WO2006046518A1

WO2006046518A1 - 伝動ベルト

Info

Publication number: WO2006046518A1
Application number: PCT/JP2005/019515
Authority: WO
Inventors: Masafumi Yotsumoto
Original assignee: Bando Chemical Industries, Ltd.
Priority date: 2004-10-25
Filing date: 2005-10-24
Publication date: 2006-05-04
Also published as: JP2006118661A

Abstract

　伝動ベルトの注水時のスリップによる伝動能力の低下と異音の発生とを有効に防止するために、伝動ベルトであるＶリブドベルトＢの圧縮ゴム層６におけるリブ部８のリブゴム内に、ＲＦＬ処理したゲル化可能なポリビニルアルコール繊維からなる短繊維１０，１０，…を埋設する。ベルトＢの注水時に、リブ部８表面の短繊維１０が吸水によりゲル化して、ベルトＢとプーリとの界面に水層が形成されずに、その界面を水がない状態に保ち、水層に起因するベルトＢの伝動能力の低下とスリップによる異音発生とを抑制する。

Description

明細書

伝動ベルト

技術分野

[0001] 本発明は、 Vリブドベルトや Vベルト等の伝動ベルトに関し、特に、注水時の伝動能力を確保しかつ異音の発生を防止するための技術に関する。

背景技術

[0002] 従来より、例えば自動車に搭載されるエンジンの補機駆動システムに用いられる Vリブドベルトとして、その圧縮ゴム層にお、てプーリと接触するリブ部のリブゴム中に長さ数 mmにカットした短繊維を充填して埋め込んだものは知られて、る。この短繊維の充填によってリブゴムのプーリに対する摩擦係数を下げ、ベルト走行中の異音の発生等を防止するとともに、リブゴムの摩耗を抑制するようにして、る。

[0003] し力し、ベルトのドライ時には問題がないものの、ベルトに注水されたときには、ベルトとプーリとの界面に発生した水層が原因となるスリップが生じ、このスリップによりべルトの伝動能力が低下するとともに、異音が発生するという問題があった。

[0004] このため、例えば特許文献 1に示されるように、 Vリブドベルトに限らず、他のタイプを含む伝動ベルトにぉ、て、その圧縮ゴム層に水溶性短繊維を圧縮ゴム層のゴム 10 0質量部に対し 1〜20質量部充填し、その圧縮ゴム層表面にある水溶性短繊維が水の存在により溶解除去されてその跡に凹部が形成されるようにすることにより、注水時には水を凹部に収容して水層を破壊し、ベルトのスリップによる異音の発生を抑制することが提案されている。

特許文献 1：特開 2003 - 314624号公報

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0005] ところが、上記特許文献 1のものでは、圧縮ゴム層表面の凹部に水を収容するので、吸水量に限度があり、注水時に多量の水が入ったときに吸水できなくなってしまう。このため、ベルトとプーリとの界面に発生した水層に起因するスリップによる伝動能力の低下と異音の発生とを有効に防止するには不十分であった。 [0006] 本発明は斯力る点に鑑みてなされたもので、その目的は、伝動ベルトの圧縮ゴム層に充填される短繊維を特定することで、注水時のスリップによる、ベルトの伝動能力の低下と異音の発生とを有効に防止できるようにすることにある。課題を解決するための手段

[0007] 上記の目的を達成すべく、この発明では、短繊維を RFL処理したゲル化可能なポリビュルアルコール繊維からなるものとした。

[0008] 具体的には、第 1の発明では、心線のベルト底面側に圧縮ゴム層が配設された伝動ベルトにおいて、上記圧縮ゴム層に、 RFL処理したゲル化可能なポリビュルアルコール繊維力なる短繊維が圧縮ゴム層表面に露出するように埋設されていることを特徴とする。

[0009] 上記の構成によると、圧縮ゴム層に埋設されてヽる短繊維が、 RFL処理したゲルィ匕可能なポリビュルアルコール繊維であるので、ベルトに注水されたときに、その圧縮ゴム層表面の上記短繊維が吸水してゲルィ匕する。そして、多量の水が入っても、ゲル化した繊維が水の膜を突き破るようになる。これらの作用により、圧縮ゴム層表面に水溶性短繊維の溶解除去による凹部を形成して水を収容する場合に比べ、ベルトとプーリとの界面に水層を形成させない効果が極めて大きぐその界面は水がない状態に保たれる。このことで注水時のベルトの伝動能力を大に確保するとともに、スリップによる異音の発生を低減することができる。

[0010] 第 2の発明では、上記短繊維は、圧縮ゴム層のゴム 100質量部に対し 1〜30質量部含まれている構成とする。このことで、上記作用効果を有効に奏することができる短繊維の配合組成比が容易に得られる。

[0011] 第 3の発明では、伝動ベルトは、圧縮ゴム層に、ベルト長さ方向に互いに平行に延びる複数のリブ部が形成されている Vリブドベルトとする。また、第 4の発明では、伝動ベルトは、圧縮ゴム層が断面略 V字状に形成されている Vベルトとする。さらに、第 5 の発明では、伝動ベルトは、ベルト背面に伸縮性布カゝらなる背面布層が形成されている一方、圧縮ゴム層にベルト長さ方向に延びる溝部が形成されていて、該溝部により断面 V字状の複数の Vベルト部がベルト幅方向に並設されている伝動用結合 V ベルトとする。また、第 6の発明では、伝動ベルトは平ベルトとする。これらの発明によれば、注水時のベルトの伝動能力の確保と異音の発生の低減とを達成するのに望まし、伝動ベルトが得られる。

発明の効果

[0012] 第 1の発明によると、伝動ベルトの圧縮ゴム層に埋設される短繊維を、 RFL処理したゲルイ匕可能なポリビニルアルコール繊維としたことにより、ベルトの注水時に圧縮ゴム層表面力露出している短繊維の吸水ゲル化より、ベルトとプーリとの界面を水がない状態に保って、ベルトの伝動能力の確保とスリップによる異音発生の低減とを有効に図ることができる。

[0013] また、第 2の発明によると、短繊維の組成比を、圧縮ゴム層のゴム 100質量部に対し 1〜30質量部としたことにより、上記作用効果を奏する短繊維の配合組成比が容易に得られる。

[0014] さらに、第 3の発明では、伝動ベルトは Vリブドベルトとした。また、第 4の発明では、伝動ベルトは Vベルトとした。さらに、第 5の発明では、伝動ベルトは、ベルト底面にベルト長さ方向に延びる複数の Vベルト部がベルト幅方向に並設されて、る伝動用結合 Vベルトとした。第 6の発明では、伝動ベルトは平ベルトとした。従って、これらの発明によれば、注水時のベルトの伝動能力の確保と異音の発生の低減とを達成するのに適切な伝動ベルトが得られる。

図面の簡単な説明

[0015] [図 1]図 1は、本発明の実施形態に係る Vリブドベルトの要部を示す斜視図である。

[図 2]図 2は、実施例及び比較例の各々において、接着ゴム層、背面ゴム及び伸張ゴム層のゴム糸且成物を示す図である。

[図 3]図 3は、実施例及び比較例の各々において、圧縮ゴム層のゴム組成物を示す図である。

[図 4]図 4は、発音限界張力の試験装置を概略的に示す図である。

[図 5]図 5は、発音限界の測定結果を示す図である。

符号の説明

[0016] B Vリブドベルト（伝動ベルト）

1 心線 6 圧縮ゴム層

8 リブ部

10 短繊維

発明を実施するための最良の形態

[0017] 以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くな、。

[0018] 図 1は本発明の実施形態に係る伝動ベルトとしての Vリブドベルト Bを示し、このべルト Bは、例えば自動車用エンジンの補機駆動システム等に用いられる。 Vリブドベルト Bは、心線 1がベルト幅方向に所定のピッチで螺旋状に配置された状態で埋設された接着ゴム層 2と、この接着ゴム層 2のベルト背面側に配置された伸張ゴム層 3と、この伸張ゴム層 3のベルト背面側に配置された背面ゴム 4と、接着ゴム層 2のベルト底面側に配置された圧縮ゴム層 6とを積層一体ィ匕してなる。尚、上記背面ゴム 4に代えて帆布を設けてもよい。また、伸張ゴム層 3は省略してもよい。

[0019] 上記圧縮ゴム層 6には、ベルト長さ方向に互いに平行に延びる複数（図示例では 3 つ）の断面略台形状のリブ部 8, 8,…がベルト幅方向に一定ピッチをあけて並んだ状態で形成されている。

[0020] 上記接着ゴム層 2には、例えば EPDM、カーボンブラック、シリカ、パラフィン系オイル、綿、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、酸ィ匕カルシウム、粘着付与剤、硫黄、加硫促進剤等が用いられる。背面ゴム 4には、例えば EPDM、カーボンブラック、ノラフィン系オイル、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤、ナイ口ン繊維等が用いられる。また、伸張ゴム層 3には、例えば EPDM、カーボンブラック、シリカ、ノフィン系オイル、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤等が用いられている。さらに、圧縮ゴム層 6には、例えば EPDM、カーボンブラック、ノラフィン系オイル、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、硫黄、ナイロン繊維等が用いられている。

[0021] 上記心線 1は、エチレン 2, 6 ナフタレート繊維（PEN繊維）やポリエチレンテレフタレート繊維（PET繊維）、ポリビニールアルコール繊維（PVA繊維）、ァラミド繊維等が用いられている。

[0022] 上記圧縮ゴム層 6のうち、各リブ部 8を構成するリブゴムには短繊維 10, 10,…が配合され、この短繊維 10, 10,…は、一部が各リブ部 8の表面力も露出するようにリブゴム内に例えばベルト幅方向に配向されて埋設されている（尚、短繊維 10の配向方向はランダムであってもよぐ圧縮ゴム層 6の表面に露出するように埋設されていればよい）。短繊維 10は、 RFL処理（レゾルシンとホルマリンとの初期縮合体をラテックスに混合したレゾルシンホルマリンラテックス液に繊維を浸漬して表面に接着層を形成する処理）したゲルィ匕可能なポリビュルアルコール繊維力なり、圧縮ゴム層 6のゴム 100質量部に対し 1〜30質量部、つまり 1質量部以上でかつ 30質量部以下の範囲で含まれて、ることが望まし!/、。

[0023] すなわち、上記短繊維 10, 10, …の圧縮ゴム層 6のゴム 100質量部に対する組成は、 1質量部未満であると、 RFL処理したポリビュルアルコール繊維の吸水効果が十分に出なくなる一方、 30質量部を越えると、ゴムが硬くなりベルトのクラック発生が早くなるので、 1〜30質量部とされている。

[0024] この実施形態においては、 Vリブドベルト Bの圧縮ゴム層 6の一部を構成する各リブ部 8のリブゴム内に短繊維 10, 10,…が埋設され、この短繊維 10が、 RFL処理したゲルィ匕可能なポリビュルアルコール繊維である。このため、例えば自動車用エンジンの補機駆動システムに用いられて、る Vリブドベルト B力自動車の雨天走行や洗車等の原因により注水されると、その各リブ部 8表面の短繊維 10, 10,…が吸水してゲル化する。そして、多量の水が入ったとしても、ゲルイ匕した繊維が水の膜を突き破るようになる。これらにより、ベルト Bとそれが巻き掛けられている Vリブドプーリ（図示せず )との間の界面に水層が形成されることはなぐその界面は水がない状態に保たれる。その結果、注水時のベルト Bの伝動能力を大に確保できるとともに、スリップによる異音の発生を低減することができる。

[0025] (その他の実施形態）

尚、上記実施形態は、本発明を Vリブドベルト Bに適用したものであるが、本発明はその他の周知の伝動ベルトに対しても適用することができる。例えば、圧縮ゴム層が断面略 V字状に形成されてヽる Vベルトや、ベルト背面に接着された伸縮性布力ゝらなる背面布層が形成されてヽる一方、圧縮ゴム層にベルト長さ方向に延びる溝部が形成されていて、該溝部により断面 V字状の複数の Vベルト部がベルト幅方向に並設されている伝動用結合 Vベルト、さらには平ベルトであってもよぐ各々の圧縮ゴム層に、RFL処理したゲル化可能なポリビュルアルコール繊維からなる短繊維を埋設すればよい。

実施例

[0026] (実施例 1〜5)

次に、具体的に実施した実施例について説明する。上記実施形態と同様の構成を持つ Vリブドベルトを作製し、その圧縮ゴム層に充填する RFL処理したポリビュルァルコール繊維（商品名「クラロン Κ-Π」 )カゝらなる短繊維の組成比を変えて実施例 1〜 5とした。

[0027] (比較例 1〜3)

上記実施例のポリビュルアルコール繊維に代えてナイロン繊維カゝらなる短繊維を用 V、、その圧縮ゴム層に充填する組成比を変えて比較例 1〜3とした。

[0028] 以上の実施例 1〜5及び比較例 1〜3の各々において、接着ゴム層、背面ゴム及び伸張ゴム層のゴム組成物を図 2に、また圧縮ゴム層のゴム組成物を図 3にそれぞれ示す。また、心線は、ポリエチレンテレフタレート繊維をイソシァネートで前処理し、 RFL 液に浸漬した後、加熱乾燥して表面に均一に接着層を形成させたものである。

[0029] こうして得られた実施例及び比較例の各々に対し、ベルトの伝達性能及び発音性能の評価を行った。ベルト伝達性能評価では、ドライ時の走行と注水時の走行での 2 %スリップ状態での負荷を求めた。

[0030] 一方、発音性能の評価では、注水状態での発音限界張力を試験した。この試験では、図 4に示すように、水平方向に離れた直径 120mmの Vリブドプーリからなる駆動及び従動プーリ 14, 15間に、実施例及び比較例の各 Vリブドベルト 16を掛け渡し、従動プーリ 15を駆動プーリ 14との軸間距離が離れる方向に 588Nの荷重で付勢してベルト張力を付与した状態で、駆動プーリ 14を 3500rpmで回転させ、その駆動プーリ 14側に 120mlZminの流量で注水しながら、従動プーリ 15の負荷を変えたときの発音限界を測定した。雰囲気温度は 23°Cであった。これらの結果を図 5に示す。 [0031] この図 5の結果を見ると、実施例 1〜5のドライ時の負荷は、比較例 1〜3よりも低い力互いに略同じである。また、比較例の注水時の負荷はドライ時に対し大きく低下しているのに対し、実施例 1〜5の注水時の負荷は、ドライ時力もの低下の度合いが比較例 1〜3ほど大きくない。また、この実施例 1〜5の注水時の負荷は比較例 1〜3 よりも大きい。よって、実施例 1〜5は、注水時にベルトのスリップが生じずに高い伝動能力を確保できてヽることが判る。

[0032] また、実施例 1〜5の発音限界張力は、比較例 1〜3よりも概ね大きいので、注水時の異音の発生が生じ難いことが判る。すなわち、これらの結果力本発明は実用上有効であることが明らかである。

産業上の利用可能性

[0033] 以上説明したように、本発明は、伝動ベルトの注水時の伝動能力の確保と異音の発生の抑制とを実現できる実効性が高いので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。

Claims

請求の範囲

[1] 心線のベルト底面側に圧縮ゴム層が配設された伝動ベルトにぉ、て、

上記圧縮ゴム層に、 RFL処理したゲルィ匕可能なポリビュルアルコール繊維カゝらなる短繊維が圧縮ゴム層表面に露出するように埋設されていることを特徴とする伝動ベル

[2] 請求項 1の伝動ベルトにおいて、

短繊維は、圧縮ゴム層のゴム 100質量部に対し 1〜30質量部含まれていることを特徴とする伝動ベルト。

[3] 圧縮ゴム層に、ベルト長さ方向に互いに平行に延びる複数のリブ部が形成されている Vリブドベルトであることを特徴とする請求項 1又は 2の伝動ベルト。

[4] 圧縮ゴム層が断面略 V字状に形成されてヽる Vベルトであることを特徴とする請求項 1又は 2の伝動ベルト。

[5] ベルト背面に伸縮性布カゝらなる背面布層が形成されている一方、

圧縮ゴム層にベルト長さ方向に延びる溝部が形成されて、て、該溝部により断面 V 字状の複数の Vベルト部がベルト幅方向に並設されて、る伝動用結合 Vベルトであることを特徴とする請求項 1又は 2の伝動ベルト。

[6] 平ベルトであることを特徴とする請求項 1又は 2の伝動ベルト。