明 細 書 高炭素ナノ結晶鉄合金粉末及びバルク材並びにその製造方法
技術分野
本発明は、 ねずみ錶鉄 ·まだら錶鉄 (以下、 両錶鉄を含めてねずみ鎳鉄という) 組成の 高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末及び高硬度 ·高強度で強執なバルク材並びにその製造 方法に関する。
背景技術
金属材料の強さや硬さは、 ホールべツチの関係式が示すように、 結晶粒径 dが小さくな るほど増加し、 このような関係は dが数十 n m付近までは同じように成立するので、 結晶 粒径をナノサイズレベルまで超微細化することは、 金属材料の強化する最も重要な手段の 1つになっている。 このことは、 鉄鋼材料の強化方法として特に重要である。 鉄鋼材料に おいては、 こうして得られた微細組織の中に炭化物などの硬い物質を分散ないし析出させ ると、 その強度特性はさらに大きく向上させることができる。
しかし、実用材料として極めて重要なねずみ錶鉄 ·まだら錶鉄(以下ねずみ錶鉄という) の材料については、 ナノ結晶化のための研究は未だなされていない。 通常、 高炭素鉄合 金材料では、 同材料の構成成分である炭素がミク口ンサイズレベルの片状ないし針状の黒 鉛及び炭化物 (セメン夕ィ卜) として存在しており、 強度が極めて低い上、 伸びがほとん どゼロに近いため、 その用途は限られたものとなっている。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
しかし、 溶解法で製造されているねずみ錶鉄をはじめとする多くの金属材料の結晶粒径 dは、 通常数ミクロン〜数百ミクロンであり、 後処理によっても dをナノオーダにするこ とは難しく、 例えば、 鋼の結晶粒径微細化プロセスとして重要な制御圧延の場合でも、 そ の到達できる粒径の下限は 4 ~ 5 /^ m程度である。
従って、 このような通常の方法では、 ナノサイズまでに粒径を微細化した材料は得られ ない。
課題を解決するための手段
本発明は上記課題を解決するものであって、 下記の発明である。
本発明は、 基本的には、 (1 ) 高炭素鉄合金構成成分の各物質の混合材料、 (2 ) 溶製し た高炭素鉄合金材料、 又は (3 ) (〗) 及び (2 ) の物質に他の元素又はその合金などの 物質を加えた混合材料を、 ポールミルなどを用いたメカニカルァロイング (M A) 又はメ 力二カルミリング (M M) 処理して、 その結晶粒径のナノサイズレベルまでの超微細化と 超高硬度のナノサイズの特殊炭化物 ·炭窒化物などの分散 '析出によって達成できるその 限界に近い強さ (高強度) ないし、 硬さ (超硬質) 及び靱性を有する高炭素鉄合金のナノ 結晶粉末となし、 次いでこのナノ結晶高炭素鉄合金の粉末の熱間での固化成形又は超塑性 温度域での固化成形によって、 同粉末の有する特性を保持したナノ結晶高炭素鉄合金バル ク材を提供することである。 すなわち、 本発明は下記構成の高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末及び高硬度 ·高強度 で強靱なナノ結晶高炭素鉄合金バルク材料並びにその製造方法である。
〔1〕 ねずみ錶鉄 ·まだら錶鉄 (以下ねずみ錶鉄とまだら铸鉄の両者を含めてねずみ錶鉄 という)組成のナノ結晶粒子の集合体よりなる炭素を 3 . 6〜6 . 7質量%、ケィ素を 0 . 5〜4 . 0質量%含有する高炭素鉄合金粉末であって、 前記ナノ結晶フェライト相の強化 物質として、 同フェライト相内にナノメートルサイズ (1 n m〜1 0 n m) の粒状ないし 球状に近い (1 ) 金属又は半金属の炭ィヒ物、 ( 2 ) 金属又は半金属の炭窒化物、 又は (3 ) 黒鉛から選ばれた一つ又は二つ以上の物質を分散■析出させてなることを特徴とする高硬 度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末。
〔2〕 〔1〕 に記載の炭化物又は炭窒化物を構成する金属又は半金属が、 鉄又は高炭素鉄 合金の合金元素としてクロム、バナジウム、チタン、 ジルコニウム、モリプデン、ニオブ、 タンタル、 タングステン、 ニッケル、 コバルト、 アルミニウム、 ケィ素又はホウ素から選 ばれるいずれか 1つ以上からなり、 これらの合金元素が〗つの場合にはその濃度が高炭素 鉄合金粉末の 0 . 1〜4 0質量%を含有し、 また合金元素が 2つ以上の場合には、 その合 計濃度が高炭素鉄合金粉末の 0 . 〗〜4 5質量%以下からなることを特徴とする高硬度の ナノ結晶高炭素鉄合金粉末。
〔3〕 前記 〔1〕 に記載の炭化物又は炭窒化物が高炭素鉄合金中に含有されるクロム、 バ ナジゥ厶、 チタン、 ジルコニウム、 モリブデン、 ニオブ、 タンタル、 タングステンのよう な高融点元素が、 その 〜 5質量%以上高濃度の場合に形成されるものであることを特徴 とする高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末。
〔4〕 高炭素鉄合金ナノ結晶粒子の集合体よりなる高炭素鉄合金粉末が、 分散 ·析出強化 物質及び/又は結晶粒成長抑制物質として、 (1 ) クロム、 バナジウム、 チタン、 ジルコ 二ゥ厶、 モリブデン、 ニオブ、 タンタル、 タングステン、 ニッケル、 コバルト、 アルミ二
ゥ厶、 ケィ素又はホウ素から選ばれるいずれか 1種以上、 又は (2) 前記各元素の炭化物 及び Z又は炭窒化物を 1種以上存在させてなることを特徴とする前項 〔〗〕 〜 〔3〕 のい ずれか 1項に記載の高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末。
〔5〕 高炭素鉄合金ナノ結晶粒子の集合体よりなる炭素を 3. 6〜6. 7質量%、 ケィ素 を 0. 5〜4. 0質量%含有する高炭素鉄合金粉末であって、 前記各ナノ結晶粒子の粒子 間及び/又は同粒子の内部に、 結晶粒成長抑制物質として金属又は半金属の炭化物を存在 させてなることを特徴とする高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末。
〔6〕 高炭素鉄合金ナノ結晶粒子の集合体よりなる炭素を 3. 6〜6. 7質量%、 ケィ素 を 0. 5~4. 0質量%含有する高炭素鉄合金粉末であって、 前記各ナノ結晶粒子の粒子 間及び/又は同粒子の内部に、 結晶粒成長抑制物質として金属又は半金属の酸化物を存在 させてなることを特徴とする高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末。
〔7〕 高炭素鉄合金ナノ結晶粒子の集合体よりなる炭素を 3. 6〜6. 7質量%、 ケィ素 を 0. 5〜4. 0質量%含有する高炭素鉄合金粉末であって、 前記各ナノ結晶粒子の粒子 間及び/又は同粒子の内部に、 結晶粒成長抑制物質として金属又は半金属の窒化物を存在 させてなることを特徴とする高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末。
〔8〕 高炭素鉄合金ナノ結晶粒子の集合体よりなる炭素を 3. 6〜6. 7質量%、 ケィ素 を 0. 5〜4. 0質量%含有する高炭素鉄合金粉末であって、 前記各ナノ結晶粒子の粒子 間及び/又は同粒子の内部に、 結晶粒成長抑制物質として金属又は半金属のケィ化物 (シ リサイド) を存在させてなることを特徴とする高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末。
〔9〕 高炭素鉄合金ナノ結晶粒子の集合体よりなる炭素を 3. 6〜6. 7質量%、 ゲイ素 を 0. 5〜4. 0質量%含有する高炭素鉄合金粉末であって、 前記各ナノ結晶粒子の粒子 間及び Ζ又は同粒子の内部に、 結晶粒成長抑制物質として金属又は半金属の硼化物 (ボラ ィド) を存在させてなることを特徴とする高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末。
C 1 0〕 高炭素鉄合金ナノ結晶粒子の集合体よりなる炭素を 3. 6〜6. 7質量%、 ケィ 素を 0. 5〜4. 0質量%含有する高炭素鉄合金粉末であって、 前記各ナノ結晶粒子の粒 子間及び/又は同粒子の内部に、 結晶粒成長抑制物質として、 (1 ) 金属又は半金属の炭 化物、 (2) 金属又は半金属の酸化物、 (3) 金属又は半金属の炭窒化物、 (4) 金属又は 半金属のケィ化物 (シリサイド) 又は (5) 金属又は半金属の硼化物 (ボライド) から選 ばれる 2、種以上を存在させてなることを特徵とする高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末。
Π 1〕 高炭素鉄合金ナノ結晶粒子又はその集合体よりなる炭素を 3. 6〜6. 7質量% 、 ケィ素を 0. 5〜4. 0質量%含有する高炭素鉄合金粉末が、 金属又は半金属の酸ィ匕物 の形態で酸素を 0. 005~1. 0質量%含有するものであることを特徴とする前項〔1〕 〜 (: 1 0〕 のいずれか〗項に記載の高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末。
〔1 2〕 高炭素鉄合金ナノ結晶粒子が、 塊状、 片状、 粒状、 粉状の高炭素鉄合金形成成分 の各物質の混合材料をボールミル等を用いてメカニカルァロイング (ΜΑ) 又はメカ二力
ルミリング (M M) することによって得られたものであることを特徴とする前項 〔1〕 ~ c i n のいずれか 1項に記載の高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末。
〔1 3〕高炭素鉄合金ナノ結晶粒子が、塊状、片状、粒状又は粉状の普通炭素鋼、合金鋼、 白錶鉄、 ねずみ錶鉄、 まだら錶鉄、 球状黒鉛錶鉄、 合金錶鉄、 他の合金元素又は合金のい ずれか 1つ又は 2つ以上の物質から選ばれた高炭素鉄合金の構成物質を、 ボールミル等を 用いてメカニカルミリング (M M) 又はメカニカルァロイング (M A) することによって 得られたものであることを特徴とする前項 〔1〕 〜 〔1 1〕 のいずれか 1項に記載の高硬 度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末。
〔1 4〕 高炭素鉄合金ナノ結晶粒子の集合体よりなる炭素を 3 . 6〜6 . 7質量%、 ケィ 素を 0 . 5〜4 . 0質量%含有する高炭素鉄合金粉末が、 メカニカルァロイング (M A) 又はメカニカルミリング (M M) によって得られるナノ結晶粒子集合体 (粉体) 間の固化 成形過程での原子的結合促進物質又は同固化成形体 (バルク材) の遅れ破壊抑制 ·防止物 質として、 チタン、 ジルコニウム又はバナジウムから選ばれる 1又は 2以上を 0 . 0 1〜 5 . 0質量%含有させてなることを特徴とする前項 〔1〕 〜 〔1 3〕 のいずれか 1項に記 載の高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末。
〔1 5〕 メカニカルァロイング (M A) 又はメカニカルミリング (M M) 過程において、 ボールミルなどに用いる粉砕媒体と原料粉末との質量比又はノ及びポールミル等の運転ェ ネルギ一の選定などにより投入する機械的エネルギー、 を調整することによって、 ナノ結 晶粒集合体における (1 ) フェライ卜粒子や分散 *析出物としての炭化物、 炭窒化物又は 黒鉛の粒径、 (2 ) これらの分散,析出物の生成、 又は (3 ) その生成量、 を制御するこ とを特徴とする前項 〔1〕 〜 〔1 3〕 のいずれか 1項に記載の高硬度のナノ結晶高炭素鉄 合金粉末。
〔1 6〕 前項 〔1〕 〜 〔1 5〕 のいずれか 1項に記載のナノ結晶高炭素鉄合金粉末の多数 個が固結されてなることを特徴とする高硬度 ·高強度で強靱なナノ結晶高炭素鉄合金バル ク材。
〔1 7〕 炭素を 3 . 6〜6 . 7質量%、 ケィ素を 0 . 5〜4 . 0質量%含有する塊状、 片 状、 粒状又は粉状の高炭素鉄合金形成成分材料を、 ポールミル等を用いてメカニカルミリ ング (M M) 又はメカニカルァロイング (M A) することによって、 ねずみ鎳鉄'まだら 铸鉄組成のナノ結晶粒子の集合体よリなる高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末を得ること を特徴とする高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末の製造方法。
〔1 8〕 炭素を 3 . 6〜6 . 7質量%、 ケィ素を 0 . 5〜4 . 0質量%含有する塊状、 片 状、 粒状又は粉状の高炭素鉄合金形成成分材料が、 塊状、 片状、 粒状又は粉状の普通炭素 鋼、 合金鋼、 白錶鉄、 ねずみ錡鉄、 まだら錶鉄、 球状黒鉛錶鉄、 合金錶鉄、 他の合金元素 又は合金のいずれか 1つ又は 2つ以上の物質から選ばれたものであることを特徴とする前 項 〔1 7〕 記載の高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末の製造方法。
〔1 9〕 メカニカルァロイング (MA) 又はメカニカルミリング (MM) 過程において、 ボールミルなどに用いる粉砕媒体と原料粉末との質量比又は z及びボールミル等の運転ェ ネルギ一の選定などにより投入する機械的エネルギーを調整することによって、 ナノ結晶 粒子の集合体における (1 ) フェライ卜粒子や分散 '析出物としての炭化物、 窒化物又は 炭窒化物の粒径、 (2) これらの分散 *析出物の生成、 又は (3) その生成量、 の (1 ) 〜 (3) から選ばれる 1以上を制御することを特徴とする前項 〔1 7〕 又は 〔1 8〕 のい ずれか 1項に記載の高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末の製造方法。
〔20〕 高融点元素を基本組成とする炭化物、 窒化物又は炭窒化物を母相のフェライ卜相 へ単独の状態及び 又は他の炭化物、 窒化物又は炭窒化物と共存の状態で分散 '析出させ た状態を得るため、前記各高融点元素の濃度の調整に加え、メカニカルァロイング(MA) 又はメカ二カルミリング(MM)過程での機械的エネルギー及び/又は MA、 MMの温度、 時間を効果的に制御することを特徴とする前項 〔1 7〕 〜 〔1 9〕 のいずれか 1項に記載 の高硬度のナノ結晶高炭素鉄合金粉末の製造方法。
〔21〕 前項 Π 7〕 〜 〔20〕 のいずれか 1項に記載の方法によるナノ結晶高炭素鉄合 金粉末の熱間固化成形において、 (1 ) 固化成形温度、 (2) 固化成形時間、 (3) 固化成 形圧力、 又は (4) 固化成形後の焼なましなどの熱処理、 の (1 ) 〜 (4) のうちから選 ばれるいずれか 1つ以上を制御することによって、 炭化物、 窒化物又は炭窒化物を効果的 に分散 ·析出させることを特徴とする高硬度■高強度で強靱なナノ結晶高炭素鉄合金バル ク材の製造方法。 一―
〔22〕 前項 〔1 2:! 〜 〔1 5〕 のいずれか 1項に記載の高炭素鉄合金ナノ結晶粒子の粉 末を 500°C〜 900°Cの温度での放電プラズマ焼結 (S p a r k P l a sma S i n t e r ί n g)、 ホッ卜プレス、 シース圧延 (S h e a t h R o I I i n g)、 熱間鍛 造、 押出し成形、 熱間等方圧加圧成形 (H I P) 等の真空熱間固化成形又は爆発成形の固 化成形処理することにより、 ナノ炭化物、 ナノ炭窒化物のいずれか 1種以上の分散 '析出 強化型ナノ結晶高炭素鉄合金バルク材となすことを特微とする高硬度■高強度で強靱なナ ノ結晶高炭素鉄合金バルク材の製造方法。
〔23〕 前項 〔1 2〕 〜 〔1 5〕 のいずれか 1項に記載の高炭素鉄合金ナノ結晶粒子の粉 末を超塑性を示す温度域にて放電プラズマ焼結、 ホットプレス、 押出し成形、 熱間鍛造、 熱間等方圧加圧成形 (H I P)、 圧延等の真空熱間固化成形 (超塑性固化成形) を行うこ とにより、 ナノ炭化物、 ナノ炭窒化物等の分散 ·析出強化型ナノ結晶高炭素鉄合金バルク 材となすことを特微とする高硬度 ·高強度で強靱なナノ結晶高炭素鉄合金バルク材の製造 方法。
〔24〕 前項 〔1 2;) 〜 〔1 5〕 のいずれか 1項に記載の高炭素鉄合金ナノ結晶粒子の粉 末を 500°C〜900°Cの温度での放電プラズマ焼結、 ホットプレス、 押出し成形、 熱間 鍛造、 熱間等方圧加圧成形 (H I P)、 圧延等の真空熱間固化成形又は爆発成形などで固
化成形処理してナノ結晶高炭素鉄合金バルク材となし、 その後前記高炭素鉄合金バルク材 を超塑性を示す温度域で成形加工することを特徴とする高硬度 ·高強度で強靱なナノ結晶 高炭素鉄合金バルク材の製造方法。
〔2 5〕 メカニカルミリング又はメカニカルァロイングを施す雰囲気が、 (1 ) アルゴン ガスなどの不活性ガス、 (2 ) N2ガス、 又は (3 ) N H3ガスから選ばれるいずれか 1種、 又は (4 ) ( 1 ) 〜 ( 3 ) から選ばれる 2種以上の混合ガスの雰囲気であることを特徴と する前項 〔1 7〕 〜 〔2 4〕 のいずれか〗項に記載の高硬度 '高強度で強靱なナノ結晶高 炭素鉄合金バルク材の製造方法。
〔2 6〕 メカニカルミリング又はメカニカルァロイングを施す雰囲気が、 若干の H2ガス などの還元性物質を加えたガスの雰囲気であることを特徴とする前項 〔1 7〕 〜 〔2 4〕 のいずれか 1項に記載の高硬度■高強度で強靱なナノ結晶高炭素鉄合金バルク材の製造方 法。
〔2 7〕 メカニカルミリング又はメカニカルァロイングを施す雰囲気が、 真空又は真空中 に若干の H 2ガスなどの還元性物質を加えた真空又は還元雰囲気であることを特徴とする 前項 〔1 7;) 〜 〔2 4〕 のいずれか 1項に記載の高硬度'高強度で強靱なナノ結晶高炭素 鉄合金バルク材の製造方法。
〔2 8〕 ナノ結晶高炭素鉄合金の配合組成が、 他元素を 0 ~ 4 0質量%含有するものであ リ、 その固化成形の温度が錶鉄の共析温度 (約 7 3 0 °C) を中心にして、 その上下に 2 0 %以内の範囲の温度であることを特徴とする前項 Π 7〕 〜 〔2 4〕 のいずれか 1項に記 載の高硬度 ·高強度で強靱なナノ結晶高炭素鉄合金バルク材の製造方法。
〔2 9〕 ナノ結晶高炭素鉄合金粉末の熱間固化成形温度への急速加熱及び Z又は同熱間固 化成形温度保持のため、 マイクロ波による加熱方式又は通電加熱方式を用いることを特徴 とする前項 〔1 7:] 〜 〔2 8〕 のいずれか 1項に記載の高硬度 ·高強度で強靱なナノ結晶 高炭素鉄合金バルク材の製造方法。
〔3 0〕 ナノ結晶高炭素鉄合金粉末の迅速な熱間固化成形処理を行うため、 同粉末をマイ ク口波加熱加圧焼結又は通電加熱加圧焼結することによって、 ナノ結晶高炭素鉄合金バル ク材となす とを特徴とする前項 〔1 7〕 〜 〔2 8〕 のいずれか 1項に記載の高硬度 -高 強度で強靱なナノ結晶高炭素鉄合金バルク材の製造方法。
〔3 1〕、ナノ結晶金属粉末の熱間固化成形温度への急速加熱及び Z又は同熱間固化成形温 度保持のため、 マイクロ波による加熱方式又は通電加熱方式を用いることを特徴とする前 項 〔1 7〕 ~ 〔2 8〕 のいずれか 1項に記載の高硬度,高強度で強靱なナノ結晶金属バル ク材の製造方法。
〔3 2〕 ナノ結晶金属粉末の迅速な熱間固化成形処理を行うため、 同粉末をマイクロ波加 熱加圧焼結又は通電加熱加圧焼結することによって、 ナノ結晶金属バルク材となすことを 特徴とする前項 〔1 7〕 〜 !: 2 8〕 のいずれか 1項に記載の高硬度■高強度で強靱なナノ
結晶金属バルク材の製造方法。
発明を実施するための最良の形態
通常、 ねずみ錡鉄材料では、 同材料の構成成分である炭素がミクロンサイズレベルの片 状ないし、 S十状の黒鉛及び炭ィ匕物 (セメンタイ卜) として存在しているが、 このようなね ずみ錶鉄組成の高炭素鉄合金材料にメカニカルァロイング法を用いると、 ナノサイズの粒 状ないし球状に近い炭化物や黒鉛が鉄の母相 (ナノ結晶フェライ卜相) に分散した極めて 強靱な粉末が得られるため、 これを固化成形すると、 前記の特性をもつ粉末に加えフェラ ィ卜相のナノサイズまでの超微細化と球状に近いナノサイズの炭化物の同フェライ卜相へ の分散による相乗効果によって、 従来の溶解法では製造し得ない極めて優れた強度特性を もつ材料を作ることができる。
また、 前記ねずみ錶鉄組成の材料では、 クロム、 バナジウムなどの高融点の合金元素を 添加すると、 ナノサイズのフェライ卜相のこれらの合金元素による固溶強化とより高硬度 の特殊炭化物 '炭窒化物の分散 ·析出により、 極めて高硬度、 高強度で強靱なより優れた ナノ結晶高炭素鉄合金材料を製造することが可能となる。
—方、 結晶粒径をナノサイズレベルまで超微細化すると、 多く金属材料では、 0 . 5丁 m (T m :融点 (K )) 以上のある温度域において、 超塑性という特異な現象を示すよう になる。 この現象を利用すると、 構造的に比較的複雑な形状の高炭素鉄合金材料でも、 溶 解過程を経ないで、 その製造が可能となる。 本発明は、 基本的には、 ナノ結晶の高炭素鉄合金形成成分の混合物質又は溶製した高炭 素鉄合金粉末材料などの物質をボールミル等を用いてメカニカルァロイング (M A) 又は メカニカルミリング (M M) の方法により、 超硬質で強靱なナノ結晶高炭素鉄合金微粉末 材料を提供するとともに同粉末を固化成形処理、 又は同成形過程での超塑性を利用した方 法にょリ、 結晶粒径をナノサイズのレベルまで微細化した場合に達成できるその限界に近 い強さ (高強度) ないし硬さ (超硬質) 及び耐食性をもつナノ炭化物 ·ナノ炭窒化物など の分散■析出強化型高炭素鉄合金バルク材を提供することである。 本発明では、 鉄、 炭素、 ケィ素、 クロム、 モリブデン、 バナジウムなどの単体金属の元 素状粉末又はこれらの単体金属の粉末に他元素を添加した高炭素鉄合金形成成分の混合物 質又は溶製した高炭素鉄合金材料などにボールミル等を用いて、 アルゴンガスなどの雰囲 気中にて室温でのメカニカルァロイング (M A) 又はメカ二カノレミリング (M M) 処理を 施す。
M M又は M A処理された粉末は、 ポールミルによって付加された機械的エネルギーによ
り、 1 0~30 nm前後の結晶粒径まで容易に微細化し、 例えば粒径約 25 nmまで微細 化した高炭素鉄合金のビッカース硬さは 750〜900程度となる。
次いで、 そのような MM、 MA処理粉末を約 1 Omm内径のステンレス鋼チューブ (シ ース) に真空封入し、 これを 700〜750°C付近の温度で圧延機を用いたシース圧延に よリ固化成形すると、 例えば高炭素鉄合金の場合は約 1. 0 G P a以上の耐カを示す厚さ 1. 5 mm程度のシートを容易に製造^"ることができる。
また、 鉄、 炭素、 ケィ素、 クロムなどの高炭素鉄合金構成分の元素状混合粉末に、 モリ ブデン、 バナジウムなど他元素等を 2〜 5質量%程度添カ卩した混合粉末に、 ボールミル等 を用いたメカニカルァロイング (MA) 処理を施すと、 M A過程での微細化は一層促進さ れ、 その結晶粒径は数ナノオーダのものとなる。 また、 前項に記載のメカニカルァロイング (MA) 又はメカニカルミリング (MM) 処 理粉末に通常、 M A又は MM処理過程で必然的に混入する 0. 5質量%程度までの酸素が 金属酸ィ匕物の形態で存在して、 同酸化物による結晶粒界のピン止め効果 (p i n n i n g e f e c t) により、 固化成形過程での結晶粒粗大化を抑制する。 このような抑制効 果を高めるため、 MA又は MM処理粉末に A I N、 N bNなどの粒子分散剤を 1〜1 0体 積%、 特に 3〜 5体積%添加することはよリ好ましい。 本発明では、 高炭素鉄合金形成成分の元素状粉末材料又は溶製した高炭素鉄合金などの 材料のメカニカルァロイング (MA) 又はメカニカルミリング (MM) において、 同材料 に含有するクロム、 モリブデン、 バナジウム、 タングステンなどの高融点元素の濃度を高 めて処理すると、 ナノ結晶フェライ卜相にナノサイズの超硬質複炭化物 ·炭窒化物ないし 前記高融点元素をベースとした特殊炭化物 ·炭窒化物が分散 ·析出した極めて硬くて強靱 な粉末材料を容易に製造でき、 これにシース圧延、 押出し加工などの固化成形を施すと、 高硬度 ·高強度で強靱かつ優れた耐摩耗性などの特性を具備したナノ結晶高炭素鉄合金バ ルク材料を容易に製造することができる。
その結果、 F e89.2Ca.8C r 3S i 2A I 2 (質量%)、 F e 785 C4C n。S i 2.5W3
T i z (質量%)、 F e78.5C4C r,„S i Z.5W3M o,Z r, (質量%) などのナノ結晶高炭素鉄合 金の粉末材料及びそのバルク材が得られる。
実施例 1 :
鉄、 炭素、 ケィ素及びクロムの元素状混合粉末からボールミルを用いたメカニカルァロ イング (MA) (雰囲気:アルゴンガス ZM A処理時間: 200 h) により、 F e86-xC4S ixC r,o (質量%) (x = 0. 5〜3. 0) 組成の高炭素鉄合金粉末をつくった。
次いで、 これらの合金粉末を内径 4 Ommの黒鉛製ダイスに装填して、 真空にて 700 °Cの温度において、 放電プラズマ焼結 (S P S) した後、 同温度にて更に熱間圧延加工を 施し、 これを水冷して固化成形試料を得た。 これらの高炭素鉄合金固化成形体と前記高炭 素鉄合金粉末試料の平均結晶粒径 d及びビッカース硬さ H Vは表 1のとおリである。 本表 において、 平均結晶粒径 dはシエラーの式を用いて求めた。 また、', M A処理粉末のピツカ ース硬さ Hvは、 荷重 1 00 gにて測定したマイクロビッカース硬さである。
表 1からみて、 本発明によれば、 固ィ匕成形過程でかなり大きな結晶粒の成長はみられる が、 成形後もナノ結晶組織は保持され、 そのピツカ一ス硬さ Hvは高炭素鋼のマルテンサ ィ卜組織を有する焼入材以上の硬さを示すものとなることが解る。 表 1
* MA粉末の硬さ Hvは、荷重 100gにて測定したマイクロピツカ一ス硬さである
* [メカニカルァロイング (MA) 処理した、 F e86-xC4S i xC r10 (質量%) (x = 0. 5〜3. 0)高炭素鉄合金粉末及び同粉末に放電プラズマ焼結(真空 700°C) +圧延(真 空 700°C) を施して得た固化成形体試料の平均結晶粒径 d及びピツカ一ス硬さ H V]
実施例 2 :
前記実施例 1と同様の方法により、鉄、炭素、ケィ素及びクロムの元素状混合粉末から、 ボールミルを用いたメカニカルァロイング (MA) (雰囲気:アルゴンガス/ M A処理時 間: 200 h) により F e88— yCyS ί 2C (質量%) (x = 3. 6〜6. 0) 高炭素鉄合 金粉末をつくった。
次いで、 これらの合金粉末を前記実施例 1と同じ条件のもとで内径 40mmの黒鉛製ダ イスに装填して、 真空にて 700°Cの温度において放電プラズマ焼結 (S PS) した後、 同温度にて更に熱間圧延加工を施し、 これを水冷して得られた固化成形試料の平均結晶粒 径 d及びビッカース硬さ H Vは表 2のとおリである。
実施例 2、 表 2からみて、 本発明によれば、 F e88— CSS i 2C rie試料の固化成形 体のビッカース硬さ H vは、 実施例 1の F e86-xC4S i XC r1()試料の場合と同様、 極 めて高い値が得られ、 ビッカース硬さ H vの値は、 炭素 Cの値とともに増大することが解 る。 表 2
* [メカニカルァロイング(MA)処理後、放電プラズマ焼結 (真空 700°C) +圧延(真 空 700°C) を施した F e8 CyS i 2C 。 (質量%) (y = 3. 6〜6. 0) 高炭素鉄合 金固化成形体試料の平均結晶粒径 d及びピツカ一ス硬さ H V ]
実施例 3 :
F i zC r10 (質量%)の高炭素鉄合金組成の試料を対象にして、出発原料(a) 同高炭素鉄合金材料の形成成分の元素状混合物質、 (b) 溶製した前記組成の高炭素鉄合 金材料、 及び (c) 前記組成となるように調合した高炭素鉄合金、 鋼、 鉄、 ケィ素及びク ロムの混合物質から、 ボールミルを用いたメカニカルァロイング (MA) 又はメカニカル ミリング (MM) (雰囲気:アルゴンガス ZM A処理時間: 2 00 h) により、 同一組成 の 3種類の高炭素鉄合金粉末をつくつた。
次いで、 この 3種類の合金粉末を前記実施例 2と同じ条件のもとで、 内径 4 Ommの黒 鉛製ダイスに充填して、 真空において 700°Cにて放電プラズマ焼結 (S P S) した後、 同温度にて更に熱間圧延加工を施し、 これを水冷して得られた固化成形材料の平均結晶粒 径 d、 ピツカ一ス硬さ H v、 引張強さ σΒ及び伸び δは表 3のとおリである。
表 3からみて、 本発明によれば、 前記のような異なる出発原料から得られたこれらの高 炭素鉄合金固化成形体の結晶粒径及び引張強さ等の機械的性質の間には有為な差は認めら れないことが解る。 表 3
d Hv σΒ δ
材料
nm (荷重 10kg) MPa %
a 205 710 1450 20
b 208 728 1500 22
c 203 715 1485 18
* [(a) F es4.2C3.8S i2C r10 (質量%) 高炭素鉄合金の各形成成分の元素状混合粉末、 (b) 溶製した前記組成の高炭素鉄合金材料、 及び (c) 前記組成となるように調合した 高炭素鉄合金、 鋼、 鉄、 炭素、 ケィ素及びクロムの各物質の混合材料の各出発原料からメ 力二カルァロイング (MA) 又はメカニカルミリング (MM) 処理して得た前記組成の合 金粉末の放電プラズマ焼結 (真空 7 O 0°C) +圧延 (真空 70 CTC) による高炭素鉄合金 固化成形体試料の平均結晶粒径 d、 ビッカース硬さ Hv、 引張強さ σΒ及び伸び δ]
実施例 4 :
F e82C4S i 2C r10A I 2 (質量%) の高炭素鉄合金組成の材料を対象として、 出発原料 (a) 同高炭素鉄合金組成の形成成分の元素状物質、 (b) 溶製した前記組成の高炭素鉄 合金材料、及び(c)前記組成となるように調合したねずみ錶鉄、鋼、鉄、 ケィ素、炭素、 クロム及びアルミニウムの混合物質から、 ボールミルを用いたメカニカルァロイング (M A) 又はメカニカルミリング (MM) (雰囲気:アルゴンガス A又は MMの処理時間 : 200 h) により同一組成の 3種類の合金粉末をつくった。
次いで、 この 3種類の各合金粉末を、 前記実施例 3と同じ条件のもとで内径 4 Ommの 黒鉛製ダイスに装填して、 真空において 700°Cで放電プラズマ焼結 (S PS) した後、 同温度にて更に熱間圧延加工を施し、 これを水冷して得られた固化成形材料の平均結晶粒 径 、 ピツカ一ス硬さ Hv、 引張強さび 8及び伸び (5は表 4のとおリである。
表 4からみて、 本発明によれば、 実施例 3と同様、 前記のような異なる出発原料から得 られたこれらの固化成形体の結晶粒径及び引張強さ等の機械的性質の間に有為な差は認め られな ( こと及び 3試料とも炭素 Cの増量及びアルミ二ゥ厶の添加によって、 その強度特 性が大きく向上することが解る。 表 4
d Hv OB δ
材料
nm (荷重 10kg) MPa %
a 190 720 1550 21
b 204 728 1605 20
c 192 717 1580 18
* [(a) F e82C4S i 2C rioA I 2 (質量%) 高炭素鉄合金の各形成成分の元素状混 合粉末、 (b) 溶製した前記組成の高炭素鉄合金材料、 及び (c) 前記組成となるように 調合した高炭素鉄合金、 鋼、 鉄、 炭素、 ケィ素、 クロム及びアルミニウムの混合物質の各 出発原料からメカニカルァロイング (MA) 又はメカニカルミリング (MM) 処理して得 た前記組成の合金粉末の放電プラズマ焼結 (真空 700°C) +圧延 (真空 700°C) によ る高炭素鉄合金固化成形体試料の平均結晶粒径 d、 ピツカ一ス硬さ Hv、 引張強さ σΒ及 び伸び δ]
実施例 5 :
鉄、 炭素、 ケィ素、 クロム、 アルミニウム、 チタン、 タングステン、 モリブデン、 ニッ ケル又はジルコニウムの元素状混合粉末からボールミルを用いたメカニカルァロイング
(ΜΑ) (雰囲気:アルゴンガス Α処理時間: 200 h) により、 高炭素鉄合金組成 の (a) F es CasC riS i 2A I 2v ( b) F ea9.2C3.sC r 3S i 2A I 2» (cリ F es7.2C3.eC r 5S i 2A I 2v (d ) F Θ 8ο.5〇4〇 r 10S i 2.5N i 3、 (e ; F ea sC^C r 10S i 2.5T i 3、 ( f ) F e 785 C4C r 10S i 2.5W3T i 2、 及び (g) F e7a.5C4C r ,。S i 2.5W3M 01Z n (質量%) 合金粉末をつくった。
次いで、 これらの合金粉末を、 前記実施例 4と同じ条件のもとで内径 40 mmの黒鉛製 ダイスに装填して、 真空において 700°Cで放電プラズマ焼結 (S PS) した後、 同温度 にて更に熱間圧延加工を施し、 これを水冷して得られた固化成形材料の平均結晶粒径 d、 ビッカース硬さ Hv、 引張強さ σΒ、 伸び δは表 5のとおリである。
表 5がらみて、 本発明によれば、 固化成形体の引張強さ等の強度特性は、 クロム濃度の 増加とタングステン、 チタン、 モリブデン、 ジルコニウム等の高融点元素の添加により著 しく向上し、 高硬度 ·高強度で強靱なナノ結晶高炭素鉄合金バルク材を製造することがで きることが解る。 表 5
* [対象とする試料の各形成成分の元素状の混合物質から得た、 次の (a) 〜 (g) 組成 のメカニカルァロイング (MA) (雰囲気:アルゴンガス M A時間: 200 h) 処理、 高炭素鉄合金粉末を放電プラズマ焼結 (S P S) した後、 同温度にて更に熱間圧延加工を 施し、 これを水冷して得られた固化成形材料の平均結晶粒径 d、 ビッカース硬さ Hv、 引 張強さび Β及び伸び δ
(a) F eai.zCseC r iS i 2A I 2, ( ) F e 89.2C3.sC r 3S i 2A I 2 ( c ) F e87.2C3.8C r 5 S i zA I 2, (d) F eeasC^C r 10S i 2.5N i 3、 (e) F e8o.5C4C r 10S i 2.5T i 3, ( f ) F e78.5C4C r ,oS i 2.5W3T i 2、 及び (g) F e78.5C4C r10S i 2.5W3M 01Z r 1 (質量%)]
実施例 6 :
鉄、 炭素、 ケィ素、 クロム及びアルミニウムの元素状混合粉末からボールミルを用いた メカニカルァロイング (MA) (雰囲気:アルゴンガス ZM A処理時間: 200 h) 処理 により、 高炭素鉄合金組成の (a) F e8i.2C3.3C r,oS i zA I 3 (質量%) の合金粉末をつ くつた。
次いで、 この合金粉末を真空中にて 750°Cの温度で (a) 圧延、 (b) 熱間等方圧加 圧焼結 (H I P)、 (c ) 押出し、 又は (d) 鍛造による熱間固化成形加工を加え、 これを 水冷処理して得られた固化成形体の平均結晶粒径 d、 ビッカース硬さ Hv、 引張強さ σΒ 及び伸び δは表 6に示すとおりである。
表 6からみて、 本発明によれば、 固化成形温度などの成形条件の適切な選定により、 前 記 Μ Α処理合金粉末を鍛造などの 1プロセスの固化成形処理することにより、 高硬度■高 強度で強靱な優れたナノ結晶高炭素鉄合金バルク材が得られることが解る。 表 6
d Hv σΒ δ
固化成形方式
nm (荷重 10kg) Pa %
a 193 670 1450 11
b 240 708 1505 13
c 202 740 1610 15
d 190 724 1560 14
* [各成分元素の元素状混合物質から得たメカニカルァロイング (ΜΑ) (雰囲気:アル ゴンガス/ Μ Α処理時間: 200 h) 処理 F es,.2C3.8C r10S i 2A I 3 (質量%) 高 炭素鉄合金粉末の次の (a) 〜 (cl) の熱間固化成形 (真空、 750°C) による固化成形 体の平均結晶粒径 d、 ビッカース硬さ Hv、 引張強さび Β及び伸び (5 (a) 圧延、 (b) 熱 間等方圧加圧焼結 (H I P)、 (c) 押出し、 (d) 鍛造]
産業上の利用可能性
前記本発明で得られた高硬度 '高強度で強靱なナノ結晶高炭素鉄合金バルク材は、 下記 のような用途に好適に使用される。
(1 ) ベアリング (軸受) 類
本発明によるナノ結晶高炭素鉄合金バルク材を軸受の回転部に用いると、 前記の強度特 性から、 その使用量を大幅に減らすことができるので、 これにより、 使用材料の節減にな るばかりでなく、 軸受転動体部の遠心力の大きな低下を通じて、 軸受運転時の使用電力を 大きく低減することができる。
(2) 歯車類
歯車の材料に多く用いられている金属材料では、 その表面部 (歯面部) には耐摩耗性を もたせ、 そして内部には強い靱性をもたせるという相矛盾する性質を一つの部品に与える 必要があるため、 この場合は、 歯面部への浸炭などと焼入,焼きもどしとを組み合わせた かなり高度な技術と熟練を要する表面硬化処理が必要となるが、 本発明による、 例えば押 し出し加工で製造した超硬質で強靱な特性を有するナノ結晶高炭素鉄合金バルク材をこれ に用いる場合は、 そのような表面硬化などの処理は不要である。
(3) 熱間加工用工具、 押出工具類
例えば、 高温切削工具材として多く用いられているモリプデン系の高速度鋼のような焼 入れ■焼きもどし材では、 そのマトリックスが昇温域で不安定な焼きもどしマルテンサイ
卜相からなるために、 4 0 0 °C付近の温度以上では急激に軟化する性質をもっている。 し かし本発明によるナノ結晶高炭素鉄合金バルク材は、 そのマ卜リックス自体が安定相から なるため、 そのような温度域で急激な軟^:を示すことはないので、 より優れた熱間加工向 けの工具材料として用いることができる。
また、 本発明によるナノ結晶高炭素鉄合金バルク材は、 上記のような熱的に比較的安定 なマトリックスからなるため、 使用時に熱的変化の激しい押出し工具などにも、 より効果 的に用いることができる。
( 4 ) 医療器具類その他
本発明のナノ結晶高炭素鉄合金バルク材でニッケルを含有しないものは、 人体に皮膚炎 などの疾病をひき起こすことが'なく、 外科医が用いるメス、 医療用低温器具類、 その他一 般用のナイフ、 工具類の材料としても有望といえる。 本発明によれば、 高炭素鉄合金材料の形成成分の元素状混合物質又は溶製したねずみ鏡 鉄などの物質をメカニカルァロイング (M A) 又はメカニカルミリング (M M) 処理する ことにより、 母相のフェライ卜粒がナノサイズまで超微細化される上、 同フェライ卜相内 にさらに微細なナノサイズの炭化物、 炭窒化物、 黒鉛などが粒状ないし球状に近い粒子と して分散 ·析出するため、 通常の溶解法では達成できないナノサイズレベルでの結晶粒微 細化強化と炭化物、 炭窒化物などの分散■析出による強化に加え、 黒鉛のもつ特性が賦与 された優れたナノ結晶高炭素鉄合金材料の製造が実現できる。
また本発明によれば、 M A又は M Mの出発原料におけるクロム量の増加又は同原料への モリプデン、 バナジウム、 タングステンなどの高融点元素の添加にょリ、 母相のフェライ 卜粒内において、鉄の炭化物(セメンタイ卜)へのこれらの高融点元素が溶解した状態(複 炭化物の生成) からクロム、 バナジウムなどをベースにした超硬質の特殊炭化物などをナ ノサイズの超微細粒として分散ないし析出した状態にすることによつて、 極めて高硬度で 強靱なナノ結晶高炭素鉄合金粉末材料が得られ、 また同粉末を固化成形することにより、 このようなナノ結晶組織を保持した状態で、 高硬度 ·高強度で強靱な上、 さらに同結晶組 織内に存在する黒鉛のもつ特性により優れた耐摩耗性、 耐熱衝撃性、 被削性等を兼ね備え たナノ結晶高炭素鉄合金バルク材を容易に製造することができる。
さらに、 本発明によれば、 ナノ結晶高炭素鉄合金粉末の熱間固化成形において、 同粉末 の固化成形温度への加熱にマイクロ波による急速加熱方式を適用すれば (誘電体物質でな くても、 金属の場合でも粉末であれば、 マイクロ波加熱 (m i c r o w a v e h e a t i n g ) が適用できる)、 その加熱過程での結晶粒の成長を抑制してナノ結晶高炭素鉄合 金バルク材料の製造をよリ効果的に行うことができる。
また、 ナノ結晶高炭素鉄合金材料においては、 その結晶粒の大きさ、 組成などの適当な 選択により、 超塑性が発現され、 この現象は、 M A粉末の固化成形プロセスに効果的に適
用できる c