JP4498136B2 - マウスインターフェロン産生細胞の検出方法 - Google Patents

マウスインターフェロン産生細胞の検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、マウスのインターフェロン産生細胞(Interferon producing Cells;IPC)の検出方法、あるいは分離方法に関する。
インターフェロンα(IFNα)やインターフェロンβ(IFNβ)は、抗ウイルス活性、あるいは抗腫瘍活性を有するtype1インターフェロンとして知られている。ウイルス感染に伴って、これらのインターフェロンを大量に産生する細胞として同定されたのがIPCである。IPCは、次のように呼ばれることもある。
インターフェロンα/β産生細胞;IFN−α/β producing Cell(IPC)、
プラズマ細胞様樹状細胞;Plasmacytoid Dendritic Cell(PDC)、
タイプ2樹状細胞前駆細胞;type2 pre−DC(pDC2)、
ナチュラルインターフェロン産生細胞;Natural IFN producing Cell
IPCは血中にわずかしか存在していない。末梢血リンパ球に占めるIPCの割合は、1%以下と考えられている。しかしIPCは、きわめて高いインターフェロンの産生能を有する。IPCのIFN産生能は、たとえば3000pg/mL/10cellsに達する。つまり、細胞の数は少ないが、血中IFNαあるいはIFNβの大部分は、IPCによってもたらされていると言って良い。
一方IPCは、樹状細胞(dendritic cell)の前駆細胞に位置付けられる未分化のリンパ球系由来の樹状細胞である。IPCは、ウイルス刺激によって成熟した樹状細胞に分化し、T細胞の分化を促進し、IFN−γとIL−10の産生を誘導する。またIPCは、IL−3等の刺激によっても成熟した樹状細胞に分化する。IL−3刺激によって分化した樹状細胞は、T細胞のTh2分化を誘導しTh2サイトカイン(IL−4、IL−5、IL−10)の産生を促進する。このようにIPCは、刺激の違いによって異なる機能をもつ樹状細胞に分化する性質を有している。
したがってIPCは、インターフェロン産生細胞としての側面と、樹状細胞の前駆細胞としての2つの側面を有する細胞である。いずれも、免疫システムにおいて重要な役割を担っている。つまりIPCは、免疫システムを支えるための多様な機能を有する重要な細胞の一つである。
IPCの免疫システムにおける重要性を裏付ける情報として、AIDSの発症や重症度との関連性が指摘されている。たとえばAIDS患者ではIPC細胞が減少している。一方HIVの感染があっても発症せずに長期間生存している患者では、末梢血IPCの数は増加している。つまりIPCが日和見感染や癌の発症予防に重要な役割を果たしていることが示されている(Depletion of circulation type I interferon−producing cells in HIV−infected AIDS patients(2001)Blood 98;906)。このように、IPCは、免疫システムにおける重要な役割を有すると考えられている。
IPCは重要な研究対象であるが、先に述べたように末梢血中にわずかしか存在しないことが、IPCの研究を妨げる大きな要因になっている。ヒトから採取できる血液細胞が限られていることは言うまでも無い。特にIPCのようなわずかしか存在していない細胞は、研究材料として貴重である。
ヒト由来の研究材料を得るのが難しいとき、実験動物に代替材料を求めるのが一般的である。たとえば、マウスのような安定供給が容易な実験動物にIPCを求めることができれば、IPCの研究を容易に進めることができる。一般に、細胞の検出や分離のためには、細胞特異的に発現している分子がマーカーとして利用される。しかしマウスIPCの検出や分離を可能とするマーカーは知られていない。本発明は、マウスIPCのマーカーとすることができる分子を明らかにし、更にそのマーカーを利用するマウスIPCの検出方法あるいは分離方法の提供を課題とする。
ヒトにおいては、既にIPCを認識する抗体が報告されている。たとえば、抗BDCA−2モノクローナル抗体、あるいは抗BDCA−4モノクローナル抗体(Dzionek A.et al.J.Immunol.165:6037−6046,2000)は、ヒトIPC特異モノクローナル抗体である。このうち抗BDCA−2モノクローナル抗体は、ヒトIPCのインターフェロン産生を抑制する作用を有することが明らかにされている。また抗BDCA−2モノクローナル抗体によって認識されるBDCA−2抗原をコードするcDNAは、IPC特異抗原としてクローニングされている。これら既知のモノクローナル抗体は、ヒトのIPCのリサーチツールとしては有用である。ところがヒトIPCに対するモノクローナル抗体はマウスのIPCを認識しない。したがってマウスのIPCの解析には、マウスのIPCのマーカーが必要である。
本発明者らは、マウスIPCをラットに免疫することによって、マウスIPCを特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを樹立した。またこうして得られたハイブリドーマが産生するマウスIPCを認識するモノクローナル抗体の中に、IPCのインターフェロン産生能に干渉しないものがあることを見出した。そしてこれらのモノクローナル抗体によって認識される分子がマウスIPCのマーカーとして有用であることを確認して本発明を完成した。すなわち本発明は、以下のマウスIPCの検出方法、あるいは分離方法に関する。
〔1〕次の工程を含む、マウスのインターフェロン産生細胞の検出方法。
(1)マウス血液細胞を含む生物学的試料に含まれる、Ly−49Qを発現している細胞を検出する工程、および
(2)Ly−49Qの発現が検出された細胞をマウスのインターフェロン産生細胞として検出する工程
〔2〕Ly−49Qを発現している細胞を検出する工程が、Ly−49Qを認識する抗体またはその抗原結合領域を細胞に結合させる工程を含む、〔1〕に記載の方法。
〔3〕Ly−49Qを認識する抗体が、モノクローナル抗体である〔2〕に記載の方法。
〔4〕モノクローナル抗体が、受託番号FERM BP−8445として寄託されたハイブリドーマ2E6が産生するモノクローナル抗体が認識する抗原決定基に結合するモノクローナル抗体である〔3〕に記載の方法。
〔5〕モノクローナル抗体が、受託番号FERM BP−8445として寄託されたハイブリドーマ2E6が産生するモノクローナル抗体である〔4〕に記載の方法。
〔6〕付加的に、マウスリンパ球系樹状細胞、マウスCD4+骨髄系樹状細胞、およびマウスCD4−骨髄系樹状細胞から選択された少なくとも1種類の樹状細胞を検出する工程を含む〔1〕に記載の方法。
〔7〕マウスリンパ球系樹状細胞が、CD11c陰性、CD4陰性、およびCD8陽性細胞として同定される工程を含む〔6〕に記載の方法。
〔8〕マウスCD4+骨髄系樹状細胞が、CD11c陰性、CD4陽性、およびCD8陰性細胞として同定される工程を含む〔6〕に記載の方法。
〔9〕マウスCD4−骨髄系樹状細胞が、CD11c陰性、CD4陰性、およびCD8陰性細胞として同定される工程を含む〔6〕に記載の方法。
〔10〕Ly−49Qを認識する抗体またはその抗原結合領域を含む、マウスインターフェロン産生細胞検出用試薬。
〔11〕付加的に、マウスリンパ球系樹状細胞、マウスCD4+骨髄系樹状細胞、およびマウスCD4−骨髄系樹状細胞から選択された少なくとも1種類の樹状細胞のマーカーを認識する抗体またはその抗原結合領域を含む〔10〕に記載の試薬。
〔12〕マウスリンパ球系樹状細胞、マウスCD4+骨髄系樹状細胞、およびマウスCD4−骨髄系樹状細胞の細胞マーカーが、CD4およびCD8である〔11〕に記載の試薬。
〔13〕次の工程を含む、マウスのインターフェロン産生細胞の分離方法。
(1)マウスインターフェロン産生細胞を含む細胞集団に含まれる、Ly−49Qを発現している細胞を検出する工程、および
(2)Ly−49Qの発現が検出された細胞をマウスのインターフェロン産生細胞として取得する工程
〔14〕マウスインターフェロン産生細胞を含む細胞集団が、顆粒球およびマクロファージのいずれか、または両方を含まない細胞集団である〔13〕に記載の方法。
〔15〕付加的に、(3)顆粒球およびマクロファージのいずれか、または両方を分離する工程、を含む〔13〕に記載の方法。
〔16〕Ly−49Qを認識する抗体またはその抗原結合領域を含む、マウスインターフェロン産生細胞分離用試薬。
〔17〕付加的に、顆粒球のマーカーを認識する抗体またはその抗原結合領域、およびマクロファージのマーカーを認識する抗体またはその抗原結合領域のいずれか、または両方を含む〔16〕に記載の試薬。
〔18〕受託番号FERM BP−8445として寄託されたハイブリドーマ2E6が産生するモノクローナル抗体が認識する抗原決定基に結合するモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片。
〔19〕受託番号FERM BP−8445として寄託されたハイブリドーマ2E6が産生するモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片。
〔20〕受託番号FERM BP−8445として寄託されたハイブリドーマ2E6を培養し、培養物に含まれるイムノグロブリンを採取する工程を含む、モノクローナル抗体の製造方法。
本発明は、マウスのIPCの検出方法あるいは分離方法に関する。マウスのIPCは次のような性状によって特徴付けられる細胞集団である。したがって本発明は、マウスの末梢血あるいは脾臓や骨髄などの血液細胞に由来する下記のような特徴を有する細胞の検出あるいは分離を目的とする。
[細胞表面抗原のプロファイル]
−CD11c、B220、Ly6C、およびCD45RBが陽性
−CD11b、CD3、CD19が陰性
[細胞の形態上の特徴]
−プラズマ細胞に似ている
−細胞表面が平滑な丸い細胞
−核が比較的大きい
[細胞の機能的な特徴]
−ウイルス感染時に、短期間に大量のType−1 interferonを産生する
−ウイルス感染後、成熟した樹状細胞に分化する
本発明らが見出したマウスIPCのマーカー分子を指標としてマウスIPCを検出することができる。すなわち本発明は、次の工程を含む、マウスのインターフェロン産生細胞の検出方法に関する。
(1)マウス血液細胞集団に含まれる、Ly−49Qを発現している細胞を検出する工程、および
(2)Ly−49Qの発現が検出された細胞をマウスのインターフェロン産生細胞として検出する工程
本発明において、マーカーとは、細胞の識別に利用することができる分子を言う。具体的には、ある分子Aが、ある細胞Aに検出され、他の細胞Bに検出されないとき、分子Aは細胞Aのマーカーである。マーカーは、細胞に特異的であることが望ましい。しかし、異なる種類の細胞の間で、共通して検出される分子であってもマーカーとして利用することはできる。たとえば、共存する大部分の細胞との識別が可能であれば、マーカーとしては有用である。マーカーは、細胞に存在するあらゆる分子の中から選択することができる。中でも、細胞表面に存在する蛋白質や糖鎖は、抗体などによって容易に検出できる好ましいマーカーとなりうる。
本発明のマウスIPCの検出方法は、マウスIPCの計数、同定、並びに分離などに利用することができる。IPCは、活性化によって細胞数が増加する。したがって、その数を計数することによって、IPCの活性を調節するための重要な情報を得ることができる。たとえば、生体内のマウスIPCの計数によって、ある薬剤候補化合物のIPCの増殖に対する影響を、評価することができる。
本発明によるマウスIPCの検出方法に基いて、マウスIPCを同定することができる。マウスIPCの同定も、当該細胞の研究における重要な情報を与える。たとえば、マウスIPCに特異的に見出される新たな分子を探索するときに、本発明によるマウスIPCの同定方法が有用である。すなわち、候補分子が本発明によって同定された細胞に特異的に検出されれば、当該分子はマウスIPC特異的に発現していることが確認できる。
更に本発明は、Ly−49Qをマーカーとして利用するマウスIPCの分離方法に関する。すなわち本発明は、次の工程を含む、マウスのインターフェロン産生細胞の分離方法を提供する。
(1)マウス血液細胞集団に含まれる、Ly−49Qを発現している細胞を検出する工程、および
(2)Ly−49Qの発現が検出された細胞をマウスのインターフェロン産生細胞として取得する工程
本発明者らは、マウスIPCに特異的に結合するモノクローナル抗体2E6の認識抗原をコードする遺伝子として、配列番号:1に記載の塩基配列からなるcDNAを同定した。当該塩基配列は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列をコードしている。更に配列番号:2に記載のアミノ酸配列と、Ly−49Qとして報告されているGr−1+細胞に発現するレセプターのアミノ酸配列(配列番号:8)との相同性は約97.5%であった。両者の比較結果を図7に示した。したがって、配列番号:2に記載のアミノ酸配列、あるいは当該アミノ酸配列と高い相同性を有するアミノ酸配列からなる蛋白質は、マウスIPCにおける発現が見られる限り、本発明におけるマウスIPCのマーカーとして利用することができる。より具体的には、本発明のマウスIPCマーカーLy−49Qは、以下に記載のa)−e)のいずれかに記載の蛋白質を含む。
a)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域によってコードされたアミノ酸配列を含む蛋白質
b)配列番号:2または配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質
c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1位Metの欠失、若しくは94位SerのAsnへの、103位ProのLeuへの、114位AsnのAspへの、134位IleのValへの、230位LysのThrへの、そして254位PheのValへの置換から選択される少なくとも一つのアミノ酸の置換を含むアミノ酸配列を含む蛋白質
d)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、マウスIPCにおいて発現しているポリヌクレオチドによってコードされる蛋白質
e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と95%以上のホモロジーを有するアミノ酸配列を含む蛋白質であって、マウスIPCにおいて発現している蛋白質
上記d)のポリヌクレオチドは、たとえば配列番号:1に記載の塩基配列をもとに作製されたプローブのハイブリダイズを検出することにより同定することができる。プローブには、配列番号:1に記載の塩基配列中、好ましくは蛋白質コード領域の塩基配列で構成する。プローブは、当該塩基配列の任意の連続する部分配列によって構成することができる。プローブを構成する塩基配列の長さとしては、例えば50,80,100,120,150,または200塩基を示すことができる。更に、配列番号:1に記載の塩基配列の全長をプローブとすることもできる。
d)のポリヌクレオチドは、プローブとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。ハイブリダイゼーションのためのストリンジェントな条件としては、例えば5×SSC、7%(W/V)SDS、100μg/ml変性サケ精子DNA、5×デンハルト液を含む溶液中、48℃、好ましくは50℃、より好ましくは52℃におけるハイブリダイゼーションを用いることができる。その後ハイブリダイゼーションと同じ温度、より好ましくは60℃、さらにこの好ましくは65℃、最も好ましくは68℃で2×SSC中、好ましくは1×SSC中、より好ましくは0.5×SSC中、より好ましくは0.1×SSC中で、振蓋しながら1時間洗浄する。
あるいは本発明のLy−49Qは、配列番号:2と高い同一性を有し、かつマウスIPCで発現している蛋白質を含む。本発明における高い同一性とは、たとえば90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上の同一性を言う。アミノ酸配列の同一性は、例えばBLASTプログラム(Altschul,S.F.et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−410)を用いて決定することができる。具体的には、塩基配列の同一性を決定するにはblastnプログラム、アミノ酸配列の同一性を決定するにはblastpプログラムが用いられる。例えばNCBI(National Center for Biothchnology Information)のBLASTのウェブページにおいてLow complexityを含むフィルターは全てOFFにして、デフォルトのパラメータを用いて検索を行う(Altschul,S.F.et al.(1993)Nature Genet.3:266−272;Madden,T.L.et al.(1996)Meth.Enzymol.266:131−141;Altschul,S.F.et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389−3402;Zhang,J.& Madden,T.L.(1997)Genome Res.7:649−656)。例えば2つの配列の比較を行うblast2sequencesプログラム(Tatiana A et al.(1999)FEMS Microbiol Lett.174:247−250)により、2配列のアライメントを作成し、配列の同一性を決定することができる。ギャップはミスマッチと同様に扱い、例えば蛋白質コード配列全体に対する同一性の値を計算する。
Ly−49Qのような真核生物のタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列には、しばしば多型現象が認められることがある。多型現象は遺伝子の塩基配列に見出される小規模な塩基の置換で、通常、塩基の置換がタンパク質の活性に与える影響は小さい。このような多型等によって塩基配列やアミノ酸に小規模な変異を生じたLy−49Qも、それがマウスIPCにおいて発現している限り、本発明におけるLy−49Qに含まれる。たとえば既知のアミノ酸配列(GenBank Acc#.AB033769)と配列番号:2に記載のアミノ酸配列の相違は、多型によるものと予測される。
配列番号:2に記載のアミノ酸配列と高い同一性を有する蛋白質であるLy−49Qの構造は、既に公知である(GenBank Acc#.AB033769)。しかしLy−49QがマウスIPCのマーカーとして利用できることは、本発明者らによって明らかにされた新規な知見である。
本発明の検出方法あるいは分離方法において、マーカーを検出するための方法は任意である。たとえば、マーカーと特異的に結合することができるリガンドによって、マーカーを検出することができる。Ly−49Qは、NKレセプターとホモロジーのある分子として単離された蛋白質である。したがって、当該レセプターに結合するリガンドも、Ly−49Qの検出に利用することができる。あるいはLy−49Qをコードする塩基配列を含むmRNAの検出によって、Ly−49Qの発現を検出することもできる。配列番号:1に記載の塩基配列、あるいはGenBank Acc#.AB033769として公知の塩基配列を含むmRNAは、ハイブリダイゼーションやPCRによって検出することができる。細胞内のmRNAを検出するための、in situハイブリダイゼーション、あるいはin situ RT−PCRが公知である。当業者は、検出すべきmRNAの塩基配列に基いて、ハイブリダイゼーションに必要なプローブやRT−PCRのためのプライマーの塩基配列をデザインすることができる。
更に、マーカーを認識して結合する抗体は、本発明におけるリガンドとして好ましい。抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、あるいはそれらの抗原結合領域を含む断片を用いることができる。モノクローナル抗体は、高度な均質性と反応特異性を期待できることから、本発明におけるリガンドとして好ましい。
本発明におけるモノクローナル抗体は、当該モノクローナル抗体を産生する抗体産生細胞から採取することができる。本発明おけるモノクローナル抗体の産生細胞は、マウスIPCあるいはLy−49Qを免疫原として免疫動物に投与し、その抗体産生細胞をクローニングすることによって取得することができる。一般的なモノクローナル抗体の製造方法においては、免疫細胞と腫瘍細胞との細胞融合によって得られるハイブリドーマが抗体産生細胞として利用される。
本発明における免疫原はマウスIPCである。マウスIPCとは上記条件を満たす細胞である。このような細胞は、たとえばマウスの造血幹細胞を培養し、IPCに分化させることによって大量に得ることができる。マウス造血幹細胞をin vitroでIPCに分化させるための条件は公知である
たとえば、in vitroにおける造血幹細胞からのマウスのIPCの誘導が報告されている(Gilliet et al 2002,J.Exp.Med.195:953−958)。あるいはin vivoでのIPCの誘導も公知である(BjorckらのBlood 2001,98:3520−3526)。ただし、これらの方法によって誘導されたマウスIPCを免疫原に用いた報告は無い。しかし本発明者らは、in vitroで分化させたマウスIPCが、IPCを認識するモノクローナル抗体を得るための免疫原として有利であることを見出した。特に、この免疫原の使用によって、マウスIPCのインターフェロン産生能に影響を与えないモノクローナル抗体が得られることは、まったく予想されなかった。
具体的には、造血幹細胞を含む細胞集団をIPC誘導剤の存在下で培養することにより、IPCへの分化が誘導される。造血幹細胞を含む細胞集団としては、たとえば骨髄細胞を用いることができる。またIPC誘導剤には、FLT−3リガンドを用いることができる。培地中のFLT−3の濃度は、通常1〜100ng/mL、5−50ng/mL、好ましくは10−30ng/mLとすることができる。その他の培養条件は、一般的な血液細胞の培養条件を応用すればよい。すなわち基礎培地としては.RPMI1640等を用い、更に10%程度の牛胎児血清を加えることができる。IPCへの分化に要する培養期間は、たとえば5−20日、通常7−15日程度である。
培養された造血幹細胞から、IPCに分化した細胞を取得すれば、免疫原のためのIPCを得ることができる。実際には、いくつかの細胞表面マーカーを利用して、IPCに特徴的な細胞表面抗原を有する細胞を分取する。すなわち、CD11c陽性、CD11b陰性、およびB220陽性の細胞分画をセルソーターで分取しIPCを得ることができる。
あるいは、既にマウスIPC特異的であることが明らかな抗体を利用して、当該抗体陽性の細胞をIPCとして分取することもできる。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ2E6が産生するモノクローナル抗体は、マウスIPCの分取に利用することができる。ハイブリドーマ2E6の寄託情報は後に述べる。
IPCは、マウスの末梢血から分取することもできる。しかし先に述べたようにIPCの抹消血におけるポピュレーションは極めて低いので、末梢血からIPCを採集するには多量のマウスの血液が必要となる。したがって、免疫原とするIPCには、造血幹細胞から分化させた細胞を利用するのが有利である。
続いて分離されたマウスIPCを、適当な免疫動物に免疫する。マウスIPCは適当なアジュバントとともに免疫動物へ投与することができる。本発明における免疫動物は、マウスIPCを異物と認識するあらゆる非ヒト脊椎動物を利用することができる。モノクローナル抗体を得るためには、ハイブリドーマとするための融合パートナーの入手が容易な動物が有利である。たとえば、ラット、ラビット、ウシ、ヤギなどの細胞に由来するハイブリドーマの樹立が確立されている。これらの免疫動物を、本発明に用いることができる。一方アジュバントには、フロイントの完全アジュバントやフロイントの不完全アジュバント等が用いられる。
免疫動物は、3〜10日間隔で複数回免疫される。1回の免疫に用いられるIPCの数は、任意である。通常、10〜10、たとえば10のIPCが免疫される。複数回の免疫を経た免疫動物から免疫担当細胞を回収し、目的とする抗体を産生する細胞をクローニングすることにより、本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。
あるいは、本発明者らによって明らかにされたIPCマーカーLy−49Qを免疫原として、本発明に必要な抗体を得ることができる。たとえば配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質、または当該アミノ酸配列から選択された連続するアミノ酸配列からなるオリゴペプチドを免疫原として、本発明におけるモノクローナル抗体を得ることができる。蛋白質あるいはオリゴペプチドは、必要に応じて担体に結合し、更にアジュバントとともに免疫動物に投与することができる。
また、Ly−49Qを強制発現させた形質転換細胞を免疫原として利用することもできる。たとえばラットを免疫動物とするときには、ラット由来の細胞をLy−49QをコードするDNAで形質転換して免疫原とすることができる。形質転換細胞による免疫操作は、上記のマウスIPCを免疫原とする場合と同様である。次いで、複数回の免疫を経た免疫動物から免疫担当細胞を回収し、目的とする抗体を産生する細胞をクローニングすることにより、本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。免疫担当細胞とは、免疫動物において抗体産生能を有する細胞を言う。
免疫担当細胞は、たとえばハイブリドーマ法によってクローニングすることができる。免疫担当細胞は、1つの細胞が1種類の抗体を産生している。したがって、1つの細胞に由来する細胞集団を確立する(すなわちクローニング)ことができれば、モノクローナル抗体を得ることができる。ハイブリドーマ法とは、免疫担当細胞を適当な細胞株と融合させ、不死化(immortalize)した後にクローニングする方法を言う。ハイブリドーマ法に有用な多くの細胞株が知られている。これらの細胞株は、リンパ球系細胞の不死化効率に優れ、かつ細胞融合に成功した細胞の選択に必要な各種の遺伝マーカーを有している。更に抗体産生細胞の取得を目的とする場合には、抗体産生能を欠落した細胞株を用いることもできる。
たとえばマウスミエローマP3x/63Ag8.653は、マウスやラットの細胞融合法に有用な細胞株として広く用いられている。本発明においては、マウスのIPCを免疫原としているので、免疫動物はマウス以外の動物となる。一般にハイブリドーマは、同種の細胞の融合によって作成されるが、近縁の異種間でのヘテロハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得することもできる。
細胞融合の具体的なプロトコルは公知である。すなわち、免疫動物の免疫担当細胞を適当な融合パートナーと混合し、細胞融合させる。免疫担当細胞には、脾細胞や末梢血B細胞などが用いられる。融合パートナーとしては、先に述べた各種の細胞株を利用することができる。細胞融合には、ポリエチレングリコール法や、電気融合法が用いられる。
次に、融合細胞が有する選択マーカーに基づいて、細胞融合に成功した細胞が選択される。たとえばHAT感受性の細胞株を細胞融合に用いた場合には、HAT培地において成育する細胞を選択することによって、細胞融合に成功した細胞が選択される。更に選択された細胞が産生する抗体が、目的とする反応性を有していることを確認する。
各ハイブリドーマは、抗体の反応性に基づいて、スクリーニングされる。すなわち、IPCに対して特異的な結合活性を有する抗体を産生するハイブリドーマが選択される。好ましくは、選択されたハイブリドーマをサブクローニングし、最終的に目的とする抗体の産生が確認された場合に、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマとして選択する。
本発明において目的とするモノクローナル抗体は、Ly−49Qに結合する。抗体の特定の抗原に対する結合活性は、任意の方法によって確認することができる。たとえばELISAによって目的とする反応性を有する抗体をスクリーニングする方法が公知である。具体的には、Ly−49Qあるいはそのドメインペプチドを結合したマイクロプレートを用意する。次に、ハイブリドーマの培養上清をこのプレートに分注する。マウスのイムノグロブリンが検出された上清をスクリーニングの対象とすれば、より効率的なスクリーニングが期待できる。もしも培養上清中に目的とする反応性を有する抗体が含まれていれば、それはマイクロプレートに結合されたLy−49Qに結合する。プレートに結合したラットイムノグロブリンは、抗ラットイムノグロブリン抗体によって検出することができる。
更に、Ly−49Qを強制発現させた形質転換細胞を用いて、目的とする細胞を選択することもできる。具体的には、まずLy−49Qを強制発現させた形質転換細胞を、ハイブリドーマの培養上清と接触させる。目的とする反応性を有する抗体は、形質転換細胞に結合する。細胞に結合した抗体は、標識された抗ラットイムノグロブリン抗体によって検出される。
マウスIPCの分離においては、分離の過程でIPCのインターフェロン産生能に干渉しないことが重要である。加えて、分離の過程でIPCの増殖や細胞障害を誘導しないことが望ましい。IPCは、そのインターフェロンの産生能の調節が科学的にも、また産業上も最も大きな興味の対象であると言って良い。つまり、IPCのインターフェロンの産生能を調節するための研究が、IPC単離の大きな目的となる。したがって、単離の段階でIPCのインターフェロン産生能に影響を与えない抗体を用いることは、重要な条件である。逆にインターフェロン産生能に干渉する抗体によって単離されたIPCは、分離の段階で既にそのインターフェロンの産生能を抗体によって調節されてしまっている可能性がある。このようなIPCは、インターフェロンの産生能の調節に関する研究のための材料としては適切とは言えない。他方、抗Ly−49Q抗体はIPCのインターフェロン産生に干渉しないので、本発明によって分離されたマウスIPCは、研究材料として理想的である。。
同様に、IPCの細胞増殖能に対して干渉しない抗体も、細胞の単離のためのツールとして有用である。抗Ly−49Q抗体は、IPCの細胞増殖に対しても影響を与えないことから、IPCの単離において有用である。
モノクローナル抗体のインターフェロン産生を調節する活性は、実際にIPCにモノクローナル抗体を作用させることによって確認することができる。IPCは、ウイルスの刺激によってインターフェロンを大量に産生する。このとき、インターフェロン産生能を調節する作用を有する抗体が存在すれば、抗体を加えない対照と比較して、IPCのインターフェロンの産生量が変化する。またもしもモノクローナル抗体がIPCのインターフェロン産生能に干渉しない場合には、IPCのインターフェロン産生活性は実質的に影響を受けない。
たとえば、インフルエンザウイルスなどの、マウス細胞に感染性を有する細胞をIPCに加えると、マウスIPCはインターフェロンを産生する。産生されたインターフェロンは、たとえばイムノアッセイによって測定することができる。当業者は、ELISAなどの原理に基づいて、容易にインターフェロンを測定することができる。
本発明において、インターフェロン産生活性の調節とは、活性の抑制、または促進を言う。モノクローナル抗体がIPCのインターフェロン産生活性の調節作用を有することは次のようにして確認することができる。
IPCはウイルスの刺激によってインターフェロンを大量に産生する。IPCに対するウイルス刺激の前、後、あるいはウイルス刺激と同時にモノクローナル抗体を与え、モノクローナル抗体を与えないIPCを対照として、インターフェロンの産生能を比較する。インターフェロン産生能は、IPCの培養上清中に含まれるIFN−αやIFN−βを測定することによって評価することができる。比較の結果、モノクローナル抗体の添加によって、上清中のインターフェロンの量が有意に変化すれば、当該モノクローナル抗体は、インターフェロン産生能を調節する作用を有することが確認できる。これらインターフェロンの測定方法は公知である。Ly−49Qを認識する抗体は、このようにしてインターフェロンの産生能に対する影響を比較したときに、対照と比較してインターフェロンの産生レベルに有意な差が見られない。
IPCはIFNα、およびIFNβなどの複数種のインターフェロンを産生する。本発明においては、これらIPCが産生するインターフェロンの産生能に対して実質的に影響を与えない場合に、そのモノクローナル抗体がIPCのインターフェロン産生能を調節する作用を実質的に有しないと言う。本発明者らが見出したIPCマーカーLy−49Qを認識するモノクローナル抗体は、特にIFNαおよびIFNβの産生能に干渉しない。インターフェロンの産生能に対して実質的に影響を与えないとは、当該モノクローナル抗体の有無によって、ウイルス刺激を受けた後のIPCのインターフェロン産生能に有意な差が見られないことによって裏付けられる。
更にIPCマーカーLy−49Qを認識する抗体は、IPCに結合してIPCの増殖を誘導しない。モノクローナル抗体と結合したIPCの増殖能は、細胞の増殖を観察することによって確認することができる。細胞増殖の確認方法は公知である。たとえば、Hチミジンの細胞による取りこみを指標として、細胞の増殖活性を評価することができる。モノクローナル抗体を接触させたIPCと、対照とを比較して、細胞の増殖能に有意な差が見られなければ、当該モノクローナル抗体は、IPCの増殖能に実質的に影響を有していないことが確認できる。対照としては、IPCに対して結合しないことが明らかなラットIgGなどを用いることができる。
本発明の望ましいモノクローナル抗体として、次のハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を示すことができる。本発明のIFN産生に影響を与えないモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ2E6は、次のとおり寄託した。2E6は、サブクラスIgG 2a κ鎖を有するモノクローナル抗体を産生するラット−マウスヘテロハイブリドーマである。
(A)寄託機関の名称・あて名
名 称:独立行政法人産業技術総合研究所内特許生物寄託センター
あて名: 郵便番号305−8566
日本国茨城県つくば市東1丁目1番1号中央第6
(B)寄託日(原寄託日):2002年8月1日
(C)受託番号:FERM BP−8445
また本発明は、本発明者らが樹立したハイブリドーマが産生する前記モノクローナル抗体と同様の結合活性を有するモノクローナル抗体を提供する。すなわち本発明は、ハイブリドーマ2E6が産生するモノクローナル抗体が認識するマウスのインターフェロン産生細胞特異抗原またはその抗原決定基に結合するモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片を提供する。
このようなモノクローナル抗体は、当該ハイブリドーマから抗体の抗原結合領域をコードするcDNAを取得し、これを適当な発現ベクターに挿入することによって発現させることができる。抗体の可変領域をコードするcDNAを取得し、適当な宿主細胞に発現させる技術は公知である。また抗原結合領域を含む可変領域を、定常領域と結合させることによってキメラ抗体とする手法も公知である。
更に、本発明のモノクローナル抗体の抗原結合活性を他のイムノグロブリンに移植することもできる。イムノグロブリンの抗原結合領域は、相補性決定領域(CDR)と、フレーム領域で構成されている。各イムノグロブリンの抗原結合特性はCDRによって決定されており、フレームは抗原結合領域の構造を維持している。CDRのアミノ酸配列がきわめて多様性に富むのに対して、フレーム部分のアミノ酸配列は高度に保存されている。CDRの抗原を他のイムノグロブリン分子のフレーム領域に組み込むことによって、抗原結合活性も移植できることが知られている。この方法を利用して、異種のイムノグロブリンが有する抗原結合特性をヒト・イムノグロブリンに移植する方法が確立されている。
このようにして作成された、様々なモノクローナル抗体はいずれも本発明に含まれる。すなわち、本発明のモノクローナル抗体の抗原結合領域をコードするcDNAに由来するポリヌクレオチドによってコードされた抗原結合領域を含むイムノグロブリンからなるモノクローナル抗体は本発明に含まれる。
更に、ハイブリドーマ2E6が産生するモノクローナル抗体が認識するマウスのIPC特異抗原Ly−49Qまたはその抗原決定基に結合するモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片は、その由来に関わらず本発明に利用することができる。すなわち、これら特定のハイブリドーマ以外に由来するイムノグロブリンであっても、上記抗原または抗原決定基に結合するモノクローナル抗体は本発明に利用することができる。このようなモノクローナル抗体は、たとえば次のようにして得ることができる。
まず上記と同様の手法によってLy−49Qと結合するモノクローナル抗体を得る。そして得られたモノクローナル抗体が、上記ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体と同一の抗原に結合していることを確認すればよい。モノクローナル抗体の反応性は、たとえば、競合や吸収によって比較することができる。すなわち、モノクローナル抗体2E6とIPCまたはLy−49Qとの結合がある抗体によって競合阻害を受けるとき、この抗体はモノクローナル抗体2E6と同一の抗原を認識していると考えられる。あるいは、ある抗体と結合したIPCが、モノクローナル抗体2E6との結合活性を失うとき、この抗体はモノクローナル抗体2E6と同一の抗原を認識している。
本発明は、上記本発明に含まれるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを提供する。本発明者らが樹立したハイブリドーマは、先に述べたように寄託されている。しかしこれらの特定のハイブリドーマに関わらず、上記本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは本発明に含まれる。
更に本発明は上記ハイブリドーマを培養しその培養物からモノクローナル抗体を回収する工程を含む、モノクローナル抗体の製造方法に関する。ハイブリドーマは、in vitroまたはin vivoで培養することができる。in vitroにおいては、RPMI1640などの公知の培地を用いて、ハイブリドーマを培養することができる。培養上清には当該ハイブリドーマが分泌したイムノグロブリンが蓄積される。したがって、培養上清を採取し、必要に応じて精製することにより、本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。培地には、血清を添加しない方が、イムノグロブリンの精製が容易である。しかし、ハイブリドーマのより迅速な増殖と、抗体産生の促進を目的として、10%程度のウシ胎児血清を培地に加えることもできる。
ハイブリドーマは、in vivoにおいて培養することもできる。具体的には、ヌードマウスの腹腔にハイブリドーマを接種することにより、腹腔内でハイブリドーマを培養することができる。モノクローナル抗体は、腹水中に蓄積する。したがって、腹水を採取し、必要に応じて精製すれば、本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。得られたモノクローナル抗体は、目的に応じて適宜、修飾、あるいは加工することができる。
本発明において、マウスIPCの検出とは、試料を構成する細胞にマウスIPCが含まれることを確認することを言う。したがって、マウスIPCの検出により、ある細胞がマウスIPCであると同定することができる。また、複数種類の細胞で構成される細胞集団に占めるマウスIPCの数を定量することができる。IPCの検出は、IPCの数的な変動の把握に有用である。たとえばIPCの数と、AIDSの発症や重症度との関連性が指摘されていることを先に述べた。すなわち、AIDS患者における日和見感染の発症率は、CD4+T細胞のみならずIPCの減少によっても上昇することが報告された。本発明の検出方法は、たとえば次のようにして実施することができる。
細胞試料を抗Ly−49Q抗体と接触させ、試料中のマウスIPCに抗Ly−49Q抗体を結合させる。抗Ly−49Q抗体としては、その抗原結合領域を含む断片を用いることもできる。本明細書においては、特に断らない限り、抗Ly−49Q抗体とは、その抗原結合領域を含む断片も含む。細胞試料と抗Ly−49Q抗体は、抗体の免疫学的結合活性が維持できる条件下で接触させられる。具体的には、弱酸性〜弱アルカリ性のpHで、かつ生理食塩水に近い塩濃度のもとで接触させるのが望ましい。細胞試料には、マウスIPCを含む可能性があるあらゆる試料を用いることができる。たとえば、末梢血のリンパ球集団、リンパ節、脾臓、あるいは骨髄等のリンパ系組織を試料とすることができる。これらの細胞試料の調製方法は公知である。あるいは、造血幹細胞を、IPCに分化させて細胞試料とすることもできる。造血幹細胞を含む細胞集団を、in vitroで、あるいはin vivoにおいてIPCに分化させる方法は公知である。人為的に分化させたIPCの検出あるいは同定は、IPCへの分化に必要な条件の探索において有用である。
次いで、細胞に結合した抗Ly−49Q抗体が検出される。例えば抗Ly−49Q抗体を標識し、当該標識を追跡することによりマウスIPCを検出することができる。抗体を標識する方法は公知である。抗体は、たとえば酵素、蛍光物質、発光物質、結合親和性物質、マイクロビーズ、あるいはラジオアイソトープ等の成分によって標識することができる。これらの成分を抗体に結合する方法も公知である。たとえば、マレイミド誘導体等の2官能性試薬を用いて、酵素、蛍光物質、あるいはマイクロビーズ等を抗体に直接結合させることができる。あるいは、マイクロビーズの表面に抗Ly−49Q抗体を物理吸着させることもできる。
その他、抗Ly−49Q抗体を、適当な固相に結合しておくこともできる。プレートやチューブの内壁、カラムやキャピラリーの内壁、あるいはビーズ状の固相の表面などが固相として利用される。
抗Ly−49Q抗体は、間接的に標識することもできる。たとえば、ラット由来のモノクローナル抗体は、ラットイムノグロブリンを認識する標識抗体によって、間接的に標識することができる。本発明のモノクローナル抗体を間接的に標識するための標識抗体は、一般に二次抗体と呼ばれる。
本発明によるマウスIPCの検出方法において、抗Ly−49Q抗体の標識は、各標識成分に応じた手法を利用することにより、追跡することができる。たとえば、蛍光物質であれば、励起光の照射により、蛍光を検知することができる。酵素標識の場合には、酵素反応の生成物を指標として、標識の追跡が可能である。
標識の検知に先立ち、抗体と反応した細胞を分離することもできる。細胞の分離には、異なる細胞表面抗原を認識する抗体を利用することもできる。すなわち、マウスIPC特異的な抗Ly−49Q抗体と、マウスIPCを認識する任意の抗体の組み合せが利用される。たとえば、ある細胞集団をビーズに固定化した抗Ly−49Q抗体と接触させて、マウスIPCを特異的に捕捉する。次に、捕捉したマウスIPCに対して、マウスIPCを認識する任意の抗体を結合させる。マウスIPCを認識する任意の抗体を標識抗体としておけば、マウスIPCの検出が可能である。
マウスIPCを認識する任意の抗体は必ずしもマウスIPCに特異的な抗体でなくても良い。たとえば、マウスIPCはCD11c、B220、Ly6cおよびCD45RBが陽性の細胞である。したがってこれらの細胞表面抗原を認識する任意の抗体を、マウスIPCを認識する任意の抗体として利用することができる。これらの細胞表面抗原はマウスIPCに特異的なマーカーではない。しかし、本発明における分離方法におけるマウスIPCに対する特異性は、抗Ly−49Q抗体との反応性によって保障される。
本発明において、抗Ly−49Q抗体はマウスIPCの検出用試薬とすることができる。本発明のマウスIPCの検出用試薬における抗Ly−49Q抗体は、上記のような標識成分で標識しておくことができる。あるいは、二次抗体と組み合せて供給することもできる。本発明のマウスIPCの検出に用いる抗Ly−49Q抗体は、その抗原結合領域を含む任意の断片とすることができる。したがって、完全なイムノグロブリン分子のみならず、イムノグロブリンの抗原結合活性を保持した断片を用いることができる。このような断片としては、たとえばF(ab)2や、Fab等を示すことができる。
マウスIPCの検出方法を利用して、マウスの樹状細胞のサブタイプを識別することができる。現在のところ、IPCを含むマウスの樹状細胞には、以下のようなサブタイプがあるとされている。
(1)IPC
(2)リンパ球系樹状細胞(“Lymphoid”DCs)
(3)CD4+骨髄系樹状細胞(CD4 positive“Myeloid”DCs)
(4)CD4−骨髄系樹状細胞(CD4 negative“Myeloid”DCs)
これらの樹状細胞の分化過程を図8にまとめた。IPCがリンパ球系の樹状細胞と位置づけられるのに対して、その他の樹状細胞はいずれも骨髄系の細胞である。いずれの細胞も免疫応答において重要な役割を有すると考えられている。しかし、そのメカニズムに関する情報は多くない。様々な刺激を与えたマウスや、免疫機能に異常を有する疾患モデルマウスにおける、これらのサブタイプのポピュレーションの変化は、メカニズムの解明における重要な情報となる。したがって、本発明に基くIPCの検出方法を利用した樹状細胞のサブタイプの識別は、マウスにおける免疫システムの解明に有用である。
本発明を利用して、樹状細胞のサブタイプを識別するための方法として、次のような方法を示すことができる。たとえば、識別すべき樹状細胞のサブタイプの細胞表面マーカーを利用して、各サブタイプを識別することができる。図8に示した(1)−(4)の各樹状細胞は、それぞれ図中に記載した細胞表面マーカーを有している。したがって、これらの細胞表面マーカーを適宜組み合わせることによって、相互に識別することができる。まず、Ly−49QとCD11cの2つのマーカーを使って、両者がポジティブな細胞としてIPCが同定される(図9B上)。次にCD11cのみがポジティブである細胞に対して、CD8とCD4の2つのマーカーを適用すると、以下のような組み合わせにより3種類の樹状細胞を同定することができる(図9B下)。このように、Ly−49QをIPCのマーカーとして利用することによって、樹状細胞のサブタイプを容易に識別できることが明らかである。
CD4 CD8
(2)リンパ球系樹状細胞 − +
(3)CD4+骨髄系樹状細胞 + −
(4)CD4−骨髄系樹状細胞 − −
これらのサブタイプの識別のために用いられる少なくとも1つの抗体を、Ly−49Qを認識する抗体とともに組み合わせて、樹状細胞の識別用試薬として供給することができる。たとえば、CD11c、CD4、およびCD8を認識する抗体から選択される少なくとも1つの抗体は、樹状細胞識別用の試薬を構成する抗体として好ましい。
更に、本発明によるマウスIPCの検出方法によって、組織や生体内におけるマウスIPCの局在を明らかにすることもできる。IPCの生体内におけるポピュレーションは小さい。そのため、IPCの機能や局在に関する情報は、きわめて限られている。そこで抗Ly−49Q抗体を標識し、組織あるいは生体内における挙動を追跡することによって、IPCの局在を明らかにすることは重要である。
すなわち本発明は、次の工程を含む、IPCの局在の解析方法を提供する。
(1)生体または生体から採取された組織試料に抗Ly−49Q抗体を投与または接触させる工程、および
(2)抗Ly−49Q抗体を追跡し、抗体が局在した領域にIPCが局在していると判定する工程
生体内の局在の解析においては、抗Ly−49Q抗体は、放射性同位元素や磁性金属によって標識される。放射性同位元素は、その放射活性を追跡することによって、局在を画像化することができる。一方、磁性金属標識は核磁気共鳴イメージング(MR−I)によって画像化することができる。抗体をこのような標識物質で修飾する方法は公知である。本発明におけるマウスIPCマーカーLy−49Qを認識する抗体は、マウスIPCのIFN産生能あるいは増殖に干渉しないため、生体に投与してもIPCの挙動に干渉しない。したがって、生体内局在の解析に当たって、抗体の結合に起因する干渉の可能性を排除することができる。
あるいは生体外に取り出した試料におけるIPCの局在を知るためには、蛍光色素や酵素活性物質で標識された抗体を用いることもできる。このような解析方法は、免疫染色法として公知である。
抗Ly−49Q抗体を、抗体が由来する生物種とは異なる宿主に投与する場合には、当該宿主にとって異物と認識されにくい形に加工するのが望ましい。たとえば、次のような分子に加工することにより、イムノグロブリンを異物として認識されにくくすることができる。イムノグロブリン分子を以下のように加工する手法は公知である。
−定常領域を欠失した抗原結合領域を含む断片
−モノクローナル抗体の抗原結合領域と宿主のイムノグロブリンの定常領域とで構成されるキメラ抗体
−宿主のイムノグロブリンにおける相補性決定領域(CDR)をモノクローナル抗体のCDRに置換したCDR置換抗体
続いて、本発明によるマウスIPCの分離方法について述べる。本発明の分離方法において、抗Ly−49Q抗体は、前記検出方法における抗体と同様に、標識成分や固相に結合することができる。マウスIPCを含む細胞集団と抗Ly−49Q抗体を結合させた後に、抗体と結合した細胞を分取することによって、マウスIPCを分離することができる。たとえば、標識成分と結合させた抗Ly−49Q抗体を用いる場合には、標識成分を追跡し、標識成分が結合している細胞を分取することによって、マウスIPCを分離することができる。固相と結合させた抗Ly−49Q抗体を利用する場合には、固相を回収すれば、マウスIPCが分離される。
続いて、抗Ly−49Q抗体を利用したマウスIPCの分離手法を、具体的に述べる。たとえば、水不溶性担体に抗Ly−49Q抗体を固定化し、これに細胞を直接的または間接的に結合させる方法を利用することができる。水不溶性担体には、セルロース誘導体やアガロース等からなるビーズやマトリックス等が利用される。抗Ly−49Q抗体を固定化した水不溶性担体は、カラムに充填して免疫吸着カラムとすることもできる。不溶性担体上のモノクローナル抗体に捕捉されたマウスIPCは、免疫学的な結合を解離させる緩衝液によって溶出することができる。
あるいは蛍光抗体標識細胞分離法や、免疫磁気ビーズによる分離法を利用することもできる。すなわち、抗Ly−49Q抗体が結合した細胞を蛍光標識や磁気標識を目印に、目的とする細胞を一つ一つ分離する方法である。これらの分離法には、FACSやMACSなどのセルソーターを用いるのが有利である。セルソーターを用いた細胞の分離方法は公知である。
例えばAutoMACSによる細胞の分離においては、マウスIPCを含む細胞集団に、抗Ly−49Q抗体を接触させる。細胞をPBSで洗浄後、次いでビオチン化抗ラットIgG抗体(二次抗体)を反応させる。あるいは、予めビオチン化した抗Ly−49Q抗体を利用すれば、二次抗体は不要である。さらに、細胞をPBSで洗浄後、ストレプトアビジンマグネティックビーズを反応させる。こうしてマウスIPCには、マグネティックビーズが結合される。得られた細胞を磁気カラムに通すことにより、カラムに捕捉することができる。
このカラムを洗浄した後、カラムに残った細胞を溶出させれば、マウスIPCを回収することができる。実際に本発明者らは、このような方法に基づいて、マウスIPCを高い収率で分離できることを確認している。たとえばマウス末梢血リンパ球集団におけるIPCのポピュレーションは1%以下である。抗Ly−49Q抗体を利用した細胞分離方法によって、IPCのポピュレーションを70%以上にまで高めることができる。しかも、MACSを利用した場合には、操作は30分間程度で完了する。つまり本発明の分離方法は、生体中にはわずかしか見出すことのできないIPCを大量に調製するための方法として有用である。
マウスIPCを分離するための細胞集団としては、IPCを含む可能性のあるあらゆる細胞集団を利用することができる。具体的には、たとえば、末梢血、脾臓組織、骨髄などの生体由来の細胞集団を利用することができる。あるいは、生体外で人為的に誘導されたIPCを含む細胞集団を利用することもできる。細胞集団がIPC以外の、Ly−49Q陽性細胞を含む場合には、予め当該細胞を除去することができる。たとえば、顆粒球(Granulocyte)やマクロファージ(Macrophage)は、IPCとの細胞の大きさの違いを利用して予め分離しておくことができる。細胞の大きさの違いに基く分離方法としては、密度勾配遠心分離法などを利用することができる。
また細胞表面マーカーを利用した細胞の分離を利用することもできる。たとえば(1)B220、(2)CD45RB、および(3)CD11c陽性の細胞の選択によってIPCが選択され、顆粒球およびマクロファージが除かれる(ポジティブセレクション)。あるいは、CD11b細胞を除去すれば、IPCに混在する顆粒球およびマクロファージを特異的に除去することができる(ネガティブセレクション)。その他、脾臓由来の細胞群を対象とする場合には、CD19陽性細胞とCD3陽性細胞を除くことによって、それぞれB細胞とT細胞が除かれる。
本発明のIPCの分離方法によって分離されたIPCは、他の細胞を除く工程を組み合わせることによって、更に純度を高めることができる。たとえば、IPCと混在する細胞との識別が可能なマーカーを利用して、他の細胞を除くことができる。本発明によるIPCの分離方法においては、たとえば、顆粒球やマクロファージが混在する可能性がある。したがって、これらの細胞は有するが、IPCには見出せないマーカーを利用して、IPCを精製することができる(negative selection)。このようなマーカーを、ネガティブセレクションマーカーと言う。ネガティブセレクションマーカーとして、たとえばCD11bを示すことができる。
すなわち本発明の分離方法の前、または後に、IPCを含む細胞集団に含まれる、ネガティブセレクションマーカーを有する細胞を分離すればよい。具体的には、先に述べたIPCの分離方法と同様の手法によって、ネガティブセレクションマーカーを有する細胞を分離することができる。たとえば、予めネガティブセレクションマーカーを有する細胞を除去した細胞集団に対して、本発明のIPCの分離方法を適用することができる。あるいは、本発明の方法によって分離されたIPCを含む細胞集団から、更にネガティブセレクションマーカーを有する細胞を除去することによって、IPCの純度を更に高めることができる。すなわち、Ly−49QとCD11bの二重染色によって、IPCはLy−49Q(+)およびCD11b(−)細胞としてIPCを単離することができる(図9A)。
また、逆に、これらの細胞には見出せないが、IPCが有しているマーカーを利用して、IPCを精製することもできる(positive selection)。このようなマーカーを、ポジティブセレクションマーカーと言う。ポジティブセレクションマーカーとしては、B220、CD45RB、およびCD11cを示すことができる。ポジティブセレクションマーカーを利用する場合は、当該マーカーを有する細胞がIPCとして分離される(図9B)。
ネガティブセレクションマーカーあるいはポジティブセレクションマーカーは、単独で用いても良いし、複数を組み合わせることもできる。更に、両方のマーカーを利用することもできる。
本発明のIPC分離方法に用いるLy−49Qを認識する抗体は、IPC分離用試薬とすることができる。すなわち本発明は、Ly−49Qを認識する抗体またはその抗原結合領域を含む、マウスIPC分離用試薬に関する。本発明の分離用試薬を構成するLy−49Qを認識する抗体またはその抗原結合領域は、標識や固相に結合しておくことができる。たとえば磁気ビーズに結合した抗体は、MACSによる分離に有用である。あるいは、固相に結合した抗体をカラムに充填して、IPC分離カラムを構成することもできる。
本発明の分離用試薬には、ネガティブセレクションマーカーおよびポジティブセレクションマーカーのいずれか、または両方を検出するための要素を組み合わせることができる。たとえば、これらのマーカーを認識する抗体を組み合わせた試薬は、より高純度のIPCを得るための試薬として有用である。あるいは、細胞集団に共存する可能性の高いIPC以外の細胞を分離するための要素を組み合わせてIPC分離用試薬を構成することもできる。具体的には、細胞の大きさの違いに基いて顆粒球およびマクロファージを除去するための、密度勾配遠心分離のための要素をLy−49Qを認識する抗体と組み合わせることができる。
IPCは、生体におけるインターフェロンの大部分を産生する細胞である。したがって、IPCを単離し、そのIPC産生能を調節する方法を研究することには大きな意義がある。IPCが産生するIFN−αやIFN−β等のインターフェロンは、ガンやウイルス性疾患の治癒において重要な作用を有すると考えられている。したがって、インターフェロンの産生活性の促進は、これらの疾患の治療方法として有用である。
ヒトIPCは、アレルゲンや寄生虫などの刺激により肥満細胞で産生されたIL−3を介してDC2(Dendritic Cell type2)へ分化するとも言われている。DC2は、T細胞のTh2への分化を誘導する細胞である。アレルゲン刺激によるIPCのIFN産生あるいはTNF産生を抑制できれば、Th2への分化も抑制できる可能性がある。したがって、IFN産生を抑制する方法は、各種アレルギー疾患の治療効果も期待できる。このような研究を進めるためには、IPCのインターフェロン産生能に干渉しない抗体を用いて単離されたIPCが必要である。
図1は、FLT−3リガンド添加後、10日間培養したマウスの骨髄細胞(IPCが濃縮されている)の細胞表面を、作製抗体および他のIPCマーカーで染色したFACS解析像である。培養上清陽性分画、陰性分画をそれぞれR2、R3とした。グラフ内の、R1&R2は2E6抗体陽性の細胞集団、R1&R3は2E6抗体陰性の細胞集団をあらわす。
図2は、各モノクローナル抗体で抽出した細胞の形態を表わす顕微鏡写真(×400)である。(a)はインフルエンザウイルスPR8に感染させる前の形態、(b)はインフルエンザウイルスPR8と2日間培養した後の形態を示す。感染後の細胞は樹状突起を持ち、樹状細胞に典型的な形態を示した。
図3は、本発明のモノクローナル抗体2E6が結合した細胞のインターフェロン産生能を示すグラフである。グラフは下から順に、2E6陽性細胞(2E6 positive)、2E6陰性細胞(2E6 negative)、そして全脾細胞(whole spleen cell)の結果を示す。各細胞について、PR8感染させたもの(PR8)と、感染させなかった場合(−)のIFN−α産生量(ng/mL)を示した。
図4は、モノクローナル抗体2E6の、IPCのインターフェロン産生能への影響を示すグラフである。下が2E6(0.01−1μg/mL)を、また上がラットIgG(0.01−1μg/mL)を加えた場合の、PR8を感染させた2E6陽性細胞のIFN−α産生量(ng/mL)を示した。一番下の(−)は、2E6陽性細胞無しの場合の測定結果である。
図5は、モノクローナル抗体2E6の、IPCの細胞増殖能への影響を示すグラフである。右が2E6(0.1μg/mL)を、また中央がラットIgG(0.1μg/mL)を加えた場合の、CpG存在下で培養した2E6陽性細胞のHチミジンの取りこみ量(cpm)を示した。一番左の(−)は、CpG無しの場合の測定結果である。
図6は、配列番号:1に記載の塩基配列(SEQ ID:1)を有する遺伝子(上)の発現レベルを確認した結果を示す写真。各レーンは左から順に次の細胞の結果を示す。
1:CD3陽性細胞(T細胞)、 3:マウスIPC、および
2:CD8陽性細胞、 4:骨髄系樹状細胞(myeloid DC)
図7は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列(上)と、Ly−49Qとして報告されているGr−1+細胞に発現するレセプターのアミノ酸配列(配列番号:8、GenBank Acc#.AB033769;下)をアライメントした結果を示す図である。
図8は、樹状細胞の分化過程を示す図である。造血幹細胞(Haematopoietic Stem Cell)は、リンパ球系前駆細胞(CLP:Common Lymphoid Progenitors)および骨髄系前駆細胞(CMP:Common Myeloid Progenitors)とに分化する。IPCはリンパ球などとともにリンパ球系前駆細胞から分化した細胞である。一方、骨髄系前駆細胞からは、リンパ球系樹状細胞あるいは骨髄系樹状細胞が分化する。
図9は、各種の細胞表面マーカーを利用するIPC他の識別方法を示すグラフである。Aは、Ly−49QとCD11bの2つのマーカーを利用して、IPCの分離が可能なことを示す。またBには、各種の樹状細胞の識別を行うための細胞表面マーカーの組み合わせの例を示す。すなわち、まずLy−49QとCD11cの2つのマーカーを使って、両者がポジティブな細胞としてIPCが同定される(上)。次にCD11cのみがポジティブである細胞に対して、CD8とCD4の2つのマーカーを適用すると、いずれか一方がポジティブな細胞と、両者がネガティブな細胞の3種類の細胞として各種の樹状細胞を同定することができる(下)。
図10は、Ly−49Qを認識するモノクローナル抗体2E6と、各種の細胞表面マーカーを認識する抗体による、Balb/cマウスの脾臓由来の細胞の二重染色の結果を示す。縦軸が組み合わせた各種の抗体を標識した蛍光色素の蛍光強度、横軸がモノクローナル抗体2E6を標識した蛍光色素の蛍光強度を示す。
図11は、Ly−49Qを認識するモノクローナル抗体2E6と、Gr−1(左側)またはCD11b(右側)を認識する抗体による、二重染色の結果を示す。上がBalb/cマウスの、下がC57B6マウスに由来する脾臓由来細胞の分析結果である。縦軸と横軸は、それぞれの軸に示した抗体を標識した蛍光色素の蛍光強度を示す。
図12は、Balb/cマウスの脾臓由来のGr−1およびモノクローナル抗体2E6陽性細胞(IPC/R2;カラム左)、Gr−1強陽性およびモノクローナル抗体2E6陽性細胞(顆粒球/R3;カラム中)、並びにG−1陽性およびモノクローナル抗体2E6陰性細胞(マクロファージ/R5;カラム右)の、インターフェロンの産生能を確認した結果を示す。縦軸はインターフェロンまたはIL−12の産生量(pg/mL)を、横軸が刺激剤の種類を示す(−:刺激剤無し、PR8:インフルエンザウイルス、CpG:ODN−CpG)。
図13は、Balb/cマウスの脾臓由来のGr−1およびモノクローナル抗体2E6陽性細胞(IPC;下)、Gr−1強陽性およびモノクローナル抗体2E6陽性細胞(顆粒球;上)の顕微鏡写真を示す写真。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
〔実施例1〕 モノクローナル抗体作成プロトコル
免疫原とする細胞は以下のようにして調製した。Balb/cマウス雌(4〜6週令)の骨髄細胞を10ng/mLのFLT−3リガンド添加10%FCS−RPMI1640(ペニシリン、ストレプトマイシン)にて10日間培養した。10日目には約40%の細胞がIPC(Interferon producing cell)となった。10日後、CD11c陽性、CD11b陰性、B220陽性分画を、セルソーターで分離した。
0、4、11日目の上記の分離した細胞1x10個(/片足)を、完全フロインドアジュバント(CFA)と共にラットのフットパッド(foot pad)へ注入した。12日目に免疫ラットのリンパ節を分離し、リンパ球を採取した。マウスのミエローマP3x/63Ag8.653とラットのリンパ球を、4:5の割合で混合し、ポリエチレングリコール(PEG)を加えて細胞を融合した。融合後の細胞は十分に洗浄してHAT培地に分散させ、1ウエル当たり5x10個の細胞を含むように96well plateにまいた。
細胞が増えたウエルの細胞を回収し希釈して、その培養上清をスクリーニングした。培養上清は、マウス脾臓細胞、および培養骨髄細胞に対する反応性を指標としてスクリーニングした。詳細は以下のとおりである。
〔実施例2〕 培養上清のスクリーニング
Balb/cマウス雌(4〜6週令)の骨髄細胞をFLT−3リガンド添加10%FCS−RPMI1640(ペニシリン、ストレプトマイシン)にて10日間培養した。10日目には約40%の細胞がIPC(Interferon producing cell)となった。ハイブリドーマ培養上清を1次抗体とし、2次抗体にFITC標識抗ラットIgGを用いてこの細胞を染色した。その後、各種抗体(CD11b,CD11c,CD3,CD19,CD45RB,B220,Ly6C)により二重染色した。
培養上清陽性分画、陰性分画をそれぞれ、R2、R3とし各々のGate内での各種抗原の発現をヒストグラムで示した(図1)。作製した数種類の抗体によって染色される細胞群は、文献上で定義されているマウスIPC(Nature Immunol.2001.p1144−1150)の細胞表面抗原プロファイルが一致した。したがって、これらの抗体はマウスIPCを特異的に結合する抗体であると考えられた。
〔実施例3〕 抗体で分離した細胞の形態
実施例2と同様に培養した骨髄細胞を、培養上清を1次抗体とし、2次抗体にFITC標識抗ラットIgGを用いて染色した。その後セルソーターを使って、陽性細胞を分離した。サイトスピン後、ギムザ染色し、検鏡したところIPCに特異的な形態を示した(図2(a))。すなわち、この細胞の形は丸く大きな核を有していた。
1×10の細胞を96well丸底プレートにてインフルエンザウイルス(PR8)と共に24時間培養し、同様にギムザ染色した後、顕微鏡下にて観察したところ、形態的に典型的な樹状細胞に分化した(図2(b))。この結果から、上記抗体によって分離された細胞は、ウイルス感染によって樹状細胞に分化するというマウスIPCの特徴を有していることが確認された。マウスIPC特異的なモノクローナル抗体として2E6を選択し以降の実験に用いた。モノクローナル抗体2E6を産生するハイブリドーマ2E6は、2002年8月1日に独立行政法人産業技術総合研究所内特許生物寄託センターに寄託されている(受託番号FERM BP−8445)。
〔実施例4〕 抗体で分離した細胞のインターフェロン産生能
実施例2と同様に培養した骨髄細胞を2E6の培養上清、および2次抗体で染色後、セルソーターにて陽性、陰性細胞を分離した。1×10個の2E6陽性細胞を96well丸底プレートに分注し(100μl/well)、インフルエンザウイルスPR8を感染させ、24時間後の培養上清中のIFNαをELISAにて測定した。それぞれの反応は、triplicateで行ない、平均値を求めた。2E6陰性細胞に代えて、脾細胞または2E6陰性細胞を同様に処理して結果を比較した。
ELISAのオペレーションは次のとおりである。まず抗IFNα抗体を96well plateにover nightでcoatした。プレートを洗浄後培養上清100μlをいれ、4℃ over nightにて反応させた。プレートを洗浄後、IFNαとIFNβを認識する標識化抗インターフェロン抗体を添加し、1時間インキュベートした。2E6陽性細胞では、その他の細胞と比べて、高いインターフェロンの産生が認められた。したがってモノクローナル抗体2E6が認識する抗原は、IPCに特異的な表面抗原であることが確認できた(図3)。
〔実施例5〕 抗体のインターフェロン産生能に対する影響
実施例2と同様に培養した骨髄細胞を1×10個ずつ、96well丸底プレートに分注した。これにハイブリドーマ2E6の培養上清、またはラットIgG(コントロール)を添加し、37℃にて、30分間培養後、インフルエンザウイルス(PR8)を添加し、24時間、37℃にて培養後、培養上清のIFNαをELISAで測定した。結果を図4に示した。0.01−1μg/mLのいずれの抗体濃度においても、対照との間で、IFN−αの産生量に有意な差は見られなかった。すなわち、IPCのIFNα産生能に対するモノクローナル抗体2E6の影響は観察されなかった。
〔実施例6〕 抗体のIPC増殖能に対する影響
実施例2と同様に培養した骨髄細胞を1×10個ずつ、96well丸底プレートに分注した。次いで、各ウエルに1μg/mLの2E6モノクローナル抗体および1μMのODN−CpG(Phosphorothioate CpG ODN 1668;5’−TCCATGACGTTCCTGATGCT−3’)を添加し、24時間後のサイミジン取り込みを計測した。対照として、モノクローナル抗体に代えてラットIgGを用いて同じ処理をした細胞の増殖能を測定した。結果を図5に示した。モノクローナル抗体2E6を添加した場合の細胞の増殖は、対照と有意な差は認められなかった。
〔実施例7〕 発現クローニング
1)IPC−cDNAライブラリーの作製
FL3−TリガンドでBalb/cマウスの骨髄細胞から誘導したIPCより全RNAをフェノール−グアニジン法により抽出し、oligo−dTカラムによりmRNAを精製した。精製したmRNAからGubler−Hoffman法によりcDNAを合成し、両端にEcoRI−NotIアダプター(インビトロジェン社製)を結合後、スパンカラム(クロマスピン400、クロンテック社製)により未反応のEcoRIアダプターおよび500塩基以下の短いcDNAを除去した。得られた両端にEcoRIサイトを有するcDNAを動物細胞用発現用ベクターpME18s(XhoI断片を除いたもの)のEcoRIサイトにT4リガーゼにより結合し、大腸菌DH10にエレクトロポーレーション法により形質転換した。これをLB・カルベニシリン(100μg/ml)500mlで30℃で一晩培養し、QIA filter plasmid maxi kit(Qiagen社製)により同キットのプロトコールに従ってplasmidを抽出、精製し、IPC−cDNAライブラリーを得た。
2)COS細胞による発現クローニング
6cmディシュにCOS細胞を5x10で10枚まき、37℃、5%CO下で培養した。20時間の培養の後、Effectin trasfection Reagent(Qiagen社製)により同製品のプロトコールに従いIPC cDNAライブラリーをtransfectionした。48時間、37℃、5%CO下で培養後、PBSで洗浄、PBS/5mM EDTAで細胞をディシュから剥離し、さらにPBSで洗浄後、セルストレナー(70μm,ファルコン社製)を通した。遠心後(1300rpm,5分)上清を除去し、PBS/0.5%BSA/2mM EDTAを1mLに懸濁し、Fc block(ファーミンジェン社製)40μLを加え4℃で20分置いた。これにビオチン化したIPC特異的抗体30〜50μgを加え、氷上で30分間保持した。PBSで洗浄後、100μLのPBSに懸濁し、ストレプトアビジンマイクロビーズ(Miltenyi Biotec社製)10〜20μLを加え10℃で15分静置した。PBS/0.5%BSA/2mM EDTAで洗浄することにより過剰なストレプトアビジンマイクロビーズを除去し、1mlのPBS/0.5%BSA/2mM EDTAに懸濁した。
AutoMACS(Miltenyi Biotec社製)でposseldsの条件で細胞を分取した。改良Hirt法(Bio Techniques Vol.24,760−762,1998)によりplasmidを抽出、精製した。得られたplasmidを大腸菌DH10にエレクトロポーレーション法により形質転換し、LB・カルベニシリン(100μg/ml)100mlで30℃で一晩培養し、QIA filter plasmid midi kit(Qiagen社製)により同キットのプロトコールに従ってplasmidを抽出、精製した。以上操作を1クールとして、この後同じ操作を4回繰り返し、IPC特異的抗体に反応する抗原をコードするplasmidを濃縮した。最後に、AutoMACSのかわりにセルソーター(FACSVantage,Becton Dekinson社製)により陽性細胞を分取し、これらより抽出したplasmidを形質転換した大腸菌DH10を適量LB・カルベニシリン(100μg/ml)プレートに塗布し、30℃で一晩培養し、現れたコロニーを30個ピックアップし、それぞれよりplasmidを抽出した。これらを、それぞれ、COS細胞にtransfectionし、対応するIPC特異的抗体でFACS解析することにより陽性plasmidを選抜した。
得られたplasmid上にクローン化されているcDNAの塩基配列を決定し、マウス遺伝子データベースに登録されている塩基配列情報とblastサーチすることにより、その遺伝子を決定した。
その結果、モノクローナル抗体2E6が結合したクローンは、配列番号:1に記載の塩基配列を有していた。これらの塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を、配列番号:2に示した。
配列番号:1に記載の塩基配列は、Ly−49Qと呼ばれるNKレセプターとして単離された分子の塩基配列(GenBank Acc#.AB033769)とほぼ一致した。両者の塩基配列の違いは、マウスの種の違いによるものと考えられた。配列番号:1に記載の塩基配列は配列番号:2に示すアミノ酸配列をコードしていた。配列番号:2に記載のアミノ酸配列と、GenBank Acc#.AB033769として既知のアミノ酸配列(配列番号:8)のアライメント結果を図7に示した。配列番号:8に記載のアミノ酸配列は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列に対して、以下の変異を有する。
1位Metの欠失、 5 134位IleのValへの置換、
94位SerのAsnへの置換、 230位LysのThrへの置換、そして
103位ProのLeuへの置換、 254位PheのValへの置換
114位AsnのAspへの置換、
したがって、これらの変異のいずれかを含むアミノ酸配列は、本発明におけるLy−49Qとして有用である。
3)FACSによる確認
上記発現クローニング法により得られたplasmidをQIA filter plasmid midi kit(Qiagen社製)により再度大腸菌より高度に精製し、もう一度COS細胞にtransfectionした。48時間後、定法に従って、対応するIPC特異的抗体およびFITC標識抗ラット2次抗体を反応させFACS解析を行うことで、プラスミド上にクローン化されているcDNAが、抗原をコードしているかどうかを確認した。
その結果、上記モノクローナル抗体2E6は、いずれもプラスミドを導入したCOS細胞に対する結合が観察された。したがって、プラスミド上にクローン化されているcDNAは、いずれもこれらのモノクローナル抗体によって認識された抗原をコードしていることが確認された。
4)RT−PCR法による確認
各細胞より抽出したRNAより合成したcDNAを鋳型として、定法に従ってPCRを行い、抗原遺伝子がIPCに特異的に発現しているかどうかを確認した。PCRに用いたプライマーの塩基配列は次のとおりである。
Figure 0004498136
Figure 0004498136
発現レベルを比較した細胞は次のとおりである。細胞は、セルソーター(FACSVantage,Becton Dekinson社製)により高度に分離したものを用いた。結果は図6に示した。配列番号:1(上)に示した塩基配列を有する遺伝子は、IPCにおける高い発現が観察された。したがって、この遺伝子はマウスIPCのマーカーとして有用であることが裏付けられた。
CD3陽性細胞(T細胞)、 マウスIPC、および
CD8陽性細胞、 骨髄系樹状細胞(“Myeloid”DC)
〔実施例8〕 二重染色による樹状細胞の識別
C57B6およびBalb/cマウスの脾臓細胞および骨髄より血球細胞を抽出した。抽出した血球細胞に対して、抗Ly−49Qモノクローナル抗体2E6、および各種細胞マーカーを認識する抗体による二重染色を行った。細胞マーカーとして、次のマーカーを利用した。
B220、Ly6c、Gr−1、CD4、CD19、CD3、CD11c、CD11b、およびCD45RB
染色後の細胞をFACScanによって、解析した。結果の一部を図10および図11に示した。図10の各グラフにおいて、縦軸が各マーカーの、そして横軸がLy−49Qの陽性細胞のポピュレーションを示す。たとえばCD3やCD11cとの二重染色によって、Ly−49Q陽性およびCD3若しくはCD11cが陽性の細胞群(IPC)を識別できる。またLy−49Qの発現が見られるBalb/cマウス由来の顆粒球は、Gr−1に強く染色される細胞(R5)としてIPCと識別できることがわかる。
更にC57B6マウスに由来する細胞の解析結果において、この実施例で用いたモノクローナル抗体2E6が顆粒球に結合していないことがわかる(図11)。一方IPCについては、マウスの系統の違いにかかわらず、いずれもモノクローナル抗体2E6によって検出できている(R6およびR7)。この結果は、C57B6マウス由来の細胞群を対象とする場合には、モノクローナル抗体2E6を利用して、顆粒球が共存している細胞群の中のIPCを特異的に検出できることを示している。すなわち、C57B6マウス由来の細胞群においては、モノクローナル抗体2E6ポジティブ細胞をIPCと同定することができる。Ly−49QはC57B6マウスの顆粒球でも発現しているので、2E6の認識エピトープが、マウスの系統間で構造の異なる部位である可能性が考えられた。たとえば、C57B6およびBalb/cマウスの間でLy−49Qの糖鎖の違い、あるいは多型の存在等を構造の違いの理由として予測することができる。
〔実施例9〕 分離した細胞のIFN産生能の確認
Ly−49Q陽性細胞として単離された細胞がIPCであることを確認するために、細胞のIFN産生能を確認した。まず、AutoMACSを用い、骨髄細胞からGr−1陽性細胞を抽出した。得られた細胞を対象として、Gr−1と2E6の二重染色により以下の細胞群を分離した。細胞の単離にはセルソーターを用いた。
(1)Gr−1強陽性(high positive)、2E6陽性細胞(R3)、
(2)Gr−1弱陽性(lo positeve)、2E6陽性(R2)、
(3)2E6陰性(lo positeve)、Gr−1弱陽性(lo positeve)(R5)
次いで分離した細胞を各種刺激剤で刺激し、IFN−αおよびIL−12の産生レベルを測定した。刺激剤には、インフルエンザウイルスPR8、およびODN−CpGを用いた。結果を図12に示した。(2)Gr−1陽性かつ2E6陽性の細胞群(R2)は、PR8刺激によってIFN−α産生能が強く誘導された。この細胞群はIPCであることが裏付けられた。
実際にAutoMACSで分離された細胞の形態学的な特徴を確認した。その結果、(2)Gr−1陽性かつ2E6陽性の細胞(R2)はIPC(図13下の写真)に、そして(1)Gr−1強陽性かつ2E6陽性細胞(R3)は顆粒球(図13上の写真)に特徴的な形態をそれぞれ有していた。
産業上の利用の可能性
本発明は、マウスIPCのマーカーとして有用な分子を提供する。マウスIPCに特異的に見出されるマーカーは、これまで知られていなかった。本発明らが見出したマーカーにより、マウスのIPCの同定、検出、あるいは分離を容易に行うことができる。IPCの末梢血におけるポピュレーションは極めて小さい。したがって、公知のモノクローナル抗体を使ったマウスIPCの同定や分離には、複数の抗体を用いた多重染色が必要であった。一方本発明によって提供されたマーカーは、マウスIPCに対する特異性を有するので、1種類のモノクローナル抗体によって、マウスIPCの検出や分離が可能である。
マウスIPCは、ウイルスやIL−3の刺激によって樹状細胞に分化する。これらの刺激はそれぞれ異なる樹状細胞への分化を誘導する。つまり、IPCは多様な細胞への分化能を有する。したがってIPCは、免疫システムにおける重要な細胞に位置付けられる前駆細胞である。このようなIPCの分離や同定を容易にする本発明のマーカーは、高い産業上の有用性を有する。
より具体的には、本発明に基くマーカーを指標としてに分離されたマウスのIPCを利用して、IPCの分化の誘導機構を解明することができる。解明された機構に基づいてヒトのIPCの分化機構を解明することができれば、ヒトIPCの分化を人為的に調節できる可能性がある。
更に本発明によって提供されたマーカーを認識する抗体は、マウスIPCのインターフェロン産生能を調節する作用を実質的に有しない。IPCは、血中において大量のインターフェロンを産生する。したがってIPCのインターフェロン産生能に影響を与えることなくIPCの単離を可能とする本発明のマーカーは、研究材料としてのIPCの単離に貢献する。先に述べたように、BDCA−2抗原を認識する公知のモノクローナル抗体は、ヒトIPCに対してそのインターフェロン産生能を抑制する作用を有する。IPCのインターフェロン産生能に干渉しないモノクローナル抗体を提供した本発明の価値は大きい。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。

Claims (19)

  1. 次の工程を含む、マウスのインターフェロン産生細胞の検出方法であって、該細胞のインターフェロン産生能または増殖能に干渉せずに検出することを特徴とする方法。
    (1) マウス血液細胞を含む生物学的試料に含まれる、Ly-49Qを発現している細胞を検出する工程、および
    (2) Ly-49Qの発現が検出された細胞をマウスのインターフェロン産生細胞として検出する工程
  2. Ly-49Qを発現している細胞を検出する工程が、Ly-49Qを認識する抗体またはその抗原結合領域を細胞に結合させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
  3. Ly-49Qを認識する抗体が、モノクローナル抗体である請求項2に記載の方法。
  4. モノクローナル抗体が、受託番号FERM BP-8445として寄託されたハイブリドーマ2E6が産生するモノクローナル抗体である請求項3に記載の方法。
  5. 付加的に、マウスリンパ球系樹状細胞、マウスCD4+骨髄系樹状細胞、およびマウスCD4-骨髄系樹状細胞から選択された少なくとも1種類の樹状細胞を検出する工程を含む請求項1または4に記載の方法。
  6. マウスリンパ球系樹状細胞が、CD11c陰性、CD4陰性、およびCD8陽性細胞として同定される工程を含む請求項5に記載の方法。
  7. マウスCD4+骨髄系樹状細胞が、CD11c陰性、CD4陽性、およびCD8陰性細胞として同定される工程を含む請求項5に記載の方法。
  8. マウスCD4-骨髄系樹状細胞が、CD11c陰性、CD4陰性、およびCD8陰性細胞として同定される工程を含む請求項5に記載の方法。
  9. Ly-49Qを認識する抗体またはその抗原結合領域を含む、マウスインターフェロン産生細胞検出用試薬。
  10. 付加的に、マウスリンパ球系樹状細胞、マウスCD4+骨髄系樹状細胞、およびマウスCD4-骨髄系樹状細胞から選択された少なくとも1種類の樹状細胞のマーカーを認識する抗体またはその抗原結合領域を含む請求項9に記載の試薬。
  11. マウスリンパ球系樹状細胞、マウスCD4+骨髄系樹状細胞、およびマウスCD4-骨髄系樹状細胞の細胞マーカーが、CD4およびCD8である請求項10に記載の試薬。
  12. 次の工程を含む、マウスのインターフェロン産生細胞の分離方法であって、該細胞のインターフェロン産生能または増殖能に干渉せずに分離することを特徴とする方法。
    (1) マウスインターフェロン産生細胞を含む細胞集団に含まれる、Ly-49Qを発現している細胞を検出する工程、および
    (2) Ly-49Qの発現が検出された細胞をマウスのインターフェロン産生細胞として取得する工程
  13. Ly-49Qを発現している細胞を検出する工程が、Ly-49Qを認識する抗体またはその抗原結合領域を細胞に結合させる工程を含み、かつ、該抗体が受託番号FERM BP-8445として寄託されたハイブリドーマ2E6が産生するモノクローナル抗体である請求項12に記載の方法。
  14. マウスインターフェロン産生細胞を含む細胞集団が、顆粒球およびマクロファージのいずれか、または両方を含まない細胞集団である請求項12または13に記載の方法。
  15. 付加的に、(3)顆粒球およびマクロファージのいずれか、または両方を分離する工程、を含む請求項12または13に記載の方法。
  16. Ly-49Qを認識する抗体またはその抗原結合領域を含む、マウスインターフェロン産生細胞分離用試薬。
  17. 付加的に、顆粒球のマーカーを認識する抗体またはその抗原結合領域、およびマクロファージのマーカーを認識する抗体またはその抗原結合領域のいずれか、または両方を含む請求項16に記載の試薬。
  18. 受託番号FERM BP-8445として寄託されたハイブリドーマ2E6が産生するモノクローナル抗体、またはその抗原結合領域を含む断片。
  19. 受託番号FERM BP-8445として寄託されたハイブリドーマ2E6を培養し、培養物に含まれるイムノグロブリンを採取する工程を含む、モノクローナル抗体の製造方法。
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