明 細 書
微細構造体及びその製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、反応性イオンエッチング法を用いて形成される微細構造体及びその製 造方法に関する。本発明の微細構造体とは、オングストロームよりミリオーダーまでの 大変広い単位範囲で微細な秩序を有した構造体である。
背景技術
[0002] 本発明の構造体は従来には存在しない特異な物であるが、類似の微細構造を形 成する手段としては、主として表面素材を電子線リソグラフィ一法もしくはエッチング 法に代表される、機械的および物理的切削による力 別途個別に作成した構造体を 接着や圧着などの物理的な接合方法により基盤表面に整列させてなるものであった 。この構造体は本発明で示す様に多くの工業生産現場乃至研究分野で有用である にも関わらす簡便に作成することが困難であった。
[0003] また、これらの方法によると微細な形状にする場合の製造プロセスが複雑であった り、形状の制御や選択性に制約が大きい等、幾多の課題が存在している。この為、製 造プロセスにかなりの時間を要する上、スループットが低ぐ装置も高価である為に製 造コストが高価になってしまうなどの欠点があった。
[0004] また、最近では ECRエッチング法 (電子サイクロトロン共鳴型ドライエッチング法)等 により、化学的に機械加工を施して基板上に柱状の構造体を製作する方法も開発が なされたが、エッチング法を行う場合は対象とされる材料や使用ガスを含む製造方法 に制約を多く設ける為に、量産技術としてはその有用性が必ずしも高いとは考えられ ていない。
また、いずれの方法を活用した場合であっても、機械的に加工を施す為に出来上 力 Sつた構造物の品位や信頼性等において不安定な要素が多ぐ安定性を欠いてい
るとも考えられる。
[0005] 例えば半導体素子に用いる為に、トレンチと言われるアスペクト比が大きい形状の 構造を形成する場合に、その技術的信頼性の確保の為に必要な情報に対し、これら の機械的加工技術については難易度が高い為に製造方法に依存することが高ぐ 制限を多く設ける製造プロセスにお 、ては優位性が高 、とは考え難 、。
[0006] また、例えば酸ィ匕物や金属の柱状結晶を作成して近接場用プローブの光インジェ クシヨン素子,あるいはその他の機能に活用するインジェクション素子などは、いずれ も 10— lOOnm程度の円筒構造物を使用する力 これらはいずれも電子線リソグラフィ 一およびドライエッチングを共用して機械的に加工を施す為に、加工形状の制御や 製造自体が大変困難であり、形状の選択性にも限界があるとされている。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] 本発明は、従来の機械的あるいは物理的に研磨や精密加工を行ったり、あるいは 、別途作成された微細構造体を基盤表面上に配列させる為の別行程を要するので はなぐ化学的に対象物に反応を起こして化学反応物を生成させて堆積し、その堆 積物を自己組織化させることで構造物の成長を実現した新 、構造体の製造技術と して、機械的かつ化学的に安定な構造体を簡便に形成する方法を提供する事を目 的としてなされたものである。
この為、膨大な設備投資を要さず、汎用的に存在するドライプロセスの薄膜加工設 備を用いて、極めて簡便に構造物の製作を可能にする。
課題を解決するための手段
[0008] 我々は、上記目的を達成するために、試行錯誤と鋭意研鑽を重ねた結果、既存の 薄膜製造ドライプロセスを用いながら、反応性イオンエッチング法にて化学的に活性 である状態を適切に用いることにより、無機材料の物理化学反応による金属材料の 自己組織化過程を活用した微細構造体製造に成功したものである。
[0009] すなわち蒸着など適当な方法で作成された無機材料もしくは高分子材料力 なる 基板上に金属および無機酸ィヒ物をスパッタ法乃至多元同時スパッタ法にて少なくと も 2層以上の積層を成膜させてなる積層基板に、レジストマスクを用いて所望の幾何
学構造すなわち、円、長方形、あるいは 2次元格子等の任意の構造を指定した後、 反応性イオンエッチングを行うことにより、中空の円筒、中空の角柱、あるいは溝状の 構造体が得られることを特徴とする微細構造体およびその製造方法である。マスクに よって与えられるサイズはサブナ入ナ入サブミクロン、ミクロン、サブミリおよびミリォ ーダ一であってもよぐこれは制限されない。
[0010] 本発明者らは、成長させる対象物に化学反応を起こし、その反応により得られた反 応生成物に連続して二次的な化学反応を継続して起こさせることで反応生成物の自 己組織化を促進させて、微細な組織およびその構造体を製造する方法を開発すべく 鋭意研究を重ねた結果、基板のドライエッチング処理において、エッチングガスと該 加工基板物質との反応を時間と温度を任意に制御することにより、反応生成物の構 造や状態を制御することが可能になった。更に制御する反応生成物が凝縮を開始す る温度に設定し、基板をドライエッチング処理すると、エッチングガス又は該反応生成 物が部分的に凝縮し、これがエッチングに対するナノメータースケールの微細なマス クとなり、ナノメータースケールの微細加工が可能になること、そして基板に予めァラ ィメントマーク又はエッチング用フォトマスクを形成させておけば、このァライメントマー ク又はエッチング用フォトマスクを中心に前記凝縮が起こるので、極めて有利に微細 加工を施しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
[0011] 尚、凝縮核とは、反応生成物が凝縮する際に、凝縮を誘導或いは凝縮箇所の特定 をするマーキングを示唆するものである。
反応生成物の凝縮開始温度は、材料により適宜異なる。例えば、 Auや A1の場合 は、その原子移動(マイグレーション作用)の起点となる 200°C— 250°Cであり、 Ptは 500°C超、 Tiならば 400°Cより 500°C程度の温度となる。この為、この原子移動開始 温度を反応性イオンエッチング 'プロセス時における凝縮開始温度と規定することが 出来、時間は反応性イオンエッチングを行う時間となる。反応性イオンエッチングを行 う時間とは、凝縮核の成長状態に応じて任意で変動させることが出来、時間が長けれ ば長いほど形成される微細構造体素子自体の高さに連動する。即ち、温度は微細構 造体素子に適用される金属と無機酸化膜の材料によって特定されると考えられるが、 時間についてはアスペクト比をどの程度にするかによつて異なる。例えば、アスペクト
比が 2の円筒形状の微細構造体を形成させる場合には、この反応性イオンエツチン グを行う時間は、 31分で実施することが好ま 、。
[0012] 本発明に係る微細構造体の製造方法は、無機材料もしくは高分子材料からなる基 板上に、金属層および無機酸ィ匕物層を少なくとも 2層以上有する複層であって最上 層が無機酸ィ匕物層である複層を形成し、その最上層に位置の特定を目的とするァラ ィメントマークを形成し、反応性イオンエッチング工程を経ることでァライメントマーク の形状を反映した微細構造体を生成することを特徴とする。
[0013] 上記微細構造体の製造方法によれば、ァライメントマーク下の複層が反応性イオン エッチング工程を経ることにより、無機酸ィ匕物層と金属層に化学的な反応を起こし、 前記金属層の中の金属の原子またはイオンのマイグレーション作用及びィ匕学的な活 性反応を活用して自己組織ィ匕を引き起こして被エッチング対象物を成長させることが できる。これにより、微細構造体を製造できる。
なお、ァライメントマークとは、微細構造体を形成する位置を決めるためのマークであ る。
[0014] また、本発明に係る微細構造体の製造方法にお!、ては、前記反応性イオンエッチ ング工程を経ることにより内部に中空部を有する構造体が製造され、前記構造体は 前記ァライメントマークの形状に応じた形状とされることが可能である。例えば、前記 ァライメントマークの形状が円形である場合は前記構造体が円柱形状又は円錐形状 とされ、前記ァライメントマークの形状が四角形である場合は前記構造体が角柱形状 又は角錐形状とされる。
[0015] 本発明に係る微細構造体の製造方法は、無機材料もしくは高分子材料からなる 基板上に、金属層および無機酸ィ匕物層を少なくとも 2層以上有する複層であって最 上層が無機酸ィ匕物層である複層を形成し、その最上層に位置の特定を目的とするェ ツチング用フォトマスクを形成し、反応性イオンエッチング工程を経ることでエッチング 用フォトマスクの形状を反映した微細構造体を生成することを特徴とする。
[0016] 上記微細構造体の製造方法によれば、複層上に位置の特定を目的とするエツチン グ用フォトマスクを形成し、反応性イオンエッチング工程を経ることにより、無機酸ィ匕 物層と金属層に化学的な反応を起こし、前記金属層の中の金属の原子またはイオン
のマイグレーション作用及びィ匕学的な活性反応を活用して自己組織ィ匕を引き起こし て被エッチング対象物を成長させることができる。これにより、微細構造体を製造でき る。
[0017] また、本発明に係る微細構造体の製造方法にお!、ては、前記反応性イオンエッチ ング工程を経ることにより内部に中空部を有する構造体が製造され、前記構造体は 前記エッチング用フォトマスクのパターン形状に応じた形状とされることが可能である 。例えば、前記エッチング用フォトマスクのパターン形状が円形である場合は前記構 造体が円柱形状又は円錐形状とされ、前記エッチング用フォトマスクのパターン形状 が四角形である場合は前記構造体が角柱形状又は角錐形状とされる。
[0018] また、本発明に係る微細構造体の製造方法にお!、ては、前記反応性イオンエッチ ング工程を経る間に、前記基板又は前記金属層及び前記無機酸化物層が前記反応 性イオンエッチング工程による反応生成物の凝縮開始温度となることが好ましい。
[0019] また、本発明に係る微細構造体の製造方法において、前記金属層は、 Si, Al, Cu, Ni, Ti, Zr, Ta, Cr, W, Mo, V, Co, Zn, In, Au, Ag, Pt, Ir, Ruの内の 1元素以上で 構成される金属材料膜を 1種類成膜したもの、あるいは 2乃至 3種類を選択し順次成 膜したものであることも可能である。好ましくは、 Ti, Mo, Au, Ptの内の 1元素以上で 構成される金属材料膜を 1種類成膜したもの、あるいは 2乃至 3種類を選択し順次成 膜したものである。
[0020] また、本発明に係る微細構造体の製造方法において、前記無機酸化物層は、 A1 0
2
, Si〇, Ga 0, In 0, SnO, Zn〇, Ge〇, Ti〇の内のいずれ力 1種類の材料からな
3 2 2 3 2 3 2 2
る膜を成膜したもの、あるいは 2乃至 3種類の材料を選択し、各材料カゝらなる膜を順 次成膜したもの、もしくは各材料を複合させた膜を成膜したものであることも可能であ る。好ましくは、 SiO及び Al 0もしくはその複合酸ィ匕物の内のいずれか 1種類の材
2 2 3
料カゝらなる膜を成膜したもの、あるいは 2乃至 3種類の材料を選択し、各材料からなる 膜を順次成膜したもの、もしくは各材料を複合させた膜を成膜したものである。
[0021] 本発明に係る微細構造体は、無機材料もしくは高分子材料カゝらなる基板と、
前記基板上に形成された複層と、
前記複層上に形成された内部に中空部を有する構造体と、
を具備する微細構造体であって、
前記複層は、金属層および無機酸化物層を少なくとも 2層以上有し、且つ、最上層 が無機酸化物層であり、
前記構造体は、前記複層がァライメントマーク又はエッチング用フォトマスクを用い た反応性イオンエッチング工程を経ることにより製造されることを特徴とする。
[0022] また、本発明に係る微細構造体において、前記金属層は、 Si, Al, Cu, Ni, Ti, Zr, Ta, Cr, W, Mo, V, Co, Zn, In, Au, Ag, Pt, Ir, Ruの内の 1元素以上で構成される金 属材料膜を 1種類成膜したもの、ある ヽは 2乃至 3種類を選択し順次成膜したもので あることも可能である。好ましくは、 Ti, Mo, Au, Ptの内の 1元素以上で構成される金 属材料膜を 1種類成膜したもの、ある ヽは 2乃至 3種類を選択し順次成膜したもので ある。
[0023] また、本発明に係る微細構造体において、前記無機酸化物層は、 A1 0 , SiO , Ga
2 3 2
〇, In O, SnO, Zn〇, Ge〇, TiOの内のいずれか 1種類の材料からなる膜を成膜
2 3 2 3 2 2
したもの、あるいは 2乃至 3種類の材料を選択し、各材料カゝらなる膜を順次成膜したも の、もしくは各材料を複合させた膜を成膜したものであることも可能である。好ましくは 、 SiO及び Al 0もしくはその複合酸ィ匕物の内のいずれか 1種類の材料力もなる膜を
2 2 3
成膜したもの、あるいは 2乃至 3種類の材料を選択し、各材料からなる膜を順次成膜 したもの、もしくは各材料を複合させた膜を成膜したものである。
[0024] こうして得られる微細構造体は種々の工業分野、乃至研究分野に供与される。以 下に述べるのは本発明の微細構造体を用いることにより利便性が得られた応用分野 であるが、記載されていなくとも本構造体を用いることにより容易に類推される特性が 付与される用途は本発明に属する。
以下に応用例を述べる。
[0025] 本発明に係る圧電素子の製造方法は、前述した微細構造体の製造方法により製 造された微細構造体に圧電膜を付加することを特徴とする。また、本発明に係る各種 メモリ機能を有する容量素子の製造方法は、前述した微細構造体の製造方法により 製造された微細構造体に圧電膜を付加することを特徴とする。
本発明に係る圧電素子は、前述した微細構造体に圧電膜を付加したことを特徴と
する。また、本発明に係る各種メモリ機能を有する容量素子は、前述した微細構造体 に圧電膜を付加したことを特徴とする。
[0026] 本発明に係るデバイス素子は、前述した微細構造体に放熱機能、廃熱機能又は熱 伝導機能を付加したことを特徴とする。例えば、微細な構造物を並列した場合に表面 積が大きくなること、および中空を利用して冷却機能を有する水あるいは有機材料を 含有させたヒートシンク等の廃熱および放熱乃至熱伝導特性を用いるデバイス素子 に適用できる。
[0027] 本発明に係る発光素子は、前述した微細構造体に電圧を印加して電子放出させる 機能を付加したことを特徴とする。例えば、金属基板又は金属薄膜の上に作製され る特徴力も電圧を印カロして電子放出させることが容易であり、それを特徴とするエミッ ターデバイス素子に適用できる。
[0028] 本発明に係る発光素子は、前述した微細構造体の内部に蛍光材料を充填したこと を特徴とする。例えば、中空構造を活用して内部に蛍光材料を充填することにより作 製される発光デバイス素子に適用できる。
本発明に係る発光素子の製造方法は、前述した微細構造体の製造方法により製 造された微細構造体の内部に蛍光材料を充填することを特徴とする。
[0029] 本発明に係るマイクロリアクタデバイス素子の製造方法は、前述した微細構造体の 製造方法により製造された微細構造体の内部に触媒を担持することにより制御微少 サイズの反応炉を製造することを特徴とする。
本発明に係るマイクロリアクタデバイス素子は、前述した微細構造体の内部に触媒 を担持することにより制御微少サイズの反応炉としたことを特徴とする。
[0030] 本発明に係るカーボンナノチューブ Zカーボンファイバー作製素子は、前述した微 細構造体の内部に触媒を担持したことを特徴とする。
[0031] 本発明に係る光学素子は、前述した微細構造体の表面の光散乱乃至光回折特性 を用いたことを特徴とする。例えば、微細構造体をナノ一オーダーで作製した結果、 光の波長領域の構造体が得られ、それを利用して表面の光散乱乃至光回折特性を 用いることを特徴とする光学素子に適用できる。
また、微細構造体の中空かつ貫通孔の形状を活用して光を焦光させることを特徴と
する光プローブ素子に適用することもできる。
[0032] 本発明に係る電気回路実装デバイス素子は、前述した微細構造体を用いたことを 特徴とする。半導体や電子部品に用いられる電気回路の実装方法として利用できる 。また、プリント基板等に半田材と当該対象物とを接合させる為の接点材料およびそ のデバイス素子としても適用できる。
[0033] 本発明に係る半導体素子は、前述した微細構造体を回路形成用トレンチ構造とし て用いたことを特徴とする。
Si基板上にトレンチ (溝)を掘ってオン抵抗を低く出来るトレンチ構造の半導体素子 は広く知られている力 従来はアバランシェ耐量が犠牲になったり、トレンチの形成が 困難な為に、トランジスタの回路素子は Siウェハ表面に平滑に形成するプレーナ技 術が広く使用されていた。しかし、本発明の微細構造体は形状が任意で制御出来る こと、更には中空で貫通孔を設けることが容易なため、 Si基板上に本発明の該構造 体を形成することで、 2次元ある 、は 3次元構造を保有するトレンチの形成と回路素 子の形成、およびその半導体素子への応用が可能になった。
[0034] Si基板上に微細構造体を形成し、この微細構造体を用いて容量素子を形成する例 について説明する。この容量素子は、従来のトレンチ容量素子に相当するものである まず、 Si基板上に無機酸化膜を形成し、この無機酸ィ匕膜上にエッチングマスクを形 成し、このエッチングマスクをマスクとして前記無機酸ィ匕膜を反応性イオンエッチング 法によりエッチングする。これにより、内部が中空の微細構造体、例えば円筒形状の 構造体が形成される。
次いで、この円筒形状の構造体の内部に第 1導電膜を充填し、円筒形状の構造体 の外部に第 2導電膜を形成する。これにより、第 1導電膜と円筒形状の構造体と第 2 導電膜からなる容量素子を形成することができる。
[0035] 本発明に係るバイオチップデバイスは、前述した微細構造体を用いたことを特徴と する。つまり、この微細構造体はそのまま容器として活用することが可能であり、 DNA 、 RNA、蛋白などのバイオチップデバイスとして活用可能である。
また、本発明に係るマイクロアレイデバイスは、前述した微細構造体を用いたことを
特徴とする。
また、本発明に係る半導体素子実装用の金属バンプ素子は、前述した微細構造体 を用いたことを特徴とする。また、本発明に係る半導体素子付基盤は、前記金属バン プ素子を用いて半導体素子を接合したことを特徴とする。
発明の効果
[0036] 以上に説明したように本発明によれば、無機材料もしくは高分子材料力もなる基板 上に、金属層および無機酸化物層を少なくとも 2層以上有する複層であつて最上層 が無機酸ィ匕物層である複層を形成し、その最上層に位置の特定を目的とするァライ メントマークを形成し、反応性イオンエッチング工程を経ることにより、ァライメントマー クの形状を反映した微細構造体を生成することができる。したがって、内部に中空部 を有する微細構造体及びその製造方法を提供することができる。
発明を実施するための形態
[0037] 本発明の実施の形態による微細構造体の製造方法は、基板上に、 SiOを主成分
2 として、これに Al O 、 Ga O 、 In O 、 SnO 、 ZnO、 GeO及び TiOのうちのいずれ
2 3 2 3 2 3 2 2
か一種類以上の酸ィ匕物を 0. lwt%以上 50wt%以下含有されてなる SiO複合酸化
2 物材料膜を形成する工程と、前記 SiO複合酸ィ匕物材料膜上にエッチング用フォトマ
2
スク又はァライメントマークを形成する工程と、前記 SiO複合酸化物材料膜を反応性
2
イオンエッチング法によりエッチングする工程と、前記エッチング用フォトマスク又はァ ライメントマークを除去する工程と、を具備するものである。前記 SiO
2複合酸化物材 料膜の厚さは、 50— 200nm程度であることが好まし!/、。
[0038] なお、前記基板には、無機材料もしくは高分子材料力もなる基板、表面に金属層を 有する基板、又は金属層および無機酸ィヒ物層を少なくとも 2層以上有する複層であ つて最上層が無機酸ィ匕物層である複層を有する基板が含まれる。また、前記基板に は、 Siウェハ又はガラス基板など力もなる基板だけでなぐ Siウェハ又はガラス基板 などカゝらなる基板の上に導電層又は絶縁層を単層又は複数層を積層させたものも含 まれる。
また、前記エッチング用フォトマスク又はァライメントマークを形成する工程は、前記 SiO複合酸化物材料膜上にレジスト膜を塗布および露光し、現像することにより、前
記 SiO複合酸ィ匕物材料膜上にレジストパターン力もなるエッチングマスクを形成する
2
工程であることが好ましい。
[0039] また、前記エッチングする工程は、 CF 、 CHF 、 C F 、 C F、の内のいずれか一
4 3 2 6 4 8
つを主成分とする単独ある 、は混合ガスを用いてエッチングする工程であることも可 能である。
[0040] 上記微細構造体の製造方法によれば、フォトリソグラフィー技術やエッチング技術を 用いた従来の微細加工技術では形成できな力つた内部に中空部を有する構造体を 形成することが可能となる。
[0041] また、上記製造方法により製造された微細構造体は、内部に中空部を有する構造 体であって外観の形状としては円錐,角錐,円筒,角筒、更には円柱,角柱に任意 で制御を行うことが可能である。微細構造体は、その幅が、 100— 1 m程度、その高 さは 100應ー 20 m程度が好ましい。また、円筒形状の微細構造体の場合、その径 は 50應一 20 m程度が好ましい。前記中空部は前記微細構造体の頂点付近で開口 されており、前記微細構造体は Auもしくは Agを主成分として含有されてなる複合材料 からなるものであっても良い。
[0042] また、上記製造方法により製造される微細かつ特殊な形状を保有する構造体を実 現することで、従来広く使用されている電気機器や電子部品の基板や構造、特性に 大き 、影響を持つ技術が実現され、将来技術の布石ともなり得る可能性が極めて高 い事が考えられる。尚、本発明は、こうした技術思想に基づいてなされたものであり、 その技術思想が共通するものは本発明の範囲に含まれる。
[0043] また、本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内 で種々変更して実施することが可能である。
実施例
[0044] 以下、図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。
以下の実施例で使用したィ匕合物は、いずれも文献に記載の手法に基づいて合成 したものである。
[0045] 図 1 (A) , (B)は、本発明の実施例による微細構造体の製造方法を示す断面図で ある。図 2は、図 1 (B)に示す微細構造体を拡大した写真である。
[0046] まず、図 1 (A)に示すように、基板 11を準備する。この基板 11は Siウェハ又はガラ ス基板などを用いることができる。次いで、この基板 11の上に下地の金属積層膜 12 を形成する。この金属積層膜 12は、下層から順に RFマグネトロンスパッタリング法に より Ti, Auを積層して形成した積層膜である。
[0047] 次に、金属積層膜 12の上に RFマグネトロンスパッタリング法により SiOを主成分と
2 する複合酸ィ匕物材料膜 13を成膜する。この際のスパッタリングターゲットとしては Siタ 一ゲットを使用し、 O反応性雰囲気下で Siと Oを反応させてスパッタを行う。このよう
2 2
にして金属積層膜 12の上には SiO複合酸化物材料膜 13が形成される。
2
[0048] なお、本実施例では、 SiO複合酸ィ匕物材料膜 13を成膜しているが、この複合添カロ
2
元素は酸ィ匕物に限定されるものではなぐ例えば窒化珪素を 0. lwt%以上 50wt% 以下含有する SiO複合材料膜であれば、添加物の窒化珪素の含有量を種々変更
2
することも可會である。
[0049] 次 、で、 SiO複合酸ィ匕物材料膜 13の上にレジスト膜を塗布し、このレジスト膜を露
2
光、現像することにより、該 SiO複合酸ィ匕物材料膜 13上にはレジストパターン 14が
2
形成される。このレジストパターン 14は、直径が 500nm程度の円形パターンを等間隔 に複数配置したものであり、この円形パターンの相互の間隔は 500nm程度である。
[0050] この後、レジストパターン 14をマスクとして SiO複合酸化物材料膜 13を反応性ィォ
2
ンエッチング法によりエッチングする。この際のエッチング条件は、 CFガスを主成分
4
とする混合ガスをエッチングガスとして用い、投入ガスの流量が 50sccm,投入電力量 力^ 00W,真空度が O.lTorrの雰囲気下で約 20分反応させるものとする。
[0051] 次いで、レジストパターン 14を除去する。これにより、図 1 (B)に示すように、金属積 層膜 12上には構造体 15が形成される。この構造体の写真は図 2に示されている。
[0052] 前記構造体 15は、その外形が円錐形状力 なり、内部に中空部 15aを有する構造 体であって、その中空部 15aは前記構造体の頂点付近で開口されたものである。従 つて、構造体 15は、それ自体が中空部 15aを介して貫通した構造となっている。また 、構造体 15は Auを含有する複合材料膜からなるものである。また、構造体 15のサイ ズは、約 3 μの高さで直径が約 2 μ程度である。
[0053] 上述したような製造プロセスを経ることにより上記のような内部に中空部 15aを有す
る構造体 15が形成されるのは、反応性イオンエッチングにて金属をエッチングする際 に、活性ガスおよび不活性ガス,あるいはその複合ガスが金属の表面状態を活性状 態にした際に、活性である表面の反応中に活性ガスの 2次反応を、当該の被エッチ ング対象の元素に対して特定の別の金属と積層させることで引き起こすことが可能で あり、 2次反応を起こした金属が化学的に活性になって浮遊した堆積粒子同士が結 合して成長反応を起こすことが理由と考えられる。
[0054] 次に、構造体 25について EPMA法による元素定性分析にて測定した結果について 説明する。この結果は表 1に示されている。
[0055] [表 1] 表 1 . E P M A元 ¾¾tJ分圻 半^ a結果 (単位:原 )
[0056] EPMA分析により、 SiO複合酸化物材料膜 13の主成分である Si、この SiO複合酸
2 2
化物材料膜 13の下地に形成される Au膜の両元素が主成分として検出されると同時 に、 SiO複合酸ィ匕物材料膜 13に含有される、 0 (酸素),更には反応性イオンエッチ
2 2
ング法にて装置内に依存する C等を主たる構成元素として確認することが出来る。
[0057] この際、微細構造体と基板表面部の無機酸ィ匕物の含有元素としては、アルカリ元 素が顕著に含有量に差異が生じており、この結果を鑑みた場合に、 SiO
2複合酸化物 材料膜 13に含有する不純物アルカリ元素と、この SiO複合酸化物材料膜 13の下地
2
に構成される Au層とが、反応性イオンエッチングの際に、化学的な相互作用を引き 起こして反応生成物を形成し、その反応生成物が自己組織ィヒすることで凝縮かつ堆 積成長した結果として微細構造体を形成したものと考えられる。
[0058] 尚、上記実施例では、 SiO複合酸ィ匕物材料膜 13を最上層に用いているが、これ
2
に限定されるものではなぐ SiOを主成分として、これに Ga O、 Al O、 In O、 Zn
2 2 3 2 3 2 3
O及び GeOのうちのいずれか一種類以上の酸化物あるいは、 TaN、 TiN、 Si3N4等 の窒化物を 0. lwt%以上 50wt%以下含有されてなる SiO複合材料膜を用いること
2
も可能である。
[0059] また、上記実施例では、 SiO複合酸ィ匕物材料膜 13の上にレジストパターン 14を形
2
成しているが、これに限定されるものではなぐ SiO複合酸化物材料膜 13の上に他
2
の材質力もなるエッチングマスクを形成することも可能である。
[0060] また、上記実施例では、エッチングガスとして CFガスと Oガスとの混合ガスを用い
4 2
ているが、 CHF、 C F、 C Fの内のいずれか一つを主成分とする単独あるいは混
3 2 6 4 8
合ガスをエッチングガスとして用いることも可能である。
[0061] また、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種 々変更して実施することが可能である。例えば、レジストパターン 14のパターン形状 を長方形に変更することにより、図 3 (A)に示すような内部が中空で底部が約 1 μ m Χ 2 /ζ πιで高さが約 2. 5 mの長方柱形状の微細構造体を作製することができる。ま た、レジストパターン 14のパターン形状を正方形に変更することにより、図 3 (B)に示 すような内部が中空で底部が約 1 mX 1 mで高さが約 2. 5 mの角柱形状の微 細構造体を作製することができる。また、エッチング時間などのエッチング条件を変更 することにより、図 4に示すような内部が中空で直径が約 1 mで高さが約 2. の 円柱形状の微細構造体を作製することができる。
[0062] また、本発明に係る微細構造体は、種々の用途に適用することができる力 例えば 次の用途に適用することも可能である。
[0063] 前述した微細構造体に圧電膜を付加することにより作製した圧電素子又は各種メ モリ機能を有する容量素子に適用できる。
[0064] 前述した微細構造体に放熱機能、廃熱機能又は熱伝導機能を付加することにより 作製したデバイス素子、微細な構造物を並列した場合に表面積が大きくなること、お よび中空を利用して冷却機能を有する水あるいは有機材料を含有させたヒートシンク 等の廃熱および放熱乃至熱伝導特性を用いるデバイス素子に適用できる。
[0065] 前述した微細構造体に電圧を印加して電子放出させる機能を付加した発光素子、 金属基板又は金属薄膜の上に作製される特徴から電圧を印加して電子放出させるこ とが容易であり、それを特徴とするエミッターデバイス素子に適用できる。
[0066] 前述した微細構造体の内部に蛍光材料を充填した発光素子、中空構造を活用し て内部に蛍光材料を充填することにより作製される発光デバイス素子に適用できる。
[0067] 前述した微細構造体の製造方法により製造された微細構造体の内部に触媒を担 持することにより制御微少サイズの反応炉を製造するマイクロリアクタデバイス素子に 適用できる。
[0068] 前述した微細構造体の内部に触媒を担持したカーボンナノチューブ Zカーボンフ アイバー作製素子に適用できる。
[0069] 前述した微細構造体の表面の光散乱乃至光回折特性を用いた光学素子、微細構 造体をナノ一オーダーで作製した結果、光の波長領域の構造体が得られ、それを利 用して表面の光散乱乃至光回折特性を用いることを特徴とする光学素子に適用でき る。
また、微細構造体の中空かつ貫通孔の形状を活用して光を焦光させることを特徴と する光プローブ素子に適用することもできる。
[0070] 前述した微細構造体を用いた電気回路実装デバイス素子に適用でき、半導体や 電子部品に用いられる電気回路の実装方法として利用できる。また、プリント基板等 に半田材と当該対象物とを接合させる為の接点材料およびそのデバイス素子として ち適用でさる。
[0071] 前述した微細構造体を回路形成用トレンチ構造として用いた半導体素子に適用で きる。
[0072] 前述した微細構造体を用いたノィォチップデバイスに適用できる。つまり、この微細 構造体はそのまま容器として活用することが可能であり、 DNA、 RNA、蛋白などのバイ ォチップデバイスとして活用可能である。
また、前述した微細構造体を用いた半導体素子実装用の金属バンプ素子に適用 できる。また、前記金属バンプ素子を用いて半導体素子を少なくとも一つ以上接合し た半導体素子付基盤に適用できる。
[0073] 次に、 Si基板上に微細構造体を形成し、この微細構造体を用いて容量素子を形成 する例について説明する。
まず、 Si基板上に無機酸化膜を形成し、この無機酸ィ匕膜上にエッチングマスクを形 成し、このエッチングマスクをマスクとして前記無機酸ィ匕膜を反応性イオンエッチング 法によりエッチングする。これにより、内部が中空の微細構造体、例えば円筒形状の
構造体が形成される。
次いで、この円筒形状の構造体の内部に第 1導電膜を充填し、円筒形状の構造体 の外部に第 2導電膜を形成する。これにより、第 1導電膜と円筒形状の構造体と第 2 導電膜からなる容量素子を形成することができる。
[0074] 上記容量素子により以下のメリットを実現できる。
ビアホールを形成せずに、基板上に形状やアスペクトを任意で設計して作製するこ とが出来る。また、溝の壁面の両側(内側、外側)を用いて容量素子が形成できる為 に 3次元の容量素子構造が実現できる。また、微細構造体の材質を例えば Wにする ことで、プラグ電極も 3次元で形成することができる。このような事から、 3次元のプラグ やキャパシタセルを保有する半導体メモリを実現できる為に、大容量かつ効率的に 基板を活用した設計ルールが適用出来る為、生産性や高集積化を合理的に実現出 来る様になる。
図面の簡単な説明
[0075] [図 1] (A) , (B)は、本発明の実施例による微細構造体の製造方法を示す断面図で ある。
[図 2]図 1 (B)に示す微細構造体を拡大した写真である。
[図 3] (A)は、本発明に係る実施例の変形例による微細構造体を拡大して示す写真 であり、(B)は、他の変形例による微細構造体を拡大して示す写真である。
[図 4]本発明に係る実施例の他の変形例による微細構造体を示す写真である。 符号の説明
[0076] 11· "基板
12…金属積層膜
13-SiO複合酸化物材料膜
2
14· ··レジストパターン
15…構造体
15a…中空咅