明 細 書
複雑形状体の研磨方法および研磨装置
技術分野
[0001] 本発明は、精密機械部品や金型など複雑な凹凸形状を有する複雑形状体の研磨 方法および研磨装置に関するもので、より具体的には、研磨対象である複雑形状体 に対して研磨バイトを非接触に対面し、これらの周辺に磁気研磨液を存在させて流 体研磨を行う技術の改良に関する。
背景技術
[0002] 研磨対象の表面を鏡面に仕上げる技術としては、一般に、遊離砲粒を分散させた 研磨剤を研磨対象とラップ定盤との間に介在させた状態で両者を擦り合わせる動作 を行うラッピングや、ラッピングよりも微細な砲粒を用い、ポリツシングパッドと呼ばれる 柔らか!/、工具により研磨対象との擦り合わせ動作を行うポリシングなどが行われて!/ヽ る。
[0003] また、非接触の研磨技術にはフロートポリツシングがある。このフロートポリツシング は、錫定盤と研磨対象を、微細な研磨剤を混濁したポリシング液中で同時に回転さ せることにより両者間に介在するポリシング液の流動圧で研磨対象をわずかに浮上さ せ、そのポリシング液中の研磨剤により加工を進めるような技術である。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0004] し力しながら、そうした従来の鏡面研磨の技術では以下に示すような問題がある。ラ ッビングやポリシングは、研磨対象に対してラップ定盤,ポリツシングパッドなど工具を 接触させて力を加える加工方法であるため、研磨対象に大きな応力が生じる。このた め、強度が弱い研磨対象の研磨は、困難であり、仮に研磨をした場合には研磨対象 に対して加工変質層を生じる問題がある。
[0005] また、ラッピングやポリシングは、研磨対象に工具を接触させて研磨するため、研磨 対象が溝などの凹凸を有する複雑形状 (複雑形状体)であるときは、その溝の底部な ど複雑な部位を研磨できない。その結果、表面の全域を鏡面に仕上げられず、部分
的にムラができてしまう問題がある。このことは、上記したフロートポリシングでも同様 である。フロートポリシングは研磨対象を非接触に浮上させる研磨ではあるが、研磨 対象に対して錫定盤の平面度を集積した形状に転写する点は接触研磨と変わりなく 、複雑形状体には対応できない。係る複雑形状体等に対する問題は、鏡面研磨に限 らず、バリの除去,皮膜の除去その他の研磨にも同様のことが言える。
[0006] この発明は上記した課題を解決するもので、その目的は、研磨対象に非接触とする 流体研磨を行 、、研磨対象が溝など凹凸を有する複雑形状体であっても表面の全 域を研磨することができ、強度が弱 、研磨対象でも応力なく研磨が行える複雑形状 体の研磨方法および研磨装置を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0007] 上記した目的を達成するために、本発明に係る研磨方法は、複雑形状体である研 磨対象に対して研磨バイトを非接触に対面させるとともに、これらの周辺に磁気研磨 液を存在させて流体研磨を行う複雑形状体の研磨方法あって、前記研磨バイトは磁 場を発生する磁場発生源を設けて回転手段により回転動作させ、当該研磨バイト〖こ 対面させて前記研磨対象を支持するとともに、これら両者が浸力る状態に周辺に磁 気研磨液を満たし、前記磁気研磨液には非磁性の砥粒を混合しておき、前記研磨 ノ^トを回転動作するとともに前記磁場発生源により前記磁気研磨液に時間的に定 常的あるいは変動的な磁場を加え、当該磁気研磨液を攪拌手段によりかき混ぜて非 接触の状態で流体研磨を行うようにした。
[0008] また、本発明に係る研磨装置は、出力軸が回転する回転手段と、永久磁石や電磁 コイルなど磁場を発生する磁場発生源を有しており前記出力軸の先端に着脱可能 に取り付ける研磨バイトと、前記研磨バイトと対面させて研磨対象を支持して当該両 者が浸かる状態に磁気研磨液を満たす流動槽と、前記流動槽に連係して適宜な動 作の振動を与える振動手段とを備え、前記磁気研磨液は非磁性の砥粒を混合し、前 記研磨バイトは前記研磨対象と接触させずに所定の間隔を隔てて回転動作するとと もに前記磁場発生源により前記磁気研磨液に時間的に定常的あるいは変動的な磁 場を加え、そして前記流動槽を振動させて当該槽内の磁気研磨液を力き混ぜる構成 にする。
[0009] 前記研磨バイトは、非磁性体力 なる円柱体に同心に永久磁石を埋め込み、当該 永久磁石により磁場を発生する構成とすることができる。別の構成としては、前記研 磨バイトは、非磁性体力もなる円柱体に対して環状の永久磁石を同心に複数を埋め 込み、磁性部位と非磁性部位とが同心に交互に繰り返す構成とすることができる。も ちろん、前記研磨バイトは、他の構成を採ることもできる。
[0010] 上述した各発明に用いられる磁気研磨液は、動粘度 0. 01〜: L00mm2Zs程度の 水ゃケロシン等の分散媒中に、粒子径 1〜80 μ mの強磁性粒子を好ましくは 10〜 9 5wt%分散させた流体に対して、粒子径 10〜50nmの球形マグネタイト粒子が電気 絶縁性を有する水ゃケロシン等の分散媒に一様に分散した流体を好ましくは 5〜90 wt%混合した複合流体に、粒子径 0. 01〜: LOO mの非磁性の砥粒を混合し、さら に増粘剤として OLセルロースなどの繊維状物質あるいはポリビュルアルコール等の 榭脂を混合する構成としたものを用いることができる。
[0011] したがって本発明では、回転動作する研磨ノイトは磁場発生源を有し、このため研 磨バイトと研磨対象との間に磁場が作用し、磁気研磨液において磁気クラスタが生成 する。具体的には、請求項 2と請求項 6に示す組成において、強磁性粒子 (例えば鉄 粒子),マグネタイト粒子が磁気吸引力により多数が凝集して磁気クラスタとなる。磁 気クラスタは、磁束に沿う。従って、磁気クラスタは、研磨対象に対立して針状に多数 が立ち並び、これにより磁気研磨液中に存在する砥粒が研磨対象の表面に押えつ けられる。また、磁気クラスタに絡み込まれた砥粒もあるので、それらも研磨対象の表 面に押えつけられる。
[0012] こうした状態で研磨バイトが回転動作することから研磨対象との間の相対運動によ つて砥粒は研磨対象の表面を接触しつつ運動する。このため、研磨対象の表面の凸 部を砲粒が研削し、より平滑な表面が得られる。よって、仮に研磨対象にバリが存在 していたとしても、係るノ リも除去される。
[0013] また、流動槽を動かすことで磁気研磨液を力き混ぜることから、研磨対象の凹部で も磁気研磨液が入れ替わり、磁気研磨液中で砥粒が動き回るため研削の作用をし、 研磨が進むことになる。
[0014] さらに、磁気クラスタは、磁場発生源 (永久磁石)の磁場から飛び外れてしまうものも
ある。これらは磁気研磨液中に分散してやがて消失してしまうが、少しの間は形状を 保持する。従って、磁場から飛び外れた磁気クラスタは、磁気研磨液の流動運動の ため研磨対象の側部など各部位に回り込む。そして、その回り込んだ磁気クラスタが 当該部位に当たって研削したり、当該部位で近辺に存在した砲粒を動力したりする。 その結果、研磨バイトと対面しない側部でも研磨が進む。もちろん、この浮遊した磁 気クラスタは、研磨対象の凹部でも動き回り研削の作用をし、研磨が進むことになる。
[0015] すなわち、磁場発生源の磁場により凝集して生じた磁気クラスタの一部は、研磨バ イトの回転動作および流動槽の振動動作に伴って磁場力 離脱して流動し、研磨対 象の凹部に入り込み、そして側部など研磨バイトと対面しない部位に当たり、あるい は近辺の砲粒を動力して当てるなど研削の作用をし、複雑形状の凹部や研磨バイト と対面しな 、側部でも研磨することになる。
[0016] また、上述した組成では、磁気研磨液には aセルロース等の増粘剤を含むので、 添加した増粘剤は磁気クラスタを保持するように作用し、その結果、多数の砥粒が研 磨対象の表面に接触する状況を促進でき、研磨を高効率に行えるようになる。
発明の効果
[0017] 本発明に係る複雑形状体の研磨では、磁気研磨液にぉ ヽて生成した磁気クラスタ により、研磨対象に対しては非接触の流体研磨を行うことができ、磁気研磨液を攪拌 手段によりかき混ぜるので、研磨の作用を促進でき、研磨対象が溝など凹凸を有す る複雑形状体であっても表面の全域をムラなく研磨することができる。また、本発明の 研磨は、非接触の流体研磨であるため、強度が弱い研磨対象でも応力なく研磨が行 える。そして、係る研磨を行なうことにより、バリを除去したり、鏡面に仕上げることがで きる。
発明を実施するための最良の形態
[0018] 本発明をより詳細に説明するにあたり、添付の図面に従ってこれを説明する。図 1 は、本発明の好適な一実施の形態を示している。本実施の形態において、研磨装置 (鏡面研磨装置)は、磁気研磨液 1を満たした流動槽 2を有し、その流動槽 2の底部 に固定した研磨対象 (試料 3)に対して研磨バイト 4を非接触に対面させる。研磨バイ ト 4は、例えば永久磁石などの磁場を発生する磁場発生源を備えており、駆動モータ
5により回転させる。流動槽 2には、振動台 6を連係させ、適宜な動作の振動を行わせ る。そして、この研磨装置は、磁気研磨液 1に生成した磁気クラスタの作用により流体 研磨を行う構成になっている。
[0019] 流動槽 2は、底面に試料 3を固定し、スプリングネジ 7によりトラバース装置 8の基台 9に取り付けるとともに、そのトラバース装置 8を振動台 6に取り付ける。スプリングネジ 7の部位には、接触式のロードセル 10を配置している。トラバース装置 8の基台 9を動 かすことで流動槽 2の上下位置を初期設定し、振動台 6により適宜な振動動作、例え ば研磨バイト 4の回転軸との対立面において 8の字を描くといった回動動作を与える とともに、その動作状況をロードセル 10により検出するようになっている。
[0020] 磁気研磨液 1は非磁性の砥粒を混合している。具体的には、動粘度 0. 01〜: LOO mm2Zs程度の水ゃケロシン等の分散媒中に、粒子径 1〜80 μ mの強磁性粒子を 1 0〜95wt%分散させた流体に対して、粒子径 10〜50nmの球形マグネタイト粒子が 電気絶縁性を有する水ゃケロシン等の分散媒に一様に分散した流体を 5〜90wt% 混合した複合流体に、粒子径 0. 01〜: LOO mの非磁性の砲粒を混合し、さらに増 粘剤として aセルロースなどの繊維状物質あるいはポリビュルアルコール等の榭脂を 混合している。
[0021] 図 2〜図 4に示すように、研磨バイト 4は、非磁性体力もなる円柱体 40に同心に永 久磁石 41を埋め込んだ構成を採る。すなわち、図 2に示す構造は、円柱形状の永久 磁石 41を一つだけ円柱体 40の中心に埋め込んであり、円柱体 40の直径 w2,永久 磁石 41の直径 wlに関して、
1. 0≤w2/wl≤3. 0
という設定にしている。
[0022] また図 3に示す構造は、円柱形状の永久磁石 41を一つだけ円柱体 40の中心に埋 め込むとともに、バイト面を中心の永久磁石 41に向けて窪ませてあり、円柱体 40の 直径 w2,永久磁石 41の直径 wl ,窪み部の深さ h,窪み部の幅 w3に関して、 w2/ wl = 5
w3/h=4
w3 = (w2 -wl) /2
1. 0≤w2/wl≤3. 0
0. I≤h/w3≤10. 0
という設定にしている。
[0023] さらに、研磨バイト 4は、図 4 (a) , (b)に示すように、非磁性体力もなる円柱体 40に 、環状の永久磁石 41を同心に複数を埋め込み、磁性部位と非磁性部位とが同心に 交互に繰り返す構成を採ることもよ ヽ。
[0024] 駆動モータ 5には、例えばボール盤,旋盤, NC旋盤,フライス盤などの回転駆動機 構を用いることができ、出力軸に連結したチャック部 11に研磨バイト 4の軸を取り付け し、着脱が行える構成になっている。
[0025] 振動台 6は、図示しない駆動源を有し、研磨バイト 4の回転軸と対立する平面につ いて流動槽 4を動かす構成を採る。振動動作には複数のモードを設定してあり、適宜 に選択あるいは組み合わせるようになつている。つまり、振動台 6の振動動作は、研 磨バイト 4の回転軸との対立面において、定点を中心とする単純な回転動作、あるい は 8の字を描く回動動作、または当該平面における定方向で往復する振動動作など 、複数の振動モードがあり、研磨作業の際はこれらを適宜に選択あるいは組み合わ せること〖こなる。
[0026] このような構成によれば、研磨バイト 4と試料 3との間には、図 5に示すように、磁束 が生じて磁気研磨液 1において磁気クラスタ 12が生成する。つまり、研磨バイト 4には 永久磁石 41を埋め込んであるので磁場が作用し、永久磁石 41と試料 3との間で磁 束が生じ、強磁性粒子 (例えば鉄粒子),マグネタイト粒子が磁気吸引力により多数 が凝集して磁気クラスタ 12となる。磁気クラスタ 12は、磁束に沿うので試料 3に対立し て針状に多数が立ち並ぶことになる。
[0027] このとき、磁気研磨液 1においては、増粘剤として加えた αセルロース 13が磁気ク ラスタ 12の相互間に織り込み状態に位置を占める。さらに磁気研磨液 1には、非磁 性の砲粒 14をカ卩えてあるので、これは磁気クラスタ 12に絡み込まれるものもあるが、 多くは試料 3の表面に存在することになる。したがって、針状に立ち並ぶ磁気クラスタ 12および織り込み状態のひセルロース 13とによって、磁気研磨液 1の中に存在する 砲粒 14が試料 3の表面に押さえつけられる。また、磁気クラスタ 12および αセルロー
ス 13に絡み込まれた砲粒 14もあるので、それらも試料 3の表面に押えつけられる。
[0028] こうした状態で研磨バイト 4 (永久磁石 41)が回転動作することから試料 3との間の 相対運動によって砲粒 14は試料 3の表面を接触しつつ運動する。このため、試料 3 の表面の凸部を砲粒 14が研削し、より平滑な表面が得られる。つまり、研磨対象にバ リが生じていた場合には、係るバリが除去できるし、鏡面研磨も行なえる。
[0029] 磁場が定常的では、磁気クラスタ 12は磁束に沿って整列して立ち並び、磁力により 整列状態が保持されるので砥粒 14が試料 3の表面 (研磨面)に適度に当たって研磨 が行える。また、磁場が変動的では、磁気クラスタ 12は動揺し、このときも砲粒 14が 研磨面に適度に当たり研磨が行える。このように、試料 3に対して研磨バイト 4を接触 させずに所定に隔てた非接触の状態であっても、磁気クラスタ 12および aセルロー ス 13の押さえ作用により研磨することができ、流体研磨が行える。
[0030] また、流動槽 2を動かすことで磁気研磨液 1を力き混ぜることから、試料 3の凹部で も磁気研磨液 1が入れ替わり、磁気研磨液 1の中で砲粒 14が動き回るため研削の作 用をし、研磨が進むことになる。
[0031] ところで、磁気クラスタ 12は、永久磁石 41の磁場から飛び外れてしまうものもある。
これらは磁気研磨液 1の中に分散してやがて消失してしまうが、少しの間は形状を保 持することから、磁気研磨液 1の流動運動のため試料 3の側部など各部位に回り込む ことになる。すると、その回り込んだ磁気クラスタ 12が当該部位に当たり研削の作用を し、あるいは当該部位で近辺に存在した砲粒 14を動かす作用となる。その結果、研 磨バイト 4と対面しない側部でも研磨が進むことになる。もちろん、この浮遊した磁気 クラスタ 12は、試料 3の凹部でも動き回り研削の作用をし、研磨が進むことになる。
[0032] すなわち、永久磁石 41の磁場により凝集して生じた磁気クラスタ 12の一部は、研磨 ノイト 4の回転動作および流動槽 2の振動動作に伴って磁束力も離脱して流動し、試 料 3の凹部に入り込み、そして側部など研磨バイト 4と対面しない部位に当たり、ある いは近辺の砲粒 14を動力して当てるなど研削の作用をし、複雑形状の凹部や研磨 ノイト 4と対面しない側部でも研磨することになる。
[0033] また、磁気研磨液 1には増粘剤として exセルロース 13を含むので、添加した増粘剤 は磁気クラスタ 12を保持するように作用する。その結果、多数の砥粒 14が試料 3の
表面に接触する状況を促進でき、研磨を高効率に行えるようになる。
[0034] したがって、本発明に係る鏡面研磨によれば、磁気研磨液 1にお ヽて生成した磁気 クラスタ 12により、試料 3 (研磨対象)に対しては非接触の流体研磨を行うことができ、 磁気研磨液 1を攪拌手段によりかき混ぜるので、研磨の作用を促進できる。よって、 研磨対象が溝などの凹凸を有する複雑形状体であっても表面の全域をムラなく鏡面 に仕上げることができる。そして、非接触の流体研磨であるため、強度が弱い研磨対 象でも応力なく研磨が行える。
実施例
[0035] 図 1に示す鏡面研磨装置を用いて試料の研磨を行った。つまり、本発明の効果を 実証するため、研磨の条件を替えて複数の試料を研磨し、それら各試料について表 面粗さ Ra (算術平均粗さ)を評価した。
[0036] 磁気研磨液としては表 1に示す組成とし、第 1評価試験には図 6 (a) , (b)に示す形 状寸法の試料を用いた。
[表 1]
つまり、磁気研磨液はその組成に、非磁性の砥粒として粒子径 0. 05 /z mのアルミ ナを含み、さらに増粘剤としてひセルロースを含むものとする。そして、第 1評価試験 では、試料は図 6 (a) , (b)に示すように、外径 12mm,厚さ 5mmの円板形状で同心 に環状の溝部を有し、表 2に示す諸条件により研磨を行なった。その結果、同表に合
わせて示すような表面粗さ Raが得られた。
[表 2]
[0038] このとき、試料は真鍮からなり、研磨バイトは図 4 (a) , (b)に示したもの、環状の永 久磁石を同心に有する構成であって、その回転数は 915rpm、試料との間隔は lm m、研磨時間は 1時間、振動台は研磨バイトの回転軸との対立面において 8の字を描 く回動動作を行!ヽ、その振幅は 10mmで毎分 20回の振動とした。
[0039] その結果、表面粗さ Raは環状の溝部(凹部)でも 5. 7nmが得られており、これは上 方の表面(凸部)と同等な数 nmオーダであることを確認した。すなわち、本発明に係 る研磨によれば、複雑形状体についてその凹部も含む表面の全域を研磨 (鏡面研磨 )することができ、本発明の有用性が確認できた。
[0040] 次に、試料を平板形状のものとして第 2評価試験を行った。つまり、試料は外径 20 mm,厚さ 10mmの円板形状のものとし、表 3に示す諸条件により研磨を行なった。そ の結果、同表に合わせて示すような表面粗さ Raが得られた。
[表 3]
バイト 回転数 間隔 下の台 Rai nm) 番号 材質 (No.) (rpm) (mm)研磨時間
(下の台振動の条件) 研磨前 研磨後
8の字振動
1 真鍮 A 515 2 1時間 240.8 6.8
(振幅 10mm,回転数 20/分)
8の字振動
2 SUS304 A 515 2 1時間 192 3.4
(振幅 10mm,回転数 20/分)
8の字振動
3 アルミ A 515 2 1時間 192.3 7.6
(振幅 10mm,回転数 20/分)
8の字振動
4 ジュラルミン A 515 2 1時間 150.3 4.4
(振幅 10mm,回転数 2(V分)
8の字振動
5 銅 A 515 2 1時間 486.9 4.8
(振幅 10mm,回転数 20/分)
8の字振動
6 真鍮 B 915 2 1時間 238.6 7.1
(振幅 10mm,回転数 20/分)
8の字振動
7 真鍮 B 515 2 30分 285.1 7.8
(振幅 1 Omm,回転数 20/分)
8の字振動
8 真鍮 B 515 2 1時間 207.8 8.4
(振幅 1 Omm,回転数 20/分)
8の字振動
9 Ti B 515 1 1時間 415.6 7.7
(振幅 10mm,回転数 20/分)
[0041] 第 2評価試験では、試料は真鍮, SUS304,アルミニウム,ジュラルミン,銅, Tiで あり、研磨バイトは図 2に示したものがバイト A,図 3に示したものがバイト Bであって、 その回転数は 515rpmあるいは 915rpm、試料との間隔は 2mmあるいは lmm、研 磨時間は 1時間あるいは 30分、振動台は研磨バイトの回転軸との対立面において 8 の字を描く回動動作を行い、その振幅は 10mmで毎分 20回の振動とした。
[0042] その結果、表面粗さ Raは番号 1〜番号 9の試料の何れにおいても数 nmオーダが 得られており、このとき試料は上面だけでなく側面 (周面)も鏡面研磨できていることを 確認した。すなわち、本発明に係る鏡面研磨によれば、充分な表面粗さに鏡面研磨 が行えるものであり、これは流動槽に固定した底面を除く表面の全域つまり磁気研磨 液と接した表面の全域を研磨 (鏡面研磨)することができ、本発明の有用性が確認で きた。
[0043] 上述した実験結果は、いずれも、本発明が鏡面研磨に有効に機能することをことを 証明するものである。本発明の効果は、上述した鏡面研磨に限るものではなぐ研磨 対象の形態にとらわれず、たとえ複雑形状体であっても研磨することができるもので
ある。この研磨の一態様として、ノ リ取り(バレル研磨)がある。すなわち、たとえば図 7 に示すように、研磨対象 45が、機械加工により表面に円弧状の凹溝 45aを形成し、 その機械加工の際にその凹溝 45aの端部にバリ 45bが形成されたものとする。また、 図 8に示すように、研磨対象 46が、平板状の金属プレートに対してプレスカ卩ェなどを 行ない先端に細長な帯状板部 46aを有する形状力もなるものとする。そして、その帯 状板部 46aの側縁にノ リ 46bが残っていたとする。これらバリ 45b, 46bは、この例で は、数 μ m力も数 10 μ m程度の寸法である。
磁気研磨液としては表 4に示す組成とし、第 3評価試験には図 7(No. 10),図 8(No . 11)に示す形状寸法の試料 (バリ付き)を用いた。そして、各試料に対し、それぞれ 表 5に示す研磨実施条件の下で、研磨を行なった。研磨に用いた研磨バイトは、図 1 ,図 2に示す構造のものである。また、振動第 6は、流動槽は 2が円運動するように動 作させた。その結果、何れの試料も、ノ リが綺麗に除去された。これにより、本発明の 研磨は、バリの除去にも有効に機能することが確認できた。例えば、図 8に示すように 、複雑形状であり、し力も、非常に微小で強度の弱い部材の場合、通常の方法でバリ を除去しょうとすると、帯状板部 46aが曲がったり、破損したりするおそれがあるが、本 発明によれば、帯状板部 46aに対する損傷はなぐノ リのみを除去することができる。
[表 4]
[表 5]
試料-バイト間ギャップ 上部回転数 研磨時間 下部回転数 番号 被研磨物材質
imm) (rpm) (秒) (rpm)
10 SUS403 1 800 10 40
1 1 SUS403 1 800 180 40
[0045] なお、鏡面研磨やバリ除去を行なう場合の研磨時間や、上部回転数,下部回転数 などの研磨条件は、材質,寸法形状その他の要因に基づき、適宜に設定する。 図面の簡単な説明
[0046] [図 1]本発明に係る鏡面研磨装置の好適な一実施の形態を示す構成図である。
[図 2]研磨バイトの好適な例 1を示す断面図である。
[図 3]研磨バイトの好適な例 2を示す断面図である。
[図 4]研磨バイトの好適な例 3を示し、(a)が断面図、(b)がそのバイト面を示す平面 図である。
[図 5]磁気クラスタによる流体研磨を示す説明図である。
[図 6]研磨試験の試料とした複雑形状体の形状寸法を示す斜視図 (a)および断面図 (b)である。
[図 7]研磨対象の試料とした複雑形状体の一例を示す図である。
[図 8]研磨対象の試料とした複雑形状体の一例を示す図である。
[0047] 1 磁気研磨液
2 流動槽
3 試料 (研磨対象)
4 研磨バイト
5 駆動モータ
6 振動台
7 スプリングネジ
8 トラバース装置
基台 ロード、セノレ チャック部 磁気クラスタ αセノレロース 砥粒 円柱体 永久磁石 研磨対象a 凹溝b バリ 研磨対象a 帯状板部b バリ