マウスインターフェロン産生細胞の検出方法 技術分野
本発明は、 マウスのインターフヱロン産生細胞 (Interferon producing Cells;IPC)の 検出方法、 あるいは分離方法に関する。 背景技術
インターフェロンお (iFNa) やインターフェロン β (iFNp) は、 抗ウィルス活 性、 あるいは抗腫瘍活性を有する typelインターフェロンとして知られている。 ゥ ィルス感染に伴って、 これらのインターフヱロンを大量に産生する細胞として同 定されたのが IPCである。 IPCは、 次のように呼ばれることもある。
インターフェロン a / jS産生細胞 ;IFN- a I β producing Cell (IPC),
プラズマ細胞様樹状細胞 ; Plasmacytoid Dendritic Cell (PDC)、
タイプ 2樹状細胞前駆細胞 ; type 2 pre-DC (pDC2)、
ナチユラルインターフェ口ン産生細胞 ; Natural IFN producing Cell
IPCは血中にわずかしか存在していない。 末梢血リンパ球に占める IPCの割合は、 1 %以下と考えられている。 しかし IPCは、 きわめて高いインターフェロンの産生 能を有する。 IPCの IFN産生能は、 たとえば 3000pg/mL/106cellsに達する。 つまり、 細胞の数は少ないが、 血中 IFNaあるいは Π?Νβの大部分は、 IPCによってもたらさ れていると言って良い。
—方 IPCは、 樹状細胞 (dendritic cell)の前駆細胞に位置付けられる未分化のリンパ 球系由来の樹状細胞である。 IPCは、 ウィルス刺激によって成熟した樹状細胞に分 化し、 T細胞の分ィヒを促進し、 IFN-γと IL-10の産生を誘導する。 また IPCは、 IL-3 等の刺激によっても成熟した樹状細胞に分ィ匕する。 IL-3刺激によつて分化した樹
状細胞は、 T細胞の Th2分化を誘導し Th2サイ卜力イン (IL-4、 IL-5、 IL-10)の産生 を促進する。 このように IPCは、 刺激の違いによって異なる機能をもつ樹状細胞に 分化する性質を有している。
したがって IPCは、 インターフェロン産生細胞としての側面と、 樹状細胞の前駆 細胞としての 2つの側面を有する細胞である。 いずれも、 免疫システムにおいて 重要な役割を担っている。 つまり IPCは、 免疫システムを支えるための多様な機能 を有する重要な細胞の一つである。
IPCの免疫システムにおける重要性を裏付ける情報として、 AIDSの発症や重症 度との関連性が指摘されている。 たとえば AIDS患者では IPC細胞が減少している。 一方 HIVの感染があつても発症せずに長期間生存している患者では、 末梢血 IPCの 数は増加している。 つまり IPCが日和見感染や癌の発症予防に重要な役割を果たし てレヽること力示されてレ、る ^Depletion of circulation type I interferon-producing cells m HIV-infected AIDS patients (2001) Blood 98; 906)o このように、 IPCは、 免疫システ ムにおける重要な役割を有すると考えられている。
IPCは重要な研究対象である力 先に述べたように末梢血中にわずかしか存在し ないこと力 IPCの研究を妨げる大きな要因になっている。 ヒトから採取できる血 液細胞が限られていることは言うまでも無い。 特に IPCのようなわずかしか存在し ていない細胞は、 研究材料として貴重である。 発明の開示
ヒト由来の研究材料を得るのが難しいとき、 実験動物に代替材料を求めるのが 一般的である。 たとえば、 マウスのような安定供給が容易な実験動物に IPCを求め ることができれば、 IPCの研究を容易に進めることができる。 一般に、 細胞の検出 や分離のためには、 細胞特異的に発現している分子がマーカーとして利用される。 しかしマウス IPCの検出や分離を可能とするマーカーは知られていない。 本発明は、 マウス IPCのマーカーとすることができる分子を明らかにし、 更にそのマーカーを
利用するマウス IPCの検出方法あるいは分離方法の提供を課題とする。
ヒトにおいては、 既に IPCを認識する抗体が報告されている。 たとえば、 抗 BDCA-2モノクローナル抗体、 あるいは抗 BDCA-4モノクローナル抗体 (Dzionek A. et al. J. Immunol. 165:6037-6046,2000)は、 ヒト IPC特異モノクローナル抗体である。 このうち抗 BDCA-2モノクローナル抗体は、 ヒト IPCのインターフェロン産生を抑 制する作用を有することが明らかにされている。 また抗 BDCA-2モノクロ一ナル抗 体によつて認識される BDCA-2抗原をコ一ドする cDNAは、 IPC特異抗原としてク ローエングされている。 これら既知のモノクローナル抗体は、 ヒトの IPCのリサ一 チツールとしては有用である。 ところがヒト IPCに対するモノクローナル抗体はマ ウスの IPCを認識しない。 したがってマウスの IPCの解析には、 マウスの IPCのマ 一力一が必要である。
本発明者らは、 マウス IPCをラットに免疫することによって、 マウス IPCを特異 的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイプリドーマを樹立した。 またこ うして得られたハイプリ ドーマが産生するマウス IPCを認識するモノクローナル抗 体の中に、 IPCのィンターフェ口ン産生能に干渉しないものがあることを見出した。 そしてこれらのモノクローナル抗体によつて認識される分子がマウス IPCのマーカ 一として有用であることを確認して本発明を完成した。 すなわち本発明は、 以下 のマウス IPCの検出方法、 あるいは分離方法に関する。
〔1〕 次の工程を含む、 マウスのインターフヱロン産生細胞の検出方法。
(1) マウス血液細胞を含む生物学的試料に含まれる、 Ly-49Qを発現している 細胞を検出する工程、 および
(2) Ly-49Qの発現が検出された細胞をマウスのインターフエ口ン産生細胞と して検出する工程
〔2〕 Ly-49Qを発現している細胞を検出する工程が、 Ly-49Qを認識する抗体また はその抗原結合領域を細胞に結合させる工程を含む、 〔1〕 に記載の方法。 〔3〕 Ly-49Qを認識する抗体が、 モノクローナル抗体である 〔2〕 に記載の方法。
〔4〕 モノクローナル抗体が、 受託番号 FERM BP-8445として寄託されたハイプリ ドーマ 2E6が産生するモノクローナル抗体が認識する抗原決定基に結合するモ ノクローナル抗体である 〔3〕 に記載の方法。
〔 5〕 モノクローナル抗体が、 受託番号 FERM BP-8445として寄託されたハイブリ ドーマ 2E6が産生するモノクローナル抗体である 〔4〕 に記載の方法。
〔6〕 付加的に、 マウスリンパ球系榭状細胞、 マウス CD4+骨髄系樹状細胞、 およ ぴマウス CD4-骨髄系樹状細胞から選択された少なくとも 1種類の榭状細胞を 検出する工程を含む 〔1〕 に記載の方法。
〔7〕 マウスリンパ球系樹状細胞が、 CDl l c陰性、 CD4陰性、 および CD8陽性細 胞として同定される工程を含む 〔6〕 に記載の方法。
〔8〕 マウス CD4+骨髄系樹状細胞が、 CDl l c陰性、 CD4陽性、 および CD8陰性 細胞として同定される工程を含む 〔6〕 に記載の方法。
〔9〕 マウス CD4-骨髄系樹状細胞が、 CDl l c陰性、 CD4陰性、 および CD8陰性細 胞として同定される工程を含む 〔6〕 に記載の方法。
〔1 0〕 Ly-49Qを認識する抗体またはその抗原結合領域を含む、 マウスインター フエ口ン産生細胞検出用試薬。
〔1 1〕 付加的に、 マウスリンパ球系榭状細胞、 マウス CD4+骨髄系樹状細胞、 お よびマウス CD4-骨髄系樹状細胞から選択された少なくとも 1種類の樹状細胞 のマーカーを認識する抗体またはその抗原結合領域を含む 〔1 0〕 に記載の
〔1 2〕 マウスリンパ球系樹状細胞、 マウス CD4+骨髄系榭状細胞、 およびマウス CD4-骨髄系樹状細胞の細胞マーカーが、 CD4および CD8である 〔1 1〕 に記
〔1 3〕 次の工程を含む、 マウスのインターフェロン産生細胞の分離方法。
(1) マウスインターフェロン産生細胞を含む細胞集団に含まれる、 Ly-49Qを 発現している細胞を検出する工程、 および
(2) Ly-49Qの発現が検出された細胞をマウスのインターフエ口ン産生細胞と して取得する工程
〔1 4〕 マウスインターフエ口ン産生細胞を含む細胞集団が、 顆粒球およぴマク 口ファージのいずれか、 または両方を含まない細胞集団である 〔1 3〕 に記 載の方法。
〔1 5〕 付加的に、 (3)顆粒球およびマクロファージのいずれか、 または両方を分 離する工程、 を含む 〔1 3〕 に記載の方法。
〔1 6〕 Ly-49Qを認識する抗体またはその抗原結合領域を含む、 マウスインター フヱロン産生細胞分離用試薬。
〔1 7〕 付加的に、 顆粒球のマーカーを認識する抗体またはその抗原結合領域、 およぴマク口ファージのマーカーを認識する抗体またはその抗原結合領域の いずれか、 または両方を含む 〔1 6〕 に記載の試薬。
〔1 8〕 受託番号 FERM BP-8445として寄託されたハイブリ ドーマ 2E6が産生する モノクローナル抗体が認識する抗原決定基に結合するモノクローナル抗体、 またはその抗原結合領域を含む断片。
〔1 9〕 受託番号 FERM BP-8445として寄託されたハイプリ ドーマ 2E6が産生する モノクローナル抗体、 またはその抗原結合領域を含む断片。
〔2 0〕 受託番号 FERM BP-8445として寄託されたハイプリ ドーマ 2E6を培養し、 培養物に含まれるィムノグロブリンを採取する工程を含む、 モノクローナル 抗体の製造方法。
本発明は、 マウスの IPCの検出方法あるいは分離方法に関する。 マウスの IPCは 次のような性状によって特徴付けられる細胞集団である。 したがって本発明は、 マウスの末梢血あるいは脾臓や骨髄などの血液細胞に由来する下記のような特徴 を有する細胞の検出あるいは分離を目的とする。
[細胞表面抗原のプロファイル]
_CDl lc、 B220、 Ly6C、 および CD45RBが陽性
— CDllb、 CD3、 CD19が陰性
[細胞の形態上の特徴]
一プラズマ細胞に似ている
一細胞表面が平滑な丸い細胞
一核が比較的大きい
[細胞の機能的な特徴]
—ウィルス感染時に、 短期間に大量の Type-1 interferonを産生する
一ウィルス感染後、 成熟した樹状細胞に分ィヒする
本発明らが見出したマウス IPCのマーカー分子を指標としてマウス IPCを検出す ることができる。 すなわち本発明は、 次の工程を含む、 マウスのインターフエ口 ン産生細胞の検出方法に関する。
(1)マウス血液細胞集団に含まれる、 Ly-49Qを発現している細胞を検出する 工程、 および
(2) Ly-49Qの発現が検出された細胞をマウスのィンターフェ口ン産生細胞とし て検出する工程
本発明において、 マーカーとは、 細胞の識別に利用することができる分子を言 う。 具体的には、 ある分子 Aが、 ある細胞 Aに検出され、 他の細胞 Bに検出され ないとき、 分子 Aは細胞 Aのマーカーである。 マーカーは、 細胞に特異的である ことが望ましい。 しかし、 異なる種類の細胞の間で、 共通して検出される分子で あってもマーカーとして利用することはできる。 たとえば、 共存する大部分の細 胞との識別が可能であれば、 マーカーとしては有用である。 マーカーは、 細胞に 存在するあらゆる分子の中から選択することができる。 中でも、 細胞表面に存在 する蛋白質や糖鎖は、 抗体などによって容易に検出できる好ましいマーカーとな りうる。
本発明のマウス IPCの検出方法は、 マウス IPCの計数、 同定、 並びに分離などに 利用することができる。 IPCは、 活性ィ匕によって細胞数が増加する。 したがって、
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- 7 - その数を計数することによって、 IPCの活性を調節するための重要な情報を得るこ とができる。 たとえば、 生体内のマウス IPCの計数によって、 ある薬剤候補化合物 の IPCの増殖に対する影響を、 評価することができる。
本発明によるマウス IPCの検出方法に基いて、 マウス IPCを同定することができ る。 マウス IPCの同定も、 当該細胞の研究における重要な情報を与える。 たとえば、 マウス IPCに特異的に見出される新たな分子を探索するときに、 本発明によるマウ ス IPCの同定方法が有用である。 すなわち、 候補分子が本発明によって同定された 細胞に特異的に検出されれば、 当該分子はマウス IPC特異的に発現していることが 確認できる。
更に本発明は、 Ly-49Qをマーカーとして利用するマウス IPCの分離方法に関す る。 すなわち本発明は、 次の工程を含む、 マウスのインターフェロン産生細胞の 分離方法を提供する。
(1)マウス血液細胞集団に含まれる、 Ly-49Qを発現している細胞を検出する 工程、 および
(2) Ly-49Qの発現が検出された細胞をマウスのィンターフェ口ン産生細胞とし て取得する工程
本発明者らは、 マウス IPCに特異的に結合するモノクローナル抗体 2E6の認識抗 原をコードする遺伝子として、 配列番号: 1に記載の塩基配列からなる cDNAを同 定した。 当該塩基配列は、 配列番号: 2に記載のアミノ酸配列をコードしている。 更に配列番号: 2に記載のアミノ酸配列と、 Ly-49Qとして報告されている Gr-1+ 細胞に発現するレセプターのァミノ酸配列 (配列番号: 8 ) との相同性は約 9 7 . 5 %であった。 両者の比較結果を図 7に示した。 したがって、 配列番号: 2に記 載のアミノ酸配列、 あるいは当該アミノ酸配列と高い相同性を有するアミノ酸配 列からなる蛋白質は、 マウス IPCにおける発現が見られる限り、 本発明におけるマ ウス IPCのマーカーとして利用することができる。 より具体的には、 本発明のマウ ス IPCマーカー Ly-490は、 以下に記載の a)-e)のいずれかに記載の蛋白質を含む。
a)配列番号: 1に記載の塩基配列のコード領域によってコードされたァミノ 酸配列を含む蛋白質
b)配列番号: 2または配列番号: 8に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質 c)配列番号: 2に記載のアミノ酸配列において、 1位 Metの欠失、 若しくは
9 4位 Serの Asnへの、 1 0 3位 Proの Leuへの、 1 1 4位 Asnの Aspへの、 1 3 4位 lieの Valへの、 2 3 0位 Lysの Thrへの、 そして 2 5 4位 Pheの Valへ の置換から選択される少なくとも一つのアミノ酸の置換を含むアミノ酸配 列を含む蛋白質
d)配列番号: 1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェ ントな条件でハイブリダィズし、 マウス IPCにおいて発現しているポリヌ クレオチドによってコードされる蛋白質
e)配列番号: 2に記載のアミノ酸配列と 9 5 %以上のホモロジ一を有するァ ミノ酸配列を含む蛋白質であって、 マウス IPCにおいて発現している蛋白 質
上記 d)のポリヌクレオチドは、 たとえば配列番号: 1に記載の塩基配列をもと に作製されたプローブのハイブリダイズを検出することにより同定することがで きる。 プローブには、 配列番号: 1に記載の塩基配列中、 好ましくは蛋白質コー ド領域の塩基配列で構成する。 プローブは、 当該塩基配列の任意の連続する部分 配列によって構成することができる。 プローブを構成する塩基配列の長さとして は、 例えば 50, 80, 100, 120, 150, または 200塩基を示すことができる。 更に、 配列 番号: 1に記載の塩基配列の全長をプローブとすることもできる。
d)のポリヌクレオチドは、 プローブとストリンジ工ントな条件でハイブリダイ ズするポリヌクレオチドを含む。 ハイブリダィゼーションのためのストリンジェ ントな条件としては、 例えば 5 X SSC、 7%(W/V) SDS、 lOO ^t g/ml変性サケ精子 DNA、 5 Xデンハルト液を含む溶液中、 48°C、 好ましくは 50°C、 より好ましくは 52°Cにおけるハイプリダイゼーシヨンを用いることができる。 その後ハイブリダ
ィゼーシヨンと同じ温度、 より好ましくは 60°C、 さらにこの好ましくは 65°C、 最 も好ましくは 68°Cで 2 X SSC中、 好ましくは 1 X SSC中、 より好ましくは 0.5 X SSC中、 より好ましくは 0.1 X SSC中で、 振蘯しながら 1時間洗浄する。
あるいは本発明の Ly-49Qは、 配列番号: 2と高い同一性を有し、 かつマウス IPCで発現している蛋白質を含む。 本発明における高い同一性とは、 たとえば 9 0 %以上、 好ましくは 9 5 %以上、 更に好ましくは 9 7 %以上の同一性を言う。 ァミノ酸配列の同一性は、 例えば BLASTプログラム (Altschul, S. F. et al., 1990, J. Mol. Biol. 215: 403-410) を用いて決定することができる。 具体的には、 塩基配列 の同一性を決定するには blastnプログラム、 ァミノ酸配列の同一性を決定するには blastpプログラムが用いられる。 例えほ TCBI (National Center for Biothchnology Information) の BLASTのウェブページにおいて Low complexityを含むフィルターは 全て OFFにして、 デフォルトのパラメータを用いて検索を行う (Altschul, S.F. et al. (1993) Nature Genet. 3:266-272; Madden, T.L. et al. (1996) Meth. Enzymol. 266:131-141; Altschul, S.F. et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402; Zhang, J. & Madden, T.L. (1997) Genome Res. 7:649-656) 。 例えば 2つの配列の比較を行う blast2sequencesプ ログラム (Tatiana A et al. (1999) FEMS Microbiol Lett. 174:247-250) により、 2配 列のァライメントを作成し、 配列の同一性を決定することができる。 ギャップは ミスマッチと同様に扱い、 例えば蛋白質コード配列全体に対する同一性の値を計 算する。
Ly-49Qのような真核生物のタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列には、 し ばしば多型現象が認められることがある。 多型現象は遺伝子の塩基配列に見出さ れる小規模な塩基の置換で、 通常、 塩基の置換がタンパク質の活性に与える影響 は小さい。 このような多型等によつて塩基配列ゃァミノ酸に小規模な変異を生じ た Ly-49Qも、 それがマウス IPCにおいて発現している限り、 本発明における Ly- 49Qに含まれる。 たとえば既知のァミノ酸配列 (GenBank Acc#.AB033769)と配列番 号: 2に記載のアミノ酸配列の相違は、 多型によるものと予測される。
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- 1 0 - 配列番号: 2に記载のァミノ酸配列と高い同一性を有する蛋白質である Ly-49Q の構造は、 既に公知である (GenBank Acc#.AB033769)。 しかし Ly-49Qがマウス IPC のマーカーとして利用できることは、 本発明者らによって明らかにされた新規な 知見である。
本発明の検出方法あるいは分離方法において、 マーカーを検出するための方法 は任意である。 たとえば、 マーカーと特異的に結合することができるリガンドに よって、 マーカーを検出することができる。 Ly-49Qは、 NKレセプターとホモロジ 一のある分子として単離された蛋白質である。 したがって、 当該レセプターに結 合するリガンドも、 Ly-49Qの検出に利用することができる。 あるいは Ly-49Qをコ 一ドする塩基配列を含む mRNAの検出によって、 Ly-49Qの発現を検出することも できる。 配列番号: 1に記載の塩基配列、 あるいは GenBank Acc#.AB033769とし て公知の塩基配列を含む mRNAは、 ハイプリダイゼーションゃ PCRによつて検出 することができる。 細胞内の mRNAを検出するための、 WYMハイブリダィゼー シヨン、 あるいは wYi/ RT-PCRが公知である。 当業者は、 検出すべき mRNAの塩 基配列に基いて、 ハイブリダィゼーションに必要なプローブや RT-PCRのためのプ ライマーの塩基配列をデザィンすることができる。
更に、 マーカーを認識して結合する抗体は、 本発明におけるリガンドとして好 ましい。 抗体としては、 ポリクローナル抗体、 モノクローナル抗体、 あるいはそ れらの抗原結合領域を含む断片を用いることができる。 モノクローナル抗体は、 高度な均質性と反応特異性を期待できることから、 本発明におけるリガンドとし て好ましい。
本発明におけるモノクローナル抗体は、 当該モノクローナル抗体を産生する抗 体産生細胞から採取することができる。 本発明おけるモノクローナル抗体の産生 細胞は、 マウス IPCあるいは Ly-49Qを免疫原として免疫動物に投与し、 その抗体 産生細胞をクローユングすることによって取得することができる。 一般的なモノ ク口ーナル抗体の製造方法にぉレ、ては、 免疫細胞と腫瘍細胞との細胞融合によつ
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- 1 1 - て得られるハイプリ ドーマが抗体産生細胞として利用される。
本発明における免疫原はマウス IPCである。 マウス IPCとは上記条件を満たす細 胞である。 このような細胞は、 たとえばマゥスの造血幹細胞を培養し、 IPCに分化 させることによって大量に得ることができる。 マウス造血幹細胞を in Wtroで IPCに 分ィ匕させるための条件は公知である
たとえば、 Troにおける造血幹細胞からのマウスの IPCの誘導が報告されてい る (Gilliet et al 2002, J. Exp. Med. 195: 953-958)。 あるいは m での IPCの誘導も公 知である (Bjorck らの Blood 2001, 98: 3520-3526)。 ただし、 これらの方法によって 誘導されたマウス IPCを免疫原に用いた報告は無い。 しかし本発明者らは、 in vitro で分化させたマウス IPCが、 IPCを認識するモノクローナル抗体を得るための免疫 原として有利であることを見出した。 特に、 この免疫原の使用によって、 マウス IPCのィンターフェロン産生能に影響を与えないモノクローナル抗体が得られるこ とは、 まったく予想されなかった。
具体的には、 造血幹細胞を含む細胞集団を IPC誘導剤の存在下で培養することに より、 IPCへの分化が誘導される。 造血幹細胞を含む細胞集団としては、 たとえば 骨髄細胞を用いることができる。 また IPC誘導剤には、 FLT-3リガンドを用いるこ とができる。 培地中の FLT-3の濃度は、 通常 1〜 1 0 O ng/mL、 5— 5 O ng/mL, 好ましくは 1 0— 3 O ng/mLとすることができる。 その他の培養条件は、 一般的 な血液細胞の培養条件を応用すればよい。 すなわち基礎培地としては、 RPMI1640 等を用い、 更に 10%程度の牛胎児血清を加えることができる。 IPCへの分化に要す る培養期間は、 たとえば 5— 2 0日、 通常 7— 1 5日程度である。
培養された造血幹細胞から、 IPCに分化した細胞を取得すれば、 免疫原のための IPCを得ることができる。 実際には、 いくつかの細胞表面マーカーを利用して、 IPCに特徴的な細胞表面抗原を有する細胞を分取する。 すなわち、 CDl lc陽性、 CDl lb陰性、 および B220陽性の細胞分画をセルソーターで分取し IPCを得ることが できる。
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- 1 2 - あるいは、 既にマウス IPC特異的であることが明らかな抗体を利用して、 当該抗 体陽性の細胞を IPCとして分取することもできる。 本発明のモノクローナル抗体を 産生するハイプリ ドーマ 2E6が産生するモノクローナル抗体は、 マウス IPCの分取 に利用することができる。 ハイプリ ドーマ 2E6の寄託情報は後に述べる。
IPCは、 マウスの末梢血から分取することもできる。 しかし先に述べたように IPCの抹消血におけるポピュレーションは極めて低いので、 末梢血から IPCを採集 するには多量のマウスの血液が必要となる。 したがって、 免疫原とする IPCには、 造血幹細胞から分化させた細胞を利用するのが有利である。
続いて分離されたマウス IPCを、 適当な免疫動物に免疫する。 マウス IPCは適当 なアジュパントとともに免疫動物へ投与することができる。 本発明における免疫 動物は、 マウス IPCを異物と認識するあらゆる非ヒト脊椎動物を利用することがで きる。 モノクローナル抗体を得るためには、 ハイブリ ドーマとするための融合パ 一トナーの入手が容易な動物が有利である。 たとえば、 ラット、 ラビット、 ゥシ、 ャギなどの細胞に由来するハイプリ ドーマの樹立が確立されている。 これらの免 疫動物を、 本発明に用いることができる。 一方アジュバントには、 フロイントの 完全アジュバントゃフロイントの不完全アジュバント等が用いられる。
免疫動物は、 3〜1 0日間隔で複数回免疫される。 1回の免疫に用いられる IPC の数は、 任意である。 通常、 1 0 3〜1 0 8、 たとえば 1 0 6の IPCが免疫される。 複数回の免疫を経た免疫動物から免疫担当細胞を回収し、 目的とする抗体を産生 する細胞をクローニングすることにより、 本発明のモノクローナル抗体を得るこ とができる。
あるいは、 本発明者らによって明らかにされた IPCマーカー Ly-49Qを免疫原と して、 本発明に必要な抗体を得ることができる。 たとえば配列番号: 2に記載の アミノ酸配列からなる蛋白質、 または当該アミノ酸配列から選択された連続する ァミノ酸配列からなるオリゴぺプチドを免疫原として、 本発明におけるモノク口 ーナル抗体を得ることができる。 蛋白質あるいはオリゴペプチドは、 必要に応じ
て担体に結合し、 更にアジュパントとともに免疫動物に投与することができる。 また、 Ly-49Qを強制発現させた形質転換細胞を免疫原として利用することもで きる。 たとえばラットを免疫動物とするときには、 ラット由来の細胞を Ly-49Qを コードする DNAで形質転換して免疫原とすることができる。 形質転換細胞による 免疫操作は、 上記のマウス IPCを免疫原とする場合と同様である 次いで、 複数回 の免疫を経た免疫動物から免疫担当細胞を回収し、 目的とする抗体を産生する細 胞をクローニングすることにより、 本発明のモノクローナル抗体を得ることがで きる。 免疫担当細胞とは、 免疫動物において抗体産生能を有する細胞を言う。
免疫担当細胞は、 たとえばハイプリ ドーマ法によってクローニングすることが できる。 免疫担当細胞は、 1つの細胞が 1種類の抗体を産生している。 したがつ て、 1つの細胞に由来する細胞集団を確立する (すなわちクロー-ング) ことが できれば、 モノクローナル抗体を得ることができる。 ハイブリ ドーマ法とは、 免 疫担当細胞を適当な細胞株と融合させ、 不死化 (immortalize)した後にクローニング する方法を言う。 ハイプリ ドーマ法に有用な多くの細胞株が知られている。 これ らの細胞株は、 リンパ球系細胞の不死ィヒ効率に優れ、 かつ細胞融合に成功した細 胞の選択に必要な各種の遺伝マーカーを有している。 更に抗体産生細胞の取得を 目的とする場合には、 抗体産生能を欠落した細胞株を用いることもできる。
たとえばマウスミエローマ P3x/63Ag8.653は、 マウスゃラットの細胞融合法に有 用な細胞株として広く用いられている。 本発明においては、 マウスの IPCを免疫原 としているので、 免疫動物はマウス以外の動物となる。 一般にハイブリ ドーマは、 同種の細胞の融合によって作成されるが、 近縁の異種間でのヘテロハイブリ ドー マからモノクローナノレ抗体を取得することもできる。
細胞融合の具体的なプロトコルは公知である。 すなわち、 免疫動物の免疫担当 細胞を適当な融合パートナーと混合し、 細胞融合させる。 免疫担当細胞には、 脾 細胞や末梢血 B細胞などが用いられる。 融合パートナーとしては、 先に述べた各種 の細胞株を利用することができる。 細胞融合には、 ポリエチレングリコール法や、
電気融合法が用いられる。
次に、 融合細胞が有する選択マーカーに基づいて、 細胞融合に成功した細胞が 選択される。 たとえば HAT感受性の細胞株を細胞融合に用いた場合には、 HAT培 地において成育する細胞を選択することによって、 細胞融合に成功した細胞が選 択される。 更に選択された細胞が産生する抗体が、 目的とする反応性を有してい ることを確認する。
各ハイプリ ドーマは、 抗体の反応性に基づいて、 スクリーニングされる。 すな わち、 IPCに対して特異的な結合活性を有する抗体を産生するハイプリ ドーマが選 択される。 好ましくは、 選択されたハイプリ ドーマをサブクローニングし、 最終 的に目的とする抗体の産生が確認された場合に、 本発明のモノクローナル抗体を 産生するハイプリ ドーマとして選択する。
本発明において目的とするモノクローナル抗体は、 Ly-49Qに結合する。 抗体の 特定の抗原に対する結合活性は、 任意の方法によって確認することができる。 た とえば ELISAによって目的とする反応性を有する抗体をスクリーニングする方法 が公知である。 具体的には、 Ly-49Qあるいはそのドメインペプチドを結合したマ イク口プレートを用意する。 次に、 ハイプリ ドーマの培養上清をこのプレートに 分注する。 マウスのィムノグロプリンが検出された上清をスクリーユングの対象 とすれば、 より効率的なスクリーニングが期待できる。 もしも培養上清中に目的 とする反応性を有する抗体が含まれていれば、 それはマイクロプレートに結合さ れた Ly-49Qに結合する。 プレートに結合したラットイムノグロブリンは、 抗ラッ トイムノグロブリン抗体によって検出することができる。
更に、 Ly-49Qを強制発現させた形質転換細胞を用いて、 目的とする細胞を選択 することもできる。 具体的には、 まず Ly-49Qを強制発現させた形質転換細胞を、 ハイプリドーマの培養上清と接触させる。 目的とする反応性を有する抗体は、 形 質転換細胞に結合する。 細胞に結合した抗体は、 標識された抗ラットイムノグロ プリン抗体によって検出される。
マウス IPCの分離においては、 分離の過程で IPCのィンターフェ口ン産生能に干 渉しないことが重要である。 カロえて、 分離の過程で IPCの增殖や細胞障害を誘導し ないことが望ましい。 IPCは、 そのインターフェロンの産生能の調節が科学的にも、 また産業上も最も大きな興味の対象であると言って良い。 つまり、 IPCのインター フエロンの産生能を調節するための研究が、 IPC単離の大きな目的となる。 したが つて、 単離の段階で IPCのィンターフェロン産生能に影響を与えない抗体を用いる ことは、 重要な条件である。 逆にインターフェロン産生能に干渉する抗体によつ て単離された IPCは、 分離の段階で既にそのインターフェロンの産生能を抗体によ つて調節されてしまっている可能性がある。 このような IPCは、 インターフェロン の産生能の調節に関する研究のための材料としては適切とは言えない。 他方、 抗
Ly-49Q抗体は IPCのインターフェロン産生に干渉しないので、 本発明によって分 離されたマウス IPCは、 研究材料として理想的である。 。
同様に、 IPCの細胞増殖能に対して干渉しない抗体も、 細胞の単離のためのツー ルとして有用である。 抗 Ly-49Q抗体は、 IPCの細胞増殖に対しても影響を与えな いことから、 IPCの単離において有用である。
モノクローナル抗体のィンターフェロン産生を調節する活性は、 実際に IPCにモ ノクローナル抗体を作用させることによって確認することができる。 IPCは、 ウイ ルスの刺激によってインターフェロンを大量に産生する。 このとき、 インターフ ェ口ン産生能を調節する作用を有する抗体が存在すれば、 抗体を加えない対照と 比較して、 IPCのインターフェロンの産生量が変化する。 またもしもモノクローナ ル抗体が IPCのィンターフェロン産生能に干渉しない場合には、 IPCのィンターフ ェ口ン産生活性は実質的に影響を受けない。
たとえば、 インフルエンザウイルスなどの、 マウス細胞に感染性を有する細胞 を IPCに加えると、 マウス IPCはインターフェロンを産生する。 産生されたインタ 一フエロンは、 たとえばィムノアッセィによって測定することができる。 当業者 は、 ELISAなどの原理に基づいて、 容易にインターフェロンを測定することがで
きる。
本発明において、 インターフェロン産生活性の調節とは、 活 I1生の抑制、 または 促進を言う。 モノクローナル抗体が IPCのィンターフェ口ン産生活性の調節作用を 有することは次のようにして確認することができる。
IPCはウィルスの刺激によってインターフェロンを大量に産生する。 IPCに対す るウィルス刺激の前、 後、 あるいはウィルス刺激と同時にモノクローナル抗体を 与え、 モノクローナル抗体を与えない IPCを対照として、 インターフェロンの産生 能を比較する。 インターフェロン産生能は、 IPCの培養上清中に含まれる IFN-αや IFN-βを測定することによって評価することができる。 比較の結果、 モノクローナ ル抗体の添加によって、 上清中のインターフヱロンの量が有意に変化すれば、 当 該モノクローナル抗体は、 ィンターフェロン産生能を調節する作用を有すること が確認できる。 これらインターフェロンの測定方法は公知である。 Ly-49Qを認識 する抗体は、 このようにしてィンターフヱロンの産生能に対する影響を比較した ときに、 対照と比較してインターフエ口ンの産生レベルに有意な差が見られない。
IPCは IFNひ、 および IFN i3などの複数種のインターフェロンを産生する。 本発 明においては、 これら IPCが産生するィンターフェ口ンの産生能に対して実質的に 影響を与えない場合に、 そのモノクローナル抗体が IPCのィンターフェロン産生能 を調節する作用を実質的に有しないと言う。 本発明者らが見出した IPCマーカー Ly-49Qを認識するモノクローナル抗体は、 特に IFN αおよぴ IFN ]3の産生能に干渉 しない。 インターフェロンの産生能に対して実質的に影響を与えないとは、 当該 モノクローナル抗体の有無によって、 ウィルス刺激を受けた後の IPCのィンターフ エロン産生能に有意な差が見られないことによって裏付けられる。
更に IPCマーカー Ly-49Qを認識する抗体は、 IPCに結合して IPCの増殖を誘導し ない。 モノクローナル抗体と結合した IPCの増殖能は、 細胞の増殖を観察すること によって確認することができる。 細胞増殖の確認方法は公知である。 たとえば、 H3チミジンの細胞による取りこみを指標として、 細胞の増殖活性を評価すること
ができる。 モノクローナル抗体を接触させた IPCと、 対照とを比較して、 細胞の増 殖能に有意な差が見られなければ、 当該モノクローナル抗体は、 IPCの増殖能に実 質的に影響を有していないことが確認できる。 対照としては、 IPCに対して結合し ないことが明らかなラット IgGなどを用いることができる。
本発明の望ましいモノクローナル抗体として、 次のハイブリドーマが産生する モノクローナル抗体を示すことができる。 本発明の IFN産生に影響を与えないモノ クローナル抗体を産生するハイブリドーマ 2E6は、 次のとおり寄託した。 2E6は、 サプクラス IgG 2a κ鎖を有するモノクローナル抗体を産生するラットーマウスへテ 口ハイプリドーマである。
(A)寄託機関の名称 ·あて名
名 称:独立行政法人産業技術総合研究所内特許生物寄託センター あて名: 郵便番号 305- 8566
日本国茨城県つくば市東 1丁目 1番 1号中央第 6
(B)寄託日 (原寄託日) : 2002年 8月 1日
(C)受託番号: FERM BP-8445
また本発明は、 本発明者らが樹立したハイプリ ドーマが産生する前記モノクロ ーナル抗体と同様の結合活性を有するモノクローナル抗体を提供する。 すなわち 本発明は、 ハイブリドーマ 2E6が産生するモノクローナル抗体が認識するマウスの インターフエ口ン産生細胞特異抗原またはその抗原決定基に結合するモノクロー ナル抗体、 またはその抗原結合領域を含む断片を提供する。
このようなモノクローナル抗体は、 当該ハイプリ ドーマから抗体の抗原結合領 域をコードする cDNAを取得し、 これを適当な発現ベクターに揷入することによつ て発現させることができる。 抗体の可変領域をコードする cDNAを取得し、 適当な 宿主細胞に発現させる技術は公知である。 また抗原結合領域を含む可変領域を、 定常領域と結合させることによってキメラ抗体とする手法も公知である。
更に、 本発明のモノクローナル抗体の抗原結合活性を他のィムノグロプリンに
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- 1 8 - 移植することもできる。 ィムノグロプリンの抗原結合領域は、 相補性決定領域
(CDR)と、 フレーム領域で構成されている。 各ィムノグロプリンの抗原結合特性 は CDRによって決定されており、 フレームは抗原結合領域の構造を維持している。 CDRのァミノ酸配列がきわめて多様性に富むのに対して、 フレーム部分のァミノ 酸配列は高度に保存されている。 CDRの抗原を他のィムノグロブリン分子のフレ ーム領域に組み込むことによって、 抗原結合活性も移植できることが知られてい る。 この方法を利用して、 異種のィムノグロブリンが有する抗原結合特性をヒ ト ·ィムノグロブリンに移植する方法が確立されている。
このようにして作成された、 様々なモノクローナル抗体はいずれも本発明に含 まれる。 すなわち、 本発明のモノクローナル抗体の抗原結合領域をコードする cDNAに由来するポリヌクレオチドによってコードされた抗原結合領域を含むィム ノグロブリンからなるモノクローナル抗体は本努明に含まれる。
更に、 ハイブリ ドーマ 2E6が産生するモノクローナル抗体が認識するマウスの IPC特異抗原 Ly-49Qまたはその抗原決定基に結合するモノクローナル抗体、 また はその抗原結合領域を含む断片は、 その由来に関わらず本発明に利用することが できる。 すなわち、 これら特定のハイブリ ドーマ以外に由来するィムノグロプリ ンであっても、 上記抗原または抗原決定基に結合するモノクローナル抗体は本発 明に利用することができる。 このようなモノクローナル抗体は、 たとえば次のよ うにして得ることができる。
まず上記と同様の手法によつて Ly-49Qと結合するモノクローナル抗体を得る。 そして得られたモノクローナル抗体が、 上記ハイプリ ドーマが産生するモノクロ ーナル抗体と同一の抗原に結合していることを確認すればよい。 モノクローナル 抗体の反応 I1生は、 たとえば、 競合や吸収によって比較することができる。 すなわ ち、 モノクローナル抗体 2E6と IPCまたは Ly-49Qとの結合がある抗体によって競合 阻害を受けるとき、 この抗体はモノクローナル抗体 2E6と同一の抗原を認識してい ると考えられる。 あるいは、 ある抗体と結合した IPCが、 モノクローナル抗体 2E6
との結合活性を失うとき、 この抗体はモノクローナル抗体 2E6と同一の抗原を認識 している。
本発明は、 上記本発明に含まれるモノクローナル抗体を産生するハイプリ ドー マを提供する。 本発明者らが樹立したハイプリ ド は、 先に述べたように寄託 されている。 しかしこれらの特定のハイブリ ドーマに関わらず、 上記本発明のモ ノクローナノレ抗体を産生するハイプリ ドーマは本発明に含まれる。
更に本発明は上記ハイプリ ドーマを培養しその培養物からモノクローナル抗体 を回収する工程を含む、 モノクローナ 抗体の製造方法に関する。 ハイプリ ドー マは、 z'« 7roまたは vz'wで培養することができる。 Troにおいては、
RPMI1640などの公知の培地を用いて、 ハイプリ ド を培養することができる。 培養上清には当該ハイプリ ドーマが分泌したィムノグロプリンが蓄積される。 し たがって、 培養上清を採取し、 必要に応じて精製することにより、 本発明のモノ クローナル抗体を得ることができる。 培地には、 血清を添加しない方が、 ィムノ グロブリンの精製が容易である。 し力 し、 ハイプリ ドーマのより迅速な増殖と、 抗体産生の促進を目的として、 1 0 %程度のゥシ胎児血清を培地に加えることもで きる。
ハイプリ ド は、 ' において培養することもできる。 具体的には、 ヌー ドマウスの腹腔にハイプリド を接種することにより、 腹腔内でハイプリ ドー マを培養することができる。 モノクローナル抗体は、 腹水中に蓄積する。 したが つて、 腹水を採取し、 必要に応じて精製すれば、 本発明のモノクローナル抗体を 得ることができる。 得られたモノクローナル抗体は、 目的に応じて適宜、 修飾、 あるいは加工することができる。
本発明において、 マウス IPCの検出とは、 試料を構成する細胞にマウス IPCが含 まれることを確認することを言う。 したがって、 マウス IPCの検出により、 ある細 胞がマウス IPCであると同定することができる。 また、 複数種類の細胞で構成され る細胞集団に占めるマウス IPCの数を定量することができる。 IPCの検出は、 IPC
の数的な変動の把握に有用である。 たとえば IPCの数と、 AIDSの発症や重症度と の関連性が指摘されていることを先に述べた。 すなわち、 AIDS患者における日和 見感染の発症率は、 CD4+ T細胞のみならず IPCの減少によっても上昇することが 報告された。 本発明の検出方法は、 たとえば次のようにして実施することができ る。
細胞試料を抗 Ly-49Q抗体と接触させ、 試料中のマウス IPCに抗 Ly-49Q抗体を結 合させる。 抗 Ly-49Q抗体としては、 その抗原結合領域を含む断片を用いることも できる。 本明細書においては、 特に断らない限り、 抗 Ly-49Q抗体とは、 その抗原 結合領域を含む断片も含む。 細胞試料と抗 Ly-49Q抗体は、 抗体の免疫学的結合活 性が維持できる条件下で接触させられる。 具体的には、 弱酸性〜弱アルカリ性の p Hで、 かつ生理食塩水に近い塩濃度のもとで接触させるのが望ましい。 細胞試 料には、 マウス IPCを含む可能性があるあらゆる試料を用いることができる。 たと えば、 末梢血のリンパ球集団、 リンパ節、 脾臓、 あるいは骨髄等のリンパ系組織 を試料とすることができる。 これらの細胞試料の調製方法は公知である。 あるい は、 造血幹細胞を、 IPCに分化させて細胞試料とすることもできる。 造血幹細胞を 含む細胞集団を、 in vitroで、 あるいは// において IPCに分化させる方法は公知 である。 人為的に分ィ匕させた IPCの検出あるいは同定は、 IPCへの分ィ匕に必要な条 件の探索において有用である。
次いで、 細胞に結合した抗 Ly-49Q抗体が検出される。 例えば抗 Ly-49Q抗体を標 識し、 当該標識を追跡することによりマウス IPCを検出することができる。 抗体を 標識する方法は公知である。 抗体は、 たとえば酵素、 蛍光物質、 発光物質、 結合 親和性物質、 マイクロビーズ、 あるいはラジオアイソトープ等の成分によって標 識することができる。 これらの成分を抗体に結合する方法も公知である。 たとえ ば、 マレイミド誘導体等の 2官能性試薬を用いて、 酵素、 蛍光物質、 あるいはマ イク口ビーズ等を抗体に直接結合させることができる。 あるいは、 マイクロビー ズの表面に抗 Lv- 49Q抗体を物理吸着させることもできる。
その他、 抗 Ly-49Q抗体を、 適当な固相に結合しておくこともできる。 プレート やチューブの内壁、 カラムやキヤビラリ一の内壁、 あるいはビーズ状の固相の表 面などが固相として利用される。
抗 Ly-49Q抗体は、 間接的に標識することもできる。 たとえば、 ラット由来のモ ノクローナル抗体は、 ラットイムノグロプリンを認識する標識抗体によって、 間 接的に標識することができる。 本発明のモノクローナル抗体を間接的に標識する ための標識抗体は、 一般に二次抗体と呼ばれる。
本発明によるマウス IPCの検出方法において、 抗 Ly-49Q抗体の標識は、 各標識 成分に応じた手法を利用することにより、 追跡することができる。 たとえば、 蛍 光物質であれば、 励起光の照射により、 蛍光を検知することができる。 酵素標識 の場合には、 酵素反応の生成物を指標として、 標識の追跡が可能である。
標識の検知に先立ち、 抗体と反応した細胞を分離することもできる。 細胞の分 離には、 異なる細胞表面抗原を認識する抗体を利用することもできる。 すなわち、 マウス IPC特異的な抗 Ly-49Q抗体と、 マウス IPCを認識する任意の抗体の組み合せ が利用される。 たとえば、 ある細胞集団をビーズに固定ィ匕した抗 Ly-49Q抗体と接 触させて、 マウス IPCを特異的に捕捉する。 次に、 捕捉したマウス IPCに対して、 マウス IPCを認識する任意の抗体を結合させる。 マウス IPCを認識する任意の抗体 を標識抗体としておけば、 マウス IPCの検出が可能である。
マウス IPCを認識する任意の抗体は必ずしもマウス IPCに特異的な抗体でなくて も良い。 たとえば、 マウス IPCは CD11 c、 B220、 Ly6cおよび CD45RBが陽性の細 胞である。 したがってこれらの細胞表面抗原を認識する任意の抗体を、 マウス IPC を認識する任意の抗体として利用することができる。 これらの細胞表面抗原はマ ウス IPCに特異的なマーカーではない。 しかし、 本発明における分離方法における マウス IPCに対する特異性は、 抗 Ly-49Q抗体との反応性によつて保障される。
本発明において、 抗 Ly-49Q抗体はマウス IPCの検出用試薬とすることができる c 本発明のマウス IPCの検出用試薬における抗 Ly-490抗体は、 上記のような標識成
分で標識しておくことができる。 あるいは、 二次抗体と組み合せて供給すること もできる。 本発明のマウス IPCの検出に用いる抗 Ly-49Q抗体は、 その抗原結合領 域を含む任意の断片とすることができる。 したがって、 完全なィムノグロプリン 分子のみならず、 ィムノグロプリンの抗原結合活性を保持した断片を用いること ができる。 このような断片としては、 たとえば F(ab)2や、 Fab等を示すことができ る。
マウス IPCの検出方法を利用して、 マウスの樹状細胞のサブタイプを識別するこ とができる。 現在のところ、 IPCを含むマウスの榭状細胞には、 以下のようなサブ タイプがあるとされている。
(1) IPC
(2) リンパ球系樹状細胞("Lymphoid" DCs)
(3) CD4+骨髄系樹状細胞(CD4 positive "Myeloid" DCs)
(4) CD4-骨髄系樹状細胞(CD4 negative "Myeloid" DCs)
これらの榭状細胞の分化過程を図 8にまとめた。 IPCがリンパ球系の樹状細胞と 位置づけられるのに対して、 その他の樹状細胞はいずれも骨髄系の細胞である。 いずれの細胞も免疫応答において重要な役割を有すると考えられている。 しかし、 そのメカニズムに関する情報は多ぐない。 様々な刺激を与えたマウスや、 免疫機 能に異常を有する疾患モデルマゥスにおける、 これらのサブタィプのポピュレー シヨンの変化は、 メカニズムの解明における重要な情報となる。 したがって、 本 発明に基く IPCの検出方法を利用した榭状細胞のサブタイプの識別は、 マウスにお ける免疫システムの解明に有用である。
本発明を利用して、 樹状細胞のサブタイプを識別するための方法として、 次の ような方法を示すことができる。 たとえば、 識別すべき榭状細胞のサブタイプの 細胞表面マーカーを利用して、 各サブタイプを識別することができる。 図 8に示 した (1)-(4)の各樹状細胞は、 それぞれ図中に記載した細胞表面マーカーを有して いる。 したがって、 これらの細胞表面マーカーを適宜組み合わせることによって、
相互に識別することができる。 まず、 Ly-49Qと CDllcの 2つのマーカーを使って、 両者がポジティブな細胞として IPCが同定される (図 9 B上) 。 次に CDl l cのみ がポジティブである細胞に対して、 CD8と CD4の 2つのマーカーを適用すると、 以下のような組み合わせにより 3種類の樹状細胞を同定することができる (図 9 B下) 。 このように、 Ly-49Qを IPCのマーカーとして利用することによって、 樹 状細胞のサブタイプを容易に識別できることが明らかである。
CD4 CD8
(2) リンパ球系樹状細胞 - +
(3) CD4+骨髄系樹状細胞 + -
(4) CD4-骨髄系樹状細胞 - - これらのサブタイプの識別のために用いられる少なくとも 1つの抗体を、 Ly- 49Qを認識する抗体とともに組み合わせて、 樹状細胞の識別用試薬として供給す ることができる。 たとえば、 CDl lc、 CD4、 および CD8を認識する抗体から選択さ れる少なくとも 1つの抗体は、 樹状細胞識別用の試薬を構成する抗体として好ま しい。
更に、 本発明によるマウス IPCの検出方法によって、 組織や生体内におけるマウ ス IPCの局在を明らかにすることもできる。 IPCの生体内におけるポピユレーショ ンは小さい。 そのため、 IPCの機能や局在に関する情報は、 きわめて限られている。 そこで抗 Ly-49Q抗体を標識し、 糸且織あるいは生体内における挙動を追跡すること によって、 IPCの局在を明らかにすることは重要である。
すなわち本発明は、 次の工程を含む、 IPCの局在の解析方法を提供する。
(1)生体または生体から採取された組織試料に抗 Ly-49Q抗体を投与または接触 させる工程、 および
(2)抗 Ly-49Q抗体を追跡し、 抗体が局在した領域に IPCが局在していると判定す る工程
生体内の局在の解析においては、 抗 Ly-490抗体は、 放射性同位元素や磁性金属
によって標識される。 放射性同位元素は、 その放射活性を追跡することによって、 局在を画像化することができる。 一方、 磁性金属標識は核磁気共鳴イメージング (MR-I)によつて画像化することができる。 抗体をこのような標識物質で修飾する 方法は公知である。 本発明におけるマウス IPCマーカ一 Ly-49Qを認識する抗体は、 マウス IPCの IFN産生能あるいは増殖に干渉しないため、 生体に投与しても IPCの 举動に干渉しない。 したがって、 生体内局在の解析に当たって、 抗体の結合に起 因する干渉の可能性を排除することができる。
あるいは生体外に取り出した試料における IPCの局在を知るためには、 蛍光色素 や酵素活性物質で標識された抗体を用いることもできる。 このような解析方法は、 免疫染色法として公知である。
抗 Ly-49Q抗体を、 抗体が由来する生物種とは異なる宿主に投与する場合には、 当該宿主にとつて異物と認識されにくレヽ形に加工するのが望ましレ、。 たとえば、 次のような分子に加工することにより、 ィムノグロプリンを異物として認識され にくくすることができる。 ィムノグロプリン分子を以下のように加:!:する手法は 公知である。
一定常領域を欠失した抗原結合領域を含む断片
—モノクローナル抗体の抗原結合領域と宿主のィムノグロプリンの定常領域 とで構成されるキメラ抗体
一宿主のィムノグロプリンにおける相補性決定領域 (CDR)をモノク口ーナル 抗体の CDRに置換した CDR置換抗体
続いて、 本発明によるマウス IPCの分離方法について述べる。 本発明の分離方法 において、 抗 Ly-49Q抗体は、 前記検出方法における抗体と同様に、 標識成分や固 相に結合することができる。 マウス IPCを含む細胞集団と抗 Ly-49Q抗体を結合さ せた後に、 抗体と結合した細胞を分取することによって、 マウス IPCを分離するこ とができる。 たとえば、 標識成分と結合させた抗 Ly-49Q抗体を用いる場合には、 標識成分を追跡し、 標識成分が結合している細胞を分取することによって、 マウ
ス IPCを分離することができる。 固相と結合させた抗 Ly-49Q抗体を利用する場合 には、 固相を回収すれば、 マウス IPCが分離される。
続いて、 抗 Ly-49Q抗体を利用したマウス IPCの分離手法を、 具体的に述べる。 たとえば、 水不溶性担体に抗 Ly-49Q抗体を固定化し、 これに細胞を直接的または 間接的に結合させる方法を利用することができる。 水不溶性担体には、 セルロー ス誘導体ゃァガロース等からなるビーズやマトリックス等が利用される。 抗 Ly- 49Q抗体を固定化した水不溶性担体は、 カラムに充填して免疫吸着力ラムとする こともできる。 不溶性担体上のモノクローナル抗体に捕捉されたマウス IPCは、 免 疫学的な結合を解離させる緩衝液によって溶出することができる。
あるいは蛍光抗体標識細胞分離法や、 免疫磁気ビーズによる分離法を利用する こともできる。 すなわち、 抗 Ly-49Q抗体が結合した細胞を蛍光標識や磁気標識を 目印に、 目的とする細胞を一つ一つ分離する方法である。 これらの分離法には、 FACSや MACSなどのセルソーターを用いるのが有利である。 セルソーターを用い た細胞の分離方法は公知である。
例えば AutoMACSによる細胞の分離においては、 マウス IPCを含む細胞集団に、 抗 Ly-49Q抗体を接触させる。 細胞を PBSで洗浄後、 次いでピオチン化抗ラット IgG 抗体 (二次抗体) を反応させる。 あるいは、 予めピオチン化した抗 Ly-49Q抗体を 利用すれば、 二次抗体は不要である。 さらに、 細胞を PBSで洗浄後、 ストレプト アビジンマグネティックビーズを反応させる。 こうしてマウス IPCには、 マグネテ イツクビーズが結合される。 得られた細胞を磁気カラムに通すことにより、 カラ ムに捕捉することができる。
このカラムを洗浄した後、 カラムに残った細胞を溶出させれば、 マウス IPCを回 収することができる。 実際に本発明者らは、 このような方法に基づいて、 マウス
IPCを高い収率で分離できることを確認している。 たとえばマウス末梢血リンパ球 集団における IPCのポピュレーシヨンは 1 %以下である。 抗 Ly-49Q抗体を利用し た細胞分離方法によって、 IPCのポピュレーションを 7 0 %以上にまで高めること
ができる。 しかも、 MACSを利用した場合には、 操作は 3 0分間程度で完了する。 つまり本発明の分離方法は、 生体中にはわずかしか見出すことのできない IPCを大 量に調製するための方法として有用である。
マウス IPCを分離するための細胞集団としては、 IPCを含む可能十生のあるあらゆ る細胞集団を利用することができる。 具体的には、 たとえば、 末梢血、 脾臓組織、 骨髄などの生体由来の細胞集団を利用することができる。 あるいは、 生体外で人 為的に誘導された IPCを含む細胞集団を利用することもできる。 細胞集団が IPC以 外の、 Ly-49Q陽性細胞を含む場合には、 予め当該細胞を除去することができる。 たとえば、 顆粒球 (Granulocyte)やマクロファージ (Macrophage)は、 IPCとの細胞の 大きさの違いを利用して予め分離しておくことができる。 細胞の大きさの違いに 基く分離方法としては、 密度勾配遠心分離法などを利用することができる。
また細胞表面マーカーを利用した細胞の分離を利用することもできる。 たとえ ば (1)B220、 (2)CD45RB、 および (3)CDllc陽性の細胞の選択によって IPCが選択さ れ、 顆粒球およびマクロファージが除かれる (ポジティブセレクション) 。 ある いは、 CD1 lb細胞を除去すれば、 IPCに混在する顆粒球おょぴマクロファージを特 異的に除去することができる (ネガティブセレクション) 。 その他、 脾臓由来の 細胞群を対象とする場合には、 CD19陽性細胞と CD3陽性細胞を除くことによって、 それぞれ B細胞と T細胞が除カゝれる。
本発明の IPCの分離方法によつて分離された IPCは、 他の細胞を除く工程を組み 合わせることによって、 更に純度を高めることができる。 たとえば、 IPCと混在す る細胞との識別が可能なマーカーを利用して、 他の細胞を除くことができる。 本 発明による IPCの分離方法においては、 たとえば、 顆粒球ゃマク口ファージが混在 する可能性がある。 したがって、 これらの細胞は有するが、 IPCには見出せないマ 一力一を利用して、 IPCを精製することができる (negative selection)。 このようなマ 一力一を、 ネガティブセレクションマーカーと言う。 ネガティブセレクションマ 一力一として、 たとえば CDl lbを示すことができる。
- 2 1 - すなわち本発明の分離方法の前、 または後に、 IPCを含む細胞集団に含まれる、 ネガティブセレクションマーカーを有する細胞を分離すればよい。 具体的には、 先に述べた IPCの分離方法と同様の手法によって、 ネガティブセレクションマーカ 一を有する細胞を分離することができる。 たとえば、 予めネガティブセレクショ ンマーカーを有する細胞を除去した細胞集団に対して、 本発明の IPCの分離方法を 適用することができる。 あるいは、 本発明の方法によって分離された IPCを含む細 胞集団から、 更にネガティブセレクションマーカーを有する細胞を除去すること によって、 IPCの純度を更に高めることができる。 すなわち、 Ly-49Qと CDl lbの二 重染色によって、 IPCは Ly-49Q(+)および CDllb (-)細胞として IPCを単離すること力 S できる (図 9 A)。
また、 逆に、 これらの細胞には見出せないが、 IPCが有しているマーカーを利用 して、 IPCを精製することもできる (positive selection)。 このようなマーカーを、 ポ ジティブセレクションマーカーと言う。 ポジティブセレクションマーカーとして は、 B220、 CD45RB、 および CD11 cを示すことができる。 ポジティブセレクショ ンマーカーを利用する場合は、 当該マーカーを有する細胞が IPCとして分離される
(図 9 B) 。
ネガティブセレクションマーカーあるいはポジティブセレクションマーカーは、 単独で用いても良いし、 複数を組み合わせることもできる。 更に、 両方のマーカ 一を利用することもできる。
本発明の IPC分離方法に用いる Ly-49Qを認識する抗体は、 IPC分離用試薬とする ことができる。 すなわち本発明は、 Ly- 49Qを認識する抗体またはその抗原結合領 域を含む、 マウス IPC分離用試薬に関する。 本発明の分離用試薬を構成する Ly- 49Qを認識する抗体またはその抗原結合領域は、 標識や固相に結合しておくこと ができる。 たとえば磁気ビーズに結合した抗体は、 MACSによる分離に有用であ る。 あるいは、 固相に結合した抗体をカラムに充填して、 IPC分離カラムを構成す ることもできる。
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- 2 8 - 本発明の分離用試薬には、 ネガティプセレクションマーカーおよびポジティブ セレクションマーカーのいずれか、 または両方を検出するための要素を組み合わ せることができる。 たとえば、 これらのマーカーを認識する抗体を組み合わせた 試薬は、 より高純度の IPCを得るための試薬として有用である。 あるいは、 細胞集 団に共存する可能性の高い IPC以外の細胞を分離するための要素を組み合わせて IPC分離用試薬を構成することもできる。 具体的には、 細胞の大きさの違いに基い て顆粒球およぴマク口ファージを除去するための、 密度勾配遠心分離のための要 素を Ly-49Qを認識する抗体と組み合わせることができる。
IPCは、 生体におけるインターフェロンの大部分を産生する細胞である。 したが つて、 IPCを単離し、 その IPC産生能を調節する方法を研究することには大きな意 義がある。 IPCが産生する IFN-αや IFN-β等のインターフェロンは、 ガンやウィルス 性疾患の治癒において重要な作用を有すると考えられている。 したがって、 イン ターフェロンの産生活性の促進は、 これらの疾患の治療方法として有用である。 ヒト IPCは、 アレルゲンや寄生虫などの刺激により肥満細胞で産生された IL-3を 介して DC2 (Dendritic Cell type2)へ分化するとも言われている。 DC2 は、 T細胞の Th2への分化を誘導する細胞である。 了レルゲン刺激による IPCの IFN産生あるい は TNF産生を抑制できれば、 Th2への分化も抑制できる可能性がある。 したがって、 IFN産生を抑制する方法は、 各種アレルギー疾患の治療効果も期待できる。 このよ うな研究を進めるためには、 IPCのインターフェロン産生能に干渉しない抗体を用 いて単離された IPCが必要である。 図面の簡単な説明
図 1は、 FLT-3リガンド添加後、 10日間培養したマウスの骨髄細胞 (IPCが濃縮 されている) の細胞表面を、 作製抗体および他の IPC マーカーで染色した FACS解 析像である。 培養上清陽性分画、 陰性分画をそれぞれ R2、 R3とした。 グラフ内の、 R1 &R2は 2E6抗体陽性の細胞集団、 R1 &R3は 2E6抗体陰性の細胞集団をあらわす。
P T/JP2003/009809
- 2 9 - 図 2は、 各モノクローナル抗体で抽出した細胞の形態を表わす顕微鏡写真 (X 4 0 0 ) である。 (a)はインフルエンザウイルス PR8に感染させる前の形態、 (b)はィ ンフルェンザウィルス PR8と 2日間培養した後の形態を示す。 感染後の細胞は樹 状突起を持ち、 樹状細胞に典型的な形態を示した。
図 3は、 本発明のモノクローナル抗体 2E6が結合した細胞のインターフェロン産 生能を示すグラフである。 グラフは下から順に、 2E6陽性細胞 (2E6 positive), 2E6 陰性細胞 (2E6 negative), そして全脾細胞 (whole spleen cell)の結果を示す。 各細胞に ついて、 PR8感染させたもの (PR8)と、 感染させなかった場合 (-)の IFN-α産生量 (ng/mL)を示した。
図 4は、 モノクローナル抗体 2E6の、 IPCのインターフェロン産生能への影響を 示すグラフである。 下が 2E6( 0 . 0 1— l g/mL)を、 また上がラット IgG( 0 . 0 1一 l g/mL)を加えた場合の、 PR8を感染させた 2E6陽性細胞の IFN-α産生量
(ng/mL)を示した。 一番下の (-)は、 2E6陽性細胞無しの場合の測定結果である。
図 5は、 モノクローナル抗体 2E6の、 IPCの細胞増殖能への影響を示すグラフで ある。 右が 2E6( 0 . 1 g/mL)を、 また中央がラット IgG( 0 . 1 g/mL)を加えた場 合の、 CpG存在下で培養した 2E6陽性細胞の H3チミジンの取りこみ量 (cpm)を示し た。 一番左の (-)は、 CpG無しの場合の測定結果である。
図 6は、 配列番号: 1に記載の塩基配列 (SEQ ID:1)を有する遺伝子 (上) の発 現レベルを確認した結果を示す写真。 各レーンは左から順に次の細胞の結果を示 す。
1 : CD3陽性細胞 (T細胞) 、 3 :マウス IPC、 および
2 : CD8陽性細胞、 4 :骨髄系樹状細胞 (myeloid DC) 図 7は、 配列番号: 2に記載のアミノ酸配列 (上) と、 Ly-49Qとして報告され ている Gr-1+細胞に発現するレセプターのアミノ酸配列 (配列番号: 8、 GenBank Acc#. AB033769;下) をァライメントした結果を示す図である。 図 8は、 樹状細胞の分化過程を示す図である。 造血幹細胞 (Haematopoietic Stem
Cell)は、 リンパ球系前駆細胞 (CLP: Common Lymphoid Progenitors)およぴ骨髄系前 駆細胞 (CMP: Common Myeloid Progenitors)とに分化する。 IPCはリンパ球などとと もにリンパ球系前駆細胞から分化した細胞である。 一方、 骨髄系前駆細胞からは、 リンパ球系樹状細胞あるいは骨髄系樹状細胞が分化する。 図 9は、 各種の細胞表面マーカーを利用する IPC他の識別方法を示すグラフであ る。 Aは、 Ly-49Qと CDl lbの 2つのマーカーを利用して、 IPCの分離が可能なこと を示す。 また Bには、 各種の樹状細胞の識別を行うための細胞表面マーカーの組 み合わせの例を示す。 すなわち、 まず Ly-49Qと CDl lcの 2つのマーカーを使って、 両者がポジティブな細胞として IPCが同定される (上) 。 次に CDl l cのみがポジ ティブである細胞に対して、 CD8と CD4の 2つのマーカーを適用すると、 いずれ か一方がポジティブな細胞と、 両者がネガティプな細胞の 3種類の細胞として各 種の樹状細胞を同定することができる (下) 。 図 1 0は、 Ly-49Qを認識するモノクローナル抗体 2E6と、 各種の細胞表面マー カーを認識する抗体による、 Balbんマウスの脾臓由来の細胞の二重染色の結果を示 す。 縦軸が組み合わせた各種の抗体を標識した蛍光色素の蛍光強度、 横軸がモノ クローナル抗体 2E6を標識した蛍光色素の蛍光強度を示す。 図 1 1は、 Ly-49Qを認識するモノクローナル抗体 2E6と、 Gr-1 (左側) または CDl lb (右側) を認識する抗体による、 二重染色の結果を示す。 上力 ¾alb/cマウス の、 下が C57B6マウスに由来する脾臓由来細胞の分析結果である。 縦軸と横軸は、 それぞれの軸に示した抗体を標識した蛍光色素の蛍光強度を示す。 図 1 2は、 Balb/cマゥスの脾臓由来の Gr-1およびモノクローナル抗体 2E6陽性細 胞 (IPC/R2;カラム左) 、 Gr-1強陽性おょぴモノクローナル抗体 2E6陽性細胞 (顆 粒球/ R3;カラム中) 、 並びに Gr-1陽性およびモノクローナル抗体 2E6陰性細胞
(マクロファージ/ R5;カラム右) の、 インターフェロンの産生能を確認した結果
を示す。 縦軸はインターフェロンまたは IL-12の産生量 (pg/mL)を、 横軸が刺激剤の 種類を示す (-:刺激剤無し、 PR8:インフルエンザウイルス、 CpG:ODN-CpG) 。 図 1 3は、 Balb/cマウスの脾臓由来の Gr-1およびモノクローナル抗体 2E6陽性細 胞 (IPC;下) 、 Gr-1強陽性およびモノクローナル抗体 2E6陽性細胞 (顆粒球;上) の顕微鏡写真を示す写真。
発明を実施するための最良の形態
以下、 実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
〔実施例 1〕 モノクローナル抗体作成プロトコル
免疫原とする細胞は以下のようにして調製した。 Balb/cマウス雌 (4〜6週 令) の骨髄細胞を 1 O ng/mLの FLT-3リガンド添カ卩 10%FCS-RPMI 1640 (ぺニシリン、 ストレプトマイシン)にて 10日間培養した。 10日目には約 40%の細胞が IPC
(Interferon producing cell) となった。 10日後、 CDl lc陽性、 CDl lb陰性、 B220陽 性分画を、 セルソーターで分離した。
0、 4、 11日目の上記の分離した細胞 l xlO6個 (/片足) を、 完全フロインドアジ ュバント (CFA) と共にラットのフットパッド (foot pad) へ注入した。 12日目に 免疫ラットのリンパ節を分離し、 リンパ球を採取した。 マウスのミエローマ
P3x/63Ag8.653 とラットのリンパ球を、 4 : 5の割合で混合し、 ポリエチレング リコール (PEG)を加えて細胞を融合した。 融合後の細胞は+分に洗浄して HAT培地 に分散させ、 1ゥエル当たり 5 xl04個の細胞を含むように 96 well plateにまいた。 細胞が増えたゥエルの細胞を回収し希釈して、 その培養上清をスクリーニング した。 培養上清は、 マウス脾臓細胞、 および培養骨髄細胞に対する反応†生を指標 としてスクリーニングした。 詳細は以下のとおりである。
〔実施例 2〕 培養上清のスクリーニング
Balb/c マウス雌 ( 4〜 6週令) の骨髄細胞を FLT-3リガンド添カ卩 10%FCS-RPMI
1640 (ペニシリン、 ストレプトマイシン)にて 10日間培養した。 1 0日目には約 40%の細胞が IPC (Interferon producing cell) となった。 ハイプリ ドーマ培養上清を 1次抗体とし、 2次抗体に FITC標識抗ラット IgGを用いてこの細胞を染色した。 その後、 各種抗体 (CDl lb, CDl lc, CD3, CD19, CD45RB, B220, Ly6C) により二重 染色した。
培養上清陽性分画、 陰性分画をそれぞれ、 R2、 R3とし各々の Gate内での各種抗 原の発現をヒストグラムで示した (図 1 ) 。 作製した数種類の抗体によって染色 される細胞群は、 文献上で定義されているマウス IPC(Nature Immunol.2001.pl 144- 1150)の細胞表面抗原プロファイルが一致した。 したがって、 これらの抗体はマウ ス IPCを特異的に結合する抗体であると考えられた。
〔実施例 3〕 抗体で分離した細胞の形態
実施例 2と同様に培養した骨髄細胞を、 培養上清を 1次抗体とし、 2次抗体に FITC標識抗ラット IgGを用いて染色した。 その後セルソーターを使って、 陽性細胞 を分離した。 サイトスピン後、 ギムザ染色し、 検鏡したところ IPCに特異的な形態 を示した (図 2 (a)) 。 すなわち、 この細胞の形は丸く大きな核を有していた。
ΙχΙΟ5の細胞を 96 well丸底プレートにてインフルエンザウイルス (PR8)と共に 24 時間培養し、 同様にギムザ染色した後、 顕微鏡下にて観察したところ、 形態的に 典型的な樹状細胞に分ィ匕した (図 2 (b)) 。 この結果から、 上記抗体によって分離 された細胞は、 ウィルス感染によつて樹状細胞に分化するというマウス IPCの特徴 を有していることが確認された。 マウス IPC特異的なモノクローナル抗体として 2E6を選択し以降の実験に用いた。 モノクローナル抗体 2E6を産生するハイプリ ド 一マ 2E6は、 2002年 8月 1日に独立行政法人産業技術総合研究所内特許生物寄託セン ターに寄託されている (受託番号 FERM BP-8445) 。
〔実施例 4〕 抗体で分離した細胞のィンターフェ口ン産生能
実施例 2と同様に培養した骨髄細胞を 2E6の培養上清、 および 2次抗体で染色後、 セルソーターにて陽性、 陰性細胞を分離した。 lχl05個の2E6陽性細胞を96 well丸
底プレートに分注し (ΙΟΟμΙ/well) 、 インフルエンザウイルス PR8を感染させ、 24 時間後の培養上清中の IFNaを ELISAにて測定した。 それぞれの反応は、 triplicateで 行ない、 平均値を求めた。 2E6陰性細胞に代えて、 脾細胞または 2E6陰性細胞を同 様に処理して結果を比較した。
ELISAのオペレーションは次のとおりである。 まず抗 IFNa抗体を 96 well plateに over nightで coatした。 プレートを洗浄後培養上清 ΙΟΟμΙをいれ、 4°C over nightにて 反応させた。 プレートを洗浄後、 IFN aと IFN ]3を認識する標識化抗インターフエ ロン抗体を添加し、 1時間インキュベートした。 2E6陽性細胞では、 その他の細胞 と比べて、 高いインターフェロンの産生が認められた。 したがってモノクローナ ル抗体 2E6が認識する抗原は、 IPCに特異的な表面抗原であることが確認できた
(図 3 ) 。
〔実施例 5〕 抗体のィンターフヱロン産生能に対する影響
実施例 2と同様に培養した骨髄細胞を 1 X 105個ずつ、 96 well丸底プレートに分 注した。 これにハイプリ ドーマ 2E6の培養上清、 またはラット IgG (コントロー ル) を添加し、 37°C にて、 30分間培養後、 インフルエンザウイルス (PR8)を添カロ し、 24時間、 37°Cにて培養後、 培養上清の IFN aを ELISAで測定した。 結果を図 4 に示した。 0 . 0 1— l g/mLのいずれの抗体濃度においても、 対照との間で、 IFN-aの産生量に有意な差は見られなかった。 すなわち、 IPCの IFNa産生能に対す るモノクロ一ナル抗体 2E6の影響は観察されなかつた。
〔実施例 6〕 抗体の IPC増殖能に対する影響
実施例 2と同様に培養した骨髄細胞を I X 105個ずつ、 96 well丸底プレートに分 注した。 次いで、 各ゥエルに l g/mLの 2E6モノクローナル抗体および ΙμΜの ODN-CpG (Phosphorothioate CpG ODN 1668; 5,-TCCATGACGTTCCTGATGCT-3,)を 添加し、 24時間後のサイミジン取り込みを計測した。 対照として、 モノクローナ ル抗体に代えてラット IgGを用いて同じ処理をした細胞の増殖能を測定した。 結果 を図 5に示した。 モノクローナル抗体 2E6を添加した場合の細胞の増殖は、 対照と
有意な差は認められなかつた。
〔実施例 7〕 発現クローニング
1 ) IPC-cDNAラィプラリ一の作製
FL3-Tリガンドで Balb/cマウスの骨髄細胞から誘導した IPCより全 RNAをフエノ ール-グァ-ジン法により抽出し、 oligo-dTカラムにより mRNAを精製した。 精製 した inR Aから Gubler-Hoffinan法により cDNAを合成し、 両端に EcoRI-Notlァダプ ター (インビトロジェン社製)を結合後、 スパンカラム (クロマスピン 400、 ク ロンテック社製) により未反応の EcoRIアダプターおよび 500塩基以下の短い cDNAを除去した。 得られた両端に EcoRIサイトを有する cDNAを動物細胞用発現 用ベクター pME18s(XhoI断片を除いたもの)の EcoRIサイトに T4リガーゼにより結 合し、 大腸菌 DH10にエレク ト口ポーレーシヨン法により形質転換した。 これ を LB ·カルべニシリン (10( g/ml) 50 Omlで 30°Cでー晚培養し、 QIA filter plasmidmaxikit(Qiagen社製)により 同キットのプロトコールに従って plasmidを抽 出、 精製し、 IPC-cDNAライブラリーを得た。
2) COS細胞による発現クローニング
6 cmディシュに COS細胞を 5 x l 05で 10枚まき、 37 °C、 5 %C02下で培養 した。 20時間の培養の後、 Effectintrasfection Reagent(Qiagen社製)により同製品 のプロトコールに従 ヽ IPC cDNAライプラリーを transfectionした。 48時間、 3 7°C、 5%C02下で培養後、 PBSで洗浄、 PBS/5mMEDTAで細胞をデイシュから 剥離し、 さらに PBSで洗浄後、 セルストレナー (70μπι, ファルコン社製) を通し た。 遠心後 (1300rpm,5分) 上清を除去し、 PBS/0.5%BSA/2mM EDTAを 1 mLに懸 濁し、 Fc block (ファーミンジヱン社製) 4 Ομίを加え 4。Cで 20分置いた。 これ にビォチン化した IPC特異的抗体 30〜50μ§を加え、 氷上で 30分間保持した。 PBS で洗浄後、 100 の P B Sに懸濁し、 ストレプトァビジンマイク口ビーズ
(Miltenyi Biotec社製) 10〜20μίを加え 10°Cで 15分静置した。 PBS/
0.5%BSA/2mM EDTAで洗浄することにより過剰なストレプトアビジンマイクロビ
ーズを除去し、 1 mlの PBS/0.5%BSA/2mM EDTAに懸濁した。
AutoMACS (Miltenyi Biotec社製) で posseldsの条件で細胞を分取した。 改良 Hirt 法 (BioTechniques Vol.24,760-762, 1998) により plasmidを抽出、 精製した。 得られ た plasmidを大腸菌 D H 1 0にェレクトロポーレーション法により形質転換し、 L B ·カルべニシリン (10(^g/ml) 1 0 0 mlで 3 0 °Cでー晚培養し、 QIA filter plasmid midi kit (Qiagen社製)により 同キットのプロトコールに従って plasmidを抽 出、 精製した。 以上操作を 1クールとして、 この後同じ操作を 4回繰り返し、 IPC 特異的抗体に反応する抗原をコードする plasmidを濃縮した。 最後に、 AutoMACS のかわりにセルソーター (FACSVantage, Becton Dekinson社製) により陽性細胞を 分取し、 これらより抽出した plasmidを形質転換した大腸菌 DH10を適量 L B 'カル ベ-シリン (lOO g/ml) プレートに塗布し、 3 0 °Cでー晚培養し、 現れたコロニ 一を 3 0個ピックアップし、 それぞれより plasmidを抽出した。 これらを、 それぞ れ、 COS細胞に transfectionし、 対応する IPC特異的抗体で F ACS解析することによ り陽性 plasmidを選抜した。
得られた plasmid上にクローン化されている cDNAの塩基配列を決定し、 マウス 遺伝子データベースに登録されている塩基配列情報と blastサーチすることにより、 その遺伝子を決定した。
その結果、 モノクローナル抗体 2E6が結合したクローンは、 配列番号: 1に記載 の塩基配列を有していた。 これらの塩基配列によってコードされるアミノ酸配列 を、 配列番号: 2に示した。
配列番号: 1に記載の塩基配列は、 Ly-49Qと呼ばれる NKレセプターとして単離 された分子の塩基配列 (GenBank Acc#.AB033769)とほぼ一致した。 両者の塩基配列 の違いは、 マウスの種の違いによるものと考えられた。 配列番号: 1に記載の塩 基配列は配列番号: 2に示すァミノ酸配列をコードしていた。 配列番号: 2に記 載のアミノ酸配列と、 GenBank Acc#.AB033769として既知のァミノ酸配列 (配列 番号: 8 ) のァライメント結果を図 7に示した。 配列番号: 8に記載のアミノ酸
配列は、 配列番号: 2に記載のアミノ酸配列に対して、 以下の変異を有する。 1位 Metの欠失、 5 1 3 4位 lieの Valへの置換、
9 4位 Serの Asnへの置換、 2 3 0位 Lysの Thrへの置換、 そして
1 0 3位 Proの Leuへの置換、 2 5 4位 Pheの Valへの置換
1 1 4位 Asnの Aspへの置換、
したがって、 これらの変異のいずれかを含むアミノ酸配列は、 本発明における Ly-49Qとして有用である。
3 ) FACSによる確認
上記発現クロー-ング法により得られた plasmidを QIA filter plasmid midi kit (Qiagen社製)により再度大腸菌より高度に精製し、 もう一度 COS細胞に transfection した。 4 8時間後、 定法に従って、 対応する IPC特異的抗体および FITC標識抗ラ ット 2次抗体を反応させ FACS解析を行うことで、 プラスミド上にクローン化され ている cDNAが、 抗原をコードしているかどうかを確認した。
その結果、 上記モノクローナル抗体 2E6は、 いずれもプラスミ ドを導入した COS 細胞に対する結合が観察された。 したがって、 プラスミド上にクローン化されて Vヽる cDNAは、 レ、ずれもこれらのモノクローナル抗体によつて認識された抗原をコ ードしていることが確認された。 '
4 ) R T— P C R法による確認
各細胞より抽出した RNAより合成した cDNAを錶型として、 定法に従って PCRを 行い、 抗原遺伝子が IPCに特異的に発現しているかどうかを確認した。 PCRに用い たプライマーの塩基配列は次のとおりである。
配列番号: 1用センスプライマー (配列番号: 3 ) :
5'-GAGCAGGAGGTCACTTATTCAAC-3'
アンチセンスプライマー (配列番号: 4 ) :
5'-AACCAGTGTATTTCCAGGCTTCC-3'
j3ァクチン用センスプライマー (配列番号: 5 ) :
5'-GTGGGCCGCTCTAGGCACCAA-3'
アンチセンスプライマー (配列番号: 6 ) :
5'-CTCTTTGATGTCACGCACGATTTC-3*
発現レベルを比較した細胞は次のとおりである。 細胞は、 セルソーター
(FACSVantage, Becton Dekinson社製) により高度に分離したものを用いた。 結果 は図 6に示した。 配列番号: 1 (上) に示した塩基配列を有する遺伝子は、 IPCに おける高い発現が観察された。 したがって、 この遺伝子はマウス IPCのマーカーと して有用であることが裏付けられた。
CD3陽性細胞 (T細胞) 、 マウス IPC、 および
CD8陽性細胞、 骨髄系榭状細胞 ("Myeloid" DC)
〔実施例 8〕 二重染色による樹状細胞の識別
C57B6および Balb/cマウスの脾臓細胞おょぴ骨髄より血球細胞を抽出した。 抽出した血球細胞に対して、 抗 Ly-49Qモノクローナル抗体 2E6、 および各種細 胞マーカーを認識する抗体による二重染色を行った。 細胞マーカーとして、 次の マーカーを利用した。
B220、 Ly6 c、 Gr-1、 CD4、 CD19、 CD3、 CDll c、 CDl lb、 および CD45RB 染色後の細胞を FACScanによって、 解析した。 結果の一部を図 1 0およぴ図 1 1に示した。 図 1 0の各グラフにおいて、 縦軸が各マーカーの、 そして横軸が Ly-49Qの陽性細胞のポピュレーションを示す。 たとえば CD3や CDllcとの二 重染色によって、 Ly-49Q陽性おょぴ CD3若しくは CD1 lcが陽性の細胞群 (IPC) を識別できる。 また Ly-49Qの発現が見られる Balb/cマウス由来の顆粒球は、 Gr-1に強く染色される細胞 (R5)として IPCと識別できることがわかる。
更に C57B6マウスに由来する細胞の解析結果において、 この実施例で用いた モノクローナル抗体 2E6が顆粒球に結合していないことがわかる (図 1 1 ) 。 —方 IPCについては、 マウスの系統の違いにかかわらず、 いずれもモノクロ一
ナル抗体 2E6によって検出できている (R6および R7) 。 この結果は、 C57B6 マウス由来の細胞群を対象とする場合には、 モノクローナル抗体 2E6を利用し て、 顆粒球が共存している細胞群の中の IPCを特異的に検出できることを示し ている。 すなわち、 C57B6マウス由来の細胞群においては、 モノクローナル抗 体 2E6ポジティブ細胞を IPCと同定することができる。 Ly-49Qは C57B6マウス の顆粒球でも発現しているので、 2E6の認識ェピトープが、 マウスの系統間で構 造の異なる部位である可能性が考えられた。 たとえば、 C57B6および Balb/cマ ウスの間で Ly-49Qの糖鎖の違い、 あるいは多型の存在等を構造の違いの理由と して予測することができる。
〔実施例 9〕 分離した細胞の IFN産生能の確認
Ly-49Q陽性細胞として単離された細胞が IPCであることを確認するために、 細胞の IFN産生能を確認した。 まず、 AutoMACSを用い、 骨髄細胞から Gr-1陽 性細胞を抽出した。 得られた細胞を対象として、 Gr-1と 2E6の二重染色により 以下の細胞群を分離した。 細胞の単離にはセルソーターを用いた。
(1) Gr-1 強陽性 (high positive), 2E6陽性細胞(R3)、
(2) Gr-1 弱陽性 (lo positeve)、 2E6 陽性(R2)、
(3) 2E6陰性 (lo positeve)、 Gr-1弱陽性 (lo positeve) (R5) 次レ、で分離した細胞を各種刺激剤で刺激し、 IFN-αおよび IL-12の産生レベルを 測定した。 刺激剤には、 インフルエンザウイルス PR8、 および ODN-CpGを用いた。 結果を図 1 2に示した。 (2) Gr-1 陽性かつ 2E6陽性の細胞群 (R2)は、 PR8刺激によ つて IFN- a産生能が強く誘導された。 この細胞群は IPCであることが裏付けられた。 実際に AutoMACSで分離された細胞の形態学的な特徴を確認した。 その結果、 (2) Gr-1 陽性かつ 2E6陽性の細胞 (R2)は IPC (図 1 3下の写真) に、 そして (1) Gr-1 強陽性かつ 2E6陽性細胞 (R3)は顆粒球 (図 1 3上の写真) に特徴的な形態をそれぞ れ有していた。
産業上の利用の可能十生
本発明は、 マウス IPCのマーカーとして有用な分子を提供する。 マウス IPCに特 異的に見出されるマーカーは、 これまで知られていなかった。 本発明らが見出し たマーカーにより、 マウスの IPCの同定、 検出、 あるいは分離を容易に行うことが できる。 IPCの末梢血におけるポピュレーションは極めて小さい。 したがって、 公 知のモノクローナル抗体を使ったマウス IPCの同定や分離には、 複数の抗体を用い た多重染色が必要であった。 一方本発明によって提供されたマーカーは、 マウス
IPCに対する特異性を有するので、 1種類のモノクローナル抗体によって、 マウス IPCの検出や分離が可能である。
マウス IPCは、 ウィルスや IL- 3の刺激によって樹状細胞に分化する。 これらの刺 激はそれぞれ異なる樹状細胞への分化を誘導する。 つまり、 IPCは多様な細胞への 分化能を有する。 したがって IPCは、 免疫システムにおける重要な細胞に位置付け られる前駆細胞である。 このような IPCの分離や同定を容易にする本発明のマーカ —は、 高い産業上の有用性を有する。
より具体的には、 本発明に基くマーカーを指標としてに分離されたマウスの IPC を利用して、 IPCの分化の誘導機構を解明することができる。 解明された機構に基 づいてヒトの IPCの分化機構を解明することができれば、 ヒト IPCの分ィ匕を人為的 に調節できる可能性がある。
更に本発明によって提供されたマーカーを認識する抗体は、 マウス IPCのインタ '一フエロン産生能を調節する作用を実質的に有しない。 IPCは、 血中において大量 のインターフェロンを産生する。 したがって IPCのインターフエ口ン産生能に影響 を与えることなく IPCの単離を可能とする本発明のマーカーは、 研究材料としての IPCの単離に貢献する。 先に述べたように、 BDCA- 2抗原を認識する公知のモノクロ ーナル抗体は、 ヒ ト IPCに対してそのインターフェロン産生能を抑制する作用を有 する。 IPCのィンターフェロン産生能に干渉しないモノクローナル抗体を提供した
本発明の価値は大きい。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、 参照として本明細書 に組み入れられる。