JP2007119409A - 遺伝子類導入方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】インビトロ及びインビボにおいて、標的細胞に効率良く遺伝子類を導入する方法の提供。
【解決手段】低酸素状態下において、標的細胞に標的遺伝子の発現を制御する遺伝子類を導入することを特徴とする標的細胞内への遺伝子類導入方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、インビトロ及びインビボにおいて、標的細胞に効率良く遺伝子類を導入する方法に関する。
肝細胞癌(肝癌)は、臨床的にも腫瘍の発達に伴い新生血管の増加を認めることが広く知られており、肝動脈からの栄養血管が極めて発達した多血性腫瘍であることは肝癌の代表的な生物学的特徴の一つとされる。
肝癌の増殖には血管内皮細胞成長因子(VEGF)などの増殖因子が多く関与することが報告されている(非特許文献1参照)。肝癌の治療として主流を占めている肝動脈塞栓術(TAE)は腫瘍への酸素、栄養基質を絶つのが目的であるが、一方で新たな血管新生を誘発することにもなりかねない治療法である(非特許文献2、3参照)。肝癌に対する局所療法として、TAE、経皮的エタノール注入療法(PEIT)、ラジオ波焼灼療法(RFA)などが行われ、TAEは肝癌細胞を低酸素血症に導くことが知られている。またそれにより、VEGFが誘導され、血管新生から癌細胞の増殖と浸潤を増強させる、という生物学的反応が知られている。臨床的にも肝癌患者にTAEを施行した後に、腫瘍の急速な増大や、他臓器転移を招いたり、頻回のTAEで新たな側副血行路が形成され、腫瘍が新しい血管によって栄養されている症例も少なからず経験する。
VEGFの発現を抑制するため、種々の血管新生抑制物質が報告されているが、その効果は未だ明らかではない。一方、肝癌等に対する遺伝子治療の試みとして、VEGF発現を抑制しようとする検討が行われている。特に、近年、哺乳類動物の細胞でもsiRNA(short interfering RNA又はsmall interfering RNA)と呼ばれる二本鎖RNAによる配列特異的な遺伝子発現抑制現象(RNAi)が見出され(非特許文献4、5参照)、その遺伝子抑制の配列特異性と発現抑制効果の高さから、RNAiを利用した難治疾患の遺伝子治療への期待が高まっている。
H.Yoshiji et al, Hepatology, 28, 1489-1496, 1998 K.Suzuki et al, Cancer Research, 56, 3004-3009, 1996 Z von Marschall et al, Gut, 48, 87-96, 2001 Elbashir SM et al, Nature(Lond.) 411, 494-498, 2001 Elbashir SM et al, Genes Dev, 15, 188-200, 2001
しかしながら、RNAi療法は、期待された程の効果は得られていない。これは、遺伝子操作技術レベル、特にin vivoで使用するにあたり、siRNAの細胞内送達の困難さが障害となっており、実用段階に十分到達していないことが主たる原因である。臨床的に高い治療効果を得るには、目的とする癌組織等の患部付近へsiRNA等の遺伝子類を確実に送達させ、作用発現の至適化を行う必要がある。
本発明は、インビトロ及びインビボにおいて、標的細胞に効率良く遺伝子類を導入する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、遺伝子のサイレンシングが可能なsiRNAを用い、VEGFを代表とした血管新生関連遺伝子を抑制することによる抗血管新生療法を企図した。
siRNAを用いたVEGFを標的とした抗血管新生療法として、ヌードマウスの皮下に移植された前立腺癌細胞に対し、アテロコラーゲンとsiRNAを混合して患部付近に投与しsiRNAを徐々に放出させ、VEGFの発現を抑制する方法が報告されている(Y.Takei, et al. Cancer Res., 64, 3365-70, 2004)。しかし、これは皮下移植モデルに対し経皮的に繰り返しsiRNAを注入するなど、ヒトへの応用には程遠いモデルである。
そこで、本発明者らは、非ヒト動物の肝臓組織内に外来肝癌細胞を注入し、次いで該注入部にコラーゲンシートを貼付することによりヒト肝細胞癌に類似した再現性のある肝癌非ヒト動物モデルを作製した。そして、この肝癌非ヒト動物モデルの腫瘍内にヒトTAEに模倣した肝動脈結紮を行った後、VEGFをターゲットとしたsiRNAを腫瘍内に注入すれば、肝動脈結紮を施さないモデルに比し、siRNAが極めて効率よく導入され、VEGF発現を高度に抑制でき、優れた抗腫瘍効果が得られることを見出した。また、in vitro系において、VEGFをターゲットとしたsiRNAを用いて導入効率を検討したところ、低酸素状態により遺伝子類の導入効率が向上し、VEGF発現が抑制されることを見出した。
このように、本発明者らは、標的細胞の低酸素化が遺伝子類導入効率を高め、標的細胞における標的遺伝子の発現を高度に制御し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、低酸素状態下において、標的細胞に標的遺伝子の発現を制御する遺伝子類を導入することを特徴とする標的細胞内への遺伝子類導入方法を提供するものである。
また、本発明は、非ヒト動物の標的細胞を低酸素状態とし、標的遺伝子の発現を制御する遺伝子類を投与することを特徴とする遺伝子類導入方法を提供するものである。
さらにまた、本発明は、癌細胞増殖を抑制する遺伝子類を含有し、低酸素状態と同時又はその後に投与されることを特徴とする癌治療薬を提供するものである。
本発明の導入方法によれば、インビトロ及びインビボのいずれにおいても、遺伝子類を標的細胞内へ極めて効率よく導入することができる。従って、この方法を用いれば、標的遺伝子の発現を高度に制御することができ、本発明は斯かる標的遺伝子発現に起因する疾患、特に癌等の血管新生の増殖因子が関与する疾患の治療に有用である。
本発明は、低酸素状態下において、標的細胞へ標的遺伝子の発現を制御する遺伝子類を導入する方法、あるいは非ヒト動物の標的細胞を低酸素状態とし、標的遺伝子の発現を制御する遺伝子類を投与する方法である。ここで、低酸素状態とは、O2濃度1%以下の状態を云い、無酸素状態も含まれる。本発明方法により標的細胞への遺伝子類の導入効率が向上する理由として、低酸素下では、細胞膜が脆弱化し膜透過性が亢進することが考えられる。本発明により虚血下、低酸素状態下の臓器構成細胞に高率に遺伝子、核酸製剤、オリゴ核酸を送達することが可能になり、さらに重要なこととして、ベクター使用なしにnaked 核酸製剤を導入することが可能となる。
本発明において、標的細胞とは、標的遺伝子の発現を制御する遺伝子類を導入しようとする細胞又は細胞を含む組織である。真核細胞としては、例えば哺乳類細胞系、昆虫細胞系、真糸状菌細胞、酵母細胞等の動物細胞等が挙げられ、原核細胞としては、例えば大腸菌細胞等の細菌細胞が挙げられる。このうち、哺乳類細胞系の各臓器・組織由来の細胞が好ましく、特に癌細胞が好ましく、さらに肝癌細胞が好ましい。
インビトロの実験系において、上記標的細胞を低酸素状態にするには、細胞培養の雰囲気を低酸素状態、すなわちO2濃度1%以下の状態にすればよい。このような低酸素状態の細胞培養には、アネロパック(三菱ガス化学(株)製)等の市販品を用いることができる。
非ヒト動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等の齧歯類、サル、鶏等が挙げられる。このうち、齧歯類が好ましく、特にラットが好ましい。
本発明において、非ヒト動物の標的細胞を低酸素状態にする方法としては、例えばヒト肝癌治療で行われる肝動脈塞栓術(TAE)又はこれに類似する方法が挙げられる。
TAEは、肝癌細胞に酸素や栄養を供給している肝動脈を塞栓するため、TAEの結果、急速な低酸素化が誘導され、細胞膜の破壊から壊死が惹起されるが、一部の細胞は細胞死に至らず生存し、この状況が血管内増殖因子の高発現を招いて、血管新生からの腫瘍の再増殖につながると考えられている。本発明は、TAEと同時又はその後、標的細胞が低酸素状態となったところで、標的遺伝子を制御する遺伝子類を非ヒト動物内へ投与することにより、遺伝子類の導入効率をあげることができ、標的遺伝子発現を効率的に制御できるものである。
本発明において、標的遺伝子発現制御の対象となる遺伝子としては、AIDS、癌、遺伝子疾患等の原因遺伝子が挙げられ、例えば、細胞増殖、シグナル伝達系、DNA合成・修復、細胞周期、アポトーシスに関わる遺伝子が挙げられる。このうち癌細胞、特に肝癌細胞の増殖に関与する増殖因子をコードする遺伝子が好ましい。斯かる増殖因子としては、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インターロイキン-8 (IL-8)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)等の血管新生を引き起こす増殖因子が挙げられ、特に血管内皮細胞成長因子(VEGF)が好ましい。
本発明で用いられる遺伝子類としては、DNA、RNA、アンチセンス、siRNA、shRNA、デコイ、ライブラリー・ランダム核酸医薬、オリゴヌクレオチド等が挙げられる。このうち21塩基〜27塩基のsiRNAを用いるのが好ましく、特に3’オーバーハングがある21bpのsiRNAが好ましい。
本発明においては、特にnaked(未修飾)なsiRNA等を用いるのが好ましく、naked siRNA等を用いることで、免疫応答やインターフェロンαの発現を抑制し、また混合物も含まないため安全性も高く、臨床応用も可能である。これらは、市販品として、ダーマコン リサーチ等のものが入手可能である。
本発明において、インビトロの実験系において、遺伝子類を細胞内に導入する方法としては、特に制限されず公知の方法を使用できる。例えば、ウィルスベクターを用いる方法、非ウィルスベクターによる方法が挙げられる。ウィルスベクターとしては、レトロウィルス、アデノウィルス、レンチウィルス、アデノ随伴ウィルス等のベクターが挙げられる。また、非ウィルスベクター法としては、リポフェクション法等の化学的方法、細胞融合法、電気穿孔法等の物理的方法が挙げられる。さらに低酸素化による細胞膜の透過性亢進のもとでは、naked siRNA等を用いることができ、安全性、免疫応答回避の点から好ましい。
インビボ系では、遺伝子細胞内導入を行うためにベクターの使用は必要なく、naked siRNA等を用いることができる。遺伝子類を非ヒト動物に投与する部位は、癌を発症している非ヒト動物の腫瘍、あるいは筋肉、腹腔内、尾静脈、門脈、左心室内等が挙げられる。投与方法としては、全身投与あるいは局所投与が挙げられるが、本発明においては、特に肝癌腫瘍への局所投与が好ましい。
遺伝子類の導入効率は、Cy3、Cy5、ローダミン、FITC等で標識した遺伝子類を細胞内に導入し、蛍光顕微鏡等で解析できる。また、標的遺伝子の発現抑制効果は、mRNA量、タンパク質量を測定することで確認できる。mRNA量を測定するには、ノーザンブロッティング法、RT-PCR法(定量的PCR法)、RNAプロテクションアッセイ法等が挙げられ、タンパク質量を測定するには、ウェスタンブロッティング法、ELISA法、フローサイトメトリー、免疫染色法等が挙げられる。
また、本発明は癌治療薬を提供するが、該治療薬は、少なくとも癌細胞増殖を抑制する遺伝子類を含み、低酸素状態と同時又はその後に投与される。本発明において、治療の対象となる癌としては、例えば肝癌、肺癌、大腸癌、直腸癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、子宮癌、前立腺癌、白血病、リンパ腫などが挙げられ、このうち肝癌が好ましい。
癌細胞増殖を抑制する遺伝子類としては、上記癌細胞の増殖に関与する増殖因子の発現を抑制し得る遺伝子類であるが、特に血管内皮細胞成長因子(VEGF)発現を抑制する遺伝子類が好ましい。ここで、遺伝子類はsiRNAが好ましく、特にnakedなsiRNAが好ましい。
本発明の癌治療薬は、癌細胞が低酸素状態となった時と同時に、又は低酸素状態となった後に投与される。例えば肝動脈塞栓術(TAE)施行と同時又はその後に投与される。肝動脈塞栓術(TAE)は、常法に従って行われ、本発明の癌治療薬は、遺伝子導入効率の点からTAEと同時に投与するのが好ましい。
本発明の癌治療薬は、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内等へ非経口剤として用いることができる。ここで、非経口剤としては、注射用剤等が挙げられる。癌治療薬は、そのままでも投与することができるが、他の薬学的に許容される担体と混合し、懸濁剤、乳剤等の注射剤等の剤形で用いることができる。
本発明の癌治療薬を投与する場合、投与法や患者の症状等に合わせて適宜調整すればよいが、終濃度 10〜40μMのsiRNAを1〜3回に分けて投与するのが好ましい。
以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。
A.材料及び方法
ラットVEGF遺伝子をサイレンシングするsiRNAは、Filleur S et al, Cancer Res.2003; 63: 3919-3922.で使用しているものをダーマコン リサーチより入手し、コントロールsiRNAは、siRNAの塩基配列の塩基組成をランダムに並び替えたものを使用した。siRNAセンス鎖;AUGUGAAUGCAGACCAAAGAA-TT(配列番号1)、コントロールsiRNA;GAUAGCAAUGACGAAUGCGUA−TT(配列番号2)
(1)細胞培養
移植肝細胞癌上皮悪性腫瘍株KDH-8を用いた。このKDH-8は、3'-メチル-4-ジメチルアミノアゾベンゼンにより誘導したWKA/Hokラットの肝細胞より樹立した(W.Zhao et al. Cancer Immunol Immunother, 51, 381-388, 2002)。KDH-8細胞の培養は、10%FBS含有DMEM培地(日水製薬(株))を用いた。細胞は、37℃、5%CO2及び95%空気(酸素
正常状態下)でインキュベートした。低酸素状態における細胞培養にはアネロパック(三菱ガス化学(株))を用いた。ジャーを37℃で12時間インキュベートした。1時間以内にO2濃度1%以下、CO2濃度5%前後という低酸素状態となった。
(2)in vitroにおけるsiRNAトランスフェクション
KDH-8細胞(1.0×105)を6ウェルプレートに播種し、付着させた。24時間後PBSでプレート洗浄し、無血清培地に交換した。ならし培地は、酸素正常状態下又は低酸素状態下で12時間培養した後に収集した。siRNAのトランスフェクションは、無血清培地でLipofectAMINE 2000試薬(Invitrogen)を用いて行った。トランスフェクション時、細胞はDMEM培地1000μl当たり、約70%コンフルエントであった。すなわち、Opti-MEN(95μl)で希釈したsiRNA(20μl)と、Opti-MEN(80μl)で希釈したリポフェクトアミン2000試薬(20μl)をそれぞれ5μlずつ殺菌チューブ(最終濃度100nM)で混合し、室温で30分間インキュベートした後、siRNA-脂質混合液をウェルプレートに添加した。
トランスフェクション24時間後、ウェルプレートから上清を採取した。
VEGF濃度は、ELISAキット(Quantikine R&D Systems)に記載の方法に従って定量した。VEGF産物は、細胞計数(1.0×106)で標準化した。
また、in vitro系におけるsiRNA導入効率は、酸素正常状態下又は低酸素状態下で12時間培養後、FITC標識siRNA(20μM)20μlをKDH-8細胞にトランスフェクションし、24時間後にCellQuest softwareを用いたFACscan(Becton Dickinson)により解析した。
(3)同所性肝細胞癌ラットモデル
WKAH/Hkm10〜12週齢雄性ラットは三協ラボサービスから入手した。KDH-8細胞1.0×104個をPBS0.1mlに懸濁し、ラット開腹下に27ゲージ針を用いて、肝左葉の被膜下実質内に注入した。注入部位にフィブリノーゲン/トロンビンが被覆されたコラーゲンシート(「タココンブ」ZLBベーリング社)を貼布した。
腫瘍の大きさは、腫瘍の長径と直交する短径を計測し、組織学的所見から算出した。腫瘍体積を、Calsson等(Calsson et al, J Cancer Res., Clin Oncol, 105, 20, 1983)の方法に従って、腫瘍体積(mm3)=長径(mm)×[短径(mm)]2/2の式により算出した。
(4)HALモデル
肝癌細胞注入14日後に再度開腹し、2グループよりランダムに20匹を選び、10匹に対してヒト肝癌治療における肝動脈塞栓術に類似させるため、固有肝動脈の結紮を行った(HAL群)。また残りの10匹は開腹のみで、動脈結紮を行わない非処置群(NT群)とした。
(5)免疫組織化学染色
ABC法(BioGenex)に従って組織染色を行った。すなわち、脱パラフィン処置及び水和化後、クエン酸緩衝液に浸し、3%過酸化水素水溶液に室温で10分間浸して内在性のペルオキシダーゼを失活させた。組織切片(厚さ5μm)はマウス抗VEGF抗体(Oncogene, clone JH 121, 1:50)とインキュベートした。ネガティブコントロールとしてマウスIgGを一次抗体として使用した。ビオチン標識二次抗体反応後、アビジン−ビオチン ペルオキシダーゼ複合体とインキュベートし、DAB溶液と反応させた。免疫組織化学染色用のすべての抗体及び試薬は、ダココーポレーションから入手した。
(6)in vivo系におけるsiRNA導入
siRNAのin vivo系における抗腫瘍効果を上記HAL群およびNT群によって調べた。siRNA原液(40μM)10μlと墨汁(2μl)をPBS(188μl)に懸濁した。肝癌細胞注入14日後に、HAL群及びNT群に対し、27ゲージ針を用いて、上記懸濁液(200μl)を腫瘍に直接注入した。ネガティブコントロールとして、コントロールsiRNAを注入した。3日後に同操作を行った。siRNA注入から4日後にラットから肝臓(腫瘍)を摘出した。全タンパク量はBCA Protein Assay Reagent(PIERCE社)を用いて定量した。サンプルは、ELISA法(R&D Systems)によるマウスVEGF検定に先立ち標準化した。
さらに、FITC標識siRNA(終濃度20μM)を用いて、HAL群及び非処理群に対し同様に処理し、腫瘍におけるsiRNAの局在性を測定した。すなわち、siRNA注入から3日後、腫瘍におけるFITC標識siRNAの局在を蛍光顕微鏡(Zeiss、Leica DMR)とCCDカメラ(浜松ホトニクス)により観測した。
B.結果
(1)in vitroにおけるsiRNA導入によるVEGF発現抑制効果
図1A及びBに、FITC標識siRNAの細胞内導入効率の比較を示す。図2に、細胞(1.0×106)あたりのVEGF発現抑制効果の比較を示す。図1A、Bから明らかなように、酸素正常状態下では、FITC標識siRNAの蓄積が17.9±1.2%であったのに対し、低酸素状態下では、その約2倍の34.9±1.6%であった。また、図2から明らかなように、siRNAは酸素正常状態及び低酸素状態の両条件下でVEGF発現を効果的に抑制するが、その抑制効果は低酸素条件下で顕著に優れていた(siRNA:コントロールsiRNA=56.5%:28.1%)。
(2)腫瘍の組織学的所見
肝臓にKDH-8細胞を移植したラット全例に単結節の腫瘍の出現を認めた(図3A)。注入14日後の最大平均腫瘍径は5.1±0.23mm(平均値±標準誤差)であった。21日後において、腹水、衛生結節、肺転移は認められなかった。28日後には、中心性壊死が出現し、最大腫瘍径は20mmを超えていた(図3B)。KDH-8肝癌細胞は、組織学的には索状構造はなく、腺腔形成を伴う低分化の肝細胞癌であり、周囲組織との境界は明瞭であった(図5A、B)。21日後にmidzonalな腫瘍壊死が認められ(図5C)、また抗VEGF抗体による免疫組織染色では、KDH-8肝癌細胞中にVEGFの強発現が見られた(図5D)。
図4に、HAL群及びNT群における増殖曲線を示す。HAL群では、結紮28日後に有意な腫瘍の増殖抑制が認められた(NT群比:結紮21日後で36.7%、28日後で50.8%)。
(3)in vivo系におけるsiRNAのVEGF発現抑制効果
図6に、腫瘍におけるFITC標識siRNAの局在性を示す。FITC蛍光陽性細胞は、固有肝動脈の結紮を行ったHAL群において、多く認められた。また、図7から明らかなように、腫瘍内のVEGF発現量は、siRNA注入により減少し(減少率35−38.5%)、その抑制効果はHAL群において顕著であった(HAL群抑制比74%)。
(4)抗腫瘍効果
図8に、ラット肝癌における増殖曲線を示す。図8A、Bから明らかなように、抗腫瘍効果は、肝動脈結紮(HAL群)あるいはsiRNA注入単独でも得られたが(増殖率 HAL群:42.3%、siRNA単独:54.4%)、両者を併用することで、劇的な腫瘍の増殖抑制効果が認められた(増殖率4.49%)。
酸素正常状態下又は低酸素状態下でのFITC標識siRNAの細胞内導入率を示す図である(A;グラフの縦軸は細胞数、横軸は蛍光強度を示す。) 細胞(1.0×106)あたりのVEGF発現量を示す図である。 A:肝癌細胞株注入14日後の肝臓を示す写真である(孤立性の腫瘍が見られる(矢頭))。B:肝癌細胞株注入CT所見を示す図である(肝左葉に中心部壊死を伴った径21mm大の腫瘤を認める)。 KDH-8ラット肝癌における腫瘍増殖曲線を示す図である。 肝癌細胞株注入14日後の組織染色結果を示す図である(A:ヘマトキシエオジン染色40倍、B:ヘマトキシエオジン染色200倍)。C:肝癌細胞株注入21日後の腫瘍壊死を示す図である。D:抗VEGF抗体による免疫染色を示す図である(KDH-8肝癌内には、VEGFの高発現が見られる)。 腫瘍におけるFITC標識siRNAの局在性を示す図である。 腫瘍内VEGF発現抑制効果を示す図である。 A;KDH-8ラット肝癌における腫瘍増殖曲線を示す図である。B;腫瘍増殖抑制効果を示す図である。

Claims (12)

  1. 低酸素状態下において、標的細胞に標的遺伝子の発現を制御する遺伝子類を導入することを特徴とする標的細胞内への遺伝子類導入方法。
  2. 非ヒト動物の標的細胞を低酸素状態とし、標的遺伝子の発現を制御する遺伝子類を投与することを特徴とする遺伝子類導入方法。
  3. 標的遺伝子が、肝癌細胞増殖に関与する増殖因子をコードする遺伝子である請求項1又は2記載の導入方法。
  4. 肝癌細胞増殖に関与する増殖因子が、血管内皮細胞成長因子(VEGF)である請求項3記載の導入方法。
  5. 標的細胞が、肝癌細胞である請求項1〜4のいずれか1項記載の導入方法。
  6. 非ヒト動物の標的細胞を低酸素状態とする方法が、肝動脈塞栓術である請求項2〜5のいずれか1項記載の導入方法。
  7. 遺伝子類がnaked siRNAである請求項1〜6のいずれか1項記載の導入方法。
  8. 非ヒト動物が、齧歯類である請求項2〜7のいずれか1項記載の導入方法。
  9. 癌細胞増殖を抑制する遺伝子類を含有し、低酸素状態と同時又はその後に投与されることを特徴とする癌治療薬。
  10. 癌細胞増殖を抑制する遺伝子類が、血管内皮細胞成長因子(VEGF)の発現を抑制する遺伝子類である請求項9記載の癌治療薬。
  11. 遺伝子類がnaked siRNAである請求項9又は10記載の癌治療薬。
  12. 癌が肝癌であり、低酸素状態にする手段が肝動脈塞栓術である請求項9〜11のいずれか1項記載の癌治療薬。
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