明 細 書
標的指向性運搬体 技術分野
本発明は、生理活性ぺプチドやそれをコードする遺伝子などの目的物質を、 標的細胞または組織に、 選択的に輸送ないしは結合させるための運搬体に関 する。
本発明の標的指向性運搬体は、 医学 ·薬学分野並びに化粧品分野等におい て、 有用物質の生体内デリバリーシステム (例えば、 ドラックデリパリーシ ステム) に利用可能なバイオマテリアルとして有用である。 背 景 技術
通常、 薬物の治療効果は、 その薬物若しくはそれから生じる有用物質が特 定の標的部位に到着し、 そこで作用することによって有効に発現される。 そ の一方で、 薬物が不必要な部位に作用することによって副作用が生じること も知られている。 よって、 薬物を有効かつ安全に使用するために、 ドラッグ デリバリーシステム (D D S ) の開発,が求められている。
一方、 サイト力インや細胞成長因子などの生理活性ペプチドの中には医薬 品としての用途が期待されてレヽるものが多い (例えば、 Journal of Cell Biology, 第 109卷、 第 1号、 1〜6頁 (1989) ; R. A. F. Clark編、 The Molecular and Cellular Biology of Wound Repair, 第 2版、 第 6章、 237〜248頁 (1988) ; Zieglerら編、 Growth Factors and Wound Healing, 第 3部、 第 12章、 206 〜228頁 (1997) , Springer- Verlag, New Yorkなど参照のこと) 。 しかしな がら、 一般的に生理活性ペプチドは生体内での安定性が悪く、 局所保持ゃ徐 放が困難なために標的組織での効果が低く、 他部位での副作用もある。 この ため、 実用化がなかなか進んでいないのが現状であり、 効率の良いドラッグ デリバリーシステムが切望されている。 この問題を解決するために、 生理活 性べプチドに生体適合性を有する高分子を融合もしくは混合することにより、 生体内での標的指向性もしくは徐放性を確保しようとする試みが数多くなさ れている。 また、 生理活性ペプチドを他のペプチドと遺伝子工学的にハイブ
リッド化し、 これを生体内で発現させることにより、 生理活性ぺプチドのタ ーゲッティングを達成しようとする試みもなされている。
これらに関連する技術として、 特開平 5— 1 7 8 8 9 7号公報には、 細胞 外マトリ ックス成分の一つであるフイブロネクチン (F N) の細胞接着ドメ ィン配列と、 塩基性線維芽細胞増殖因子 ( b F G F ) とをハイブリッド化し た機能性ポリペプチドが開示されている。 また、 細胞外マトリックスを介し ての徐放性をねらったものとして、 ゥシフォンビルブランド由来のコラーゲ ン結合性デカペプチドとトランスフォーミング増殖因子 i3 (TGF- j3 ) とのハ イブリツドポリペプチドであるコラーゲンターゲッティング T G F— j3が報 告されている (Tuanら、 Connective Tissue Reserch, 第 34卷、 1号、 1〜9 M (19%ゾ ; Hanら、 Protein Expression and Purif ication^ 第 11巻、 169 〜178頁(1997) ; Gordonら、 Human Gene Therapy,第 8卷、 1385〜1394頁(1997) ;米国特許第 5 8 0 0 8 1 1号公報) 。 また、 西らによって、 嫌気性のグラ ム陽性桿菌であるクロス トリジゥム ヒス トリチカム (Clostridium histolyticum) のコラゲナーゼ由来のコラーゲン結合†生ポリべプチドと b F G Fまたは上皮増殖因子 (E G F ) とのハイブリッドポリペプチドが、 コラ 一ゲン結合性細胞増殖因子として提案されている(Nishiら、 Proc. Nat. Acad, of Sci, USA、 第 95卷、 7018〜7023頁 (1998) ) 。 さらに、 機能性蛋白質を糸田 胞外マトリックスにターゲッティングする技術として、フイブロネクチン(F N) 分子の N末端 7 O kDa領域と C末端 3 7 kDa領域との間に異種蛋白質また はぺプチドのアミノ酸鎖を挿入してなるキメラ蛋白質の利用も提案されてい る (特開平 8— 1 4 0 6 7 7号公報) 。
ところで、 細胞と細胞外マトリックス (ECM) 蛋白質との相互作用は、 細胞 の生存、増殖、移動や分化において非常に重要である。これらの相互作用は、 インテグリンゃ膜結合型プロテオダリカンのような細胞表面受容体を介して 起こり、 細胞内にシグナルを伝達する。 上皮細胞では、 細胞に直接接着して いる E CM蛋白質は基底膜に存在している。 基底膜は、 上皮 ·実質細胞の直 下に位置し、 主にラミニン (LN) 、 I V型コラーゲン、 ニドゲン、 及びパー ルカンにより構成され、 ここにさらに多様なマトリックス分子が編み込まれ る (図 1参照) 。 かかるマトリックス分子の中には、 組織発生時一過性に、
または組織特異的に発現するものがあり、 これらは組織特異的な形態形成の 決定や器官形成の制御に関わっていると考えられている。
基底膜を構成する蛋白質の一種であるラ'ミニン (LN) は、 ひ、 j3、 y鎖か ら成るヘテロ三量体の糖蛋白質である。 恒常的に基底膜に存在していること から、 ラミニンは組織の恒常性と器官形成の制御に重要な役割を果たすと考 えられている。 現在までに 5つの α鎖、 3つの 鎖、 及び 3つの γ鎖が同定 されており、 これらの組み合わせで少なくとも 1 4種類の異なったラミニン ァイソフォームが構成されることが示されている(Miner, J. H. , and Patton, B. L. (1999) Int J Biochem Cell Biol 31, 811-816)。 図 2 Aに示すように、 ラミニンは a鎖のタイプによって大きく 5種類に分類される。 これは、 ラミ ニンと細胞の相互作用が主に a鎖の C末端領域でおこるからであり、 Q; 3 J3 1 や a 6 ]3 1のようなラミニン結合个生ィンテグリンやひ-ジス トロダリカン、シン. デカンのような非ィンテグリン受容体は、 ラミニンひ鎖の C末端領域にある 球状ドメインに結合する (図 2 B ) 。 また、 ラミニンの各 a鎖は組織特異的 ·発生段階特異的な発現を示す。 このことから、 a鎖の種類に応じて各種ラ ミニンはそれぞれ組織特異的に発現分布しており、 各部位で異なる機能を発 揮している (図 2 A参照) 。 例えば、 ,(¾ 1鎖を有するラミニン (a l鎖ラミ ニン: 《 1鎖 1^) は発生段階の組織のみで発現しているため、 胚性幹細胞 の分化とマトリ ックス会合に必須だと考えられている(Li, S., Edgar, D., Fassler, R., Wadsworth, W. , and Yurchenco, P. D. (2003) Dev Cell 4, 613-624; Li, S., Harrison, D. , Carbonetto, S., Fassler, R. , Smyth, N., Edgar, D., and Yurchenco, P. D. (2002) J Cell Biol 157, 1279—1290)。 α 2鎖を有するラミニン (ひ 2鎖ラミニン : α 2鎖 L N) は主に骨格筋と心 筋で発現しており、 筋細胞の生存に必要である(Kuang, W. , Xu, H. , Vachon, P. H., Liu, L., Loechel, F. , Wewer, U. M., and Engvall, E. (1998) J Clin Invest 102, 844 - 852; Miyagoe, Y., Hanaoka, K., Nonaka, I., Hayasaka, M. , Nabeshima, Y. , Arahata, K., and Takeda, S. (1997) FEBS Lett 415, 33 - 39 ;)。 a 3鎖を有するラミニン (α 3鎖ラミニン: 3鎖 L N) は 主として表 皮下の基底膜に局在し、 表皮細胞の生存に必須である(Ryan, M. C. , Lee, K. , Miyashita, Υ., and Carter, W. G. (1999) J Cell Biol 145, 1309—1323) 。
α 4鎖を有するラミニン (α 4鎖ラミニン: 《 4鎖 L N) は主に血管に局在 しており、 毛細血管の成熟に必要である(Thyboll, J. , Kortesmaa, J. , Cao, R. , Soininen, R., Wang, L., Iivanainen, A. , Sorokin, L., Risling, M. , Cao, Y., and Tryggvason, K. (2002) Mol Cell Biol 22, 1194 - 1202)。 a 5 鎖を有するラミニン (ひ 5鎖ラミニン: 《 5鎖 1^) は成体組織でもっとも 幅広く発現しており、 それを欠損させたマウスは胎盤の脈管構造、 神経管の 閉鎖、 そして腎糸球体の欠失のために胎生致死となる(Miner, J. Η·, Cunningham, J. , and Sanes, J. R. (1998) J Cell Biol 143, 1713-1723; Miner, J. H. , and Li, C. (2000) Dev Biol 217, 278-289) 。 さらに、 最近の報告 では α: 5鎖 L Nが毛、 肺、 そして顎下腺の形態形成にも関わることが示され ている(Li, J. , Tzu, J. , Chen, Y. , Zhang, Y. P. , Nguyen, N. T., Gao, J. , Bradley, M., Keene, D. R., Oro, A. E. , Miner, J. H. , and Marinkovich, M. P. (2003) Embo J 22, 2400-2410; Nguyen, N. M. , Miner, J. H., Pierce, R. A., and Senior, R. M. (2002) Dev Biol 246, 231—244 ; Kadoya, Y. , Mochizuki, M., Nomizu, M. , Sorokin, L., and Yamashina, S. (2003) Dev Biol 263, 153—164)。
このように、 ラミニンの各 α鎖が組織特異的 ·発生段階特異的な発現を示 すことは、細胞外環境因子としてのラミニンの役割を考える上で重要である。 実際、 心臓という一つの器官を取り上げても、 それを構成する細胞のタイプ の違いによって、基底膜を構築するラミニンのタイプは大きく異なっている。 心筋基底膜はひ 2鎖 L Nで構築されているが、 心筋周囲に張り巡らされてい る毛細血管基底膜はひ 4 L N鎖で、 また、 太い血管の基底膜はひ 5鎖 L Nで 構築されている。 このような各ラミニンァイソフォームの細胞特異的な発現 の意義は、 ノックァゥトマウスなどの解析からも次第に明らかにされつつあ る。 図 3に示すように、 様々なラミニン構成鎖のノックアウトマウスは特異 的な表現型を示す(R. Nishiuchi et al.: J. Biochem. , 134, 497 (2003) ; J. H. Miner, et al.: J Cell Biol 143, 1713 (1998) ; B. L. Patton, et al.: Nat Neurosci 4, 597 (2001) ; J. Thyboll, et al.: Mol Cell Biol 22, 1194 (2002) )。 また皮膚の基底膜では o; 3鎖が 3鎖と y 2鎖とヘテロ三量体(α 3 ]3 3 y 2 ) を組んだラミニン- 5が強く発現しているが、 ヒ トにおいて α 3
鎖や他のラミニン- 5の構成鎖遺伝子異常は表皮が基底膜から剥離する表皮 水疱症をきたす。 筋細胞の基底膜に選択的に発現する α 2鎖の変異は、 ヒト においてもマウスにおいても筋ジストロフィーを起こす。 一方、 多くの細胞 •組織に幅広く発現する α 5鎖や多くのラミニンに共通して含まれる γ 1鎖 のノックアウトマウスは胎生致死となる。 胎児期に高い発現が見られる α 1 鎖のノックアウトマウスも同様に胎生致死となり、 その発生 ·器官形成にお ける重要性が窺われる。
このようなラミニン (LN) を始めとして、 I V型コラーゲン、 ニドゲン及 びパールカン等は、 細胞や組織の種類によらず、 どの基底膜でも構成的に発 現している基底膜構成蛋白質であるが、 最近の研究によって、 基底膜には、 これら以外にも組織特異的 ·発生段階特異的に発現する蛋白質が数多く存在 することが知られるようになつている。
その一つが、 ネフロネクチン (丽) である。 ネフロネクチンはインテグリ ン結合に必要な R G D (Arg-Gly-Asp) 配列 (細胞接着モチーフ) の他、 5つ の E G F様繰り返し配列と MAMドメインから構成されている (図 4参照の こと。 但し、 ネフロネクチン (丽) は、 ここで示す ΓΝΝ-FLAGJ のうち FLAG タグを除く領域から構成される) 。 ネフロネクチンは基底膜に局在し、 しか もひ 8 j8 1インテグリンと共在していることから、 インテグリンとの結合を 介して腎の形成において関わっていることが強く示唆されている。 事実、 発 生中の腎臓において選択的に尿管芽上皮細胞に発現されることが報告されて いる (Brandenberger, R. , Schmidt, A. , Linton, J. , Wang, D. , Backus, C. , Denda, S., Muller, U., and Reichardt, L. F. (2001) J Cell Biol 154, 447-458)。 また、 近年、 腎臓以外のさまざまな臓器形成期の基底膜にも発現 していることも明らかとなっている (R. Brandenberger, et al.: J Cell Biol 154, 447 (2001) ) 。
また、 組織特異的 ·発生段階特異的に基底膜に発現する蛋白質として、 M A E G (扉- and - containing gene)蛋白質も知られている。 これは、 ネ フロネクチンと同様に MAMドメィンを有するなど、 ネフロネクチンと分子 構造が非常によく似た蛋白質であり、 これもまた限定された局在を示す。 M A E Gは発達中の毛胞基底膜へ特異的に存在し、 その発現は毛胞が成熟する
につれて減少することもわかっている(長田ら、 投稿中につき未発表) 図面の簡単な説明
図 1は、 基底膜と間質マトリックスの構造を示す模式図である。
図 2の Aは、 ラミニンァイソフォームの種類とその組織特異性を示す表で あり、 Bはラミニンの構造を示す模式図である。
図 3は、 ラミニンサブュニット遺伝子ノックァゥトマウスの表現径と!:伝 性疾患との関係を示す図である。
図 4は、組み換えネフロネクチン(NN)とその欠失変異体(丽- Δ MAM- FLAG 、 NN-RGD- FLAG、 及ぴ丽 -MAM- FLAG) が有するドメイン構造の概略図である。
ΓΝΝ-FLAGJにおいて、 E G F様繰り返し配列と M AMドメインに挟まれた領 域が R G Dリンカ一部位である ( 「麵- Δ ΜΑΜ- FLAG」 では E G F様繰り返し配' 列と FLAGタグに挟まれた領域、 また 「NN- RGD - FLAGJ ではシグナルペプチドと FLAGタグに挟まれた領域が、 それぞれ R G Dリンカ一部位である) 。 なお、 図には示していないが、 R G Dリンカ一部位は、 多くの O結合型糖鎖で 飾 されている。 「匪- FLAGJ は FLAG付き全長ネフロネクチン、 「画- Δ MAM - FULGJ は MAMドメインを欠失した FLAG付き全長ネフロネクチン、 「丽- RGD - FLAG」 は FLAG付き R G Dリンカ一部位、及ぴ「NN-MAM- FLAGJ は FLAG付き MAMドメ ィ ンを示す。 · 図 5は、 精製した全長 NN- FLAG (図 A中、 NNと示す) 、 丽- Δ ΜΑΜ- FLAG 〔図 A中、 Δ ΜΑΜと示す) 、 NN - RGD-FLAG (図 B中、 RGDと示す)、及び NN- MAM - Fし AG (図 B中、 MAMと示す) の電気泳動像 (15%ゲル) を示す。 図 5の A及ぴ B に おいて、 それぞれ右側は電気泳動後 CBB (Coomass ie Bri l l iant Blue R-25 0) 染色した結果を、 左側は電気泳動後、 抗 FLAG M2モノクローナル抗体を用 、て 免疫ブロッテイングを行った結果を示す。
図 6は、 実験例 1においてネガティブ染色したネフロネクチン (匪) (^電 子顕微鏡写真画像図 (A, B ) 及びそれから推定される N Nの分子構造を示 す図 (C ) である。 図 Aにおいて、 三角 (V) 印は N Nの単量体を指し、 矢 印は N Nの多量体を指し示す。 スケールパーは lOOnmを表す。 図 Bの左及 右 の図は、 図 Aの三角 (V) 印の部分を高倍率にした画像である (スケーノレバ
一は lOOnm) 。
図 7は、実験例 2において、全長 NN - FLAG (NN:図 A)、 ΝΝ- Δ MAM-FLAG ( ΔΜΑΜ :図 Β ) 、 NN-RGD-FLAG (RGD:図 C)、 及び NN- MAM- FLAG (MAM:図 D) に対す る KA8細胞(インテグリン α 8鎖を安定に発現する白血病細胞)の接着性及ぴ 細胞の伸展を調べた結果を示す図である。
図 8は、実験例 3において、各種の基底膜蛋白質〔ラミニン(LN-1、 LN-2/4、 LN - 5、 LN- 8、 LN- 10/11) 、 フイブロネクチン (FN) 、 ビトロネクチン (VN) 、 コラーゲン I型、 II型、 IV型及ぴ V型〕 に対するネフロネクチン (匪 -FLAG) の 結合性を調べた結果を示す図である。
図 9は、 N Nの結合特異性を、 ラミニン (LN- 2/4 ( α 2 ]3 1/2 γ 1) ) とラミ ニン (LN- 10/11 ( a 5 j3 1/2 y 1) ) を用いた免疫共沈降アツセィで調べた結果 を示す図である。
図 1 0は、 ラミニン (LN-8) 、 ラミニン (LN-10/11) 、 及びフイブロネク チン (FN) に対する N Nの結合を、 それぞれ 10 mM EDTA、 0. 5 M NaCl、 また は 1 μ g/mlへパリン存在下、 ならびにこれら非存在下 (コントロール) で、 固 相結合ァッセィにより評価した結果を示す図である。
図 1 1は、 実験例 4において、 ネフ,ロネクチン (全長) (NN-FLAG) 及びそ の欠損変異体 (丽- ΔΜΑΜ- FLAG 、 NN-RGD-FLAG, 及び丽 -MAM-FLAG) のラミニ ン (LN-10/11) に対する結合活性を、 固相結合アツセィにより評価した結果 を示す図である。
図 1 2は、 実験例 5において、 成体マウス腎臓の基底膜に対する、 ネフ口 ネクチン (全長) (NN- FLAG) 及びその欠損変異体 (NN- MAM- FLAG) の結合を 調べた結果を示す図である。 図 Aは爾- FLAGの結果、 図 Bは丽 -MAM - FLAGの結 果、 及ぴ図 Cはコントロール (no- probe) である。
図 1 3の Aは、 G S T融合蛋白質(GST- MAEG - MAM) の各種ラミニン(LN-1、 LN- 2/4、 LN- 5、 LN-8、 LN-10/11) に対する結合性をみた結果であり、 図 Bは G S T融合蛋白質 (GST -願- MAM) の各種ラミニン (上記と同じ) に対する結 合性をみた結果を示す図である (実験例 6 ) 。
図 1 4は、 実験例 7において、 全長 N N (NN - FLAG) とその MAMドメイン (NN-MAM - FLAG) について、 それぞれ組換え LN-10 (rLN - 10) とその Gドメイ
ン欠損変異体 (LN- 10AG) に対する結合活性を調べた結果を示す図である。 図 15は、 実験例 8において、 マウスの腎臓組織における NN及ぴ LN- α5 鎖の局在を、 免疫組織化学的染色法によって調べた結果を示す図である (原 図はカラー図) 。 図 Αは、 抗 POEM/nephronectin抗体 (抗 NN抗体) で免疫染 色した結果を、 図 Bは、 抗 LN-a 5鎖抗血清 (抗 LN-a5抗体) で免疫染色した 結果である。 矢印は腎糸球体を示す。 発明の開示
本発明は、 各種組織に特異的に存在する基底膜蛋白質に対して特異的な結 合活性を有するポリペプチドまたはそれをコードする遺伝子から構成される 運搬体であって、 生体内の標的細胞または組織に選択的に所望の薬物 (例え ば生理活性べプチドまたはそれをコードする遺伝子) を輸送しえる標的指向 · 性運搬体を提供することを目的とする。 より詳細には、 本発明は各種組織に 特異的に存在する各種ラミニンに対して選択的結合性を有し、 その特性に基 づいてラミニンを発現する標的細胞または組織に、 選択的に目的物質を輸送 ないしは結合させることのできる、 組織指向性を備えた運搬体 (標的指向性 運搬体) を提供することを目的とする。
かかる標的指向性運搬体に、 所望の薬物 (例えば生理活性ペプチドまたは それをコードする遺伝子)を結合させて、薬物を運搬体との複合体(例えば、 生理活性ペプチド複合体または生理活性ペプチド遺伝子複合体) として調製 することにより、 組織特異的なドラッグデリバリー、 並びにターゲッティン グ療法が可能となる。 よって、 本発明はかかるシステムを提供することも目 的とする。
本発明者らは、鋭意研究を進める中で、前述するネフロネクチン(丽)力 基底膜構成蛋白質の各種ラミニンのうち、 LN- 10/11 (a5j31/27D と LN - 8 (a4j31y 1) には選択特異的に結合するものの、 LN- 10/11及び LN-8と同じ 鎖と γ鎖を有する LN- 2/4 (a2j3 I/27I) には結合しないことから、 ネフロネ クチン (丽) がラミニンの a 5鎖または a 4鎖を特異的に認識して結合する ことを見いだした (後述する実験例 3、 図 8参照)。 さらに、本発明者らは、 ネフロネクチンとこれらのラミニンアイソフォームとの結合は、 ネフロネク
チンの MAMドメインを欠失させることによって消失することから、 ネフ口 ネクチンの MAMドメインを介して行われることを見出した (後述する実験 例 4、 図 1 1参照) 。 さらに、 本発明者らは、 ネフロネクチン (丽) と類似 の構造を有する MA E G蛋白質は、 その MAMドメインを介して、 ラミニン (LN-5 ( « 3 ]3 3 7 2) ) と選択特異的に結合することを見いだした (後述する 実験例 5、 図 1 2参照) 。
前述するように、 ラミニンはそれが有する 鎖に応じてそれぞれ異なる組 織や部位に発現し局在していることが知られている。 具体的には、 ネフロネ クチン (丽) 及ぴその MAMドメインが選択的結合性を示す、 LN- 8 (ひ 4鎖を 有する)は、血管の中でも毛細血管や新生血管に特異的に局在しており、 LN-10 及び LN-11 (ひ 5鎖を有する) は、 血管の中でも太い血管 (大血管) 、 腎臓、 肺及ぴ膝臓組織に特異的に局在している。 また MA E G蛋白質及びその ΜΑ · Μドメインが選択的結合性を示す、 LN- 5 ( « 3鎖を有する)は、皮膚(表皮)、 毛包及び肺組織に特異的に局在している。
これらの知見から、 本発明者らは、 ネフロネクチンまたはその ΜΑΜドメ イン、 並びに MA E G蛋白質またはその ΜΑΜドメインが、 その特異的ラミ ニン結合性に基づいて組織特異的に標的指向性を発揮し (後述する実験例 7 参照) 、 これにより当該標的部位に有用な薬物 (例えば、 生理活性ペプチド またはその遺伝子など) を輸送する運搬体として利用できる可能性を見いだ した。 本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、 本発明は下記の態様を包含するものである;
¾ 1 . MAMドメイン (meprin, 5A protein, receptor protein- tyrosine phosphatase μ -domain) もしくはそれを一部に有するポリぺプチド、 または MAMドメインもしくはそれを一部に有するポリペプチドをコードする遺伝 子を有する核酸であって、 所望の物質を結合させて、 該物質を標的組織に輸 送するために用いられる標的指向性運搬体。
項 2 . MAMドメインが、 (a ) または (b ) のアミノ酸配列を有するも のである項 1記載の標的指向性運搬体;
( a ) 配列番号 1に示される、 ネフロネクチンの MAMドメインのアミノ酸 配列、
(b) 上記ネフロネクチンの MAMドメインのアミノ酸配列において、 1若 しくは複数のァミノ酸が欠失、 置換または付加されたァミノ酸配列を有し、 かつラミニンの α 4鎖または α 5鎖に結合性を有するァミノ酸配列。
項 3. 上記 (b) 力 配列番号 1に示されるネフロネクチンの MAMドメ インのァミノ酸配列と、 少なくとも 90 %の同一性を有するァミノ酸配列で ある、 項 2記載の標的指向性運搬体。
項 4. 上記 (b) 、 ヒ ト由来ネフロネクチンの MAMドメインのァミノ 酸配列である、 項 2または 3記載の標的指向性運搬体。
項 5. 上記 (b) 1 配列番号 37に示されるアミノ酸配列である力、 ま たはそれと少なくとも 90%以上の同一性を有するアミノ酸配列である、 項 2乃至 4のいずれかに記載の標的指向性運搬体。
項 6. ΜΑΜドメインを有するポリペプチドが、 (c) または (d) のァ. ミノ酸配列を有するものである請求項 1記載の標的指向性運搬体;
(c)配列番号 1 7または 19に示される、ネフロネクチンのアミノ酸配列、 (d) 上記ネフロネクチンのアミノ酸配列において、 1若しくは複数のアミ ノ酸が欠失、 置換または付加されたアミノ酸配列を有し、 かつラミニンの α 4鎖または α 5鎖に結合性を有するァ,ミノ酸配列。
項 7. 上記 (d) 1 配列番号 1 7または 1 9に示されるネフロネクチン のァミノ酸配列と、少なくとも 75 %の同一性を有するァミノ酸配列である、 項 6記載の標的指向性運搬体。
項 8. 上記 (d) I ヒ ト由来ネフロネクチンのアミノ酸配列である、 項 6または 7記載の標的指向性運搬体。
項 9. 上記 (d) 力 配列番号 53に示されるアミノ酸配列であるか、 ま たはそれと少なくとも 90%以上の同一性を有するアミノ酸配列である、 項 6乃至 8のいずれかに記載の標的指向性運搬体。
項 10. MAMドメインをコードする遺伝子を有する核酸が、 (A) また は (B) の塩基配列を有するものである項 1記載の標的指向性運搬体;
(A) 配列番号 2に示される、 ネフロネクチンの MAMドメインをコードす る遺伝子の塩基配列、
( b ) 上記塩基配列に対して、 80 %以上、 好ましくは 85 %以上、 より好
ましくは 90 %以上の同一性を有する塩基配列であって、 かつ当該塩基配列 によってコードされるアミノ酸配列がラミニンのひ 4鎖または α 5鎖に結合 性を有するもの。
項 1 1. 上記 (Β) 力 ヒ ト由来ネフロネクチンの ΜΑΜドメインをコー ドする遺伝子の塩基配列である、 項 1 0記載の標的指向性運搬体。
項 1 2. 上記 (Β) 力 配列番号 38に示される塩基配列である力、 また はそれと少なくとも 90%以上の同一性を有する塩基配列である、 項 10ま たは 1 1に記載の標的指向性運搬体。
項 1 3. ΜΑΜドメインをコードする遺伝子を有する核酸が、 (C) また は (D) の塩基配列を有するものである項 1記載の標的指向性運搬体;
(C) 配列番号 1 8または 20に示される、 ネフロネクチンをコードする遺 伝子の塩基配列、
(D) 上記塩基配列に対して、 70 %以上、 好ましくは 75 %以上、 より好 ましくは 80 %以上の同一性を有する塩基配列であって、 かつ当該塩基配列 によってコードされるアミノ酸配列がラミニンのひ 4鎖または 5鎖に結合 性を有するもの。
項 14. 上記 (D) 1S ヒ ト由来ネフロネクチンをコードする遺伝子の塩 基配列である、 項 1 3記載の標的指向性運搬体。
項 1 5. 上記 (D) 、 配列番号 54に示される塩基配列である力、 また はそれと少なくとも 90%以上の同一性を有する塩基配列である、 項 1 3ま たは 14に記載の標的指向性運搬体。
項 1 6. 腎臓、 新生血管、 肺、 膝臓、 または大血管に対して指向性を有す ることを特徴とする項 2乃至 15のいずれかに記載する標的指向性運搬体。 項 1 7. ΜΑΜドメインが、 (e) または (f ) のアミノ酸配列を有する ものである項 1記載の標的指向性運搬体;
(e) 配列番号 3に示される、 MAEG蛋白質の MAMドメインのアミノ酸 配列、
( f ) 上記 MAEG蛋白質の MAMドメインのアミノ酸配列において、 1若 しくは複数のアミノ酸が欠失、 置換または付加されたアミノ酸配列を有し、 かつラミニンのひ 3鎖に結合性を有するァミノ酸配列。
項 18. 上記 (f ) 力 S、 配列番号 3に示される MA EG蛋白質の MAMド メィンのァミノ酸配列と、 少なくとも 80 %の同一性を有するアミノ酸配列 である、 項 1 7記載の標的指向性運搬体。
項 19. 上記 (f ) 、 ヒ ト由来 MAEG蛋白質の MAMドメインのアミ ノ酸配列である、 項 1 7または 18記載の標的指向性運搬体。
項 20. 上記 (f ) 力 S、 配列番号 39に示されるアミノ酸配列であるか、 またはそれと少なくとも 90%以上の同一性を有するアミノ酸配列である、 項 1 7乃至 1 9のいずれかに記載の標的指向性運搬体。
項 21. MAMドメインを有するポリペプチドが、 (g) または (h) の 了ミノ酸配列を有するものである項 1記載の標的指向性運搬体;
(g) 配列番号 21に示される、 MAEG蛋白質のアミノ酸配列、
(h) 上記 MA EG蛋白質のアミノ酸配列において、 1若しくは複数のアミ ノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有し、かつラミニンの α 3 鎖に結合性を有するァミノ酸配列。
項 22. 上記 (h) 力 S、 配列番号 21に示される MAEG蛋白質のァミノ 酸配列と、 少なくとも 70 %の同一性を有するァミノ酸配列である、 項 21 記載の標的指向性運搬体。
項 23. 上記 (h) 、 ヒ ト由来 MAEG蛋白質のアミノ酸配列である、 項 21または 22記載の標的指向性運搬体。
項 24. 上記 (h) 力 配列番号 55に示されるアミノ酸配列であるか、 またはそれと少なくとも 90%以上の同一性を有するアミノ酸配列である、 項 21乃至 23のいずれかに記載の標的指向性運搬体。
項 25. MAMドメインをコードする遺伝子を有する核酸が、 (E) また は (F) の塩基配列を有するものである項 1記載の標的指向性運搬体; (E) 配列番号 4に示される、 MAEG蛋白質の MAMドメインをコードす る遺伝子の塩基配列、
(F) 上記塩基配列に対して、 75%以上、 好ましくは 80%以上、 より好 ましくは 85 %以上の同一性を有する塩基配列であって、 かつ当該塩基配列 によってコードされるアミノ酸配列がラミニンのひ 3鎖に結合性を有するも の。
項 26. 上記 (F) 力 ヒ ト由来 MAEG蛋白質の MAMドメインをコー ドする遺伝子の塩基配列である、 項 25記載の標的指向性運搬体。
項 27. 上記 (F) 力 配列番号 40に示される塩基配列である力、 また はそれと少なくとも 90%以上の同一性を有する塩基配列である、 項 25ま たは 26に記載の標的指向性運搬体。
項 28. MAMドメインをコードする遺伝子を有する核酸が、 (G) また は (H) の塩基配列を有するものである項 1記載の標的指向性運搬体;
(G) 配列番号 22に示される、 MAEG蛋白質をコードする遺伝子の塩基 配列、
(H) 上記塩基配列に対して、 70 %以上、 好ましくは 75 %以上、 より好 ましくは 80%以上の同一性を有する塩基配列であって、 かつ当該塩基配列 によってコードされるアミノ酸配列がラミニンの α 3鎖に結合 1"生を有するも の。
項 29. 上記 (Η) 力 ヒ ト由来 MAEG蛋白質をコードする遺伝子の塩 基配列である、 項 28記載の標的指向性運搬体。
項 30. 上記 (Η) 力 配列番号 56に示される塩基配列である力、 また はそれと少なくとも 90%以上の同一性を有する塩基配列である、 項 28ま たは 29に記載の標的指向性運搬体。
項 31. 毛包、 皮膚 (表皮) 、 または肺に対して指向性を有することを特 徴とする請求項 1 7乃至 30のいずれかに記載する標的指向性運搬体。 項 32. 発現ベクターの形態を有する、 項 1乃至 31のいずれかに記載す る標的指向性運搬体。
項 33. 項 1乃至 31のいずれかに記載の標的指向性運搬体に、 標的組織 に輸送するための薬物が結合されてなる標的指向性薬物複合体。
項 34. 標的指向性薬物複合体が、 ペプチドまたはタンパクからなる薬物 を結合してなるポリペプチド形態を有するか、 または核酸 (遺伝子を含む) からなる薬物を結合してなるポリヌクレオチド形態を有するものである、 請 求項 33に記載する標的指向性薬物複合体。
項 35. 項 33または 34に記载する標的指向性薬物複合体を有効成分と して含む医薬組成物。
項 3 6 . 標的指向性薬物として、 項 3 3または 3 4に記載する標的指向性 薬物複合体を用いることを特徴とする、 ドラッグデリバリーシステムまたは ターゲッティング療法。
項 3 7 . MAMドメインもしくはそれを一部に有するポリペプチド、 また は MAMドメインもしくはそれを一部に有するポリペプチドをコードする遺 伝子を有する核酸の、 所望の物質を結合させて該物質を標的組織に輸送する ために用いられる標的指向性運搬体の調製のための使用。
項 3 8 . 項 1乃至項 3 2のいずれかに記載の標的指向性運搬体の、 標的組 織に輸送するための薬物が結合されてなる標的指向性薬物複合体の調製のた めの使用。
項 3 9 . 項 1乃至項 3 2のいずれかに記載の標的指向性運搬体に薬物が結 合されてなる標的指向性薬物複合体の、 標的組織や細胞に局所的に薬物を輸 送して治療するドラッグデリバリーシステムまたはターゲッティング療法に おける使用。 発明を実施するための最良の形態
( 1 ) 標的指向性運搬体
前述するように、 ラミニンは、 そのひ鎖に基づいて組織特異的 ·発生段階 特異的な発現を示す基底膜主要構成蛋白質である。
本発明は、 こうした組織特異的に発現するラミニンの α鎖を選択的に認識 して特異的に結合する特性を有し、 それがゆえに標的の組織に対して指向性 を有する標的指向性運搬体を提供するものである。
具体的には、 本発明の標的指向性運搬体には、 ΜΑΜドメインまたはそれ を一部に有するポリペプチドであって、 所望の薬物を結合させて、 該薬物を 標的組織に輸送するために用いられる標的指向性運搬体が含まれる。
ここで ΜΑΜドメインとは、 「meprin, A5 protein, receptor protein - tyrosine phosphatase μ -domain (メフリン、 八。 白¾、 受容体型 蛋白質チロシン脱リン酸ィ匕酵素ミュードメイン) 」 の略である。 ネフロネク チン (nephronectin) 、 MA E G蛋白質 (ヒ トについては ("Genomics 62, p. 304-307, 1999」 、 マウスについては 「Genomics 65, p. 1623, 2000」 ) 、
メプリン (meprin) 及びメプリン β (The Journal of Biochemistry, Vol. 276, No. 25, p. 23207-23211, 2001) 、 ニューロピリン (neuropilin) 1及ぴニュ 一口ピリン 2 (Neuron, Vol. 21, p. 1283- 1290, 1998) 、 R P T P (受容体型 蛋白質チロシン脱リン酸ィ匕酵素: Receptor Protein -Tyrosine
Phosphatase) κ及ぴ R P T P μ (The Journal of Biological Chemistry p. 14247-14250, 1995)などは、 いずれも共通して MAMドメインを有する蛋 白質で ¾>る (Beckmann, G. , and Bork, P. ; Trends in Biochemical Science Vol. 18, 1993, p. 40-41) 。 なお、 MAMドメインは、 メプリン、 ニューロピ リン (A5 proteinとニューロピリンは同義である) 、 R P T P /zなどについ て、 MAMドメィン間での相互作用、 及び二量体や多量体形成に必要といわ れているものの、 詳細な機能については知られていない。
ミノ酸配列を配列番号 1 ; M A E G 蛋白質の MAMドメインのアミノ酸配列を配列番号 3 ; メプリンひの MAM ドメインのアミノ酸配列を配列番号 5 ;メプリン ]3の MAMドメインのアミ ノ酸配列を配列番号 7 ;ニューロピリン 1の MAMドメインのアミノ酸配列 を配列番号 9 :ニューロピリン 2の M AMドメインのアミノ酸配列を配列番 号 1 1 : R P T P /Cの MAMドメインのアミノ酸配列を配列番号 1 3 : R P T P μの MAMドメインのァミノ酸配列を配列番号 1 5に示す。 ここに記載 する MAMドメインのアミノ酸配列はその一例であるマウスに由来するもの であるが、 他の例としては、 上記配列が由来する生物種に類似もしくは近似 する種 (例えば、 哺乳類に属する種、 好ましくはヒ ト) に由来する、 各種蛋 白質の MAMドメィンのァミノ酸配列を挙げることができる。
例えば、 上記マウス由来の各種 MAMドメインのアミノ酸配列と、 ヒ ト由 来の各種 MAMドメィンのァミノ酸配列との関係を示すと、 下表の通りであ る。 なお、 ここでアミノ酸配列の同一性 (相同性) は、 ゼネテイツクス社製 遺伝子解析ソフトの GENETIX- Mac ver. 12. 2. 4の、 homology search engineに 基づくものである 〔以下に述べるアミノ酸配列、並びに塩基配列の同一性(相 同性) においても同じ。 〕 。
MAMドメインが マウスの ヒ トの ヒト配列とマウス 由来する蛋白質 アミノ酸配列 アミノ酸配列 配列との同一性 ネフロネクチン SEQ. NO. 1 SEQ. NO. 37 99. 3 %
MA E G蛋白質 SEQ. NO. 3 SEQ. NO. 39 85. 2%
メプリン α SEQ. NO. 5 SEQ. NO. 41 79. 4 %
メプリン 13 SEQ. NO. 7 SEQ. NO. 43 77. 1 %
ニューロピリン 1 SEQ. NO. 9 SEQ. NO. 45 96. 4 %
ニューロピリン 2 SEQ. NO. 11 SEQ. NO. 47 89. 5 %
R P T P κ SEQ. NO. 13 SEQ. NO. 49 98. 8 %
R P T P ζ SEQ. NO. 15 SEQ. NO. 51 93. 9 %
MA E G蛋白質の MAMドメインを挙げることができる。
マウスに由来するネフロネクチンの MAMドメインのアミノ酸配列を配列 番号 1に示す。但し、本発明の標的指向性運搬体が有する MAMドメインは、 これに限定されることなく、 例えば当該 MAMドメィンのァミノ酸配列と相 同性を有する同等物であってもよい。 かかる同等物としては、 上記配列番号 1のアミノ酸配列において、 1若しくは複数のアミノ酸が欠失、 置換または 付加されたアミノ酸配列を有し、 かつラミニンのひ 4鎖またはひ 5鎖に結合 性を有するアミノ酸配列を有するものを挙げることができる。 なお、 相同性 の範囲としては、 ァミノ酸配列が配列番号 1に対して 8 0 %以上、 好ましく は 8 5 %以上、 より好ましくは 9 0 %以上、 さらに好ましくは 9 5 %以上の 同等性を有する範囲を挙げることができる。具体的には、マウス以外の動物、 好ましくは哺乳類に由来するネフロネクチンの MAMドメインを挙げること ができる。 特に好ましくはヒ ト由来のネフロネクチンの MAMドメインであ る。 ヒ ト由来のネフロネクチンの MAMドメインとしては、 配列番号 1 (マ ウス由来のネフロネクチンの MAMドメインのアミノ酸配歹 IJ)に対して 9 0 %以 上、好ましくは 9 5 %以上の同一性を有しているものを挙げることができる。 上記の表に示すヒト由来のネフロネクチンの MAMドメイン(配列番号 3 7 ) はその一例である。
なお、 ラミニンの α 4鎖または α 5鎖に対する結合性は、 後述する実験例 3 ( 1 ) に記載する固相結合アツセィ (酵素結合免疫吸着検定) または実験 例 3 ( 2 ) に記載する免疫共沈降アツセィ (酵素結合免疫吸着検定) など、
当業者に公知の方法を用いて評価することができる。
マウスに由来する M A E G蛋白質の M AMドメインのァミノ酸配列を配列 番号 3に示す。 上記と同様、 本発明の標的指向性運搬体が有する MAMドメ インは、 これに限定されることなく、 例えば当該 MAMドメインのアミノ酸 配列と相同性を有する同等物であってもよい。 かかる同等物としては、 上記 配列番号 3のアミノ酸配列において、 1若しくは複数のアミノ酸が欠失、 置 換または付カ卩されたアミノ酸配列を有し、 かつラミニンのひ 3鎖に結合性を 有するアミノ酸配列を有するものを挙げることができる。 なお、 相同性の範 囲としては、 アミノ酸配列が配列番号 3に対して 70%以上、 好ましくは 7 5%以上、 より好ましくは 80%以上、 さらにより好ましくは 85%以上の 同等性を有する範囲を挙げることができる。具体的には、マウス以外の動物、 好ましくは哺乳類に由来する MAE G蛋白質の MAMドメィンを挙げること ができる。 特に好ましくはヒ ト由来の MA EG蛋白質の MAMドメインであ る。 ヒ ト由来の MAEG蛋白質の MAMドメインとしては、 配列番号 3 (マ ウス由来の MAEG蛋白質の MAMドメインのアミノ酸配歹 IJ)に対して 80 %以 上、好ましくは 85%以上の同一性を有しているものを挙げることができる。 具体的には上記表に示すヒ ト由来の MAEG蛋白質の MAMドメイン (配列 番号 39) を挙げることができる。
なお、 ラミニンのひ 3鎖に対する結合性は、 後述する実験例 3 (1) に記 載する固相結合アツセィ (酵素結合免疫吸着検定) または実験例 3 (2) に 記載する免疫共沈降アツセィ (酵素結合免疫吸着検定) など、 当業者に公知 の方法を用いて評価することができる。
また本発明の標的指向性運搬体は、 MAMドメィンを一部に有するポリぺ プチドからなるものであってもよい。 かかるものとしては、 本発明の効果を 損なわないことを限度として、 MAMドメインを一部に含むポリペプチドを 広く例示することができるが、 具体的には、 ネフロネクチンの全長蛋白質、 ネフロネクチンの MAMドメインと RGDリンカー部位との結合体、 ネフ口 ネクチンの M AMドメインと EGFドメインまたはその繰り返し配列との結 合体、 MAEG蛋白質、 メプリンひ、 メプリン β、 ニューロピリン 1、 ニュ —口ピリン 2、 RPTP κ、 及ぴ RPTP iなどを例示することができる。
なお、 ヒ トに由来するネフロネクチン相当物の配列は、 「Journal of Biological Chemistry, Vol.276, No.45, pp.42172 - 42181, 2001」 に、 MA EG蛋白質 (ヒ トでは EGFL6とも称される) の配列は 「腿 _015507」 に、 メプ リン αの配列は 「匪— 005588 (Genbank accesion Number, 以下同じ) 」 に、 メプリン の配列は「ΝΜ— 005925」に、ニューロピリン 1の配列は「匪— 003873」 に、 ニューロピリン 2の配列は 「AF281074」 に、 及ぴ R ΡΤΡ κの配列は
「Ζ70660」 に, RPTP/ の配列は 「匪— 002845」 に、 それぞれ記載されてい る。
MAMドメインを一部に有するポリべプチドとして、 好ましくはネフロネ クチン (全長) 、 及ぴ MAEG蛋白質を挙げることができる。
マゥス由来のネフロネクチンには、選択的スプライシングによつて 561ァミ ノ酸からなる short formと 609アミノ酸からなる long formとが存在すること が知られている (The Journal of Cell Biology, Vol.154, No.2, 2001, 447-458) 。 short formのネフロネクチン (マウス) のアミノ酸配列を配列番 号 1 7に、 long formのネフロネクチン (マウス) のアミノ酸配列を配列番号 1 9にそれぞれ示す。 なお、 short formのネフロネクチン (マウス) は、 そ の 420〜561アミノ酸領域に 「MAMドメイン」 を有しており 〔N末端から順 に、 「シグナルペプチド」 - 19aa) 、 「EGF繰り返し配列」 ( 「EGF 様ドメイン 1」 (57- 88aa) 、 「EGF様ドメイン 2」 (89_127aa) 、 「EG F様ドメイン 3」 (128 - 168aa) 、 「EGF様ドメイン 4」 (169 - 212aa) 、
「EGF様ドメイン 5」 (213-253aa))、 「RGDリンカ一部位」 (254_419aa)、 及ぴ 「MAMドメイン」 (420- 561aa) から構成される〕 、 long formのネフ ロネクチン (マウス) は、 その 468〜609アミノ酸領域に 「M AMドメイン」 を有している 〔N末端から順に、 「シグナルペプチド」 (l_19aa) 、 「alternative splicing region 1」 (59- 75aa)、 「EGF ドメイン 1」
(76-105aa) 、 「alternative splicing region 2」 (106 - 136aa)、 「EGF 様ドメイン 2」 (137— 175aa) 、 「EGF様ドメイン 3」 (176-215aa) 、 「E GF様ドメイン 4」 (216- 260aa)、 「EGF様ドメイン 5」 (261- 301aa) 、 「RGDリンカー部位」 (302-467aa)、及ぴ「MAMドメイン」 (468_609aa) から構成される〕 。
ただし、 本発明の標的指向性運搬体が有するポリペプチドは、 これに限定 されることなく、 例えば当該マウス由来のネフロネクチンのアミノ酸配列と 相同性を有する同等物であってもよい。 かかる同等物としては、 上記マウス 由来のネフロネクチンのアミノ酸配列を示す配列番号 1 7 (short form) ま たは配列番号 1 9 (long form)において、 1若しくは複数のアミノ酸が欠失、 置換または付加されたアミノ酸配列を有し、 かつラミニンの α 4鎖またはひ 5鎖に結合性を有するアミノ酸配列を有するものを挙げることができる。 な お、 相同性の範囲としては、 ァミノ酸配列が配列番号 1 7または 1 9に対し て 7 0 %以上、 好ましくは 7 5 %以上、 より好ましくは 8 0 %以上の同等性 を有する範囲を挙げることができる。 具体的には、 マウス以外の動物、 好ま しくは哺乳類に由来するネフロネクチンを挙げることができる。 特に好まし くはヒ ト由来のネフロネクチンである。ヒト由来のネフロネクチンとしては、' 配列番号 1 7 〔マウス由来のネフロネクチン (short form) のァミノ酸配列〕 に対して 7 5 %以上、 好ましくは 8 0 %以上の同一性を有しているものを挙 げることができる。 配列番号 5 3に示すアミノ酸配列は、 現在報告されてい るヒ ト由来のネフロネクチンのアミノ酸配列である。当該ネフロネクチンは、 マウス由来のネフロネクチン (配列番号 1 7 : short form) に対して、 8 0 %以上 (詳細には 8 2 . 6 %) の同一性を有している。 このヒト由来のネフ ロネクチンは、 その 391〜509アミノ酸領域に 「MAMドメイン」 を有してお り、 N末端から順に 「シグナルペプチド」 (1 - 19aa) 、 「E G F繰り返し配 歹 [J」 (「E G F様ドメイン 1」 (57 - 88aa)、 「E G F様ドメイン 2」 (89— 127aa)、 「E G F様ドメイン 3」 (128- 168aa)、 「E G F様ドメイン 4」 (169 - 212aa)、 「E G F様ドメイン 5」 (213- 253aa) )、 「R G Dリンカ一部位」 (254 - 390aa)、 及び 「MAMドメイン」 (391 - 509aa) から構成されている。 伹し、 本発明が 対象とするヒト由来のネフロネクチンはこれに限定されず、前述するように、 配列番号 1 7に対して 7 5 %以上、 好ましくは 8 0 %以上の同一性を有する ヒ ト由来ネフロネクチンであればよい。
マウス由来の MA E G蛋白質のアミノ酸配列を配列番号 2 1に示す。 当該 MA E G蛋白質は 5 5 0アミノ酸から構成され、 その 395〜550アミノ酸領域 に MAMドメインを有している。 上記と同様、 本発明の標的指向性運搬体が
有するポリペプチドは、 これに限定されることなく、 例えば当該 MAEG蛋 白質のアミノ酸配列と相同性を有する同等物であってもよい。 かかる同等物 としては、 上記配列番号 2 1のアミノ酸配列において、 1若しくは複数のァ ミノ酸が欠失、 置換または付加されたアミノ酸配列を有し、 かつラミニンの ひ 3鎖に結合性を有するアミノ酸配列を有するものを挙げることができる。な お、 相同性の範囲としては、 ァミノ酸配列が配列番号 2 1に対して 6 5 %以 上、 好ましくは 70%以上、 より好ましくは 7 5%以上の同等性を有する範 囲を挙げることができる。 具体的には、 マウス以外の動物、 好ましくは哺乳 類に由来する MAEG蛋白質を挙げることができる。 特に好ましくはヒト由 来の MAEG蛋白質である。 ヒ ト由来の MAEG蛋白質としては、 配列番号 2 1 〔マウス由来の MAEG蛋白質のアミノ酸配列〕 に対して 7 0%以上、 好ましくは 7 5%以上の同一性を有しているものを挙げることができる。 現' 在報告されているヒト由来の MAEG蛋白質のアミノ酸配列を配列番号 5 5 に示すが、 当該 MAEG蛋白質は、 配列番号 2 1で示されるマウス由来の M AEG蛋白質に対して、約 7 5%以上 (詳細には 7 7. 6%) の同一性を有し ている。
以上のぺプチド又はポリべプチドの形態を有する標的指向性運搬体によつ て、 標的細胞または組織に運搬することのできる目的物質としては、 ァミノ 酸、 ポリアミノ酸、 ペプチド、 ポリペプチド、 及び蛋白質等の形態を有する ものを挙げることができる。
また本発明の標的指向性運搬体は、 上記ポリぺプチドの形態を有するもの 以外に、 核酸の形態を有するものであってもよい。 すなわち、 本発明の標的 指向性運搬体には、 MAMドメインもしくはそれを一部に有するポリべプチ ドをコードする遺伝子を有する核酸であって、 所望の薬物を結合させて、 該 薬物を標的組織に輸送するために用いられる標的指向性運搬体が含まれる。
MAMドメインをコードする遺伝子としては、 ネフロネクチン、 MAEG 蛋白質、 メプリンひ、 メプリン β、 ェユーロピリン 1、 ニューロピリン 2、 RP TP κ、 または R ΡΤΡ μなどの各種蛋白質の MAMドメインをコード する遺伝子を挙げることができる。 マウス由来のネフロネクチンの MAMド メイン (ポリぺプチド) をコードする遺伝子の塩基配列は配列番号 2 ; MA
E G蛋白質の MAMドメイン (ポリペプチド) をコードする遺伝子の塩基配 列は配列番号 4 ;メプリン αの MAMドメイン (ポリぺプチド) をコードす る遺伝子の塩基配列は配列番号 6 ; メプリン βの MAMドメイン (ポリぺプ チド) をコードする遺伝子の塩基配列は配列番号 8 ;ニューロピリン 1の M AMドメイン (ポリペプチド) をコードする遺伝子の塩基配列は配列番号 1 0 : ニューロピリン 2の MAMドメイン (ポリペプチド) をコードする遺伝 子の塩基配列は配列番号 1 2 : R P T P Kの MAMドメイン (ポリぺプチド) をコードする遺伝子の塩基配列は配列番号 1 4 : R P T P の MAMドメイ ン (ポリぺプチド) をコードする遺伝子の塩基配列は配列番号 1 6に記載の 通りである。 なお、 これらに限定されることなく、 本発明が対象とする核酸 には、 マウス以外の動物、 好ましくは哺乳類に由来する上記各種蛋白質の M AMドメインをコードする遺伝子が含まれる。 より好ましくはヒ ト由来する' 上記各種蛋白質の MAMドメイン (ポリペプチド) をコードする遺伝子であ る。
例えば、 上記マウス由来の各種 MAMドメインをコードする遺伝子の塩基 配列と、 ヒ ト由来の各種 M AMドメインをコードする遺伝子の塩基配列との 関係は、 下表の通りである。
MAMドメインをコードする遺伝子として、 好ましくはネフロネクチンの MAMドメインをコードする遺伝子及び MA E G蛋白質の MAMドメインを コードする遺伝子を挙げることができる。
マウスのネフロネクチンの M AMドメインをコードする遺伝子の塩基配列
を配列番号 2に示すが、 本発明の標的指向性運搬体 (核酸) が有する遺伝子 は、 これに限定されることなく、 例えば当該 MAMドメイン遺伝子の塩基配 列と相同性を有する機能同等物であってもよい。かかる機能同等物としては、 上記配列番号 2の塩基配列の相補的配列に対してストリンジェントな条件で ハイブリダイスする塩基配列を有し、 かつその発現産物 (ポリペプチド) 力 S ラミニンの α 4鎖または α 5鎖に結合性を有するものを挙げることができる。 なお、 相同性の範囲としては、 塩基配列が配列番号 2に対して 7 0 %以上、 好ましくは 8 0 %以上、 より好ましくは 8 5 %以上、 更に好ましくは 9 0 % 以上の同等性を有する範囲を挙げることができる。 具体的には、 マウス以外 の動物、 好ましくは哺乳類に由来するネフロネクチンの ΜΑΜドメインをコ ードする遺伝子を挙げることができる。 好ましくはヒトに由来するネフロネ クチンの ΜΑΜドメインをコードする遺伝子を挙げることができる。 ヒト由 · 来のネフロネクチンの ΜΑΜドメインをコードする遺伝子としては、 配列番 号 2 (マウス由来のネフロネクチンの ΜΑΜドメインをコードする塩基配列) に 対して 8 5 %以上、 好ましくは 9 0 %以上の同一性を有しているものを挙げ ることができる。 上記の表に示すヒト由来のネフロネクチンの ΜΑΜドメイ ンの遺伝子をコードする塩基配列 (配列番号 3 8 ) はその一例である。
マウス由来の MA E G蛋白質の ΜΑΜドメインをコードする遺伝子の塩基 配列を配列番号 4に示すが、 本発明の標的指向性運搬体 (核酸) が有する遺 伝子は、 これに限定されることなく、 例えば当該 ΜΑΜドメイン遺伝子の塩 基配列と相同性を有する機能同等物であってもよい。 かかる機能同等物とし ては、 上記配列番号 4の塩基配列の相補的配列に対してストリンジヱントな 条件でハイブリダイスする塩基配列を有し、 かつその発現産物 (ポリべプチ ド)がラミニンの 3鎖に結合性を有するものを挙げることができる。なお、 相同性の範囲としては、 塩基配列が配列番号 4に対して 7 0 %以上、 好まし くは 7 5 %以上、 より好ましくは 8 0 %以上、 更に好ましくは 8 5 %以上の 同等性を有する範囲を挙げることができる。具体的には、マウス以外の動物、 好ましくは哺乳類に由来する MA E G蛋白質の ΜΑΜドメインをコードする 遺伝子を挙げることができる。 好ましくはヒトに由来する MA E G蛋白質の MAMドメインをコードする遺伝子を挙げることができる。 ヒト由来の MA
E G蛋白質の MAMドメインをコードする遺伝子としては、 配列番号 4 (マ ウス由来の MA E G蛋白質の MAMドメインをコードする塩基配列)に対して 8 0 %以上、 好ましくは 8 5 %以上の同一性を有しているものを挙げることが できる。 上記の表に示すヒト由来の MA E G蛋白質の MAMドメインの遺伝 子をコードする塩基配列 (配列番号 4 0 ) はその一例である。
また本発明の標的指向性運搬体 (核酸) は、 MAMドメインを一部に有す るポリべプチドをコ一ドする遺伝子を有するものであってもよい。 MAMド メインを一部に有するポリペプチド (蛋白質を含む) としては前述するよう に、 具体的には、 ネフロネクチンの全長蛋白質、 ネフロネクチンの MAMド メインと R G Dリンカ一部位との結合体、 ネフロネクチンの MAMドメィン と E G Fドメインまたはその繰り返し配列との結合体、 MA E G蛋白質、 メ プリンひ、 メプリン j8、ニューロピリン 1、ニューロピリン 2、 R P T P K 、 ' 及ぴ R P T P μなどを例示することができる。
ΜΑΜドメインを一部に有するポリペプチドをコードする遺伝子として、 好ましくはネフロネクチン (全長) をコードする遺伝子、 及び MA E G蛋白 質をコードする遺伝子を挙げることができる。
マウスに由来するネフロネクチンをコードする遺伝子の塩基配列を配列番 号 1 8 (short form) 及び 2 0 (long form) に示す。 ただし、 本発明の標的 指向性運搬体が有する核酸は、 これに限定されることなく、 例えば当該ネフ ロネクチンの遺伝子の塩基配列と相同性を有する機能同等物であってもよい。 かかる機能同等物としては、 上記配列番号 1 8または 2 0の塩基配列の相補 的配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイスする塩基配列を有 し、 かつその発現産物 (ポリペプチド) がラミニンの α 4鎖またはひ 5鎖に結 合性を有するものを挙げることができる。 なお、 相同性の範囲としては、 塩 基配列が配列番号 1 8または 2 0に対して 7 0 %以上、 好ましくは 7 5 %以 上、より好ましくは 8 0 %以上の同等性を有する範囲を挙げることができる。 具体的には、 マウス以外の動物、 好ましくは哺乳類に由来するネフロネクチ ンをコードする遺伝子を挙げることができる。 特に好ましくはヒト由来のネ フロネクチンをコードする遺伝子である。 ヒト由来のネフロネクチンをコー ドする遺伝子としては、配列番号 1 8 〔マウス由来のネフロネクチン (short
form) をコードする遺伝子の塩基配列〕 に対して 75 %以上、 好ましくは 8 0%以上の同一性を有しているものを挙げることができる。 配列番号 54に 示すアミノ酸配列は、 現在報告されているヒト由来のネフロネクチンをコー ドする遺伝子の塩基配列である。 当該塩基配列は、 マウス由来の遺伝子の塩 基配列 (配列番号 1 8 : short form) に対して、 80 %以上(詳細には 82. 6%) の同一性を有している。
マウスに由来する MAEG蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列を配列番 号 22に示す。 上記と同様、 本発明の標的指向性運搬体が有する核酸は、 こ れに限定されることなく、 例えば当該 MAE G蛋白質の遺伝子の塩基配列と 相同性を有する機能同等物であってもよい。 力かる機能同等物としては、 上 記配列番号 22の塩基配列の相補的配列に対してストリンジェントな条件で ハイブリダイスする塩基配列を有し、 かつその発現産物 (ポリペプチド) が' ラミニンのひ 3鎖に結合性を有するものを挙げることができる。 なお、相同性 の範囲としては、 塩基配列が配列番号 22に対して 70 %以上、 好ましくは 75%以上、 より好ましくは 80%以上の同等性を有する範囲を挙げること ができる。 具体的には、 マウス以外の動物、 好ましくは哺乳類に由来する M AEG蛋白質をコードする遺伝子を挙げることができる。 特に好ましくはヒ ト由来の MAEG蛋白質をコードする遺伝子である。 ヒト由来の MAEG蛋 白質をコードする遺伝子としては、 配列番号 22 〔マウス由来の MAEG蛋 白質をコードする遺伝子の塩基配列〕 に対して 75%以上、 好ましくは 80 %以上の同一性を有しているものを挙げることができる。 配列番号 56に示 すアミノ酸配列は、 現在報告されているヒト由来の MAEG蛋白質をコード する遺伝子の塩基配列である。 当該塩基配列は、 マウス由来の遺伝子の塩基 配列 (配列番号 22) に対して、 80%以上 (詳細には 82. 6%) の同一 性を有している。
以上のポリヌクレオチド (核酸) の形態を有する標的指向性運搬体によつ て、 標的細胞または組織に運搬することのできる目的物質としては、 オリゴ ヌクレオチド、 ポリヌクレオチド等の形態を有するものを挙げることができ る。
なお、 当該標的指向性運搬体 (核酸形態) は、 MAMドメイン若しくは M AMドメインを一部に有するポリべプチドをコ一ドする遺伝子を、 発現可能 な状態で他の塩基配列に組み込まれてなる、 所謂発現ベクター (発現カセッ ト) の形態で有するものであってもよい。
本発明で用いられる発現ベクターは、 上記 MAMドメイン若しくは MAM ドメインを一部に有するポリペプチド (以下、 これらを纏めて 「目的のポリ ペプチド」 という) をコードする遺伝子を、 標的細胞内 (好ましくは哺乳類 由来の細胞内、 よりこのヒ ト生体内) で発現 ·機能可能な状態で含むもので あればよい。
一般に発現ベクターは、 目的のポリペプチドを、 対象とする宿主内で発現 させるために、 転写の下流方向順に必要に応じて(1)プロモーター機能領域、 (2)リポソーム結合部位、 (3)翻訳開始コドン、 (4)シグナルべプチドをコ一ド する塩基配列をもつ D N A、 (5) 目的のポリペプチドをコードする塩基配列 をもつ D N A、 (6)翻訳終始コドン、 (7)ターミネータ一、 (8)宿主中で自己複 製可能な自律性複製配列 (レブリコン) 、 (10)相同領域等を、 含むように構 築される。
なお、 ここで発現可能とは、 発現ベクターを所望の細胞若しくは生体内に 導入した場合に、 発現ベクターが目的のポリぺプチドをコ一ドする遺伝子を 発現するように機能することを意味する。 また、 機能可能とは、 発現べクタ 一を生体内に導入した場合に、 発現ベクターが目的のポリペプチドをコード する遺伝子を発現し、 目的のポリぺプチドを産生するように機能することを 意味する。 かかる発現ベクターは、 当業界の遺伝子工学的手法を用いること によって作成することができる。
より好ましくは、 哺乳類由来の細胞内で遺伝子発現が可能な発現ベクター (発現カセット) であり、 特に好ましくは、 ヒト由来の細胞内で遺伝子発現 が可能な発現カセットである。 発現カセットに用いられる遺伝子プロモータ 一には、 例えばアデノウィルス、 サイトメガロウィルス、 ヒト免疫不全ウイ ノレス、 シミアンウィルス 40、 ラウス肉月重ゥイノレス、 単純へノレぺスゥイノレス、 マウス白血病ウィルス、 シンビスウィルス、 センダイウィルス、 A型肝炎ゥ ィルス、 B型肝炎ウィルス、 C型肝炎ウィルス、 バピローマウィルス、 ヒ ト
T細胞白血病ウィルス、 インフルエンザウイルス、 日本脳炎ウィルス、 J C ウィルス、 バルボウイルス Β 1 9、 ポリオウイルス等のウィルス由来のプロ モーター、 アルブミンや熱ショック蛋白等の哺乳類由来のプロモーター、 C A Gプロモーター等のキメラ型プロモーター等が含まれる。
遺伝子によってコードされた目的の運搬物質 (被運搬物質) を、 細胞外に 分泌おょぴ zまたは細胞内の局所に滞留させるためのシグナル配列としては、 細胞外への分泌を補助するィンターロイキン 2由来のシグナルぺプチド (駒 田富佐夫、 日本薬学会第 115年会講演要旨集 4, 12, 1995) や核局在化を促進 するアデノウィルス Ela由来のぺプチド、ポリオ一マウィルスラージ T抗原由 来のペプチド、 SV40ラージ T抗原由来のペプチド、 ヌクレオプラスミン由来 のペプチド、 HTLVlp24転写後調節蛋白質由来のペプチド (Kalderon, D. , et al. , Cell, 39, 499, 1984) 等を用いることができる。
上記の発現ベクター (発現カセット) は、 遺伝子工学的手法に従って、 所 望の目的の運搬物質 (被運搬物質) の遺伝子 (例えば、 生理活性ペプチドを コードする遺伝子など) (以下、 「薬物遺伝子」 ともいう) を導入すること により、 いわゆる 「標的指向性薬物複合体」 の形態として、 遺伝子治療に使 用することができる。 発現ベクター (発現カセット) に薬物遺伝子を導入す る一つの方法として、 発現ベクター (発現カセット) に組み込む上記 「(5) 目的のポリペプチドをコードする塩基配列をもつ D N A」 として、 MAMド メイン若しくは M AMドメインを一部に有するポリペプチドと薬物 (生理活 性ペプチドなど) とが融合したポリペプチド (目的のポリペプチド) をコー ドする遺伝子を用レ、る方法を挙げることができる。
本発明は、 患者から標的細胞を体外に取り出し、 これに薬物遺伝子を上記 「標的指向性薬物複合体」 を用いて導入した後に、 再びその細胞を患者の体 内に戻すという自家移植による遺伝子治療 (ex vivo遺伝子治療) に使用可能 である。 また、 薬物遺伝子を上記 「標的指向性薬物複合体」 を用いて直接患 者に投与する遺伝子治療 (in vivo遺伝子治療) にも使用可能である。 また、 遺伝子治療の方法として、異常 (原因)遺伝子をそのままにして、新しい (正 常) 遺伝子を付け加える方法 (Augmentation Gene Therapy) と、 異常遺伝子 を正常遺伝子で置き換える方法 (Replacement Gene Therapy) に大別できる
力 本発明の発現ベクター (核酸運搬体) はどちらにも使用可能である。
(2) 標的指向性薬物複合体
このように、 本発明は、 前述する標的指向性運搬体に所望の目的物質を結 合させたものを予防 ·治療用組成物または化粧料組成物として提供するもの でもある。 当該目的物質としては、 薬効や生理学的活性を有する物質を挙げ ることができる。 以下、 こうした物質を、 本明細書中では単に 「薬物」 と称 する。
本発明の標的指向性運搬体に結合して用いられる薬物としては、 それに結 合できるものであれば特に制限されないが、 本発明の標的指向性運搬体がポ リぺプチドの形態の場合は生理活性べプチドゃ抗体などを、 また核酸の形態 の場合は生理活性ペプチドをコードする遺伝子、 iRNA、アンチセンスなど を例示することができる。
ここで生理活性べプチドとは、 種々の生理活性を有するぺプチド、 ポリべ プチド及ぴタンパク質の総称であり、 例えばサイトカイン、 細胞成長因子が 挙げられる。 例えば、 繊維芽細胞増殖因子 (FGF) ファミリー、 トランス フォーミング増殖因子 j3 (TGF— ) ファミリー、 上皮増殖因子 (EGF) フアミリー、血小板由来増殖因子(PDGF) 、インシュリン様増殖因子(I GF) 、 神経増殖因子 (NGF) ファミリー、 血管内皮細胞増殖因子 (VE GF) 、肝細胞増殖因子 (HGF)等の細胞増殖因子類及び骨形成因子類(B MP類)等の細胞分化因子類を含む細胞成長因子並ぴにィンターフェロン( I FN) 類、 インターロイキン (I L) 類、 コロニー刺激因子 (CS F) 類、 エリスロポエチン、 腫瘍壊死因子 (TNF) 等を含むサイトカイン類、 若し くはインシュリン、 パラチロイ ドホルモン (PTH) 等の各種ホルモン類ま たはマトリックスメタ口プロテアーゼ (MMP) 類等のプロテアーゼ等の酵 素類、 並びに T IMP (Tissue Inhibitor of Metalloprotease) 等の酵素阻 害剤などを挙げることができる。
本発明の標的指向性運搬体が、 ポリペプチドの形態である場合、 標的指向 性薬物複合体は、 標的指向性運搬体と例えば上記生理活性べプチド等とのハ イブリッドボリぺプチドとして提供される。 当該ハイブリッドボリぺプチド
は、 標的指向性運搬体 (ポリペプチド) をコードする遺伝子と生理活性ぺプ チド等をコードする遺伝子とが遺伝子工学的手法により連結された状態の核 酸を用いて、バクテリア (好ましくは Esherichia coli)、真核細胞(酵母)、 昆虫細胞または動物細胞を利用して工業的に生産することができる。 また、 本発明の標的指向性運搬体が、 核酸の形態である場合、 標的指向性薬物複合 体は、 標的指向性運搬体 (核酸) と例えば上記生理活性ペプチドをコードす る遺伝子等とのハイプリッド遺伝子として提供され、 細胞内もしくは生体内 でハイブリッドポリべプチドとして産生される。
本発明のハイブリッドボリぺプチド (標的指向性薬物複合体) 、 もしくは 本発明のハイブリッド遺伝子 (標的指向性薬物複合体) 力 ら生成されるハイ プリッドポリペプチドは、 標的指向性運搬体 (またはその発現物) が有する 特定のラミニンに対する特異的な結合活性に基づいて、 組織指向性を備えで いる。
ゆえに本発明の標的指向性薬物複合体は、 ドラッグデリパリ一システムま たはターゲッティング療法に有効に利用することができる。 特に、 標的指向 性運搬体としてネフロネクチンの MAMドメインを利用した場合 (一部にネ フロネクチンの MAMドメインを含むものを含む。 例えばネフロネクチンそ のものも含まれる。) は、 当該標的指向性運搬体が備える新生血管、大血管、 腎臓、 肺、 または膝臓に対する特異的組織結合性に基づいて、 所望の薬物を これらの組織に指向させることができ、その結果、当該臓器における濃度(局 所濃度) を高く維持し、 薬物の有効性を高めることができる。 またそれと同 時に、 薬物が他部位へ拡散して生じる副作用を防ぐこともできる。 具体的に は、 例えば従来より腎炎治療に H G Fが使用されていることから、 薬物とし て H G Fを用いた標的指向性薬物複合体によれば、 H G F単独よりも腎炎を 効果的に治療することが可能となる。 また、 薬物として抗癌剤を用いた標的 指向性薬物複合体によれば、 上記臓器 (腎臓、 肺、 または脖臓) に特異的に 抗癌剤を指向させることができ、 これにより、 副作用を抑制しながら、 これ らの臓器における癌の治療、及ぴ進展予防を行うことが可能である。例えば、 従来より腎癌の治療に使用されているインターロイキン一 2やインターフエ ロン一 αの有効率は 1 5 %程度に過ぎないが、 本発明の標的指向性運搬体を
利用することで腎臓への移行性及び局在性を高め、 有効率をより向上させる ことが可能であると期待される。 また、 肺癌治療剤としてハーセプチン (抗 体医薬) などが知られているが、 これについても同様である。
また近年、 血管の新生を抑制することによって癌の進展や転移を抑制でき ることが知られている。 従って、 薬物として血管新生抑制剤 (例えば、 イン テグリン α 2阻害剤などが知られている。 ) を用いた標的指向性薬物複合体 によれば、標的指向性運搬体が有する新生血管への特異的結合性に基づいて、 血管新生抑制剤を新生血管に指向させることができ、 その有効率をより向上 させることが可能であると期待される。
また、 標的指向性運搬体として MA E G蛋白質の ΜΑΜドメインを利用し た場合は (一部に MA E G蛋白質の ΜΑΜドメインを含むものを含む。 例え ば MA E G蛋白質そのものも含まれる。 ) 、 当該標的指向性運搬体が備える' 毛包、 皮膚 (表皮) 、 肺に対する特異的組織結合性に基づいて、 薬物をこれ らの組織に指向させることができ、 その結果、 当該臓器における濃度 (局所 濃度) を高く維持し、 薬物の有効性を高めることができる。 またそれと同時 に、 薬物が他部位へ拡散して生じる副作用を防ぐこともできる。 例えば、 皮 膚癌は、 近年増加する傾向にありながらもよい治療薬がない疾患の一つであ る。 従って、 これまでに開発された抗癌剤を上記標的指向性運搬体を利用す ることによつて皮膚に特異的に指向させて局在化させることができ、 その結 果、 全身性の副作用を低減しながらも、 これらの皮膚における有効な癌の治 療を行うことが可能であると期待される。
またこの手法は、 癌領域以外の疾患にも適用できる。 たとえば、 5ひリダ クターゼ阻害剤は頭髪の育毛剤として知られているが、 本発明の標的指向性 運搬体を利用して標的指向性薬物複合体の形態にすることで、 当該薬剤を頭 髪の毛包に特異的に移行させて局在化させることが可能であり、 その結果、 その効果をより一層高めることが可能であると考えられる。 また、 薬物とし て E G Fや K G F (keratinocyte growth factor) を用いた場合、 これを本 発明の標的指向性薬物複合体の形態にすることで皮膚創傷部位や切開部位に 特異的に移行させることができ、 その結果、 短時間に治癒させることが可能 である。
本発明に係る標的指向性薬物複合体は、 このように、 好ましくは医薬組成 物として生体に投与して使用されるが、 生体への投与の方法については、 特 に制限はない。例えば非経口的投与、例えば注射投与を挙げることができる。 かかる医薬組成物中には薬学的に許容できる担体や種々の添加剤を添加する ことができる。 また、 本発明に係る医薬組成物の用量は、 その使用方法、 使 用目的等により異なるが、 当業者は容易に適宜選択、 最適化することが可能 である。 例えば、 注射投与して用いる場合には、 標的指向性薬物複合体に含 まれる有効成分の量として、 1日あたり約 0. 1 // § ¾§〜100011^/1¾を投与す るのが好ましい。 より好ましくは、 1日あたり約 l i g/kg〜100 mgZkgであ る。 実 施 例
以下、 本発明を詳細に説明するために実験例を記載する。 伹し、 本発明は これらの実験例によって何ら限定されるものではない。 なお、 下記の実験例 において使用される略語の正式名称は、 下記の通りである。
B S A: bovine serum albumin (ゥシ血清ァノレブミン)
C B B : Coomasie Brilliant Blue (クーマシープリリアントブルー) E C M: extracellular matrix (細胞外マトリックス)
E D T A: ethylenediaminetetraacetic acid (エチレンジァミン四酉乍酸) E G F : epidermal growth factor (上皮増殖因子)
G S T : glutathione S- transferase (グルタチオン転移酵素)
k D : kilo dalton (キロダノレトン)
H R P : horseradish peroxidase (西洋ヮサビ過酸化酵素)
mA b : monoclonal antibody 、モノクロ一ナノレ 体)
MAM domain: meprin, Ao protein, receptor protein - tyrosine phosphatase- μ domain (メプリン、 A5蛋白質、 受容体型蛋白質チロシン脱リ ン酸化酵素ミュードメイン)
MB P : maltose-binding protein (マノレ卜ース結合蛋白質)
P B S : phosphate- buffered saline (リン酸緩衝化生理食塩水)
P C R: polymerase chain reaction (^;リメラーセ連叙反 )
PVDF : polyvinilidene difluoride (ポリビニリデンジフルオリ ド) PMS F : phenylmethylsulfonyl fluoride (フエニルメタンスルホニルフル オリ ド)
: sodium dodecy丄 sulfate po丄 yacrylamide gel
electrophoresis (ドデシル硫酸ナトリウム一ポリアタリルァミ ドゲル電気泳 動)
TB S : Tris-buffered saline (トリス緩衝化生理食塩水) 実験例 1 FLAG付きネフロネクチン (全長) 及びその欠損変異体の発 現ベクターの構築、 並びにその発現産物の精製
(1) 発現ベクターの構築
ネフロネクチン (NN) は、 EGF様繰り返し配列 (EGF- like repeat) 、· RGD細胞接着モチーフを含むリ ンカ一部位、 及ぴ MAMドメイン (MAM domain) 力 ら構成されてレヽる(Brandenberger, R. et al. , (2001) J Cell Biol 154, 447-458; Morimura, N. et al., (2001) J Biol Chem 276, 42172 - 42181)。 マウス由来のネフロネクチン (^ を用いて、 NN (全長) 、 EGF様繰り 返し配歹 (!(丽- EGFと略)、 NNから MAMドメインを欠失させたもの(ΝΝ-ΔΜΑΜ と略) 、 RGDリンカ一部位 (丽 - RGDと略) 、 及び M AMドメイン (丽- MAM と略) の各々について、 それぞれ C末端に F LAGタグ(Sigma社)を付加した 発現ベクターを構築した。 図 1に、 C末端に FLAGタグを付加した各タン パク質のドメイン構造を示す (但し、 NN - EGFは示さず) 。
(a) F LAG付き全長ネフロネクチン(NN-FLAG)の発現ベクターの構築(図 2)
丽- FLAGは、 全長 NN (マウス) の cDNAを、 3 '末端の FLAGタグとコドンが 合うように pFLAG-CMVベクターに揷入することによって作成した。具体的には、 まず、 NN (マウス)の cDNA配列(5' -非翻訳領域、 open reading frame (0RF)、 及び 3'-非翻訳領域の全てを含む 2541bp) を、 図中矢印で示すプライマー (forward primer:— 5bp力、らスタート、 Eco RI部 付さ、 reverse: 1683bp (ストップコドン削除) からスタート、 Not I部位付き) を用いて PCR増幅し、 得られた PCR産物を、 pCI-kanaベクターの Eco RI/Not I部位に揷入してベ
クターを作成した。 次いで、 このベクターを Not Iで切断し、 T4 polymerase で平滑末端に処理した後、 Eco RIで切断した。 これを、 同様に処理した pFLAG- CMV5aベクター (Pst Iで切断し、 T4 polymeraseで平滑末端に処理した 後、 Eco RIで切断処理) とライゲーシヨンして、 C末端に FLAGタグを有する 全長ネフロネクチン発現ベクターを構築した。
( b ) F L A G付き MAMドメイン欠損丽 (匪- Δ MAM-FLAG) の発現ベクターの 溝築
N N (マウス) の cDNA配列 (5, -非翻訳領域、 open reading frame (ORF)、 及び 3,-非翻訳領域の全てを含む 2541bp) を、 pBlueScriptの multi- cloning 部位 (5' -Sal I/Xho I、 3' -Bam HI部位) に揷入して調製したベクターを鎵型 と して、 図 中矢印で示す 2 種類のプライ マー 〔 forward : 5, - GAATTCGAGATCCCGGGACGC- 3, ( 配 列 番 号 2 3 ) 、 reverse :' 5' -GTCGACGTCGTCCTTTCATTCCTC-3' (配列番号 2 4 ) 〕 を用いて、 PCR法 (K0D plus DNA polymerase, T0Y0B0) により、 その- 61〜1242bpの領域を増幅した。 得られた PCR産物を、 EcoR V cut/BAP処理した pBlueScript II KS +にサブク ローニングして配列を確認した後、 Eco RI/Sal Iで切断してこれを、 同じく Eco RI/Sal Iで切断した pFLAG- CMV5aベクターにライゲーシヨンして、 C末端 に FLAGタグを有する MAMドメイン欠損ネフロネクチン (丽_ Δ MAM-FLAG) 発現 ベクターを構築した。
( c ) F L A G付き R G Dリンカ一部位 (丽- RGD- FLAG) の発現ベクターの構 築
i ) N N (マウス)の cDNA配列(5' -非翻訳領域、 open reading frame (ORF)、 及ぴ 3,-非翻訳領域の全てを含む 2541bp) を、 pBlueScriptの multi-cloning 部位 (5' -Sal I/Xho I、 3' -Bam HI部位) に揷入して調製したベクターを錶型 と して、 図 中矢印で示す 2 種類のプライ マー 〔 forward : 5, -GAATTCGAGATCCCGGGACGC- 3, ( 配 列 番 号 2 5 ) 、 reverse : 5' -GGGCCCGTCGAAGTCGGCAGC-3' (配列番号 2 6 )〕 を用いて、 PCR法(K0D plus DNA polymerase, T0Y0B0) により、 その- 61〜69bpの領域を増幅した。 得られ 广こ PCR産物を、 EcoR V cut/BAP処理した pBlueScript II KS +にサブクロー二 ングして配列を確認した。
ii) 一方、 上記 N N (マウス) の cDNA配列を含むベクターを铸型として、 図 中 矢 印 で'示 す 2 種 類 の プ ラ イ マ ー 〔 forward : 5' -GGGCCCAAAGTCATGATTGAAC-3' ( 配 列 番 号 2 7 ) 、 reverse : 5' -GTCGACGTCGTCCTTTACTTCCTC-3' (配列番号 2 8 ) を用いて、 PCR法 (LA taq polymerase, TAKARA, GCI buffer使用) により、 その 769- 1242bpの領域を増 幅した。 得られた PCR産物を、 EcoR V cut/BAP処理した pBlueScript II KS + にサブクローエングして配列を確認した。
ii i) 上記 i)及び ii)で調製した PCR産物をそれぞれ Eco RI/Apa I及び Apa 1/ Sal Iで切断してこれらを、 Eco Rl/Sal Iで切断した pFLAG - CMV5aベクターに ライゲーシヨンして、 C末端に FLAGタグを有する R G Dリンカー部位 (N -RGD-FLAG) 発現べクタ一を構築した。
( d ) F L A G付き MAMドメイン (丽- MAM-FLAG) の発現ベクターの構築
i ) N N (マウス)の cDNA配列(5,-非翻訳領域、 open reading frame (ORF)、 及び 3,-非翻訳領域の全てを含む 2541bp) を、 pBlueScriptの multi-cloning 部位 (5' - Sal I/Xho I、 3' -Bam HI部位) に揷入して調製したベクターを錄型 と して、 図 中矢印で示す 2 種類のプラ イ マー 〔 forward : 5' -GAATTCGAGATCCCGGGACGC-3' ( 配 列 番 号 2 9 ) 、 reverse : 5' -GGGCCCGTCGAAGTCGGCAGC-3' (配列番号 3 0 )〕 を用いて、 PCR法(KOD plus DNA polymerase, T0Y0B0) により、 その- 61〜69bpの領域を増幅した。 得られ た PCR産物を、 EcoR V cut /BAP処理した pBlueScript II KS +にサブクロー二 ングして配列を確認した。
ii) 一方、 上記 N N (マウス) の cDNA配列を含むベクターを铸型として、 図 中 矢 印 で 示 す 2 種 類 の プ ラ イ マ ー 〔 forward : 5' - GGGCCCGGTATTCTCATACACAGC- 3' ( 配 列 番 号 3 1 ) 、 5' -GTCGACGCAGCGACCTCTTTTCAAG-3' (配列番号 3 2 ) を用いて、 PCR法(LA taq polymerase, TAKARA, GCI buffer使用) により、 その 1243- 1683bpの領域を増 幅した。 得られた PCR産物を、 Eco RI/BAP処理した pBlueScript II KS +にサ ブクローニングして配列を確認した。
iii) 上記 i)及ぴ ii)で調製した PCR産物をそれぞれ Eco RI/Apa I及ぴ Apa 1/ Sal Iで切断してこれらを、 Eco Rl/Sal Iで切断した pFLAG- CMV5aベクターに
ライゲーシヨ ンして、 C末端に FLAGタグを有する M A M ドメイン (NN-MAM-FLAG) 発現べクタ一を構築した。
( 2 ) 発現、 及ぴ発現産物の精製
Freestyle™ 293 Expression system (Invitrogen) の説明書に従って、 上 記で調製した各発現ベクターを Freestyle™ 293-F細胞(Invitrogen)に一過的 に遺伝子導入した。 遺伝子導入から 6 0時間後、 培養上清を集め、 細胞ゃ不 溶物を取り除くため遠心した。 その後 Triton X- 100 (終濃度 1 %)、 EDTA (同 5mM) 、 PMSF (同 ImM) 、 アジ化ナトリウム (同 0. 02 %) をそれぞれ上清に添 力 0し、 さらに抗 FLAG affinity beads (Sigma)を添加して 4 °Cでー晚撹拌した。 抗 FLAG affinity beadsを空のカラムに移し、 TBS (10 mM Tris-HCl (pH7. 4) and 150 mM NaCl)でビーズを洗浄した。 洗浄後、 ビーズに結合した各蛋白質を、 · 100 μ g/mlの FLAGぺプチドを含む TBSで溶出した。溶出した各蛋白質を、 0. 5 mM EDTA を含む 2 mM CAPS緩衝液(pH 11. 4)で透析してペプチドを除去し、 精製 された蛋白質を取得した。
以上の全長 NN- FLAG、 顺- Δ MAM- FLAG、 NN- RGD- FLAG、 及ぴ丽- MAM- FLAGにつ いて予想される分子量は、 それぞれ 65 kD、 47 kD、 15 kD、 及び 18 kDである。 し力 し、 これらの蛋白質を抗 FLAG affinityカラム 〔抗 FLAGモノクローナル抗 体 (抗 FLAG mAb)は Sigmaから入手〕 で精製し、 還元条件下で SDS-PAGEで展開 したところ、 図 5に示すように、 画- MAM以外の全ての蛋白質は予想されたサ ィズより大きな分子量となって検出された。なお、図 5の A及び Bにおいて、 それぞれ右側は電気泳動後 CBB (Coomassie Brilliant Blue R-250) 染色した 結果を、 左側は電気泳動後、 抗 FLAG M2モノクローナル抗体 (抗 FLAG mAb) を用いて免疫プロッキングを行った結果を示す。
上記の理由として、以前より報告されているように、 RGDリンカ一部位が多 量の 0 -結合型糖鎖による修飾を受けている可能性が考えられた (Brandenberger, R. et al. , (2001) J Cell Biol 154, 447-458; Morimura, N. et al. , (2001) J Biol Chem 276, 42172-42181)。 また、 これらの蛋白質を シァリダーゼで処理したところ、 SDS - PAGEによる見かけの分子量が低下した。 このことからも、 上記に示すように精製した蛋白質の見かけの分子量が予想
と大きく異なるのが、シアル酸による翻訳後修飾のためであると考えられた
( 3 ) ネフロネクチンの分子像 (電子顕微鏡) (図 6 )
精製した NN溶液 (75 M g/ml, 3 μ 1) を等量の 2 %酢酸ウラン溶液で 3 0 秒間染色し(ネガティブ染色)、その後、透過型電子顕微鏡 (JEM- 100CX, JE0L) で解析した。顕微鏡は加速電圧 1 0 0キロボルトで実行し、映像は 14 bit deep CCD camera (TVIPS)で、 2k x 2kピクセルの解像度でデジタル映像として記録 した。 結果を図 6 Aに示す。 その結果、 NNの単量体は V字型の構造であるこ とが確認できた。 電子顕微鏡写真の解析から推測される全長匪の分子構造を 図 6 Cに示す。 これに示すように、 EGF様繰り返し配列と MAMドメインは互い に向き合い、 リンカー部位が蝶つがいのようにこれらのドメインを繋いでい ると推測された。 また、 単量体に加えて、 多くの凝集した多量体も観察され た。 これは NNが丽自身と相互作用しうる可能性を示唆している。 実験例 2 ネフロネクチン (全長) 及ぴその欠損変異体の α 8 1インテ ダリンへの結合活性
ネフロネクチン (全長) 及びその欠損変異体のひ 8 1インテグリンに対 する結合活性を調べるために、全長丽- FLAG、 NN- Δ MAM- FLAG、顧- RGD- FLAG、 及び NN- MAM- FLAGを用いて、 KA8細胞 (インテグリン α 8鎖を安定に発現する 白血病細胞) 及びその親細胞である Κ562細胞に対する細胞接着アツセィを行 つた
具体的には、まず、 ΚΑ8細胞及ぴ Κ562細胞をそれぞれ、予め 30ηΜの NN- FLAG、 ΝΝ- Δ MAM-FLAG 、 NN- RGD- FLAG、 または NN- MAM- FLAGでコーティングしておい た 96穴マイクロタイタープレートに播種し(5. 0 X 104細胞/ゥエル)、 37°C、 5 %の二酸化炭素を含む加湿した空気内で 2時間静置した。 その後、 接着し た細胞を 15分間、 3. 7%ホルムアルデヒドで固定化し、接着していない細胞を PBSで 4回洗 することによって除去し、 0. 1%トルイジンプル一入り PBSで 10 分間染色した。
KA8細胞に関する結果を図 7に示す。 図に示すように、 KA8細胞は、 全長 NN-FLAG (図中、 匪と表記)、 NN- Δ ΜΑΜ-FLAG (図中、 Δ ΜΑΜと表記) 、 及び
NN-RGD-FLAG (図中、 RGDと表記)をコーティングしたプレート表面に接着し、 いずれもよく伸長していた。 しかし、 図には示さないが、 K562細胞は、 上記 の全長丽- FLAG、 NN- Δ MAM-FLAG 、 及ぴ丽- RGD- FLAGをコーティングしたプレ ート表面に接着 ·伸展しなかった。 一方、 NN- MAM- FLAG (図中、 MAMと表記) をコーティングしたプレート表面には、 KA8細胞及び K562細胞のいずれも接 着 ·伸展しなかった。 また、 図 7からわかるように、 全長 NN-FLAG (顯) また は丽- A MAM-FLAG ( A MAM)をコーティングしたプレート上の方力 S、丽- RGD- FLAG をコーティングしたプレート上よりも、 細胞がよく伸展していることが観察 された。
この結果から、 全長のネフロネクチン (NN) は、 インテグリン α 8 ]3 1に 対して結合活性と細胞伸展活性を有しており、 インテグリン α 5 3 1には結 合活性を持たないことがわかる。 また、 上記の結果は、 ネフロネクチン (丽) の主な接着活性部位は、 RGDリンカ一部位であること、 そして、 細胞伸展活性 には EGF様繰り返し配列の存在が必要であることを示している。 実験例 3 基底膜蛋白質に対するネフロネクチンの結合性
ネフロネクチン (丽) は、 基底膜に分布していることが知られている
(Brandenberger, R. et al. , (2001) J Cell Biol 154, 447-458; Miner, J. H. (2001) J Cel l Biol 154, 257-259) 。 そこで、 匪の基底膜蛋白質 (ECM蛋白質) との結合性について調べた。 基底膜蛋白質として、 異なるひ鎖をもつ一連の ラミニン 〔マウス LN - 1 ( a l) 、 ヒ ト LN-2/4 (ひ 2) 、 ヒ ト LN— 5 ( a 3) 、 ヒ ト LN-8 ( α 4) 、 ヒ ト LN - 10/11 ( α 5) 〕 、 ヒ ト血漿フイブロネクチン (FN) 、 ビトロネクチン (VN) 、 及ぴ各種コラーゲン 〔ヒ ト I型、 IV型、 V型コラーゲ ン、 ニヮトリ II型コラーゲン〕 を使用した。
( 1 ) 基底膜蛋白質の調製
なお、 マウス LN - 1は Paulssonの手法(Paulsson, M., et al. , (1987) Eur J Biochera 166, 11-19)に従い、 マウス Engelbreth- Holm-Swarm腫瘍組織から精製 した。 ヒ ト LN- 2/4は、 ヒ ト LN-ひ 2鎖に対するモノクローナル抗体を用いた免 疫親和性クロマトグラフィーにより、ヒ ト胎盤より精製した。ヒ ト LN-5、LN- 8、
及び LN- 10/11はそれぞれ、ヒト胃癌細胞 MKN45 (LN- 5)、 ヒト神経膠腫細胞 T98G CLN-8) 、 及びヒ ト肺腺癌細胞 A549 (LN- 10/11) の培養上清より、 免疫親和 'I生クロマトグラフィーを用いて、 既述の通りに精製した(Fujiwara, H. et al . , (2001) J Biol Chem 276, 17550—17558 ; Fukushima, Y. et al, (1998) Int J Cancer 76, 63- 72 ; Gu, J, , et al, (2002) J Biol Chem 277, 19922- 19928) ( ヒ ト血漿フイブロネクチン(FN) とビトロネクチン(VN)は、 ヒ ト血漿から、 それぞれゼラチン及びへパリン親和性クロマトグラフィ一によつて、 過去の 文献に記載されている通りに精製した(Sekiguchi, K. , et al, (1983) J Biol Chem 258, 14359—14365、 Yatohgo, T. , et al,, (1988) Cell Struct Funct 13, 281-292) o ヒ ト I型、 IV型及び V型コラーゲンと、 ニヮトリ II型コラーゲン は Sigma社より購入した。 コラーゲンの分類型は Bornstein and Traubの報告 (Bornstem, P. et al, 、丄 979) 上' he Chemistry and Bio丄 ogy oi Collagen, Third Ed. The Proteins (Neurath, H. , and Hill, R. し, Eds. ), IV. 4 vols. , ACADEMIC PRESS, New York)に従った。
( 2 ) 固相結合アツセィ (酵素結合免疫吸着検定)
96穴プレートに、 PBSにて希釈した各種の基底膜蛋白質 (10nM) を、 各ゥェ ノレ 50 μ 1ずつ添加して、 4 °Cでー晚静置してコーティングした。 その後、 各ゥ エルに 200 μ 1の 1 %スキムミルク入り PBSを添加して室温で 2時間静置して ブロッキングした。 その後 1%BSAと 0. 1% Tween- 20入りの PBS で 3回ゥエル を洗浄して、これに適時希釈した FLAG付きネフロネクチン(NN-FLAG) (0. 3nM、 3ηΜ、 及び 30ηΜ) を添加して 1時間静置した。 洗浄後、 これに洗浄溶液で 1000 俊希釈した抗 FLAG抗体 (Sigma) を各ゥ ル 50 μ 1ずつ添加して 1時間室温で ^置した。洗浄後、 HRPを結合させたャギ抗マウス IgG抗体(二次抗体) を 3000 俊希釈して各ゥエルに 50 μ 1ずつ加え、 1時間静置した。
これを洗浄した後、 オルトフヱ二レンジァミン溶液を各ゥヱル 50 1ずつ カロえて 10分間静置し発色させ、 その後 2. 5 M硫酸を各ゥエル 50 1加えて発色 を停止した。 各基底膜蛋白質に結合した FLAG付きネフロネクチン (匪- FLAG) の量は、 490 nmの吸光度 (0D490 nm) を測定することで算出した。 結果を図 8に示す。 尚、 図に示す各 490 nm吸光度値は、 ブロッキング後、 NN- FLAGを添
加したときの値と、 NN- FLAGを加えず抗 FLAG抗体だけを添加したときの値をそ れぞれ差し引いて算出した。 図 8からわかるように、 ネフロネクチン (丽) は、 LN- 8、 LN- 10/11およぴフイブロネクチン (FN) に特異的に、 濃度依存的 に結合した。 ニヮトリ II型コラーゲンにも弱いながら結合が認められた。 II 型コラーゲンは.正常軟骨組織に特異的に発現 ·局在している基底膜蛋白質で あり、 この結果は NNが軟骨形成 ·骨形成に関係しているという報告と関係し ている力、もしれなレヽ(Morimura, N. et al. , (2001) J Biol Chem 276, 42172-42181) o
このアツセィにおいて、 N Nは、 LN- 8 ( α4]31γ 1) 及ぴ LN- 10/11 (a5j3 l/2y 1) と同じ j3鎖及ぴ γ鎖を有する LN- 2/4 (α2]31/2γ 1) に対し て結合活性を示さなかったことから、 丽の LN- 8 ( a4:β lyl) や LN- 10/11 (α5β 1/2Ύ 1) への結合は LNのひ鎖に依存していると考えられる。
(3) 免疫共沈降アツセィ (酵素結合免疫吸着検定)
上記で示された、 LN-8 (αΑβ Ιγ ΐ) 及ぴ LN- 10/11 (α5β1/2γ 1) に対す る ΝΝの結合特異性を、 LN- 2/4 (a2j3 l/2y 1) と LN-10/11 (α5]31/2 1) を用いた免疫共沈降アツセィでさらに確認した。
具体的には、 まず、 1· 5μ gの LN- 2/4もしくは LN- 10/11と 1.8 gの FLAGタ グ付き NN (NN-FLAG)を、 500 μ 1の 1% BSAと 0.1% Tween - 20を含む PBSに希釈し、 抗 FLAG抗体(4· 9μ§)または抗ヒ トラミニン y 1鎖抗体 (ΜΑΒ1920、 Ιμ ΐ) と Protein G-Sepharose (Amersham)を添加して 4 °Cでー晚混和した。 その後溶 液を遠心して Sepharoseビーズを回収し、 ビーズを 1% BSAと 0.1% Tween- 20を 含む PBSで 3回洗浄した。 沈降物を SDS- PAGEで展開し、 PVDF膜に転写し、 得ら れた PVDF膜を 5 %スキムミルクと 0.1% Tween- 20入り TBS (プロッキング緩衝 液) で 1時間ブロッキングした。 ブロッキング緩衝液で 2000倍希釈した抗ヒ トラミニン7 1鎖抗体 (MAB1920) でその PVDF膜を浸し、 0.1°/。 Tween- 20入り TBSで膜を洗浄後、 HRPを付加したゥサギ抗マウス IgG (二次抗体、 ICN Parmaceuticals, Inc.社製) を PVDF膜と反応させた。 その後、 0.1% Tween - 20 入り TBSで洗浄し、 ECLキット(Amersham)で検出した。
結果を図 9に示す。 図中、 「F」 は抗 FLAG抗体 (モノクローナル抗体) と
の結合反応を、 「M」 は抗ヒトラミニン γ 1鎖抗体 (モノクローナル抗体)
(MAB1920) (Chemicon社製) との結合反応を意味している。 図 9からわかる ように、丽は、 LN-10/11 ( α 5 ;8 1/2 γ 1)と共沈降したが、 LN - 2/4 (ひ 2 j3 1/2 γ 1) とは共沈降しなかった。 このことから、 固相結合アツセィの場合と同様に、 匪の結合は LNの α鎖に依存していると考えられる。
( 4 ) ネフロネクチンのラミニン (LN- 8、 LN-10/11) への結合における二価 イオン、 NaCl及びへパリンの影響
基底膜蛋白質間の蛋白一蛋白間相互作用は、 アミノ酸側鎖の静電的相互作 用、 または疎水的相互作用 (場合によってはその両方) を介して生じる。 ま たある時は、 二価金属イオンやへパリンのような糖鎖も基底膜蛋白間の相互 作用に関わっている。 上記で得られた NNの LN- 8、 LN- 10/11、 FNに対する結合 を媒介する相互作用はどのようなものかを解析するために、 それぞれ 10 raM EDTA、 0. 5 M NaCl、 または 1 μ g/mlへパリン存在下で、 上記 (1 ) と同様の方 法によって、 NNの LN- 8、 LN-10/11, 及ぴ FNに対する固相結合アツセィを行つ た。 なお、 コントロールとして、 上記成分の非存在下で同様に固相結合アツ セィを行った。結果を図 1 0に示す。図 1 0からわかるように、 N Nの LN_8、 LN-10/11に対する結合は、 0. 5 M NaClまたは l ^ g/mlへパリンの存在で抑制さ れたが、 EDTAの依存の有無によっては殆ど変化がなかった。 このことから、 これらの結合が二価イオンに依存しないことが判明した。
また、 0. 5 M NaClの存在下では、顺は LN- 8や LN-10/11には結合しなかった。 このことは、 蘭が LN-8、 LN- 10/11に対して、 静電的相互作用によって結合し ていることを示唆している。同様の結果は 1 /2 g/mlへパリン存在下でも見られ た。 この結果は、 へパリンが のラミニン (LN) への相互作用に必要な も しくは LN内部の正電荷を覆っていることを示している。 興味深いことに、 顺 の FNへの結合は 0. 5 M NaCl存在下や 1 μ g/mlへパリン存在下で増加した。 これ は應が FNへ疎水的相互作用で結合していることを示唆している(Eriksson, K. 0., et al., (1989) Hydrophobic Interaction Chromatography. PROTEIN PURIFICATION - Principles, High Resolution Methods, and Applications - (Janson, J. -C. , and Ryden, L. , Eds. ) . 7 vols. , VCH Publishers, Inc. , New
York) これらの結果から、雨の LNへの結合特性は、 FNへの結合特性とは全く 異なるものであることが示された。 実験例 4 ネフロネクチン (全長) 及ぴその欠損変異体のラミニン (LN-10/11) に対する結合活性
ネフロネクチン (全長) 及びその欠損変異体のラミニン (LN-10/11) に対 する結合活性を調べるために、図 4に示すドメィン構造を有する全長 NN- FLAG、 ΝΝ- Δ MAM-FLAG 、 NN- RGD- FLAG、 及ぴ NN- MAM- FLAGを用いて、 ラ ミニン (LN-10/11) に対する固相結合アツセィを行った。
具体白勺には、 ラミニン (LN-10/11) でコーティングした 96穴プレートを 1 %スキムミルクでブロッキングし、 これに段階希釈した FLAG付きネフロネク チン (NN- FLAG) またはその欠損変異体 (ΝΝ- Δ ΜΑΜ-FLAG 、 NN- RGD- FLAG、 NN-MAM - FLAG) を添カ卩して 1時間静置して反応させた。 洗浄後、 ラミニンに結 合した NN- FLAG及びその欠損変異体を、 実験例 2の方法に従って、 抗 FLAG M2 mAb (Si gma) 及び HRPを融合させたャギ抗マウス IgG抗体 (二次抗体) を用い た酵素結合免疫吸着検定を行い定量化した。 結果を図 1 1に示す。
図 1 1からわかるように、 NN - RGD- FLAGの結果から、 全長丽-FLAGから MAM ドメインと EGF様繰り返し配列を欠失させることにより、ラミニン(LN- 10/11) に対する結合活性が完全に消失することが分かった。一方、 MAMドメインを有 する画- MAM- FLAGは、 全長 NN- FLAGより弱いもののラミニン (LN- 10/11) に対 して結合活性を示し、 また MAMドメインを欠損した丽- ΔΜΑΜ- FLAG (EGF様繰り 返し配歹 (Iと RGDリンカー部位を有する) もまた丽 -MAM-FLAGより弱いが、 ラミ ニン (LN-10/11) に対して結合活性を示した。
これらのことから、 ネフロネクチンのラミニン (LN-10/11) への結合は主 に MAMドメインが担っており、 EGF様繰り返し配列も弱いながらもラミニン (LN-10/11) に対する結合部位であることが判明した。 し力 し、 いずれもド メインも単独ではラミニン (LN- 10/11) に対する結合活性は低く、 全長のネ フロネクチンが最も高い結合活性を示した。 実験例 5 ネフロネクチン (全長) 及ぴその欠損変異体 (NN- MAM- FLAG) の
成体マウス腎臓 (髄質) の基底膜に対する結合性
成体マウスの腎臓を 70%エタノール中で固定し、 その後パラフィン中に包 埋し、 6 μ πιの厚さの切片にした。 切片は脱パラフィン操作をした後、 DAK0 peroxi dase blocking reagent (Dako Cytomation USA) (こより内在个生ぺノレォキ シダーゼをブロッキングし、 続いて 1 %BSAを含む PBS (ブロッキングバッフ ァー) で 1時間、 室温でインキュベートして切片をブロッキングした。 その 後、 PBSで希釈した画- FLAG (12 g/ml)、 丽-匪- FLAG (16 μ§/πι1) , もしく はブロッキングバッファー (PBS) をそれぞれ切片に添加して、 1時間、 室温 でインキュベートした。 次いで、 得られた切片を、 PBSで洗浄して結合してい ない丽- FLAG及び ΝΝ-ΜΑΜ- FLAGを除去した後、プロッキングバッファーで 1 : 200 に希釈した HRP- conjugated ant i -FLAG M2 monoclonal antibody (SIGMA)を添 カロし、 1時間、室温でィンキュベートした。洗浄後、ジァミノベンジジン(DAB) によつて発色反応を行い、 腎臓組織における顯 -FLAGまたは丽 -MAM-FLAGの結 合の有無を顕微鏡にて確認した。 結果を図 1 2に示す。
図 1 2に示しているのは腎臓の髄質部分の拡大写真である (スケールバー : 50 μ m) 。 図 A及ぴ Bの結果から、 尿細管の外側が、 それぞれ NN - MAM- FLAG 及び層 - FLAGにより、基底膜様に染色されていることが分かる(褐色に染色)。 これまでの実験結果から総合すると、 NN- MAM-FLAG及び匪- FLAGは、 腎臓の基 底膜に存在する LN- 10/11もしくは LN- 8と結合することによって、 基底膜に特 異的に結合しているものと考えられる。 ペプチド (ネフロネクチン) は、 LN- 10/11もしくは LN- 8への結合性に基づい て、 実際の生体組織の基底膜に対しても配向性及び結合性を有していること を示すものである。 また、 この結果は、 基底膜をターゲットとしたドラッグ デリバリ一システムにおいて、 MAMドメイン及び MAMドメインを有するポリぺ プチドが有用であることを示唆するものである。 実験例 6 基底膜蛋白質に対する MAEGタンパクの結合性
上記実験例 4の結果から、 ネフロネクチン (丽) の MAMドメインがラミニン (LN-10/11)に対する主要な結合部位であることが判明した。このことから、
同様に MAMドメィンを有し顺と相同性を有する MAEG (MAM-and EGF - containing gene) 蛋白質もまたラミニン (LN - 10/11) と結合する能力を有していると考 えられた (The Journal of Cell Biology, Vol. 154, No. 2, 2001, 447-458 ; Genomics 65, 16 23 (2000) ) 。
そこで、これを確認するために、顺と MAEG蛋白質の両方の MAMドメインを GST 融合蛋白質 (GST—丽 MAM、 GST - MAEG - MAM) として発現精製し、 一連のラミニ ン 〔マウス LN-1 ( α ΐ) 、 ヒ ト LN - 2/4 (ひ 2) 、 ヒ ト LN - 5 ( α 3) 、 ヒ ト LN— 8 ( « 4) 、 ヒト LN— 10/11 (ひ 5) 〕 に対する結合活性を、 抗 GSTモノクローナル 抗体 (抗 GST mAb : Zymed Laboratories Inc. ) を用いて、 実験例 3 ( 2 ) に 記载する固相結 アツセィ (酵素結合免疫吸着検定) に準じて (ブロッキン グ溶液として、 1%スキムミルク入り PBSに代えて、 1%BSA入り PBSを使用) 、 測 定した。
なお、 上記 GST融合蛋白質 (GST - NN - MAM、 GST- MAEG- MAM) は、 まず、 それぞ れ 5' -GAATTCCACAGCTGCAATTTTGACCAT-3' (forward) (配列番号 3 3 ) と 5' -GTCGACTCAGCAGCGACCTCTTTTCAA-3' (reverse) (配列番号 3 4 ) 、 及ぴ 5' -CCGAATTCTCAGTTGACTGCAGCTTTGATC-3' (forward) (配列番号 3 5 ) と 5' -AACTCGAGTCAACCTTCTACAGATAAAAAG-3' (reverse) (配列番号 3 6 ) の各 2 種類のプライマーを用いて、 受精後 13. 5日マウス胚の cDNAライブラリーを铸 型として増幅した cDNA断片 (PCR増幅産物) を、 タグとして GSTを有する pGEX- 4T- 1ベクター (Amersham Bioscience) に、 その GST部位とコドンが合う ように揷入して、 発現ベクターを作成し、 これを大腸菌 BL21に導入して、 グ ルタチオン一セァァロースビーズ (Amersham) を用いて精製することによつ て作成した。
結果を図 1 3に示す。 図 Aが GST融合蛋白質 (GST- MAEG- MAM) のラミニンに 対する結合性をみた結果であり、 図 Bが GST融合蛋白質 (GST- NN- MAM) のラミ ニンに対する結合性をみた結果である。この結果、前述の結果で示した通り、 匪の MAMドメイン fまラミニンのうち LN - 8と LN- 10/11に特異的に結合するのに 対し、 MAEG蛋白質の MAMドメインはラミニン (LN-5) に特異的に結合した。 こ のことは MAEGタンパクの MAMドメィンはラミニンに結合するものの、その結合 特異性は匪の MAMドメインと明らかに異なっていることを示す。
前述するように、 ラミニンは α鎖のタイプによって大きく 5種類に分類さ れており、 各種が異なる組織に発現し分布していることが知られている (表 1 )。例えば LN- 5 ( α 3 β 3 Ύ 2)は皮膚 '肺.その他上皮組織に、 LN- 8 ( α 4 j3 1 γ 1) は血管(毛細血管、新生血管) に、 LN-10 ( a 5 j3 1 γ 1)及ぴ LN- 11 (ひ 5 ]3 2 γ 1) は大血管 (太い血管) 、 腎臓、 肺、 膝臓、 その他多くの上皮組織に発現し分 布している。 そして、 MAEG蛋白質と丽は、 互いに異なる組織局在性を示して いることが知られている。
こうした事実、 並びに上記実験で得られた結果から、 匪と MAEG蛋白質の特 異的な組織局在性は、 ΝΝと MAEG蛋白質の各々が有する MAMドメインのラミニン 結合特異性が関与している可能性が考えられる。すなわち、 NNと MAEGタンパ クの組織局在性 ·結合特異性は、各タンパクが有する MAMドメインによって決 められていると推測される。 そして MAMドメインに応じて異なる組織特異性' (発現,結合) を有する蛋白質 (NNと MAEG蛋白質) は、 個々に特異的な組織 の基底膜で機能し、 器官形成や各種現象を制御するものと考えられる。 実験例 7 ネフロネクチンとラミニン (LN - 10) の結合様式
上皮細胞によって発現されたネフロネクチン (丽) は基底膜に蓄積し、 間 充織細胞へ何らかの影響を及ぼしていることが知られている(Brandenberger, R. et al., (2001) J Cell Biol 154, 447-458) 0 一方で、 ラミニン (LN- 10) は基底膜に存在し Gドメインを介して上皮細胞へシグナルを伝達していると 報告されている(Ido, H. et al. , (2003) J Biol Chem)。 このことから、 LN - 10 における NN結合部位の同定は、 顯の生理的 ·分子的機能を解明するための重 要な情報を与えてくれると思われる。 そこで、 組換え LN - 10 (rLN-10) とその Gドメイン欠損変異体 (LN- lO A G) を用いて、 LN- 10における匪の結合部位を 固相結合ァッセィにより解析した。 なお、 組換え LN-10 (rLN-10) とその Gド メイン欠損変異体 (LN-10 A G) は、文献(Ido, H. , et al. , (2003) J Biol Chem) に記載されている方法に従つて調製した。
具体的には、 全長顺 (顺- FLAG) とその MAMドメイン (丽- MAM-FLAG) につい て、 それぞれ組換え LN - 10 (rLN-10) とその Gドメイン欠損変異体 (LN- 10 A G) に対する結合活性を、 実験例 3に記載する固相結合アツセィ法に準じて調べ
た。 結果を図 1 4に示す。
図 1 4に示すように、全長 NN (NN-FLAG)の LN- 10 A Gに対する結合は、 rLN-10 に対する結合と比較して約 4 0 %まで減少した。 一方、 NNの MAMドメイン (NN-MAM-FLAG)の LN-10 A Gに対する結合と rLN-10に対する結合強度はほとん ど同じレベルであった。 また、 NNの MAMドメイン (NN-MAM-FLAG) の rLN- 10に 対する結合は全長 NNの雜合に比べて弱いレベルの結合であつたが、 このレべ ルは全長 NNの LN - 10 A Gに対する結合とほとんど同レベルであった。
これらの結果は、 ネフロネクチン (丽) とラミニン (LN - 10) の結合には、 ラミエン (LN- 10) の Gドメインが重要であること、 すなわち、 NNは LN - 10の G ドメインを介して LN - 10に結合すること、 そして、 Gドメインとの結合に匪の MAMドメインは寄与していないことを示している。前述する実験例 4において、 丽は EGF様繰り返し配歹 Uと MAMドメインを介して LN - 10/11に結合することを示 した (図 1 1 ) 。 これらのことから総合すると、 NNの MAMドメインは LN - 10の G ドメイン以外の部位、恐らくロッド部位に結合し、 一方、圆の EGF様繰り返し 配列は LN - 10の Gドメィンと結合していると考えられる。 実験例 8 マウス腎臓におけるネフロネクチン (丽) と LN_ a 5鎖の局在性
LN- 10/11のひ鎖である LN- α 5鎖に対する NNの生体内での結合性を評価す るため、 マウスの腎臓,祖織における NN及び LN_ a 5鎖の局在を、 免疫組織化学 的染色法によって調べた。 なお、 丽は成体マウスの腎臓で発現していること が知られている( Morimura, N. , et al. , (2001) J Biol Chem 276, 42172-42181; Transgenic Inc. , Data sheet of ant i-P0EM/ nephronect in polyclonal antibody, Rabbit)。
なお、 免疫組織化学的染色は次のようにして行った。 まず、 腎臓を成体マ ウス個体から採取し、 4 % パラホルムアルデヒドで 15分間、室温で固定、 OCT コンパウンド(Tissue Tek社)に包埋した。 その腎臓の 3〜 5 m凍結切片を 1% BSAを含む PBS (プロッキング緩衝液)でブロッキングし、 ブロッキング緩 衝液で洗浄した。 その後、 切片にブロッキング緩衝液で希釈した 12 μ g /ml の抗 POEM/nephronectin抗体 (抗 N N抗体: トランスジエニック社) 、 または 同 100倍希釈の抗 LN-ひ 5鎖抗血清 (アメリカ · ヮシントン大学 J. H. Miner博
士より譲渡) を添加して、室温で 1時間静置した。その後、 ABCキット(Vector Laboratories)を用レ、て検出した。
結果を図 1 5に示す。 図 Aは抗 POEM/nephronectin抗体 (抗 N N抗体) で免 疫染色した結果であり、図 Bは抗 LN- a 5鎖抗血清で免疫染色した結果である。 この結果からわかるように、 は腎糸球体基底膜に局在しており、 そこでは LN- a 5鎖も同様に強く発現していた。このことは顧が LN - α 5鎖と生体内でも 共局在していることを示唆している。 ぐ考察 >
以上の実験から得られた知見を次のように纏めることができる。
( 1 ) ネフロネクチン (顺) は、 基底膜を構成する主要タンパクであるラミ ニン LN- 8 (ひ 4 )8 1 γ 1) と LN - 10/11 (ひ 5 1/2 γ 1) に選択的に結合する。 一 方、 これらのラミニンと同じ ]3鎖と γ鎖を有する LN - 2/4 ( α 2 1/2 γ 1) とは 結合しない。
この結果は、 丽はラミニンの α 4鎖又は α 5鎖に結合することを示唆して いる。 また、 α 5鎮を有するラミニン (LN-10と LN- 11) が特異的に発現分布 している組織は腎臓であるが、 我々は上記知見を裏付ける実験結果として、 丽と LN- α 5鎖が成体マゥス腎臓の同じ部位、つまり腎糸球体基底膜に局在す ることを確認している。
これらのことから、 発生期の腎臓において、 ΝΝはラミニンのひ 4鎖又はひ 5鎖に対する結合を介して基底膜に選択的に組み込まれると想定できる。 な お、 ラミニンの α 4鎖と α 5鎖の発生期腎臓における局在が NNの局在と非常 に似通っているという報告(Miner, J. H. (2001) J Cell Biol 154, 257-259: Miner, J. H. , et al. , (1997) J Cell Biol 137, 685—701)、 並びに LN -ひ 4 鎖及ぴ LN - α 5鎖が存在しない基底膜には NNの局在も見られないという報告 (Kanwar, Y. S. , et al. , (2004) Am J Physiol Renal Physiol 286, F202— 215) があるが、 これらは上記の見解を支持するものである。
( 2 )ネフロネクチン (丽) は、 MAMドメインを high affinity siteとして、 EGF様繰り返し配列を low affinity siteとして、 LN- 10/11と結合する。但し、 これらの各ドメインの LN- 10/11に対する結合活性は、 全長 が有する結合活
性に比して非常に弱いものである。
( 3 ) 全長のネフロネクチン (NN) は、 ラミニン (LN-10) の Gドメインを 介して LN- 10と結合している。 しかし、 ラミニン (LN - 10) の Gドメインは NN の MAMドメインとは結合しない。 このことから、 丽の基底膜の組み込みには、 基底膜の構成タ.ンパクであるラミニンの Gドメインが必要であると考えられ る。
上記 (2 ) と (3 ) のことから、 NNとラミニン (LNの ο; 5又はひ 4鎖) の結 合様式として、 まずラミニンの Gドメイン以外の部位に匪の MAMドメインが結 合し、 その後、 その結合を安定化させるように、 ラミニンの Gドメイン部位に EGF様繰り返し配列が結合して、全長 NNの結合を安定化している可能性が考え られる。 また、 全長の NNは、 多量体形成が認められたが、 これは LN- 10/11に 結合した匪に、 さらに他の匪が結合することによって形成される可能性が考' えられる。
ところで、 インテグリン α 8 1は、 発生期腎臓の間充織で豊富に発現し ている蛋白質であり、 インテグリンひ 8 j3 1が欠損したマウスは深刻な腎臓 発生欠損を示すことが知られている(Muller, U. , , et al. , (1997) Cell 88, 603-613)。 さらに、 インテグリン ο; 8 'i3 1はネフロネクチン (NN) の受容体 であること力 Sin vitro、 in vivo両方の系で示されてレヽる(Brandenberger, R. , et al. , (2001) J Cell Biol 154, 447-458)。 これらのことから、 NNは α 8 ;8 1インテグリンを介して後腎間充織にシグナルを伝達し、 腎臓形態形成の 制御に関与していると思われる。 さらに、 LN - 5鎖とインテグリン α 3 j3 1 もまた、腎臓の器官形成に必要不可欠であると報告されている(Miner, J. H. , et al. , (2000) Dev Biol 217, 278-289 ; Kreidberg, J. A. , et al. , (1996) Development 122, 3537 - 3547)。
これらのことから、 腎臓形態形成に必要不可欠な経路が少なくとも 2つあ ると考えられる。 1つは丽とひ 8 jS 1インテグリンを介して後腎間充織の分 化誘導を調節する経路であり、 もう一つは、 LN o; 5と《 3 ]3 1インテグリン を介して尿管芽上皮の伸展や分岐を調節する経路である。 上記の実験から、 これらの経路は互レヽに独立したものではなく、蘭と LN - α 5鎖との相互作用に よって連結している可能性が考えられる。 以上のことから、 前述する (1 )
の見解を補足すると、 発生期の腎臓において、 丽は、 ラミニンの α 5鎖 (ま たは α 4鎖) に対する結合を介して基底膜に選択的に組み込まれ、 その部位 にある細胞に α 8 β 1インテグリン及ぴ α 3 j3 1インテグリンを介してシグ ナルを伝達してレ、ると推測される。
本発明において、 ネフロネクチン (NN) が基底膜の構成蛋白質であるラミ ニンの LN- « 4鎖と α 5鎖に特異的に相互作用することを見いだした。 丽は ΜΑΜドメインを含む珍しい ECM蛋白質の 1つである。他に知られている ΜΑΜドメ イン含有蛋白質としては、 MAEG、 メプリン、 ニューロピリン (A5蛋白質) 、 受容体蛋白質チロシン脱リン酸化酵素 /ζ Ζ κ;を挙げることができる。
さらに、本発明において、 ΝΝの ΜΑΜドメインがラミニンへの結合に強く関与 していること、 ΜΑΜドメインの種類によってラミニン結合特異性が異なること を見いだした。例えば、画の ΜΑΜドメインは LN- 8及ぴ LN-10/11に選択的に結合 するのに対し、 MAEGの ΜΑΜドメインは LN - 8及ぴ LN-10/11には結合せず、 LN- 5 に選択的に結合する。
ΜΑΜドメインは蛋白一蛋白間相互作用、 特に ΜΑΜドメイン間の同種親和的な 相互作用に必要であると考えられている。 例えば、 金属プロテアーゼの一種 であるメプリンは、 その ΜΑΜドメインを介して巨大な多量体を形成する (Ishmael, F. T., et ah , (2001) J Biol Chem 276, 23207-23211)。 膜貫通 蛋白質でありセマフォリンの受容体である-ユーロピリンの場合、 その MAM ドメインは細胞表面上で互いに相互作用し二量体を形成する(Chen, H. , et al., (1998) Neuron 21, 1283-1290)。 受容体型蛋白質チロシン脱リン酸化酵 素 μと κは、 MAMドメィンを介して細胞一細胞間で同種親和的な相互作用を示 す(Zondag, G. C. , et al. , (1995) J Biol Chem 270, 14247-14250)。 本発 明の結果は、 MAMドメインが、 それを含む各蛋白質に結合特異性を与えている ことを示唆している。 すなわち、 上記実験における知見は、 MAMドメイン及び それを含む蛋白質は、各 MAMドメインの組織特異性に応じて、特定の組織指向 性を備えており、 これによつて、 例えば特定の組織に有用な物質を運ぶ運搬 体として利用できる可能性を示すものである。 産業上の利用可能性
本発明の標的指向性運搬体は、 そのラミニンへの選択特異的な結合性に基 づいて、 組織特異的に標的指向性を発揮し、 これにより目的とする標的組織 または細胞に有用な薬物 (例えば、 生理活性ペプチドやその遺伝子、 抗体医 薬、 アンチセンス分子や干渉 R N A因子) を輸送する運搬体として利用する ことができる。 .当該標的指向性運搬体は、 通常運搬する目的物質 (例えば、 薬物) を導入して、 標的指向性薬物複合体として用いられる。
かかる標的指向性薬物複合体は、 ドラッグデリバリーシステムまたはター ゲッティング療法に有効に利用することができる。 特に、 標的指向性運搬体 としてネフロネクチンの MAMドメインを利用した場合 (例えば N Nそのも の) は、 当該標的指向†生運搬体が備える新生血管、 大血管、 腎臓、 肺、 また は膝臓に対する特異的組織結合性に基づいて、 所望の薬物を当該組織に指向 させることで局所濃度を高く維持し、 薬物の有効性を高めることができ、 ま たそれと同時に、 他部位へ拡散して生じる副作用を防ぐことができる。
また、 標的指向性運搬体として MA E G蛋白質の MAMドメインを利用し た場合は (例えば MA E G蛋白質そのもの) 、 当該標的指向性運搬体が備え る毛包、 皮膚 (表皮) 、 肺に対する特異的組織結合性に基づいて、 薬物を当 該組織に指向させることで局所濃度を高く維持し、 薬物の有効性を高めるこ とができ、 またそれと同時に、 他部位へ拡散して生じる副作用を防ぐことが できる。