JPWO2020246272A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、マルビジン-3,5-ジグルコシドを特定量で含有するブドウ果皮抽出物に関する。
アントシアニンは、視覚障害改善作用、抗酸化作用、血管強化作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用など様々な生理活性を示すことが知られており、アントシアニンを含有する生物資源の利用が図られている。
例えば、ブルーベリー果実の抽出物については、抗癌剤(特許文献1)や脳機能改善用組成物(特許文献2)としての応用が報告されている。また、ビルベリーに含まれるアントシアニンによってアミロイドβタンパク質の凝集を抑制する試みもなされている(非特許文献1)。
MY.Yoshida, et al., "Anthocyanin suppresses the toxicity of Aβ deposits through diversion of molecular forms in vitro and in vivo models of Alzheimer's disease" Nutritional Neuroscience, 2016年、Vol.19(1)、p.32-42
現在日本では、高齢化の進展による認知症患者数の増加を受け、認知症治療剤市場は大幅に拡大を続けており、市場規模は、2022年には2013年から比較して1.75倍まで拡大するとの予想もある。一般に、認知症の内科的な治療法には副作用の問題等があり、患者の負担が大きい。一方、生物資源由来の物質は、副作用が少なく、安全で、日常的又は継続的な摂取に適している。そのため、神経機能調節作用を示す生物資源由来の物質に期待が寄せられている。
生物資源に関しては、上記のとおり、アントシアニンについては、これまでブルーベリーやビルベリーが中心に研究が行われており、ブドウやブドウ果皮に関しては十分とはいえなかった。
本発明は、神経機能調節作用を示す、ブドウ果皮抽出物を提供することを目的とする。
本発明者らは、生物資源としてブドウに注目し、研究を進めたところ、特定のブドウ果皮抽出物が優れた神経機能調節作用を示し得ることを見出した。そして、特定のブドウ果皮抽出物は、マルビジン-3,5-ジグルコシド含有量が高く、アントシアニンの組成において特異的であることを見出した。本発明は、ブドウ果皮を抽出するに当たり、マルビジン-3,5-ジグルコシドの含有量を特定の範囲に制御することにより、優れた神経機能調節作用を有する抽出物が得られるとの知見に基づきなされたものである。
本発明によれば、乾燥質量中、マルビジン-3,5-ジグルコシドを15mg/g以上含有するブドウ果皮抽出物が提供される。
マルビジン-3,5-ジグルコシドは、下記式(1)で表わされる。
ブドウ果皮抽出物中、マルビジン-3,5-ジグルコシドは、カウンターアニオンを有した形態であってもよく、例えばクロリドが挙げられる。
マルビジン-3,5-ジグルコシドは、下記式(1)で表わされる。
また、本発明によれば、デルフィニジン-3-グルコシドを含有する、上記のブドウ果皮抽出物が提供され、さらに、デルフィニジン-3-グルコシドを、マルビジン-3,5-ジグルコシド1モルに対して0.01モル以上1.5モル以下含有する、上記のブドウ果皮抽出物が提供される。
デルフィニジン-3-グルコシドは、下記式(2)で表わされる。
ブドウ果皮抽出物中、デルフィニジン-3-グルコシドは、カウンターアニオンを有した形態であってもよく、例えばクロリドが挙げられる。
デルフィニジン-3-グルコシドは、下記式(2)で表わされる。
また、本発明によれば、マルビジン-3-グルコシドを含有する、上記のブドウ果皮抽出物が提供され、さらに、マルビジン-3-グルコシドを、マルビジン-3,5-ジグルコシド1モルに対して0.01モル以上1.5モル以下含有する、上記のブドウ果皮抽出物が提供される。
マルビジン-3-グルコシドは、下記式(3)で表わされる。
ブドウ果皮抽出物中、マルビジン-3-グルコシドは、カウンターアニオンを有した形態であってもよく、例えばクロリドが挙げられる。
マルビジン-3-グルコシドは、下記式(3)で表わされる。
また、本発明によれば、マルビジン-3-クマロイルグルコシドを含有する上記のブドウ果皮抽出物が提供され、さらに、マルビジン-3-クマロイルグルコシドを、マルビジン-3,5-ジグルコシド1モルに対して、0.01モル以上2.0モル以下含有する、上記のブドウ果皮抽出物が提供される。
マルビジン-3-クマロイルグルコシドは、下記式(4)で表わされる。
ブドウ果皮抽出物中、マルビジン-3-クマロイルグルコシドは、カウンターアニオンを有した形態であってもよく、例えばクロリドが挙げられる。
マルビジン-3-クマロイルグルコシドは、下記式(4)で表わされる。
また、本発明によれば、マルビジン-3-クマロイルグルコシド-5-グルコシドを含有する上記のブドウ果皮抽出物が提供され、さらに、マルビジン-3-クマロイルグルコシド-5-グルコシドを、マルビジン-3,5-ジグルコシド1モルに対して、0.01モル以上2.0モル以下含有する、上記のブドウ果皮抽出物が提供される。
マルビジン-3-クマロイルグルコシド-5-グルコシドは、下記式(5)で表わされる。
ブドウ果皮抽出物中、マルビジン-3-クマロイルグルコシド-5-グルコシドは、カウンターアニオンを有した形態であってもよく、例えばクロリドが挙げられる。
マルビジン-3-クマロイルグルコシド-5-グルコシドは、下記式(5)で表わされる。
また、本発明によれば、レスベラトロールを含有する、上記のブドウ果皮抽出物が提供され、さらに、レスベラトロールを、マルビジン-3,5-ジグルコシド1モルに対して0.001モル以上含有する、上記のブドウ果皮抽出物が提供される。
レスベラトロールは、下記式(6)で表わされる。
レスベラトロールは、下記式(6)で表わされる。
本発明によれば、ブドウ果皮が、ヤマブドウ(Vitis Coignetiae)、サンカクヅル(Vitis flexuosa)、ヤマブドウ(Vitis Coignetiae)とサンカクヅル(Vitis flexuosa)の交配種、ヤマブドウ(Vitis Coignetiae)とヨーロッパブドウ(Vitis Vinifera)の交配種及びサンカクヅル(Vitis flexuosa)とヨーロッパブドウ(Vitis Vinifera)の交配種からなる群より選択される1種以上のブドウの果皮である、上記のいずれかのブドウ果皮抽出物が提供される。
また、本発明によれば、上記のいずれかのブドウ果皮抽出物を含有する、食品組成物が提供され、さらに、アルコール度数が3%未満の飲料である、上記の食品組成物が提供される。
また、本発明によれば、上記のいずれかのブドウ果皮抽出物を含有する、医薬組成物が提供される。
また、本発明によれば、ブドウ果皮より、有機溶媒を用いて、マルビジン-3,5-ジグルコシドを含む成分を抽出する、上記のブドウ果皮抽出物の製造方法が提供され、さらに、上記の製造方法であって、ブドウ果皮として、ブドウ果皮乾燥物を用い、酸を含む有機溶媒又は酸を含む有機溶媒と水の混合溶媒を用いて抽出を行う、ブドウ果皮抽出物の製造方法が提供される。
本発明のブドウ果皮抽出物は、優れた神経機能調節作用を示す。また、本発明によれば、そのようなブドウ果皮抽出物を、簡便な方法で製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<ブドウ果皮抽出物>
本発明のブドウ果皮抽出物は、乾燥質量中、マルビジン-3,5-ジグルコシドを15mg/g以上含有する。
本発明のブドウ果皮抽出物は、乾燥質量中、マルビジン-3,5-ジグルコシドを15mg/g以上含有する。
(ブドウ果皮)
ブドウ果皮は、マルビジン-3,5-ジグルコシドの含有量の点から、ヤマブドウ(Vitis Coignetiae)、サンカクヅル(Vitis flexuosa)、ヤマブドウ(Vitis Coignetiae)とサンカクヅル(Vitis flexuosa)の交配種、ヤマブドウ(Vitis Coignetiae)とヨーロッパブドウ(Vitis Vinifera)の交配種又はサンカクヅル(Vitis flexuosa)とヨーロッパブドウ(Vitis Vinifera)の交配種のブドウの果皮が好ましく、ヤマブドウ(Vitis Coignetiae)とヨーロッパブドウ(Vitis Vinifera)の交配種又はサンカクヅル(Vitis flexuosa)とヨーロッパブドウ(Vitis Vinifera)の交配種であるブドウの果皮がより好ましい。ブドウ果皮は、1種又は2種以上のブドウの果皮であることができる。
ブドウ果皮は、マルビジン-3,5-ジグルコシドの含有量の点から、ヤマブドウ(Vitis Coignetiae)、サンカクヅル(Vitis flexuosa)、ヤマブドウ(Vitis Coignetiae)とサンカクヅル(Vitis flexuosa)の交配種、ヤマブドウ(Vitis Coignetiae)とヨーロッパブドウ(Vitis Vinifera)の交配種又はサンカクヅル(Vitis flexuosa)とヨーロッパブドウ(Vitis Vinifera)の交配種のブドウの果皮が好ましく、ヤマブドウ(Vitis Coignetiae)とヨーロッパブドウ(Vitis Vinifera)の交配種又はサンカクヅル(Vitis flexuosa)とヨーロッパブドウ(Vitis Vinifera)の交配種であるブドウの果皮がより好ましい。ブドウ果皮は、1種又は2種以上のブドウの果皮であることができる。
(アントシアニンの組成)
ブドウ果皮抽出物は、乾燥質量中、マルビジン-3,5-ジグルコシドを15mg/g以上含有する。マルビジン-3,5-ジグルコシドは、神経機能調節の点から、好ましくは20mg/g以上、より好ましくは25mg/g以上である。上限は、特に限定されず、500mg/g以下とすることができ、例えば100mg/gである。
ブドウ果皮抽出物は、乾燥質量中、マルビジン-3,5-ジグルコシドを15mg/g以上含有する。マルビジン-3,5-ジグルコシドは、神経機能調節の点から、好ましくは20mg/g以上、より好ましくは25mg/g以上である。上限は、特に限定されず、500mg/g以下とすることができ、例えば100mg/gである。
ブドウ果皮抽出物は、デルフィニジン-3-グルコシドを含有することが好ましく、デルフィニジン-3-グルコシドの含有量は、マルビジン-3,5-ジグルコシド1モルに対して、神経機能調節作用の相補性の点から、0.01モル以上が好ましく、より好ましくは0.1モル以上であり、また、神経機能調節作用のバランスの点から、1.5モル以下が好ましく、より好ましくは1.0モル以下である。
ブドウ果皮抽出物は、マルビジン-3-グルコシドを含有することが好ましく、マルビジン-3-グルコシドの含有量は、マルビジン-3,5-ジグルコシド1モルに対して、神経機能調節作用の相補性の点から、0.01モル以上が好ましく、より好ましくは0.03モル以上であり、また、神経機能調節作用のバランスの点から、1.5モル以下が好ましく、より好ましくは1.0モル以下である。
ブドウ果皮抽出物は、マルビジン-3-クマロイルグルコシドを含有することができる。マルビジン-3-クマロイルグルコシドの含有量は、マルビジン-3,5-ジグルコシド1モルに対して、0.01モル以上2.0モル以下とすることができ、0.05モル以上1.5モル以下が好ましい。
ブドウ果皮抽出物は、マルビジン-3-クマロイルグルコシド-5-グルコシドを含有することができる。マルビジン-3-クマロイルグルコシド-5-グルコシドの含有量は、マルビジン-3,5-ジグルコシド1モルに対して、0.01モル以上2.0モル以下とすることができ、0.05モル以上1.5モル以下が好ましい。
ブドウ果皮抽出物は、レスベラトロールを含有することができる。レスベラトロールの含有量は、マルビジン-3,5-ジグルコシド1モルに対して、0.001モル以上とすることができ、例えば0.003モル以上であり、また、例えば0.100モル以下とすることができる。
(使用)
本発明のブドウ果皮抽出物は、優れた神経機能調節作用を示す。神経機能調節作用は、神経機能の悪化防止、現状維持、回復、改善、予防に関連する作用をいうものとする。後述する実施例においては、本発明のブドウ果皮抽出物は、神経細胞の保護に有効であることが示唆され、さらには、抗炎症作用及び神経伝達物質減少の抑制作用も示すことが示唆されている。このことの詳細なメカニズムは不明であるが、マルビジン-3,5-ジグルコシドをはじめとするブドウ抽出物に含まれる成分の作用と考えられる。
本発明のブドウ果皮抽出物は、優れた神経機能調節作用を示す。神経機能調節作用は、神経機能の悪化防止、現状維持、回復、改善、予防に関連する作用をいうものとする。後述する実施例においては、本発明のブドウ果皮抽出物は、神経細胞の保護に有効であることが示唆され、さらには、抗炎症作用及び神経伝達物質減少の抑制作用も示すことが示唆されている。このことの詳細なメカニズムは不明であるが、マルビジン-3,5-ジグルコシドをはじめとするブドウ抽出物に含まれる成分の作用と考えられる。
本発明のブドウ果皮抽出物は、神経細胞の損傷や神経細胞数の減少に関連する神経変性疾患や、種々の症状に有効であり、中でも抗老化が挙げられる。具体的には、本発明のブドウ果皮抽出物は、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病等の神経変性疾患等の予防、改善、抗ストレス、抗疲労を目的として使用することができる。ただし、本発明のブドウ果皮抽出物は、健常人を対象とすることもでき、例えば、健常人の学習能力、記憶力、反射反応能力等の神経機能の向上を目的として使用することができる。本発明のブドウ果皮抽出物は、抗老化、抗ストレス、抗疲労、学習能力回復・向上、記憶力回復・向上、反射反応能力回復・向上用であることができる。
本発明のブドウ果皮抽出物の投与対象としては、哺乳動物が挙げられ、例えば、ヒト、家畜(ウマ、ウシ、ブタ等)、愛玩動物(イヌ、ネコ等)、実験(試験)動物(マウス、ラット等)であり、好ましくはヒトである。
本発明のブドウ果皮抽出物の投与量は、投与対象、年齢、体重、症状等を考慮して、適宜設定することができ、例えば、ヒトに投与する場合、投与対象の体重1kg当たり、0.2mg/日以上、100mg/日以下が挙げられ、好ましくは0.5mg/日以上、より好ましくは1.0mg/日以上であり、また、好ましくは40mg/日以下、より好ましくは20mg/日以下である。投与対象がヒト以外の場合、上記範囲を適宜、増減することにより設定することができる。投与は、1日に1回の投与であっても、複数回に分けた投与であってもよい。投与期間は、投与対象、年齢、体重、症状等を考慮して、適宜設定することができるが、継続的な使用が好ましい。
(製造方法)
ブドウ果皮抽出物は、ブドウ果皮より、有機溶媒を用いて、マルビジン-3,5-ジグルコシドを含む成分を抽出することにより得ることができる。
ブドウ果皮抽出物は、ブドウ果皮より、有機溶媒を用いて、マルビジン-3,5-ジグルコシドを含む成分を抽出することにより得ることができる。
上記において、ブドウ果皮として、ブドウ果皮乾燥物を用いることができ、例えば、ブドウ果皮を温風もしくは熱風乾燥させた乾燥物、凍結乾燥させた乾燥物が挙げられる。
抽出は、酸を含む有機溶媒又は酸を含む有機溶媒と水の混合溶媒を用いて抽出を行うことが好ましい。酸としては、強酸が好ましく、塩酸、硫酸、ギ酸、トリフロロ酢酸等が挙げられ、揮発性の酸である塩酸、ギ酸が好ましい。有機溶媒としては、極性溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられ、メタノール、エタノールが好ましい。酸の含有量は適宜、調整することができる。
抽出は、ブドウ果皮を含む溶液を、ホモジナイズするか、あるいは高速高圧抽出装置を用いて行うことができる。抽出効率の点から、高圧下(例えば、5MPa以上15MPa以下)で処理し、上記溶液を得ることが好ましい。得られた溶液を、場合により濾過し、濾過液を濃縮し、乾燥(例えば温風もしくは熱風乾燥又は凍結乾燥)させることにより、ブドウ果皮抽出物を得ることができる。あるいは、得られた溶液を遠心分離し、上澄みを回収し、上澄み溶液に分離用溶媒を加えて、ブドウ果皮抽出物を含む水層を分離し、この水層を濃縮し、乾燥(例えば温風もしくは熱風乾燥又は凍結乾燥)させて、ブドウ果皮抽出物を得てもよい。分離用溶媒としては、水と相分離する有機溶媒であれば、特に限定されず、酢酸エチル、トルエン、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。
<食品組成物>
本発明によれば、上記ブドウ果皮抽出物を含有する食品組成物が提供される。食品組成物は、機能性食品、栄養補助食品、健康補助食品、栄養強化食品、機能性表示食品、特別用途食品、特定保健用食品又は栄養機能食品であることができる。
本発明によれば、上記ブドウ果皮抽出物を含有する食品組成物が提供される。食品組成物は、機能性食品、栄養補助食品、健康補助食品、栄養強化食品、機能性表示食品、特別用途食品、特定保健用食品又は栄養機能食品であることができる。
食品組成物は、食品の製造で許容される成分を含むことができ、例えば、担体、賦形剤(例えば、乳糖、ショ糖、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン)、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、安定剤、保存剤、防腐剤、溶剤(水、食塩水、エタノール等の有機溶媒)が挙げられる。食品は、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル、有機酸、有機塩基、香料等を含むこともできる。
食品組成物の形態は、特に限定されず、固体、液体、混合物、懸濁液、ペースト、ゲル、粉末、カプセルが挙げられ、飲料、菓子、調味料、惣菜、加工食品とすることができる。食品組成物は、サプリメントであってもよい。中でも、飲料が好ましく、アルコール度数が3%未満の飲料とすることがより好ましい。食品組成物は、食品に、上記ブドウ果皮抽出物を配合することにより得ることができる。
食品組成物についての使用(対象となる疾患及び症状等、投与方法(投与対象、投与量、期間))は、上記ブドウ果皮抽出物と同様に設定することができる。具体的には、抗老化、抗ストレス、抗疲労、学習能力回復・向上、記憶力回復・向上、反射反応能力回復・向上用の食品組成物が挙げられる。投与量は、ブドウ果皮抽出物の投与量が、ブドウ果皮抽出物について上述された量となるようにすることができる。
<医薬組成物>
本発明はまた、上記ブドウ果皮抽出物を含有する医薬組成物に関する。医薬組成物は、医薬品又は医薬部外品であることができる。
本発明はまた、上記ブドウ果皮抽出物を含有する医薬組成物に関する。医薬組成物は、医薬品又は医薬部外品であることができる。
医薬組成物は、製薬上許容される成分を含むことができ、例えば、担体、賦形剤(例えば、乳糖、ショ糖、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン)、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、安定剤、保存剤、防腐剤、溶剤(例えば、水、食塩水、エタノール等の有機溶媒)が挙げられる。他の薬理活性を有する薬理成分を含むこともできる。
医薬組成物は、医薬品又は医薬部外品として使用することができる。医薬組成物は、経口投与用であっても、非経口投与であってもよく、好ましくは、経口投与である。経口投与の場合、散剤、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、ソフトカプセル又はハードカプセル、液剤、乳濁剤、懸濁剤の形態が挙げられる。非経口投与の場合、坐剤、注射剤、輸液、軟膏、クリーム、ゲル剤の形態が挙げられる。
医薬組成物についての使用(対象となる疾患及び症状等、投与方法(投与対象、投与量、期間))は、ブドウ果皮抽出物と同様に設定することができる。具体的には、抗老化、抗ストレス、抗疲労、学習能力回復・向上、記憶力回復・向上、反射反応能力回復・向上用の医薬組成物が挙げられる。投与量は、ブドウ果皮抽出物の投与量が、ブドウ果皮抽出物について上述された量となるようにすることができる。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって制限されない。
<試料の調製>
試料の調製においては、以下の品種名のブドウを使用した。
・富士の夢(行者の水(サンカクヅル)とメルロー(ヨーロッパブドウ)の交配種)
・エイトゴールド(行者の水(サンカクヅル)とピノ・ノワール(ヨーロッパブドウ)の交配種)
・ピオーネ(雑種)
・甲斐路(雑種)
・マスカットベリーA(雑種)
試料の調製においては、以下の品種名のブドウを使用した。
・富士の夢(行者の水(サンカクヅル)とメルロー(ヨーロッパブドウ)の交配種)
・エイトゴールド(行者の水(サンカクヅル)とピノ・ノワール(ヨーロッパブドウ)の交配種)
・ピオーネ(雑種)
・甲斐路(雑種)
・マスカットベリーA(雑種)
試料の調製においては、以下の抽出法を使用した。
・抽出法1
ブドウの果実を圧搾して果汁を除いた後の果皮を、ステンレス製の網かごの上に互いが触れ合わないように置いて、乾燥機を用いて70℃の温風をあててブドウ果皮乾燥物を得た。得られたブドウ果皮乾燥物6gに、2%ギ酸メタノール水(メタノール:超純水:ギ酸=70:28:2(v/v/v))40mLを加え、12時間、室温遮光条件下で撹拌(360rpm)し、抽出液を得た。得られた抽出液を、濾紙(ADVANTEC社製 定量濾紙No.5A、110mm)を用いて濾過し、濾過した抽出溶液を濃縮及び凍結乾燥しブドウ果皮抽出物の粉末を得た。
・抽出法1
ブドウの果実を圧搾して果汁を除いた後の果皮を、ステンレス製の網かごの上に互いが触れ合わないように置いて、乾燥機を用いて70℃の温風をあててブドウ果皮乾燥物を得た。得られたブドウ果皮乾燥物6gに、2%ギ酸メタノール水(メタノール:超純水:ギ酸=70:28:2(v/v/v))40mLを加え、12時間、室温遮光条件下で撹拌(360rpm)し、抽出液を得た。得られた抽出液を、濾紙(ADVANTEC社製 定量濾紙No.5A、110mm)を用いて濾過し、濾過した抽出溶液を濃縮及び凍結乾燥しブドウ果皮抽出物の粉末を得た。
・抽出法2
ブドウ果皮(6~7粒分)をステンレス製のザルに入れ、皮を潰さないように水道水で洗浄した。洗浄した果皮を厚手のジップ付きのポリ袋に入れ、凍結乾燥を行なった。凍結乾燥した果皮1gを、高速高圧抽出装置(日本ビュッヒ社製、E-914)にセットし、1%ギ酸メタノール(メタノール:ギ酸=99:1(v/v))にて、10MPaの高圧下で、3回抽出し、抽出液を得た。得られた抽出液100mL程度を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮及び凍結乾燥し、ブドウ果皮抽出物の粉末を得た。
ブドウ果皮(6~7粒分)をステンレス製のザルに入れ、皮を潰さないように水道水で洗浄した。洗浄した果皮を厚手のジップ付きのポリ袋に入れ、凍結乾燥を行なった。凍結乾燥した果皮1gを、高速高圧抽出装置(日本ビュッヒ社製、E-914)にセットし、1%ギ酸メタノール(メタノール:ギ酸=99:1(v/v))にて、10MPaの高圧下で、3回抽出し、抽出液を得た。得られた抽出液100mL程度を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮及び凍結乾燥し、ブドウ果皮抽出物の粉末を得た。
上記により得られたブドウ果皮抽出物の粉末をメタノールに溶解し、高速液体クロマトグラフィー-質量分析(HPLC/MS)を行い、抽出物粉末1gに含まれる、マルビジン-3,5-ジグルコシド、マルビジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-グルコシド、マルビジン-3-クマロイルグルコシド、マルビジン-3-クマロイルグルコシド-5-グルコシド、レスベラトロールの量を確認した。成分の同定及び定量は、LC-MS分析のライブラリーで確認するとともに、標準品の測定値との対比により行った。結果は、以下のとおりである。
上記抽出物1、4及び6を用いて、以下の試料1~4を調製した。
試料1:上記抽出物1を70%エタノール溶液(エタノール:水=70:30(v/v))に溶解し、得られた溶液中の抽出物粉末の濃度が100μg/mLになるように調整した。マルビジン-3,5-ジグルコシドの濃度にすると12.56μMである(クロリドで計算)。
試料2:上記抽出物4を70%エタノール溶液(エタノール:水=70:30(v/v))に溶解し、得られた溶液中の抽出物粉末の濃度が100μg/mLになるように調整した。マルビジン-3,5-ジグルコシドの濃度にすると1.43μMである(クロリドで計算)。
試料3:上記抽出物6を70%エタノール溶液(エタノール:水=70:30(v/v))に溶解し、得られた溶液中の抽出物粉末の濃度が100μg/mLになるように調整した。マルビジン-3,5-ジグルコシドの濃度にすると0.80μMである(クロリドで計算)。
試料4:上記抽出物1を超純水(Milli-Q(登録商標)水)に溶解し、得られた溶液中の抽出物粉末の濃度が7.5mg/mLになるように調整した。溶液中のマルビジン-3,5-ジグルコシドの濃度は651μg/mLである(クロリドで計算)。
試料1:上記抽出物1を70%エタノール溶液(エタノール:水=70:30(v/v))に溶解し、得られた溶液中の抽出物粉末の濃度が100μg/mLになるように調整した。マルビジン-3,5-ジグルコシドの濃度にすると12.56μMである(クロリドで計算)。
試料2:上記抽出物4を70%エタノール溶液(エタノール:水=70:30(v/v))に溶解し、得られた溶液中の抽出物粉末の濃度が100μg/mLになるように調整した。マルビジン-3,5-ジグルコシドの濃度にすると1.43μMである(クロリドで計算)。
試料3:上記抽出物6を70%エタノール溶液(エタノール:水=70:30(v/v))に溶解し、得られた溶液中の抽出物粉末の濃度が100μg/mLになるように調整した。マルビジン-3,5-ジグルコシドの濃度にすると0.80μMである(クロリドで計算)。
試料4:上記抽出物1を超純水(Milli-Q(登録商標)水)に溶解し、得られた溶液中の抽出物粉末の濃度が7.5mg/mLになるように調整した。溶液中のマルビジン-3,5-ジグルコシドの濃度は651μg/mLである(クロリドで計算)。
<実施例1:細胞生存実験>
以下の実験により、ブドウ果皮抽出物の神経細胞死の抑制作用を確認した。
以下の実験により、ブドウ果皮抽出物の神経細胞死の抑制作用を確認した。
ウェルプレート(BD Biocoat社製、ウェル数96)の各ウェルに、SH-SY5Y細胞(神経細胞のモデル細胞、ATCC社製)を2×105セル/mLの濃度で、100μL/ウェル播種し、24時間、37℃、5%CO2の条件下で培養した。細胞培養培地は、F12/DMEM培地(Gibco社製)に1%非必須アミノ酸(Gibco社製)、15%FBS(Bio West社製)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza社製)を混合したものを用いた。
24時間後、培養培地をアスピレーターにより完全に除去し、Opti-MEM(Gibco社製)の培地を100μL/ウェル添加し、24時間、37℃、5%CO2の条件下で培養した。
その後、Opti-MEMをアスピレーターにより完全に除去し、MTT試薬(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド、5mg/mL)をOpti-MEMに混合(MTT試薬:Opti-MEM=1:10)したものを、110μL/ウェル添加し、24時間、37℃、5%CO2の条件下で培養した。次いで、10%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)水溶液を、100μL/ウェル添加し、24時間、37℃、5%CO2の条件下で培養した。
その後、マイクロプレートリーダー(大日本住友製薬株式会社製)を用いて、570nmにおける吸光度を測定し、MTTホルマザン産出量を求め、相対細胞生存率を算出した(図1中、「対照」)。
24時間後、培養培地をアスピレーターにより完全に除去し、Opti-MEM(Gibco社製)の培地を100μL/ウェル添加し、24時間、37℃、5%CO2の条件下で培養した。
その後、Opti-MEMをアスピレーターにより完全に除去し、MTT試薬(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド、5mg/mL)をOpti-MEMに混合(MTT試薬:Opti-MEM=1:10)したものを、110μL/ウェル添加し、24時間、37℃、5%CO2の条件下で培養した。次いで、10%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)水溶液を、100μL/ウェル添加し、24時間、37℃、5%CO2の条件下で培養した。
その後、マイクロプレートリーダー(大日本住友製薬株式会社製)を用いて、570nmにおける吸光度を測定し、MTTホルマザン産出量を求め、相対細胞生存率を算出した(図1中、「対照」)。
ウェルプレート(BD Biocoat社製、ウェル数96)へのSH-SY5Y細胞播種24時間後、培養培地をアスピレーターにより完全に除去し、アミロイドβタンパク質(Beta-Amyloid 1-42、AnaSpec社製)をOpti-MEM(Gibco社製)に最終濃度15μMとなるよう混合した混合物を100μL/ウェル添加し、72時間、37℃、5%CO2の条件で培養し、細胞死を誘導したこと以外は、上記と同様にして、MTTホルマザン産出量を求め、相対細胞生存率を算出した(図1中、「Aβ」)。
ウェルプレート(BD Biocoat社製、ウェル数96)へのSH-SY5Y細胞播種24時間後、培養培地をアスピレーターにより完全に除去し、試料1をOpti-MEMに最終濃度200μg/mLとなるよう混合した混合物を90μL/ウェル添加し、10分間放置し、次いでアミロイドβタンパク質(Beta-Amyloid 1-42、AnaSpec社製)をOpti-MEMに濃度150μMとなるよう混合した混合物を10μL/ウェル添加し、72時間、37℃、5%CO2の条件で培養し、細胞死を誘導したこと以外は、上記と同様にして、MTTホルマザン産出量を求め、相対細胞生存率を算出した(図1中、「Aβ+抽出物1」)。
試料1に代えて試料2を用いた他は、上記と同様にして、相対細胞生存率を算出した(図1中、「Aβ+抽出物4」)。
試料1に代えて試料3を用いた他は、上記と同様にして、相対細胞生存率を算出した(図1中、「Aβ+抽出物6」)。
図中の「対照」と「Aβ」を比較すると、前者に対し後者の相対細胞生存率は顕著に低く、アミロイドβタンパク質による処理によって細胞死が誘導されていることがわかった。
図中の「Aβ+抽出物1」は、相対細胞生存率が、「Aβ」よりも有意に高く、細胞死の抑制作用が得られることがわかった。その相対細胞生存率の高さは、「対照」と同等であり、抽出物1が細胞死の抑制作用のみならず、細胞の増殖作用も有する可能性が示唆される。一方、「Aβ+抽出物4」及び「Aβ+抽出物6」の相対細胞生存率は、「Aβ」よりも改善されたが、「Aβ+抽出物1」には及ばなかった。
図中の「Aβ+抽出物1」は、相対細胞生存率が、「Aβ」よりも有意に高く、細胞死の抑制作用が得られることがわかった。その相対細胞生存率の高さは、「対照」と同等であり、抽出物1が細胞死の抑制作用のみならず、細胞の増殖作用も有する可能性が示唆される。一方、「Aβ+抽出物4」及び「Aβ+抽出物6」の相対細胞生存率は、「Aβ」よりも改善されたが、「Aβ+抽出物1」には及ばなかった。
<実施例2:動物実験(抗炎症作用確認実験)>
以下の実験により、ブドウ果皮抽出物の抗炎症作用を確認した。
以下の実験により、ブドウ果皮抽出物の抗炎症作用を確認した。
実験において使用したマウス及び投与内容は、以下のとおりである。投与内容以外の飼育条件は、全部の群で共通である。
抽出物投与(SAMP8)群:1日当たり、試料4を、マウス体重1kg当たり3.34mL、老化促進マウス(SAMP8)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28~30g)10匹に、38日間経口投与した(図2及び3中、「老化促進マウス+抽出物1」)。3.34mLの試料4中、抽出物粉末は25mg含まれ、マルビジン‐3,5-ジグルコシドとして2.17mg含まれることになる。
マウス体重1kg当たり抽出物粉末25mgのヒト等価用量は、ヒト体重1kg当たり抽出物粉末2.0mgである。
また、マウス体重1kg当たりマルビジン-3,5-ジグルコシド2.17mgのヒト等価用量は、ヒト体重1kg当たりマルビジン-3,5-ジグルコシド0.18mgである。
水投与(SAMP8)群:抽出物投与(SAMP8)群に投与した試料4とほぼ同量の超純水(Milli-Q(登録商標)水)を、老化促進マウス(SAMP8)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28~30g)10匹に、38日間経口投与した(図2及び3中、「老化促進マウス」)
水投与(SAMR1)群:抽出物投与(SAMP8)群に投与した試料4とほぼ同量の超純水(Milli-Q(登録商標)水)を、正常老化マウス(SAMR1)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28.5~34g)10匹に、38日間経口投与した(図2及び3中、「正常老化マウス」)
抽出物投与(SAMP8)群:1日当たり、試料4を、マウス体重1kg当たり3.34mL、老化促進マウス(SAMP8)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28~30g)10匹に、38日間経口投与した(図2及び3中、「老化促進マウス+抽出物1」)。3.34mLの試料4中、抽出物粉末は25mg含まれ、マルビジン‐3,5-ジグルコシドとして2.17mg含まれることになる。
マウス体重1kg当たり抽出物粉末25mgのヒト等価用量は、ヒト体重1kg当たり抽出物粉末2.0mgである。
また、マウス体重1kg当たりマルビジン-3,5-ジグルコシド2.17mgのヒト等価用量は、ヒト体重1kg当たりマルビジン-3,5-ジグルコシド0.18mgである。
水投与(SAMP8)群:抽出物投与(SAMP8)群に投与した試料4とほぼ同量の超純水(Milli-Q(登録商標)水)を、老化促進マウス(SAMP8)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28~30g)10匹に、38日間経口投与した(図2及び3中、「老化促進マウス」)
水投与(SAMR1)群:抽出物投与(SAMP8)群に投与した試料4とほぼ同量の超純水(Milli-Q(登録商標)水)を、正常老化マウス(SAMR1)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28.5~34g)10匹に、38日間経口投与した(図2及び3中、「正常老化マウス」)
動物実験の内容は、以下のとおりである。
経口投与終了の翌日、各群のマウスから大脳皮質を摘出し、RNAを抽出し、リアルタイムPCR法を用いて、TNF-α(腫瘍壊死因子)及びIL-6(インターロイキン6)の遺伝子発現について解析を行った。
なお、RNA抽出に関しては、摘出した大脳皮質にISOGEN試薬(ニッポンジーン社製)を加え、ホモジナイザーを用いてホモジナイズした後、ニッポンジーン社推奨プロトコールに準じてRNA抽出を行なった(URL: https://www.nippongene.com/siyaku/product/extraction/tds/tds_isogen-rna-dna-protein.pdf参照)。
また、リアルタイムPCR法に関しては、TaqMan Real-TimePCR用試薬キット(Thermo Fisher Scientific社製)を用いてThermo Fisher Scientific社推奨プロトコールに準じて行なった(URL: https://assets.thermofisher.com/TFS-Assets/LSG/manuals/4304449_TaqManPCRMM_UG.pdf参照)。
経口投与終了の翌日、各群のマウスから大脳皮質を摘出し、RNAを抽出し、リアルタイムPCR法を用いて、TNF-α(腫瘍壊死因子)及びIL-6(インターロイキン6)の遺伝子発現について解析を行った。
なお、RNA抽出に関しては、摘出した大脳皮質にISOGEN試薬(ニッポンジーン社製)を加え、ホモジナイザーを用いてホモジナイズした後、ニッポンジーン社推奨プロトコールに準じてRNA抽出を行なった(URL: https://www.nippongene.com/siyaku/product/extraction/tds/tds_isogen-rna-dna-protein.pdf参照)。
また、リアルタイムPCR法に関しては、TaqMan Real-TimePCR用試薬キット(Thermo Fisher Scientific社製)を用いてThermo Fisher Scientific社推奨プロトコールに準じて行なった(URL: https://assets.thermofisher.com/TFS-Assets/LSG/manuals/4304449_TaqManPCRMM_UG.pdf参照)。
図2及び3に示すように、正常老化マウスに対し、老化促進マウスでは、炎症性サイトカインであるTNF-α及びIL-6の有意な発現増加が確認された。一方、抽出物を投与した老化促進マウスでは、発現が正常老化マウスと同程度に抑制されていた。
<実施例3:動物実験(神経伝達物質減少の抑制作用確認実験)>
以下の実験により、ブドウ果皮抽出物の神経伝達物質減少の抑制作用を確認した。
以下の実験により、ブドウ果皮抽出物の神経伝達物質減少の抑制作用を確認した。
実験において使用したマウス及び投与内容は、以下のとおりである。投与内容以外の飼育条件は、全部の群で共通である。
抽出物投与(SAMP8)群:1日当たり、試料4を、マウス体重1kg当たり3.34mLで、老化促進マウス(SAMP8)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28~30g)10匹に、38日間経口投与した(図4及び5中、「老化促進マウス+抽出物1」)。
水投与(SAMP8)群:抽出物投与(SAMP8)群に投与した試料4とほぼ同量の飲料水を、老化促進マウス(SAMP8)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28~30g)10匹に、38日間経口投与した(図4及び5中、「老化促進マウス」)
水投与(SAMR1)群:抽出物投与(SAMP8)群に投与した試料4とほぼ同量の飲料水を、正常老化マウス(SAMR1)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28.5~34g)10匹に、38日間経口投与した(図4及び5中、「正常老化マウス」)
抽出物投与(SAMP8)群:1日当たり、試料4を、マウス体重1kg当たり3.34mLで、老化促進マウス(SAMP8)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28~30g)10匹に、38日間経口投与した(図4及び5中、「老化促進マウス+抽出物1」)。
水投与(SAMP8)群:抽出物投与(SAMP8)群に投与した試料4とほぼ同量の飲料水を、老化促進マウス(SAMP8)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28~30g)10匹に、38日間経口投与した(図4及び5中、「老化促進マウス」)
水投与(SAMR1)群:抽出物投与(SAMP8)群に投与した試料4とほぼ同量の飲料水を、正常老化マウス(SAMR1)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28.5~34g)10匹に、38日間経口投与した(図4及び5中、「正常老化マウス」)
動物実験の内容は、以下のとおりである。
経口投与終了の翌日、各群のマウスから大脳皮質を摘出し、大脳皮質にRIPA Lysis Buffer System(Santa Cruz Biotechnology, Inc.社)を加え、ホモジナイザーを用いてホモジナイズを行い、タンパク質抽出を行った。その後遠心(10000×g、30分間)を行い、上清を回収し、ノルアドレナリン及びドーパミンの定量を行なった。
ノルアドレナリンの定量は、酵素免疫測定法(ELISA)キット(LDN社製、BAE-5200)に従って行った。定量は、450nmの吸光度を測定し、濃度が既知のノルアドレナリンを用いた標準曲線より算出した。
ドーパミンの定量は、酵素免疫測定法(ELISA)キット(LDN社製、BAE-5300)に従って行った。定量は、450nmの吸光度を測定し、濃度が既知のドーパミンを用いた標準曲線より算出した。
経口投与終了の翌日、各群のマウスから大脳皮質を摘出し、大脳皮質にRIPA Lysis Buffer System(Santa Cruz Biotechnology, Inc.社)を加え、ホモジナイザーを用いてホモジナイズを行い、タンパク質抽出を行った。その後遠心(10000×g、30分間)を行い、上清を回収し、ノルアドレナリン及びドーパミンの定量を行なった。
ノルアドレナリンの定量は、酵素免疫測定法(ELISA)キット(LDN社製、BAE-5200)に従って行った。定量は、450nmの吸光度を測定し、濃度が既知のノルアドレナリンを用いた標準曲線より算出した。
ドーパミンの定量は、酵素免疫測定法(ELISA)キット(LDN社製、BAE-5300)に従って行った。定量は、450nmの吸光度を測定し、濃度が既知のドーパミンを用いた標準曲線より算出した。
図4及び5に示すように、正常老化マウスに対し、老化促進マウスでは、神経伝達物質であるノルアドレナリン及びドーパミンの有意な減少が確認された。一方、抽出物を投与した老化促進マウスでは、遺伝子の発現が正常老化マウスと同程度であった。
<実施例4:動物実験(学習記憶能力の改善作用確認実験)>
以下の実験により、ブドウ果皮抽出物投与による動物における学習記憶能力の改善作用を確認した。
以下の実験により、ブドウ果皮抽出物投与による動物における学習記憶能力の改善作用を確認した。
実験において使用したマウス及び投与内容は、以下のとおりである。投与内容以外の飼育条件は、全部の群で共通である。
抽出物投与(SAMP8)群:1日当たり、試料4を、マウス体重1kg当たり3.34mLで、老化促進マウス(SAMP8)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28~30g)10匹に、30日間経口投与した(図6~8中、「老化促進マウス+抽出物1」)。
水投与(SAMP8)群:抽出物投与(SAMP8)群に投与した試料4とほぼ同量の飲料水を、老化促進マウス(SAMP8)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28~30g)10匹に、30日間経口投与した(図6~8中、「老化促進マウス」)。
水投与(SAMR1)群:抽出物投与(SAMP8)群に投与した試料4とほぼ同量の飲料水を、正常老化マウス(SAMR1)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28.5~34g)10匹に、30日間経口投与した(図6~8中、「正常老化マウス」)。
単品(M3,5G)投与(SAMP8)群:参考のため、マルビジン-3,5-ジグルコシドクロリド(富士フィルム和光純薬株式会社製)を、1日当たりの投与量が、マウス体重1kg当たり2.17mgとなる量で、老化促進マウス(SAMP8)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28~30g)10匹に、30日間経口投与した(図6~8中、「老化促進マウス+単品(M3,5G)」)。
抽出物投与(SAMP8)群:1日当たり、試料4を、マウス体重1kg当たり3.34mLで、老化促進マウス(SAMP8)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28~30g)10匹に、30日間経口投与した(図6~8中、「老化促進マウス+抽出物1」)。
水投与(SAMP8)群:抽出物投与(SAMP8)群に投与した試料4とほぼ同量の飲料水を、老化促進マウス(SAMP8)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28~30g)10匹に、30日間経口投与した(図6~8中、「老化促進マウス」)。
水投与(SAMR1)群:抽出物投与(SAMP8)群に投与した試料4とほぼ同量の飲料水を、正常老化マウス(SAMR1)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28.5~34g)10匹に、30日間経口投与した(図6~8中、「正常老化マウス」)。
単品(M3,5G)投与(SAMP8)群:参考のため、マルビジン-3,5-ジグルコシドクロリド(富士フィルム和光純薬株式会社製)を、1日当たりの投与量が、マウス体重1kg当たり2.17mgとなる量で、老化促進マウス(SAMP8)(日本エスエルシー社より入手。16週齢、体重28~30g)10匹に、30日間経口投与した(図6~8中、「老化促進マウス+単品(M3,5G)」)。
動物実験の内容は、以下のとおりである。
各群のマウスについて、経口投与終了の翌日より、モリス水迷路試験(プラットフォームテスト、プローブテスト)を行った。モリス水迷路として、直径120cm、深さ45cmのプールを用意した。プールの水面下に透明の台(プラットフォーム)を設置し、プールの内壁に等間隔で4カ所目印を設置したものを用いた。
各群のマウスについて、経口投与終了の翌日より、モリス水迷路試験(プラットフォームテスト、プローブテスト)を行った。モリス水迷路として、直径120cm、深さ45cmのプールを用意した。プールの水面下に透明の台(プラットフォーム)を設置し、プールの内壁に等間隔で4カ所目印を設置したものを用いた。
プラットフォームテスト:
マウスをプール内に投入し、マウスがプラットフォームに到達するまでにかかる時間を測定した。その際、制限時間を60秒とし、到達できない場合は60秒とした。到達後マウスは15秒間、プラットフォーム上に置かれた。各群の各マウスについて、この実験を1日1回、7日間続けて行った。結果を図6に示す。
マウスをプール内に投入し、マウスがプラットフォームに到達するまでにかかる時間を測定した。その際、制限時間を60秒とし、到達できない場合は60秒とした。到達後マウスは15秒間、プラットフォーム上に置かれた。各群の各マウスについて、この実験を1日1回、7日間続けて行った。結果を図6に示す。
プローブテスト:
試験最終日に、プラットフォームを取り除き、同様にマウスをプールに投入し、60秒の間に、マウスが、プラットフォームが設置されていた場所を横切った回数及び同場所に滞在していた時間を測定した。結果を図7及び8に示す。
試験最終日に、プラットフォームを取り除き、同様にマウスをプールに投入し、60秒の間に、マウスが、プラットフォームが設置されていた場所を横切った回数及び同場所に滞在していた時間を測定した。結果を図7及び8に示す。
プラットフォームテストは、マウスが目印等の視覚刺激を頼りにプラットフォームに到達するまでにかかる時間を指標として空間学習記憶を評価するものである。図6に示されるように、正常老化マウス(水投与)については、到達時間が短縮していったのに対し、老化促進マウス(水投与)については、到達時間の短縮は見られなかった。抽出物を投与した老化促進マウスでは、正常老化マウス(水投与)と同程度の到達時間の短縮が見られた。マルビジン-3,5-ジグルコシドを投与した老化促進マウスと比べた場合、抽出物1を投与した老化促進マウスの方が、到達時間の短縮幅は大きかった。
プローブテストは、プラットフォームが設置されていた場所を横切った回数及び同場所の滞在時間により、マウスの記憶保持能力を評価するものである。図7及び8に示されるように、老化促進マウス(水投与)は、正常老化マウス(水投与)に比べて、横切った回数が有意に少なく、また、滞在時間が有意に短かった。抽出物1を投与した老化促進マウスでは、正常老化マウス(水投与)と同程度の横切った回数及び滞在時間が観察された。マルビジン-3,5-ジグルコシドを投与した老化促進マウスと比べた場合、抽出物を投与した老化促進マウスの方が、横切った回数が多く、また、滞在時間は長かった。
以上のように、本発明の抽出物の投与による、動物の学習記憶能力の改善が確認された。
本発明のブドウ果皮抽出物は、神経細胞保護に有効であり、当該保護を介して神経機能調節作用を発揮するものであり、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病等の神経変性疾患等の改善、予防が期待でき、健康サプリメント等の食品、医薬品としての展開や関連市場の拡大が期待される。本発明のブドウ果皮抽出物は、天然物に由来するため、安全であり、日常的又は継続的な摂取に適していると考えられる。このように、本発明は、産業上の有用性が高い。
Claims (17)
- 乾燥質量中、マルビジン-3,5-ジグルコシドを15mg/g以上含有するブドウ果皮抽出物。
- デルフィニジン-3-グルコシドを含有する、請求項1に記載のブドウ果皮抽出物。
- デルフィニジン-3-グルコシドを、マルビジン-3,5-ジグルコシド1モルに対して0.01モル以上1.5モル以下含有する、請求項2に記載のブドウ果皮抽出物。
- マルビジン-3-グルコシドを含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のブドウ果皮抽出物。
- マルビジン-3-グルコシドを、マルビジン-3,5-ジグルコシド1モルに対して、0.01モル以上1.5モル以下含有する、請求項4に記載のブドウ果皮抽出物。
- マルビジン-3-クマロイルグルコシドを含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のブドウ果皮抽出物。
- マルビジン-3-クマロイルグルコシドを、マルビジン-3,5-ジグルコシド1モルに対して、0.01モル以上2.0モル以下含有する、請求項6に記載のブドウ果皮抽出物。
- マルビジン-3-クマロイルグルコシド-5-グルコシドを含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のブドウ果皮抽出物。
- マルビジン-3-クマロイルグルコシド-5-グルコシドを、マルビジン-3,5-ジグルコシド1モルに対して、0.01モル以上2.0モル以下含有する、請求項8に記載のブドウ果皮抽出物。
- レスベラトロールを含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のブドウ果皮抽出物。
- レスベラトロールを、マルビジン-3,5-ジグルコシド1モルに対して、0.001モル以上含有する、請求項10に記載のブドウ果皮抽出物。
- ブドウ果皮が、ヤマブドウ(Vitis Coignetiae)、サンカクヅル(Vitis flexuosa)、ヤマブドウ(Vitis Coignetiae)とサンカクヅル(Vitis flexuosa)の交配種、ヤマブドウ(Vitis Coignetiae)とヨーロッパブドウ(Vitis Vinifera)の交配種及びサンカクヅル(Vitis flexuosa)とヨーロッパブドウ(Vitis Vinifera)の交配種からなる群より選択される1種以上のブドウの果皮である、請求項1~11のいずれか一項に記載のブドウ果皮抽出物。
- 請求項1~12のいずれか一項に記載のブドウ果皮抽出物を含有する、食品組成物。
- アルコール度数が3%未満の飲料である、請求項13記載の食品組成物。
- 請求項1~12のいずれか一項に記載のブドウ果皮抽出物を含有する、医薬組成物。
- ブドウ果皮より、有機溶媒を用いて、マルビジン-3,5-ジグルコシドを含む成分を抽出する、請求項1~12のいずれか一項に記載のブドウ果皮抽出物の製造方法。
- ブドウ果皮として、ブドウ果皮乾燥物を用い、酸を含む有機溶媒又は酸を含む有機溶媒と水の混合溶媒を用いて抽出を行う、請求項16に記載のブドウ果皮抽出物の製造方法。
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