まれる。
なおオリゴ糖とは、単糖または単糖の置換誘導体が2〜10個脱水結合して生じたものをいう。さらに多数の単糖が結合している糖質を多糖という。多糖は、構成糖の種類によって異なるが、ウロン酸やエステル硫酸を多く含む糖質を酸性多糖、中性糖のみのものを中性多糖という。多糖のうち、ムコ多糖とよばれる一群の多糖は、ほとんどがタンパク質と結合しており、プロテオグリカンという。単糖とは、糖鎖の構成単位となるもので、加水分解によってそれ以上簡単な分子にならない基本的物質である。
さらに単糖は、カルボキシル基などの酸性側鎖を有する酸性糖、ヒドロキシル基がアミノ基で置換されたアミノ糖、それ以外の中性糖の3つに大別される。生体内に存在する単糖としては、酸性糖はN−アセチルノイラミン酸やN−グリコリルノイラミン酸(以下、「Neu5Gc」という)などのシアル酸や、ウロン酸などがあり、アミノ糖としてはN−アセチルグルコサミン(以下、「GlcNAc」という)やN−アセチルガラクトサミンなどがあり、中性糖としてはグルコース、マンノース、ガラクトース、フコースなどがあげられる。
また抗体に結合する糖鎖としては、N型糖鎖の3つの型のいずれも包含する。N型糖鎖は全て、「トリマンノシルコア」と呼ばれる〔Man α1−6(Man α1−3)Man β1−4GlcNAc β1−4GlcNAc〕からなる共通母核構造を持っている。高マンノース型糖鎖とは、トリマンノシルコアに加え、分岐構造部分にα−マンノース残基のみを含む。この糖鎖には〔Man α1−6(Man α1−3)Man α1−6(Man α1−3)Man β1−4GlcNAc β1−4GlcNAc〕という七糖が共通の母核として含まれている。また混成型糖鎖は、複合型と高マンノース型の両方の特徴を併せ持っていることからそう呼ばれている。1つまたは2つのα−マンノシル基が、高マンノース型の場合と同様に、トリマンノシルコアのMan α1−6腕と結合し、複合型糖鎖の側鎖と同じものがコアのMan α1−3腕に結合している。トリマンノシルコアの還元末端に位置するGlcNAcのC−6位へのフコースの結合の有無、またβマンノシル残基のC−4位へのβ−GlcNAcの結合(バィセクテイングGlcNAcと呼ばれる)の有無は、複合型や混成型糖鎖の構造の多様性に寄与している。3つのN−型糖鎖の間で、複合型が最も多様な構造を含んでいる。この多様性は、主に2つの要素で作り出され、トリマンノシルコアに1個から5個の側鎖がそれぞれ異なる結合位置で結合しており、一、二、三、四、または五本側鎖糖鎖を形成している。三本側鎖の複合型糖鎖には、〔GlcNAc β1−4(GlcNAc β1−2)Man α1−3〕あるいは〔GlcNAc β1−6(GlcNAc β1−2)Man α1−6〕のどちらかを含む2つの異性体が見つかっている。
なお上記トリマンノシルコアにおいて、アスパラギンと結合する糖鎖の末端、すなわちGlcNAc側の末端を還元末端、その反対側、すなわちMan側の末端を非還元末端という。本発明者らの糖鎖解析によれば、ニワトリ型抗体(ニワトリ型IgY抗体等)には、高マンノース型糖鎖および複合型糖鎖が結合しており、また高マンノース型糖鎖の非還元末端には少なくとも1個以上のグルコースが存在しているということが分かっている。特にニワトリ型IgY抗体の高マンノース型糖鎖の非還元末端には1個のグルコースが存在するということが分かっている。図1にニワトリ型抗体の糖鎖構造を示す。図1左側にニワトリ型抗体に結合する高マンノース型糖鎖の構造を示し、同図右に複合型糖鎖の構造を示す。上述の通り、ニワトリ型抗体には非還元末端に1個のグルコースまたは2個のグルコースが存在している。特にニワトリ型IgY抗体の糖鎖の非還元末端には、1個のグルコースが存在している。なお複合型糖鎖の結合については、免疫グロブリンのクラスを問わず共通である。
ポリペプチドが糖鎖と結合するか否かは、例えば標的となる糖鎖、または糖鎖が結合した抗体あるいは糖タンパク質等を固定化したカラムに、試験対象であるポリペプチドを通し、当該カラムにポリペプチドが結合したか否かをその通過液に含まれるポリペプチドの量、または特異的溶出剤でカラムから溶出したポリペプチドの量により評価することができる。また標的となる糖鎖が結合した抗体をメンブレン等に固定化し、ビオチン、フルオレセインイソチオシアネート、ペルオキシダーゼ等で標識したポリペプチドを用いて検出するウエスタンブロット法(法医学の実際と研究、37,155,1994参照)、ドットブロット法(Analytical Biochemistry,204(1),198,1992参照)を用いて評価することができる。また標的となる糖鎖、または糖鎖が結合した抗体あるいは糖タンパク質等を固定化したチップと、試験対象であるポリペプチドとの親和性を表面プラズモン共鳴法(SPR法)を用いて測定すればよい。上記方法によれば、その親和性の有無のみならず、その強度まで測定できるために好ましい方法であるといえる。このとき得られる親和定数(KA)が、10(M−1)以上、より好ましくは103(M−1)以上、最も好ましくは104(M−1)以上であればポリペプチドと糖鎖とが結合していると判断できる。
なお本発明にかかるポリペプチドは、少なくとも、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含んでいればよいといえる。すなわち、配列番号2に示されるアミノ酸配列と特定の機能(例えば、タグ)を有する任意のアミノ酸配列とからなるポリペプチドも本発明に含まれることに留意すべきである。また、配列番号2に示されるアミノ酸配列および当該任意のアミノ酸配列は、それぞれの機能を阻害しないように適切なリンカーペプチドで連結されていてもよい。
つまり、本発明の目的は、本発明にかかるポリペプチドを提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載したポリペプチド作製方法等に存するのではない。したがって、上記各方法以外によって取得される本発明にかかるポリペプチドも本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
(2)ポリヌクレオチド
本発明は、糖鎖と結合するポリペプチド(以下「本発明にかかるポリペプチド」という)をコードするポリヌクレオチドを提供する。本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示される。
本発明にかかるポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在し得る。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であり得るか、またはそれは、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であり得る。
本明細書中で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドが数個ないし数十個結合したものが意図され、「ポリヌクレオチド」と交換可能に使用される。オリゴヌクレオチドは、短いものはジヌクレオチド(二量体)、トリヌクレオチド(三量体)といわれ、長いものは30マーまたは100マーというように重合しているヌクレオチドの数で表される。オリゴヌクレオチドは、より長いポリヌクレオチドのフラグメントとして生成されても、化合合成されてもよい。
本発明にかかるポリヌクレオチドのフラグメントは、少なくとも12nt(ヌクレオチド)、好ましくは約15nt、そしてより好ましくは少なくとも約20nt、なおより好ましくは少なくとも約30nt、そしてさらにより好ましくは少なくとも約40ntの長さのフラグメントが意図される。少なくとも20ntの長さのフラグメントによって、例えば、配列番号1に示される塩基配列からの20以上の連続した塩基を含むフラグメントが意図される。本明細書を参照すれば配列番号1に示される塩基配列が提供されるので、当業者は、配列番号1に基づくDNAフラグメントを容易に作製することができる。例えば、制限エンドヌクレアーゼ切断または超音波による剪断は、種々のサイズのフラグメントを作製するために容易に使用され得る。あるいは、このようなフラグメントは、合成的に作製され得る。適切なフラグメント(オリゴヌクレオチド)が、Applied Biosystems Incorporated(ABI,850 Lincoln Center Dr.,Foster City,CA 94404)392型シンセサイザーなどによって合成される。
また本発明にかかるポリヌクレオチドは、その5’側または3’側で上述のタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合され得る。
本発明はさらに、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの変異体に関する。変異体は、天然の対立遺伝子変異体のように、天然に生じ得る。「対立遺伝子変異体」によって、生物の染色体上の所定の遺伝子座を占める遺伝子のいくつかの交換可能な形態の1つが意図される。天然に存在しない変異体は、例えば当該分野で周知の変異誘発技術を用いて生成され得る。
このような変異体としては、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換、または付加した変異体が挙げられる。変異体は、コードもしくは非コード領域、またはその両方において変異され得る。コード領域における変異は、保存的もしくは非保存的なアミノ酸欠失、置換、または付加を生成し得る。
本発明はさらに、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは当該ポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、単離したポリヌクレオチドを提供する。
一実施形態において、本発明にかかるポリヌクレオチドは、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり、かつ
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;または
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
のいずれかであることが好ましい。
他の実施形態において、本発明にかかるポリヌクレオチドは、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、以下の(a)または(b):
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;または
(b)以下の(i)もしくは(ii)のいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド:
(i)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;もしくは
(ii)配列番号1に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、
のいずれかであることが好ましい。
なお、上記「ストリンジェントな条件」とは、少なくとも90%以上の同一性、好ましくは少なくとも95%以上の同一性、最も好ましくは97%の同一性が配列間に存在する時にのみハイブリダイゼーションが起こることを意味する。
上記ハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法のような周知の方法で行なうことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなり(ハイブリダイズし難くなる)、より相同なポリヌクレオチドを取得することができる。ハイブリダイゼーションの条件としては、従来公知の条件を好適に用いることができ、特に限定しないが、例えば、42℃、6×SSPE、50%ホルムアミド、1%SDS、100μg/ml サケ精子DNA、5×デンハルト液(ただし、1×SSPE;0.18M 塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム、pH7.7、1mM EDTA。5×デンハルト液;0.1% 牛血清アルブミン、0.1% フィコール、0.1% ポリビニルピロリドン)が挙げられる。
本発明にかかるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAやRNAを包含する。またDNAには例えばクローニングや化学合成技術またはそれらの組み合わせで得られるようなcDNAやゲノムDNAなどが含まれる。さらに、本発明にかかるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。
本発明にかかるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを取得する方法として、公知の技術により、本発明にかかるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを含むDNA断片を単離し、クローニングする方法が挙げられる。例えば、本発明におけるポリヌクレオチドの塩基配列の一部と特異的にハイブリダイズするプローブを調製し、ゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリーをスクリーニングすればよい。このようなプローブとしては、本発明にかかるポリヌクレオチドの塩基配列またはその相補配列の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズするプローブであれば、いずれの配列および/または長さのものを用いてもよい。
あるいは、本発明にかかるポリヌクレオチドを取得する方法として、PCR等の増幅手段を用いる方法を挙げることができる。例えば、本発明におけるポリヌクレオチドのcDNAのうち、5’側および3’側の配列(またはその相補配列)の中からそれぞれプライマーを調製し、これらプライマーを用いてゲノムDNA(またはcDNA)等を鋳型にしてPCR等を行ない、両プライマー間に挟まれるDNA領域を増幅することで、本発明にかかるポリヌクレオチドを含むDNA断片を大量に取得できる。
本発明にかかるポリヌクレオチドを取得するための供給源としては、特に限定されないが、所望のポリヌクレオチドを含む生物材料であることが好ましい。特に、本発明にかかるポリペプチドの起源であるオオハネモ(Bryopsis maxima)が好ましい。ただし、これに限定されるものではない。
なお本発明の目的は、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および当該ポリヌクレオチドとハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載したポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドの作製方法等に存するのではない。したがって、上記各方法以外によって取得される本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドもまた本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
(3)抗体
本発明は、本発明にかかるポリペプチドと特異的に結合する抗体を提供する。本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgY、IgG、IgMおよびこれらのFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fcフラグメント)を意味し、例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体、抗イディオタイプ抗体およびヒト化抗体が挙げられるがこれらに限定されない。本発明にかかる抗体は、本発明にかかるポリペプチドを発現する生物材料を選択する際に有用であり得る。また本発明にかかるポリペプチドを含む粗溶液から、当該ペプチドを精製する際にも有用である。
「抗体」は、種々の公知の方法(例えば、HarLowら、「Antibodies:A laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1988)」、岩崎ら、「単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA、講談社(1991)」)に従えば作製することができる。
ペプチド抗体は、当該分野に周知の方法によって作製される。例えば、Chow,M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:910−914;およびBittle,F.J.ら、J.Gen.Virol.66:2347−2354(1985)(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。一般には、動物は遊離ペプチドで免疫化され得る;しかし、抗ペプチド抗体力価はペプチドを高分子キャリア(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)または破傷風トキソイド)にカップリングすることにより追加免疫され得る。例えば、システインを含有するペプチドは、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)のようなリンカーを使用してキャリアにカップリングされ得、一方、他のペプチドは、グルタルアルデヒドのようなより一般的な連結剤を使用してキャリアにカップリングされ得る。ウサギ、ラット、およびマウスのような動物は、遊離またはキャリア−カップリングペプチドのいずれかで、例えば、約100μgのペプチドまたはキャリアタンパク質およびFreundのアジュバントを含むエマルジョンの腹腔内および/または皮内注射により免疫化される。いくつかの追加免疫注射が、例えば、固体表面に吸着された遊離ペプチドを使用してELISA法により検出され得る有用な力価の抗ペプチド抗体を提供するために、例えば、約2週間の間隔で必要とされ得る。免疫化動物からの血清における抗ペプチド抗体の力価は、抗ペプチド抗体の選択により、例えば、当該分野で周知の方法による固体支持体上のペプチドへの吸着および選択された抗体の溶出により増加され得る。
本明細書中で使用される場合、用語「本発明にかかるポリペプチドと特異的に結合する抗体」は、本発明にかかるポリペプチド抗原に特異的に結合し得る完全な抗体分子および抗体フラグメント(例えば、FabおよびF(ab’)2フラグメント)を含むことを意味する。FabおよびF(ab’)2フラグメントは完全な抗体のFc部分を欠いており、循環によってさらに迅速に除去され、そして完全な抗体の非特異的組織結合をほとんど有し得ない(Wahlら、J.Nucl.Med.24:316−325(1983)(本明細書中に参考として援用される))。従って、これらのフラグメントが好ましい。
さらに、本発明にかかるポリペプチドのペプチド抗原に結合し得るさらなる抗体が、抗イディオタイプ抗体の使用を通じて二工程手順で産生され得る。このような方法は、抗体それ自体が抗原であるという事実を使用し、従って、二次抗体に結合する抗体を得ることが可能である。この方法に従って、本発明にかかるポリペプチドと特異的に結合する抗体は、動物(好ましくは、マウス)を免疫するために使用される。次いで、このような動物の脾細胞はハイブリドーマ細胞を産生するために使用され、そしてハイブリドーマ細胞は、本発明にかかるポリペプチドと特異的に結合する抗体に結合する能力が本発明にかかるポリペプチド抗原によってブロックされ得る抗体を産生するクローンを同定するためにスクリーニングされる。このような抗体は、本発明にかかるポリペプチドと特異的に結合する抗体に対する抗イディオタイプ抗体を含み、そしてさらなる本発明にかかるポリペプチドと特異的に結合する抗体の形成を誘導するために動物を免疫するために使用され得る。
FabおよびF(ab’)2ならびに本発明にかかる抗体の他のフラグメントは、本明細書中で開示される方法に従って使用され得ることが、明らかである。このようなフラグメントは、代表的には、パパイン(Fabフラグメントを生じる)またはペプシン(F(ab’)2フラグメントを生じる)のような酵素を使用するタンパク質分解による切断によって産生される。あるいは、本発明にかかるポリペプチド結合フラグメントは、組換えDNA技術の適用または合成化学によって産生され得る。
このように、本発明にかかる抗体は、少なくとも、本発明にかかるポリペプチドを認識する抗体フラグメント(例えば、FabおよびF(ab’)2フラグメント)を備えていればよいといえる。すなわち、本発明にかかるポリペプチドを認識する抗体フラグメントと、異なる抗体分子のFcフラグメントとからなる免疫グロブリンも本発明に含まれることに留意すべきである。
つまり、本発明の目的は、本発明にかかるポリペプチドを認識する抗体を提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載した個々の免疫グロブリンの種類(IgA、IgD、IgE、IgY、IgGまたはIgM)、キメラ抗体作製方法、ペプチド抗原作製方法等に存するのではない。したがって、上記各方法以外によって取得される抗体も本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
(4)本発明にかかるポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドの利用
(4−1)ベクター
本発明は、本発明にかかるポリペプチドを生成するために使用されるベクターを提供する。本発明にかかるベクターは、インビトロ翻訳に用いるベクターであっても組換え発現に用いるベクターであってもよい。
本発明にかかるベクターは、上述した本発明にかかるポリヌクレオチドを含むものであれば、特に限定されない。例えば、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのcDNAが挿入された組換え発現ベクターなどが挙げられる。組換え発現ベクターの作製方法としては、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどを用いる方法が挙げられるが特に限定されない。
ベクターの具体的な種類は特に限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターを適宜選択すればよい。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に本発明にかかるポリヌクレオチドを発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明にかかるポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだベクターを発現ベクターとして用いればよい。
発現ベクターは、好ましくは少なくとも1つの選択マーカーを含む。このようなマーカーとしては、真核生物細胞培養についてはジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性、およびE.coliおよび他の細菌における培養についてはテトラサイクリン耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
上記選択マーカーを用いれば、本発明にかかるポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されたか否か、さらには宿主細胞中で確実に発現しているか否かを確認することができる。あるいは、本発明にかかるポリペプチドを融合ポリペプチドとして発現させてもよく、例えば、オワンクラゲ由来の緑色蛍光ポリペプチドGFP(Green Fluorescent Protein)をマーカーとして用い、本発明にかかるポリペプチドをGFP融合ポリペプチドとして発現させてもよい。
上記の宿主細胞は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。具体的には、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等の細菌、酵母(出芽酵母Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母Schizosaccharomyces pombe)、線虫(Caenorhabditis elegans)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。上記の宿主細胞のための適切な培養培地および条件は当分野で周知である。
上記発現ベクターを宿主細胞に導入する方法、すなわち形質転換法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。また、例えば、本発明にかかるポリペプチドを昆虫で転移発現させる場合には、バキュロウイルスを用いた発現系を用いればよい。
このように、本発明にかかるベクターは、少なくとも、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含めばよいといえる。すなわち、発現ベクター以外のベクターも、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
つまり、本発明の目的は、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターを提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載した個々のベクター種および細胞種、ならびにベクター作製方法および細胞導入方法に存するのではない。したがって、上記以外のベクター種およびベクター作製方法を用いて取得したベクターも本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
(4−2)形質転換体または細胞
本発明は、上述した本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換体または細胞を提供する。ここで「形質転換体」とは、組織または器官だけでなく、生物個体を含むことを意味する。
形質転換体または細胞の作製方法(生産方法)は特に限定されるものではないが、例えば、上述した組換えベクターを宿主に導入して形質転換する方法を挙げることができる。また、形質転換の対象となる生物も特に限定されるものではなく、上記宿主細胞で例示した各種微生物、植物または動物を挙げることができる。
本発明にかかる形質転換体または細胞は、藻類もしくはその子孫、またはこれら由来の組織であることが好ましく、オオハネモ(Bryopsis maxima)であることが特に好ましい。
本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む形質転換体は、当該ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、当該遺伝子が発現し得るように宿主細胞中に導入することにより得ることができる。
以下宿主細胞として植物を用いた場合を例にして説明する。なお本発明において使用する宿主細胞は植物に限定されるものではない。植物体の形質転換に用いられる組換え発現ベクターは、当該植物内で本発明にかかるポリヌクレオチドを発現させることが可能なベクターであれば特に限定されない。このようなベクターとしては、例えば、植物細胞内でポリヌクレオチドを構成的に発現させるプロモーター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター)を有するベクター、または外的な刺激によって誘導性に活性化されるプロモーターを有するベクターが挙げられる。
本発明において形質転換の対象となる植物は、植物体全体、植物器官(例えば葉、花弁、茎、根、種子など)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束、柵状組織、海綿状組織など)または植物培養細胞、あるいは種々の形態の植物細胞(例えば、懸濁培養細胞)、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどのいずれをも意味する。形質転換に用いられる植物としては、特に限定されず、単子葉植物綱または双子葉植物綱に属する植物のいずれでもよい。
植物への遺伝子の導入には、当業者に公知の形質転換方法(例えば、アグロバクテリウム法、遺伝子銃、PEG法、エレクトロポレーション法など)が用いられる。例えば、アグロバクテリウムを介する方法と直接植物細胞に導入する方法が周知である。アグロバクテリウム法を用いる場合は、構築した植物用発現ベクターを適当なアグロバクテリウム(例えば、アグロバクテリウム・チュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens))に導入し、この株をリーフディスク法(内宮博文著,植物遺伝子操作マニュアル,1990,27−31pp,講談社サイエンティフィック,東京)などに従って無菌培養葉片に感染させ、形質転換植物を得ることができる。また、Nagelらの方法(Micribiol.Lett.、67、325(1990))が用いられ得る。この方法は、まず、例えば発現ベクターをアグロバクテリウムに導入し、次いで、形質転換されたアグロバクテリウムをPlant Molecular Biology Manual(S.B.Gelvinら、Academic Press Publishers)に記載の方法で植物細胞または植物組織に導入する方法である。ここで、「植物組織」とは、植物細胞の培養によって得られるカルスを含む。アグロバクテリウム法を用いて形質転換を行なう場合には、バイナリーベクター(pBI121またはpPZP202など)を使用することができる。
また、遺伝子を直接植物細胞または植物組織に導入する方法としては、エレクトロポレーション法、遺伝子銃法が知られている。遺伝子銃を用いる場合は、植物体、植物器官、植物組織自体をそのまま使用してもよく、切片を調製した後に使用してもよく、プロトプラストを調製して使用してもよい。このように調製した試料を遺伝子導入装置(例えばPDS−1000(BIO−RAD社)など)を用いて処理することができる。処理条件は植物または試料によって異なるが、通常は450〜2000psi程度の圧力、4〜12cm程度の距離で行なう。
遺伝子が導入された細胞または植物組織は、まずハイグロマイシン耐性などの薬剤耐性で選択され、次いで定法によって植物体に再生される。形質転換細胞から植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行なうことが可能である。
植物培養細胞を宿主として用いる場合は、形質転換は、組換えベクターを遺伝子銃、エレクトロポレーション法などで培養細胞に導入する。形質転換の結果得られるカルスやシュート、毛状根などは、そのまま細胞培養、組織培養または器官培養に用いることが可能であり、また従来知られている植物組織培養法を用い、適当な濃度の植物ホルモン(オーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、アブシジン酸、エチレン、ブラシノライドなど)の投与などによって植物体に再生させることができる。
遺伝子が植物に導入されたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法などによって行なうことができる。例えば、形質転換植物からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行なう。PCRは、前記プラスミドを調製するために使用した条件と同様の条件で行なうことができる。その後は、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動などを行ない、臭化エチジウム、SYBR Green液などによって染色し、そして増幅産物を1本のバンドとして検出することによって、形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素などによって標識したプライマーを用いてPCRを行ない、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレートなどの固相に増幅産物を結合させ、蛍光または酵素反応などによって増幅産物を確認する方法も採用することができる。
本発明にかかるポリヌクレオチドがゲノム内に組み込まれた形質転換植物体がいったん得られれば、当該植物体の有性生殖または無性生殖によって子孫を得ることができる。また、当該植物体またはその子孫、あるいはこれらのクローンから、例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラストなどを得て、それらを基に当該植物体を量産することができる。したがって、本発明には、本発明にかかるポリヌクレオチドが発現可能に導入された植物体、もしくは、当該植物体と同一の性質を有する当該植物体の子孫、またはこれら由来の組織も含まれる。
このように、本発明にかかる形質転換体または細胞は、少なくとも、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入されていればよいといえる。すなわち、組換え発現ベクター以外の手段によって生成された形質転換体または細胞も、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
本発明の目的は、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入されていることを特徴とする形質転換体または細胞を提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載した個々のベクター種および導入方法に存するのではない。したがって、上記以外のベクター種および細胞種、ならびにベクター作製方法および細胞導入方法を用いて取得した形質転換体または細胞も本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
(4−3)ポリペプチドの生産方法
本発明は、本発明にかかるポリペプチドを生産する方法を提供する。
一実施形態において、本発明にかかるポリペプチドの生産方法は、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いることを特徴とする。
本実施形態の1つの局面において、本実施形態にかかるポリペプチドの生産方法は、上記ベクターを無細胞タンパク質合成系に用いることが好ましい。無細胞タンパク質合成系を用いる場合、種々の市販のキットを用いればよい。好ましくは、本実施形態にかかるポリペプチドの生産方法は、上記ベクターと無細胞タンパク質合成液とをインキュベートする工程を包含する。
本実施形態の他の局面において、本実施形態にかかるポリペプチドの生産方法は、組換え発現系を用いることが好ましい。組換え発現系を用いる場合、本発明にかかるポリヌクレオチドを組換え発現ベクターに組み込んだ後、公知の方法により発現可能な宿主に導入し、宿主内で翻訳されて得られる上記ポリペプチドを精製するという方法などを採用することができる。組換え発現ベクターは、プラスミドであってもなくてもよく、宿主に目的ポリヌクレオチドを導入することができればよい。好ましくは、本実施形態にかかるポリペプチドの生産方法は、上記ベクターを宿主に導入する工程を包含する。
このように宿主に外来ポリヌクレオチドを導入する場合、発現ベクターは、外来ポリヌクレオチドを発現するように宿主内で機能するプロモーターを組み込んであることが好ましい。組換え的に産生されたポリペプチドを精製する方法は、用いた宿主、ポリペプチドの性質によって異なるが、タグの利用等によって比較的容易に目的のポリペプチドを精製することが可能である。
本実施形態にかかるポリペプチドの生産方法は、本発明にかかるポリペプチドを含む細胞または組織の抽出液から当該ポリペプチドを精製する工程をさらに包含することが好ましい。ポリペプチドを精製する工程は、周知の方法(例えば、細胞または組織を破壊した後に遠心分離して可溶性画分を回収する方法)で細胞や組織から細胞抽出液を調製した後、この細胞抽出液から周知の方法(例えば、硫安沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィー)によって精製する工程が好ましいが、これらに限定されない。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が精製のために用いられる。
別の実施形態において、本発明にかかるポリペプチドの生産方法は、本発明にかかるポリペプチドを天然に発現する細胞または組織から当該ポリペプチドを精製することを特徴とする。本実施形態にかかるポリペプチドの生産方法は、上述した抗体またはオリゴヌクレオチドを用いて本発明にかかるポリペプチドを天然に発現する細胞または組織を同定する工程を包含することが好ましい。また、本実施形態にかかるポリペプチドの生産方法は、上述したポリペプチドを精製する工程をさらに包含することが好ましい。
さらに他の実施形態において、本発明にかかるポリペプチドの生産方法は、本発明にかかるポリペプチドを化学合成することを特徴とする。当業者は、本明細書中に記載される本発明にかかるポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて周知の化学合成技術を適用すれば、本発明にかかるポリペプチドを化学合成できることを、容易に理解する。
以上のように、本発明にかかるポリペプチドを生産する方法によって取得されるポリペプチドは、天然に存在する変異ポリペプチドであっても、人為的に作製された変異ポリペプチドであってもよい。
変異ポリペプチドを作製する方法についても、特に限定されるものではない。例えば、部位特異的変異誘発法(例えば、Hashimoto−Gotoh,Gene 152,271−275(1995)参照)、PCR法を利用して塩基配列に点変異を導入し変異ポリペプチドを作製する方法、またはトランスポゾンの挿入による突然変異株作製法などの周知の変異ポリペプチド作製法を用いることによって、変異ポリペプチドを作製することができる。変異ポリペプチドの作製には市販のキットを利用してもよい。
このように、本発明にかかるポリペプチドの生産方法は、少なくとも、本発明にかかるポリペプチドのアミノ酸配列、または本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に基づいて公知慣用技術を用いればよいといえる。
つまり、本発明の目的は、本発明にかかるポリペプチドの生産方法を提供することにあるのであって、上述した種々の工程以外の工程を包含する生産方法も本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
(4−4)検出器具
本発明は、種々の検出器具をも提供する。本発明にかかる検出器具は、本発明にかかるポリヌクレオチドもしくはフラグメントが基板上に固定化されたもの、または、本発明にかかるポリペプチドもしくは抗体が基板上に固定化されたものであり、種々の条件下において、本発明にかかるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現パターンの検出・測定などに利用することができる。
一実施形態において、本発明にかかる検出器具は、本発明にかかるポリヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチドが基板上に固定化されていることを特徴とする。本実施形態の好ましい局面において、本実施形態にかかる検出器具は、いわゆるDNAチップである。本明細書中で使用される場合、用語「DNAチップ」とは、合成したオリゴヌクレオチドを基板上に固定化した合成型DNAチップを意味するが、これに限定されず、PCR産物などのcDNAを基板上に固定化した貼付け型DNAマイクロアレイもまた包含する。DNAチップとしては、例えば、本発明の遺伝子と特異的にハイブリダイズするプローブ(すなわち、本発明にかかるオリゴヌクレオチド)を基板(担体)上に固定化したDNAチップが挙げられる。
プローブとして用いる配列は、cDNA配列の中から特徴的な配列を特定する公知の方法(例えば、SAGE法(Serial Analysis of Gene Expression法)(Science 276:1268,1997;Cell 88:243,1997;Science 270:484,1995;Nature 389:300,1997;米国特許第5,695,937号)等が挙げられるがこれらに限定されない)によって決定することができる。
なお、DNAチップの製造には、公知の方法を採用すればよい。例えば、オリゴヌクレオチドとして、合成オリゴヌクレオチドを使用する場合には、フィトリオグラフィー技術と固相法DNA合成技術との組み合わせにより、基板上でオリゴヌクレオチドを合成すればよい。一方、オリゴヌクレオチドとしてcDNAを用いる場合は、アレイ機を用いて基板上に張り付ければよい。
また、一般的なDNAチップと同様、パーフェクトマッチプローブ(オリゴヌクレオチド)と、当該パーフェクトマッチプローブにおいて一塩基置換されたミスマッチプローブとを配置してポリヌクレオチドの検出精度をより向上させてもよい。さらに、異なるポリヌクレオチドを並行して検出するために、複数種のオリゴヌクレオチドを同一の基板上に固定化してDNAチップを構成してもよい。
本実施形態にかかる検出器具に用いる基板の材質としては、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを安定して固定化することができるものであればよい。上記した基板以外には、例えば、ポリカーボネートやプラスティックなどの合成樹脂、ガラス等を挙げることができるが、これらに限定されない。基板の形態も特に限定されないが、例えば、板状、フィルム状等の基板を好適に用いることができる。本実施形態の好ましい局面において、本実施形態にかかる検出器具は、種々の生物またはその組織もしくは細胞から作製したcDNAライブラリーを標的サンプルとする検出に用いられる。
他の実施形態において、本発明にかかる検出器具は、本発明にかかるポリペプチドまたは抗体が基板上に固定化されていることを特徴とする。本実施形態の好ましい局面において、本実施形態にかかる検出器具は、いわゆるプロテインチップである。
本明細書中で使用される場合、用語「基板」は、目的物(例えば、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリペプチドまたはタンパク質)を担持することのできる物質が意図され、用語「支持体」と交換可能に使用される。好ましい基板(支持体)としては、ビーズ(例えば、ポリスチレンビーズ)、固相(例えば、ガラスチューブ、試薬ストリップ、ポリスチレン製のマイクロタイタープレートまたはアミノ基結合型のマイクロタイタープレート)などが挙げられるが、これらに限定されない。目的物をこれらの基板に固定化する方法は、当業者に周知であり、例えば、Nature 357:519−520(1992)(本明細書中に参考として援用される)に記載される。
本実施形態にかかる検出器具に用いる基板の材質としては、ポリペプチドまたは抗体を安定して固定化することができるものであればよい。上記した基板以外には、例えば、ポリカーボネートやプラスティックなどの合成樹脂、ガラス等を挙げることができるが、これらに限定されない。基板の形態も特に限定されないが、例えば、板状、フィルム状等の基板を好適に用いることができる。
上記の方法以外のポリペプチドまたは抗体を基板上に固定化する方法としては、例えば、ニトロセルロース膜やPDVF膜にポリペプチドや抗体をドットブロットの要領でスポットする物理吸着法、または、ポリペプチドや抗体の変性を軽減するために、スライドガラス上にポリアクリルアミドのパッドを接合して、これにポリペプチドや抗体をスポットする方法が挙げられる。さらに、ポリペプチドや抗体を基板表面に吸着させるだけでなく、強固に結合させるため、アルデヒド修飾ガラスを利用した方法(G.MacBeath,S.L.Schreiber,Science,289,1760(2000))を用いることもできる。また、基板上でのポリペプチドの配向を揃えて固定化する方法としては、オリゴヒスチジンタグを介して、ニッケル錯体で表面修飾した基板へ固定化する方法(H.Zhu,M.Bilgin,R.Bangham,D.Hall,A.Casamayor,P.Bertone,N.Lan,R.Jansen,S.Bidlingmaier,T.Houfek,T.Mitchell,P.Miller,R.A.Dean,M.Gerstein,M.Snyder,Science,293,2101(2001))を用いることができる。
本実施形態の好ましい局面において、本実施形態にかかる検出器具は、種々の生物またはその組織もしくは細胞からの抽出液を標的サンプルとする検出に用いられる。
このように、本発明にかかる検出器具は、少なくとも、本発明にかかるポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド、または本発明にかかるポリペプチドもしくは当該ポリペプチドと結合する抗体が支持体上に固定化されていればよいといえる。また、本発明にかかる検出器具は、本発明にかかるポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド、または本発明にかかるポリペプチドもしくは当該ポリペプチドと結合する抗体が固定化されている基板を備えていればよいといえる。すなわち、これらの支持体(基板を含む)以外の構成部材を備える場合も、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
つまり、本発明の目的は、本発明にかかるポリペプチドまたは本発明にかかるポリヌクレオチド、あるいは本発明にかかる抗体に結合するポリペプチドを検出する器具を提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載した個々の支持体の種類、固定化方法に存するのではない。したがって、上記支持体以外の構成部材を包含する検出器具も本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
(4−5)本発明にかかるポリペプチドを用いた抗体の精製
本発明で精製される抗体としては、動物に抗原を免疫することにより得られた抗血清、動物に抗原を免疫し免疫動物の脾臓細胞より作製したハイブリドーマ細胞が分泌するモノクローナル抗体、遺伝子組換え技術により作製された抗体、すなわち抗体遺伝子を挿入した抗体発現ベクターを宿主細胞へ導入することにより取得された抗体などいかなるものでもよい。また、抗体のFc領域を融合させた融合タンパク質なども本発明では抗体として含まれる。なお精製される抗体としては、ニワトリ型抗体が好ましい。本発明にかかるポリペプチドは、ニワトリ抗体に結合する糖鎖との親和性が高いからである。なおニワトリ型抗体とは、抗原を免疫されたニワトリが生産する抗体(IgY、IgE等)、およびニワトリ以外の動物において生産されるニワトリ由来の抗体と同一構造を有する抗体をも含む。また上記抗体はモノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であってもよい。その抗体については、「(3)抗体」の記載を適宜参照できる。
本発明にかかる抗体の精製方法は、例えば本発明にかかるポリペプチドを固定した担体を用いたクロマトグラフィーにより達成される。本発明にかかるポリペプチドが固定化される担体としては、アガロース、アクリル系合成樹脂のポリマー等があげられ、好ましくはアクリル酸エステルのポリマーがあげられる。そのほか市販のアフィニティー担体を適宜選択の上使用すればよい。例えば、HiTrap NHS−activated HP columns(Amersham Bioscience Corp製)、CNBr−activated Sepharose 4 Fast Flow Lab Packs(Amersham Bioscience Corp製)が利用可能である。また、高速液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」と表記する)システムを使用する場合は、一般に市販されているHPLCシステムであれば、いかなるものでもよい。例えば、LC−6A(Shimadzu社製)などがあげられる。固定化の方法については、担体に応じて適宜最適な方法を適用すればよい。
以下にHPLCシステムを使用した精製方法の一例を示す。溶離液は、10〜100(mmol/l)トリス−塩酸緩衝液、10〜100(mmol/l)リン酸緩衝液などを用いる。pHは7〜8程度の間が好ましい。まず、10〜100(mmol/l)トリス−塩酸緩衝液、または10〜100(mmol/l)リン酸緩衝液などの初期緩衝液でカラムを充分に平衡化する。HPLCシステムにより試料を通塔し、溶出糖を含む10〜100(mmol/l)トリス−塩酸緩衝液、または10〜100(mmol/l)リン酸緩衝液を用いて溶出させる。溶出に用いる糖は、適宜検討の上適用すればよいが、本発明にかかるポリペプチドを固定化した場合は、溶出に用いる糖として、0.02〜0.5mol/l D−マンノースや0.02〜0.5mol/l メチル−α−D−マンノシドを用いる。溶出はステップワイズ法、またはグラジエント法により溶出する。タンパク質(抗体)は、例えば紫外線吸収、電気泳動(SDS−PAGE等)、ELISA法、ウエスタンブロット法などの方法により検出することができる。
なお、本発明にかかる抗体の精製方法は、本発明にかかるポリペプチドの代わりに、または本発明にかかるポリペプチドに加えて、従来公知のレクチンであるCarninを用いることによっても達成される。つまり本発明にかかる抗体の精製方法は、上記課題を解決すべく、上記本発明にかかるポリペプチドを用いる方法、上記本発明にかかるポリペプチドに加えさらにCarninを用いる方法、または、上記本発明にかかるポリペプチド、およびCarninのいずれか一方または両方を用いる方法であってもよい。
また本発明にかかる担体についても、同様に、上記本発明にかかるポリペプチドが固定化されているもの、上記本発明にかかるポリペプチドに加えさらにCarninが固定化されているもの、または、上記本発明にかかるポリペプチド、およびCarninのいずれか一方または両方を用いるものであってもよい。藻類(Carpopeltis flabellata=C.prorifera)由来Carninについては、『Hori,K.,Matsuda,H.,Miyazawa,K.and Ito,K.:A mitogenic agglutinin from the red alga Carpopeltis flabellata.Phytochemistry,26,1335−1338(1987)』に記載されており、本明細書中に参考として援用される。
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に説明されるが、これに限定されるべきではない。
[実施例1:藻類(Bryopsis maxima)からポリペプチド(BML−17)の単離]
(抽出液の調製および硫安沈殿)
緑藻オオハネモ(Bryopsis maxima)の凍結乾燥粉末12.2gに200mlの20mMPBSA(Phosphate−buffer saline sodium azide;0.2%アジ化ナトリウム入り20mM PBS;pH7.0)を加え、4℃で一晩撹拌した後、遠心分離を行なって抽出液を得た。この操作を3回繰り返し、抽出液1〜3を得た。
上記抽出液に硫安粉末を20%飽和となるように少しずつ撹拌しながら加え、この混合液を4℃で一晩静置した。これを遠心分離(10,000rpm,30分間)して得られた沈殿を、PBSAに溶解後、同溶媒に対し十分透析した。透析終了後、内液を遠心分離し、得られた上清を20%飽和硫安塩析沈殿画分とした。一方、20%飽和硫安塩析処理で得られた上清に、硫安粉末を60%飽和となるように加え、同様に処理して、20〜60%飽和硫安塩析沈殿画分を得た。
(凝集活性の検討)
赤血球凝集活性は、マイクロタイター法を用いて測定した。生理食塩水にて調製した各精製画分溶液の2倍段階希釈液、各25μlをマイクロタイタープレート上に作製した。各希釈液に2%赤血球浮遊液25μlを加えて軽く撹拌し、室温で1.5時間静置後、凝集能を観察した。凝集能は肉眼で判定し、赤血球の50%以上が凝集している場合を陽性とした。凝集活性は凝集素価(力価)、すなわち凝集活性を示す最大希釈液のタンパク質の濃度で示した。
本実施例においては、赤血球としてトリプシン処理ウサギ赤血球(TRBC)を用いた。なお、赤血球浮遊液の調製は次のように行なった。まず、実験室で飼育中のウサギの耳から血液2mlを採取し、これを約50mlの生理食塩水で3回洗浄後、50mlの生理食塩水を加えて2%のウサギ赤血球浮遊液を調製した。これに1/10容の0.5%トリプシン−生理食塩水を加え、37℃で1.5時間静置した。このトリプシン処理赤血球を生理食塩水で3回洗浄後、45mlの生理食塩水を加え、トリプシン処理2%ウサギ赤血球浮遊液(TRBC)とした。
トリプシン処理ウサギ赤血球(TRBC)に対する凝集活性成分を検討したところ、上記抽出液1〜3に同凝集活性が検出された。抽出液1の総凝集活性(THA)、および可溶性タンパク質の含量は、抽出液2および3に比べて高い値を示したことから、凝集活性成分の多くは、抽出液1に回収されるということがわかった。またTHAおよび可溶性タンパク質の多くが20〜60%飽和硫安塩析沈殿画分に回収されているということがわかった。
(ゲルろ過)
抽出液1の20〜60%飽和硫安塩析沈殿画分を、ゲルろ過カラム(東ソー社製、Toyopearl HW−55カラム、4.4×900cm、Vt=1368ml)に供した。具体的には、同沈殿画分16mlを、20mM PBSA(pH7.0)で平衡化したToyopearl HW−55カラムに添加し、PBSAを用いて流速60ml/hで溶出した。溶出液は15ml分取し、各フラクションのUV280nmおよび凝集活性を測定した。
(疎水クロマトグラフィー)
ゲルろ過で得られた凝集活性を有する画分110mlを、0.86M硫安を含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)に対して透析を行ない、内液80mlを得た。得られた内液を、同緩衝液で平衡化したTSKgel Phenyl−5PWカラム(7.5×75mm)に注入し、20mMトリス−塩酸緩衝液,pH7.0(溶媒A)と、0.86M硫安を含む同緩衝液(溶媒B)の2液を用いる濃度勾配法により溶出した。濃度勾配[溶媒B100%(20分)、溶媒:B0%−溶媒A100%(20−60分)、溶媒A100%(60−90分)]は、グラジェントプログラマー(CCPコントローラー、東ソー社製)を用いて設定し、流速は0、5ml/分とした。溶出液は、UV280nmをモニターするとともに、各ピークを分取し、凝集活性を測定した。
(SDS−PAGE)
上記疎水クロマトグラフィーで得られた凝集活性を有する画分(精製画分)をSDS−PAGE(10%ゲル)に供した。
結果を図7に示した。同図中レーン1は分子量マーカー(各バンドは上から94kDa、67kDa、43kDa、30kDa、20.1kDa、14.4kDa)を示し、レーン2は非還元下(2−メルカプトエタノール処理なし)の精製画分を示し、レーン3は還元下(2−メルカプトエタノール処理あり)の精製画分を示し、同図中レーン4は分子量マーカー(各バンドは上から16.9kDa、14.4kDa、10.7kDa、8.2kDa、6.2kDa、2.5kDa)を示している。なおタンパク染色はCBB(Coomassie brilliant blue R−250)染色を行なった。
図7より精製画分は、SDS−PAGEにおいて非還元下で比較分子量約17kDaの、還元下で18kDaの単一バンドを与えるものであった。また還元下、非還元下で分子量が異なることから、同精製画分内にジスルフィド結合(S−S結合)の存在が示唆された。上記精製過程により最終的に2.1mgの精製画分が得られた。本発明者らは、当該精製画分を「BML−17」と命名した。
(BML−17の分子量の検討)
BML−17、およびピリジルエチル化(PE)処理したBML−17の0.1TFA−70%アセトニトリル溶液(500μg/ml)を、エレクトロンスプレイイオン化質量分析(ESI−MS、LCQ、Finigan)に供し分子量を測定した。
PE処理は、以下のようにした。BML−17(200μg)を、100μlの緩衝液(6Mグアニジン塩酸塩および1mM EDTAを含む0.25M トリス−塩酸緩衝液、pH8.5)に溶解し、200μgのジチオスレイトールを添加して、容器内を窒素で置換し、2時間静置した。次に2μlの4−ビニルピリジン(ナカライテスク製)を添加して、よく混合した。この混合溶液を暗所で一晩静置して十分に反応させた後、超純水に対して十分透析を行ない、塩および過剰の試薬を除去し、内液を「ピリジルエチル化(PE)処理したBML−17」とした。
BML−17の比較分子量は、SDS−PAGEの結果から、非還元条件下では約17kDa、還元条件下では18kDaと推定された。上記ESI−MSでの分子量測定値は17,293Daであった。また、PE処理したBML−17の分子量は、17,945Daであった。両者の分子量の差は6個のピリジルエチル基の分子量にほぼ相当することから、BML−17は、システイン6残基を含むと推定された。
(BML−17のアミノ酸組成分析)
BML−17のアミノ酸組成分析は、ダブシル化法を用いて行なった。なおアミノ酸組成分析には、PE処理したBML−17を用いた。
上記アミノ酸組成分析の結果、BML−17のアミノ酸組成は以下の通りであった。アスパラギンまたはアスパラギン酸(Asx)が11.8mol%、グルタミンまたはグルタミン酸(Glx)が6.8mol%、セリン(Ser)が9.6mol%、トレオニン(Thr)が6.0mol%、グリシン(Gly)が11.4mol%、アラニン(Ala)が7.9mol%、プロリン(Pro)が3.4mol%、バリン(Val)が6.9mol%、アルギニン(Arg)が3.9mol%、メチオニン(Met)が2.7mol%、イソロイシン(Ile)が4.5mol%、ロイシン(Leu)が4.4mol%であり、フェニルアラニン(Phe)が3.7mol%であり、リジン(Lys)が4.6mol%であり、ヒスチジン(His)が2.6mol%であり、チロシン(Tyr)が4.9mol%であり、トリプトファン(Trp)が3.4mol%であった。なおシステイン(Cys)については分析を行なわなかった。
以上の結果からBML−17は、従来公知のレクチンと同様にグリシンおよび酸性アミノ酸を多く含むものであった。またセリンを多量に含むものであった。
(BML−17のN末端アミノ酸分析)
BML−17のN末端アミノ酸配列はエドマン法によるヒューレットパッカード社製の自動分析装置:プロテインシーケンサー(G1005A型)を用いて分析を行なった。なおBML−17の100pmol相当量を上記N末端アミノ酸分析に用いた。
図8にBML−17のN末端アミノ酸の配列(図中BMLと表記)および、これまでに単離されたハネモ属レクチン(BCL、BPL、Bry−1、Bry−2)のN末端アミノ酸の配列を示した。同図より、BML−17は従来公知のハネモ属由来のレクチンとはN末端アミノ酸配列が全く異なる新規レクチンであるということが分かった。BML−17のN末端アミノ酸の配列を配列番号13に示し、BCLのN末端アミノ酸の配列を配列番号14に示し、BPLのN末端アミノ酸の配列を配列番号15に示し、Bry−1のN末端アミノ酸の配列を配列番号16に示し、Bry−2のN末端アミノ酸の配列を配列番号17に示した。
(BML−17の温度安定性およびpH安定性)
トリプシン処理ウサギ赤血球(TRBC)に対する凝集活性を指標として、BML−17の温度安定性およびpH安定性の検討を行なった。
BML−17の凝集活性は60℃以上、30分間の熱処理によって低下したことから、耐熱性は低いということが分かった。また同活性はpH4.0〜11.0で安定であった。
(BML−17の2価金属イオン要求性)
BML−17の凝集活性は、EDTA処理後も変化しなかった。またEDTA処理溶液の凝集活性は2価金属イオンを添加後も変化しなかったことからことから、BML−17は凝集活性の発現に2価金属イオンを必要としないということが分かった。
(赤血球凝集阻害試験)
赤血球凝集阻害試験は以下のようにして行なった。まず生理食塩水にて調製した糖溶液の2倍段階希釈液、各25μlをマイクロタイタープレート上に作製した。なお、使用した糖類の原液の濃度は単糖および少糖の場合は100mM、糖タンパク質の場合は2mg/mlとした。これに凝集素価(力価)4に調整したBML−17溶液、各25μlを加えて軽く撹拌後、室温で1.5時間静置した。これに25μlのTRBCを加え、室温で2時間静置後、凝集阻害能を観察した。凝集阻止能の有無は肉眼で判定し、赤血球の約100%が凝集していない場合を陽性とした。凝集阻害能(凝集阻害活性)は、最小阻害濃度すなわち凝集阻害能を示す最小濃度(mMまたはmg/ml)で表示した。
なお、本赤血球凝集阻害試験には、単糖類および少糖類としてD−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、D−キシロース、L−フコース、フルクトース、ラクトース、ラフィノースを用い、糖タンパク質としてムチン(牛顎下腺)および該アシアロ体、フェツエン(タイプIII、子牛血清)および該アシアロ体、トランスフェリン(ヒト)および該アシアロ体、α1−酸性糖タンパク質(ヒト)および該アシアロ体、並びにイーストマンナンを用いた。
結果を表2に示す。BML−17の凝集活性は、単糖類の中ではD−マンノースによって阻害された。二糖類では阻害されなかった。また、糖タンパク質のなかではトランスフェリン、フニツィン、ムチン、およびそれらのアシアロ体、並びにイーストマンナンにより阻害されることがわかった。糖タンパク質の阻止能はムチンを除きシアロ体よりもアシアロ体の方が強かった。また、イーストマンナンが最も強い阻害能を示した。以上の結果から、BML−17はN−グリコシド型糖鎖の高マンノース型糖鎖に高い親和性を有するということが示唆された。
(糖鎖結合性試験)
供試糖鎖としてピリジルアミノ化糖鎖(以下、「PA化糖鎖」という)を44種使用した。より具体的には、N−グリコシド型糖鎖の複合型12種、高マンノース型13種、混成型3種、共通コア構造1種および共通コア関連糖鎖1種、糖脂質系糖鎖8種、オリゴマンノース5種およびPA−マンノースを用いた。上記供試糖を表3、4に示した。表3、4には各種供試糖の糖鎖構造と、その右側に各種糖鎖の番号(1〜44)を付している。これは各種供試糖このうちPA−オリゴマンノースを除き、他のPA化糖鎖は市販品(タカラバイオ社製、Ajinoki社製)を用いた。PA−オリゴマンノースは、発明者らが合成したものを用いた。
当該糖鎖結合性試験は、遠心限外ろ過法を用いた。具体的には以下のようにした。50mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.0)で調製した500nM BML−17溶液90μl(45pmol)と300nM PA化糖鎖溶液10μl(3pmol)とを軽く混合後、室温で60分間、保温した。この反応液を微量遠心限外ろ過器(NanoSpinPlus、分画分子量10,000、GelmanScience)を用いて遠心ろ過(10,000g、30秒)し、ろ液の20μlをHPLCに供し、溶出するPA化糖鎖量を測定して遊離糖鎖量とした。次に、50mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.0)の90μlとPA化糖鎖水溶液10μlを混合後、上記と同様の処理を行ない、その後のろ液の20μlをHPLCに供し、溶出するPA化糖鎖量を測定して添加糖鎖量とした。結合糖鎖量は、添加糖鎖量から反応後の遊離糖鎖量を差し引いた値として算出した。BML−17の糖鎖結合活性は、結合率、すなわち添加糖鎖量に対する結合糖鎖量の割合(Binding activity(%))で示した。なお、当該糖鎖結合性試験は各糖鎖につき2回ずつ行ない、糖鎖結合活性はその平均値とした。
結果を表5に示す。なお表5における「Oligosaccharide」の欄の1〜44は、表3、4の各種供試糖の番号に対応する。
表5からBML−17は、供試糖鎖中、N−グリコシド型糖鎖の高マンノース型糖鎖(番号18〜28)に対して、高い結合活性を有するということがわかった。高マンノース型糖鎖に対する結合活性は、非還元末端にα1−2マンノース(以下「α1−2Man」と表記)残基を最も多く有する糖鎖(番号20)が最も高かったが、非還元末端のα1−2Man残基の有無に関わらず結合することがわかった。またBML−17は、N−グリコシド型糖鎖の共通コア構造(番号13)およびL−Fuc含有共通コア構造(番号14)に結合するだけでなく、分岐糖鎖部分の遊離のマンノペンタサッカライド(番号35)とも弱いながら結合した。しかし、共通コア構造や分岐糖鎖を構成する遊離のトリマンノース(34)やマンノジサッカライド(31〜33)とは全く結合しなかった。さらに、番号13の糖鎖(結合活性19.8%)と番号34の糖鎖(同0%)および番号18の糖鎖(同32.7%)、番号35の糖鎖(同14.2%)間での結合活性の比較から、BML−17の高マンノース型糖鎖結合性に関して分岐糖鎖部分を認識するが、還元末端部分のGlcNAcβ1−4GlcNAc部分も同結合に補助的に寄与していることがわかった。さらに、BML−17の高マンノース型糖鎖との結合には、共通コア構造のManα1−6アームにManα1−6(Manα1−3)残基が付加したもの(番号28)が最小糖鎖構造として必要であることが、糖鎖番号28(同19.1%)と番号29(同0%)および番号30(同0%)との間の結合活性の比較から示唆された。なお、N−グリコシド型糖鎖の複合型糖鎖(番号1、5、6、10)とも弱い結合活性を示した。これは、BML−17が共通コア構造を弱いながら認識することに起因すると思われる。
これまでに明らかにされている海藻由来の高マンノース型糖鎖特異的レクチンは、いずれもマンノースを含む単糖、オリゴマンノース、高マンノース型糖鎖の共通コア構造とは結合しない。また、それらは高マンノース型糖鎖の分岐部分を認識部位とし、非還元末端にα1−2Man残基を持たないものに強い結合活性を示すもの、非還元末端にα1−2Man残基を持つものとのみ結合活性を示すものの2種類に分類されている。しかしBML−17は高マンノース型糖鎖結合特異性を持つが、コア構造およびオリゴマンノースにも弱い親和性を示し、非還元末端のα1−2Man残基の有無に関わらず結合することから、従来公知の高マンノース型糖鎖特異的レクチンとは異なる新規レクチンであるということがわかった。したがって、BML−17は新規の糖鎖プローブとして応用価値が高いといえる。
なお興味深いことに、ゲルろ過における精製画分の凝集活性は、D−Manおよびイーストマンナンでは全く阻止されず、同画分にはCon A結合性の糖タンパク質の存在が、ウエスタンブロッティングの結果により認められた。したがって、レクチンタンパク質は混在する高マンノース型糖鎖含有の糖タンパク質と会合し、疎水環境下でのみ解離する可能性も示唆された。
ところで、「レクチン」とは一般に、「動植物あるいは細菌で見出される免疫学的産物にあらざる糖結合性タンパク質で、結合価が2価以上で動植物細胞を凝集し、多糖類や複合糖質を沈降させ、その結合特異性は単糖やオリゴ糖を用いた凝集もしくは沈降阻害試験等で規定することができるもの」とされている。
[実施例2:BML−17のcDNAのクローニング]
以下に示す操作を行なって、cDNAライブラリーからBML−17のcDNAのクローニングを行なった。なお特に示さない限り、標準の条件にて操作を行なった。また各種キットを用いた場合においては、当該キットのマニュアルに記載された方法に準じて操作を行なった。
オオハネモ(Bryopsis maxima)の培養藻体から、AGPC法(Acid Guanidiumu−Phenol−Chloroform method)を利用して全RNAを抽出後、OligotexTM−dt30 mRNA Purification Kit(タカラバイオ製)を用いてmRNAを精製した。
次にRT−PCRを用いて2本鎖cDNAを合成し、プラスミドベクターにpBSK(+)/E/N(STRATAGENE製)の導入した。当該プラスミドベクターをコンピテントセル(E.coli DH10B)にElectroMaxDH10B(GIBCO BRL製)を用いて導入し、cDNAライブラリーを構築した。
次に、BML−17のN末端領域のアミノ酸配列情報を基に縮重プライマーを設計した。BML−17のN末端領域10〜20残基目のアミノ酸配列(DMFAKIPMPGH:配列番号3)を基に縮重プライマーSP1−17を設計した。またBML−17のN末端領域46〜54残基目のアミノ酸配列(AKGMVEAY:配列番号4)を基に縮重プライマーSP2−17を設計した。またBML−17のN末端領域3〜13残基目のアミノ酸配列(YQDPVTSDMFE:配列番号5)を基に縮重プライマーSP3−17を設計した。
SP1−17の塩基配列は、GACATGTTCGCNAAGATYCCNATGCCNGGNCA(配列番号6)である。
SP2−17の塩基配列は、GTACGCCTCGACCACCACGCCCTTAGCATCCA(配列番号7)である。
SP3−17の塩基配列は、CCAAGACCCCGTAACTTCAGATATGTTCG(配列番号8)である。
SP1−17とベクターの塩基配列から設計したプライマーAP2を用いて3’RACEを行ない、3’側の未知領域を決定した。
またSP2−17とベクターの塩基配列から設計したプライマーAP3を用いて5’RACEを行ない、5’側の未知領域を決定した。
さらにSP3−17とAP3を用いてnested PCRを行なった。
なおAP2の塩基配列は、AACCCTCACTAAAGGGAACAAAAGCTGGA(配列番号9)である。
またAP3の塩基配列は、TTGTAATACGACTCACTATAGGGCGA(配列番号10)である。
得られたPCR産物を低融点アガロースにより精製後、pGEM−T Easy Vector System(PROMEGA製)を用いてサブクローニングを行ない、得られたクローンから精製プラスミドを回収して、ダイデオキシ法により塩基配列の決定を行なった。
BML−17のcDNAの塩基配列、およびその塩基配列から求めたアミノ酸配列を図2に示す。クローニングされたBML−17のcDNAは、23アミノ酸残基からなるシグナルペプチドの一部(図2中、四角で囲んだ部分)と、168アミノ酸残基からなるポリペプチドをコードしていることが分かった。なお上記クローニングされたcDNAの全塩基配列を配列番号11に示し、その推定アミノ酸配列を配列番号12に示す。またBML−17の塩基配列を配列番号1に示し、その推定アミノ酸配列を配列番号2に示した。
[実施例3:ニワトリ卵黄抗体(ニワトリ型IgY抗体)と結合するレクチンの検索]
(供試レクチン)
藻類(海藻)由来レクチン:Eucheuma serra由来レクチンESA−2(Kawakubo,A.,Makino,H.,Ohnishi,J.,Hirohara,H.and Hori,K.:The marine red alga Eucheuma serra J.Agardh,a high yielding source of two isolectins.J.Appl.Phycol.,9,331−338(1997)参照)、Solieria robusta由来レクチンSolnin B(Hori,K.,Ikegami,S.,Miyazawa,K.and Ito,K.:Mitogenic and antineoplastic isoagglutinins from the red alga Solieria robusta.Phytochemistry,27,2063−2067(1988)参照。)、Boodlea coacta由来レクチンBCL(Hori,K.,Miyazawa,K.,and Ito,K.:Isolation and characterization of glycoconjugate−specific isoagglutinins from a marine green alga Boodlea coacta(Dickie)Murray et De Toni.Bot.Mar.,29,323−328(1986)参照。)、Carpopeltis flabellata由来レクチンCarnin(Hori,K.,Matsuda,H.,Miyazawa,K.and Ito,K.:A mitogenic agglutinin from the red alga Carpopeltis flabellata.Phytochemistry,26,1335−1338(1987)参照。)、Hypnea japonica由来レクチンHypnin A−1(Hori,K.,Miyazawa,K.,Fusetani,N.,Hashimoto,K.and Ito,K.:Hypnins,low−molecular weight peptidic agglutinins isolated from a marine red alga,Hypnea japonica.Biochim.Biophys.Acta,873,228−236(1986);Hori,K.,Matsubara,K.and Miyazawa,K.:Primary structures of two hemagglutinins from the marine red alga,Hypnea japonica.Biochim.Biophys.Acta,28,226−236(2000)参照)、BML−17、Bryopsis plumosa由来レクチンBPL−54、Codium fragile由来レクチンCFA。
陸上植物由来レクチン:Canavallia ensiformis由来レクチンCon A(Edelman,G.M.et al.,PNAS,USA,62,2580−2585(1972))、Ulex europaeus由来レクチンUEA−I(Horejsi,V.and Kocourek,J.,Biochim.Biophys.Acta,336,329−337(1974))、Arachis hypogaea由来レクチンPNA(Lotan,R.Et al.,J.Biol.Chem.,250,8518−8523(1975))、Glycine max由来レクチンSBA(Pereira,M.E.A.et al.,Crabohydr.Res.,37,89−102(1974))、Triticum aestivum由来レクチンWGA(Peumans,W.J.et al.,Planta,154,562−568(1982))、Maackia amurensis由来レクチンMAH(Kawaguchi,T.et al.,J.Biol.Chem.,249,2768−2792(1974))、Galanthus nivalis由来レクチンGNA(Van Damme,E.J.M.et al.,FEBS lett.,215,140−144(1987))。
なお、上記陸上植物由来レクチンは、コスモバイオ株式会社等から購入した。
(方法)
上記各種レクチンとニワトリ卵黄抗体(ニワトリ型IgY抗体)との結合性を調べた。簡単には、表面プラズモン共鳴法(以下、「SPR法」という)を原理とするBiacore 2000(BIACORE社)を用いて、リガンドとしてニワトリ卵黄抗体(ニワトリ型IgY抗体)をセンサーチップ上に固定し、アナライトとして各レクチン溶液を用い、マニュアルに従って測定した。SPR法では、生体分子を標識することなく、生体分子間の特異的な相互作用を微量かつ短時間で定量的に測定できる。本法では、リガンドをセンサーチップ表面上に固定化し、これに作用する物質(アナライト)を含む溶液を添加すると、分子の結合・解離により生ずる微量の質量変化がSPRシグナルの変化として検出される。質量変化はレゾナンスウユニット(RU)で表され、1000RUは共鳴による反射角度0.1°の変化に相当し、アナライトがリガンドに1ng/mm2結合したことを意味する。センサーチップ表面の金薄膜上にはデキストランがコーティングされており、主としてこのデキストラン内に導入されたカルボキシル基を介してリガンドを固定化する。
なお、アナライトとして供試したレクチンは、可能なかぎり互いに糖結合特異性が異なるものを選択し、リガンドとして供試したニワトリ卵黄抗体(ニワトリ型IgY抗体)は、ニワトリ卵黄よりEggcellent Chicken IgY Purification Kit(Pierce Chem.Co.USA)を用いて精製したものを使用した。
(結果)
上記検討の結果、藻類(海藻)由来レクチンであるESA−2、Solnin B、BCL、Carnin、Hypnin A−1、BML−17、および陸上植物由来レクチンであるCon A、UEA−Iがニワトリ卵黄抗体(ニワトリ型IgY抗体)と結合するということが分かった。これら結合性を示したものは、Hypnin A−1とUEA−Iを除き、すべて高マンノース型糖鎖結合性をもつレクチンであった。
[実施例4:ニワトリ卵黄抗体(ニワトリ型IgY抗体)とレクチンとの親和性の検討]
(供試レクチン)
藻類(海藻)由来レクチン:ESA−2、Solnin B、Carnin、Hypnin A−1、BML−17
陸上植物由来レクチン:Con A
(方法)
高マンノース型糖鎖のみを有するタカアミラーゼA(タカジアスターゼ(コウジカビ由来、Sankyo製)からCon A固定化カラムを用いるアフニティークロマトグラフィーにより精製したもの)、複合型糖鎖のみを有するアシアロトランスフェリン(トランスフェリン(ヒト由来、SIGMA製)から希酸処理物(脱シアル化物)をODSカラムを用いる逆相系HPLCにより精製したもの)、高マンノース型糖鎖と複合型糖鎖の両方を有するウシチログロブリン(ウシ由来、SIGMA社製)、抗体(ニワトリ型IgY抗体)、およびコントロールとして牛血清アルブミン(BSA、SIGMA社製)をそれぞれ、CM5センサーチップ(BIACORE製)上に固定化した。なお固定化の方法は、マニュアルに従って行なった。より具体的にはタカアミラーゼAは表面チオールカップリン法で固定化を行ない、アシアロフェツイン、ウシチログロブリン、抗体、およびBSAはアミンカップリング法を用いて固定化を行なった。なお固定化量は、1000〜1500RUの範囲になるようマニュアルインジェクション法で調整した。なお、上記糖タンパク質の純度は、SDS−PAGEまたはMALDI−TOF−MSで確認した。
各種糖タンパク質と各種レクチンとの親和性はSPR法で解析した。同解析に先立ち、予備実験で解析法を検討し、非線形最小二乗法によるカイネティクス解析が適当と判断した。そこで、得られたセンサーグラムからおおよそのKD値を算出し、0.1〜10KD[M]を濃度の目安として、2倍希釈列で5段階以上のアナライト(各種レクチン)溶液を調製した。分析プログラムの作成には、マニュアルに従って“Customaized Application”を用い、センサーチップ内の4つのフローセルのうち、何も固定化していないフローセル1をコントロールとして、糖タンパク質を固定化したフローセルからの差し引き機能を使用した。本分析プログラム下で、アナライト(各種レクチン)溶液をそれぞれセンサーチップ上に流速30μl/minで3分間流した後、バッファーを3分間流し、レクチンの結合・解離量を測定した。なお、アナライト添加開始10秒前から添加終了後10秒前までのRUの増加量を結合量、バッファー添加開始後10秒から添加終了10秒前までのRU減少量を解離量とした。
次に、0.5M D−マンノース、10mM glycine−HCl(pH4.0)、50mM HClおよび10mM NaOHを用いて、センサーチップを洗浄して再生した。得られたセンサーグラムについて、結合相と解離相を同時にカーブフィッティングさせ、結合速度定数Ka、解離速度定数Kd、親和定数KA、および解離定数KDを算出した。
(結果)
ニワトリ卵黄抗体と各種レクチンとの親和定数を表1に示した。表1には、結合速度定数Ka(M−1s−1)、解離速度定数Kd(s−1)、親和定数KA(M−1)、および解離定数KD(M)を示した。なお親和定数は、その値が大きくなればなるほど、親和性が高い(結合力が強い)ことを意味する。
表1の結果より、試験した全てのレクチンがニワトリ卵黄抗体(親和定数KA=107〜108M−1)、およびウシチログロブリン(親和定数KA=107〜108M−1)と高い親和性を示した。一方、Carnin(親和定数KA=108M−1)とCon A(親和定数KA=106M−1)はアシアロトランスフェリンに対しても高い親和性を示した。また、HypninA−1を除く全ての供試レクチンはタカアミラーゼA(親和定数KA=107〜108M−1)に対して高い親和性を示した。
以上の結果より、ニワトリ卵黄抗体とのみ特異的に結合するレクチンを見いだすには至らなかった。しかし、海藻レクチン4種(ESA−2、Solnin B、BML−17、Carnin)とニワトリ卵黄抗体との結合は、高マンノース型糖鎖との結合を介していることが判明した。なお、ニウトリ卵黄抗体との親和性は、BML−17、ESA−2、Hypnin A−1、Carnin、Con Aの順で高かった。
[実施例5:各種レクチンとウシチログロブリンとの溶離性の検討]
(方法)
ニワトリ卵黄抗体と同様に、高マンノース型糖鎖と複合型糖鎖を有するウシチログロブリン固定化チップを用い、同チップに結合したレクチンの溶離性を検討した。なお、チログロブリンの固定化に際しては、特異的結合および溶離を確認しやすいようにCM5センサーチップ上に最大限固定化(12,095RU)した。HBS−EP(平衡化)バッファー(BIACORE社製)中、各100μg/ml濃度のアナライト(レクチン)溶液を流速5μl/minで、結合量が平衡に達するまで流した。この後、HBS−EPバッファーで洗浄し、解離が平衡に達した後、同バッファー中0.5M D−マンノースを50μl注入した。センサーグラムを基に、アナライト(レクチン)溶液を50μl(5μg)注入した時点での結合量(RU)を測定した。次に、バッファー洗浄および50μlの0.5M D−マンノース溶液での溶出後のアナライト(レクチン)の残存結合量(RU)を測定した。残存結合量を最大結合量に対する割合(%)で表示した。
(結果)
図9に固定化チログロブリンと各種レクチンの相互作用のセンサーグラムを、図3に結合、洗浄および0.5M D−マンノースでの溶離後のアナライト(レクチン)の残存結合量(%)を示した。図3はウシチログロブリン固定化チップに、各種レクチンを結合させた時のチップと結合しているレクチン量を100%とした場合において、HBS−EPバッファーで解離させた後のチップと結合しているレクチン量の相対値、および0.5M D−マンノースで溶離させた後のレクチン量の相対値を示している。
この結果より、BML−17とCarninが、D−マンノースで特異的かつ定量的に溶離するということが分かった。一方、ESA−2、Solnin B、Hypnin A−1はD−マンノースおよび他の溶離液(結果は示さず)では溶離せず、Con Aは、D−マンノースで一部溶離した。
以上の結果から、BML−17とCarninがニワトリ型抗体の精製用リガンドとして利用可能であるということが分かった。
[実施例6:BML−17カラム、CarninカラムおよびCon Aカラムを用いたニワトリ卵黄抗体の精製]
(方法)
BML−17、Carnin、Con Aを、それぞれHiTrap NHS−activated HP Column(1ml容ゲル、(Amersham Bioscience Corp製)に固定化した。固定化の方法は、同HiTrapカラムに添付のマニュアルに従って行なった。なお、BML−17およびCon Aの場合は、それぞれ阻害単糖であるD−マンノースおよびメチル−α−D−マンノシドを終濃度0.2Mとなるようにリガンド溶液に加え、活性サイトをブロックした状態で固定化した。平衡化バッファー(0.15M NaClおよび0.02% NaN3を含む0.05Mトリス−塩酸バッファー(pH7.5))で十分洗浄した後の各カラムのレクチン固定化量は、400μg(BML−17)、570μg(Carnin)、270μg(Con A)であった。また、HiTrap IgY Purification HP Column(Amersham Bioscience Corp製、5ml容ゲル、以下「IgY精製用カラム」という)を比較対照として用いた。
なお、以下各種レクチンを固定化したカラムを、それぞれ「BML−17カラム」、「Carninカラム」、「Con Aカラム」と称する。
(結果)
図4に各種レクチンを固定化したカラム(BML−17カラム、Carninカラム、Con Aカラム)およびIgY精製用カラムに、ニワトリ卵黄抗体を通塔し、D−マンノースまたは溶出バッファーで溶離した場合の、タンパク質の挙動をUV280nmの吸収(図中「A280」で示す。以下同じ。)でモニターした結果を示す。図4(a)はBML−17カラムの結果を示し、図4(b)はCarninカラムの結果を示し、図4(c)はCon Aカラムの結果を示し、図4(d)はIgY精製用カラムの結果を示す。
ニワトリ卵黄抗体を上記4種類のカラムに供した結果、全てのカラムに同抗体が結合した。また20mM、200mM、500mMのD−マンノースで溶離を行なった結果、BML−17カラムおよびCarninカラムは、D−マンノースでニワトリ卵黄抗体を特異的に溶離させることが可能であるということが分かった(図4(a)、(b)参照)。なお、後出する図5に示すように、ニワトリ卵黄抗体の回収率の点から、BML−17カラムが最も有効であった。
一方、Con Aカラムでは200mM メチル−α−D−マンノシドで溶離がみられたが、(図4(c)参照)、チオール親和性をアフィニティー原理とする市販品のIgY精製用カラムでの精製効率は、著しく低かった(図4(d)、および後出する図5参照)。
[実施例7:BML−17カラム、CarninカラムおよびCon Aカラムを用いたハイブリドーマ培養上清からのニワトリモノクローナル抗体の精製]
(方法)
上記BML−17カラム、Carninカラム、Con Aカラム、IgY精製用カラムおよびCon A Sepharose 4B Lab Packsカラム(Amersham Bioscience Corp製、以下「市販Con Aカラム」という)(5ml容ゲル、固定化Con A量10〜16mg/ml)を用いて、ハイブリドーマ培養上清からニワトリモノクローナル抗体の精製を試みた。
より具体的には、ハイブリドーマ培養上清の5ml(市販Con Aカラムの場合は2.5ml)を各カラムに直接添加し、カラムを1M NaClで十分洗浄後、レクチンを固定化したカラムの場合は500mM D−マンノースまたは500mM メチル−α−D−マンノシド、IgY精製用カラムの場合はマニュアル指定の溶出バッファーで溶出し、各溶出液をSDS−PAGE(4〜20% グラジエントゲル(e−パジェル、ATTO製))に供した。バンド検出は、CBB染色およびウエスタンブロット法で行なった。また溶出液の活性ニワトリ型モノクローナル抗体の定量は、サンドイッチELISA法を用いて行なった。なお、ウエスタンブロッティングでは、西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗ニワトリIgG抗体(コスモバイオ社製)、発色にはコニカイムノステイン−HRP(生化学工業製)を用いた。
ハイブリドーマは、ニワトリB細胞株由来のMUH1とDNP−KLH免疫ニワトリ脾細胞との融合によって得られた抗DNP抗体産生のB4Cellで、これを10% FBSイスコブ培地中、38.5℃で5% CO2下、4〜5日培養した培養液の遠心上清を上記試験に供した。本ハイブリドーマは本発明者等が作製した。
なおサンドイッチELISA法は、マイクロプレートを用いて行なった。50μlのDNP−BSA溶液(10μg/ml)をプレート内の各ウェルに添加し、4℃で16時間静置して同抗原を固相化した。各ウェルを0.2%スキムミルク含有PBSでブロッキングし、0.5% Tween20を含むPBSで洗浄後、0.1%スキムミルクを含むPBSで調製した検液50μlを各ウェルに添加し、37℃で1時間静置した。このプレートを洗浄後、0.1%スキムミルクを含むPBSで調製したHRP標識ヤギ抗ニワトリIgG抗体溶液(1μg/ml)50μlを各ウェルに添加し、37℃で1時間静置した。このプレートを十分洗浄後、各ウェルに100μlの発色液(コニカイムノステイン)を加え、室温で10分静置した。各ウェルの415nmの吸光度をマイクロプレートリーダー(BIO−RAD Nodel 550)で測定した。なお、標準検量線は、ニワトリ型抗DNP−KLHモノクローナル抗体標品を同様の測定に供して作成した。
(結果)
図5に各種レクチンを固定化したカラム(BML−17カラム、Carninカラム、Con Aカラム、Con A−HiTrapカラム)およびIgY精製用カラムに、ハイブリドーマ培養上清を通塔し、500mM D−マンノースまたは溶出バッファーで溶離した場合の、タンパク質の挙動をUV280nmの吸収(図中「A280」で示す)でモニターした結果を示す。図5(a)はBML−17カラムの結果を示し、図5(b)はCarninカラムの結果を示し、図5(c)はCon Aカラムの結果を示し、図5(d)は市販Con Aカラムの結果を示し、図5(e)はIgY精製用カラムの結果を示す。
また図6に溶出液をウエスタンブロット(図6(a))およびSDS−PAGE(図6(b))で分析した結果を示した。レーン1および11は分子量マーカーを示し、レーン2および10はニワトリモノクローナル抗体標品を示し、レーン3は10% FBSイスコブ培地を示し、レーン4はハイブリドーマ培養上清を示し、レーン5はBML−17カラムの溶出画分を示し、レーン6はCarninカラムの溶出画分を示し、レーン7はCon Aカラムの溶出画分を示し、レーン8はIgY精製用カラムの溶出画分を示し、レーン9は市販Con Aカラムの溶出画分を示した。
図5、6によれば、BML−17カラムおよびCarninカラムを用いることにより、ハイブリドーマ培養上清からワンステップで高純度のニワトリモノクローナル抗体を精製することができるということがわかった。一方、市販されているCon A−HiTrapカラムやIgY精製用カラムでの精製標品は多量の夾雑物を含むものであった。
また表6に、各種カラムについて、ハイブリドーマ培養上清から活性型のニワトリ型モノクローナル抗体の精製効率を示した。
表6より、固定化リガンド量当たりの活性ニワトリ型モノクローナル抗体の収率はBML−17カラムが最も高く、次いでCarninカラムが高いことがわかった。
以上の結果より、BML−17カラムおよびCarninカラムを用いることにより、従来のようにニワトリモノクローナル抗体をハイブリドーマ培養上清から古典的なタンパク質精製法を多段階組み合わせて精製する必要が無く、きわめて簡便に精製を行なうことができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
[各実施例における表]