JP5228646B2 - 光パルス時間拡散器 - Google Patents

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Description

この発明は、光多重伝送に利用される光パルス時間拡散器、特に周期的実効屈折率分布構造体である単位回折格子が、光ファイバの導波方向に沿って複数配置されて構成される超構造ファイバブラック格子(SSFBG: Superstructured Fiber Bragg Grating)を利用する光パルス時間拡散器に関する。
近年、インターネットの普及等により通信需要が急速に増大しており、それに対応して光ファイバを用いた高速で大容量のネットワークが整備されつつある。そして、通信の大容量化のために、一本の光ファイバ伝送路に複数チャンネル分の光パルス信号をまとめて伝送する光多重技術が重要視されている。
光多重技術としては、光時分割多重(OTDM: Optical Time Division Multiplexing)、波長分割多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)及び光符号分割多重(OCDM:Optical Code Division Multiplexing)が盛んに研究されている。
この中にあって、OCDMは、送受信される光パルス信号の、1ビット当たりに割り当てられる時間軸上の制限がないという運用面における柔軟性を有している。また、時間軸上で同一の時間スロットに複数のチャンネルを設定でき、あるいは波長軸上においても同一の波長に複数の通信チャンネルを設定できるという特長を有している。
OCDMとは、チャンネルごとに異なる符号(パターン)を割り当て、パターンマッチングにより信号を抽出する通信方法である(例えば、非特許文献1参照)。すなわち、OCDMは、送信側では通信チャンネルごとに異なる符号で光パルス信号を符号化し、かつ受信側では送信側と同じ符号を用いて復号化して元の光パルス信号に戻す光多重技術である。
OCDMによれば、復号時には符号化されたときの符号と合致する光パルス信号のみが有効な信号として抽出されて処理されるため、同じ波長あるいは複数の波長が組み合わせられた光からなる光パルス信号を、複数の通信チャンネルに割り当てることが可能となる。また、OCDMによれば、受信側において復号化するために符号化に用いた符号と同一の符号を用いる必要があるため、この符号が知られない限り復号化されない。このため、OCDMは、情報の安全確保にも優れた伝送方法である。
また、OCDMによれば、同一の波長で同一時刻に複数のチャンネルを多重することが可能であり、OTDMやWDMに比べて通信容量が飛躍的に向上できることから、大容量のデータ通信が行える点で注目されている。
具体的なOCDM通信方法として、2値位相符号(binary code)が利用されたOCDM通信方法が知られている(例えば、非特許文献2及び3参照)。最近では、多値位相符号を用いるOCDM通信方法も知られている(例えば、非特許文献4及び5参照)。以後、2値位相符号あるいは多値位相符号を、単に位相符号ということもある。
位相符号が利用されたOCDM通信方法とは、次のようなステップを経て行われる通信方法である。まず、送信側で、多波長連続波光源の出力を光パルス列に変換し、この光パルス列を基にして、2値デジタル信号である送信信号をRZ(return to zero)フォーマットの光パルス信号に変換して送信すべき光パルス信号を生成する。以後、RZフォーマットの光パルス信号を、単に光パルス信号ということもある。
送信側では、送信すべき光パルス信号に対して符号器による符号化を行って符号化光パルス信号に変換して送信する。一方、受信側では、符号化光パルス信号を受信して、上述の符号器に設定されている符号と同一の符号が設定されている復号器によってこの符号化光パルス信号を復号化して、送信された光パルス信号を再生する。
位相符号が利用されたOCDM通信方法においては、光パルス信号が、符号器によって、この符号器に設定されている一定の規則に従って、時間軸上に拡散されることによって符号化光パルス信号に変換される。この場合、一定の規則は符号によって規定されている。以後、光パルス信号が時間軸上に拡散されて生成される符号化光パルス信号を構成する光パルスを、チップパルスということもある。すなわち、符号器は、光パルス信号を構成する光パルスの一つ一つが符号器によって時間軸上にチップパルス列として拡散する機能を果たす。
一方、符号化光パルス信号は、復号器によって元の光パルス信号に復号化される。すなわち、復号器によって、符号化光パルス信号を構成するチップパルス列から、元の光パルス信号を構成する光パルスの一つ一つが再生されることによって、元の光パルス信号が復号化される。
SSFBGを用いた符号器と復号器は、それぞれ同一構造のSSFBBを具えている。そこで、以後の説明においては、符号器及び復号器のいずれをも指す場合には、光パルス時間拡散器ということもある。すなわち、符号器と復号器とは、OCDM通信システムに利用される場合には、システム内の配置される個所によってその役割が決定するものである。つまり、光パルス時間拡散器は、送信側に設置されれば符号器として機能することとなり、受信側に設置されれば復号器として機能することとなる。
ファイバブラッグ格子(FBG: Fiber Bragg Grating)とは、コアに周期的な実効屈折率変調を施したブラッグ回折格子が形成されている光ファイバであり、設定された周期に応じた特定の波長の光を反射するフィルタの機能を有する(例えば、非特許文献2及び4参照)。FBGは、光ファイバのコアの実効屈折率が周期的に変調されているだけであり、幾何的形状は、OCDMによる光通信の光伝送路に使われる光ファイバと同一のものである。従って、FBGを光通信装置の構成要素として利用すれば、これらと光伝送路との接続は、通常の光ファイバ同士の接続技術をそのまま利用できる。
符号器あるいは復号器に利用されるSSFBGは、隣接して配置される単位FBG間に位相シフト部が設けられている。この位相シフト部に設定する位相シフト量は、符号器あるいは復号器に設定される符号によって確定される。例えば、位相シフト部は、単位FBGがS個配置されたSSFBGにあっては(S-1)個所に設けられることになり、この(S-1)個所のそれぞれに設定される位相シフト量によって、SSFBGに設定される符号が確定する。
符号器及び復号器には、上述のSSFBG以外にも、トランスバーサル型フィルタ構造のPLC(Planar Lightwave Circuit)を利用することもできる(例えば、非特許文献3を参照)。また、AWG(Array Waveguide Gratings)を利用することもできる(例えば、非特許文献6を参照)。PLCあるいはAWGを利用した符号器及び復号器は、それらに設定可能である符号に制限がないという特長がある。しかしながらその一方で、SSFBGを利用する場合と比較して、光損失量が大きく、素子の小型化が難しいという難点がある。そこで、OCDM送受信システムに利用する光符号器としては、SSFBGを利用することが注目されている。
外林秀之「光符号分割多重ネットワーク」応用物理,第71巻,第7号, (2002)pp. 853-859. 西木玲彦、岩村英志、小林秀幸、沓澤聡子、大柴小枝子「SSFBGを用いたOCDM用位相符号器の開発」信学技報:TechnicaL Report of IEICE. OFT2002-66, (2002-11). Naoya Wada, et al., "A 10 Gb/s Optical Code Division Multiplexing Using 8-Chip Optical Bipolar Code and Coherent Detection", Journal of Lightwave Technology, Vol. 17, No. 10, October 1999. P. C. Teh, M. Ibsen, et al. "Demonstration of a Four-Channel WDM/OCDMA system Using 255-chip 320-Gchip/s Quarternary Phase Coding Gratings", IEEE Photonics Technology Letters, Vol. 14, No. 2, February 2002. Gabriella Cincotti, "Full Optical Encoders/Decoders for Photonic IP Routers", Journal of Lightwave Technology Vol. 22, No. 2, pp. 337-342, February 2004. Jing Cao, et al., "Spectral Encoding and Decoding of Monolithic InP OCDMA Encoder", Paper We.3.6.6, vol.3, ECOC 2005. Wei Cong, et al.,"An Error-Free 100Gb/s Time Slotted SPECTS O-CDMA Network Testbed", Paper Th.1.4.6 vol.3, ECOC 2005.
しかしながら、OCDM送受信システムの受信側において、各チャンネルの符号化された信号が合波されて生成されたOCDM信号を受信して、このOCDM信号を復号化することによって生成される相互相関波成分に対する自己相関波成分のエネルギー比が、符号化の際に使われる符号に依存するという問題がある。自己相関波成分は信号成分であり、相互相関波成分は雑音成分であるから、相互相関波成分に対する自己相関波成分のエネルギー比は、いわゆる受信信号のS/N比に相当する。また、このS/N比は、OCDM送受信システムにおいて多重するチャンネル数が多くなることによって低下するため、受信側では、自己相関波と相互相関波との識別のために、時間ゲート処理を行う、あるいは上述の非特許文献7に開示されているように高額な非線形デバイスを利用するなど、特別の手段を必要としていた。
そこで、この発明の目的は、従来の光パルス時間拡散器に比べて相互相関波成分に対する自己相関波成分のエネルギー比が、符号化の際に使われる符号に依存しにくく、かつ大きく取れる光パルス時間拡散器を提供することにある。
この発明の発明者は、SSFBGを利用して構成される光パルス時間拡散器に関して、上述した目的を達成するため検討を行ったところ、SSFBGを構成する単位FBGの長さと、隣接する単位FBG間の配置間隔との関係を調整することによって、上述の課題が解決されることに思い至った。すなわち、相互相関波成分に対する自己相関波成分のエネルギー比が、符号化の際に使われる符号に依存しにくく、かつ大きく取れるという条件を満足する、単位回折格子長と単位セグメント長との比を見出すに至った。
ここで、単位回折格子長とは単位FBGの長さを意味し、単位セグメント長とは、隣接する単位FBG間の配置間隔を意味する。また、以後の説明において、相互相関波成分に対する自己相関波成分のエネルギー比をS/N比ということもある。
上述の目的を達成するため、この発明の要旨によれば、以下の構成の光パルス時間拡散器が提供される。
この発明の光パルス時間拡散器は、光ファイバを利用して形成されるSSFBGを具えて構成される。SSFBGは、単位FBGを、位相シフト部を挟んで複数個配置して構成されている。すなわち、SSFBGは、単位FBGと位相シフト部とを交互に光ファイバの導波方向に直列に繰り返して配置することによって構成される。
この発明の光パルス時間拡散器が具えるSSFBGは、単位FBGの光ファイバの長さ方向に沿った長さとして定義される単位回折格子長が、隣接する単位FBG間の間隔として定義される単位セグメント長よりも短く設定されている。
ここで、単位FBGとは、光ファイバの導波方向に沿って光ファイバの実効屈折率を周期的に変化させて構成されている光ファイバの部分を指す。すなわち、単位FBGとは、途中に実効屈折率変調周期の変動あるいは位相の跳躍する部分が存在しない一続きのFBGの部分を言う。また、位相シフト部とは、光ファイバの導波方向に沿って光ファイバの実効屈折率が一定に構成されている光ファイバの部分を指す。
この位相シフト部の、光ファイバの導波方向に沿った長さを調整することによって、この位相シフト部を挟む隣接する単位FBGからのブラッグ反射光の相対位相差を適宜調整することが可能である。
この発明の光パルス時間拡散器が具えるSSFBGは、単位回折格子長を、単位セグメント長の1/2を下回るように設定するのが好適である。
この発明の光パルス時間拡散器をNチャンネル光多重信号送受信システムの符号器及び復号器として利用する場合、以下の通りにSSFBGを構成するのが好適である。
すなわち、Nチャンネル光多重信号送受信システムに利用して好適なこの発明の光パルス時間拡散器が具えるSSFBGは、光ファイバに、この光ファイバの長さ方向に沿って、光ファイバの実効屈折率が周期的に変化している構造の第1〜第N単位FBGを、第i単位FBGと第(i+1)単位FBGの間に実効屈折率が一定である位相シフト部をそれぞれ挟んで配置して構成されるSSFBGである。
このSSFBGは、入力される光パルスを、時間軸上に時間拡散して順次並ぶ、第1〜第NチップパルスまでのN個のチップパルスから成るチップパルス列として出力する機能を有している。
第i単位FBGは、第1チップパルスに対して2π[a+(m/N)]×(i-1)に等しい相対位相を与えるように配置されており、第1〜第N単位FBGの光ファイバの長さ方向に沿った長さのそれぞれの単位回折格子長が、隣接する第i単位FBGと第(i+1)単位FBGの間の間隔であるそれぞれの単位セグメント長よりも短く設定されている。
好ましくは、第1〜第N単位FBGの光ファイバの長さ方向に沿った長さのそれぞれの単位回折格子長が、隣接する第i単位FBGと第(i+1)単位FBGの間の間隔であるそれぞれの単位セグメント長の1/2を下回るように設定するのが良い。
ただし、Nは2以上の整数、mは0〜(N-1)までの何れかの値をとる整数、iは第1〜第N単位FBGを指示するパラメータであり1〜Nまでの値をとる整数であって、パラメータaは0≦a<1を満たす実数である。
この発明の光パルス時間拡散器をNチャンネル光多重信号送受信システムに利用する場合、例えば、mの値が0〜(N-1)に一対一に対応させて第1〜第Nチャンネルを割り当てるのが便利である。この場合mの値がチャンネルを識別する符牒となる。
この発明の光パルス時間拡散器が具えるSSFBGによれば、単位回折格子長が、単位セグメント長よりも短く設定されている。
これによって、隣接する単位FBGによってそれぞれブラッグ反射されて生成されるチップパルスが、時間軸上で重なり合う成分を減らすことが可能となる。その結果、このSSFBGによって入力光パルスのうちの1つの光パルスから生成されたチップパルス列は、このSSFBGと同一の構造を有するSSFBGによって復号化されると、時間軸上で顕著なピーク強度を有する光パルスとして再生される。
この発明の光パルス時間拡散器は、主として光多重信号送受信システムの符号器及び復号器として利用される。符号器によって生成されたチップパルス列は、この符号器と同一の構造を有する復号器によって復号化されると光パルスとして再生されるが、この場合において、復号器から出力される時間軸上で顕著なピーク強度を有する光パルスを自己相関波という。これに対して、チップパルス列を生成した符号器と異なる構造を有する復号器によって復号化されると、時間軸上には顕著なピークが現れない。この場合この復号器から出力される出力光を相互相関波という。
すなわち、この発明の光パルス時間拡散器によれば、チップパルス列を構成する隣接するチップパルス同士の時間軸上での重なりが小さいので、自己相関波のピーク強度が、符号化及び復号化に利用された符号に対する依存性が小さくなる。
また、符号器に設定された符号と復号器に設定された符号とが異なる場合には、復号器から出力される相互相関波は、復号器に入力されるチップパルス列を構成する隣接するチップパルス同士の時間軸上での重なりが小さいほど、時間軸上でその強度が均一な信号となる。
従って、この発明の光パルス時間拡散器を符号器及び復号器として利用すれば、S/N比を、符号化の際に使われる符号に依存しにくく、かつ大きくとることが可能となる。
この発明の光パルス時間拡散器が具えるSSFBGの単位回折格子長を、単位セグメント長の1/2を下回るように設定すれば、チップパルス列を構成する隣接するチップパルス同士の時間軸上での重なりを無視できる程小さくすることが可能である。従って、単位回折格子長を、単位セグメント長の1/2を下回るように設定することによって、効果的に、S/N比が、符号化の際に使われる符号に依存しにくく、かつ大きくとることが可能となる。
この発明の光パルス時間拡散器が具えるSSFBGを構成する第i単位FBGを、第1チップパルスに対して2π[a+(m/N)]×(i-1)に等しい相対位相を与えるように配置することによって、チップパルス列を構成する隣接するチップパルス同士の光搬送波としての位相を、両チップパルス同士が干渉して弱め合う関係とすることが可能となる。
このことによって、チップパルス列を構成する隣接するチップパルス同士の時間軸上での重なり部分の光強度を弱めることが可能となり、効果的に、S/N比を、符号化の際に使われる符号に依存しにくく、かつ大きくとることが可能となる。
また、第1〜第N単位FBGの光ファイバの長さ方向に沿った長さのそれぞれの単位回折格子長を、隣接する第i単位FBGと第(i+1)単位FBGの間の間隔であるそれぞれの単位セグメント長よりも短く設定することによって、チップパルス列を構成する隣接するチップパルス同士の時間軸上での重なりを効果的に小さくすることが可能であるので、上述したように効果的に、S/N比を、符号化の際に使われる符号に依存しにくく、かつ大きくとることが可能となる。
すなわち、SSFBGを構成する第i単位FBGを、第1チップパルスに対して2π[a+(m/N)]×(i-1)に等しい相対位相を与えるように配置し、第1〜第N単位FBGの光ファイバの長さ方向に沿った長さのそれぞれの単位回折格子長を、隣接する第i単位FBGと第(i+1)単位FBGの間の間隔であるそれぞれの単位セグメント長よりも短く設定することによって以下の効果が得られる。すなわち、チップパルス列を構成する隣接する両チップパルス同士が干渉して弱め合う効果と、両チップパルス同士の時間軸上での重なりが小さくなる効果との相乗効果として、きわめて効果的にS/N比を、符号化の際に使われる符号に依存しにくく、かつ大きくとることが可能となる。
以下、図を参照してこの発明の実施形態につき説明するが、この発明の実施形態はこれら各図に基づき限定されるものではない。また、以下の説明において、特定の条件等を用いることがあるが、これらの条件は好適例の一つに過ぎず、したがって何らこの条件に限定されない。
<SSFBG>
この発明の光パルス時間拡散器の構造及びその動作についての説明をするに当たり、最初にこの発明の実施形態の光パルス時間拡散器が具えるSSFBGの構造について説明する。
図1(A)〜図1(C)を参照して、この発明の実施形態の光パルス時間拡散器に利用されるSSFBGの概略的構造を説明する。図1(A)は、SSFBG 50の模式的な断面図である。このSSFBG 50は、コア54とクラッド52を具える光ファイバ56のコア54にSSFBG 50が作り付けられて構成さている。図1(A)に示すSSFBG 50においては、32個の単位FBGが、光ファイバ56の光導波路であるコア54の導波方向に沿って直列に配置されている。ここで、32個の第1から第32単位FBGに対しては、A1からA32まで順次記号を付して区別してある。
図1(B)は、図1(A)に示されたSSFBG 50の実効屈折率変調構造を概略的に示す図である。横軸はSSFBG 50が形成された光ファイバ56の長手方向に沿った位置座標である。縦軸は光ファイバ56の実効屈折率変調構造を表しており、光ファイバ56のコアの実効屈折率の最大と最小の差をΔnとして表してある。また、図1(C)には、光ファイバ56のコア54の実効屈折率変調構造を一部拡大して描いてある。
実効屈折率変調周期はΛである。したがってブラッグ反射波長λは、λ=2NeffΛで与えられる。ここで、Neffは光ファイバ56の実効屈折率である。単位FBGを32個具えるSSFBG 50に入力された光パルスは、32個のチップパルスに時間拡散される。図1(A)及び図1(B)に示されたSSFBG 50の左端から右端の方向に配列されたA1からA32と示す第1から第32単位FBGと、このSSFBG 50から出力されるチップパルスとが、一対一に対応する。
図1(C)に示すように、隣接する単位FBG間、すなわちAiで示された第Ai単位FBGとAi+1で示された第Ai+1単位FBGとの間は、実効屈折率変調がなされていない位相シフト部Eiが設けられている。第Ai単位FBGの光ファイバ56の長さ方向、すなわち光ファイバ56の導波方向に沿った長さとして定義される単位回折格子長はLiで示してある。また、隣接する単位FBG間の間隔、すなわち第Ai単位FBGと第Ai+1単位FBGとの間隔として定義される単位セグメント長はDiで示してある。すなわち、Di=Li+Eiである。
ここで、位相シフト部Eiと表記した場合は、位相シフト部を識別する記号としての意味を示す以外に、この位相シフト部の長さを示す変数としての意味を示すこともある。Eiが識別記号であるか長さを示す変数であるか、何れを意味するかは混乱が生じない範囲で特に断らずに用いる。また、単位回折格子長はLi及び単位セグメント長Diについても同様である。
次に、Aiで示す第Ai単位FBGとAi+1で示す第Ai+1単位FBGとの間の間隔として定義される単位セグメント長Diについて、この間隔がどのように設定されているかを説明する。ここでは、Nチャンネル光多重信号送受信システムに利用して好適なこの発明の光パルス時間拡散器が具えるSSFBGとして好適な一例を取り上げて説明するが、一般的に、この発明の光パルス時間拡散器が具えるSSFBGは、以下の説明に限定されることはない。
単位セグメント長Diは、Aiで示す第Ai単位FBGの光ファイバの長手方向における中心位置から、Ai+1で示された第Ai+1単位FBGの光ファイバの長手方向における中心位置までの距離として定義される。
ここで、Aiで示す第Ai単位FBGの有する相対位相をPiとし、Ai+1で示す第Ai+1単位FBGの有する相対位相をPi+1であるとする。このとき両者の位相差diは、Pi+1-Piである。Diとdiとは、Aiで示された第Ai単位FBGとAi+1で示された第Ai+1単位FBGとの間(位相シフト部Ei)の実効屈折率をNeffとして、Di=(M+di)λ/2なる関係がある。ここでMは任意の整数で、λは、光パルスの真空中の実効屈折率をλ0としたときλ=λ0/Neffである。(M+di)λを角度位相で表すと2π(M+di)となる。
この発明の第n光パルス時間拡散器を製造するに当たり、SSFBG 50の入出力端に配置された単位FBGの相対位相を0として、その隣の単位FBGの相対位相が2π[a+(m/N)]、その隣の単位FBGの相対位相が2π[a+(m/N)]×2となるように形成するには、D1=[M+a+(m/N)]λ/2、D2=[M+{a+(m/N)}]×2×(λ/2)に等しく設定すればよい。一般に、SSFBG 50の入出力端に配置された第1単位FBGを第1番目として、第k番目の第k単位FBGの相対位相が2π[a+(m/N)]×(k-1)となるように形成するには、Dk=[M+{a+(m/N)}]×(k-1)λ/2に等しく設定すればよい。
<光パルス時間拡散器による符号化及び復号化>
図2(A)〜図2(C)を参照して、同一の実効屈折率周期構造の単位FBGを作りつけたSSFBGを具える光パルス時間拡散器によるチップパルス列の生成及び、チップパルス列から光パルスを復元する動作原理について説明する。SSFBGを構成する単位FBGは、その実効屈折率周期構造が全て等しいので、各単位FBGのブラッグ反射波長は全て等しい。
図2(A)は動作原理の説明に供する図であり、図2(B)は、単位FBG 20a、20b、20c及び20dからそれぞれブラッグ反射されるチップパルス列a'、b'、c'及びd'の時間波形を示す図である。チップパルス列a'、b'、c'及びd'は、それぞれ、SSFBG 10から出力されるチップパルスa、b、c及びdが、単位FBG 20a、20b、20c及び20dで時間拡散されて生成されたチップパルス列である。
図2(C)は、SSFBG 20で復号化された入力光パルスの自己相関波の時間波形を示している。
図2(A)は、SSFBG 10を具える一方の光パルス時間拡散器をチップパルス変換器とし、SSFBG 20を具える他方の光パルス時間拡散器を光パルス復元器とした例を示している。SSFBG 10及びSSFBG 20に設定される光パルスの時間拡散ルールとしては、符号を用いるのが一般的であるが、1つの光パルスを時間軸上に複数のチップパルス列として生成される構造であれば、厳密な意味での符号に限定されることはない。以下に例示する、SSFBG 10及びSSFBG 20に設定される光パルスの時間拡散ルールは、厳密な意味での符号が用いられているわけではないが、説明の便宜上、符号の意味を広く解釈して、チップパルス変換器を符号器、光パルス復元器を復号器と表記することもある。
図2(A)では、単位FBGを4つ具えるSSFBG、すなわちN=4であるSSFBGを、一例として取り上げて示しているが、以下の説明は、N=4以外のSSFBG場合であっても、チップパルスの数が異なるだけで、チップパルス列の生成及び、チップパルス列から光パルスを復元する動作原理については、同様である。
図2(A)に示すように、入力光パルスが光サーキュレータ12を介してSSFBG 10に入力されて時間拡散され、再び光サーキュレータ12を介して、チップパルス列として出力される。図2(A)に示すSSFBG 10は、光ファイバの導波方向に沿って4つの単位FBGが配列されて構成されたSSFBGである。従って、SSFBG 10から出力される、時間軸上に並ぶチップパルスの数は4個となる。
SSFBG 10に光パルスを入力すると、単位FBG 10a, 10b, 10c及び10dから、それぞれブラッグ反射光a、b、c及び dが生成されて、出力される。ブラッグ反射光a、b、c及び dのそれぞれの相対位相は0、0.25、0.5、0.75となっている。これを、相対位相値の数列として表すと、(0、0.25、0.5、0.75)となる。SSFBG 20は、SSFBG 10と実効屈折率周期構造が同一である。
図2(A)に示すSSFBG 10の例では、設定されている光パルスの時間拡散ルールは、m=0、N=4、a=0.25で規定される場合に相当する。すなわち、a+(m/N)=0.25である。従って、SSFBG 10及びSSFBG 20を構成する単位FBGに設定される相対位相値の数列は、(0、0.25、0.5、0.75)で与えられる。以後、a+(m/N)を相対位相の最小単位ということもある。
すなわち、m=0、N=4、a=0.25であるので、第1のチップパルス(時間軸上で先頭位置のチップパルス)に対して0に等しい相対位相を与え、第2のチップパルスに対しては、2π[a+(m/N)]=2π×0.25となるので、2πを省略すれば相対位相値は0.25となる。同様に第3のチップパルスに対しては、2π[a+(m/N)]×2=2π×0.25×2=2π×0.5となるので、2πを省略すれば相対位相値は0.5となる。同様に、第4のチップパルスに対しては、2π[a+(m/N)]×3=2π×0.25×3=2π×0.75となるので、2πを省略すれば相対位相値は0.75となる。すなわち、SSFBG 20を構成する単位FBGに設定される相対位相値の数列は、(0、0.25、0.5、0.75)となる。
次に、光パルスが符号器で符号化されて符号化光パルス列に変換され、その符号化光パルス列が復号器で復号化されて自己相関波が形成される過程を説明する。すなわち、光パルスがSSFBG 10で時間拡散されてチップパルス列に変換され、そのチップパルス列がSSFBG 20によって自己相関波(復元された光パルス)が形成される過程を説明する。
図2(A)に示す単一の光パルスが光サーキュレータ12を介して符号器であるSSFBG 10に入力されると、単位FBG 10a, 10b, 10c及び10dからのブラッグ反射光が生成される。そこで、単位FBG 10a, 10b, 10c及び10dからのブラッグ反射光をそれぞれa、b、c及びdとする。すなわち、図2(A)に示す単一の光パルスが、ブラッグ反射光a、b、c及びdとして時間拡散されて符号化光パルス列に変換される。
ブラッグ反射光a、b、c及び dは、時間軸に対して表すと、図2(A)の送信側と受信側とをつなぐ光ファイバ伝送路18の上側に示すように、4つの光パルスに時間拡散されて、時間軸上で単位FBG 10a, 10b, 10c及び10dに依存する特定のチップパルス列を構成する。したがって、チップパルス列とは、符号器に入力された光パルスが時間軸上に複数のチップパルスとして時間拡散されたチップパルス列である。
チップパルス列を構成するこれらのブラッグ反射光a、b、c及びdの相対位相は、(0, 0.25, 0.5, 0.75)となっている。ブラッグ反射光aの位相とブラッグ反射光bの位相差は、0.25である。ブラッグ反射光bの位相とブラッグ反射光cの位相との差、ブラッグ反射光cの位相とブラッグ反射光dの位相との差も0.25となっている。
光サーキュレータ12から出力されるチップパルス列は、光ファイバ伝送路18を伝播して、光サーキュレータ14を介して復号器であるSSFBG 20に入力される。SSFBG 20はSSFBG 10と同一の構造であり、入力端と出力端も同一である。すなわち、SSFBG 10の入力端から順に単位FBG 10a, 10b, 10c及び10dと並んでおり、SSFBG 20の入力端からも同様に順に単位FBG 20a, 20b, 20c及び20dと並んでいる。
図2(B)は、単位FBG 20a、20b、20c及び20dからそれぞれブラッグ反射されて生成されるチップパルスa', b', c'及びd'の時間波形を示す図であり、横軸に時間軸をとってある。そして便宜的に1から7を付して時刻の前後関係を表示してあり、この数値が小さいほど、先の時刻であることを示している。
チップパルス列は復号器であるSSFBG 20に入力されると、まず単位FBG 20aでブラッグ反射される。単位FBG 20aでブラッグ反射される反射光をブラッグ反射光a'と表すこととする。同様に単位FBG 20b、単位FBG 20c及び単位FBG 20dでブラッグ反射される反射光を、それぞれブラッグ反射光b'、c’及びd'と表すこととする。
チップパルス列を構成するチップパルスa、b、c及び dが、単位FBG 20aによって、ブラッグ反射されて、図2(B)においてa'と示した時間軸上に並ぶ。単位FBG 20aによってブラッグ反射されたチップパルスaは、時間軸上で1と示してある位置にピークをもつ光パルスである。単位FBG 20aによってブラッグ反射されたチップパルスbは、時間軸上で2と示してある位置にピークをもつ光パルスである。同様に、単位FBG 20aによってブラッグ反射されたチップパルスc及びdは、それぞれ時間軸上で3及び4と示してある位置にピークをもつチップパルスである。
単位FBG 20bによっても、チップパルス列を構成する光パルスa、b、c及び dがブラッグ反射されて、図2(B)においてb'と示した時間軸上に並ぶ。単位FBG 20bから反射されるブラッグ反射光b'は、ブラッグ反射光a'と比べて0.25だけ増えている。したがって、a'と示した時間軸上に並ぶチップパルス列に対して、b'と示した時間軸上に並ぶチップパルス列は、各チップパルスの相対位相に0.25だけ加えられた値となっている。すなわち、a'と示した時間軸上に並ぶチップパルス列の右側から左側に向って相対位相が(0, 0.25, 0.5, 0.75)となっているのに対して、b'と示す時間軸上に並ぶチップパルス列の相対位相値は、右側から左側に向って、0.25がそれぞれ加えられて、(0.25, 0.5, 0.75, 0)となっている。
単純に0.25を加えるだけであれば、b'と示した列の相対位相は、(0.25, 0.5, 0.75, 1)となるのであるが、最後の第4項が1ではなく0となっているのは、既に述べたように、相対位相値が0と1とでは、位相としては、両者は同じ意味であるからである。
同様に、c'と示す時間軸上に並ぶチップパルス列は、a'と示す時間軸上に並ぶチップパルス列の相対位相値(0, 0.25, 0.5, 0.75)に0.5が加えられて、(0.5, 0.75, 1, 1.25)=(0.5, 0.75, 0, 0.25)となっている。また、d'と示す時間軸上に並ぶチップパルス列は、a'と示す時間軸上に並ぶチップパルス列の相対位相値(0, 0.25, 0.5, 0.75)に0.75が加えられて、(0.75, 1, 1.25, 1.5)=(0.75, 0, 0.25, 0.5)となっている。
図2(C)はSSFBG 20で復元された入力光パルスの自己相関波を示している。横軸は時間軸であり、図2(B)に示した図と時間軸を合わせてある。自己相関波は、SSFBG 20の各単位FBGからのブラッグ反射光a'、b'、c'及びd'で与えられるので、図2(B)に示した、ブラッグ反射光a'、b'、c'及びd'を全て足し合わせたものとなっている。図2(C)の時間軸上で4と表示してある時刻では、ブラッグ反射光a'、b'、c'及びd'に関連する光パルスが全て同位相で足しあわされるので、最大のピークを構成する。また、図2(C)の時間軸上で4と表示してある時刻以外の時刻でも各チップパルスは、同一の位相で重なり合うが、重なり合うチップパルスの数が4つ未満(3、2及び1つ)であるので、4と表示してある時刻における最大ピークよりも小さい。
以上説明したように、光パルスがSSFBG 10で時間拡散されてチップパルス列となり、このチップパルス列がSSFBG 20に入力されることによって、自己相関波が生成される。ここで取り上げた例では4ビットの相対位相(0, 0.25, 0.5, 0.75)を用いたが、相対位相がこれ以外の場合であっても上述した説明は同様に成り立つ。
図2(C)に示す自己相関波は、次のようなメカニズムで生成されたものと解釈することができる。時間軸上で1と示す位置に形成されるピーク波形は、単位FBG 20aから反射された、チップパルスaに対するブラッグ反射光a'によって形成されたものである。従って、時間軸上で1と示す位置に形成されるピーク波形の振幅は、チップパルスの振幅に等しい。
時間軸上で2と示す位置に形成されるピーク波形は、単位FBG 20aから反射された、チップパルスbに対するブラッグ反射光b'と、単位FBG 20bから反射された、チップパルスaに対するブラッグ反射光a'との和として形成されたものである。これら両者の和は、相対位相がどちらも0.25である同位相の光チップパル同士の和であるから、その振幅がチップパルスの振幅の2倍となる。
以下、時間軸上で3から7と示す位置に形成されるピーク波形の振幅は、上記と同一のメカニズムで生成されたピーク波形であり、それぞれチップパルスの振幅の、3倍、4倍、3倍、2倍、1倍となっている。図2(C)において、それぞれのピーク波形の振幅が、チップパルスの振幅の何倍となっているかを、括弧で括って、ピーク波形のそれぞれのピーク位置に示してある。これらのピーク波形の振幅の合計は、時間軸上で1から7と示す位置に形成されるピーク波形の順に合計すると、1+2+3+4+3+2+1=16となる。これをエネルギーに換算すると、チップパルス1つ分に対して256倍(=162倍)となる。すなわち、自己相関波の総エネルギーは、チップパルス1つ分のエネルギーの256倍である。
以上の説明では、符号器としての役割を果たすSSFBG 10と復号器としての役割を果たすSSFBG 20との、それぞれに設定された相対位相が同一である場合について説明した。すなわち、SSFBG 10によってチップパルス列として時間拡散された後、このチップパルス列がSSFBG 20に入力されて、自己相関波として生成されて出力される場合を説明した。
次に、図3(A)〜図3(C)を参照して、互いに相異なる実効屈折率周期構造のSSFBGをそれぞれ具える一組の光パルス時間拡散器によるチップパルス列の生成及び、チップパルス列から相互相関波が生成される動作原理について説明する。すなわち、SSFBG 30を具える光パルス時間拡散器の一方をチップパルス変換器とし、SSFBG 40を具える他方の光パルス時間拡散器を光パルス復元器とした例を示している。この場合は、復号器としての役割を果たすSSFB 40から出力される出力光である相互相関波は、時間軸上には顕著なピークを有さない。
図3(A)は動作原理の説明に供する図であり、図3(B)は、SSFBG 40が具える単位FBG 40a、40b、40c及び40dからそれぞれブラッグ反射されるチップパルス列a'、b'、c'及びd'の時間波形を示す図であり、図3(C)は、復号器のSSFBG 40で復号化された入力光パルスの相互相関波の時間波形を示している。チップパルス列a'、b'、c'及びd'は、それぞれ、SSFBG 30から出力されるチップパルスa、b、c及びdが、単位FBG 40a、40b、40c及び40dで時間拡散されて生成されたチップパルス列である。
図3(A)に示すように、入力光パルスが光サーキュレータ32を介してSSFBG 30に入力されて時間拡散されて、再び光サーキュレータ32を介して、チップパルス列として出力される。図3(A)に示すSSFBG 30は、光ファイバの導波方向に沿って4つの単位FBGが配列されて構成されたSSFBGである。従って、SSFBG 30から出力される、時間軸上に並ぶチップパルスの数は4個となる。
SSFBG 30を構成する単位FBG 30a、30b、30c及び30dは、それぞれ、上述の光位相符号の第1番目のチップa、第2番目のチップb、第3番目のチップc、第4番目のチップdと、れぞれ対応する。
SSFBG 30に光パルスを入力すると、単位FBG 30a、30b、30c及び30dから、それぞれブラッグ反射光a、b、c及び dが生成されて、出力される。SSFBG 30は、ブラッグ反射光a、b、c及びdのそれぞれの相対位相を表す数列は0、0.5、0、0.5となる。これを、相対位相値の数列として表すと、(0、0.5、0、0.5)となる。すなわち、SSFBG 30に設定されている光パルスの時間拡散ルールは、m=1、N=4、a=0.25である場合に相当する。すなわち、相対位相の最小単位a+(m/N)は、a+(m/N)=0.5である。SSFBG 30を構成する単位FBGに設定される相対位相値の数列は、(0、0.5、0、0.5)で与えられる。
これに対して、SSFBG 40は、ブラッグ反射光a、b、c及び dのそれぞれの相対位相を表す数列は(0、0.25、0.5、0.75)となる。すなわち、SSFBG 40に設定されている光パルスの時間拡散ルールは、m=0、N=4、a=0.25である場合に相当する。すなわち、相対位相の最小単位a+(m/N)は、a+(m/N)=0.25である。従って、第2光パルス時間拡散器のSSFBGを構成する単位FBGに設定される相対位相値の数列は、(0、0.25、0.5、0.75)で与えられる。
次に、光パルスがSSFBG 30で時間拡散されてチップパルス列に変換され、そのチップパルス列がSSFBG 40によって相互相関波が形成される過程を説明する。
図3(A)に示す単一の光パルスが光サーキュレータ32を介して符号器であるSSFBG 30に入力されると、単位FBG 30a、30b、30c及び30dからのブラッグ反射光が生成される。そこで、単位FBG 30a、30b、30c及び30dからのブラッグ反射光をそれぞれa、b、c及びdとする。すなわち、図3(A)に示す単一の光パルスが、ブラッグ反射光a、b、c及びdに時間拡散されて符号化光パルス列に変換される。
ブラッグ反射光a、b、c及びdは、時間軸に対して表すと、図3(A)の送信側と受信側とをつなぐ光ファイバ伝送路38の上側に示すように、4つの光パルスに時間拡散されて、時間軸上で単位FBG 30a、30b、30c及び30dに依存する特定のチップパルス列を構成する。したがって、チップパルス列とは、符号器に入力された光パルスが時間軸上に複数のチップパルスとして時間拡散されたチップパルス列である。
チップパルス列を構成するこれらのブラッグ反射光a、b、c及びdの相対位相は、(0, 0.5, 0, 0.5)で示すようになっている。ブラッグ反射光aの位相とブラッグ反射光bの位相差は、0.5である。ブラッグ反射光bの位相とブラッグ反射光cの位相との差、ブラッグ反射光cの位相とブラッグ反射光dの位相との差も0.5となっている。
光サーキュレータ32から出力されるチップパルス列は、光ファイバ伝送路38を伝播して、光サーキュレータ34を介して復号器であるSSFBG 40に入力される。
図3(B)及び(C)を参照して、SSFBG 30から出力されるチップパルス列が、SSFBG 40に入力されて相互相関波として生成されて出力される過程を説明する。図3(B)及び(C)は、チップパルス列から相互相関波が生成される過程の説明に供する図である。
図3(B)は、単位FBG 40a、40b、40c及び40dからそれぞれブラッグ反射されて生成されるチップパルス列a', b', c'及びd'の時間波形を示す図であり、横軸に時間軸をとってある。そして便宜的に1から7を付して時刻の前後関係を表示してあり、この数値が小さいほど、先の時刻であることを示している。
チップパルス列は復号器であるSSFBG 40に入力されると、まず単位FBG 40aでブラッグ反射される。単位FBG 40aでブラッグ反射される反射光をブラッグ反射光a'と表すこととする。同様に単位FBG 40b、単位FBG 40c及び単位FBG 40dでブラッグ反射される反射光を、それぞれブラッグ反射光b'、c’及びd'と表すこととする。
チップパルス列を構成するチップパルスa、b、c及び dが、単位FBG 40aによって、ブラッグ反射されて、図3(B)においてa'と示した時間軸上に並ぶ。単位FBG 40aによってブラッグ反射されたチップパルスaは、時間軸上で1と示してある位置にピークをもつ光パルスである。単位FBG 40aによってブラッグ反射されたチップパルスbは、時間軸上で2と示してある位置にピークをもつ光パルスである。同様に、単位FBG 40aによってブラッグ反射されたチップパルスc及びdは、それぞれ時間軸上で3及び4と示してある位置にピークをもつチップパルスである。
単位FBG 40bによっても、チップパルス列を構成する光パルスa、b、c及びdがブラッグ反射されて、図3(B)においてb'と示した時間軸上に並ぶ。単位FBG 40bから反射されるブラッグ反射光b'は、ブラッグ反射光a'と比べて0.25だけ増えている。したがって、a'と示した時間軸上に並ぶチップパルス列に対して、b'と示した時間軸上に並ぶチップパルス列は、各チップパルスの相対位相に0.25だけ加えられた値となっている。すなわち、a'と示した時間軸上に並ぶチップパルス列の右側から左側に向って相対位相が(0, 0.5, 0, 0.5)となっているのに対して、b'と示す時間軸上に並ぶチップパルス列の相対位相値は、右側から左側に向って、0.25がそれぞれ加えられて、(0.25, 0.75, 0.25, 0.75)となっている。
同様に、c'と示す時間軸上に並ぶチップパルス列は、a'と示した列のチップパルス列の相対位相値(0, 0.5, 0, 0.5)に0.5が加えられて、(0.5, 0, 0.5, 0)となっている。また、d'と示す時間軸上に並ぶチップパルス列は、a'と示した列のチップパルス列の相対位相値(0, 0.5, 0, 0.5)に0.75が加えられて、(0.75, 1.25, 0.75, 1.25)=(0.75, 0.25, 0.75, 0.25)となっている。
図3(C)はSSFBG 40から出力される相互相関波の時間波形を示している。横軸は時間軸であり、図3(B)に示した図と時間軸を合わせてある。相互相関波は、SSFBG 40の各単位FBGからのブラッグ反射光a'、b'、c'及びd'で与えられるので、図3(B)に示した、ブラッグ反射光a'、b'、c'及びd'を全て足し合わせたものとなっている。
図3(C)の時間軸上で1と表示してある時刻では、ブラッグ反射光a'の内、最も右側にあるチップパルスだけで形成されるピークであるから、その振幅はチップパルス1つ分の振幅に等しい。時間軸上で2と表示してある時刻では、ブラッグ反射光a'の内、右側から2番目にあるチップパルスと、ブラッグ反射光b'の内最も右側にあるチップパルスの和として形成されるピークである。両者のチップパルスの位相は、それぞれ、0.5、0.25であるので、その和として形成されるピークは、その振幅はチップパルス2つ分より小さい。このことを、図3(C)では、(<2)と示してある。
同様に、時間軸上で3と表記してある時刻ではその振幅がチップパルス1つ分より小さく、時間軸上で5と表記してある時刻ではその振幅がチップパルス1つ分より小さく、時間軸上で6と表記してある時刻ではその振幅がチップパルス2つ分より小さいピークとなる。また、時間軸上で4と表記してある時刻では、重なり合うチップパルスがちょうど相殺されてその振幅は0となっている。また、時間軸上で7と表示してある時刻では、ブラッグ反射光d'の内、最も左側にあるチップパルスだけで形成されるピークであるから、その振幅はチップパルス1つ分の振幅に等しい。
図3(C)において、それぞれのピーク波形の振幅が、チップパルスの振幅の何倍となっているかを、括弧で括って、ピーク波形のそれぞれのピーク位置に示してある。これらのピーク波形の振幅の合計は、時間軸上で1から7と示す位置に形成されるピーク波形の順に合計すると、1+2+1+0+1+2+1=8よりも小さくなる。これをエネルギーに換算すると、チップパルス1つ分に対して64倍(=82倍)より小さい値となる。すなわち、相互相関波の総エネルギーは、チップパルス1つ分のエネルギーの64倍より小さい。
従って、自己相関波エネルギーがチップパルス1つ分のエネルギーの256倍であったのに対して、相互相関波エネルギーがチップパルス1つ分のエネルギーの64倍となる。すなわち、自己相関波のエネルギーが相互相関波のエネルギーの8(=256/8)倍となることを示している。また、図2(C)に示したように自己相関波のピーク強度はチップパルス1つ分の4倍であった。すなわちエネルギーに換算して16倍である。一方、図3(C)に示すように、相互相関波のピーク強度は0となっている。
以上のことから、この発明の光パルス時間拡散器によれば、S/N比が大きく取れ、自己相関波のピーク強度が、相互相関波のピーク強度に比べて十分に大きく取れることが分かる。
以上説明したように、SSFBGを構成する第i単位FBGを、第iチップパルスに対して2π[a+(m/N)]×(i-1)に等しい相対位相を与えるように配置すれば、生成されるチップパルス列の隣接するチップパルスの光搬送波としての位相が同位相ではなくなる。そのため、チップパルス列を構成する隣接する両チップパルス同士が干渉して弱め合う効果が得られ、S/N比を大きくとることが可能となる。
<隣接するチップパルスの相対位相差>
図4(A)〜図4(D)を参照して、隣接する単位FBGによって生成されたチップパルス同士の干渉効果について説明する。
図4(A)は、時間軸上での半値全幅がtpである光パルスが符号器を構成するSSFBGに入力される様子を概略的に示す図である。図4(B)は第(i)単位FBGで生成されるチップパルスbi及び第(i+1)単位FBGで生成されるチップパルスbi+1の時間波形を独立に示す図である。図4(C)は、第(i)単位FBG及び第(i+1)単位FBGでそれぞれ生成されるチップパルスbi及びチップパルスbi+1を、位相を考慮して加算して得られるチップパルス列の時間波形を示す図であり、チップパルスbiの光搬送波としての相対位相とチップパルスbi+1の光搬送波としての相対位相がπだけ異なっている場合について示している。図4(D)は、第(i)単位FBG及び第(i+1)単位FBGでそれぞれ生成されるチップパルスbi及びチップパルスbi+1を、位相を考慮して加算して得られるチップパルス列の時間波形を示す図であり、チップパルスbiの光搬送波としての相対位相とチップパルスbi+1の光搬送波としての相対位相が同位相である場合について示している。
図4(B)に示すように、チップパルスbiとチップパルスbi+1の時間軸上でのピーク位置の差は、2×NeffDi/cであり、チップパルスbiとチップパルスbi+1とは時間軸上で一部が重なる。そして、チップパルスbiの光搬送波としての相対位相とチップパルスbi+1の光搬送波としての相対位相がπだけ異なっている場合は図4(C)に示すように、重なり部分において互いに干渉して弱めあう結果、チップパルスbiとチップパルスbi+1とはそれぞれピークが明瞭に現れる。
これに対して、チップパルスbiの光搬送波としての相対位相とチップパルスbi+1の光搬送波としての相対位相が同位相である場合は、図4(D)に示すように、重なり部分において互いに干渉して弱めあう結果、チップパルスbiとチップパルスbi+1とは一体化してそれぞれピークが明瞭に分離されない。
従って、チップパルスbiの光搬送波としての相対位相とチップパルスbi+1の光搬送波としての相対位相がπだけ異なっている場合はそれぞれ時間軸上で分離されて存在するのに対して、同位相である場合は分離されない。復号器でチップパルス列同士が加算されて生成される自己相関波及び相互相関波は、チップパルス同士が時間軸上で明瞭に分離可能であるほど、チップパルス列を構成するチップパルスの時間軸上での配列パターンに依存しにくい。その結果、復号化過程において、S/N比を大きく取れる。
一般に、隣接するチップパルスの光搬送波としての相対位相差が、0からπまで変化するのに対応して、両チップパルスの時間軸上での分離が明瞭となる。すなわち、自己相関波及び相互相関波は、隣接するチップパルスの光搬送波としての相対位相差がπに近いほど、チップパルス列を構成するチップパルスの時間軸上での配列パターンに依存しにくい。
この発明の光パルス時間拡散器を構成するSSFBGにおいては、隣接する単位FBGから生成されるチップパルス同士の相対位相差はπには等しくないが0ではない。そのため、相対位相差がπである場合ほど顕著ではないが、この発明の光パルス時間拡散器によって実現される復号化過程において、S/N比を十分に大きく取ることが可能である。
また、この発明の光パルス時間拡散器によれば、S/N比を十分に大きく取ることが可能である点については、図2(A)〜図2(C)及び図3(A)〜図2(C)を参照して、一例として、隣接する単位FBG間の相対位相差a+(m/N)が、a=0.25、m=0及び1、N=4の場合にいて、既に定量的に説明したとおりである。
<単位回折格子長と単位セグメント長の比とS/N比との関係>
図5(A)〜図5(C)を参照して、単位回折格子長と単位セグメント長の比が復号器によって生成される相互相関波成分に対する自己相関波成分の比(S/N比)に与える効果について説明する。図5(A)は、時間軸上での半値全幅がtpである光パルスが、符号器を構成するSSFBGに入力される様子を概略的に示す図である。図5(A)の左側に示す図は、SSFBGに入力される光パルスの時間波形を示している。また、図5(A)の右側に示す図は、SSFBGの一部を取り出して示す模式的な断面図である。図5(A)には、Aiで示す第(i)単位FBGとAi+1で示す第(i+1)単位FBGとを代表して示してある。単位回折格子長はLiであり、単位セグメント長はDiであり、位相シフト部の長さがEiである。以後の説明において、時間軸上での半値全幅を単に時間幅ということもある。
SSFBGに入力される光パルスは、SSFBGを構成する各単位FBGの各箇所で連続的にブラッグ反射される。図5(A)に示すように、第i単位FBGを例に取ると、第i単位FBGの両端及び4分割する点g1、g2、g3及びg4で反射されるブラッグ反射光成分を図5(B)において、g1、g2、g3及びg4で示す実線の時間波形として示してある。実際の第i単位FBGからのブラッグ反射光の時間波形は、点g1、g2、g3及びg4で反射されるブラッグ反射光成分の和として求められる。厳密には、第i単位FBGからのブラッグ反射光の時間波形は、第i単位FBGの連続的な全ての箇所から反射されるブラッグ反射光成分を積分して求められる。その結果、第i単位FBGからのブラッグ反射光の時間波形は、図5(C)に示すようにbiで示す時間幅がtQであるチップパルスとなる。
第(i+1)単位FBGから反射されるブラッグ反射光成分の時間波形についても同様に、図5(B)及び図5(C)でbi+1として破線で示す時間波形となる。一般に、各単位FBGで反射されるブラッグ反射光の時間波形の時間幅tQは、入力光パルスの時間波形の時間幅tp、単位回折格子長Li、光ファイバの実効屈折率Neff、光束cとの間に次式(1)に示す関係がある。
tQ=t+(2×NeffLi/c) (1)
従って、隣接するチップパルス(チップパルスbiとbi+1)の時間軸上で重なる部分を少なくするためには、隣接する単位FBGの間隔である単位セグメント長Diを、次式(2)を満足するように設定するのがよいことが分かる。
2×(Di−Li)≧(tQ−t)×(c/Neff) (2)
式(1)から2×Li=(tQ−t)×(c/Neff)であるから式(2)は、次式(3)と変形される。
2×(Di−Li)≧2×Li (3)
従って、
Di/2≧Li (4)
が得られる。
すなわち、SSFBGの単位回折格子長Liを、単位セグメント長Diの1/2を下回るように設定すれば、チップパルス列を構成する隣接するチップパルス同士の時間軸上での重なりを無視できる程小さくすることが可能である。
図6(A)〜図6(D)及び図7(A)〜図7(D)を参照して、単位回折格子長Liと単位セグメント長Diの関係を2通りに変えたSSFBGに対して、復号化の過程で生成される相互相関波成分に対する自己相関波成分のエネルギー比(S/N比)の依存性を検討するためにシミュレーションを行った結果について説明する。図6(A)〜図6(D)及び図7(A)〜図7(D)において横軸は時間をps(ピコ秒)単位で目盛って示してあり、縦軸は光強度を任意スケールで目盛って示してある。
このシミュレーションでは、単位FBGの実効屈折率変調周期Λを540 nmとし、単位セグメント長Diを1.3mmとした。また、相対位相の最小単位a+(m/N)をm=0、a=1/32、N=16と設定した符号Rと、m=4、a=1/32、N=16と設定した符号Sとの2通りの符号を設定したSSFBGを想定してシミュレーションを実施した。また、SSFBGに入力される入力光パルスの時間軸上の半値全幅は12 psである。
図6(A)及び図6(B)はそれぞれ、符号Rによって符号化した信号に対する符号Rの自己相関波形を示す図であって、図6(A)はLi=Di、Ei=0、すなわち、Li/Di=1としたとした場合、図6(B)はLi=Ei=(1/2)Di、すなわち、Li/Di=1/2とした場合について示してある。また、図6(C)及び図6(D)は、それぞれ、符号Rによって符号化した信号を符号Sで復号化した場合の相互相関波形を示す図であって、図6(C)はLi=Di、Ei=0とした場合、図6(D)はLi=Ei=(1/2)Diとした場合とした場合について示してある。
図6(A)及び図6(B)に示すように、位相シフト部の長さEiを、相対位相の最小単位の位相差を生む長さだけ確保して実質的にEi=0とした場合に比べて、位相シフト部の長さをLi=Ei=(1/2)Diとし確保した場合は、自己相関波形成分のエネルギーは大きいことが分かる。定量的には、実質的にEi=0とした場合に比べて、位相シフト部の長さをLi=Ei=(1/2)Diとし確保した場合は、自己相関波形成分のエネルギーは0.9 dB大きくなっている。
また、図6(C)及び図6(D)に示すように、位相シフト部の長さをLi=Ei=(1/2)Diと確保した場合には、実質的にEi=0とした場合と比べて相互相関波のピーク強度が弱いことがわかる。定量的には、L i =Ei=(1/2)Diと確保した場合には、実質的にEi=0とした場合と比べて相互相関波のエネルギーは、1.9 dB小さくなっている。
図7(A)及び図7(B)はそれぞれ、符号Sによって符号化した信号に対する、符号Sの自己相関波形を示す図であって、図7(A)はLi=Di、Ei=0とした場合、図7(B)はLi=Ei=(1/2)Diとした場合について示してある。また、図7(C)及び図7(D)はそれぞれ、符号Sによって符号化した信号を符号Rで復号化した場合の相互相関波形を示す図であって、図7(C)はLi=Di、Ei=0とした場合、図7(D)はLi=Ei=(1/2)Diとした場合とした場合について示してある。
図7(A)及び図7(B)に示すように、位相シフト部の長さEiを、相対位相の最小単位の位相差を生む長さだけ確保して実質的にEi=0とした場合に比べて、位相シフト部の長さをLi=Ei=(1/2)Diとし確保した場合は、自己相関波形成分のエネルギーは小さくなっていることが分かる。定量的には、実質的にEi=0とした場合に比べて、位相シフト部の長さをLi=Ei=(1/2)Diとし確保した場合は、自己相関波形成分のエネルギーは0.7 dB小さくなっている。
また、図7(C)及び図7(D)に示すように、Li=E i =(1/2)Diと確保した場合には、実質的にEi=0とした場合と比べて相互相関波のピーク強度が大きくなっていることがわかる。定量的には、L i =Ei=(1/2)Diと確保した場合には、実質的にEi=0とした場合と比べて相互相関波のエネルギーは、1.9 dB大きくなっている。
以上説明した様に、SSFBGに入力される入力光パルスの時間軸上の半値全幅が12 psである場合、単位回折格子長Liと単位セグメント長Diとの比Li/Diが1/2である場合は、相互相関波成分に対する自己相関波成分のエネルギー比の符号依存性を十分には小さくすることができないことが分かる。
そこで、この符号依存性を十分小さくするためには、単位回折格子長Liと単位セグメント長Diとの比Li/Diをどの程度にすればよいかについて検討した。
図6(C)〜図6(D)及び図7(C)〜図7(D)を参照して説明した自己相関波形成分に対する相互相関波成分のエネルギー比の符号依存性は、符号器を構成するSSFBGへ入力される入力光パルスの時間幅が12 psである場合を仮定して行ったシミュレーション結果である。入力光パルスの時間幅がより狭ければ隣接するチップパルスの時間軸上での重なりの度合いは小さくなるが、重なる部分をなくすことはできない。そのため、この重なり部分を少なくするために、単位回折格子長Liと単位セグメント長Diとの比Li/Diをどの程度小さくすることが有効であるかを検討した。
図8を参照して、単位回折格子長Liと単位セグメント長Diとの比Li/Diに対する相互相関波成分に対する自己相関波成分のエネルギー比の符号依存性につき説明する。図8の横軸はLi/Diを示し、縦軸は相互相関波成分に対する自己相関波成分のエネルギー比、すなわちS/N比を目盛ってある。
符号Rによって符号化した信号に対する符号Rで復号化した場合の自己相関波形、符号Rによって符号化した信号を符号Sで復号化した場合の相互相関波形をそれぞれ求めることによってS/N比を求めた。このとき、符号器を構成するSSFBGへ入力される入力光パルスの時間幅を、3 ps、12 ps及び24 psの3種類についてシミュレーションを行った。白抜きの四角形で示すデータが入力光パルスの時間幅が3 psの場合のS/N比を示し、白抜きの三角形で示すデータが入力光パルスの時間幅が12 psの場合のS/N比を示し、白抜きの丸で示すデータが入力光パルスの時間幅が24 psの場合のS/N比を示している。
一方、符号Sによって符号化した信号に対する符号Sで復号化した場合の自己相関波形、符号Sによって符号化した信号を符号Rで復号化した場合の相互相関波形をそれぞれ求め、S/N比についても求めた。このときも、符号器を構成するSSFBGへ入力される入力光パルスの時間幅を、3 ps、12 ps及び24 psの3種類についてシミュレーションを行った。黒の四角形で示すデータが入力光パルスの時間幅が3 psの場合のS/N比を示し、黒の三角形で示すデータが入力光パルスの時間幅が12 psの場合のS/N比を示し、黒の丸で示すデータが入力光パルスの時間幅が24 psの場合のS/N比を示している。
図8に示すように、上記のいずれの条件においても、単位回折格子長Liと単位セグメント長Diとの比Li/Diが1/2を下回れば、S/N比の値は安定することが分かる。すなわち、入力光パルスの時間幅が24 psと広い場合であっても、比Li/Diが1/2を下回れば、S/N比であるS/N比が、符号化の際に使われる符号に依存しない。
光通信において、転送速度であるビットレートが160 Gbit/s場合を例に取ると、伝送される光パルス信号を構成する光パルスの時間幅が数十psであっても許される。従って、この発明の光パルス時間拡散器を符号器あるいは復号器として利用すれば入力光パルスの時間幅が24 psであってもS/N比の符号依存性が十分小さいので、OCDM方式の光通信に利用して好適である。
この発明の実施形態の光パルス時間拡散器に利用されるSSFBGの概略的構造の説明に供する図である。(A)は、SSFBGの模式的な断面図であり、(B)はSSFBGの実効屈折率変調構造を概略的に示す図であり、(C)は、光ファイバの実効屈折率変調構造の一部を拡大して描いた図である。 同一の実効屈折率周期構造を作りつけた一組のSSFBGを具える光パルス時間拡散器によるチップパルス列の生成及び、チップパルス列から自己相関波が生成される動作原理の説明に供する図である。(A)は動作原理の説明に供する図であり、(B)は、単位FBG 20a、20b、20c及び20dからそれぞれブラッグ反射されるチップパルス列a'、b'、c'及び d'の時間波形を示す図であり、(C)は、SSFBG 20で生成された入力光パルスの自己相関波の時間波形を示す図である。 異なる実効屈折率周期構造を作りつけた一組のSSFBGを具える光パルス時間拡散器によるチップパルス列の生成及び、チップパルス列から相互相関波が生成される動作原理の説明に供する図である。(A)は動作原理の説明に供する図であり、(B)は、単位FBG 40a、40b、40c及び40dからそれぞれブラッグ反射されるチップパルス列a'、b'、c'及び d'の時間波形を示す図であり、(C)は、SSFBG 40で生成された入力光パルスの相互相関波の時間波形を示す図である。 隣接する単位FBGによって生成されたチップパルス同士の干渉効果についての説明に供する図である。(A)は時間幅がtpである光パルスが符号器を構成するSSFBGに入力される様子を概略的に示す図であり、(B)は第(i)単位FBGで生成されるチップパルスbi及び第(i+1)単位FBGで生成されるチップパルスbi+1の時間波形を独立に示す図であり、(C)及び(D)はそれぞれ、チップパルスbiの光搬送波としての相対位相とチップパルスbi+1の光搬送波としての相対位相がπ異なる場合及び同位相である場合のチップパルス列の時間波形を示す図である。 単位回折格子長と単位セグメント長の比が復号器によって生成される相互相関波成分に対する自己相関波成分の比(S/N比)に与える効果についての説明に供する図である。(A)は時間幅がtpである光パルスが、符号器を構成するSSFBGに入力される様子を概略的に示す図であり、(B)は単位FBGの両端及び4分割する点g1、g2、g3及びg4で反射されるブラッグ反射光成分の時間波形を示す図であり、(C)は単位FBGからのブラッグ反射光の時間波形を示す図である。 単位回折格子長Liと単位セグメント長Diの関係を2通りに変えたSSFBGに対して、復号化の過程で生成される相互相関波成分に対する自己相関波成分のエネルギー比依存性を検討するためにシミュレーションを行った結果の説明に供する図である。(A)及び(B)はそれぞれ符号Rによって符号化した信号に対する符号Rの自己相関波形を示す図であり、(C)及び(D)はそれぞれ符号Rによって符号化した信号に対する、符号Rに対する符号Sの相互相関波形を示す図である。 単位回折格子長Liと単位セグメント長Diの関係を2通りに変えたSSFBGに対して、復号化の過程で生成される相互相関波成分に対する自己相関波成分のエネルギー比依存性を検討するためにシミュレーションを行った結果の説明に供する図である。(A)及び(B)はそれぞれ符号Sによって符号化した信号に対する、符号Sの自己相関波形を示す図であり、(C)及び(D)はそれぞれ符号Rによって符号化した信号に対する、符号Sに対する符号Rの相互相関波形を示す図である。 単位回折格子長Liと単位セグメント長Diとの比Li/Diに対する、相互相関波成分に対する自己相関波成分のエネルギー比の符号依存性を示す図である。
符号の説明
10、20、30、40:SSFBG
12、14、32、34:光サーキュレータ
18、38:光ファイバ伝送路
50:SSFBG
52:クラッド
54:コア
56:光ファイバ

Claims (3)

  1. 光ファイバに、該光ファイバの長さ方向に沿って、当該光ファイバの実効屈折率が周期的に変化している構造の第1〜第N単位ファイバブラッグ格子(FBG: Fiber Bragg Grating)を、第i単位FBGと第(i+1)単位FBGの間に実効屈折率が一定である位相シフト部をそれぞれ挟んで配置して構成される超構造ファイバブラック格子を具える光パルス時間拡散器であって、
    前記超構造ファイバブラック格子に入力される光パルスを、時間軸上に時間拡散して順次並ぶ、第1〜第NチップパルスまでのN個のチップパルスから成る、チップパルス列として出力する機能を有しており、
    前記第i単位FBGは、前記第1チップパルスに対して2π[a+(m/N)]×(i-1)に等しい相対位相を与えるように配置されている
    ことを特徴とする光パルス時間拡散器。
    ただし、Nは2以上の整数、mは0〜(N-1)までの何れかの値をとる整数、iは前記第1〜第N単位FBGを指示するパラメータであり1〜Nまでの値をとる整数であって、パラメータaは0≦a<1を満たす実数である。
  2. 光ファイバに、該光ファイバの長さ方向に沿って、当該光ファイバの実効屈折率が周期的に変化している構造の第1〜第N単位ファイバブラッグ格子(FBG: Fiber Bragg Grating)を、第i単位FBGと第(i+1)単位FBGの間に実効屈折率が一定である位相シフト部をそれぞれ挟んで配置して構成される超構造ファイバブラック格子を具える光パルス時間拡散器であって、
    前記超構造ファイバブラック格子に入力される光パルスを、時間軸上に時間拡散して順次並ぶ、第1〜第NチップパルスまでのN個のチップパルスから成る、チップパルス列として出力する機能を有しており、
    前記第i単位FBGは、前記第1チップパルスに対して2π[a+(m/N)]×(i-1)に等しい相対位相を与えるように配置されており、
    前記第1〜第N単位FBGの前記光ファイバの長さ方向に沿った長さのそれぞれの単位回折格子長が、隣接する前記第i単位FBGと第(i+1)単位FBGの間の間隔であるそれぞれの単位セグメント長よりも短い
    ことを特徴とする光パルス時間拡散器。
    ただし、Nは2以上の整数、mは0〜(N-1)までの何れかの値をとる整数、iは前記第1〜第N単位FBGを指示するパラメータであり1〜Nまでの値をとる整数であって、パラメータaは0≦a<1を満たす実数である。
  3. 光ファイバに、該光ファイバの長さ方向に沿って、当該光ファイバの実効屈折率が周期的に変化している構造の第1〜第N単位ファイバブラッグ格子(FBG: Fiber Bragg Grating)を、第i単位FBGと第(i+1)単位FBGの間に実効屈折率が一定である位相シフト部をそれぞれ挟んで配置して構成される超構造ファイバブラック格子を具える光パルス時間拡散器であって、
    前記超構造ファイバブラック格子に入力される光パルスを、時間軸上に時間拡散して順次並ぶ、第1〜第NチップパルスまでのN個のチップパルスから成る、チップパルス列として出力する機能を有しており、
    前記第i単位FBGは、前記第1チップパルスに対して2π[a+(m/N)]×(i-1)に等しい相対位相を与えるように配置されており、
    前記第1〜第N単位FBGの前記光ファイバの長さ方向に沿った長さのそれぞれの単位回折格子長が、隣接する前記第i単位FBGと第(i+1)単位FBGの間の間隔であるそれぞれの単位セグメント長の1/2を下回る
    ことを特徴とする光パルス時間拡散器。
    ただし、Nは2以上の整数、mは0〜(N-1)までの何れかの値をとる整数、iは前記第1〜第N単位FBGを指示するパラメータであり1〜Nまでの値をとる整数であって、パラメータaは0≦a<1を満たす実数である。
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