明 細 書 擬微小重力環境下での骨髄細胞を用いた 3次元軟骨組織構築方法 技 術 分 野
本発明は、 擬微小重力環境下における骨髄細胞を用いた 3次元軟骨組織 構築方法に関する。 背 景 技 術
近年、 整形外科領域では軟骨欠損部位の修復に、 患者から採取した自家 軟骨より単離した軟骨細胞を、 一旦生体外で培養 ·増殖させてから欠損部 位に再移植する技術が活発に研究され、 一部では実用に至っている。 しか し、 軟骨細胞はシャーレのような容器で 2次元培養すると脱分化して繊維 芽細胞になってしまうため、 軟骨基質産生能等の軟骨細胞本来の機能を失 ない、 移植しても十分な治療効果が望めないという問題がある。
この問題を解決する手段は 3次元培養であるが、 常に重力の影響を受け る地上では、 水より比重が若干大きい細胞は培養液中に沈降してしまうた め、 結局 2次元培養しか望めないことになる。 そのため、 3次元培養を行 うためには、 通常適当な足場材料を用いて培養を行うことが必要となる。 一方、攪拌培養法による 3次元組織構築へのアプローチもある。しかし、 従来の攪拌培養法では、 細胞に与えられる機械的刺激や損傷が強く、 大き な組織を得ることは困難か、 あるいは得られたとしても内部で壊死を起こ していることが多い。
これに対し、 重量を最適化するために設計された一連のバイオリアクタ 一が存在する。 その 1つである RWV (Rotat ing Wal l Vesse l)パイオリァク 夕一は、 NASAが開発したガス交換機能を備えた回転式バイオリアクターで ある (例えば、 米国特許 5, 0 0 2 , 8 9 0号参照)。 RWVパイオリァク夕 一は、 横向き円筒形バイオリアクター内に培養液を満たし、 細胞を播種し た後、 その円筒の水平軸方向に沿って回転しながら培養を行う。 回転によ る応力のため、 バイオリアクター内は地上の重力に比較して 100分の 1程
度の微小重力環境となる。 したがって、 細胞は培養液中に均一に懸濁され た状態で増殖することが可能となり、 凝集して、 大きな組織塊を形成でき る。
RWV バイオリ アクターの他にも、 RCCS (Rotary Cell Culture System™:Synt econ Incorporated) や 3D- clinostat など、 数種の擬微小 重力環境を実現する装置が開発され (例えば、特開平 8— 173143号、 特開平 9— 37767号、特開 2002— 45 1 73号参照)、実用に供さ れている。 さらに、 こうした擬微小重力環境下での細胞培養の結果も、 既 に特許や論文として発表されている (例えば、 米国特許 5, 153, 1 3 3号、 米国特許 5, 155, 034号、 米国特許 6, 1 17, 674号、 米国特許 6, 416, 774号参照)。擬微小重力環境下での軟骨組織構築 については、 PLGAなどの足場材料と軟骨細胞とのコンポジットを作製する ことにより、 軟骨組織を構築する方法が知られている。
一方、 軟骨組織再生における自家軟骨の採取は、 正常組織に与える侵襲 が大きく、その採取量にも限界があるといった問題も有する。したがって、 軟骨以外の細胞を利用した、 生体外での効率的な軟骨組織再生技術が望ま れている。 発 明 の 開 示
本発明は、 自家軟骨を侵襲することなく、 3次元的に軟骨組織を構築す る技術を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するために、 本発明者らは鋭意検討した結果、 自家軟 骨の代わりに骨髄に含まれる間葉系幹細胞を利用し、 これを軟骨細胞に分 化増殖させることを考えた。 この方法であれば、 正常組織に侵襲を与える ことなく、多くの軟骨細胞を得ることができる。さらに、 RWV (Rotating Wall Vessel)バイオリアクターを用いて、擬微小重力環境下で培養することによ り、 大きな軟骨組織を特別な足場材料を利用することなく構築できること を見出し、 本発明を完成させた。
すなわち、 本発明は擬微小重力環境下で骨髄細胞を 3次元的に培養する ことにより、 軟骨組織を構築する方法に関する。
前記方法において、擬微小重力環境は時間平均して地球の重力の 1/10〜 1/100 程度であることが好ましい。 このような擬微小重力環境は、 回転で 生じる応力によって地球の重力を相殺することにより擬微小重力環境を地 上で実現するバイオリアクターを用いて得ることができる。
前記バイオリアクタ一としては、 1軸回転式バイオリアクターが望まし く、 例えば RWV (Rot at ing Wal l Vesse l)パイォリアクタ一を挙げることが できる。 删 (Ro tat ing Wal l Vesse l)バイオリアクターを用いた場合の培 養条件は、 例えば、 播種密度 106〜107/cni3、 回転速度 8. 5〜25rpm (直径 5cmベッセル) 程度であるが、 これに限定されるものではない。
また本発明の方法では、 培養液中に、 TGF- j3、 デキサメタゾン等の軟骨 分化誘導因子を添加することが好ましい。 さらに、 骨髄細胞はコンフルェ ントになるまで 2次元培養した後、 さらにサブカルチャーしてから、 擬微 小重力環境下での培養に供することが望ましい。
本発明の 1つの実施形態として、 患者から採取された骨髄細胞を用いる 方法が挙げられる。 患者から採取された骨髄細胞により構築される軟骨組 織は、 拒絶反応等の問題がないため、 当該患者の軟骨欠損部の再生 ·修復 に好適に用いることができる。
本発明によれば、 自家軟骨を侵襲することなく、 効率的に生体外で 3次 元構造をもつた軟骨組織を構築することができる。 図面の簡単な説明
図 1は、 実施例 1の実験プロトコ一ルを説明した図である。
図 2は、 RWVのベッセル (上) と 15mlコニカルチューブを示す写真 (下) である。
図 3は、 実施例 1によって構築された軟骨組織切片の染色像を示す写真 である 〔上段:へマトキシリン 'ェォジン (HE) 染色、 中段:アルシアン ブル一染色、 下段:サフラニン O染色〕。
図 4は、 培養後に形成された組織塊を比較したものである 〔左: RWV を 用いた回転培養 * TGF- ]8添加、中:静置培養(ペレツト培養) ' TGF- iS添加、 右:静置培養 (ペレツト培養) · TGF- 非添加 (10 %FBS)〕。
2004/018339
図 5は、 RWVの回転速度変化を示すグラフである。
図 6は、 アル力リフォスファタ一ゼ活性測定の結果を示すグラフである 〔左:静置培養 (ペレツト培養) * TGF-i3添加、 中:静置培養 (ペレツ卜培 養) -TGF - j3非添加 (10%FBS)、 右: RWVを用いた回転培養 · TGF-i3添加〕。 図 7は、 RT- PCRの結果 (A: Collagen type II、 B: Aggrecan) を示す 〔グ ラフ中、 左:静置培養 (ペレット培養) · TGF-jS添加、 右: RWVを用いた回 転培養〕。
図 8は、 培養 4週間後の軟骨組織の圧縮強度 (左) と正常ゥサギ関節軟 骨組織の圧縮強度 (右) を比較したグラフである。
図 9は、 培養組織 (生体外で 2週間培養) をゥサギ膝関節全層欠損に移 植して、 4週間後のマクロ所見 (A:RWVで培養した軟骨組織: bar=10腿、 B: 全層欠損: bar=5nun、 C:移殖直後所見、 D:移殖後 4週間所見) を示す写真で ある。
図 1 0は、 移植部の硬度 (左) と正常ゥサギ関節軟骨組織の硬度 (右) を比較したグラフである。
図 1 1は、 移殖組織 (移植部分を四角枠で示す) の HE染色像 (A:ゥサギ 関節軟骨組織、 B:移植組織) を示す写真である。
図 1 2は、 移殖組織のサフラニン 0染色像 (A:ゥサギ関節軟骨組織、 B: 移植組織) を示す写真である。
図 1 3は、 移殖組織の免疫組織学染色像 (A:ゥサギ関節軟骨組織、 B:移 植組織) を示す写真である。 . 本明細書は、本願の優先権の基礎である特願 2 00 3— 4 1 3 7 58号、 および特願 2 004- 9 66 86号の明細書に記載された内容を包含する。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明について詳細に説明する。
1. 擬微小重力環境
本発明において、 「擬微小重力環境」 とは、 宇宙空間等における微小重力 環境を模して人工的に作り出された微小重力 (simulated microgravity)
環境を意味する。 こうした擬微小重力環境は、 例えば、 回転で生じる応力 によって地球の重力を相殺することにより実現される。 すなわち、 回転し ている物体は、地球の重力と応力のべクトル和で表される力を受けるため、 その大きさと方向は時間により変化する。 結局、 時間平均すると物体には 地球の重力 (g ) よりもはるかに小さな重力しか作用しないこととなり、 宇宙空間によく似た 「擬微小重力環境」 が実現される。
前記 「擬微小重力環境」 は、 細胞が沈降することなく均一に分散した状 態で増殖分化し、 3 次元的に凝集して、 組織塊を形成できるような環境で あることが必要となる。 言い換えれば、 播種細胞の沈降速度に同調するよ うに回転速度を調節して、 細胞に対する地球の重力の影響を最小化するこ とが望まれる。 具体的には、 培養細胞にかかる微小重力は、 時間平均して 地球の重力 (g ) の 1/10〜1/100程度であることが望ましい。
2 . バイオリアクター
本発明では、 擬微小重力環境を実現するために、 回転式のバイオリアク ターを使用する。 そのようなバイオリアクターとしては、 例えば、 RWV (Rotat ing - Wal l Vessel : US 5, 002, 890 )、 RCCS (Rotary Ce l l Cul ture Sys tem™: Synt econ Incorporated)、 3D - c l inos tat、 ならびに特開平 8— 1 7 3 1 4 3号、 特開平 9一 3 7 7 6 7号、 および特開 2 0 0 2 - 4 5 1 7 3号に記載されているようなものを用いることができる。なかでも、 RWV および RCCSはガス交換機能を備えているという点で優れている。 また、 1 軸式と 2軸式では、 1軸式の回転式バイオリアクターのほうが好ましい。 2軸式 (例えば、 2軸式の cl inos tat等) では、 ずれ応力 (シェアストレ ス) を最小化することができず、 またサンプル自体も回転するため、 1軸 式のようにベッセル内にふわふわと浮かんだ状態を再現することができな いからである。 このふわふわと浮かんだ状態が、 特別な足場材料なしに大 きな 3次元的組織塊を得るための重要な条件となる。
本発明の実施例で用いられている RWVは、 NASAによって開発されたガス 交換機能を備えた 1軸式の回転式バイオリアクタ一である。 RW は、 横向 き円筒形バイオリアクター内に培養液を満たし、 細胞を播種した後、 その
円筒の水平軸方向に沿つて回転しながら培養を行う。 バイオリアクター内 には、 回転による応力のため、 実質的に地球の重力よりもはるかに小さい 「微小重力環境」 が実現される。 この擬微小重力環境下において、 細胞は 培養液内に均一に懸濁され、 最小のずり応力下で必要時間培養増殖され、 凝集して組織塊を形成する。
RWV を用いた場合の好ましい回転速度は、 ベッセルの直径おょぴ組織塊 の大きさや質量に応じて適宜設定され、 例えば直径 5cmのベッセルを用い た場合であれば 8. 5~25rpm程度であることが望ましい。このような回転速 度で培養を行うとき、 ベッセル内の細胞に作用する重力は実質的に地上の 重力 (g ) の 1/10〜1/100程度となる。
3 . 骨髄細胞
本発明では軟骨組織構築の材料として骨髄細胞を用いる。 本発明に用い られる骨髄細胞は、 分化 ·増殖能力を有する未分化の細胞であり、 特に骨 髄由来の間葉系幹細胞が好ましい。 前記細胞は、 樹立された培養細胞株の ほか、 患者の生体から単離された骨髄細胞を好適に用いることができる。 該細胞は患者から採取された後、 常法に従って結合組織等を除去して調製 することが好ましい。 また、 常法により一次培養を行い、 予め増殖させて から用いてもよい。 さらに患者から採取した培養は、 凍結保存されたもの であってもよい。 つまり、 予め採取した骨髄細胞を凍結保存しておき、 必 要に応じて利用することもできる。
4 . 細胞の培養条件
細胞の分化増殖に用いられる培地としては、 MEM培地、 α- MEM培地、 DMEM 培地等、 骨髄細胞の培養に通常用いられる培地を、 細胞の特性に合わせて 適宜選んで用いることができる。 また、 該培地には、 FBS (Sigma社製) や Ant ibiot ic- Ant imycot ic (GIBCO BRL社製) 等の抗生物質等を添加しても良 い。
さらに培養液中には、軟骨細胞分化促進作用を有する、デキサメタゾン、 FK-506ゃシクロスポリン等の免疫抑制剤、 BMP- 2、 BMP- 4、 BMP_5、 BMP - 6、
BMP- 7及び BMP- 9等の骨形成タンパク質 (BMP : Bone Morphogene t ic
Prote ins) , TGF- 等の骨形成液性因子から選ばれる 1種又は 2種以上を、 グリセリンリン酸、 ァスコルビン酸リン酸等のリン酸原とともに、 添加し てもよい。 特に、 TGF- ]3とデキサメタゾンのいずれかまたは両方を適当な リン酸原とともに添加することが好ましい。 この場合、 TGF- /3は lng/ml〜 10ag/ml程度、 デキサメタゾンは ΙΟΟηΜを上限として加えられる。
細胞の培養は、 3〜10%CO2、 30〜40°C、 特に 5 % C02、 37°Cの条件下で行 うことが望ましい。 培養期間は、 特に限定されないが、 少なくとも 7日、 好 ましくは 21〜28日である。
特に、 RWV (直径 5cmベッセル)を使用する場合、骨髄細胞を 106〜107/cm3 の播種密度で播種し、 8. 5〜25rpmの回転速度 (直径 5cmのベッセル) で培 養を行うとよい。 この条件であれば、 播種細胞の沈降速度とベッセルの回 転速度が同調し、 細胞に対する地球の重力の影響が最小化されるからであ る。 なお、 オーバーコンフルェン卜にまで 2次元培養した細胞をサブカル チヤ一した後、 RWVで培養すると大きな組織塊が得られる。
5 . 本発明の利用
本発明の方法を再生医療に応用すれば、 自己の骨髄細胞を利用した軟骨 組織の再生が可能になる。 すなわち、 患者から採取した骨髄細胞を擬微小 重力下で 3次元的に培養して、 軟骨組織を構築し、 該患者の軟骨欠損部に 適用する。 構築された軟骨組織は拒絶反応の危険性がないうえ、 自家軟骨 の使用に比較して正常組織の侵襲が少ないため、 より安全な軟骨再生を可 能にする。 実 施 例
実施例 1 :ゥサギ骨髄由来間葉系幹細胞からの軟骨組織構築
1 . ゥサギ骨髄由来間葉系幹細胞の培養
( 1 ) ゥサギ骨髄由来間葉系幹細胞の調製
ゥサギ骨髄由来間葉系幹細胞は、 2週齢の JW系家兎(雌)の大腿骨より Maniatopoulosらの方法 (Maniatopoulos, C., Sodek, J. , and Me lclier, A.
H. (1988) Cell Tissue Res. 254, p317-330) に従って採取した。 採取した 細胞を、 10% FBS (Sigma社製)および Antibiotic- Ant imycoUc (GIBCOBRL 社製) を含む DMEMで 3週間にわたって培養し、 増殖させた。
(2) ゥサギ骨髄由来間葉系幹細胞の培養
上記のようにして調製したゥサギ骨髄由来間葉系幹細胞を、 10_7M
Dexamethasone(Sigma社製)、 10ng/ml TGF- β 3 (Sigma社製)、 50 g/ml 7 スコルピン酸(Wako製)、 ITS + Premix (BD製)、 40 g/ml L- proline (Sigma 社製) および Antibiotic- Antimycotic (GIBCOBRL社製) を含む丽 EM培養液 (Sigma社製) lOnilに、 lx 106cells/mlとなるように懸濁し、 4週間にわた つて静置培養 (ペレット培養) もしくは RWVバイオリアクタ一 (Synthecon 社製) による回転培養を行なった。
静置培養は、 15mlコニカルチューブに上記細胞懸濁液 10mlを入れ、 50g で 5分間遠心して作製したペレツト組織を、 37°C、 5%C02条件下でペレット 培養した。 また、 TGF-/3を添加しない条件下でも同様にしてペレット培養 を行った。 一方、 RWVバイオリアクターによる回転培養は、 直径 5cmのべ ッセルを用いて、 回転数: 8.0〜24rpm、 37°C, 5%C02の条件下で行った。 回 転数は、 目視で組織塊が液中に浮いている状態になるように頻繁に調整し た (RWVの回転速度変化を図 5に示す)。 また、 細胞の呼吸により泡が生じ るが、 これは擬微小重力環境を乱すことから頻繁に除去した。 図 1に本実 施例のプロトコルを、 また図 2に RWVのベッセルと、 15mlコニカルチュー プの写真を示す。 また、 培養後の組織塊を比較した結果を図 4に示す。 図 4は左から、 TGF- jSを添加して行った RWVを用いた回転培養、 TGF-/3を添 加して行った静置培養(ペレツト培養)、 TGF- i3を添加せずに行った静置培 養 (ペレット培養) の結果を示す。
2. 培養組織の評価方法
(1) 組織染色
静置培養 (ペレット培養) および回転培養で得られたそれぞれの軟骨組 織は、 1週間ごとにへマトキシリン 'ェォジン (HE)、 サフラニン Oおよび アルシアンブル一で組織染色を行い、 軟骨基質産生能を評価した。 まず、 培養組織は、 4 パラホルムアルデヒド, 0.1%ダルタルアルデヒドでマイクロ
ウェーブ固定した後、 翌日 10%EDTA, lOOmM Tris(pH7.4)中で約 1週間脱灰 した。 脱灰後、 エタノールで脱水し、 パラフィンに包埋した。 5 ΠΙの厚さ で切片を作製した。 次いで、 各切片について脱パラフィン後、 常法にした がい、 へマトキシリン ·ェォジン、 サフラニン 0、 およびアルシアンブル 一染色を行った。 結果を図 3に示す。
(2) アルカリフォスファターゼ活性
静置培養 (ペレット培養) および回転培養で得られたそれぞれの軟骨組 織について、 1週間ごとにアルカリフォスファターゼ (ALP) 活性測定を行 つた。 ALP 活性の測定は、 培養組織を 100 mM Tris (ρΗ 7.5), 5mM MgCl2 で洗浄後、スクレイパーで集め、 500/xlの lOOmMTris ( H 7.5) , 5mMMgCl2, 1% Triton X- 100に懸濁して超音波破砕した。 破砕後 6, 000gで 5分間遠 心 し て 上 清 を 回 収 し た 。 酵 素 活 性 は 、 0.056 M 2-afflino-2-methyl-l, 3-propandiol (pH 9.9), 10 mM p-nitrop enyl phosphate, 2 mM MgCl2 に各上清 5 1を加え、 37°Cで 30分間ィンキュベ 一卜した後、すぐにマイクロプレートリーダーで吸収波長 405 mnの吸光度 を測定して求めた。検量線は nitrophenolを用いて作製した。 結果を図 6に示す。 グラフ中、 「RWV」 は RWを用いた回転培養、 「TGF- jS」 は TGF- j3を添加して行ったペレツト培養、 10%FBSは TGF- /3を添加せずに行った ペレツ卜培養の結果を示す。
(3) 定量的 RT- PCR
静置培養 (ペレット培養) および回転培養で得られたそれぞれの軟骨組 織について、 1 週間毎に軟骨特異的遺伝子である collagen Type Πや Aggrecanの発現量を定量的 RT- PCRにより測定した。
培養組織からの RNAの抽出は、 TRizol Reagent (Invitrogen) を用いた。 方法はプロトコ一ルに従い、 組織を TRizol中で溶解したのち、 200 1の クロ口ホルムを添加、よく振り混ぜて 1500θΓρπιで遠心。イソプロバノール 沈澱、 エタノール沈澱の後、 DEPC水に溶解し、 吸光度測定により濃度を計 算し、 約 l gの totalRNAを RTに供した。
RTは、 キット First- Strand cDNA Synthesis Using Superscript Dlfor RT-PCR (Invitrogen) および TAKARA RNA PCR kit (AMY) Ver.2.1 (TaKaRa)を
使用して実施した。 First-Strand cDNA Synthesis Using Superscript IE iorRT- PCRは、 50°C 60分、 70°C 15分の条件で RT反応を行なった。 TAKARA RNAPCRkit (AMV) Ver.2.1 (TaKaRa)は、 3(TC 10分、 42°C 30分、 99。C 5分、 5°C 5分の条件で RT反応を行なった。 RTで用いたプライマーは以下のとお りである。
[RTプライマー]
Aggrecan: 5 -cctaccaggacaaggtctcg-3 (配歹幡号 1 )
Collagen type II: 5, -ccatcattgacattgcacccatgg-3' (配列番号 2) リアルタイム PCR は、 FastStartDNA Master CYBR Green Iキット、 PCR 装置として Light Cycler (Roche)を使用し、 以下のプライマーと反応条件 で実施した。
[PCRプライマー]
Aggrecan Forward: 5, -cctaccaggacaaggtctcg-3' (目 [i歹 U番号 3)
Aggrecan Reverse: 5' -gtagcctcgctgtcctcaag-3 ( 歹' j番号 4)
Collagen type II Forward: 5' -ccatcattgacattgcacccatgg-3 (配列畨 号 5)
Collagen type II Reverse: 5' -gttagtttcctgtctctgccttg-3' (配列番号 6)
[PCR反応条件]
Denature: 95t: 5秒 1サイクル
Amprification: 95°C 15秒、 60°C 5秒、 72°C 15秒 40サイクル
Melting curve: 70°C 10秒
Cooling: 40°C 30秒
RT-PCR の結果を図 7に示す (A: Collagen type II、 B: Aggrecan) 0 グ ラフの 「RWV」 は RWVを用いた回転培養、 「TGF- /3」 は TGF- 3を添加して行 つたペレツト培養の結果を示す。
3. 結果
3 週間後、 静置培養 (ペレット培養) では細胞が沈降しているが凝集が 弱く、 組織は直径 5mm程度であった。 これに対し、 RWVバイオリアクター による回転培養では細胞同士が擬微小重力下で凝集し、 直径 lcn!〜 1.5cm
程度の三次元組織が形成された。 この三次元組織はサフラニン oおよびァ ルシアンブルーで染色され、軟骨基質産生能を持つことが示された。また、 定量的 RT- PCRの結果から Col lagen Type Πや Aggrecanの発現が確認され た。 以上の結果から、 骨髄由来間葉系幹細胞から RWVバイオリアクターを 用いて軟骨三次元組織を再生することができることが確認された。
さらに、 RWV を用いた最適培養条件を検討したところ、 ォ一バーコンフ ルェントにまで 2次元培養した細胞をサブカルチヤ一した後、 RWV で培養 すると大きな組織塊が得られることがわかつた。 実施例 2 : RWV培養組織の強度測定
RWV培養組織の強度を EIK0 ΤΑ-ΧΤ2 Ϊ (EKO INSTRUMENTS社製)を使用して 測定した。 実施例 1に従って作製した RWV培養組織を 2匪角に成形し、
0. 1mi/sec の速度で圧縮した。 その負荷 (Pa) と距離 (匪) に基づく stress-st rain曲線から、 強度を計測した。
図 8に、 培養 4週間後の軟骨組織の圧縮強度を、 正常ゥサギ関節軟骨組 織のそれと比較した結果を示す。 実施例 3 : RWV培養組織のゥサギ膝関節全層欠損部移植実験
1 . ゥサギ膝関節全層欠損部への移植
実施例 1に従つて作製した 培養組織(生体外で 2週間培養)をゥサギ 膝関節全層欠損部に移植し、 移植部の硬度と組織所見について評価した。 ゥサギはソムノペンチル 0. 6mg/kgを用いて静脈麻酔酔した。手術部位は、 左大腿骨顆部(左膝関節)荷重部とした。 膝蓋骨外側に縦皮切を入れ、 関節 包を内側傍膝蓋骨アプローチにより切開した。 膝蓋骨を外側に翻転して脱 臼させた後、 大腿骨滑車部に径 5龍のドリルを用いて深さ 4匪の軟骨全層 欠損を作成した (底面は先が平らなドリルを用いて平滑に整え、 辺縁は円 刃でトリミングした)。 軟骨塊を皮抜きポンチを用いて径 5匪 に成形し、 欠損部に移殖した。 膝蓋骨を整復し、 関節包、 皮膚を 4一 0ナイロンで鏠 合、 膝関節屈曲進展にて膝蓋骨が脱臼しないことを確認して手術を終了し た。
2 . 移殖組織の硬度
移殖組織の硬度は、 計測部位にプローブをあて、 Venus Rod (Axiom社製) を用いて周波数の変化を計測することにより測定した。 図 1 0に、 移植部 (左) と正常ゥサギ関節軟骨組織 (右) の硬度測定の結果を示す。
3 . 組織所見
移植組織は、 マクロ所見に加えて、 へマトキシリン ·ェォジン染色 (HE 染色)、 サフラニン 0染色 (SO染色)、 免疫組織学的染色により評価した。 図 9に、 移植 4週間後の RWV培養組織の写真 (A:RWVで培養した軟骨組 織: bar=10匪、 B :全層欠損: bar=5mm、 C :移殖直後所見、 D:移殖後 4週間所見) を示す。 また、 図 1 1 〜 1 3に、 移殖組織の HE染色、 SO染色、 免疫組織 学染色の結果 (A:ゥサギ関節軟骨組織、 B :移植組織) をそれぞれ示す。
4週間 RWVを用いた回転培養をした結果、長径 15mmの軟骨組織を構築で きた(図 9 (A) )、全層欠損モデルに移植後 4週間たつた欠損箇所の組織所見 (図 9 (B) , (C) )は、 きわめて滑らかな表面が観察でき、良好な軟骨再生が実 現したと考えられた。 4週後の組織切片の HE染色像では、 正常軟骨組織と 同様の軟骨再生像を観察することができた(図 1 1 )。軟骨の基質を特異的 に染色するサフラニン 0染色像でも、 正常軟骨組織と類似の染色像が得ら れ、 軟骨基質を産生しつつ再生されたことを確認した (図 1 2 )。 また、 軟 骨に特異的な Π型コラーゲンの発現も確認できた。 本明細書中で引用した全ての刊行物、 特許及び特許出願をそのまま参考 として本明細書中にとり入れるものとする。 産業上の利用の可能性
本発明によれば、 自家軟骨を侵襲することなく、 骨髄細胞から効率的に 軟骨組織を構築することができる。本発明の方法は、基礎研究はもとより、 軟骨欠損部の修復を目的とした再生医療に利用することができる。 配列表フリーテキス卜
配列番号 1—人工配列の説明:合成 DNA (プライマー)
配列番号 2—人工配列の説明 合成 DNA (プライマー 配列番号 3—人工配列の説明 合成 DNA (プライマー 配列番号 4一人工配列の説明 合成 DNA (プライマ一 配列番号 5—人工配列の説明 合成 DNA (プライマー 配列番号 6—人工配列の説明 合成]) NA (プライマ一