以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による冷蔵庫を示す正面図である。また、図2は、図1の冷蔵庫を示す縦断面図である。図において、冷蔵庫1では、冷蔵室3、切替室4、製氷室5、冷凍室6及び野菜室7が複数の冷却室として冷蔵庫本体2に形成されている。
冷蔵室3は、冷蔵庫本体2の最上部に形成されている。野菜室7は、冷蔵庫本体2の最下部に形成されている。冷凍室6は、野菜室7の上に位置している。切替室4及び製氷室5は、冷蔵室3と冷凍室6との間に位置している。冷蔵庫本体2の前方から冷蔵庫1を見たときには、図1に示すように、切替室4が冷蔵庫本体2の幅方向右側に位置し、製氷室5が冷蔵庫本体2の幅方向左側に位置している。
冷蔵庫本体2は、図2に示すように、冷蔵庫外壁部21と、冷蔵庫外壁部21の内部に固定された複数の仕切り壁部22とを有している。冷蔵室3、切替室4、製氷室5、冷凍室6及び野菜室7のそれぞれは、仕切り壁部22に仕切られている。冷蔵室3、切替室4、製氷室5、冷凍室6及び野菜室7のそれぞれ、即ち各冷却室3〜7は、冷蔵庫本体2の前方へ開口した開口部をそれぞれ冷却室開口部として有している。
冷蔵庫本体2には、各冷却室3〜7の開口部を個別に開閉可能な複数の扉8が設けられている。冷蔵庫外壁部21、各仕切り壁部22及び各扉8のそれぞれは、真空断熱材及びウレタン断熱材によって構成されている。これにより、冷蔵庫1では、冷蔵庫1の外気から各冷却室3〜7への熱の侵入が抑制されている。
この例では、冷蔵庫1の高さ方向に沿った軸を中心に各扉8が回転することにより、各冷却室3〜7の開口部が開閉される。また、この例では、冷蔵室3の開口部が観音開き式、即ち両開き式の2つの扉8によって開閉される。さらに、この例では、切替室4、製氷室5、冷凍室6及び野菜室7のそれぞれの開口部が片開き式の1つの扉8によって開閉される。なお、冷蔵室3の開口部を開閉する扉8を片開き式の1つの扉にしてもよい。
冷蔵庫本体2の背面部分には、冷却器室23と、冷却器室23から各冷却室3〜7のそれぞれに達する冷気通路24とが形成されている。冷却器室23は、冷蔵庫本体2の下部に位置している。
冷却器室23には、冷却器11及び除霜装置16が配置されている。冷却器室23と冷気通路24との境界には、ファン12が配置されている。
冷却器11は、冷却器室23の内部の空気を冷却して冷気とする。冷却器11で冷却された冷気は、ファン12の動作によって、冷却器室23から冷気通路24を通って各冷却室3〜7へ送られる。これにより、各冷却室3〜7の温度が設定温度に維持される。
各冷却室3〜7へ送られた冷気は、扉8の開閉動作による外気の侵入などにより暖められた後、冷却器室23へ戻される。各冷却室3〜7から冷却器室23に戻ってきた冷気は、冷却器11で再度冷却された後、冷気通路24を通って各冷却室3〜7へ再度送られる。このようにして、冷蔵庫1では、冷蔵庫本体2の内部の空間を冷気が循環する。
除霜装置16は、冷却器11に付着した霜を融かして除去する装置である。扉8の開閉動作が行われると、水分を多く含む外気が各冷却室3〜7に侵入する。これにより、冷却器室23には、外気によって水分が増えた冷気が戻ることになる。従って、冷気と冷却器11とが熱交換を行うときには、冷却器11に霜が付着する。冷蔵庫1を長時間にわたって運転すると、冷却器11に付着した霜が成長してしまい、冷却器11の熱交換性能が低下してしまう。冷蔵庫1では、冷却器11に付着した霜を除霜装置16によって除去する除霜運転が、図示しない制御装置の制御により定期的に行われる。これにより、冷却器11の熱交換性能の低下が抑制される。
冷蔵庫本体2の背面部分の最下部には、圧縮機13が配置されている。また、冷蔵庫1には、冷凍サイクル装置が設けられている。冷凍サイクル装置は、冷媒が循環する冷媒回路を有している。冷凍サイクル装置の運転は、圧縮機13の動作により行われる。冷却器11は、冷凍サイクル装置の運転により、冷却器室23の内部の空気を冷却する。
図3は、図2の冷蔵庫1における冷凍サイクル装置の冷媒回路を示す構成図である。冷凍サイクル装置の冷媒回路は、冷却器11と、圧縮機13と、凝縮器としての配管群14と、減圧装置15とを有している。冷却器11、圧縮機13、配管群14及び減圧装置15は、冷媒管を介して連結されている。冷媒回路の冷媒としては、イソブタンなどが用いられている。
冷凍サイクル装置では、圧縮機13が動作すると、圧縮機13において冷媒が断熱圧縮される。これにより、冷媒は、高温高圧の気体冷媒となる。圧縮機13で圧縮された高温高圧の冷媒は、配管群14へ送られる。
配管群14は、冷蔵庫外壁部21に埋設されている。配管群14では、冷蔵庫1の外気と冷媒との間で熱交換が行われる。これにより、冷媒は、配管群14で凝縮されて液冷媒となる。配管群14で凝縮された液冷媒は、減圧装置15へ送られる。
減圧装置15としては、キャピラリチューブなどが用いられている。減圧装置15では、配管群14からの液冷媒が断熱膨張する。これにより、減圧装置15を通過した冷媒は、低温の気液二相冷媒となる。減圧装置15で断熱膨張した気液二相冷媒は、冷却器11へ送られる。
冷却器11では、冷媒と冷却器室23の空気との間で熱交換が行われる。これにより、冷媒は、冷却器11で蒸発して気体冷媒となる。一方、冷却器室23の空気は、冷却器11を流れる冷媒に放熱することにより冷却される。即ち、冷却器11は、冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。冷却器11で蒸発した気体冷媒は、圧縮機13に戻る。このようにして、冷凍サイクル装置の冷媒回路では、圧縮機13、配管群14、減圧装置15、冷却器11及び圧縮機13の順に冷媒が相変化しながら循環する。
ここで、各冷却室3〜7のそれぞれの開口部が扉8によって開閉されると、冷気が各冷却室3〜7から外部へ漏れ出る。各冷却室3〜7から外部へ冷気が漏れ出ると、冷気が外気に接触することによって各冷却室3〜7に結露が生じやすくなる。
各冷却室3〜7のそれぞれの開口部の縁部には、図2に示すように、配管群14の一部が凝縮パイプ141として配置されている。凝縮パイプ141は、各仕切り壁部22に取り付けられている。これにより、凝縮パイプ141の周囲での外気の温度低下が抑制され、各冷却室3〜7での結露の発生が抑制される。なお、凝縮パイプ141の位置は、各冷却室3〜7の冷気が外部に漏れ出ることによる結露の発生を抑制することができる位置であれば、どの位置でもよい。
切替室4には、切替室用ケース41が配置されている。切替室用ケース41を構成する材料としては、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどの樹脂材料が挙げられる。切替室用ケース41は、切替室4の開口部を通して切替室4から引き出し可能になっている。切替室用ケース41には、上方へ開口した開口部がケース開口部として形成されている。冷気通路24から切替室4へ送られた冷気は、切替室用ケース41の開口部を通して切替室用ケース41の内部へ送られる。これにより、切替室用ケース41の内部が冷却される。
野菜室7には、野菜室用上ケース71と、野菜室用下ケース72とが配置されている。野菜室用上ケース71及び野菜室用下ケース72のそれぞれを構成する材料としては、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどの樹脂材料が挙げられる。野菜室用上ケース71及び野菜室用下ケース72のそれぞれには、上方へ開口した開口部がケース開口部として形成されている。
野菜室用下ケース72は、野菜室用上ケース71の下方に配置されている。また、野菜室用上ケース71は、野菜室用下ケース72に載せられている。野菜室用上ケース71が野菜室用下ケース72に載せられている状態では、野菜室用下ケース72の開口部の一部が野菜室用上ケース71によって覆われている。
冷気通路24から野菜室7へ送られた冷気は、野菜室用上ケース71の開口部を通して野菜室用上ケース71の内部へ送られる。また、冷気通路24から野菜室7へ送られた冷気は、野菜室用下ケース72の開口部を通して野菜室用下ケース72の内部へ送られる。これにより、野菜室用上ケース71及び野菜室用下ケース72のそれぞれの内部が冷却される。
図4は、図2の冷凍室6を示す斜視図である。また、図5は、図4の冷凍室6を冷蔵庫本体2の前方から見たときの状態を示す正面図である。さらに、図6は、図5のVI−VI線に沿った断面図である。さらにまた、図7は、図5の冷凍室6を上方から見たときの状態を示す上面図である。冷凍室6の内面は、冷却室底面6aと、冷却室天井面6bと、冷却室背面6cと、一対の冷却室側面6dとを有している。冷凍室6の内部の空間は、冷却室底面6aと、冷却室天井面6bと、冷却室背面6cと、一対の冷却室側面6dとによって囲まれている。
冷却室天井面6bは、冷却室底面6aの上方に位置している。従って、冷却室天井面6bは、冷蔵庫本体2の高さ方向Zで冷却室底面6aに対向している。冷却室背面6cは、冷蔵庫本体2の奥行き方向Yで冷凍室6の開口部に対向している。一対の冷却室側面6dは、冷蔵庫本体2の幅方向Xで互いに対向している。
ここで、冷蔵庫本体2の高さ方向Zは、冷蔵庫1が設置された状態での鉛直方向と同じ方向である。冷蔵庫本体2の幅方向X及び奥行き方向Yのそれぞれは、冷蔵庫本体2の高さ方向Zに直交する方向である。冷蔵庫本体2の幅方向Xは、冷蔵庫本体2の奥行き方向Yに直交する方向である。
冷凍室6には、第1ケースとしての冷凍室用上ケース61と、第2ケースとしての冷凍室用下ケース62とが配置されている。冷凍室用上ケース61及び冷凍室用下ケース62のそれぞれには、上方へ開口した開口部がケース開口部として形成されている。冷凍室用上ケース61及び冷凍室用下ケース62のそれぞれを構成する材料としては、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどの樹脂材料が用いられている。
冷凍室用上ケース61は、冷凍室用上ケース61の開口部が形成された第1ケース本体611と、第1ケース本体611の上縁部に設けられた一対の第1ケースフランジ612とを有している。第1ケース本体611には、一対の冷却室側面6dに個別に対向する一対の側面が形成されている。
一対の第1ケースフランジ612は、図5に示すように、第1ケース本体611の一対の側面のそれぞれの上縁部に配置されている。これにより、各第1ケースフランジ612は、冷凍室用上ケース61の開口部の周囲で冷却室天井面6bにそれぞれ対向する天井面対向部となっている。また、一対の第1ケースフランジ612は、第1ケース本体611の上縁部から冷却室側面6dに近づく方向へ第1ケース本体611の外側に突出している。さらに、一対の第1ケースフランジ612は、冷蔵庫本体2の奥行き方向Yに沿って配置されている。
冷凍室用下ケース62は、冷凍室用下ケース62の開口部が形成された第2ケース本体621と、第2ケース本体621の上縁部に設けられた一対の第2ケースフランジ622とを有している。第2ケース本体621には、一対の冷却室側面6dに個別に対向する一対の側面が形成されている。
一対の第2ケースフランジ622は、第2ケース本体621の一対の側面のそれぞれの上縁部に配置されている。また、一対の第2ケースフランジ622は、第2ケース本体621の上縁部から冷却室側面6dに近づく方向へ第2ケース本体621の外側に突出している。さらに、一対の第2ケースフランジ622は、冷蔵庫本体2の奥行き方向Yに沿って配置されている。
冷凍室用上ケース61は、一対の第1ケースフランジ612を冷却室天井面6bに対向させた状態で配置されている。冷凍室用下ケース62は、冷凍室用上ケース61の下方に配置されている。また、冷凍室用上ケース61は、各第1ケースフランジ612を各第2ケースフランジ622に重ねた状態で冷凍室用下ケース62に載せられている。冷凍室用上ケース61が冷凍室用下ケース62に載せられている状態では、冷凍室用下ケース62の開口部の一部が冷凍室用上ケース61によって覆われている。
一対の冷却室側面6dのそれぞれには、レール63が冷蔵庫本体2の奥行き方向Yに沿って固定されている。冷凍室用下ケース62は、各レール63に支持されている。また、冷凍室用下ケース62は、冷蔵庫本体2に対して各レール63に沿って冷蔵庫本体2の奥行き方向Yへスライド可能になっている。冷凍室用上ケース61は、冷凍室用下ケース62とともに移動可能になっている。これにより、冷凍室用上ケース61及び冷凍室用下ケース62のそれぞれは、冷凍室6の開口部を通して冷凍室6から引き出し可能になっている。
冷却室背面6cには、図6に示すように、第1吹き出し部64と、第2吹き出し部65と、冷気戻り部66とが設けられている。第1吹き出し部64及び第2吹き出し部65は、冷気通路24にそれぞれ繋がっている。冷気戻り部66は、冷却器室23に繋がっている。
第1吹き出し部64は、第2吹き出し部65よりも高い位置に配置されている。冷気戻り部66は、第1吹き出し部64及び第2吹き出し部65のそれぞれよりも低い位置に配置されている。
第1吹き出し部64は、冷気通路24から第1吹き出し部64へ送られた冷気を第1ケース用冷気Aとして冷凍室用上ケース61の内部へ吹き出す。第1吹き出し部64から吹き出した第1ケース用冷気Aは、冷凍室用上ケース61の開口部を通して冷凍室用上ケース61の内部へ送られる。これにより、冷凍室用上ケース61の内部が冷却される。
第2吹き出し部65は、冷気通路24から第2吹き出し部65へ送られた冷気を第2ケース用冷気Bとして冷凍室用下ケース62の内部へ吹き出す。第2吹き出し部65から吹き出した第2ケース用冷気Bは、冷凍室用下ケース62の開口部のうち、冷凍室用上ケース61で覆われていない部分を通して冷凍室用下ケース62の内部へ送られる。これにより、冷凍室用下ケース62の内部が冷却される。
冷凍室6では、冷凍室用上ケース61の内部から流出した第1ケース用冷気Aと、冷凍室用下ケース62の内部から流出した第2ケース用冷気Bとがファン12の吸引により冷気戻り部66へ導かれる。これにより、冷気戻り部66には、冷凍室6でそれぞれ暖められた第1ケース用冷気A及び第2ケース用冷気Bが導かれる。冷気戻り部66に戻った第1ケース用冷気A及び第2ケース用冷気Bは、冷却器室23へ導かれて冷却器11によって再度冷却される。
冷凍室6の開口部を開閉する扉8の外周部には、冷凍室6の内部の空間に向けて扉8から突出するスロート81が設けられている。扉8が冷凍室6の開口部を閉じている状態では、冷凍室用上ケース61及び冷凍室用下ケース62と、冷凍室6の内面との間の隙間にスロート81が挿入されている。これにより、第1ケース用冷気A及び第2ケース用冷気Bが扉8に近づくことが抑制される。従って、扉8から第1ケース用冷気A及び第2ケース用冷気Bへ熱が移動しにくくなり、扉8から冷凍室6の内部への熱の侵入量が抑制される。
一対の第1ケースフランジ612のそれぞれと冷却室天井面6bとの間の隙間には、冷凍室用上ケース61の内部から冷凍室用上ケース61と冷却室側面6dとの間の空間へ第1ケース用冷気Aが漏れることを抑制する一対の冷気漏れ抑制部9が個別に設けられている。各冷気漏れ抑制部9は、冷却室天井面6bに固定された壁部材91を有している。壁部材91は、冷蔵庫本体2の奥行き方向Yに沿って配置されている。
図8は、図5の壁部材91と冷凍室用上ケース61との位置関係を示す拡大図である。壁部材91は、冷却室天井面6bから第1ケースフランジ612に向けて突出している。また、壁部材91は、第1ケースフランジ612に設定隙間tを介して対向している。
この例では、壁部材91の長手方向に直交する平面で切断したときの壁部材91の断面形状が長方形となっている。壁部材91の肉厚、即ち冷蔵庫本体2の幅方向Xにおける壁部材91の寸法は、1[mm]〜3[mm]の範囲であることが望ましい。しかし、壁部材91の肉厚は、1[mm]〜3[mm]の範囲に限定されない。
各壁部材91は、冷凍室用上ケース61及び冷却室天井面6bのそれぞれよりも柔らかい材料で構成されている。これにより、壁部材91が冷凍室用上ケース61に接触しても、冷凍室用上ケース61の損傷が発生しにくくなる。この例では、各壁部材91が軟質樹脂材料で構成されている。軟質樹脂材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC:polyviniyl chloride)、オレフィン系エラストマ(TPO:Thermoplastic Olefinic Elactomer)、スチレン系エラストマ(SBC:Styrenic Block Copolymer)などが挙げられる。
冷凍室用上ケース61の内部から冷凍室用上ケース61と冷却室側面6dとの間の空間への第1ケース用冷気Aの流れは、各壁部材91によって抑制される。従って、各冷却室側面6dから第1ケース用冷気Aへ熱が移動しにくくなり、各冷却室側面6dから冷凍室6の内部への熱の侵入量が抑制される。
冷凍室用上ケース61の内部から冷凍室用上ケース61と冷却室側面6dとの間の空間への第1ケース用冷気Aの流れは、壁部材91と第1ケースフランジ612との間の設定隙間tが小さいほど抑制される。従って、設定隙間tが0[mm]であることが望ましい。しかし、壁部材91及び冷凍室用上ケース61のそれぞれが樹脂材料で構成されていることから、樹脂材料の寸法公差が±0.5[mm]であることを考慮すると、設定隙間tを0[mm]とすることは不可能である。従って、設定隙間tの下限値は、樹脂材料の寸法公差が±0.5[mm]であることを考慮して、1[mm]とされている。
このような冷蔵庫1では、第1ケースフランジ612と冷却室天井面6bとの間の隙間に冷気漏れ抑制部9が配置されている。このため、冷凍室用上ケース61の内部から冷却室側面6d側への第1ケース用冷気Aの流れを冷気漏れ抑制部9によって抑制することができる。これにより、冷却室側面6dから第1ケース用冷気Aへの熱の移動を抑制することができ、冷蔵庫1の外部の熱が冷却室側面6dから冷凍室6に入ることを抑制することができる。従って、冷凍室6への熱の侵入量を抑制することができ、冷凍室6に対する無駄な冷却を抑制することができる。これにより、冷蔵庫1の省エネ性能の向上を図ることができるとともに、冷凍室6の冷却速度を高めることもできる。このようなことから、冷蔵庫1の冷却効率の向上を図ることができる。
また、冷凍室用下ケース62の開口部の一部は、冷凍室用上ケース61によって覆われている。このため、冷凍室用上ケース61の内部から冷却室側面6d側への第1ケース用冷気Aの流れだけでなく、冷凍室用下ケース62の内部から冷却室側面6d側への第2ケース用冷気Bの流れも抑制することができる。これにより、冷凍室用上ケース61及び冷凍室用下ケース62のそれぞれの内部の温度のばらつきを小さくすることができる。従って、冷凍室6の冷却品質の向上を図ることができる。
また、冷気漏れ抑制部9は、冷蔵庫本体2の奥行き方向Yに沿って配置された壁部材91を有している。また、壁部材91は、冷却室天井面6bに固定されている。さらに、壁部材91は、設定隙間tを介して冷凍室用上ケース61に対向している。このため、冷凍室用上ケース61の内部から冷却室側面6d側への第1ケース用冷気Aの流れを簡単な構成で容易に抑制することができる。
ここで、冷気漏れ抑制部9の効果を確認するために、冷気漏れ抑制部9が適用されている実施の形態1に対応する実施例と、冷気漏れ抑制部9が適用されていない比較例とで、冷凍室6の外部から冷凍室6への熱の侵入量の数値解析を行った。
図9は、この発明の実施の形態1に対応する実施例による冷凍室6の数値解析モデルを示す斜視図である。また、図10は、比較例による冷凍室6の数値解析モデルを示す斜視図である。図9の実施例による数値解析モデルでは、冷却室天井面6bに固定された一対の壁部材91が冷凍室用上ケース61の天井面対向部に設定隙間tを介してそれぞれ対向している。これに対して、図10の比較例による数値解析モデルでは、一対の壁部材91が存在していない。数値解析モデルの他の構成は、実施例と比較例とで同じになっている。
数値解析では、流体境界条件として、第1吹き出し部64及び第2吹き出し部65のそれぞれから吹き出す冷気の速度を実測結果で規定するとともに、冷気戻り部66での圧力を0[Pa]で規定した。
また、熱的境界条件としては、第1吹き出し部64及び第2吹き出し部65のそれぞれから吹き出す冷気の温度を−21[℃]とした。
さらに、冷却室底面6a、冷却室天井面6b、冷却室背面6c及び一対の冷却室側面6dを形成する冷蔵庫外壁部21及び仕切り壁部22の熱通過率[W・m2・K]は、冷蔵庫外壁部21及び仕切り壁部22を構成する真空断熱材及びウレタン断熱材のそれぞれの厚みから得られる熱通過率を設定した。また、扉8の熱通過率[W・m2・K]も、扉8を構成する真空断熱材及びウレタン断熱材のそれぞれの厚みから得られる熱通過率を設定した。ここでは、真空断熱材の熱伝導率λ1を0.002[W/m・K]とし、ウレタン断熱材の熱伝導率λ2を0.02[W/m・K]とした。また、冷蔵庫1の外気の温度は、32[℃]に設定した。
ただし、冷却室底面6aを通過する熱の量は、野菜室7から冷凍室6へ入る熱の量とした。また、冷却室天井面6bを通過する熱の量は、切替室4及び製氷室5のそれぞれから冷凍室6へ入る熱の量とした。さらに、冷却室背面6c、各冷却室側面6d及び扉8の面のそれぞれを通過する熱の量は、冷蔵庫1の外部から冷凍室6へ入る熱の量とした。
また、実施例及び比較例では、冷凍室用上ケース61の天井面対向部と冷却室天井面6bとの間の隙間の寸法を15[mm]とした。実施例では、冷凍室用上ケース61の天井面対向部と壁部材91との間の設定隙間tを5[mm]とした。
図11は、図9の実施例の数値解析による第1ケース用冷気Aの流れの状態を示す流線図である。また、図12は、図10の比較例の数値解析による第1ケース用冷気Aの流れの状態を示す流線図である。図11及び図12を比較すると、図11の実施例では、冷凍室用上ケース61の内部から扉8側及び冷却室側面6d側へ漏れ出す第1ケース用冷気Aの量が図12の比較例と比べて抑制されていることが分かる。
また、上記の条件を設定した実施例及び比較例のそれぞれの数値解析モデルで、冷凍室6への熱の侵入量を算出した。図13は、冷凍室6への熱の侵入量の比を図9の実施例と図10の比較例とで比較したグラフである。なお、図13では、比較例における冷凍室6への熱の侵入量の比を100[%]としている。図13に示すように、実施例における冷凍室6への熱の侵入量の比は、比較例の100[%]に対して94[%]となっている。即ち、実施例では、冷凍室6への熱の侵入量が比較例に対して6[%]低減されている。従って、実施例では、冷凍室6の外部から冷凍室6への熱の侵入量を低減する効果が確認できる。
次に、冷気漏れ抑制部9の効果を確認するために、冷凍室用上ケース61及び冷凍室用下ケース62のそれぞれの温度と、冷蔵庫1の消費電力量とを測定する測定試験を、実施例及び比較例のそれぞれについて実機で行った。
比較例では、冷凍室用上ケース61の天井面対向部と冷却室天井面6bとの間の隙間の寸法を15[mm]として、温度及び消費電力量のそれぞれの測定試験を行った。実施例では、冷凍室用上ケース61の天井側縁部と壁部材91との間の設定隙間tを0[mm]及び10[mm]のそれぞれとした場合について、温度及び消費電力量のそれぞれの測定試験を行った。
また、冷凍室用上ケース61及び冷凍室用下ケース62のそれぞれの温度の測定試験は、JIS規格(JISC9801)に則った温度測定位置で行った。また、冷蔵庫1の外気の温度が32[℃]、冷蔵庫1の外気の湿度が70[%R.H.]の条件で、温度の測定試験を行った。さらに、実施例及び比較例では、定常運転時の冷凍室用上ケース61の温度FUPと、定常運転時の冷凍室用下ケース62の温度TFとの温度差ΔT=(FUP−TF)[K]から、冷凍室用上ケース61及び冷凍室用下ケース62の温度のばらつきを評価した。ここで、冷凍室用上ケース61の温度FUPは、冷凍室用上ケース61での2点の平均温度とした。また、冷凍室用下ケース62の温度TFは、冷凍室用下ケース62における3点の平均温度とした。
図14は、温度及び消費電力量のそれぞれの測定試験結果を実施例及び比較例について示す表である。なお、図14における実施例の測定試験結果については、設定隙間tが0[mm]である場合と、設定隙間tが10[mm]である場合とをそれぞれ示している。
まず、冷凍室用上ケース61及び冷凍室用下ケース62の温度のばらつきについて検討する。実施例及び比較例のそれぞれの測定試験結果の比較は、冷凍室6の平均温度がいずれも−18.6[℃]となる条件で行った。図14を見ると、比較例では、温度差ΔTが1[K]である。これに対して、設定隙間tが0[mm]である場合の実施例では温度差ΔTが0.3[K]となっており、設定隙間tが10[mm]である場合の実施例では温度差ΔTが0.7[K]となっている。従って、設定隙間tが0[mm]及び10[mm]のいずれの実施例でも、温度差ΔTが比較例よりも小さくなっていることが分かる。即ち、冷気漏れ抑制部9の適用によって、冷凍室用上ケース61及び冷凍室用下ケース62の温度のばらつきを小さくすることができることが確認できる。
次に、冷凍室6の冷却速度について検討する。図14を見ると、比較例では、冷蔵庫1の運転時間が88[min]となっている。これに対して、設定隙間tが0[mm]である場合の実施例では冷蔵庫1の運転時間が79[min]となっており、設定隙間tが10[mm]である場合の実施例では冷蔵庫1の運転時間が84[min]となっている。従って、設定隙間tが0[mm]及び10[mm]のいずれの実施例でも、冷蔵庫1の運転時間が比較例よりも短くなっていることが分かる。これにより、実施例での冷凍室6の冷却速度は、比較例の冷凍室6の冷却速度よりも高いことが分かる。従って、冷気漏れ抑制部9の適用によって、冷凍室6の冷却速度を高めることができることが確認できる。
次に、冷蔵庫1の消費電力量について検討する。図14を見ると、設定隙間tが0[mm]である場合の実施例では、冷蔵庫1の消費電力量が比較例と比べて0.3[%]少なくなっている。また、設定隙間tが0[mm]である場合の実施例では、冷蔵庫1の消費電力量が比較例と比べて1.8[%]少なくなっている。従って、設定隙間tが0[mm]及び10[mm]のいずれの実施例でも、冷蔵庫1の消費電力量が比較例よりも少なくなっていることが分かる。これにより、冷気漏れ抑制部9の適用によって、冷凍室6の消費電力量を低減して冷蔵庫1の省エネ性能の向上を図ることができることが確認できる。
このようなことから、設定隙間tを10[mm]以下にすることにより、冷気漏れ抑制部9の適用による効果をより確実に得ることができる。一方、上述したように、設定隙間tの下限値は、壁部材91及び冷凍室用上ケース61のそれぞれの寸法公差の観点から、1[mm]となる。従って、設定隙間tを1[mm]以上、10[mm]以下とすることにより、冷凍室6への熱の侵入をより確実に抑制することができ、冷蔵庫1の省エネ性能の向上及び冷凍室6の冷却品質の向上をより確実に図ることができる。
なお、上記の例では、壁部材91が冷却室天井面6bに固定されている。しかし、冷凍室用上ケース61の天井面対向部である第1ケースフランジ612に壁部材91を固定してもよい。この場合、壁部材91が設定隙間tを介して冷却室天井面6bに対向する。このようにしても、冷凍室用上ケース61の内部から冷却室側面6d側への第1ケース用冷気Aの流れを冷気漏れ抑制部9によって抑制することができる。
また、上記の例では、壁部材91の長手方向に直交する平面で切断したときの壁部材91の断面形状が長方形となっている。しかし、壁部材91の断面形状は、長方形に限定されない。例えば、図15に示すように、壁部材91の断面形状を、先端部が尖った三角形にしてもよい。また、図16に示すように、壁部材91の断面形状を、先端部が丸まった形状にしてもよい。
また、上記の例では、各冷気漏れ抑制部9に含まれる壁部材91の数が1つである。しかし、冷却室天井面6bと第1ケースフランジ612との間の隙間に冷気漏れ抑制部9が収まる範囲であれば、各冷気漏れ抑制部9に含まれる壁部材91の数を複数にしてもよい。この場合、複数の壁部材91は、図17に示すように、互いに間隔をあけて冷蔵庫本体2の幅方向へ並んだ状態で冷却室天井面6bに固定される。このようにすれば、冷凍室用上ケース61の内部から冷却室側面6d側への第1ケース用冷気Aの流れをさらに確実に抑制することができ、冷凍室6への熱の侵入量をさらに確実に低減することができる。
また、各冷気漏れ抑制部9に含まれる壁部材91の数を複数にした場合、複数の壁部材91を第1ケースフランジ612に固定してもよい。この場合、複数の壁部材91は、冷蔵庫本体2の幅方向へ並べられる。
実施の形態2.
図18は、この発明の実施の形態2による冷蔵庫の冷凍室の要部を示す断面図である。各冷気漏れ抑制部9は、冷却室天井面6bに固定された第1壁部材92と、冷凍室用上ケース61の第1ケースフランジ612に固定された第2壁部材93とを複数の壁部材として有している。
第1壁部材92及び第2壁部材93のそれぞれは、冷蔵庫本体2の奥行き方向Yに沿って配置されている。第1壁部材92及び第2壁部材93のそれぞれを構成する材料は、実施の形態1の壁部材91を構成する材料と同様である。また、この例では、第1壁部材92及び第2壁部材93のそれぞれの断面形状が長方形となっている。しかし、第1壁部材92及び第2壁部材93のそれぞれの断面形状は、長方形に限定されず、図15及び図16に示される壁部材91の断面形状と同様にしてもよい。
第1壁部材92及び第2壁部材93は、互いに間隔をあけて冷蔵庫本体2の幅方向Xへ並んでいる。この例では、第2壁部材93が第1壁部材92よりも冷却室側面6dに近い位置に配置されている。
第1壁部材92は、冷却室天井面6bから第1ケースフランジ612に向けて突出している。また、第1壁部材92は、設定隙間t1を介して第1ケースフランジ612に対向している。この例では、設定隙間t1が1[mm]以上、10[mm]以下となっている。
第2壁部材93は、第1ケースフランジ612から冷却室天井面6bに向けて突出している。また、第2壁部材93は、設定隙間t2を介して冷却室天井面6bに対向している。この例では、設定隙間t2が1[mm]以上、10[mm]以下となっている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
このような冷蔵庫1では、冷気漏れ抑制部9が、冷却室天井面6bに固定された第1壁部材92と、冷凍室用上ケース61の第1ケースフランジ612に固定された第2壁部材93とを有している。このため、冷凍室用上ケース61の内部から冷却室側面6d側への第1ケース用冷気Aの流れを第1壁部材92及び第2壁部材93のそれぞれによって抑制することができる。これにより、冷凍室用上ケース61の内部から冷却室側面6d側へ流れる第1ケース用冷気Aの量をさらに確実に抑制することができ、冷凍室6への熱の侵入量をさらに確実に低減することができる。
なお、上記の例では、第2壁部材93が第1壁部材92よりも冷却室側面6dに近い位置に配置されている。しかし、図19に示すように、第2壁部材93よりも冷却室側面6dに近い位置に第2壁部材93を配置してもよい。
また、上記の例では、各冷気漏れ抑制部9に含まれる第1壁部材92の数が1つである。しかし、冷却室天井面6bと第1ケースフランジ612との間の隙間に冷気漏れ抑制部9が収まる範囲であれば、各冷気漏れ抑制部9に含まれる第1壁部材92の数を複数にしてもよい。この場合、複数の第1壁部材92は、互いに間隔をあけて冷蔵庫本体2の幅方向へ並んだ状態で冷却室天井面6bに固定される。
また、上記の例では、各冷気漏れ抑制部9に含まれる第2壁部材93の数が1つである。しかし、冷却室天井面6bと第1ケースフランジ612との間の隙間に冷気漏れ抑制部9が収まる範囲であれば、各冷気漏れ抑制部9に含まれる第2壁部材93の数を複数にしてもよい。この場合、複数の第2壁部材93は、互いに間隔をあけて冷蔵庫本体2の幅方向へ並んだ状態で第1ケースフランジ612に固定される。
また、各上記実施の形態では、冷凍室用下ケース62がレール63に沿って冷蔵庫本体2の奥行き方向Yへスライド可能になっている。しかし、レール63とは別のレールを一対の冷却室側面6dに固定することにより、冷凍室用上ケース61を別のレールに沿って冷蔵庫本体2の奥行き方向Yへスライド可能にしてもよい。このようにすれば、冷凍室用下ケース62とは独立して冷凍室用上ケース61を冷凍室6から引き出し可能にすることができる。
また、各上記実施の形態では、冷凍室用上ケース61及び冷凍室用下ケース62が配置された冷凍室6に冷気漏れ抑制部9が適用されている。しかし、1つの冷凍室用ケースが第1ケースとして配置された冷凍室6に冷気漏れ抑制部9を適用してもよい。この場合、冷凍室用ケースの天井面対向部と冷却室天井面6bとの間の隙間に冷気漏れ抑制部9が設けられる。
また、各上記実施の形態では、冷凍室用上ケース61及び冷凍室用下ケース62が配置された冷凍室6に冷気漏れ抑制部9が適用されている。しかし、冷凍室用上ケース61及び冷凍室用下ケース62以外に他の冷凍室用ケースが冷凍室6に配置されていてもよい。
また、各上記実施の形態では、切替室用ケース41が配置された切替室4に冷気漏れ抑制部9を適用してもよい。この場合、切替室4には、切替室用ケース41が第1ケースとして配置される。また、冷気漏れ抑制部9は、第1ケースとしての切替室用ケース41の天井面対向部と、切替室4の冷却室天井面との間の隙間に設けられる。このようにすれば、切替室4への熱の侵入量を冷気漏れ抑制部9によって抑制することができる。
また、各上記実施の形態では、野菜室用上ケース71及び野菜室用下ケース72が配置された野菜室7に冷気漏れ抑制部9を適用してもよい。この場合、野菜室用上ケース71が第1ケースとして野菜室7に配置され、野菜室用下ケース72が第2ケースとして野菜室7に配置される。また、冷気漏れ抑制部9は、第1ケースとしての野菜室用上ケース71の天井面対向部と、野菜室7の冷却室天井面との間の隙間に設けられる。このようにすれば、野菜室7への熱の侵入量を冷気漏れ抑制部9によって抑制することができる。
この発明による冷蔵庫は、前方へ開口した開口部を有する冷却室が形成されている冷蔵庫本体、冷蔵庫本体に設けられ、冷却室の開口部を開閉可能な扉、及び冷却室に配置されている第1ケースを備え、冷却室の内面は、冷却室底面と、冷却室天井面と、冷蔵庫本体の奥行き方向で冷却室の開口部に対向する冷却室背面と、冷蔵庫本体の幅方向で互いに対向する一対の冷却室側面とを有しており、第1ケースには、上方へ開口した開口部が設けられており、第1ケースは、第1ケースの開口部の周囲で冷却室天井面に対向する天井面対向部を有しており、冷却室背面には、第1ケースの内部へ第1ケース用冷気を吹き出す第1吹き出し部と、第1ケースの内部から流出した第1ケース用冷気が導かれる冷気戻り部とが設けられており、天井面対向部と冷却室天井面との間の隙間には、第1ケースの内部から第1ケースと冷却室側面との間の空間へ第1ケース用冷気が漏れることを抑制する冷気漏れ抑制部が設けられており、冷気漏れ抑制部は、冷蔵庫本体の奥行き方向に沿ってそれぞれ配置された第1壁部材及び第2壁部材を複数の壁部材として有しており、第1壁部材は、冷却室天井面に固定されているとともに、設定隙間を介して天井面対向部に対向しており、第2壁部材は、天井面対向部に固定されているとともに、設定隙間を介して冷却室天井面に対向しており、第1壁部材及び第2壁部材は、冷蔵庫本体の幅方向へ並んでいる。