明 細 書
光信号符号化装置および復号化装置
技術分野
[0001] 本発明は、 OCDMA(Optical Code Division Multiplex Access :光符号分 割多重接続)により、波長分割多重光の符号化 (encoding)および復号化 (decodin g)の少なくとも一方を行なう装置に関する。特に、本発明は、ファイバグレーティング を用いて OCDMAによる符号ィ匕 Z復号ィ匕を行なう装置に関して 、る。
背景技術
[0002] OCDMAでは、従来、モパイル通信分野で実用化されて!/ヽる CDMA技術と同様 の手法により、送信側で光信号を符号ィ匕し、受信側では光信号を復号ィ匕する。光信 号の符号ィ匕 Z復号ィ匕は、回折格子、光導波路、またはファイバグレーティングなどの 光学素子を用 、て行なわれる。
[0003] OCDMAでは、符号ィ匕された光信号が同一波長帯域にあっても、コードごとに独 立しているため、相互に干渉しない。このため、各ユーザに異なるコードを割り当てる ことにより、同一波長帯域の光信号を用いても、多数のユーザで 1つの光信号伝搬媒 体を同時に利用することが可能になる。
[0004] 提案されている符号化方法は、例えば、 Frequency— encoding法; Frequency— Hopping法; Fast— Frequency— Hopping法;および direct— sequence法に分 することができる。ここで、 Frequency— encoding法は、異なる波長に対して光信号 の強度を変える符号ィ匕、 Frequency— Hopping法および Fast— Frequency— Hopp ing法は、波長および遅延を変える符号化、 direct— sequence法は、一つの波長に 対し遅延および位相を変える符号ィ匕である。
[0005] 非特許文献 1では、波長ごとに異なる遅延が付与されるファイバグレーティングを用 Vヽて行なう Fast— Frequency— Hopping法(以下、簡単に「FFH法」と称する場合が ある。)が提案されている。本発明は、この光符号方法に関連している。この光符号方 法は、時間拡散 Z波長ホップ光 CDMA(Time—SpreadZwavelength—hop opti cal CDMA)と称される場合もある。
[0006] まず、図 1を参照しながら、従来の FFH法による符号ィ匕 Z復号ィ匕を説明する。
[0007] 図 1は、非特許文献 1における Figl (b)に相当する図面である。図 1に示される装 置は、エンコーダであり、直列的に接続された複数の光ファイバを有している。光ファ ィバは、相互に同一の構成を有するユニフォームなファイバグレーティング構造を有 しており、ピエゾ素子によって光ファイバ毎に異なる張力が付与される。
[0008] 付与される張力に応じてグレーティング周期が変化するため、光ファイバごとにブラ ッグ反射を起こす波長帯域がシフトする。このため、入射してきた光信号 (ブロードバ ンドの光パルス)の含まれる各波長成分は、その波長に応じて異なる位置のファイバ グレーティングによって反射される。反射位置が異なると、光信号の往復に要する時 間が変化するため、光信号の各波長成分は、異なる時間に光ファイバから出力され る。すなわち、例えば 1つのブロードバンドパルスを図 1のエンコーダに入力すると、 波長ごとに異なるタイミングで複数の光ノ ルスが出力される。
[0009] ここで、 N個の光ファイバグレーティング F— F力 それぞれ、中心波長 λ —え で
1 Ν 1 Ν 光を反射するように光ファイバグレーティング F— Fの各々に張力を付与したとする
1 Ν
。この場合、反射中心波長え - λ の大きさを小さい順に左から並べると、例えば、
1 Ν
以下のように配列され得る。
[0010] λ < λ < λ < , · · · , < λ < λ
1 2 3 Ν-1 Ν
[0011] この例では、光ファイバグレーティング Fで反射される光の波長 λ が最も短ぐ光フ
1 1
アイバグレーティング Fで反射される光の波長え が最も長くなる。このような反射波
Ν Ν
長の配列は、 Ν個の光ファイバ F— Fに付与する張力の組み合わせを変化させるこ
1 Ν
とにより、簡単に変化させられる。可能な配列の数は、 N! =N X (N— 1) X (N-2) X · · · 3 X 2 X 1個ある。ただし、これらの可能な配列の中には、相互に識別が難 ヽ 類似の組が存在するため、後に説明するコードの数は、 N!よりも少ない値である。
[0012] 図 1のエンコーダでは、このような反射波長の配列を利用して、光信号の符号化を 行なう。すなわち、上述した例では、光ファイバ Fで反射される光は最も短い光路で
1
光ファイバの入出力部から出てくるため、遅延が最も短い。
[0013] このように、図 1のエンコーダでは、遅延の波長依存性の組を N!個の中から選択 し、これを符号のパターンとしてエンコーダにプログラムすることができる。
[0014] 一方、図 1の装置を、デコーダとして機能させることも可能である。すなわち、図 1の 装置の各光ファイバに適切な張力を与えておくと、上述の符号化によって生じた遅延 を打ち消すように逆の遅延を生じさせることができる。そのような遅延を与えると、符号 化された光信号 (異な遅延を有する光信号の列)は、図 1に示す装置で元の光信号 に復号される。
[0015] 次に、図 2を参照しながら、 OCDMAで採用可能なコードパターンを説明する。
[0016] 図 2 (a)は、あるコードについて、エンコーダによる光信号の波長と遅延との関係(以 下、「遅延パターン」と称する場合がある。)を示す図である。図 2 (b)は、図 2 (a)の遅 延パターンを持つように符号ィ匕された光信号を復号するためのデコーダによる光信 号の波長と遅延との関係を示す図である。図 2 (a)および (b)に示されるように、ェン コーダと、これに対応するデコーダとの間では、遅延パターンが相互に反対の関係に ある。
非特干文献 1: Passive Optical Fast Frequency-Hopし DMA Communications System" Habib Fathallah, Journal of Lightwave Technology, Vol. 17, No.3, March 1999
非特許文献 2: "Sine- Sampled Fiber Bragg Gratings for Identical Multiple
Wavelength Operation" Morten Ibsen, IEEE Photonics Technology Letters, Vol.10, No.6, June 1998
非特許文献 3 : IEEE Photonics Technology Letters, Vol. 15, No.8, August 2003, Hojoon Lee, Govind P. Agrawal
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0017] 図 1に示す装置を波長分割多重 (WDM)に適用しょうとすると、分割された波長帯 域ごとに図 1の装置を用意する必要がある。図 3を参照しながら、このことを説明する
[0018] 図 3は、分割された 4つの波長帯域 (波長チャネル)の中心波長え一えの各々に
1 4 つ!ヽて、 3つのコード(codel、 code2、 code3)を模式的【こ示して!/ヽる。 OCDMA【こ WDMを組み合わせることができれば、各チャネルに複数のコードを割り当てることが
可能になる。その結果、同一の光信号伝搬媒体を多数のユーザで有効に利用して 通信を行うことができる。
[0019] しかしながら、 OCDMAと WDMとを組み合わせようとすると、波長チャネル数に等 しい数だけ、 OCDMAのためのエンコーダ Zデコーダが必要になる。今後、 WDM の波長チャネル数が 10を超えて増加し、更には 20を超えてゆくと、エンコーダ Zデコ ーダが大型化せざるを得なくなる。
[0020] 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、 OCDMAに よる波長分割多重光の符号化および Zまたは復号化を簡単な構成で実現できる装 置を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0021] 本発明の装置は、光符号分割多重接続 (OCDMA)により波長分割多重 (WDM) 光の符号化 (encoding)および復号化 (decoding)の少なくとも一方を行なう装置で あって、前記波長分割多重光の入出力を行なう光入出力部と、前記光入出力部に対 して直列的に接続された N個のファイバグレーティング (Nは 2以上の整数)とを備え、 前記 N個のファイバグレーティングの各々は、サンプルドグレーティング構造を有して おり、前記サンプルドグレーティングの反射波長帯域の中心値の間隔 ΔΤは、前記 波長分割多重光における波長帯域における中心波長の間隔 Sに等しぐし力も、少 なくとも動作中における各反射波長帯域の中心値はファイバグレーティング毎に異な つている。
[0022] 好ましい実施形態において、異なるファイバグレーティング間に存在する各反射波 長帯域の中心値の差異は、各反射波長帯域の帯域幅より大きぐ ΔΤΖΝよりも小さ い値を有している。
[0023] 好ま 、実施形態にぉ 、て、ファイバグレーティング毎に前記サンプルドグレーティ ング構造を制御するコードプログラム素子を備え、前記コードプログラム素子は、各サ ンプルドグレーティング構造によって規定される前記反射波長帯域の中心値をシフト させることがでさる。
[0024] 前記コードプログラム素子は、熱または応力により、前記サンプルドグレーティング 構造における屈折率変調の周期を、ファイバグレーティング毎に変化させることがで
きる。
[0025] 好ま 、実施形態にぉ 、て、前記コードプログラム素子による前記サンプルドグレ 一ティング構造における屈折率変調の周期の変化量は、各反射波長帯域の帯域幅 より大きい値に設定される。
[0026] 好ま 、実施形態にぉ 、て、前記サンプルドグレーティング構造における屈折率変 調は、シンク関数によって変調されている。
[0027] 好ましい実施形態において、屈折率変調の振幅が相対的に小さな第 2領域におけ る変調周期は、屈折率変調の振幅が相対的に大きな第 1領域における変調周期に 等しい。
[0028] 好ま 、実施形態にぉ 、て、前記装置はエンコーダとして動作する。
[0029] 好ま 、実施形態にぉ 、て、前記装置はデコーダとして動作する。
[0030] 好ましい実施形態において、上記の装置によって符号化された信号を復号する。
[0031] 本発明の符号ィ匕復号ィ匕システムは、上記エンコーダとして機能する装置およびデ コーダとして機能する装置を含む。
発明の効果
[0032] サンプルドグレーティング構造を有するファイバグレーティングを用いると、光反射 波長帯域を所定の波長間隔で複製 (replicate)することができる。光反射波長帯域が 相互に異なる複数のサンプルドファイバグレーティングを直列的に接続することにより 、波長分割多重化された光信号に対して CDMAの符号ィ匕 Z復号ィ匕を行なうことが できる。このため、波長チャネルごとに別の符号化 Z復号化装置を用意する必要が 無くなる。
図面の簡単な説明
[0033] [図 l]OCDMAのためのエンコーダの従来例を示す図である。
[図 2] (a)は、符号ィ匕のための波長と遅延との関係 (遅延パターン)の例を示す図であ り、(b)は、復号ィ匕のための遅延パターンの例を示す図である。これらの遅延パター ンは、コードパターンに対応している。
[図 3]OCDMAと WDM (波長分割多重)とを組み合わせた場合におけるコードパタ ーンと波長帯域 (チャネル)との関係を示す図である。
[図 4] (a)は、サンプルドユニフォームグレーティングにおける屈折率変化 δ n (z)とフ アイバ位置 zとの関係を示すグラフであり、(b)は、サンプルドチヤープグレーティング における屈折率変化 δ n (z)とファイノ位置 zとの関係を示すグラフであり、(c)は、シ ンク関数に従って変調されたサンプルドユニフォームグレーティングにおける屈折率 変化 δ n (z)とファイバ位置 zとの関係を示すグラフである。
圆 5]本発明による装置の第 1の実施形態を示す図である。
圆 6]本発明による装置の第 2の実施形態を示す図である。
[図 7] (a)、 (b)、および (c)は、それぞれ、図 5に示されるサンプルドグレーティング 10 1、 102、および 103による反射率パターン (反射率の波長依存性)と遅延パターンを 示す図であり、(d)は、図 5に示される装置全体の反射率パターンおよび遅延パター ンを示す図である。
[図 8] (a)、 (b)、および (c)は、それぞれ、図 6に示されるサンプルドグレーティング 10 1、 102、および 103による反射率パターンと遅延パターンを示す図であり、(d)は、 図 6に示される装置全体の反射率パターンおよび遅延パターンを示す図である。
[図 9] (a)は、あるコードを実現するエンコーダにおける反射率パターンのシミュレーシ ヨン結果を示すグラフであり、(b)は、そのエンコーダにおける遅延パターンのシミュレ ーシヨン結果を示すグラフである。
[図 10] (a)は、他のコードを実現するエンコーダにおける反射率パターンのシミュレ一 シヨン結果を示すグラフであり、(b)は、そのエンコーダにおける遅延パターンのシミュ レーシヨン結果を示すグラフである。
圆 11A]本発明による符号ィ匕の実験結果を示す図であり、符号 1のパターンを示すマ トリックス図である。
圆 11B]本発明による符号ィ匕の実験結果を示す図であり、符号 1のためのエンコーダ による反射率パターンを示すグラフである。
圆 11C]本発明による符号ィ匕の実験結果を示す図であり、符号 1のためのエンコーダ による遅延パターンを示すグラフである。
圆 11D]本発明による符号ィ匕の実験結果を示す図であり、符号 2のパターンを示すマ トリックス図である。
圆 11E]本発明による符号ィ匕の実験結果を示す図であり、符号 2のためのエンコーダ による反射率パターンを示すグラフである。
圆 11F]本発明による符号ィ匕の実験結果を示す図であり、符号 2のためのエンコーダ による遅延パターンを示すグラフである。
圆 11G]本発明による符号ィ匕の実験結果を示す図であり、符号 3のパターンを示すマ トリックス図である。
[図 11H]本発明による符号ィ匕の実験結果を示す図であり、符号 3のためのエンコーダ による反射率パターンを示すグラフである。
圆 111]本発明による符号ィ匕の実験結果を示す図であり、符号 3のためのエンコーダ による遅延パターンを示すグラフである。
[図 12]シンク関数型サンプルドグレーティングを利用する本発明による符号ィ匕の他の シミュレーション結果を示す図であり、(a)は、ある符号化パターンを示すマトリックス 図であり、(b)は、その符号ィ匕パターンのためのエンコーダによる反射率パターンを 示すグラフであり、(c)は、そのエンコーダによる遅延パターンを示すグラフであり、 (d )は、(b)および (c)のグラフを拡大し、 1つにまとめたグラフである。
圆 13]非特許文献 3に開示されているサンプルドグレーティング構造 (位相変調型)を 示すグラフである。
符号の説明
1 光ファイバ
11、 12、 13、 14、 21、 22、 23、 24、 31、 32、 33、 34 屈折率変調領域
5 光サーキユレータ
6 光ファイバ
7 光ファイバ
8 光サーキユレータ
9 1番目のサンプルドファイバグレーティング
10 2番目のサンプルドファイバグレーティング
11 3番目のサンプルドファイバグレーティング
15 コントローラ
16 光ファイバ
101 1番目のサンプルドファイバグレーティング
102 2番目のサンプルドファイバグレーティング
103 3番目のサンプルドファイバグレーティング
112 サンプルドグレーティング 9のための温調素子
113 サンプルドグレーティング 10のための温調素子
114 サンプルドグレーティング 11のための温調素子
発明を実施するための最良の形態
[0035] 以下、本発明による装置の実施形態を説明する。
[0036] (実施形態 1)
まず、図 5を参照しながら、本発明による装置の第 1の実施形態としてエンコーダを 説明する。このエンコーダはデコーダとして動作することも可能である。
[0037] 図 5に示すエンコーダは、波長分割多重光の OCDMAによる符号化を行なう装置 であり、波長分割多重光の入出力を行なう光入出力部 203と、光入出力部 203に対 して直列的に接続された N個(この例では、 N = 3)のファイバグレーティング 101、 10 2、 103とを備えている。第 1のファイバグレーティング 101と第 2のファイバグレーティ ング 102とは接続部 205で光学的に結合されており、第 2のファイバグレーティング 1 02と第 3のファイバグレーティング 103とは、接続部 207で光学的に結合されている。 接続部 205、 207の長さはゼロであってもよい。
[0038] 本実施形態におけるファイバグレーティング 101、 102、 103の各々は、屈折率変 調の振幅が相対的に大きな第 1領域 11一 14、 21— 24、 31— 34と、屈折率変調の 振幅が相対的に小さな第 2領域 201とが一定の周期 Pで交互に配列されたサンプル ドグレーティング構造を有している。以下、周期 Pを「サンプル周期」と称する。本実施 形態では、第 2領域 201の屈折率は略一定であり、屈折率変調の振幅はゼロである 力 第 2領域 201の屈折率変調の振幅はゼロである必要はな 、。
[0039] ここで、波長分割多重光における各チャンネルの中心波長の間隔 (WDMの各チヤ ンネルの帯域間隔)を「S」と表現すると、上記のサンプルドグレーティング構造は、後 に詳しく説明するように、波長分割多重光における各チャネルの中心波長の間隔 S
に等し 、周期で複製された (replicated)複数の反射波長帯域を形成する。サンプルド グレーティング構造によって複製された反射波長帯域の中心波長の間隔を、「 ΔΤ」 で表現すると、本願発明では AT=Sが成立する。ブラッグ反射による反射波長帯域 が周期 ΔΤで形成されるのは、サンプルドグレーティングの性質による。 ΔΤは、以下 の式に示すように、サンプル周期 Pの逆数に比例する。
[0040] Δ Τ= λ ソ 2ηΡ
Β
[0041] ここで、 λ は、グレーティング周期 dのときのブラッグ波長、 nは実効屈折率である。
B
[0042] このため、サンプル周期 Pを調節することにより、 ΔΤの大きさを制御することができ る。本実施形態では、波長分割多重光の帯域間隔に整合する ΔΤを実現するサンプ ル周期 Pを求め、サンプル周期 Pの屈折率変調を各ファイバグレーティングに付与し ている。
[0043] サンプルドグレーティングでは、グレーティング周期が光伝播方向に沿ってュニフォ ームではなぐ屈折率変調の位相および Zまたは振幅が光伝播方向に沿って一様 ではない構造を有している。図 4 (a)から(c)は、いずれも、サンプルドグレーティング 構造の例を示している。これらのグラフの縦軸は屈折率変化 δ n (z)であり、横軸はフ アイバグレーティングの長軸 (光信号伝搬方向)に沿った位置 zである。
[0044] 図 4 (a)は、屈折率変調の振幅が周期 (サンプル周期) Pで矩形的に変化するサン プルドグレーティング (スーパストラクチャ)の δ η(ζ)を示している。これに対し、図 4 (b )は、屈折率変調領域における変調位相がファイバ位置に応じて変化するチヤープド サンプルドグレーティングの δ n (z)を示している。図 4 (c)は、屈折率変調の振幅が 特定の関数によって変調されたシンク関数サンプルドグレーティングの η δ (ζ)を示し ている。シンク関数サンプルドグレーティングは、非特許文献 2に開示されている。
[0045] 図 4 (a)および (b)に示す例では、屈折率変調の振幅が相対的に大きな領域 (長さ Wの領域)がサンプル周期 Pで配列されており、屈折率変調の振幅が相対的に小さ な領域の振幅はゼロである。すなわち、長さ Wの領域に挟まれた領域では屈折率変 調が行なわれて 、な 、( δ n (z) =0)。
[0046] 一方、図 4 (c)の例では、屈折率変調の振幅が相対的に大きな領域 (長さ Wの領域 )がサンプル周期 Pで配列されている点では上記の例と同じである力 屈折率変調の
振幅が相対的に小さな領域の振幅はゼロではない。すなわち、長さ wの領域に挟ま れた領域でも屈折率変調が行なわれて!/ヽる。
[0047] 本実施形態では、ファイバグレーティング 101、 102、 103の各々における反射波 長帯域の中心値を相互にシフトさせるため、ファイバグレーティング毎にグレーティン グ周期を異なる大きさに設定している。
[0048] 次に、図 7 (a)— (d)を参照しながら、本実施形態のエンコーダによる符号ィ匕の方法 を説明する。
[0049] まず、図 7 (a)を参照する。図 7 (a)は、第 1のファイバグレーティング 101による反射 波長帯域 (反射帯域)を模式的に示すグラフである。グラフの縦軸は反射率であり、 横軸は波長である。図 7 (a)に示すとおり、複数の反射帯域 211、 212、 213、 214が 形成されている。反射帯域 211、 212、 213、 214は、波長軸上に周期 ΔΤで配列さ れている。反射帯域 211、 212、 213、 214の各々の帯域幅は、 Δ λで表される。
[0050] Δ Τは、複数の波長分割多重の波長チャネルの周期 Sに整合し、かつ、 Δ λ X Ν ( ファイバグレーティングの数)と同等、または、それよりも大きな値に設定される。
[0051] 図 7 (b)は、第 2のファイバグレーティング 102による反射帯域を模式的に示すダラ フである。グラフの縦軸は反射率であり、横軸は波長である。図 7 (b)に示すとおり、 複数の反射帯域 221、 222、 223、 224力 S形成されている。反射帯域 221、 222、 22 3、 224は、ここでも、波長軸上に周期 ΔΤで配列されている。反射帯域 221、 222、 223、 224の各々の帯域幅も、 Δ λで表される。
[0052] 図 7 (a)および図 7 (b)を比較すると明らかなように、第 2のファイバグレーティング 10 2による反射帯域 221、 222、 223、 224は、第 1のファイバグレーティング 101による 反射帯域 211、 212、 213、 214に対して、 Δ λ 1だけ長波長側にシフトするように設 計されている。
[0053] 図 7 (c)は、第 3のファイバグレーティング 103による反射帯域を模式的に示すダラ フである。グラフの縦軸は反射率であり、横軸は波長である。図 7 (c)に示すとおり、 複数の反射帯域 231、 232、 233、 234力 S形成されている。反射帯域 231、 232、 23 3、 234は、ここでも、波長軸上に周期 ΔΤで配列されている。反射帯域 231、 232、 233、 234の各々の帯域幅も、 Δ λで表される。
[0054] 図 7 (a)および図 7 (c)を比較すると明らかなように、第 3のファイバグレーティング 10 3による反射帯域 231、 232、 233、 234は、第 1のファイバグレーティング 101による 反射帯域 211、 212、 213、 214に対して、 Δ λ 1 X 2だけ長波長側にシフトするよう に設計されている。
[0055] 図 7 (d)は、エンコーダの全体の反射率パターンを示すグラフである。この反射率パ ターンは、第 1一第 3のファイバグレーティング 101— 103の反射率パターンを重ね 合わせたものである。図 7 (d)において、波長帯域 λ 1—え 4は、それぞれ、波長分割 多重光にお 、て分割された波長帯域 (波長チャネル)に相当して!/、る。
[0056] 図 7 (d)に示す反射率パターンを実現するためには、 ΔΤを波長チャネルの周期に 整合させ、かつ、 Δ λ 1 X N (ファイバグレーティングの数)と同等、または、それよりも 大きな値に設定する必要がある。
[0057] 図 7 (a)から (c)の右側に示すグラフは、それぞれ、ファイバグレーティング 101— 1 03による遅延パターンを示すグラフである。図 7 (d)から明らかなように、エンコーダ の遅延パターンは第 1一第 3のファイバグレーティング 101— 103の遅延パターンを 重ね合わせたものである。
[0058] このように、 3個のファイバグレーティングを用いて作製した 1つのエンコーダにより、 4つの波長チャネル (波長 λ 1、え 2、 λ 3、 λ 4)に対応した遅延パターンを形成する ことができる。このため、エンコーダを大型化することなぐ波長分割多重光の符号ィ匕 を実行することが可能になる。しかも、この符号ィ匕は 4つの波長チャネルで同時に(一 括的に)実行される(multiple operation)。
[0059] サンプルドグレーティング構造によって複製された反射帯域の幅 Δ λは、 FFH—C DMAにおける「1チップの帯域」の大きさに相当している。 Δ λの長さは、 0. lnm以 上に設定されることが望ましい。
[0060] 本発明の好ましい実施形態では、光符号 FFH— CDMAの符号パターンを構成す る各チップを、それに対応するファイバグレーティングにサンプルドグレーティング構 造を付与することにより、波長軸上で複製する。また、その複製を各チップで同様に 行なうことにより、全体として、複数の波長チャネルの同時符号ィ匕を可能にしている。
[0061] 本発明の装置では、 ΔΤおよび Δ λが前述の条件を満たすように設計された複数
のサンプルドファイバグレーティングを用いて!/、るが、このサンプルドファイバグレーテ イングは、図 4 (a)に示す構造を有するものに限定されず、図 4 (b)に示すサンプルド チヤープグレーティング構造や、図 4 (c)に示す振幅が変調されたサンプルドグレー ティング構造を有して 、てもよ 、。
[0062] 図 5に示される例では、 3つのファイバグレーティング 101、 102、 103のグレーティ ング周期力 それぞれ、 dl、 d2、 d3であり、 dl < d2< d3の関係力成立して!/ヽる。本 実施形態では、前述のように、各ファイバグレーティングによる反射波長帯域の中心 波長が Δ λ 1だけシフトしている。
[0063] 1つの装置内で直列的に接続されるファイバグレーティングの数は、符号化パター ンのチップ数 Νに等しい。したがって、図 5に示すように 3つのサンプルドファイバグレ 一ティングを用いる場合には、符号ィ匕パターンのチップ数 Νは 3に等しくなる。 OCD ΜΑにおける符号化パターンは、「FH— sequence または「one— coincidence と呼 ばれるコードで表現され、チップ数 Nは 2以上に設定される必要がある。ファイバダレ 一ティング 101、 102、 103の長さは、相互に等しく「L」である。接続部 205、 207の 長さは「I」である。
[0064] 以下、図 5の装置の動作を説明する。
[0065] まず、不図示の光源力 放射されたシングルモードの光信号が光ファイバ 1に入る 。光源は、例えば、パルス光源、スーパーコンティ-ユウム光源、 LEDなどの広帯域 光源、フアブリぺロ型ゃファイノくリングレーザ型のくし型光源であり得る。
[0066] 光ファイバ 1に入射した光信号は、サーキユレータ 5を介してファイバグレーティング 101に繋がる光入出力部 203に入力される。ファイバグレーティング 101に進入した 光信号の一部は、ファイバグレーティング 101で反射され、残りは、ファイバグレーテ イング 102に入射する。ファイバグレーティング 101で反射された光は、光入出力部 2 03およびサーキユレータ 5を介して、光ファイバ 6に入射する。ファイバグレーティング 101で反射される光は、光ファイバ 1に入射した光信号のうち、グレーティング周期 dl によって規定される反射波長帯域の光である。この反射波長帯域は、図 7 (a)に示す ように狭 、反射帯域が Δ Tの周期で複製されて 、る。この反射帯域以外の波長を有 する光は、ファイバグレーティング 101を通り抜ける。
[0067] ファイバグレーティング 102に入射した光信号の一部は、ファイバグレーティング 10 2で反射され、残りは、ファイバグレーティング 103に入射する。ファイバグレーティン グ 102で反射された光は、ファイバグレーティング 101、光入出力部 203、およびサ ーキユレータ 5を介して、光ファイバ 6に入射する。ファイバグレーティング 102で反射 される光は、グレーティング周期 d2によって規定される反射波長帯域の光である。こ の反射波長帯域は、図 7 (b)に示すように狭 、反射帯域が Δ Tの周期で複製されて いる。この反射帯域以外の波長を有する光は、ファイバグレーティング 101を通り抜 ける。
[0068] ファイバグレーティング 103に入射した光信号の一部は、ファイバグレーティング 10 3で反射される。ファイバグレーティング 103で反射された光は、ファイバグレーティン グ 102、ファイバグレーティング 101、光入出力部 203、およびサーキユレータ 5を介 して、光ファイバ 6に入射する。ファイバグレーティング 103で反射される光は、グレー ティング周期 d3によって規定される反射波長帯域の光である。この反射波長帯域は 、図 7 (c)に示すように狭 、反射帯域が Δ Tの周期で複製されて 、る。
[0069] 好ましい実施形態では、第 2のファイバレーティング 102の反射帯域と第 1のフアイ バグレーティング 101の反射帯域との間のシフト量 Δ λ 1が、複製される個々の矩形 反射帯域の幅 Δ λに等しい。このため、これらの 2つのファイバグレーティングによる 反射帯域を合わせると、 2つの櫛の歯がずれたような形が形成される(図 7 (b) )。同 様に、第 3のファイバレーティング 103の反射帯域と第 2のファイバグレーティング 10 2の反射帯域との間のシフト量 Δ λ 1も、複製される個々の矩形反射帯域の幅 Δ λに 等しい。このため、 3つのファイバグレーティングによる反射帯域を合わせると、 3つの 櫛の歯がずれたような形が形成される(図 7 (d) )。
[0070] 第 2のファイバグレーティング 102による反射光は、第 1のファイバグレーティング 10 1による反射光に比べて、 2 X (L+I)だけ長い光路を伝播して光ファイバ 6に入射す る。一方、第 3のファイバグレーティング 102による反射光は、第 1のファイバグレーテ イング 101による反射光に比べて、 4 X (L+I)だけ長い光路を伝播して光ファイバ 6 に入射することになる。
[0071] したがって、第 2のファイバグレーティング 102による反射光の遅延は、
第 1のファイバグレーティング 101による反射光の遅延よりも大きい。同様に、第 3のフ アイバグレーティング 103による反射光の遅延は、第 1および 2のファイバグレーティ ング 101、 102による反射光の遅延よりも大きい。
[0072] 装置全体による遅延の波長依存性 (遅延パターン)は、図 7 (d)に示すように、 λ 1 一 λ 4の波長チャネルに対応するように周期的に複製されて 、る。
[0073] 本実施形態では、第 1のファイバグレーティング 101の反射帯域に対して、第 2のフ アイバグレーティング 102および第 3のファイバグレーティング 103の反射帯域力 そ れぞれ、 Δ λ 1および 2 Χ Δ λ 1だけシフトしている。このようなエンコーダによると、図 3に示す Code 1に符号化される。
[0074] 一般には、直列接続された N個のファイバグレーティングを考えることができる。この 場合、光入出力部に近い側カゝら i番目のファイバグレーティングの反射波長のシフト は、 m X Δ λ (mは整数: l≤i≤N)で表され得る。
[0075] 各コードは、 mの組み合わせによって規定される力 コード間の相関が低くなるよう にコードの選択が行なわれる。 CDMAでは、「FH—sequence」や「one— coinciden ce」と呼ばれる手法により、コードが選択される。これにより、コードの独立性が向上し 、デコードの誤り率を低減することができる。
[0076] 図 5の例では、 3つのファイバグレーティング 101— 103力 接続部 205、 207を介 して結合されている力 接続されるファイバグレーティングの個数は、 4以上であって もよい。各ファイバグレーティング 101— 103は、接続部 205, 207を介することなぐ 連続していても良い。すなわち、 1本の光ファイバ内に複数のサンプルドグレーティン グ構造を形成してもよ ヽし、複数のファイバグレーティングを相互に融着してもょ 、。
[0077] 図 5の例では、各ファイバグレーティングに 4つの屈折率変調部 11一 14を形成して V、るが、 1つのサンプルドファイバグレーティング構造に含まれる屈折率変調部の数 は、 2個以上であればよい。
[0078] 図 5に示すェンコーダによって符号ィ匕された光信号を復号するためのデコーダは、 図 5の装置におけるファイバグレーティング 101— 103の接続順序を反転させること によって作製できる。すなわち、光入出力部 203に近い側力もファイバグレーティング 103、ファイバグレーティング 102、ファイバグレーティング 101の順番に直列的に接
続する。このようにすることにより、図 7 (d)に示す遅延パターンと逆の遅延パターンが 形成されるため、光信号の復号が可能になる。
[0079] 次に、図 4 (b)に示すチヤープされたサンプルドファイバグレーティングを使用する 場合の効果を説明する。
[0080] 図 8 (a)—(d)は、それぞれ、図 7 (a)—(d)のグラフに相当するグラフを示しており、 異なる点は、ファイバグレーティングの屈折率変調部がチヤープされている点にある 。チヤープにより、各反射帯域の幅 Δ λの大きさを変化させることができる。また、図 8 (a)—(c)から明らかなように、各反射帯域の遅延に勾配を与えることができる。すな わち、複製された遅延パターンを示す線分が、グラフの横軸に対して平行な線分で なぐ傾斜する。
[0081] なお、符号ィ匕に必要な帯域を確保するため、 ΔΤは波長分割多重の 1チャンネル の帯域以上に設定する必要がある。前述のように、 Pと ΔΤとは逆数の関係にあり、 P が大きくなると、 ΔΤが小さくなる。このため、第 1一第 3のファイバグレーティングにお けるサンプル周期 Pは、 2mm以下に設定することが好ましい。
[0082] (実施形態 2)
以下、本発明による装置の第 2の実施形態を説明する。
[0083] 本実施形態では、同一構造を有する複数のファイバグレーティングを用いて符号パ ターンのプログラムを可能にして 、る。
[0084] まず、図 6を参照する。図 6は、本実施形態の装置構成を示す図である。図示される 装置は、波長分割多重光の OCDMAによる符号化を行なう装置であり、波長分割多 重光の入出力を行なう光入出力部 203と、光入出力部 203に対して直列的に接続さ れた N個(この例でも、 N = 3)のファイバグレーティング 9、 10、 11とを備えている。フ アイバグレーティング 9、 10、 11の各々は、屈折率変調の振幅が相対的に大きな第 1 領域と、屈折率変調の振幅が相対的に小さな第 2領域とが一定のサンプル周期 Pで 交互に配列されたサンプルドグレーティング構造を有している。
[0085] 本実施形態では、各ファイバグレーティング 9、 10、 11が、本来的には同一の構造 を有しており、各ファイバグレーティング 9、 10、 11のグレーティング周期を独立的に 、し力も適応的(adaptively)に調節し得る素子を備えている点で、図 5の装置から異
なっている。
[0086] グレーティング周期は、ファイバグレーティングの温度やファイバグレーティングに 付与する張力などによって変更可能であり、グレーティング周期によって反射波長帯 域を変化 (シフト)させることができる。本実施形態の装置によれば、符号化パターン や復号化パターンのプログラム (装置製造後の任意な変更)が可能になる。
[0087] 図 6に示す装置では、ファイバグレーティング 9、 10、 11が、それぞれ、温調素子 1 12、 113、 114【こ熱的【こ接虫して!/、る。温調素子 112、 113、 114ίま、ヒータゃぺノレ チェ素子など力 構成され、温度制御手段として機能する。温調素子 112、 113、 11 4は、コントローラ 15に接続され、独立してファイバグレーティング 9、 10、 11の温度を 調節することができる。
[0088] 本実施形態では、各ファイバグレーティング 9、 10、 11のグレーティング周期は、室 温では dlに等しぐこのままでは、符号ィ匕パターンを形成することはできない。
[0089] ファイバグレーティング 9、 10、 11に異なる温度を付与することにより、個々のフアイ バグレーティングによる反射帯域が相互にシフトし、符号化パターンを形成することが 可會 になる。
[0090] 以下、図 6の装置の動作を説明する。
[0091] まず、不図示の光源力 放射されたシングルモードの光信号が光ファイバ 7に入る 。光ファイバ 7に入射した光信号は、サーキユレータ 8を介してファイバグレーティング 9に結合される。ファイバグレーティング 9に入射した光信号の一部は、ファイバダレ 一ティング 9で反射され、残りは、ファイバグレーティング 10に入射する。ファイバダレ 一ティング 9で反射された光は、サーキユレータ 8を介して、光ファイバ 16に入射する 。ファイバグレーティング 9で反射される光は、光ファイバ 7に入射した光信号のうち、 温調素子 112によって dlから変化したグレーティング周期によって規定される反射 波長帯域の光である。
[0092] 温度調節を行なわな!/、と、グレーティング周期 dlによって規定される反射帯域の光 がファイバグレーティング 9で反射され、他のファイバグレーティング 10、 11では反射 が生じなくなる。
[0093] 本実施形態では、ファイバグレーティング 10、 11の温度を、それぞれ、異なるレべ
ルに調節することにより、ファイバグレーティング 9を透過してきた光の一部をファイバ グレーティング 10またはファイバグレーティング 11で反射させることができる。
[0094] ファイバグレーティング 9、 10、 11は、適切な温度分布を付与されることにより、図 7
(a)一 (c)に示すように複製された複数の狭!、反射帯域を有することになる。
[0095] ファイバグレーティング 9、 10、 11の各々における温度の設定により、例えば、図 3 に示す codel、 code2、または code3の符号化パターンを形成することができる。サ ンプルドグレーティング 9、 10、 11で反射された光は、サーキユレータ 8にもどり、光フ アイバ 16へ出て行く。
[0096] 本実施形態の装置も、前述の実施形態と同様にエンコーダのみならず、デコーダと しても動作し得る。また、ファイバグレーティングとしてチヤープされたサンプルドグレ 一ティングを使用してもよい。なお、ファイバグレーティングの初期のグレーティング構 造は同一である必要は無ぐ図 5に示す装置のように、グレーティング周期が相互に 異なっていても良い。
[0097] 以下、本発明の実施形態について行なったシミュレーションおよび実験の結果を説 明する。
[0098] まず、シミュレーションで必要となる各パラメータの関係について説明する。ファイバ グレーティングのサンプル効果によって複製される個々の反射帯域の帯域幅 Δ λ、 複製される反射帯域の周期 Δ Τ、および、符号を構成するチップの数 Νは、以下の 数 1に示す関係を満足する必要がある。
[0099] [数 1]
ΔΤ
Ν < ——
Δ义
[0100] 理想的には、個々の反射帯域を規定する反射率パターンの外側にはリップル等が 存在せず、個々の反射率パターンは完全な矩形である。しかし、現実には、個々の 反射率パターンが完全な矩形でないため、 Νは、 Δ ΤΖ Δ λよりも小さく設定する必 要がある。
[0101] Νが大きいほど、コードの長さが大きくなり、コード数が増加する。コード数が増加す
ると、同じ波長チャネルを利用できるユーザの数(=コード数)が増えるため、好まし い。
[0102] 光信号がパルス状である場合、 ΔΤはパルスの帯域に相当し、通常は、 0. 6nm以 上である。 ΔΤを大きくするには、サンプル周期 Pを小さくすれば良い。また、矩形に 近い細い反射帯域を実現し、 Δ λを小さくするためには、各ファイバグレーティング の全長 Lを長くすることが好ましい。
[0103] 以上のことから、 Νを大きくするには、サンプル周期 Ρを小さくし、かつ、ファイバダレ 一ティングの前長 Lを長くすることが好ま 、。
[0104] 一方、サンプルドグレーティング構造によって複製される複数の反射帯域のうち利 用可能なものの総数は、サンプルドグレーティング構造における屈折率変調領域の 長軸方向長さ W (図 4参照)に依存する。 Wが小さくなるほど、複製される反射帯域群 を覆うシンク関数の幅が大きくなり、複製される反射帯域の総数が増加する。
[0105] 前述したように、複製される個々の反射帯域を完全な矩形に近づけることが好まし い。個々の反射帯域の両側に余計なリップルがあると、図 7 (d)に示される重ね合わ せが行なわれたとき、リップルに相当する波長を有する光が異なる複数のファイバグ レーティングによって反射されてしまうからである。このようなリップルを低減し、矩形 に近い反射帯域を得るには、アポダイズが重要となる。
[0106] [シミュレーション]
次に、図 6に示す装置について行なったシミュレーションの結果を説明する。シミュ レーシヨンは、モード結合理論に基づき、波長および遅延の関係を符号化 Ζ復号ィ匕 のために最適ィ匕して行なった。
[0107] 図 9および図 10を参照して、 2つの異なるコードに関する結果を説明する。図 9 (a) および図 10 (a)は、いずれも、反射率の波長依存性 (反射率パターン)を示すグラフ である。グラフの横軸は波長 [ /z m]、縦軸は反射率である。図 9 (b)および図 10 (b) は、いずれも、遅延の波長依存性 (遅延パターン)を示すグラフである。グラフの横軸 は波長 [ m]、縦軸は遅延 [ps]である。
[0108] 図 9 (b)に示される遅延パターンでは、波長の増加に伴って遅延が階段状に増加し ている。一方、図 10 (b)に示される遅延パターンでは、波長の増加に伴って遅延が
増減している。これらの遅延パターンは、それぞれ、異なるコードに相当している。
[0109] 本シミュレーションの条件は、以下の表 1に示す通りである。
[0110] [表 1]
[0111] 図 9 (b)に示す遅延パターンを得るため、 6つのファイバグレーティングの温度を以 下の表 2に示す通りに設定し、図 10 (b)に示す遅延パターンを得るため、 6つのファ ィバグレーティングの温度を以下の表 3に示す通りに設定した。
[0112] [表 2]
[0113] [表 3]
ファイバグレーティング
1番目 55°C
2番目 25°C
3番目 40°C
4番目 85°C
5番目 1 0°C
6番目 75°C
[0114] いずれの場合も、ファイバグレーティングの熱膨張係数を 5. 5 X 10—7、熱光学定数 を 8. 3 X 10— 6に設定して、計算を行なった。
[0115] 図 9 (b)および図 10 (b)の左上には、コードパターンが示されており、遅延パターン は、各コードパターンが複製された形状を有している。複製周期 ΔΤは約 2nmであり 、チップ 1個分の帯域 Δ λは約 0. 26nmである。
[0116] 本シミュレーションでは、 6つのファイバグレーティングの温度を 10— 82°Cの範囲で 6段階の異なるレベルに設定している。チップ数 Nを増加させるために、 6段階よりも 多くのレベルに温度を設定するには、設定温度の最大値を高めることが好ましい。フ アイバグレーティング間で温度差が小さくなると、ファイバグレーティング間で反射波 長帯域のシフト量が不十分になる可能性がある。このため、最も波長シフト量を大きく するべきファイバグレーティングの温度は、 85°Cよりも高!、レベルに設定することが好 ましい。
[0117] しかし、ペルチヱ素子を用いる場合は、設定可能な最高温度は 85°C程度である。
また、温度や張力の調節のみによってグレーティング周期を変化させるのには限度 がある。このため、グレーティング周期の初期値が異なる複数のファイバグレーティン グに温調素子などの素子を組み合わせて用いてもよ 1、。
[0118] 以下、図 11および図 12を参照しながら、実験結果を説明する。実験に用いた装置 に関する設計パラメータは、以下の表 4に示すとおりである。
[0119] [表 4]
ファイバグレーティングの本数 N 6
各ファイバグレーティングの長さ L 20mm
ファイバグレーティングの間隔 I 1 cm
屈折率最大変化 0. 001
サンプル周期 P 600 jU m
屈折率変調部の長軸方向長さ W 250 j« m
グレーティング周期 d 0. 53845〃 m
チヤ一プ量: 0
[0120] 6つのファイバグレーティングによる反射帯域の中心波長は、 Δ λ =0. 12nmの整 数倍だけ相互にシフトしている。図 11に示す結果は、 6つのファイバグレーティングに 異なる温度を与えることにより、反射帯域の中心波長をシフトさせて 、る。
[0121] 図 11 (a)は、符号パターン 1のマトリックス図である。図 11 (b)は、反射率パターン の測定結果を示すグラフであり、図 11 (c)は、遅延パターンの測定結果を示すグラフ である。
[0122] 図 11 (a)のマトリックス図では、縦軸が遅延時間、横軸が信号光の波長に相当して いる。横軸が「1」のコラムでは、黒く塗りつぶされた矩形領域は縦軸が「0」に相当す るロウに位置している。これは、波長が「1」に対応する帯域にあるとき、最も小さいな 遅延が生じることを意味している。一方、横軸が「0」のコラムでは、黒く塗りつぶされ た矩形領域は縦軸が「5」に相当するロウに位置している。これは、波長が「0」に対応 する帯域にあるとき、最も大きな遅延が生じることを意味して 、る。
[0123] エンコーダにより、図 11 (a)のマリックス図の符号ィ匕が行なわれると、まず、まず、波 長が「1」の光がエンコーダから出力され、続いて、波長が「4」、 「6」、 「5」、 「2」、 「0」 の順序で対応する光が出力されることになる。すなわち、単一のパルス光をデコーダ に入力しても、波長帯域ごとに細力 、パルスに分かれて異なるタイミングで出力され る。デコーダの場合は、逆に動作する。
[0124] 本発明者が行なったシミュレーションによると、図 11 (c)に示されるように、各々が符 号パターン 1に対応する 3つの遅延パターンが一定間隔で観測された。 3つの遅延パ ターンが、それぞれ、 WDMの 3つの波長チャンネルに整合している。
[0125] このようにサンプルドファイバグレーティングを用いることにより、 1つのエンコーダ Z デコーダで、複数の WDMチャンネルに含まれる光信号を一括にエンコード Zデコ
ードすることができることを確認した。
[0126] 図 11 (c)に示す遅延パターンを得るため、 6つのファイバグレーティングの温度を以 下の表 5に示す通りに設定した。
[0127] [表 5]
[0128] 次に、同一の装置を用い、各ファイバグレーティングの温度を以下の表 6に示すレ ベルに変化させた。
[0129] [表 6]
[0130] このように、ファイバ温度を変化させだけで各ファイバグレーティングによる反射帯 域の中心波長を Δ λ =0. 12nmの整数倍だけシフトさせ、それによつて異なる符号 パターンを実現することができた。
[0131] 図 11 (d)は、符号パターン 2のマトリックス図である。図 11 (e)は、反射率パターン の測定結果を示すグラフであり、図 11 (f)は、遅延パターンの測定結果を示すグラフ
である。図 11 (f)に示されるように、各々が符号パターン 2に対応する 3つの遅延パタ ーンが一定間隔で観測された。 3つの遅延パターンが、それぞれ、 3つの波長チャン ネルに整合している。
[0132] 図 11(g)は、符号パターン 3のマトリックス図である。図 11 (h)は、反射率パターンの 測定結果を示すグラフであり、図 l l (i)は、遅延パターンの測定結果を示すグラフで ある。図 l l (i)に示されるように、各々が符号パターン 3に対応する 3つの遅延パター ンが一定間隔で観測された。 3つの遅延パターン力 それぞれ、 3つの波長チャンネ ルに整合している。
[0133] 上記の実験結果によって確認されたように、異なる符号パターンを実現するために 各ファイバグレーティングの温度を変化させると、波長軸で複製された複数の遅延パ ターンも同時に変更される。すなわち、本発明によれば、多重波長一括光符号プロ グラムが可能である。
[0134] 上記の実験では、 FFH— CDMAにおける 3つの符号パターンか WDMによる 3つ の波長チャンネルに組み合わせられることにより、合計 9チャンネル分のエンコード Z デコードが実現されている。各エンコーダまたは各デコーダのファイバグレーティング の数を増加させて、コードのチップ数 Nを増加させると、合計チャネル数を更に増加 させることが可會である。
[0135] 前述のように、チップ数 Nを増加させるためには、個々のファイバグレーティングに よる反射帯域の形状を矩形に近づけることが有効である。反射帯域の形状を矩形に 近づけるためには、前述したように、「アポダイズ」が有効である。アポダイズ関数 A (z
)は、例えば、以下の数式に表させる。
[0136] [数 2]
A ( - tanh
このようなアポダイズ関数 A (z)を、例えば図 4 (a)に示す屈折率変化 δ n (z)に乗ず ることよって得られる屈折率変化をファイバグレーティングに与えると、リップルの発生 が抑制された反射帯域を形成することができる。
[0138] 次に、図 4 (c)に示すシンク関数によって屈折率変調が行われたサンプルドグレー ティング (シンク関数型サンプルドグレーティング)の利点を説明する。
[0139] このようなシンク関数型サンプルドグレーティングを用いることにより、より多くの WD Mチャンネルに対して、反射帯域の均一な複製を実現し、一括的なエンコード Zデコ ードが可能になる。
[0140] シンク関数型サンプルドグレーティングでは、サンプルィ匕によって複数の反射帯域 の反射率分布が均一に複製される。図 4 (c)に示す屈折率変化は、以下の数式でシ ンク関数と、数式 2のアポダイズ関数との積によって示される。
[0141] [数 3] sin
."■G '
し ÷ + p
I P 2 L
G■ sin 、
[0142] 以下、シンク関数型サンプルドグレーティングを用いて作製した本発明の装置によ るシミュレーション結果を説明する。本シミュレーションでは、以下の表 7に示す条件 で作製したファイバグレーティングを用いた。
[0143] [表 7]
[0144] 図 12 (a)は、符号パターンのマトリックス図を示している。図 12 (b)は、シミュレーシ ヨンによって得られたデコーダの反射率パターンを示すグラフであり、図 12 (c)は、シ ミュレーシヨンによって得られた遅延パターンを示すグラフである。図 12 (d)は、図 12 (b)および (d)の一部を拡大し重ねて表示したグラフである。
[0145] 図 12に示されるように、チップ数 Nが 10の符号パターンが Cバンドの略全域にわた
つて 8つ複製されている。複製の周期 ΔΤ=3. 2nmである。これら 8つの反射帯域が WDMの 8チャンネルとして使用可能である。図 12 (d)からわ力るように、符号パター ンに対応する遅延パターンも適切に複製されている。
[0146] 上記のシミュレーションにより、サンプルドグレーティングを使用すれば、 1つの装置 で 10チップの光信号符号化 Z復号化を波長分割多重の 8チャンネルで一括的に実 行できることを確認した。
[0147] 前述のように、個々の中心反射帯域が初期的に Δ λ X整数ずれた異なる構造のグ レーティングを使用する代わりに、同一構造のグレーティングの温度や張力を調節す ることにより、反射帯域の中心波長をシフトさせても良い。例えば、 10個のサンプルド ファイバグレーティングの温度を、それぞれ、例えば、 168°C、 96°C、 216°C、 192°C 、 144°C、 48°C、 120°C、 0°C、 24°C、および 72°Cに設定すればよい。 80°Cを超え る温度に設定するためには、ペルチェ素子の代わりに他のヒータを用いればよい。 1 0個のサンプルドファイバグレーティングに付与する温度の分布を変えることにより、 違う符合パターンをプログラムすることが可能である。
[0148] 上記の各実施形態では、ファイバグレーティングの温度を調節することにより、反射 帯域をシフトさせている力 ファイバグレーティングの反射帯域の変更は、他の素子を 用いて行なうこともできる。例えばピエゾ素子を利用することにより、ファイバグレーテ イングに付与する張力を変化させ、反射波長をシフトするようにしてもよい。重要な点 は、ファイバグレーティング単位で各ファイバグレーティングのグレーティング周期を 独立して変化させ、それによつて、符号化パターンや復号化パターンを任意に変更( プログラム)可能にしている点にある。
[0149] なお、サンプルドグレーティング構造には、振幅を変調したものと、位相を変調した ものがある。本発明には、上記のいずれのタイプのサンプルドグレーティング構造を 用いてもよい。
[0150] 上記の各本実施形態では、位相を変調したサンプルドグレーティング構造を採用し ている。位相を変調したサンプルドグレーティング構造を作製する場合は、例えば、 図 13に示すように屈折率を変調すればよい。図 13は、非特許文献 3に開示されてい るサンプルドグレーティング構造を示すグラフである。図 13のグラフの縦軸はグレー
ティングの屈折率 n、横軸はグレーティングに長さに平行の位置である。グラフ中の「P 」はサンプル周期である。屈折率 nは、最大値 η+ δ ηと最小値 η— δ ηとの間で変調さ れている。このように、屈折率変調の振幅ではなぐ位相が周期的に変化するような サンプルドグレーティング構造を利用しても本発明を実現することができる。
産業上の利用可能性
[0151] 本発明の装置は、 OCDMAによる波長分割多重光の符号化および Ζまたは復号 化を簡単な構成で実現できるため、簡単な装置構成でチャネル数の増大に対応でき る。
[0152] 本発明の装置は、携帯端末などのモノィル機器のみならず、通信システムの構成 要素として他の公知の構成要素と組み合わせて好適に使用される。
[0153] 本発明は、エンコーダとして機能する装置およびデコーダとして機能する装置を含 む符号ィ匕復号ィ匕システムに用いられる。