明 細 書
骨疾患の予防及び Z又は治療用組成物、その組成物を含有する機能性 食品もしくは健康食品、並びにその組成物を有効成分とする医薬製剤
技術分野
[0001] 本発明は、生薬成分由来のフラボノイドのうち、下記式 (I)で表されるフラボン類の 用途に関する。より詳細には、下記式 (I)で表されるフラボン類、又は生理学的に許 容されるこれらの塩若しくは水和物を少なくとも 1種以上含有してなる健康食品、機能 性食品、骨疾患の予防及び Z又は治療効果を有する医薬組成物、並びに前記医薬 組成物を有効成分として含有する医薬製剤に関する。
[0002] [化 1]
■ ■ ■式 ( I )
[0003] (式中、
R
5及び R
6はそれぞれ水素原子又は水酸基を表し、 R
4は水素原 子、水酸基及びメトキシ基からなる群から選ばれる官能基を表す。ここで、 R
1 R
2、 R
3 及び R
5が水酸基である場合には、それらのうちのいずれかに糖が結合して配糖体を 形成していてもよい。なお、 R
1— R
6が同時に水素原子となることはない。 ) o 背景技術
[0004] 骨疾患は、外傷性骨折や疲労骨折等の外因性疾患と、骨多孔症、骨粗鬆症、高力 ルシゥム血症、高副甲状腺ホルモン(以下、「PTH」ということがある。)血症、骨ぺー ジェット病、関節炎、リウマチ、乳ガンの骨転移、骨軟化症、悪性腫瘍その他の疾病 に起因する骨組織の脆弱化、及び栄養障害による骨組織の脆弱化とに大別される。
[0005] ヒトの骨は、骨芽細胞と破骨細胞とによる再形成と吸収とを絶えず繰り返している。
このため、骨芽細胞による骨形成を破骨細胞による骨吸収が上回ったときに、骨組織 の脆弱化が生じて上記のような骨多孔症や骨粗鬆症をはじめとする内因性の骨疾患
が生じるといわれている。
[0006] こうした内因性の骨疾患の中でも、骨多孔症や骨粗鬆症は高齢化社会の進展に伴 つて増加しつつある。また、食生活の変化と運動量の低下に伴って、カルシウムの摂 取量の低下や骨組織への定着率の低下が生じ、骨組織の脆弱化が加速されて 、る
[0007] 骨折は、骨糸且織のある部分の連絡が外力によって断たれた状態を 、、骨折部位 に著明な疼痛を伴う。健常人の場合には、例えば、交通事故等によって力なり大きな 外力がかからない限り骨折は起こらないが、骨量が低下して骨組織が弱くなると、歩 V、たり走ったりして 、る最中にころんだ等、さほど大きくな 、外力がかかっただけでも 骨折が起こる。また、上記のような骨粗鬆症や骨多孔症等の内因性の疾患に起因し て骨量が低下している場合には、階段で躓いたり、咳込んだりしたときにかかるわず かな外力によっても骨折が生じるようになる。
[0008] 骨折が起こると、一般的には、ずれている骨の位置を牽引等によって修正し、ボル トゃピンで固定できる場合には固定し、その後は患者の自然治癒力に委ねるという治 療方法が採用されている。
[0009] 一方、骨多孔症や骨粗鬆症の内因性の疾患では骨の石灰質と骨基質とがともに減 少しているため自然治癒が遅れ、高齢者の場合にはその間に骨折部位以外の関節 が固まって動かなくなり、寝たきりになると 、つたケースも少なくな!/、。
[0010] 特許文献 1:特許出願平 10— 372842
特干文献 1 : Molteni, A., et al.: In vitro hormonal effects of soybean lsoflavones, J. Nutr. 125, 3S, 751 (1995).
非特許文献 2 : Anthony, M.S., et al.: Soybean isoflavones improve cardiovascular risk factors without affecting the reproductive system of peripubertal rhesus monkeys, J. Nutr. 126, 43 (1996).
非特許文献 3 :奥田拓男:フラボノイド、天然物化学改訂第 2版 (三橋博他編)、 p.203 、(南江堂、 1986)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0011] したがって、骨折の治療において治癒に要する期間を短縮することについては、強 い社会的な要請がある。そして、医薬品として使用するためには、治療効果が高いも のであると同時に、副作用が少な!/、等の安全性の高 、ものでなければならな!/、。
[0012] 従来は、活性型ビタミン D、カルシトニン及びその誘導体や、エストラジオールを初
3
めとするホルモン剤、各種のカルシウム製剤等が臨床的に使用されてきた。
[0013] しかし、こうした薬剤は吸収や代謝の関係から経口投与ができない場合もあり、また
、受容体レベルの個人差が大きいために効果の予見性に欠けるといった問題もあつ た。このため、これらに代わる新たな治療剤が求められていた。
[0014] 一方、骨疾患の患者数を減少させる最も有効な手段は、骨疾患の予防である。一 般的には、疾患の予防は、どの程度疾患の発症に近い段階にあるかによって、予防 用医薬製剤の投与、機能性食品等の食品の摂取等が行われる。
[0015] 骨疾患においても、上述したように発症した患者に対する治療手段ば力りでなぐ 未発症者又は健常人が罹患しないようにするための有効な予防手段に対する社会 的な要請がある。
課題を解決するための手段
[0016] 本発明は、上記のような状況の下で、完成されたものである。すなわち、本発明の 発明者らは、安全性の高さに留意しつつ、古くから生薬として使用されてきた植物に 含まれる成分を中心として、骨吸収抑制作用を有する化合物のスクリーニングを進め た結果、公知の化合物に従来全く知られていなかった活性があることを見出し、本発 明を完成したものである。
[0017] こうしたスクリーニングの結果、カテキンとフラボノールに、破骨細胞の分ィ匕を阻害 する活性があることが明らかになった。しかし、上記の化合物は阻害活性が低力つた り、細胞の DNAを損傷するといつた問題点があり、医薬品や食品成分として使用す ることには適さないものであった。
[0018] 一方、ダイゼイン(Daidzein)、グリシチン(Glycitin)、及びゲニスチン(Genistein)等 の大豆由来のイソフラボン類に女性ホルモン様作用があることが見出され、これらに は心筋梗塞を予防する作用があることが報告されて 、る (非特許文献 1及び 2)。
[0019] また、フラボン類にっ 、て見ると、生薬であるォゥゴン(Scutellariae radix)由来のフ
ラボノイドであるバイカレイン(Baicalein)、ォゥゴニン (Wogonin)等には、培養細胞に おける血管平滑筋細胞の増殖抑制作用があることが知られて 、る(特許文献 1)。
[0020] さらに、ルテオリン (luteolin)、ァピゲニン(apigenin)等のフラボン類を食品成分とし て摂取すると、血液、循環器、消化器等の代謝性疾患を予防するということが報告さ れている (非特許文献 3)。
[0021] しかし、上記のようなフラボン類が破骨細胞の活性を抑制するや骨吸収抑制効果を 有することにつ 、ては、これまで報告されたものはな 、。
[0022] 本発明の発明者らは、以上のような状況の下で、破骨細胞による骨吸収を抑制す る化合物のスクリーニングを進め、こうした作用を持ち、かつ安全性が高い、天然由 来の化合物を見出し、本発明を完成したものである。
[0023] すなわち、本発明は、少なくとも 1種以上の下記式 (I)で表される化合物、又はこれ らの生理学的に許容される塩、水和物若しくは配糖体を含有してなる骨疾患の予防 及び Z又は治療用医薬組成物である。
[0024] [化 2]
[0025] 式中、 R
1— R
6はそれぞれ水素原子、水酸基及びメトキシ基カもなる群力も選ばれる 基を表す。ここで、 R
1又は R
3には糖又はその誘導体が結合していてもよぐ
R 3及び R
5が水酸基である場合には、それらのうちのいずれかに糖が結合して配糖体を 形成していてもよい。前記糖は、グルコース、アビオース グルコース、及びダルコピ ラノシドウロン酸力もなる群力も選ばれる糖である。なお、 R
1— R
6が同時に水素原子と なることはない。
[0026] ここで、上記式 (I)で表される化合物は、下記式 (II)で表される化合物、又はこれら の生理学的に許容される塩、水和物若しくは配糖体、
[0027] [化 3]
式 (II)
[0028] 下記式 (III)で表される化合物、又はこれらの生理学的に許容される塩、水和物若し くは配糖体、
[0029] [化 4]
■ ■ ■式 (III)
[0030] 下記式 (IV)で表される化合物、又はこれらの生理学的に許容される塩、水和物若し くは配糖体、
[0031] [化 5]
式 (IV)
[0032] 及び下記式 (V)で表される化合物、又はこれらの生理学的に許容される塩、水和物 若しくは配糖体
[0033] [化 6]
[0034] 力 なる群力 選ばれる少なくとも 1種以上の化合物、又はこれらの生理学的に許容 される塩若しくは水和物を含有してなるものであることが好まし!/、。
[0035] さらに、上述したィ匕合物、又はこれらの生理学的に許容される塩若しくは水和物を 2 種以上混合して組成物とする場合には、上記式 (I)一 (V)の化合物、又はこれらの生 理学的に許容される塩若しくは水和物を含有するものとすることが好ましい。
[0036] また、本発明は、上述した医薬組成物を有効成分とする骨疾患の予防及び Z又は 治療用医薬製剤である。
[0037] ここで、前記骨疾患の予防及び Z又は治療用医薬製剤中における前記有効成分 の含量は、製剤の 1用量当たり 0. 1— lOOmgであることが好ましぐ 0. 1— 50mgで あることがより好ましぐ 0. 3— lOmgであることが特に好ましい。
[0038] また、前記骨疾患の予防及び Z又は治療用医薬製剤は、経口投与可能な剤形で あることが好ましぐ錠剤、散剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、トローチ剤、及び液剤 力 なる群力 選ばれるものであることが好ましい。
[0039] ここで、前記骨疾患は、内因性骨疾患、外因性骨疾患、又は栄養障害の 、ずれに 起因するものであってもよぐ前記内因性骨疾患の場合には、骨多孔症、骨粗鬆症、 高カルシウム血症、高 PTH血症、骨ページエツト病、関節炎、リウマチ、乳癌の骨転移 、骨軟化症、悪性腫瘍、及び栄養障害カゝらなる群カゝら選ばれる疾患に起因する骨組 織の脆弱化に起因するものである場合に、本発明の骨疾患の予防及び Z又は治療 用医薬製剤を好適に使用することができる。また、前記外因性骨疾患の場合には、 外傷性骨折又は疲労骨折等の場合に好適に使用することができる。
[0040] 本発明はまた、上述したィ匕合物、それらの生理学的に許容される塩、それらの配糖 体及び水和物からなる群力 選ばれるものを含む組成物を含有してなる機能性食品
である。
[0041] 機能性食品に添加するものとしては、上述したィ匕合物、それらの生理学的に許容さ れる塩、それらの水和物及び配糖体のうち、それらの生理学的に許容される塩及び 水和物からなる群力 選ばれるものであることが好ましぐナトリウム塩、カリウム塩、ァ ンモ -ゥム塩、マグネシウム塩及びこれらの一水和物又は二水和物力 なる群力 選 ばれるものであることがさらに好ましい。
[0042] 上記の機能性食品はまた、骨疾患の予防及び Z又は治療を補助するために使用 されるものであることが好ましい。ここで、前記化合物、それらの生理学的に許容され る塩、配糖体及び水和物からなる群力も選ばれるものの含有量は、 lOOg当たり 0. 1 一 5mgであることが好ましぐ 0. 1一 3mgであることがより好ましい。これらの含有量を 0. 3— lmgとすると、骨疾患の予防及び Z又は治療を補助する効果が最も高くなる
[0043] 上記健康食品は、骨疾患の予防及び Z又は治療を補助するために使用されるもの であることが好ましい。前記化合物、それらの生理学的に許容される塩、配糖体及び 水和物からなる群力 選ばれるものの含有量は、 lOOg当たり 0. 1— 5mgであること 力 S好ましく、 0. 1— 3mgであることがより好ましい。これらの含有量を 0. 3— lmgとす ると、骨疾患の予防及び Z又は治療を補助する効果が最も高くなる。
発明の効果
[0044] 本発明によれば、優れた破骨細胞形成の抑制作用並びに骨吸収抑制作用を有す る、機能性食品、健康食品、骨疾患の予防及び Z又は治療用医薬組成物、健康食 品、骨疾患の予防及び Z又は治療剤が提供される。
図面の簡単な説明
[0045] [図 1]図 1は、 50ng/mLの破骨細胞分化誘導因子(ODF/RANKL)で刺激した M φ
RAW264細胞株に対するルテオリンの濃度依存的破骨細胞分化抑制効果を示す図 である。
[図 2]図 2は、 50ng/mLの ODF/RANKLで刺激したマウス骨髄由来 Μ- CSF依存性細 胞に対するルテオリンの濃度依存的破骨細胞分化抑制効果の結果を示す図である
[図 3A]図 3Aは、 M φ RAW264細胞株カゝら形成されたァクチンリングをルテオリン非存 在下で 1日培養後、 TRAP染色法による確認と顕微鏡観察を行った結果を示す図面 代用写真である。
[図 3B]図 3Bは、 M φ RAW264細胞株から形成されたァクチンリングをルテオリン 3 μ Μ 存在下で 1日培養後、 TRAP染色法による確認と顕微鏡観察を行った結果を示す図 面代用写真である。
[図 3C]図 3Cは、 M φ RAW264細胞株から形成されたァクチンリングをルテオリン 10 μ Μ存在下で 1日培養後、 TRAP染色法による確認と顕微鏡観察を行った結果を示す 図面代用写真である。
[図 3D]図 3Dは、 M φ RAW264細胞株から形成されたァクチンリングをルテオリン 30 μ Μ存在下で 1日培養後、 TRAP染色法による確認と顕微鏡観察を行った結果を示す 図面代用写真である。
[図 4A]図 4Aは、マウス骨髄由来 M-CSF依存性細胞カゝら形成されたァクチンリングを ルテオリン非存在下で 1日培養後、 TRAP染色法による確認と顕微鏡観察を行った結 果を示す図面代用写真である。
[図 4B]図 4Bは、マウス骨髄由来 M-CSF依存性細胞力も形成されたァクチンリングを ルテオリン 3 M存在下で 1日培養後、 TRAP染色法による確認と顕微鏡観察を行つ た結果を示す図面代用写真である。
[図 4C]図 4Cは、マウス骨髄由来 M-CSF依存性細胞から形成されたァクチンリングを ルテオリン 10 M存在下で 1日培養後、 TRAP染色法による確認と顕微鏡観察を行つ た結果を示す図面代用写真である。
[図 4D]図 4Dは、マウス骨髄由来 M-CSF依存性細胞力も形成されたァクチンリングを ルテオリン 30 M存在下で 1日培養後、 TRAP染色法による確認と顕微鏡観察を行つ た結果を示す図面代用写真である。
[図 5A]図 5Aは、象牙切片上にマウス骨髄細胞と骨芽細胞との共存培養から調製し た破骨細胞をルテオリン非存在下で 12時間培養した後の、骨吸収窩 (ピット)の形成 を示す図面代用写真である。
圆 5B]図 5Bは、象牙切片上にマウス骨髄細胞と骨芽細胞との共存培養力も調製し
た破骨細胞をルテオリン 10 Mの存在下で 12時間培養した後の、骨吸収窩 (ピット) の形成を示す図面代用写真である。
[図 6]図 6は、マウス骨髄細胞と骨芽細胞との共存培養力 調製した破骨細胞に対す るルテオリンの濃度依存的ピット形成抑制効果の結果を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
[0046] 以下に、本発明をさらに詳細に説明する。本発明の骨疾患の予防及び/又は治療 用医薬組成物に含まれる化合物、又はこれらの生理学的に許容される塩、水和物若 しくは配糖体は、フラボノイドに属し、下記式 (I)で表される、フラボン類と称される化 合物である。
[0047] [化 7]
■ ■ ■式 ( I )
[0048] 式中、
R
5及び R
6はそれぞれ水素原子又は水酸基を表し、 R
4は水素原 子、水酸基及びメトキシ基からなる群から選ばれる官能基を表す。ここで、 R
1 R
2、 R
3 及び R
5が水酸基である場合には、それらのうちのいずれかに糖が結合して配糖体を 形成していてもよい。なお、 R
1— R
6が同時に水素原子となることはない。
[0049] フラボノイドは、植物界に広く分布する、フエニルクロマン環に近い C C C炭素
6 3 6 骨格を有する化合物群の総称である。代表的な化合物群としては、フラボン、イソフ ラボン、フラボノール、フラバノン、フラバン、フラバン 3,4—ジオール、フラバン 3—才 ール、アントシァ-ジン、ネオフラバノイド、オーロン、カルコン、ジヒドロカルコン等が 知られている。
[0050] フラボン類は、フラボンの骨格に、ヒドロキシル基、メトキシ基が結合した一群の化合 物及びアルコキシ誘導体を含む物質群をいう。フラボン類は、その大部分が配糖体と して高等植物及び下等植物のほぼ全組織に分布している。フラボン類は、それ以外 のフラボノイドと異なり、 O—グリコシドの他に、 Cーグリコシドが存在することが知られて
いる
[0051] 上記式 (I)で表される化合物又はこれらの生理学的に許容される塩、水和物若しく は配糖体としては、例えば、下記式 (II)で表されるルテオリン、
[0052] [化 8]
式 (II)
[0053] 下記式 (III)で表されるバイカレイン
[0054] [化 9]
式 (III)
[0055] 下記式 (IV)で表されるァピゲニン
[0056] [化 10]
式 (IV)
[0057] 及び、下記式 (V)で表されるォゥゴニン
[0058] [化 11]
[0059] 又はこれらの生理学的に許容される塩、水和物若しくは配糖体を挙げることができる
。これら以外にも、下記表 1に示すィ匕合物を例示することができる。
[0060] [表 1]
各部位に結合する官能基
化合物名 化学式 分子量 ·
Ri R3 Re ルテオリン ΙδΗΐθΟβ 286.24 -OH - -OH ― -ΟΗ -ΟΗ シナロシド C2iri2oOn 448.38 -OH - β—D—グルコース— 0— -ΟΗ -ΟΗ ガルテオリン θ21Π2θΟΐ1 432.38 /3—グルコース一 0— ― 一 OH ― -ΟΗ 一 ΟΗ ピゲニン 15H10O5 270.24 -OH ― -OH - -ΟΗ ― ァピゲ卜リン Ο21ίΐ2θ0ΐ0 432.38 -OH ― 3— D—グルコース— 0— - -ΟΗ 一 アビイン C26H2sOl4 564.49 -OH ― アビ才シルグルコ一ス _ 0— ― -ΟΗ - バイカレイン 15H 270.24 ― ― - バイカリン C21H18O11■ H20 464.38 -OH -OH —β—ダルコビラノシドウロン酸 - - ― ォゥゴニン C 16H12O5 286.24 -OH -OCH3 -ΟΗ - ― -
[0061] ルテオリンはマメ科の針葉樹 Aspalathus linealisの葉(ルイボス茶)と小枝、ァピゲ- ンはイネ科コゥリヤン(高粱、 Sorghum nervosum)の実もしくは殻、バイカレインとォゥ ゴ-ンはコガネバナ(Labiatae Scutellaria baicalensis Georgi)の根に豊富に含まれる フラボン類である。また、アビインはパセリやセロリの葉中に、ガルテオリンはスギナの 葉中に含まるフラボン類である。
[0062] これらの生理学的に許容される塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アン モニゥム塩等を挙げることができる。水和物としては、例えば、一水和物、二水和物 等を挙げることができる。また、配糖体を形成するために結合する糖としては、例えば 、グルコース、マンノース、ダルコビラノース、ァピオース グルコース(ァピオシルグル コース)等を挙げることができ、配糖体としては、例えば、ルテオリン 7—ダルコシド及 び上記表 1及び 2に示すァピゲニンの配糖体であるァピゲトリン(7— D—グリコシルァ ピゲニン)、アビイン(ァピゲニン 7—アビオシルダルコシド)等を挙げることができる。
[0063] 上述した各種のフラボンは、単独で本発明の医薬組成物の製造に使用することも でき、必要に応じて 2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。また、これらの化 合物、又はこれらの生理学的に許容される塩、水和物若しくは配糖体を含有する生 薬を、単独で又は 2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。
[0064] こうした生薬としては、例えば、ォゥゴン (Scutellariae radix)、黄耆等を挙げることが できる。
[0065] 上述した、式(II)で表されるルテオリン、式(III)で表されるバイカレイン、式(IV)で 表されるァピゲニン、式 (V)で表されるォゥゴニン等のフラボン類は、公知の方法又 はそれに準ずる方法によって製造し、入手してもよぐ市販品を購入して使用してもよ い。
[0066] また、上記のフラボン類は、植物材料力 抽出、単離することによって入手すること もできる。例えば、植物材料からルテオリンを単離する方法の 1例を示す。
[0067] 細切したマメ科の針葉樹 Aspalathus linealis (ルイボス茶)の葉に含水メタノール又 は含水エタノールを加えて抽出物を得る。得られた抽出物水に溶解したのち、石油 エーテル、ベンゼン等の低極性溶媒を用いて脱脂する。ついで、ブタノールで抽出 することにより、ブタノール相にルテオリン及びその類縁ィ匕合物が抽出される。ここで
、ルテオリンの類縁ィ匕合物には、ルテオリンの生理学的に許容される塩、水和物若し くは配糖体が含まれる。
[0068] 以上のようにして抽出されたルテオリン及びその類縁ィ匕合物は、粗精製物のまま使 用することもできるが、必要に応じてさらに精製して精製標品を得ることもできる。この 精製は常法によって行うことができる。例えば、シリカゲルを固定相とし、クロ口ホルム
Zメタノールを移動相とし、移動相中のメタノール含量を順次上げるステップグラジェ ントカラムクロマトグラフィーによって、ルテオリン及びその類縁ィ匕合物をそれぞれ溶 出させ、精製し、黄色の針状結晶又は黄色の柱状結晶等として得ることができる。
[0069] 上述したバイカレイン、ァピゲニン、ォゥゴニンその他の上記式 (I)で表される化合 物、又は生理学的に許容される塩、水和物若しくは配糖体も同様にして抽出、精製 することができる。
[0070] 以上のようにして得られた上記式 (I)で表される化合物、又は生理学的に許容され る塩、水和物若しくは配糖体は、以下のようにして医薬組成物とすることができる。
[0071] ルテオリンを単独で医薬組成物とする場合には、上述したように得られた結晶を常 法に従って処理し、後述する賦形剤等と混合し、医薬組成物とすればよい。
[0072] また、ルテオリンとバイカレインとを組み合わせて使用する場合には、ルテオリン 1に 対してバイカレインを 0. 1— 10の割合として適宜混合し、この混合物をルテオリン単 独の場合と同様にして医薬組成物とすればよい。
[0073] これらの医薬組成物を有効成分とする医薬製剤としては、注射剤、坐剤、エアゾー ル剤、経皮吸収剤その他の非経口剤、錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、 液剤その他の経口剤等を挙げることができる。ここで、上記の錠剤には、糖衣錠、コ 一ティング錠、ノ ッカル錠が含まれ、カプセル剤には、硬カプセル剤、軟カプセル剤 の双方が含まれる。また、顆粒剤には、コーティングされた顆粒剤も含まれる。また、 上記の液剤には、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等が含まれ、シロップ剤に はドライシロップも含まれる。
[0074] なお、上述した各製剤には、徐放ィ匕されていないものば力りでなぐ徐放化されたも のち含まれる。
[0075] こうした製剤は、公知の製剤学的製法に従い、製剤の製造に際して薬理学的に許
容され得る日本薬局方に記載の担体、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤等を用いて 製造することができる。
[0076] こうした担体ゃ賦形剤としては、例えば、乳糖、ブドウ糖、白糖、マン-トール、馬鈴 薯デンプン、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシゥ ム、結晶セルロース、カンゾゥ末、ゲンチアナ末等を挙げることができる。
[0077] 結合剤としては、例えば、デンプン、トラガントゴム、ゼラチン、シロップ、ポリビニル アルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース 、メチルセルロース、ェチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げること ができる。
[0078] 崩壊剤としては、例えば、デンプン、寒天、ゼラチン末、カルボキシメチルセルロー スナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、炭酸カルシゥ ム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウムなど、滑沢剤としては例えばステアリン 酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール等を使用することができる。
[0079] 着色剤、医薬品に添加することが許容されているものであれば使用することができ 、特に限定されない。また、これら以外に、矯味剤、矯臭剤等も、必要に応じて適宜 使用することができる。
[0080] 錠剤又は顆粒剤とする場合には、必要に応じて、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピ ルセルロース、精製セラック、ゼラチン、グリセリン、ソルビトール、ェチルセルロース、 ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリ ドン、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、 メチルメタタリレート、メタアクリル酸重合体等を用いてコーティングしても良ぐ複数層 でコーティングすることちできる。
[0081] さらに、顆粒剤や粉剤をェチルセルロースやゼラチンのようなカプセルに詰めて力 プセル剤とすることもできる。
[0082] 上記の化合物、又はそれらの生理学的に許容される塩、水和物及び配糖体を用い て、注射剤を調製する場合は、必要に応じて、 pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、可溶 ィ匕剤などを添加することもできる。
[0083] 上述したような骨疾患予防及び Z又は治療剤を患者に投与する場合には、投与量
は、患者の症状の重篤さ、年齢、体重、及び健康状態等の諸条件によって異なる。 一般的には、成人 1日当たり lmg/kg— 2,000mg/kg、好ましくは lmg/kg—
l,000mg/kg程度を、経口又は非経口的に、 1日 1回若しくはそれ以上の回数にわた つて投与すればよい。上記のような諸条件に応じて、投与の回数及び量を適宜増減 すればよい。
[0084] ルテオリン単独、またはルテオリンと他のフラボン類、例えば、ノイカレインとを含有 する医薬組成物が有効成分として製剤中に含まれる場合には、当該組成物中にお けるルテオリンの含有量は、 0.1— lOOmgであることが好ましぐより好ましくは 0.1— 50mg、さらに好ましくは 0.3— 10mgである。
[0085] 有効成分であるルテオリンや他のフラボン類の含有量が下限値未満では骨吸収抑 制作用が十分に発揮されず、逆に上限値を越えて添加しても、添加量に見合う効果 が発揮されない。また、上限値を越えると、投与時に細胞毒性が発揮されることがあり 、生体に対して望ましくない副作用を惹起するおそれがあることによる。
[0086] 上述した本発明の組成物を必要に応じて適宜添加することにより、骨疾患の予防 及び/又は治療効果を有する機能性食品、若しくは健康食品を提供することができる
[0087] 本明細書において、「機能性食品」とは、その食品自体が本来含有している栄養素 によって、その食品を摂取した者に供与できる以上の利益を与え得る成分を含有す る食品をいう。
[0088] また、「健康食品」とは、健康の維持'増進に役立つ成分を抽出し、製造した粗生成 物又は精製物を主成分とする粉末、顆粒剤、錠剤、カプセル剤をいい、日頃不足し 力 Sちな栄養成分の摂取を補助するサプリメントも含むものとする。
[0089] 本発明の組成物は、例えば、パン、クッキー及びビスケット、米飯添加用麦及び雑 穀、うどん、そば、パスタその他の麵類、チーズ、ヨーグルトその他の乳製品、ジャム、 マヨネーズ、味噌、醤油その他の大豆製品、茶、コーヒー及びココア、清涼飲料、果 実飲料その他の非アルコール性飲料、薬用酒その他のアルコール性飲料、キャンデ ィー、チョコレートその他のスナック菓子、チューインガム、せんべい、羊羹その他の 大豆を原料とする菓子等に添加して、機能性食品とすることができる。
[0090] なお、上記のヨーグルト、醤油、飲料等に添加する場合には、これらの中で本発明 の組成物が結晶化して沈殿しないようにするために、溶解助剤や安定化剤を適宜カロ 免ることちでさる。
[0091] また、本発明の組成物を単独で、又は 2種以上を混合し、常法に従って粉剤、顆粒 剤、錠剤、カプセル剤とすることにより、健康食品とすることができる。
[0092] ここで、本発明の組成物を粉末とするためには、生成過程で得られた抽出物を濃 縮し、凍結乾燥、スプレードライ、真空乾燥等の方法を用いて乾燥させ、サンプルミ ル、プレンダー、ミキサー等によって乾燥固体を粉砕すればよい。また、必要に応じ て、コーンスターチ、馬鈴著デンプン、デキストリン、シクロデキストリン、牡蠣殻粉末 などを添カ卩してもよい。
[0093] また、上記のようにして得た粉末に、適宜、上述した結合剤をカ卩えて打錠し、錠剤と することもできる。錠剤とした後に、上述した白糖又はゼラチン等のコーティング剤を 用いて、糖衣錠としてもよぐ他のコーティング剤を用いて腸溶剤等にすることもでき る。
[0094] さらに、上述のようにして得た粉末を常法に従って顆粒とし、顆粒剤を製造すること もできる。また、上記の粉末や顆粒を上述したカプセルに適当量充填することによつ て、カプセル剤とすることもできる。
実施例
[0095] 以下に、本発明について、実施例を挙げてさらに詳細に説明する力 本発明はこ れらの実施例に限定されるものではない。
[0096] (実施例 1)
(1 - 1)破骨細胞形成試験
破骨細胞形成試験には、破骨細胞様細胞に分化する、マクロファージ RAW264 細胞株(理化学研究所、 cell番号 RCB0535、以下、「Μ φ RAW264Jということがある。 ) を使用した。 M () RAW264の培養には、 10%のゥシ胎児血清 (旭テクノグラス株式会 社(IWAKI)、カタログ番号 IWK- 500)を含む a -MEM (INVITROGEN社製、カタログ 番号 11900-024)を使用した。また、破骨細胞分ィ匕誘導因子(ODF/RANKL)は PEPRO TECH INC社製、カタログ番号 310- 01を使用した。
[0097] ルテオリンは、和光純薬工業株式会社製、カタログ番号 129-04001を使用した。ま た、 96ウェルマイク口プレート及び直径 100mmのディッシュは、 INVITROGEN社製、力 タログ番号 161093及び 172958をそれぞれ使用した。
[0098] エタノール、アセトン、ホルムアルデヒド、塩ィ匕ナトリウムは和光純薬工業 (株)より購 入して使用した。
[0099] (1 2)破骨細胞形成試験 I
骨吸収の抑制を評価する in vitro試験法として、 M φ RAW264細胞株からの破骨細 胞形成試験を行った。破骨細胞試験の評価は、初期分ィヒマーカーである酒石酸耐 性酸ホスファターゼ (TRAP)活性の測定と TRAP染色とによって行った。これら 2つの 指標を用いることにより、 M φ RAW264細胞の破骨細胞への分化に対するフラボン類 の活性を定量的に評価することができる。
[0100] M φ RAW264細胞株を 10%のゥシ胎児血清(FBS)を添加した α— MEM培地(以下、 「10%FBS-MEM」ということがある。)に懸濁し、 100mm径のディッシュに I X 105 cells/lOmLで接種し、 5%CO 存在下、 37°Cにて 3日間培養し、ディッシュ内で当該
2
細胞が集密的(confluent、コンフルェント)になっていることを確認して培養を終了し た。ついで、その後、コンフレントになった細胞をディッシュから 0.05%のトリプシン、 0.53mMの EDTAを含むハンクスバッファー(0.05% Trypsin- 0.53 mM EDTA/HBSS ( INVITROGEN社製、カタログ番号 25300-054)で処理してはがし、 10%FBS-MEMに 懸濁して、 96ウェルマイク口プレートの各ゥエルに 0.4 X 104 cells/0. lmLで接種し、上 記と同様の条件で 1日間培養した。
[0101] 破骨細胞分化誘導因子 (ODF/RANKL)を 10%FBS-MEMに溶解し、 100ng/mLの溶 液を調製した。また、ルテオリンを 10mMの濃度でメタノールに溶解したものを、ストツ ク溶液として調製し、 20°Cで保管した。ルテオリンによる処理を行うに際して、ストツ ク溶液を希釈し、処理濃度のそれぞれの 100倍濃度(3mM、 lmM、 300 M、 100 、及び 3 /z M)の溶液を調製し、溶媒の終濃度が 1%未満になるように、各ゥエルに(2 μ Lずつ)添加した。対照群には、等量のメタノールを添加した。以下の実験で使用 したルテオリンは、上記の各濃度の溶液を使用した。
[0102] ODF/RANKLを 96ゥエルすべてに O.lmLずつ添カ卩(RANKLの終濃度 50ng/mL)す
るとともに、ルテオリン溶液をゥエルに添加した (ルテオリンの終濃度は、それぞれ、
0.3 M、 1 M、 3 M、 10 μ Μ及び 30 μ Μ)。対照群となるゥエルには、ルテオリンを 含まな!/、メタノールを等量添加した。
[0103] 5%CO 存在下、 37°Cにて 3日間培養した後に、酒石酸耐性酸ホスファターゼ(
2
TRAP)活性を以下のようにして測定した。
96ウェルマイク口プレートの各ゥエルの培養液を捨て、このプレートをリン酸緩衝生 理食塩水溶液(PBS)で洗浄したのち、 10%ホルムアルデヒドを含有する PBS (以下、「 10%HCHO-PBS」ということがある。)を各ゥ ルに満たし、細胞を室温で 15分間固定 した。さらに、エタノール アセトン溶液(1 : 1)を用いて室温で 1分間固定した。固定 終了後、固定液を捨て、室温で乾燥させた。乾燥後、各ゥエル内における細胞の酒 石酸耐性酸ホスファターゼ活性の測定 (以下、「TRAPアツセィ」ということがある。)と、 染色とを行った。
[0104] 培養細胞内の TRAP活性の測定は、 3.7mMの p—-トロフエノールーリン酸水素ニナト リウム及び 10mMの酒石酸を含有する 50mMのクェン酸緩衝液 (pH4.6)を用いて行つ た。この緩衝液を各ゥエル当たり、 O.lmLずつ添カ卩し、 37°Cで 30分間反応させた。 30 分後に、 0.1Mの NaOHを O.lmLずつ添加することにより反応を停止させ、遊離した p— ニトロフ ノールを分光光度計 (大日本製薬 (株)製)を用いて、測定波長 405nmで測 し 7こ。
[0105] 尚、破骨細胞形成試験の結果は、対照群 (コントロール)の TRAP活性を 100としたと きの対照群に対する相対値 (%)で表した。
[0106] さらに、細胞内の酒石酸耐性酸ホスファターゼの状態を TRAP染色法により確認し た。 TRAP染色液は基質として Naphtol AS- MX phosphate(SIGMA社製、カタログ番号 N- 4875)5 mgを 0.5 mlの Ν,Ν-ジメチルホルムアミドに溶解し、さらに、色素として Fast red violet LB salt(SIGMA社製、カタログ番号 F-1625)30 mgを 50 mlの 50 mM酒石酸 ナトリウム /0.1 M酢酸ナトリウム緩衝液 (pH 5.0)に溶解したものを合わせて使用した。 すなわち、 TRAPアツセィの場合と同様に、培養後、培地を除去した。 PBSで細胞層を 洗浄したのち、 10%HCHO-PBSを用いて細胞を室温で 15分間固定した。ついで、ェ タノ一ルーアセトン溶液(1 : 1)を用いて室温でさらに 1分間固定した。固定終了後、固
定液を捨て、室温で乾燥させた。乾燥後、 TRAP染色液 (を加え、室温にて 20— 30分 間染色した。染色後、染色液を捨て、流水により洗浄し、乾燥させた後、顕微鏡で観 察した。結果を図 1に示す。
[0107] 図 1中、破骨細胞形成試験 Iの結果で得られた細胞内の TRAP活性の測定結果を 、黒い棒グラフとして示した。図 1から明らかなように、ルテオリンの添カ卩によって濃度 依存的に TRAP活性が抑制されることが示された。このことから、ルテオリンによって M () RAW264細胞からの破骨細胞形成が抑制されることが明らかになった。
[0108] (実施例 2)増殖細胞数測定試験
(2—1)材料等
細胞株、培地、血清、 96ウェルマイク口プレート、直径 100mmのディッシュ、ルテオリ ン等は、実施例 1で使用したのと同様のものを使用した。破骨細胞分化誘導因子 (ODF/RANKL)の 10%FBS-MEM溶液、及びルテオリンのメタノール溶液も実施例 1と 同様に調整した。
[0109] (2— 2)増殖細胞数測定実験
細胞増殖および細胞の生存率を定量化するための non— RI法として XTTによる呈色 反応を用いた。 M φ RAW264細胞株を 10%FBS-MEM培地に懸濁し、 96ウェルマイク 口プレートに 0.4 X 104 cells/0. lmLで接種し 1日間培養した。この後、破骨細胞分ィ匕 誘導因子 (ODF/RANKL)の 10%FBS- MEM溶液(lOOng/mL)を各ゥヱルに O.lmLずつ 添加した(RANKLの終濃度 50ng/mL)。これと同時に、ルテオリンの各濃度の溶液を ゥエルに添加した。なお、対照群には、ルテオリンを含有しないメタノールのみを等量 添加した。
[0110] 培養開始 3日後に、市販の Cell Proliferation Kit II (ロシュ ·ダイァグノステイクス社製 、カタログ番号 1 465 015)を用いて細胞増殖を定量し、細胞生存率を求めた。操作 は、添付の取扱説明書に従って実施した力 その概要は以下の通りである。
[0111] キットに含まれている XTT標識試薬と電子カップリング試薬とを 50 : 1で混ぜ、各ゥェ ルに添加されている培地 0.1mじ当たり 50 Lずつを加えて、 37°Cにて 4時間反応させ た。反応終了後、 ELISAプレートリーダー(大日本製薬 (株)製)を用いて、 690nmを対 照波長として、波長 492nmにおける吸光度を測定した。
[0112] 測定結果は、各濃度のルテオリン処理群の細胞生存率を、対照群の細胞生存率を 100としたときの対照群に対する相対値(%)で表した。結果を図 1に示す。
[0113] 図 1中、増殖細胞数測定実験の結果得られた細胞生存率の測定結果を、白抜きの 棒グラフとして示した。図 1から明らかなように、ルテオリンの濃度が 100倍に増加して も細胞生存率は約 50%までし力低下しな力つた。このことから、ルテオリンは M φ RAW264細胞に対して非特異的な細胞毒性は示さないこと、及び M φ RAW264細胞 の RANKLによる破骨細胞への分ィ匕を濃度に依存して顕著に抑制することが明らかに された(IC = 1 /ζ Μ)。
50
[0114] (実施例 3)破骨細胞形成試験 II
(3— 1)材料等
実施例 3においては、実施例 1及び 2で使用した M () RAW264細胞に代えて、 in vitroにおける骨吸収の抑制を評価するために、マウス骨髄由来 M-CSF依存性細胞 を使用した。マウス骨髄由来細胞は、 6— 9週齢の ddYマウス (雄)(中部科学資材 (株 ) )力も摘出した脛骨および大腿骨より採取した。
[0115] 硫酸ストレプトマイシン及びべ-シシン Gナトリウム(INVITROGEN社製、カタログ番 号 15140- 122)、腫瘍増殖因子 13 (TGF- β、 SIGMA社製、カタログ番号 T- 7039)、マ クロファージコ口-一刺激因子(M- CSF、 PEPRO TECH INC社製、カタログ番号 300- 25)以外は、実施例 1と同様のものを使用した。実施例 1と同様に細胞内の TRAP活性の測定と TRAP染色とを指標として、ルテオリンによる破骨細胞への分ィ匕に 対する活性の評価を行った。
[0116] (3-2)破骨細胞形成試験 II
6— 9週齢の ddYマウス力 脛骨及び大腿骨を摘出した。これらの脛骨及び大腿骨 から、 22G X Iと 1/4の注射針をつけた注射器で押し出すことにより、骨髄細胞を採取 した。
[0117] 得られた骨髄細胞を、 lOOU/mLのペニシリン Gナトリウム塩、 100 /z g/mLの硫酸スト レプトマイシン、 50ng/mLの M- CSF、及び Ing/mLの TGF- j8を含む 10%FBS- MEMに 懸濁し、 96ウェルマイク口プレートに、 1 X 106 cells/0. lmL/ゥエルで播種し、 5%CO
2、
37°Cの条件下で培養した。
[0118] 培養開始 3日後、 50ng/mLの M- CSF及び 50ng/mLの破骨細胞分ィ匕誘導因子(
ODF/RANKL)を含む培地に交換すると同時に、実施例 1と同じ濃度に調整したルテ オリンを添カ卩した。なお、対照群としては、 M- CSF及び ODF/RANKLは含有している 力 ルテオリンを含有していない上記の培地に交換した。 5%CO
2、 37°Cの条件下で さらに培養した。
[0119] 培地交換の後、 1. 5日後に、破骨細胞初期分ィヒマーカーである酒石酸耐性酸ホス ファターゼ活性を測定した。各ゥエルの培養液を捨て、プレートを PBSで洗浄したのち 、 10%HCHO/PBSを用いて、ゥヱル内の細胞を室温で 15分間固定した。さらに、エタ ノール アセトン溶液(1 : 1)を用い、室温で 1分間固定した。固定終了後、固定液を 捨て、室温で乾燥させた。乾燥後、各ゥ ルの細胞の酒石酸耐性酸ホスファタ一ゼ( TRAP)活性の測定と染色とを、実施例 1と同様に行った。結果を図 2に示す。
[0120] 図 2中、ルテオリンを添加した培地中で培養した骨髄細胞内の TRAP活性の測定結 果を黒塗りの棒グラフとして示した。
[0121] また、マウスの骨髄細胞を用いた増殖細胞数測定実験も実施例 2と同様に行 、、細 胞生存率を測定した。結果を図 2に示す。図 2中、細胞の生存率を白抜きの棒グラフ として示した。 TRAP活性及び増殖細胞数測定実験の結果は、いずれも、対照群のこ れらを 100としたときの対照群に対する相対値 (%)で表した。
[0122] 図 2に示されるように、ルテオリンの添カ卩によって、濃度依存的に TRAP活性が抑制 された。このことは、破骨細胞の形成がルテオリンによって濃度依存的に阻害される ことを示す。また、 XTTアツセィ (増殖細胞数測定実験)の結果から、ルテオリンが非 特異的な細胞毒性を示さないことも明らかになった。以上より、ルテオリンは、非特異 的な細胞毒性は示さず、マウス骨髄由来 M-CSF依存性細胞の RANKLによる破骨細 胞への分ィヒを濃度に依存して顕著に抑制することが示された (IC =3 ^ Μ) 0
50
[0123] (実施例 4)破骨細胞活性化構造体であるァクチンリングの形成試験 I
(4—1)材料等
M () RAW264細胞、ゥシ胎児血清、 a— MEM、 ODF/RANKL, 96ウェルマイクロプレ ート、ルテオリンは、実施例 1と同様のものを使用し、同様に調製して使用した。
PD98059は(CALBIOCHEM社製、カタログ番号 153000)を使用した。
[0124] (4 2)ァクチンリングの形成試験 I
M φ RAW264細胞株を、 10%FBS- MEMに懸濁し、 96ウェルマイク口プレートに 0.8 X 105 cells/0. lmL/ゥエルで接種し、 5%CO、 37°Cの条件で 1日間培養した。この後、
2
lOOng/mLの ODF/RANKLと 20 μ Μの PD98059とを含む上記の培地 O.lmLを添カロし、 さらに同じ条件で培養した(RANKLの終濃度 50ng/mL、 PD98059の終濃度 10 μ Μ)。
[0125] 活性化破骨細胞まで分化を進行させるため、 ODF/RANKLと PD98059添カ卩してから 2日後に 50ng/mLの ODF/RANKLを含む上記の培地に交換して、破骨細胞活性ィ匕 構造体であるァクチンリングの形成が確認されるまで、同様の条件で培養を続けた。 ァクチンリングが形成されたところで、実施例 1と同様に調製したルテオリン溶液を添 加し、さらに 1日間培養した。なお、対照群のゥエルには化合物を含まないメタノール のみを加えて、さら〖こ 1日培養を続けた。
[0126] ルテオリンを添加して 1日培養した後に、各ゥエルの細胞の酒石酸耐性酸ホスファ ターゼ (TRAP)染色を実施例 1と同様に行った。結果を図 3A— Dに示す。
[0127] 図 3A— Dに示されるように、対照群ではァクチンリング形成が認められたが(図 3A )、ルテオリン処理群では 3 μ Μ以上の濃度で処理した場合には、ァクチンリングが濃 度依存的に破壊されて ヽることが示された(図 3Β— D)。
[0128] ァクチンリングは ODF/RANKL及び PD98059で処理した Μ φ RAW264細胞株の培養 によって形成された破骨細胞の活性ィ匕構造体であることから、ルテオリンは、破骨細 胞の分ィヒだけでなぐ活性ィヒ構造体の維持を阻害することによって骨吸収を抑制す るものと考えられた。
[0129] (実施例 5)破骨細胞活性化構造体であるァクチンリングの形成試験 II
(5— 1)材料等
硫酸ストレプトマイシン及びべ-シシン Gナトリウム、 TGF- j8、 M- CSF以外のものは 実施例 1と同様のものを使用し、これらについては実施例 3と同様のものを使用した。
[0130] (5— 2)ァクチンリングの形成試験 II
また、実施例 3と同様にして、 6— 9週齢の ddYマウスの脛骨及び大腿骨力 骨髄細 胞を採取した。
[0131] 得られた骨髄細胞を、 lOOU/mLのペニシリン Gナトリウム塩、 100 μ g/mLの硫酸スト
レプトマイシン、 50ng/mLの M- CSF、及び Ing/mLの TGF- j8を含む 10%FBS- MEMに 懸濁し、 96ウェルマイク口プレートに、 1 X 106 cells/0. lmL/ゥエルで播種し、 5%CO
2
、 37°Cの条件下で培養した。
[0132] 培養開始 3日後、 50ng/mLの M- CSF及び 50ng/mLの破骨細胞分ィ匕誘導因子(
ODF/RANKL)を含む培地に交換して、破骨細胞活性ィ匕構造体であるァクチンリング の形成が確認されるまで、同様の条件で培養を続けた。ァクチンリングが形成された ところで、実施例 1と同様に調製したルテオリン溶液を添加し、さら〖こ 1日間培養した。 なお、対照群としては、交換した上記の培地に溶媒だけを添加した。
[0133] ルテオリンを添加して 1日培養した後に、各ゥエルの細胞の酒石酸耐性酸ホスファ ターゼ (TRAP)染色を実施例 1と同様に行った。結果を図 4A— Dに示す。
[0134] 図 4A— Dに示されるように、対照群ではァクチンリング形成が認められたが(図 4A )、ルテオリン処理群では 3 μ Μ以上の濃度で処理した場合には、ァクチンリングが濃 度依存的に破壊されて 、ることが示された(図 4Β— D)。
[0135] ァクチンリングは、 Μ- CSF及び TGF- β又は ODF/RANKLの処理マウス骨髄由来 M-CSF依存性細胞の培養によって形成された破骨細胞の活性ィ匕構造体であること から、ルテオリンは、破骨細胞の分ィ匕だけでなぐ活性化構造体の維持を阻害するこ とによって骨吸収を抑制するものと考えられた。
[0136] 以上より、ルテオリンは、マクロファージ由来の株化細胞を培養した場合、及びマウ スの骨髄細胞を培養した場合の 、ずれにぉ 、ても、それ自身がこれらの細胞に対し て非特異的な細胞毒性は示すことなぐ濃度依存的に RANKLによる破骨細胞への 分化を強く抑制することが証明された。また、ルテオリンが濃度依存的にァクチンリン グの維持を阻害したことから、活性化された破骨細胞による骨吸収を顕著に抑制す ることち示された。
[0137] (実施例 6)共存培養による破骨細胞形成及び骨吸収窩形成法
共存培養は、オブライエンらの方法(Charles A. O'Brien et al.; J. Biol. Chem.
274(27), 19301-19308 (1999))で榭立した細胞 UAMS-32とマウスの大腿骨由来の骨 髄細胞を用いて行った。
[0138] 前記実施例 3の方法で調製したマウス骨髄細胞 (200 X 104 cells/ディッシュ)と骨芽
細胞 UAMS-32 (100 X 104 cells/dish)を活性型ビタミン D (和光純薬工業 (株)製、力
3
タログ番号 031—14281) 10nM、プロスタグランジン E (和光純薬工業 (株)製、カタログ
2
番号 163—10814) ImMを含む α - MEM培地 (20ml)で懸濁した。その後、直径 10cmの コラーゲンゲルコート培養ディッシュ上に 5%CO、 37。Cの条件下で 6日間培養するこ
2
とによって破骨細胞分化を誘導させた。
[0139] 6日間培養後にコラゲナーゼ (和光純薬工業 (株)製、カタログ番号 032— 10534)を 終濃度が 0.1%になるように溶解させることによって破骨細胞を回収した。
[0140] 象牙切片(厚さ:約 0.2m、直径:約 4mm)を 96穴のプレートに設置し、終濃度が 10
Mになるようにルテオリンを含んだ a -MEM培地(100 μ 1)を添カ卩した。
[0141] 上記共存培養系で得られた破骨細胞を ex -MEM培地で適度に希釈し (約 10ml/デ イツシュ)、よく懸濁した。この破骨細胞懸濁液を 100 /z l/wellずつ、細胞が象牙切片 上に接着するように各ゥエルに丁寧に添加した。 12時間培養後、象牙切片上の骨吸 収窩をトルイジンブル (toluidine blue溶液)(シグマ社製、カタログ番号 T3260-5G)で 染色し、その吸収窩 (ピット)をカウントした。
[0142] 象牙切片上にマウス骨髄細胞と骨芽細胞との共存培養から調製した破骨細胞を培 養すると、培養 12時間後に図 5Aに示すように多数の骨吸収窩 (ピット)を形成した。
10 Mのルテオリンの存在下で培養すると、図 5Bのようにピット数が著しく減少した。
[0143] また、添加したルテオリンの濃度とピット数との関係を表したグラフを図 6に示した。
なお、培養細胞のルテオリンの添加方法及び添加量は、上記実施例 1と同様の条件 で行った。図 6に示すとおり、ルテオリンが濃度依存的に破骨細胞によるピットの形成 を抑制し、 10 μ Μの添加では 95%以上の阻害活性を示した。
[0144] 上記より、ルテオリンは破骨細胞の初期分化を阻害するのみではなく成熟破骨細 胞の骨吸収機能を直接的に抑制することが明らかとなり、骨吸収抑制剤として骨粗鬆 症などの骨疾患の予防や改善効果が期待できる。
[0145] ルテオリンは従来力も生薬として使用されてきたフラボノイドの一種であることから、 フラボン類を骨疾患の予防及び Ζ又は抑制のための機能性食品、医薬組成物、及 び医薬として有用であることが示された。
[0146] (製剤例)
次に、本発明の組成物を含有する製剤例を示すが、本発明はこれらに限定される ものではない。
(製剤例 1 錠剤)
[0148] 上記の成分をそれぞれ秤量し、均一に混合した後に圧縮打錠して重量 300mgの錠 剤を製造することができる。
[0149] (製剤例 2 硬カプセル剤)
[0150] 上記の成分をそれぞれ秤量し、均一に混合した後、硬カプセルに 300mgずつ充填 することにより、硬カプセル剤を製造することができる。ここで、組成物 1は、ルテオリン と乳糖とを 1: 1で混合したものである。なお、製剤例 3— 6で使用する組成物 1は上記 と同じものである。
[0152] 上記の成分をそれぞれ秤量し、均一に混合した後、軟カプセルに lOOmgずつ充填 することにより、軟カプセル剤を製造することができる。
[0153] (製剤例 4 顆粒剤)
成分 使用量 (g )
組成物 1 2 0 0
ラタトース 4 5 0
トゥモロコシデンプン 3 0 0
ヒ ドロキシプロピノレセノレロース 5 0
結晶性セルロース 3 5
[0154] 上記の成分をそれぞれ秤量し、均一に混合した後、常法に従って顆粒剤を製造す ることがでさる。
[0155] (製剤例 5 シロップ剤)
[0156] 上記の成分をそれぞれ秤量し、糖及びサッカリンを注射用蒸留水 60mLに溶解した 後、グリセリン及びエタノールに溶解された組成物 2及び調味料の溶液を加える。こ の混合物に精製水をカ卩えて、最終容量を lOOmUこすることにより、経口投与用のシロ ップ剤を製造することができる。
[0158] 上記の成分をそれぞれ秤量し、組成物 3を常法によって珪酸カルシウムに吸着させ て微粒子とし、散剤を製造することができる。
産業上の利用可能性
[0159] 式 (I)の化合物を有効成分として含有する医薬組成物、医薬製剤、健康食品、機 能性食品等の分野において有用である。