明糸田書
被記録材 技術分野
本発明は被記録材に関し、 より詳しくは、 インクジェット記録方式において特 に好適に用いることが可能な被記録材に関する。 背景技術
近年、 企業のみならず一般家庭にもパーソナルコンビュ一夕が普及し、 それに 伴って情報をプリンターで印刷することが増えてきた。 特に、 最近はパーソナル コンピュータ一の性能が向上しており、 大量の情報からなる画像情報も簡単に取 り扱うことが可能になり、 画像をフルカラ一で印刷することも増えてきた。 プリン夕一による印刷記録の方式としては、 インクジェッ ト記録方式、 溶融熱 転写記録方式、 昇華転写記録方式、 直接感熱記録方式などが挙げられるが、 いず れの方式においても被記録材には、 印字濃度が高く発色性に優れていること、 印 字の際に滲まないこと、 印字したものが水で流れ出したり滲まないことなどの特 性が要求される。
なかでも、 ィンクの微小液滴を紙などの被記録材に付着させて記録を行うイン クジエツト記録方式においては、 被記録材にインクが付着したときに滲まないこ と、 インク付着後に被記録材が水で濡れた場合に流れ出しゃ滲みが起こらないこ とが重要である。
上記の種々の特性を満足させるために、 様々な化合物を被記録材に含有させる ことが試みられている。 例えば、 ポリエチレンィミン、 特開昭 5 6 - 8 4 9 9 2 号公報に開示されたポリビニルピリジンの 4級化物、 特閧昭 6 0— 4 9 9 9 0号 公報に開示されたポリアルキレンポリアミンジシアンジアミ ド縮合物、 特開平 6 - 9 2 0 1 2号に開示された 2級ァミンとェピハロヒドリンの反応物等を被記録
材に含有させることが検討されている。 発明の開示
しかしながら、 各種印刷記録方式において要求される上記特性を全て満足する 被記録材は現在のところ知られていない。 特に、 インクジェッ ト記録方式におい ては、 水溶性または水分散性の染料を含有したインクが一般的に用いられるため に、 上記の化合物を含有させた被記録材を印字用に用いても、 インク付着時の滲 みの問題、 およびィンク付着後の被記録材の水に対する流れ出しや滲みの問題を 解決するのは困難である。
本発明は、 このような技術的課題に鑑みてなされたものであり、 印字の際にィ ンクが滲むことがなく、 印字後においてもインクが水で流れ出したり滲んだりせ ず、 インクジェット記録方式において特に好適に用いることが可能な、 被記録材 を提供することを目的とする。
本発明者らは、 上記の課題について鋭意研究を重ねた結果、 基材にポリグァニ ジン塩を含有させることにより、 印字の際にインクが滲むことがなく、 印字後に おいてもインクが水で流れ出したり滲んだりしない被記録材が得られることを見 出した。 また、 基材にポリグァニジン塩を含有させた被記録材は、 水溶性または 水分散性の染料等を含有したィンクジエツト記録用ィンクを用いて印字した場合 に、 インク付着時の滲み、 およびインク付着後の水に対する流れ出しや滲みを特 に効果的に防止することが可能であることを見出し、 本発明を完成させた。 すなわち、 本発明は、 基材と、 該基材に含有されている下記一般式 ( 1 ) で表 されるポリグァニジン塩とを含む被記録材を提供するものである。
(式中、 R 1および R 2は同一でも異なっていてもよく、 それそれ、 2価の脂肪
族炭化水素基、 2価の芳香族炭化水素基、 および 2価の脂環式炭化水素基からな る群より選ばれる基を示し、 HXは鉱酸および有機酸からなる群より選ばれる酸 を示し、 pは 1〜250の整数を示す)
本発明においては、 前記ポリグァニジン塩が、 下記一般式 (2) で表されるポ リグァニジン塩であることが好ましい。
(式中、 HXは鉱酸および有機酸からなる群より選ばれる酸を示し、 nは 3〜5 00の整数、 mは 2〜6の整数を示す)
また、 本発明は、 前記基材が、 紙材、 繊維材および樹脂フィルムからなる群よ り選ばれる少なくとも一つの基材である被記録材を提供するものである。
本発明の被記録材においては、 前記基材の表面近傍に、 前記ポリグァニジン塩 を lm2あたり 0. 01〜10g含有することが好ましく、 前記被記録材が、 前 記ポリグァニジン塩を前記被記録材全重量の 0. 01〜10重量%含有すること が好ましい。
さらに、 本発明は、 インクジェッ ト記録用被記録材として好適に用いられる被 記録材を提供するものである。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明の好適な実施形態についてさらに詳細に説明する。
本発明の被記録材は、 基材と、 該基材に含有されている下記一般式 (1) で表 されるポリグァニジン塩とを含むことを特徴とする。
(1)
(式中、 R
1および R
2は同一でも異なっていてもよく、 それぞれ、 2価の脂肪 族炭化水素基、 2価の芳香族炭化水素基、 および 2価の脂環式炭化水素基からな る群より選ばれる基を示し、 HXは鉱酸および有機酸からなる群より選ばれる酸 を示し、 pは 1〜25 0の整数を示す)
ここで、 ポリグァニジン塩とは一般式 (3) で表されるポリグァニジンと酸 H Xとの塩を意味する。
(3)
(式中、 R】および R
2は同一でも異なっていてもよく、 それそれ、 2価の脂肪 族炭化水素基、 2価の芳香族炭化水素基、 および 2価の脂璟式炭化水素基からな る群より選ばれる基を示し、 pは 1〜2 50の整数を示す)
一般式 ( 1) における HXはグァニジンと塩を形成する酸であれば特に制限は なく、 種々の公知の鉱酸または有機酸が好ましく使用できる。 鉱酸として用いら れるものとしては、 塩酸、 硫酸、 硝酸、 リン酸、 炭酸などが挙げられる。 有機酸 として用いられるものとしては、 酢酸、 乳酸、 グルコン酸などに代表される一塩 基酸;マレイン酸、 フマル酸、 酒石酸などに代表される多塩基酸が挙げられる。 特に、 本発明においては、 リン酸、 塩酸、 乳酸の使用が好ましい。
一般式 ( 1 ) で表されるポリグァニジン塩は、 例えば、 ジァミンとジイソチォ シァネートの反応によりポリチォ尿素を得た後に、 該ポリチォ尿素のチォ尿素基 における二 S基を、 適当な官能基変換により =NH基に変換することにより一般 式 (3) で表されるポリグァニジンを得て、 該ポリグァニジンを酸 HXで中和す ることにより得ることができる。 このように、 一般式 ( 1) で表されるポリグァ 二ジン塩は重付加反応で得られることから、 一般式 ( 1) で表されるポリグァニ ジン塩の分子末端は、 ジァミン由来のアミノ基 (一 NH2)、 ジイソチオシァネ —ト由来のイソチオシァネート基 (一 NC S)、 またはこれらの官能基が、 上記
官能基置換反応および/または中和反応により変性されたものとなっている。 一般式 ( 1 ) における pは 1〜250の整数を示すが、 pは 3〜250である ことが好ましい。 pが 250を超す場合は分子量が大きくなりすぎてポリグァニ ジン塩の取り扱いが困難になる。 また、 R1および R2としては、 2価の脂肪族 炭化水素基を用いることが好ましく、 炭素数が 1〜 12である 2価の脂肪族炭化 水素基を用いることがより好ましい。 なお、 R1および R2は、 同一でも異なつ ていてもよい。 また、 本発明において用いられるポリグァニジン塩は単独で、 も しくは 2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明においては、 一般式 ( 1) におけるポリグァニジン塩は、 下記一般式 ( 2 ) で表されるポリグァニジン塩であることが好ましい。
(式中、 HXは鉱酸および有機酸からなる群より選ばれる酸を示し、 nは 3〜5 00の整数、 mは 2〜 6の整数を示す)
一般式 (2) は、 一般式 ( 1 ) における R1および R2がともに— (CH2) m 一である場合を表しており、 例えば、 H2N_ (CH2) m— NH2なる構造を有 するジァミンと、 S CN_ (CH2) m— NC Sなる構造を有するジイソチオシ ァネートとを反応させて得られたポリチォ尿素の二 S基を =NH基に変換した後 に、 酸 HXで中和することにより得ることができる。 なお、 一般式 (2) で表さ れるポリグァニジン塩はアルキレン骨格を有するために、 ポリアルキレングァニ ジン塩と呼ぶことも可能である。 また、 一般式 (2) における HXとしては上記 と同様の酸を用いることができる。
一般式 (2) における nは 3〜500であることが好ましいが、 nは 6〜50 0であることがより好ましい。 nが 3未満の場合は、 インクの滲みや水に対する 流れ出しの低減の程度が不十分となる傾向にある。 また、 nが 500より大きい
場合は、 分子量が大きくなりすぎてポリグァニジン塩の取り扱いが難しくなる傾 向にある。
本発明においては、 上記のポリグァニジン塩を基材に含有させる。 この基材と しては、 紙材、 繊維材または樹脂フィルムを用いることができる。
ここで、 紙材としては、 パルプからなる紙、 パルプにポリエステル、 ナイロン
、 アクリルなどの合成繊維が配合された紙、 およびポリエステル、 ポリプロピレ ン、 ポリスチレン、 ポリ塩化ビニルなどのベースフィルムの上に微細孔を多数有 したポリマ一を積層した構造の合成紙などが挙げられる。 上記の紙材は、 インク ジエツト記録用被記録材として好適に用いられる。
繊維材としては、 合成繊維、 天然繊維、 半合成繊維、 天然繊維と合成繊維の複 合繊維などからなる織物、 編物および不織布などが挙げられる。 また、 熱可塑性 樹脂などからなる不織布が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、 ポリエステルフィルム、 ポリ塩化ビニルフィルム、 ポ リオレフインフィルムなどが挙げられる。 これらのフィルムには必要に応じて表 面処理を加えることができる。
本発明の被記録材を製造する方法は特に制限はなく、 通常公知の製造方法が好 ましく使用可能である。
被記録材が、 パルプからなる紙、 またはパルプに合成繊維が配合された紙であ る場合の製造法としては、 例えば、 パルプ繊維、 またはパルプ繊維と合成繊維配 合物の抄紙工程に、 一般式 ( 1 ) で表されるポリグァニジン塩またはその溶液を 添加する方法、 またはこれらの紙材の抄紙後に、 一般式 ( 1 ) で表されるポリグ ァニジン塩の溶液をコーティング、 またはスプレーする方法が挙げられる。
被記録材が、 合成紙、 繊維材および樹脂フィルムである場合の製造法としては 、 例えば、 一般式 ( 1 ) で表されるポリグァニジン塩の溶液をコ一ティングする 方法、 パッディング処理する方法、 スプレ一処理する方法などが挙げられる。 また、 被記録材におけるポリグァニジン塩の含有量についても特に制限はなく
、 使用の目的に応じて適宜選択することは容易である。 冽えば、 被記録材の表面 積 ¾たりに対して使川されうる 1¾としては、 l m 2あたり 0 . 0 1〜 1 0 gであ ることが好ましい。 この場合において、 ポリグァニジン塩は、 被記録材の表面近 傍に含有させることが好ましい。 ここで表面近傍とは被記録材の最表面を含む領 域を意味する。 1 m 2あたりのポリグァニジン塩の含有量が 0 . 0 1 g未満の場 合は、 水に対する流れ出しゃィンクの滲みの低減の程度が十分でなくなる傾向に あり、 1 0 gを超える場合は、 被記録材の風合いが、 ポリグァニジン塩を含有し ないときに比べて変化する傾向にある。
また、 被記録材の重量当たりに対して使用されうるポリグァニジン塩の量とし ては、 被記録材全重量の 0 . 0 1〜 1 0重量%であることが好ましい。 この場合 において、 ポリグァニジン塩は、 被記録材全体に一様に分布させるようにしても よいが、 基材の部位により被記録材の濃度に濃淡がつくようにしてもよい。 ポリ グァニジン塩の含有量が、 被記録材全重量の 0 . 0 1重量%未満の場合は、 水に 対する流れ出しやインクの滲みの低減の程度が十分でなくなる傾向にあり、 1 0 重量%を超える場合は、 被記録材の風合いが、 ポリアルキレングァニジン塩を含 有しないときに比べて変化する傾向にある。
本発明の被記録材には、 必要に応じてさらに他の成分を含有させてもよい。 例 えば、 従来より通常使用されているバインダーや無機顔料または有機顔料を含有 させてもよい。 バインダーとしては、 酸化デンプン、 ポリビニルアルコール等が 挙げられ、 無機顔料としては、 軟質炭酸カルシウム、 重質炭酸カルシウム、 カオ リン (白土)、 タルク、 硫酸カルシウム、 硫酸バリウム、 酸化チタン、 酸化亜鉛 、 硫酸亜鉛、 炭酸亜鉛、 珪酸アルミニウム、 ケイソゥ土、 诖酸カルシウム、 合成 シリカ、 水酸化アルミニウム、 アルミナ等が挙げられ、 有機顔料としては、 スチ レン系プラスチックピグメント、 アクリル系プラスチックピグメント、 マイクロ カプセル化顔料、 炭素樹脂顔料等が挙げられる。
以上説明したように、 本発明の被記録材は、 上記一般式 ( 1 ) で表されるポリ
グァニジン塩を含むために、 各種印刷方式による印刷時のインクの滲み、 および 印刷後の水に対する流れ出しゃ滲みが防止される。 流れ出しや滲み防止の機構に 関しては、 現在のところ必ずしも明らかではないが、 脂肪族炭化水素基、 芳香族 炭化水素基、 脂環式炭化水素基などの疎水性骨格とグァニジン骨格が交互に存在 するポリグァニジン塩が、 各種印刷方式において用いられるインク、 またはイン クが含有する染料や顔料に対して強い相互作用を及ぼしているためと考えられる ィンクジエツ ト記録方式において用いられているィンクとしては、 酸性染料、 塩基性染料、 直接染料などの水溶性染料を水、 アルコール、 グリコール等の溶媒 に溶解したものが多用されており、 油溶性の染料や顔料などを用いたインクジェ ッ ト記録方式用インクも知られている。 本発明の被記録材に含まれるポリグァニ ジン塩は、 これらの染料等との結合力に優れるため印字された箇所にィンクを止 めておく能力が高いと考えられ、 本発明の被記録材はインクジエツ ト記録方式に おいて特に好適に用いることができる。
(実施例)
以下、 実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、 本発明はこれらの実施例に 限定されるものではない。
(試験法および評価法)
被記録材にインクジヱッ ト記録用インクを付着させた後の、 水によるインクの 流れ出し及び滲み評価試験 (以下、 耐水性試験と記す) の方法、 および、 インク ジェット記録用インクを被記録材に付着させた時の滲み性試験 (以下、 インク滲 み性試験と記す) の方法は以下のとおりである。
耐水性試験:ェプソン製ィンクジェッ トプリン夕一 (MJ- 700V2C )で黒色(BLACK ) 、 シアン(CYAN )、 マゼン夕(MAGENTA 黄色(YELLOW)の各単色をべ夕印刷した被 記録材を 1時間放置した後、 流水に 5分間浸漬し、 印字部分の変化を目視で評価 した。 なお、 黒色インクとしては品番 M J I C 2を用い、 シアン、 マゼン夕およ
び黄色のインクは当該 3色がセッ 卜になった品番 M J I C 2 Cを用いた。
〇:印字部分が水で流されたり、 滲んだりしない。
Δ:印字部分がやや滲む。
X :印字部分が、 明らかに水で流され滲む。
インク滲み性試験:ェプソン製インクジェッ 卜プリン夕一(MJ- 700V2C)で黒色 単色をドッ ト印字した被記録材について、 ルーペ (倍率 5 0倍) でドッ ト部分を 目視観察した。
〇:滲み無し。
Δ:やや滲み有り。
X :滲み有り。
また、 ポリマ一の重量平均分子量は、 柬ソー (株) 製のゲル .パーミエ一ショ ン - クロマトグラフィー (GP C) (品番 ·· HL C— 8 1 2 0 GP C) を用い、 ポリオキシエチレングリコ一ル換算による重量平均分子量を測定した。 G P C溶 媒は酢酸緩衝液 (pH4. 7) を用いた。
(合成例 1 ) ポリへキサメチレングァニジンリン酸塩の合成
反応容器に 1 , 6—へキサメチレンジイソチオシァネ一ト 20. 0 g 1, 6 —へキサメチレンジァミン 1 1. 6 g:及びN, N—ジメチルホルムアミ ド 1 30 gを仕込み、 40〜60°Cで 3時間反応させて NCS基の消失を確認した後、 更 に炭酸カリウム 14. 0 gを加えて 80°Cに昇温し、 その後ジメチル硫酸 13. 0 gを滴下して、 同温度で 2時間反応させた。 反応終了後、 降温し、 水中に反応 物を投入して、 得られた沈殿物を濾取し風乾した。
得られた固形物を N, N—ジメチルホルムアミ ドに溶解し、 30〜40°Cでァ ンモニァガスを導入し置換反応を行い、 ポリへキサメチレングァニジンを得た。 その後、 これにリン酸 9. 8 gを加えてポリへキサメチレングァニジンリン塩を 析出させ、 さらにこの析出物を少量の水に溶解し、 メタノールに加えて再沈させ 、 濾取し乾燥した。 この時得られたポリへキサメチレングァニジンリン酸塩の重
量平均分子量は 1440であった。
(合成例 2 ) ポリへキサメチレングァニジン塩酸塩の合成
反応容器に 1 , 6—へキサメチレンジイソチオシァネート 20. 0 g:、 1 , 6 —へキサメチレンジァミン 1 1. 6 g及び N, N—ジメチルホルムアミ ド 1 3 0 gを仕込み、 40〜60°Cで 4時間反応させて NCS基の消失を確認した後、 更 に炭酸カリウム 14. 0 gを加えて 80°Cに昇温し、 その後ジメチル硫酸 1 3. 0 gを滴下して、 同温度で 2時間反応させた。 反応終了後、 降温し、 水中に反応 物を投入して、 得られた沈殿物を濾取し風乾した。
得られた固形物を N, N—ジメチルホルムアミ ドに溶解し、 30〜40°Cでァ ンモニァガスを導入し置換反応を行い、 ポリへキサメチレングァニジンを得た。 その後、 これに塩酸 5. 5 gを加えてポリへキサメチレングァニジン塩酸塩を析 出させ、 さらにこの析出物を少量の水に溶解し、 メタノールに加えて再沈させ、 濾取し乾燥した。 この時得られたポリへキサメチレングァニジン塩酸塩の重量平 均分子量は 1 240であった。
(合成例 3) ポリへキサメチレングァニジン乳酸塩の合成
合成例 1と同様に反応してポリへキサメチレングァニジンを得た。 その後、 こ れに乳酸 1 3. 5 gを加えてポリへキサメチレングァニジン乳酸塩を析出させ、 さらにこの析出物を少量の水に溶解し、 メタノールに加えて再沈させ、 濾取し乾 燥した。 この時得られたポリへキサメチレングァニジン乳酸塩の重量平均分子量 は 1 380であった。
(合成例 4 ) ポリエチレングァニジンリン酸塩の合成
反応容器にエチレンジイソチオシァネート 28. 8 :、 エチレンジァミン 1 2 . 0 g及び N, N—ジメチルホルムアミ ド 130 gを仕込み、 40〜60°Cで 4 時間反応させて NCS基の消失を確認した後、 更に炭酸カリウム 28. 0 gを加 えて 80°Cに昇温し、 その後ジメチル硫酸 2 6. 0 gを滴下して、 同温度で 2時 間反応させた。 反応終了後、 降温し、 水中に反応物を投入して、 得られた沈殿物
を濾取し風乾した。
得られた固形物を N, N—ジメチルホルムアミ ドに溶解し、 30〜40°Cでァ ンモニァガスを導入し匿換反応を行い、 ポリエチレングァニジンを得た。 その後 、 これにリン酸 1 9. 6 gを加えてポリエチレングァニジンリン酸塩を析出させ 、 さらにこの析出物を少量の水に溶解し、 メタノールに加えて再沈させ、 濾取し 乾燥した。 この時得られたポリエチレングァニジンリン酸塩の重量平均分子量は 1 840であった。
(実施例 1 )
合成例 1で得られたポリへキサメチレングァニジンリン酸塩 (重量平均分子量 1440) の 2重量%水溶液をバーコ一夕一を用いて上質紙に塗工した後、 1 0 5 °Cで 3分間乾燥して被記録材を作成した。 このときのポリへキサメチレングァ 二ジンリン酸塩の塗工量は、 0. 5 gZm2であった。 得られた被記録材を用い て、 上記の耐水性試験およびィンク滲み性試験を行った。
(実施例 2)
実施例 1のポリへキサメチレングァニジンリン酸塩 (重量平均分子量 1440
) を、 合成例 2で得られたポリへキサメチレングァニジン塩酸塩 (重量平均分子 量 1 240) に代えた以外は実施例 1と同様にして被記録材を作成し、 上記の耐 水性試験およびインク滲み性試験を行った。 なお、 ポリへキサメチレングァニジ ン塩酸塩の塗工量は、 0. 5 g/m2であった。
(実施例 3)
実施例 1のポリへキサメチレングァニジンリン酸塩 (重量平均分子量 1440 ) を、 合成例 3で得られたポリへキサメチレングァニジン乳酸塩 (重量平均分子 量 1 380 ) に代えた以外は実施例 1と同様にして被記録材を作成し、 上記の耐 水性試験およびインク滲み性試験を行った。 なお、 ポリへキサメチレングァニジ ン乳酸塩の塗工量は、 0. 5 g/m2であった。
(実施例 4)
実施例 1のポリへキサメチレングァニジンリン酸塩 (重量平均分子 E 1440 ) を、 合成例 4で得られたポリエチレングァニジンリン酸塩 (Sift平均分子量 1 840) に代えた以外は実施例 1と同様にして被記録材を作成し、 上記の耐水性 試験およびィンク滲み性試験を行った。 なお、 ポリエチレングァニジンリン酸塩 の塗工量は、 0. 5 g/m2であった。
(比較例 1 )
実施例 1のポリへキサメチレングァニジンリン酸塩を、 ポリエチレンィミン ( 重量平均分子量 1200) に代えた以外は実施例 1と同様にして被記録材を作成 し、 上記の耐水性試験およびインク滲み性試験を行った。 なお、 ポリエチレンィ ミンの塗工量は、 0. 5 g/m2であった。
実施例 1〜 4および比較例 1で得られた被記録材の、 耐水性試験およびィ 滲み性試験の結果を表 1にまとめて示す。
(表 1)
(実施例 5)
合成例 1で得られたポリへキサメチレングァニジンリン酸塩 (重量平均分子量 1440) の 1重量%水溶液の処理液で、 ポリエステルポンジ布をパディング処 理 (ピックアップ二 80%) した後、 105°Cで 3分間乾燥して被記録材を作成 した。 このときの、 ポリへキサメチレングァニジンリン酸塩の含有量は被記録材
全重量の 0 . 8 Ιβ量%であった。 得られた被記録材を用いて、 上記の耐水性試験 およびィンク滲み性試験を行った。
(実施例 6 )
実施例 5のポリへキサメチレングァニジンリン酸塩 (重量平均分子量 1 4 4 0 ) を、 合成例 2で得られたポリへキサメチレングァニジン塩酸塩 (重量平均分子 量 1 2 4 0 ) に代えた以外は実施例 5と同様にして被記録材を作成し、 上記の耐 水性試験およびインク滲み性試験を行つた。 なお、 ポリへキサメチレングァニジ ン塩酸塩の含有量は被記録材全重量の 0 . 8重量%であった。
(実施例 7 )
実施例 5のポリへキサメチレングァニジンリン酸塩 (重量平均分子量 1 4 4 0
) を、 合成例 3で得られたポリへキサメチレングァニジン乳酸塩 (重量平均分子 量 1 3 8 0 ) に代えた以外は実施例 5と同様にして被記録材を作成し、 上記の耐 水性試験およびインク滲み性試験を行った。 なお、 ポリへキサメチレングァニジ ン乳酸塩の含有量は被記録材全重量の 0 . 8重量%であった。
(実施例 8 )
実施例 5のポリへキサメチレングァニジンリン酸塩 (重量平均分子量 1 4 4 0 ) を、 合成例 4で得られたポリエチレングァニジンリン酸塩 (重量平均分子量 1 8 4 0 ) に代えた以外は実施例 5と同様にして被記録材を作成し、 上記の耐水性 試験およびインク滲み性試験を行った。 なお、 ポリエチレングァニジンリン酸塩 の含有量は被記録材全重量の 0 . 8重量%であった。
(比較例 2 )
実施例 5のポリへキサメチレングァニジンリン酸塩 (重量平均分子量 1 4 4 0 ) を、 ポリエチレンィミン (重量平均分子量 1 2 0 0 ) に代えた以外は実施例 5 と同様にして被記録材を作成し、 上記の耐水性試験およびィンク滲み性試験を行 つた。 なお、 ポリエチレンィミンの含有量は被記録材全重量の 0 . 8重量%であ つた ο
実施例 5〜 8および比較例 2で得られた被記録材の、 耐水性試験およびィ 滲み性試験の結果を表 2にまとめて示す。
(表 2)
(実施例 9 )
合成例 1で得られたポリへキサメチレングァニジンリン酸塩 (重量平均分子量 1440)の 2重量%水溶液とフィルム用アンカー剤のネオステッカー 700(日 華化学 (株) 製) 2重量%との混合液を、 バーコ一夕一を用いてポリエステルフ イルムに塗工した後、 105°Cで 3分間乾燥して被記録材を作成した。 このとき のポリへキサメチレングァニジンリン酸塩の塗工量は、 0. 5 g/m2であった。 得られた被記録材を用いて、上記の耐水性試験およびィンク滲み性試験を行った。 (実施例 1 0)
実施例 9のポリへキサメチレングァニジンリン酸塩 (重量平均分子量 1 44 0) を、 合成例 2で得られたポリへキサメチレングァニジン塩酸塩 (重量平均分 子量 1240 ) に代えた以外は実施例 9と同様にして被記録材を作成し、 上記の 耐水性試験およびインク滲み性試験を行った。 なお、 ポリへキサメチレングァニ ジン塩酸塩の塗工量は、 0. 5 gZm2であった。
(実施例 1 1 )
実施例 9のポリへキサメチレングァニジンリン酸塩 (重量平均分子量 1 44
0) を、 合成例 3で得られたポリへキサメチレングァニジン乳酸塩 (重量平均分 子量 1380 ) に代えた以外は実施例 9と同様にして被記録材を作成し、 上記の 耐水性試験およびインク滲み性試験を行った。 なお、 ポリへキサメチレングァニ ジン乳酸塩の塗工量は、 0. 5 g/m2であった。
(実施例 12 )
実施例 9のポリへキサメチレングァニジンリン酸塩 (重量平均分子量 144 0) を、 合成例 4で得られたポリエチレングァニジンリン酸塩 (重量平均分子量 1840) に代えた以外は実施例 9と同様にして被記録材を作成し、 上記の耐水 性試験およびインク滲み性試験を行った。 なお、 ポリエチレングァニジンリン酸 塩の塗工量は、 0. 5 g/m2であった。
(比較例 3)
実施例 9のポリへキサメチレングァニジンリン酸塩 (重量平均分子量 144 0) を、 ポリエチレンィミン (重量平均分子量 1200) に代えた以外は実施例 9と同様にして被記録材を作成し、 上記の耐水性試験およびィンク滲み性試験を 行った。 なお、 ポリエチレンィミンの塗工量は、 0. S gZm2であった。
実施例 9〜 12および比較例 3で得られた被記録材の、 耐水性試験およびィン ク滲み性試験の結果を表 3にまとめて示す。
(表 3)
耐水性試験 インク滲み
里 a シアン マゼンダ 性試験
黄色
実施例 9 〇 〇 〇 〇 〇
実施例 10 〇 〇 〇 〇 〇
実施例 1 1 〇 〇 〇 〇 〇
実施例 12 〇 〇 〇 〇 〇
比較例 3 Δ X △ X X
実施例 1〜 1 2で得られた被記録材と比較例 1〜3で得られた被記録材の耐水 性試験およびィンク滲み性試験の結果から明らかなように、 比較例の被記録材は 基材が、 紙材、 繊維材、 樹脂フィルムのいずれも場合においても、 インクの耐水 性が劣っており (シアンおよび黄色の耐水性が特に劣る)、 インクの滲みも観察 されたのに対して、 本発明の被記録材は、 基材が、 紙材、 繊維材、 樹脂フィルム のいずれも場合においても、 黒色、 シアン、 マゼン夕、 黄色の各色のインクに対 して耐水性に優れ、 インクの滲みも観察されなかった。 産業上の利用可能性
以上説明したように、 本発明によれば、 印字の際にインクが滲むことがなく、 印字後においてもインクが水で流れ出したり滲んだりせず、 インクジェッ ト記録 方式において特に好適に用いることが可能な、 被記録材を提供することが可能と なる。