以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[実施の形態1]
(通信装置の基本構成)
図1は、本実施の形態1に係るアンテナモジュール100が適用される通信装置10の一例のブロック図である。通信装置10は、たとえば、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットなどの携帯端末や、通信機能を備えたパーソナルコンピュータなどである。
図1を参照して、通信装置10は、アンテナモジュール100と、ベースバンド信号処理回路を構成するBBIC200とを備える。アンテナモジュール100は、給電回路の一例であるRFIC110と、アンテナ装置120とを備える。通信装置10は、BBIC200からアンテナモジュール100へ伝達された信号を高周波信号にアップコンバートしてアンテナ装置120から放射するとともに、アンテナ装置120で受信した高周波信号をダウンコンバートしてBBIC200にて信号を処理する。
図1のアンテナ装置120においては、放射素子125が二次元のアレイ状に配置された構成を有している。放射素子125の各々は、2つの給電素子121,122を含んでいる。給電素子121,122は、図2で後述するように、給電素子の法線方向に重なるように配置されている。アンテナ装置120は、放射素子125の給電素子121および給電素子122から、それぞれ異なる周波数帯域の電波を放射することが可能に構成されている。すなわち、アンテナ装置120は、スタック型のデュアルバンドタイプのアンテナ装置である。各給電素子121,122には、RFIC110から異なる高周波信号が供給される。
図1では、説明を容易にするために、アンテナ装置120を構成する複数の放射素子125のうち、4つの放射素子125に対応する構成のみ示され、同様の構成を有する他の放射素子125に対応する構成については省略されている。なお、アンテナ装置120は必ずしも二次元アレイでなくてもよく、1つの放射素子125でアンテナ装置120が形成される場合であってもよい。また、複数の放射素子125が一列に配置された一次元アレイであってもよい。本実施の形態においては、放射素子125に含まれる給電素子121,122は、平板形状を有するパッチアンテナである。
RFIC110は、スイッチ111A〜111H,113A〜113H,117A,117Bと、パワーアンプ112AT〜112HTと、ローノイズアンプ112AR〜112HRと、減衰器114A〜114Hと、移相器115A〜115Hと、信号合成/分波器116A,116Bと、ミキサ118A,118Bと、増幅回路119A、119Bとを備える。このうち、スイッチ111A〜111D,113A〜113D,117A、パワーアンプ112AT〜112DT、ローノイズアンプ112AR〜112DR、減衰器114A〜114D、移相器115A〜115D、信号合成/分波器116A、ミキサ118A、および増幅回路119Aの構成が、給電素子121から放射される第1周波数帯域の高周波信号のための回路である。また、スイッチ111E〜111H,113E〜113H,117B、パワーアンプ112ET〜112HT、ローノイズアンプ112ER〜112HR、減衰器114E〜114H、移相器115E〜115H、信号合成/分波器116B、ミキサ118B、および増幅回路119Bの構成が、給電素子122から放射される第2周波数帯域の高周波信号のための回路である。
高周波信号を送信する場合には、スイッチ111A〜111H,113A〜113Hがパワーアンプ112AT〜112HT側へ切換えられるとともに、スイッチ117A,117Bが増幅回路119A,119Bの送信側アンプに接続される。高周波信号を受信する場合には、スイッチ111A〜111H,113A〜113Hがローノイズアンプ112AR〜112HR側へ切換えられるとともに、スイッチ117A,117Bが増幅回路119A,119Bの受信側アンプに接続される。
BBIC200から伝達された信号は、増幅回路119A,119Bで増幅され、ミキサ118A,118Bでアップコンバートされる。アップコンバートされた高周波信号である送信信号は、信号合成/分波器116A,116Bで4分波され、対応する信号経路を通過して、それぞれ異なる給電素子121,122に給電される。各信号経路に配置された移相器115A〜115Hの移相度が個別に調整されることにより、アンテナ装置120の指向性を調整することができる。
各給電素子121,122で受信された高周波信号である受信信号はRFIC110に伝達され、それぞれ異なる4つの信号経路を経由して信号合成/分波器116A,116Bにおいて合波される。合波された受信信号は、ミキサ118A,118Bでダウンコンバートされ、増幅回路119A,119Bで増幅されてBBIC200へ伝達される。
RFIC110は、例えば、上記回路構成を含む1チップの集積回路部品として形成される。あるいは、RFIC110における各放射素子125に対応する機器(スイッチ、パワーアンプ、ローノイズアンプ、減衰器、移相器)については、対応する放射素子125毎に1チップの集積回路部品として形成されてもよい。
(アンテナモジュールの構成)
次に、図2を用いて、本実施の形態1におけるアンテナモジュール100の構成の詳細を説明する。図2において、上段にはアンテナモジュール100の平面透視図が示されており、下段にはアンテナモジュール100の断面透視図が示されている。以降の説明においては、説明を容易にするために、1つの放射素子125が形成されたアンテナモジュールを例として説明する。なお、図2に示すように、アンテナモジュール100の厚さ方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な面をX軸およびY軸で規定する。また、各図におけるZ軸の正方向を上面側、負方向を下面側と称する場合がある。
図2を参照して、アンテナモジュール100は、RFIC110および放射素子125(給電素子121,122)に加えて、誘電体基板130と、接地電極GNDと、給電配線151,152とを備える。なお、平面透視図においては、RFIC110、誘電体基板130、および給電配線151,152は省略されている。図2のアンテナモジュール100においては、「給電素子121」および「給電素子122」が、それぞれ本開示の「第1給電素子」および「第2給電素子」に対応する。
誘電体基板130は、たとえば、低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)多層基板、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、より低い誘電率を有する液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、フッ素系樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、あるいは、LTCC以外のセラミックス多層基板である。なお、誘電体基板130は必ずしも多層構造でなくてもよく、単層の基板であってもよい。
誘電体基板130は、法線方向(Z軸方向)から平面視すると略矩形状を有している。誘電体基板130の下面132(Z軸の負方向の面)側には、矩形状の接地電極GNDが配置されており、上面131(Z軸の正方向の面)側に給電素子121が接地電極GNDに対向して配置される。給電素子121は、誘電体基板130表面に露出する態様であってもよいし、図2の例のように誘電体基板130の内層に配置されてもよい。
給電素子122は、給電素子121よりも接地電極GND側の層に、接地電極GNDに対向して配置される。言い換えると、給電素子122は、給電素子121と接地電極GNDとの間の層に配置されている。給電素子121は、給電素子121の法線方向から誘電体基板130を平面視した場合に、給電素子122と重なっている。給電素子121のサイズは給電素子122のサイズよりも小さく、給電素子121の共振周波数は給電素子122の共振周波数よりも高い。すなわち、給電素子121から放射される電波の周波数は、給電素子122から放射される電波の周波数よりも高い。たとえば、給電素子121から放射される電波の周波数は39GHzであり、給電素子122から放射される電波の周波数は28GHzである。
なお、図2に示したアンテナモジュール100においては、給電素子121,122が、連続した誘電体基板130に配置される構成について示したが、給電素子121,122の一方あるいは双方が、分離した異なる誘電体に配置される構成であってもよい。たとえば、RFIC110および接地電極GNDが通信機器内部の実装基板に実装され、放射素子の部分が通信装置の筐体に配置されるような構成であってもよい。
また、アンテナモジュール100においては、給電素子121,122が、それぞれ給電配線151,152と直接接続されることで給電される構成について説明したが、給電素子121,122の一方または双方が、給電配線151あるいは給電配線152との間の容量結合によって給電される構成であってもよい。
誘電体基板130の下面132には、はんだバンプ140を介してRFIC110が実装されている。なお、RFIC110は、はんだ接続に代えて、多極コネクタを用いて誘電体基板130に接続されてもよい。
給電素子121には、給電配線151を介してRFIC110から高周波信号が伝達される。給電配線151は、RFIC110から、接地電極GNDおよび給電素子122を貫通して、給電素子121の下面側から給電点SP1に接続される。すなわち、給電配線151は、給電素子121の給電点SP1に高周波信号を伝達する。
給電素子122には、給電配線152を介してRFIC110から高周波信号が伝達される。給電配線152は、RFIC110から、接地電極GNDを貫通して、給電素子122の下面側から給電点SP2に接続される。すなわち、給電配線152は、給電素子122の給電点SP2に高周波信号を伝達する。
給電配線151,152は、誘電体基板130の層間に形成された配線パターン、および層を貫通するビアによって形成されている。なお、アンテナモジュール100において、放射素子、配線パターン、電極、およびビア等を構成する導体は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、および、これらの合金を主成分とする金属で形成されている。
実施の形態1のアンテナモジュール100においては、給電素子121,122は、いずれも略正方形の形状を有している。給電素子122は、各辺が接地電極GNDの各辺に平行になるように配置されている。給電素子122の給電点SP2は、給電素子122の中心からY軸の負方向にオフセットした位置に配置されている。
一方、給電素子121は、給電素子121の中心CP1と給電素子122の中心CP2とが一致し、かつ、給電素子122に対してθ1だけ回転させた状態となるように配置されている。言い換えると、給電素子121の中心CP1と給電点SP1とを結ぶ方向(線CL1の方向:第1方向)と、給電素子122の中心CP2と給電点SP2とを結ぶ方向(線CL2の方向:第2方向)とのなす角度(第1角度)がθ1となるように、給電素子121が配置される。
給電素子122に対する給電素子121の傾き(すなわち、角度θ1)は、0°より大きく90°よりも小さい(0°<θ1<90°)。なお、図2のアンテナモジュール100においては、θ1=45°の場合が示されている。
このようなアンテナモジュール100においては、給電素子121からは、線CL1の方向(第1方向)を偏波方向とする電波が放射され、給電素子122からは、線CL2の方向(第2方向)を偏波方向とする電波が放射される。
このとき、給電素子121の法線方向からアンテナモジュール100を平面視した場合に、給電素子121の中心CP1と給電素子122の端部との間の第1方向に沿った最短距離を距離L1(第1距離)とし、給電素子121の中心CP1と給電素子122の端部との間の最短距離を距離L2(第2距離)とすると、距離L1は距離L2よりも長い(L1>L2)。また、距離L2の方向に沿った給電素子121の端部と給電素子122の端部との間の最短距離を距離L3(第3距離)とすると、距離L3は給電素子121のサイズ(辺の長さ)の1/2よりも短い。
このように、本実施の形態1のアンテナモジュール100においては、給電素子122に対して給電素子121を傾けて配置することによって、給電素子121のアンテナ特性の悪化を抑制する。以下、図3を用いて、このような給電素子121の配置によってアンテナ特性の悪化を抑制できるメカニズムについて説明する。
図3において、左図(図3(a))は比較例のアンテナモジュール100#を示し、右図(図3(b))は実施の形態1のアンテナモジュール100を示す。図3(a)および図3(b)の各々において、上段はアンテナモジュールの平面透視図が示されており、下段は給電素子の偏波方向に沿った断面(A−A断面,B−B断面)における給電素子間の電気力線を示したものである。
アンテナモジュール100#においては、給電素子121#の辺と給電素子122の辺とが平行になるように配置されている。そして、給電素子121#の給電点SP1は、Y軸の正方向にオフセットして配置されており、給電素子121#からは給電素子122と同様にY軸方向を偏波方向とする電波が放射される。
給電素子122は給電素子121#の仮想的な接地電極として機能し、給電素子121#と給電素子122との間の電磁界結合によって、給電素子121#がアンテナとして動作する。
このとき、給電素子121#では、Y軸方向の端部において電圧の振幅が最大となり、それによって、当該端部において給電素子121#と給電素子122との間の電界強度も最大となる。しかしながら、給電素子121#を平面視した場合に、偏波方向(Y軸方向)における給電素子121#の端部と給電素子122の端部との距離GPが短いため、給電素子121#と給電素子122との間に生じる電気力線の量が制限されてしまい、給電素子121#と給電素子122との間の結合が十分に確保できなくなる。これにより、給電素子122に対する給電素子121#の静電容量が十分に確保できず、周波数帯域幅が狭くなる可能性がある。
一方、図3(b)の実施の形態1のアンテナモジュール100においては、給電素子121を給電素子122に対して傾けて配置することによって、偏波方向(線CL1の方向:第1方向)に沿った給電素子121の端部と給電素子122の端部との距離GPAが比較例の場合の距離GPよりも長くなる。これにより、比較例の場合に比べて給電素子121と給電素子122との間の電界による結合が強くなる。そのため、給電素子122に対する給電素子121の静電容量も比較例の場合に比べて大きくなり、比較例の場合よりも周波数帯域幅を拡大することができる。
このように、実施の形態1では、スタック型のデュアルバンドタイプのアンテナモジュールにおいて、アンテナモジュールを平面視したときの給電素子121と給電素子122との間の最短距離が所定距離よりも短くなる場合に、上記のように給電素子122の偏波方向に対して給電素子121の偏波方向を傾けて配置することによって、周波数帯域幅を拡大することが可能となる。これにより、高周波側の給電素子121のアンテナ特性の低下を抑制することができる。
なお、給電素子122の偏波方向と給電素子121の偏波方向とのなす角度(すなわち、給電素子122に対する給電素子121の傾きθ1)を45°とした場合には、給電素子122に対して給電素子121を線対称に配置できるので、放射される電波の円偏波を抑制することができる。したがって、2つの放射素子の直線偏波間のアイソレーションを向上させることができる。
[実施の形態2]
実施の形態2は、実施の形態1の図2で示したアンテナモジュールを一次元にアレイ状に配列された構成について説明する。
図4は、実施の形態2に従うアンテナモジュール100Xを説明するための図である。図4を参照して、アンテナモジュール100Xは、図2における放射素子125(給電素子121+給電素子122)が、X軸方向に沿って4つ配列された構成を有している。隣接する放射素子125同士は、間隔D1をあけて配置されている。アンテナモジュール100Xにおいては、この間隔D1は、低周波数側(28GHz)の電波の波長の1/2よりも広くなるように設定することが好ましい。
一般的に、アレイアンテナの場合には、隣接する放射素子の間隔は、当該放射素子から放射される電波の波長の1/2に設定される。しかしながら、図4のアンテナモジュール100Xのように、隣接する素子間隔を一般的な場合よりも広くすることによって、隣接する素子間のアイソレーションを高めることができる。これにより、アンテナモジュールにおけるアクティブインピーダンスの劣化を抑制することができ、結果としてアンテナゲインを広帯域化することができる。
[実施の形態3]
実施の形態1においては、給電素子121と、給電素子121の仮想的な接地電極として機能する給電素子122との間の偏波方向の距離が十分に確保できない場合に、給電素子122に対して給電素子121を傾けて配置する構成について説明した。
実施の形態3においては、給電素子122と接地電極GNDとの間の偏波方向の距離が十分に確保できない場合に、給電素子122を接地電極GNDに対して傾けて配置する構成について説明する。
図5は、実施の形態3に従うアンテナモジュール100Aを説明するための図である。図5においては、上段(図5(a))には比較例のアンテナモジュール100#1の平面透視図が示されており、下段(図5(b))には実施の形態3のアンテナモジュール100Aの平面透視図が示されている。
比較例のアンテナモジュール100#1においては、給電素子121#および給電素子122#は、矩形形状の接地電極GNDに対して、各辺が平行になるように配置されている。接地電極GNDは、給電素子122#の偏波方向(すなわち、Y軸方向)の寸法が制限されており、当該偏波方向における給電素子122#と接地電極GNDとの距離GP1が十分に確保できない状態となっている。また、給電素子121#についても、実施の形態1と同様に、給電素子121#の偏波方向における給電素子121#と給電素子122#との距離GPが十分に確保できない状態となっている。
実施の形態3のアンテナモジュール100Aにおいては、給電素子122の中心CP2との距離が最短となる接地電極GNDの端部の位置P2と給電素子122の中心CP2とを結ぶ方向(線CL4の方向)と、給電素子122の偏波方向(線CL3の方向)とのなす角度θ2(第2角度)が0°より大きく90°より小さくなるように、接地電極GNDに対して給電素子122が配置される。なお、図5(b)の例においては、θ2=45°の場合が示されている。
言い換えれば、給電素子122の法線方向から平面視した場合に、給電素子122の中心と接地電極GNDの端部との間の偏波方向に沿った最短距離を距離L1A(第4距離)とし、給電素子122の中心CP2と接地電極GNDの端部との間の最短距離を距離L2A(第5距離)とすると、距離L1Aは距離L2Aよりも長い(L1A>L2A)。さらに、距離L2Aの方向に沿った接地電極GNDの端部と給電素子122の端部との間の距離を距離L3A(第6距離)とすると、距離L3Aは給電素子122のサイズ(辺の長さ)の1/2よりも短い。
このような配置にすることによって、給電素子122の偏波方向に沿った給電素子122の端部と接地電極GNDとの端部との距離GP1Aを、比較例の場合の距離GP1よりも長くすることができる。したがって、接地電極GNDに対して給電素子122の偏波方向を傾けることによって、給電素子122の周波数帯域幅が狭くなることを抑制することができる。
また、給電素子121については、実施の形態1と同様に、給電素子122の偏波方向に対する給電素子121の偏波方向の角度θ1を0°〜90°の間で傾けて給電素子121が配置される。なお、図5(b)には、θ1=45°の場合が例示されており、上記のように図5(b)ではθ2=45°であるため、給電素子121の偏波方向はY軸方向に一致している。
これにより、給電素子121の偏波方向に沿った給電素子121の端部と給電素子122の端部との距離GPAを、比較例の場合の距離GPよりも長くすることができる。したがって、給電素子121についても周波数帯域幅が狭くなることを抑制することができる。
[実施の形態4]
実施の形態3においては、低周波側の給電素子122を接地電極GNDに対して傾けて配置するとともに、高周波側の給電素子121を低周波側の給電素子122に対して傾けて配置する構成について説明した。
一方で、アンテナモジュールの小型化および高密度化がすすめられると、接地電極GNDの面積が制限されてしまい、給電素子122を傾けると、接地電極GNDの範囲に給電素子122が収まらない場合が生じ得る。
実施の形態4においては、接地電極GNDの面積が制限されて、傾斜させた給電素子122が接地電極GNDの範囲内に収まらない場合に対応した構成について説明する。
図6は、実施の形態4に従うアンテナモジュール100Bを説明するための図である。
図6を参照して、接地電極GNDにおけるY軸方向に突出した部分に給電素子121および給電素子122を配置する場合を考える。このとき、給電素子が配置される突出部分は、給電素子122よりも若干大きい程度の面積である。
図6(a)は初期状態を示す図であり、図6(a)においては、給電素子122は接地電極GNDの範囲に収まるように配置されており、給電素子121については、各辺が給電素子122と平行になるように配置されている。給電素子121,122の給電点SP1,SP2は、いずれも給電素子の中心からY軸方向にオフセットした位置に配置されており、各給電素子からはY軸方向を偏波方向(矢印AR1,AR2)とする電波が放射される。このような配置の場合、偏波方向における給電素子121と給電素子122との距離、および、給電素子122と接地電極GNDとの距離が十分に確保できない状態となっている。
図6(b)は、実施の形態1で説明したように、給電素子122の偏波方向(AR2)に対して給電素子121の偏波方向(AR1)を傾けるように、給電素子121を配置した状態を示した図である。図6(b)の例においては、給電素子122に対して給電素子121を時計回りに45°回転させた場合が示されている。このような配置とすることによって、給電素子121の偏波方向(AR1)に沿った給電素子121の端部と給電素子122の端部との距離を、図6(a)の場合に比べて長くすることができる。
図6(c)は、実施の形態3で説明したように、給電素子122の偏波方向(AR2)に沿った接地電極GNDとの距離を確保するために、接地電極GNDに対して給電素子122を傾けて配置した状態を示した図である。より具体的には、図6(c)においては、図6(b)の状態から給電素子121,122を反時計回りに45°回転させた場合が示されている。このような配置とすることによって、給電素子122の偏波方向(AR2)に沿った給電素子122の端部と接地電極GNDの端部との距離を、図6(a)の場合に比べて長くすることができる。
しかしながら、図6(c)においては、略正方形の給電素子122の角部分が、接地電極GNDからはみ出した状態となっている。そのため、図6(d)のアンテナモジュール100Bにおいては、給電素子122における接地電極GNDからはみ出た部分が切除され、給電素子122の形状が八角形にされている。この場合、給電素子121の偏波方向(AR1)における給電素子122の長さが図6(b),(c)の場合に比べて短くなってしまうが、図6(a)の初期状態よりは長くなっているため、一定の効果を得ることができる。
アンテナモジュール100Bのような構成とすることによって、接地電極GNDの面積が制限されている場合であっても、偏波方向における給電素子121,122間の距離、および、給電素子122と接地電極GNDとの距離を、初期状態の場合よりも長く設定できるので、各給電素子の周波数帯域幅が狭くなることを抑制できる。
なお、上記の例においては、給電素子122を八角形とした場合について説明したが、接地電極GNDの形状に応じて、給電素子122の形状を八角形以外の多角形としてもよい。すなわち、給電素子122は、頂点が4以上の多角形とすることができる。ただし、給電素子122の形状の対称性が崩れると、給電素子122を流れる電流の方向が乱れてしまうため、給電素子122および給電素子121から放射される電波の偏波が円偏波となる場合がある。そのような場合には、各給電素子に部分的に補助電極を追加する等の変更を行なって、放射される電波の主成分が直線偏波となるように調整することが必要となる。
また、図6のアンテナモジュール100Bにおいては、給電素子121は、給電素子122に対して傾けて配置しても給電素子122の範囲内に収まる場合について説明したが、給電素子121を傾斜させた場合に給電素子122からはみ出てしまう場合には、上記の給電素子122と同様に、給電素子122からはみ出た給電素子121の部分を切除するようにしてもよい。この場合にも、給電素子121から放射される電波の偏波が円偏波となる場合には、補助電極の追加等により、放射される電波の主成分が直線偏波となるように調整する。
(適用例)
図7を用いて、実施の形態4が適用された構成例について説明する。図7は、2つの異なる放射面を有するアンテナモジュール100Cの斜視図である。
図7を参照して、アンテナモジュール100Cのアンテナ装置120において、誘電体基板130は、断面形状が略L字形状となっており、図7のZ軸方向を法線方向とする平板状の基板137と、X軸方向を法線方向とする平板状の基板138と、当該2つの基板137,138を接続する屈曲部135とを含む。
アンテナモジュール100Cにおいては、2つの基板137,138の各々に、4つの給電素子121がY軸方向に一列に配置されている。以下の説明において、理解を容易にするために、給電素子121が基板137,138の表面に露出するように配置された例について説明するが、実施の形態1の図2のように、給電素子121は基板137,138の誘電体基板の内部に配置されてもよい。
基板137は略矩形形状を有しており、その表面に4つの給電素子121が一列に配置されている。また、基板137においては、誘電体基板の内層に各給電素子121に対向して給電素子122が配置されている。基板137の下面側(Z軸の負方向の面)には、RFIC110が接続されている。RFIC110は、はんだバンプあるいは多極コネクタにより、実装基板20に実装される。
基板138は、基板137から屈曲した屈曲部135に接続されており、その内側の面(X軸の負方向の面)が実装基板20の側面22に面するように配置される。基板138は、略矩形形状の誘電体基板に複数の切欠部136が形成された構成となっており、この切欠部136に屈曲部135が接続されている。言い換えると、基板138において切欠部136が形成されていない部分には、屈曲部135と基板138とが接続される境界部から、当該基板138に沿って基板137に向かう方向(すなわち、Z軸の正方向)に突出した突出部133が形成されている。この突出部133の突出端の位置は、基板137の下面側の面よりもZ軸の正方向に位置している。基板137,138および屈曲部135において、実装基板20に面する表面あるいは内層には接地電極GNDが配置されている。
そして、基板138の突出部133の各々には、1つの給電素子121が配置されている。また、基板138の誘電体基板の内層には、各給電素子121に対向して給電素子122Aが配置されている。基板138には切欠部136が形成されているため、基板138に配置される給電素子においては、各給電素子と結合する接地電極GNDの領域が大きく制限される。
そのため、アンテナモジュール100Cにおいては、突出部133に配置される給電素子121,122Aについて、図6(d)で示したような構成を採用する。すなわち、給電素子121の偏波方向と給電素子122Aの偏波方向とのなす角度が0°より大きく90°より小さくなるように、給電素子122Aに対して給電素子121が傾斜して配置される。さらに、給電素子122Aについては、給電素子122Aの中心との距離が最短となる接地電極GNDの端部の位置と給電素子122Aの中心とを結ぶ方向と、給電素子122Aの偏波方向とのなす角度が0°より大きく90°より小さくなるように、給電素子122Aが接地電極GNDに対して傾斜して配置される。このとき、給電素子122Aにおいて、突出部133からはみ出る部分は切除される。
このような構成とすることによって、基板138の突出部133のように放射素子が配置される領域が制限される場合においても、周波数帯域幅が狭くなることを抑制することができる。
なお、基板137に配置された放射素子(給電素子121,122)についても、基板138のように、配置すべき領域が制限される場合には、図8のアンテナモジュール100Dのように、給電素子122に対して給電素子121を傾斜させたり、接地電極GNDに対して給電素子122を傾斜させてもよい。
また、基板138における切欠部136については、隣接する給電素子間のすべてに形成されていなくてもよく、たとえば、1つの突出部に2つの給電素子121が配置される部分があってもよい。
[実施の形態5]
上記の実施の形態においては、各給電素子から放射される電波の偏波方向がそれぞれ1つである場合について説明した。
実施の形態5においては、給電素子121および給電素子122の各々から、異なる偏波方向の2つの電波を放射することが可能な、いわゆるデュアル偏波タイプのアンテナモジュールの場合について説明する。
図9は、実施の形態5に従うアンテナモジュール100Eを説明するための図である。アンテナモジュール100Eは、図2で示した実施の形態1のアンテナモジュール100の構成に加えて、給電素子121の給電点SP3および給電素子122の給電点SP4にも、RFIC110から高周波信号が供給される構成を有している。
給電点SP3は、給電素子121において、給電点SP1に高周波信号が供給されることによって放射される電波の偏波方向(矢印AR1)と直交する方向(矢印AR3)の偏波が放射可能となる位置に配置される。給電点SP3には、給電配線153を介してRFIC110から高周波信号が伝達される。
また、給電点SP4は、給電素子122において、給電点SP2に高周波信号が供給されることによって放射される電波の偏波方向(矢印AR2)と直交する方向(矢印AR4)の偏波が放射可能となる位置に配置される。給電点SP4には、給電配線154を介してRFIC110から高周波信号が伝達される。
デュアル偏波タイプのアンテナモジュールにおいても、給電素子121の偏波方向に沿った給電素子121の端部と給電素子122の端部との間の距離が十分に確保されない場合には、給電素子122に対して給電素子121を傾斜させて配置することによって、偏波方向に沿った給電素子121の端部と給電素子122の端部との間の距離を拡大して、給電素子121の周波数帯域幅が狭くなることを抑制できる。
また、実施の形態3のように、給電素子122の偏波方向に沿った給電素子122の端部と接地電極GNDの端部との間の距離が十分に確保されない場合には、接地電極GNDに対して給電素子122を傾斜させて配置することによって、給電素子122周波数帯域幅が狭くなることを抑制できる。なお、給電素子121を傾斜させたときに給電素子122から給電素子121がはみ出す場合、および/または、給電素子122を傾斜させたときに接地電極GNDから給電素子122がはみ出す場合には、実施の形態4のように、はみ出た部分の給電素子を切除してもよい。
なお、上記の実施の形態において、給電素子121および給電素子122の少なくとも一方が円形状であってもよい。
[実施の形態6]
上述の各実施の形態においては、スタック型のデュアルバンドタイプのアンテナモジュールの場合について説明した。実施の形態6においては、3つの異なる周波数帯域の電波を放射することが可能な、トリプルバンドタイプのアンテナモジュールについて説明する。
図10は、実施の形態6に従うアンテナモジュール100Fを説明するための図である。図10において、上段にはアンテナモジュール100Fの平面透視図が示されており、下段にはアンテナモジュール100Fの断面透視図が示されている。
図10を参照して、アンテナモジュール100Fにおいては、放射素子125Aとして、給電素子121〜123を含んでおり、図2で示した実施の形態1のアンテナモジュール100における給電素子121の上方(Z軸の正方向)に、給電素子123がさらに追加された構成となっている。なお、図10において、図2と重複する要素の説明は繰り返さない。
給電素子123は、給電素子121,122と同様に略正方形の形状を有しており、誘電体基板130において給電素子121よりも上面131に近い層に配置されている。言い換えれば、給電素子121は、給電素子122と給電素子123との間に配置されている。給電素子123のサイズは、給電素子121よりもさらに小さい。すなわち、給電素子123から放射される電波の周波数は、給電素子121および給電素子122から放射される電波の周波数よりも高い。
給電素子123には、給電配線155を介してRFIC110から高周波信号が伝達される。給電配線155は、RFIC110から接地電極GNDを貫通し、さらに給電素子122および給電素子121を貫通して、給電素子123の給電点SP5に接続される。給電素子123の給電点SP5は、給電素子123の中心CP5からX軸の負方向にオフセットした位置に配置されている。したがって、RFIC110から給電素子123に高周波信号が供給されると、X軸方向を偏波方向とする電波が放射される。
アンテナモジュール100Fの法線方向から平面視した場合に、給電素子123の中心CP3は、給電素子121の中心CP1および給電素子122の中心CP2と一致している。そして、給電素子123は、給電素子122に対して回転させた状態となるように配置されている。言い換えると、給電素子121の中心CP1と給電点SP1とを結ぶ方向(線CL1の方向)と、給電素子123の中心CP5と給電点SP5とを結ぶ方向(線CL5の方向)とのなす角度がθ3となるように、給電素子123が配置される。給電素子121に対する給電素子123の傾き(すなわち、角度θ3)は、0°より大きく90°よりも小さい(0°<θ3<90°)。なお、図10のアンテナモジュール100Fにおいては、θ3=45°の場合が示されている。
このような構成においては、給電素子123と給電素子121との間の位置関係は、給電素子121と給電素子122との間の位置関係と同様となる。すなわち、給電素子121に対して給電素子123を傾けて配置することによって、給電素子123の周波数帯域幅を拡大することが可能となり、これにより、給電素子123のアンテナ特性の低下を抑制することができる。
[変形例]
上記の実施の形態においては、放射素子と接地電極とが同じ誘電体基板に形成される構成について説明した。変形例においては、放射素子の一部あるいは全部が、接地電極が形成される誘電体基板から分離した他の誘電体基板に形成される構成について説明する。
(変形例1)
図11は、変形例1のアンテナモジュール100Gの側面透過図である。アンテナモジュール100Gにおいては、図2で示したアンテナモジュール100における誘電体基板130が、互いに分離された2つの誘電体基板130A,130Bに置き換えられた構成となっている。図11において、図2と重複する要素の説明は繰り返さない。
図11を参照して、アンテナモジュール100Gにおいては、給電素子121は誘電体基板130Aの上面131Aあるいは内層に形成されている。一方、給電素子122および接地電極GNDは、誘電体基板130Aから分離した誘電体基板130Bに形成されている。誘電体基板130Bの下面132Bには、はんだバンプ140を介してRFIC110が実装されている。
誘電体基板130Aの下面132Aと誘電体基板130Bの上面131Bとは、接続部材によって接続されている。図11の例においては、接続部材としてはんだバンプ141が用いられる場合が示されているが、接続部材は可撓性を有するケーブルあるいはコネクタであってもよい。給電配線151は、はんだバンプ141を介して、RFIC110と給電素子121とを電気的に接続している。
このような構成においても、給電素子122の偏波方向に対して給電素子121の偏波方向を傾けて配置することによって、周波数帯域幅を拡大することが可能となり、これにより、高周波側の給電素子121のアンテナ特性の低下を抑制することができる。
(変形例2)
図12は、変形例2のアンテナモジュール100Hの側面透過図である。アンテナモジュール100Hにおいては、図2で示したアンテナモジュール100における誘電体基板130が、互いに分離された2つの誘電体基板130C,130Dに置き換えられた構成となっている。図12において、図2と重複する要素の説明は繰り返さない。
図12を参照して、アンテナモジュール100Hにおいては、給電素子121および給電素子122は誘電体基板130Cに形成されている。給電素子121は、誘電体基板130Cの上面131Cあるいは内層に形成されている。給電素子122は、誘電体基板130Cにおいて、給電素子121と下面132Cとの間の層に形成される。一方、接地電極GNDは、誘電体基板130Cから分離した誘電体基板130Dに形成されている。誘電体基板130Dの下面132Dには、はんだバンプ140を介してRFIC110が実装されている。
誘電体基板130Cの下面132Cと誘電体基板130Dの上面131Dとは、接続部材によって接続されている。図12の例においては、接続部材としてはんだバンプ141,142が用いられる場合が示されているが、接続部材は可撓性を有するケーブルあるいはコネクタであってもよい。
給電配線151は、はんだバンプ141を介してRFIC110と給電素子121とを電気的に接続している。同様に、給電配線152は、はんだバンプ142を介してRFIC110と給電素子122とを電気的に接続している。
このような構成においても、給電素子122の偏波方向に対して給電素子121の偏波方向を傾けて配置することによって、周波数帯域幅を拡大することが可能となり、これにより、高周波側の給電素子121のアンテナ特性の低下を抑制することができる。
なお、実施の形態6で示したような、放射素子として3つの給電素子を有するアンテナモジュールにおいても、給電素子の一部あるいは全部が、接地電極が形成された誘電体基板とは異なる誘電体基板に形成されてもよい。また、互いに異なる3つの誘電体基板に、3つの給電素子がそれぞれ形成される構成であってもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。