Lrp4/Corinドーパミン産生-ユーロン増殖前駆細胞マーカ一 技術分野
分裂停止前のドーパミン産生ニューロン前駆細胞 (progenitor)において発現し ている遺伝子として Lrp4を同定した。 該遺伝子の発現、 または該遺伝子により コードされる膜貫通蛋白質の発現を検出することにより、 パーキンソン病 (PD)等 の神経変性疾患の移植治療において用いることができるドーパミン産生ニューロ ン前駆細胞を効率的に分離することができる。 背景技術
ドーパミン系は、 哺乳動物の脳において重要な運動調節、 ホルモン分泌調節、 情動調節等に関与する非常に重要な系である。 従って、 ドーパミン作動性神経伝 達における異常は、 様々な神経系の障害を引き起こす。 例えば、 パーキンソン病 (PD)は、 中脳黒質のドーパミン産生ニューロンの特異的な脱落が原因で起こる錐 体外路系の神経変性疾患である(HARRISON, S PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE 第 2卷第 23版, Isselbacher et al.編, Mcftraw- Hill Inc. , NY (1994) pp. 227 5-7) 0 パーキンソン病の治療法としては、 産生されるドーパミン量の低下を補う ために L-D0PA(3,4-ジヒドロキシフエ-ルァラニン)を経口投与する方法が主に 採られているが、 効果の持続性が良くないことが知られている。
パーキンソン病治療において、 最近では失われたドーパミン産生ニューロンを 補うために、 ドーパミン産生-ユーロン前駆細胞を含む 6〜9週齢の中絶胎児の 中脳腹側領域を移植する治療法も試みられている(米国特許第 5690927号; Spenc er et al. (1992) N. Engl. J. Med. 327: 1541-8; Freed et al. (1992) N. En gl. J. Med. 327: 1549—55 ; Widner et al. (1992) N. Engl. J. Med. 327: 155
6-63; Kordower et al. (1995) N. Engl. J. Med. 332: 1118-24; Defer et al.
(1996) Brain 119: 41—50 ; Lopez- Lozano et al. (1997) Transp. Proc. 29: 9 77 - 80)。 しかし、 現在のところ、 この方法では細胞の供給面、 倫理面 (Rosenstai n (1995) Exp. Neurol. 33: 106; Turner et al. (1993) Neurosurg. 33: 1031- 7)で問題があると共に、 感染汚染の危険性、 免疫学的な移植片拒絶 (Lopez- Lozan o et al. (1997) Transp. Proc. 29: 977 - 80 ; Widner and Brudin (1988) Brain Res. Rev. 13: 287-324)、 胎児組織が糖分解よりも脂質代謝に主に依存してい るための生存率の低さ(Rosenstein (1995) Exp. Neurol. 33: 106)等の様々な面 で問題が指摘されている。
倫理面や供給不足の問題を解決するために、 例えばブタ由来の皮質、 線条、 及 び中脳細胞を用いる方法も提案されている(例えば、 特表平 10-508487号公報;特 表平 10-508488号公報;特表平 10-509034号公報参照)。 この方法においては、 拒 絶反応を抑制するため、 細胞表面上の抗原 (MHCクラス I抗原)を改変するという 煩雑な操作が必要とされる。 移植片拒絶を解消する方法としては、 例えば、 セル トーリ細胞を同時に移植することにより、 局在的に免疫抑制する方法も提案され ている(特表平 11-509170号公報;特表平 11 - 501818号公報; Selawry and Cameron
(1993) Cell Transplant 2: 123-9)。 MHCがマッチする血縁者、 他人の骨髄、 骨髄パンク、 及び臍帯血パンク等から移植細胞を得ることも可能であるが、 患者 自身の細胞を用いることができれば、 余計な操作や手間なしに拒絶反応の問題も 解決することができる。
そこで、 中絶胎児由来の細胞に代えて、 胚性幹細胞 (ES)細胞、 骨髄間質細胞な どの非神経系細胞からの in vitroにおけるドーパミン産生ニューロンの分化系 の移植材料としての利用が有望視されている。 実際、 ラットパーキンソン病モデ ルの病変線条への ES細胞移植により機能的なドーパミン産生ニュ^"口ンが形成 されたとの報告もある (Kim et al (2002) Nature 418: 50 - 56) 。 将来的には E S細胞若しくは患者本人の持つ神経幹細胞からの再生治療の重要性が増してくる
ものと思われる。
神経組織の損傷の治療においては脳機能の再構築が必要となり、 周囲の細胞と 適切なリンクを形成する (ネットワーク形成) ために成熟した細胞ではなくニュ 一ロンへと in vivoにおいて分ィヒし得る細胞を移植する必要がある。 ニューロン 前駆細胞の移植において上述した供給面以外で問題となるのは、 前駆細胞が不均 一な細胞集団へと分化する可能性がある点である。 例えば、 パーキンソン病の治 療においては、 力テコー ァミン含有-ユーロンの中でもドーパミン産生-ユー ロンを選択的に移植することが必要である。 これまで、 パーキンソン病の治療に 用いることが提案されている移植細胞としては、 線条体 (Lindvall et al. (198 9) Arch. Neurol. 46 : 615-31 ; Widner et al. (1992) N. Engl. J. Med. 327: 1556-63)、 ヒト胎児神経由来の不死化セルライン(特表平 8-509215号公報;特 表平 11-506930号公報;特表 2002-522070号公報)、 NT2Z細胞の有糸分裂後ヒト ニューロン(特表平 9-5050554号公報)、 -ュ 口ン始原細胞(特表平 11-509729 号公報)、 ドパミン等のカテコールアミンを産生するように外来遺伝子により ト ランスフエクトされた細胞、 骨髄スト口マ細胞 (特表 2002-504503号公報;特表 2 002- 513545号公報)、 遺伝子改変された ES細胞 (Kim et al (2002) Nature 41 8: 50-56) 等が挙げられる。 しかしながらいずれも、 ドーパミン産生ニューロン またはドーパミン産生二ユーロンへと分化する細胞のみを含むものではな 、。 未分化な細胞集団からドーパミン産生ニューロンを選択的に濃縮 ·分離する方 法としては、 ドーパミン産生ニューロンで発現するチロシンハイドロキシラーゼ (TH)等の遺伝子のプロモータ一 Zェンハンサ一の制御下で蛍光蛋白質を発現する レポーター遺伝子を細胞集団の各細胞に導入し、 蛍光を発する細胞を分離するこ とにより、 ドーパミン産生ニューロンを生きたまま可視ィ匕して濃縮'分離、 また は同定する方法 (特開 2002 - 51775号公報)が提案されている。 この方法は、 外来 遺伝子の導入という煩雑な工程を不可欠とするものであり、 さらに、 遺伝子治療 に用いることを目的とする場合、 レポーター遺伝子の存在は毒性、 免疫原性の面
からも問題である。 発明の開示
現時点での PD移植治療における大きな問題の一つは、 中絶胎児の中脳腹側領 域あるいは in vitroで分化誘導したドーパミン産生ニューロン前駆細胞は、 い ずれも多種の細胞の混合物である点である。 神経回路形成における安全性を考え ると、 目的の細胞種のみを分離してから用いるのが望ましい。 また、 腫瘍形成の 危険性を考慮すれば、 分裂停止後の神経細胞を分離してから使用することが良い と考えられる。 さらに、 細胞の移植先の脳内での生存や、 正しくネットワーク形 成する能力を考えると、 より早期の前駆細胞を分離することにより治療効果を増 大させ得ると期待される。 そこで、 本発明者は、 ドーパミン産生ニューロン前駆 細胞特異的な遺伝子の単離を試みた。 そして既に、 分裂停止直後の神経前駆細胞 で一過性に発現する遺伝子の一つとして、 新規遺伝子 65B13の単離に成功し、 特 許出願した (特願 2002- 307573号) 。
ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的な遺伝子を単離するために、 E12. 5 マウス中脳腹側領域を背腹方向にさらに 2つの領域に切り分けて、 ドーパミン産 生ニューロンを含む最も腹側の領域に特異的に発現する遺伝子をサブトラクショ (N-RDA; representational difference analysis ¾;RDA ϊ¾ (List syn NA (199 5) Trends Genet. 11 : 303- 7)を改良( 「DNA断片の量の均一化方法及ぴサブスト ラクシヨン法」 特願 2001- 184757 (出願日 2001/6/19) )により同定した。 単離し た断片の一つは Lrp4/Corinをコードする cDNA断片であった。 Lrp4は II型膜貫 通蛋白質をコードしている(図 1)。
in situハイプリダイゼーシヨンによる発現解析の結果、 Lrp4は中脳ではドー パミン産生二ユーロン増殖前駆細胞に特異的に発現すると考えられた(図 4及ぴ 5)。 Lrp4は胎生期から成人期にかけての心臓に発現しており、 血圧調整ホルモ ンである心房性ナトリゥム利尿べプチド (ANP)の切断を行うと考えられている II
型膜貫通プロテアーゼである。 ANPは前駆型である pro- A Pの状態で発現し、 細 胞外に分泌された後に LrP4より細胞膜表面上で切断され、 活性型 ANPとなると 考えられている。 これまで、 増殖中のドーパミン産生ニューロン前駆細胞で特異 的に発現する膜蛋白質をコードする遺伝子は報告されていない。 細胞膜表面に発 現する Lrp4蛋白質に対する抗体は、 Lrp4発現細胞の分離に非常に効果的である と考えられる。 例えば、 抗 Lrp4抗体を用いて、 中脳腹側領域または in vitroで 分化誘導したドーパミン産生ニューロンを含む培養細胞から、 LrP4発現細胞を 分離することで、 純粋なド一パミン産生ュユーロン前駆細胞を得ることができる (図 6)。
さらに、 該前駆細胞をそのまま、 または in vitroで増殖させた後に移植する ことも可能である。 本発明の前駆細胞は脳内の最適な場所で分化成熟していく可 能性や in vivoでさらに前駆細胞が増殖する可能性もあり、 長期的な治療効果が 期待できる。 また、 Lrp4発現細胞を in vitroで分化、 成熟させた後に移植を行 えば、 in vivoで何らかの理由でドーパミン産生-ユーロンへの分化が行われな い場合にも、 治療効果が期待できる。 腫瘍化等の危険性を考慮すれば、 in vitro で増殖させた LrP4発現細胞を分化誘導した後に、 65B13等の分裂停止後のニュ 一ロンマーカーを用いて分離した細胞を移植すればより高い安全性が期待できる。 いずれの方法でも Lrp4発現細胞を分離して移植治療に用いることで、 目的の細 胞種のみを分離しているので安全性が高く、 また、 最も初期の前駆細胞を用いる ことができるため、 生存率やネットワーク形成能等の面でも高い治療効果が期待 される。 分離直後の初期の前駆細胞で最高の治療効果を得られない場合があった としても、 本発明のマーカーにより分離される前駆細胞は in vitroで培養する 等して成熟させることもできるため、 最適な分化段階の材料を調製することを可 能にする(図 6)。
一方、 純粋なドーパミン産生ニューロン前駆細胞を得ることは、 ドーパミン産 生ニューロンに特異的な遺伝子の単離等、 パーキンソン病治療のターゲット探索
にも有効である。 特に増殖前駆細胞を得られるということは、 ドーパミン産生二 ユーロンの成熟過程の研究や、 成熟を指標にしたスクリーニング系だけでなく、 前駆細胞を in vitroまたは in vivoで増殖させる薬剤のスクリ一ユングや、 in vivoで前駆細胞から分化を誘導する薬剤(in vivoでの再生治療薬剤)のスクリ一 ニング等にも有用である。
より具体的には、 本発明は
[1] 以下の(1)〜(5)の塩基配列から選択される配列を含むド一パミン産生ニュ 一口ン増殖前駆細胞マーカーポリヌクレオチドプローブ、
(1)配列番号: 1または 2の塩基配列に相補的な塩基配列
(2)配列番号: 3または 4記載のアミノ酸配列をコ一ドする塩基配列に相補的な
(3)配列番号: 3または 4記載のアミノ酸配列において膜貫通領域を欠く配列を コードする塩基配列に相補的な塩基配列
(4) 配列番号: 1または 2の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してスト リンジェントな条件下でハイプリダイズする塩基配列
(5)上記(1)〜 (4)の配列中の少なくとも連続した 15塩基を含む塩基配列
[2] 以下の(1)〜 (6)から選択されるポリぺプチドに対する抗体、
(1)配列番号: 1または 2の塩基配列によりコードされるポリべプチド
(2)配列番号: 3または 4記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(3〉配列番号: 3または 4記載のアミノ酸配列において膜貫通領域を欠くアミノ 酸配列からなるポリぺプチド
(4)配列番号: 3または 4記載のアミノ酸配列において 1若しくは複数個のアミ ノ酸が欠失、 揷入、 置換または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
(5) 配列番号: 1または 2の塩基配列に相補的な配列に対してストリンジェン トな条件下でハイブリダィズする塩基配列によりコードされるポリべプチド
(6)上記 (1)〜 (5)のポリぺプチドの断片であり、 少なくとも 8ァミノ酸残基を
有するポリペプチド
[3] ドーパミン産生ュユーロン増殖前駆細胞を選択する方法であって、 上記 [1] 記載のポリヌクレオチドとドーパミン産生ニューロン前駆細胞を含むと考えられ る細胞試料とを接触させる工程を含む方法、
[4] ドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を選択する方法であって、 上記 [2] 記載の抗体とドーパミン産生ュユーロン前駆細胞を含むと考えられる細胞試料と を接触させる工程を含む方法、
[5] 以下の工程を含むドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を選択する方法、
(1)上記 [3]または [4]記載のドーパミン産生-ユーロン前駆細胞を選択する方 法によりドーパミン産生ニューロン前駆細胞を選択する工程
(2)上記 (1)において選択された前駆細胞を培養する工程
(3)上記 (2)において培養された前駆細胞を、 分裂停止後のニューロンマーカー を用いてスクリーユングする工程
[6] 上記 [3]〜[: 5]記載の方法により選択された分裂停止前のドーパミン産生- ユーロン増殖前駆細胞、
[7] ドーパミン産生二ユーロン前駆細胞特異的遺伝子及ぴ前駆細胞からドーパ ミン産生-ユーロンへの各成熟段階に特異的な遺伝子の単離方法であって、 上記 [6]記載の前駆細胞または該前駆細胞から分化、 誘導若しくは増殖された細胞を 用い、 該細胞において特異的に発現している遺伝子を検出、 単離する工程を含む 方法、 並びに
[8] 成熟を指標としたスクリーニング方法であり、 上記 [6]記載の前駆細胞に対 し、 被験物質を接触させる工程、 及び接触による前駆細胞の分ィ匕または増殖を検 出する工程を含む方法、
に関する。
<マーカーポリヌクレオチドプローブ >
本発明のドーパミン産生-ユーロン増殖前駆細胞マーカ一ポリヌクレオチドプ ローブは、 ドーパミン産生ニューロン前駆細胞を選択及び/または検出するマー カーとして使用されるものである。 該プロープとして使用されるポリヌクレオチ ドは、 分裂停止前のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に発現する LrP4ポリべ プチドをコ一ドする配列番号: 1または 2の塩基配列に相補的な塩基配列を含む ものである。 配列番号: 1はマウス Lrp4 cDNAの塩基配列、 そして配列番号: 2は ヒト Lrp4 cDNAの塩基配列であり、 それぞれ GenBankに登録された配列である (マウス: Accession No. L016869 ;ヒト: Accession No. XM一 035037) 。
ここで、 「マーカ一ポリヌクレオチドプロープ」 とは、 Lrp4 の発現、 特に転 写された mRNAを検出することができればよく、複数のデォキシリボ核酸 (DNA)ま たはリボ核酸 (RNA)等の塩基または塩基対からなる重合体を指す。 二本鎖 cDNAも 組織 in situハイプリダイゼーションでプロープとして利用可能であることが知 られており、 本発明のマーカーにはそのような二本鎖 cDNAも含まれる。 組織中 の R Aの検出において特に好ましいプローブとなるマーカーポリヌクレオチドプ ロープとしては、 醒プロープ(リボプローブ)を拳げることができる。 また、 本 発明のマーカーポリヌクレオチドプローブは、 天然以外の塩基、 例えば、 4-ァセ チルシチジン、 5-(力ルポキシヒドロキシメチル)ゥリジン、 2, -0-メチルシチジ ン、 5-カルボキシメチルアミノメチル- 2-チォゥリジン、 5 -カルボキシメチルァ ミノメチルゥリジン、 ジヒドロウリジン、 2' - 0-メチルプソィドウリジン、 β - D -ガラクトシルキユエオシン、 2, -0-メチノレグアノシン、 イノシン、 Ν6-イソぺ ンテュルアデノシン、 1-メチルアデノシン、 1 -メチルプソィドウリジン、 1 -メチ ルグアノシン、 1 -メチルイノシン、 2, 2-ジメチルグアノシン、 2-メチルアデノシ ン、 2 -メチルグアノシン、 3 -メチルシチジン、 5-メチルシチジン、 Ν6 -メチルァ デノシン、 7 -メチルグアノシン、 5-メチルアミノメチルゥリジン、 5 -メトキシァ ミノメチノレ- 2 -チォゥリジン、 β - D -マンノシノレキユエオシン、 5-メトキシカノレポ 二ルメチル- 2-チォゥリジン、 5-メトキシカルボニルメチルゥリジン、 5 -メトキ
シゥリジン、 2-メチルチオ - N6 -ィソペンテ-ルアデノシン、 N -((9- ]3 - D-リポフ ラノシル- 2-メチルリォプリン- 6-ィル)力ルパモイル)トレオ-ン、 N- ( (9- )3 - D - リボフラノシルプリン- 6-ィル) N-メチルカルバモイル)トレオニン、 ゥリジン- 5- ォキシ酢酸 -メチルエステノレ、 ゥリジン- 5ォキシ酢酸、 ワイプトキソシン、 プソ ィドウリジン、 キユエオシン、 2 -チオシチジン、 5-メチノレ- 2-チォゥリジン、 2 - チォゥリジン、 4 -チォゥリジン、 5-メチルゥリジン、 N- ( (9- /3 - D-リボフラノシ ルプリン- 6-ィル)カルパモイル)トレオ-ン、 2, - 0-メチル- 5-メチルゥリジン、 2, - 0 -メチルゥリジン、 ワイブトシン、 3 - (3 -ァミノ -3 -力^^ポキシプロピ /レ)ゥ リジン等を必要に応じて含んでいてもよレ、。
さらに、 本発明のマーカーポリヌクレオチドプロープは、 分裂停止前のドーパ ミン産生-ユーロン前駆細胞に特異的に発現する Lrp4ポリべプチドをコ一ドす る配列番号: 3または 4記載のァミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩 基配列を含む。 配列番号: 3または 4記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列 は、 配列番号: 1または 2に記載された塩基配列にカ卩えて、 遺伝子暗号の縮重に より配列番号: 1または 2記載の配列とは異なる塩基配列を含むものである。 本 発明のマーカーポリヌクレオチドプローブはまた、 配列番号: 3または 4記載の アミノ酸配列において、 膜貫通領域を欠く配列をコードする塩基配列に対して相 補的な配列を含むものを包含する。 配列番号: 3 または 4記載のアミノ酸配列中、 シグナル配列は存在せず、 マウス Lrp4 (配列番号: 3)では 113 - 135 アミノ酸残基、 ヒト LrP4 (配列番号: 4)では 46-68ァミノ酸残基の部分が膜貫通領域を形成して いる。 なお、 配列番号: 3及ぴ 4に記載の配列も各々 GenBankに登録されている。 ここで、 或る 「塩基配列に対して相補的」 とは、 塩基配列が鏺型に対して完全 に対になっている場合のみならず、 そのうちの少なくとも 70%、 好ましくは 8 0%、 より好ましくは 90%、 さらに好ましくは 95%以上 (例えば、 97%または 9 9%)が対になっているものも含む。 対になっているとは、 錄型となるポリヌクレ ォチドの塩基配列中の Aに対し T (R Aの場合は U)、 Tまたは ϋに対し A、 Cに対
し G、 そして Gに対し Cが対応して鎖が形成されていることを意味する。 そして 或るポリヌクレオチド同士の塩基配列レベルでの相同性は、 BLASTァルゴリズム (Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-8 ; Karl in and Altsc hul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873- 7)によって決定することが できる。 このアルゴリズムに基づいた塩基配列についてのプログラムとして、 BL ASTN (Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403- 10)が開発されており、 マーカーポリヌクレオチドプローブ配列の相同性の決定に使用することができる。 具体的な解析方法については、 例えば、 http : //ww. ncbi. nlm. nih. gov.等を参照 することができる。
さらに、 本発明のマーカ一ポリヌクレオチドプローブには、 分裂停止前のド一 パミン産生-ユーロン前駆細胞に特異的に発現する Lrp4ポリぺプチドをコード する配列番号: 1または 2の塩基酉己列からなるポリヌクレオチドに対してストリ ンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むポリヌクレオチドが包 含される。 Lrp4については配列番号: 1または 2で示される塩基配列を有するも のが公知であるが、 そのアルタナティブァイソフォーム、 及ぴァレリック変異体 が存在する可能性があり、 そのようなアイソフォームゃァレリック変異体に相補 的な配列を有するものも本発明のマーカ一ポリペプチドとして利用することがで きる。 このようなァイソフォーム及ぴァレリック変異体は、 配列番号: 1または 2 の塩基配列を含むポリヌクレオチドをプローブとして、 コ口ユーハイブリダイゼ ーシヨン、 プラークハイブリダィゼーシヨン、 サザンプロット等の公知のハイブ リダィゼーシヨン法により、 ヒト、 マウス、 ラット、 ゥサギ、 ハムスター、 ニヮ トリ、 プタ、 ゥシ、 ャギ、 ヒッジ等の動物の cDNAライブラリー及ぴゲノムライ ブラリーから得ることができる。 cDNAライプラリーの作成方法については、 『M olecular Cloning, A Laboratory Manual 2na ed.』 (Cold Spring Harbor Press (1989) )を参照することができる。 また、 市販の cDNAライプラリー及ぴゲノム ライプラリーを利用してもよい。
より具体的に、 cDNAライプラリ一の作製においては、 まず、 Lrp4を発現する 細胞、 Ιβ、 組織等からグァェジン超遠心法 (Chirwin et al. (1979) Biochemis try 18: 5294 - 9)、 AGPC法(Chomczynski and Sacchi (1987) Anal. Biochem. 16 2: 156-9)等の公知の手法により全 RNAを調製し、 mRNA Purification Kit (Pharm acia)等を用いて mRNAを精製する。 QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmac ia)のような、 直接 mR Aを調製するためのキットを利用してもよい。 次に得られ た mRNAから逆転写酵素を用いて cDNAを合成する。 AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit (生化学工業)のような cDNA合成のためのキッ トも市販されている。 その他の方法として、 cDNAは PCRを利用した 5' -RACE法 (Frohman et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 8998 - 9002 ; Belyavs ky et al. (1989) Nucleic Acids Res. 17: 2919- 32)により合成、 及ぴ增幅させ てもよい。 また、 全長率の高い cDNAライプラリーを作製するために、 オリゴキ ヤップ法 (Maruyama and Sugano (1994) Gene 138: 171-4; Suzuki (1997) Gene 200: 149 - 56)等の公知の手法を採用することもできる。 上述のようにして得られ た cDNAは、 適当なベクター中に組み込む。
本発明におけるハイプリダイゼ一シヨン条件としては、 例えば 「2 X SSC、 0. 1%SDS、 50°C」 、 「2 XSSC、 0. 1%SDS、 42。C」 、 「1 X SSC、 0. 1%SDS、 37°C」 、 よりストリンジェントな条件としては、 例えば 「2 X SSC、 0. 1%SDS、 65°C」 、 「0. 5 X SSC、 0. 1%SDS、 42°C」 、 「0. 2 X SSC、 0. 1%SDS、 65°C」 等の条件を挙げ ることができる。 より詳細には、 Rapid-hyb buffer (Amers am Life Science)を 用いた方法として、 68°Cで 30分以上プレハイブリダイゼーションを行った後、 プローブを添加して 1時間以上 68°Cに保ってハイブリッド形成させ、 その後、 2 X SSC、 0. 1%SDS中、 室温で 20分の洗浄を 3回、 1 X SSC、 0. 1%SDS中、 37°Cで 20分の洗浄を 3回、 最後に、 1 X SSC、 0. 1%SDS中、 50 で 20分の洗浄を 2回行 うことも考えられる。 その他、 例えば Expresshyb Hybridization Solution (CL 0NTECH)中、 55°Cで 30分以上プレハイブリダイゼ一ションを行い、 標識プローブ
を添加し、 37〜55°Cで 1時間以上インキュベートし、 2 X SSC、 0. 1%SDS中、 室 温で 20分の洗浄を 3回、 1 X SSC、 0. 1%SDS中、 37。Cで 20分の洗浄を 1回行う こともできる。 ここで、 例えば、 プレハイブリダィゼーシヨン、 ハイブリダィゼ ーシヨンや 2度目の洗浄の際の温度を上げることにより、 よりストリンジェント な条件とすることができる。 例えば、 プレハイプリダイゼーシヨン及ぴハイプリ ダイゼーションの温度を 60°C、 さらにストリンジェントな条件としては 68°Cと することができる。 当業者であれば、 このようなバッファーの塩濃度、 温度等の 条件に加えて、 その他のプローブ濃度、 プローブの長さ、 反応時間等の諸条件を 加味し、 LrP4のァイソフォーム、 ァレリック変異体、 及ぴ対応する他種生物由 来の遺伝子を得るための条件を設定することができる。
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、 『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.』 (Cold Spring Harbor Press (1989);特に Section 9. 7-9. 58) 、 『Current Protocols in Molecular Biology』 (John Wiley & Son s (1987—1997) ;特に36 1。 . 3-6. 4)、 『DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach 2nd ed.』 (Oxford University (1995);条件については特に Section2. 10)等を参照することができる。 ハイプリダイズするポリヌクレオチド としては、 配列番号: 1または 2の塩基を含む塩基配列に対して少なくとも 50% 以上、 好ましくは 70%、 さらに好ましくは 80%、 より一層好ましくは 90% (例 えば、 95%以上、 さらには 99%)の同一性を有する塩基配列を含むポリヌクレオ チドが挙げられる。 このような同一性は、 上述の相同性の決定と同様に BLASTァ ルゴリズム(Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-8 ; Karl in and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873- 7)によって決定 することができる。 上述の塩基配列についてのプログラム BLASTNの他に、 この アルゴリズムに基づいたァミノ酸配列についての同一性を決定するプログラムと して BLASTX (Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403 - 10)等が開発さ れており、 利用可能である。 具体的な解析方法については先に挙げたように、 ht
T/JP2004/000629
- 1 3 _ tp :// ww. ncbi. nlm. nih. gov.等を参照することができる。
その他、 遺伝子増幅技術(PCR) (Current Protocols in Molecular Biology, Jo hn Wiley & Sons (1987) Section 6. 1—6. 4)により、 Lrp4のァイソフォームゃァ レリック変異体等、 Lrp4と類似した構造及び機能を有する遺伝子を、 ヒト、 マ ウス、 ラット、 ゥサギ、 ハムスター、 ニヮトリ、 ブタ、 ゥシ、 ャギ、 ヒッジ等の 動物の cDNAライブラリー及ぴゲノムライブラリーから、 配列番号: 1または 2に 記載の塩基配列を基に設計したプライマ一を利用して得ることができる。
ポリヌクレオチドの塩基配列は、 慣用の方法により配列決定して確認すること ができる。 例えば、 ジデォキシヌクレオチドチェーンターミネーション法 (Sange r et al. (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463)等による確認が可能で ある。 また、 適当な DNAシークェンサ一を利用 Lて配列を解析することも可能で ある。
さらに、 本発明のマーカーポリヌクレオチドプローブには、 上記(1) 配列番 号: 1または 2の塩基配列に相補的な配列、 (2)配列番号: 3または 4記載のァミノ 酸配列をコードする塩基配列に相補的な配列、 (3)配列番号: 3または 4記載のァ ミノ酸配列において膜貫通領域部分を欠く配列をコードする塩基配列に相補的な 配列、 及ぴ (4)配列番号: 1または 2の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対し てストリンジェントな条件下でハイプリダイズする配列の各塩基配列中の少なく とも連続した 15塩基を含む塩基配列からなるポリヌクレオチドが含まれる。
このような少なくとも連続した 15塩基を含む塩基配列からなるポリヌクレオ チドは、 Lrp4 mR Aの発現を検出するためのプローブ、 増幅して検出を行うた めのプライマーとして利用することができる。 通常、 プローブとして使用する場 合には 15〜100、 好ましくは 15〜35個の塩基より構成されていることが望まし く、 プライマーとして使用する場合には、 少なくとも 15、 好ましくは 30個の塩 基より構成されていることが望ましい。 プライマーの場合には、 3' 末端側の領 域を標的とする配列に対して相補的な配列に、 5' 末端側には制限酵素認識配列、
タグ等を付加した形態に設計することができる。 このような少なくとも連続した 15塩基を含む塩基配列からなるポリヌクレオチドは、 Lrp4ポリヌクレオチドに 対してハイブリダイズすることができる。
本発明のマーカーポリヌクレオチドプローブは、 Lrp4を発現する細胞より上 述のハイプリダイゼーシヨン法、 PCR法等により調製することができる。 また、 Lrp4の公知の配列情報に基づいて、 本発明のマーカーポリヌクレオチドプロー ブは化学合成により製造することもできる。 特に組織中の RNAの検出に好ましい とされるリボプローブは、 例えば、 プラスミドベクター pSP64にクローニングし た Lrp4遺伝子またはその一部を逆方向に挿入し、 揷入した配列部分をランオフ 転写することにより得ることができる。 pSP64は SP6プロモーターを含むもので あるが、 その他、 ファージ T3、 Τ7プロモーター及ぴ RNAポリメラーゼを組合せ てリポプロープを作成する方法も公知である。 ぐ抗体 >
本発明により、 ドーパミン産生ニューロン前駆細胞を脳組織、 または培養細胞 より選択するために利用することができる抗体が提供される。 本発明の抗体には ポリクローナル抗体、 モノクローナル抗体、 キメラ抗体、 一本鎖抗体(scFV) (Hus ton et la. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-83; The P armacolo gy of Monoclonal Antibody, vol. 113, Rosenburg and Moore ed., Springer Ve rlag (1994) pp. 269- 315)、 ヒト化抗体、 多特異性抗体 (LeDoussal et al. (199 2) Int. J. Cancer Suppl. 7: 58-62; Paulus (1985) Behring Inst. Mitt. 78 : 118-32; Millstein and Cuello (1983) Nature 305 : 537—9 ; Zi讓 ermann (198 6) Rev. Physiol. Bioc em. Pharmacol. 105 : 176-260 ; Van Dijk et al. (198 9) Int. J. Cancer 43: 944-9)、 並びに、 Fab、 Fab' 、 F (ab, )2、 Fc、 Fv等の 抗体断片が含まれる。 さらに、 本発明の抗体は必要に応じ、 PEG等により修飾さ れていてもよい。 その他、 本発明の抗体は、 /3 -ガラクトシダーゼ、 マルトース
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- 1 5 - 結合蛋白質、 GST、 緑色蛍光蛋白質 (GFP)等との融合蛋白質として製造することに より二次抗体を用いずに検出できるようにしてもよい。 また、 ビォチン等により 抗体を標識することによりアビジン、 ストレプトアビジン等を用いて抗体の回収 を行い得るように改変してもよい。
本発明の抗体は、 (1)配列番号: 1または 2の塩基配列によりコードされるポリ ぺプチド、 (2)配列番号: 3または 4記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、 (3)配列番号: 3または 4記載のアミノ酸配列において膜貫通領域を欠くアミノ酸 配列からなるポリぺプチド、 (4)配列番号: 3または 4記載のァミノ酸配列におい て 1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、 挿入、 置換または付加されたアミノ酸配 列からなるポリペプチド、 (5) 配列番号: 1または 2の塩基配列に相補的な配列 に対してストリンジェントな条件下でハイブリダィズする塩基配列によりコード されるポリペプチド、 並びに (6)前記 (1)〜(5)のポリペプチドの断片であり、 少 なくとも 8ァミノ酸残基を有するポリぺプチドのいずれかに対して特異的な抗体 である。
本発明の抗体は、 Lrp4ポリペプチド若しくはその断片、 またはそれらを発現 する細胞を感作抗原として利用することにより製造することができる。 また、 Lr p4ポリぺプチドの短い断片はゥシ血清アルプミン、 キーホー/レリンぺットへモ シァニン、 卵白アルブミン等のキヤリァに結合した形で免疫原として用いてもよ い。 また、 Lrp4のポリペプチドまたはその断片と共に、 アルミニウムアジュパ ント、 完全 (または不完全)フロイントアジュパント、 百日咳菌アジュパント等の 公知のアジュパントを抗原に対する免疫応答を強化するために用いてもよい。 本発明における 「Lrp4ポリペプチド」 はペプチド重合体であり、 配列番号: 3 または 4記載のアミノ酸配列を有する蛋白質を好ましい例として挙げることがで きる。 LrP4ポリぺプチドを構成するァミノ酸残基は天然に存在するものでも、 また修飾されたものであっても良い。 さらに、 LrP4ポリペプチドには膜貫通領 域部分を欠く蛋白質、 及びその他のぺプチド配列により修飾された融合蛋白質が
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- 1 6 - 含まれる。
本発明において、 Lrp4ポリペプチドは、 LrP4ポリペプチドの抗原性を有すれ ばよく、 配列番号: 3または 4のアミノ酸配列において 1若しくは複数個のアミ ノ酸が欠失、 揷入、 置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを 包含する。 1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、 挿入、 置換または付加されたァ ミノ酸配列からなる変異ポリぺプチドで、 元のポリぺプチドと同じ生物学的活性 が維持されることは公知である(Mark et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. U SA 81: 5662-6; Zoller and Smith (1982) Nucleic Acids Res. 10: 6487-500; Wang et al. (1984) Science 224: 1431-3; Dalbadie- McFarland et al. (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 6409-13)。 そして、 このような配列番号: 3 または 4のアミノ酸配列において 1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、 揷入、 置 換または付加されたァミノ酸配列を有する Lrp4の抗原性を維持したポリぺプチ ドは、 該ポリぺプチドをコ一ドするポリヌクレオチドを公知の『Molecular Clon ing, A Laboratory Manual 2nd ed.』 (Cold Spring Harbor Press (1989) )、 『C urrent Protocols in Molecular Biology』 (John Wiley & Sons (1987 - 1997);特 に Section8. 1— 8· 5)、 Hashimoto— Goto et al. (1995) Gene 152: 271—5、 Kunkel (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488-92、 Kramer and Fritz (1987) M ethod. Enzymol. 154: 350 - 67、 Kunkel (1988) Method. Enzymol. 85: 2763-6 等に記載の部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製し、 適宜発現させること により得ることができる。
LrP4ポリペプチド断片は、 上記 Lrp4ポリペプチドの一部と同一であり、 少な くとも 8アミノ酸残基以上 (例えば、 8、 10、 12、 または 15アミノ酸残基以上)か らなるポリペプチド断片である。 特に好ましい断片としては、 ァミノ末端、 カル ボキシル末端、 膜貫通ドメィンを欠失したポリぺプチド断片を挙げることができ る。 αヘリックス及ぴ αヘリックス形成領域、 α両親媒性領域、 βシート及ぴ β シート形成領域、 3両親媒性領域、 基質結合領域、 高抗原指数領域、 コイル及び
コイル形成領域、 親水性領域、 疎水性領域、 ターン及びターン形成領域、 並びに 表面形成領域を含む断片が Lrp4のポリぺプチド断片に含まれる。 本発明におけ る Lrp4のポリぺプチド断片は、 Lrp4ポリぺプチドの抗原性さえ有すればどのよ うな断片であってもよい。 ポリペプチドの抗原決定部位は、 蛋白質のアミノ酸配 列上の疎水性 Z親水性を解析する方法 (Kyte- Doolittle (1982) J. Mol. Biol. 1 57: 105 - 22)、 二次構造を解析する方法(Chou-Fasman (1978) Ann. Rev. Biochem 47: 251-76)により推定し、 さらにコンピュータ一プログラム(Anal. Biochem. 1 51: 540-6 (1985) )、 または短いペプチドを合成しその抗原性を確認する PEPSCA N法 (特表昭 60 - 500684号公報)等により確認することができる。
Lrp ポリぺプチド、 及ぴポリぺプチド断片は、 Lrp4を発現する細胞 ·組織等 を原料として、 その物理的性質等に基づいて単離することができる。 また、 公知 の遺伝子組換え技術により、 また化学的な合成法により製造することもできる。 例えば、 Lrp4ポリぺプチドを in vitroで製造する場合、 in vitro トランスレー シヨン(Dasso and Jackson (1989) Nucleic Acids Res. 17: 3129- 44)等の方法 に従って、 細胞を含まない試験管内の系でポリペプチドを製造することができる。 それに対して、 細胞を用いてポリペプチドを製造する場合、 まず所望のポリぺプ チドをコードするポリヌクレオチドを適当なベクターに組み込み、 適当な宿主細 胞を選択し該べクターによる形質転換を行い、 形質転換された細胞を培養するこ とにより所望のポリぺプチドを得ることができる。
適当なベクターとして、 プラスミド、 コスミド、 ウィルス、 パクテリオファー ジ、 クロー-ング用ベクター、 発現ベクター等の種々のベクターを挙げることが できる (Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbo r Press (1989); Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Son s (1987) )。 ベクターは、 導入された宿主細胞内で所望のポリヌクレオチドが発 現されるように制御配列を有し、 ポリヌクレオチドは該制御配列下に結合される。 ここで 「制御配列」 とは、 宿主細胞が原核生物であればプロモータ一、 リポソ一
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- 1 8 - ム結合部位、 及ぴターミネータ一を含み、 真核生物の場合は、 プロモーター及ぴ ターミネータ一であり、 場合によってトランスァクチべ一ター、 転写因子、 転写 物を安定化するポリ Aシグナル、 スプライシング及ぴポリアデュル化シグナル等 が含まれる。 このような制御配列は、 それに連結されたポリヌクレオチドの発現 に必要とされるすべての構成成分を含むものである。 ベクターは、 選択可能なマ 一力一を含んでいてもよい。 さらに、 細胞内で発現されたポリペプチドを小胞体 内腔、 グラム陰性菌を宿主とする場合ペリブラズム内、 または細胞外へと^1さ せるために必要とされるシグナルぺプチドを目的のポリぺプチドに付加するよう にして発現べクタ一へ組み込むこともできる。 このようなシグナルぺプチドとし て、 異種蛋白質由来のシグナルペプチドを利用することができる。 さらに、 必要 に応じリンカ一の付加、 開始コドン (ATG)、 終止コドン (TM、 TAGまたは TGA)の 挿入を行ってもよい。
in vitroにおけるポリペプチドの発現を可能にするベクターとしては、 pBEST (Promega)を例示することができる。 また、 原核細胞宿主における発現に適した 種々のベクターが公知であり (『微生物学基礎講座 8遺伝子工学』 (共立出版) 等参照) 、 原核細胞を宿主として選択した場合、 当業者であれば選択した宿主に 適したベクター、 ベクターの宿主への導入方法を適宜選ぶことができる。 その他、 酵母等の真菌類、 高等植物、 昆虫、 魚類、 両生類、 爬虫類、 鳥類、 哺乳類、 種々 の培養系細胞(C0S、 Hela、 C127、 3T3、 ΒΗΚ、 ΗΕΚ293、 Bowesメラノーマ細胞)、 ミエローマ、 Vero、 Namalwa, Namalwa KJ - 1、 HBT5637 (特開昭 63- 299号公報) 等)も Lrp4ポリぺプチド及ぴその抗原性断片を発現させる宿主として利用するこ とができ、 各細胞に適したベクター系、 ベクターの宿主細胞への導入手法も公知 である。 さらに、 動物の生体内 (Susumu (1985) Nature 315: 592-4; Lubon (19 98) Biotechnol. Annu. Rev. 4: 1-54等参照)、 及び植物体において外来蛋白質 を発現させる方法も公知であり LrP4ポリヌクレオチドを発現させるために利用 することができる。
べクターへの DNAの揷入は、 制限酵素サイトを利用したリガーゼ反応により行 ことカ¾できる (Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987) Section 11. 4-11. 11 ; Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd e d., Cold Spring Harbor Press (1989) Section 5. 61-5. 63)。 また必要に応じ、 使用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、 発現効率の高い塩基配列を選択し、 Lrp4ポリペプチドコード発現ベクターを設計することができる(Grantham et al.
(1981) Nucleic Acids Res. 9: r43-74) G Lrp4ポリペプチドを産生する宿主は、 Lrp ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞内に含むものであるが、 該ポリヌクレオチドは、 宿主細胞のゲノム上の天然に存在する位置になければよ く、 該ポリヌクレオチド自身のプロモーター支配下にあっても、 ゲノム中に組み 込まれていても、 染色体外の構造として保持されていても良い。
宿主細胞の培養は、 選択した細胞に適した公知の方法により行う。 例えば、 動 物細胞を選択した場合には、 DMEM (Virology 8: 396 (1959)、 MEM (Science 122: 501 (1952) )、 RPMI1640 (J. Am. Med. Assoc. 199 : 519 (1967) )、 199 (Proc. Soc. Biol. Med. 73: 1 (1950) )、 IMDM等の培地を用い、 必要に応じゥシ胎児血清 (F CS)等の血清を添加し、 pH約 6~8、 30〜40。Cにおいて 15〜200時間前後の培養を 行うことができる。 その他、 必要に応じ途中で培地の交換を行ったり、 通気及ぴ 攪拌を行つたりすることができる。
通常、 遺伝子組換え技術により製造された Lrp4ポリペプチドは、 まず、 ポリ ペプチドが細胞外に分泌される場合には培地を、 特にトランスジェニック生物の 場合には体液等を、 細胞内に産生される場合には細胞を溶解して溶解物の回収を 行う。 そして、 蛋白質の精製方法として公知の塩析、 蒸留、 各種クロマトグラフ ィー、 ゲル電気泳動、 ゲル濾過、 P艮聽過、 再結晶、 酸抽出、 透析、 免疫沈降、 溶媒沈澱、 溶媒抽出、 硫安またはエタノール沈澱等を適宜組合せることにより所 望のポリペプチドを精製する。 クロマトグラフィーとしては、 ァニオンまたは力 チオン交換等のイオン交換、 ァフィユティー、 逆相、 P及着、 ゲル濾過、 疎水性、
ヒドロキシアパタイト、 ホスホセ ロース、 レクチンクロマトグラフィー等が公 知であ <0 (Strategies for Protein Purification and Character i zat i on: A Lab oratory Course Manual, Marshak et a丄, ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1996) )。 HPLC、 FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うこと力 S できる。 また、 例えば、 GSTとの融合蛋白質とした場合にはダルタチオンカラム を、 ヒスチジンタグを付加した融合蛋白質とした場合にはニッケルカラムを用い た精製法も利用できる。 Lrp4ポリべプチドを融合蛋白質として製造した場合に は、 必要に応じて精製後にトロンビンまたはファクター Xa等を使用して不要な 部分を切断することもできる。
また、 天然由来のポリペプチドを精製して取得してもよい。 例えば、 Lrp4ポ リペプチドに対する抗体を利用して、 ァフィ-ティークロマトグラフィ一により 精 することもできる (Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987) Section 16. 1-16. 19)。 さらに、 精製したポリペプチドを必要に 応じキモトリブシン、 グ/レコシダーゼ、 トリプシン、 プロテインキナーゼ、 リシ ルエンドべプチダーゼ等の酵素を用いて修飾することも可能である。 一方、 Lrp4 のポリぺプチド断片は、 上述の LrP4ポリぺプチドと同じような合成及ぴ遺伝子 工学的な手法に加えて、 ぺプチダーゼのような適当な酵素を用いて Lrp4ポリべ プチドを切断して製造することもできる。
ドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を選択するためのポリクローナル抗体 は、 例えば、 上述のようにして精製された Lrp4のポリペプチドまたはその断片 を所望によりアジュパントと共に哺乳動物に免疫し、 免疫した動物より血清を得 る。 ここで用いる哺乳動物は、 特に限定されないが、 ゲッ歯目、 ゥサギ目、 霊長 目の動物が一般的である。 マウス、 ラット、 ハムスター等のゲッ歯目、 ゥサギ等 のゥサギ目、 力二クイザ ァカゲザル、 マントヒヒ、 チンパンジー等のサル等 の霊長目の動物が挙げられる。 動物の免疫化は、 感作抗原を Phosphate-Buff ere d Saline (PBS)または生理食塩水等で適宜希釈、 懸濁し、 必要に応じアジュパン
トを混合して乳化した後、 動物の腹腔内または皮下に注射して行われる。 その後、 好ましくは、 フロイント不完全アジュパントに混合した感作抗原を 4~21日毎に 数回投与する。 抗体の産生は、 血清中の所望の抗体レベルを慣用の方法により測 定することにより確認することができる。 最終的に、 血清そのものをポリクロー ナル抗体として用いても良いし、 さらに精製して用いてもよい。 具体的な方法と して、 例 ば、 『Cur;rent Protocols in Molecular Biology』 (John Wiley & So ns (1987) Section 11. 12-11. 13)を参照することができる。
また、 モノクローナル抗体を産生するためには、 まず、 上述のようにして免疫 化した動物より脾臓を摘出し、 該脾臓より免疫細胞を分離し、 適当なミエローマ 細胞とポリエチレングリコール (PEG)等を用いて融合してハイプリドーマを作成 する。 細胞の融合は、 Milsteinの方法(Galfre and Milstein (1981) Methods E nzymol. 73: 3- 46)に準じて行うことができる。 ここで、 適当なミエローマ細胞 として特に、 融合細胞を薬剤により選択することを可能にする細胞を挙げられる。 このようなミエローマを用いた場合、 融合されたハイプリドーマは、 融合された 細胞以外は死滅するヒポキサンチン、 アミノブテリン及ぴチミジンを含む培養液 (HAT培養液)で培養して選択する。 次に、 作成されたハイプリドーマの中から、 本発明のポリペプチドまたはその断片に対して結合する抗体を産生するクローン を選択する。 その後、 選択したクローンをマウス等の腹腔内に移植し、 腹水を回 収してモノクローナル抗体を得る。 また、 具体的な方法として、 『Current Prot ocols in Molecular Biology』 (John Wiley & Sons (1987) Section 11. 4-11. 1 1)を参照することもできる。
ハイプリドーマは、 その他、 最初に EBウィルスに感染させたヒトリンパ球を in vitroで免疫原を用いて感作し、 感作リンパ球をヒト由来のミエローマ細胞 (U266等)と融合し、 ヒト抗体を産生するハイプリドーマを得る方法 (特開昭 63-1 7688号公報)によっても得ることができる。 また、 ヒト抗体遺伝子のレパートリ 一を有するトランスジエニック動物を感作して製造した抗体産生細胞を用いても、
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- 2 2 - ヒト抗体を得ることができる(TO92/03918 ; W093-02227 ; W094/02602 ; W094/2558 5; W096/33735 ; W096/34096 ; Mendez et al. (1997) Nat. Genet. 15: 146-56 等)。 ハイプリドーマを用いない例としては、 抗体を産生するリンパ球等の免疫 細胞に癌遺伝子を導入して不死化する方法が挙げられる。
また、 遺伝子組換え技術により抗体を製造することもできる(Borrebaeck and Larrick (1990) Therapeutic Monoclonal Antibodies, MacMillan Publishers L TD., UK参照)。 そのためには、 まず、 抗体をコードする遺伝子をハイプリ ドー マまたは抗体産生細胞 (感作リンパ球等)からクローユングする。 得られた遺伝子 を適当なベクターに組み込み、 宿主に該ベクターを導入し、 宿主を培養すること により抗体を産生させる。 このような組換え型の抗体も本発明の抗体に含まれる。 代表的な組換え型の抗体として、 非ヒト抗体由来可変領域及ぴヒト抗体由来定常 領域とからなるキメラ抗体、 並びに非ヒト抗体由来相補性決定領域 (CDR)、 及ぴ、 ヒト抗体由来フレームワーク領域 (FR)及ぴ定常領域とからなるヒト化抗体が挙げ られる(Jones et al. (1986) Nature 321: 522—5 ; Reichmann et al. (1988) Na ture 332: 323—9; Presta (1992) Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593-6; Methods Enzymol. 203: 99-121 (1991) )。
抗体断片は、 上述のポリクローナルまたはモノクローナル抗体をパパイン、 ぺ プシン等の酵素で処理することにより製造し得る。 または、 抗体断片をコードす る遺伝子を用いて遺伝子工学的に製造することも可能である(Co et al. , (1994) J. Immunol. 152: 2968 - 76 ; Better and Horwitz (1989) Methods Enzymol. 17 8: 476-96; Pluckthun and Skerra (1989) Methods Enzymol. 178: 497-515; La moyi (1986) Methods Enzymol. 121: 652—63 ; Rousseaux et al. (1986) 121: 6 63-9; Bird and Walker (1991) Trends Biotechnol. 9: 132-7参照)。
多特異性抗体には、 二特異性抗体 (BsAb)、 ダイァボディ(Db)等が含まれる。 多 特異性抗体は、 (1)異なる特異性の抗体を異種二機能性リンカーにより化学的に カップリングする方法 (Paulus (1985) Behring Inst. Mill. 78: 118-32)、 (2)
異なるモノクローナル抗体を分泌するハイプリドーマを融合する方法 (Millstein and Cuello (1983) Nature 305: 537-9)、 (3)異なるモノクローナル抗体の軽鎖 及び重鎖遺伝子 (4種の DM)によりマウス骨髄腫細胞等の真核細胞発現系をトラ ンスフエクシヨンした後、 二特異性の一価部分を単離する方法 (Zi讓 ermann (198 6) Rev. Physio. Biochem. Pharmacol. 105: 176 - 260; Van Dijk et al. (1989) Int. J. Cancer 43: 944 - 9)等により作製することができる。 一方、 Dbは遺伝 子融合により構築され得る二価の 2本のポリペプチド鎖から構成されるダイマー の抗体断片であり、 公知の手法により作製することができる(Holliger et al.
(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-8; EP404097; W093/11161参照)。 抗体及ぴ抗体断片の回収及び精製は、 プロテイン A及び Gを用いて行う他、 抗 体以外のポリぺプチドの製造の場合と同様に上記した蛋白質精製技術によっても 行い得る (Antibodies : A Laboratory Manual, Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory (1988) )。 例えば、 本発明の抗体の精製にプロティ ン Aを利用する場合、 Hyper D、 P0R0S、 Sepharose F. F. (Pharmacia)等のプロテ イン Aカラムが公知であり、 使用可能である。 得られた抗体の濃度は、 その吸光 度を測定することにより、 または酵素結合免疫吸着検定法 (ELISA)等により決定 することができる。
抗体の抗原結合活性は、 吸光度測定、 蛍光抗体法、 酵素免疫測定法 (EIA)、 放 射免疫測定法 (RIA)、 ELISA等により測定することができる。 ELISA法により測定 する場合、 本発明の抗体をプレート等の担体に固相化し、 次いで LrP4ポリぺプ チドを添加した後、 目的とする抗体を含む試料を添加する。 ここで、 抗体を含む 試料としては、 抗体産性細胞の培養上清、 精製抗体等が考えられる。 続いて、 本 発明の抗体を認識する二次抗体を添加し、 プレートのインキュベーションを行う。 その後、 プレートを洗浄し、 二次抗体に付加された標識を検出する。 即ち、 二次 抗体がアルカリホスファターゼで標識されている場合には、 P-ニトロフエ二ルリ ン酸等の酵素基質を添加して吸光度を測定することで、 抗原結合活性を測定する
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- 2 4 - ことができる。 また、 抗体の活性評価に、 BIAcore (Pharmacia)等の市販の系を使 用することもできる。
<ド一パミン産生ニューロンの選択方法 >
本発明により分裂停止前のドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を選択的に 均一な集団として選択する方法が提供された。 分裂停止前のドーパミン産生ュュ 一口ン前駆細胞は、 本発明のマーカーポリヌクレオチドプローブまたは抗体を用 いて選択することができる。 ここで、 「選択」 という用語は、 或る試料中におけ るドーパミン産生ュユーロン増殖前駆細胞の存在を検出すること、 及ぴ、 存在を 検出しさらに分離または単離することの両方を含むものである。 より具体的には、 本発明は、 本発明のマーカーポリヌクレオチドプローブとドーパミン産生ュユー 口ン增殖前駆細胞を含むと考えられる細胞試料とを接触させる工程を含むドーパ ミン産生ニューロン前駆細胞を選択する方法を提供するものである。 該方法にお いては、 マーカーポリヌクレオチドプローブを好ましくは放射性同位体または非 放射性化合物で標識しておく。 例えば、 標識するための放射性同位体としては、 3¾、 ¾等を挙げることができる。 放射標識したマーカーポリヌクレオチドプロ ープを用いた場合、 エマルションオートラジオグラフィ一により銀粒子を検出す ることによりマーカーと結合する R Aを検出することができる。 また、 マーカー ポリヌクレオチドプローブ標識のための非放射性同位体としては、 ビォチン、 ジ ゴキシゲェン等が例示される。 ビォチン標識マーカーの検出は、 例えば、 蛍光、 または、 アルカリ性ホスファタ一ゼ若しくは西洋ヮサビペルォキシダ一ゼ等の酵 素を標識したアビジンを用いて行うことができる。 一方、 ジゴキシゲニン標識マ 一力一の検出には、 蛍光、 または、 アルカリ性ホスファターゼ若しくは西洋ヮサ ビペルォキシダーゼ等の酵素を標識した抗ジゴキシゲニン抗体を使用することが できる。 酵素標識を使用する場合には、 酵素の基質と共にインキュベートし、 安 定な色素をマーカー位置に沈着させることで検出を行う。 特に蛍光を利用した、
in situハイプリッド形成法 (FISH)が簡便であり、 特に好ましいものである。 また、 本発明により、 本発明のドーパミン産生-ユーロン増殖前駆細胞を選択 するための抗体とドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を含むと考えられる細 胞試料とを接触させる工程を含むドーパミン産生ュユーロンの選択方法が さ れる。 即ち、 ドーパミン産生-ユーロン増殖前駆細胞を含むことが予測される細 胞試料と本発明の抗体とを接触させ、 抗体に結合する細胞を選択することで Lrp 4ポリペプチドを発現している細胞、 即ち、 分裂停止前のドーパミン産生ニュー ロン増殖前駆細胞を取得できる(図 6参照)。 細胞との接触前に、 抗体を適当な担 体に固定ィ匕して用いることも可能である。 または、 細胞と抗体とを接触させ、 結 合させた後、 抗体のァフィ二ティーによる精製を行うことで、 該抗体と結合した 細胞を選択的に回収することもできる。 例えば、 本発明の抗体がピオチンと結合 されている場合には、 アビジンやストレプトアビジンを結合したプレートやカラ ムに対して添加することにより精製を行うことができる。 その他、 例えば、 磁性 粒子を抗体に結合し、 該抗体及び抗体に結合した Lrp4を細胞表面上に発現して いる細胞を磁石を利用して回収することもできる。 また、 セルソータ一、 及び蛍 光等により標識した抗 Lrp4抗体を使用して、 フローサイトメトリーにより Lrp4 を発現するドーパミン産生ニューロンを選択することもできる。
さらに、 本発明により、 本発明のマーカーポリヌクレオチドプローブまたは抗 体を使用して選択されたドーパミン産生-ユーロン増殖前駆細胞を培養し、 培養 した前駆細胞を分裂停止後の-ユーロンマーカーを用いてスクリ一ユングするこ とにより、 腫瘍化する危険性の低い移植治療に特に適したドーパミン産生ュユー 口ン前駆細胞を得ることができる。 分裂停止後のニューロンマーカーとしては、 例えば 65B13を挙げることができる。 例えば、 65BB13ポリぺプチドに対する抗 体を培養したド一パミン産生-ユーロン前駆細胞と接触させて 65B13ポリべプチ ドを発現している細胞を選択することにより分裂停止直後のドーパミン産生-ュ 一ロン前駆細胞を選択することができる。 また、 65B13は Igドメイン接着分子
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- 2 6 - 様の構造を有する。 培養細胞中で 65B13発現させた場合、 65B13を発現させた細 胞同士は接着するのに対し、 65B13を発現させていない細胞とは接着しない。 そ のため、 65B13 を介した接着はホモフィリックな結合と考えられている。 そこで、 65B13ポリぺプチドの細胞外領域部分の接着を利用した 65B13発現ドーパミン産 生二 ーロン前駆細胞のスクリーニングも可能である。
LrP4発現ドーパミン産生-ユーロン増殖前駆細胞及び 65B13発現ドーパミン 産生-ユーロン前駆細胞の選択及び/またはスクリ一ユングは、 各々 Lrp4または 65B13に対するプロモーターを利用して行うこともできる(例えば、 特開 2002 - 51 775号公報参照)。 例えば、 後述する Lrp4の発現領域解析により得られるプロモ 一ター部分に対し、 GFP等の検出可能なマーカーをコードする遺伝子を連結した 構築物を含むベタターを細胞に対してトランスフエクションすることができる。 その他、 Lrp4遺伝子座へマーカーをコードする遺伝子をノックインすることが できる。 どちらの場合にも、 ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的にマーカ 一遺伝子の発現が検出されることとなり、 特異的な細胞の選択が可能となる。 65 B13についても Lrp4と同様の方法によりスクリーニングが可能である。 65B13に ついては、 例えば、 特願 2002-307573号明細書に記載の配列を参照することがで さる。
ここで使用する細胞試料は好ましくは、 中脳腹側領域の細胞、 または in vitr oで分化誘導されたドーパミン産生-ユーロンを含む培養培地である。 in vitro におけるドーパミン産生ュユーロンの分化誘導は、 公知の ES細胞、 骨髄間質細 胞、 神経由来の不死化セルライン (特表平 8-509215号公報;特表平 11-506930号 公報;特表 2002-522070号公報)、 ニューロン始原細胞 (特表平 11-509729号公 報)等の細胞を出発材料として、 公知の方法により行うことができる。 通常、 ド ーパミン産生ニューロンは、 脳のドーパミン産生ニューロン領域から得た組織を 神経組織由来の支持細胞層と共培養することにより分化させることができる。 さ らに、 線条体及ぴ皮質等の通常非ドーパミン産生神経組織からドーパミン産生細
胞を誘導する方法も知られている(特表平 10 - 509319号公報)。 また、 低酸素条件 下での培養により、 より多くドーパミン産生ニューロンを含む細胞が得られると の報告もある(特表 2002-530068号公報〉。 本発明のドーパミン産生二ユーロン前 駆細胞の選択に用いる細胞試料は、 これらを含む如何なる方法により分離または 培養された細胞群であってもよい。
また、 本発明の抗体またはポリペプチドを固定する担体としては、 細胞に対し て無害なものである必要がある。 例えば、 合成または天然の有機高分子化合物、 ガラスビーズ、 シリカゲル、 アルミナ、 活性炭等の無機材料、 及ぴこれらの表面 に多糖類、 合成高分子等をコーティングしたものが考えられる。 担体の形状には 特に制限はなく、 膜状、 繊維状、 顆粒状、 中空糸状、 不織布状、 多孔形状、 ハ- カム形状等が挙げられ、 その厚さ、 表面積、 太さ、 長さ、 形状、 大きさを種々変 えることにより接触面積を制御することができる。 くドーパミン産生ュユーロン前駆細胞 >
このようにして Lrp4の発現を指標として獲得された細胞は、 分裂停止前のド ーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞であること力 ら、 従来の雑多な細胞集団ま たは外来遺伝子を導入したドーパミン産生ュユーロンと比べて、 安全性、 生存率、 ネットワーク形成能の面で PD等の神経変性疾患の移植治療に好ましいものであ る。 LrP4の発現を指標として獲得された細胞は、 そのまま、 または in vitroで 増殖させた後に移植に使用することができる(図 6)。 本発明の LrP4の発現を指 標として選択されるドーパミン産生-ユーロン前駆細胞は増殖中の前駆細胞であ ることから、 脳内の最適な場所で分化成熟していく可能性、 また in vivoにおい てさらに前駆細胞が増殖する可能性があることから、 より長期的な治療効果が期 待される。 さらに、 本方法により得られた本発明の細胞 (群)は、 分裂停止前の前 駆細胞であることから、 in vitroにおいて培地等の条件を選択することにより 適当な段階まで分化させることも可能であり、 種々の神経移植治療の材料として
も好ましいものである。 例えば、 前述したように、 Lrp4の発現を指標として選 択された細胞について、 さらに細胞分裂停止直後のマーカー (例えば、 65B13)を 指標とした選択を行うことにより、 より移植の上では安全性の高い細胞を得るこ ともできる。
本発明の方法により得られたェユーロン前駆細胞の移植では、 1 X 103〜1 X 106 個、 さらに好ましくは 5〜6 X 104個のニューロンを移植する。 第 1の方法として は、 細胞の懸濁液を脳に移植する定位脳固定術 (stereotaxic surgery)が挙げら れる。 また、 ミクロ手術 (microsurgery) により細胞を移植しても良い。 ニュー ロン組織の移植方法については、 Backhand等 (Backlund et al. (1985) J. Neur osurg. 62: 169—73)、 Lindvall等(Lindvall et al. (1987) Ann. Neurol. 22: 457—68)、 Madrazo等 (Madrazo et al. (1987) New Engl. J. Med. 316: 831—4) の方法を参照することができる。
さらに、 本発明の細胞は、 ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的遺伝子及 ぴ前駆細胞からドーパミン産生ニューロンへの各成熟段階に特異的な遺伝子の単 離、 PD治療のターゲット探索、 ドーパミン産生ニューロンの成熟過程の解明、 並びに成熟を指標としたスクリーニング等にも利用することができる。
<遺伝子発現レベルの比較 >
本発明の抗体を用いて得られた分裂停止前のドーパミン産生ニューロン前駆細 胞は、 該細胞において特異的に発現している遺伝子を単離する材料として使用す ることができる。 さらに、 本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞を分化、 誘導、 または増殖させた細胞に特異的に発現している遺伝子を調ぺ、 単離するこ ともできる。 また、 分化/誘導 Z増殖させた細胞と元の前駆細胞とにおいて発現 レべ こ差違のある遺伝子を調べることによりドーパミン産生ニューロンの生体 内における分ィ匕に必要とされる遺伝子を調べることもできる。 このような遺伝子 はドーパミン産生ニューロンにおける何等かの欠陥が病因となっている疾病の治
療対象候補となり得るので、 当該遺伝子を決定し、 単離することは非常に有用で ある。
本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞と該細胞から分ィ匕 Z誘導 Z増殖さ れた細胞若しくはその他の細胞、 または該分ィヒ Z誘導/増殖された細胞とその他 の細胞との間での遺伝子の発現レベルの比較は、 慣用の細胞 in situハイブリダ ィゼーション、 ノーザンプロットハイブリダィゼーション、 RNAドットプロット ハイプリダイゼーシヨン、 逆転写 PCR、 RNase保護アツセィ、 DNAマイクロアレ ィハイブリダィゼーシヨン、 遺伝子発現の連続解析 (SAGE; serial analysis of g ene expression) (Velculescu et al. (1995) Science 270: 484-7)、 差し引きハ イブリダイゼーション (sub ractive hybridization)、 代表差違分析 (representa tion difference analysis ; RDA) (Lisitsyn (1995) Trends Genet. 11: 303-7) 等により行うことができる。
細胞 in situハイブリダイゼーションでは、 特定の RNA配列に特異的な標識プ ロープを用い細胞から調製した総 RNAまたは polyA+RNAに対してハイブリダィゼ ーシヨンを行うことにより、 個々の細胞における RNAのプロセッシング、 輸送、 細胞質への局在ィ匕が起こる場所等を調べることができる。 また、 RNAの大きさを ゲル電気泳動等によりサイズ分画して決定することもできる。 また、 定量的な蛍 光 in situハイブリダイゼーション (FISH)及ぴデジタル画像顕微鏡を用いれば、 RNA転写産物を in situで視覚的に捉えることも可能であり(Femino et al. (19 98) Science 280: 585-90)、 本発明において利用することができる。
遺伝子発現の解析で逆転写 PCRを用いた場合、 特定遺伝子の発現を大まかに定 量することができる。 本方法では、 1つの RNA転写産物の種々のァイソフォーム を検出及ぴ解析することも可能である。 逆転写 PCRにおいてはまず、 ェキソン特 異性プライマーを用いた逆転写 PCRを行い、 予想された産物以外の増幅産物が検 出された場合、 それらを解析することにより選択的スプライシングにより生じる mRNAァイソフォームを同定することが可能である。 例えば、 Pykett et al. (19
94) Hum. Mol. Genet. 3: 559-64等に記載の方法を参照することができる。 特 に大まかな発現パターンを迅速に解析することが求められる場合、 本発明の PCR を利用した本方法は、 その速さ、 感度の高さ、 簡便さの点からも望ましいもので ある。
DNAチップを使用することにより、 遺伝子発現スクリーニングの能率を向上さ せることができる。 ここで、 DNAチップとは、 ガラス等の担体表面上にオリゴヌ クレオチドまたは DNAクローン等を高密度に固定した小型のアレイである。 例え ば、 多重発現スクリーニングを行うためには、 各目的遺伝子に対する cDNAク口 ーンまたは該遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドをチップに対して固定ィ匕し、 マ イクロアレイを作製する。 次に本発明のドーパミン特異的ニューロン前駆細胞、 または該細胞より分化/誘導 Z増殖された細胞より RNAを調製し、 逆転写酵素処 理を行い、 cDNAを得る。 次に、 得られた cDNA試料を蛍光タグ等のタグにより標 識し、 マイクロアレイに対するハイプリダイゼーシヨンを行う。 その結果、 総標 識 cDNA中、 細胞内で活発に発現している遺伝子の割合が高くなり、 あまり発現 されていない遺伝子の割合は低くなる。 即ち、 標識 pDNAとチップ上の cDNAク口 ーンまたはオリゴヌクレオチドとのハイプリッド形成を表す蛍光シグナレの強度 は、 標識 cDNA内での各配列の発現の度合いを示すことなり、 遺伝子発現の定量 を可能成らしめる。
また、 縮重 PCRプライマーを用いた逆転写 PCRを行う mRNAディファレンシャ ルディスプレイにより、 本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞、 または該 細胞から分ィヒ Z誘導 増殖された細胞について多数の遺伝子の発現を同時に解析 することもできる。 まず、 特定の mRNAの polyA尾部に 3' 末端の 1または 2つ の塩基を変更した修飾オリゴ dTプライマーを準備し、 本発明の前駆細胞または 該細胞から分化 Z増殖された細胞、 及び、 発現を比較する対照細胞から単離した 総脆に対して逆転写酵素反応を行う(Liang et al. (1993) Nucleic Acids Res. 21: 3269-75)。 変更した塩基が 「G」 であれば、 polyA尾部の直前に Cを持つ m
NAを選択的に増幅することができ、 また 「CA」 であれば、 TGを直前に持つ mRNA を増幅することができる。 次に、 第 2のプライマーとして、 10塩基程度の長さ の任意の配列を有するものを用意し、 修飾オリゴ dTプライマー及ぴ第 2のプラ イマ一を使用して PCR増幅反応を行う。 増幅産物を泳動距離の長いポリアクリル アミドゲルを用いて電気泳動し、 サイズ分画する。 このような方法により、 本発 明の細胞と対照細胞とで各細胞に特異的に発現している mRNA由来の cDNAは、一 方の試料を泳動した場合にのみ検出されるパンドとして検出することができる。 この方法では、 同定されていな 、遺伝子の発現についても解析することができる。
SAGE分析は、 多数の転写産物の発現を同時に検出することができ、 また検出 に特殊な装置を必要としない点で好ましい分析方法の一つである。 まず、 本発明 のドーパミン産生ニューロン前駆細胞または該細胞から分ィ匕 Z誘導/増殖された 細胞より polyA+RNAを慣用の方法により抽出する。 次に、 ビォチン化オリゴ dT プライマーを用い、 前記腿を cDNAに変換し、 4塩基認識制限酵素(アンカー用 酵素; AE)で処理する。 これにより、 AE処理断片はその 3> 末端にビォチン基を含 んだ形となる。 次に、 AE処理断片をストレプトアビジンに結合させる、 結合さ れた cDNAを 2画分に分け、 それぞれの画分を別々の 2本鎖ォリゴヌクレオチド アダプター(リンカ一) A及び Bに連結する。 このリンカ一は、 (1)アンカー用酵 素の作用で生じる突出部の配列と相補的な配列を有する 1本鎖突出部、 (2)タグ 用酵素 (tagging enzyme ; TE)となる IIS型制限酵素 (認識部位より 20bp以下の離 れた定位置の切断を行う)の 5' 塩基認識配列、 及び (3) PCR用特異的プライマー を構成するのに十分な追加配列より構成される。 ここで、 リンカ一を連結した c DNAをタグ用酵素で切断することにより、 リンカー結合型の状態で cDNA配列部 分のみが短鎖配列タグとなる。 次に、 リンカ一の異なる 2種類のプールを互いに 連結し、 リンカ一A及ぴ Bに特異的プライマーを使用して PCR増幅する。 その結 果、 増幅産物はリンカー A及ぴ Bに結合した 2つの隣接配列タグ(ダイタグ; dita g)を含む多様な配列の混在物として得られる。 そこで、 増幅産物をアンカー用酵
素により処理し、 遊離したダイタグ部分を通常の連結反応により鎖状に連結し、 クロ一エングを行う。 クローユングにより得られたクロ一ンの塩基配列を決定す ることにより、 一定長の連続ダイタグの読み出しを得ることができる。 このよう にしてクローンの塩基配列を決定し、 配列タグの情報が得られれば、 それぞれの タグに該当する mRNAの存在を同定することができる。
差し引きハイプリダイゼーシヨンは、 種々の組織または細胞間で発現の差違の ある遺伝子のクローユングによく用いられる方法であるが、 本発明のドーパミン 産生-ユーロン前駆細胞、 またはそれから分化 z誘導 z増殖された細胞において 特異的に発現している遺伝子をクローニングするのにも使用することができる。 まず、 本発明の前記細胞のうちの試験する細胞の DNA試料を調製する(以下、 テ スト DNAと呼ぶ)。 次に、 比較する細胞の DNA (以下、 ドライバ一 DNAと呼ぶ)を調 製する。 テスト DNAとドライパー DNAとを逆に用いることもできる。 いずれにせ よ、 テスト DNAに存在し、 ドライパー DNAに存在しない遺伝子の存在が検出され る。 次に、 調製したテスト DNA及ぴ大過剰量のドライパー DNAを混合し、 変性さ せ一本鎖 DNAとした後にアニーリングさせる。 ァユーリング条件を調節すること により、 ドライパー DM中には存在しない特異的な配列をテスト DM由来の DNA のみからなる二本鎖 DNAとして単離することができる。 より詳細な方法について は、 S aroop et al. (1991) Nucleic Acids Res. 19: 1954及ぴ Yasunaga et a 1. (1999) Nature Genet. 21: 363 - 9等を参照することができる。
RDA法は、 PCRを利用した、 ドライパー DNAに存在しないテスト DM中の配列 を選択的に増幅することを可能とする方法であり、 上述のその他の方法と同様に 本発明において用いることができる。 より詳細な手順については、 Lisitsyn (19 95) Trends Genet. 11: 303- 7及ぴ Schutte et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 5950-4を参照することができる。
以上のようにして検出、 単離されたドーパミン産生ニューロン前駆細胞、 また は該細胞を分化、 誘導、 または増殖させた細胞に特異的な遺伝子を上述の各種公
知の方法によりベクター等に挿入し、 配列決定、 発現解析を行うこともできる。
<前駆細胞の成熟を指標としたスクリーニング >
本発明により、 本発明のドーパミン産生-ユーロン前駆細胞に対し、 被験物質 を接触させる工程、 及び接触による前駆細胞の分化または増殖を検出する工程を 含む、 スクリーエング方法が提供される。 本方法によりスクリーニングされる化 合物は、 ドーパミン産生ニューロンの分化、 増殖等を調節する機能を示すことか ら、 ド一パミン産生ニューロンにおける何等かの欠陥が病因となっている疾病の 治療対象候補となり得、 有用と考えられる。
ここで、 「被験物質」 とはどのような化合物であってもよいが、 例えば、 遺伝 子ライブラリーの発現産物、 合成低分子化合物ライブラリー、 合成ペプチドライ ブラリー、 抗体、 細菌放出物質、 細胞 (微生物、 植物細胞、 動物細胞)抽出液、 細 胞 (微生物、 植物細胞、 動物細胞)培養上清、 精製または部分精製ポリペプチド、 海洋生物、 植物または動物等由来の抽出物、 土壌、 ランダムファージペプチドデ イスプレイライブラリーが挙げられる。
細胞の分化や増殖は、 被験物質と接触させない場合における細胞の状態と比較 することにより検出することができる。 細胞の分化や増殖は、 顕微鏡下において 形態学的な観察を行うこと、 または、 細胞で産生されるドーパミン等の物質を検 出、 定量して検出してもよい。
<Lrp4の発現領域解析 >
Lrp4の発現制御領域は、 Lrp4の遺伝子配列を利用してゲノム DNAから公知の 方法によってクローニングすることができる。 例えば、 S1マッピング法のよう な転写開始点の特定方法 (細胞工学別冊 8新細胞工学実験プロトコ一ノレ, 東京 大学医科学研究所制痛研究部編, 秀潤社 (1993) pp. 362- 374)が公知であり、 利 用できる。 一般に、 遺伝子の発現制御領域は、 遺伝子の 5' 末端の 15〜: L00bp、
好ましくは 30〜50bpをプロープ DNAとして利用して、 ゲノム DNAライブラリー をスクリーニングすることによりクローユングすることができる(本発明におい ては、 配列番号: 1または 2の塩基全部またはその 1部)。 このようにして得られ るクローンは、 lOkbp以上の 5' 非翻訳領域を含むものであるので、 次にェキソ ヌクレアーゼ等により処理し短縮化または断片化する。 最後に、 @ϋされた発現 制御領域の候補を含む配列部分をレポーター遺伝子を利用して、 その発現の有無、 強さ、 制御等について評価し、 LrP4の発現制御領域の活性維持のための最小必 要単位を決定することができる。
遺伝子の発現制御領域は、 Neural Network等のプログラム (http: //www, fruit fly. or^. /seq^ tools/promoter, ntml ; Reese et al., Biocomputing: Proceeding s of the 1996 Pacific Symposium, Hunter and Klein ed. , World Scientific Publishing Co., Singapore, (1996) )を用いて予測することもできる。 さらに、 発現制御領域の活性最小単位を予測するプログラム (http://biosci. cbs. umn. edu. /software/proscan/promoterscan. htm; Prestridge (1995) j . Mo丄. Biol. 249: 923-32)も公知であり、 用いることができる。
このようにして単離された、 Lrp4遺伝子の発現領域は、 in vivoで分裂停止前 のドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞特異的に所望の蛋白質を産生するのに 利用することもできる。
<Lrp に対するリガンド>
Lrp4ポリぺプチドは膜貫通ドメィンを有すること力 ら、 天然において細胞膜 中に埋め込まれた状態で存在すると考えられる。 Lrp4は、 分裂停止前のドーパ ミン産生ニューロン増殖前駆細胞で発現されていることから、 前駆細胞の増殖制 御や-ユーロンの分化、 成熟に関与していることが考えられる。 従って、 Lrp4 に対するァゴニストゃアンタゴニスト等の機能を示す可能性があるリガンドは、 ド一パミン産生ニューロンの in vivo、 ex vivo及ぴ in vitroにおける分ィ匕を制
御するのに利用できる可能性がある。 Lrp4ポリぺプチドに対するリガンドの同 定においては、 まず、 Lrp4ポリペプチドと候補化合物とを接触させ、 結合の有 無を検定する。 この際、 Lrp4ポリペプチドを担体に固定したり、 細胞膜に埋め こまれた状態に発現させて用いることもできる。 候補化合物としては特に制限は なく、 遺伝子ライプラリーの発現産物、 海洋生物由来の天然成分、 各種細胞の抽 出物、 公知化合物及ぴペプチド、 植物由来の天然成分、 生体組織抽出物、 微生物 の培養上清、 並びにファージディスプレイ法等によりランダムに製造されたぺプ チド群 (J. Mol. Biol. 222: 301-10 (1991) )等が含まれる。 また、 結合の検出を 容易にするために、 候補化合物は標識しても良い。
<Lrp4の発現抑制 >
本発明により、 Lrp4が分裂停止前のドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞 で一過性に発現されることが明らかにされたことから、 Lrp4が前駆細胞の増殖 制御や-ユーロンの分化、 成熟に関与していることが考えられた。 従って、 Lrp4 遺伝子の発現を阻害するものは、 ドーパミン産生ニューロンの in vivo、 ex viv o及ぴ in vitroにおける分ィヒを制御するのに利用できる可能性がある。 遺伝子 の発現を阻害し得るものとして、 例えば、 アンチセンス、 リポザィム及ぴ 2本鎖 RNA (small interfering RNA; siRNA)が挙げられる。 従って、 本発明はこのよう なァンチセンス、 リボザィム及ぴ 2本鎖 RNAを提供するものである。
アンチセンスが標的遺伝子の発現を抑制する機構としては、 (1) 3重鎖形成に よる転写開始阻害、 (2)RNAポリメラーゼにより形成される局所的開状ループ構 造部位とのハイプリッド形成による転写抑制、 (3)合成中の RNAとのハイプリッ ド形成による転写阻害、 (4)イントロン -ェキソン接合点におけるハイプリッド形 成によるスプライシング抑制、 (5)スプライソソーム形成部位とのハイプリッド 形成によるスプライシング抑制、 (6)mRNAとのハイプリッド形成による、 mRNAの 細胞質への移行抑制、 (7)キヤッビング部位またはポリ A付加部位とのハイプリ
ッド形成によるスプライシング抑制、 (8)翻訳開始因子結合部位とのハイプリッ ド形成による翻訳開始抑制、 (9)リポソーム結合部位とのハイプリッド形成によ る翻訳抑制、 (lO)mRNA翻訳領域またはポリソーム結合部位とのハイプリッド形 成によるぺプぺプチド鎖の伸長抑制、 並びに(11)核酸と蛋白質の相互作用部位と のハイプリッド形成による遺伝子発現抑制が挙げられる(平島及ぴ井上『新生ィ匕 学実験講座 2 核酸 IV 遺伝子の複製と発現』 日本生化学会編、 東京化学同人、 pp. 319-347 (1993))。
本発明の LrP4アンチセンス核酸は、 上述の(1)〜 (11)のどの機構により遺伝子 発現を抑制する核酸であってもよく、 即ち、 発現を阻害する目的の遺伝子の翻訳 領域のみならず、 非翻訳領域の配列に対するアンチセンス配列を含むものであつ てもよい。 アンチセンス核酸をコードする DNAは、 その発現を可能とする適当な 制御配列下に連結して使用され得る。 アンチセンス核酸は、 標的とする遺伝子の 翻訳領域または非翻訳領域に対して完全に相補的である必要はなく、 効果的に該 遺伝子の発現を阻害するものであればよい。 このようなアンチセンス核酸は、 少 なくとも 15bp以上、 好ましくは lOObp以上、 さらに好ましくは 500bP以上であ り通常 3000bp以内、 好ましくは 2000bp以内、 より好ましくは lOOObp以内の鎖 長を有し、 標的遺伝子の転写産物の相補鎖に対して好ましくは 90%以上、 より 好ましくは 95%以上同一である。 このようなアンチセンス核酸は、 Lrp4ポリヌ クレオチドを基に、 ホスホロチォネート法(Stein (1988) Nucleic Acids Res. 1 6: 3209 - 21)等により調製することができる。
リボザィムとは、 RNAを構成成分とする触媒の総称であり、 大きくラージリボ ザィム(large ribozyme)及ぴスモールリポザィム(small liboyme)に分類される c ラージリポザィムは、 核酸のリン酸エステル結合を切断し、 反応後に 5' -リン 酸と 3, -ヒドロキシル基を反応部位に残す酵素である。 ラージリポザィムは、 さらに(1)グアノシンによる 5, -スプライス咅 U位でのトランスエステ/レイ匕反応を 行うグループ Iイントロン RNA、 (2)自己スプライシングをラリァット構造を経
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- 3 7 - る二段階反応で行うグループ IIイントロン RNA、 及ぴ (3〉加水分解反応による tR NA前駆体を 5' 側で切断するリポヌクレア一ゼ Pの R A成分に分類される。 それ に対して、 スモ一ルリポザィムは、 比較的小さな構造単位 (40bP程度)であり、 R NAを切断して、 5, -ヒドロキシル基と 2, -3' 環状リン酸を生じさせる。 スモ一 ルリポザィムには、 ハンマーヘッド型 (Koizumi et al. (1988) FEBS Lett. 228: 225)、 ヘアピン型 (Buzayan (1986) Nature 323: 349; Kikuchi and Sasaki (19 92) Nucleic Acids Res. 19: 6751; 菊地洋(1992)化学と生物 30: 112)等のリポ ザィムが含まれる。 リポザィムは、 改変及び合成が容易になため多様な改良方法 が公知であり、 例えば、 リポザィムの基質結合部を標的部位の近くの RNA配列と 相補的となるように設計することにより、 標的匪中の塩基配列 uc、 UUまたは
UAを認識して切断するハンマーへッド型リボザィムを作ることができる(Koizum i et al. (1988) FEBS Lett. 228: 225; 小泉誠及ぴ大塚栄子(1990)蛋白質核酸 酵素 35 : 2191; Koizumi et al. (1989) Nucleic Acids Res. 17: 7059) 0 ヘア ピン型のリポザィムについても、 公知の方法に従って設計、 製造が可能である(K ikuchi and Sasaki (1992) Nucleic Acids Res. 19: 6751; 菊地洋(1992)化学と 生物 30 : 112)。
本発明のアンチセンス核酸及ぴリボザィムは、 細胞内における遺伝子の発現を 制御するために、 レトロウイルス、 アデノウイルス、 アデノ随伴ウィルス等のゥ ィルス由来のベクター、 リボソーム等を利用した非ウィルスベクター、 または n aked DNAとして ex vivo法または in vivo法により遺伝子治療に用いることも できる。
1998年に、 線虫において RNA同士が邪魔し合い働きを失う現象 (RNA干渉)が観 察された (Fire et al. (1998) Nature 391: 806-11) 。 RNA干渉とは、 二本鎖 の人工 RNAを細胞に導入することにより、 同じ塩基配列を有する RNAが分解され る現象である。 その後の研究により、 RNA干渉等の RNAサイレンシングの現象は、 欠陥を持つ mRNAの排除、 並びにトランスポゾン、 ウィルス等の寄生体に対する
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- 3 8 - 防御のための細胞機構であることが示唆されている。 現在では、 多くの遺伝子の 発現を抑制するためのツールとして、 二本鎖 RNA (small interfering RNAi siRN A)が利用されており、 病気の原因遺伝子等の発現抑制を siRNAを用いて行うこと により病気を治療 ·予防する方法も検討されている。 本発明の siRNAは、 Lrp4の mRNAの転写を阻害する限り、 特に限定されない。 通常、 siRNAは、 標的 mRNAの配列に対するセンス鎖及ぴアンチセンス鎖の組合せであり、 少なくとも 1 0個から標的 mRNAと同じ個数までのヌクレオチド長を有する。 好ましくは、 15 〜75個、 より好ましくは 18〜50個、 さらに好ましくは 20〜25個のヌクレオチ ド長である。
Lrp4発現を抑制するために、 siRNAは公知の方法により細胞に導入することが できる。 例えば、 siRNAを構成する二本の RNA鎖を、 一本鎖上にコードする DNA を設計し、 該 DNAを発現ベクターに組み込み、 細胞を該発現ベクターで形質転換 し、 siRNAをヘアピン構造を有する二本鎖 RNAとして細胞内で発現させることが できる。 トランスフエクシヨンにより持続的に siRNAを産生するプラスミド発現 ベクターも設計されている (例えば、 R Ai-Ready pSIREN Vector, RNAi-Ready p SIREN-RetroQ Vector (BD Biosciences Clontech) ) 。
siRNAの塩基酉己歹 Uは、 例えば、 Ambion website (http: //www. ambion. com/techl ib/misc/siRNA_finder. html)のコンピュータープログラムを用いて設計すること ができる。 機能的 siRNAをスクリーニングするためのキット (例えば、 BD Knock out RNAi System (BD Biosciences Clontech) ) 等も市販されており利用可能であ る。 図面の簡単な説明
図 1は、 LrP4の構造を模式的に示す図である。 TM:膜貫通ドメイン、 FRI : friz zeled ドメイン、 LDLa: LDLレセプタードメイン、 SR:スカベンジャーレセプター ドメイン、 Pro :セリンプロテア一ゼドメイン。
図 2は、 Lrp4及ぴ Shhの mRNAの E12. 5マウス後脳腹側及び脊髄における発現 を in situハイブリダィゼーション法により解析した結果を示す写真である。 図 3は、 Lrp4、 Shh、 チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、 及び NCAMの mRNAの El 2, 5マウス中脳腹側における発現を in situハイプリダイゼーション法により解 祈した結果を示す写真である。
図 4は、 Lrp4の中脳における発現パターンを模式的に示す図である。 VZ: ven tricular zone、 ML: mantle layerc
図 5は、 ドーパミン産生ニューロンの発生から成熟までの間における Lrp4、 6 5Β13、 ΊΉ、 NCAM及ぴ DATの発現時期を模式的に示す図である。
図 6は、 抗 Lrp4抗体を用いたドーパミン産生-ユーロン増殖前駆細胞の分離 及ぴ活用法を示す模式図である。
図 7は、 Lrp4の mRNAの E12. 5マウス中枢神経系における発現を in situハイ プリダイゼ一シヨン法により解析した結果を示す写真である。 A:矢状面; B :Aの 枠内部分の拡大写真; C:Aの赤線位置での断面。 D: Lrp4、 Shh及ぴチロシンヒド 口キシラーゼ (TH)の mRNAの E12. 5マウス中脳腹側における発現を示す。
図 8は、 ES細胞からの in vitroドーパミン産生ュユーロン分化系における Lr p4の発現について示す。 上は、 ES細胞からのドーパミン産生ニューロンの分ィ匕 を模式的に示す図である。 下の写真は、 SDIA法により ES細胞よりドーパミン産 生ニューロンを分化誘導し、 時間を追って LrP4の発現を RT- PCR法で調べた結果 を示す。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、 これらの実施例は本発 明をいかなる意味でも限定するものではない。
1. ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的遺伝子の単離及ぴ配列解析
ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的な遺伝子を単離するために、 E12, 5
マウス中脳腹側領域を背腹方向にさらに二つの領域に切り分けて、 ドーパミン産 生-ユーロンを含む最も腹側の領域に特異的に発現する遺伝子をサブトラクショ ン (N- RDA)法により同定した。 単離した断片の一つは Lrp4/Corinをコードする c DNA断片であつた。 Lrp4は II型膜貫通蛋白質をコードしている(図 1)。
(1)N - RDA法
(1) -1. アダプターの調製
下記のオリゴヌクレオチドをァユーリングさせ、 100 /z Mに調製した。
(ad2: ad2S+ad2A、 ad3 : ad3S+ad3A、 ad4: ad4S+ad4A、 ad5: ad5S+ad5A、 adl3 : adl3S+adl3A)
ad2S : cagctccacaacctacatcattccgt (酉己列番号: 5)
ad2A: acggaatgatgt (配列番号: 6)
ad3S : gtccatcttctctctgagactctggt (配列番号: 7)
ad3A: accagagtctca (配列番号: 8)
ad4S : ctgatgggtgtcttctgtgagtgtgt (配列番号: 9)
ad4A: acacactcacag (配歹幡号: 10)
ad5S : ccagcatcgagaatcagtgtgacagt (酉己列番号: 11)
ad5A: actgtcacactg (配列番号: 12)
adl3S : gtcgatgaacttcgactgtcgatcgt (配列番号: 13)
adl3A: acgatcgacagt (配列番号: 14)
(1) -2. cDNA合成
日本 SLCより入手したマウス 12. 5 3胚より中脳腹側を切り出し、 さらに背腹 方向に 2つの領域に切り分けた。 RNeasy mini kit (Qiagen)を用いて全 RNAを調 製し、 cDNA synthesis kit (TA ARA)を用いて二本鎖 cDNAを合成した。 制限酵素
Rsalで消化したのち、 ad2を付カ卩し、 ad2Sをプライマーとして、 15サイクルの PCRで cDNAを増幅した。 増幅条件は 72°Cで 5分インキュベートした後、 94°Cで
30秒、 65°Cで 30秒、 及び 72°Cで 2分の反応を 15サイクル行い、 最後に 72°Cで
2分ィンキュベートした。 N- RMの PCRはすべて以下の反応液組成で行った。
lO XExTaq 5 ^ 1
2. 5mM dNTP 4/ 1
ExTaq 0. 25 1
100 ju M primer 0. 5 1
cDNA 2 μ Ι
蒸留水 38. 25 μ 1
(1) -3. Driverの作製
ad2Sで増幅した cDNAをさらに 5サイクルの PCRで増幅した。 増幅条件は 9 4°Cで 2分インキュベートした後、 94°Cで 30秒、 65°Cで 30秒、 及び 72°Cで 2分 の反応を 5サイクル行い、 最後に 72。Cで 2分ィンキュベートした。 Qiaquick PC R purification kit (Qiagen)を用いて cDNAを精製し、 Rsal消化した。 1回の サブトラクシヨンに 3 gずつ使用した。
(1) -4. Testerの作製
ad2Sで増幅した cDNAをさらに 5サイクルの PCRで増幅した。 増幅条件は 94°C で 2分インキュベートした後、 94°Cで 30秒、 65°Cで 30秒、 及ぴ 72°Cで 2分の 反応を 5サイクル行い、 最後に 72°Cで 2分ィンキュベ一トした。 Qiaquick PCR purification kit (Qiagen)を用いて cDNAを精製し、 Rsal消化した。 60ngの Rs al消化 cDNAに ad3を付加した。
(1) -5. サブトラクシヨン 1回目
上記 3及ぴ 4で作製した Testerおよび Driverを混合し、 ェタノ一ル沈殿した 後に、 lxPCR buffer Ι μ ΐに溶解した。 98°C 5分の後、 lxPCR buffer+ΙΜ NaCl 1 μ ΐ を加えた。 さらに 9 8 °C 5分の後、 6 8 °Cで 16 時間ハイブリダィズさせた。 ハイプリダイズさせた cDNAを ad3Sをプライマーとして 10サイクルの PCRで 増幅した後 (72°Cで 5分インキュベートした後、 94°Cで 30秒、 65°Cで 30秒、 及 ぴ 72°Cで 2分の反応を 10サイクル行つた) 、 Mung Bean Nuclease (TAKARA)で
消化し、 Qiaquick PGR purification kitで精製した。 さらに 13サイクルの PCR で増幅した。 増幅条件は 94°Cで 2分インキュベートした後、 94°Cで 30秒、 65°C で 30秒、 及び 72°Cで 2分の反応を 13サイクル行い、 最後に 72°Cで 2分ィンキ ュべートしこ。
(1) -6. 均一化
サブトラクシヨン 1回目で増幅した cDNA 8ngに 2xPCR buffer 1 μ 1を加えた。 98°C 5分の後、 lxPCR buffer+ΙΜ NaCl 2 μ 1を加えた。 さらに 9 8 °C 5分の後、 6 8でで 16時間ハイプリダイズさせた。
ハイブリダィズさせた cDNAを Rsalで消化し、 Qiaquick PCR purification ki tで精製した。 これを ad3Sをプライマーとして 11サイクルの PCRで増幅した後 (94°Cで 2分インキュベートした後、 94°Cで 30秒、 65°Cで 30秒、 及ぴ 72°Cで 2 分の反応を 11サイクル行い、 最後に 72°Cで 2分ィンキュベートした) Rsalで消 化し、 ad4を付加した。
(1) - 7. サブトラクシヨン 2回目
上記 6で ad4を付カ卩した cDNA 20ngを Testerとして、 上記 3の Driverと混合 し、 さらに、 上記 5と同様の方法でサブトラクシヨンを行った。 最終的に Rsal 消化した cDNAに ad5を付加した。
(1) -8. サブトラクシヨン 3回目
上記 7で ad5を付カ卩した cDNA 2ngを Testerとして、 上記 3の Driverと混合 し、 さらに、 上記 5と同様の方法でサブトラクシヨンを行った。 最終的に Rsal 消化した cDNAに adl3を付加した。
(1) - 9. サブトラクシヨン 4回目
上記 8で adl3を付カ卩した cDNA 2ngを Testerとして、 上記 3の Driverと混合 し、 以下、 上記 5と同様の方法でサブトラクションを行つた。 増幅した cDNAを pCRII (Invitrogen)にクローニングし、 ABI3100シーケンスアナライザーを用い て塩基配列を解析した。
2. Lrp4遺伝子の発現解析
次に、 Lrp4遺伝子を用いて以下のプロトコールにより in situハイプリダイ ゼーションによる発現解析を行った。
まず、 マウス 12. 5日胚を OCTで包埋し、 厚さ 16 / mの新鮮凍結切片を作製し た。 スライドガラス上で乾燥させた後に 4%PFAで室温 30分間固定した。 PBSで 洗浄した後、 ハイブリダィゼーシヨン (1 /i g/mlDIG化 RNAプローブ、 50%ホルム アミド、 5xSSC, l°/oSDS, 50 μ g/ml yeast RNA, 50 ; g/ml Heparin) を 65度で 40 時間行った。 その後、 洗浄 (50%ホルムアミド、 5xSSC, 1%SDS) を 65度で行い、 RNase処理 (5 /z g/ml RNase) を室温 5分間行った。 0. 2xSSCで 65度の洗浄、 IxT BSTで室温の洗浄ののち、 ブロッキング (Blocking reagent : Roche) を行った。 アルカリフォスファターゼ標識抗 DIG抗体 (DAK0) を反応させ、 洗浄 (lxTBST、 2mM Levamisole) の後、 BT/BCIP (DAK0)を基質として発色させた。
in situハイプリダイゼーシヨンによる発現解析の結果、 ドーパミン産生ニュ 一口ンの発生する時期である E12. 5で、 Lrp4は中脳から後脳、 脊髄にかけての 腹側中心部に特異的発現していることが示された。 後脳から脊髄にかけては、 Sh hと同様の発現パターンを示し、 オーガナイザー領域である底板 (floor plate) に特異的であることが明らかになった(図 2及ぴ 7)。 中脳では Shh発現領域の中 でもより中心部にのみ発現が見られた(図 3及ぴ 7)。
ュユーロンの成熟マーカーである NCAMと比較した結果、 Lrp4発現細胞は NCAM 陰性の脳室領域 (Ventricular Zone (VZ) )内の増殖前駆細胞であった。 さらにド ーパミン-ユーロンのマーカーであるチロシンヒドロキシラーゼ(tyrosine hydr oxylase; TH)の発現と比較すると、 THは外套層 (mantle layer (ML) )にのみ発現し ているので、 同一の細胞で両者の発現が認められることはないものの、 背 -腹軸 方向での発現領域は完全に一致していた(図 3及ぴ 7)。 一般に神経管 (neural tu be)内の神経細胞は、 まず VZ内で増殖し、 分ィ匕開始とともに分裂を停止し、 その
後すぐ外側の MLに移動したのちに成熟することが知られている。 従って、 ドー パミン産生-ユーロンの前駆細胞は、 TH発現領域のすぐ内側の VZ内で増殖し、 分裂停止後に外側に移動してから THを発現すると考えられる。 即ち、 LrP4は中 脳ではドーパミン産生-ユーロンの前駆細胞に特異的に発現すると考えられる (図 4及ぴ 5〉。
3. ES細胞より分化誘導したドーパミン産生ニューロンにおける Lrp4の発現
次に ES細胞を in vitroでドーパミン産生-ユーロンに分化誘導させた場合に Lrp4が発現するかどうか検討した。
まず、 SDIA法 (Kawasaki et. al. (2000) Neuron 28 (1): 31-40) により ES 細胞よりドーパミンニューロンへの分化誘導を行った (図 8上参照) 。 誘導後 4、 6、 8、 10、 12日後にそれぞれ細胞を回収し、 RNeasy mini kit (Qiagen) を用レヽ て total RNAを回収し、 RT- PCRを行った。 RT- PCRにおいては、 最初に 1 /z gの t otal RNAに対して、 腿 PCR kit (TaKaRa)を用いて cDNA合成を行った。 このう ち 10ng、 lng、 0. lng相当分の cDNAを铸型に用いて以下の反応系で PCRを行った。
lO XExTaq 2 μ 1
2. 5mM dNTP 1. 6 1
ExTaq ΟΛ μ Ι
100 /z Mプライマー 各 0. 2 1
cDNA 1 1
蒸留水 14. 9 1
94°Cで 2分インキュベートした後、 94°Cで 30秒、 65°Cで 30秒、 及ぴ 72°Cで 2 分の反応を 35サイクル行い、 最後に 72°Cで 2分ィンキュベートした。
以下の配列のプライマーを使用した。
Lrp4: TAGTCTACCACTGCTCGACTGTAACG / CAGAGTGAACCCAGTGGACATATCTG
TH: GTTCCCAAGGAAAGTGTCAGAGTTGG / GAAGCTGGAAAGCCTCCAGGTGTTCC
DAT: CTCCGAGCAGACACCATGACCTTAGC I AGGAGTAGGGCTTGTCTCCCAACCTG そして、 RT-PCRによる発現解析の結果、 Lrp4は ES細胞 (CCE) およぴストロ 一マ細胞 (PA6) には発現していないが、 分化誘導の結果、 THと同様に 4日目力 ら発現が誘導されることが明らかになった (図 8) 。 従って、 胎児中脳由来のド ーパミンュユーロン増殖前駆細胞だけでなく、 in vitroで ES細胞より分化誘導 したドーパミンニューロン増殖前駆 胞を分離する際にも Lrp4はマーカーとし て有用である。 産業上の利用の可能性
本発明により、 分裂停止前のドーパミン産生ニューロン增殖前駆細胞に特異的、 且つ一過性に発現する遺伝子 LrP4が同定された。 細胞における該 Lrp4の発現を 指標とすることにより、 安全面、 生存率及ぴネットワーク形成能の面でもパ キ ンソン病を含む神経変性疾患に対する移植治療に適した細胞を選択することが可 能となった。 また、 分裂停止前のニューロン増殖前駆細胞を選択的に得られるた め、 成熟した細胞の求められる治療等において使用する場合であっても、 in vit roで最適な状態へと容易に分化させることができる。 さらに、 本発明の遺伝子 を用いて得られるドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞により、 該細胞に特異 的に発現している遺伝子を単離することが可能となった。 該細胞は、 パーキンソ ン病等の神経変性疾患に対する医薬を開発する上でも有用と考えられる。 分裂停 止前のドーパミン産生-ユーロン増殖前駆細胞という、 ニューロン形成における 初期の前駆細胞は、 さらに、 ニューロンの成熟過程、 即ち、 成熟過程に関与する 種々の因子を明らかにするのに役立つ。 このような因子の解明は、 神経変性疾患 の治療に大きく貢献することが予期される。 さらに、 該細胞の成熟を指標として、 その過程を調節(阻害または促進)するような物質のスクリーニングに用いること もできる。