明 細 書
複合培養体、 複合培養体の製造方法、 前培養体、 前培養体の製造方法及び微 生物製剤の製造方法
技術分野
本発明は、 複合培養体の製造方法、 前培養体の製造方法、 微生物製剤の製 造方法及び微生物製剤に関する。
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現代農業は、 化学肥料や農薬の多量に使用しており、 これらの投入により、 地下水の硝酸塩汚染、 土壌浸食等を引き起こし、 野生生物生息地の減少等環境 に悪影響を及ぼしている。 このため、 環境保全型農業の推進が求められている。 また、 農産物の安全性のため、 有機農業への関心も高まっている。 しかしなが ら、 現状では、'生産性、 品質、 労働時間の面で課題が多く、 有機農業に向けた 農業技術の改善は、 見いだされていない。
発明の開示
上記事情に対して、 本発明は、 土壌、 河川、 空気の環境を清浄化し、 有機質 資材を有効に利用し、 農産物の生産性や品質を向上させ、 労働時間の削減を 可能とする微生物製剤、 その製造方法並びに係る微生物製剤の製造に供する複 合培養体及び前培養体並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。 上記目的を達成するために、 本発明は、 その一側面として微生物製剤の製造 方法 (以下、 微生物製剤の第一の製造方法ともいう) であって、 高級有機物に 後述する複合培養体及び後述する前培養体を加え、 2 5 °C〜3 7 °Cの温度下で 密閉通気環境の培養器に入れ、 高級有機物に該複合培養体及び該前培養体を混 合した後の含水率を、 1 5〜3 5重量%の範囲とし、 該高級有機物を発酵させ ることを特徴とする。
本発明に係る微生物製剤の製造方法は、 別の形態 (以下、 微生物製剤の第二 の製造方法ともいう) として、 有機物に後述する複合培養体と後述する前培養 体とを加え、 有機物に該複合培養体及ぴ該前培養体を混合した後の含水率を 1 5〜3 5重量%の範囲とし、 2 5 °C〜4 0 °Cの温度下で好気発酵を行い、 さら に発生する二酸化炭素により嫌気発酵を行い、 しかる後、 再度好気発酵させる
ことを含むことを特徴とする。
上記複合培養体は、 抗酸化物質を含む基質に通性嫌気性菌又は通性嫌気性菌 及び好気性菌を含む生菌剤を加え、 2 5 °C~ 3 7 °Cの温度下で密閉通気喑璟境 の培養器に入れ、 酸性下かつ加圧下で複合培養させることを含む製造方法によ つて製造することができる。 この生菌剤としては、 乳酸菌と酵母又は乳酸菌と 酵母と酢酸菌を含み、 各々の菌を種培養を経て前培養して得られた前培養体が 好適である。 また、 上記前培養体は、 抗酸化物質を含む基質に嫌気性菌を含む 生菌剤を加え、 2 5 ° (〜 3 0 °Cの温度下で密閉通気明璟境の培養器に入れ、 弱 酸性環境で培養させることを含む製造方法によって製造することができる。 こ の生菌剤としては、 光合成細菌を含み、 光合成細菌を種培養して得られた種培 養体であることが好適である。
なお、 上記複合培養体及び前培養体は、 それら自体を微生物製剤として利用 することができる。
上記微生物製剤の第一の製造方法では、 空気中や材料に付着している好気性 菌ゃ前培養体に含まれている好気性細菌 (酢酸菌) 及び通性嫌気細菌 (乳酸菌 酵母) により、 密閉通気環境下で酸素が消費されるとともに、 これらの生成物 質である二酸化炭素によって好気性細菌や通性嫌気性細菌の過度の増殖が抑制 され、 その二酸化炭素は、 光合成細菌によって利用される。
また、 微生物製剤の第二の製造方法は、 好気発酵工程、 嫌気発酵工程、 そし て再度の好気発酵工程を含む。 初期において、 空気中や材料に付着している好 気性菌ゃ、 前培養体に含まれている好気性細菌 (酢酸菌) や通性嫌気細菌 (乳 酸菌、 酵母) が好気発酵工程で増殖する。 嫌気発酵工程では酢酸菌の生成物質 である酢酸や乳酸菌の生成物質である乳酸、 酵母や酢酸菌ゃ乳酸菌による酸素 の消費とともに、 これらの生成物質である二酸化炭素によって好気性細菌や通 性嫌気性細菌の過度の増殖が抑制され、 また、 再度の好気発酵で発酵熱により 有機物の含水率が減少する。
上記複合培養体の製造方法、 前培養体の製造方法、 及び第一、 第二の微生物 製剤の製造方法は、 いずれも、 抗酸化物質を使用しており、 これによつて過度 の雑菌を抑制し、 酸化作用が抑制される。各工程において生成されたアミノ酸、
有機酸、 ビタミン類、 核酸類等に加え菌体そのものも、 土壌有用微生物群や農 業生産物の栄養源になる。 したがって、 本発明で提供される複合培養体、 前培 養体、 及び第一、 第二の微生物製剤は、 いずれも環境資材として用いることの できる製剤であり、 農業土壌に散布したり、 畜舎等に散布することにより、 後 述するような効果を発揮させることができる。 また、 後述するところからも明 らかとなるように、 本来廃棄されるような有機物を発酵原料とすることができ る。
したがって、 本発明によって得られる複合培養体、 前培養体及び微生物製剤 は、 土壌、 河川、 空気の璟境を清浄化し、 有機質資材を有効に利用するもので あり、 主として土壌や畜舎等に散布することにより、 農産物の生産性や品質を 向上させ、 加えて労働時間の削減をも可能とする。
発明を実施するための最良の実施の形態 本発明に係る複合培養体及び前培養体の製造方法、 微生物製剤の製造方法及 び微生物製剤の実施の形態を以下にさらに詳細に説明する。
複合培養体の製造方法 ; 上記したように、 本発明では抗酸化物質を含む基質に通性嫌気性菌又は通性 嫌気性菌及び好気性菌を含む生菌剤を加え、 2 5 °C〜3 7 °Cの温度下で密閉通 気喑環境の培養器に入れ、 酸性下かつ加圧下で複合培養させることにより複合 培養体を得ることとしている。 この複合培養体自体が、 微生物製剤として用い ることができるとともに、 さらに後述する他の前培養体とともにさらに発酵操 作を行って別の微生物製剤を調製することができる。 - 本明細書中で 「抗酸化物質」 の語を用いる場合は、 種々の形態の抗酸化物質 を意味し、 水溶液の形態で用いることも含んでいる。
本発明で用いることのできる抗酸化物質としては、 ビタミン A、 ビタミン B 群、 ビタミン Eを挙げることができ、 その中で特に、 株式会社 K O R I N K O R E Aの製品であるビタミン B群に属する K MXを利用することが好ましい。 また、 本明細書中で 「基質」 の語を用いる場合、 一般的には、 微生物を植菌 する培地又は培養液を指す。 さらに、 このような培地又は培養液に糖質又はフ ィッシュソリュープル等を加える場合も基質を加えることの概念に含まれる。
要するに培養される微生物にとって適宜の生育環境又は栄養を提供する媒体を 広く含む概念である。
本明細書中で、 「種培養体」、 「前培養体」 、 「複合培養体」 の語を用い、 その量を表記する際は、 一般的には、 菌体を培養した培地 (培養液) を含めた 量として表記している。
ここで、 「糖質」 としては、 ブドウ糖、 マンノース、 フラクト一ス、 白糖、 マルト一ス、 セロビオース、 乳糖、 トレハロ一ス、 メリビオ一ス、 ラフイノ一 ス、 エスクリン、 サリシン、 アミグダリン、 マンニヅト、 ソルビヅト、 ソルボ ース、 メンチトース等々のうちの一種以上を利用することができるが、 商業的 には糖蜜、 庶糖のみならず、 オリゴ糖を単独で又は他の糖質と併用して利用す ることができる。
上記フイシュソリューブルとは、 魚の残さを熱処理したものである。 1 6種 のアミノ酸組成を含んでいる。
さらにここで、 本明細書で用いる培養環境に関する用語について説明する。 本明細書中、 「密閉通気環境」 とは、 外界からは通気的に遮断しており、 か つ密閉容器内では、 密閉時に混入した空気が循環する環境をいう。 また、 本明 細書中、 「密閉通気暗環境」 とは、 外界からは通気的に遮断しており、 かつ密 閉容器内では、 密閉時に混入した空気が循環し、 光りが入らない璟境をいう。 また、 本明細書中、 「密閉通気明環境」 とは、 外界からは通気的に遮断してお り、 かつ密閉容器内では、 密閉時に混入した空気が循環し、 光りが入る環境を いう。 - 本発明に係る複合培養体の製造方法では、 好適な実施の形態として、 抗酸化 物質水溶液に生菌剤と基質である糖質とを加え、 密閉通気喑環境下の容器で、 1 . 5〜2気圧をかけ、 2 5 °C〜 3 7 °Cの温度下一定期間にわたって複合培養 する。 これによつて、 複合培養体を含む p H 3 . 2〜3 . 8の溶液を得ること ができる。
複合培養体の製造方法では、 上記生菌剤は、 乳酸菌と酵母又は乳酸菌と酵母 と酢酸菌を含み、 各々の冷凍乾燥して保存されている菌体を種培養を経て、 前 培養して得られた前培養体であることが好適である。 種培養は、 種培地に菌体
を接種して行う。 いずれの菌体も複数種のものを用いることができる。 係る場 合には、 個々の菌体を別々に種培養を絰て前培養し、 複合培養する際に、 混合 することが好適である。
複合培養する際、 好適には、 個々の乳酸菌が 1 0 1Q〜1 O n/mL含まれる乳 酸菌培養液 (前培養体) を各々 1〜3重量部、 個々の酵母菌が 1 08〜 1 09/ mLの酵母培養液 (前培養体) を各々 1〜3重量部、 0 . 0 1〜0 . 0 5重量 %の抗酸化物質を含む抗酸化物質液を 1〜 5重量部、 及び基質の一部として 3
〜 5重量部の糖質 (好適には糖蜜) を混合する。 複合培養する際に 1 08〜1 0
Vm Lの酢酸菌培養液 (前培養体) をさらに 1〜 2重量部混合することもでき る。
なお、 上記菌数も含めて、 本明細書中、 菌数に関しては、 平板培養法に従つ て測定した菌数を記載している。
複合培養体の製造方法では、 密閉通気喑環境下で、 生菌剤 (乳酸菌、 酵母叉 は酢酸菌) の酸素の消費及び二酸化炭素の発生が行われる。 また、 生菌剤 (乳 酸菌又は酢酸菌) の生成物質である乳酸又は酢酸により好気性菌並びに雑菌の 増殖が抑制される。
前培養体の製造方法
上記したように、 抗酸化物質を含む基質に嫌気性菌を含む生菌剤を加え、 2 5 °C〜3 0 °Cの温度下で密閉通気明環境の培養器に入れ、 弱酸性環境で培養さ せることにより、 前培養体を製造する。 この前培養体自体が、 微生物製剤とし て用いることができるとともに、 さらに前述の複合培養体とともにさらに発酵 操作を行って本発明に係る第一、 第二の微生物製剤を調製することができる。 本発明に係る前培養体の製造方法では、 好適な実施の形態として、 抗酸化物 質水溶液に、 生菌剤 (光合成細菌培養生菌) と基質であるフイシュソリューブ ルとを加え、 密閉通気明環境下の容器で、 2 5 °C〜3 0 °Cの温度下、 p H 6 . 4〜7 . 0で一定期間にわたって培養する。 これによつて、 前培養体を得るこ
とができる。
前培養体を得るための生菌剤は、 光合成細菌を含み、 光合成細菌を種培養し て得られた少なくとも一種の種培養体である。 種培養は、 冷凍保存されている 菌体を種培地に接種して行う。 光合成細菌の種培養体は、 複数種を用いること ができる。 なお、 前培養体は、 各々の種培養体を個々に前培養し、 複数の前培 養体としても調製できる。
前培養で、 好適には、 個々の光合成細菌が 108〜10la/mL含まれる光合 成細菌種培養体を各々 1〜3重量部、 0. 01〜0. 05重量%の抗酸化物質 を含む抗酸化物質液を 1〜 5重量部、 及び 1〜 3重量部のフイシュソリユーブ ルを混合する。
この前培養体の製造方法では、 密閉通気明環境下で硫化水素が発生するため、 容器内の好気性菌の増殖が抑制される。
微生物製剤の第一の製造方法
上記したように、 本発明に係る微生物製剤の第一の製造方法では、 高級有準 物に複合培養体及び前培養体を加え、 25°C〜37 °Cの温度下で密閉通気環境 の培養器に入れ、 高級有機物に複合培養体及び前培養体を混合した後の含水率 を、 15〜35重量%の範囲とし、 該高級有機物を発酵させることとしている。 好適な実施の形態としては、 高級有機物に、 上記複合培養体と上記前培養体 を加え、 含水率を 15〜35重量%に調整し、 密閉通気環境下の容器、 例えば、 ビニール袋に入れ、 25°C〜37°Cの温度下で一定期間にわ って培養する。 発酵時間は、 上記添加後の高級有機物含水率により異なるが、 一般的には 1週 間〜 3週間程度で十分である。
好適な混合割合としては、 複合培養体 5〜: L 0重量部と、 0. 01〜0. 0 5重量%の抗酸化物質を含む抗酸化物質液 5〜 10重量部と、 光合成細菌が 1
08〜 10 Zm 含まれる前培養体もしくは複数種の光合成細菌の各々のこの ような前培養体を混合した培養液 5〜10重量部とを混合し、 高級有機物に混 合する。 混合物の含水率は、 15〜35重量%となるように高級有機物の混合
割合を設定する。
なお、 高級有機物と水とを加えてこのような含水率となるように設定しても 良い。
第一の製造方法では、 抗酸化物質作用と培養液に対する発酵作用を作用させ、 微生物製剤を得ることができる。
微生物製剤の第二の製造方法
有機物に複合培養体と前培養体を加え、 2 5 C〜4 0 °Cの温度下で有機物の 含水率が、 1 5〜3 5重量%の範囲となるように調整し、 攪拌により好気発酵 を促し、 その後、 反応容器 (培養器) を密閉し、 発生した二酸化炭素発生によ り嫌気発酵を行い、 その後、 反応容器の密閉を解除し、 空気又は酸素を導入し て再度好気発酵する。 発酵時間は、 上記添加後の有機物含水率及び有機物の内 容により異なるが、 一般的には 2週間〜 4週間程度で十分である。
このようにして得られた発酵有機物は、 発酵熱によってその含水率が、 1 2 〜1 8重量%になっており、 用途により粉末状又はペレツト状に製剤すること もできる。
好適な混合割合としては、 前記複合培養液 5〜1 0重量部と、 0 . 0 1〜0.. 0 5重量%の抗酸化物質を含む抗酸化物質液 5〜 1 0重量部と、 光合成細菌が
1 08~ 1 o /m L含まれる培養液もしくは複数種の光合成細菌の各々のこの ような培養液を混合した培養液 5 ~ 1 0重量部とを混合し、 有機物に混合する。 有機物の含水率が、 1 5〜3 5重量%の範囲にし、 なお、 高 有機物と水とを 加えてこのような含水率となるように設定しても良い。
使用する高級有機物、 有機物
上記第一の微生物製剤の製造方法で用いることのできる高級有機物としては、 澱粉担持物質、 タンパク質担持物質、 脂肪担持物質の中で酸化度合いが少なく、 新鮮で水分が 2 0 %以下の材料を挙げることができる。 具体的には、 米ぬか、 魚かす、 藁、 油粕、 籾殻等の一種又は二種以上を含んでなることができる。 また、 上記第二の微生物製剤の製造方法で用いることのできる有機物には多 種あるが、 農業利用には豚糞、 牛糞、 鶏糞、 草、 生ゴミなどがある。
さらに、 いずれの製造方法においても、 微生物の吸着資材として活性炭、 力 ルシゥム源として貝化石、 鉄、 マンガン、 銅、 亜鉛、 モリブデンのミネラル源 としてかに殻、 蠣殻等を小量添加することができる。
使用することのできる微生物
本発明では、 嫌気性細菌である光合成細菌、 通性嫌気性細菌である乳酸菌、 酵母の各々 1種以上の菌種を用いる。 さらに、 これらに加えて好気性細菌とし て酢酸菌を含むこともできる。 そのうちの乳酸菌は、 ラクトバチルス パラ力 セィ スペイシス、 ノ ラカセィ (Lact obac i l lus p a r a c a s e i sub sp. Paracas e i) s ラク トノ チノレス サリヴァゥ ス (Lac t obac i l lus s a l ivaius)、 ラク トノ、、チノレス ァ シドフィ レス (La c t o oac i l lus ac i d ophi lus) 、 ラ ク トバチルス デルブルツキ一 スペイシス、 ラクチス (La c t obac i 11 u s de ibr e cki i s u b s l act i s) 、 ラク トノ、 チルス ブレヴイス (Lac t obac i l lus br evi s) 、 又は ラク トバチルス ブッチネリ (L a c t 0 b a c i 11 u s buchne r i) に属する細菌であることが好ましい。 また、 光合成細菌は、 ロドシユウ ムモナス ノヽ。ッスヅリス (Rhodops eudomonas p a h s t r i s )、 又は口 ドシユウムモナス スフエロイデス (Rhod op s euao mona s sphe r o i d e s) に属する細菌であることが好ましい。 酵 母は、 サヅカロミセス セレヴイシェ (Sac char omyc e s c e r e v i s i a e ) 、 又はキヤンデダ ノ リダ ( C a n d i d a v a 1 i d a ) であることが好ましい。 酢酸菌を用いる場合には、 ァセトバク夕一 リック ゥエフェシエンス (Ac e t obac t e r l iquef ac i ens) に 属する細菌であることが好ましい。
施用方法
本発明で得られる上記複合培養体、 前培養体、 及び微生物製剤は、 使用時に は、 液体状で使用する場合には、 水に 0. 01〜0. 0005重量部%を加え、 土壌、 畜舎等に散布又は噴霧して環境資材として施用する。 また、 粉状のもの は 300k g〜 500 kg/ 10 aの割合で散布することにより施用して使用
することが好適である。 また、 畜舎等の悪臭防止のためには、 家畜の餌に混入 させて施用することとしても良い。 上記製造方法で得られた上記複合培養体、 前培養体、 及び微生物製剤を用途 に応じ、 農業又は水質浄化又は畜産などの悪臭対策に使用することができる。 本発明により得られた製品を土壌に散布した場合には、 本発明に係る製品にお いて増殖した生菌の働きとともに生菌により生成されたアミノ酸、 有機酸、 ビ 夕ミン類、 核酸類などを栄養素として土壌有用微生物が育ち、 土壌が団粒化し、 地温が上昇、 作物の糖度が高まり、 農作物の保存が長期化することができる。 また、 本発明により得られた製品を、 汚濁水に散布する等して水質浄化に使用 することにより、 B〇D、 COD、 T— N、 T— P、 ノルマンへキサンが減少 し、 透視度が高まる。 また、 畜舎、 鶏舎、 豚舎、 ゴミから発生する悪臭対策に ついては、 これらに水溶液としたものを噴霧する、 あるいは粉状のものを散布 することにより、 病原菌の抑制、 悪臭の抑制、 畜生産物の健全化ゃ畜生産性の 向上等々をすることができる。 なお、 家畜自体の餌に上記製造方法で得られた 上記複合培養体、 前培養体、 又は微生物製剤を混入することとしても良い。 - 実施例
以下に、 本発明の微生物製剤の農業への添加効果の実施例をもとに、 本発明 をさらに詳細に説明するが、 本発明の内容は、 これらの実施例には限定されな い。
実施例 1 '
本実施例 1では、 以下の手順で生菌剤を構成する各微生物の培養液の調製を 行い、 本発明に係る微生物製剤を製造し、 農場の作物生産にこの微生物製剤を 加え、 その効果を試した。
乳酸菌の前培養体の調製
生菌剤として用いられる乳酸菌は、 理化学研究所微生物系保存施設発行の J
CM微生物株力夕口グから 4種の凍結乾燥菌 (f ree ze dr ied) J CM 1039、 J CM 1046S JCM1134、 JCM 1248を選択して 用い、 無菌培地による種培養で得られた種培養体を、 ペプトン 10 g、 肉ェキ
ス: L 0 g、 酵母エキス 5 g、 グルコース 20 g, ヅィ一ン 80 1 g、 リン酸 水素 2カリウム 2 g、 酢酸ナトリウム 5 g、 クェン酸二アンモニゥム 2 g、 硫 酸マグネシウム水和物 0. 2 g、 硫酸マンガン水和物 50mg、 蒸留水 1 Lか ら成り、 pH 6〜6. 5の培地を用い、 37 °Cで各々をバルクス夕一夕一法で 培養し、 1 0lfl/mLの前培養体を得た。 酵母の前培養体の調製
生菌剤として用いられる酵母は、 理化学研究所微生物系保存施設発行の J C M微生物株力夕口グから 2種の凍結乾燥菌 (f r e e z e d r i e d) J C Ml 499及び J CM3573を選択して用い、 無菌培地による種培養で得ら れた種培養体を、 ポテト 200 g、 グルコース 1 0 g、 寒天培養 15 gヽ 蒸留 水 1 Lから成り、 pH 5. 4〜5. 6の培地を用い、 25 °Cで各々バルクス夕 一夕一法で培養し、 109ZmLの前培養体を得た。 酢酸の前培養体の調製
生菌剤として用いられる酢酸菌は、 財団法人 発酵研究所発行の I FO微生 物株力夕口グから凍結乾燥菌 (f r e e z e d r i e d) I F012388 を選択して用い、 無菌培地による種培養で得られた種培養体を、 酵母エキス 5 g、 ペプトン 3 g、 グルコース 30 g、 炭酸カルシウム 10 :、 寒天 1 5 g、 蒸留水 1 Lから成り、 pH6. 8の培地を用い、 30°Cで好気条件で培養し、
109/mLの前培養体を得た。 光合成細菌の種培養体 Aの調製
生菌剤のうち光合成細菌として、 理化学研究所微生物系保存施設発行の J C M微生物株力夕口グから凍結乾燥菌 (f r e e z e d r i e d) J CM25 24を選択して用い、 酵母エキス 2 g、 L—マレイン酸ナトリウム (s o d i urn L— ma l at e) 2 g、 グルタミン酸ナトリウム 2 g、 リン酸水素力 リゥム 1 g、 炭酸水素ナトリウム 0. 5 g、 硫酸マグネシウム 7水和物 0. 2 g、 塩化カリウム 2水和物 0. 2 g、 硫酸マンガン水和物 2 mg、 硫酸鉄 7水 和物 0. 5mg、 塩化コバルト 6水和物 0. 5mg、 チアミン一 HCL lmg、
ニコチン酸 lmg、 ピオチン 0· 0 lmg、 蒸留水 1 Lから成り、 pH7の培 地を 30°Cで、 照度 200 OLux蛍光灯を照射し嫌気培養し、 109ZmL の種培養体 Aを得た。
光合成細菌の種培養体 Bの調製
生菌剤のうち、 さらにもう一種の光合成細菌として、 Amer i ca T y p e Culture C o 11 e c t i o n発行の A T C C B a c t e r i a and Bact er iophages力夕口グから凍結乾燥菌 ( f r e e ζ Θ d r i e d) AT C C 17023を選択して用い、 リンゴ酸 2. 5 g、 酵母エキス l g、 硫酸アンモニゥム 1. 25 g、 硫酸マグネシウム 7水和 物 0.2 g、塩化カリウム 2水和物 0.07g、クェン酸鉄(f erric c it rat e) 0. 01 g、 エチレンジァミン四酢酸 0. 02 g、 リン酸水素 二カリウム 0. 6 g、 リン酸二水素カリウム 0. 9g、 微量元素 1ml (クェ ン酸鉄 (f erri c cit rat e) 0. 3g、 MnS〇4 0. 002 g、 H3B〇3 0. 001 g、 (NH4) 6Mo7024 - 4 H20 0. 002 g :ヽ EDTA0. 05 g、 CaCL2■ 2 H20 0. 02 g、 蒸留水 100mlか ら調製したもの) 、 ビタミン剤 7. 5 ml (ニコチン酸 0. 2 g、 ニコチンァ ミ ド 0. 2 g、 チアミン HCL0. 4g、 ピオチン 0. 008 g、 蒸留水 1 L から調製したもの) 、 蒸留水 1 Lから成り、 pH 6. 9 の培地を 30°Cで照 度 2000 Lux蛍光灯を照射し嫌気培養し、 109ZmLの種培養体 Bを得た。 乳酸菌と酵母と酢酸菌の複合培養体の調製 ' '
上記乳酸菌の培養液を各々 3重量部、 上記酵母の培養液を各々 3重量部、 上 記酢酸菌の培養液を 2重量部、 抗酸化物質として 0. 01重量%含有の KMX 液 10重量部 (株式会社 K OR IN KOREAの製品) と糖質として糖蜜 5 重量部とを加え、 27 °Cで複合培養し、 乳酸菌、 酵母、 酢酸菌が 109〜; L 01D
/mLの pH3. 2の微生物製剤 (以下の実施例に関する記載おいて複合培養 体製剤という。 ) を得た。
光合成細菌の前培養体の調製
上記種培養体 A, Bを各々 5重量部、 抗酸化物質として 0. 01重量%含有 の KMX液 10重量部 (株式会社 KORIN KOREAの製品) と基質の一 部としてフィッシュゾリュ一ブル 3重量部とを加え、 30°Cで複合培養し、 が
109〜101Q/mLの pH6. 9の微生物製剤 (以下の実施例に関する記載お いて前培養体製剤という。 ) を得た。
第一の微生物製剤の調製
抗酸化物質として KMXを 0. 01重量%含有する KMX液 10重量部 (株 式会社 K ORIN KORE Aの製品) と、 上記複合培養体製剤 10重量部と、 上記前培養体製剤の 5重量部を、 高級有機物として米ぬか 80重量%、 魚粉 1 0重量%、 油粕 10重量%から成る混合物に加えて攪拌した。 含水率が 30重 量%である混合物を得、 それをビニール袋に入れ、 37°Cに保持しながら、 約 2週間発酵させて第一の微生物製剤を生産した。
第二の微生物製剤の調製
抗酸化物質として KMXを 0. 01重量%含有する KMX液 10重量部 ( 式会社 K ORIN KORE Aの製品) と、 上記複合培養体製剤 10重量部と、 前培養体製剤の 5重量部を、 有機物として米ぬか 46重量%、 イネワラ 7重量 %、 モミ 7重量%、 魚粉 10重量%、 油粕 30重量部%から成る混合物に加え て 40°Cの温度下で有機物の含水率が、 35重量%の範囲にし、 攪拌により好 気発酵を促し、 その後、 二酸化炭素発生により嫌気発酵を行い、 その後、 再度 好気発酵し、 発酵有機物の含水率を、 12重量%とし、 第二 φ微生物製剤を生 産した。
実施例 2
上記実施例 1の製造方法で得られた微生物製剤をトマトの生育及び収量に及 ぼす影響を究明した。 試験はビニールハウスで行い。 無処理区、 標準施肥及び 農薬散布区 (施肥は農家慣行と農薬 3回散布) 、 第一の微生物製剤を 40 Ok g/ 10 a散布し、 上記複合培養体製剤と前培養体製剤を 1対 1の割合で混合 し、 散布した散布区を設けて試験した。
定植 2週間前に第一の微生物製剤を 20 Okg/10 aの割合で土壌に散布
した。 予め準備した複合培養体製剤と、 前培養体製剤とを 1対 1の割合で混合 し、 糖蜜を加え、 5 0 0倍希釈した培養したものを 5 0 0リヅトル / 1 0 aの 割合で散布した後、 口一夕リーした。
さらに、 定植時において、 第一の微生物製剤を 1 0 0 0倍希釈したものの中 にトマトの苗を付けてから定植した。
また、 追肥として生育の中間に第一の微生物製剤を 1 0 0 0 aと、 後期に第一の微生物製剤を 1 0 0 k g/ 1 0 aを散布した。 また、 予め準備し た複合培養体製剤と、 前培養体製剤とを 1対 1の割合で混合し、 1 0 0 0倍希 釈して、 5 0 0リツトル / 1 0 aの割合で各々の時期に 2回散布した。
収量調査
公試作物の収穫は定植後、 7 4日から 1次収穫を初めて 5日間隔で 4次まで 収
穫した。 1次収穫は正常的で商品性があるトマトと 病果と奇形果を分けて収 量及び重さを測定した。 1次収穫 (定植後 7 4日) と 3次収穫 (定植後 8 4日 ) で収穫量が多かった。 4次収穫までの収量は、 微生物製剤を散布した区が一 番多く収穫し、 標準施肥処理区で一番少ない収穫であった。 微生物製剤を散布 した区は初期収穫する効果が確認された。 (表 1、 表 2 )
微生物製剤処理間 ·処理間収量調査
表 1
杌理港号 IK曇(俪/1 0悚)
1 . 無 理 1433.2 1367. 1 1484.7 1428. 33 c
2 . 標'進施 HR机理 1462.6 1506. 7 1428.5 U65. 93 c
3 . 微牛物製 1 1705.2 1742. 0 1675.8 1707.67 A
微生物製剤処理間 ·処理間重量調査
生育調査は公試植物の草長 (c m) 、 厚さ、 株当たり花房数、 株当たりの結 実を調査した。 公試植物の草長調査の結果、 微生物製剤処理区の草長成長が定 植初期生育段階から良好で、 生育中期と後期にも成長が一番良く現れていた。 公試植物の株当たり花房数調査の結果、 生育初期から生育後期まで微生物製 剤処理区が一番良く現れていた。
公試植物の株当たり結実調査の結果、 生育初期には無処理区と微生物製剤処 理区で結実数が多かったが、 生育後期には微生物製剤処理区での収穫量が一番 良く現れていた。 また、 4次収穫後に結実数を確認した結果、 微生物製剤処理 区で一番多いことを確認できた。
結果を表 3, 4に示す。
微生物製剤処理間トマトの草長さ (c m) 調査 ( 1 0株当たり平均値)
公試作物栽培中に現れた病害として、 標準施肥処理区においてぺッコプソグ ン病が発生し、 プツマルン病は、 無処理区に発生したが、 微生物製剤区には両 者の病害は発生しなかった。
試験結果の要約
ァ) 収穫量に対する d u n e a n多重検査で微生物製剤処理区と処理しない区 で有義性があった。
ィ) 収穫量は、 微生物製剤処理区 >標準施肥処理区 >無処理区に現れた。
ゥ) 公試作物の草長を測定結果は、 微生物製剤処理区 >標準施肥処理区 >無処 理区に現れた。
ェ) 株当たりの花房数は、 微生物製剤処理区 >標準施肥処理区 >無処理区に現 れた。
ォ) 微生物製剤処理区が処理しない区より収量と品質面で良いことが現れた。
実施例 3
実施例 1で得られた複合培養体製剤、 前培養体製剤及び第二の微生物製剤を とうがらしに用い、 その生育及び収量に及ぼす影響を究明した。 品種は多福乾 を用いた。 無処理区、 標準施肥 (施肥ほ農家慣行) 、 本発明に係る微生物製剤 の散布区 (第二の微生物製剤を 3 0 O k gZ l 0 aとさらに複合培養体製剤と 前培養体製剤 1対 1の割合で混合し、 1 0 0 0倍希釈して、 1 0 0 0リットル / 1 0 aの割合で散布した。 ) を設けて試験した。 散布内容は、 以下の表 5に 示す通りである。 結果を表 6に示す。 .
微生物製剤のとうがらしの生育及び収量に及ぼす影響 処理区 草長(cm) 個体当果実数 収量 (kg/10a) 指数%
A 46.5 8.0 334.8 61.7
B 56.6 13. 1 548.2 100.0
C 67.4 22.7 950.0 173.3
Duncan多重検定 (5%標準)
試験結果の要約
ァ) 草長も個体当果実数も収量も指数も微生物製剤区 >標準施肥及び農薬散 布区 >無処理区の順であった。
ィ) 微生物製剤区は、 多収穫の原因は、 収穫しながら新たな花が咲き、 また 収穫するという現象が起ったからである。
産業上の利用可能性
上記したことから明らかなように、 本発明の製造方法で得られた安全な微生 物製剤により化学肥料や農薬に変わる安全な新農業技術で、 土壌、 河川、 空気 の環境を清浄化し、 有機質資材の有効利用し、 農産物の生産性向上や品質向上 や労働時間の削減ができる。