明 細 書
空調装置
技術分野
[0001] 本発明は、冷媒の圧縮機を有する冷凍サイクルを備えた空調装置に関し、とくに、 互いに独立した固定容量圧縮機構及び可変容量圧縮機構を備えた冷凍サイクルを 好適に制御できるようにした空調装置に関する。
背景技術
[0002] 従来の空調装置、たとえば建設機械用空調装置においては、原動機により、冷凍 サイクルの圧縮機を運転し、空調装置として構成されるものがある。また、建設機械の 室内空間 (たとえば、キャビン内空間)が大きな場合や、熱負荷等が大きく変動するよ うな場合においては、 1つの冷凍サイクルで複数台の圧縮機を用い、それぞれに駆 動力伝達系を設ける場合がある。さらに、 2つの圧縮機を持つ冷凍サイクルにおいて 、 1つを固定容量タイプの圧縮機で、もう 1つを可変容量タイプの圧縮機とした空調装 置もある(たとえば、特許文献 1)。
[0003] し力しながら、 2つの圧縮機を用いる場合において、第 2圧縮機の単独運転時に対 して 2つの圧縮機を同時に運転する場合では、第 2圧縮機による容量制御方法が運 転状態によらず同一であると、単独運転の場合と同時運転の場合とでは蒸発器温度 等の応答が異なるため、蒸発器温度を適切に制御することが困難になるという問題 がある。その結果、蒸発器温度制御がうまくいかず、要求される冷房性能に対して、 蒸発器温度を適切に安定して制御することは困難となっていた。
特許文献 1:特開 2003— 19908号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0004] そこで本発明の課題は、 2つの圧縮機構を備え、一つは固定容量式の圧縮機構と し、もう一方は容量を変えることのできる可変容量式の圧縮機構とした冷凍システムを 有する空調装置にぉ 、て、異なる運転状態にぉ 、ても最適なフィードフォワードまた は Z及びフィードバック制御を実施することにより、要求される冷房性能に対して、安
定した適切な空調制御を可能にすることにあり、たとえば建設機械のキャビン用とし て好適な空調装置を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0005] 上記課題を解決するために、本発明に係る空調装置は、冷凍サイクル中に、互!ヽ に独立した、固定容量式の第 1圧縮機構と可変容量式の第 2圧縮機構との 2つの圧 縮機構を有し、前記第 2圧縮機構の容量を制御する第 2圧縮機構容量制御手段、前 記 2つの圧縮機構による運転、またはどちらか一方の圧縮機構による運転に切り替え る圧縮機構運転切替制御手段、空調用空気を冷却する冷媒の蒸発器、冷媒の凝縮 器、蒸発器に空気を送風する送風機、第 2圧縮機構におけるフィードフォワード制御 のための圧縮容量を算出する第 2圧縮機構フィードフォワード圧縮容量演算手段を 備えた空調装置において、前記第 2圧縮機構フィードフォワード圧縮容量演算手段 力 前記第 2圧縮機構による単独運転時と、前記第 1圧縮機構及び第 2圧縮機構の 同時運転時とについて、互いに異なる第 2圧縮機構フィードフォワード圧縮容量演算 式により圧縮容量を算出することを特徴とするものからなる(第 1の形態)。
[0006] また、本発明に係る空調装置は、冷凍サイクル中に、互いに独立した、固定容量式 の第 1圧縮機構と可変容量式の第 2圧縮機構との 2つの圧縮機構を有し、前記第 2 圧縮機構の容量を制御する第 2圧縮機構容量制御手段、前記 2つの圧縮機構によ る運転、またはどちらか一方の圧縮機構による運転に切り替える圧縮機構運転切替 制御手段、空調用空気を冷却する冷媒の蒸発器、冷媒の凝縮器、蒸発器に空気を 送風する送風機、蒸発器または蒸発器出口空気温度を検出する蒸発器温度検出手 段、蒸発器または蒸発器出口空気温度の目標温度を算出する蒸発器目標温度算出 手段、蒸発器または蒸発器出口空気温度と蒸発器または蒸発器出口空気温度の目 標温度との偏差を参照することにより第 2圧縮機構におけるフィードバック圧縮容量を 演算する第 2圧縮機構フィードバック圧縮容量演算手段を備えた空調装置において 、前記第 2圧縮機構フィードバック圧縮容量演算手段が、前記第 2圧縮機構による単 独運転時と、前記第 1圧縮機構及び第 2圧縮機構の同時運転時とについて、係数が 互いに異なる第 2圧縮機構フィードバック圧縮容量演算式によりフィードバック圧縮容 量を演算することを特徴とするものからなる (第 2の形態)。
[0007] さらに、本発明では、上記第 1の形態と第 2の形態を組み合わせた構成とすることが できる。すなわち、本発明に係る空調装置は、冷凍サイクル中に、互いに独立した、 固定容量式の第 1圧縮機構と可変容量式の第 2圧縮機構との 2つの圧縮機構を有し 、前記第 2圧縮機構の容量を制御する第 2圧縮機構容量制御手段、前記 2つの圧縮 機構による運転、またはどちらか一方の圧縮機構による運転に切り替える圧縮機構 運転切替制御手段、空調用空気を冷却する冷媒の蒸発器、冷媒の凝縮器、蒸発器 に空気を送風する送風機、第 2圧縮機構におけるフィードフォワード制御のための圧 縮容量を算出する第 2圧縮機構フィードフォワード圧縮容量演算手段、蒸発器また は蒸発器出口空気温度を検出する蒸発器温度検出手段、蒸発器または蒸発器出 口空気温度の目標温度を算出する蒸発器目標温度算出手段、蒸発器または蒸発器 出口空気温度と蒸発器または蒸発器出口空気温度の目標温度との偏差を参照する ことにより第 2圧縮機構におけるフィードバック圧縮容量を演算する第 2圧縮機構フィ ードバック圧縮容量演算手段を備えた空調装置において、前記第 2圧縮機構フィー ドフォワード圧縮容量演算手段が、前記第 2圧縮機構による単独運転時と、前記第 1 圧縮機構及び第 2圧縮機構の同時運転時とについて、互いに異なる第 2圧縮機構フ イードフォワード圧縮容量演算式により圧縮容量を算出するとともに、前記第 2圧縮機 構フィードバック圧縮容量演算手段が、前記第 2圧縮機構による単独運転時と、前記 第 1圧縮機構及び第 2圧縮機構の同時運転時とについて、係数が互いに異なる第 2 圧縮機構フィードバック圧縮容量演算式によりフィードバック圧縮容量を演算すること を特徴とするものからなる(第 3の形態)。
[0008] この第 3の形態に係る空調装置においては、前記圧縮機構運転切替制御手段によ り、第 1圧縮機構による単独運転から、第 1圧縮機構及び第 2圧縮機構による同時運 転に切替時、予め定めた所定時間内においては、前記第 2圧縮機構フォードバック 圧縮容量演算手段により演算されたフィードバック圧縮容量を参照することなく前記 第 2圧縮機構フィードフォワード圧縮容量のみを参照し、前記第 2圧縮機構容量制御 手段により第 2圧縮機構の容量を制御して同時運転に切り替えるようにすることが好 ましい。
[0009] また、上記のような空調装置にお!ヽては、前記第 2圧縮機構フィードフォワード圧縮
容量演算手段は、第 2圧縮機構単独運転時には冷凍サイクル熱負荷を参照すること により、第 1及び第 2圧縮機構同時運転時には冷凍サイクル熱負荷及び、第 1圧縮機 構の駆動源である原動機の回転数または Z及び該原動機により走行される車の速 度を参照することにより、第 2圧縮機構フィードフォワード圧縮容量を算出するように することが好ましい。
[0010] 前述の所定時間は、たとえば、冷凍サイクル熱負荷及び、第 1圧縮機構の駆動源 である原動機の回転数または Z及び該原動機により走行される車の速度を参照する ことにより、算出することができる。
[0011] また、上述の冷凍サイクル熱負荷は、外気温度、及び、室内温度、及び、送風量あ るいは送風量に相関のある物理量、及び、日射量を検知することにより、または、これ らのいずれか少なくとも 1っを検知することにより算出することができる。
[0012] 本発明に係る空調装置において、上記第 2圧縮機構は、容量制御信号による容量 可変圧縮機構、または回転数制御による容量可変圧縮機構カゝら構成することができ る。
[0013] このようなフィードフォワードまたは Z及びフィードバック制御を行う、本発明に係る 空調装置は、車両用空調装置として、中でも建設機械用空調装置として好適なもの である。
発明の効果
[0014] 本発明に係る空調装置によれば、第 2圧縮機構の容量制御方法に対して、同時運 転時、または、第 2圧縮機構単独運転時等の異なる運転状態においても最適なフィ ードフォワードまたは Z及びフィードバック制御を行うことが可能となり、それによつて 、要求される冷房性能に対して、安定した適切な空調制御を行うことが可能となる。 図面の簡単な説明
[0015] [図 1]本発明の一実施態様に係る空調装置の概略機器系統図である。
[図 2]図 1の空調装置の制御の一例を示すブロック図である。
[図 3]図 1の空調装置の制御の一例を示すフローチャートである。
符号の説明
[0016] 1 空調装置
2 通風ダクト
3 外気または Zおよび内気導入口
4 送風機
5 蒸発器
6 冷凍サイクル
7 メインコントローラ
8 駆動制御信号
9 第 1圧縮機構
10 吐出容量信号
11 容量制御信号
12 第 2圧縮機構
13 凝縮器
14 受液器
15 膨張弁
16 蒸発器出口空気温度センサ
17 車室内温度センサ
18 外気温度センサ
19 日射センサ
発明を実施するための最良の形態
[0017] 以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図 1は、本発明の一実施態様に係る空調装置、たとえば建設機械用空調装置の概 略機器系統図を示している。図 1に示す空調装置 1においては、室内(たとえば、キヤ ビン内)へと開口する通風ダクト 2内の上流側に、外気または Zおよび内気導入口 3 力 の吸気を圧送する送風機 4が設けられている。送風機 4の下流側には、送風され る空気を冷却する冷却器としての蒸発器 5が設けられている。図示を省略するが、必 要に応じて、蒸発器 5の下流側には、加熱器としてのヒータコアが設けられていてもよ い。蒸発器 5を通過し、冷却された空気が室内へと吹き出される。
[0018] 上記のような空調装置 1に、上記蒸発器 5を備えた冷凍サイクル 6が設けられている
o冷凍サイクル6は、各機器が冷媒配管を介して接続された冷媒回路に構成されて おり、この冷凍サイクル 6には、原動機 (たとえば、エンジン)等を駆動源とし、メインコ ントローラ 7からの駆動制御信号 8により駆動が制御される、固定容量式の第 1圧縮 機構 9と、吐出容量信号 10がメインコントローラ 7に送られ、メインコントローラ 7からの 容量制御信号 11により容量が制御される可変容量式の第 2圧縮機構 12が設けられ ている。第 2圧縮機構 12は、本実施態様では、電動モータによって駆動されるように なっている。冷凍サイクル 6には、第 1圧縮機構 9および/または第 2圧縮機構 12で 圧縮された高温高圧の冷媒を凝縮する凝縮器 13、凝縮された冷媒の気液を分離す る受液器 14、受液器 14からの冷媒を減圧、膨張させる膨張弁 15、膨張弁 15からの 冷媒を蒸発させ通風ダクト 2内を送られてくる空気との熱交換により該空気を冷却す る蒸発器 5がこの順に配置されており、蒸発器 5からの冷媒が上記圧縮機構に吸入さ れて再び圧縮される。蒸発器 5の温度制御は、たとえば、原動機から第 1圧縮機構 9 への駆動力伝達回路に設けられたクラッチのコントロールおよび第 2圧縮機構 12駆 動用の電動モータの制御信号により行われるようになって!/、る。
[0019] 本実施態様では、メインコントローラ 7には、蒸発器または蒸発器出口空気温度(
Teva)を検出する蒸発器温度検出手段としての蒸発器出口空気温度センサ 16により 検出された蒸発器出口空気温度 (Teva)の信号が送られる。また、メインコントローラ 7 には、車室内温度センサ 17により検出された車室内温度 (Tin )の信号、外気温度セ ンサ 18により検出された外気温度 (Tamb)の信号、日射センサ 19により検出された 日射量 (Rsun)の信号もそれぞれ送られるようになって 、る。
[0020] 本実施態様では、メインコントローラ 7により、たとえば図 2、図 3に示すような制御が 行われる。
第 1圧縮機構 9は、固定容量式であり、クラッチ信号によりコントロールされ、クラッチ 信号は、蒸発器温度目標値 (Toff)と、蒸発器出口空気温度センサ 16により検出され た蒸発器出口空気温度 (Teva)とから、次式によって演算される。
クラッチ信号 =f (Toff, Teva)
そして、第 2圧縮機構 12が運転されているときは、蒸発器温度制御は、その容量制 御手段により行われ、容量制御信号 11により容量可変機構を制御する力、あるいは
、第 2圧縮機構 12駆動用の電動モータの回転数制御により制御される。この第 2圧 縮機構 12の制御方法の例を、図 2、図 3を参照しながら説明する。
[0021] まず、第 2圧縮機構蒸発器温度制御方法についてであるが、第 2圧縮機構 12は、 フィードフォワード (FF)演算項、フィードバック (FB)演算項により、その圧縮容量が 制御されるものである。但し、 FF、 FB演算項は運転状態に適合した、制御方法を持 つものである。特に、第 2圧縮機構単独運転時と比較して、第 1及び第 2圧縮機構に よる同時運転時との違いを持たせてある。ここでは、本システムにおける第 2圧縮機 構 12の同時運転状態による制御方法を示す。
[0022] 第 1及び第 2圧縮機構による同時運転時制御方法:
(1)第 1圧縮機構 9及び第 2圧縮機構 12により同時に運転されるとき(図 3、同時運転 要求〔ステップ Sl〕)、各種センサからの信号が入力され (図 3、ステップ S2)、第 2圧 縮機構 12のフィードフォワード演算項により、フィードフォワード容量演算値が出力さ れ(図 3、ステップ S3)、その演算値を参照し、第 2圧縮機構 12の圧縮容量が制御さ れる(図 3、ステップ S4)。但し、同時に運転されるときは、第 2圧縮機構 12のフィード フォワード演算項は、第 2圧縮機構単独時のフィードフォワード演算項の演算方法を 変更し、第 1及び第 2圧縮機構による同時運転に適合したフィードフォワード演算値 を算出するものとする。つまり、第 2圧縮機構 12の圧縮容量の制御演算値 (Nmo)とし ては、次式のようにフィードフォワード演算値 (NmoFF)とフィードバック演算値 (NmoFB)との合計値とされ、フィードフォワード演算値 (NmoFF)はたとえば蒸発器温 度目標値 (Toll)、外気温度 (Tamb)、車速 (VS)やエンジン回転数 (Ne)、ブロワ(送風機 )電圧 (BLV)等カゝら次式のように算出される。
Nmo=NmoFF+NmoFB
NmoFF=A X Toff + B X Tamb + C XVS + D X BLV
ここで、 A、 B、 C、 Dは定数である。
[0023] 同様に、フィードバック演算値を用いる場合にも、フィードバック演算値 (NmoFB)は 、第 2圧縮機構単独運転時と、第 1及び第 2圧縮機構による同時運転時とは異なる演 算値とされることが好ましぐこれはとくに、フィードバック演算値 (NmoFB)が次式のよ うに演算される際、その比例ゲイン Kpを変更することにより行われる(図 3、ステップ S
5) 0つまり、第 1及び第 2圧縮機構により同時に運転されるとき、第 2圧縮機構のフィ ードフォワード及びフィードバック演算項により制御されるが、第 2圧縮機構のフィード バック演算項は、第 2圧縮機構単独時のフィードバック演算項の演算に関わる係数( 比例ゲイン等)を変更し、第 1及び第 2圧縮機構による同時運転に適したフィードバッ クとするちのである。
NmoFB=NmoP (比例演算値) + Nmol (積分演算値)
NmoP =Kp X (Teva— Toff)
Nmol =NmoIn-l + Kp/Ti X (Teva— Toff)
ここで、 Kpは比例ゲイン、 Tiは積分時間、 Nmoln-lは Nmolの前回演算値である。
[0024] また、第 1圧縮機構 9のみによる運転状態力 第 1及び第 2圧縮機構により同時に 運転されるとき、第 2圧縮機構 12のフィードフォワード演算値のみにより、第 2圧縮機 構 12を起動し、容量を制御し、予め求めた所定時間 (T) (図 3、ステップ S6〔制御遅 延時間演算〕)は、第 2圧縮機構 12のフィードバック演算項の出力を制限または演算 停止させて、所定時間 (T)経過後に (所定時間 (T)経過を判定した後に〔図 3、ステツ プ S7〕)、前記フィードバック演算項の制限または演算停止解除し、フィードフォヮ一 ド及びフィードバックによる第 2圧縮機構容量制御とすることができる(図 3、ステップ S 8)。このような制御のフローの例を図 3に示す。すなわち、フィードフォワード制御によ つて起動し、フィードバック制御を所定時間制限または演算停止するものである。
[0025] このような制御により、同時運転時、または、第 2圧縮機構単独運転時等の異なる 運転状態にぉ 、ても、最適なフィードフォワードまたは Z及びフィードバック制御を行 うことが可能となる。したがって、要求される冷房性能に対して、安定した最適な空調 制御を行うことができる。
産業上の利用可能性
[0026] 本発明に係る空調装置は、互いに独立した固定容量圧縮機構及び可変容量圧縮 機構を備えた、あらゆる冷凍サイクルを好適に適用でき、とくに熱負荷変動の激しい 建設機械のキャビン用空調装置に適用して最適なものである。