明 細 書 テトラヒドロ葉酸合成酵素遺伝子 <技術分野〉
本発明は、 テトラヒドロ葉酸合成酵素遺伝子、 該遺伝子に係る DNA、 該 DN Aがコードする蛋白質に関する。 また、 該 DNAを含有する DNA、 該 DNAの 相捕鎖、 該遺伝子に係る D N Aの部分塩基配列で表される D N Aおよぴ該 D N A の相補鎖のうちすくなくともいずれか 1つにハイブリダィズする DN Aに関する。 さらに、 該遺伝子に係る DN Aを含有する組換えベクター、 該ベクターを含有す る形質転換体、 該形質転換体を用いた該蛋白質の製造方法、 該蛋白質に対する抗 体に関する。 また、 該蛋白質が有する細胞増殖促進活性を阻害する化合物の同定 方法に関する。 さらに、 ある組織が大腸癌由来組織であるか否かを判定する方法 に関する。 また、 該蛋白質の阻害剤を含んでなる癌の防止剤およびノまたは治療 剤に関する。 さらに、 該遺伝子に係る DNAを含有する DNA、 該 DNAの相補 鎖、 該遺伝子に係る D N Aの部分塩基配列で表される D N Aおよび該 D N Aの相 補鎖のうちすくなくともいずれか 1つにハイプリダイズする DNAおよび/また は該抗体を含有する大腸癌の判定キットに関する。 く背景技術 >
テトラヒ ドロ葉酸合成酵素 (以後、 C 1一 THFSという) は、 様々な代謝反 応に必要な C 1基を供与するテトラヒ ドロ葉酸誘導体を合成する酵素である (非 特許文献 1、 以後、 テトラヒ ドロ葉酸を TFとテトラヒドロ葉酸誘導体を TF誘 導体という)。 具体的には TF誘導体は、 プリン、 チミジル酸、 ヒスチジンおょぴ パントテン酸等の生合成反応に C 1基を供与する。 すなわち TFおよび TF誘導 体は、 核酸代謝おょぴアミノ酸代謝等に深く関与している。 そのため TFおよび TF誘導体は、 細胞分裂が盛んな組織に多くみられ、 細胞増殖おょぴ成長に不可 欠である。
C 1ーTHF Sは、 3種の機能を有するトリ酵素である。 具体的には、 C 1一 THF Sは、 1 0—ホルミルテトラヒ ドロ葉酸合成酵素 (1 0— f o rmy l— THF s y n t h e t a s e, EC 6. 3. 4. 3)、 5, 10—メテニノレテ トラヒドロ葉酸シク口ヒドロラーゼ ( 5 , 1 0 -me t h e n y 1—THF c y c l o h y r o l a s e, EC 3. 5. 4. 9) および 5、 1 0—メチレン テトラヒドロ葉酸デヒ ドロゲナーゼ(5, 1 0— me t h y 1 e n e—THF d e hy d r o g e n a s e, EC 1. 5. 1. 5) の機能を有する。 C 1一 T HF Sは、 これらの機能を発揮することにより、 様々な代謝反応に必要な TF誘 導体の合成を促進する。
C I— THF Sは、 ヒ ト、 マウス、 酵母等の真核生物、 大腸菌等の原核生物な ど様々な生物種を対象に、 その解析が進められている (非特許文献 2— 5)。酵母 については、 その細胞質おょぴミ トコンドリアに存在し機能する C 1 -THF S の存在が知られている。 また、 ヒ トについては、 その細胞の細胞質に存在し機能 する C 1一 THF Sが知られている。
し力 し、 ヒ トについてその細胞のミ トコンドリアに存在し機能する C 1—TH F Sは知られておらず、 唯一、 非特許文献 1 9の報告があるのみである。 また大 腸癌組織において正常大腸組織と比較し発現が亢進するヒ ト C 1一 THF S遺伝 子も知られていない。 以下に、 本明細書で引用した文献を列記する。 非特許文献 1
ハム(Hum DW) ら、 「ザ ジャーナル ォブ バイオロジカノレ ケミス トリ (Th e J o u r n a l o f B i o l o g i c a l Ch em i s t r y)」、 1 988年、 第 263卷、 第 3 1号、 p. 1 5946— 1 5950。 非特許文献 2
スタベン (S t a b e n, C) ら、 「ザ ジャーナノレ ォプ パイォロジカノレ
ケミストリ (Th e J o u r n a l o f B i o l o g i c a l C h e m i s t r y)j 1 984年、 第 261卷、 p. 4629— 4637。 非特許文献 3
シャノン (S h a n n o n, K. W. ) ら、 「ザ ジャーナル ォブ バイオ ロジカノレ ケミストリ (Th e J o u r n a l o f B i o l o g i c a l Ch em i s t r y )J, 1 986年、第 26 1卷、 p. 1 226 6— 1 2271。 非特許文献 4
シグペン (Th i g p e n、 A. E.) ら、 「ザ ジャーナル ォブ バイオ ロジカル ケミストリ (Th e J o u r n a l o f B i o l o g i c a l Ch em i s t r y)」、 1 990年、 第 265卷、 p. 7907— 79 1 3。 非特許文献 5
デブ (D e v, I . K.) ら、 「ザ ジャーナル ォブ バイオロジカル ケ
^ストリ (Th e J o u r n a l o f B i o l o g i c a l C h e m i s t r y)」、 1 978年、 第 253巻、 p. 4245— 4253。 非特許文献 6
ラジら(R a j SKら) 「バイオケミストリ アンド モレキユラ バイオ ロジ ィンターナショナノレ (B i o c h em i s t r y a n d m o 1 e c u 1 a r b i o l o g y i n t e r n a t i o n a l )」、 第 44卷、 第 1号、 p . 89— 95。 非特許文献 Ί
フローマンら (F r o hma n M. A. e t a 1.) 「プロシーディング ス ォブ ザ ナショナル アカデミー ォプ サイェンシズ ォブ ザ ュナ ィテッド ステーッ ォブ アメリカ (P r o c e e d i n g s o f Th e
N a t i o n a l A c a d e my o f S c i e n c e s o f Th e Un i t e d S t a t e s o f Ame r i c a)」、 1 9 88年、 第 85巻、 第 23号、 p. 8998— 9002。 非特許文献 8
「プロシーディングス ォブ ザ ナショナル アカデミー ォブ サイエ ンシズ ォプ ザ ュナイテツド ステーッ ォプ アメリカ (P r o c e e d i n g s o r Th e Na t i o n a l Ac a d emy o f S c i e n c e s o f Th e Un i t e d S t a t e s o f Am e r i c a )J, 1 977年、 第 74巻、 p. 5463— 546 7。 非特許文献 9
「メソッズ イン ェンザィモ口ジー (Me t h o d s i n En z ym o l o g y)」、 1 980年、 第 65、 p. 499—。 非特許文献 10
クラロス (C 1 a r o s MG) ら、 ョ一口ビアン ジャーナル ォブ バイ オケ ストリ (Eu r o p e a n J o u r n a l o f B i o c h em i s t r y)、 1 996年、 第 24 1卷、 第 3号、 p. 779— 786。 非特許文献 1 1
キム (K i m P J ) ら、 「ランセット (L a n c e t)j
2003年、 第 362卷、 p. 205— 209。 非特許文献 1 2
ギルズ (R.H. Giles) ら、 「バイオシミカ イ ト バイオフイジ力 ァクタ ^B i o c h i m i c a e t B i o p h y s i c a A c t a ) J, 2003 年、 第 1 653卷、 p. 1— 24。
非特許文献 1 3
ヘイ (He TC) ら、 「サイエンス (S c i e n c e)」、 1 998年、 第 1 28巻、 p. 1 509— 1 5 1 5。 非特許文献 14
レベンス (L e v e n s DL)、 「ジーンズ アンド デベロップメント (G e n e s a n d D e v e 1 o p m e n t )」, 2003年、第 1 7号、 p . 1 07 1— 1 077。 非特許文献 1 5
ガロウ (G a r r o w TA) ら、 「ザ ジャーナル ォブ バイオロジカル ケミストリ (Th e J o u r n a l o f B i o l o g i c a l Ch em i s t r y)」、 1 993年、 第 268卷、 p. 1 1 9 10— 1 1 9 1 6。 非特許文献 1 6
ニキフオロフ(N i k i f o r o v MA) ら、 「モレキュラー アンド セ ノレラー ノ ィォロジー (Mo l e c u l a r a n d C e l l u l a r B i o l o g y)」、 2002年、 第 22卷、 p. 5793— 5800。 非特許文献 1 7
タブチジアン (T a v t i g i a n S V) ら、 「モレキュラー バイオ口 ジー オフ サ セル (Mo l e c u l a r B i o l o g y a o f t h e C e l l)」、 1994年、 第 5卷、 p. 375— 388。 非特許文献 1 8
ビラ一(V i l i a r E) 「ザ ジャーナル ォプ バイオロジカル ケミス トリ (Th e J o u r n a l o f B i o l o g i c a l Ch em i s t
r y)」, 1 985年、 第 260巻、 第 4号、 p. 2245— 2252 非特許文献 1 9
プラサンナン (P r a s a nn a n P) ら、 「ザ ジャーナル ォブ ノ ィ ォロジカノレ ケミストリ (Th e J o u r n a l o f B i o l o g i c a 1 C h e m i s t r y)」、 2003年、 第 278卷、 第 44号、 p. 43 1 7 8— 43 1 87。 非特許文献 20
杉浦ら、 「パイォケミカル アンド パイオフイジカル リサーチ コミュ
-ケーシヨンス (B i o c h em B i o p h y s R e s C o mm u n . ) 2004年、 第 31 5巻、 第 1号、 p. 204- 2 1 1)
<発明の開示 >
本発明が解決しょうとする課題は、 新規 C 1一 THF S遺伝子に係る DNAお よび該 DNAがコードする蛋白質を見出して提供することである。 さらに、 該遺 伝子に係る DNAを含有する DNA、 該 DNAの相補鎖、 該遺伝子に係る DNA の部分塩基配列で表される DN Aおよぴ該 DN Aの相補鎖のうちすくなくともい ずれか 1つにハイプリダイズする DN Aを提供することも課題に含まれる。また、 該遺伝子に係る DN Aを含有する組換えベクター、 該組換えベクターを用いて形 質転換させてなる形質転換体、 該蛋白質に対する抗体、 該蛋白質の製造方法およ ぴ該蛋白質の細胞増殖促進活性を阻害する化合物の同定方法を提供することも課 題に含まれる。 さらに、 該遺伝子に係る DNAを含有する DNA、 該 DNAの相 補鎖、 該遺伝子に係る D N Aの部分塩基配列で表される D N Aおよぴ該 D N Aの 相補鎖のうちすくなくともいずれか 1つにハイブリダィズする DNAおよびノま たは該抗体を含有する大腸癌の判定キットおよびある組織が大腸癌由来組織であ るか否かを判定する方法を提供することも課題に含まれる。 また、 大腸癌の防止 剤および/ "または治療剤を提供することも課題に含まれる。
本発明者らは上記課題のために鋭意努力し、 新規 C 1一 THF S遺伝子を見 出し、 該遺伝子に係る DNAを用いて新規 C 1一 THF Sを取得することに成功 した。そして、該 DNAの塩基配列を解析することにより、該 C 1—THF Sが、 細胞質からミ トコンドリアに移行し、 ミ トコンドリアにおいて機能することを見 出した。 また、 該 C 1一 THF Sが細胞増殖促進活性を有することを実証した。 さらに、 該 C 1一 THF S遺伝子の発現が、 大腸癌組織において正常大腸組織と 比較し有意に亢進することを実証して、 本発明を完成させた。
すなわち、 本発明は、 以下の態様を含む。
(1) 以下の (a)、 (b) のいずれかの DNA:
(a) 配列表の配列番号 1に記載の塩基配列の 94番目から 2934番目の塩基 配列で表される DNA、
(b) 配列表の配列番号 1に記載の塩基配列で表される DNA。
( 2 ) 配列表の配列番号 1に記載の塩基配列の 94番目から 29 34番目の 塩基配列を含み、 かつ、 10—ホルミルテトラヒ ドロ葉酸合成酵素活性、 5, 1 0—メテュルテトラヒドロ葉酸シクロヒ ドロラーゼ活性おょぴ 5、 1 0—メチレ ンテトラヒ ドロ葉酸デヒドロゲナーゼ活性の 3つの活性、 および/または、 細胞 増殖促進活性を有する蛋白質をコードする DNA。
(3) 配列表の配列番号 1に記載の塩基配列で表される DNAである、 (2) に記載の DNA。
(4) (1) から (3) のいずれかに記載の DNAの DNA配列において
1ないし複数の DNAの欠失、 置換、 付加された塩基配列を有し、 かつ細胞増殖 促進活性を有する蛋白質をコードする DNA。
(5) (1) から (4) のいずれか 1項に記載の DNAを含有する DNA、 該 DNAの相補鎖、 (1) から (4) のいずれか 1項に記載の DN Aの部分塩基配 列で表される DNAおよぴ該 DNAの相補鎖のうちすくなくともいずれか 1つに ス トリンジェントな条件でハイプリダイズする D N A。
(6) 以下の群より選ばれる DNAであって、 (1) から (4) のいずれか 1項に記載の DNAを含有する DNA、 該 DNAの相補鎖、 (1) から (4) のい
ずれか 1項に記載の DNAの部分塩基配列で表される DNAおよぴ該 D N Aの相 補鎖のうちすくなくともいずれか 1つを増幅するためのプライマーおよび Zまた は検出するためのプローブである (5) に記載の DNA ;
( i ) 配列表の配列番号 3に記載の塩基配列で表される DNA、
( i i ) 配列表の配列番号 4に記載の塩基配列で表される DNA、
( i i i) 配列表の配列番号 5に記載の塩基配列で表される DNA
および
( i v) 配列表の配列番号 6に記載の塩基配列で表される DNA。
(7) (1) から (4) のいずれか 1項に記載の DNAを含有する組換え ベクター。
(8) プラスミ ド F ERM B P— 84 1 9号。
(9) (7) に記載の組換えベクターまたは (8) に記載のプラスミ ドに より形質転換された形質転換体。
(1 0) 以下の(a)から(b)のいずれかの蛋白質。
(a)配列表の配列番号 2に記載のアミノ酸配列の 32番目から 9 78番目のァ ミノ酸配列で表される蛋白質。
(b)配列表の配列番号 2に記載のァミノ酸配列で表される蛋白質。
(1 1) (4) に記載の DNAがコードする蛋白質。
(1 2) (7) に記載の組換えベクターまたは (8) に記載のプラスミ ド により形質転換された形質転換体を培養する工程を含む、 (10) または (1 1) に記載の蛋白質の製造方法。
(1 3) (1 0) または (1 1) に記載の蛋白質または該蛋白質の断片を 抗原とする抗体。
(14) (1 0) または (1 1) に記載の蛋白質が有する細胞増殖促進活 性を阻害する化合物の同定方法であって、 ある化合物と (1 0) または (1 1) に記載の蛋白質との相互作用を可能にする条件下で、 細胞増殖促進活性の存在、 非存在または変化を検出することにより、 該化合物が (10) または (1 1) に 記載の蛋白質の細胞増殖促進活性を阻害するか否かを判定することを特徴とする
同定方法。
(1 5) (1 0) または (1 1) に記載の蛋白質が有する細胞増殖促進活 性を阻害する化合物の同定方法であって、 (1 0)または(1 1)に記載の蛋白質、 (1) から (4) のいずれか 1項に記載の DNA、 (5) または (6) に記載の D NA、 (7) に記載の組換えベクターまたは (8) に記載のプラスミ ド、 (9) に 記載の形質転換体および (1 3) に記載の抗体のうちすくなくともいずれか 1つ を用いることを特@とする同定方法。
(1 6) ある組織が大腸癌由来組織であるか否かを判定する方法であって、 ある組織における (1) から (4) のいずれか 1項に記載の DNAの発現量を測 定することを特徴とする判定方法。
(1 7) (1 6) に記載の判定方法であって、 ある組織における (1) か ら (4) のいずれか 1項に記載の DNAの発現量が、 対照である正常大腸由来組 織における (1) から (4) のいずれか 1項に記載の DN Aの発現量の 3倍以上 である場合に、 ある組織が大腸癌由来組織であると判定することを特徴とする判 定方法。
(1 8) (1 7) に記載の判定方法であって、 ある組織における (1) か ら (4) のいずれか 1項に記載の DN Aの発現量を以下の工程により測定するこ とを特徴とする判定方法;
( i ) ある組織に含まれる RN Aを铸型に、 逆転写反応を行う工程、
( i i ) 逆転写反応により合成された c DNAを錶型に、 配列表の配列番号 5お ょぴ 6に記載の塩基配列で表される DNAをプライマーとして、 ポリメラーゼ連 鎖反応を行う工程おょぴ
( i i i) ポリメラーゼ連鎖反応により増幅された DNAの量を測定する工程。
(1 9) (5) または (6) に記載の DNAおよび (1 3) に記載の抗体 のうち少なくともいずれか 1つを含有することを特徴とする大腸癌の判定キット であって、 (1 6) から (1 8) のいずれか 1項に記載の判定方法に用いることを 特徴とする大腸癌の判定キット。
(20) (1 0) または (1 1) に記載の蛋白質の阻害剤を含んでなる大
腸癌の防止剤および または治療剤。 <図面の簡単な説明 >
図 1は、 本発明で提供される DNAに係る遺伝子の c D N Aおよぴ該遺伝子 がコードする蛋白質の一次構造を示す図である。 上段に cDNA、 下段に蛋白質 の一次構造を示す。
NDは N末端部分 DNAを、 NTは、 N末端欠損 DNAを、 S Pはターゲット 配列 (シグナルペプチド) を示す。
図 2は、 ヒ ト C I— THF S (Huma n C_ l t e r t a h y d r o f o l a t e s y n t h e t a s e )およぴ本発明で提供される D N Aに係る遺伝 子 (DKFZ P) の一次構造を示す。 D/C ドメインは、 5, 1 0—メテニル テトラヒ ドロ葉酸シクロヒ ドロラーゼおよび 5、 1 0—メチレンテトラヒ ドロ葉 酸デヒドロゲナーゼの酵素活性に対応する部分構造を意味する。 S ドメインは、 1 0—ホルミルテトラヒ ドロ葉酸合成酵素の酵素活性に対応する部分構造を意味 する。
図 3は、 p CMV— T a g 4 A— h C 1 Sの構造を示す図である。 図中、 B a mH I 687および Xh o I 3630は、 制限酵素 B a mH Iおよび Xh o I の認識部位を示す。 CMVプロモーターは、 サイトメガロウィルスプロモーター 領域、 Ne o r /K a n rは、 ネオマイシンおよびカナマイシン耐性遺伝子部 位を示す。 hC I Sは, 本発明で提供される DNAに係る遺伝子の揷入部位を示 す。
図 4は、 正常大腸細胞および大腸癌細胞内における本発明で提供される D N Aに係る遺伝子の発現量を示す写真である。 上段に本発明で提供される D N Aに 係る遺伝子の発現量、 下段に対照であるダリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素 遺伝子の発現量を示す。
1は大腸癌細胞 H C T 1 1 6、 2は大腸癌細胞 S W 6 20、 3は正常大腸細胞 CCD 841 C o Nを表す。 DKFZPは、 本発明で提供される遺伝子の発現量 を、 GAPDHは、 グリセリンアルデヒド三リン酸脱水素酵素の発現量を示す。
図 5は、 本発明で提供される DNAに係る遺伝子がコードする蛋白質の発現 を確認したウェスタンブロッテイングの結果の写真である。 図中、 l ys a t eは 293細胞の溶解溶液のサンプルであること、 I PPは 293細胞の溶解溶液中 で抗 F L AG抗体により免疫沈降させた後の沈降物のサンプルであることを示す。 一は、 遺伝子導入されない動物細胞由来のサンプル、 Eは、 p CMV— T a g 4 V e c t o rが導入された動物細胞由来のサンプル、 FLは、 本発明で提供さ れる DNAに係る遺伝子組換え p CMV-T a g 4 V e c t o rが導入された動 物細胞由来のサンプルを示す。
図 6は、 本発明で提供される DNAに係る遺伝子によりコードされる蛋白質 力 細胞増殖を促進することを示す写真である。 24 we l l p 1 a t e→l 0 cm p 1 a t eレーンは、 24穴のプレートに播種した 293細胞に本発明 で提供される DNAに係る遺伝子を導入後 10 c mプレートに播き直したサンプ ノレを示す。 1 2 we l l p 1 a t e→ 1 0 cm p l a t eレーンは、 1 2穴 のプレートに播種した 293細胞に本発明で提供される DN Aに係る遺伝子を導 入後 1 0 c mプレートに播き直したサンプルを示す。
DKF Z Pは、 本発明で提供される DNAに係る遺伝子組換え p CMV— T a g 4V e c t o rが導入された動物細胞の増殖を、 E m p t y Ve c t o rは、 p CMV-T a g 4Ve c t o rが導入された動物細胞の増殖を示す。
図 7は、 本発明で提供される DNAに係る遺伝子がコードする蛋白質の細胞 内局在を示す写真である。 図中、 Mは、 本発明で提供される DNAに係る遺伝子 を導入した 293細胞から単離したミ トコンドリア画分、 Cはその細胞質画分を 示す。 上段は抗 FLAGによるィムノブロッテイングの結果、 下段は抗ミ トコン ドリア HS P 70抗体による結果を示す。
図 8は、 既存の抗癌剤標的遺伝子と本発明で提供される D N Aに係る遺伝子 の発現パターンを比較した図である。 左図は本発明で提供される DNAに係る遺 伝子、 中図は DHFR遺伝子、 右図は TS遺伝子の発現パターンで、 それぞれ左 から正常大腸組織、大腸癌およぴ胸腺での発現強度が示されている。各ドットは、 各臓器サンプルでの強度を示し、 バーはそれらの平均値を示す。
図 9は、 ミ トコンドリア 1炭素単位代謝系活性化のカスケ一ド仮説を示す図 である。 j8カテニンの活性化に始まり、 段階を経て、 ミ トコンドリアの C 1単位 代謝の活性化が引き起こされることを示す。 <発明を実施するための最良の形態 >
本願明細書において、 「ス トリンジェントな条件下」 とは、 例えば、 6 X S S C、 0.5 %S D Sおよび 50 %ホルムァミ ドの溶液中で 42 °Cにて加温した後、 0. 1 X S S C、 0. 5 %SD Sの溶液中で 68 °Cにて洗浄する場合を意味する。 ハイプリダイゼーションは、モレキュラー ·クローニング、 ァ ·ラボラトリー ' マニュアル ( (Molecular clonings A Laboratory Manual Λ T. マ二ファイス (Τ. Maniatis) 他著、 コールド スプリング ハーバー ラボラトリー (Cold Spring Harbor Laboratory) 、 1989年発行) 等に記載されている方法に準じて行った場 合を意味する。
本願明細書において、 「相同性」 とは、例えば、 B LAS T (National Center for Biotechnology Information)を用いて計算される数値を意味する。
本願明細書において、 「組織」 とは 1以上の細胞を含んでいれば良く、 単一の 細胞も、 「組織」 の定義に含まれる。
(遺伝子の取得)
本遺伝子に係る DNAは、 自体公知の DNAクローユング方法、 RT— PCR 法 (非特許文献 6) および RACE法 (非特許文献 7) 等を利用して、 取得され 得る。 例えば、 RT— P CR法を用いる場合には、 まず本遺伝子に係る DN Aの 発現が確認されている適当な起源から全ての RNAを自体公知の R N A調整法を 利用して抽出する。本遺伝子は、ヒ ト大腸癌組織において正常大腸組織と比較し、 その発現が亢進していることより、 該起源としてヒト大腸癌組織が例示される。 次に、 抽出された RNAから、 自体公知の逆転写酵素反応を利用して c DNAを 合成する。逆転写酵素反応用のプライマーとしては、オリゴ(dT)プライマー、 ランダムプライマー等が例示できる。 これらのプライマーは、 常法に従って合成
により得ることができる。 合成された c DNAを、 c DNAの塩基配列に特有な プライマー (センスプライマーおょぴアンチセンスプライマーの 2種類のプライ マー) を用いて、 自体公知の P CR法を利用して増幅する。 PCR用のプライマ 一は、 c DNAの塩基配列情報に基づいて適宜設計でき、 常法に従って合成によ り得ることができる。 センスプライマーとしては、 配列表の配列番号 3に記載の DNA配列からなる DNAを例示することができる。 アンチセンスプライマーと しては、 配列表の配列番号 4に記載の D N A配列からなる D N Aを例示すること ができる。 増幅した cDNAの単離精製は、 常法により行うことができる。 例え ば、 ゲル電気泳動法により実施可能である。 増幅後、 単離精製された cDNAと して、 本遺伝子に係る DN Aを取得することができる。
取得された DN Aの塩基配列は、公知の方法を利用して決定することができる。 例えば、 ジデォキシ法(非特許文献 8 )、マクサム ·ギルバート法(非特許文献 9 ) を用いて塩基配列を決定することができる。 (遺伝子の機能)
本遺伝子は、 ORF 2934 b p、 978アミノ酸をコードする新規の遺伝子 であることが明らかとなった。 このうち、 1番目から 31番目のアミノ酸配列が ミ トコンドリアターゲット配列であり、 32番目から 978番目のァミノ酸配列 で表される蛋白質が成熟蛋白質である。
本遺伝子に係る DN Aの 5 末端部分の一部(以後、 N末端部分 DNAという) が欠落した DN A (以後、 N末端欠損 DNAという) の塩基配列は、 ヌクレオチ ドデータベース (DDB J/EMB L/G e n B a n k) に登録され、 公開され ている (図 1)。 N末端欠損 DNAは、既知のヒ ト C 1一 THF S遺伝子に係る D NAと、 塩基配列上において高い相同性を有することが分かっている (図 2)。
N末端欠損 DN Aと既知のヒ ト C 1— T H F S遺伝子に係る D N Aとのアミノ 酸配列上における相同性検索の結果、 N末端欠損 DNAは、 既知のヒ ト C I— T HF Sが有する 3種類の酵素活性に対応する既知ヒ ト C 1一 THF S遺伝子上の 部分配列のうち、 10—ホルミルテトラヒ ドロ葉酸合成酵素の酵素活性に対応す
る部分配列に対し 75. 7%程度の相同性を有し、 5, 1 0—メテニルテトラヒ ドロ葉酸シクロヒドロラーゼの酵素活性に対応する部分配列に対し 3 3. 2%程 度の相同性を有し、 5、 10—メチレンテトラヒ ドロ葉酸デヒドロゲナーゼの酵 素活性に対応する部分配列に対し 33. 2%程度の相同性を有することが、 明ら かとなつた。
また、 ヒ ト C 1一 THF Sオルソログが既に発見されている。 ヒト C 1一 TH F Sオルソログ遺伝子と既知のヒト C 1一 THF S遺伝子との塩基配列上におけ る相同性検索の結果、 ヒ ト C 1— THF Sオルソログ遺伝子は、 既知ヒ ト C 1— THF Sが有する 3種類の酵素活性に対応する部分配列のうち、 5, 10—メテ ニルテトラヒ ドロ葉酸シク口ヒドロラーゼの酵素活性に対応する部分配列および 5、 10—メチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼの酵素活性に対応する部 分配列への相同性と比較し、 10—ホルミルテトラヒドロ葉酸合成酵素の酵素活 性に対応する部分配列への相同性が高いことが分かっている。 さらに、 ヒ ト C 1 一 THF Sオルソログ遺伝子がコードする蛋白質は、 既知のヒ ト C 1—THF S が有する 3種類の酵素活性すベてを有していることも、 明らかとなっている。 すなわち、 5, 1 0—メテュルテトラヒドロ葉酸シクロヒ ドロラーゼの酵素活 性に対応する部分構造および 5、 10—メチレンテトラヒドロ葉酸デヒ ドロゲナ ーゼの酵素活性に対応する部分構造は、 1 0—ホルミルテトラヒドロ葉酸合成酵 素の酵素活性に対応する部分構造に比べ、 DNA変異等の原因によるアミノ酸配 列の変化に対し、 活性が失われにくい部分構造であると考えられている。
これらのことより、 本遺伝子に係る DNAがコードする蛋白質も、 C 1—TH F Sが有する 3種類の酵素活性すベてを有していると考えられる。 すなわち本遺 伝子に係る DNAがコードする蛋白質は、 ヒ ト C 1一 THF Sのアイソザィムで あると考えられる。
一方、 リボソームにおいて合成された蛋白質の中には、 N末端部分に特有のタ 一ゲット配列を有しているものがある。 それら蛋白質は、 ターゲット配列に応じ てゴルジ体、ミ トコンドリアなどの細胞小器官へ輸送されることがわかっている。 ミ トコンドリアへ輸送される全ての蛋白質が有するターゲット配列に、 アミノ酸
配列上のコンセンサスがあるということではない。 しかし、 ミ トコンドリアへ輸 送される全ての蛋白質が有するターゲット配列は、 共通して、 塩基性アミノ酸の 含有率が高く、 ターゲット配列全体は疎水的であることがわかっている (非特許 文献 10)。 そこで、本傾向を指標に、 アミノ酸配列が明らかな任意の蛋白質がミ トコンドリアへ輸送されるためのターゲット配列を有しているか否かを予測する ことは、 可能である。
N末端 DNAがコードするポリべプチドがターゲット配列を有するか否かを、 そのアミノ酸配列から予測した結果、 N末端 DNAがコードするポリべプチドは、 ターゲット配列を有していることが明らかとなった。 よって、 本遺伝子に係る D NAがコードする蛋白質は、 リボソームにおいて合成された後、 ミ トコンドリア へ輸送され、 さらにミ トコンドリアにおいてターゲット配列に係るペプチドが切 断され、 その結果、 ターゲット配列に係るペプチドが除かれたポリペプチドが成 熟蛋白質として機能すると考えられる。 下記実施例で示すように、 配列 2のアミ ノ酸配列の 1番目から 3 1番目のアミノ酸配列がミ トコンドリアターゲット配列 であることを確認している。
また、 本遺伝子に係る DNAをヒト胎児腎臓由来の細胞株にリボソームを用い て導入した結果、 導入しない場合と比較し、 細胞増殖が促進された。 本遺伝子に 係る DNAがコードする蛋白質が、 C 1 -THF Sの 3種類の酵素活性を有して いると予想されることから、 細胞増殖促進の結果は、 本遺伝子に係る DNAがコ ードする蛋白質が、 核酸合成に関与していると考えられる。
本遺伝子に係る DN Aは、 N末端欠損 DN Aと比較し、 N末端部分 DNA、 す なわち細胞質からミ トコンドリアへの移行のためのターゲット配列に係る DNA を含む DNAを有している。 このことは、 本遺伝子が、 既知の細胞質に存在し機 能しているヒ ト C 1一 THF Sをコードする遺伝子とは異なり、 ミ トコンドリア 局在性のヒ ト C 1一 THF Sをコードする遺伝子であることを意味している。 ま た、 正常大腸組織と比較し大腸癌組織において、 本遺伝子の発現が有意に亢進し ている。 以上のことから、 本発明は C 1一 THF Sの代謝反応のさらなる解明に 寄与するものである。 また、 本遺伝子は、 従来の C 1一 THF S遺伝子にはない
抗癌剤が標的とする蛋白質をコードする遺伝子として、 新たな抗癌剤の開発に寄 与することができる。
(DNA)
本発明に係る DN Aは、 配列表の配列番号 1に記載の塩基配列の 94番目か ら 2934番目の塩基配列を含む DN Aであり、 好ましくは、 配列表の配列番号 1に記載の塩基配列の 94番目から 2934番目の塩基配列で表される DNA、 また、 配列表の配列番号 1に記載の塩基配列で表される DNAである。
また、 本発明に係る D N Aには、 配列表の配列番号 1の塩基配列の 94番目 から 2934番目の塩基配列を含み、 かつ、 1 0—ホルミルテトラヒドロ葉酸合 成酵素活性、 5, 1 0—メテニルテトラヒドロ葉酸シクロヒ ドロラーゼ活性およ ぴ 5、 1 0—メチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ活性の 3つの活性、 お ょぴ または、 細胞増殖促進活性を有する蛋白質をコードする DNAも含まれ、 好ましくは、 配列表の配列番号 1に記載の塩基配列の 94番目から 2934番目 の塩基配列で表される DNA、 また、 配列表の配列番号 1に記載の塩基配列で表 される DNAである。
さらに、 本発明に係る DNAには、 上記 DNAの DNA配列において 1ないし 複数の DNAの欠失、 置換、 付加などの変異あるいは誘発変異などを有し、 かつ 細胞増殖促進活性を有する蛋白質をコードする DNAも含まれる。 該 DNAは、 天然に存在するものであってよく、 また天然由来の遺伝子に基づいて変異を導入 して得た DNAであってもよい。 変異を導入する手段は自体公知であり、 ェキソ ヌクレアーゼを用いた欠失変異体の作製法、 部位特異的突然変異誘発法などが挙 げられる。
「1ないし複数」 とは、 一般には、 1個から 20個、 好ましくは、 1個から 1 0個、 さらに好ましくは、 1個から数個である。 数個とは、 一般には 1個から 5 個、 好ましくは、 1個から 3個、 さらに好ましくは、 1個から 2個である。
本明細書において、 上記 DNAを本遺伝子に係る DNAという。
また、 本発明に係る DNAには、 本遺伝子に係る DNAを含有する DNA、 該
D N Aの相補鎖、 本遺伝子に係る D N Aの部分塩基配列で表される D N Aおよび 該 DN Aの相補鎖のうちすくなくともいずれか 1つにストリンジヱントな条件で ハイブリダィズする DN Aも含まれる。 該 DNAは、 その最小単位として好まし くは 5個以上のヌクレオチド、 より好ましくは 1 0個以上のヌクレオチド、 きら に好ましくは 20個以上のヌクレオチドからなる DNAである。 該 DNAは、 本 発明に係る D N Aに固有な塩基配列領域を有することが好ましい。 該 D N Aは、 該 DNAの塩基配列情報に基づいて、 自体公知の化学合成方法 (参照: ジーン (Gene), 第60(1)巻、 第 115- 127頁(1987) ) を利用して製造可能である。 該 DN Aは、 本遺伝子に係る D N Aを増幅するためのプライマーまたは本遺伝子に係る DNAの検出用プローブなどに用いられる。
本遺伝子に係る DNAを含有する DNAとしては、 本遺伝子に係る DNAの N 末端および/または C末端に付加配列を有する D N Aが挙げられる。 かかる D N Aがコードする蛋白質が細胞増殖活性および/または前期 3種の酵素活性を有す る限りにおいて付加配列は限定されない。
また、 本発明に係る DN Aには、 本遺伝子に係る DNAを含有する DNA、 該 D N Aの相補鎖、 本遺伝子に係る D N Aの部分塩基配列で表される D N Aおよび 該 DN Aの相補鎖のうちすくなくともいずれか 1つを増幅するためのプライマー および Zまたは検出するためのプローブである DN Aも含まれる。 該 DNAは、 本遺伝子の取得、 本遺伝子の転写物量の測定などに用いられる。 例えば、 該 DN Aは、 配列表の配列番号 3から 6のいずれか 1つに記載の塩基配列からなる DN Aである。 例えば、 配列表の配列番号 3および 4に記載の塩基配列からなる DN Aは、 本遺伝子に係る DN Aの取得の際、 本遺伝子に係る DN Aを含有する DN Aおよぴ該 DNAの相補鎖を増幅するためのプライマーとして用いられる。 例え ば、 配列表の配列番号 5および 6に記載の塩基配列からなる DNAは、 本遺伝子 に係る DN Aの断片おょぴ該断片 DN Aの相補鎖を増幅するためのプライマーな らびに本遺伝子に係る D N Aおよび該 D N Aの相補鎖を検出するためのプローブ として用いられる。
本明細書において、 上記 DNAのうち本遺伝子に係る DN Aを除く DNAを本
遺伝子等にハイプリダイズする DNAという。 (蛋白質)
本発明の一つの態様は、 配列表の配列番号 2に記載のアミノ酸配列の 32番目 から 9 78番目のアミノ酸配列で表される蛋白質、 または、 配列表の配列番号 2 に記載のアミノ酸配列で表される蛋白質である。 さらに、 本発明に係る蛋白質に は、 本遺伝子に係る DNAがコードする蛋白質、 例えば、 配列表の配列番号 1に 記載の塩基配列で表される D N Aの D N A配列において 1ないし複数の D N Aの 欠失、 置換、 付加などの変異あるいは誘発変異を有する DNAがコードする蛋白 質であって、 細胞増殖促進活性を有する蛋白質も含まれる。
これらの蛋白質は、 その構成アミノ基もしくはカルボキシル基などを修飾する など、 機能の著しい変更を伴わない程度に改変が可能である。 例えば、 N末端や C末端に別の蛋白質等を、 直接的にまたはリンカ一蛋白質を介して間接的に遺伝 子工学的手法などを用いて付加することにより標識化した蛋白質も本発明に含ま れる。 付加される蛋白質等としては、 例えばダルタチオン S—トランスフェラ ーゼ、 β—ガラク トシダーゼ、 アルカリフォスファターゼなどの酵素類、 H i s — t a g、 My c— t a g、 HA— t a g、 FLAG- t a gなどのタグぺプチ ド類、 フルォレセインイソチオシァネート等の蛍光物質類等が例示できる。 これ ら蛋白質等の付加により、 本発明に係る蛋白質の精製、 検出を容易にすることが 可能となる。
本発明が提供する蛋白質は、 該蛋白質をコードする DN Aを遺伝子工学的手法 により発現させた細胞、 無細胞系合成産物、 化学合成産物、 または生体生物由来 の生物学的試料から調製したものであってよく、 これらからさらに精製されたも のであってよい。
本発明が提供する蛋白質は、 該蛋白質の活性を阻害する阻害剤のスクリーニン グに有用である。 例えば、 該蛋白質の活性として、 細胞増殖促進活性が挙げられ る。
本遺伝子を提供する本発明を完成させることにより、 本遺伝子に係る D N Aが
コードする蛋白質を、 その C 1 _THF S活性を保持したまま、 発現させること ができる。 また、 該蛋白質の精製、 該蛋白質を標的とした薬剤スクリーニングを 可能にすることができる。
一方、 本遺伝子に係る DN Aは、 N末端欠損 DN Aと比較し、 N末端部分 DN Aすなわち細胞質からミ トコンドリアへの移行のためのターゲット配列に係る D N Aおよぴ構造遺伝子に係 SDN Aの部分塩基配列で表される DNAを有してい る。 よって、 仮に N末端欠損 DN Aを用いて動物細胞等において強制的に該 DN Aを発現させた場合、 N末端欠損 D N Aは構造遺伝子にかかる D N Aを全て含ん でいないため、発現させた蛋白質が C 1一 THF S活性を示さないと考えられる。 また、 N末端欠損 DNAはミ トコンドリアへの移行のためのターゲット配列に係 る DNAを有していないため、 発現させた蛋白質が細胞質からミ トコンドリアへ 移行しそこで C 1—THF S活性を呈することも考えにくい。
(組換えベクター)
本発明は一つの態様として、 本遺伝子に係る DN Aを含有する組換えベクター を提供する。 組換えベクターは、 本遺伝子に係る DNA等を適当なベクター DN Aに揷入することによって得ることができる。
ベクター DN Aは、 導入する細胞の種類等により適宜選択される。 ベクター D NAは、 天然に存在するものを抽出したもののほか、 増殖に必要な部分以外の D N Aの部分が一部欠落したものでもよい。 例えば、 プラスミ ド、 パクテリアファ ージおよびウィルス由来のベクターが例示できる。 プラスミ ド DNAとしては、 大腸菌由来のプラスミ ド、 枯草菌由来のプラスミ ドおよび酵母由来のプラスミ ド が例示される。 バクテリアファージ DNAとしては、 λファージなどが例示され る。 ウィルス由来のベクター DNAとしては、 レトロウイルス、 ワクシニアウイ ルス、 アデノウイルス、 パポバウィルス、 S V40およぴパキュロウィルスなど が例示される。 その他、 トランスポゾン由来、 揷入エレメント由来のベクター D ΝΑなどが例示される。 あるいは、 これらを組合わせて作成されるベクター DN Α (コスミ ドなど) が例示される。 組換えベクターは、 目的の遺伝子配列と複製
そして制御に関する情報を担持した遺伝子配列、 例えば、 プロモーター、 リポソ ーム結合部位、 ターミネータ一、 シグナル配列、 ェンハンサー、 選択マーカー等 を構成要素とし、 これらを自体公知の方法に基づき組合わせて作製される。 選択 マーカーとしては、 アンピシリン耐性遺伝子、 ネオマイシン耐性遺伝子などが例 示できる。
ベクター DNAに目的の遺伝子を組み込む方法は、 自体公知の方法を適用でき る。例えば、適当な制限酵素を選択、処理して目的の遺伝子を特定部位で切断し、 次いで同様に処理したベクターとして用いる DNAと混合し、 リガーゼによって 再結合する方法が用いられる。 あるいは、 目的の遺伝子に適当なリンカ一をライ ゲーシヨンし、 これを目的に適したベクターのマノレチタローニングサイトへ揷入 することによつても、 所望のベクターが得られる。
後述の実施例に示す p CMV— T a g 4 A— h C 1 S (図 3) では、 ベクター DNAとして、 p CMV— T a g 4 ( S T R AT AG E N社製) を用いた。 p C MV— T a g 4 A— h C 1 Sは、 平成 1 5年 6月 25日に、 独立行政法人産業技 術総合研究所特許生物寄託センター(〒 305— 8566 茨城県つくば巿東 1丁 目 1番地 1 中央第 6)に受託番号 FERM BP— 84 1 9号として寄託されて いる。 プラスミ ド FERM B P— 841 9号も本発明に含まれる。
(形質転換体)
本発明は一つの態様において、 本発明に係る組換えベクターを、 宿主に導入し て得られる形質転換体を提供する。 ベクター DNAとして発現ベクターを使用す れば、 本発明に係る蛋白質を提供することが可能である。 該形質転換体には、 本 発明に係る D N A以外の所望の遺伝子を組み込んだべクタ一 DNAの 1つまたは 2つ以上をさらに導入することもできる。 宿主に導入するベクター DNAは、 1 種のベクターであってもよいし、 2種以上のベクター DNAでもあってもよい。 宿主としては、 原核生物およぴ真核生物のいずれをも用いることができる。 原 核生物としては、 大腸菌、 枯草菌等が例示できる。 真核生物としては酵母、 昆虫 細胞、 あるいはサル腎由来細胞、 チャイニーズハムスター卵巣細胞、 マウス L細
胞、 ラット G H 3細胞、 ヒ ト F L細胞、 2 9 3 E B N A細胞などの動物細胞が例 示できる。 好ましくは動物細胞を用いる。 より好ましくは、 ヒ ト細胞を用いる。 形質転換は、 自体公知の方法を利用して行うことができる。 好ましくは、 遺伝 子の安定性を考慮し、 宿主の染色体へのインテグレート法が挙げられるが、 簡便 には核外遺伝子を用いた自立複製系を利用する。 本発明が提供する D N Aの導入 は、 それ自体公知の方法を利用して行われる。 例えば、 リン酸カルシウム法、 ェ レク トポレーション法、 リポフエクション法が例示できるが、 これらの方法に限 定されない。 導入効率おょぴ簡便性の観点から、 好ましくはリポフエクシヨン法 が挙げられる。 なお、 後述の実施例では、 p C MV— T a g 4 A— h C 1 Sを 2 9 3細胞へリポフ クション法により導入し、 形質転換させた結果得られた形質 転換体を用いて、 本発明に係る蛋白質を発現させた。 2 9 3細胞は、 アデノウィ ルス 5型の癌遺伝子 E 1でトランスフォームされたヒ ト胎児腎細胞を意味する。
(蛋白質の製造方法)
本発明は一つの態様において、 本発明に係る形質転換体を培養する工程を含む 本発明に係る蛋白質の製造方法を提供する。 本発明に係る蛋白質の発現は、 無細 胞蛋白質発現系を用いて行うことができる。 その他、 大腸菌、 酵母、 枯草菌、 昆 虫細胞、 動物細胞等の自体公知の宿主を利用した遺伝子組換え技術を用いて、 本 発明に係る蛋白質を発現させることができる。 例えば、 本発明に係る形質転換体 を培養し、 次いで培養で得られる培養物から目的とする蛋白質を回収することに より、 本発明に係る蛋白質を製造することができる。 本発明に係る形質転換体の 培養は、 各々の宿主に最適な自体公知の培養条件および培養方法を利用して行う ことができる。 培養は、 形質転換体により発現される該蛋白質の細胞増殖促進活 性を指標にして実施することができる。 また、 該蛋白質が有する前記 3種類の酵 素活性を指標に実施することもできる。これらの酵素活性は、自体公知の方法(非 特許文献 1 8 ) を用いて測定可能である。 あるいは、 宿主中または宿主外に産生 された該蛋白質量を指標にしてもよい。 発現させた蛋白質は、 自体公知の精製方 法を利用して、 精製回収することができる。 例えば、 分子篩、 イオン交換クロマ
トグラフィー、 ァフィ二ティクロマトグラフィー等の組み合わせにより、 精製回 収することができる。 その他、 硫安、 アルコール等の分画手段によっても精製回 収することができる。 好ましくは、 本発明に係る蛋白質に対する抗体を作製し、 本発明に係る蛋白質の該抗体への特異的な吸着性を利用し、 精製回収することが できる。
(抗体)
本発明は一つの態様において、 本発明に係る蛋白質に対する抗体を提供する。 抗体は、 本発明に係る蛋白質またはその断片を抗原として用いて作製する。 抗原 は、 該蛋白質またはその断片でもよく、 少なくとも 8個、 好ましくは少なくとも 1 0個、 より好ましくは少なくとも 1 2個、 さらに好ましくは 1 5個以上のアミ ノ酸で構成される。 該蛋白質に特異的な抗体を作製するためには、 該蛋白質およ び/またはその断片に固有なアミノ酸配列からなる領域を用いることが好ましい。 この領域のアミノ酸配列は、 必ずしも本発明に係る蛋白質またはその断片に係る アミノ酸配列と同一または相同である必要がなく、 該蛋白質の立体構造上の外部 への露出部位であればよく、 露出部位のァミノ酸配列が一次構造上不連続であつ ても、 露出部位について連続的なアミノ酸配列であればよい。 抗体は、 免疫学的 に本発明が提供する蛋白質および/またはその断片を特異的に結合または認識す る限り特に限定されない。 この結合または認識の有無は、 公知の抗原抗体結合反 応を利用して決定できる。
抗体は、 自体公知の抗体作製方法を利用して、 産生される。 抗体を産生するた めには、 本発明が提供する蛋白質またはその断片を、 アジュバンドの存在または 非存在下で、 単独または担体に結合して動物に投与し、 動物に対して体液性応答 および/または細胞性応答等の免疫誘導を行う。 担体は、 自身が宿主に対して有 害作用を起こさず抗原性を増強せしめるものであれば特に限定されず、 例えばセ ルロース、重合アミノ酸、アルブミン等が例示される。免疫される動物としては、 マウス、 ラット、 ゥサギ、 ャギ、 馬等が好適に用いられる。 ポリクローナル抗体 は、 上記免疫手段を施された動物の血清から自体公知の抗体回収法を利用して取
得する。 好ましい抗体回収法としては、 免疫ァフィ二ティクロマトグラフィー法 が例示できる。
モノクローナル抗体を生産するためには、 上記免疫手段を施された動物から抗 体産生細胞 (例えば脾臓またはリンパ節由来のリンパ球) を回収し、 自体公知の 永久増殖性細胞への形質転換手段を導入することによって行われる。 例えば、 抗 体産生細胞と永久増殖性細胞とを自体公知の方法で融合させてハイプリ ドーマを 作成してこれをクローン化し、 本発明が提供する蛋白質でおよび/またはその断 片を特異的に認識する抗体を産生するハイプリ ドーマを選別し、 該ハイプリ ドー マの培養液から抗体を回収する。
かくして得られたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、 直接本発 明が提供する蛋白質の精製用抗体、 標識マーカー等として用いることができる。 また、 該ポリクローナル抗体または該モノクローナル抗体は、 直接本発明が提供 する蛋白質と結合し、 その活性を制御することができる。 よって、 本発明に係る 蛋白質の活性が関与する疾病の治療または および防止のために有用である。 例 えば、 ヒ ト正常大腸組織と比較してヒ ト大腸癌組織において、 本遺伝子に係る D N Aはその発現が亢進しているため、 該ポリクローナル抗体または該モノクロ一 ナル抗体は、 大腸癌の治療またはノおよび防止に有用である。 さらには該ポリク ローナル抗体または該モノクローナル抗体は、 該蛋白質の標識マーカーとして大 腸癌の診断手段を提供することもできる。
(化合物の同定方法)
本発明は一つの態様において、 本発明に係る蛋白質が有する細胞増殖促進活性 を阻害する化合物の同定方法を提供する。 該化合物の同定方法は、 本発明に係る 蛋白質、 本発明に係る D N A、 本発明に係る組換えベクターまたは本発明に係る プラスミ ド、 本発明に係る形質転換体および本発明に係る抗体のうちすくなくと もいずれか 1つを用いて、 自体公知の医薬品スクリーユングシステムを利用して 実施可能である。 本発明に係る同定方法により、 該蛋白質の立体構造に基づく ド ラッグデザィンによる拮抗剤の選別または該抗体を利用した抗体認識物質の選別
などが可能である。 該同定方法により同定された化合物は、 本発明に係る蛋白質 の活性が闋与する疾病の治療または/およぴ防止のために有用である。 ヒト正常 大腸組織と比較してヒ ト大腸癌組織において本遺伝子に係る D N Aはその発現が 亢進している。 よって、 該化合物は大腸癌の治療または/およぴ防止などに有用 である。
例えば、 本発明に係る蛋白質の細胞増殖促進活性を測定する実験系において、 該蛋白質と被検化合物の相互作用を可能にする条件下で、 該蛋白質と被検化合物 とを共存させて該活性を測定する。 ついで、 被検化合物の非共存下での測定結果 との比較における該活性の存在、 非存在または変化、 例えば低減、 增加、 消失、 出現などを検出することにより、 該蛋白質の該活性を阻害する化合物を同定可能 である。 活性の測定は、 活性の直接的な検出により行うこともできるし、 例えば 活性の指標となるシグナルを実験系に導入して該シグナルを検出することにより 実施可能である。 シグナルとして、 ダルタチオン S—トランスフェラーゼ、 H i s— t a g、 M y c— t a g、 H A— t a g、 F L A G— t a gなどのタグぺ プチド類等を用いることができる。
披検化合物を共存させた場合の該蛋白質の該活性を、 被検化合物を共存させな カつた場合の該蛋白質の該活性と比較することにより、 該披検化合物が該活性に 及ぼす効果を測定することができる。該披検化合物を共存させた場合の該活性が、 該披検化合物を共存させなかった場合の該蛋白質の該活性と比較して低減した場 合には、 該披検化合物には該蛋白質の活性を阻害する作用があると判定できる。 一例として、 本発明に係る蛋白質の細胞増殖促進活性を指標にして、 該活性に 影響を与え得る化合物を選別することができる。 該細胞増殖促進活性は、 本発明 に係る蛋白質が発現する細胞を培養し、 培養後に増殖した細胞数を計測すること で定量化が可能である。 細胞数は、 バイオレッド、 ニュートラルレッド等を用い て、 生細胞を染色することにより計測され得る。 また、 生細胞による放射標識さ れたチミジンの取り込みを指標に、 細胞数を計測することも可能である。
(大腸癌の判定方法)
また、 本発明は一つの態様において、 ある組織が大腸癌由来組織であるか否か を判定する方法であって、 ある組織における本遺伝子に係る D N Aの発現量を測 定することを特徴とする判定方法を提供する。 すなわち、 本遺伝子に係る DNA は、大腸癌組織において正常大腸組織と比較し、有意にその発現が亢進している。 よって、 本遺伝子に係る DNAの発現量を指標に、 ある組織が大腸癌由来組織で あるか否かを判定することが可能である。
披検試料としては、 本発明で提供される遺伝子および/またはその変異遺伝子 の核酸およぴ Zまたは核酸断片を含むものである限り制限されない。 例えば大腸 組織細胞、 大腸組織生検などの生体生物由来の生物学的試料を披検試料として例 示できる。 該核酸として、 本遺伝子に係る DNAを含有する DNA, 該 DNAの 相補鎖、 本遺伝子に係る DNAの断片、 該断片 DNAの相補鎖およびこれら DN Aが転写されてなる RN Aなどが例示される。 披検試料は、 試料中に含まれる核 酸の検出を容易ならしめる種々の方法、 例えば変性、 制限消化、 電気泳動または ドットブロッテイングなどの方法を用いて調製され得る。
該核酸の検出および該核酸量の測定は、 自体公知の遺伝子検出方法および測定 方法を利用して行い得る。 該検出方法として、 例えば i n s i t uハイブリダ ィゼーション法、 ノザンブロット法などが例示される。 該測定方法として、 ノザ ンブロット法、 定量的 RT— P CR法おょぴ分光分析法などが例示される。 例え ば、次の工程により本遺伝子に係る DN Aの発現量を測定することが可能である。 ( i ) ある組織に含まれる RN Aを铸型に、逆転写反応を行う工程、 ( i i ) 逆転 写反応により合成された c D N Aを铸型に、 配列表の配列番号 5および 6に記載 の塩基配列で表される DN Aをプライマーとして、 ポリメラーゼ連鎖反応を行う 工程
および ( i i i ) ポリメラーゼ連鎖反応により増幅された DNAの量を測定する 工程。
該検出方法においては、 本発明に係る遺伝子またはその変異遺伝子の同定およ ぴ/または該遺伝子に係る D N Aの増幅の実施に、 本遺伝子に係る D N Aまたは
該 D N Aの相補鎖の断片であってプローブとしての性質を有するものまたはブラ イマ一としての性質を有するものが有用である。 プローブとしての性質を有する D N A断片とは、 本遺伝子に係る D N Aのみに特異的にハイプリダイゼーシヨン できる D N Aを意味する。 プライマーとしての性質を有するものは、 本遺伝子に 係る D N Aのみを特異的に増幅できる D N Aを意味する。 プローブまたはプライ マーとしては、 塩基配列長が一般的に 5ないし 5 0ヌクレオチド程度であるもの が好ましく、 1 0ないし 3 5ヌクレオチド程度であるものがより好ましく、 1 5 ないし 3 0ヌクレオチド程度であるものがさらに好ましい。 一般的に、 プローブ は標識されたものを用いるが、 非標識であってもよい。 適当な標識としては、 放 射性同位体、 ピオチン、蛍光物質、化学発光物質、酵素、抗体などが例示できる。 プローブを標識する方法は、 ニックトランスレーション、 ランダムプライミング またはキナーゼ処理を利用する方法などを例示することができる。 例えば、 該プ ローブおょぴ _ またはプライマーとして、 本発明に係るポリヌクレオチドが例示 される。
また、 上記同定方法における発現量は、 対照である正常大腸由来組織における 本遺伝子に係る D N Aの発現量と比較し、 2倍以上、 好ましくは 3倍以上、 より 好ましくは 4倍以上、 さらに好ましくは 8倍以上である場合に、 ある組織が大腸 癌由来組織であると判定することが可能である。 後述の実施例において、 大腸癌 細胞における該 D N Aの発現量は正常大腸細胞における該 D N Aの発現量のおよ そ 2 . 3 8倍であった。
(大腸癌の判定キット)
また、 本発明は一つの態様において、 本遺伝子等にハイプリダイズする D N A および本発明に係る抗体のうち少なくともいずれか 1つを含有することを特徴と する大腸癌の判定キットを提供する。 例えば、 ヒ ト大腸癌組織においてヒ ト正常 大腸組織と比較して本遺伝子に係る D N Aの発現の亢進が見られることから、 被 検組織における該 D N Aの発現産物を、 本発明に係る大腸癌の判定キットに含有 される D N Aをプローブとして用いることにより検出し、 該 D N Aの発現量を測
定することにより、 ある組織が大腸癌由来組織であるか否かを判定することが可 能である。 該判定キットには、 緩衝液、 塩、 安定化剤および/または防腐剤など の物質を含んでいてもよい。 なお、 製剤化にあたっては、 本遺伝子等にハイプリ ダイズする D N Aおよび該抗体の性質に応じた自体公知の製剤化手段を導入すれ ばよい。
(大腸癌の防止剤および Zまたは治療剤)
本発明は一つの態様において、 本発明に係る蛋白質の阻害剤を含んでなる大腸 癌の防止剤および zまたは治療剤を提供する。 本発明に係る蛋白質の阻害剤とし ては、 本発明に係る抗体おょぴ本発明に係る化合物の同定方法により同定された 化合物が例示される。 大腸癌細胞において本遺伝子にかかる D N Aの発現が正常 大腸細胞と比較し宂進しているため、 本発明に係る蛋白質の阻害剤は大腸癌の防 止および Zまたは治療に有用である。
医薬の製造には、 1種または 2種以上の医薬用担体を用いることが好ましい。 本発明に係る医薬製剤中に含まれる有効成分の量は、 広範囲から適宜選択される 力 S、 通常約 0 . 0 0 0 0 1〜 7 0重量%、 好ましくは 0 . 0 0 0 1〜5重量%の 範囲とするのが適当である。
医薬用担体としては、製剤の使用形態に応じて通常使用される充填剤、増量剤、 結合剤、 付湿剤、 崩壊剤、 表面活性剤、 滑沢剤などの希釈剤ゃ賦形剤などを例示 でき、 これらは得られる製剤の投与形態に応じて適宜選択される。
例えば、水、医薬に許容される有機溶媒、 コラーゲン、ポリビュルアルコール、 ポリビニルピロリ ドン、 カルポキシビュルポリマー、 アルギン酸ナトリゥム、 水 溶性デキストラン、 カルボキシメチルスターチナトリウム、 ぺクチン、 キサンタ ンガム、 アラビアゴム、 カゼイン、 ゼラチン、 寒天、 グリセリン、 プロピレング リコール、 ポリエチレングリコール、 ワセリン、 パラフィン、 ステアリルアルコ ール、 ステアリン酸、 ヒ ト血清アルブミン、 マンニトール、 ソルビトール、 ラタ トースなどが挙げられる。 これらは、 本発明に係る剤形に応じて適宜 1種類また は 2種類以上を組合せて使用される。
所望により、通常の製剤に使用され得る各種の成分、例えば安定化剤、殺菌剤、 緩衝剤、 等張化剤、 キレート剤、 p H調整剤、 界面活性剤などを適宜使用して調 整することもできる。
安定化剤としては、 例えばヒト血清アルブミンや通常の L一アミノ酸、 糖類、 セルロース誘導体などを例示でき、 これらは単独でまたは界面活性剤などと組合 せて使用できる。 特にこの組合せによれば、 有効成分の安定性をより向上させ得 る場合がある。 上記 L—アミノ酸は、 特に限定はなく、 例えばグリシン、 システ イン、 グルタミン酸などのいずれでもよい。 糖類も特に限定はなく、 例えばダル コース、 マンノース、 ガラクトース、 果糖などの単糖類、 マンニトール、 イノシ トール、 キシリ トールなどの糖アルコール、 ショ糖、 マルトース、 乳糖などの二 糖類、 デキス トラン、 ヒ ドロキシプロピルスターチ、 コンドロイチン酸、 ヒアル 口ン酸などの多糖類などおょぴそれらの誘導体などのいずれでもよい。 セルロー ス誘導体も特に限定はなく、 メチルセルロース、 ェチルセスロース、 ヒ ドロキシ ェチノレセノレロース、 ヒ ドロキシプロピノレセノレロース、 ヒ ドロキシプロピノレメチノレ セルロースなどのいずれでもよい。 界面活性剤も特に限定はなく、 イオン性およ ぴ非イオン性界面活性剤のいずれでも使用できる。 これには、 例えばポリオキシ エチレングリコーノレソノレビタンアルキルエステル系、 ポリォキシエチレンアルキ ルエーテル系、 ソルビタンモノァシルエステル系、 脂肪酸グリセリ ド系などが包 含される。
緩衝剤としては、 ホウ酸、 リン酸、 酢酸、 クェン酸、 ε—アミノカプロン酸、 グルタミン酸および/またはそれらに対応する塩 (例えばそれらのナトリゥム塩、 カリウム塩、 カルシウム塩、 マグネシウム塩などのアルカリ金属塩、 アルカリ土 類金属塩) などを例示できる。
等張化剤としては、 例えば塩化ナトリウム、 塩化カリウム、 糖類、 グリセリン などを例示できる。
キレート剤としては、例えばェデト酸ナトリゥム、クェン酸などを例示できる。 本発明に係る医薬および医薬組成物は、 溶液製剤として使用できる他に、 これ を凍結乾燥化し得る状態にした後、 用時、 水や生理的食塩水などを含む緩衝液な
どで溶解して適当な濃度に調整した後に使用することも可能である。 医薬組成物の用量範囲は特に限定されず、 本発明の医薬組成物の有効性、 投与 形態、 疾病の種類、 対象の性質 (体重、 年齢、 病状および他の医薬の使用有無等) および担当医師の判断により適宜選択することが望ましい。
一般的には適当な用量は、 例えば対象の体重 1 k gあたり約 0 . 0 1 μ g乃至 1 0 O m g程度、 好ましくは 0 . 1 μ gから l m g程度の範囲であることが好ま しい。 しかしながら、 当該分野においてよく知られた最適化のための一般的な常 套的実験を用いて、 これらの用量の変更を行うことができる. 上記投与量は、 1 日 1〜数回に分けて投与することができ、 数日または数週間に 1回の割合で間欠 的に投与しても良い.
処方は投与形態に適したものを選択すればよく、 該処方は当業者によく知られ たものを用いればよい。 また、 処方するときには、 これらを単独で使用してもよ く、あるいは治療に必要な他の化合物または医薬と共に使用してもよい。例えば、 他の抗腫瘍用医薬の有効成分等を配合してもよい。
投与形態は、 全身投与または局所投与のいずれも選択することができる。 この 場合、 疾患、 症状等に応じた適当な投与形態を選択する。 例えば、 通常の静脈内 投与、 動脈内投与のほか、 皮下、 皮内、 筋肉内等に投与することもできる。 大腸 癌組織に直接投与することもできる。
医薬形状は投与形態に応じて選択することができ、 遺伝子治療剤、 シクロデキ ストリン等の包接体、溶液剤、 けん濁剤、脂肪乳剤、散剤、軟膏剤、 クリーム剤、 経皮吸収剤、 経粘膜吸収剤丸剤、 錠剤、 カプセル剤、 顆粒剤、 細粒剤、 座剤、 吸 入剤、 点眼剤、 点耳剤等の作製も可能である。 しかし、 本発明の医薬の形態は、 これに限定されない。
製剤化にあたっては、 その形態に応じて適切な製剤用添加物を用いることがで き、 常法に従って製剤化することができる。
リボソーム化は、 例えばリン脂質を有機溶媒 (クロ口ホルム等) に溶解した溶 液に、 目的とする物質を溶媒に溶解した溶液を加えた後、 溶媒を留去し、 これに リン酸緩衝液を加え、 振とう、 超音波処理および遠心処理した後、 上清をろ過処
理して回収することにより行い得る。
シクロデキストリン包接化は、例えば目的とする物質を溶媒に溶解した溶液に、 シクロデキストリンを水等に加温溶解した溶液を加えた後、 冷却して析出した沈 殿をろ過し、 滅菌乾燥することにより行い得る。 このとき、 使用されるシクロデ キストリンは、 当該物質の大きさに応じて、 空隙直径の異なるシクロデキストリ ン (α、 β y型) を適宜選択すればよい。
注射用の溶液剤は、 塩溶液、 グルコース溶液、 または塩水とグルコース溶液の 混合物からなる担体を用いて調製可能である。
けん濁剤は、 水、 シユークロース、 ソルビトール、 フラクトース等の糖類、 ポ リエチレングリコール等のグリコール類、 油類を使用して製造できる。
脂肪乳剤化は、 例えば目的とする物質、 油成分 (大豆油、 ゴマ油、 オリープ油 等の植物油、 M C T等)、 乳化剤 (リン脂質等) 等を混合、 加熱して溶液とした後 に。 必要量の水を加え、 乳化機 (ホモジナイザー、 例えば高圧噴射型や超音波型 等) を用いて、 乳化 ·均質化処理して行い得る。 また、 これらを凍結乾燥化する ことも可能である。 なお、 脂肪乳剤化するとき、 乳化助剤を添加してもよく、 乳 化助剤としては、 例えばグリセリンや糠類 (例えばブトゥ糖、 ソルビトール、 果 糖等) が例示される。
散剤、 丸剤、 カプセル剤、 錠剤、 顆粒剤、 細粒剤、 点滴剤、 座剤、 吸入剤、 点 眼剤、 点耳剤、 軟膏剤、 クリーム剤、 経皮吸入剤、 経粘膜吸収剤等についても、 通常用いられる方法により調製可能である。 ぐ実施例 >
以下、 実施例により本発明についてさらに具体的に説明するが、 本発明は以下 の実施例に限定されるものではない。
(正常大腸細胞と比較し、大腸癌細胞において発現が亢進している遺伝子の同定) 正常細胞と比較し、 癌細胞において発現が亢進している遺伝子は、 バイオエタ スプレス (G e n e 1 o g i c社) のマイクロアレイデータベースを利用して、
同定された。 マイクロアレイデータベースには、 正常大腸組織細胞 1 1 7サンプ ル、 大腸癌細胞 77サンプルの各細胞内の発現プロファイルデータが含まれてい る。 発現プロファイルデータはァフィメ トリクスヒト遺伝子オリゴチップ HG— U 133を用いた各細胞内の発現データベースとして格納されている。 正常大腸 組織細胞内での発現量よりも大腸癌細胞内での発現量が多い遺伝子のうち、 ヌク レオチドデータベース (DDB J/EMB LZG e nB a n k) に遺伝子の全長 の塩基配列が登録されていない本発明で提供される DN Aに係る遺伝子を同定し た。 1 1 7サンプルの正常大腸組織細胞内における本発明で提供される DNAに 係る遺伝子の発現平均量に対する 77サンプルの大腸癌細胞内における本発明で 提供される DNAに係る遺伝子の発現平均量の比は、 約 2. 38となった。 有意 水準は、 0. 0000001未満であった。 本発明で提供される DNAに係る遺 伝子の発現量の比を他の癌細胞において同様に調査した結果、 乳癌の場合には約 1. 22 (有意水準 0. 00243)、 肺癌の場合には約 1. 52 (有意水準 0. 0000001未満)、 胃癌の場合には約 1. 98 (有意水準 0. 00003)、 膝癌の場合には約 1. 37 (有意水準 0. 0019) の発現量の比を示した。
(遺伝子の取得)
マイクロアレイデータベースのプローブ配列情報に相当する遺伝子として、 公 共ヌクレオチドデータベース (DDB J /EMB L/G e n B a n k) 中には、 本発明で提供される DNAに係る遺伝子の N末端欠損 DNAの塩基配列が登録さ れていた。 よって、 本発明で提供される DNAに係る遺伝子の N末端 DN Aの塩 基配列は、 不明であった。
そこで、 本発明で提供される DNAの全長配列を次のように決定した。 まず、 本発明で提供される DN Aの全長配列を推定した。 最初に、 N末端欠損 DNAの 5 '末端 30ポリヌクレオチドに係る塩基配列をクエリーとして、 ヌクレオチド データベース (DDB JZEMB L/G e n B a n k) に対し相同性検索を行つ た。 検索の結果、 ヒ トゲノム DN A断片 (ァクセッション番号、 AL 03508 6) と高い相同性を示した。 ヒ トゲノム DNA断片の塩基配列のうち、 N末端欠
損 D N Aの塩基配列と相同性を有する部分配列を除いて得られる塩基配列 (以後、 塩基配列 Aという) を対象として、 塩基配列 Aに含まれる開始コドンのうち最も 5 ' 末端に近く存在する開始コドンを同定し、 塩基配列 Aのうち該開始コドン以 降の部分配列 (以後、 推定 N末端塩基配列という) を同定した。 推定 N末端塩基 配列の配列長は、 1 83であり、 6 1アミノ酸をコードする部分配列であること が推定された。 さらに、 N末端欠損 DNAの塩基配列をアミノ酸配列に変換した ものをクエリーに、 ヌクレオチドデータベース (DDB J/EMB L/G e n B a n k) に対して相同性検索を行った。 その結果、 本発明で提供される DNAに 係る遺伝子のマゥスオルソログと推察される遺伝子に係る D N Aと高い相同性を 示した。 該 DNAの 5 '末端部分配列 (配列長 1 83) をアミノ酸配列に変換し たものと、 推定 N末端塩基配列をァミノ酸配列に変換したものとで相同性検索を 行ったところ、 良好な相同性 (56. 1 %) を示した。 よって、 推定 N末端塩基 配列は、 N末端部分 DN Aの塩基配列であることが推定された。
さらに、 本発明で提供される DNAに係る遺伝子の c DNAクローニングを行 つた。 センスプライマーとして配列表の配列番号 3に記載の塩基配列からなる D NAを、 アンチセンスセンスプライマーとして配列表の配列番号 4に記載の塩基 配列からなる DNAを使用した。铸型は、 QU I CK—C 1 o n e c DNA (C 1 o n t e c h社) を用い、 DNAポリメラーゼとして、 KOD— P 1 u s— D NA p o l yme r a s e (東洋紡社) を用いた。 PCR増幅反応は、 94 °C 2 分間、 94°C30秒、 68°C4分を 40サイクル行い、 続いて 68°C3分間処理 を行った。 得られた増幅産物を p CR 4 B 1 u n t一 TOPOVe c t o r (東 洋紡社) へライゲーシヨンした。 得られた組換えベクター (以後、 本発明で提供 される DN Aに係る遺伝子組換え p CR4 B 1 u n t一 TOPO V e c t o rという) に含まれる本遺伝子に係る DNAの塩基配列の決定は、 L o n g— R e a d T owe r (Am e r s h a m B i o s c i e n c e s个土) を用い飞 行った。 その結果、 本遺伝子にかかる DN Aの塩基配列は、 配列表の配列番号 1 に記載の塩基配列であることが判明した。
(正常大腸細胞およぴ大腸癌細胞内における発現量比較)
正常大腸細胞における本発明で提供される D N Aに係る遺伝子の転写産物量が、 大腸癌細胞における本発明で提供される DN Aに係る遺伝子の転写産物量よりも 少ないことを、 以下の手順で確認した。 まず、 大腸癌細胞 HCT 1 1 6及ぴ SW 6 20を大日本製薬より購入し、 両細胞を 1 0%ゥシ胎児血清 (F C S、 岩城硝 子社) を含む DMEM培地 (I n v i t r o g e n) で培養した。 一方、 正常大 月昜上皮細胞 C CD 8 4 1 C o Nを Am e r i c a n T i s s u e C 1 t u r e C o l l e c t ! o nより購入し、該細胞を A C L— 4無血清培地で培養した。 これらの細胞から、アイソゲン(日本ジーン社) を用いて、全 RNAを抽出した。 1 μ gの全 RNAから、 RNA P CR K i t (AMV社) V e r . 2. 1 (T AKARA社) を用いて 30°C 1 0分、 4 2°C3 0分、 9 9 °C 5分、 5 °C 5 分の条件の下、 逆転写反応を行った。 次に逆転写反応で得られた c DNAの P C R増幅反応を行った。 反応は、 得られた c DNAの 1Z 1 0が溶解している溶液 に、 配列表の配列番号 5に記載の塩基配列からなるプライマーおよび配列表の配 列番号 6に記載の塩基配列からなるプライマーを加えて、 Ad V a n t a g e p o l yme r a s e m i x (C l o n t e c h社)を用いて行った。反応条件は、 94 °C 1. 5分、 9 4°C3 0秒、 6 0°C3 0秒、 7 2 °C 1分を 3 0サイクル、 最 後に 7 2 °C 3分処理とした。 反応液を 1 %ァガロースゲルに供与し、 電気泳動を 行った。泳動後、ェチジゥムブ口マイド染色により、 P CR増幅産物を検出した。 対照として、グリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素の発現を、同様の方法で、 検出した。 その結果、 対照のグリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素の発現量に ついては、 正常大腸細胞およぴ大腸癌細胞間で有意な差異は認められなかった。 し力 し、 本発明で提供される DNAに係る遺伝子の発現量については、 大腸癌細 胞内における発現量が正常大腸細胞内における発現量よりも多いことが明らかと なった (図 4)。
(蛋白質の取得)
本遺伝子に係る D N Aを組み込んだ発現べクタ一を導入した動物細胞を培養す
ることにより、 本遺伝子がコードする蛋白質を発現させ、 その分子量を、 ウェス タンプロット法を用いて測定した。発現ベクターとして、 P CMV— T a g 4 V e c t o r (S t r a t a g e n e社) を使用した。 本発明で提供される DNA に係る遺伝子組換え p CR 4 B 1 u n t— TO P O V e c t o rを B a mH I および Xh o Iで切断し得られた DNAフラグメントと、 8 & 111111ぉょび ] o Iで切断された p CMV-T a g 4 Ve c t o rとを混合し、本遺伝子に係る DNA (以後、 hC I Sという) を組み込んだ発現ベクター (以後、 本発明で提 供される DNAに係る遺伝子組換え p CMV-T a g 4 Ve c t o rという)を 得た。 動物細胞には、 293細胞を用いた。 まず、 10% 〇3含有131^£]\1培 地 (I n v i t r o g e n社) で 293細胞をサブコンフルェント状態に至るま で、 培養した。 培養後、 培地をォプティ MEM I (I n V i t r o g e n社) に 交換した。交換後、 4 μ gの本発明で提供される DNAに係る遺伝子組換え p C MV-T a g 4 Ve c t o rを、 リポフエタ トアミンプラス ( I n v i t r o g e n社) を用い、 リボフヱクシヨン法により、 293細胞に導入した。 対照とし て本遺伝子が組み込まれていない p CMV— T a g 4 Ve c t o rを、リポフエ クトァミンプラス ( I n V i t r o g e n社) を用い、 リポフエクション法によ り、 293細胞に導入した。
導入時から 5時間経過後、遺伝子導入された細胞の培養液に 20% FCS含有 ォプティ MEM I培地を、培養液の最終血清濃度が 1 0%になるように、加えた。 更に翌日、遺伝子導入された細胞の培地を 10% F C S含有 DMEM培地に交換 した。遺伝子導入時から 48時間経過後、細胞を溶解するための溶液( 1 % トリ トン X、 5 OmM T r i s塩酸 pH 7.4、 300 mM Na C 1、 5 mM E DTA、 コンプリートプロテアーゼ阻害剤カクテル EDT Aフリー、 ロッシュ社) を加え、遺伝子導入された細胞を溶解した。氷冷下 30分間放置した後、溶液(以 後、 溶解後溶液という) を回収、 遠心処理 (1 5000回転、 1 5分間) した。 遠心処理後、上清に B SA処理 I gGァガロースゲル(シグマ) を加え、ー晚 4°C で放置した。 翌日、 上清に抗 F L A GM 2ァガロースゲル (シグマ社) を加え、 3. 5時間 4 °Cで抗原抗体反応させた後、洗浄液(0. 1% トリ トン X、 50 mM
T r i s塩酸 pH 7.4、 300 mM Na C 1、 5 mM EDTA) で 3回、 リン酸緩衝液で 1回洗浄した。 抗 F L A GM 2ァガロースゲルと結合した蛋白質 は、 1 0 % 2—メルカプトエタノール含有サンプル緩衝液で回収した。回収溶液 ならびに溶解後溶液を、 4一 20%SDSゲルに供与し、 電気泳動を行った。 泳 動後、 泳動産物を二トロセルロースフィルター (S c l e i c h e r a n d S h c u e 1 1社) へ転写した。 転写後、 B S Aブロッキングを行い、 抗 F LAG M2抗体 (シグマ社) および過酸化水素脱水素酵素で標識された抗マウス I g抗 体(Ame r s h a m社) と泳動産物を反応させ、 4-クロロ- 1 -ナフトールで発色 させた。 免疫沈降させずに溶解後溶液を直接用いた場合には、 本発明で提供され る蛋白質を検出することができなかった。 しかし、 抗 F LAGM2ァガロースゲ ルで免疫沈降させた場合には、 本発明で提供される蛋白質を、 検出できた。 検出 の結果、 本発明で提供される蛋白質の分子量は、 約 1 1 0 kD aであることが明 らかとなつた (図 5)。
(本発明で提供される D N Aに係る遺伝子がコードする蛋白質の細胞増殖促進 活性)
24および 1 2穴のプレート上に、 10% FC S含有 DMEM培地を用いて 2 93細胞を播種し、 サブコンフルェント状態になるまで培養を行った。 培養後、 0. 4 ^ g (24穴) あるいは 0. 7 g (1 2穴) の本発明で提供される DN Aに係る遺伝子組換え p CMV-T a g 4 Ve c t o rを、リポフエクトァミン プラス ( I n V i t r o g e n社) を用い、 29 3細胞へ導入した。 対照として 本発明で提供される DNAに係る遺伝子が組み込まれていない p CMV-T a g 4 Ve c t o rを、 リポフエクトァミンプラス ( I n v i t r o g e n社) を用 い、 293細胞へ導入した。 翌日、 細胞を 1 0%F C S含有 DMEM培地中、 1 0 c mプレートに卷きなおし、 G4 1 8 (P r ome g a社) を終濃度 lmgZ m 1 となるように、 追加した。 lmgZm 1濃度の G4 1 8 (P r ome g a社) を含んだ培地を 3ないし 4日ごとに交換し、 1 0— 14日間培養することにより コロニーを形成させた。形成したコロニーを 0. 2%クリスタルバイオレツトで染 色した。 その結果、 本発明で提供される DN Aに係る遺伝子を細胞に導入し、 強
制発現させると、 細胞増殖促進させることがわかった。 この結果は、 本発明で提 供される DNAに係る遺伝子がコードする蛋白質が、 細胞増殖促進活性を有する ことを示すものである (図 6)。 (本発明で提供される DNAに係る遺伝子がコードする蛋白質の細胞內局在性) 本発明で提供される D N Aに係る遺伝子がコードする蛋白質の細胞内での局在 を以下の手順で決定した。 1 0 c mプレートでサブコンフルェント状態の 293 細胞に前述の方法で、 本発明で提供される DNAに係る遺伝子組換えべクタ一、 p CMV— T a g 4、 を導入した。 48時間後、 細胞を 0. 5 m l のミ トコン ドリア単離緩衝液 (MI B; 200 mMマンニトール、 70 mM スクロース、 35mM 2-メルカプトエタノール、 5 mM EDTA、 50 mM リン酸力リウ ム、 コンプリートプロテアーゼ阻害剤カクテル EDTAフリー、 pH7. 3) 中 に回収した。 細胞をホモジナイザーで破碎懸濁した後、 600 g 4°Cで 2回遠 心沈殿を行った。 上清をさらに 1 5000 r pm 4°Cで 20 分間遠心した。 上清 (細胞質分画)、 沈殿 (ミ トコンドリア分画) おのおの、 最初の懸濁液の 1/ 5 相当量を抗 F LAG抗体を用いた前述のウェスタンプロッ ト、あるいは抗ミ ト コンドリア HS P 70抗体(1/500希釈、 A f f i n i t y B i o r e a g e n t) を用いたウェスタンプロットに供した。 本発明で提供される DN Aに係 る遺伝子がコードする蛋白質と思われるバンドはミ トコンドリア分画にだけ検出 され、 本遺伝子の配列分析から予測されたミ トコンドリア局在性を示した (図 7 上段) 。 また、 抗ミ トコンドリア HS P 70もミ トコンドリア分画にのみ検出さ れ、 分画実験操作の妥当性は証明された (図 7下段) 。
(本発明で提供される D N Aに係る遺伝子がコードする蛋白質のシグナルぺプチ ド切断部位)
前述の方法で、 本発明で提供される DNAに係る遺伝子がコードする蛋白質 を 293細胞で発現し、抗 F LAGM2ァガロースゲルにより精製し、 4— 20% SDSゲル電気泳動で分離した。 その後、 ゲル内の蛋白質を P VDF膜 (フアル
マシア) に転写し、 クマジー R 250液で染色した。 1 10 K d a付近のパンド で示され、 かつ本発明で提供される DNAに係る遺伝子がコードする蛋白質と考 えられる蛋白質の N末を東レリサーチセンターで決定した。 結果は S S GGGで あり、 予想通り、 ミ トコンドリアターゲット配列と考えられた位置 (配列表 2の 3 1番目 A l aと 32番目 S e rの間) で切断されていた。
(発現パターンに基づく、 DHFR、 TSなど既存の抗癌剤標的に対し、 本発明 で提供される D N Aに係る遺伝子の標的としての優位性)
既存の抗癌剤標的であるジヒドロ化葉酸還元化酵素 (DHFR:メ トトレキセー トの標的)、 チミジル酸合成酵素 (TS : 5—フルォロウリジンの標的) と本発明 で提供される DNAに係る遺伝子間で、 ヒト臓器における発現パターンをバイオ エクスプレスのマイクロアレイデータベースを用いて比較した (図 8) 。 正常大 腸組織と比べ、 大腸癌における発現強度は DHFR遺伝子で 1. 1倍、 TS遺伝 子で 1. 5倍の上昇であった。 一方、 本発明で提供される DNAに係る遺伝子は 前述の通り 2. 38倍発現が亢進していた。 さらに、 増殖細胞を多く抱える正常 組織、 胸腺に注目すると、 ここでの DHFR遺伝子の発現は、 正常大腸組織に対 し 2. 5倍という値であった。 同様に、 TS遺伝子の胸腺での発現は 5. 5倍の 値であった。 胸腺でこれらの遺伝子の発現が高いために、 これら遺伝子を標的と する抗癌剤、 メ トトレキセートゃ 5—フルォロウリジンの副作用が発現しやすく なっていると考えられる。 ところが、 本発明で提供される DNAに係る遺伝子の 発現は、 胸腺でも正常大腸組織での 1. 4倍という値であった。 このように、 本 発明で提供される D N Aに係る遺伝子は癌組織で発現が宂進している上に、 通常 増殖に関与する遺伝子 (例えば DHFRや TS遺伝子) の発現が上昇する、 胸腺 のような組織においても、 顕著な高発現がみられない。 従って、 本発明で提供さ れる DNAに係る遺伝子は、 ここで比較した他の 2種の抗癌剤標的よりも、 副作 用の少ない抗がん剤の提供などの点において有利な抗癌剤標的とみなせる。
(大腸癌の発癌過程における、 Wn t経路を通したミ トコンドリアでの C 1代謝
の活性化と本発明の遺伝子の有用性)
大腸癌の場合、 ポリープ状の前がん状態から Pカテニンによる遺伝子発現撹乱 により癌状態へ移行することで発癌すると考えられている (非特許文献 1 1)。 w n t遺伝子シグナル経路の活性化を引き起こす変異、 換言すれば APC遺伝子を 不活性化する、 あるいは カテニンを活性化するような変異は、 βカテニンの核 内蓄積をもたらし、ひいては i3カテユンと転写因子 T c f /LEFの複合体を形成 させる。 約 90%の大腸癌で Wn t遺伝子シグナル経路の活性化を引き起こす変 異がみられることが知られている (非特許文献 1 2)。 この (8カテニン経路の標的 遺伝子のひとつとして c—my c癌遺伝子が存在する (非特許文献 1 3)。 my c は細胞増殖、 分化、 アポトーシスに関わる重要な転写因子であるが (非特許文献 14)、詳細なメカニズムは未だ詳らかではない。 最近、 ミ トコンドリアセリンヒ ドロキシメチルトランスフェラーゼ (m t SHMT) が my cの標的遺伝子であ ることが明らかとなってきたが (非特許文献 1 5、 1 6)、 この遺伝子産物はセリ ンとテトラヒ ドロ葉酸からグリシンと 5, 1 0メチレンテトラ葉酸を合成する反 応およびその逆反応を触媒し、 C 1-THF Sとともに 1炭素単位代謝に関わって いる。 また、 他の研究において、 マウスで c—my cが転写を引き起こす遺伝子 として U0666 5というクローンが同定されてきたが (非特許文献 1 7) 、 こ の遺伝子は、 本発明で提供される DNAに係る遺伝子のマウスオルソログの一部 であることが発明者の分析により明らかとなった。 こういつた事実を総合的に考 えてみると、 ミ トコンドリアという同じ細胞内部位で、 しかも一つの代謝経路中 で協力している遺伝子群が、 協調的な遺伝子の制御下にあると考えるのはたいへ ん理にかなつたことといえる。 そこで、 発明者は、 Wn tシグナル経路が活性化 することでミ トコンドリアの炭素単位代謝が活性化される現象が大腸癌の発癌過 程で重要な役目を担っていると考えている (図 9) 。 本発明で提供される DNA に係る遺伝子はこの過程の根幹をなす遺伝子といえ、 それゆえ、 抗癌剤標的とな りうる (非特許文献 20) 。 本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、 本発明の精神と範
囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にと つて明らかである。
本出願は、 2003年 9月 30日出願の日本特許出願(特願 2003- 341245) に基づく ものであり、 その内容はここに参照として取り込まれる。
<産業上の利用可能性 >
本発明は、 癌細胞において正常細胞と比較し発現が亢進している新規 C 1一 T HF S遺伝子を提供するものである。 本遺伝子に係る DNAは、 細胞増殖促進活 性を有する蛋白質をコードする。 本特性を利用した新規医薬組成物、 診断手段の 提供は、 大腸癌の臨床 ·基礎の医用領域において大きな有用性を提供する。 く配列表フリ テキスト>
配列番号 1 (1) : (2934) 本蛋白質全長をコードする領域
配列番号 1 (1) : (1 83) N末端部分 DNA
配列番号 1 (1 84) : (2934) N末端欠損 DNA