以下に、本発明の実施の形態にかかるレーザ加工装置、レーザ加工方法、レーザ加工装置の制御装置および機械学習装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかるレーザ加工装置の概略構成を示す図である。図2は、実施の形態1にかかるレーザ加工装置が有する光学系の構成を示す図である。レーザ加工装置1は、被加工物へのレーザビームLの照射によって被加工物を加工する。レーザ加工装置1は、被加工物である基板9に穴を形成する穴あけ加工を行う。基板9は、金属層と樹脂層とを有する積層体である。なお、図2に示すX軸とY軸とは、水平方向に平行、かつ互いに垂直な2軸とする。図2に示すZ軸は、鉛直方向に平行、かつX軸とY軸とに垂直な軸とする。
レーザ加工装置1は、パルスレーザ発振によってレーザビームLを出射するレーザ発振器2と、レーザビームLのビーム径を調整するビーム径調整部3と、入射したレーザビームLの一部を通して、入射したレーザビームLの一部を遮蔽するマスク4とを有する。実施の形態1において、レーザ発振器2は、赤外光を出力するCO2レーザである。レーザ加工装置1は、レーザ発振器2によって発振されるレーザビームLのエネルギーを変化させることにより、基板9に照射するレーザビームLのエネルギーを調整することができる。
ビーム径調整部3は、複数のレンズ3aを有する。ビーム径調整部3は、レンズ3a同士の間隔を調整することによって、レーザビームLのビーム径を調整する。マスク4には、ビーム径調整部3によってビーム径が調整されたレーザビームLが入射する。マスク4には、レーザビームLの一部を通すための開口が設けられている。レーザビームLが開口を通ることによって、レーザビームLのビーム径が変更され、かつレーザビームLの断面が整形される。レーザビームLのビーム径が変更されることによって、レーザビームLの断面の面積は変化する。
レーザ加工装置1は、レーザビームLを偏向させるガルバノスキャナ5,6と、レーザビームLを収束する集光光学系であるfθレンズ7とを備える。ガルバノスキャナ5,6は、レーザビームLが反射する反射面を有する。ガルバノスキャナ5は、特定の振り角の範囲内において反射面を回転することによって、基板9上におけるレーザビームLの入射位置をX軸方向において変化させる。ガルバノスキャナ6は、特定の振り角の範囲内において反射面を回転することによって、基板9上におけるレーザビームLの入射位置をY軸方向において変化させる。ガルバノスキャナ5,6は、レーザビームLで基板9をスキャンする。レーザ加工装置1は、ガルバノスキャナ5,6の駆動によって、X軸方向とY軸方向とにおいてレーザビームLの入射位置を変化させる。ガルバノスキャナ5,6の駆動は、スキャンエリア内の目標の位置にレーザビームLが入射するように制御される。スキャンエリアは、ガルバノスキャナ5,6によってスキャンされるエリアであって、ガルバノスキャナ5,6の駆動によって加工可能な範囲である。スキャンエリアは、ガルバノスキャナ5,6による反射面の振り角に対応するエリアである。
fθレンズ7は、fθレンズ7の焦点距離fにガルバノスキャナ5,6の偏向角θを掛け合せたfθの位置にて、レーザビームLを収束させる。また、fθレンズ7は、マスク4にて整形されたレーザビームLの像を基板9へ転写する転写光学系でもある。なお、転写光学系は、fθレンズ7以外のレンズであっても良く、複数のレンズを備えていても良い。ガルバノスキャナ5,6とfθレンズ7とは、加工ヘッドに設けられている。図1および図2では、加工ヘッドの図示を省略している。ビーム径調整部3と、マスク4と、ガルバノスキャナ5,6と、fθレンズ7とは、被加工物へレーザビームLを照射するための光学系を構成する。
レーザ加工装置1は、ガルバノスキャナ5とガルバノスキャナ6とのうちの一方のみを備えるものであっても良い。また、レーザ加工装置1は、ガルバノスキャナ5,6以外の構成部品を用いて、レーザビームLを偏向させても良い。レーザビームLの偏向には、音響光学効果を利用して光を偏向させる音響光学偏向器(Acousto-Optic Deflector,AOD)、あるいは電気光学効果を利用して光を偏向させる電気光学偏向器(Electro-Optic Deflector,EOD)が用いられても良い。
レーザ加工装置1での加工の際に、基板9は、加工のためのテーブルであるXYテーブル8に配置される。XYテーブル8は、X軸方向とY軸方向とへ駆動可能なテーブルである。XYテーブル8は、X軸方向へ駆動するX駆動部8aと、Y軸方向へ駆動するY駆動部8bとを有する。基板9は、XYテーブル8の駆動によって、X軸方向とY軸方向とへ移動する。レーザ加工装置1は、加工ヘッドに対して基板9を移動させることによって、基板9におけるレーザビームLの入射位置を、X軸方向とY軸方向とにおいて変化させる。レーザ加工装置1は、基板9を移動させることによって、基板9の中でスキャンエリアを切り換える。レーザ加工装置1は、スキャンエリアを切り換えて加工を行うことによって、スキャンエリアよりも広い面積を有する基板9を精度良く加工することができる。
なお、レーザ加工装置1は、XYテーブル8に代えて、X軸方向とY軸方向とのうちの一方へ駆動可能なテーブルを有しても良い。また、加工ヘッドは、テーブルに対して、X軸方向とY軸方向とのうちの一方、あるいはX軸方向とY軸方向との双方へ駆動可能であっても良い。レーザ加工装置1は、ガルバノスキャナ5,6を駆動するとともに、テーブルと加工ヘッドとのうちの少なくとも一方を駆動することによって、基板9におけるレーザビームLの入射位置を変化させる。
レーザ加工装置1は、レーザ加工装置1の全体を制御する制御装置10を有する。制御装置10は、ピーク出力、パルス幅、パルス数およびパルス周波数といった指令値に応じた発振制御信号をレーザ発振器2へ出力することによって、レーザ発振器2を制御する。制御装置10は、ビーム径の指令値に応じたビーム径制御信号をビーム径調整部3へ出力することによって、ビーム径調整部3を制御する。制御装置10は、回転角の指令値に応じた回転制御信号をガルバノスキャナ5,6へ出力することによって、ガルバノスキャナ5,6を制御する。制御装置10は、位置指令値に応じた位置制御信号をXYテーブル8へ出力することによって、XYテーブル8を制御する。
レーザ加工装置1は、基板9の表面を撮像するカメラ11を有する。カメラ11は、被加工物の表面の明度を測定する明度測定部としての機能を備える。カメラ11は、基板9のうちレーザビームLが入射する表面を撮像する。また、カメラ11は、基板9の位置を測定するセンサとしての機能を備える。制御装置10は、カメラ11を制御する。カメラ11は、撮像によって得られた画像情報を制御装置10へ出力する。
また、カメラ11には、基板9の表面を照明するための照明器が設けられている。カメラ11は、照明器によって照明されている状態の基板9を撮像する。照明器は、カメラ11に設けられているものに限られず、カメラ11とは別に設けられたものであっても良い。図1および図2では、照明器の図示を省略する。
実施の形態1において、レーザ加工装置1は、基板9の表面の明度をカメラ11によって測定し、明度の測定結果に基づいて、基板9へ照射するレーザビームLのエネルギーを調整する。レーザ加工装置1は、レーザ発振器2によるレーザビームLの出力を調整することによって、基板9へ照射するレーザビームLのエネルギーを調整する。
被加工物の位置を測定するために従来使用されるカメラ11を明度測定部として使用することによって、レーザ加工装置1は、明度を測定するための測定器を、カメラ11とは別に設ける必要がなくなる。レーザ加工装置1は、カメラ11とは別に測定器が必要となる場合と比べて、簡易な構成とすることができる。
図3は、実施の形態1にかかるレーザ加工装置が有する制御装置の機能構成を示すブロック図である。図3では、制御装置10が有する構成要素のうち、実施の形態1においてレーザビームLのエネルギーを調整するための構成要素を示し、制御装置10が有する他の構成要素の図示を省略する。
制御装置10は、カメラ11による明度の測定結果を取得する取得部12と、基板9へ照射するレーザビームLのエネルギーを調整するレーザエネルギー調整部13とを有する。制御装置10は、レーザエネルギー調整部13による調整結果に応じた発振制御信号を生成するレーザ発振制御部14と、明度とレーザビームLのエネルギーとの関係を保持する保持部15とを有する。取得部12には、カメラ11による明度の測定結果である明度データ17が入力される。取得部12は、取得された明度データ17をレーザエネルギー調整部13へ出力する。レーザエネルギー調整部13は、エネルギーの調整結果であるエネルギーデータ18をレーザ発振制御部14へ出力する。図3に示す各部の詳細については後述する。
ここで、レーザ加工装置1による穴あけ加工について説明する。図4は、実施の形態1にかかるレーザ加工装置による加工前における基板の上面図である。図5は、図4に示す基板の断面図である。図6は、実施の形態1にかかるレーザ加工装置による加工後における基板の上面図である。図7は、図6に示す基板の断面図である。
基板9は、金属層である2つの銅箔21,22と、2つの銅箔21,22に挟まれている樹脂層23とを有する。基板9は、導電層を構成する2つの銅箔21,22と、絶縁層を構成する樹脂層23との3つの層を有する積層体である。樹脂層23としては、ガラスクロス入りのエポキシ樹脂が使用される。樹脂層23としては、ポリイミド樹脂、あるいはエポキシ樹脂が使用されても良い。基板9の金属層には、銅以外の金属が使用されても良い。
レーザ加工装置1は、2つの銅箔21,22のうち上層の銅箔21の表面にレーザビームLを照射する。基板9に形成される穴24は、銅箔21と樹脂層23とを貫く。また、穴24の底面には、下層の銅箔22が露出される。図6に示す上面図において、穴24は円形を呈する。
レーザ加工装置1は、銅箔22を底面とする穴24を形成するいわゆる止まり穴加工を行う。なお、レーザ加工装置1は、銅箔21と樹脂層23と銅箔22とのすべてを貫く貫通穴を形成する穴あけ加工を行っても良い。レーザ加工装置1による加工の対象とされる被加工物は、樹脂層23の中に内層である金属層を含む基板であっても良い。かかる基板には、レーザ加工装置1は、内層である金属層を底面とする止まり穴加工を行う。
図8は、図3に示す制御装置が有するレーザエネルギー調整部によるエネルギーの調整について説明するための図である。図8には、レーザ発振器2によるレーザ出力と時間との関係の例を表している。図3に示すレーザエネルギー調整部13は、レーザビームLのピーク出力、あるいはレーザビームLのパルス幅を変化させることによって、レーザ発振器2によるレーザビームLの出力を調整する。
ピーク出力がP0、かつパルス幅がT0であるレーザビームLをレーザ発振器2が出力している状態から、レーザビームLのエネルギーを増加させる調整を行う場合に、レーザエネルギー調整部13は、パルス幅をT0からT1へ増加させる調整を行う。または、レーザエネルギー調整部13は、ピーク出力をP0からP1へ増加させる調整を行う。ここで、T0<T1およびP0<P1が成り立つとする。
図9は、実施の形態1にかかるレーザ加工装置による加工における明度とレーザビームのエネルギーとの関係について説明するための図である。図9には、実施の形態1によってレーザビームLのエネルギーを調整した場合における明度およびエネルギーの関係の例と、比較例の場合における明度およびエネルギーの関係の例とを示している。図9において、明度は、加工時における基板9の表面の明るさを表す。なお、以下の説明では、基板9の表面を、基板表面と称することがある。明度は、観測点から基板表面を見た場合において、観測点にて観測される基板表面の明るさとする。基板表面の反射率が高いほど、明度は高くなる。図9において、明度相対値は、明度「0」を0%、明度「60」を100%として、明度の値を相対的に表したものとする。
図9において、エネルギーは、基板9の表面に照射されるレーザビームLのエネルギーを表す。また、図9には、実施の形態1と比較例とについて、明度およびエネルギーの関係と併せて、当該エネルギーのレーザビームLを使用することによって形成される穴24の径の例を示している。径とは、基板9の表面における穴24の径であるものとする。以下の説明では、基板9の表面における穴24の径を、穴径と称することがある。図9において、穴径の単位はμm、エネルギーの単位はmJとする。図9に示す明度とエネルギーとの関係は、あらかじめ設定された径の穴24を基板9に形成するための関係を表す。図9に示す例では、あらかじめ設定された径は50μmとする。
保持部15は、互いに対応付けられた明度の値とエネルギーの値とを保持する。明度の値ごとに対応付けられているエネルギーの値は、当該明度の基板9に穴24を形成した場合において所望の穴径に最も近い穴径の穴24を形成し得るときのエネルギーの値を表している。
保持部15に明度の値とエネルギーの値とが保持されることによって、制御装置10には、明度とエネルギーとの関係があらかじめ登録される。明度とエネルギーとの関係は、制御装置10の製造者によって制御装置10に登録される。この他、明度とエネルギーとの関係は、レーザ加工装置1のユーザによって登録されても良い。ユーザは、基板9に穴あけ加工を行う実験を複数の明度の各々について行い、所望の径に最も近い径の穴24を形成し得るときのエネルギーの値を明度ごとに求めることによって、明度とエネルギーとの関係を登録し得る。
保持部15には、所望の穴径が50μmである場合における明度とエネルギーとの関係として、図9において実施の形態1について示すような明度の値とエネルギーの値とが保持されている。レーザエネルギー調整部13は、保持部15に保持されている関係を参照することによって、明度の測定結果に対応するエネルギーの値を取得する。レーザエネルギー調整部13は、取得されたエネルギーの値に従ってピーク出力またはパルス幅を変化させることによって、レーザ発振器2によるレーザビームLの出力を調整する。レーザ発振制御部14は、レーザエネルギー調整部13による調整結果に応じた発振制御信号を生成する。このようにして、レーザエネルギー調整部13は、明度を測定した結果に基づいて、基板9へ照射するレーザビームLのエネルギーを調整する。
なお、保持部15には、50μmの穴径についての関係のみならず、50μm以外の穴径についての関係が保持されていても良い。保持部15には、複数の穴径について、穴径ごとの関係が保持されていても良い。レーザエネルギー調整部13は、所望とする穴径についての関係を参照することによって、所望とする穴径に応じてレーザビームLのエネルギーを調整することができる。
実施の形態1によると、レーザエネルギー調整部13は、明度が「0」から高くなるに従って、エネルギーを「5.0」から徐々に増加させる調整を行う。これにより、レーザ加工装置1は、明度が「0」から「30」である場合において、穴径50μmの穴24を形成することができる。また、レーザ加工装置1は、明度が「35」である場合において、穴径48μmの穴24を形成することができる。
一方、比較例では、レーザ加工装置1は、明度に関わらずエネルギーの値を「5.0」として、所望の穴径が50μmである場合における穴あけ加工を行うとする。比較例では、明度が「0」から「35」にまで高くなった場合に、穴径は50μmから27μmにまで減少する。
図10は、実施の形態1にかかるレーザ加工装置によって形成される穴の径と明度相対値との関係の例を示す図である。図10では、実施の形態1と比較例とについて、穴径と明度相対値との関係をグラフによって表している。穴径は、穴あけ加工における加工品質の1つとされる。所望の穴径に近い穴径の穴24を形成可能であるほど、加工品質が安定していると言える。
実施の形態1を比較例と比較すると、明度相対値が0%から60%の範囲である場合において、所望とする50μmからの穴径の減少が大幅に抑制されている。したがって、実施の形態1によると、レーザ加工装置1は、比較例の場合よりも安定した加工品質での穴あけ加工を行うことができる。レーザ加工装置1は、加工時に明度を測定して、明度の測定結果に基づいてレーザビームLのエネルギーを調整することによって、安定した加工品質での穴あけ加工を行うことができる。
基板表面の状態は、被加工物である複数の基板9同士においてばらつきが生じ得る。実施の形態1によると、レーザ加工装置1は、加工時に明度を測定した結果に基づいて、加工時における基板表面の状態に応じたエネルギーの調整を行うことができる。これにより、レーザ加工装置1は、加工時における基板表面の状態に適したエネルギーのレーザビームLによって、安定した加工品質での穴あけ加工を行うことができる。
図11は、実施の形態1にかかるレーザ加工装置の動作手順を示すフローチャートである。ステップS1において、基板9がXYテーブル8に置かれてから、カメラ11は、基板表面の明度を測定する。カメラ11は、明度の測定結果を取得部12へ出力する。
ステップS2において、レーザエネルギー調整部13は、明度の測定結果に対応するエネルギーの値を保持部15から読み出す。図9に示す明度の値とエネルギーの値とが保持部15に保持されているとして、明度の測定結果の値が「10」であったとする。この場合、レーザエネルギー調整部13は、明度「10」に対応するエネルギーの値である「5.3」を保持部15から読み出す。このように、レーザエネルギー調整部13は、保持部15に保持されている関係を参照することによって、明度の測定結果に対応するエネルギーの値を取得する。
なお、保持部15には、互いに対応付けられた明度の値とエネルギーの値とが保持される以外に、明度とエネルギーとの関係を表す関係式が保持されていても良い。レーザエネルギー調整部13は、かかる関係式を参照することによって、明度の値に対応するエネルギーの値を求めることができる。
レーザエネルギー調整部13は、取得されたエネルギーの値に従ってピーク出力の値を調整し、調整後のピーク出力の値をレーザ発振制御部14へ出力する。または、レーザエネルギー調整部13は、取得されたエネルギーの値に従ってパルス幅の値を調整し、調整後のパルス幅の値をレーザ発振制御部14へ出力する。
レーザ発振制御部14は、調整後のピーク出力の値または調整後のパルス幅の値に応じた発振制御信号を生成する。ステップS3において、レーザ発振制御部14は、生成された発振制御信号をレーザ発振器2へ出力する。これにより、レーザ加工装置1は、レーザビームLのエネルギーを調整するための処理を終了する。
なお、保持部15には、明度とエネルギーとの関係が保持される以外に、明度とピーク出力との関係、あるいは明度とパルス幅との関係が保持されても良い。この場合、レーザエネルギー調整部13は、明度に対応するピーク出力の値、あるいは明度に対応するパルス幅の値を取得し、取得されたピーク出力の値、または取得されたパルス幅の値をレーザ発振制御部14へ出力する。レーザ発振制御部14は、入力されたピーク出力の値または入力されたパルス幅の値に応じた発振制御信号を生成する。この場合も、レーザエネルギー調整部13は、明度を測定した結果に基づいてレーザビームLのエネルギーを調整することができる。
レーザ加工装置1は、XYテーブル8に配置される基板9が入れ換えられるごとに、ステップS1の測定を行う。レーザ加工装置1は、基板9が入れ換えられるごとに、ステップS1の測定に続いて、ステップS2およびステップS3の手順による動作を行う。このように、レーザ加工装置1は、基板9が入れ換えられるごとに、明度を測定した結果に基づいてレーザビームLのエネルギーを調整する。レーザ加工装置1は、基板9が入れ換えられるごとに明度を測定することによって、基板9ごとの表面の状態のばらつきに応じたエネルギーの調整を行うことができる。これにより、レーザ加工装置1は、基板9ごとにおける表面の状態にばらつきがある場合において、安定した加工品質での穴あけ加工を行うことができる。
レーザ加工装置1は、XYテーブル8に配置された基板9においてスキャンエリアが切り換えられるごとに、すなわちXYテーブル8が基板9を移動させるごとに、ステップS1の測定を行っても良い。レーザ加工装置1は、スキャンエリアが切り換えられるごとに、ステップS1の測定に続いて、ステップS2およびステップS3の手順による動作を行う。このように、レーザ加工装置1は、スキャンエリアが切り換えられるごとに、明度を測定した結果に基づいてレーザビームLのエネルギーを調整する。レーザ加工装置1は、スキャンエリアが切り換えられるごとに明度を測定することによって、基板9の中における表面の状態のばらつきに応じたエネルギーの調整を行うことができる。これにより、レーザ加工装置1は、基板9の中に表面の状態にばらつきがある場合において、安定した加工品質での穴あけ加工を行うことができる。
次に、制御装置10が有するハードウェア構成について説明する。制御装置10の機能は、処理回路の使用によって実現される。処理回路は、制御装置10に搭載される専用のハードウェア、または、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサである。
図12は、実施の形態1にかかる制御装置が有するハードウェア構成の例を示す第1の図である。図12には、図3に示す制御装置10の各機能が専用のハードウェアを使用して実現される場合におけるハードウェア構成を示している。制御装置10は、各種処理を実行する処理回路51と、制御装置10の外部にある機器との接続インタフェースであるインタフェース52と、各種情報を記憶する外部記憶装置53とを備える。処理回路51とインタフェース52と外部記憶装置53とは、相互に接続されている。
専用のハードウェアである処理回路51は、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらの組み合わせである。レーザエネルギー調整部13およびレーザ発振制御部14の各機能は、処理回路51を用いて実現される。
取得部12の機能は、インタフェース52を用いて実現される。また、制御装置10は、インタフェース52を介してレーザ発振器2へ発振制御信号を出力する。制御装置10は、発振制御信号以外の各種制御信号も、インタフェース52を介して制御対象である各構成要素へ出力する。保持部15の機能は、外部記憶装置53を用いて実現される。
図13は、実施の形態1にかかる制御装置が有するハードウェア構成の例を示す第2の図である。図13には、プログラムを実行するハードウェアを用いて制御装置10の機能が実現される場合におけるハードウェア構成を示している。プロセッサ54とメモリ55とインタフェース52と外部記憶装置53とは、相互に接続されている。
プロセッサ54は、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ54は、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、又はDSP(Digital Signal Processor)であっても良い。レーザエネルギー調整部13およびレーザ発振制御部14の各機能は、プロセッサ54と、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェアまたはファームウェアは、プログラムとして記述され、内蔵メモリであるメモリ55に格納される。メモリ55は、不揮発性もしくは揮発性の半導体メモリであって、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)またはEEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)である。
図12および図13において、制御装置が有するハードウェア構成は、各種情報の入力のための入力デバイスと、各種情報を出力する出力デバイスとを有していても良い。入力デバイスは、キーボード、マウスあるいはタッチパネルといったデバイスである。出力デバイスは、各種情報を表示するディスプレイ、あるいは音声を発生するスピーカなどである。図12および図13では、入力デバイスおよび出力デバイスの図示を省略する。
実施の形態1によると、レーザ加工装置1は、被加工物の表面の明度を測定した結果に基づいて、レーザ発振器2によるレーザビームLの出力を調整する。レーザ加工装置1は、レーザビームLの出力を調整することによって、被加工物へ照射するレーザビームLのエネルギーを調整する。これにより、レーザ加工装置1は、安定した加工品質で加工を行うことができるという効果を奏する。
実施の形態2.
図14は、本発明の実施の形態2にかかるレーザ加工装置が有する制御装置の機能構成を示すブロック図である。実施の形態2において、制御装置10は、レーザ発振器2から出射されたレーザビームLのビーム径を調整することによって、基板9へ照射するレーザビームLのエネルギーを調整する。実施の形態2では、実施の形態1とは異なる構成について主に説明する。
制御装置10は、レーザエネルギー調整部13による調整結果に応じたビーム径制御信号を生成するビーム径制御部16を有する。なお、図14では、制御装置10が有する構成要素のうち、実施の形態2においてレーザビームLのエネルギーを調整するための構成要素を示し、制御装置10が有する他の構成要素の図示を省略する。ビーム径制御部16の機能は、図12に示す処理回路51または図13に示すプロセッサ54を使用することによって実現される。
図15は、図14に示す制御装置が有するレーザエネルギー調整部によるエネルギーの調整について説明するための図である。ビーム径調整部3は、レンズ3a同士の間隔を変化させることによって、レーザビームLのビーム径を調整する。ビーム径調整部3は、図15の上段に示す状態から、図15の下段に示すようにレンズ3a同士の間隔を広げることによって、ビーム径調整部3から出射するレーザビームLのビーム径を縮小させる。マスク4におけるビーム径が小さいほど、マスク4の開口を通るレーザビームLの強度が高くなることによって、マスク4から出射されるレーザビームLのエネルギーが高くなる。
レーザエネルギー調整部13は、保持部15に保持されている関係を参照することによって、明度の測定結果に対応するエネルギーの値を取得する。レーザエネルギー調整部13は、取得されたエネルギーの値に従ってレーザビームLのビーム径を調整する。ビーム径制御部16は、レーザエネルギー調整部13による調整結果に応じたビーム径制御信号を生成する。このようにして、レーザエネルギー調整部13は、明度を測定した結果に基づいて、基板9へ照射するレーザビームLのエネルギーを調整する。
図16は、実施の形態2にかかるレーザ加工装置の動作手順を示すフローチャートである。図16に示すステップS1およびステップS2の手順は、図11の場合と同様である。レーザエネルギー調整部13は、取得されたエネルギーの値に従ってビーム径の値を調整し、調整後のビーム径の値をビーム径制御部16へ出力する。
ビーム径制御部16は、調整後のビーム径の値に応じたビーム径制御信号を生成する。ステップS11において、ビーム径制御部16は、生成されたビーム径制御信号をビーム径調整部3へ出力する。これにより、レーザ加工装置1は、レーザビームLのエネルギーを調整するための処理を終了する。
なお、保持部15には、明度とエネルギーとの関係が保持される以外に、明度とビーム径との関係が保持されても良い。この場合、レーザエネルギー調整部13は、明度に対応するビーム径の値を取得し、取得されたビーム径の値をビーム径制御部16へ出力する。ビーム径制御部16は、入力されたビーム径の値に応じたビーム径制御信号を生成する。この場合も、レーザエネルギー調整部13は、明度を測定した結果に基づいてレーザビームLのエネルギーを調整することができる。
レーザ加工装置1は、実施の形態1の場合と同様に、XYテーブル8に配置される基板9が入れ換えられるごとに、ステップS1の測定を行う。レーザ加工装置1は、実施の形態1の場合と同様に、XYテーブル8に配置された基板9においてスキャンエリアが切り換えられるごとに、ステップS1の測定を行っても良い。
実施の形態2によると、レーザ加工装置1は、被加工物の表面の明度を測定した結果に基づいて、レーザ発振器2から出射されたレーザビームLのビーム径を調整する。レーザ加工装置1は、レーザビームLのビーム径を調整することによって、被加工物へ照射するレーザビームLのエネルギーを調整する。これにより、レーザ加工装置1は、安定した加工品質で加工を行うことができるという効果を奏する。
実施の形態3.
図17は、本発明の実施の形態3にかかるレーザ加工装置の動作手順を示すフローチャートである。実施の形態3にかかるレーザ加工装置1は、実施の形態1にかかるレーザ加工装置1の動作に加えて、明度の測定結果に基づいて、加工を中止するか否かを判断する。実施の形態3にかかるレーザ加工装置1は、実施の形態1にかかるレーザ加工装置1と同様の構成を有する。実施の形態3では、実施の形態1とは異なる動作手順について主に説明する。
図9に示す明度とエネルギーとの関係によると、明度が「0」から「30」の範囲である場合には、実施の形態1と同様にレーザビームLのエネルギーを適宜調整することによって、所望とする穴径の穴24を形成できる。穴径48μmが、所望とする穴径50μmに対して許容可能な誤差範囲に包含されるとすると、明度が「35」である場合も、レーザビームLのエネルギーを適宜調整することによって、許容可能な誤差範囲内の穴径の穴24を形成できる。一方、穴径24μmが、所望とする穴径50μmに対して許容可能な誤差範囲に包含されないとすると、明度が「40」から「60」の範囲である場合は、レーザビームLのエネルギーを調整しても、許容可能な誤差範囲内の穴径の穴24を形成することができない。このような明度と穴径との関係に基づいて、レーザエネルギー調整部13には、明度「0」から明度「35」の範囲が、穴24を形成可能な明度の基準範囲として設定される。レーザエネルギー調整部13は、明度の測定結果である値が、あらかじめ設定された基準範囲外の値である場合に、被加工物の加工を中止する。
図17に示すステップS1の手順は、図11の場合と同様である。ステップS21において、レーザエネルギー調整部13は、測定された明度の値は基準範囲内の値であるか否かを判断する。測定された明度の値が基準範囲内の値である場合(ステップS21,Yes)、制御装置10は、ステップS2へ手順を進める。図17に示すステップS2およびステップS3の手順は、図11の場合と同様である。
一方、測定された明度の値が基準範囲内の値ではない場合(ステップS21,No)、制御装置10は、ステップS22へ手順を進める。ステップS22では、制御装置10は、レーザ加工装置1による加工を中止する。制御装置10は、加工の中止に伴い、制御装置10のディスプレイによってアラーム表示を行う。あるいは、制御装置10は、制御装置10のスピーカによってアラーム音を発生する。これにより、レーザ加工装置1は、図17に示す手順による処理を終了する。
制御装置10は、測定された明度の値が基準範囲外の値であって、許容可能な誤差範囲内の穴径の穴24を形成できない場合に、穴あけ加工を中止する。レーザ加工装置1は、穴あけ加工を中止することによって、許容可能な誤差範囲に含まれない穴径の穴24が形成され続けることを抑制できる。これにより、レーザ加工装置1は、歩留まりを向上させることができる。なお、レーザ加工装置1は、実施の形態2にかかるレーザ加工装置1の動作に加えて、明度の測定結果に基づいて、加工を中止するか否かを判断しても良い。この場合も、レーザ加工装置1は、歩留まりを向上させることができる。
レーザ加工装置1は、実施の形態1の場合と同様に、XYテーブル8に配置される基板9が入れ換えられるごとに、ステップS1の測定を行う。レーザ加工装置1は、実施の形態1の場合と同様に、XYテーブル8に配置された基板9においてスキャンエリアが切り換えられるごとに、ステップS1の測定を行っても良い。
実施の形態3によると、レーザ加工装置1は、明度の測定結果である値が、あらかじめ設定された基準範囲外の値である場合に、被加工物の加工を中止する。これにより、レーザ加工装置1は、歩留まりを向上させることができるという効果を奏する。
実施の形態4.
図18は、本発明の実施の形態4にかかるレーザ加工装置が有する制御装置の機能構成を示すブロック図である。実施の形態4では、あらかじめ設定された径の穴24を形成するための明度とエネルギーとの関係が機械学習によって決定される。実施の形態4の制御装置30は、実施の形態1の制御装置10に機械学習のための機能構成が追加されたものである。実施の形態4では、実施の形態1から3と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1から3とは異なる構成について主に説明する。
制御装置30には、実施の形態1の制御装置10が有する機能構成に、機械学習装置31と意思決定部32と穴径測定部33とが追加されている。機械学習装置31は、あらかじめ設定された径の穴24を基板9に形成するための明度とエネルギーとの関係を学習する。意思決定部32は、機械学習装置31が学習した結果に基づいて、図9に例示するような明度とエネルギーとの関係を決定する。
制御装置30には、実施の形態1の場合と同様に、明度データ17が入力される。また、制御装置30には、加工済みの基板9をカメラ11が撮像することによって生成された画像データ34が入力される。穴径測定部33は、画像データ34に基づいて、基板9に形成された穴24の径を測定する。穴径の測定結果である穴径データ35を機械学習装置31へ出力する。また、機械学習装置31には、明度データ17が入力される。レーザエネルギー調整部13は、機械学習装置31へエネルギーデータ18を出力する。このように、機械学習装置31には、明度データ17とエネルギーデータ18と穴径データ35とが入力される。明度データ17は、カメラ11によって測定された明度を表す。エネルギーデータ18は、基板9へ照射されるレーザビームLのエネルギーを表す。穴径データ35は、基板9に形成された穴24の径を表す。機械学習装置31と意思決定部32と穴径測定部33との各機能は、図12に示す処理回路51または図13に示すプロセッサ54を使用することによって実現される。
図19は、図18に示す制御装置が有する機械学習装置の機能構成を示すブロック図である。機械学習装置31は、状態観測部36と学習部37とを有する。明度データ17とエネルギーデータ18と穴径データ35とは、状態観測部36へ入力される。状態観測部36は、カメラ11によって測定された明度と、基板9へ照射されるレーザビームLのエネルギーと、基板9に形成された穴24の径とを状態変数として観測する。学習部37は、状態変数に基づいて作成される訓練データセットに従って、あらかじめ設定された径の穴24を基板9に形成するための明度とエネルギーとの関係を学習する。
学習部37が用いる学習アルゴリズムはどのようなものを用いてもよい。一例として、強化学習(Reinforcement Learning)を適用した場合について説明する。強化学習は、ある環境内におけるエージェントである行動主体が、現在の状態を観測し、取るべき行動を決定する、というものである。エージェントは行動を選択することで環境から報酬を得て、一連の行動を通じて報酬が最も多く得られるような方策を学習する。強化学習の代表的な手法として、Q学習(Q−learning)およびTD学習(TD−learning)などが知られている。例えば、Q学習の場合、行動価値関数Q(s,a)の一般的な更新式である行動価値テーブルは、次の式(1)で表される。行動価値関数Q(s,a)は、環境「s」のもとで行動「a」を選択する行動の価値である行動価値Qを表す。
上記の式(1)において、「st+1」は、時刻「t」における環境を表す。「at」は、時刻「t」における行動を表す。行動「at」によって、環境は「st+1」に変わる。「rt+1」は、その環境の変化によってもらえる報酬を表す。「γ」は、割引率を表す。「α」は、学習係数を表す。Q学習を適用した場合、レーザビームLのエネルギーの値が行動「at」となる。
上記の式(1)により表される更新式は、時刻「t+1」における最良の行動「a」の行動価値が、時刻「t」において実行された行動「a」の行動価値Qよりも大きければ、行動価値Qを大きくし、逆の場合は、行動価値Qを小さくする。換言すれば、時刻「t」における行動「a」の行動価値Qを、時刻「t+1」における最良の行動価値に近づけるように、行動価値関数Q(s,a)を更新する。それにより、ある環境における最良の行動価値が、それ以前の環境における行動価値に順次伝播する。
学習部37は、報酬計算部38と関数更新部39とを有する。報酬計算部38は、状態変数に基づいて報酬を計算する。関数更新部39は、報酬計算部38によって計算される報酬に従って、明度とエネルギーとの関係を決定するための関数を更新する。
報酬計算部38は、形成された穴24の径とあらかじめ設定された径との差を算出し、算出された差と閾値との比較結果に基づいて、報酬「r」を計算する。例えば、ある明度に対するエネルギーの値を変更した結果、算出された差が閾値以下となった場合において、報酬計算部38は、報酬「r」を増大させる。報酬計算部38は、報酬の値である「1」を与えることによって報酬「r」を増大させる。なお、報酬の値は「1」に限られない。また、ある明度に対するエネルギーの値を変更した結果、算出された差が閾値より大きくなった場合において、報酬計算部38は、報酬「r」を低減させる。報酬計算部38は、報酬の値である「−1」を与えることによって報酬「r」を低減させる。なお、報酬の値は「−1」に限られない。
閾値は、穴24の形成において許容可能な誤差であるか否かを判断するための指標であって、あらかじめ設定される。閾値は、レーザ加工装置1のユーザによる入力操作によって設定される。
関数更新部39は、報酬計算部38によって計算される報酬に従って、明度とエネルギーとの関係を決定するための関数を更新する。関数の更新は、訓練データセットに従って、例えば行動価値テーブルを更新することによって行うことができる。行動価値テーブルは、任意の行動とその行動価値とを関連付けてテーブルの形式で記憶したデータセットである。例えばQ学習の場合、上記の式(1)により表される行動価値関数Q(st,at)を、明度とエネルギーとの関係式に使用されるパラメータの値を算出するための関数として用いる。
図20は、図19に示す機械学習装置の動作手順を示すフローチャートである。図20のフローチャートを参照して、行動価値関数Q(s,a)を更新する強化学習方法について説明する。
加工によって基板9に穴24が形成されると、カメラ11は、基板9を撮像し、画像データ34を制御装置30へ出力する。ステップS31において、穴径測定部33は、画像データ34に基づいて、基板9に形成された穴24の径を測定する。ステップS32において、状態観測部36は、状態変数を取得する。ステップS33において、報酬計算部38は、基板9に形成された穴24の径と設定された径との差を算出する。ステップS34において、報酬計算部38は、ステップS33において算出された差と閾値とを比較した結果に基づいて、報酬「r」を算出する。
ステップS35において、関数更新部39は、ステップS34において算出された報酬「r」に基づいて行動価値関数Q(s,a)を更新する。関数更新部39は、上記の式(1)に従って行動価値関数Q(s,a)を更新する。
ステップS36において、関数更新部39は、行動価値関数Q(s,a)が収束したか否かを判定する。関数更新部39は、ステップS35における行動価値関数Q(s,a)の更新が行われなくなることによって行動価値関数Q(s,a)が収束したと判定する。
行動価値関数Q(s,a)が収束していないと判定された場合(ステップS36,No)、機械学習装置31は、動作手順をステップS31へ戻す。行動価値関数Q(s,a)が収束したと判定された場合(ステップS36,Yes)、学習部37による学習が終了する。これにより、機械学習装置31は、図20に示す手順による動作を終了する。なお、機械学習装置31は、ステップS36による判定を行わず、ステップS35からステップS31へ動作手順を戻すことによって学習を継続させることとしても良い。
意思決定部32は、学習部37による学習の結果、すなわち更新された行動価値関数Q(s,a)に基づいて、報酬が最も多く得られる明度とエネルギーとの関係を選択する。意思決定部32は、かかる選択によって決定された関係を保持部15へ出力する。
実施の形態4では、学習部37が用いる学習アルゴリズムに強化学習を適用する場合について説明したが、学習アルゴリズムには、強化学習以外の学習が適用されても良い。学習部37は、強化学習以外の公知の学習アルゴリズム、例えば、深層学習(Deep Learning)、ニューラルネットワーク、遺伝的プログラミング、機能論理プログラミングあるいはサポートベクターマシンといった学習アルゴリズムを用いて機械学習を実行してもよい。
機械学習装置31は、制御装置30に設けられるものに限られない。機械学習装置31は、制御装置30の外部の装置であっても良い。機械学習装置31は、ネットワークを介して制御装置30に接続可能な装置であっても良い。機械学習装置31は、クラウドサーバ上に存在する装置であっても良い。この場合、制御装置30は、外部の機械学習装置31での学習によって決定された関係を保持部15に保持する。制御装置30は、保持部15に保持されている関係を参照することによって、レーザビームLのエネルギーを調整することができる。なお、実施の形態4にて説明する機械学習は、実施の形態2または3における明度とエネルギーとの関係を決定するために適用されても良い。
実施の形態4によると、あらかじめ設定された径の穴24を形成するための明度とエネルギーとの関係が機械学習によって決定される。決定された関係は、保持部15に保持される。レーザエネルギー調整部13は、保持部15に保持されている関係を参照して、明度の測定結果に対応するエネルギーの値を取得することによって、レーザビームLのエネルギーを調整する。制御装置30は、機械学習によって決定された関係に基づいてレーザビームLのエネルギーを調整することによって、あらかじめ設定された径の穴24を形成するための高精度なエネルギー調整を行うことができる。これにより、レーザ加工装置1は、安定した加工品質での加工を行うことができるという効果を奏する。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
制御装置30には、実施の形態1の場合と同様に、明度データ17が入力される。また、制御装置30には、加工済みの被加工物9をカメラ11が撮像することによって生成された画像データ34が入力される。穴径測定部33は、画像データ34に基づいて、被加工物9に形成された穴24の径を測定し、穴径の測定結果である穴径データ35を機械学習装置31へ出力する。また、機械学習装置31には、明度データ17が入力される。レーザエネルギー調整部13は、機械学習装置31へエネルギーデータ18を出力する。このように、機械学習装置31には、明度データ17とエネルギーデータ18と穴径データ35とが入力される。明度データ17は、カメラ11によって測定された明度を表す。エネルギーデータ18は、被加工物9へ照射されるレーザビームLのエネルギーを表す。穴径データ35は、被加工物9に形成された穴24の径を表す。機械学習装置31と意思決定部32と穴径測定部33との各機能は、図12に示す処理回路51または図13に示すプロセッサ54を使用することによって実現される。