JPWO2020170589A1 - アルミニウム合金材 - Google Patents

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Abstract

Feを1.2原子%以上6.5原子%以下含有し、Nd、W及びScからなる群より選択される1種以上の元素を0.005原子%以上0.15原子%未満含有し、残部がAl及び不可避不純物であるアルミニウム合金材が提供される。

Description

本開示は、アルミニウム合金材に関する。本出願は、2019年2月20日に出願した日本特許出願である特願2019−028568号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
特開平06−158211号公報(特許文献1)は、Feと、Mn、Ni、Cr等の遷移元素と、Siと、Mgとを含有するアルミニウム合金を開示する。特開2000−096176号公報(特許文献2)は、Siを17重量%以上と、Zrと、Y及びミッシュメタル等から選択される少なくとも1種とを含有するアルミニウム合金を開示する。
特開平06−158211号公報 特開2000−096176号公報
第一の本開示のアルミニウム合金材は、
Feを1.2原子%以上6.5原子%以下含有し、
Nd、W及びScからなる群より選択される1種以上の元素を0.005原子%以上0.15原子%未満含有し、
残部がAl及び不可避不純物である。
第二の本開示のアルミニウム合金材は、
Feを1.2原子%以上6.5原子%以下含有し、
Nd、W及びScからなる群より選択される1種以上の第一元素を0.005原子%以上0.15原子%未満含有し、
C及びBからなる群より選択される1種以上の第二元素を0.005原子%以上2原子%未満含有し、
残部がAl及び不可避不純物である。
[本開示が解決しようとする課題]
高温でも高い引張強さ及び/又は高いビッカース硬さを有するなどのように、耐熱性に優れるアルミニウム合金材が望まれている。
特許文献1に記載されるアルミニウム合金は、200℃において高い引張強さを有しており、耐熱性に優れる。しかし、特許文献1に記載されるような熱間加工を行うと、AlとFeとを含む化合物のような析出物が成長し易い。粗大な析出物が存在すると、アルミニウム合金が脆化し易くなる。該脆化を防止するために、熱間加工におけるアルミニウム合金材の形状が制約される。従って、種々の形状のアルミニウム合金材を製造できること、即ち、アルミニウム合金材は、製造性にも優れることが望ましい。
また、上述のMn、Ni、Cr等の遷移元素は、上述の析出物を微細にして、高温での強度を高める作用を有する。しかし、これらの遷移元素の融点は、Feの融点に近い。そのため、アルミニウム合金材のリサイクル時にFeと上記遷移元素とを分離し難い。従って、アルミニウム合金材は、リサイクル時の作業性にも優れることが望ましい。
特許文献2に記載されるアルミニウム合金の組成は、高いアモルファス形成能を有する。そのため、AlとZrとを含む化合物のサイズは、ナノサイズである。Si晶出物のサイズは、100nm程度である。このような非常に微細な粒子によって、上記アルミニウム合金は、室温において高い引張強さと高い破断伸びとを有し得る。また、非常に微細な粒子であるため、高温時に該粒子が成長しても、上記アルミニウム合金は脆化し難い。しかし、上記アルミニウム合金は、添加元素の合計添加量が多い。例えば、Zrに加えて、Y及びミッシュメタル等から選択される少なくとも1種を8重量%(1原子%〜2原子%)含む。従って、添加元素が少なくても、耐熱性に優れるアルミニウム合金材が望まれる。
本開示は、耐熱性に優れるアルミニウム合金材を提供することを目的の一つとする。
[本開示の効果]
本開示のアルミニウム合金材は、耐熱性に優れる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係るアルミニウム合金材(以下、第一のAl合金材と呼ぶことがある)は、
Fe(鉄)を1.2原子%以上6.5原子%以下含有し、
Nd(ネオジム)、W(タングステン)及びSc(スカンジウム)からなる群より選択される1種以上の元素(以下、第一元素と呼ぶことがある)を0.005原子%以上0.15原子%未満含有し、
残部がAl(アルミニウム)及び不可避不純物である。
第一のAl合金材は、添加元素の合計含有量が少ないものの、耐熱性に優れる。この理由の一つは、以下であると考えられる。
Feと共に第一元素を含む第一のAl合金材は、例えば、微細な結晶組織中に、AlとFeとを含む化合物からなる微細な粒子が分散した組織を有することができる(具体例として、後述の(2)参照)。このような第一のAl合金材は、室温(例、25℃)において、例えば高い引張強さ及び/又は高いビッカース硬さを有する。そのため、第一のAl合金材は、高温、例えば250℃であっても、高い引張強さ及び/又は高いビッカース硬さを有し易い。特に、第一のAl合金材は、Feと共に第一元素を含むため、上記高温になっても上述の微細な組織を維持し易い(詳細は後述する)。このことからも、第一のAl合金材は、上記高温でも高い引張強さ及び/又は高いビッカース硬さを有し易い。
また、第一のAl合金材は、製造性にも優れる。後述するように成形性に優れる素材が得られ易いからである。また、後述するように第一のAl合金材は伸びにも優れており、冷間でも温間でも、塑性加工を行い易いからである。
更に、第一のAl合金材は、リサイクル時の作業性にも優れる。AlとFeとは融点が異なるため、分離し易いからである。また、Al及びFeと、第一元素とは、融点や、酸等に対する反応性等が異なるため、分離し易いからである。
(2)本開示のAl合金材の一例は、上記第一のAl合金材において、
Alを99原子%以上含む母相と、前記母相の中に存在し、AlとFeとを含む化合物からなる粒子(以下、化合物粒子と呼ぶことがある)とを含む組織を備え、
上記第一のAl合金材の任意の断面において、前記母相をなす結晶粒の平均粒径が1700nm以下であり、前記化合物粒子の平均長さが140nm以下であるAl合金材である。
上記結晶粒の平均粒径、上記化合物粒子の平均長さは、Al合金材の任意の断面において測定した大きさとする。上記平均粒径、上記平均長さの測定方法の詳細は、後述の試験例1で説明する。これらの点は、後述する(8)の構成についても同様である。
上記形態においては、微細な化合物粒子による分散強化と、微細な結晶粒による粒界強化とによって、機械的強度の向上効果が良好に得られる。また、微細な化合物粒子は、応力集中が生じ難いため、割れの起点になり難い。これらのことから、上記形態は、室温において、例えば高い引張強さ及び/又は高いビッカース硬さを有する。特に、第一元素は、少量でも化合物粒子を安定化させる作用を有すると考えられる。化合物粒子の安定化によって、上述の高温であっても、化合物粒子が粗大になり難い(針状に成長し難い)。そのため、上記高温になっても、化合物粒子の粗大化によるAl合金材の脆化が抑制され易い。また、化合物粒子が微細な状態に維持され易いことで、結晶の成長も抑制される。その結果、上記高温でも上述の微細な組織が維持され易い。そのため、上記高温でも引張強さ及び/又はビッカース硬さがより低下し難い。従って、上記形態は、耐熱性に優れる。また、上記形態は、上述のように高温でも微細な組織を有し易いため、熱間加工における形状の自由度が高められる。この点で、上記形態は、製造性に優れる。
(3)上記(2)の第一のAl合金材の一例として、
前記断面において、一辺の長さが500nmである正方形の領域の面積を単位面積とするとき、前記単位面積あたりに存在する前記化合物粒子の平均個数が10個以上220個以下である形態が挙げられる。
上記平均個数の測定方法の詳細は、後述の試験例1で説明する。この点は、後述する(9)の構成についても同様である。
上記形態は、微細な化合物粒子を適量含むといえる。このような形態は、微細な化合物粒子による上述の効果(分散強化、結晶の成長の抑制、割れの発生の低減、脆化の抑制等)を得易いため、耐熱性により優れる。
(4)上記(2)又は上記(3)の第一のAl合金材の一例として、
前記化合物粒子のアスペクト比が3.5以下である形態が挙げられる。
上記アスペクト比の測定方法の詳細は、後述の試験例1で説明する。この点は、後述する(10)の構成についても同様である。
化合物粒子のアスペクト比が3.5以下であれば、微細な化合物粒子による上述の効果(分散強化、結晶の成長の抑制、割れの発生の低減、脆化の抑制等)がより得られ易い。従って、上記形態は、耐熱性により優れる。
(5)第一のAl合金材の一例として、
25℃におけるビッカース硬さが85Hv以上であり、
25℃から250℃までのビッカース硬さの低下に関する温度係数が0.30%/℃以下である形態が挙げられる。
上記形態は、室温において高硬度である。また、上記形態は、250℃のような高温になってもビッカース硬さが低下し難い点で、耐熱性に優れる。
(6)第一のAl合金材の一例として、
25℃における破断伸びが3%以上である形態が挙げられる。
上記形態は、室温において高靭性である。このような形態は、曲げ等を行い易く、冷間加工性に優れる。
(7)本開示の別の態様に係るアルミニウム合金材(以下、第二のAl合金材と呼ぶことがある)は、
Feを1.2原子%以上6.5原子%以下含有し、
Nd、W及びScからなる群より選択される1種以上の第一元素を0.005原子%以上0.15原子%未満含有し、
C(炭素)及びB(硼素)からなる群より選択される1種以上の第二元素を0.005原子%以上2原子%未満含有し、
残部がAl及び不可避不純物である。
第二のAl合金材は、上述の第一のAl合金材と同様の理由により、耐熱性に優れる。また、第二のAl合金材は、上述の第一のAl合金材と同様の理由により、製造性、リサイクル時の作業性にも優れる。
特に、第二のAl合金材は、以下に説明するように、第二元素を含有することによって耐熱性により優れる。第二元素は、母相に固溶することで、固溶強化による強度の向上効果を与えると考えられる。又は、第二元素は、化合物粒子の周囲に、非常に微細な炭化物や硼化物として存在して、化合物粒子の成長を抑制すると考えられる。そのため、上述の高温になっても、粗大な化合物粒子による脆化や結晶の成長がより抑制され易い。その結果、上述の微細な組織がより一層維持され易く、第二のAl合金材の耐熱性が高められる。
(8)第二のAl合金材の一例は、上記第二のAl合金材において、
Alを99原子%以上含む母相と、前記母相の中に存在し、AlとFeとを含む化合物からなる粒子(化合物粒子)とを含む組織を備え、
上記第二のAl合金材の任意の断面において、前記母相をなす結晶粒の平均粒径が1500nm以下であり、前記化合物粒子の平均長さが60nm以下であるAl合金材である。
上記形態における結晶粒及び化合物粒子は、上述した(2)の第一のAl合金材に比較して、より微細である。従って、上記形態は、微細な化合物粒子による上述の効果(分散強化、結晶の成長の抑制、割れの発生の低減、脆化の抑制等)と、微細な結晶粒による粒界強化とをより得易いため、耐熱性により優れる。
(9)上記(8)の第二のAl合金材の一例として、
前記断面において、一辺の長さが500nmである正方形の領域の面積を単位面積とするとき、前記単位面積あたりに存在する前記化合物粒子の平均個数が40個以上530個以下である形態が挙げられる。
上記形態は、上述の(3)の形態に比較して、より微細な化合物粒子をより多く含むといえる。このような形態は、微細な化合物粒子による上述の効果(分散強化、結晶の成長の抑制、割れの発生の低減、脆化の抑制等)をより得易いため、耐熱性により優れる。
(10)上記(8)又は上記(9)の第二のAl合金材の一例として、
前記化合物粒子のアスペクト比が2.0以下である形態が挙げられる。
化合物粒子のアスペクト比が2.0以下であれば、上述の(4)の形態に比較して、化合物粒子が球形により近い形状であるといえる。そのため、上記形態は、微細な化合物粒子による上述の効果(分散強化、結晶の成長の抑制、割れの発生の低減、脆化の抑制等)を更に得易い。従って、上記形態は、耐熱性に更に優れる。
(11)第一のAl合金材又は第二のAl合金材の一例として、
25℃におけるビッカース硬さが93Hv以上であり、
25℃から250℃までのビッカース硬さの低下に関する温度係数が0.25%/℃以下である形態が挙げられる。
上記形態は、上述の(5)の形態に比較して、室温においてより高硬度である。また、上記形態は、250℃のような高温になってもビッカース硬さがより低下し難い点で、耐熱性により優れる。
(12)第一のAl合金材又は第二のAl合金材の一例として、
25℃における破断伸びが5%以上である形態が挙げられる。
上記形態は、上述の(6)の形態に比較して、室温においてより高靭性である。このような形態は、曲げ等をより行い易く、冷間加工性により優れる。
(13)第一のAl合金材又は第二のAl合金材の一例として、
25℃から250℃までの引張強さの低下率が0.28%/℃未満である形態が挙げられる。
上記形態は、250℃のような高温になっても引張強さが低下し難い点で、耐熱性に優れる。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施の形態を詳細に説明する。
<アルミニウム合金材>
(1)概要
実施形態のアルミニウム合金材(Al合金材)は、Al(アルミニウム)を主体とするAl基合金からなる成形体である。このAl基合金は、Fe(鉄)を比較的多く含むと共に、以下の第一元素、又は第一元素及び第二元素の双方を含む。
具体的には、実施形態1のAl合金材は、Fe(鉄)を1.2原子%以上6.5原子%以下、第一元素を0.005原子%以上0.15原子%未満含有し、残部がAl(アルミニウム)及び不可避不純物からなる組成を備える。第一元素は、Nd(ネオジム)、W(タングステン)及びSc(スカンジウム)からなる群より選択される1種以上の金属元素である。
実施形態2のAl合金材は、Feを1.2原子%以上6.5原子%以下、上述の第一元素を0.005原子%以上0.15原子%未満、第二元素を0.005原子%以上2原子%未満含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を備える。第二元素は、C(炭素)及びB(硼素)からなる群より選択される1種以上の非金属元素である。
例えば、上述のAl基合金中のFeは、主として微細な析出物として母相に分散して存在している。また、例えば、上述のAl基合金をなす母相は、微細な結晶からなる。
上述の特定のAl基合金からなる実施形態のAl合金材は、室温(例、25℃)において高い引張強さ及び/又はビッカース硬さを有する等、強度に優れるだけでなく、高温(例、250℃)でも高い引張強さ及び/又は高いビッカース硬さを有し易く、耐熱性に優れる。
以下、より詳細に説明する。
(2)組成
(2−1)Fe
Feは、以下の条件(I)、(II)を満たす。
(I)Alに対する固溶量(平衡状態)であって、660℃、1気圧という条件における固溶量が0.5質量%以下である。
(II)Feは、Alと化合物を形成する。AlとFeとの二元の金属間化合物のうち、Feの元素比率が最も低い化合物(例、Al13Fe)の融点が1100℃以上である。
例えば、後述するように製造過程で、Feを上述の特定の範囲で含むAl基合金の溶湯を急冷すれば、FeはAlに固溶する。しかし、上述の(I)、(II)によって、Feを固溶するAl基合金がFeを析出可能な温度に加熱されれば、固溶していたFeは、上述の化合物となって母相に析出する。析出されたFeを含む化合物粒子は、母相中に分散される。実施形態のAl合金材では、この化合物粒子による分散強化(析出強化)を合金の強化構造の一つとして利用することができる。
Feの含有量は、1.2原子%以上6.5原子%以下である。Feの含有量が1.2原子%以上であれば、化合物粒子の量が多くなり易い。そのため、化合物粒子の分散強化による強度の向上効果が良好に得られる。このような実施形態のAl合金材は、Feの含有量が1.2原子%未満であり、Feが主として固溶されている場合に比較して、室温での強度及び硬度に優れる上に、耐熱性にも優れる。Feの含有量が多いほど、室温での強度及び硬度、並びに耐熱性が高くなり易い。耐熱性の向上等の観点から、Feの含有量は、好ましくは1.4原子%以上、より好ましくは1.5原子%以上、更に好ましくは2.0原子%以上、なお更に好ましくは2.5原子%以上、特に好ましくは3.0原子%以上である。
Feの含有量が6.5原子%以下であれば、化合物粒子が粗大になり難く、微細になり易い。そのため、微細な化合物粒子の分散強化による強度の向上効果が得られ易い。また、微細な化合物粒子は、結晶の成長を抑制し易い。結晶粒が微細であれば、粒界強化による強度の向上効果が得られ易い。更に、微細な化合物粒子は、割れの起点になり難い。加えて、化合物粒子が微細であれば、高温になっても粗大になり難い。そのため、粗大な化合物粒子によるAl基合金の脆化が抑制され易い。これらのことから、室温での強度及び硬度に優れ、高温になっても、高い引張強さ及び/又は高いビッカース硬さを有し易い。加えて、割れの発生の低減によって、伸びが高くなり易い。また、Feの含有量がある程度少なければ、Al合金材を製造し易い。製造過程で、成形性に優れる素材が得られ易いからである。Feの含有量が少ないほど、化合物粒子が粗大になり難い。化合物粒子が微細であることで、ひいてはAl合金材が耐熱性に優れる。良好な耐熱性等を得る観点から、Feの含有量は、好ましくは6.2原子%以下、より好ましくは6.0原子%以下、更に好ましくは5.5原子%以下、なお更に好ましくは5.0原子%以下、特に好ましくは4.5原子%以下である。
Feの融点は、Alの融点よりも高い。そのため、両者を容易に分離することができる。この点で、実施形態のAl合金材は、リサイクル性に優れる。
(2−2)第一元素
Al合金材が第一元素を0.005原子%以上0.15原子%未満の範囲で含む場合、例えば、第一元素は、主として、上述の化合物粒子に含まれると考えられる。この場合、第一元素は、微細な析出核を発生させることを促進すると考えられる。そのため、AlとFeとを含む化合物が微細に析出され易い。また、第一元素は、上記化合物を安定化させる作用を有すると考えられる。安定化のメカニズムの詳細は不明であるが、上記化合物が熱力学的に安定になることは、状態図の計算から示される。安定化の作用によって、高温、例えば200℃以上、更に250℃になっても、化合物粒子は、粗大になり難く、微細な状態を維持し易い。その結果、上記高温であっても、上述のように分散強化による強度の向上効果、粒界強化による強度の向上効果、脆化の抑制等の効果が得られ易い。そのため、Feと共に第一元素を特定の範囲で含む実施形態のAl合金材は、室温での強度及び硬度は勿論、耐熱性にも優れる。
第一元素の含有量が0.005原子%以上であれば、化合物粒子が安定し、成長し難い。第一元素の含有量が多いほど、化合物粒子が成長し難く、結果として耐熱性が高められる。耐熱性の向上等の観点から、第一元素の含有量は、好ましくは0.006原子%以上、より好ましくは0.008原子%以上、更に好ましくは0.010原子%以上、なお更に好ましくは0.015原子%以上である。
第一元素の含有量が0.15原子%未満であれば、Al合金材は、強度及び硬度に優れつつ、伸びも高い。靭性の向上等の観点から、第一元素の含有量は、好ましくは0.14原子%以下、より好ましくは0.12原子%以下、更に好ましくは0.10原子%以下、なお更に好ましくは0.08原子%以下である。
実施形態のAl合金材は、第一元素としてNd、W、Scのうち、1種の元素のみを含んでもよいし、2種の元素又は3種の元素を含んでもよい。2種の元素又は3種の元素を含む場合、上述の第一元素の含有量は、合計量とする。
第一元素のうち、上述の安定化の効果はSc、Nd、Wの順に得易いと考えられる。また、第一元素としてNd及び/又はScを含む場合は、Al合金材の製造性にも優れる。Ndの融点はFeの融点よりも低い。Scの融点はFeの融点に近い。そのため、製造過程で溶湯が得られ易いからである。Nd又はScとAlとの共晶温度が低い点も製造上、有利である。
なお、実施形態のAl合金材において、第一元素の一部が、Alを含み、Feを含まない化合物、代表的には第一元素とAlとの金属間化合物として存在していてもよい。第一元素とAlとの金属間化合物としては、例えば、AlNd、AlSc、AlWが挙げられる。これら金属間化合物の融点は1100℃超である。この金属間化合物は、上述のAlとFeとを含む二元の金属間化合物に比較して、析出物として、より安定して存在し易い。上記析出物によって、析出強化による強度の向上効果を期待できる。この析出強化による効果は、W、Nd、Scの順に得易いと考えられる。
(2−3)第二元素
第二元素を含む実施形態2のAl合金材は、第二元素を含まない実施形態1のAl合金材に比較して、以下の理由により、室温での強度及び硬度、並びに耐熱性により優れる傾向にある。
Al合金材が第二元素を0.005原子%以上2原子%未満の範囲で含む場合、第二元素は、主として、化合物粒子の周囲に極めて微細な炭化物や硼化物として存在するか、又は母相に固溶すると考えられる。上記炭化物や硼化物は、化合物粒子中のFeの拡散を抑制して、化合物粒子が粗大になること、特に針状に成長することを抑制し易いと考えられる。化合物粒子が微細であれば、上述のように分散強化、結晶の成長の抑制、ひいては粒界強化、粗大な化合物粒子に起因する割れの発生の低減、脆化の抑制等の効果が得られ易い。第二元素が母相に固溶されている場合には、固溶強化による強度の向上効果が得られると考えられる。
第二元素の含有量が0.005原子%以上であれば、上述の化合物粒子が微細であることの効果がより得られ易い。第二元素の含有量が多いほど、上記効果が得られ易い。そのため、耐熱性が高くなり易い。また、第二元素の含有量が多いほど、靭性の低下が抑制され易い。耐熱性の更なる向上の観点、及び良好な靭性等を得る観点から、第二元素の含有量は、好ましくは0.008原子%以上、より好ましくは0.010原子%以上、更に好ましくは0.050原子%以上である。
第二元素の含有量が2原子%未満であれば、Al合金材は、強度及び硬度に優れつつ、伸びも高い。靭性の更なる向上等の観点から、第二元素の含有量は、好ましくは1.5原子%以下、より好ましくは1.2原子%以下、更に好ましくは1.0原子%以下、なお更に好ましくは0.5原子%以下である。実施形態2のAl合金材は、第一元素に加えて第二元素を含むものの、第二元素の含有量が2原子%未満である。そのため、実施形態2のAl合金材は、特許文献2に記載されるアルミニウム合金に比較して、添加元素の含有量が少ないものの、耐熱性に優れる。
実施形態のAl合金材は、第二元素としてC及びBのうち、1種の元素のみを含んでもよいし、2種の元素を含んでもよい。2種の元素を含む場合、上述の第二元素の含有量は、合計量とする。
第二元素としてCを含む場合には、Bを含む場合よりも、靭性の改善効果が高い傾向がある。第二元素としてBを含む場合は、Cを含む場合よりも、耐熱性に優れる傾向にある。C及びBの双方を含むことで、耐熱性と靭性とのバランスを調整できると期待される。
第二元素、及び上述の第一元素は、Al及びFeと、融点、及び、酸等に対する反応性等が異なる。従って、Al及びFeと、第一元素と、第二元素とは分離し易い。この点で、実施形態のAl合金材は、リサイクル性に優れる。
(2−4)その他
ここでのFeの含有量、第一元素の含有量、第二元素の含有量は、Al合金材をなすAl基合金を100原子%とするときの原子比率である。また、上記含有量は、上記Al基合金に含まれる量をいう。製造過程において、原料(代表的にはアルミニウム地金)が不純物としてFe、第一元素、第二元素を含む場合、これらFe等の元素の含有量が上述の範囲を満たすように、原料に対するFe等の元素の添加量を調整するとよい。
以下、断りが無い限り、第一元素を含み、第二元素を含まない実施形態1のAl合金材と、第一元素及び第二元素の含む実施形態2のAl合金材とについて、共通に説明する。
(3)組織
実施形態のAl合金材は、例えば、Alを99原子%以上含む母相と、AlとFeとを含む化合物からなる粒子(化合物粒子)とを含む組織を備える。化合物粒子は、母相の中に存在する。そして、実施形態1のAl合金材では、Al合金材の任意の断面において、母相をなす結晶粒の平均粒径が1700nm以下である。また、上記断面において、化合物粒子の平均長さが140nm以下である。実施形態2のAl合金材では、Al合金材の任意の断面において、母相をなす結晶粒の平均粒径が1500nm以下である。また、上記断面において、化合物粒子の平均長さが60nm以下である。
(3−1)母相
実施形態のAl合金材において、母相は、AlとFeとを含む化合物等の析出物を除く主たる相である。母相を100原子%として、母相におけるAlの含有量が99原子%以上であれば、Feの固溶量が少ないといえる。また、母相におけるAlの含有量が99原子%以上であれば、Al合金材中のFeは、実質的に析出物として存在するといえる。このようなAl合金材は、化合物粒子の分散強化による強度の向上効果を良好に得られ、耐熱性に優れる。また、このようなAl合金材においては、室温での強度及び硬度も高められる。上記Alの含有量が多いほど、Feの固溶量が少なく、耐熱性が高められる。耐熱性の更なる向上等の観点から、上記Alの含有量は、好ましくは99.2原子%以上、より好ましくは99.5原子%以上である。上記Alの含有量が所定の範囲となるように、Fe等の添加元素の量や製造条件等を調整するとよい。
(3−2)結晶粒
Al合金材の任意の断面において、母相の結晶粒の平均粒径が1700nm以下であれば、結晶が小さいといえる。結晶粒が小さいことは、結晶粒界が多いことを意味する。結晶粒界が多いと、すべり面が結晶粒界を介して不連続になり易い。そのため、すべりに対する抵抗が高められる。この抵抗の向上によって、粒界が強化される。このように母相が微細な結晶組織からなるAl合金材では、粒界強化を合金の強化構造の一つとして利用することができる。
ここでの母相の結晶粒の平均粒径とは、上述の断面において、結晶粒の断面積と等価の面積を有する円の直径を結晶粒の粒径とし、複数の結晶粒の粒径を平均したものである。測定方法の詳細は、試験例1で説明する。
母相の結晶粒の平均粒径が小さいほど、粒界強化による強度の向上効果が得られ易い。また、結晶粒が小さいほど、微細な化合物粒子が母相に均一的に分散し易い。そのため、微細な化合物粒子の分散強化による強度の向上効果も得られ易い。これらの強度の向上効果によって、Al合金材の耐熱性が高められる。これらの強度の向上効果によって、Al合金材の室温での強度及び硬度も高められる。耐熱性の向上等の観点から、上記平均粒径は、好ましくは1600nm以下、より好ましくは1500nm以下、更に好ましくは1450nm以下である。
第一元素及び第二元素を含む実施形態2のAl合金材において、母相の結晶粒の平均粒径が1500nm以下であれば、粒界強化による強度の向上効果がより得られ易く、ひいてはAl合金材の耐熱性がより高められる。上記平均粒径は、好ましくは1450nm以下、より好ましくは1400nm以下、更に好ましくは1350nm以下、なお更に好ましくは1300nm以下である。特に、上記平均粒径が1250nm以下、更に1200nm以下、1000nm以下、900nm以下又は800nm以下であれば、Al合金材の耐熱性がさらに高められる。
母相の結晶粒の平均粒径における下限は特に制限されない。製造性等を考慮すると、上記平均粒径は、例えば200nm以上であり、好ましくは250nm以上、より好ましくは300nm以上である。
(3−3)化合物粒子
(3−3−1)化合物粒子の大きさ
Al合金材の任意の断面において、化合物粒子の平均長さが140nm以下であれば、化合物粒子は、母相中に連続しておらず、短い(小さい)といえる。微細な化合物粒子は、母相に孤立して存在し易い、即ち分散して存在し易い。微細な化合物粒子による分散強化によって、Al合金材の強度及び硬度が高められる。
ここでの化合物粒子の平均長さとは、上述の断面において、各化合物粒子の最大長さを平均して求めた平均値とする。測定方法の詳細は、試験例1で説明する。
化合物粒子の平均長さが短いほど、分散強化による強度の向上効果が得られ易い。また、化合物粒子が微細であれば、上述のように結晶の成長の抑制ひいては粒界強化による強度の向上効果、割れの発生の低減、脆化の抑制等の効果が得られ易い。そのため、Al合金材の耐熱性が高められる。また、化合物粒子が微細であれば、Al合金材の室温での強度及び硬度も高められる。耐熱性の向上等の観点から、上記平均長さは、好ましくは120nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは80nm以下である。上記平均長さが50nm以下であれば、Al合金材の耐熱性がより高められる。
第一元素及び第二元素を含む実施形態2のAl合金材において、化合物粒子の平均長さが60nm以下であれば、分散強化による強度の向上効果がより得られ易く、ひいてはAl合金材の耐熱性がより高められる。上記平均長さが55nm以下、更に50nm以下、45nm以下又は40nm以下であれば、Al合金材の耐熱性が更に高められる。
化合物粒子の平均長さの下限は特に制限されない。製造性等を考慮すると、上記平均長さは例えば、10nm以上であり、好ましくは15nm以上である。
(3−3−2)化合物粒子の存在量
上述の微細な化合物粒子が適切量存在することで、上述の分散強化、結晶の成長の抑制、割れの発生の低減、脆化の抑制等の効果が得られ易い。第一の元素を含み、第二の元素を含まない実施形態1のAl合金材では、化合物粒子の平均個数は例えば10個以上220個以下である。第一の元素及び第二の元素を含む実施形態2のAl合金材では、上述のように化合物粒子がより微細であるため、化合物粒子がより多く存在し易い。例えば、実施形態2のAl合金材では、化合物粒子の平均個数は40個以上530個以下である。
ここでの化合物粒子の平均個数は、次のように定義される。Al合金材の任意の断面において、一辺の長さが500nmである正方形の領域を単位面積とする。この単位面積あたりに存在する化合物粒子の個数を平均した値を上記単位面積あたりの化合物粒子の平均個数とする。測定方法の詳細は、試験例1で説明する。
単位面積あたりの化合物粒子の平均個数が10個以上であれば、微細な化合物粒子による効果(分散強化、結晶の成長の抑制、割れの発生の低減、脆化の抑制等)が得られ易い。そのため、Al合金材の耐熱性が高められる。上記平均個数が多いほど、耐熱性が向上し易い。耐熱性の向上等の観点から、上記平均個数は、好ましくは12個以上、より好ましくは15個以上である。上記平均個数が20個以上、更に25個以上であれば、Al合金材の耐熱性がより高められる。
第一の元素及び第二の元素を含む実施形態2のAl合金材において、単位面積あたりの化合物粒子の平均個数が40個以上であれば、上述の微細な化合物粒子による効果がより得られ易く、ひいてはAl合金材の耐熱性がより高められる。上記平均個数が45個以上、更に60個以上であれば、Al合金材の耐熱性が更に高められる。
単位面積あたりの化合物粒子の平均個数が多いほど、Al合金材の耐熱性に優れる傾向にある。但し、単位面積あたりの化合物粒子の平均個数が多いほど、Al合金材の伸びが低下し易い。第一の元素を含み、第二の元素を含まない実施形態1のAl合金材では、上記平均個数が220個以下であれば、耐熱性に優れつつ、伸びも高い。靭性の向上等の観点から、上記平均個数は、好ましくは200個以下、より好ましくは180個以下である。上記平均個数が100個以下であれば、Al合金材の伸びをより高めることができる。
第一の元素及び第二の元素を含む実施形態2のAl合金材では、単位面積あたりの化合物粒子の平均個数が530個以下であれば、耐熱性に優れつつ、伸びも高い。靭性の向上等の観点から、上記平均個数は、好ましくは400個以下、より好ましくは350個以下、更に好ましくは300個以下である。上記平均個数が200個以下であれば、Al合金材の伸びをより高めることができる。
なお、Al合金材の任意の断面において、単位面積あたりの化合物粒子の平均個数が上述の範囲を満たせば、化合物粒子の存在量の異方性が小さい又は実質的に無いといえる。即ち、化合物粒子が均一的に分散している。
(3−3−3)化合物粒子の形状
化合物粒子の形状は、針状のような非常に細長い形状よりも、長軸長さと短軸長さとの差が小さい楕円状、更には球状に近いほど好ましい。化合物粒子が母相に均一的に分散し易いからである。また、化合物粒子が割れの起点になり難いからである。例えば、化合物粒子のアスペクト比は、3.5以下である。第一の元素及び第二の元素を含む実施形態2のAl合金材では、上述のように化合物粒子が粗大(針状)になり難い。そのため、化合物粒子のアスペクト比は、例えば2.0以下である。
ここでのアスペクト比とは、以下の短軸長さに対する長軸長さの比(長軸長さ/短軸長さ)とする。長軸長さは、上述の化合物粒子の最大長さとする。短軸長さは、化合物粒子について、長軸方向に直交する方向の長さを求め、この長さのうち、最大の長さとする。測定方法の詳細は、試験例1で説明する。
化合物粒子のアスペクト比が3.5以下であれば、化合物粒子が均一的に分散し易い上に、割れの起点にもなり難い。そのため、Al合金材の室温での強度及び伸びの双方が高められる上に、耐熱性も高められ易い。上記アスペクト比が1に近いほど、形状の異方性が小さい又は実質的に無いといえる。このような化合物粒子は、母相に均一的に分散し易い。その結果、Al合金材の耐熱性等が向上し易い。耐熱性の向上等の観点から、上記アスペクト比は、好ましくは3.3以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.8以下である。
第一の元素及び第二の元素を含む実施形態2のAl合金材において、化合物粒子のアスペクト比が2.0以下であれば、Al合金材の室温での強度及び硬度、並びに伸びがより高められる上に、耐熱性も高められる。耐熱性の向上等の観点から、上記アスペクト比は、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.7以下である。
(4)Al合金材の相対密度
実施形態のAl合金材は、例えば90%以上の相対密度を有することができる。このような緻密なAl合金材は、割れの起点になり得る空孔が少ない。これにより、Al合金材の室温での強度及び靭性が高められる上に、耐熱性も高められる。耐熱性の向上等の観点から、上記相対密度は、好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上、更に好ましくは95%以上である。相対密度の上限は100%である。相対密度が100%であれば、真密度を有するAl合金材である。相対密度の測定方法の詳細は、試験例1で説明する。
(5)Al合金材の機械的特性
(5−1)引張強さ
実施形態のAl合金材は、例えば、25℃における引張強さが250MPa以上である。第一元素及び第二元素を含む実施形態2のAl合金材は、より高い引張強さを有し易い。例えば、実施形態2のAl合金材では、25℃における引張強さが270MPa以上である。室温での引張強さが高ければ、高温、例えば250℃において引張強さが低下しても、Al合金材は、ある程度高い引張強さを有し易い。このようなAl合金材は、室温での強度に優れる上に、耐熱性にも優れる。
25℃における引張強さが280MPa以上、更に300MPa以上であると、Al合金材は、室温での強度、耐熱性により優れる。
25℃における引張強さが例えば550MPa以下、更に500MPa以下であると、Al合金材は、伸びが低下し難く、伸びにも優れる。
(5−2)ビッカース硬さ
実施形態のAl合金材は、例えば、25℃におけるビッカース硬さが85Hv以上である。上記ビッカース硬さが85Hv以上であれば、室温での硬度が高いことで、室温での強度も高くなり易い。また、室温でのビッカース硬さが高いことで、高温、例えば250℃においてビッカース硬さが低下しても、Al合金材はある程度高いビッカース硬さを有し易い。そのため、Al合金材は、強度もある程度高くなり易い。このようなAl合金材は、耐熱性にも優れる。第一元素及び第二元素を含む実施形態2のAl合金材は、より高いビッカース硬さを有し易い。例えば、実施形態2のAl合金材では、25℃におけるビッカース硬さが93Hv以上であることができる。
第一元素を含み、第二元素を含まない実施形態1のAl合金材は、上記ビッカース硬さが86Hv以上、更に88Hv以上であれば、室温での硬度及び強度、並びに耐熱性により優れる。
25℃におけるビッカース硬さが95Hv以上、更に100Hv以上であると、Al合金材は、室温での硬度及び強度、並びに耐熱性に更に優れる。
25℃におけるビッカース硬さが例えば165Hv未満、更に162Hv以下、150Hv以下であると、Al合金材は、伸びが低下し難く、伸びにも優れる。
(5−3)破断伸び
実施形態のAl合金材において、上述のようにFeが析出している場合、母相が延性的な挙動を示し易い。また、実施形態のAl合金材において、上述のようにFeが析出している場合、微細な化合物粒子が割れの起点になり難い。従って、実施形態のAl合金材は、高い伸びを有し易い。
実施形態のAl合金材は、例えば、25℃における破断伸びが3%以上である。上記破断伸びが3%以上であれば、Al合金材は、室温での靭性に優れる。室温での強度及び靭性に優れる実施形態のAl合金材は、冷間での塑性加工性に優れる。このようなAl合金材は、例えば、冷間加工用の素材として利用できる。第一元素及び第二元素を含む実施形態2のAl合金材は、上述のように第二元素によって、化合物粒子がより微細になり易く、個数が多くなり易い。そのため、実施形態2のAl合金材においては、分散強化、粒界強化による強度の向上効果によって強度及び硬度を高めつつ、各化合物粒子が割れの起点になり難く、良好な伸びも得易い。従って、実施形態2のAl合金材は、より高い破断伸びを有し易い。例えば、実施形態2のAl合金材では、25℃における破断伸びが5%以上である。
第一元素を含み、第二元素を含まない実施形態1のAl合金材では、上記破断伸びが3.5%以上、更に4.0%以上、4.5%以上又は5.0%以上であると、靭性により優れる。
25℃における破断伸びが5.5%以上、更に6.0%以上又は6.5%以上であれば、Al合金材は、靭性に更に優れる。
25℃における破断伸びは例えば30%以下、更に25%以下であると、Al合金材の引張強さ及びビッカース硬さが低下し難く、室温での強度及び硬度、並びに耐熱性が高く維持され易い。
(5−4)耐熱性
(5−4−1)引張強さの低下率
実施形態のAl合金材は、耐熱性に優れており、高温、例えば250℃になっても、引張強さが低下し難い。定量的には、25℃から250℃までの引張強さの低下率KTSが、例えば0.28%/℃未満である。上記低下率KTS(%/℃)は、以下の式から求められる値である。
低下率KTS=[(T−T)/{(250−25)×T}]×100
は、25℃における引張強さ(MPa)である。Tは、250℃における引張強さ(MPa)である。
上記低下率KTSが0.28%/℃未満であれば、250℃になっても、引張強さの低下量が少なく、Al合金材は、高い引張強さを有し易い。このようなAl合金材は耐熱性に優れる。上記低下率KTSが0.27%/℃以下、更に0.26%/℃以下又は0.25%/℃以下であれば、引張強さの低下量がより少なく、Al合金材は、耐熱性により優れる。
第一元素及び第二元素を含む実施形態2のAl合金材では、上述のように室温での引張強さが高い傾向にある。そのため、上記低下率KTSが小さいほど、高い引張強さを有し易く、耐熱性により優れて好ましい。例えば、上記低下率KTSは、0.24%/℃以下、好ましくは0.23%/℃以下である。
(5−4−2)ビッカース硬さの温度係数
実施形態のAl合金材は、耐熱性に優れており、高温、例えば250℃になっても、ビッカース硬さが低下し難い。定量的には、25℃から250℃までのビッカース硬さの低下に関する温度係数KHvが、例えば0.30%/℃以下である。上記温度係数KHv(%/℃)は、以下の式から求められる値である。
温度係数KHv=[(H−H)/{(250−25)×H}]×100
は、25℃におけるビッカース硬さ(Hv)である。Hは、250℃におけるビッカース硬さ(Hv)である。
上記温度係数KHvが0.30%/℃以下であれば、250℃になっても、ビッカース硬さの低下量が少なく、Al合金材は、高いビッカース硬さを有し易い。このようなAl合金材は耐熱性に優れる。上記温度係数KHvが0.29%/℃以下、更に0.28%/℃以下又は0.27%/℃以下であれば、ビッカース硬さの低下量が少なく、Al合金材は、耐熱性により優れる。Al合金材は、25℃におけるビッカース硬さが85Hv以上であり、かつ上記温度係数KHvが0.30%/℃以下であると、より好ましい。
第一元素及び第二元素を含む実施形態2のAl合金材では、上述のように室温でのビッカース硬さが高い傾向にある。そのため、上記温度係数KHvが小さいほど、Al合金材は、高いビッカース硬さを有し易く、耐熱性により優れて好ましい。実施形態2のAl合金材において、上記温度係数KHvは、例えば0.25%/℃以下である。上記温度係数KHvが0.24%/℃以下、更に0.23%/℃以下であると、Al合金材は、耐熱性に更に優れて好ましい。実施形態2のAl合金材は、25℃におけるビッカース硬さが93Hv以上であり、かつ上記温度係数が0.25%/℃以下であると、より好ましい。
上述の結晶粒の平均粒径、化合物粒子の平均長さ、平均個数、Al合金材の引張強さ、ビッカース硬さ、破断伸びは、例えば、Feの含有量、第一元素の含有量、第二元素の含有量、相対密度、製造条件等を調整することで変更できる。例えば、Feが上述の範囲で多い場合、上述の平均粒径、平均長さ、平均個数が大きくなる傾向にある。Feが上述の範囲で少ない場合、上記とは逆の傾向にある。又は、Feが上述の範囲で多い場合、引張強さ、ビッカース硬さが高くなる傾向にある。Feが上述の範囲で少ない場合、破断伸びが高くなる傾向にある。
(6)Al合金材の利用形態
実施形態のAl合金材は、成形型の形状や、成形後に切削加工や塑性加工が施されることで、種々の形状、大きさをとり得る。例えば、実施形態のAl合金材としては、棒材や線材、板材に代表される中実体、貫通孔を有する筒体等が挙げられる。実施形態のAl合金材は、耐熱性に優れることから、使用環境が高温(例、200℃〜250℃)となり得る製品として利用できる。実施形態のAl合金材は、上述のように室温での機械的特性に優れることから、室温で使用される製品として利用できる。又は、実施形態のAl合金材は、上述のように塑性加工性に優れることから、鍛造や押出、伸線、圧延等の塑性加工に供される素材として利用できる。上記素材とする場合、形状の自由度が高く、種々の形状の製品を製造し易い。この点で、実施形態のAl合金材は、製造性にも優れる。
(7)主な効果
実施形態のAl合金材は、耐熱性に優れる。また、実施形態のAl合金材は、室温での強度及び硬度、並びに靭性にも優れる。この効果を後述の試験例1で具体的に説明する。
<Al合金材の製造方法>
(1)概要
実施形態のAl合金材は、例えば、以下の工程を備える製造方法によって製造することができる。
〔第一の工程〕以下の第一の組成のAl基合金、又は第二の組成のAl基合金からなる溶湯を急冷して、粉末状の素材又は薄片状の素材を製造する。
・第一の組成:Feを1.2原子%以上6.5原子%以下、上述の第一元素を0.005原子%以上0.15原子%未満含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる。
・第二の組成:Feを1.2原子%以上6.5原子%以下、上述の第一元素を0.005原子%以上0.15原子%未満、上述の第二元素を0.005原子%以上2原子%未満含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる。
〔第二の工程〕上記素材を用いて、AlとFeとを含む化合物が析出しない温度以下の条件で、相対密度が85%以上である中間素材を作製する。
〔第三の工程〕上記中間素材を用いて、上記化合物が析出する温度以上の条件で、所定の形状の成形体を作製する。
Feと共に第一元素を含む上記溶湯を急冷することで、Feが固溶され、AlとFeとを含む化合物が実質的に析出していない凝固材、又は上記化合物が析出していても、上記化合物が粗大ではなく、微細である凝固材が得られる。また、急冷であるため、結晶粒も微細である。このような素材は、成形性に優れるため、緻密な中間素材を良好に作製することができる。また、中間素材を成形する際には、析出した上記化合物や結晶粒が微細な状態に維持され易い。その結果、後工程でも、化合物及び結晶粒が微細になり易い。更に、所定の形状に成形体を作製する際には、所定の形状に良好に成形できつつ、微細な化合物粒子をより確実に析出させることができる。微細な化合物粒子によって、結晶の成長も抑制することができる。これらのことから、微細な結晶組織に、上記化合物からなる微細な粒子が分散して存在するAl合金材、代表的には実施形態1又は実施形態2のAl合金材を製造することができる。また、成形性に優れる素材を用いる点、工程が少ない点等から、上記の製造方法は、上述の微細組織を有するAl合金材、代表的には実施形態1又は実施形態2のAl合金材を生産性よく製造できる。
以下、工程ごとに説明する。
(2)第一の工程:素材の作製
(2−1)概要
この工程では、上述のAl基合金からなる溶湯を急冷することで、代表的には、AlとFeとを含む化合物(例、Al13Fe型、AlFe型)が実質的に析出しておらず、FeがAlに実質的に固溶した素材(例、過飽和固溶体)が得られる。又は、上記化合物からなる微細な粒子が析出した素材が得られる。ここで、従来の連続鋳造法における溶湯の凝固速度は、固定鋳型を利用する場合よりも速いものの、1000℃/秒以下である。実用速度は更に遅い。Feを1.2原子%以上、更には1.4原子%以上含む溶湯の凝固速度を1000℃/秒以下とすれば、鋳造材中に上記化合物が粗大な粒子として析出する。例えば、上述の平均長さが1000nm以上であるような粗大な化合物粒子が生じ得る。このような粗大な化合物粒子は、割れの起点になり易い。また、結晶粒も大きくなり易い。例えば、上述の平均粒径が2000nm以上、更に3000nm以上になり得る。粗大な化合物粒子が存在する上に、結晶粒が大きいことから、得られた鋳造材は成形性に劣る。実施形態では、Feが1.2原子%以上と比較的多いことを鑑みて、溶湯の凝固速度は、上述の従来の連続鋳造法における凝固速度よりも速くする。特に、上記凝固速度(冷却速度)は1×10℃/秒(100,000℃/秒)以上が好ましい。
(2−2)原料
素材の原料となるAl基合金には、例えば、上述の第一の組成からなる母合金、又は第二の組成からなる母合金が用いられる。母合金の原料は、純アルミニウム粉、純鉄粉、Alと第一元素とを含むAl系合金粉、第一元素及び第二元素との少なくとも一方の元素とFeとを含むFe系合金粉、ダイヤモンド粉等が挙げられる。Al系合金粉やFe系合金粉としては、第一元素及び/又は第二元素を高濃度に含む合金からなるものが挙げられる。このようなAl系合金粉及び/又はFe系合金粉を用いる場合、第一元素の含有量及び第二元素の含有量が所定の範囲となるように、純アルミニウム粉等を添加するとよい。
Al系合金としては、例えば、Ndを含むAlNd合金、Wを含むAlW合金、又はScを含むAlSc合金が挙げられる。
Al系合金における第一元素の含有量は、例えば、融点が1000℃以下である共晶合金の組成比、又は上記組成比に近い組成比、又は上記共晶合金の組成比よりも第一元素の含有量が少ない組成比であることができる(残部は、Al及び不可避不純物である)。
Fe系合金としては、例えば、Ndを含むNdFe合金(共晶合金)、NdとCとを含むNdFeC合金(例、NdFe等)、NdとBとを含むNdFeB合金、Cを含むFeC合金が挙げられる。NdFe合金におけるNdの含有量は、例えば20原子%以上25原子%以下である(残部は、Al及び不可避不純物である)。Fe系合金の融点が低いほど、製造性の点等で好ましい。
NdFeC合金におけるNdの含有量は、例えば10原子%以上15原子%以下、Cの含有量は、例えば0.5原子%以上1.5原子%以下である(残部は、Al及び不可避不純物である)。
FeC合金におけるCの含有量は、例えば15原子%以上20原子%以下である(残部は、Al及び不可避不純物である)。
ダイヤモンド粉末の平均粒径は、例えば5μm以下である。
(2−3)素材の形状
上記素材は、粉末状又は薄帯状とする。粉末径が小さい、又は厚さが薄いことで、1×10℃/秒以上という凝固速度を達成し易いからである。また、素材が、粉末状、薄帯状、又は薄帯を短く砕いた粉末状や薄片状であれば、成形性に優れる。そのため、緻密な中間素材が成形され易い。
(2−4)素材の大きさ
上述の薄帯又は薄片の厚さは、例えば1μm以上100μm以下であり、更に50μm以下又は40μm以下であってもよい。アトマイズ粉の直径は、例えば5μm以上200μm以下であり、更に100μm以下又は20μm以下であってもよい。
(2−5)素材の製造方法
薄帯状の素材を製造する方法として、いわゆる液体急冷凝固法が挙げられる。液体急冷凝固法の一例として、メルトスパン法が挙げられる。粉末状の素材を製造する方法として、アトマイズ法が挙げられる。アトマイズ法の一例として、ガスアトマイズ法が挙げられる。
メルトスパン法は、高速回転するロールやディスクのような冷却媒体上に原料の溶湯を噴射して急冷することで、薄帯や薄片を作製する方法である。上記冷却媒体は、銅等の金属からなるものが挙げられる。メルトスパン法では、Fe等の含有量、薄帯や薄片の厚さ等にもよるが、上述の凝固速度を1.2×10℃/秒以上、更に1.5×10℃/秒以上、5.0×10℃/秒以上又は1.0×10℃/秒以上とすることができる。上記凝固速度が1×10℃/秒以上となるように回転速度等を調整する。薄帯を薄片にする場合、例えば薄帯の厚さと同程度の長さを有するように、薄帯を粉砕する。
アトマイズ法は、原料の溶湯をるつぼの底部の小孔から流出させ、冷却能の高いガス又は水を高圧噴射して、溶湯の細い流れを飛散させて急冷することで、粉末を作製する方法である。上記ガスとしては、アルゴンガス、空気、窒素等が挙げられる。アトマイズ法では、上述の凝固速度が1×10℃/秒以上となるように冷却媒体の種類(ガス種等)、溶湯の状態(噴射圧力や流速、溶湯の空間密度)、温度等を調整する。なお、溶湯の空間密度とは、溶湯をAl基合金と噴射ガスとの混合物として仮定した場合に、Al基合金の真密度に対する相対密度である。
また、本発明者らは、以下の知見を得た。
〔1〕上述のようにFeが実質的に析出していない素材は、塑性加工性に優れており、いわゆる粉末圧延のような圧延を良好に行える。
〔2〕上記圧延が施された圧延材は、冷間加工であっても緻密な中間素材を成形可能な程度に成形性に優れる。
以上の知見から、粉末状の素材は、上述の溶湯を急冷して製造した素材(以下、凝固材と呼ぶことがある)に圧延を施した後、粉砕したものでもよい。
所定の厚さの圧延材が得られるように、加圧力、ロール間ギャップ等の粉末圧延の条件を調整するとよい。例えば、一対のロールを備えるロール圧延機を用いる場合の条件としては、以下の(a)〜(c)が挙げられる。
(a)各ロールの直径は50mmφ〜60mmφ程度である。
(b)加圧力は5トン程度である。
(c)ロール間のギャップは0mmである。
上記の圧延材の厚さは、適宜選択できる。上記厚さとしては、例えば0.1mm以上1.5mm以下程度、更に0.3mm以上1.2mm以下程度が挙げられる。上記厚さがこの範囲であれば、圧延材を製造し易い。また、圧延後に、圧延材を粉砕し易く、粉末状の素材が得られ易い。粉砕された粉末状の素材の大きさは、中間素材を成形可能な範囲で適宜選択できる。例えば、上記素材の大きさは、例えば50μm以下である。
(2−6)凝固速度の測定
上述の凝固速度は、溶湯の組成、溶湯の温度、製造する素材の大きさ(粉末径、厚さ等)等に基づいて調整することができる。上記凝固速度の測定は、例えば、高感度の赤外線サーモグラフィカメラを用いて、鋳型に接した溶湯の温度を観測することで求めることが挙げられる。上記赤外線サーモグラフィカメラとしては、例えば、フリアーシステムズ社製A6750(時間分解能:0.0002sec)が挙げられる。上記鋳型は、例えば、後述するメルトスパン法では銅ロール等が挙げられる。上記凝固速度(℃/秒)は、(湯温−300)/tで求める。t(秒)は、湯温(℃)から300℃まで冷却する間に経過する時間である。例えば、湯温が700℃であれば、上記凝固速度は400/t(℃/秒)である。
(2−7)素材の組織
上記凝固速度が大きいほど、AlとFeとを含む化合物、特に1000nm以上のような粗大な化合物粒子をほとんど含まない素材が得られ易く好ましい。ここで、X線回折(XRD)による構造解析において、Feの全量が析出したと仮定したときのAlのトップピーク強度と、上記化合物のトップピーク強度との比率(Alのトップピーク強度/上記化合物のトップピーク強度)は理論的には体積比に相当する。上記理想的な比率では、分母と分子との差がそれほど大きく無い。これに対し、上述の素材(例、凝固材)では、分母(上記化合物のトップピーク強度)が分子(Alのトップピーク強度)に比較して非常に小さい。そのため、上記比率が大きい。例えば、上記比率は、上記理論的な比率の10倍以上、更に12倍以上、15倍以上又は20倍以上であり得る。上記比率が大きいほど、Feの全量に対する固溶量の割合が高く、上記化合物として存在する割合が低い。上記固溶量の割合が高い素材は、粗大な化合物粒子が割れの起点にならず、成形性により優れる。なお、上記比率は、凝固材に上述の粉末圧延等が施されても、実質的に変化しない。
(3)第二の工程:中間素材の作製
この工程では、上述の粉末状の素材又は薄片状の素材を成形して、緻密な中間素材を製造する。この成形は、AlとFeとを含む化合物が析出しない温度、即ち冷間又は温間で行う。緻密化によって、内部の空隙が低減される。そのため、中間素材は、空隙部分に応力集中することに起因する割れが生じ難い。また、中間素材の組織は、代表的には上記素材の組織を実質的に維持する、又はそれに近い組織を有する。そのため、中間素材は、粗大な化合物粒子及び粗大な結晶粒が実質的に存在せず、成形性、塑性加工性に優れる。温間加工を行った場合でも、化合物粒子の析出量が少なく、化合物粒子も非常に微細である。
(3−1)冷間加工
上述の素材が上述の粉末圧延等を経たものである場合、中間素材を成形するための加工は、温間加工でも、冷間加工でもよい。冷間加工では、成形時に上述の化合物が実質的に析出せず、結晶粒も実質的に成長しない。そのため、上記化合物を実質的に含まず、微細な結晶組織を有する中間素材が製造され易い。冷間加工としては、例えば、一軸プレス装置等を用いたプレス成形が挙げられる。
冷間加工における加工温度としては、例えば常温(5℃〜35℃)程度が挙げられる。常温程度であれば、上述の化合物の析出や結晶の成長が抑制される。また、この成形において、熱エネルギーが不要であり、製造性にも優れる。上記加工温度が常温超250℃未満であれば、素材の塑性加工性が高められるため、中間素材を成形し易い。上記加工温度は、例えば240℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下である。
冷間加工における印加圧力は、相対密度が85%以上となる範囲で選択することが好ましい。印加圧力は、例えば0.1GPa以上2.0GPa以下、好ましくは0.5GPa以上、より好ましくは0.8GPa以上、更に好ましくは1.0GPa以上である。上述の素材の組成、大きさ等にもよるが、成形圧力が高いほど、相対密度を高め易く、緻密な中間素材が得られ易い。
(3−2)温間加工
上述の素材が上述の粉末圧延等を経ていない場合、中間素材を成形するための加工は、温間加工が好ましい。上記素材の成形性が高められるからである。温間加工としては、例えば、一軸プレス装置等を用いたプレス成形、いわゆるホットプレスが挙げられる。又は、温間加工は、例えば、温間押出であってもよい。
温間加工における加工温度は、例えば300℃以上400℃未満である。上記加工温度が上記の範囲であれば、上述の素材の成形性を高めて、緻密な中間素材を良好に成形できつつ、上述の化合物の析出が抑制され易い。また、母相の結晶粒が過度に成長することも抑制され易い。上記加工温度が低いほど、上記化合物の析出及び結晶の成長が抑制され易い。上記加工温度が高いほど、塑性加工性が高められる。良好な成形性等を得る観点から、上記加工温度は、好ましくは320℃以上390℃以下、より好ましくは380℃以下である。上記加工温度が375℃以下、更に350℃以下であれば、上記化合物が実質的に析出せず、成形性により優れる。
上記加工温度は、素材を加熱する温度(予備加熱温度)である。加熱時間は、例えば1分以上30分以下である。また、加熱時の雰囲気としては、大気雰囲気、窒素雰囲気、真空雰囲気等が挙げられる。大気雰囲気とすれば、雰囲気制御が不要であり、作業性に優れる。
温間加工における印加圧力は、相対密度が85%以上となる範囲で選択することが好ましい。印加圧力は、例えば50MPa以上2.0GPa以下、好ましくは100MPa(0.1GPa)以上、より好ましくは700MPa以上である。印加圧力が1.0GPa以上、更に1.5GPa以上であると、中間素材がより緻密になり易い。
(3−3)相対密度
中間素材の相対密度が85%以上であれば、次の工程で、熱間加工等が行い易い。また、次の工程で製造される成形体の相対密度を85%以上にすることができる。即ち、緻密なAl合金材が製造される。緻密なAl合金材は、上述のように室温での強度及び硬度、並びに耐熱性に優れる。良好な成形性、緻密化等を得る観点から、中間素材の相対密度は、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、更に好ましくは93%以上、なお更に好ましくは95%以上である。温間押出を行う場合、より高い相対密度を有する中間素材(押出材)を製造することができる。押出前の素材又は押出条件等にもよるが、押出材の相対密度は、例えば98%以上、好ましくは99%以上であり、実質的に100%でもよい。
(3−4)その他の成形方法
上述のホットプレス、押出の他、上述の粉末状の素材を金属管に収納して、金属管の両端を封止したものを押し出すことができる。上記金属管としては、例えば、純アルミニウム又はアルミニウム合金、純銅又は銅合金等からなるものが挙げられる。純アルミニウムとしては、例えばJIS規格、合金番号A1070等が挙げられる。アルミニウム合金としては、例えばJIS規格、合金番号A5056,A6063等が挙げられる。押出後、金属管に基づく表層は除去されてもよいし、残されてもよい。上記表層を残す場合、上記表層を被覆層とする被覆Al合金材、例えば銅被覆Al合金材等が製造される。上記金属管の大きさは、素材の充填量及び素材の大きさ、被覆層とする場合には被覆層の厚さ等に応じて選択することが好ましい。
中間素材は、成形後、必要に応じて切削加工等を施してもよい。
(4)第三の工程:析出
この工程では、上述の中間素材を更に成形して、所定の形状のAl合金材を製造する。この成形は、AlとFeとを含む化合物が析出可能な温度、例えば熱間で行う。上述の中間素材は、成形性、塑性加工性に優れる上に、熱間加工を行うため、所定の形状のAl合金材を良好に成形することができる。また、成形と析出とを一つの工程とするため、工程数が少ない。この点で、この製造方法は、Al合金材の製造性に優れる。
加工温度は、例えば400℃以上500℃以下である。上記加工温度が上記の範囲であれば、Al合金材を良好に成形することができる。また、上記加工温度が上記の範囲であれば、上述の化合物を適切に析出できつつ、上記化合物や母相の結晶粒が過度に成長することを抑制できる。上記加工温度が低いほど、上記化合物及び結晶の成長が抑制され易い。上記加工温度が高いほど、成形性が高められる。良好な成形性を得る観点、及び化合物及び結晶の成長の抑制等の観点から、上記加工温度は、好ましくは480℃以下、より好ましくは450℃以下である。
上記加工温度は、素材を加熱する温度(予備加熱温度)である。加熱時間は、例えば1分以上30分以下である。また、加熱時の雰囲気は、上述の温間加工の条件で説明した雰囲気を適用できる。
熱間加工としては、例えば、熱間鍛造、熱間押出が挙げられる。
(5)その他の工程
上述の第三の工程後、必要に応じて、切削加工等を行うことができる。
上述の第三の工程に代えて、中間素材に熱処理を施す工程を実施することができる。この工程では、AlとFeとを含む化合物が析出可能な温度に中間素材を加熱して、上記化合物を析出させる。中間素材の形状や大きさによっては、上述の熱間鍛造又は熱間押出等の加工を施すことなく、熱処理を施すだけで、最終製品とすることができる。
この熱処理は、バッチ処理でも連続処理でもよい。バッチ処理は、雰囲気炉等の加熱容器に熱処理対象を封入した状態で加熱する処理である。連続処理は、ベルト炉等の加熱容器に熱処理対象を連続的に供給して加熱する処理である。
バッチ処理とする場合、熱処理温度は、例えば400℃超500℃以下であり、好ましくは420℃以上である。保持時間としては、10秒以上6時間以下程度が挙げられる。保持時間は、好ましくは0.1時間以上4時間以下、より好ましくは1時間以上3時間以下、更に好ましくは2時間以下、なお更に好ましくは1.5時間以下である。熱処理時の雰囲気は、上述の温間加工の条件で説明した雰囲気を参照するとよい。連続処理では、熱処理後の引張強さ、ビッカース硬さ、破断伸び等が上述の所定の範囲を満たすように、ベルトの速度等のパラメータを調整するとよい。
<試験例1>
種々の組成のAl合金材を種々の条件で作製し、得られたAl合金材について、室温での機械的特性、耐熱性、及び組織を調べた。
(1)表の説明
以下の表1〜表20のうち、奇数番号の表に、組成及び製造条件を示す。表1〜表20のうち、偶数番号の表に、機械的特性等を示す。
表1〜表6は、FeとNdとを含む試料であって、製造条件が異なる試料を示す。
表7及び表8は、FeとWとを含む試料を示す。
表9及び表10は、FeとScとを含む試料を示す。
表11及び表12は、FeとNdとCとを含む試料を示す。
表13及び表14は、FeとNdとBとを含む試料を示す。
表15及び表16は、FeとWとCとを含む試料を示す。
表17及び表18は、FeとWとBとを含む試料を示す。
表19及び表20は、FeとScとCとを含む試料を示す。
表21及び表22は、FeとScとBとを含む試料を示す。
以下、Nd、W、Scを第一元素と呼ぶことがある。C、Bを第二元素と呼ぶことがある。
(2)試料の作製
(2−1)液体急冷凝固法を利用する試料の作製
表1〜表4、表7〜表22に示す試料No.1〜No.50、No.76〜No.159のAl合金材は、以下のように作製した。
(2−1−1)素材の作製
奇数番号の表に示す第一元素とFeとを含み、残部がAl及び不可避不純物からなるAl基合金の溶湯を作製した。又は、奇数番号の表に示す第一元素及び第二元素とFeとを含み、残部がAl及び不可避不純物からなるAl基合金の溶湯を作製した。奇数番号の表に示すFe、第一元素、第二元素の含有量(原子%)は、Al基合金を100原子%とするときの原子割合である。溶湯に用いるAl基合金(母合金)は、原料として、上述した純アルミニウム粉、純鉄粉、Al系合金粉、Fe系合金粉、ダイヤモンド粉等を用いて作製した。必要に応じて、母合金に溶体化処理を施すことができる。奇数番号の表に示す含有量となるように、上記原料の添加量を調整した。
上述の溶湯を用いて、液体急冷凝固法、ここでは以下の条件のメルトスパン法によって、薄帯を作製した。得られた薄帯を粉砕して粉末状とした。
減圧したアルゴン雰囲気(−0.02MPa)において、1000℃に昇温して、上述の母合金を溶解して溶湯を作製した。50m/s、又は10m/sの周速で回転する銅製ロールに上記溶湯を噴射して、薄帯を作製した。奇数番号の表にロールの周速(メートル/秒)を示す。また、奇数番号の表に溶湯の凝固速度(℃/秒)を示す。ここでは凝固速度は、1.5×10℃/秒、又は7.5×10℃/秒である。薄帯の幅は2mm程度であった。薄帯の厚さは30μm程度であった。薄帯の長さは不定であった。
得られた各試料の薄帯についてXRDによる構造解析を行うと、AlとFeとを含む化合物(例、Al13Fe)のピークが見られた。しかし、比率(Alのトップピーク強度/上記化合物のトップピーク強度)は、上述の理論的な比率の10倍以上であった。また、各試料の薄帯の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると、1000nm以上のサイズの上記化合物が見られなかった。ここでの観察の倍率は、10,000倍である。これらのことから、各試料の薄帯は、粗大な化合物粒子を実質的に含まないといえる。
(2−1−2)中間素材の作製
上述の薄帯を粉砕した粉末を用いて、中間素材を成形した。ここでは、上記粉末を乾燥して、上記粉末の表面に吸着された水分を除去した後、冷間加工によって、相対密度が85%以上である第一成形体を作製した。次に、第一成形体を予備加熱して、温間加工によって、相対密度が90%以上である第二成形体を作製した。第二成形体が中間素材である。上記中間素材は、直径40mmであり、長さ50mmである円柱体であった。
第一成形体の成形は、以下の予備加熱を行った冷間プレス成形である。印加圧力は0.1GPaであった。予備加熱の条件は、アルゴン雰囲気であり、加工温度が200℃であり、保持時間が120分間であった。
第二成形体の成形は、以下の予備加熱を行った温間プレス成形である。印加圧力は1.5GPaであった。予備加熱の条件は、大気雰囲気であり、加工温度が350℃であり、保持時間が30分間であった。
(2−1−3)析出工程
得られた各試料の中間素材に熱間加工を施した。ここでの熱間加工は、以下の予備加熱を行った熱間押出である。予備加熱の条件は、大気雰囲気であり、加工温度が400℃であり、保持時間が10分間であった。この熱間加工により、奇数番号の表に示す組成のAl基合金からなるAl合金材が得られた。作製したAl合金材は、直径10mmであり、長さ約1000mmである円柱体であった。
(2−2)ガスアトマイズ法を利用する試料
表5及び表6に示す試料No.51〜No.75のAl合金材は、以下のように作製した。
上述の試料No.1等と同様にして、FeとNdとを含み、残部がAl及び不可避不純物からなるAl基合金の溶湯を作製した。この溶湯を用いて、ガスアトマイズ法によって、アトマイズ粉を作製した。ここでは、公知の条件を利用した。溶湯の凝固速度は、1.0×10℃/秒であった。アトマイズ粉の平均粒径は100μm程度であった。
上述のアトマイズ粉を用いて、上述の試料No.1等と同様の条件で、冷間加工、温間加工、熱間加工を順に行って、表5に示す組成のAl基合金からなるAl合金材を得た。作製したAl合金材は、直径10mmであり、長さ約1000mmである円柱体であった。
(3)機械的特性
得られた各試料のAl合金材について、ビッカース硬さ(Hv)、引張強さ(MPa)、破断伸び(%)を測定した。結果を偶数番号の表に示す。
ビッカース硬さ(Hv)は、JIS Z 2244(ビッカース硬さ試験−試験方法、2009年)に準拠して測定した。試験力は、0.4903Nとして実施した。25℃におけるビッカース硬さ(Hv)と、250℃におけるビッカース硬さ(Hv)とをそれぞれ測定する。表において「<20」とは、ビッカース硬さが20未満であることを意味する。
引張強さ(MPa)、破断伸び(%)は、JIS Z 2241(金属材料引張試験方法、1998年)に準拠して測定した。25℃における引張強さ及び破断伸びと、250℃における引張強さとをそれぞれ測定した。
測定には、25℃及び250℃におけるビッカース硬さの測定及び引張試験が可能な市販の測定装置を利用できる。
(4)耐熱性
各試料のAl合金材について、25℃から250℃までの引張強さの低下率KTS(%/℃)を求めた。結果を偶数番号の表に示す。低下率KTSは、[(T−T)/{(250−25)×T}]×100によって求めた。Tは、上述の25℃における引張強さである。Tは、上述の250℃における引張強さである。
各試料のAl合金材について、25℃から250℃までのビッカース硬さの低下に関する温度係数KHv(%/℃)を求めた。結果を偶数番号の表に示す。温度係数KHvは、[(H−H)/{(250−25)×H}]×100によって求めた。Hは、上述の25℃におけるビッカース硬さである。Hは、上述の250℃におけるビッカース硬さである。表中に「−」を付した試料は、250℃におけるビッカース硬さHが低過ぎるため(ここでは20未満)、温度係数KHvを求めていない。
(5)相対密度
得られた各試料のAl合金材について相対密度(%)を求めた。結果を偶数番号の表に示す。相対密度は、Al合金材の見かけ密度と、Al合金材の真密度とを用いて、(見かけ密度/真密度)×100から求めた。真密度は、Al合金材の組成と、添加元素の密度とを用いて求めた。Al合金材の組成は、成分分析によって求めてもよい。見かけ密度は、Al合金材の質量と、体積とを測定し、(質量/体積)で求めた。
(6)組織観察
得られた各試料のAl合金材について任意の断面をとり、断面をSEMによって観察すた。いずれの試料においても、母相は結晶組織を有していた。また、いずれの試料においても、AlとFeとを含む化合物(ここではAlに対するFeの原子割合が0.1以上(10原子%)のものを意味する。例、Al13Fe)が母相中に存在した。上記化合物は、主として析出物である。後述する特定試料群I及びIIでは、母相中に上記化合物からなる粒子が分散していた。
上記断面において、母相をなす結晶粒の平均粒径(nm)、上述の化合物からなる粒子(化合物粒子)の平均長さ(nm)、化合物粒子のアスペクト比、単位面積あたりの化合物粒子の平均個数(個/(500nm×500nm))を調べた。結果を偶数番号の表に示す。
母相の結晶粒の平均粒径(nm)は以下のようにして求めた。
Al合金材の断面をSEMで観察した。この断面のSEM像から、10μm×10μmの測定領域(視野)をとった。1つの断面又は複数の断面から、合計30以上の測定領域をとった。各測定領域に存在する結晶粒を全て抽出した。各結晶粒の断面積と等価の面積を有する円を求めた。この円(等価面積円)の直径を結晶粒の粒径とした。50nm以上の粒径を有する結晶粒を抽出した。即ち、粒径が50nm未満の結晶粒は平均粒径の算出に用いなかった。抽出した結晶粒の粒径を平均した。求めた平均値を平均粒径とした。この平均粒径を偶数番号の表に示す。なお、ここでの観察の倍率は10,000倍であった。この倍率における解像度では、10nm未満の結晶や、後述する10nm未満の化合物粒子を明確に測定することが非常に困難である。そのため、ここでは、50nm以上の結晶を平均粒径の算出に用いる。
上記結晶粒の抽出、後述の化合物粒子の抽出は、市販の画像処理ソフトウェアを利用して、SEM像を画像処理すると、容易に行える。なお、断面の観察には、金属顕微鏡を用いることもできる。顕微鏡の倍率は、上述のように、又は後述するように、測定対象のサイズを明確に測定可能な範囲で調整する。また、断面の観察を行う際には、適切な溶液処理で粒界エッチングを行うこと、EBSD(電子線後方散乱回折法)によって結晶方位の情報を有するSEM像とすることが有効である。
化合物粒子の平均長さ(nm)は以下のようにして求めた。
Al合金材の断面をSEMで観察した。この断面のSEM像から、10μm×10μmの測定領域をとった。1つの断面又は複数の断面から、合計30以上の測定領域をとった。各測定領域に析出する化合物粒子を全て抽出した。各化合物粒子の最大長さを測定した。ここでは、観察の倍率を10,000倍とし、10nm以上の最大長さを有する化合物粒子を抽出した。即ち、最大長さが10nm未満の化合物粒子は平均長さの算出に用いなかった。抽出した化合物粒子の最大長さを平均した。求めた平均値を平均長さとした。この平均長さを偶数番号の表に示す。
化合物粒子のアスペクト比は、以下のようにして求めた。
上記アスペクト比は、化合物粒子の短軸長さに対する長軸長さの比、即ち(長軸長さ/短軸長さ)とした。長軸長さ(nm)は、上述の化合物粒子の最大長さとした。短軸長さ(nm)は、長軸方向に直交する方向の線分をとり、これら線分の長さのうち、最大値とした。ここでは、上述のように最大長さが10nm以上の化合物粒子について、アスペクト比を求めた。これらの化合物粒子のアスペクト比を平均した。求めた平均値をアスペクト比とした。このアスペクト比を偶数番号の表に示す。
化合物粒子の平均個数(個)は以下のようにして求めた。
Al合金材の断面をSEMで観察した。この断面のSEM像から、500nm×500nmの測定領域を(視野)とった。1つの断面又は複数の断面から、合計30以上の測定領域をとった。各測定領域に存在し、最大長さが10nm以上である化合物粒子の個数を測定した。30個以上の測定領域における化合物粒子の個数を合計し、この合計数を測定領域の数(30以上)で除して、平均した。求めた平均値を単位面積あたりに存在する化合物粒子の平均個数とした。この平均個数を偶数番号の表に示す。なお、ここでの観察の倍率は30,000倍であった。表において「<5」とは、化合物粒子が上記の測定領域内に収まらないほどに大き過ぎて、カウントが不可能であることを意味する。
(7)成分分析
その他、Al合金材の断面において、XRDによる構造解析を行うことで、上述の化合物の構造(例、Al13Fe)を調べることができる。この分析は、表面酸化物等の影響が大きいため、表面酸化物等を十分に除去してから行うこと、又は放射光を用いた透過XRD等により試料の内部を評価することによって、精度よく行うことができる。また、上記化合物を構成する元素を同定することで、例えば、FeとAlとを含む化合物に、Ndを含むことが確認できる。母相を構成する元素を同定することで、母相におけるAlの含有量を調べることができる。上記同定には、エネルギー分散型X線分光法(EDX)による測定装置を付属する透過型電子顕微鏡(TEM)等の局所的な成分分析が可能な装置を用いることができる。後述する特定試料群I及びIIでは、母相におけるAlの含有量が99原子%以上である。
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〔a〕まず、表1〜表4と、表5〜表6とにおいて、同じ組成の試料同士を比較する。
室温(ここでは25℃)での機械的特性(ビッカース硬さ、引張強さ、破断伸び)に着目すると、表2及び表4に示す試料では、表6に示す試料に比較して、機械的特性が高い傾向がある。
高温(ここでは250℃)での特性に着目すると、表2及び表4に示す試料では、表6に示す試料に比較して、ビッカース硬さ及び引張強さが高い傾向がある。
組織に着目すると、表2及び表4に示す試料では、表6に示す試料に比較して、結晶粒が小さい傾向にある。また、AlとFeとを含む化合物からなる粒子が小さい傾向がある。更に、化合物粒子の個数が多い傾向がある。
上述の機械的特性の相違が生じた理由の一つとして、凝固速度の相違が考えられる。表2及び表4に示す試料は、凝固速度が速い。ここでの凝固速度は1×10℃/秒以上、更に1.5×10℃/秒以上である(表1及び表3)。凝固速度が速いことで、以下に説明するように微細組織が得られたと考えられる。また、微細な化合物粒子による分散強化及び微細な結晶粒による粒界強化が良好になされたと考えられる。更に、粗大な化合物粒子による割れの発生を低減でき、高温での合金の脆化も招き難かったと考えられる。
Feの含有量が1.0原子%以上であるものの、凝固速度が速いため、AlとFeとを含む化合物の粒子であって粗大な粒子を実質的に含まない凝固材が得られる。この凝固材を用いて中間素材を製造する過程でも、上記化合物が析出し難い又は成長し難い。中間素材に熱間加工を施すことで、AlとFeとを含む化合物が微細に析出される(表2及び表4の平均長さ、アスペクト比参照)。化合物粒子が微細なため、化合物粒子の個数も多くなり易い(表2及び表4の平均個数参照)。また、微細な化合物粒子によって、結晶の成長が抑制されて、結晶粒も微細になり易い(表2及び表4の平均粒径参照)。
表2と表4とを比較する。表2に示す試料では、表4に示す試料よりも、結晶粒及び化合物粒子が小さい傾向がある。また、化合物粒子の数が多い傾向がある。更に、表2に示す試料では、表4に示す試料に比較して、室温での機械的特性が高い傾向がある。また、高温での引張強さ及びビッカース硬さが高い傾向がある。これらのことから、凝固速度が速いほど、化合物粒子及び結晶が微細化され易いといえる。また、化合物粒子の微細化、結晶の微細化は、室温での機械的特性の向上、耐熱性の向上に寄与するといえる。
表6に示す試料では、凝固速度が遅い。ここでの凝固速度は、1×10℃/秒(表5)である。凝固速度が遅い場合には、AlとFeとを含む化合物が粗大な粒子となって凝固材に析出しており、以降の工程で更に粗大(針状)に成長し易いと考えられる。上記化合物が粗大に成長することで、化合物粒子の数が少なくなり易い。また、粗大な化合物粒子は、母相をなす結晶の成長を抑制できず、母相の結晶粒も粗大に成長し易い。このように微細組織が適切に得られないことで、室温での機械的特性、耐熱性が低下すると考えられる。
〔b〕次に、表1〜表4、表7〜表10に着目する。基本的には、同じ組成の試料同士を比較する。
以下、試料No.7〜No.19(但し、No.10、No.11、No.15及びNo.16を除く)、No.32〜No.44(但し、No.35、No.36、No.40及びNo.41を除く)、No.80〜No.90(但し、No.83及びNo.87を除く)、No.100〜No.110(但し、No.103及びNo.107を除く)を特定試料群Iと呼ぶ。
特に、試料No.7〜No.19(但し、No.10、No.11、No.15及びNo.16を除く)を特定試料群(I−1)と呼ぶ。
偶数番号の表に示すように、Feを1.2原子%以上6.5原子%以下、第一元素を0.005原子%以上0.15原子%未満含むAl合金材では、室温での機械的特性に優れる上に、高温でのビッカース硬さ、高温での引張強さが高いことが分かる。
特定試料群Iでは、25℃におけるビッカース硬さが85Hv以上、ここでは更に86Hv以上である。上記ビッカース硬さが90Hv以上である試料も多い。上述の凝固速度が速い特定試料群(I−1)では、上記ビッカース硬さが100Hv以上であり、110Hv以上である試料も多い。
特定試料群Iでは、25℃における引張強さが250MPa以上、ここでは更に260MPa以上である。上記引張強さが270MPa以上である試料も多い。特定試料群(I−1)では、上記引張強さが320MPa以上、ここでは更に350MPa以上である。引張強さが400MPa以上である試料も多い。
特定試料群Iでは、25℃における破断伸びが3%以上である。上記破断伸びが3.2%以上、更に3.5%以上である試料も多い。
特定試料群Iでは、ビッカース硬さの温度係数が0.30%/℃以下、ここでは更に0.28%/℃以下である。このような特定試料群Iは、250℃になってもビッカース硬さが低下し難く、偶数番号の表に示すように高いビッカース硬さを有しており(例、30Hv以上)、耐熱性に優れるといえる。25℃におけるビッカース硬さが85Hv以上と高いことからも、250℃でも高いビッカース硬さを有し易いと考えられる。
特定試料群Iでは、25℃から250℃までの引張強さの低下率が0.28%/℃未満、ここでは更に0.27%/℃以下である。このような特定試料群Iは、250℃になっても引張強さが低下し難く、偶数番号の表に示すように高い引張強さを有しており(例、120MPa以上)、耐熱性に優れるといえる。
特定試料群Iでは、母相をなす結晶粒が微細であり、かつ化合物粒子も微細である。具体的には、上記結晶粒の平均粒径が1700nm以下であり、かつ化合物粒子の平均長さが140nm以下である。上記結晶粒の平均粒径が1500nm以下である試料も多い。特定試料群(I−1)では、上記結晶粒の平均粒径が1000nm以下、ここでは更に600nm以下である。このような特定試料群Iは、微細な結晶粒による粒界強化が良好になされて、室温での機械的特性(特に、ビッカース硬さ、引張強さ)、耐熱性が向上された、と考えられる。
特定試料群Iでは、化合物粒子の平均長さが100nm以下、ここでは更に60nm以下と小さい。また、化合物粒子のアスペクト比は3.5以下であり、3.0以下である試料も多い。このような化合物粒子は、針状ではないといえる。更に、単位面積あたりに存在する化合物粒子の平均個数が10個以上であり、20個以上である試料も多い。特定試料群(I−1)では、上記化合物粒子の平均個数が25個以上であり、30個以上である試料も多い。上記化合物粒子の平均個数が100個以上である試料もある。また、単位面積あたりに存在する化合物粒子の平均個数が220個以下である。化合物粒子が適切に存在することで、高強度及び高硬度でありながら、伸びにも優れると考えられる。
その他、以下のことが分かる。
1)Feの含有量が1.2原子%未満である場合は、特定試料群Iに比較して、室温でのビッカース硬さ及び引張強さが低く、耐熱性も劣る(例、試料No.27〜No.29と試料No.32〜No.34とを比較参照)。
2)Feの含有量が6.5原子%超である場合は、特定試料群Iに比較して、室温でのビッカース硬さ及び引張強さが低く、耐熱性も劣る(例、試料No.47〜No.49と試料No.42〜No.44とを比較参照)。また、Feの含有量が6.5原子%超である場合は、特定試料群Iに比較して、室温での破断伸びが低く、靭性も劣る(同)。
3)第一元素の含有量が0.005原子%未満である(ここでは第一元素を含まない)場合は、特定試料群Iに比較して、室温でのビッカース硬さ及び引張強さが低く、耐熱性も劣る(例、試料No.36と試料No.37とを比較参照)。
4)第一元素の含有量が0.15原子%超である場合は、特定試料群Iに比較して、室温での破断伸びが小さく、靭性に劣る(例、試料No.39と試料No.40とを比較参照)。室温及び高温での引張強さも低い傾向がある(同)。
5)特定試料群Iにおいて、Feの含有量が多いほど、また第一元素の含有量が多いほど、室温でのビッカース硬さ及び引張強さが高い傾向があり、耐熱性に優れる傾向がある。逆に、Feの含有量が少ないほど、また第一元素の含有量が少ないほど、室温での破断伸びが高い傾向がある。
6)上述の機械的特性の相違の一因として、結晶粒の大きさ、化合物粒子の大きさ・形状・個数等の組織の相違が考えられる。
〔c〕次に、表11〜表22に着目する。基本的には、同じ組成の試料同士を比較する。
以下、試料No.116〜No.158のうち、試料No.120、No.125、No.131、No.135、No.138、No.141、No.144、No.147、No.150、No.153及びNo.156を除く試料を特定試料群IIと呼ぶ。
特に、試料No.118、No.123及びNo.127を特定試料群(II−1)と呼ぶ。
偶数番号の表に示すように、Fe及び第一元素を上述の範囲で含むと共に、第二元素を0.005原子%以上2原子%未満含むAl合金材では、室温での機械的特性及び耐熱性が向上し易いことが分かる。
特定試料群IIでは、25℃におけるビッカース硬さが93Hv以上である。上記ビッカース硬さが100Hv以上である試料も多い。凝固速度が速い特定試料群(II−1)では、上記ビッカース硬さが120Hv以上である。
特定試料群IIでは、25℃における引張強さが270MPa以上である。上記引張強さが290MPa以上、更に300MPa以上である試料も多い。上記引張強さが320MPa以上、更に350MPa以上である試料もある。特定試料群(II−1)では、上記引張強さが400MPa以上、ここでは更に420MPa以上である。
特定試料群IIでは、25℃における破断伸びが5%以上である。上記破断伸びが5.5%以上、更に6.0%以上である試料も多い。
特定試料群IIでは、ビッカース硬さの温度係数が0.25%/℃以下である。上記温度係数が0.24%/℃以下、更に0.23%/℃以下である試料も多い。このような特定試料群IIは、250℃になってもビッカース硬さがより低下し難く、偶数番号の表に示すようにより高いビッカース硬さを有しており(例、40Hv以上)、耐熱性に更に優れるといえる。25℃におけるビッカース硬さが93Hv以上と高いことからも、250℃でも高いビッカース硬さを有し易いと考えられる。
特定試料群IIでは、25℃から250℃までの引張強さの低下率が0.28%/℃未満、ここでは更に0.26%/℃以下である。このような特定試料群IIは、250℃になっても引張強さがより低下し難く、偶数番号の表に示すようにより高い引張強さを有しており(例、120MPa以上、140MPa以上の試料も多い)、耐熱性に更に優れるといえる。
特定試料群IIでは、化合物粒子及び結晶粒がより微細になり易い。具体的には、上記結晶粒の平均粒径が1500nm以下であり、かつ化合物粒子の平均長さが60nm以下である。上記結晶粒の平均粒径が1400nm以下である試料も多い。上記結晶粒の平均粒径が1300nm以下である試料、更には1000nm以下である試料もある。特定試料群(II−1)では、上記結晶粒の平均粒径が600nm以下、ここでは更に500nm以下である。このような特定試料群IIは、微細な結晶粒による粒界強化がより一層良好になされて、室温での機械的特性(特に、ビッカース硬さ、引張強さ)、耐熱性がより向上された、と考えられる。
特定試料群IIでは、化合物粒子の平均長さが40nm以下である試料が多い。また、化合物粒子のアスペクト比は2.0以下であり、1.8以下である試料も多い。このような化合物粒子は、針状ではなく、球形に近いといえる。更に、単位面積あたりに存在する化合物粒子の平均個数が40個以上であり、50個以上、更に60個以上である試料も多い。特定試料群(II−1)では、上記化合物粒子の平均個数が100個以上、ここでは更に150個以上、200個以上である。また、単位面積あたりに存在する化合物粒子の平均個数が530個以下である。特定試料群(II−1)は、より微細な化合物粒子が多く分散した組織を有するといえる。各化合物粒子が割れの起点になり難いため、伸びが高められ易いと考えられる。
その他、以下のことが分かる。
1)第二元素の含有量が0.005原子%以上、好ましくは0.10原子%以上である場合は、特定試料群Iに比較して、高温になっても引張強さ及びビッカース硬さの少なくとも一方が高く、耐熱性により優れる(例、試料No.37と試料No.116〜No.119とを比較参照)。
2)第二元素の含有量が2原子%未満、ここでは更に1原子%以下であると、室温での靭性にも優れる(例、試料No.120と試料No.119とを比較参照)。第二元素の含有量が0.2原子%以下であると、室温での靭性に更に優れる。
3)特定試料群IIにおいて、第二元素の含有量が多いほど、室温でのビッカース硬さ及び引張強さが高い傾向があり、耐熱性に優れる傾向がある。逆に、第二元素の含有量が少ないほど、室温での破断伸びが高い傾向がある。
4)上述の機械的特性の相違の一因として、結晶粒の大きさ、化合物粒子の大きさ・形状・個数等の組織の相違が考えられる。
以上のことから、Feを比較的多く含むと共に、第一元素を少量含むAl基合金からなるAl合金材は、耐熱性に優れることが示された。また、上記Al合金材は、室温での機械的特性にも優れることが示された。特に、上記Al合金材は、母相をなす結晶粒が微細であり、この母相に微細な化合物粒子が分散して存在すると、良好な耐熱性を有するといえる。
更に、上述の耐熱性に優れるAl合金材は、溶湯の急冷を経て製造した粉末等を用いて緻密な中間素材(相対密度が85%以上)を作製し、この中間素材を所定の温度に加熱した状態で塑性加工等を施すことで製造できることが示された。
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、試験例1において、Feの含有量、第一元素の含有量、第二元素の含有量、製造条件(溶湯の冷却速度、成形時の加工温度・印加圧力等)、Al合金材の形状・寸法等を適宜変更できる。

Claims (13)

  1. Feを1.2原子%以上6.5原子%以下含有し、
    Nd、W及びScからなる群より選択される1種以上の元素を0.005原子%以上0.15原子%未満含有し、
    残部がAl及び不可避不純物である、
    アルミニウム合金材。
  2. 前記アルミニウム合金材は、Alを99原子%以上含む母相と、前記母相の中に存在し、AlとFeとを含む化合物からなる粒子とを含む組織を備え、
    前記アルミニウム合金材の任意の断面において、前記母相をなす結晶粒の平均粒径が1700nm以下であり、前記化合物からなる粒子の平均長さが140nm以下である請求項1に記載のアルミニウム合金材。
  3. 前記断面において、一辺の長さが500nmである正方形の領域の面積を単位面積とするとき、前記単位面積あたりに存在する前記化合物からなる粒子の平均個数が10個以上220個以下である請求項2に記載のアルミニウム合金材。
  4. 前記化合物からなる粒子のアスペクト比が3.5以下である請求項2又は請求項3に記載のアルミニウム合金材。
  5. 25℃におけるビッカース硬さが85Hv以上であり、
    25℃から250℃までのビッカース硬さの低下に関する温度係数が0.30%/℃以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金材。
  6. 25℃における破断伸びが3%以上である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金材。
  7. Feを1.2原子%以上6.5原子%以下含有し、
    Nd、W及びScからなる群より選択される1種以上の第一元素を0.005原子%以上0.15原子%未満含有し、
    C及びBからなる群より選択される1種以上の第二元素を0.005原子%以上2原子%未満含有し、
    残部がAl及び不可避不純物である、
    アルミニウム合金材。
  8. 前記アルミニウム合金材は、Alを99原子%以上含む母相と、前記母相の中に存在し、AlとFeとを含む化合物からなる粒子とを含む組織を備え、
    前記アルミニウム合金材の任意の断面において、前記母相をなす結晶粒の平均粒径が1500nm以下であり、前記化合物からなる粒子の平均長さが60nm以下である請求項7に記載のアルミニウム合金材。
  9. 前記断面において、一辺の長さが500nmである正方形の領域の面積を単位面積とするとき、前記単位面積あたりに存在する前記化合物からなる粒子の平均個数が40個以上530個以下である請求項8に記載のアルミニウム合金材。
  10. 前記化合物からなる粒子のアスペクト比が2.0以下である請求項8又は請求項9に記載のアルミニウム合金材。
  11. 25℃におけるビッカース硬さが93Hv以上であり、
    25℃から250℃までのビッカース硬さの低下に関する温度係数が0.25%/℃以下である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のアルミニウム合金材。
  12. 25℃における破断伸びが5%以上である請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のアルミニウム合金材。
  13. 25℃から250℃までの引張強さの低下率が0.28%/℃未満である請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のアルミニウム合金材。
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