明細書 再 生 治 療 シ ス テ ム 技術分野
本発明は、 再生医療の分野にある。 より詳細には、 本発明は、 臓器、 組織お よび細胞を再生および維持するための技術に関する。 本発明はまた、 本発明の 技術を利用した再生治療方法およびシステムを提供する。 - 背景技術
再生医療は、 近年頓に研究が進展し、 その可能性が注目されている。 その材 料として利用される胚性幹 (E S ) 細胞は、 マウス由来の S T O細胞株または マウス胎児から調製したマウス初代培養繊維芽細胞などのフィーダ一細胞層上 で培養することが必須とされている。 このようなマウス初代培養細胞は、 マウ スの他、 他の種の幹細胞を支持することも知られている。
再生医療には種々の分野があるが、 そのような再生医療分野において、 現在 もっとも脚光を浴びているプロジェクトの一つが角膜再生医療である。 従来、 ヒトの再生治療では、 体外で異種細胞であるマウス繊維芽細胞を用いる必要が あり、 臨床導入の大きな壁となっている。 なぜなら、 現在の角膜再生医療では 異種動物細胞をフィーダ一細胞として用いざるを得ないからである。 この場合 の移植組織の臨床観察期間は F D Aの指針として 2 0年と決められているが、 このような基準は実際の医療への応用を考えた場合、 実務的ではない。
一方、 脂肪にも幹細胞があることが分かってきた (WO 0 3 / 0 2 2 9 8 8 および WO O 0 / 5 3 7 9 5 )。脂肪にある幹細胞は、他の組織(例えば、骨髄) に比べて、 その供給源が豊富であり、 存在率も多いようであることから、 その 利用が注目されている。 しかし、 幹細胞自身を再生治療における支持体または
フィーダ一として使用するという発想は報告されていない。
ヒトでの治療には、 ヒトに由来する細胞または細胞成分を利用することが好 ましいが、 ヒトに由来する細胞をフィーダ一細胞として用いた例で首尾よくい くという報告はほとんどない。 従来、 ヒトに由来する細胞から樹立された細胞 株を用いる場合は、 フィーダ一としての効率が悪いともいわれており、 ヒト由 来の細胞は、 有効なフィーダ一細胞として使用できないと予測されている。 例えば、 特開 2002-00721 17号公報では、 ヒト ES細胞を培養す るためのフィーダ一細胞として、 ヒト由来間葉系幹細胞または繊維芽細胞の細 胞株を記載する。 この細胞は、 多能性幹細胞 (ES細胞) から分化し不死化さ せた細胞株であり、 悪性ではないようである。 しかし、 そのフィーダ一 率は 低い。 WO 95/02040では、 ヒト造血性前駆細胞を培養するためのフィ —ダー細胞が記載される。 しかし、 この細胞は、 細胞株化されたヒト由来すと 口一マ細胞であり、 これは骨髄ストローマ HS— 5であると記載されている。 この細胞は、 L I F、'KL、 MI P 1ひ、 I L _ 6を分泌すると言われている。 特許文献 5は、 主に血液細胞を培養するためのフィーダ一細胞 L 87 4ある いは L88ノ5を記載する。 この細胞は、 ヒト骨髄ストローマ細胞に放射線照 射し不死化し細胞株化したものであり、 この放射線照射骨髄ストローマ細胞は G_CSF、 I L— 6の発現が増大している。 特開 2003— 143736号 公報は、 ヒト ES細胞を培養するためのフィーダ一細胞を記載する。 このフィ —ダー細胞はヒト ·成体/胎児 胚性細胞あるいはこれらの組み合わせであり、 さらに繊維芽細胞 Z皮膚細胞/筋肉組織中の繊維芽細胞 Z上皮細胞あるいはこ れらの組み合わせであると記載されている。 しかし、 これらはみな細胞株ィ匕さ れており、 フィーダー細胞はさらにファロピ一ォ管繊維芽細胞のような物を含 むようである。 特開 2003- 143736号公報では、 フィーダ一細胞はま ず初期培養時に HFE培 で培養し、 確立し、 その後、 さらに続いて ΗΜ培地 で培養し、 増殖させ、 細胞株化させたものである (De t r o i t 551、 M
R C— 5、 W I - 3 8 ) 0
とはいうものの、 ヒト由来の細胞をフィーダ一細胞などの再生治療に必須な 成分として使用することが好ましいことは万人が感ずるところで、 特にェキソ ビポでもフィ一ダー細胞として使用することができるヒト由来の細胞の登場が 待たれている。
医療技術の著しい発展により、 近年、 治療困難となった臓器を他人の臓器と 置き換えようとする臓器移植が一般化してきた。 しかしながら、 未だにドナー 数が少なく、 角膜移植を例にとると、 国内だけでも角膜移植の必要な患者が年 間約 2万人出てくるのに対し、 実際に移植治療が行える患者は約 1 Z 1 0の 2 0 0 0人程度でしかないといわれている。 角膜移植というほぼ確立された技術 があるにもかかわらず、 ドナー不足という問題のため、 次なる医療技術が求め られているのが現状である。 .
このような背景のもと、 以前より、 人工代替物や細胞を培養して組織化させ たものをそのまま移植しょうという技術が注目されている。 その代表的な例と して、 人工皮膚および培養皮膚があげられよう。 ここで、 合成高分子を用いた 人工皮膚は拒絶反応等が生じる可能性があり、 移植用皮膚としては好ましくな い。 一方、 培養皮膚は本人の正常な皮膚の一部を所望の大きさまで培養したも のであるため、 これを使用しても拒絶反応等の心配がなく、'最も自然なマスキ ング剤と言える。
特公平 2— 2 3 1 9 1号公報には、 ヒト新生児由来表皮角化細胞を、 ケラチ ン組織の膜が容器表面上に形成される条件下で培養し、 生成したケラチン組織 膜を酵素を用いて剥離させることを特徴とする移植可能な培養細胞膜を製造す る方法が記載されている。 具体的には、 3 T 3細胞をフィーダ一レイヤーとし て用いることで、 播種した表皮細胞は増殖し、 しかもそのまま重層化してしま うというものである。 こ 方法は、 今や表皮角化細胞を培養する方法の主流に までなつている。 しかしながら、 この方法には欠点があり、 すなわち上記 3 Τ
3細胞がマウス由来の細胞である点がよく指摘される。 一般的には、 表皮角化 細胞を培養している間にこの 3 T 3細胞は消失すると言われているが、 未だに 1 0 0 %消失したことを証明することができていないのが現状である。
この点を解決すべく、 これまでに種々の検討がなされてきた。 例えば、 別の 培養基材上で 3 T 3細胞を培養し、 表皮角化細胞に有効な物質を培地中に出さ せ、その上清だけを表皮角化細胞を培養している系に移す方法があげられる(特 開平 9— 3 1 3 1 7 2号公報、 特開 2 0 0 1— 1 4 9 0 7 0号公報)。 しかしな がら、 この方法でも、 異種動物の細胞自身の混入は防げても、 異種動物細胞が 産生するさまざまな蛋白質を分割している訳でなく、 基本的に同様な問題が残 されている。 その他に、 ヒト由来の細胞をフィーダ一レイヤーとして利用しよ うとする試みもなされているが、 未だに上記 3 T 3細胞並みの活性を持った細 胞が得られておらず、 3 T 3細胞に代わる有効な技術が強く望まれていた。 従 来の方法の総集編である幹細胞 ·クローン 研究プロトコール 中辻編、 羊土 社 (2 0 0 1 ) にも、 画期的な方法は記載されていない。
特開 2 0 0 4— 2 4 8 6 5 5号公報では、 培地に注目したが、 依然として、 フィ一ダ一細胞が必要なことには変わりはない。 発明の開示 発明が解決しょうとする課題:本発明は、 細胞を用いて、 効率よく、 有効に 再生医療に活かせる技術を提供することを課題とする。 課題を解決するための手段:本発明のシステムは、 脂肪組織由来の細胞がフ ィ一ダ一細胞として利用することができる点を見出したことによって達成され る。 別の局面では、 ヒト申来の線維芽細胞にて上記課題を解決した。 好ましい 実施形態では、 本発明のシステムでは、 自己細胞を用いることができ、 きわめ
て有効かつ汎用性の高い治療法であるといえる。 従って、 本発明は、 以下を提 供する。
(1) フィーダ一細胞として用いるための、 脂肪組織に由来する細胞。
(2) 上記フィーダ一細胞は、 胚性幹細胞、 組織幹細胞または分化細胞を分化 または維持するためのものである、 項目 1に記載の細胞。
(3) 上記フィーダ一細胞は、 表皮への分化または維持をさせるためのもので ある、 項目 1に記載の細胞。
(4) 上記フィーダ一細胞は、 角膜への分化または維持をさせるためのもので ある、 項目 1に記載の細胞。
(5) 上記細胞は、 組織幹細胞を含む、 項目 1に記載の細胞。
(6) 上記細胞は、 線維芽細胞を含む、 項目 1に記載の細胞。
(7) 上記細胞は、 初代培養細胞を含む、 項目 1に記載の細胞。
(8) 上記細胞は、 ヒト細胞を含む、 項目 1に記載の細胞。
(9) 被検体の臓器、'組織または細胞を再生するための移植物を調製するため の方法であって:
A) 所望の臓器、 組織または細胞の一部またはそれに分化する能力を有する 幹細胞を提供する工程;および
B) 上記一部または上記幹細胞を、 脂肪組織に由来する細胞を含むフィーダ 一細胞上で培養する工程、
を包含する、 方法。
(10) 上記所望の臓器、 組織または細胞は、 表皮系のものを含む、 項目 9に 記載の方法。
(11) 上記所望の臓器、 組織または細胞は、 角膜、 骨、 筋肉、 軟骨、 心臓、 心腠、 血管、 皮膚、 醫臓、 肝臓、 臍帯、 腸、 神経、 肺、 胎盤、 腾臓、 脳、 関節、 四肢末梢、 脂肪および網罈ならびにその一部からなる群より選択される、 項目 9に記載の方法。 '
(12) 上記フィーダ一細胞は、 組織幹細胞を含む、 項目 9に記載の方法。
(13) 上記フィーダ一細胞は、 線維芽細胞を含む、 項目 9に記載の方法。
(14) 上記フィーダ一細胞は、 初代培養細胞を含む、 項目 9に記載の方法。
(15) 上記被検体と上記フィーダ一細胞とは、 同じ種である、 項目 9に記載. の方法。
(16) 上記被検体はヒトであり、 上記フィーダ一細胞はヒト細胞である、 項 目 9に記載の方法。
(17) 上記培養は、 ェキソビポで行われる、 項目 9に記載の方法。
(18) 上記一部または上記幹細胞と、 上記フィーダ一細胞とは、 異種、 同種 異系または同系である、 項目 9に記載の方法。
(19)上記一部または上記幹細胞と、上記フィーダ一細胞とは、 同系である、 項目 9に記載の方法。
(20) 上記一部または上記幹細胞は、 被検体から摘出されてすぐのものであ るか、 または凍結保存されたものである、 項目 9に記載の方法。
(21) 上記培養は、 ゥシ胎仔血清、 インスリンおよびコレラトキシンからな る群より選択される少なくとも 1つの因子の存在下で行われる、 項目 9に記載 の方法。
(22) 上記培養は、 上記一部または上記幹細胞と、 上記フィーダ一細胞との 比率を、 10 : 1~1 : 10の比率で行うことを特徴とする、 項目 9に記載の 方法。
(23) 上記培養は、 上記一部または上記幹細胞より、 上記フィーダ一細胞を 少なくして行うことを特徴とする、 項目 9に記載の方法。
(24) 上記培養は、 細胞生理活性物質を含む培養液において行われる、 項目 9に記載の方法。
(25) 上記培養は、 上牢増殖因子 (EGF) を含む培養液において行われ、 上記所望の臓器、組織または細胞は、角膜またはその組織もしくは細胞を含む、
項目 9に記載の方法。
(26) 上記フィーダ一細胞の増殖を抑制する工程、 をさらに包含する、 項目 9に記載の方法。
(27) 上記フィーダ一細胞の増殖抑制は、 抗生物質の投与または放射線照射 によって達成される、 項目 26に記載の方法。
(28) 上記抗生物質は、 マイトマイシン Cを含む、 項目 27に記載の方法。 (29) 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するためのシステムであって:
A) 容器; -
B) 脂肪組織に由来する細胞を含むフィーダ一細胞、
を備える、 システム。 '
(30) 所望の臓器、 組織または細胞の一部またはそれに分化する能力を有す る幹細胞を提供するための提供手段をさらに備える、 項目 29に記載のシステ ム。
(31) 上記提供手段は、 上記一部または上記幹細胞を、 上記被検体から取り 出すための手段を包含する、 項目 30に記載のシステム。
(32) 上記手段は、 カテーテル、 かきとり棒、 ピンセット、 注射器、 医療用 はさみおよび内視鏡からなる群より選択される手段を包含する、 項目 31に記 載のシステム。 '
(33) 細胞生理活性物質をさらに備える、 項目 29に記載のシステム。
(34) EGFをさらに備える、 項目 29に記載のシステム。
(35) 上記フィーダ一細胞の増殖を抑制する手段、 をさらに包含する、 項目 29に記載のシステム。
(36) 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するための方法であって:
A) 所望の臓器、 組織または細胞の一部またはそれに分化する能力を有する 幹細胞を提供する工程;
B) 上記一部または上記幹細胞を、 脂肪組織に由来する細胞を含むフィーダ
一細胞上で培養する工程;および
C) 上記培養された上記一部または上記幹細胞を上記被検体の処置されるベ き部位に移植する工程、
を包含する、 方法。
( 3 7 ) 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するための方法であって:
A) 所望の臓器、 組織または細胞の一部またはそれに分化する能力を有する 幹細胞、 および脂肪組織に由来する細胞を含むフィーダ一細胞を、 上記被検体 の処置されるべき部位に移植する工程、 - を包含する、 方法。
( 3 8 ) 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するための医薬であって:
A) 所望の臓器、 組織または細胞の一部またはそれに分化する能力を有する 幹細胞、 および脂肪組織に由来する細胞を含むフィーダ一細胞、
を含む、 医薬。
( 3 9 ) フィーダ一細胞としての、 脂肪組織に由来する細胞の使用。
( 4 0 ) フィ ダー細胞を含む医薬を製造するための、 脂肪組織に由来する細 胞の使用。
( 4 1 ) 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するための医薬を製造するため の、 脂肪組織に由来する細胞の使用。
( 4 2 ) フィーダ一細胞として用いるための、 ヒト線維芽細胞初代培養細胞。 ( 4 3 ) 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するための移植物を調製するた めの方法であって:
A) 所望の臓器、 組織または細胞の一部またはそれに分化する能力を有する 幹細胞を提供する工程;および
B) 上記一部または上記幹細胞を、 ヒト線維芽細胞初代培養細胞を含むフィ 一ダー細胞上で培養する工程、
を包含する、 方法。
(44) 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するためのシステムであって:
A) 容器;
B) ヒト線維芽細胞初代培養細胞を含むフィーダ一細胞、
を備える、 システム。
(45) 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するための方法であって:
A) 所望の臓器、 組織または細胞の一部またはそれに分化する能力を有する 幹細胞を提供する工程;
B) 上記一部または上記幹細胞を、 ヒ卜線維芽細胞初代培養細胞を含むフィ ーダ一細胞上で培養する工程;および
C) 上記培養された上記一部または上記幹細胞を上記被検体の処置されるべ き部位に移植する工程、
を包含する、 方法。
(46) 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するための方法であって: A) 所望の臓器、 組織または細胞の一部またはそれに分化する能力を有する 幹細胞、 およびヒト線維芽細胞初代培養細胞を含むフィーダ一細胞を、 上記被 検体の処置されるべき部位に移植する工程、
を包含する、 方法。
(47) 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するための医薬であって: A) 所望の臓器、 組織または細胞の一部またはそれに分化する能力を有する 幹細胞、 および tト線維芽細胞初代培養細胞を含むフィ一ダー細胞、 を含む、 医薬。
(48) フィーダ一細胞としての、 ヒト線維芽細胞初代培養細胞の使用。
(49) フィーダ一細胞を含む医薬を製造するための、 ヒ卜線維芽細胞初代培 養細胞の使用。
(50) 被検体の臓器、 禅織または細胞を再生するための医薬を製造するため の、 ヒト線維芽細胞初代培養細胞の使用。
(51) 上皮組織を再生するための移植片であって、 幹細胞または上記幹細胞 に由来する細胞を含む、 移植片。
(52) 上記上皮組織は角膜である、 項目 51に記載の移植片。
(53) 上記幹細胞は、 上皮幹細胞、 胚性幹細胞、 骨髄間葉系幹細胞、 造血幹 細胞、 血管内皮幹細胞、 神経幹細胞、 網膜幹細胞、 脂肪幹細胞、 腎臓幹細胞お よび肝臓幹細胞からなる群より選択される、 項目 51に記載の移植片。
(54) 上記幹細胞は、 上皮幹細胞である、 項目 51に記載の移植片。
(55) 上記幹細胞は、 角膜上皮幹細胞、 口腔粘膜上皮幹細胞、 表皮幹細胞、 膀胱上皮幹細胞、 結膜上皮幹細胞、 胃粘膜上皮幹細胞、 小腸上皮幹細胞、 大腸 上皮幹細胞、 腎臓上皮幹細胞、 尿細管上皮幹細胞、 歯肉粘膜上皮幹細胞、 毛幹 細胞、 食道上皮幹細胞、 肝臓上皮幹細胞、 塍臓上皮幹細胞、 乳腺幹細胞、 唾液 腺幹細胞、 涙腺幹細胞、 肺上皮幹細胞および胆嚢上皮幹細胞からなる群より選 択される、 項目 51に記載の移植片。
(56) 上記幹細胞または幹細胞に由来する細胞は、 フィーダ一細胞と共培養 されたものである、 項目 51に記載の移植片。
(57) 上記フィーダ一細胞として、 ヒト由来の細胞が用いられる、 項目 51 6に記載の移植片。
(58) 上記ヒト由来の細胞は、 脂肪由来細胞、 胚性幹細胞、 または骨髄幹細 胞を含む、 項目 57に記載の移植片。
(59) 上記胚性幹細胞または骨髄幹細胞としては、 フィーダ一細胞を抜いて
DMEM+10%FBSで培養された細胞が使用される、 項目 58に記載の移植片。
(60) 上記フィーダ一細胞は、 脂肪組織に由来する細胞を含む、 項目 56に 記載の移植片。
(61) 上記フィーダ一細胞との共培養は、 細胞接着が促進する条件で行われ る、 項目 56に記載の移植片。
(62) 上記移植片は、 重層化した細胞を含む、 項目 51に記載の移植片。
( 6 3 ) 上記移植片は、 無縫合移植に使用される、 項目 5 1に記載の移植片。 ( 6 4 ) 上記移植片は、 異種由来成分を含まないことを特徴とする、 項目 5 1 に記載の移植片。
( 6 5 ) 上皮組織を再生するための移植片としての医薬を調製するための使用 であって、 上記移植片は、 幹細胞または上記幹細胞に由来する細胞を含む、 使 用。
( 6 6 ) 上記上皮組織は、 角膜である、 項目 6 5に記載の使用。
( 6 7 ) 上記幹細胞は、 上皮幹細胞、 胚性幹細胞、 骨髄間.葉系幹細胞、 造血幹 細胞、 血管内皮幹細胞、 神経幹細胞、 網膜幹細胞、 脂肪幹細胞、 腎臓幹細胞お よび肝臓幹細胞からなる群より選択される、 項目 6 5に記載の使用。
( 6 8 ) 上記幹細胞は、 上皮幹細胞である、 項目 6 5に記載の使用。
( 6 9 ) 上記幹細胞は、 角膜上皮幹細胞、 口腔粘膜上皮幹細胞、 表皮幹細胞、 膀胱上皮幹細胞、 結膜上皮幹細胞、 胃粘膜上皮幹細胞、 小腸上皮幹細胞、 大腸 上皮幹細胞、 腎臓上皮幹細胞、 尿細管上皮幹細胞、 歯肉粘膜上皮幹細胞、 毛幹 細胞、 食道上皮幹細胞、 肝臓上皮幹細胞、 滕臓上皮幹細胞、 乳腺幹細胞、 唾液 腺幹細胞、 涙腺幹細胞、 肺上皮幹細胞および胆嚢上皮幹細胞からなる群より選 択される、 項目 6 5に記載の使用。
( 7 0 ) 上記幹細胞または幹細胞に由来する細胞は、 フィーダ一細胞と共培養 されたものである、 項目 6 5に記載の使用。
従って、 本発明のこれらおよび他の利点は、 添付の図面を参照して、 以下の 詳細な説明を読みかつ理解すれば、 当業者には明白になることが理解される。 発明の効果:豊富に入手可能なソースを用いて再生治療システムが提供され る。 このような効果は、 従来達成できなかった効果である。 好ましい実施形態 では、 本発明は、 自己由来の角膜を体外培養し移植するものである。 したがつ て、 この好ましい実施形態では、 本システムを用いれば、 自己の細胞を有効か
つ簡易に使用できるので、 従来言われていた懸案事項 (例えば、 感染症の危険 など) はなくなる。 しかも免疫拒絶反応が皆無である点など、 従来ある再生医 療の技術自体の汎用性を飛躍的に増大させる。 角膜再生医療の細胞ソースとし て、 倫理的社会的なニーズは極めて多い。 さらに、 ヒト線維芽細胞初代培養細 胞を使用する場合、 本システムを用いれば、 懸念された FDAの作った細胞治 療指針も満たすことができ、 その効果は計り知れない。 図面の簡単な説明 図 1は、 培養細胞シート移植によ.る角膜再生医療法の開発の模式図を示す。 脂肪組織由来フィーダ一細胞を用いた角膜再生医療を示す。 図 1 Bは、 脂肪前駆細胞の mRN A発現を示す。 N I HZ3 T 3において上 皮系の細胞の増殖、 維持に影響を及ぼしているであろうと考えられるタンパク 質等について、 脂肪前駆細胞における mRNAの発現を解析した。 特に、 シス 夕チン C、 肝細胞増殖因子 (HGF)、 ケラチノサイト増殖因子 (KGF)、 ィ ンスリン様増殖因子 (I GF) — l aを発現しており、 脂肪前駆細胞は上皮系 の細胞に対して、 フィーダ一細胞と成りえるのではないかと考えられる。 図 2は、実施例 6におけるコントロールとして用いた 3 T 3フィーダ一細胞(2 X 104細胞/ cm2) での角膜上皮幹細胞の様子である。 図 3は、 実施例 6における本発明のフィーダ一細胞 (深部組織由来;(1 X 10 4細胞 Zcm2)) での角膜上皮幹細胞の様子である。 上段 ·下段は、 マイ卜マイ シン濃度の相違 (上段: 40^ g/ni 1 ;下段: 80 g/m 1 ) を示す。
図 4は、 実施例 6における本発明のフィーダ一細胞 (皮下組織由来;(1 X 1 04細胞 Zcm2))での角膜上皮幹細胞の様子である。 上段'下段は、 マイトマ ィシン濃度の相違 (上段: 16 gZm 1 ;下段: 16 gZm 1 ) を示す。 図 4Bは、 ヒト角膜上皮細胞コロニーアツセィを示す。 ヒト角膜上皮幹細胞 に対するヒト脂肪組織由来の細胞のフィーダ一効果が示されている。 N I HZ 3 T 3および脂肪前駆細胞に X線 (20Gy) を照射した後、 1日培養後トリ プシン処理を行いフィーダ一細胞とした。 ここに、 ヒト角膜上皮細胞を 100 0細胞 皿の密度で播種した。 培養 14日目にホルマリン固定を行いローダミ ン B染色を行った。 N IHZ3T3フィーダ一と比較し、 脂肪前駆脂肪フィー ダーでは大きいコロニーが観察された。 図 4Cは、 コロニー形成率を示す。 ヒト角膜上皮幹細胞に対するヒ卜脂肪組 織由来の細胞のフィーダ一効果が示されている。 コロニー形成率の比較は、 n =6で行われた。 N I H/ 3 T 3フィ一ダ一および脂肪前駆細胞フィーダ一に て培養を行ったコロニーのうち、 直径 5匪以上のものをコロニーとし、 目視に てコロニー数をカウントした。 播種数 (1000 c e 1 1 s) を分母としコロ 二一数を分子としてコロニー形成率を算出した。 コロニー形成率では、 N IH /3T 3フィーダ一の方が脂肪前駆細胞フィーダ一のおよそ 2倍の形成率であ つた。 図 4Dは、 平均コロニー面積を示す。 ヒト角膜上皮幹細胞に対するヒト脂肪 組織由来の細胞のフィーダ一効果が示されている。 平均コロニー面積の比較は、 n = 6で行われた。 N I HZ3 T 3フィーダ一および脂肪前駆細胞フィーダ一 にて培養を行ったコロニーのサイズを N I H i ma g eを用いて測定した。 平均コロニーサイズは、 脂肪フィーダ一の方が N IH/3T3と比較しおよそ
2. 4倍であった。 図 4Eは、 皿全体に対するコロニー占有面積率を示す。 ヒト角膜上皮幹細胞 に対するヒト脂肪組織由来の細胞のフィーダ一効果が示されている。 図 4Cと 図 4Dとから算出した。 皿全体に対するコロニー占有面積率が n= 6で示され ている。 皿面積に対するコロニーの占有面積の割合 (全コロニー面積/皿面積) を算出した。 個々のコロニーの大きさは、 脂肪前駆細胞フィーダ一の方が大き いため、 皿に対するコロニ一占有面積率は N I H/ 3 T 3.フィーダ一と比較し、 脂肪前駆細胞フィーダ一の方がおよそ 1. 5倍、 高い値を示した。 図 5は、 実施例 9において示した本発明のフィーダ一細胞が有する幹細胞の シート化における効果を実証する写真である。 ヒト角膜上皮細胞は、 1 X 1 05 細胞 Z 35mm N—イソプロピルアクリルアミド (N I PPAM) を使用す る。 左は 3T3細胞 (2 X 104 c e 1 1 sZcm2)、 真ん中はヒト線維芽細 胞初代培養細胞(2 X 1 04 c e l l sZc m2)、および左はコントロール(フ ィ一ダ一細胞なし) を示す。 上段は培養開始 7日目を示し、 下段は培養開始 1 0日目を示す。 図 6は、 角膜上皮細胞シートの作製例を示す。 N IHZ3T3細胞および脂 肪前駆細胞をフィーダ一細胞として用いて作製したヒト培養角膜上皮細胞シー 卜の比較である。 上が N IH/3T3細胞をフィーダ一細胞として、 下が脂肪 前駆細胞をフィーダ一細胞として用いて作製した例である。 X線処理を行った N I H/3 T 3および脂肪前駆細胞をフィーダ一とし、 ヒト角膜上皮細胞の培 養を行った。 35 mm d i s h (N I PA Am) に l X 105c e 1 1 s/d i S hの密度で角膜上皮 胞を播種し、 培養 14日目に剥離し角膜上皮細胞シ
—トを得た。
脂肪前駆細胞フィーダ一を用いて培養を行った角膜上皮細胞は、 敷居石状に 配列しており、 NIHZ3T3フィーダ一で培養を行つた角膜上皮細胞と比較 しても遜色ないものであった。 図 7は、 角膜上皮細胞シートの HE染色例を示す。 NIHZ3T3細胞およ び脂肪前駆細胞をフィーダ一細胞として用いて作製したヒト培養角膜上皮細胞 シートの比較である。 上が NIH/3T3細胞をフィーダ一細胞として、 下が 脂肪前駆細胞をフィーダ一細胞として用いて作製した例である。 N I H Z 3 T 3フィーダ一および脂肪前駆細胞フィーダ一で作成した角膜上皮シートは、 い ずれも 3〜4層の上皮細胞から成っており、 基底部には比較的小さな基底細胞 が認められ、 上層は扁平上皮細胞が認められた。 脂肪前駆細胞フィーダ一で作 成した角膜上皮細胞シートは N I H/3T3フィーダ一と比較もほとんど遜色 の無いものであった。 図 7Bは、 採取した細胞シートが 3〜5層の細胞層が形成されることを H& E染色にて確認したものを示す。 図 7Cは、 もとの口腔粘膜の H&E染色図であり、 細胞シートとは全く異な ることが分かる。 図 7Dは、 正常な角膜上皮細胞を示す。 細胞シートは、 この角膜上皮細胞に 類似している。 図 7 Eは、 本発明において使用される細胞シートの先端表面における微絨毛 の発達を顕微鏡写真に下物を示す。
図 7 Fは、 本発明において使用される細胞シ一トを抗ケラチン 3抗体で免疫 染色した (緑) 図を示す。 図 7Gは、 本発明において使用される細胞シートを抗) 31インテグリン抗体 で免疫染色した (緑) 図を示す。 図 7Hは、 本発明において使用される細胞シートを抗 p 63抗体で免疫染色 した (緑) 図を示す。 - 図 7 Iは、本発明の移植片を角膜に移植するプロセスを示す。図 7 I— Aは、 角膜表面全体を示す。 血管新生が結膜に見られる。 図 7 I— Bは、 角膜上の結 膜組織を示す。 再暴露して角膜間質が表面に見えている。 図 7 I— Cは、 細胞 シートを、 ドーナツ型サボ一夕一を用いて採取する様子を示す。図 7 I— Dは、 この細胞シートを角膜間質に配置したところである。 図 7 I— Eは、 細胞シ一 卜が数分間で接着し、 その後サボ一夕一をはずしたところを示す。 図 7 I— F は、 細胞シートが角膜間質に定着した様子を示す。 図 7 Jは、 術後の各患者の目の様子を示す。 図 7 J— 1 図 7 J— 4は、 そ れぞれの患者を示す。 各数字は、 上記表における患者番号に一致する。 左は術 前を示し。 右は術後を示す。 図 8は、 ヒトケラチノサイトコロニ一アツセィを示す。 脂肪前駆細胞のフィ —ダー効果を見たものである。 脂肪前駆細胞のヒトケラチノサイトに対するフ ィ一ダ一効果がコロニーアツセィにより確認された。 N I HZ3T3および脂 肪前駆細胞に X線 (2 O y) を照射した後、 1日培養後トリプシン処理を行 いフィーダ一細胞とした。 ここに、 ヒトケラチノサイトを ixi 04c e l l s
/ d i s hの密度で播種した。 培養 1 4日目にホルマリン固定を行い、 ローダ ミン B染色を行った。 ケラチノサイトにおいても脂肪前駆細胞はフィーダ一効 果を示し、 角膜上皮細胞以外にも上皮系細胞のフィーダ一細胞として働く可能 性が示唆される。 図 9は、 脂肪前駆細胞のヒト血管内皮細胞に対するフィーダ一効果を示す。 脂肪前駆細胞のフィーダ一効果を見たものである。 脂肪前駆細胞のヒ卜血管内 皮細胞に対するフィーダ一効果が管形成として確認された。 ヒト脂肪前駆細胞 が血管形成を促進するようなフィーダ一細胞となるかを確認するために、 脂肪 前駆細胞の培養上清を 3次元でのヒト血管内皮細胞と繊維芽細胞の共培養系
(Kurabo)に添加したところ、 内皮細胞の培養上清に比較して管腔形成能は有意 に宂進した。 また、 同様に内皮細胞の遊走能に関しても検討したところ、 脂肪 前駆細胞の培養上清は内皮細胞の培養上清に比較して有意に亢進させた。 つま りヒ卜血管内皮細胞に置いても脂肪前駆細胞はフィーダ一効果を示すことが明 らかになつた。 使用したキッ卜は、 Angi ogenes i s ki t (Kurabo, Tokyo, Japan) である。 図 1 0は、 脂肪前駆細胞のヒト骨髄由来間葉系幹細胞 (MN C ) に対するフ ィ一ダ一効果を示す。 脂肪前駆細胞のフィーダ一効果を見たものである。 脂肪 前駆細胞のヒト骨髄由来間葉系幹細胞に対するフィーダ一効果が確認された。 培養液 (10%FCS + DMEM) のみと培養液に加えてマウス脂肪前駆細胞をフィーダ 一細胞とした条件で比較した。 マウス骨髄より Hi s topaque (密度勾配遠心分離 法)にて骨髄単核球を分離し両者に播種した。培養 7日目に浮遊細胞を分離し、 メイギムザ染色を行なった。 骨髄単核球に置いても脂肪前駆細胞はフィーダ一 効果を示すことが明らかになった。
配列表の説明 配列番号 1は、 プレイオト口フィン (p 1 e i o t r o p h i n) 検出のた めのセンスプライマーを示す。
配列番号 2は、 プレイオトロフィン (p l e i o t r oph i n) 検出のた めのアンチセンスプライマーを示す。
配列番号 3は、 ェピレダリン (e p i r e gu l i n) 検出のためのセンス プライマーを示す。
配列番号 4は、 ェピレダリン (e p i r e gu l i n) 検出のためのアンチ センスプライマーを示す。
配列番号 5は、 肝細胞増殖因子検出のためのセンスプライマ一を示す。
配列番号 6は、 肝細胞増殖因子検出のためのアンチセンスプライマーを示す。 配列番号 7は、 ケラチノサイト増殖因子検出のためのセンスプライマ一を示 す。 '
配列番号 8は、 ケラチノサイト増殖因子検出のためのアンチセンスプライマ —を示す。
配列番号 9は、 ソニックヘッジホッグ ( s o n i c he dge hog) 検 出のためのセンスプライマ一を示す。 '
配列番号 10は、 ソニックへッジホッグ (s on i c h e dge hog) 検出のためのアンチセンスプライマ一を示す。
配列番号 1 1は、 インスリン様増殖因子 1 a検出のためのセンスプライマ一 を示す。
配列番号 12は、 インスリン様増殖因子 1 a検出のためのアンチセンスブラ イマ一を示す。
配列番号 13は、ダリセルアルデヒド 3—ホスフェートデヒドロゲナ一ゼ(G APDH) 検出のためのセンスプライマ一を示す。
配列番号 14は、 GAPDH検出のためのアンチセンスプライマ一を 配列番号 15は、 シス夕チン Cのセンスプライマーを示す。
配列番号 16は、 シス夕チン Cのアンチセンスプライマーを示す。 配列データおよび生成物のサイズ
発明を実施するための最良の形態 以下、 本発明を説明する。 本明細書の全体にわたり、 単数形の表現は、 特に 言及しない限り、 その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。 従 つて、 単数形の冠詞 (例えば、 英語の場合は 「a」、 「a n」、 「t h e」 など) は、 特に言及しない限り、 その複数形の概念をも含むことが理解されるべきで ある。 また、 本明細書において使用される用語は、 特に言及しない限り、 当該 分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。 したが つて、 他に定義されない限り、 本明細書中で使用される全ての専門用語および 科学技術用語は、 本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるの と同じ意味を有する。 矛盾する場合、 本明細書 (定義を含めて) が優先する。
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において 「臓器」 と 「器官」 (o r g a n ) とは、 互換的に用いら れ、 生物個体のある機能が個体内の特定の部分に局在して営まれ, かつその部 分が形態的に独立性をもっている構造体をいう。 一般に多細胞生物 (例えば、 動物、 植物) では器官は特定の空間的配置をもついくつかの'組織からなり、 組 織は多数の細胞からなる。 そのような臓器または器官としては、 皮膚、 血管、 角膜、 腎臓、 心臓、 肝臓、 臍帯、 腸、 神経、 肺、 胎盤、 塍臓、 脳、 関節、 骨、 軟骨、 筋肉、 四肢末梢、 網膜などが挙げられるがそれらに限定されない。 この ような臓器または器官はまた、 表皮系、 滕実質系、 塍管系、 肝系、 血液系、 心 筋系、 骨格筋系、 骨芽系、 骨格筋芽系、 神経系、 血管内皮系、 色素系、 平滑筋 系、 脂肪系、 骨系、 軟骨系などの器官または臓器が挙げられるがそれらに限定 されない。
本明細書において 「免疫反応」 とは、 移植片と宿主との間の免疫寛容の失調
による反応をいい、 例えば、 超急性拒絶反応 (移植後数分以内) (例えば、 β 一 G a 1などの抗体による免疫反応) 、 急性拒絶反応 (移植後約 7〜2 1日の 細胞性免疫による反応) 、 慢性拒絶反応 (3力月以降の細胞性免疫による拒絶 反応) などが挙げられる。
本明細書において免疫反応を惹起するかどうかは、 H E染色などを含む染色 、 免疫染色、 組織切片の検鏡によって、 移植組織中への細胞 (免疫系) 浸潤に ついて、 その種、 数などの病理組織学的検討を行うことにより判定することが できる。
本明細書において 「組織」 (t i s s u e ) とは、 細胞生物において、 同一 の機能 ·形態をもつ細胞集団をいう。 多細胞生物では、 通常それを構成する細 胞が分化し、 機能が専能化し、 分業化がおこる。 従って細胞の単なる集合体で あり得ず, ある機能と構造を備えた有機的細胞集団, 社会的細胞集団としての 組織が構成されることになる。.組織としては、 外皮組織、 結合組織、 筋組織、 神経組織などが挙げられるがそれらに限定されない。 本発明の組織は、 生物の どの臓器または器官由来の組織でもよい。 本発明の好ましい実施形態では、 本 発明が対象とする組織としては、 血管、 血管様組織、 心臓弁、 心膜、 硬膜、 角 膜、 関節、 軟骨および骨の組織が挙げられるがそれらに限定されない。 最も好 ましい実施形態では、 本発明が対象とする組織は、 角膜である。
本明細書において 「脂肪組織」 とは、 脂肪の貯蔵組織の総称である。 疎性結 合組織のうち、 特に脂肪細胞の多いもの、 皮下脂肪組織などがある。 各脂肪細 胞は格子繊維によって囲まれ, 細胞間に毛細血管が密に分布し、 脂肪体を形成 することがおおい。 本明細書では、 どのような脂肪組織も供給源とすることが できる。 脂肪体は、 他の組織から独立してほぼ一定した塊状もしくは房状の脂 肪組織であり、 脊椎動物では腎臓または生殖腺に接して腹腔内に存在する。 白 色、 黄色または橙色をし いることが多い。
本明細書において 「膜状組織」 とは、 「平面状組織」 ともいい、 膜状の組織
をいう。 膜状組織には、 心膜、 硬膜、 角膜などの器官の組織または袋状組織の 一定面積部分の組織などが挙げられる。
本明細書において 「移植片 j 、 「グラフト」 および 「組織グラフト」 は、 交 換可能に用いられ、 身体の特定部位に挿入されるべき同種または異種の組織ま たは細胞群あるいは人工物であって、 身体への挿入後その一部となるものをい う。 従って、 本発明の細胞培養物は、 移植片として用いることができる。 移植 片としては、 例えば、 臓器または臓器の一部、 角膜、 血管、 血管様組織、 心臓、 心臓弁、心膜などが挙げられるがそれらに限定されない。従って、移植片には、 ある部分の欠損部または損傷部に差し込んでもしくは置き換えて欠損または損 傷を補うために用いられるものすべてが包含される。 移植片としては、 そのド ナ一 (d o n o r ) の種類によって、 自己 (自家) 移植片 (a u t o g r a f t ) 、 同種移植片 (同種異系移植片) (a l l o g r a f t ) 、 異種移植片が 挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において使用される 「細胞」 は、 当該分野において用いられる最も 広義の意味と同様に定義され、 多細胞生物の組織の構成単位であって、 外界を 隔離する膜構造に包まれ、 内部に自己再生能を備え、 遺伝情報およびその発現 機構を有する生命体をいう。 本発明の方法においては、 どのような細胞でも対 象とされ得る。 本発明で使用される 「細胞」 の数は、 光学顕微鏡を通じて計数 することができる。 光学顕微鏡を通じて計数する場合は、 核の数を数えること により計数を行う。 当該組織を組織切片スライスとし、 へマトキシリンーェォ シン (H E ) 染色を行うことにより細胞外マトリクス (例えば、 エラスチンま たはコラーゲン) および細胞に由来する核を色素によって染め分ける。 この組 織切片を光学顕微鏡にて検鏡し、 特定の面積 (例えば、 2 0 0 m X 2 0 0 M m) あたりの核の数を細胞数と見積って計数することができる。 本明細書にお いて使用される細胞は、 天然に存在する細胞であっても、 人工的に改変された 細胞 (例えば、 融合細胞、 遺伝子改変細胞) であってもよい。 細胞の供給源と
しては、 例えば、 単一の細胞培養物であり得、 あるいは、 正常に成長したトラ ンスジエニック動物の胚、 血液、 または体組織もしくはその一部 (例えば、 口 腔粘膜、 角膜の一部など)、 または正常に成長した細胞株由来の細胞のような細 胞混合物が挙げられるがそれらに限定されない。 また、 このような供給源をそ のまま細胞として用いることもできる。
本発明において使用される細胞は、 脂肪細胞またはその対応物がある限り、 どの生物由来の細胞 (例えば、 メクラウナギ類、 ャッメゥナギ類、 軟骨魚類、 硬骨魚類、 両生類、 爬虫類、 鳥類、 哺乳動物など) でも用いることができる。 好ましくは、 そのような細胞は、 哺乳動物 (例えば、 単孔類、 有袋類、 貧歯類、 皮翼類、 翼手類、 食肉類、 食虫類、 長鼻類、 奇蹄類、 偶蹄類、 管歯類、 有鱗類、 海牛類、 クジラ目、 霊長類、 齧歯類、 ゥサギ目など) 由来の細胞が用いられる。
1つの実施形態では、 霊長類 (たとえば、 チンパンジー、 二ホンザル、 ヒト) 由来の細胞、 最も好ましい実施形態では、 特にヒ卜由来の細胞が用いられるが それに限定されない。
本明細書において 「幹細胞」 とは、 自己複製能を有し、 多分化能 (すなわち 多能性) (「p 1 u r i p o t e n c y」) を有する細胞をいう。 幹細胞は通常、 組織が傷害を受けたときにその組織を再生することができる。 本明細書では幹 細胞は、 胚性幹 (E S ) 細胞または組織幹細胞 (組織性幹細胞、 組織特異的幹 細胞または体性幹細胞ともいう) であり得るがそれらに限定されない。 また、 上述の能力を有している限り、 人工的に作製した細胞もまた、 幹細胞であり得 る。 胚性幹細胞とは初期胚に由来する多能性幹細胞をいう。 胚性幹細胞は、 1 9 8 1年に初めて樹立され、 1 9 8 9年以降ノックアウトマウス作製にも応用 されている。 1 9 9 8年にはヒト胚性幹細胞が樹立されており、 再生医学にも 利用されつつある。 組織幹細胞は、 胚性幹細胞とは異なり、 分化の方向が限定 されている細胞であり、 組織中の特定の位置に存在し、 未分化な細胞内構造を している。 従って、 組織幹細胞は多能性のレベルが低い。 組織幹細胞は、 核
細胞質比が高く、 細胞内小器官が乏しい。 組織幹細胞は、 概して、 多分化能を 有し、 細胞周期が遅く、 個体の一生以上に増殖能を維持する。 本明細書におい て使用される場合は、 幹細胞は好ましくは間葉系幹細胞、 上皮幹細胞のような 組織幹細胞であり得るが、 状況に応じて胚性幹細胞も使用され得る。 このよう な組織幹細胞は、 組織から分離する際には、 ディスパ一ゼ処理を行うことがで さる。
本明細書において幹細胞というときは、 幹細胞を少なくとも一定量含む組織 集合物をさすことが理解される。 したがって、 本明細書では、 幹細胞は、 例え ば、 コラゲナ一ゼ処理して脂肪組織から採取した幹細胞 (実施例において使用 される幹細胞など) を用いることができるがそれらに限定されない。
由来する部位により分類すると、組織幹細胞は、例えば、 皮膚系、 消化器系、 骨髄系、神経系などに分けられる。皮膚系の組織幹細胞としては、表皮幹細胞、 毛嚢幹細胞などが挙げられる。 .消化器系の組織幹細胞としては、 塍 (共通) 幹 細胞、肝幹細胞などが挙げられる。骨髄系の組織幹細胞としては、造血幹細胞、 間葉系幹細胞などが挙げられる。 神経系の組織幹細胞としては、 神経幹細胞、 網膜幹細胞などが挙げられる。 ' 本明細書において 「上皮幹細胞」 とは、 上皮組織に由来する幹細胞をいう。 上皮組織としては、 例えば、 角膜、 口腔粘膜、 皮膚、 結膜、'膀胱、 尿細管、 腎 臓、 消化器官(食道、 胃、 小腸、 十二指腸、 大腸)、 肝臓、 塍臓、 乳腺、 唾液腺、 涙腺、 前立腺、 毛根、 気管、 肺などをあげることができるがそれらに限定され ない。
本明細書において 「脂肪幹細胞」 または 「脂肪前駆細胞」 とは、 脂肪組織に 由来する幹細胞をいう。 このような幹細胞の分離方法の一部は公知であり、 例 えば、 幹細胞 ·クローン 研究プロトコ一ル 中辻編、 羊土社 (2 0 0 1 ) な どに記載される方法を利用して分離することができる。 これらの文献に記載さ れた事項は、 本明細書において特に関連する場所が参考として援用される。 あ
るいは、 脂肪幹細胞は、 WO00Z53795 ; WO 03/022988 ; W 001/62901 ; Zuk, P. A., e t a l .、 T i s s u e En g i ne e r i ng, Vo l . 7, 21 1— 228、 2001 ; Zuk, P. A., e t a l .、 Mo l e c u l a r B i o l ogy o f t h e Ce l l Vo l ., 13, 4279— 4295、 2002などに記載される方法またはそ の改変を利用して調製することができる。 具体的には、 例えば、 (1) 脂肪吸引 物を分液漏斗を用いて生理食塩水で十分に洗浄し;(2) 上層に脂肪吸引物、 下 層に生理食塩水が十分に分離したのを確認し、 下層を捨てる。 肉眼で見て生理 食塩水がほぼ透明になるまでこれを繰り返し;(3)脂肪吸引物と同量の 0.075% コラゲナ一ゼ /PBSを加え、 37°Cでよく攪拌しながら 30分間ィンキュベ一トし; (4)上記の試料に等量の 1 0 %血清加!) MEMを加え;(5) 上記の試料を 1200g で 10分間遠心分離し;(6) ペレツ卜に 0.16M NH4C1/PBSを加えて懸濁し、 室 温で適宜 (例えば、 10〜15分間) インキュベートし; (7) 上記の試料を口径 lOO mのメッシュを用いて吸引ろ過し;および (8) ろ過物を 1200gで 5分間 遠心分離することによって調製することができる。 ここで、 調製量に応じて、 上記プロトコールをスケールアップまたはスケールダウンすることは、 当業者 の技術範囲内である。 このような脂肪幹細胞は、 フィーダ一細胞として使用す ることができることが本発明において明らかになった。 フィーダ一細胞として 使用するための脂肪幹細胞は、 生体組織から穿刺針を用いて採取した組織片か ら特定の組織幹細胞を得る際、 閉鎖系で目的の細胞を得る工程を用いてもよい。 本明細書において、 このような脂肪幹細胞を同定する方法としては、例えば、 細胞マーカー、 細胞が分泌するサイトカインの特性などが挙げられるがそれら に限定されない。
そのような細胞マーカ一としては、 例えば、 CD4、 CD 13、 CD 34, CD36、 CD49 d、 CD7 1、 CD 90、 CD 105、 CD 1 17, CD 1 51 ;あるいは、 CD 105、 CD73、 CD29、 CD44および S e a
一 1からなる群より選択される細胞表面マーカーが挙げられるがそれらに限定 されない。 あるいは、 間葉系幹細胞の表面抗原は、 CD105 (十)、 CD 73 (十)、 CD 29 (十)、 CD44 (十)、 CD 14 (-)、 CD 34 (-)、 CD 45 (—) であるとされており、 少なくともこのいずれか一つ、 好ましくはそ 5 の 2以上、 より好ましくはそのすベての性質を示す細胞が本発明において使用 される細胞として好ましいことが理解される。 本発明において、 さらに骨髄単 核球より 1 i n (―) S e a l (+) の細胞を、 マグネティックビーズ法を用 いて分離した。 上記と同様の培養をおこなったところ、 脂肪前駆細胞を用いた 群では線維芽細胞様の細胞に増殖した。 この細胞に対する十分な検討は行なつ 0 ていないが BL 6マウスでは間葉系幹細胞が 1 i n (-) S e a l (+ ) c k
1 t (-) であることが報告 (P e i s t e r e t a l, B l ood.
2004 Ma r 1 ; 103 (5) : 1662-8 ) されており興味深い。 (; (造血幹細胞は 1 i n (—) S e a l (+) c k i t (+) ) 。
ヒト皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理して調整した細胞を 0. 5mM I B 5 MX, ΙμΜ デキサメサゾン、 10 μΜ インスリン、 200 μΜインド メタシンの条件下で培養することにより O i 1 r e d染色陽性となったこと から、 脂肪細胞に分化誘導 (ad i op og ene s i s) されうる細胞であ ることが示された。 この特性は継代後も保持されていた。 また、 同細胞群は 5 mM )3 _メルカプトェ夕ノ一ル(®—me r c ap t o e t hano l)で剌 0 激することにより神経細胞にも分化可能(neu r ogene s i s)であり、 コラーゲンでコートした培養皿で E G Fおよび V E G Fを加えた E G M培地で 培養したところ内皮細胞 (CD 31陽性) への分化 (v a s c u l ogene s i s) も確認された。 これまでの報告で、 この細胞群の 3割が CD 34陽性 細胞、 すなわち造血幹細胞 (Hema t opo i e t i c S t em Ce l 5 1) の特徴を持つことが示されており、 血管構成細胞への分化能が非常に高い 細胞群と考えられたので、 本発明においては血管新生療法 (V a s c u 1 o g
e n e s i s ) を中心にさらに検討が行われた。
本発明において用いられる脂肪幹細胞の分泌サイトカインとしては、 V E G F、 L I F、 L i tリガンド、 M I P 1 (ケモカイン)、 I L _ 6、 G— C S F、 F G F、 I G Fなどが挙げられるがそれらに限定されない。 本発明では特 に、 フィーダ一細胞として使用することができる特定の細胞群が V E G Fを大 量に発現し、 分泌していることが見出されている。 従って、 理論に束縛される ことは望まないものの、 本発明の再生治療システムにおいてフィーダ一細胞と して使用するための細胞としては、 このように V E G Fを大量に分泌すること ができる細胞を用いることが好ましくあり得る。 このような V E G Fのような サイト力インを分泌する細胞は、 初代培養細胞として組織から分離してもよく、 あるいは、 遺伝子操作によってそのサイトカインをコードする核酸配列を含む 核酸分子を細胞に移入 (例えば、 形質転換、 形質導入、 トランスフエクシヨン など) することによって得ることができ、 本発明では、 そのような遺伝子改変 細胞もまた使用することができることが理解されるべきである。
本明細書において 「線維芽細胞」 とは、 支持組織の繊維成分を供給し, 繊維 性結合組織の重要な成分をなす細胞をいう。 組織切片図では、 扁平で長目の外 形をもち、 不規則な突起を示すことが多い。 細胞質は、 ミトコンドリア、 ゴル ジ体、 中心体、 小脂肪球などを含むが、 そのほかに特殊な分化は示さない。 核 は楕円形をしており、 しばしば膠原繊維に密接して存在する。 脂肪組織から分 離された線維芽細胞は、 幹細胞をよく含むといわれている。 本発明では、 供給 濾が豊富な脂肪組織から分離した線維芽細胞がフィーダ一細胞として適切であ ることを見出し、 再生治療に応用した。 本発明では、 幹細胞、 前駆細胞、 胎児 細胞のような未分化な細胞もまた、 使用され得るフィ一ダー細胞となり得る。 本発明において用いられる細胞は、 異種であっても同種であってもよく、 同 種であることが好ましく、 同種異系または同系であってもよく、 より好ましく は同系であることが有利であるが、 異種である状態で用いられ得ることが理解
されるべきである。
本明細書において 「体細胞」 とは、 卵子、 精子などの生殖細胞以外の細胞で あり、 その D NAを次世代に直接引き渡さない全ての細胞をいう。 体細胞は通 常、 多能性が限定されているかまたは消失している。 本明細書において使用さ れる体細胞は、 天然に存在するものであってもよく、 遺伝子改変されたもので あってもよい。
本明細書において 「分化 (した) 細胞」 とは、 機能および形態が特殊化した 細胞 (例えば、 筋細胞、 神経細胞など) をいい、 幹細胞とは異なり、 多能性は ないか、 またはほとんどない。 分化した細胞としては、 例えば、 表皮細胞、 塍 実質細胞、 塍管細胞、 肝細胞、 血液細胞、 心筋細胞、 骨格筋細胞、 骨芽細陴、 骨格筋芽細胞、 神経細胞、 血管内皮細胞、 色素細胞、 平滑筋細胞、 脂肪細胞、 骨細胞、 軟骨細胞などが挙げられる。 本発明において用いられる場合、 分化細 胞は、 集団または組織の形態であってもよい。
従って、 本明細書において 「分化」 とは、 一般的には、 1 つの系が 2 つ以上 の質的に異なる系に分離することをいい、 細胞、 組織または臓器について用い られるとき、 機能および Zまたは形態が特殊化することをいう。 分化に伴い、 通常、 多能性は減少または消失する。
本明細書において 「分化因子」 とは、 「分化促進因子」 ともいい、 分化細胞へ の分化を促進することが知られている因子 (例えば、 化学物質、 温度など) で あれば、 どのような因子であってもよい。 そのような因子としては、 例えば、 種々の環境要因を挙げることができ、 そのような因子としては、 例えば、 温度、 湿度、 P H、 塩濃度、 栄養、 金属、 ガス、 有機溶媒、 圧力、 化学物質 (例えば、 ステロイド、 抗生物質など) などまたはそれらの任意の組み合わせが挙げられ るがそれらに限定されない。 代表的な分化因子としては、 細胞生理活性物質が 挙げられるがそれらに限定されない。 そのような因子のうち代表的なものとし ては、 D NA脱メチル化剤 (5—ァザシチジンなど)、 ヒストン脱ァセチル化剤
(トリコスタチンなど)、 核内レセプターリガンド (例えば、 レチノイン酸 (A TRA), ビタミン D3、 T3など)、 細胞増殖因子 (ァクチビン、 I GF_1、 FGF, PDGF、 TGF— 3、 など)、 サイト力イン (L I F、
I L一 2、 I L— 6など)、 へキサメチレンビスァセトアミド、 ジメチルァセト アミド、 ジブチル cAMP、 ジメチォルスルホキシド、 ョードデォキシゥリジ ン、 ヒドロキシル尿素、 シトシンァラビノシド、 マイトマイシン C、 酪酸ナト リウム、 ァフイディコリン、 フルォロデオキシゥリジン、 ポリプレン、 セレン などが挙げられるがそれらに限定されない。 - 本発明において用いられ得る動物細胞培養用培地としては、 システィンプロ テアーゼ阻害剤が含まれる。 システィンプロテアーゼ阻害剤とは、 システィン プロテアーゼを特異的に阻害するタンパク質であり、 恒常性維持機構、 免疫防 御機構に深く係わるものだが、 作用機構は不明だが、 このものを含む培地を用 いると動物細胞培養時のコロニー形成能が良好となることが見出されている。 このシスティンプロテア一ゼ阻害剤としては、 具体的には、 シス夕チン、 およ びそのスーパ一ファミリー、 ブロメラインインヒビ夕一などがあげられるが、 システィンプロテア一ゼ阻害剤としての機能を有していれば特に限定されるも のではない。 本発明では、 その中の単独を用いても、 もしくは複数個を併用し て用いても良い。 '
本発明において用いられ得る動物細胞培養用培地には、 また、 シス夕チン、 およびそのス一パーファミリ一が含まれることが好ましくあり得る。 ここでの シス夕チン、 およびそのスーパーファミリ一とは、 上記のシスティンプロテア ーゼ阻害剤としての機能を持つものでも良く、 機能を持たないものでも良い。 具体的には、 オリザシス夕チンなどのフィトシス夕チン、 シス夕チン、 シス夕 チン A、 シス夕チン B、 シス夕チン (:、 モネリンなどがあげられるが、 シス夕 チンスーパ一ファミリーに属するものならば特に制約されるものではない。 ま た、 本発明では、 その中の単独、 もしくは複数個を併用して用いても良い。
本発明では、 システィンプロテアーゼ阻害剤、 シス夕チン C、 およびそのス 一パーファミリーに属する物質等の中から選択される 1種以上の物質が動物細 胞培養用培地に添加されるが、 それらの物質の総量は培地量に対し、 0. 5n g/ml〜l OngZmlであることが望ましく、 好ましくは 0. 6ng/m l〜9ngZml、 さらに好ましくは 0. 8 n g/m 1〜 8 n g/m 1の濃度 であることが望ましい。 0. 5ng/mlより小さい濃度の場合、 動物細胞幹 細胞の活性を維持するには不十分である。 また、 10 n gZm 1より高い濃度 のとき、 活性は阻害され逆効果である。
本発明では、 さらに各種成長因子を加えても良い。 具体的には、 EGF、 F GF、 HGFなどがあげられるが特に限定されるものではない。 添加する濃度 は 2ng/ml以上であることが望ましく、 好ましくは 4 n g/m 1以上、 さ , らに好ましくは 1 OngZml以上の濃度であることが望ましい。 2ngZm 1より小さい濃度の場合、 添加効果は認められないため、 不十分である。 本発明は、 こうした培地を利用することで動物細胞培養時のコロニー形成能 が向上する。 この培地を利用する時期は特に限定されるものではないが、 培養 開始から終了まで全ての期間でも良く、 また一部の期間だけ、 常法で用いられ る培地と置き換えても良い。 しかしながら、 培養される細胞の活性を維持させ るには前者の全ての期間で用いる方が好都合である。
培養基材としては、 通常細胞培養に用いられるガラス、 改質ガラス、 ポリス チレン、 ポリメチルメタクリレート等の化合物を初めとして、 一般に形態付与 が可能である物質、 例えば、 上記以外の高分子化合物、 セラミックス類など全 て用いることができる。 例えば、 培養する細胞の基材への付着性を高める等の 目的でコラーゲン、 フイブロネクチン、 ラミニン、 ポリ一 L—リジン、 マトリ ゲルなどが被覆されている培養基材を用いても良い。
本発明に使用される好ましい細胞としては、 皮膚などの表皮系細胞、 角膜、 肝臓、 消化器官、 乳腺、 前立腺、 毛根、 気管、 口腔粘膜などの上皮系細胞、 な
らびにそれぞれの幹細胞などがあげられるが、 その種類は何ら制約されるもの ではない。 その他の培養条件は、 常法に従えばよく、 特に制限されるものでは ない。 例えば、 使用する培地については、 公知のゥシ胎児血清 (FCS) 等の 血清が添加されている培地でもよく、 また、 このような血清が添加されていな い無血清培地でもよい。 好ましくは、 狂牛病 (BSE) の危険を考慮して、 ゥ シ由来の血清を避けることが有利であり得る。
本発明において用いられ得る動物培養用培地を利用すれば、 細胞および幹細 胞の活性を維持できる。 また、 この培地を利用すれば重層化する細胞であれば 重層化し、 上述したような異種動物の細胞を使わなくても良くなる。 これらの 技術は組織再生、 細胞分化に係わる再生医療の技術として極めて有効なものと 考えられる。
本明細書において 「細胞生理活性物質」 または 「生理活性物質」 (phy s i o 1 o g i c a 1 1 y a c t i ve s'ub s t an c e) と s、 細胞ま たは組織に作用する物質をいう。 そのような作用としては、 例えば、 その細胞 または組織の制御、 変化などが挙げられるがそれに限定されない。 生理活性物 質には、 サイト力インおよび増殖因子が含まれる。 生理活性物質は、 天然に存 在するものであっても、 合成されたものでもよい。 好ましくは、 生理活性物質 は、 細胞が産生するものまたはそれと同様の作用を有するものであるが改変さ れた作用を持つものであってもよい。 本明細書では、 生理活性物質はタンパク 質形態あるいは他の形態であり得るが、 実際に作用する時点においては、 サイ トカインは通常はタンパク質形態を意味する。
本明細書において使用される 「サイト力イン」 は、 当該分野において用いら れる最も広義の意味と同様に定義され、 細胞から産生され同じまたは異なる細 胞に作用する生理活性物質をいう。 サイト力インは、 一般にタンパク質または ポリペプチドであり、 免疫応答の制禦作用、 内分泌系の調節、 神経系の調節、 抗腫瘍作用、 抗ウィルス作用、 細胞増殖の調節作用、 細胞分化の調節作用など
を有する。 本明細書では、 サイト力インはタンパク質形態あるいは他の形態で あり得るが、 実際に作用する時点においては、 サイト力インは通常はタンパク 質形態を意味する。
本明細書において用いられる 「増殖因子」 または 「細胞増殖因子」 とは、 本 明細書では互換的に用いられ、 細胞の増殖を促進または制御する物質をいう。 増殖因子は、 成長因子または発育因子ともいわれる。 増殖因子は、 細胞培養ま たは組織培養において、 培地に添加されて血清高分子物質の作用を代替し得る。 多くの増殖因子は、 細胞の増殖以外に、 分化状態の制御因子としても機能する ことが判明している。
サイト力インには、 代表的には、 インタ一ロイキン類、 ケモカイン類、 コロ 二一刺激因子のような造血因子、 腫瘍壊死因子、 インターフェロン類が含まれ る。 増殖因子としては、 代表的には、 血小板由来増殖因子 (PDGF) 、 上皮 増殖因子(EGF) 、 線維芽細胞増殖因子 (FGF) 、 肝実質細胞増殖因子 (H GF) 、 血管内皮増殖因子 (VEGF) のような増殖活性を有するものが挙げ られる。
サイトカインおよび増殖因子などの生理活性物質は一般に、機能重複現象( r e dund ancy) があることから、 他の名称および機能 (例えば、 細胞接 着活性または細胞一基質間の接着活性など) で知られるサイト力インまたは増 殖因子であっても、 本発明に使用される生理活性物質の活性を有する限り、 本 発明において使用され得る。 また、 サイト力インまたは増殖因子は、 本明細書 における好ましい活性 (例えば、 所望の分化を誘導し得る活性) を有してさえ いれば、 本発明の好ましい実施形態において使用することができる。
具体的な分化因子としては、 以下が挙げられる。 これらの分化因子は、 単独 でまたは組み合わせて用いられ得る。
A) 角膜:上皮増殖因子 (EGF);
B) 皮膚 (ケラチノサイト): TGF— ;3、 FGF— 7 (KGF: k e r a t
i n o c y t e g r owt h f ac t o r)、 EGF
C) 血管内皮: VEGF、 FGF、 アンギオポェチン (ang i op o i e t i n)
D) 腎臓: L I F、 BMP、 FGF、 GDNF
E) 心臓: HGF、 L I F、 VEGF
F) 肝臓: HGF、 TGF-/3, I L— 6、 EGF、 VEGF
G) 臍帯内皮: VEGF
H) 腸管上皮: EGF、 I GF— I、 HGF、 KGF、 - TGF— j8、 I L— I) 神経:神経成長因子 (NGF)、 BDNF (脳由来神経栄養因子)、 GD NF (グリア細胞由来神経栄養因子)、 ニューロトロフィン (neu r o t r o ph i n)、 I L— 6、 TGF -) 3、 TNF
J) グリア細胞: TGF— )3、 TNF- a, EGF、 L I F、 I L— 6 K) 末梢神経細胞 i bFGF、 L I F、 TGF— ]3、 I L—6、 VEGF, L) 肺 (肺胞上皮): TGF— j3、 I L_ 13、 I L一 1 j3、 KGF、 HGF M) 胎盤:成長ホルモン (GH;)、 I GF、 プロラクチン、 L I F、 I L_ 1、 ァクチビン A、 EGF
N) 塍臓上皮:成長ホルモン、 プロラクチン '
0) 滕臓ランゲルハンス氏島細胞: TGF— /3、 I GF、 PDGF、 EGF、 TGF-jS, TRH (t hy r o r op i n)
P) 関節滑膜上皮: FGF、 TGF- Q) 骨芽細胞: BMP、 FGF
R) 軟骨芽細胞: FGF、 TGF— j8、 BMP, TNF- a
S)網膜細胞: FGF、 CNTF (絨毛神経栄養因子 =c i 1 1 i a r y n eu r o t r oph i c 、 f ac t o r)
T) 脂肪細胞:インスリン、 I GF、 : L I F
U) 筋肉細胞: L I F、 TN F— 、 F G F。
本明細書において 「維持」 とは、 細胞、 組織または臓器について用いられる とき、 その機能および Zまたは形態を実質的に保持させることをいう。 例えば、 角膜の維持とは、 被検体が通常有するべき角膜の機能および/または形態を実 質的に損傷しないで有することをいい、 機能としては、 視力の維持、 形態とし ては、 外観の保持が挙げられるがそれに限定されない。
本明細書において使用される 「再生」 (r e g e n e r a t i o n ) とは, 個体の組織または臓器の一部が失われた際に、 欠如した組織が補填されて復元 される現象をいう。 動物種間または同一個体における組織種に応じて、 再生の その程度および様式は変動する。 ヒト組織の多くはその再生能が限られており、 大きく失われると完全再生は望めない。 大きな傷害では、 失われた組織とは異 なる増殖力の強い組織が増殖し, 不完全に組織が再生され機能が回復できない 状態で終わる不完全再生が起こ.り得る。 この場合には, 生体内吸収性材料から なる構造物を用いて、 '組織欠損部への増殖力の強い組織の侵入を阻止すること で本来の組織が増殖できる空間を確保し, さらに細胞増殖因子を補充すること で本来の組織の再生能力を高める再生医療が行われている。 この例として、 軟 骨、 骨および末梢神経の再生医療がある。 神経細胞および心筋は再生能力がな いかまたは著しく低いとこれまでは考えられてきた。 近年、 'これらの組織へ分 化し得る能力および自己増殖能を併せ持った組織幹細胞 (体性幹細胞) の存在 が報告され、 組織幹細胞を用いる再生医療への期待が高まっている。
細胞は、 由来により、 外胚葉、 中胚葉および内胚葉に由来する幹細胞に分類 され得る。 外胚葉由来の細胞は、 主に脳に存在し、 神経幹細胞およびその分化 細胞などが含まれる。 中胚葉由来の細胞は、 主に骨髄に存在し、 血管幹細胞お よびその分化細胞、 造血幹細胞およびその分化細胞ならびに間葉系幹細胞およ びその分化細胞などが含 れる。 内胚葉由来の細胞は主に臓器に存在し、 肝幹 細胞およびその分化細胞、 塍幹細胞およびその分化細胞などが含まれる。 本明
細書では、 体細胞はどのような胚葉由来でもよい。 好ましくは、 体細胞は、 間 葉系由来の細胞が使用され得る。
本明細書において 「フィーダ一層」 または 「フィーダ一細胞」 (f e e d e r l a y e rまたは f e e d e r c e l l ) とは、 互換可能に用いられ、 培養 基質に設けられる、 単独では培養維持することのできない細胞種の増殖および /または分化形質発現を可能にするような、 他の細胞種による支持細胞層をい う。 組織細胞には、 通常の細胞培養条件下では, 分化形質発現はもとより増殖 すらできない細胞種も多いといわれており、そのような細胞としては、例えば、 ある種の幹細胞 (特に、 上皮幹細胞、 胚性幹細胞、 造血幹細胞など)、 角膜、 表 皮などが挙げられるがそれらに限定されない。 これらの細胞種は一般に、 栄養 要求性が高く特異的な増殖因子、 分化誘導因子を必要とするとされる。 このよ うな細胞種でも生体内でのその細胞種の支持細胞あるいはそれと類似の細胞が 形成する特定の細胞の層を培養基質に活用することで、 培養される細胞種が要 求する因子および Zまたは栄養源が供給されることによって、 増殖および分化 をするようになるといわれている。 フィーダ一細胞として用いる細胞種は、 対 象となる細胞種によって選択されるが、 抗生物質投与 (例えば、 マイトマイシ ン Cなど)、 UV照射などの方法で細胞増殖を抑制して用いることが多い。 生殖 細胞、 初期胚細胞、 造血幹細胞などの培養が可能になったのは, フィーダ一層 の活用に負うところが大きいとされている。 フィーダ一細胞としては、 脂肪由 来の幹細胞のほか、 胚性幹細胞、 骨髄幹細胞などを用いることができ、 そのよ うな場合、 フィーダ一を抜いて DM EM + 1 0 % F B Sという最も基本的な培 養条件により培養して、 線維芽細胞に分化させて用いることが好ましい。
本明細書において 「初代培養細胞」 とは、 体から分離した細胞、 組織、 器官 などを植え込み, 第 1回目の継代を行うまでの培養の状態にある細胞をいう。 本発明の細胞は、 細胞の維持または所望の分化細胞へ分化する限り、 任意の 培養液を用いることができる。そのような培養液としては、例えば、 DME M、
P 199、 MEM、 HBSS、 Ham' s F 12、 BME、 RPM I 164 0、 MCDB 104、 MCDB 153 (KGM) およびそれらの混合物などが 挙げられるがそれらに限定されない。 このような培養液には、 デキサメタゾン などの副腎皮質ステロイド、 インスリン、 グルコース、 インドメ夕シン、 イソ プチルーメチルキサンチン (I BMX)、 ァスコルペート— 2—ホスフエ一ト、 ァスコルビン酸およびその誘導体、 グリセ口ホスフエ一ト、 エストロゲンおよ びその誘導体、 プロゲステロンおよびその誘導体、 アンドロゲンおよびその誘 導体、 aFGF、 bFGF、 EGF、 I GF、 TGFjS、.ECGF、 BMP, PDGFなどの増殖因子、 下垂体エキス、 松果体エキス、 レチノイン酸、 ビタ ミン D、 甲状腺ホルモン、 ゥシ胎仔血清、 ゥマ血清、 ヒト血清、 へパリン、 炭 酸水素ナトリウム、 HEPES、 アルブミン、 トランスフェリン、 セレン酸(亜 セレン酸ナトリウムなど)、 リノレン酸、 3—イソプチルー 1—メチルキサンチ ン、 5—ァザンシチジンなどの脱メチル化剤、 トリコスタチンなどのヒストン 脱ァセチル化剤、 ァクチビン、 L I F * I L- 2 · I L— 6などのサイトカイ ン、 へキサメチレンビスァセトアミド (HMBA)、 ジメチルァセトアミド (D MA)、ジブチル cAM P (db c AMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、 ョードデォキシゥリジン (I dU)、 ヒドロキシゥレア (HU)、 シトシンァラ ピノシド (Ar aC;)、 マイトマイシン C (MMC), 酪酸ナトリウム (N a B u)、 ポリプレン、 セレニウム、 コレラトキシンなどを 1つまたはその組み合わ せとして含ませておいてもよい。
本発明では、 培養には、 好ましくは、 温度培養皿を用いることが有利であり 得るがそれに限定されない。 細胞の分離が容易であるからである。 温度培養皿 は、 代表的には、 温度応答性高分子がコーティングされたものをいう。 温度培 養皿は、 セルシード (東京、 日本) などから市販されているものを利用するこ とができる。
本明細書において 「温度応答性高分子」 とは、 温度に応答して、 その形状お
よび Zまたは性質を変化させる性質を有する高分子をいう。 温度応答性高分子 としては、 例えば、 ポリ (N—イソプロピルアクリルアミド) 、 ポリ (N—ィ ソプロピルアクリルアミドーアクリル酸) 共重合体、 ポリ (N—イソプロピル アクリルアミドーメチルメタクリレート) 共重合体、 ポリ (N—イソプロピル アクリルアミドーアクリル酸ナトリウム) 共重合体、 ポリ (N—イソプロピル アクリルアミドーピニルフエ口セン) 共重合体、 ァ線照射したポリ (ビニルメ チルエーテル) および上記高分子に対して架橋剤によって架橋し作製したゲル などが挙げられるがそれらに限定されない。 好ましくは、 .例えば、 ポリ (N— イソプロピルアクリルアミド) 、 ポリ (N—イソプロピルアクリルアミドーメ チルメタクリレート) 共重合体、 ポリ (N—イソプロピルアクリルアミドーァ クリル酸ナトリゥム) 共重合体および上記高分子に対して架橋剤によって架橋 し作製したゲルなどが挙げられるがそれらに限定されない。 本明細書において 使用される温度応答性高分子としては、 例えば、 水に対する上限臨界溶解温度 または下限臨界溶解温度が 0〜 8 0 °Cであるものが挙げられるがそれらに限定 されない。 ここで、 臨界溶解温度とは、 形状および/または性質を変化させる 閾値の温度をいう。 本明細書では、 好ましくは、 ポリ (N—イソプロピルァク リルアミド) が使用され得る。
例えば、 γ線照射したポリビニルメチルエーテル水溶液は, 室温では水和し 膨潤しているが、 温度が上がると脱水和して収縮する感熱性の高分子ゲルとな ることが知られている。 ゼリ一のように均質透明な P VM Eゲルを温めると白 濁し透明性が変化する。 多孔質構造のゲルを調製したり、 繊維または粒子など の小さな形に成形すると高速で伸縮するようになる。 このような多孔質構造を もつ繊維状 P VM Eゲルの場合、 伸縮速度は 1秒末満という速さであるといわ れる (ht tp ://www. aist. go. jp/NIMC/overview/v27-j . htmU 特開 2 0 0 1— 2 1 3 9 9 2号および特開 2 0 0 1— 1 3 1 2 4 9号参照) 。 Ν—イソプロピル アクリルアミドゲル (すなわち、 ポリ (Ν—イソプロピルアクリルアミド) )
もまた、 温度応答性ゲルとして知られる。 ポリ (N—イソプロピルアクリルァ ミド) に対して、 疎水性のモノマーを共重合させると、 形状および Zまたは性 質が変化する温度を低下させることができ、 親水性のモノマーを共重合させる と形状および Zまたは性質が変化する温度を上げることができる。 これを利用 して、 所望の刺激に応答した充填剤を調製することができる。 このような手法 は、 他の温度応答性高分子に対しても適用することができる。
本明細書において、 「樹立された」 または 「確立された」 細胞とは、 特定の 性質 (例えば、 多分化能) を維持し、 かつ、 細胞が培養条件下で安定に増殖し 続けるようになった状態をいう。 したがって、 樹立された幹細胞は、 多分化能 を維持する。 樹立された分化細胞は、 特定の確定した機能を有する。 樹立され た分化細胞は癌化していることが多いが、 それに限定されない。
本明細書において 「生体内」 または 「インビポ」 (i n v i v o ) とは、 生体の内部をいう。 特定の文脈において、 「生体内」 は、 目的とする組織また は器官が配置されるべき位置をいう。
本明細書において 「インビトロ」 (i n v i t r o ) とは、 種々の研究目 的のために生体の一部分が 「生体外に」 (例えば、 試験管内に) 摘出または遊 離されている状態をいう。 インビポと対照をなす用語である。
本明細書において 「ェキソビポ」 とは、 遺伝子導入を行うための標的細胞を 被験体より抽出し、 インビトロで治療遺伝子を導入した後に、 再び同一被験体 に戻す場合、 一連の動作をェキソビボという。
本明細書において自己または自家とは、 ある個体についていうとき、 その個 体に由来する個体またはその一部 (例えば、 細胞、 組織、 臓器など) をいう。 本明細書において自己というときは、 広義には遺伝的に同じ他個体 (例えば一 卵性双生児) からの移植片をも含み得る。
本明細書において同種 :同種異系) とは、 同種であっても遺伝的には異なる 他個体から移植される個体またはその一部 (例えば、 細胞、 組織、 臓器など)
をいう。 遺伝的に異なることから、 同種異系のものは、 移植された個体 (レシ ピエント)において免疫反応を惹起し得る。そのような細胞などの例としては、 親由来の細胞などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において異種とは、 異種個体から移植されるものをいう。 従って、 例えば、 ヒトがレシピエントである場合、 ブタからの移植物は異種移植物とい つ。
本明細書において 「レシピエント」 (受容者) とは、 移植される細胞などを受 け取る個体といい、 「宿主」 とも呼ばれる。 これに対し、 移植される細胞などを 提供する個体は、 「ドナー」 (供与者) という。 レシピエントとドナーとは同じ であっても異なっていてもよい。
本発明で使用される細胞は、 同系由来 (自己 (自家) 由来) でも、 同種異系 由来 (他個体 (他家) 由来) でも、 異種由来でもよい。 拒絶反応が考えられる ことから、 自己由来の細胞が好ましいが、 拒絶反応が問題でない場合同種異系 由来であってもよい。
本明細書において 「移植」 とは、 本発明の細胞、 組成物、 医薬などを、 単独 で、 または他の治療剤と組み合わせて体内に移入することを意味する。 本発明 は、 以下のような治療部位 (例えば、 骨などなど) への導入方法, 導入形態お よび導入量が使用され得る:本発明の医薬などの障害部位への直接注入し、 貼 付後に縫合し、 挿入する等の方法があげられる。 本発明の脂肪幹細胞と、 分化 細胞との組み合わせは、 例えば、 混合物として同時に、 別々であるが同時にも しくは並行して;または逐次的にかのいずれかで投与され得る。 これは、 組み 合わされた薬剤が、 治療混合物としてともに投与される提示を含み、 そして組 み合わせた薬剤が、 別々であるが同時に (例えば、 分化促進因子) 投与される 手順もまた含む。 「組み合わせ」 投与または移植は、 第 1に与えられ、 続いて第 2に与えられる細胞、 医 、 化合物または薬剤のうちの 1つを別々に投与する ことをさらに含む。
本発明の方法が対象とし得る疾患、 障害、 状態は、 臓器または組織の再生が 所望される任意の疾患、 障害、 状態を含む。 本発明は特に、 フィーダ一細胞が なければ再生し得ない臓器、 組織または細胞に関連する疾患、 障害、 状態が対 象として特に有利である。
1つの実施形態において、 本発明が対象とし得る疾患および障害は、 眼科疾 患または障害であり得る。 そのような疾患または障害としては、 例えば、 熱腐 蝕、 アルカリ腐蝕、 酸腐蝕、 薬剤毒性、 Stevens -Johnson症候群、 眼類天疱 瘡、 (再発) 翼状片、.遷延性角膜上皮欠損、 角膜穿孔、 角膜周辺部潰瘍、 角膜潰 瘍、 エキシマレーザ一術後の上皮剥離、 放射線角膜症、 無虹彩症、 トラコーマ 後角膜混濁、 Salzmann角膜変性、 角膜びらん、 瞼球癒着、 原因不明の角膜上 皮の幹細胞の消失した疾患、 輪部腫瘍、 宿主対移植片疾患 (GVHD) などが挙げ られるがそれらに限定されない。
1つの実施形態において、 本発明が対象とし得る疾患および障害は、 上皮関 連の疾患または障害であり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、 皮膚疾患、 腸疾患、 気道疾患、 口腔疾患、 膀胱疾患、 卵管疾患、 角膜疾患など が挙げられるがそれらに限定されない。
1つの実施形態において、 本発明が対象とし得る疾患および障害は、 循環器 系 (血液細胞など)であり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、 貧血 (例えば、 再生不良性貧血 (特に重症再生不良性貧血)、 腎性貧血、 癌性貧 血、 二次性貧血、 不応性貧血など)、 癌または腫瘍 (例えば、 白血病) およびそ の化学療法処置後の造血不全、 血小板減少症、 急性骨髄性白血病 (特に、 第 1 寛解期 (H i g h— r i s k群)、 第 2寛解期以降の寛解期)、 急性リンパ性白 血病(特に、第 1寛解期、第 2寛解期以降の寛解期)、慢性骨髄性白血病(特に、 慢性期、移行期)、 悪性リンパ腫(特に、 第 1寛解期 (H i g h— r i s k群)、 第 2寛解期以降の寛解期)、 多発性骨髄腫 (特に、 発症後早期) ;心不全、 狭心 症、 心筋梗塞、 不整脈、 弁膜症、 心筋 ·心膜疾患、 先天性心疾患 (たとえば、
心房中隔欠損、 心室中隔欠損、 動脈管開存、 ファロー四徵)、 動脈疾患 (たとえ ば、 動脈硬化、 動脈瘤)、 静脈疾患 (たとえば、 静脈瘤)、 リンパ管疾患 (たと えば、 リンパ浮腫) が挙げられるがそれらに限定されない。
別の実施形態において、 本発明が対象とし得る疾患および障害は、 神経系の ものであり得る。 そのような疾患または障害としては、 例えば、 痴呆症、 脳卒 中およびその後遺症、脳腫瘍、脊髄損傷が挙げられるがそれらに限定されない。 別の実施形態において、 本発明が対象とし得る疾患および障害は、 免疫系の ものであり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、 T細胞欠損症、 白血病が挙げられるがそれらに限定されない。
別の実施形態において、 本発明が対象とし得る疾患および障害は、 運動器' 骨格系のものであり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、骨折、 骨粗鬆症、 関節の脱臼、 亜脱臼、 捻挫、 靱帯損傷、 変形性関節症、 骨肉腫、 ュ 一イング肉腫、 骨形成不全症、 筋ジストロフィー、 骨軟骨異形成症が挙げられ るがそれらに限定されない。
別の実施形態において、 本発明が対象とし得る疾患および障害は、 皮膚系の ものであり得る。 そのような疾患または障害としては、 例えば、 無毛症、 黒色 腫、 皮膚悪性リンパ腫、 血管肉腫、 組織球症、 水疱症、 膿疱症、 皮膚炎、 湿疹 が挙げられるがそれらに限定されない。 '
別の実施形態において、 本発明が対象とし得る疾患および障害は、 内分泌系 のものであり得る。 そのような疾患または障害としては、 例えば、 視床下部- 下垂体疾患、 甲状腺疾患、 副甲状腺 (上皮小体) 疾患、 副腎皮質 ·髄質疾患、 糖代謝異常、 脂質代謝異常、 タンパク質代謝異常、 核酸代謝異常、 先天性代謝 異常 (フェニールケトン尿症、 ガラクト一ス血症、 ホモシスチン尿症、 メーブ ルシロップ尿症) 、 無アルブミン血症、 ァスコルビン酸合成能欠如、 高ビリル ビン血症、 高ピリルビン尿症、 カリクレイン欠損、 肥満細胞欠損、 尿崩症、 バ
ソプレツシン分泌異常、 侏儒症、 ウォルマン病 (酸リパーゼ (A c i d 1 i P a s e )欠損症)、ムコ多糖症 V I型が挙げられるがそれらに限定されない。 別の実施形態において、 本発明が対象とし得る疾患および障害は、 呼吸器系 のものであり得る。 そのような疾患または障害としては、 例えば、 肺疾患 (例 えば、 肺炎、 肺癌など) 、 気管支疾患が挙げられるがそれらに限定されない。 別の実施形態において、 本発明が対象とし得る疾患および障害は、 消化器系 のものであり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、 食道疾患(た とえば、 食道癌) 、 胃 ·十二指腸疾患 (たとえば、 胃癌、 十二指腸癌) 、 小腸 疾患 ·大腸疾患 (たとえば、 大腸ポリープ、 結腸癌、 直腸癌など) 、 胆道疾患、 肝臓疾患 (たとえば、 肝硬変、 肝炎 (A型、 B型、 C型、 D型、 E型など) 、 劇症肝炎、 慢性肝炎、 原発性肝癌、 アルコール性肝障害、 薬物性肝障害) 、 膝 臓疾患 (急性滕炎、 慢性塍炎、 塍臓癌、 嚢胞性塍疾患) 、 腹膜 ·腹壁 ·横隔膜 疾患 (ヘルニアなど) 、 ヒルシュスプラング病が挙げられるがそれらに限定さ れない。
別の実施形態において、 本発明が対象とし得る疾患および障害は、 泌尿器系 のものであり得る。 そのような疾患または障害としては、 例えば、 腎疾患 (腎 不全、 原発性糸球体疾患、 腎血管障害、 尿細管機能異常、 間質性腎疾患、 全身 性疾患による腎障害、 腎癌など) 、 膀胱疾患 (膀胱炎、 膀胱癌など) が挙げら れるがそれらに限定されない。
別の実施形態において、 本発明が対象とし得る疾患および障害は、 生殖器系 のものであり得る。 そのような疾患または障害としては、 例えば、 男性生殖器 疾患 (男性不妊、 前立腺肥大症、 前立腺癌、 精巣癌など)、 女性生殖器疾患 (女 性不妊、 卵巣機能障害、 子宮筋腫、 子宮腺筋症、 子宮癌、 子宮内膜症、 卵巣癌、 絨毛性疾患など) が挙げられるがそれらに限定されない。
本発明が対象とする動物は、 上皮細胞または脂肪細胞を有する動物であれば、 どのような動物 (たとえば、 メクラウナギ類、 ャッメゥナギ類、 軟骨魚類、 硬
骨魚類、 両生類、 爬虫類、 鳥類、 哺乳動物など) であってもよい。好ましくは、 そのような動物は、 哺乳動物 (例えば、 単孔類、 有袋類、 貧歯類、 皮翼類、 翼 手類、 食肉類、 食虫類、 長鼻類、 奇蹄類、 偶蹄類、 管歯類、 有鱗類、 海牛類、 クジラ目、 霊長類、 齧歯類、 ゥサギ目など) であり得る。 例示的な被験体とし ては、 例えば、 ゥシ、 ブ夕、 ゥマ、 ニヮトリ、 ネコ、 ィヌなどの動物が挙げら れるがそれらに限定されない。 さらに好ましくは、 霊長類 (たとえば、 チンパ ンジ一、二ホンザル、 ヒト)が用いられる。最も好ましくはヒトが用いられる。 本発明は、 特に、 ヒトにおいて厚生当局の基準をクリアするのが比較的容易で ある、 ヒト由来の細胞を用いることができる容易になったという効果が留意さ れるべきである。
本発明が医薬として使用される場合、 そのような組成物は、 薬学的に受容可 能なキヤリァなどをさらに含み得る。 本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可 能なキャリアとしては、 当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。 そのような適切な処方材料または薬学的に受容可能なキヤリアとしては、 抗 酸化剤、 保存剤、 着色料、 風味料、 希釈剤、 乳化剤、 懸濁化剤、 溶媒、 フイラ 一、 増量剤、 緩衝剤、 送達ビヒクル、 希釈剤、 賦形剤および/または薬学的ァ ジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。 代表的には、 本発明の医薬 は、 本発明の細胞を、 1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、 賦形剤または 希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。 例えば、 適切なビヒクルは、 注射用水、 生理的溶液、 または人工脳脊髄液であり得、 これらには、 非経口送 達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。
本明細書で使用される受容可能なキャリア、 賦形剤または安定化剤は、 レシ ピエントに対して非毒性であり、 そして好ましくは、 使用される投薬量および 濃度において不活性であり、 例えば、 リン酸塩、 クェン酸塩、 または他の有機 酸;ァスコルビン酸、 ひ—トコフエロール;低分子量ポリペプチド;タンパク 質 (例えば、 血清アルブミン、 ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマ
一 (例えば、 ポリピエルピロリドン);アミノ酸 (例えば、 グリシン、 ダルタミ ン、 ァスパラギン、 アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、 ジサッカリド および他の炭水化物 (グルコース、 マンノース、 またはデキストリンを含む); キレート'剤 (例えば、 E D TA);糖アルコール (例えば、 マンニトールまたは ソルビトール);塩形成対イオン (例えば、 ナトリウム);ならびに Zあるいは 非イオン性表面活性化剤 (例えば、 Tw e e n、 プル口ニック (p 1 u r o n i c ) またはポリエチレングリコール (P E G)) などが挙げられるがそれらに 限定されない。 - 例示の適切なキャリアとしては、 中性緩衝化生理食塩水、 または血清アルブ ミンと混合された生理食塩水が挙げられる。 好ましくは、 その生成物は、 適切 な賦形剤 (例えば、 スクロース) を用いて凍結乾燥剤として処方される。 他の 標準的なキャリア、 希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。 他の例示 的な組成物は、 ρ Η 7 · 0 - 8.. 5の T r i s緩衝剤または ρ Η 4. 0— 5 . 5の酢酸緩衝剤を含み、 これらは、 さらに、 ソルビトールまたはその適切な代 替物を含み得る。
以下に本発明の医薬組成物の一般的な調製法を示す。 なお、 動物薬組成物、 医薬部外品、 水産薬組成物、 食品組成物および化粧品組成物等についても公知 の調製法により製造することができる。 '
本発明の細胞、 細胞から分化させた組織移植片などは、 薬学的に受容可能な キャリアと配合し、 注射剤、 懸濁剤、 溶液剤等の液状製剤として経口または非 経口的に投与することができるが、 目的とする処置を考慮すると、 非経口的に 投与されることが好ましい。 薬学的に受容可能なキャリアとしては、 液状製剤 における溶剤、 溶解補助剤、 懸濁化剤、 等張化剤、 緩衝剤、 無痛化剤等が挙げ られる。 また、 必要に応じ、 防腐剤、 抗酸化剤、 着色剤、 甘味剤等の製剤添加 物を用いることができる。 また、 本発明の組成物には本発明の細胞など以外の 物質を配合することも可能である。 非経口の投与経路としては、 静脈内、 筋肉
内、 皮下投与、 皮内投与、 粘膜投与、 直腸内投与、 膣内投与、 患部への局所投 与、 皮膚投与など等が挙げられるがそれらに限定されない。 全身投与されると き、 本発明において使用される医薬は、 発熱物質を含まない、 薬学的に受容可 能な水溶液の形態であり得る。 そのような薬学的に受容可能な組成物の調製は、 p H、 等張性、 安定性などを考慮することにより、 当業者は、 容易に行うこと ができる。
液状製剤における溶剤の好ましい例としては、 注射用水、 アルコール、 プロ ピレンダリコール、 マクロゴール、 ゴマ油およびトウモロコシ油等が挙げられ る。
液状製剤における溶解補助剤の好ましい例としては、 ポリエチレングリコー ル、 プロピレングリコール、 D—マンニトール、 安息香酸ベンジル、 エタノー ル、 トリスァミノメタン、 コレステロール、 トリエタノールァミン、 炭酸ナト リゥムおよびクェン酸ナトリゥム等が挙げられるがそれらに限定されない。 液状製剤における懸濁化剤の好ましい例としては、 ステアリルトリエタノー ルァミン、 ラウリル硫酸ナトリウム、 ラウリルアミノプロピオン酸、 レシチン、 塩化ベンザルコニゥム、 塩化べンゼトニゥム、 モノステアリン酸グリセリン等 の界面活性剤、 例えば、 ポリビニルアルコール、 ポリビニルピロリドン、 カル ポキシメチルセルロースナトリウム、 メチルセルロース、 ヒ'ドロキシメチルセ ルロース、 ヒドロキシェチルセルロース、 ヒドロキシェチルセルロース、 ヒド ロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられるがそれらに限定さ れない。
液状製剤における等張化剤の好ましい例としては、 塩化ナトリウム、 グリセ リン、 D—マンニトール等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における緩衝剤の好ましい例としては、 リン酸塩、 酢酸塩、 炭酸塩 およびクェン酸塩等の緩衝液等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における無痛化剤の好ましい例としては、 ベンジルアルコール、 塩
化ベンザルコニゥムおよび塩酸プロカイン等が挙げられるがそれらに限定され ない。
液状製剤における防腐剤の好ましい例としては、 パラォキシ安息香酸エステ ル類、 クロロブ夕ノール、 ベンジルアルコール、 2—フエニルェチルアルコ一 ル、 デヒドロ酢酸、 ソルビン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における抗酸ィ匕剤の好ましい例としては、 亜硫酸塩、 ァスコルビン 酸、 Q!—トコフエ口一ルおよびシスティン等が挙げられるがそれらに限定され ない。 - 注射剤として調製する際には、 液剤および懸濁剤は殺菌され、 かっ血液と等 張であることが好ましい。 通常、 これらは、 バクテリア保留フィル夕一等を用 いるろ過、 殺菌剤の配合または照射によって無菌化する。 さらにこれらの処理 後、 凍結乾燥等の方法により固形物とし、 使用直前に無菌水または無菌の注射 用希釈剤 (塩酸リドカイン水溶液、 生理食塩水、 ブドウ糖水溶液、 エタノール またはこれらの混合溶液等) を添加してもよい。
必要に応じて本発明の医薬は、 着色料、 保存剤、 香料、 矯味矯臭剤、 甘味料 等、 ならびに他の薬剤を含んでいてもよい。
本発明の処置方法において使用される組成物の量は、使用目的、対象疾患(種 類、 重篤度など)、 患者の年齢、 体重、 性別、 既往歴、 細胞の形態または種類な どを考慮して、 当業者が容易に決定することができる。 本発明の処置方法を被 験体 (または患者) に対して施す頻度もまた、 使用目的、 対象疾患 (種類、 重 篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、 当業者が容易に決定することができる。 頻度としては、 例えば'、 毎日一数ケ月 に 1回 (例えば、 1週間に 1回一 1ヶ月に 1回) の投与が挙げられる。 1週間 一 1ヶ月に 1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。投与する量は、 処置されるべき部位が必舉とする量を見積もることによって確定することがで さる。
本明細書において 「指示書」 は、 本発明の医薬などを投与する方法または診 断する方法などを医師、 患者など投与を行う人、 診断する人 (患者本人であり 得る) に対して記載したものである。 この指示書は、 本発明の診断薬、 医薬な どを投与する手順を指示する文言が記載されている。 この指示書は、 本発明が 実施される国の監督官庁 (例えば、 日本であれば厚生労働省、 米国であれば食 品医薬品局 (F D A) など) が規定した様式に従って作成され、 その監督官庁 により承認を受けた旨が明記される。 指示書は、 いわゆる添付文書 (p a c k a g e i n s e r t ) であり、 通常は紙媒体で提供されるが、 それに限定さ れず、 例えば、 電子媒体 (例えば、 インタ一ネットで提供されるホームページ (ウェブサイト)、 電子メール) のような形態でも提供され得る。
本発明の方法による治療の終了の判断は、 商業的に利用できるアツセィもし くは機器使用による標準的な臨床検査の結果または分化細胞の欠損に関連する 疾患 (例えば、 眼科疾患、 骨疾患、 心臓疾患、 神経疾患) に特徴的な臨床症状 の消滅によって支持され得る。治療は、分化細胞の欠損などに関連する疾患(例 えば、 眼科疾患、 骨疾患、 心臓疾患、 神経疾患) の再発により再開することが できる。
本発明はまた、 本発明の医薬の 1つ以上の成分を満たした 1つ以上の容器を 備える薬学的パックまたはキットを提供する。 医薬品または生物学的製品の製 造、 使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、 このような容 器に任意に付属し得、 この通知は、 ヒトへの投与に対する製造、 使用または販 売に関する政府機関による承認を表す。
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。 以下に提供される実施形態は、 本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、 本発明の範囲は以下の 記載に限定されるべきで;^いことが理解される。 従って、 当業者は、 本明細書 中の記載を参酌して、 本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明
らかである。
(フィーダ一細胞)
1つの局面において、 本発明は、 フィーダ一細胞として用いるための、 脂肪 組織に由来する細胞を提供する。 脂肪組織からは種々の細胞が分離され得るが、 本発明では、特に、組織幹細胞または線維芽細胞を含んでいることが好ましい。 幹細胞は、 CD 105 (十)、 CD 73 (十)、 CD 29 ( + ), CD44; (+), CD 14 (—)、 CD 34 (-) および CD45 (―) からなる群より選択され る少なくとも 1つの指標を確認することによって同定することができる。 ある いは、 このような細胞は、 「脂肪幹細胞」 または 「脂肪前駆細胞」 であるといわ れる。 このような細胞は、 例えば、 (1) 脂肪吸引物を分液漏斗を用いて生理食 塩水で十分に洗浄し;(2) 上層に脂肪吸引物、 下層に生理食塩水が十分に分離 したのを確認し、 下層を捨てる。 肉眼で見て生理食塩水がほぼ透明になるまで これを繰り返し;(3) 脂肪吸引物と同量の 0.075%コラゲナーゼ /PBS を加え、 37°Cでよく攪拌しながら 30分間インキュベートし;(4) 上記の試料に等量の 10 %血清加 DMEMを加え;( 5 )上記の試料を 1200gで 10分間遠心分離し;( 6 ) ペレットに 0.16M NH4C1/PBSを加えて懸濁し、 室温で適宜 (例えば、 10〜15分 間) インキュベートし;(7) 上記の試料を口径 lOO mのメッシュを用いて吸 引ろ過し;および (8) ろ過物を 1200gで 5分間遠心分離することによって調 製することができる。
理論に束縛されないが、 本発明のフィーダ一細胞は、 VEGFなどのサイト 力インが効率よく分泌されることが観察されている。 従って、 好ましい実施形 態では、 本発明のフィーダ一細胞は、 VEGFなどのサイト力インを分泌する 性質を有し、 より好ましくは、 本発明のフィーダ一細胞としては、 VEGFな どのサイトカインを平滑筋細胞の少なくとも 2倍分泌する細胞を含む細胞集団 が使用されるがそれらに I 定されない。
別の好ましい実施形態では、 本発明のフィーダ一細胞は、 少なくとも 800
nm o 1 Zm 1 (より好ましくは、 約 1 5 0 0 n m o l Zm 1 ) の V E G Fを 分泌する細胞を含む細胞集団が使用される。 このように V E G Fを顕著に多く 分泌する細胞を含む細胞集団は、 これまでに報告があつたということは本発明 者らの知るところではなく、 しかも、 このように V E G Fを顕著に多く分泌す ― る細胞を含む細胞集団がフィーダ一細胞として使用することができるという知 見も本発明者らの知るところではないことから、 本発明の一つの顕著な効果の 一つであるということができる。
本発明のフィーダ一細胞は、 どのような細胞であっても支持することができ、 従って、 指示を必要とする細胞であればどのような細胞であっても支持するこ とができる。好ましい実施形態では、そのような支持されるべき細胞としては、 胚性幹細胞、 組織幹細胞 (例えば、 角膜上皮幹細胞、 口腔粘膜上皮幹細胞など の上皮幹細胞) または分化細胞が挙げられるがそれらに限定されない。
1つの好ましい実施形態において、 本発明のフィーダ一細胞は、 角膜を維持 するために用いられる。 このように、 角膜を、 例えば、 ェキソビポで培養再生 することができるという知見はこれまでにはなく、 特に脂肪組織から採取可能 な細胞をフィーダ一細胞とすることができるという点は、 格別な効果といえる。
1つの好ましい実施形態において、 本発明において使用されるフィーダ一細 胞は、 初代培養細胞を含むことが好ましい。 理論に束縛されることを望まない が、細胞株では、免疫拒絶の可能性が否定しきれないこと、初代培養であれば、 自己の細胞を適用可能であることなどが本発明の利点として挙げられるがそれ に限定されない。 このような細胞は、 厳密な意味での初代培養細胞であること が好ましいが、 継代培養した細胞であっても、 継代数が少ないものであれば、 初代培養細胞とほぼ類似する性質を有し得ることから、 本発明において有利に 使用することができる。 そのような継代数としては、 例えば、 約 5継代以下、 4継代以下、 3継代以下、 2継代以下、 1継代などが挙げられるがそれらに限 定されない。
ヒ卜の場合、 ES細胞から分化誘導した線維芽細胞をフィーダ一細胞に用い た報告があり、 フィーダ一効果も認められている。 他方、 成体の細胞を用いた 先行技術ではいずれも効果は全くないか、 あってもごく弱いという報告あるの みである (Rh e i nwa 1 d J G, Gr e en H,, Ce l l 19 75 ; 6 : 331— 344)。 したがって、 1つの実施形態において、 本発明で は、 成体細胞を用いて高い効果を示せたことが従来技術にはない効果のひとつ であるといえる。 本発明はまた、 成体の脂肪由来の線維芽細胞は、 成体の脂肪 組織以外の組織由来の線維芽細胞よりも効果があるようであるという点も留意 されるべきである。
1つの好ましい実施形態において、 本発明において使用されるフィーダ一細 胞は、 ヒト細胞を含み、 特にヒト細胞からなることが好ましい。 従来の技術で は、 マウスの樹立細胞株 (例えば、 STO細胞)、 または初代培養線維芽細胞な どがフィーダ一として用いられており、 ヒトにおいても状況は同じであったこ とから、 本発明がもたらす効果は、 ヒトの再生治療において、 他の動物に由来 する汚染および感染の危険が格段に減少する (特に、 自己細胞を用いる場合) という効果をもたらすことに留意すべきことが理解されるべきである。
好ましい実施形態において、 本発明のフィーダ一細胞は、 マイトマイシン C などの抗生物質または放射線照射などによる処理が行われたものであることが 有利である。 フィーダ一細胞の増殖を止める目的で処理または照射することに よって、 フィーダ一効果が期待される細胞に対する悪影響を防止することがで きるからである。
本発明のフィーダ一細胞の能力は、 従来使用されている N I HZ3T3細胞 よりも高いこと (特に、 平均コロニー面積、 ディッシュに対するコロニー占有 面積率など) が判明している。 従って、 本発明は、 従来のフィーダ一細胞には 達成できなかったフィーダ一能を提供するという効果も奏する。
(再生治療方法)
別の局面において、 本発明は、 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するた めの移植物を調製するための方法を提供する。 この方法は、 A) 所望の臓器、 組織または細胞の一部またはそれに分化し得る幹細胞を提供する工程;および B) 該ー部または該幹細胞を、 脂肪組織に由来する細胞を含むフィーダ一細胞 上で培養する工程を包含する。 ここで、所望の臓器、組織または細胞の一部は、 細胞であってもよく、 組織片または組織そのもの、 あるいは臓器そのものであ つてもよい。 再生を意図することから、 このような 「一部」 は、 正常な臓器、 組織または細胞から一部が欠損したものが対象とされることが好ましい。 ここ で、 幹細胞は、 所望の臓器、 組織または細胞に分化することができる限り、 ど のような幹細胞を用いてもよい。 従って、 胚性幹細胞は、 全能性を有すること から、 本発明において好ましい実施形態のひとつであり得る。 幹細胞が用いら れる場合、 培養は、 所望の臓器、 組織または細胞への分化を促進するような因 子および Zまたは栄養を含む培養液を用いることが好ましい。 そのような分化 促進因子は、 所望の組織、 臓器などによって変動する。 そのような因子として は、 細胞生理活性物質 (例えば、 増殖因子、 サイト力イン、 細胞外マトリクス など) が挙げられるがそれらに限定されない。
そのような因子の具体例としては、 例えば、 A) 角膜のための上皮増殖因子 (EGF); B) 皮膚 (ケラチノサイト) のための TGF— 、 FGF- 7 (Κ GFのための k e r a t i no c y t e g r owt h f a c t o r), EG F ; C) 血管内皮のための VEGF、 FGF、 アンギオポェチン (ang i o p o i e t i n) ; D) 腎臓のための L I F、 BMP、 FGF、 GDNF; E) 心臓のための HGF、 L I F、 VEGF ; F) 肝臓のための HGF、 TGF— β、 I L一 6、 EGF、 VEGF; G) 臍帯内皮のための VEGF; H) 腸管 上皮のための EGF、 I GF— I、 HGF、 KGF、 TGF— )8、 I L— 11 ; I) 神経のための神経成學因子 (NGF)、 BDNF (脳由来神経栄養因子)、 GDNF (グリア細胞由来神経栄養因子)、 ニューロトロフィン (neu r o t
r o ph i n)、 I L— 6、 TGF— ) 3、 TNF ; J) グリア細胞のための TG F— ) 3、 TNF— o;、 EGF、 L I F、 I L_6 ; K) 末梢神経細胞のための bFGF、 L I F、 TGF— )3、 I L— 6、 VEGF、 ; L) 肺 (肺胞上皮) の ための TGF— /3、 I L— 13、 I L一 1 jS、 KGF、 HGF ; M) 胎盤のた めの成長ホルモン (GH)、 I GF、 プロラクチン、 L I F、 I L— 1、 ァクチ ビン A、 EGF; N) 塍臓上皮のための成長ホルモン、 プロラクチン; O) 滕 臓ランゲルハンス氏島細胞のための TGF— /3、 I GF、 PDGF、 EGF、 TGF— β、 TRH (t hy r o r op i n) ; P) 関節滑膜上皮のための FG F、 TGF-^ ; Q) 骨芽細胞のための BMP、 FGF ; R) 軟骨芽細胞のた めの FGF、 TGF— /3、 BMP, TNF- a; S)網膜細胞のための FQF、 CNTF (絨毛神経栄養因子 =c i l l i a r y n e u r o t r o ph i c f a c t o r); T) 脂肪細胞のためのインスリン、 I GF、 L I F; U) 筋肉 細胞のための L I F、 TNF— α、 F G Fが挙げられるがそれらに限定されな い。
本発明の方法において、 所望の臓器、 組織または細胞は、 表皮系の臓器、 組 織または細胞が代表例として挙げられるがそれに限定されない。 そのような所 望の臓器、 組織または細胞の具体例としては、 例えば、 角膜、 骨、 軟骨、 心臓、 心膜、 血管、 皮膚、 腎臓、 肝臓、 臍帯、 腸、 神経、 肺、 胎盤; 塍臓、 脳、 関節、 筋肉、 四肢末梢、 脂肪および網膜ならびにその一部などが挙げられるがそれら に限定されない。 最も好ましい例としては、 角膜を挙げることができる。
本発明の再生治療法で使用されるフィーダ一細胞は、 上述の 「フィーダ一細 胞」 に説明されるようなフィーダ一細胞を用いることができ、 例えば、 組織幹 細胞、 線維芽細胞を含み得る。 あるいは、 本発明において用いられるフィーダ 一細胞は、 初代培養細胞であり得る。 このような初代培養細胞は、 どのような 由来のものであってもよ が、 好ましくは、 同じ種の細胞であることが好まし く、 より好ましくは、 同系のものが有利であり、 さらに好ましくは自家細胞で
あることがもっとも好ましい。 免疫拒絶反応が同系または自己細胞の使用によ つてなくなるからである。
また、 本発明の再生治療法では、 ヒト細胞が用いられることが好ましい。 ヒ ト細胞がフィーダ一細胞として用いられるという報告は、 細胞株においてのみ 知られるだけであり、 初代培養細胞では知られていなかつたからである。 本発 明の再生治療法は、 被検体をヒトとして、 異種細胞を用いることなく治療する ことができるという点で従来達成できなかった利点を有する。 なぜなら、 異種 細胞を用いた楊合は、 移植組織の臨床観察期間は F D Aの指針として 2 0年と 決められているからであり、 そのような治療は、 多大な労力がかかる割には、 免疫拒絶という不安がいつまでも付きまとうという欠点が存在するからである。 本発明の方法は、 ヒトが被検体であった場合に上記のような欠点を克服するこ とから、 従来技術では達成できなかった効果がある。
本発明は、 脂肪組織からの供給源を提供することができるという点が有利な 点のひとつであるといえる。 脂肪組織からの摘出は、 ノーストレスで採取可能 であるという利点のほか、 外来レベルで摘出が可能であり、 繰り返して行うこ とができ、 大量に得ることができるなどの利点があることが留意されるべきで ある。
本発明の再生治療法は、 ェキソビポで行われる。 ェキソビポでの治療は、 自 己細胞を戻すことを前提としていることから、 生体適合性という観点からは最 良の結果をもたらすことになる。
本発明の再生治療法において、 所望の臓器、 組織または細胞の一部またはそ れに分化し得る幹細胞と、 フィーダ一細胞とは、 フィーダ一細胞が支持する機 能を発揮する限り、 異種、 同種異系または同系のいずれの関係にあってもよい が、 好ましくは、 同系であり、 より好ましくは、 自家であり得る。 理論に束縛 されないが、 同系であれ^、 免疫拒絶反応が抑制できるからである。 しかし、 拒絶反応が予測される場合は、 拒絶反応を回避する工程をさらに包含してもよ
い。 拒絶反応を回避する手順は当該分野において公知であり、 例えば、 新外科 学体系、第 12巻、心臓移植 ·肺移植 技術的,倫理的整備から実施に向けて(改 訂第 3版)、中山書店などに記載されている。そのような方法としては、例えば、 免疫抑制剤、 ステロイ.ド剤の使用などの方法が挙げられる。 拒絶反応を予防す る免疫抑制剤は、現在、 「シクロスポリン」 (サンデイミユン/ネオ一ラル)、 「夕 クロリムス」 (プログラフ)、 「ァザチォプリン」 (イムラン)、 「ステロイドホル モン」 (プレドニン、 メチルプレドニン)、 「T細胞抗体」 (O KT 3、 AT Gな ど) があり、 予防的免疫抑制療法として世界の多くの施設で行われている方法 は、 「シクロスポリン、 ァザチォプリン、 ステロイドホルモン」 の 3剤併用であ る。免疫抑制剤は、本発明の併用療法と同時期に投与されることが望ましいが、 必ずしも必要ではない。 従って、 免疫抑制効果が達成される限り免疫抑制剤は 本発明の併用療法の前または後にも投与され得る。
1つの好ましい実施形態において、 所望の臓器、 組織または細胞の一部また はそれに分化し得る幹細胞は、 被検体から摘出されてすぐのものであるか、 ま たは凍結保存されたものである。 摘出されてすぐのものを用いることが好まし レ^ 本発明においてすぐとは、 摘出されて通常細胞を調製するのにかかる時間 をいう。 従って、 そのような時間とは、 例えば、 1時間、 2時間、 3時間などが 挙げられるが、それより短くても長くてもよいことが理解される。所望の臓器、 組織または細胞の一部またはそれに分化し得る幹細胞は凍結保存されてもよい。 そのような凍結保存は、 当該分野において公知の方法を用いることができる。 そのような保存方法としては、 例えば、 DM S Oを含む溶液中などへの保存が 挙げられるがそれらに限定されない。
1つの実施形態において、 本発明の再生治療法における培養の条件、 および 本発明において使用される所望の臓器、 組織または細胞の一部またはそれに分 化し得る幹細胞の培養の ί 供の条件は、 その細胞、 組織または臓器を培養する ために通常用いられるものであれば、 用いることができる。 そのような培養条
件の例としては、 例えば、 培養条件は通常、 37°C、 5%C02を利用することが できる。 使用する培地もまた、 任意のものを利用することができ、 例えば、 D MEM/Haml 2 (1 : 1)、 10%FCS、 インスリン ·コレラトキシンな どを含む培地を利用することができる。 また、 必要に応じて、 分化因子 (例え ば、 EGF (1 On /mD) を予め含めた培養液を使用してもよいがそれら に限定されない。
1つの実施形態において、 本発明の再生治療法における培養では、 所望の臓 器、 組織または細胞の一部またはそれに分化し得る幹細胞と、 フィーダ一細胞 との比率が、 10 : 1〜1 : 10、 好ましくは 7 : 1~1 : 7、 最も好ましく は 5 : 1〜; 1 : 5であることが有利である。 理論に束縛されないが、 フィーダ —細胞が幹細胞よりも少し少なレ方が有利であるようである。
一つの好ましい実施形態において、 本発明の方法における培養のために、 分 化因子を加えることができる。 そのような分化因子としては、 例えば、 DNA 脱メチル化剤 (5—ァザシチジンなど)、 ヒストン脱ァセチル化剤 (トリコス夕 チンなど)、 核内レセプ夕一リガンド (例えば、 レチノイン酸 (ATRA)、 ビ 夕ミン D3、 T3など)、 細胞増殖因子 (ァクチビン、 I GF— 1、 FGF, P DGF、 TGF - 3、 BMP 2Z4など)、 サイト力イン (L I F、 I L— 2、 I L— 6など)、 へキサメチレンビスァセトアミド、 ジメチルァセトアミド、 ジ ブチル cAMP、 ジメチォルスルホキシド、 ョ一ドデォキシゥリジン、 ヒドロ キシル尿素、 シトシンァラビノシド、 マイトマイシン C、 酪酸ナトリウム、 ァ フィディコリン、 フルォロデオキシゥリジン、 ポリプレン、 セレンなどが挙げ られるがそれらに限定されない。 角膜への分化には、 EGFという分化因子を 加えることができる。 他の分化細胞についてもまた、 本明細書において記載さ れる任意の分化因子を使用することができる。
他の局面において、 本発,明は、 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するた めの方法を提供する。 この方法は、 A) 所望の臓器、 組織または細胞の一部ま
たはそれに分化し得る幹細胞を提供する工程; B) 該一部または該幹細胞を、 脂肪組織に由来する細胞を含むフィーダ一細胞上で培養する工程;および C) 該培養された該一部または該幹細胞を該被検体の処置されるべき部位に移植す る工程、 を包含する。 ここで、 工程 A) および工程 B) は、 本節において上述 した任意の形態が用いられ得る。
投与の方法もまた、 当該分野において公知の任意の方法を用いることができ る。 そのような方法として、 シリンジ、 カテーテル、 チューブなどを用いての 注入が挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、局所注入(皮下注入、 筋肉や脂肪など臓器内注入)、 静脈内注入、 動脈内注入、 組織上投与などを用い る。
処置されるべき部位への移植は、 直接であっても間接であってもよい。 従つ て、 B ) までの工程で調製した移植片を処置される部位に直接移植してもよい し、 あるいは、 被検体中の任意の場所に移植して、 体内の送達システムを利用 して処置されるべき部位に移植されるようにしてもよい。 そのような形態は、 当業者であれば、 適宜選択することができる。 好ましくは、 直接移植すること が好ましい。 特に、 角膜など、 正確な場所に投与されるべき場合は、 直接移植 することが所望される。
好ましい実施形態において、 本発明の方法は上記に加え、'さらに、 マイトマ イシン Cまたは放射線照射などの処理をすることが有利である。 フィーダ一細 胞の増殖を止める目的で添加または照射することにより、 癌化を抑制したり、 所望されない細胞の異常増殖を防止することができるからである。
(再生治療システム)
別の局面において、 本発明は、 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するた めのシステムを提供する。 このシステムは、 A) 容器; B) 脂肪組織に由来す る細胞を含むフィーダ一鄉胞、 を備える。 ここで、 容器としては、 フィーダ一 細胞を付着させ、 その上に再生させるべき細胞が収容されることができる限り、
どのような容器であってもよい。 従って、 任意の容器が使用され得る。 好まし くは、 そのような容器の材質は、 生体適合性のものが使用されることが望まし いが、 生体に毒性を与えるものが使用されていない限り、 どのようなものであ つても使用することができることが理解される。 そのような容器の材質,として は、 例えば、 ポリエチレン、 エチレン、 ポリプロピレン、 ポリイソプチレン、 ポリエチレンテレフ夕レート、 不飽和ポリエステル、 含フッ素樹脂、 ポリ塩化 ビニル、 ポリ塩化ビニリデン、 ポリ酢酸ビニル、 ポリビニルアルコール、 ポリ ビニルァセタール、 アクリル樹脂、 ポリアクリロニトリル、 ポリスチレン、 ァ セタール樹脂、 ポリカーボネート、 ポリアミド、 フエノール樹脂、 ユリア樹脂、 エポキシ樹脂、 メラミン樹脂、 スチレン ·アクリロニトリル共重合体、 ァクリ ロニトリルブタジエンスチレン共重合体、 シリコーン樹脂、 ポリフエ二レンォ キサイド、 ポリスルホン等の有機材料、 あるいは、 シラン、 ポリ L.リジンコ一 トなどでコ一ティングされたものが使用され得る。
本発明の再生治療システムにおいて使用されるフィーダ一細胞は、 上述の本 発明のフィーダ一細胞であれば任意のフィーダ一細胞を使用することができる。 このようなシステムは、 好ましくは、 所望の臓器、 組織または細胞の一部ま たはそれに分化し得る幹細胞を提供するための提供手段 (すなわち、 幹細胞採 取デバイ) をさらに備えることが有利である。 そのような提供手段は、 所望の 臓器、 組織または細胞の一部またはそれに分化し得る幹細胞を提供することが できる限り、 どのようなものであってもよいが、 例えば、 被検体から細胞を取 り出す手段 (例えば、 カテ一テル、 かきとり棒、 ピンセット、 注射器、 医療用 はさみ、 内視鏡などを挙げることができるが、 それらに限定されないことが理 解されるべきである。
好ましい実施形態において、 本発明のシステムは上記に加え、 さらに、 分化 因子を備えていてもよい。,そのような分化因子としては、 例えば、 D NA脱メ チル化剤 (5—ァザシチジンなど)、 ヒストン脱ァセチル化剤 (トリコス夕チン
など)、 核内レセプ夕一リガンド (例えば、 レチノイン酸 (AT R A)、 ビタミ ン D 3、 T 3など)、 細胞増殖因子 (ァクチビン、 I G F— 1、 F G F , P D G F、 T G F— ) 3、 B M P 2ノ 4など)、 サイト力イン (L I F、 I L— 2、 I L 一 6など)、 へキサメチレンビスァセトアミド、 ジメチルァセトアミド、 ジブチ ル C AM P、 ジメチォルスルホキシド、 ョードデォキシゥリジン、 ヒドロキシ ル尿素、 シトシンァラビノシド、 マイトマイシン (:、 酪酸ナトリウム、 ァフィ ディコリン、 フルォロデオキシゥリジン、 ポリプレン、 セレンなどが挙げられ るがそれらに限定されない。 この分化因子は、 粉末で提供されていてもよく、 液剤として提供されていてもよい、 あるいは、 他の培地成分と混合されていて もよく、 単独で提供されてもよい。
好ましい実施形態において、 本発明のシステムは上記に加え、 さらに、 マイ トマイシン Cまたは放射線源を備えることが有利である。 フィーダ一細胞の増 殖を止める目的で添加または照射することができるからである。
(共移植) '
別の局面において、 本発明は、 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するた めの別の方法を提供する。 この別の方法は、 A) 所望の臓器、 組織または細胞 の一部またはそれに分化し得る幹細胞、 および脂肪組織に由来する細胞を含む フィーダ一細胞を、 該被検体の処置されるべき部位に移植する工程、 を包含す る。 このような共移植の方法もまた、 本発明のフィーダ一細胞がもたらす効果 によって達成されるものである。 ここで、 フィーダ一細胞および幹細胞は、 上 記再生方法において用いられる任意のものを使用することができる。 ここで、 幹細胞とフィーダ一細胞とは、 任意の比率で混合できるが、 好ましくは、 フィ ーダー細胞より幹細胞が多いことが有利であり得る。 幹細胞とフィーダー細胞 とは、 同時に移植されてもよく、 どちらかが先に移植されてもよい。
好ましい実施形態にお ^て、 本発明の方法は上記に加え、 さらに、 マイトマ イシン Cなどの抗生物質または放射線照射で処理がされたものを用いることが
有利である。 所望されない細胞の異常増殖を防止し、 または癌化を防止するこ とができるからである。
他の局面において、 本発明は、 所望の臓器、 組織または細胞の一部またはそ れに分化し得る幹細胞、 および脂肪組織に由来する細胞を含むフィーダ一細胞、 を含む、 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するための医薬を提供する。 こ こで、 フィーダ一細胞および幹細胞は、 上記別の再生方法において用いられる 任意のものを使用することができる。
(脂肪組織由来細胞の使用)
別の局面において、 本発明は、 フィーダ一細胞としての、 脂肪組織に由来す る細胞の使用を提供する。 さらに別の局面において、 本発明は、 フィーダ一細 胞を含む医薬を製造するための、 脂肪組織に由来する細胞の使用を提供する。 なおさらに別の局面において、 本発明は、 被検体の臓器、 組織または細胞を再 生するための医薬を製造するための、 脂肪組織に由来する細胞の使用を提供す る。 ここで使用されるフィーダ一細胞は、 本発明のフィーダ一細胞であればど のようなものであってもよく、 その説明は、 上記 「フィーダ一細胞」 にあり、 その記載が参酌される。
(ヒト線維芽細胞の使用)
1つの局面において、 本発明は、 フィーダ一細胞として用いるための、 ヒト 線維芽細胞初代培養細胞を提供する。 ヒトの線維芽細胞初代培養細胞がフィ一 ダー細胞として用いられるという例がこれまで存在せず、 したがって、 本発明 は、 人体において自己洽療も可能な初代培養細胞がフィーダ一細胞として使用 することができるという顕著な効果を奏することになる。 ここで、 初代培養細 胞としては、 通常、 5代までの継代のものを利用することができるがそれに限 定されない。
別の局面において、 本発明は、 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するた めの移植物を調製するための方法を提供する。 この方法は、 A) 所望の臓器、
組織または細胞の一部またはそれに分化し得る幹細胞を提供する工程;および
B) 該一部または該幹細胞を、 ヒト線維芽細胞初代培養細胞を含むフィーダ一 細胞上で培養する工程、 を包含する。 フィーダ一細胞は、 ヒト線維芽細胞初代 培養細胞であれば、 どのような細胞であってもよい。
' 他の局面において、 本発明は、 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するた めのシステムを提供する。 このシステムは、 A) 容器; B ) ヒト線維芽細胞初 代培養細胞を含むフィーダ一細胞、 を備え、 必要に応じて、 幹細胞採取手段、 分化因子などを含むことができる。 そのような容器、 幹細胞採取手段、 分化因 子などは、 本明細書において上述したものなどを使用することができる。
別の局面において、 本発明は、 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するた めの方法を提供する。 このような方法は、 A) 所望の臓器、 組織または細胞の 一部またはそれに分化し得る幹細胞を提供する工程; B ) 該一部または該幹細 胞を、 ヒト線維芽細胞初代培養細胞を含むフィーダ一細胞上で培養する工程; および C) 該培養された該一部または該幹細胞を該被検体の処置されるべき部 位に移植する工程を包含する。 ここで、 幹細胞の提供は、 本明細書において別 の場所に説明されている。 線維芽細胞初代培養細胞としては、 上述のように任 意のものを使用することができるが、 好ましくは、 継代を経ていないものを利 用することができる。
他の局面において、 本発明は、 被検体の臓器、 組織または細胞を再生するた めの別の方法を提供する。 この別の方法は、 A) 所望の臓器、 組織または細胞 の一部またはそれに分化し得る幹細胞、 およびヒト線維芽細胞初代培養細胞を 含むフィーダ一細胞を、 該被検体の処置されるべき部位に移植する工程、 を包 含する。 ここで、 幹細胞の詳細な形態としては、 本明細書において別の場所に 説明されている任意のものを利用することができる。 線維芽細胞初代培養細胞 としては、 上述のように任意のものを使用することができるが、 好ましくは、 継代を経ていないものを利用することができる。
他の局面において、 本発明は、 所望の臓器、 組織または細胞の一部またはそ れに分化し得る幹細胞、 およびヒト線維芽細胞初代培養細胞を含むフィーダ一 細胞、を含む被検体の臓器、組織または細胞を再生するための医薬を提供する。 ここで、 幹細胞の詳細な形態としては、 本明細書において別の場所に説明され ている任意のものを利用することができる。 線維芽細胞初代培養細胞としては、 上述のように任意のものを使用することができるが、 好ましくは、 継代を経て いないものを利用することができる。
別の局面において、 本発明は。 フィーダ一細胞としての、 ヒト線維芽細胞初 代培養細胞の使用を提供する。 他の局面において、 本発明は、 フィーダ一細胞 を含む医薬を製造するための、 ヒト線維芽細胞初代培養細胞の使用を提供する。 なおさらに別の局面において、 本発明は、 被検体の臓器、 組織または細胞を再 ; 生するための医薬を製造するための、 ヒト線維芽細胞初代培養細胞の使用を提 供する。 このような使用方法は、 本明細書において上述し、 以下の実施例にお いて例示されるとおりである。
(再生治療用移植片)
1つの局面において、本発明は、上皮組織を再生するための移植片であって、 幹細胞または幹細胞に由来する細胞を含む、移植片を提供する。この移植片は、 : 上皮組織を再生することができるという意味で画期的な治療手段として有用で: ある。
1つの実施形態において、本発明が対象とする上皮組織は、角膜であり得る。 角膜を治療することができ、 その上、 視力が例えば、 0 . 5以上または 0 . 7 以上とすることができるような再生法は従来なかったこと、 および自己由来細 胞を用いることができることから拒絶反応がほとんどない治療法として注目に 値すべきであるといえる。
本発明の移植片が含む幹細胞は、 上皮幹細胞、 胚性幹細胞、 骨髄間葉系幹細 胞、 造血幹細胞、 血管内皮幹細胞、 神経幹細胞、 網膜幹細胞、 脂肪幹細胞、 腎
臓幹細胞および肝臓幹細胞などを挙げることができ、 上皮幹細胞が好ましい。 上皮幹細胞としては、 例えば、 角膜上皮幹細胞、 口腔粘膜上皮幹細胞、 表皮幹 細胞、膀胱上皮幹細胞、結膜上皮幹細胞、 胃粘膜上皮幹細胞、 小腸上皮幹細胞、 大腸上皮幹細胞、 腎臓上皮幹細胞、 尿細管上皮幹細胞、 歯肉粘膜上皮幹細胞、 毛幹細胞、 食道上皮幹細胞、 肝臓上皮幹細胞、 塍臓上皮幹細胞、 乳腺幹細胞、 唾液腺幹細胞、 涙腺幹細胞、 肺上皮幹細胞および胆嚢上皮幹細胞などの細胞を 挙げることができるがそれらに限定されない。
1つの実施形態において、 本発明において使用される幹細胞または幹細胞に 由来する細胞は、 フィーダ一細胞と共培養されたものであってもよい。 そのよ うなフィーダ一細胞としては、 N I HZ 3 T 3のような従来使用されているフ ィーダ一細胞を用いることができるが、 本発明において別の箇所において提供 されるような脂肪組織に由来するフィ一ダ一細胞を用いてもよい。 脂肪組織に 由来するフィーダ一細胞を用いることが好ましい。 自己由来の細胞をフィーダ —細胞として用いることができるからであり、 特に脂肪細胞は、 生命維持に必 須ではなく、 むしろ、 現代人にとっては不要な細胞であり得ることから、 不要 な細胞を必要な細胞の再生に使用することができるという点で現代人に適した 治療法を提供するといえる。
従って、 1つの好ましい実施形態において、 本発明の移植片の調製において 使用されるフィーダ一細胞は、 脂肪組織に由来する細胞を含むことが好ましい。 好ましい実施形態では、 上記フィーダ一細胞との共培養は、 細胞接着が促進 する条件で行われる。 このような細胞接着が促進する条件としては、 例えば、 3 7 で血清入りの培養液を使用すること、 ラミニンゃフイブロネクチンなど 各種の細胞接着促進物質を培養皿の床にコートしておくことのような培養条件 を挙げることができる。
1つの実施形態におい 、 本発明の移植片は、 重層化した細胞を含む。 この ような重層化は、 例えば、 温度感受性培養皿の使用によって達成することがで
きるがそれらに限定されず、 例えば、 他の方法としては、 羊膜ゃフイブリンゲ ルなどの基質 (キャリア) の上で、 上皮幹細胞を培養する系、 エア一リフト (空 気と液の境界で細胞を培養する方法) を用いる系、 カルチヤ fンサ一トを用 いる系、 などを使用することができる。
好ましい実施形態では、 本発明の移植片は、 無縫合移植に使用される。 従来 の移植片は、 特に、 角膜移植においては、 縫合移植が必須であった。 従って、 角膜移植などの上皮系の組織の治療において、 無縫合移植が可能になったこと は注目に値する。
1つの実施形態において、 本発明の移植片は、 脂肪を患者本人から採取すれ ば、 すべて患者本人由来のものからシ一トを作製できるという効果を奏する。 構造およびマーカーなどは従来の移植片と変化はないが、 脂肪由来幹細胞をフ ィ一ダ一とした場合、 上皮幹細胞が再生組織の中に保持されていることを本発 明者らは証明した。本発明者らは、 3 T 3でも保持されていることを証明した。 従って、 好ましくは、'本発明の移植片は、 異種由来物質を含まないという構造 上の特徴を有し得るがそれらに限定されない。
別の局面において、 本発明は、 上皮組織を再生するための移植片としての医 薬を調製するための使用であって、 上記移植片は、 幹細胞または幹細胞に由来 する細胞を含む、 使用を提供する。 ここで記載される、 移植片、 上皮組織、 上 皮幹細胞としては、 本明細書において上述され、 以下に例示されるような任意 の形態を採用することができる。
1つの実施形態において、 本発明の移植片としての医薬の使用において使用 される上皮組織は、 角膜であり得る。
別の実施形態において、 本発明の移植片としての医薬の使用において使用さ れる幹細胞としては、 上皮幹細胞、 胚性幹細胞、 骨髄間葉系幹細胞、 造血幹細 胞、 血管内皮幹細胞、 神释幹細胞、 網膜幹細胞、 脂肪幹細胞、 腎臓幹細胞およ び肝臓幹細胞などを挙げることができ、 上皮幹細胞が好ましく、 上皮幹細胞と
しては、角膜上皮幹細胞、 口腔粘膜上皮幹細胞、表皮幹細胞、膀胱上皮幹細胞、 結膜上皮幹細胞、 胃粘膜上皮幹細胞、 小腸上皮幹細胞、 大腸上皮幹細胞、 腎臓 上皮幹細胞、 尿細管上皮幹細胞、 歯肉粘膜上皮幹細胞、 毛幹細胞、 食道上皮幹 細胞、 肝臓上皮幹細胞、 塍臓上皮幹細胞、 乳腺幹細胞、 唾液腺幹細胞、 涙腺幹 細胞、 肺上皮幹細胞および胆嚢上皮幹細胞等を挙げることができるがそれらに 限定されない。
以下に、 実施例に基づいて本発明を説明するが、 以下の実施例は、 例示の目 的のみに提供される。 従って、 本発明の範囲は、 上記発明の詳細な説明にも下 記実施例にも限定されるものではなく、 特許請求の範囲によってのみ限定され る。 実 施 例
以下に示した実施例において使用した試薬は、 特に言及しない限り和光純薬、
Sigmaから得た。 動物の飼育は、 Na t i ona l S o c i e t y f o r Me d i c a l Re s e a r c h g作成した 「 P r i n c i p l e s o f Labo r a t o r y An ima l Ca r e」 および I n s t i't u t e o f Labo r a t o r y An ima l Re s ou r c eが作成、 N a t i ona l I n s t i t u t e o f H e a 1 t hが公表した 「Gu i d e f o r t e Ca r e and Us e o f L abo r a t o r y An ima l s」 (NIH Pub l i c a t i on, No. 86 - 23, 1985, 改訂) に遵つて、 大阪大学医学部において規定される基準 に遵い、 動物愛護精神に則って行った。 ヒトを対象とする場合は、 厚生労働省 の基準に従い、 事前に同意を得た上で実験を行う。 (実施例 1 :脂肪組織申来細胞の調製)
本実施例では、 まず、 本実験に対して同意を示したヒトから細胞を脂肪組織
から調製した。脂肪吸引物を生理食塩水で十分に洗浄した。上層に脂肪吸引物、 下層に生理食塩水が十分に分離したのを確認し、 下層を捨て、 肉眼で見て生理 食塩水がほぼ透明になるまでこれを繰り返した。この実施例では、 7回行った。 脂肪組織を 40mlと同量 40mlの 0. 075 %コラゲナ一ゼ ZP B S (G i bc o) を加え、 37°Cでよく攪拌しながら 1時間インキュベートした。 こ の試料に、 同量の 10 %血清加 D MEMを加え、 1200Xgで 10分間遠心 分離した。
遠心分離により得られたペレットに 0. 16M NH4G 1/PBS (G i b c o) を加えて懸濁し、 25 °Cで 20分間インキュベートした。 この試料を口 径 100 mのメッシュ (Wh a tman) を用いて吸引ろ過した。 このろ過 物を 1200 X gで 5分間遠心分離した。 この細胞は線維芽細胞様の細胞であ つた。
(実施例 2 :脂肪組織由来細胞中の幹細胞の確認)
実施例 1において調製した細胞中に幹細胞が含まれていることは、 細胞マー 力一 (CD105、 CD73、 CD29、 C D 44および S c a— 1 ) により 確認する。 細胞マーカ一の存在は、 EL I S Aまたはウェスタンプロットなど の免疫化学的手法を用いることによって同定することができる。 ここでは、 プレイオトロフィン (p 1 e i o t r o p h i n)、 ェピレグリン (e p i r e gu 1 i n)、 肝細胞増殖因子、 ケラチノサイト増殖因子、 ソニッ クヘッジホッグ(s on i c he dgeho ),インスリン様増殖因子 1 a、 GAP DHを用いて mRN A発現を確認した。 その実験の概略を以下に示す。 脂肪由来幹細胞をフィーダ一として作製した再生組織の細胞から mRN Aを 抽出し、 cDNAを合成した。 この cDNAを铸型として各遺伝子特異的なプ ライマーを用いて PC Rを行い、 再生組織における各遺伝子の発現を調べた。
P T/JP2004/015576
プライマー (それぞれ、 センスプライマーおよびアンチセンスプライマ一を 示す) としては、 プレイオトロフィン(p l e i o t r oph i n):配列情報: 配列番号 1一 2、 ェピレダリン (e p i r e gu l i n) :配列情報:配列番号 3— 4、 肝細胞増殖因子:配列情報:配列番号 5— 6、 ケラチノサイト増殖因 子:配列情報:配列番号 7— 8、 ソニックヘッジホッグ (s on i c e d g e o g):配列情報:配列番号 9一 10、 インスリン様増殖因子 1 a :配列 情報:配列番号 11一 12、 GAPDH:配列情報:配列番号 13— 14を使 用した。 結果を、 図 1Bに示す。 NIHZ3T3において上皮系の細胞の増殖、.維持 に影響を及ぼしているであろうと考えられるタンパク質等について、 脂肪前駆 細胞における mRNAの発現を解析した。 特に、 シス夕チン C、 HGF、 KG F、 I GF— 1 aを発現しており、 脂肪前駆細胞は上皮系の細胞に対して、 フ ィ一ダ一細胞と成りえるのではないかと考えられる。
(実施例 3 :脂肪組織由来細胞の特徴づけ)
次に、 実施例 1において調製した細胞中の細胞が、 サイト力イン分泌能を亢 進していることを確認した。 まず、 VEGFについて、 抗 VEGF抗体を用い て細胞分泌物をサンプルとして、 EL I SAを行った。 EL I SAは、 R&D 社から入手可能な EL I SAキットを用いて行った。 コントロールとして、 ヒ ト血管内皮細胞およびヒト由来平滑筋細胞を測定した。
その結果、 ヒト血管内皮細胞は、 100nmo l/mし ヒト由来平滑筋細 胞は約 800 nmo 1 /m K および実施例 1において調製した細胞は、 約 1 500 nmo 1 Zm 1 VEGFを分泌していることが分かった。 従って、 本発 明の細胞は、 VEGFが、、通常の細胞に比べて、 約 2〜15倍に亢進していた ことが確認された。 理論に束縛されることを望まないが、 本発明の細胞は、 細
胞生理活性物質 (例えば、 増殖因子、 サイト力インなど) の分泌が亢進されて いる細胞を含むことによって、 フィーダ一効果を増進させているようであるこ とが明らかになった。 (実施例 4 :角膜上皮幹細胞の摘出)
次に、 ゥサギ (ニュージーランドホワイト種; 日本チャールズリバ一) をモ デルとして、 角膜細胞の再生を試みる。 まず、 角膜上皮幹細胞をゥサギから調 製した。 そのプロトコールを以下に示す。
ドナー角膜あるいはホスト健常眼 (片眼性疾患の場合) の角膜上皮の幹細胞 を角膜輪部より採取した。 この場合、 角膜中心部から離れた角膜輪部の l.mm 径の 1断片のみを採取するので、たとえ l iving- related ドナー眼またはホスト 健常眼から採取しても、 その傷害は瘢痕をのこすことなく治癒し、 視力には影 響を与えない。 術後には治療用コンタクトレンズを装用させるので、 創傷治癒 も早く、 痛みも軽度である。 術後の痛みに対して、 鎮痛剤と抗生物質、 消炎剤 で対処する。 このゥサギは、 早期に創傷治癒したことが確認された。
この細胞を所望の幹細胞として用いた。
(実施例 5 :口腔粘膜幹細胞の調製) '
次に、 ゥサギ (ニュージ一ランドホワイト種; 日本チャールズリバ一) をモ デルとして、 角膜細胞の再生を試みる。 角膜が喪失されている場合への応用を 試みるため、 口腔粘膜上皮幹細胞をゥサギから調製する。 そのプロトコールを 以下に示す。
ドナー口腔粘膜あるいはホスト健常口腔粘膜の口腔粘膜上皮の幹細胞を口腔 粘膜より採取する。 頰粘膜から、 3〜 5 mm径の 1断片のみを採取する。 口腔 粘膜は再生能力が高いの その傷害は瘢痕をのこすことなく治癒し、 口腔の機 能には影響を与えない。 口腔は治癒が速い組織であることから、 創傷治癒も早
く、 痛みも軽度である。 ホストからの口腔粘膜の採取であるが、 術後の痛みに 対して、 鎮痛剤と抗生物質、 消炎剤で対処する。 通常早期に創傷治癒する。 この細胞を所望の幹細胞の例として用いる。 (実施例 6 :コロニー形成アツセィによる確認)
実施例 4において調製した幹細胞を、 実施例 1において調製したフィーダ一 細胞上で培養して、 コロニー形成アツセィによりフィーダ一効果があるかどう かを確認した。 本実験ではコロニーが形成されるとフィーダ一効果があるとい うことを実証することになる。
幹細胞を、 フィーダ一細胞上で、 DMEM/Ham, s 12 ( 1 : 1.;と もに G i b c oから入手)に 10%ゥシ胎仔血清(FCS=ハナネスコバイオ、 東京から入手) ならびにインスリン (5^gZml =S i gmaから入手)、 コ レラトキシン (1 ηΜ=和光純薬、 大阪から入手) および EG F (l OngZ ml =Ge n z yme、 Camb r i dge, MAから入手) を添加した培地 中で培養した。 培養後、 コロニーはローダミンで染色した。 ゥサギ角膜上皮細 胞 (初代 / 8週齢) を 1000個播種した。 コントロールとして、 3T3をフ ィーダ一として用いたものを使用した。 フィーダ一細胞は、 それぞれ、 3T3 は、 2 X 104細胞使用し、 深部組織由来細胞は、 1 X 104細胞使用し、 皮下 組織由来細胞は、 1 X 1 04細胞使用した。 (図中の/ z gZm 1は、 マイトマィ シン Cの濃度を示す)。
結果を図 2〜4に示す。 図 2は、 3 T 3細胞を用いた場合、 図 3は、 深部の 組織由来細胞を用いた場合、 図 4は、 皮下の脂肪組織由来細胞を用いた場合を 示す。 本発明の脂肪由来の細胞で、 従来使用されている 3T3と同様のコロニ 一が形成されたことがわかった。 このように、 本発明の脂肪組織由来の細胞が フィーダ一細胞として使用,できることがわかった。
実施例 5において調製する幹細胞もまた、 上記同様にフィーダ一効果を確認
することができる。 別の条件で N I Hノ 3 T 3および脂肪前駆細胞に X線 (20Gy) を照射し た後、 1日培養後トリプシン処理を行いフィーダ一細胞とした。 ここに、 ヒト 角膜上皮細胞を 1 0 0 0 c e 1 1 s/d i s hの密度で播種した。 培養 14日 目にホルマリン固定を行いローダミン B染色を行った。 NIHZ3T3フィー ダ一と比較し、 脂肪前駆脂肪フィーダ一では大きいコロニーが観察された (図 4B)。 - 次に、 これらの細胞のコロニ一形成率、 平均コロニー面積および皿全体に対 するコロニー占有面積率を調べた。
NIH/3T3フィ一ダ一および脂肪前駆細胞フィーダ一にて培養を行つたコロニ —のうち、 直径 5匪以上のものをコロニーとし、 目視にてコロニ一数をカウン 卜した。 播種数 (lOOOcells).を分母としコロニ一数を分子としてコロニー形 成率を算出した。 コ ΰニー形成率では、 ΝΙΗΖ3Τ3フィーダ一の方が脂肪 前駆細胞フィーダ一のおよそ 2倍の形成率であった (図 4C)。
平均コロニー面積は以下のようにして調べた。 N IH/3T3フィーダ一お よび脂肪前駆細胞フィーダ一にて培養を行ったコロニーのサイズを N I H i ma g eを用いて測定した。 平均コロニーサイズは、 脂肪フィーダ一の方が N I H/3T3と比較しおよそ 2. 4倍であった (図 4D)。
皿全体に対するコロニー占有面積率は以下のようにして調べた。 皿面積に対 するコロニーの占有面積の割合 (全コロニー面積 Z皿面積) を算出した。 個々 のコロニーの大きさは、 脂肪前駆細胞フィーダ一の方が大きいため、 d i sh に対するコロニー占有面積率は N IH/3T3フィーダ一と比較し、 脂肪前駆 細胞フィーダ一の方がおよそ 1. 5倍、 高い値を示した (図 4E)。
(実施例 7:フィーダ一細胞システムの調製)
次に、 実施例 1で調製された細胞をフィーダ一細胞とするシステムを構築す る。 この細胞を、温度応答性皿を用いて、その上にフィーダ一細胞を播種した。 このフィーダ一システムを用いて再生を行つた。 温度応答性培養皿の準備は以 下のようにして行う。 温度応答性インテリジェントポリマ一 (N-イソピルアル クリアミド) を、 電子線照射を用いて培養皿に共有結合で固定化する。 本実施 例では、 株式会社セルシード (ht tp://www. cel l seed. com/;東京、 日本) から 入手した。 このようにして、 本発明のフィーダ一細胞システムを構築すること ができることがわかる。 (実施例 8 :角膜上皮幹細胞の分化)
実施例 7で調製したシステムを用いて、 角膜上皮幹細胞を 3 7 °Cで 2週間培 養した。 培養液は、 実施例 6に使用したものと同じ組成のものを使用した。 そ の模式図を図 1に示す。 ここでは、 温度感受性培養皿を例示として用いている が、 本発明の実施においては、 そのような皿を使用しなくても実施することが できることが理解される。
まず 3 T 3細胞および実施例 1で調製した細胞にマイトマイシン処理して増 殖活性を消失させて、 温度応答性ィンテリジェントポリマーをコ一トした培養 皿に播種し培養した。 '
つぎに採取した角膜輪部片、 口腔粘膜片にデイスパーゼを作用させて、 上皮 層を基底膜から剥離する。 ついで、 トリプシン · EDTA液 (C 1 o n t e c h) で細胞層をバラパラにして 1つの細胞にした。
これを、 マイトマイシン処理 3 T 3細胞 (2 1 0 4細胞ノ111 1 ) またはマイ トマイシン処理した実施例 1で調製した細胞 (2 X 1 0 4細胞/ m l ) を播種し た温度応答性ィンテリジェントポリマーをコ一トした培養皿に播種した ( 1 X 1 0 5細胞 Zm 1 )。 採取 ί孝から培養過程はすべてクリーンベンチ内で清潔操作 にて行う。 培養は一貫した清潔環境で行った。
培養開始後 7日および 10日後のシート形成を確認した。 その結果、 本実施 例 1で調製した細胞は、 3 T 3細胞と同様に、 ゥサギ幹細胞をシート状に再生 させるフィーダ一効果を有することが明らかになった。 (実施例 9 :ヒト角膜上皮幹細胞の分化)
次に、 実施例 8と同様の実験系を用いて、 ヒト幹細胞が実際に再生されるか どうかを確認した。 まず、 ヒトからの細胞採取の方法を以下に示す。
ドナ一角膜あるいはホスト健常眼 (片眼性疾患の場合).の角膜上皮の幹細胞 を角膜輪部より採取した。 この場合、 角膜中心部から離れた角膜輪部の lmm 径の 1断片のみを採取するので、 たとえ l i v i ng— r e l a t e d ドナ 一眼またはホスト健常眼から採取しても、 その傷害は瘢痕をのこすことなく治 癒し、 視力には影響を与えない。 術後には治療用コンタクトレンズを装用させ るので、 創傷治癒も早く、 痛みも軽度である。 術後の痛みに対して、 鎮痛剤と 抗生物質、 消炎剤で対処する。 この患者は、 早期に創傷治癒したことが確認さ れた。 なお、 患者に対しては、 予め、 組織採取の部位や大きさ、 術後の痛みに ついて十分に説明し、 同意を得ておいた。
実施例 8と同様に、 3 T 3細胞および実施例 1で調製した細胞にマイトマィ シン処理して増殖活性を消失させて、 温度応答性ィンテリジェントポリマーを コー卜した培養皿に播種し培養した。
つぎに採取した角膜輪部片、 口腔粘膜片にデイスパ一ゼを作用させて、 上皮 層を基底膜から剥離する。 ついで、 トリブシン · EDTA液 (C 1 o n t e c h) で細胞層をバラパラにして 1つの細胞にした。
これを、 マイトマイシン処理 3T3細胞 (2X 104細胞 Zml) またはマイ トマイシン処理した実施例 1で調製した細胞 (2 X 104細胞/ ml) を播種し た温度応答性インテリジ: iントポリマ一をコートした培養皿に播種した (I X 105細胞 _/m 1 )。 採取後から培養過程はすべてクリーンベンチ内で清潔操作
にて行った。 培養は一貫した清潔環境で行った。 本実施例において培養液は、 実施例 6に使用したものと同じ組成のものを使用し、 培養液ならびに培養液に 添加するゥシ血清はプリオンフリーのォ一ストラリァ産のトレィサピリティの あるもの (ハナネスコバイオ、 東京から入手) を使用した。
― 培養開始後 7日および 1 0日後のシート形成を確認した。 その結果を、 図 5 に示す。 図 5から明らかなように、 ヒト角膜上皮細胞が角膜細胞様に分化して いることが明らかになった。 その分化の様子は、 3 T 3もヒト線維芽細胞もそ れほど差異がなく、 ヒト線維芽細胞初代培養細胞のフィ ダー効果は、 十分に あることが明らかになった。 従って、 本発明の細胞は、 3 T 3細胞と同様に、 ヒト角膜の幹細胞をシート状に再生させる場合もフィーダ一効果を有する.こと が明らかになった。 その結果を、 図 6に示す。 X線処理を行った N I HZ 3 T 3および脂肪前駆 細胞をフィーダ一とし、 ヒト角膜上皮細胞の培養を行った。 3 5 mmM (N I P A Am) に 1 X 1 0 5細胞 Z皿の密度で角膜上皮細胞を播種し、 培養 1 4日目 に剥離し角膜上皮細胞シートを得た。
脂肪前駆細胞フィーダ一を用いて培養を行った角膜上皮細胞は、 敷居石状に 配列しており、 N I HZ 3 T 3フィーダ一で培養を行つた角膜上皮細胞と比較 しても遜色ないものであった。
このシートの組織染色を行った。 細胞における支持体の定着 ·消長を観察す るために、 へマトキシリン,ェォジン (H E ) 染色は以下の通り行った。 その 手順は以下のとおりである。 必要に応じて脱パラフィン (例えば、 純エタノー ルにて)、 水洗を行い、 ォムニのへマトキシリンでサンプルを 1 0分浸した。 そ の後流水水洗し、 アンモニア水で色出しを 3 0秒間行った。 その後、 流水水洗 を 5分行い、 塩酸ェォジ: 1 0倍希釈液で 2分間染色し、 脱水し、 透徹し、 封 入する。
(実施例 1 0 :ヒト口腔上皮幹細胞の分化)
次に、 口腔粘膜細胞を用いた場合も同様にシート状に再生されることを確認 する。
- ドナー口腔粘膜あるいはホスト健常口腔粘膜の口腔粘膜上皮の幹細胞を口腔 粘膜より採取する。 頰粘膜から、 3〜 5 mm径の 1断片のみを採取する。 口腔 粘膜は再生能力が高いのでその傷害は瘢痕をのこすことなく治癒し、 口腔の機 能には影響を与えない。 口腔は治癒が速い組織であることから、 創傷治癒も早 く、 痛みも軽度である。 ホストからの口腔粘膜の採取であるが、 術後の痛みに 対して、 鎮痛剤と抗生物質、 消炎剤で対処する。 通常早期に創傷治癒する。 な お、 患者に対しては、 予め、 組織採取の部位や大きさ、 術後の痛みについて十 分に説明し、 同意を得ておく。
これ以外の手順は実施例 9に従って、 行う。 その結果、 従って、 本発明の細 胞は、 3 T 3細胞と同様に、 ヒト口腔粘膜細胞の幹細胞をシート状に再生させ る場合もフィーダ一効果を有することが明らかになる。
(実施例 1 1 :ゥサギ角膜上皮幹細胞の分化組織の移植)
次に、 実施例 8で調製したシートをゥサギに移植する。 ここでは、 分化細胞 の集合物を実際の角膜に移植して生着するかどうかを確認する。
実施例 8のとおりに組織シートを 2週間かけて調製した後に、 培養角膜上皮 を使用する前に、 血清を含まない液で洗浄した後に移植を行う。 移植直前に細 菌、 真菌培養検査を行って、 細菌、 真菌の汚染がないことを確認した後で使用 する。 また、 ドナー角膜 1つで複数の患者に使用してもよい。
2週間後、 シート状になった細胞集合物を分離した分離は、 温度を下げるこ とによって行う。 生着は 週間ごとに観察する。 炎症、 石灰化、 免疫反応など がないかを確認する。 その結果、 細胞集合物は、 一定期間経た後も顕著な有害
作用なしに生着しているが確認される。
(実施例 1 2 :ヒトでの再生治療ーヒト角膜上皮幹細胞の分化組織の移植) 実施例 9で調製したシートをヒト患者に移植する。 ここでは、 分化細胞の集 合物を実際の角膜に移植して生着するかどうかを確認する。 なお、 患者に対し ては、 予め、 処置の方法、 術後の痛み、 可能性のある副作用について十分に説 明し、 同意を得ておく。
人体の実験の際は、 少なくとも以下の点に留意する。
( 1 ) 局所麻酔あるいは全身麻酔下で行う。
( 2 ) 角膜 ·結膜の瘢痕性組織を可能な限り除去した後、 培養上皮シートを 移植する。
( 3 )術前 ·術後管理は角膜移植に準じる (角膜移植ガイダンス、 坪田ら著、 南江堂一適応から術後管理まで、 2 0 0 2を参照)。
実施例 9のとおりに組織シートを 2週間かけて調製した後に、 培養角膜上皮 を使用する前に、 血清を含まない液で洗浄した後に移植を行う。 移植直前に細 菌、 真菌培養検査を行って、 細菌、 真菌の汚染がないことを確認した後で使用 する。 また、 ドナー角膜 1つで複数の患者に使用してもよいが本実施例ではま ず片眼で行う。
2週間後、 シート状になった細胞集合物を分離した分離は、 温度を下げるこ とによって行う。 生着は 1週間ごとに観察する。 炎症、 石灰化、 免疫反応など がないかを確認する。 その結果、 細胞集合物は、 一定期間経た後も顕著な有害 作用なしに生着しているが確認される。
(実施例 1 3 :ヒ卜での再生治療ーヒ卜口腔膜上皮幹細胞の分化組織の移植) 次に、 同意を得た患者力)ら、 口腔粘膜上皮幹細胞を採取し、 実施例 1 0と同 様の処置を行った。 すると、 シート状の移植物が調製された。 そのシート状の
移植物をヒト被検体移植すると、 口腔粘膜幹細胞由来のシートであっても充分 機能する移植物ができることが確認された。
次に、 実施例 1 2と同様に、 ヒト角膜へ移植した。
対象とした患者は以下の通りである。 以下の実験では、 フィーダ一細胞とし て 3 T 3細胞を用いたものが示される。
表:手術の対象となった患者
シルマ一試験 (局麻なし) は、 5mmX 35mmの Wh a tma n濾紙に、 5分間辺縁を浸すことにより得られる水分を測定することによつて得られた。 5mm以下は、 分泌が損傷されていることを示す。
シルマ一試験 (鼻腔刺激) は、 鼻腔を綿のスヮブで刺激することによって同 様の水分量を測定した。 1,0 mm以下は、 涙腺量の現象を示す。
図 7B〜Hには、 シートの染色図を示す。
図 7 Bは、 採取した細胞シートが 3〜 5層の細胞層が形成されることを H & E染色にて確認したものを示す。
図 7 Cは、 もとの口腔粘膜の H&E染色図であり、 細胞シートとは全く異な ることが分かる。
図 7Dは、 正常な角膜上皮細胞を示す。 細胞シートは、 この角膜上皮細胞に 類似している。
図 7Eは、 本発明において使用される細胞シートの先端表面における微絨毛 の発達を顕微鏡写真に下物を示す。
図 7 Fは、 本発明において使用される細胞シートを抗ケラチン 3抗体で免疫 染色した (緑) 図を示す。
図 7Gは、 本発明において使用される細胞シートを抗 i31インテグリン抗体 で免疫染色した (緑) 図を示す。 : , 図 7Hは、 本発明 おいて使用される細胞シートを抗 P 63抗体で免疫染色 した (緑) 図を示す。
免疫染色は、 抗ケラチン 3抗体 (AE 5、 P r og e n B i o t e c hn i k)、 抗 i31インテグリン抗体 (P 5D 2、 S a n t a C ru z B i o t e c hn o 1 o gy)、および抗 p 63抗体(4A4、 S an t' a C r u z B i o t e c hno l ogy) を用いた。 これらとともに、 フルォレセィニソチ オシァネート標識されているか、 またはローダミン標識された二次抗体をも用 ,こ J a c k s on I mmu noRe s e a r c L abo r a t o r e i s;)。 核は、 Ho e c h s t 33342 (Mo l e c u l a r P r ob e s) またはプロピジゥムョ一ジド (S i gma)) を用いて染色した。
染色した細胞は、 共焦点顕微鏡 (LSM— 510, Z e i s s) を用いて観 察した。 ネガティブコント,ロールとしては、 非特異的な I gG (同一濃度) の 物を用い、 ネイティブのヒト角膜および辺縁組織ポジティブコントロールとし
て用いた。
手術は、 結膜および結膜下の瘢痕組織を辺縁の外側 3 mmまで角膜から取り 除き、 角膜間質を暴露させることによって開始した。 ついで、 調製した細胞シ ートを、 暴露した角膜部分においた。 縫合は必要なかった。 その様子を、 図 7 Iに示す。 図 7 I _ Aは、 角膜表面全体を示す。 血管新生が結膜に見られる。 図 7 I— Bは、 角膜上の結膜組織を示す。 再暴露して角膜間質が表面に見えて いる。 図 7 I— Cは、 細胞シートを、 ド一ナツ型サボ一夕一を用いて採取する 様子を示す。 図 7 I—Dは、 この細胞シートを角膜間質に配置したところであ る。 図 7 I— Eは、 細胞シートが数分間で接着し、 その後サポーターをはずし たところを示す。図 7 I— Fは、細胞シートが角膜間質に定着した様子を示す。 術後、 局所抗生物質処理(0 . 3 %オフロキサシン) およびステロイド (0 . 1 %ベタメタゾン) を用いて処置した (最初は 1日 4回、 ついで 1日 3回)。 最 初の一週間は、 ベ夕メタゾンを経口投与した。 術後 1力月後で、 局所コルチコ ステロイドの投与は、 ベタメ夕ゾン (0 . 1 %) からフルォロメタロン (0 . 1 % ) に交換した。 ドライアイの症状が出ていたからである。 人工涙液も必要 に応じて使用した。
術後の各患者の目の様子は、 図 7 J— 1〜図 7 J— 4に示す。 各数字は、 上 記表における患者番号に一致する。 左は術前を示し。 右は術後を示す。
術前と術後の視力回復について、 以下の表にまとめた。
表:患者の術前および術後経過
角膜混濁は、 0を明澄として、 1を中程度の混濁、 2を中程度の混濁に加え て虹彩が部分的に遮蔽されている、 3を重篤に混濁、 眼内構造が遮蔽されてい る様子を示す。
視力は、視力表を読めない場合、指の数を数えさせることによって測定した。 指の数を数えられなければ、 手の動きを読ませることによって測定した。 視力 は、 最高に矯正できた視力を示す。 上記の表のように、 本実施例において、 本発明の移植片¾用いて角膜治療を 行い、 視力回復を行うことができたことが確認された。 このように、 口腔膜上皮幹細胞を分化させた細胞集合物もまた、 一定期間経 た後も顕著な有害作用なしに生着しているが確認された。 (実施例 1 4:脂肪由来細胞をフィーダ一細胞として用いた場合の角膜移植) 同様のプロトコ一ルにおいて、 脂肪細胞由来の細胞をフィーダ一細胞に用い た場合にも同様の移植片の定着および視力回復が行われることを確認する。
実施例 1〜 3のように調製した脂肪組織由来の細胞を、 フィーダ一細胞とし て用いる。 実施例 5に記載されるように、 口腔粘膜幹細胞を調製し、 この細胞 を上記フィーダ一細胞と共培養する。
共培養する場合、 実施例 7に記載される細胞システムを用いる。 分化は、 実 施例 1 0に記載されるように刺激する。
このようにして調製される細胞シートを、 実施例 1 3に記載されるプロトコ —ルに基づいて角膜への移植実験を行う。
その結果、 本発明の脂肪組織由来細胞をフィーダ一細胞として用いた場合、 角膜への移植が首尾よく行われ、 3 T 3細胞を用いた場合よりも、 拒絶反応の 可能性が低くなるなどの効果が確認される。
(実施例 1 5 :角膜以外の処置法—表皮)
X 本発明のフィーダ一細胞が角膜と同様に表皮の培養に用いることができるこ とを確認する。 通常のプロトコールで培養される他家移植片である既に市販さ れている表皮シートであっても、 自家の脂肪組織由来の線維芽細胞と共培養あ るいは付着することができることを確認する。
表皮を、 当該分野において公知の方法を利用して採取する。 具体的には予め 同意を得ておいたヒト患者から皮膚を採取する。 この皮膚から、 実施例 9また は 1 0に記載の手順に順じて幹細胞を調製する。 この幹細胞を、 実施例 9また は 1 0と同様の手法を用いて、 本発明の細胞のフィーダ一効果を確認する。 幹 細胞を角膜と同様の手法を用いて温度応答皿を用いてシート化する。 すると、 シート化が角膜同様に行われることが確認される。
(実施例 1 6 :胚性幹細胞での効果)
次に、 本発明のフィーダ一細胞が胚性幹細胞でもフィーダ一効果を発揮する ことができることを確認する。 胚性幹細胞は、 幹細胞 ·クローン 研究プロト
コール 中辻編、 羊土社 (2 0 0 1 ) に記載されるような手法を用いて調製す る。 この胚性幹細胞を、 実施例 9または 1 0に記載の手順を用いて、 本発明の 細胞のフィーダ一効果を確認する。 分化因子を用いない場合は、 増幅 (未分化 状態を保ったまま維持および増殖させる) 効果を奏することが企図される。 所 _ 望の分化因子とともに胚性幹細胞を用いる場合、 種々の臓器への分化が促進さ れることも確認することができる。
胚性幹細胞を用いる場合、 あらかじめレシピエントの脂肪組織幹細胞から採 取した本細胞と E S細胞を共培養しておけば、 E S細胞から作られた臓器或い は組織に対して、 レシピエントは免疫拒絶反応を起こさない可能性が高まる。 再生医療のみならず今後予想される、 細胞あるいは細胞から分化させた臓器の 移植医療に、 免疫寛容性を与える可能性がある。
(実施例 1 7 :共移植での効果)
次に、本発明のフィーダ一細胞と、幹細胞とをともに体内に移植した場合の、 フィーダ一効果を確認する。
上述の実施例において、 表皮系などの幹細胞シートなどを生体に移植するに 際し、 本フィーダ一細胞を抗生物質または放射線照射で失活させることなく同 時に移植することができる。 このような処置方法により、 生体内において増殖 因子分泌作用や補強機能が期待される。 本発明の方法では、 自己組織を用いる ことができることから、 拒絶反応などの副反応が大幅に減少されると同時に、 再生効果は従来以上に向上することが分かる。
(実施例 1 8 : ヒト組織での効果:ヒトケラチノサイトに対する本発明のフ ィーダー細胞のフィーダ一効果)
ヒトケラチノサイトに対して、 本発明の脂肪組織由来細胞がフィーダ一効果 を有するかどうかを確認した。 ヒトケラチノサイトコロニーアツセィは以下の
ようにして行った。 フィーダ一細胞は、 実施例 7に示されるようにシステムを 構築して使用した。
1«[//3丁3ぉょび脂肪前駆細胞に 線 (20Gy) を照射した後、 1日 培養後トリプシン処理を行いフィーダ一細胞とした。 ここに、 ヒトケラチノサ イトを 1 X 104細胞 Z皿の密度で播種した。培養 14日目にホルマリン固定を 行いローダミン B染色を行った (図 8)。 ケラチノサイトにおいても脂肪前駆細 胞はフィーダ一効果を示し、 角膜上皮細胞以外にも上皮系細胞のフィーダ一細 胞として働くことが可能であることが明らかになった。 (実施例 19 :血管内皮細胞に対する本発明のフィーダ一効果)
次に、 血管内皮細胞に対する本発明のフィーダ一効果を確認した。 フィーダ —細胞は、 実施例 7に示されるようにシステムを構築して使用した。 使用した キットは、 Angiogenesis kit (Kurabo, Tokyo, Japan)である。
—ヒト脂肪前駆細胞が血管形成を促進するようなフィーダー細胞となるかを確 認するために、 脂肪前駆細胞の培養上清を 3次元でのヒト血管内皮細胞と繊維 芽細胞の共培養系 (Kurabo)に添加したところ、 内皮細胞の培養上清に比較して 管腔形成能は有意に亢進した (図 9)。 また、 同様に内皮細胞の遊走能に関して も検討したところ、 脂肪前駆細胞の培養上清は内皮細胞の培'養上清に比較して 有意に亢進させた (図 9)。 つまりヒト血管内皮細胞に置いても脂肪前駆細胞は フィ一ダー効果を示すことが明らかになつた。
(実施例 20 :骨髄由来間葉系幹細胞に対する本発明のフィーダ一細胞のフ ィ一ダ一効果)
次に、 脂肪前駆細胞のヒト血管内皮細胞に対するフィーダ一効果を確認した。 培養液 (10%FCS+D,MEM) のみと培養液に加えてマウス脂肪前駆細胞 をフィ一ダー細胞とした条件で比較した。 マウス骨髄より H i s t op a qu
e (密度勾配遠心分離法) にて骨髄単核球を分離し両者に播種した。 培養 7日 目に浮遊細胞を分離し、 メイギムザ染色を行なった。 結果は、 図 1 0に示す。 骨髄単核球に置いても脂肪前駆細胞はフィーダ一効果を示すことが明らかにな つ 7こ。 以上のように、 本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、 本発明は、 この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。 本発明は、 特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解され る。 当業者は、 本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、 本発明の記載 および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解され る。 本明細書において引用した特許、 特許出願および文献は、 その内容自体が 具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参 考として援用されるべきであることが理解される。 産業上の利用可能性
本発明は、 再生医療において、 多大な有用性を有する。 好ましい実施形態で は特に、 ヒト細胞をフィーダ一として使用することが本発明において初めて達 成されたことから、 その有用性は高い。 また、 脂肪組織と う豊富な資源を用 いることから、 供給源に関する懸念は払拭された。 その意味でその有用性は高 いといえる。 したがって、 本発明は、 再生医療およびその治療用医薬などを製 造する業において利用可能性がある。