JPWO2021019692A1 - 回転電機 - Google Patents
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Abstract
Description
実施の形態1は、電機子巻線を有するステータと、ステータの内周で回転するロータを備え、ロータのコアには磁極を構成する複数の永久磁石がコアの軸方向に貫通した磁石挿入孔に埋設され、各磁極は2つの永久磁石によって構成され、各磁極において永久磁石とロータ外周面によって取り囲む外周鉄部にロータ外周面からロータの径方向内側へ切込まれたスリットを備え、スリットの径方向内側の先端には空隙部を有する回転電機に関するものである。
なお、以下の説明において、回転電機100における各方向を、軸方向G、周方向S、径方向Kとしてそれぞれ示す。したがって、他の部分においても、これらの方向を基準として各方向を示して説明する。
また、実施の形態2以降においても各方向のそれぞれを同様に示す。
図1において、回転電機100はステータ1とロータ2とを備えている。
ステータ1は軸方向に複数の鋼板を積層したステータコア6と、ステータコア6に巻回したコイル7を備えている。
ロータ2はロータコア3と、ロータコア3に埋設された永久磁石4と、ロータコア3の内周部を貫通するシャフト5から構成される。
実施の形態1において、永久磁石4は軸方向に複数個に分割されている。ロータコア3とシャフト5は、圧入および焼き嵌め、またはロータコア3の内周とシャフト5の外周に設けたキー構造を介して嵌合している。
なお、図において、回転電機100の軸方向をGで表している。
ロータコア3には24個の磁石挿入孔21が周方向に間隔を置いて配置され、磁石挿入孔21にはそれぞれ永久磁石4が埋設されている。
磁石挿入孔21と永久磁石4は周方向に隣接する2個で1セットとなり、回転軸の中心側から径方向外側に向かって広がる12個のV字を構成する。1つの磁極はV字に構成された2つの磁石挿入孔21と2つの永久磁石4で構成され、12個の磁極が周方向に並べて配置されている。
磁石挿入孔21とロータコア3のロータ外周面20とに挟まれて構成された薄肉部を外周ブリッジ部22とする。また、V字を構成する2つの磁石挿入孔21(21a、21b)に挟まれ、V字の周方向の中央部であり径方向内側に構成される薄肉部を中央ブリッジ部23とする。また、各磁極に挟まれた部分を磁極間28とする。
2つの磁石挿入孔21(21a、21b)およびロータ外周面20で囲む三角型の部分を外周鉄部24とする。なお、区別する必要がない場合は、適宜磁石挿入孔21と記載する。
外周鉄部24にはスリット25が形成されている。スリット25はロータ外周面20から径方向の内側に切り込んで延びる延伸部251と、空隙部252とを備える。
延伸部251は磁極の中心を通り径方向に延びるように配置している。空隙部252はスリット25の径方向内側の先端に位置し、延伸部251の周方向の最小幅よりも大きな周方向の幅を有する。
なお、図において、空隙部252は円弧形状を想定しているが、四角形または多角形でもよい。
まず、スリットを有さないロータコア3Aを備えたロータ2Aを比較例1として、図4に基づいて説明する。図4は、比較例1のロータ2に作用する荷重の概要、すなわち作用応力メカニズムを説明する図である。
なお、実施の形態1のロータ2等と区別するため、ロータ2A、ロータコア3A、外周ブリッジ部22A、および外周鉄部24Aと記載している。
ロータ2Aに遠心力が作用するとき、ロータコア3Aには次の2つのメカニズムにより外周ブリッジ部22Aに応力(P、Q)が発生する。
1つは、図4において、遠心力を受けてロータコア3A全体が径方向に膨らみ、周方向の長さが伸びることで外周ブリッジ部22Aを含む外周部および内周部に生じる周方向引張応力(P)である。
もう1つは、図4において、遠心力を受けて外周鉄部24Aが径方向にせり出すことで外周ブリッジ部22Aに局所的に生じる曲げ応力(Q)である。この曲げ応力(Q)によって外周ブリッジ部22Aは径方向内側に凸となる曲げ変形が生じる。
なお、実施の形態1のロータ2等と区別するため、ロータ2B、ロータコア3B、外周ブリッジ部22B、外周鉄部24B、およびスリット25Bと記載している。
比較例2のロータ2Bでは、さらに遠心力の作用で外周鉄部24Bが径方向外側にせり出すためにスリット25Bに応力(R)が作用する。
なお、比較例1でも、遠心力の作用で外周鉄部24Aが径方向外側にせり出すが、スリットがないため、応力(R)は働かない。
実施の形態1および比較例2では、共に設けられたスリット25および25Bによって、比較例1で示した周方向への引張応力(P)の伝達が阻害されるため、外周ブリッジ部22および22Bの応力を低減させることができる。スリット25および25Bの長さが長いほど引張応力Pの伝達を阻害することができる。
一方、実施の形態1のロータ2では、図6に示すように、空隙部252により応力(R)が緩和される。このため、比較例2のロータ2Bよりも耐久性を向上させることができる。
外周ブリッジ部22に作用する応力を低減させるためのスリット25は、外周鉄部24ではなく磁極と磁極に挟まれた磁極間28に設けることも考えられる。
なお、図7において磁石磁束をMFとリラクタンス磁束をRFと記載し、磁極間28の幅を28Wとしている。また、磁石磁束とリラクタンス磁束の経路を分かりやすくするために、図3に対して参照符号を一部省略している。
一方、外周鉄部24にスリット25を設ける場合は、リラクタンストルクの低下を防ぐことができ、結果的に最終的なトルクの低下を防ぐことができる。
すなわち、実施の形態1によれば、回転電機100の最大トルクを低下させずにロータコア3に発生する応力を低減することができ、ロータコア3の耐久性を向上させることができる。
しかし、応力緩和のためにスリット端部に空隙部を設けると周方向の引張り応力を受けるコア内周面積を減少させる。このため、ロータコア内周に作用する応力が増加する。
したがって、ロータコアとシャフトを圧入で保持した場合の内周部応力、およびキー構造で保持した場合のキー部応力が増加する。
V字を構成する磁石挿入孔21(21a、21b)において、永久磁石4の周方向で径方向外側に位置する外郭線を延長しV字中心で交差させた線を、V字形成線260a、260bとする。なお、V字形成線260a、260bを区別する必要がない場合は、V字形成線260と記載する。
次に、スリット25とV字形成線260bの最短距離を結ぶ線を第一スリット線261とする。スリット25の径方向外側を始点として、延伸部251の中央を通り、空隙部252において第一スリット線261と最短距離で結合する線を第二スリット線262とする。第一スリット線261、第二スリット線262が結合する点をスリット端点27とする。
そして、第一スリット線261の長さをL261、第二スリット線262の長さをL262とする。
なお、スリット25とV字形成線260aの最短距離を結ぶ線も存在するが、省略している。
具体的には、スリット端点27が延伸部251の最小幅の半分よりも大きな径の曲線であれば、図5で説明した比較例2よりもスリットに作用する応力を低減させることができる。なお、スリット端点27における曲線の径を大きくしていけば、V字形成線260bと平行な直線と同等となる。
一方で、磁極間28にスリットを設けた場合は、遠心力によってコア内周に発生する周方向の引張り応力が作用するため応力集中部は径方向内側のスリット先端となる。
したがって、実施の形態1のように磁極中心にスリットを設けた場合と磁極間にスリットを設けた場合では、応力発生位置および応力発生メカニズムが異なり、合わせて空隙部の好適な構成方法も大きく異なる。
V字を構成する磁石挿入孔21(21a、21b)の径方向外側で周方向に延びる外郭線を延長しV字中心で交差させた線を、V字形成線260Ba、260Bbとする。なお、V字形成線260Ba、260Bbを区別する必要がない場合は、V字形成線260Bと記載する。
次に、スリット25BとV字形成線260Bbの最短距離を結ぶ線を第一スリット線261Bとする。スリット25Bの径方向外側を始点として、延伸部251Bの中央を通り、径方向内側の先端において第一スリット線261Bと最短距離で結合する線を第二スリット線262Bとする。第一スリット線261B、第二スリット線262Bが結合する点をスリット端点27Bとする。
そして、第一スリット線261Bの長さをL261B、第二スリット線262Bの長さをL262Bとする。
図10において、横軸はL262B/(L261B+L262B)、縦軸は応力(単位はMPa)である。また実線は、外周ブリッジ部応力を表し、点線は、スリット部応力を表す。
図から明らかにように、L262B/(L261B+L262B)の値が大きいほど、すなわちスリット25Bの長さが長いほど、外周ブリッジ部応力が低減した。しかし、同時にスリットに作用する応力が上昇し、L262B/(L261B+L262B)の値が0.70を超えると外周ブリッジ部応力を上回った。L262B/(L261B+L262B)の値が0.70におけるスリット部応力は243MPaであった。
図11において、横軸はL262/(L261+L262)、縦軸は応力(単位はMPa)である。実線は、外周ブリッジ部応力を表し、点線は、スリット部応力を表す。
図10の比較例2と同様にL262/(L261+L262)の値が大きいほど、すなわちスリット25の長さが長いほど、外周ブリッジ部応力が低減した。
さらに、比較例2と比較してスリット部応力が低下しており、スリットに作用する応力が外周ブリッジ部応力を上回るL262/(L261+L262)の値は0.86であった。また、L262/(L261+L262)の値が0.86におけるスリット部応力は209MPaであった。したがって、実施の形態1ではロータコアに作用する応力を、比較例2よりも34MPa低減できた。
すなわち、実施の形態1によれば、ロータコア3で発生する応力を低減することができ、ロータコア3の耐久性を向上させることができる。
さらに、打ち抜き加工による場合は、生成させるスリット25と磁石挿入孔21との相対位置を一定に保つことができる利点がある。さらに、量産性を損なわないという利点もある。
ただし、打抜き加工によりスリット25を形成する場合、スリット25はある程度の幅がある。ここで、外周鉄部24は永久磁石4によって生じる磁石磁束が通るため、磁石磁束の磁路を確保し、磁気飽和を防ぐためにスリット25の延伸部251は外周鉄部24に磁気飽和が発生しない程度に細くすることが好ましい。
また、各磁極を形成する永久磁石4の数、形状、および位置などは変更しても良い。例えば、実施の形態1による回転電機のロータの変形例の平面図である図12のように各磁極の永久磁石を3個とした場合でも、図3のロータ2と同様の効果が得られる。なお、永久磁石の数は、2個、3個に限定されず、4個以上でもよい。
したがって、実施の形態1の回転電機は、ブリッジ部応力を低減すると共に、トルク低下を抑制し、ロータコアの耐久性を向上させることができる。
実施の形態2の回転電機は、回転電機の軸方向に対して垂直なロータの断面において、ロータの径方向内側へ切込まれたスリットの角度をロータの径方向に対して周方向に傾けたものである。
実施の形態2の図13−図18において、実施の形態1と同一あるいは相当部分は、同一の符号を付している。
なお、実施の形態1と区別するために、回転電機200としている。
磁石挿入孔21と永久磁石4は周方向に隣接する2個で1セットとなり、回転軸の中心側から径方向外側に向かって広がる12個のV字を構成する。1つの磁極はV字に構成された2つの磁石挿入孔21と2つの永久磁石4で構成され、12個の磁極が周方向に並べて配置されている。
磁石挿入孔21とロータコア3のロータ外周面20とに挟まれて構成された薄肉部を外周ブリッジ部22とする。また、V字を構成する2つの磁石挿入孔21(21a、21b)に挟まれ、V字の周方向の中央部であり径方向内側に構成される薄肉部を中央ブリッジ部23とする。
2つの磁石挿入孔21(21a、21b)およびロータ外周面20で囲む三角型の部分を外周鉄部24とする。
外周鉄部24にはスリット25が形成されている。スリット25はロータ外周面20から径方向の内側に切り込んで延びる延伸部251と、径方向内側の先端には延伸部251の周方向の幅よりも大きな周方向の幅の空隙部252を有する。延伸部251は、径方向に対して周方向に配置している。
なお、図14において磁石磁束をMFとリラクタンス磁束をRFと記載している。また、磁石磁束とリラクタンス磁束の経路を分かりやすくするために、図13に対して参照符号を一部省略している。
このため、磁石トルクとリラクタンストルクがピーク値となるロータ2の回転位相角を近づけるように設計することができ、最終的なトルクを向上させることができる。
例えば、実施の形態2の回転電機のロータの変形例1の図15に示すように、各磁極を構成する複数の磁石挿入孔21それぞれを別形状にしてもよい。
また、実施の形態2の回転電機のロータの変形例2の図16に示すように、各磁極を構成する複数の永久磁石4のそれぞれの大きさを変更してもよい。
図16に示すロータ2は、複数の永久磁石4のそれぞれの大きさを変更することで、ステータと鎖交する磁石磁束を周方向に調整することができる。
例えば、実施の形態2の回転電機のロータの変形例3の図17に示すように径方向外側に凹となる曲線としたり、変形例4の図18に示すように径方向外側に凸となる曲線としたりしてもよい。
スリット25の延伸部251を非直線で構成する、すなわち湾曲させることにより、磁石磁束が磁気飽和することを防ぐこと、およびスリット25で分断された外周鉄部の左右の面積を調整することで、外周ブリッジ部22に作用する曲げ応力を調整することができる。
したがって、実施の形態2の回転電機は、ブリッジ部応力を低減すると共に、トルク低下を抑制し、ロータコアの耐久性を向上させることができる。さらに、最終的なトルクを向上させることができる。
実施の形態3の回転電機は、ロータ回転時の遠心力に対して、ロータに埋設された永久磁石の径方向側をロータコアの径方向外側で保持する構成としたものである。
実施の形態3の図19ー図24において、実施の形態1と同一あるいは相当部分は、同一の符号を付している。
なお、実施の形態1と区別するために、回転電機300としている。
磁石挿入孔21と永久磁石4は周方向に隣接する2個で1セットとなり、回転軸の中心側から径方向外側に向かって広がる12個のV字を構成する。1つの磁極はV字に構成された2つの磁石挿入孔21と2つの永久磁石4で構成され、12個の磁極が周方向に並べて配置されている。
磁石挿入孔21とロータコア3のロータ外周面20とに挟まれて構成された薄肉部を外周ブリッジ部22とする。また、V字を構成する2つの磁石挿入孔21(21a、21b)に挟まれ、V字の周方向の中央部であり径方向内側に構成される薄肉部を中央ブリッジ部23とする。
2つの磁石挿入孔21(21a、21b)およびロータ外周面20で囲む三角型の部分を外周鉄部24とする。
外周鉄部24にはスリット25が形成されている。スリット25はロータ外周面20から径方向の内側に切り込んで延びる延伸部251と、空隙部252とを備える。
延伸部251は磁極の中心を通り径方向に延びるように配置している。空隙部252はスリット25の径方向内側の先端に位置し、延伸部251の周方向の最小幅よりも大きな周方向の幅を有する。
ロータ2が回転すると永久磁石4に遠心力が作用し、径方向外側の向き(正の向き)に飛散しようとする。しかし、磁石挿入孔21によって永久磁石4に径方向内側の向き(負の向き)の力が加えられ、永久磁石4の位置が保持される。
なお、図20において、分かり易くするために、第一磁石保持面211と第一磁石面31との間、および第二磁石保持面212と第二磁石面32との間に空間を設けているが、実際には密着している。
すなわち、実施の形態3では永久磁石4の径方向の端面側をロータコア3の径方向外側で保持する。
一方、実施の形態1では、図3で明らかなように永久磁石4の径方向の端面側をロータコア3の径方向内側で保持している。
一つ目は、第二磁石保持面に隣接する応力緩和用の空隙部がリラクタンス磁束を阻害しないことである。
図21は、実施の形態1に係る回転電機のロータにおける磁石挿入孔周りの構造を示す対比用の図である。図22は、実施の形態3に係る回転電機のロータにおける磁石挿入孔周りの構造を示す図である。
ロータ2が回転すると、第二磁石保持面212は径方向外側の向き(正の向き)に飛散しようとする永久磁石4から力を受けるため、図21、図22のように応力緩和孔213を設ける必要がある。すなわち、応力緩和孔213を図21では、ロータコア3の径方向内側に設けられている。一方、図22では、応力緩和孔213をロータコア3の径方向外側に設けられている。
一方、図22に示した実施の形態3の応力緩和孔213のように、永久磁石4の径方向外側で保持する場合には、応力緩和孔213がリラクタンス磁束を阻害しないためリラクタンストルクの低下を防止できる。
図23は、比較例3として、外周鉄部にスリットがなく、永久磁石を径方向外側で保持する構造を有するロータコアに遠心力が作用した場合の変形形状を120倍に拡大した図である。なお、図23において、実施の形態3のロータ2等と区別するため、ロータ2C、ロータコア3C、外周ブリッジ部22C、外周鉄部24C、準外周ブリッジ部29C、および第二磁石保持面212Cと記載している。
外周ブリッジ部22Cには周方向の長さが増加することによって生じる引張り応力と外周鉄部24Cが径方向外側の向き(正の向き)にせり出して径方向内側に凸の曲げ変形が生じることで発生する曲げ応力が作用する。図23において、Sは「周方向引っ張り+径方向内側に凸の曲げ」である。
一方、第二磁石保持面212Cには、永久磁石4を保持する力の反力が第二磁石保持面212Cの法線方向外周向きに作用する。この反力により、外周ブリッジ部22Cと接続して第二磁石保持面212Cを形成するために外周ブリッジ部22Cよりも大きな厚みとなる準外周ブリッジ部29Cに局所的に径方向外側に凸の曲げ変形が生じる。この結果、準外周ブリッジ部29Cには周方向の長さが増加することによって生じる引張り応力と径方向外側に凸の曲げ変形が生じることで発生する曲げ応力が作用する。Tは「周方向引っ張り+径方向外側に凸の曲げ」である。
実施の形態1の効果で説明した通り、図24に示す実施の形態3のロータコア3では、比較例3のロータコア3Cで作用していた周方向への引張応力の伝達が阻害される。したがって、外周ブリッジ部22および準外周ブリッジ部29には、主に曲げ応力のみが作用するため、比較例3のロータ2Cと比べて作用応力を低減させることができる。
この外周ブリッジ部22には、外周鉄部24が径方向外側の向き(正の向き)にせり出して径方向内側に凸の曲げ変形が生じることで発生する曲げ応力が作用する。図24において、Uは「径方向内側に凸の曲げ」である。
準外周ブリッジ部29には、径方向外側に凸の曲げ変形が生じることで発生する曲げ応力が作用する。Vは「径方向外側に凸の曲げ」である。
したがって、実施の形態3の回転電機は、ブリッジ部応力を低減すると共に、トルク低下を抑制し、ロータコアの耐久性を向上させることができる。さらに、リラクタンストルクの低下を防止すると共に永久磁石の冷却効果を高めることができる。
実施の形態4の回転電機は、スリットに充填剤を充填したものである。
実施の形態4の図25において、実施の形態1と同一あるいは相当部分は、同一の符号を付している。
なお、実施の形態1と区別するために、回転電機400としている。
磁石挿入孔21と永久磁石4は周方向に隣接する2個で1セットとなり、回転軸の中心側から径方向外側に向かって広がる12個のV字を構成する。1つの磁極はV字に構成された2つの磁石挿入孔21と2つの永久磁石4で構成され、12個の磁極が周方向に並べて配置されている。
磁石挿入孔21とロータコア3のロータ外周面20とに挟まれて構成された薄肉部を外周ブリッジ部22とする。また、V字を構成する2つの磁石挿入孔21(21a、21b)に挟まれ、V字の周方向の中央部であり径方向内側に構成される薄肉部を中央ブリッジ部23とする。
2つの磁石挿入孔21(21a、21b)およびロータ外周面20で囲む三角型の部分を外周鉄部24とする。
外周鉄部24にはスリット25が形成されている。スリット25はロータ外周面20から径方向内側に切り込んで延びる延伸部251と、空隙部252とを備える。
延伸部251は磁極の中心を通り径方向に延びるように配置している。空隙部252はスリット25の径方向内側の先端に位置し、延伸部251の周方向の最小幅よりも大きな周方向の幅を有する。
実施の形態4では、実施の形態1と同様にスリット25によって外周ブリッジ部22に作用する周方向の引張応力を低減できる。よって、実施の形態4においても、ロータコア3で発生する応力を低減することができる。
さらに、スリット25を延伸部251と空隙部252から構成しているため、充填剤253が径方向に移動しようとする場合には空隙部252に引っ掛かり移動が抑制される。すなわち、充填剤253が遠心力によって径方向外側の向き飛散することを防止できる。
ここで、充填剤253はロータコア3と同程度の剛性を持つ場合、ロータコア3の外周部で周方向応力が伝達するためスリット25による応力低減効果が損なわれる。したがって、充填された充填剤253はロータコアの数十分の一の剛性を持つ材料が好ましく、例えば非磁性体の樹脂材料が好適である。
したがって、実施の形態4の回転電機は、ブリッジ部応力を低減すると共に、トルク低下を抑制し、ロータコアの耐久性を向上させることができる。さらに、スリットにより発生する風損および騒音を抑制できる。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組合せる場合が含まれるものとする。
本願に開示される回転電機は、電機子巻線を有するステータと、ステータの内周で回転するロータとを備える回転電機において、ロータのコアに設けられて磁極を構成する複数の永久磁石と、コアの軸方向に貫通して永久磁石を埋設する磁石挿入孔と、磁極を構成する2以上の永久磁石とロータの外周であるロータ外周面とによって囲まれたコアの外周鉄部にロータ外周面からロータの径方向内側へ切り込まれたスリットと、スリットの径方向内側の先端に設けられて軸方向から見て曲線を含みスリットの周方向の幅よりも大きな周方向の幅の空隙部と、冷媒が磁石挿入孔の径方向内側の面に平行に走る磁石挿入孔の面に設けた冷媒入口孔から磁石挿入孔と永久磁石の間に構成される隙間を流れ磁石挿入孔の径方向外側へ供給される冷媒経路とを備えるものである。
本願に開示される回転電機は、電機子巻線を有するステータと、ステータの内周で回転するロータとを備える回転電機において、ロータのコアに設けられて磁極を構成する複数の永久磁石と、コアの軸方向に貫通して永久磁石を埋設する磁石挿入孔と、磁極を構成する2以上の永久磁石とロータの外周であるロータ外周面とによって囲まれたコアの外周鉄部にロータ外周面からロータの径方向内側へ切り込まれたスリットと、スリットの径方向内側の先端に設けられて軸方向から見て曲線を含みスリットの周方向の幅よりも大きな周方向の幅の空隙部と、回転電機の軸に対して垂直なロータの断面において、ロータの回転時の遠心力に対して永久磁石の周方向の径方向外側を保持する第一磁石保持面と、径方向を保持する第二磁石保持面とを有する磁石挿入孔と、第一磁石保持面によって保持される第一磁石面と、第二磁石保持面によって保持される第二磁石面とを有し、第二磁石保持面の中央部は、第二磁石面の中央部よりも第一磁石保持面に近い位置である永久磁石と、第二磁石保持面に隣接し、第一磁石保持面に径方向外側に設けられた応力緩和孔と、冷媒が磁石挿入孔の径方向内側の面に平行に走る磁石挿入孔の面に設けた冷媒入口孔から磁石挿入孔と永久磁石の間に構成される隙間を流れ磁石挿入孔の径方向外側へ供給される冷媒経路とを備えるものである。
本願に開示される回転電機は、電機子巻線を有するステータと、ステータの内周で回転するロータとを備える回転電機において、ロータのコアに設けられて磁極を構成する複数の永久磁石と、コアの軸方向に貫通してV字に構成された永久磁石を埋設する磁石挿入孔と、磁極を構成する2以上の永久磁石とロータの外周であるロータ外周面とによって囲まれたコアの外周鉄部にロータ外周面からロータの径方向内側へ切り込まれたスリットと、スリットの径方向内側の先端に設けられて軸方向から見て曲線を含みスリットの周方向の幅よりも大きな周方向の幅の空隙部と、スリットおよび空隙部は、永久磁石の周方向に沿って径方向外側に位置する外郭線を延長しV字中心で交差させた線をV字形状線とし、空隙部とV字形状線との最短距離を結ぶ線を第一スリット線とし、スリットの径方向外側を始点として、スリットの中央を通り、空隙部において第一スリット線と最短距離で結合する線を第二スリット線としたとき、第二スリット線の長さが第一スリット線の長さと第二スリット線の長さとの和の0.7倍以上0.86倍以下に構成され、回転電機の軸に対して垂直なロータの断面において、ロータの回転時の遠心力に対して永久磁石の周方向の径方向外側を保持する第一磁石保持面と、径方向を保持する第二磁石保持面とを有する磁石挿入孔と、第一磁石保持面によって保持される第一磁石面と、第二磁石保持面によって保持される第二磁石面とを有し、第二磁石保持面の中央部は、第二磁石面の中央部よりも第一磁石保持面に近い位置である永久磁石と、第二磁石保持面に隣接し、第一磁石保持面に径方向外側に設けられた応力緩和孔と、冷媒が磁石挿入孔の径方向内側の面に平行に走る磁石挿入孔の面に設けた冷媒入口孔から磁石挿入孔と永久磁石の間に構成される隙間を流れ磁石挿入孔の径方向外側へ供給される冷媒経路とを備えるものである。
Claims (8)
- 電機子巻線を有するステータと、前記ステータの内周で回転するロータとを備える回転電機において、
前記ロータのコアには磁極を構成する複数の永久磁石が前記コアの軸方向に貫通した磁石挿入孔に埋設され、
各前記磁極は2つ以上の前記永久磁石によって構成され、
各前記磁極において前記永久磁石とロータ外周面とによって取り囲む外周鉄部に前記ロータ外周面から前記ロータの径方向内側へ切込まれたスリットを備え、
前記スリットの径方向内側の先端には、前記スリットの周方向の幅よりも大きな周方向の幅の空隙部を有する回転電機。 - 前記回転電機の軸に対して垂直な前記ロータの断面において、前記磁石挿入孔の径方向外側で周方向に延びる外郭線を延長した線と前記空隙部との距離が最短となる前記空隙部は、前記スリットの幅の最小値の1/2よりも大きな径の曲線、または前記延長した線と平行な直線で構成されている請求項1に記載の回転電機。
- 前記回転電機の軸に対して垂直な前記ロータの断面において、前記スリットの前記ロータ外周面に対する角度は前記ロータの径方向に対して周方向に傾いている請求項1または請求項2に記載の回転電機。
- 前記磁石挿入孔に発生する応力のアンバランスを調整するために、各前記磁極を構成する前記磁石挿入孔は異なる形状である請求項3に記載の回転電機。
- 前記ステータと鎖交する前記永久磁石の磁束を調整するために、各前記磁極を構成する前記永久磁石は、異なる大きさである請求項3に記載の回転電機。
- 前記スリットで分断される前記外周鉄部の面積を調整するために、前記スリットは湾曲している請求項3に記載の回転電機。
- 前記回転電機の軸に対して垂直な前記ロータの断面において、前記磁石挿入孔は、前記ロータの回転時の遠心力に対して前記永久磁石の周方向の径方向外側を保持する第一磁石保持面と、径方向を保持する第二磁石保持面とを有し、
前記永久磁石は、前記第一磁石保持面によって保持される第一磁石面と、前記第二磁石保持面によって保持される第二磁石面とを有し、
前記第二磁石保持面の中央部は、前記第二磁石面の中央部よりも前記第一磁石保持面に近い位置である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の回転電機。 - 前記スリットに、非磁性体の樹脂材料である充填剤を備えた請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の回転電機。
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