明 細 書 光学活性アルコールの製造方法 技術分野
本発明は、 穀類及び豆類等の植物資源から抽出した水溶性蛋白成 分を固定化したものを触媒と して基質から光学活性アルコールを製 造する方法に関する。 背景技術
光学活性アルコールは医薬品や農薬等の原料又は中間原料、 強誘 電性液晶等のフ ァイ ンケミ カル分野における合成中間体と して極め て重要な物質である。
このよ うな光学活性アルコール等の光学活性物質を生合成するた めに、 従来から 1 )微生物菌体及び微生物菌体由来酵素、 2 ) 動物組 織由来酵素、 3 ) 植物培養細胞を基質と反応させて光学活性アルコ —ルを製造する方法が知られている。
前記 1 ) の微生物菌体を用いる方法は培養した菌体を基質と反応 させて光学活性アルコールを得る手法であり、 例えば特許第 2 7 8 4 5 7 8号公報 (光学活性 1, 2 —ジオール類の製造方法) が公知 でめ 。
また、 2 ) の微生物菌体由来酵素を用いる方法は遺伝子を導入し て培養した菌体の粉砕液を基質と反応させて光学活性アルコールを 得る手法であり、 例えば特開平 1 0 — 2 1 0 9 8 1号公報 (ハ口 ヒ ドリ ンよ り光学活性ジオールへの変換を触媒する新規なタンパク質 ) が公知である。
また、 3 ) の動物組織由来酵素を用いる方法は動物組織より分離
した蛋白を基質と反応させて光学活性アルコールを得る手法であり 、 例えば特許第 2 7 5 6 7 9 0号公報が公知である。
また、 4 ) の植物培養細胞を用いる反応は植物細胞を基質と反応 させて光学活性アルコールを得る手法であり、 例えば文献 Chem. Ph a rm. Bu l l . , 43, p p. 1 458 - 1461に報告されている。
1 ) 「微生物菌体」 を用いる方法は、 特許第 2 7 8 4 5 7 8号公 報 (光学活性 1, 2 —ジオール類の製造方法) 、 特許第 2 7 7 4 3 4 1 号公報 (光学活性 2 —ヒ ドロキシ酸誘導体の製造法) で公知の ように、 微生物菌体は培養条件を適切に設定することにより培養溶 液中で増殖し、 この培養液を遠心分離又は濾過により処理して菌体 を集め、 菌体を 0. 1 Mリ ン酸緩衝液 (pH6. 5 ) 又は蒸留水等に懸濁し た液中にて基質のケ ト ン体を不斉還元させて光学活性アルコールを 合成するものであるが、 菌体含有酵素の種類が多様であることが原 因で、 基質変換反応以外の副反応が同時に起こるため、 目的とする 光学活性アルコールの収率が低く、 又、 反応生成物を含む溶媒中か ら単離 · 精製作業を行っても、 得られる光学活性アルコールの純度 が低い為、 フ ァイ ンケ ミ カル分野での合成中間体と して利用 しにく い点がある。 2 ) 「微生物菌体由来酵素」 を用いる方法は特開平 1 0 - 2 1 0 9 8 1号公報 (ハロ ヒ ドリ ンより光学活性ジオールへの 変換を触媒する新規なタ ンパク質) に開示されているように遺伝子 組替えの方法でクロー ン化された遺伝子を菌体内に多数存在する形 質転換微生物を用いて光学活性ェピハ口 ヒ ドリ ン及び光学活性ジォ ールを製造する方法であるが、 これも微生物菌体を用いる方法と反 応工程自体に大きな違いはないために基質反応の際に生じる副反応 は制御できず、 「微生物菌体」 を用いる方法と同様の問題点を有し ている。 更に、 遺伝子導入菌株は自然界では異品種であり、 ヒ トを はじめとする生態系へ悪影響を与える危険性があるため、 外部環境
から隔離する設備や反応残査等の焼却処理等の経費負担が必要であ る。 また、 3 ) 「動物組織由来酵素」 は、 特許第 2 7 5 6 7 9 0号 公報 (光学活性なシクロペンテノ ール誘導体の製造方法) で公知の とおり、 豚の膝臓リパーゼの不斉加水分解反応を用いた光学活性シ クロペンテノ ール誘導体の製造方法があるが、 佐竹一夫薯 「生物学 のための有機化学 3 タ ンパク質」 第 1 1 4 — 1 7 2頁 (朝倉書店 発行) に記載されているよう に動物組織由来酵素は粗酵素である為 、 前述 1 ) 、 2 ) と同様に副反応が生じて収率の低下を生ずること は否めない。 また、 4 ) 「植物培養細胞」 を用いる方法は植物含有 酵素の種類が多様であることが原因で生ずる基質変換反応以外の副 反応を理由とする光学活性アルコールの収率の低さの問題である。 又、 植物細胞の培養は全行程における無菌操作の必要性のように育 種が難しく 、 更に 1 年から 2年間の継体培養を繰り返す期間や基質 と反応させる反応栄養培地液 (M S培地等) の作製が必要であり反 応操作の煩雑さが問題である。 発明の開示
本発明の目的は、 上述の問題点を解消するために世界各国で生産 されている購入安価な穀類や豆類から抽出した水溶性蛋白質を光学 分割触媒と して有機合成化学に応用する ものであり、 生態系に優し く、 反応コス トの大幅低減化を可能にし、 更には高光学純度の光学 活性アルコールを得る製造法を提供する点にある。
本発明において、 前記光学分割触媒を用いて、 高光学純度の光学 活性アルコールを得る製造法は、 概略、 次のような方法を包含する ものである。
( 1 ) 基質と してのラセ ミ体アルコールの一方の鏡像体を選択的 に酸化してケ ト ンと し、 他方の鏡像体を未反応のまま残留させ、 光
学活性アルコールと して分離する光学活性アルコールを製造する方 o
( 2 ) 基質と してのケ ト ン分子の不斉還元により光学活性アルコ ールを製造する方法。
( 3 ) 基質と してのラセミ体アルコールのァシル化体の不斉加水 分解により光学活性アルコールを製造する方法。
( 4 ) 有機溶媒中でラセ ミ体アルコールの一方の鏡像体を立体選 択的にァシル化し、 得られたそのァシル化された鏡像体を加水分解 して、 光学活性アルコールと して分離する光学活性アルコールを製 造する方法。
本発明者は上記問題点を解決し安全かつ平易な方法で高純度の光 学活性アルコールを得る方法について鋭意研究を行った結果、 穀類 又は豆類から水溶性蛋白質を抽出する第 1 の工程と、 前記蛋白質を 固定化する第 2の工程と、 前記固定化された蛋白質を触媒と して基 質の酵素変換反応を行う第 3の工程と、 該第 3の工程により変換し た前記反応基質及び反応生成物の混合物を有機溶媒により抽出する 第 4の工程と、 該第 4の工程の抽出物から光学活性アルコール又は 光学活性アルコールのァシル化体を単離 · 精製する第 5 の工程を組 み合わせ、 必要によりさ らに加水分解することにより、 フ ァイ ンケ ミ カル分野における合成中間体を合成する原料と して充分に利用可 能な高純度の R体又は S体の光学活性アルコールが安全かつ平易に 得られることを見出し本発明を完成するに至った。
本発明において用い得る穀類または豆類と しては、 薷麦、 アマラ ンサス、 米、 小麦、 大麦、 ト ウモロ コ シ、 ェンバク、 ライ麦、 粟、 ヒェ、 キビ、 ヽ ト麦、 モロコ シ等の穀類、 又は小豆、 イ ンゲン豆、 豌豆、 リ ヨ ク トウ、 大豆等の豆類が挙げられるが、 これらに限定す る ものではない。
本発明の第 1 の工程における水溶性蛋白質の抽出においては、 穀 類又は豆類を砕き粒の大きい部分と殻部を取り除き、 このようにし て得られた穀類及び豆類粉砕粉を約 2 0〜 6 0 °C、 好ま しく は約 4 0 °Cで、 p H約 6〜 8、 好ま しく は p H 7 . 0 において、 穀類また は豆類粉砕粉の約?〜 1 5重量倍の水で、 3 0分以上抽出する。 約 4 5分で抽出するのが最も効率的であって、 これ以上長く抽出して も抽出物の量は変わらない。 p Hの調整が必要なときは、 H 2 S O 4 、 H C 1 、 H 3 P O 4 などの食品級酸、 又は N a 0 Hなどの食品 級アル力 リを用いて上記適正範囲に合わせてもよい。 上記水溶性蛋 白質抽出液、 又はこの抽出液から、 デカ ンター、 遠心分離機などに より食物繊維部を分離した、 タ ンパクカー ドをそのまま第 2工程に 移すか、 必要に応じて噴霧乾燥、 凍結乾燥、 真空乾燥などにより粉 末と してから、 再溶解して第 2工程に移してもよい。
しかしながら、 多量の蛋白質の処理が必要なときには、 上記タ ン パクカー ドを H 2 S 0 4 、 H C 1 s H 3 P 0 4 などの食品級酸、 又 は N a 0 Hなどの食品級アル力 リを用いて等電点処理し、 次いでデ カ ンター、 遠心分離機などによりホエイを分離してタ ンパクカー ド を得る。 この等電点沈殿等は、 水溶性蛋白質の濃縮を目的と したも のであって、 処理後においても水溶性蛋白質抽出液をそのまま噴霧 乾燥などにより粉末化した場合と同様な効果を奏するものである。 等電点沈殿の P Hの選定は沈殿量の多い画分の選定が目的であって 、 大豆や豌豆蛋白質の場合には p H 4 . 5付近であり、 薷麦の場合 には約 p H 9 . 5付近である。 このカー ドに 5〜 1 0重量倍の水を 加え、 ミ キサー、 攪拌機などにより解砕して、 蛋白質スラ リ ーを調 製し、 中和 ( p H 6〜 8 ) し、 中和スラ リーとする。 このスラ リー を、 前記と同様に噴霧乾燥、 凍結乾燥、 真空乾燥などにより粉末と してから、 再溶解して第 2工程に移す。
但し、 噴霧乾燥を行う際の加熱条件については蛋白質、 すなわち 変換反応に関わる酵素の熱変性による失活を防ぐため、 該抽出蛋白 質自体が 8 0 °Cを越えない温度に設定しなくてはならない。
第 2の工程において、 該抽出蛋白質を固定化する方法は 1 ) 該抽 出蛋白質を水不溶性の担体、 例えば、 セルロース、 デキス ト ラ ン、 ァガロース等の多糖類の誘導体、 及びポ リ アク リルア ミ ドゲル等に 結合させる担体結合法、 2 ) 該抽出蛋白質を 2個も しく はそれ以上 の官能基を有する試薬を用いて該抽出蛋白質間に架橋結合を形成さ せて固定する架橋法、 3 ) 該抽出蛋白質を、 ゲル、 例えば、 アルギ ン酸塩、 デンプン、 コンニヤク、 ポリ アク リルア ミ ドゲル及びポリ ビニルアルコール等のゲルの細かい格子の中に取り入れる (格子型
) 力、、 半透膜性の皮膜によって被覆する (マイ ク ロカプセル型) 包 括法があり、 いずれの固定化法も本願発明において用いることがで きる。 しかしながら、 海草より抽出するアルギン酸の塩を用いた包 括固定化法が環境に優しく、 かつ、 固定化操作が平易な点で最も好 ま しい。
第 3 の工程において、 原料である基質から光学活性アルコール又 は光学活性アルコールのァ シル化体を得るための酵素変換方法は、
( 1 ) 基質と してのラセミ体アルコールの一方の鏡像体を選択的 に酸化してケ ト ンと し、 他方の鏡像体を未反応のままの光学活性ァ ルコールと して残留させる方法、
( 2 ) 基質と してのケ ト ン分子の不斉還元により光学活性アルコ —ルを得る方法、
( 3 ) 基質と してのラセ ミ体アルコールのァ シル化体の不斉加水 分解により光学活性アルコールを得る方法、
( 4 ) 有機溶媒中で基質と してのラセ ミ体アルコールの一方の鏡 像体をハロゲン化ァシル又は酢酸ビニルにより立体選択的ァシル化
する方法を包含する。
これらの反応では、
( 2 ) のケ ト ン分子を基質と して用いる不斉還元反応では、 酵素変 換の不斉還元反応は 1 0 0 %に至らず途中で止まってしまうので、 止まった時点あるいは止まる前に反応溶液を抽出処理しないと時間 の経過に伴い光学純度が低下するので、 穀類、 豆類の種類により反 応停止時間を決定する必要があるが、 変換率 2 0 %程度で反応を終 了させると、 その生成光学活性アルコールの立体配置と光学純度は 、 ( 1 ) の基質にラセミ アルコールを用いた場合と同様であり、
( 3 ) の基質と してラセ ミ アルコ一ルのァシル化体を用いる反応に おいては、 不斉加水分解反応は、 変換率 2 0 %程度を越えると光学 純度が低下するので、 穀類、 豆類の種類により反応停止時間を決定 する必要があり、 収率が低いが、 変換率 2 0 %程度で反応を終了さ せた場合、 その生成光学活性アルコールの立体配置と光学純度は、
( 1 ) の基質にラセミ アルコールを用いた場合と同様であり、 また
( 4 ) の有機溶媒中のラセミ体アルコールの不斉ァシル化を用いる 反応は、 不斉ァシル化反応により得られたァシル化体を、 さ らに加 水分解することにより、 光学活性アルコールを得るものであるが、 不斉ァシル化反応は変換率 2 0 %程度を越えると光学純度が低下す るので、 穀類、 豆類の種類により反応停止時間を決定する必要があ り、 変換率 2 0 %程度でァシル化反応を終了させたとき、 その後の 加水分解により得られた生成光学活性アルコールの立体配置と光学 純度は、 ( 1 ) の基質にラセミ アルコールを用いた場合と同様であ る。 本発明においては、 ( 1 ) のラセ ミ体アルコールを基質とする 一方の鏡像体を選択的に酸化して光学活性アルコールを得る方法が 収率などの点から最も好ま しい。 上記 ( 1 ) 〜 ( 4 ) の反応温度は
、 約 2 5〜 4 5 °C、 好ま しく は 3 0〜 4 0 °Cが適当であって、 約 3 5 °Cで行う ことが最も好ま しい。 また、 上記 ( 1 ) 〜 ( 3 ) の反応 においては、 極性溶媒と して水、 非極性溶媒と してアセ ト ン、 メ タ ノール、 エタノール等を用いることができる力 極性溶媒の水が最 も好ま しい。 ( 4 ) の反応においては、 ベンゼン、 トルエン、 ヘプ タ ン、 イ ソプロ ピルアルコール ( ドライ) などの有機溶媒を用い得 る力 <、 ベンゼンを用いることが好ま しい。 反応時間は、 基質、 水溶 性蛋白質の由来、 反応の種類により異なるが、 約 2〜 1 5 日位であ り、 前記のように ( 2 ) 〜 ( 4 ) の反応では、 変換率が 2 0 %程度 に達した時点で反応を終了させる。
また、 反応により得られる光学活性アルコールは、 基質の置換基 の影響により、 S体又は R体となる。
第 4の工程において抽出有機溶媒は非反応性溶媒の酢酸ェチル、 ジェチルェ一テル、 ジク ロロメ タ ン等を用いることができる。
第 5の工程において、 単離 · 精製を行う操作と してはシ リ 力ゲル クロマ トグラフ又はシリ 力ゲル薄層クロマ トグラフを用いるのが最 も好ま しいが、 特許第 2 8 0 4 2 4 7号公報 (固定化生体触媒を用 いる反応) に記載されているような、 反応槽から生成物に富む反応 液の一部を抜き出し、 生成物の析出温度に設定した晶析槽に移送し て生成物を析出させ、 濾過により分離後、 その母液に基質を添加し 、 反応槽に戻して反応させる一連の操作を繰り返し、 晶析槽に懸濁 状の生成物を蓄積させる単離 · 精製方法などの本出願前公知の単離 • 精製方法を用い得る。 図面の簡単な説明
図 1 は、 基質ラセ ミ体 1 - ( 2 - ナフチル) エタノ ールの(R) -卜(2 - ナフチル) エタノ ールの立体選択的酸化に伴う 2 - ァセ 卜ナフ 卜
ンへの生変換を経由する(S) - 1 _ (2 - ナフチル) エタ ノ ールの反応時 間と生成変換率の関係を示すグラフ図である。
図 2 は、 本発明の固定化水溶性蛋白質を連続使用 したときの有効 性を示すものであって、 図 1 の反応を行ったときの 1 〜 3 回目のそ れぞれの反応時間と生成変換率の関係を示すグラフ図である。 発明を実施するための最良の形態
次に、 本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、 これは説明 のためのものであって、 これにより、 本発明を限定して解すべきで はない。
( 1 ) の基質と してのラセ ミ体アルコールの一方の鏡像体を選択 的に酸化して、 光学活性アルコールを製造する方法
実施例 1 (豌豆水性蛋白質)
先ず第 1 の工程と して、 豌豆を粉砕して殻を取り除き、 PH7. 0 付 近の蒸留水 (約 40°C ) 9重量倍にて、 約 4 5分間に溶解される豌豆 蛋白質成分を NaOH水溶液を用いて pH7. 0 にして沈殿成分の食物繊維 を除去し、 水溶性蛋白部分を酸性条件 (PH4. 5 付近) にして蛋白を 等電点沈殿させ、 蛋白沈殿部を PH7. 0 の蒸留水にて再溶解して得ら れる豌豆蛋白水溶液 (試料濃度 5. 0%) を噴霧乾燥処理を行い、 粉体 の豌豆蛋白を調製する。 また、 アルギン酸ナ ト リ ウム水溶液はォー ト ク レーブの条件、 温度 121 。C、 時間 2 0分で、 アルギン酸ナ ト リ ゥムを水溶液中に溶解して調製する。 次に、 第 2の工程において、 豌豆蛋白粉 20 g に 10倍等量の蒸留水 200m l を加え、 5%のアルギン酸ナ ト リ ウム水溶液を 1. 5 倍等量の 25 0m l を加えて均一になるまで攪拌し、 得られた豌豆 · アルギン酸ナ ト リ ウム混合溶液を、 0. 6 %の塩化カルシウム水溶液中に注射器等
を用いて滴下して固定化状態の豌豆蛋白含有 ' アルギン酸カルシゥ ムゲルビーズを作製する。 更に 0. 6 %塩化カルシウム水溶液中で 5 時間以上放置してビーズ膜を強固にする。 続いて、 第 3の工程において、 豌豆 ' アルギン酸カルシウムゲル ビーズを蒸留水にて十分に洗浄し、 塩化カルシゥム水溶液を除去し た後に用いた豌豆蛋白粉の 20倍等量の蒸留水 (400m l ) を反応溶液 と して添加し、 恒温振とう培養器を用いて蒸留水の温度を 3 5 °Cに した後、 基質ラセ ミ アルコールと して、 1 一 ( 2 —プロモフ ヱニル ) エタ ノ ール、 1 一 ( 2 —クロロフヱニル) エタノ ール、 1 一 ( 2 —メ チルフ エニル) エタ ノ ール、 1 一 ( 2 —メ トキシフ ヱニル) ェ タ ノ 一ル、 1 _ ( 2 —ニ ト ロフ エニル) エタ ノ ール、 1 ーフ ヱニル エタノール、 1 — ( 2 —ナフチル) エタノールを添加し、 それぞれ 振とう培養器 5 5 rpm の条件に設定し、 基質変換させた。 反応終了後に第 4の工程において、 ビーズと反応溶媒部分を概略 分離してビーズを十分に蒸留水等の溶媒で洗浄した後、 その洗浄溶 媒液と反応基質及び反応生成物を含む反応溶媒部分をジェチルエー テルで抽出した。 更に、 そのエーテル層を飽和食塩水で洗浄した後 、 硫酸ナ ト リ ウムにより脱水乾燥して放置した。 最後に第 5の工程において、 ジェチルエーテル層をエバポレータ を用いて除去し、 反応基質及び反応生成物を 70〜230 メ ッ シュのシ リ カゲルクロマ トグラフを用いて、 へキサン対酢酸ェチル 9 対 1 の 展開溶媒で目的物の光学活性アルコールを単離 · 精製する。 単離した光学活性アルコールは、 文献値と して J . CHEM. SOC. P
ERKIN TRANS 1 1995 pp.1295-1298 と Phy tochemi s try, Vol.30, No .11, pp. 3595-3597 を参照して得られる (+又は一) 値と得られ る光学活性アルコールの旋光度との比較から立体配置が決定でき、 高速液体ク 口マ ト グラフ (HPLC) の分析条件、 キラルセル 0B 0.46 cm0 X 25cm (ダイセル化学株式会社製) : 30° , UV254nm, 溶離液: へキサン: 2-プロパノール: 9 : 1 、 流速 0.5ml/分によって、 基質 ( 土)-卜(4- ブロモフ ヱニル) エタ ノ ール、 ( ±)-1 -(4- ク ロ ロフ ヱニル) エタ ノ ール、 ( ±)-1-フ ヱニルエタ ノ ール、 ( 土) - (2- ナフチル) エタ ノ ールの、 又、 キラルセル 0B 0.46 cm ø X 25 cm (ダ ィセル化学株式会社製) : 30° , UV254nm, 溶離液: へキサン: 2-プ ロノ、。ノ ール = 9 : 1 、 流速 1.0ml/分によ って基質( 土) -卜(4- メ ト キシフ ヱニル) エタ ノ ール、 ( ±)- 1- (4- ニ ト ロ フ ヱニル) ェタ ノ —ルの立体配置 S体と R体のリテ ンシ ョ ンタイムが確認でき、 HPLC に現れる立体配置 S体と R体両鏡像体の積分比率の差を光学純度 ( e. e. = enant i omer excess ) と して求めた 0
以上の機器分析にて、 ( ±)-1-(4- プロモフ ヱニル) エタノール の リ テンシ ョ ンタイ ム、 S体 ; 10.447、 R体 ; 11.031、 ( ±)_1- (4 - ク ロ 口フ エニル) エタ ノ ールの リ テンシ ョ ンタイ ム、 S体 ; 9.93 6 、 R体 ; 10.355、 ( 土)-卜フ エニルエタ ノ ールの リ テ ンシ ョ ンタ ィ ム、 S体 ; 11.958、 R体 ; 13.133、 ( ±)- 1- (2- ナフチル) エタ ノ 一ルの リ テンシ ョ ンタイ ム、 S体 ; 15.693、 R体 ; Π.049、 ( 土 )-1- (4- メ トキシフ エ二ル) エタ ノ ールの リ テンシ ョ ンタイ ム、 S 体 ; 9.165 、 R体 ; 10.781、 ( ± ) - 1 - (4- ニ ト ロフ ヱニル) ェタノ 一ルの リ テ ンシ ョ ンタイ ム、 R体 ; 18.923、 S体 ; 19.562をそれぞ れ確認した。 また、 各基質の酸化にて生じる生成 4 -プロモアセ ト フ ェ ノ ン、 4-ク ロ ロアセ ト フ エ ノ ン、 4-メ トキシァセ ト フ エ ノ ン、 4- ニ ト ロァセ ト フ エ ノ ンも同様に、 リ テンシ ョ ンタイ ム ; 13.112、 10
304、 17.169、 37.208を確認した。
(S)-l- (4- ブロモフ ヱニル) エタ ノ ールの合成
固定化豌豆蛋白質の基質 (±)- 1-(4- ブロモフ エニル) エタノー ル ( 200mg ) に対する生化学変換反応は以下の通り、 ( R)-l- (4- プロモフ ヱニル) エタノールの立体選択的な酸化に伴う 4 -プロモア セ ト フ ヱ ノ ンへの生変換を経由して、 8 日を要し、 収量 114mg で、 57% の収率にて( S )- 1- (4- プロモフ ヱニル) エタノールが得られ た。 光学純度は 8Me. e. で得られた。 GC条件は HITACHI G-3500ガス ク ロマ ト グラ フ, キャ リ アーガス, He 0.48 ml/ 分; スピ リ ッ ト比 ; 1/55, オーブン温度; 150 °C, 入口温度; 250 °C , 出口温度; 25 0 °C ,圧力. 136., 流量値. 42. ,分析カラム : TC- 5HT 0.25mm I. D X 30M df (ジーエルサイエンス株式会社製) で、 反応追跡と反応終 了時の時間を決定した。
(S)-l-(4- ク ロ ロフ ヱニル) エタ ノ ールの合成
固定化豌豆蛋白質の基質( ±)_1- (4- ク ロ口フエニル) エタノー ル (200mg ) に対する生化学変換反応は以下の通り、 ( R)- 1- (4 - クロ ロフ ヱニル) エタノ 一ルの立体選択的な酸化に伴う 4-ク口 ロア セ ト フ ヱ ノ ンへの生変換を経由して、 8 日を要し、 収量 84mgで、 42 % の収率にて( S )_l- (4- クロロフヱニル) エタノールが得られた 。 光学純度は 87¾!e. e. で得られた。
(S)- 1 -(4- メ トキシフ ヱニル) エタ ノ ールの合成
固定化豌豆蛋白質の基質( 士)-卜(4- メ トキシフ エニル) ェタノ ール (200mg ) に対する生化学変換反応は以下の通り、 ( R)- 1- (4 - メ トキシフ ヱニル) エタ ノ ールの立体選択的な酸化に伴う 4-メ ト
キシァセ ト フ ヱ ノ ンへの生変換を経由 して、 7 日を要し、 収量 96mg で、 48% の収率にて( S ) - 1 -(4- メ トキシフ ヱニル) エタ ノ ールが 得られた。 光学純度は 95%e. e. で得られた。 尚、 HPLC条件は流速 1. 0 ml/ 分、 GC条件はオーブン温度を 190 °Cに設定した。
(R) - 1- (4- ニ ト ロフ ヱニル) エタ ノ ールの合成
固定化豌豆蛋白質の基質( ±)- 1_(4- ニ ト ロ フェニル) ェタノ一 ル (200mg ) に対する生化学変換反応は以下の通り、 (S)- 1- (4- 二 トロフ ヱニル) エタノ ールの立体選択的な酸化に伴う 4-二 トロアセ ト フ ェ ノ ンへの生変換を経由して、 4 日を要し、 収量 76mgで、 38% の収率にて(R)- 1- (4- ニ トロフ ヱニル) エタノールが得られた。 光 学純度は 54%e. e. で得られた。 HPLC条件は流速 0.5ml/分、 GC条件は オーブン温度 190 °Cに設定した。
(S)- 1 -フ ヱニルエタ ノ ールの合成
固定化豌豆蛋白質の基質( ±)- 1 - フ ヱニルエタノール (201mg ) に対する生化学変換反応は以下の通り、 (R ) ― 1 - フ ニルェ タノールの立体選択的酸化に伴うァセ トフエノ ンへの生変換を経由 して、 6 日を要し、 収率 61% (122mg ) で (S ) - 1 - フエニルェ タノールが 9Me. e. の光学純度で得られた。
(R)- 1 一 (2 -ナフチル) エタ ノ ールの合成
固定化豌豆蛋白質の基質 1 -(2 - ナフチル) エタノール (201mg ) に対する生化学変換反応は以下の通り、 (R ) - 1 - ( 2 - ナフチ ル) エタノールの立体選択的酸化に伴う 2-ァセ 卜ナフ ト ンへの生変 換を経由して、 4 日を要し、 収率 50% (lOOmg ) で (S ) - 1 -(2 - ナフチル) ェタノ 一ルが 99%ee 以上の光学純度で得られた。 (図
1 参照) 次に、 固定化豌豆蛋白質を光学分割触媒と して用いた上記の光学 活性アルコールの合成結果を以下の表に示す。
以上から、 豌豆水溶性蛋白質がフ アイ ンケミ カル分野における合 成中間体を合成する光学分割触媒と して有効であり、 高純度の R体 又は S体の光学活性アルコールが安全かつ平易に得られることを見 出した。 実施例 2 (大豆蛋白質)
第 1 の工程の大豆蛋白質の水溶性抽出と第 2の工程の固定化につ いては実施例 1 の条件と同じであり、 第 3の工程において、 大豆 · アルギン酸カルシウムゲルビーズを蒸留水温度を 3 5 °Cにした後に 、 基質ラセ ミ アルコールと して、 1 一 ( 2 —ブロモフ エニル) エタ ノ ール、 1 — ( 2 — ク ロ 口フ エニル) エタ ノ ール、 1 — ( 2 —メ チ
ルフ エニル) エタ ノ ール、 1 — ( 2 —メ トキシフ ヱニル) エタ ノ ー ル、 1 一 ( 2 —二 ト ロフ エニル) エタ ノ ール、 1 一 ( 2 —ナフチノレ ) エタノ ールを添加し、 それぞれ振と う培養器 5 5 rpm の条件に設 定し基質変換させ、 豌豆蛋白質で用いた条件と同様に第 4の工程と 第 5 の工程を経由して得られた光学活性アルコールの評価を豌豆蛋 白質の時と同様に行った。
(R)- 1- (4- プロモフ ヱニル) エタ ノ ールの合成
固定化大豆蛋白質の基質 (±)- 1- (4- ブロモフ ニル) エタノー ル (200mg ) に対する生化学変換反応は以下の通り、 (S)-卜(4- ブ 口モフヱニル) エタノールの立体選択的な酸化に伴う 4-ブロモアセ ト フ ヱノ ンへの生変換を経由して、 2 日を要し、 収量 108mg で、 54 ¾ の収率にて(R)- 1_(4_ プロモフ ヱニル) エタノール得られた。 光 学純度は 88¾!e. e. で得られた。 機器条件は固定化豌豆蛋白質と同様 である。
(R)-l-(4- ク ロ ロフ ヱニル) エタ ノ ールの合成
固定化大豆蛋白質の基質( ±)-1-(4- ク ロ 口 フ エニル) エタノ ー ル ; 200mg に対する生化学変換反応は以下の通り、 (S)-l-(4- ク ロ ロフヱニル) ェタノ 一ルの立体選択的な酸化に伴う 4-ク ロロァセ ト フヱノ ンへの生変換を経由して、 3 日を要し、 収量 102mg で、 51% の収率にて(R)- 1- (4- ク ロロフ ヱニル) エタノ ールが得られた。 光 学純度は 96¾!e. e. で得られた。
(R)-l-(4- メ トキシフ ヱニル) エタ ノ ールの合成
固定化大豆蛋白質の基質( ±)- 1-(4- メ トキシフ ヱニル) ェタノ —ル ; 200mg に対する生化学変換反応は以下の通り、 (S)- 1- (4- メ
トキシフ ヱニル) エタノールの立体選択的な酸化に伴う 4-メ トキシ ァセ ト フ ヱ ノ ンへの生変換を経由して、 5 日を要し、 収量 96mgで、 48¾ の収率にて(R)- (4- メ トキシフ ヱニル) エタノールが得られ た。 光学純度は 97%e. e. で得られた。
(S)-l- (4- ニ ト ロフ ヱニル) エタ ノ ールの合成
固定化大豆蛋白質の基質( ±)-1- (4- ニ トロフ ヱニル) エタノー ル ; 200mg に対する生化学変換反応は以下の通り、 (R)-l- (4- 二 ト ロフ ヱニル) エタノールの立体選択的な酸化に伴う 4-二 トロアセ ト フ ヱ ノ ンへの生変換を経由して、 4 日を要し、 収量 90mgで、 45% の 収率にて(S)-卜(4- ニ トロフヱニル) エタノールが得られた。 光学 純度は 99¾e. e. で得られた。 次に、 固定化大豆蛋白質を光学分割触媒と して用いた上記の光学 活性アルコールの合成結果を以下に示す。
以上から、 大豆水溶性蛋白質がフ アイ ンケ ミ カル分野における合 成中間体を合成する光学分割触媒と して有効であり、 高純度の R体
又は S体の光学活性アルコールが安全かつ平易に得られることを見 出した。 実施例 3 (養麦蛋白質)
第 1 の工程の薷麦の水溶性蛋白質の抽出において、 実施例 1 の豌 豆蛋白質と同様に処理して食物繊維を除去した後、 アルカ リ条件 ( PH9.5 付近) にして等電点沈殿させ、 以下豌豆蛋白質と同様の操作 にて薷麦水溶性蛋白質を得、 第 2 の工程において実施例 1 の操作を 行い、 薷麦蛋白質 ' アルギン酸カルシウムゲルビーズを得、 第 3 の 工程において、 蒸留水温度を 3 5 °Cにした後に、 基質ラセミ アルコ —ルと して、 実施例 2 と同様に基質ラセ ミ体アルコールを添加し、 第 4の工程と第 5の工程を経由して得られる光学活性アルコールの 評価を行つた。
(R)-l-(4- ブロモフ ヱニル) エタノ ールの合成
固定化薷麦蛋白質の基質 (土) -卜(4- ブロモフ エニル) エタ ノ ー ル (200mg ) に対する生化学変換反応は以下の通り、 (S)- 1-(4- ブ 口モフ ヱニル) エタ ノ ールの立体選択的な酸化に伴う 4 -プロモアセ ト フヱノ ンへの生変換を経由して、 11日を要し、 収量 114mg で、 57 % の収率にて(R)- (4- プロモフ ヱニル) エタノール得られた。 光 学純度は 82!¾e. e. で得られた。
(R)-l_(4- ク ロ ロフ ヱニル) エタ ノ ールの合成
固定化薷麦蛋白質の基質( ±)- 1- (4- ク ロ口フエニル) エタノ ー ル ( 200mg ) に対する生化学変換反応は以下の通り、 (S)-l- (4- ク ロロフヱニル) ェタノ ールの立体選択的な酸化に伴う 4-ク ロロァセ ト フ ヱ ノ ンへの生変換を経由 して、 13日を要し、 収量 116mg で、 58
% の収率にて(R)-l-(4- ク ロロフヱニル) エタノールが得られた。 光学純度は 91!¾e. e. で得られた。
(R)-l-(4- メ トキシフ ヱニル) エタ ノ ールの合成
固定化薷麦蛋白質の基質( ±)- 1-(4- メ トキシフ ニル) ェタ ノ —ル ( 200mg ) に対する生化学変換反応は以下の通り、 (S)- 1- (4- メ トキシフ ヱニル) エタ ノ ールの立体選択的な酸化に伴う 4-メ トキ シァセ ト フ ヱノ ンへの生変換を経由して、 6 日を要し、 収量 112mg で、 46% の収率にて(R)-l -(4- メ トキシフ ヱニル) エタノールが得 られた。 光学純度は 99%e. e. で得られた。
(S)_l -(4- ニ ト ロフ ヱニル) エタ ノ ールの合成
固定化薷麦蛋白質の基質( ±)-1- (4- ニ ト ロフ エニル) エタ ノ ー ル (200mg ) に対する生化学変換反応は以下の通り、 (R)- 1- (4- 二 トロフヱニル) エタノールの立体選択的な酸化に伴う 4-二 ト ロアセ ト フ ヱ ノ ンへの生変換を経由して、 17日を要し、 収量 50mgで、 25% の収率にて(S)-卜(4- ニ ト ロフ ヱニル) エタノールが得られた。 光 学純度は 99!¾e. e. で得られた。 次に、 固定化薷麦蛋白質を光学分割触媒と して用いる以上の光学 活性アルコールの合成結果を下記の表に示す。
¾¾¾ ^ひ ass虽日買 ΰ ^Τϋ ιΞΐ . ,ノレコーノレ 半 薷麦 (Chiral Product) (%) (%e. e. ) 丄 1 r gopyrum escuientunL Kノ 上 ¾ ノ uてノ ェ一ノレノ 01 C50
エタノール
Δ o ragopyrum escuieniun fr K>ヽ—丄 1— 4— ン Λ πロ "ノ7ェ ^一―ノレノヽソ DO yo
エタノール
Q
ϋ r ago y ruin escineruuni 、 ノ 丄 、 4 , Γ卞ノ ノ エ一ノレ QQ
) エタノール
4 Fagopyrum esculentum (S)- 1 - (4- ニトロフヱニル) 25 99
エタノール
5 Fagopyrum esculentum. (S)-l-(2- ナフチル) ェタノ 62 99
ール 以上から、 薷麦蛋白質がフ アイ ンケ ミ カル分野における合成中間 体を合成する光学分割触媒と して有効であり、 高純度の R体又は S 体の光学活性アルコールが安全かつ平易に得られることを見出した
実施例 4 (豌豆、 大豆、 薷麦蛋白質の連続再利用の有効性) 実施例 1 〜実施例 3のように第 1 の工程で調製した豌豆、 大豆、 薷麦蛋白質を用いた第 2〜第 5 の工程における 1 回目の有効性につ いては、 フ ァイ ンケ ミ カル分野における合成中間体と して充分に利 用可能な光学分割触媒と して有効であり、 高純度の R体又は S体の 光学活性アルコールが安全かつ平易に得られたことを見出した。 実 施例 4 は、 固定化豌豆、 大豆、 養麦蛋白質の連続再利用の有効性に ついての結果を記す。 実施例 1 の結果は図 2 に示すよ う に、 1 回目で固定化豌豆蛋白質 はラセミ体の 1 — ( 2 —ナフチル) エタノールの R体を立体選択的 に 2 —ァセ トナフ ト ンに酸化し、 残存する S体の 1 一 ( 2 —ナフチ
ル) エタノ ールを 99!¾e. e. 以上の高光学純度で生合成した。 反応終 了後の第 4の工程で使用済みの固定化豌豆蛋白質を連続再利用 して 、 第 3の工程から同様の反応を試みた結果は図 2のように、 1 回目 の約半分の反応時間で 99%e. e. 以上の高光学純度の (S ) - 1 - (2 - ナフチル) エタノールを生合成した。 更に 3回目の同様の反応を 試みた結果、 その 8分の 3の反応時間で 99¾e. e. 以上の高光学純度 の (S ) - 1 -( 2 - ナフチル) エタノールを生合成した。 次に、 固定化豌豆蛋白質の連続再利用による基質 1 _(2 - ナフチ ル) エタノールの合成結果を以下に示す。 連続再利用 反応時間 (時間) 立体配置 光学純度 化学収率
1st 96 S 99 50 2nd 48 S 99 50 3ed 36 S 99 50 以上から、 豌豆蛋白質がフ アイ ンケ ミ カル分野における合成中間 体を合成する光学分割触媒と して有効であり、 連続再利用が可能な ので大量に合成でき、 高純度の R体又は S体の光学活性アルコール が安全かつ平易に得られることを見出した。 更に実施例 2 にて固定化大豆蛋白質の基質( ±)-1- (4- メ トキシ フ エニル) エタノール (200mg ) に対する生化学変換反応は以下の 通り、 ( R)- 1- (4- メ トキシフヱニル) エタノールの立体選択的な 酸化に伴う 4-メ トキシァセ トフヱノ ンへの生変換を経由して、 2日 を要し、 収量 lOOmg で、 50% の収率、 光学純度は 99!¾e. e. 以上にて (R)-l-(4- メ トキシフ ヱニル) エタノールが得られた。 実施例 4は
、 第 4の工程で使用済みの固定化大豆蛋白質を基質( ±)-1- (4- メ トキシフ ヱニル) エタノールを用いて、 再度第 3の工程から同様の 反応を検討した結果、 1 回目の約半分の反応時間で 99!¾e. e. 以上の 高光学純度の( R)- 1-(4- メ トキシフ エ二ル) エタノールを生合成 した。 更に、 3回目の同様の反応を試みた結果、 1 回目の半分の反 応時間で 99¾!e. e. 以上の高光学純度の(R)_l- (4- メ トキシフ エ二ル ) ェタノ一ルを生合成した。 次に、 固定化大豆蛋白質の連続再利用による基質 1 -(4-メ トキシ フ ニル) エタノ ールの合成結果を以下に示す。 連続再利用 反応時間 立体配置 光学純度 化学収率
1st 48 R 99 50
2nd 24 R 99 50
3ed 24 R 99 49 以上から、 大豆蛋白質がフ ァイ ンケ ミ カル分野における合成中間 体を合成する光学分割触媒と して有効であり、 連続再利用が可能な ので大量に合成でき、 高純度の R体又は S体の光学活性アルコール が安全かつ平易に得られることを見出した。 実施例 3 にて、 固定化薷麦蛋白質の基質( ±)-1-(2- ナフチル) エタノール ( 200mg ) に対する生化学変換反応は以下の通り、 ( R )-1- (2- ナフチル) エタ ノ ールの立体選択的な酸化に伴う 2-ァセ ト ナフ ト ンへの生変換を経由して、 4 日を要し、 収量 lOOmg で、 50% の収率、 光学純度は 99%e. e. 以上にて( S )-卜(2- ナフチル) エタ ノ一ルが得られた。 実施例 4 はこの第 4 の工程で使用済みの固定化
薷麦蛋白質を第 3の工程から再度連続再利用 して基質( ±)-1- (2 - ナフチル) エタノールと反応させた結果、 一回目と同様に、 ( R) - 1 -(2- ナフチル) エタノールを立体選択的に 2-ァセ トナフ ト ンに酸 化する変換機構を経由し、 光学活性(S)- 1- (2- ナフチル) ェタノ一 ルが 99%e. e. の光学純度にて得られた。 固定化薷麦蛋白質の連続再 利用は少なく とも 3回の有効性を持ち反応時間、 化学収率、 光学純 度は共に変化が見られなかった。 次に、 固定化薷麦蛋白質の連続再利用による基質 1 -(2-ナフチル ) エタノールの合成結果を以下に示す。 以上から、 養麦蛋白質がフ アイ ンケミ カル分野における合成中間体を合成するための光学分割 触媒と して有効であり、 連続再利用が可能なので大量に合成できる ため高純度の R体又は S体の光学活性アルコールが安全かつ平易に 得られることが分かる。 連続再利用 反応時間 (時間) 立体配置 光学純度 化学収率
1st 96 99 50 2nd 96 99 50 3ed 96 99 50 実施例 5 (苦薷麦蛋白質) . 苦薷麦の粉碎粉を 1 2 メ ッ シュの篩にかけて粒の大きな部分と殻 部を取り除き、 このようにして得られた粉砕粉を約 4 0 °C、 p H7. 0 で、 約 9重量倍の蒸留水を用いて、 4 5分かけて水溶性蛋白質を 抽出した。 この抽出液からデカンターを用いて食物繊維部を分離し 、 タンパクカー ドを得た。 このタ ンノ、。クカー ド 20 gを計り取り、 10 倍等量の蒸留水 200 中でミ キサーで解砕して蛋白質スラ リ ーを調
製した。
このスラ リ ーを用いて、 実施例 1 の第 2工程と同様にして、 固定 化ビーズを得た。
±— 1 —フ ヱニルエタノ ールからの ( S ) — 1 ーフ ヱニルェタ ノ ールの合成
続いて、 この固定化ビーズを触媒と して、 苦薷麦タ ンパクカー ド の 2 0倍等量の蒸留水 400 を反応溶媒と して添加し、 恒温振とう 培養器を用いて、 蒸留水温度 35°Cにした後、 基質と して ±— 1 —フ ヱニルエタ ノ ール 201 mgを添加し、 培養器を 5 5 rpm の条件に設定 し、 8 日間基質転換させた。 豌豆蛋白質で用いた条件と同様に第 4 と第 5 の工程を経由して、 変換率 5 0 %で、 光学純度 9 5 %e. e.、 収率 4 2 %で ( S ) — 1 —フ ヱニルエタノールが得られた。 生成ァ セ トフエノ ンは収率 5 1 % ( 1 0 2 m g ) であった。
( 2 ) のケ ト ン分子を基質と して用いる不斉還元反応により、 光学 活性アルコールを製造する方法
実施例 6 (薷麦蛋白質)
実施例 5 と同様にして、 薷麦の粉砕粉から固定化ビーズを得た。 ァセ ト フ ヱ ノ ンからの ( S ) — 1 —フ ヱニルエタ ノ ールの合成 続いて、 この固定化ビーズを触媒と して、 薷麦タ ンパクカー ドの 2 0倍等量の蒸留水 400 を反応溶媒と して添加し、 恒温振とう培 養器を用いて、 蒸留水温度 35°Cにした後、 基質と してァセ トフ エノ ン 202 mgを添加し、 培養器 5 5 rpm の条件に設定し、 基質転換させ た。 第 4工程と して、 ジェチルェ一テルで抽出し、 第 5工程と して シリ カゲルク ロマ トグラフ ( 7 0〜 2 3 0 メ ッ シュ) を用いて、 展
開溶媒と して、 へキサン : 酢酸ェチル = 9 : 1 を用いて、 単離精製 した。 残留ァセ トフヱノ ンは 5 0 %であった。 反応条件、 変換率、 光学純度、 収率、 及び得られたフ ニルエタノ ールの立体配置を下 表に示す。 実施例 7〜 1 2
ァセ ト フ ヱ ノ ンからの ( S ) — 1 ーフ ヱニルエタ ノ ールの合成 アマラ ンサス粉、 紅花隠元粉、 キビ粉、 栗粉、 苦薷麦粉を用いて 、 実施例 6 と同様にして、 ァセ トフヱノ ンを基質転換させた。 残留 ァセ ト フ ヱ ノ ンは、 それぞれ、 5 5 %、 5 1 %、 4 5 %、 1 1 %及 び 5 1 %であった。 反応条件、 変換率、 光学純度、 収率、 及び得ら れたフヱニルエタノールの立体配置を下表に示す。
2 —ァセ トナフ ト ンからの ( S ) — 1 一 ( 2 —ナフチル) ェタノ ールの合成
実施例 1 3 (苦薷麦粉蛋白質)
苦薷麦粉 3 0 0 gを約 4 0 °Cで、 4 5分間、 2 0 0 0 の水で抽 出し、 水溶性成分を 7 0 0 0 r p mZ分で、 2 0分間遠心分離し、
得られた沈殿物 (固体) を、 実施例 1 と同様に固定化しビーズを調 製した。 基質と して、 2 —ァセチルナフ ト ン 2 0 3 m gを用い、 実 施例 5 と同様にして、 4 日間反応させると、 収率 1 1 % ( 1 0 5 m g ) で ( S ) — 1 — ( 2 —ナフチル) エタノールが生合成された。 キラルセル O B (ダイセル株式会社製) を用いた ( S ) — 1 一 ( 2 一ナフチル) エタノールの H L P C分析を、 へキサン対 2 —プロパ ノ ール 9対 1 の展開溶媒で、 流速 0 . 5 cnfZ分、 吸光度 2 5 4 n m に設定して行った結果、 リ テンシ ョ ンタイ ム 2 0 . 8 分に 9 9 . 9 %の 3 アルコールの吸収、 2 3 . 8 分に 0 . 1 %の Rアルコールの 吸収が確認できた。 産業上の利用可能性
穀類又は豆類から水溶性蛋白質を抽出する第 1 の工程と、 該蛋白 質を固定化する第 2の工程と、 前記蛋白質を触媒と して原料である 基質の酵素変換反応を行う第 3の工程と、 該第 3の工程により変換 した前記反応基質及び反応生成物を有機溶媒により抽出する第 4の 工程と、 該第 4の工程で抽出した反応基質及び反応生成物から光学 活性アルコール又は光学活性アルコールのァシル化体を単離 · 精製 する第 5 の工程を組み合わせ、 必要により加水分解することにより 、 フ ァイ ンケ ミ カル分野における合成中間体を合成する触媒と して 充分に利用可能な高純度の R体又は S体の光学活性アルコールが安 全かつ平易に得られる。