JPWO2020158924A1 - 母児間免疫寛容を誘導する方法 - Google Patents

母児間免疫寛容を誘導する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬を提供する。

Description

本願は、母児間免疫寛容を誘導する方法に関する。
近年、幹細胞を移植する移植治療が注目されている。また、幹細胞が免疫寛容を誘導することが知られており、例えば、ヒト臍帯の脈管周囲細胞(間葉系幹細胞)を移植片に接触させることで移植片の免疫応答性を抑制する方法が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、依然として、ドナーから患者(レシピエント)への細胞移植や臓器移植においては、免疫応答は深刻な問題となる事が多い。ある種の先天性疾患に対しても、細胞治療は有効な選択肢の1つではあるが、患者が本来有していないタンパク質や細胞を導入するため、往々にして免疫応答が生じる。つまり、治療薬が、抗原となってしまうのである。患者に強い免疫応答が生じると、治療を断念せざるを得ない。
一方、胎児診断技術の向上により、妊娠中の経過観察では胎児死亡に至る疾患や、出生後の治療では、生存が見込めないか極めて重大な障害を残す先天性疾患が、胎児期に発見されるようになってきている。
胎児期においては、免疫が確立されていないため、比較的他人の組織や細胞が受け入れられ易く、胎児への骨髄細胞移植による治療が提案されている(非特許文献3参照)。また、先天性疾患の治療法の1つとして、胎児期幹細胞移植に期待が寄せられており、例えば、鎌状赤血球症やサラセミアなどの異常ヘモグロビン症を適応症として母親由来の造血幹細胞を移植することが検討されている(非特許文献1参照)。また、骨形成不全症の胎児への間葉系幹細胞移植による治療が報告されている(非特許文献2参照)。
胎児期に移植された幹細胞は比較的生着しやすく、当該幹細胞やこれに基づく産生物質に対する免疫寛容が誘導され得ると考えられている。胎児期の治療によっても、疾患の完全寛解が困難である場合には、出生後に継続した治療が必要となるが、胎児期の移植治療に基づき免疫寛容が誘導されれば、同じ細胞移植による治療を継続して行う事ができ、患者の予後を良好にすることができる。
Derderian SC, Jeanty C, Walters MC, Vichinsky E, MacKenzie TC. In utero hematopoietic cell transplantation for hemoglobinopathies. Front Pharmacol. 2015 Jan 12;5:278. doi: 10.3389/fphar.2014.00278. eCollection 2014. Review.PMID: 25628564 Le Blanc, K.et al. Fetal Mesenchymal Stem-Cell Engraftment in Bone after In Utero Transplantation in a Patient with Severe Osteogenesis Imperfecta, Transplantation 79, p1607-1614 (2005) Takenao Chino, et al. Bone Marrow Cell Transfer into Fetal Circulation Can Ameliorate Genetic Skin Diseases by Providing Fibroblasts to the Skin and Inducing Immune Tolerance, The American Journal of Pathology, Vol. 173, No. 3, September 2008
特表2009−536163
本願は、非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する子における免疫寛容を誘導するための医薬を提供することを目的とする。
本発明者らは、間葉系幹細胞でのみGFPを発現するメスのマウスとオスの野生型マウスとを交配した。妊娠した母マウスの末梢血に間葉系幹細胞を動員するために、妊娠中の母マウスに対してHMGB1ペプチドを投与した。出生したGFPを発現しない子マウスに対して、全身の細胞でGFPを発現するGFPTgマウスの皮膚を移植した。その結果、子マウスでは、移植片の生着率が高いことが判明し、非遺伝母由来抗原であるGFPに対する免疫寛容が誘導されていることが示された。かかる知見に基づき、子を懐胎している母親の血中の幹細胞数を増加させることにより、該幹細胞に由来する該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬を提供する。
すなわち、本願は以下を提供する。
〔0〕
子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬であって、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質を含む、医薬。
〔1〕
子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬であって、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質を含み、該母親の骨髄由来幹細胞が該非遺伝母由来抗原を有する、医薬。
〔2〕
該医薬が該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための他の医薬と組み合わせて用いるための医薬である、〔1〕に記載の医薬。
〔2−a〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、該母親への投与により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔2〕に記載の医薬:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔2−b〕
(1)子を懐胎している母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)該母親に対する
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与により、
該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための組み合わせ医薬であって、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ医薬。
〔2−c〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔2〕に記載の医薬:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔2−d〕
(1)子を懐胎している母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)胎児期の該子に対する
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための組み合わせ医薬であって、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ医薬。
〔2−e〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、新生児期の子への移植により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔2〕に記載の医薬:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔2−f〕
(1)子を懐胎している母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)新生児期の該子に対する
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための組み合わせ医薬であって、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ医薬。
〔3〕
該子を懐胎している母親が、疾患を有する子を懐胎している母親であり、該医薬が該子における該疾患を治療するための医薬と組み合わせて用いるための医薬である、〔1〕に記載の医薬。
〔4〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔3〕に記載の医薬:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔4−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)胎児期の該子に対する
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬であって、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ医薬。
〔5〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔3〕に記載の医薬。
〔5−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)胎児期の該子に対する該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬であって、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ医薬。
〔6〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔3〕に記載の医薬:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(c)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
〔6−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)新生児期以降の該子に対する
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、および、
(c)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の移植により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬であって、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む組み合わせ医薬。
〔7〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔3〕に記載の医薬:
(a)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(b)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
〔7−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)新生児期以降の該子に対する
(a)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、および、
(b)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器
から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の移植により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬であって、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む組み合わせ医薬。
〔8〕
該子における該疾患を治療するための医薬が、該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質を含む、新生児期以降の該子への投与により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔3〕に記載の医薬。
〔8−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)新生児期以降の該子に対する該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質の投与により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬であって、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離されたタンパク質を含む組み合わせ医薬。
〔9〕
子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬であって、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む医薬:
(a)子を懐胎している母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔10〕
該医薬が該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための他の医薬と組み合わせて用いるための医薬である、〔9〕に記載の医薬。
〔10−a〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔10〕に記載の医薬:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔10−b〕
(1)子を懐胎している母親に対する以下の(a)および(b)から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)胎児期の該子に対する以下の(a)および(b)から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための組み合わせ医薬であって、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ医薬:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔10−c〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、新生児期の子への移植により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔10〕に記載の医薬:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔10−d〕
(1)子を懐胎している母親に対する以下の(a)および(b)から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)新生児期の該子に対する以下の(a)〜(c)から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための組み合わせ医薬であって、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ医薬:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔11〕
該子を懐胎している母親が、疾患を有する子を懐胎している母親であり、該医薬が該子における該疾患を治療するための医薬と組み合わせて用いるための医薬である、〔9〕に記載の医薬。
〔12〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔11〕に記載の医薬:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔12−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に対する
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)胎児期の該子に対する
(i)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(ii)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬であって、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ医薬。
〔13〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔11〕に記載の医薬。
〔13−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親に対する
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)胎児期の該子に対する該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬であって、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ医薬。
〔14〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔11〕に記載の医薬:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(c)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
〔14−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に対する
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)新生児期以降の該子に対する
(i)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、
(ii)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、および、
(iii)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の移植により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬であって、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む組み合わせ医薬。
〔15〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔11〕に記載の医薬:
(a)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(b)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
〔15−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親に対する
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)新生児期以降の該子に対する
(i)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、および、
(ii)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の移植により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬であって、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む組み合わせ医薬。
〔16〕
該子における該疾患を治療するための医薬が、該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質を含む、新生児期以降の該子への投与により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔11〕に記載の医薬。
〔16−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している母親に対する
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)新生児期以降の該子に対する該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質の投与により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬であって、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離されたタンパク質を含む組み合わせ医薬。
〔17〕
該疾患が、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容が誘導される結果として治療可能となる疾患である、〔3〕から〔8〕および〔11〕から〔16〕のいずれかに記載の医薬。
〔18〕
該疾患が、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫反応が抑制される結果として治療可能となる疾患である、〔3〕から〔8〕および〔11〕から〔16〕のいずれかに記載の医薬。
〔19〕
該幹細胞が、間葉系幹細胞または造血系幹細胞である、〔1〕から〔18〕のいずれかに記載の医薬。
〔20〕
該幹細胞が、間葉系幹細胞である、〔1〕から〔18〕のいずれかに記載の医薬。
〔21〕
子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬であって、間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質を含み、該母親の骨髄由来幹細胞が該非遺伝母由来抗原を有する、医薬。
〔22〕
子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬であって、以下から選択される単離された間葉系幹細胞を含む医薬:
(a)子を懐胎している母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された間葉系幹細胞;および
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された間葉系幹細胞。
〔A0〕
子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導する方法であって、
子を懐胎している母親に対して、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の有効量を投与する工程を含む方法。
〔A1〕
子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導する方法であって、
子を懐胎している母親に対して、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の有効量を投与する工程であって、該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する工程を含む方法。
〔A2〕
該物質と該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための他の医薬とを組み合わせて用いる工程をさらに含む、〔A1〕に記載の方法。
〔A2−a〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、該母親への投与により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔A2〕に記載の方法:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔A2−b〕
子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導する方法であって、
(1)子を懐胎している母親に対して、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の有効量を投与する工程であって、該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する工程、および、
(2)該母親に対して、
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の有効量を投与する工程を含む方法。
〔A2−c〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔A2〕に記載の方法:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔A2−d〕
子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導する方法であって、
(1)子を懐胎している母親に対して、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の有効量を投与する工程であって、該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する工程、および、
(2)胎児期の該子に対して、
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の有効量を移植する工程を含む方法。
〔A2−e〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、新生児期の子への移植により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔A2〕に記載の方法:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔A2−f〕
子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導する方法であって、
(1)子を懐胎している母親に対して、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の有効量を投与する工程であって、該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する工程、および、
(2)新生児期の該子に対して、
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の有効量を移植する工程を含む方法。
〔A3〕
該子を懐胎している母親が、疾患を有する子を懐胎している母親であり、該物質と該子における該疾患を治療するための医薬とを組み合わせて用いる工程をさらに含む、〔A1〕に記載の方法。
〔A4〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔A3〕に記載の方法:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔A4−a〕
子における疾患を治療する方法であって、
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に対して、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の有効量を投与する工程であって、該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する工程、および、
(2)胎児期の該子に対して、
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の有効量を移植する工程を含む方法。
〔A5〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔A3〕に記載の方法。
〔A5−a〕
子における疾患を治療する方法であって、
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親に対して、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の有効量を投与する工程であって、該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する工程、および、
(2)胎児期の該子に対する該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞の有効量を移植する工程を含む方法。
〔A6〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔A3〕に記載の方法:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(c)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
〔A6−a〕
子における疾患を治療する方法であって、
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に対して、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の有効量を投与する工程であって、該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する工程、および、
(2)新生児期以降の該子に対して、
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、および、
(c)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の有効量を移植する工程を含む方法。
〔A7〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔A3〕に記載の方法:
(a)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(b)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
〔A7−a〕
子における疾患を治療する方法であって、
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親に対して、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の有効量を投与する工程であって、該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する工程、および、
(2)新生児期以降の該子に対して、
(a)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、および、
(b)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器
から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の有効量を移植する工程を含む方法。
〔A8〕
該子における該疾患を治療するための医薬が、該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質を含む、新生児期以降の該子への投与により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔A3〕に記載の方法。
〔A8−a〕
子における疾患を治療する方法であって、
(1)疾患を有する子を懐胎している母親に対して、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の有効量を投与する工程であって、該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する工程、および、
(2)新生児期以降の該子に対して、該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質の有効量を投与する工程を含む方法。
〔A9〕
子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導する方法であって、
子を懐胎している母親に対して、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞の有効量を投与する工程を含む方法:
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔A10〕
該単離された骨髄由来幹細胞と該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための他の医薬とを組み合わせて用いる工程をさらに含む、〔A9〕に記載の方法。
〔A10−a〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔A10〕に記載の方法:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔A10−b〕
子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導する方法であって、
(1)子を懐胎している母親に対して、以下の(a)および(b)から選択される単離された骨髄由来幹細胞の有効量を投与する工程、および、
(2)胎児期の該子に対して、以下の(a)および(b)から選択される単離された骨髄由来幹細胞の有効量を移植する工程を含む方法:
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔A10−c〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、新生児期の子への移植により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔A10〕に記載の方法:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔A10−d〕
子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導する方法であって、
(1)子を懐胎している母親に対して、以下の(a)および(b)から選択される単離された骨髄由来幹細胞の有効量を投与する工程、および、
(2)新生児期の該子に対して、以下の(a)〜(c)から選択される単離された骨髄由来幹細胞の有効量を移植する工程を含む方法:
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔A11〕
該子を懐胎している母親が、疾患を有する子を懐胎している母親であり、該単離された骨髄由来幹細胞と該子における該疾患を治療するための医薬とを組み合わせて用いる工程をさらに含む、〔A9〕に記載の方法。
〔A12〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔A11〕に記載の方法:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔A12−a〕
子における疾患を治療する方法であって、
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に対して、
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の有効量を投与する工程、および、
(2)胎児期の該子に対して、
(i)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(ii)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の有効量を移植する工程を含む方法。
〔A13〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔A11〕に記載の方法。
〔A13−a〕
子における疾患を治療する方法であって、
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親に対して、
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の有効量を投与する工程、および、
(2)胎児期の該子に対して、該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞の有効量を移植する工程を含む方法。
〔A14〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔A11〕に記載の方法:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(c)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
〔A14−a〕
子における疾患を治療する方法であって、
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に対して、
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の有効量を投与する工程、および、
(2)新生児期以降の該子に対して、
(i)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、
(ii)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、および、
(iii)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を移植する工程を含む方法。
〔A15〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔A11〕に記載の方法:
(a)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(b)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
〔A15−a〕
子における疾患を治療する方法であって、
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親に対して、
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の有効量を投与する工程、および、
(2)新生児期以降の該子に対して、
(i)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、および、
(ii)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を移植する工程を含む方法。
〔A16〕
該子における該疾患を治療するための医薬が、該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質を含む、新生児期以降の該子への投与により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔A11〕に記載の方法。
〔A16−a〕
子における疾患を治療する方法であって、
(1)疾患を有する子を懐胎している母親に対して、
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の有効量を投与する工程、および、
(2)新生児期以降の該子に対して、該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質を投与する工程を含む方法。
〔A17〕
該疾患が、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容が誘導される結果として治療可能となる疾患である、〔A3〕から〔A8〕および〔A11〕から〔A16〕のいずれかに記載の方法。
〔A18〕
該疾患が、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫反応が抑制される結果として治療可能となる疾患である、〔A3〕から〔A8〕および〔A11〕から〔A16〕のいずれかに記載の方法。
〔A19〕
該幹細胞が、間葉系幹細胞または造血系幹細胞である、〔A1〕から〔A18〕のいずれかに記載の方法。
〔A20〕
該幹細胞が、間葉系幹細胞である、〔A1〕から〔A18〕のいずれかに記載の方法。
〔A21〕
子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導する方法であって、
子を懐胎している母親に対して、間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の有効量を投与する工程であって、該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する工程を含む方法。
〔A22〕
子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導する方法であって、
子を懐胎している母親に対して、以下から選択される単離された間葉系幹細胞の有効量を投与する工程を含む方法:
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された間葉系幹細胞;および
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された間葉系幹細胞。
〔B0〕
子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する、物質。
〔B1〕
子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質であって、該母親の骨髄由来幹細胞が該非遺伝母由来抗原を有する、物質。
〔B2〕
該物質が該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための他の医薬と組み合わせて用いるための物質である、〔B1〕に記載の物質。
〔B2−a〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、該母親への投与により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔B2〕に記載の物質:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔B2−b〕
(1)子を懐胎している母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)該母親に対する
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与により、
該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ物。
〔B2−c〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔B2〕に記載の物質:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔B2−d〕
(1)子を懐胎している母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)胎児期の該子に対する
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ物。
〔B2−e〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、新生児期の子への移植により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔B2〕に記載の物質:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔B2−f〕
(1)子を懐胎している母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)新生児期の該子に対する
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ物。
〔B3〕
該子を懐胎している母親が、疾患を有する子を懐胎している母親であり、該物質が該子における該疾患を治療するための医薬と組み合わせて用いるための物質である、〔B1〕に記載の物質。
〔B4〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔B3〕に記載の物質:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔B4−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)胎児期の該子に対する
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子における該疾患を治療することに用いるための、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ物。
〔B5〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔B3〕に記載の物質。
〔B5−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)胎児期の該子に対する該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子における該疾患を治療することに用いるための、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ物。
〔B6〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔B3〕に記載の物質:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(c)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
〔B6−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)新生児期以降の該子に対する
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、および、
(c)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の移植により、
該子における該疾患を治療することに用いるための、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む組み合わせ物。
〔B7〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔B3〕に記載の物質:
(a)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(b)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
〔B7−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)新生児期以降の該子に対する
(a)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、および、
(b)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器
から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の移植により、
該子における該疾患を治療することに用いるための、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む組み合わせ物。
〔B8〕
該子における該疾患を治療するための医薬が、該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質を含む、新生児期以降の該子への投与により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔B3〕に記載の物質。
〔B8−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)新生児期以降の該子に対する該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質の投与により、
該子における該疾患を治療することに用いるための、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離されたタンパク質を含む組み合わせ物。
〔B9〕
子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞:
(a)子を懐胎している母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔B10〕
該細胞が該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための他の医薬と組み合わせて用いるための細胞である、〔B9〕に記載の細胞。
〔B10−a〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔B10〕に記載の細胞:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔B10−b〕
(1)子を懐胎している母親に対する以下の(a)および(b)から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)胎児期の該子に対する以下の(a)および(b)から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ物:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔B10−c〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、新生児期の子への移植により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔B10〕に記載の細胞:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔B10−d〕
(1)子を懐胎している母親に対する以下の(a)および(b)から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)新生児期の該子に対する以下の(a)〜(c)から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ物:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔B11〕
該子を懐胎している母親が、疾患を有する子を懐胎している母親であり、該医薬が該子における該疾患を治療するための医薬と組み合わせて用いるための医薬である、〔B9〕に記載の細胞。
〔B12〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔B11〕に記載の細胞:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔B12−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に対する
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)胎児期の該子に対する
(i)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(ii)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子における該疾患を治療することに用いるための、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ物。
〔B13〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔B11〕に記載の細胞。
〔B13−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親に対する
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)胎児期の該子に対する該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子における該疾患を治療することに用いるための、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞を含む組み合わせ物。
〔B14〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔B11〕に記載の細胞:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(c)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
〔B14−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に対する
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)新生児期以降の該子に対する
(i)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、
(ii)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、および、
(iii)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の移植により、
該子における該疾患を治療することに用いるための、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む組み合わせ物。
〔B15〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔B11〕に記載の細胞:
(a)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(b)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
〔B15−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親に対する
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)新生児期以降の該子に対する
(i)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、および、
(ii)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の移植により、
該子における該疾患を治療することに用いるための、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む組み合わせ物。
〔B16〕
該子における該疾患を治療するための医薬が、該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質を含む、新生児期以降の該子への投与により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔B11〕に記載の細胞。
〔B16−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している母親に対する
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)新生児期以降の該子に対する該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質の投与により、
該子における該疾患を治療することに用いるための、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離されたタンパク質を含む組み合わせ物。
〔B17〕
該疾患が、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容が誘導される結果として治療可能となる疾患である、〔B3〕から〔B8〕および〔B11〕から〔B16〕のいずれかに記載の細胞。
〔B18〕
該疾患が、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫反応が抑制される結果として治療可能となる疾患である、〔B3〕から〔B8〕および〔B11〕から〔B16〕のいずれかに記載の細胞。
〔B19〕
該幹細胞が、間葉系幹細胞または造血系幹細胞である、〔B1〕から〔B18〕のいずれかに記載の細胞。
〔B20〕
該幹細胞が、間葉系幹細胞である、〔B1〕から〔B18〕のいずれかに記載の細胞。
〔B21〕
子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための、間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質であって、該母親の骨髄由来幹細胞が該非遺伝母由来抗原を有する、物質。
〔B22〕
子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための、以下から選択される単離された間葉系幹細胞:
(a)子を懐胎している母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された間葉系幹細胞;および
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された間葉系幹細胞。
〔C0〕
子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬の製造における、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の使用。
〔C1〕
子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬の製造における、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の使用であって、該母親の骨髄由来幹細胞が該非遺伝母由来抗原を有する、使用。
〔C2〕
該医薬が該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための他の医薬と組み合わせて用いるための医薬である、〔C1〕に記載の使用。
〔C2−a〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、該母親への投与により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔C2〕に記載の使用:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔C2−b〕
(1)子を懐胎している母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)該母親に対する
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与により、
該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための組み合わせ医薬の製造における、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞の使用。
〔C2−c〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔C2〕に記載の使用:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔C2−d〕
(1)子を懐胎している母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)胎児期の該子に対する
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための組み合わせ医薬の製造における、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞の使用。
〔C2−e〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、新生児期の子への移植により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔C2〕に記載の使用:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔C2−f〕
(1)子を懐胎している母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)新生児期の該子に対する
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための組み合わせ医薬の製造における、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞の使用。
〔C3〕
該子を懐胎している母親が、疾患を有する子を懐胎している母親であり、該医薬が該子における該疾患を治療するための医薬と組み合わせて用いるための医薬である、〔C1〕に記載の使用。
〔C4〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔C3〕に記載の使用:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔C4−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)胎児期の該子に対する
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬の製造における、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞の使用。
〔C5〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔C3〕に記載の使用。
〔C5−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)胎児期の該子に対する該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬の製造における、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞の使用。
〔C6〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔C3〕に記載の使用:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(c)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
〔C6−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)新生児期以降の該子に対する
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、および、
(c)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の移植により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬の製造における、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の使用。
〔C7〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔C3〕に記載の使用:
(a)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(b)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
〔C7−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)新生児期以降の該子に対する
(a)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、および、
(b)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器
から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の移植により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬の製造における、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の使用。
〔C8〕
該子における該疾患を治療するための医薬が、該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質を含む、新生児期以降の該子への投与により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔C3〕に記載の使用。
〔C8−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している母親に対する骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の投与、ここで該母親の骨髄由来幹細胞が該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、および、
(2)新生児期以降の該子に対する該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質の投与により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬の製造における、(1)に規定される物質および(2)に規定される単離されたタンパク質の使用。
〔C9〕
子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬の製造における、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む使用:
(a)子を懐胎している母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔C10〕
該医薬が該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための他の医薬と組み合わせて用いるための医薬である、〔C9〕に記載の使用。
〔C10−a〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔C10〕に記載の使用:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔C10−b〕
(1)子を懐胎している母親に対する以下の(a)および(b)から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)胎児期の該子に対する以下の(a)および(b)から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための組み合わせ医薬の製造における、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞の使用:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔C10−c〕
該他の医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、新生児期の子への移植により、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬である、〔C10〕に記載の使用:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔C10−d〕
(1)子を懐胎している母親に対する以下の(a)および(b)から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)新生児期の該子に対する以下の(a)〜(c)から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための組み合わせ医薬の製造における、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞の使用:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔C11〕
該子を懐胎している母親が、疾患を有する子を懐胎している母親であり、該医薬が該子における該疾患を治療するための医薬と組み合わせて用いるための医薬である、〔C9〕に記載の使用。
〔C12〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔C11〕に記載の使用:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
〔C12−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に対する
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)胎児期の該子に対する
(i)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(ii)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬の製造における、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞の使用。
〔C13〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔C11〕に記載の使用。
〔C13−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親に対する
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)胎児期の該子に対する該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞の移植により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬の製造における、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞の使用。
〔C14〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔C11〕に記載の使用:
(a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(c)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
〔C14−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に対する
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)新生児期以降の該子に対する
(i)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、
(ii)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、および、
(iii)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の移植により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬の製造における、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の使用。
〔C15〕
該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔C11〕に記載の使用:
(a)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(b)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
〔C15−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親に対する
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)新生児期以降の該子に対する
(i)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器、および、
(ii)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の移植により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬の製造における、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器の使用。
〔C16〕
該子における該疾患を治療するための医薬が、該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質を含む、新生児期以降の該子への投与により、該子における該疾患を治療するための医薬である、〔C11〕に記載の使用。
〔C16−a〕
(1)疾患を有する子を懐胎している母親に対する
(a)該母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞の投与、および、
(2)新生児期以降の該子に対する該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質の投与により、
該子における該疾患を治療するための組み合わせ医薬の製造における、(1)に規定される単離された骨髄由来幹細胞および(2)に規定される単離されたタンパク質の使用。
〔C17〕
該疾患が、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容が誘導される結果として治療可能となる疾患である、〔C3〕から〔C8〕および〔C11〕から〔C16〕のいずれかに記載の使用。
〔C18〕
該疾患が、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫反応が抑制される結果として治療可能となる疾患である、〔C3〕から〔C8〕および〔C11〕から〔C16〕のいずれかに記載の使用。
〔C19〕
該幹細胞が、間葉系幹細胞または造血系幹細胞である、〔C1〕から〔C18〕のいずれかに記載の使用。
〔C20〕
該幹細胞が、間葉系幹細胞である、〔C1〕から〔C18〕のいずれかに記載の使用。
〔C21〕
子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬の製造における、間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質の使用であって、該母親の骨髄由来幹細胞が該非遺伝母由来抗原を有する、使用。
〔C22〕
子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬の製造における、以下から選択される単離された間葉系幹細胞の使用:
(a)子を懐胎している母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された間葉系幹細胞;および
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された間葉系幹細胞。
実施例1において細胞移植を行ったマウスの抗GFP抗体産生量をELISAにて測定した結果を示したグラフである。 実施例1において細胞移植を行ったマウスの免疫応答をELISPOTにて評価した結果を示したグラフである。 実施例2において細胞移植を行ったマウスの抗GFP抗体産生量をELISAにて測定した結果を示したグラフである。 実施例2において細胞移植を行ったマウスの免疫応答をELISPOTにて評価した結果を示したグラフである。 実施例3におけるPDGFRaKIマウスを用いたスキングラフト実験結果を示した図である。 実施例4におけるHMGB1投与マウスの子マウスのスキングラフト実験結果を示した図である。 生理食塩水またはペプチドの投与14時間後の末梢血を培養して得られたコロニーの数をプロットした図である。コロニー数は、採取した末梢血1mLあたりに換算した値として示した。横棒は長いものが平均値、短いものが標準偏差を表す。 生理食塩水またはペプチドの投与14時間後の末梢血を培養して得られたコロニーの数をプロットした図である。コロニー数は、採取した末梢血1mLあたりに換算した値として示した。横棒は長いものが平均値、短いものが標準偏差を表す。 生理食塩水またはペプチドの投与16時間後の末梢血を培養して得られたコロニーの数をプロットした図である。コロニー数は、マウス1匹から採取した末梢血量(約800μL)あたりの値として示した。横棒は長いものが平均値、短いものが標準偏差を表す。 生理食塩水またはペプチドの投与24時間後の末梢血を培養して得られたコロニーの数をプロットした図である。コロニー数は、マウス1匹から採取した末梢血量(約800μL)あたりの値として示した。横棒は長いものが平均値、短いものが標準偏差を表す。 生理食塩水またはペプチドの投与14時間後の末梢血を培養して得られたコロニーの数をプロットした図である。グラフ中、「saline」が対照群、「1r10」がペプチド1r10投与群をそれぞれ示す。コロニー数は、マウス1匹から採取した末梢血量(約800μL)あたりの値として示した。横棒は長いものが平均値、短いものが標準偏差を表す。
本願は、子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬であって、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質を含み、該母親の骨髄由来幹細胞が該非遺伝母由来抗原を有する、医薬(以下「第1の医薬」と称する)を提供する。
また本願は、子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬であって、
(a)子を懐胎している母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む医薬(以下「第2の医薬」と称する)を提供する。
第1または第2の医薬の作用機序としては、母親に投与された上記物質により末梢血に動員された母親の骨髄由来幹細胞、または、母親に投与された上記単離された骨髄由来幹細胞が、経胎盤的に母親から胎生期(例えば胎芽期または胎児期)の子へ移行して、骨髄由来幹細胞またはその系譜細胞(系統細胞)に由来する非遺伝母由来抗原に子が曝露され、非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する免疫寛容が子において誘導される機序が考えられるが、これに限定されるものではない。
第1または第2の医薬には、母体子宮内の胎児に外科的にアクセスし、胎児の臍帯静脈に幹細胞を注入するか、胎児を母体内から取り出して処置を行った後、母体内に戻すといった極めて高度で侵襲的な手技を要し、母体への負担も大きく、母子共に危険を伴う、胎児期の細胞移植のような問題がない。
本願において、子において免疫寛容を誘導するのに十分な量(すなわち有効量)の上記物質または上記単離された骨髄由来幹細胞が、母親へ投与される。該物質もしくは該単離された骨髄由来幹細胞またはそれを含む医薬の母親への投与方法としては、血管内投与(動脈内投与、静脈内投与等)、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与などが挙げられるが、これらに限定されない。また、該物質もしくは該単離された骨髄由来幹細胞またはそれを含む医薬を注射投与、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などによって全身的に投与できる。
なお、母親へ投与される医薬が第1の医薬である場合には、上記投与方法以外に、経口投与、経鼻投与、経肺投与、経皮投与などが挙げられ、局部的な注射投与(例えば、皮膚表面、眼球あるいは眼瞼結膜、鼻腔粘膜、口腔内および消化管粘膜、膣・子宮内粘膜、または損傷部位など)も選択できる。
該物質または該単離された骨髄由来幹細胞の母親への投与前に、母親および子の細胞を検査し、非遺伝母由来抗原の有無の確認や非遺伝母由来抗原の特定を行うことができる。子の細胞は受精卵であってもよい。子の検査方法としては、一般的な出生前診断の手法が適用でき、胎盤の絨毛組織を採取して調べる絨毛検査、胎児血液を採って調べる胎児血検査、母末梢血中に混在する胎児由来細胞検査などが挙げられる。かかる検査に基づく子の遺伝子解析と、母親の遺伝子解析結果とを比較することで、子にとっての非遺伝母由来抗原を特定できる。なお、本願において、非遺伝母由来抗原の特定は必須ではない。
非遺伝母由来抗原は、母親の骨髄由来幹細胞、または、単離された骨髄由来幹細胞に存在すればよく、それが発現するタイミングに制限はない。また、好適には、非遺伝母由来抗原は、母親の骨髄由来幹細胞、または、単離された骨髄由来幹細胞に発現している。
本願において、非遺伝母由来抗原とは、母親から子へ遺伝しかなかった遺伝子の遺伝子産物(タンパク質抗原)およびその産物により二次的に産生される抗原(ペプチド、糖鎖、脂質抗原など、抗原となり得るあらゆる生体内物質)を意味する。このような非遺伝母由来抗原には、非遺伝母由来MHC抗原(ヒトでは非遺伝母由来HLA抗原)や、非遺伝母由来非主要組織適合性抗原、母親では発現する遺伝子産物のうち、遺伝子変異や遺伝子欠損により、子において産生不能となった、または、産生可能であるけれども構造が変化した遺伝子産物などが例示できる。
本願における非遺伝母由来抗原には、例えばCOL7A1遺伝子変異によりVII型コラーゲンが子において欠損した場合における非遺伝母由来VII型コラーゲン抗原、COL1A1またはCOL1A2遺伝子変異によりI型コラーゲンが子において欠損した場合における非遺伝母由来I型コラーゲン抗原、DMD遺伝子の変異によりジストロフィンタンパク質が子において欠損した場合における非遺伝母由来ジストロフィンタンパク質抗原などが挙げられるが、これらに限定されない。
本願医薬によって免疫寛容が誘導される非遺伝母由来抗原は、ある1つの非遺伝母由来抗原(a non-inherited maternal antigen: NIMA)であってもよいし、複数の非遺伝母由来抗原(non-inherited maternal antigens: NIMAs)であってもよい。ここで、「ある1つ(a)」という用語は、「少なくともある1つ(at least a)」を意味し得る。かかる観点より、本願医薬における非遺伝母由来抗原は、最も広い意味として解釈されるべきである。
本願において、非遺伝母由来抗原と同一の抗原とは、非遺伝母由来抗原と同一のものとして生体内において認識される抗原を意味する。
非遺伝母由来抗原と同一の抗原としては、タンパク質抗原、ペプチド、糖鎖、脂質抗原など、抗原となり得るあらゆる生体内物質が挙げられるが、これらに限定されない。
子における免疫寛容の誘導には、免疫寛容が生じていない状態を免疫寛容が生じている状態にすることだけでなく、免疫寛容が生じている状態を維持する場合や既に生じている免疫寛容を促進する場合も含まれる。
子において、非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する免疫寛容が誘導されたか否かは、当該抗原移植後に生じる移植局所の発赤・腫脹などの炎症反応、発熱、血中サイトカインの上昇、CRPの上昇などの全身性炎症反応、移植片対宿主反応などにより評価できる。また、子において抗原となったものに対する抗体を検出することで評価することができる。
本願における懐胎には、代理懐胎も含まれる。本願においては、代理母の骨髄由来幹細胞は、子にとっての抗原(例えば非遺伝母由来抗原と同一の抗原)を有する。
本願において、母親に由来する単離された骨髄由来幹細胞は、母親が子を懐胎した後で採取されたものに限らず、母親が子を懐胎する前に採取されたものでもよい。
本願において、単離された骨髄由来幹細胞は、非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原を有するように、人為的に改変された細胞であってもよい。これにより、本来、非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原を有さない単離された骨髄由来幹細胞が、当該抗原を有するようになる。
そのような改変方法としては、非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原をコードする遺伝子を細胞に導入する公知の方法を適宜選択して用いる事ができ、例えば、CRISPRシステム(例えば、CRISPR/Cas9、CRISPR/Cpf1)、TALEN、ZFNなどのゲノム編集による方法や、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターによる方法を用いる事ができるが、これらに限定されない。なお、遺伝子は細胞のゲノムに導入され恒久的に発現することが望ましいが、ゲノムに取り込まれず細胞質内に留まって遺伝子を中長期的に発現するセンダイウイルスベクターや、エピゾーマルベクターを用いてもよい。エピゾーマルベクターの細胞への導入には電気穿孔法を使用してもよい。
非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞は、非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原を発現している単離された骨髄由来幹細胞であってもよい。
本願において、「骨髄幹細胞」とは、骨髄内に存在する幹細胞である。一方、「骨髄由来幹細胞」とは、骨髄から骨髄外に動員された骨髄幹細胞である。
本願における単離された骨髄由来幹細胞に関して、例えば、「母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞」という用語は、「母親から単離され、かつ、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する骨髄由来幹細胞」と表現することもできる。
本願における母親および子は、胎生動物であれば特に制限はされない。胎生動物としては、ヒト又は非ヒト動物等が挙げられ、例えば、ヒト、マウス、ラット、サル、ブタ、イヌ、ウサギ、ハムスター、モルモット、ウマ、ヒツジ、クジラ等の哺乳動物が例示できるが、これらに限定されるものではない。
本願における「医薬」という用語は、「薬剤」、「医薬組成物」または「薬学的組成物」と互換的に用いられる。
本願において、第1または第2の医薬は、非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する子における免疫寛容を誘導するための他の医薬と組み合わせて用いることもできる。複数の医薬を組み合わせて用いることにより、組み合わせて用いない場合と比較して、より効果的に免疫寛容を誘導することができる。
本願において、「組み合わせて用いるため」という用語は、「併用するため」、「併用療法のため」または「併用療法において用いるため」と互換的に用いられる。これら用語は、複数の医薬を同時または任意の順番で連続的に用いることに関連する。
本願において、第1の医薬と併用される「他の医薬」は第2の医薬であり、第2の医薬と併用される「他の医薬」は第1の医薬であり得る。第1の医薬と第2の医薬を併用する場合、母親、子および非遺伝母由来抗原は、第1の医薬と第2の医薬の間で一致する。
本願において、第1または第2の医薬と併用される「他の医薬」としては、例えば、以下の(1)および(2)から選択される医薬(以下「第3の医薬」と称する)が挙げられるが、それらに限定されない。
(1)以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の子への移植により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬:
(a)子を懐胎している母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
(2)以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、新生児期の子への移植により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための医薬:
(a)子を懐胎している母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(c)該母親と同種異系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
第1または第2の医薬と第3の医薬を併用する場合、第3の医薬における母親、子および非遺伝母由来抗原は、第1または第2の医薬におけるそれらと一致する。
例えば、本願は、以下から選択される医薬を提供する:
・第2の医薬と組み合わせて用いるための第1の医薬;
・第3の医薬と組み合わせて用いるための第1の医薬;
・第1の医薬と組み合わせて用いるための第2の医薬;
・第3の医薬と組み合わせて用いるための第2の医薬;
・第1の医薬と第2の医薬を含む組み合わせ医薬;
・第1の医薬と第3の医薬を含む組み合わせ医薬;および
・第2の医薬と第3の医薬を含む組み合わせ医薬。
本願において、子において免疫寛容を誘導するのに十分な量(すなわち有効量)の上記単離された骨髄由来幹細胞(第3の医薬)が、胎児期もしくは新生児期子へ移植される。該単離された骨髄由来幹細胞またはそれを含む医薬の胎児期の子への移植方法としては、臍帯静脈への骨髄由来幹細胞注入や羊水内投与が挙げられ、新生児期の子への移植方法としては、血管内投与(動脈内投与、静脈内投与等)、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与に加え、損傷組織や病組織への直接的な注入が挙げられる。
本願において、母親と同種異系のドナーとしては、MHCハプロタイプがレシピエントである子と一致する血縁者または非血縁者、または、MHCハプロタイプがレシピエントである子と部分一致する同胞であって、不適合のMHCが該子にとっての非遺伝母由来MHC抗原と同一物質である同胞などが挙げられるが、これらに限定されない。
本願において、第1または第2の医薬は、子が疾患を有する場合、該子における該疾患を治療するための医薬(以下「第4の医薬」と称する)と組み合わせて用いることもできる。これら医薬を組み合わせて用いることにより、組み合わせて用いない場合と比較して、より効果的に疾患を治療することができる。第1または第2の医薬は、第4の医薬による治療効果を向上するためにおいても使用することができる。一般に、移植を伴う治療においては、MHC適合性の高いドナーが選択されるが、適合ドナーを探すことは容易でない。ここで、例えば、第1または第2の医薬によって、レシピエントに非遺伝性母由来MHC抗原に対する免疫寛容が誘導されている場合、ドナーの不適合MHCが非遺伝母由来MHC抗原であれば、ミスマッチ移植を行っても、レシピエントにおける免疫応答を抑制することができる。つまり、第1または第2の医薬の使用によって、免疫寛容が誘導されたレシピエントにあっては、ドナーの許容範囲を拡大できる。
本願において、母親が疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親である場合、第4の医薬としては、以下の(1)から(3)より選択される医薬が挙げられるが、それらに限定されない。
(1)以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の子への移植により、該子における疾患を治療するための医薬:
(a)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
(2)以下から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の子への移植により、該子における疾患を治療するための医薬:
(a)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有さない母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;
(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(c)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
(3)子にとっての非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質を含む、新生児期以降の子への投与により、該子における疾患を治療するための医薬。
本願において、母親が疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親である場合、第4の医薬としては、以下の(1)から(3)より選択される医薬が挙げられるが、それらに限定されない。
(1)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の子への移植により、該子における疾患を治療するための医薬。
(2)以下から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の子への移植により、該子における疾患を治療するための医薬:
(a)疾患を有する子を懐胎している該疾患を有する母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
(b)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
(3)子にとっての非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質を含む、新生児期以降の子への投与により、該子における疾患を治療するための医薬。
第1または第2の医薬と第4の医薬を併用する場合、第4の医薬における母親、子および非遺伝母由来抗原は、第1または第2の医薬におけるそれらと一致する。
例えば、本願は、以下から選択される医薬を提供する:
・第4の医薬と組み合わせて用いるための第1の医薬;
・第4の医薬と組み合わせて用いるための第2の医薬;
・第1の医薬と第4の医薬を含む組み合わせ医薬;および
・第2の医薬と第4の医薬を含む組み合わせ医薬。
子における疾患としては、非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容が誘導される結果として治療可能となる疾患、および、非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫反応が抑制される結果として治療可能となる疾患が挙げられるが、これらに限定されない。このような疾患は、遺伝性疾患でもよいし、非遺伝性疾患でもよい。
例えば、子における遺伝性疾患は、母親および/または父親から子に遺伝された変異型遺伝子に起因する疾患であって、該変異型遺伝子が、非遺伝母由来抗原をコードする遺伝子と同一遺伝子座に存在する変異型遺伝子に由来する変異型遺伝子である、疾患が挙げられる。また例えば、子における遺伝性疾患は、母親および/または父親から子に遺伝された野生型(正常型)遺伝子における子で生じた変異に起因する疾患であって、該野生型(正常型)遺伝子が、非遺伝母由来抗原をコードする遺伝子と同一遺伝子座に存在する野生型(正常型)遺伝子に由来する野生型(正常型)遺伝子である、疾患が挙げられる。
また例えば、子における非遺伝性疾患は、非遺伝母由来MHC(HLA)抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容が誘導されれば、または、該子における免疫反応が抑制されれば、治療が可能となる疾患である。
子における疾患としては、例えば、特定のタンパク質の正常な産生が不能である疾患、細胞に機能不全が生じる疾患、子において突然変異により変異した変異遺伝子に起因する疾患、変異遺伝子が原因となってタンパク質が全く生産されないか、異常なタンパクが産生される疾患、遺伝子検査によって将来において発症リスクの高い疾患が予測され、当該疾患(非遺伝性疾患)の有効な治療法が細胞移植や臓器移植である疾患などが挙げられる。
子における疾患としては、表皮水疱症、骨形成不全症、フィブリノーゲン欠損症、先天性白血病、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症、デュシェンヌ型筋ジストロフィーなどが挙げられる。
本願において、第1または第2の医薬と第4の医薬を組み合わせて用いる場合、疾患に関して、着床前診断や出生前診断のための検査を行うこともできる。
本願において、第1または第2の医薬の次に第4の医薬の順番で連続的に使用する場合、第1または第2の医薬を使用した後かつ第4の医薬を使用する前に、子においてマイクロキメリズムが陽性であるかを確認することができる。ここで、マイクロキメリズムとは母から胎児へ細胞移行して生着することを意味する。マイクロキメリズムの確認方法としては、例えば、患者が男の子(XY染色体)であれば、体内のXX染色体細胞を探すことで母親由来細胞の確認をするといった手法が挙げられる。また、間接的な確認方法として、当該抗原移植後に生じる移植局所の発赤・腫脹などの炎症反応、発熱、血中サイトカインの上昇、CRPの上昇などの全身性炎症反応、移植片対宿主反応などにより評価できる。また、子において抗原となったものに対する抗体を検出することで評価することができる。
本願において、子における疾患を治療するのに十分な量(すなわち有効量)の単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織もしくは単離された臓器が、胎児期または新生児期以降の子へ移植される。単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器またはそれを含む医薬の胎児期の子への移植方法としては、単離された骨髄由来幹細胞の場合には、臍帯静脈への骨髄由来幹細胞注入や羊水内投与などが挙げられ、単離された組織または単離された臓器等の場合には外科的手術による移植が挙げられる。新生児期以降の子への移植方法としては、単離された骨髄由来幹細胞であれば、血管内投与(動脈内投与、静脈内投与等)、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与に加え、損傷組織や病組織への直接的な注入が挙げられ、単離された組織または単離された臓器等の場合には外科的手術による移植が挙げられる。
本願において、子における疾患を治療するのに十分な量(すなわち有効量)の単離されたタンパク質が新生児期以降の子へ投与される。単離されたタンパク質の新生児期以降の子への投与方法としては、血管内投与(動脈内投与、静脈内投与等)、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与に加え、経口投与、経鼻投与、経肺投与、経皮投与や、損傷組織や病組織への直接的な注入が挙げられる。
本願における治療には、軽減、遅延、阻止、改善、寛解、治癒、完治などが含まれるが、これらに限定されない。
本願における幹細胞は、間葉系幹細胞または造血系幹細胞である。
本願は、子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬であって、間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質を含み、該母親の骨髄由来幹細胞が該非遺伝母由来抗原を有する、医薬もまた提供する。該医薬は、第1の医薬の代替医薬として使用できる。
本願は、子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬であって、
(a)子を懐胎している母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された間葉系幹細胞、および、
(b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された間葉系幹細胞から選択される単離された間葉系幹細胞を含む医薬もまた提供する。該医薬は、第2の医薬の代替医薬として使用できる。
本願において、「間葉系幹細胞」とは、骨髄またはその他の組織(血液、例えば臍帯血、および皮膚、脂肪、歯髄等)から採取され、生体内において、骨、軟骨、脂肪、筋肉等の間葉系の細胞への分化能力と、自己複製能とを有する細胞である。また、生体外においては培養皿(プラスチックあるいはガラス製)への付着細胞として培養・増殖可能であり、骨、軟骨、脂肪、筋肉などの間葉系組織への分化能と、自己複製能とを有する細胞である。一つの態様において、間葉系幹細胞は、上皮系組織や神経組織への分化能をも有する。一つの態様において、間葉系幹細胞は、狭義の幹細胞のみならず前駆細胞をも含む不均一な細胞集団として存在してもよく、培養条件下では狭義の幹細胞および/または前駆細胞に加えて分化した細胞をも含み得る。一つの態様において、間葉系幹細胞は狭義の幹細胞のみによって構成されていてもよく、複数種の前駆細胞からなる細胞集団であってもよい。
本願において、前駆細胞は、血液系以外の特定組織細胞への一方向性分化能を持つ細胞と定義され、間葉系組織、上皮系組織、神経組織、実質臓器、血管内皮への分化能を有する細胞を含む。
本願において、間葉系幹細胞としては、骨髄間葉系幹細胞および骨髄由来間葉系幹細胞も挙げられるが、これに制限されない。「骨髄間葉系幹細胞」とは、骨髄内に存在する細胞であって、骨髄から採取される間葉系幹細胞である。一つの態様において、骨髄間葉系幹細胞は、上皮系組織や神経組織への分化能をも有する。本願において、「骨髄間葉系幹細胞」という用語は、「骨髄間葉系間質細胞」、「骨髄多能性幹細胞」または「骨髄多能性間質細胞」と互換的に用いられる。
また、「骨髄由来間葉系幹細胞」とは、骨髄から骨髄外に動員された骨髄間葉系幹細胞をいい、末梢血採血、さらには脂肪などの間葉系組織、皮膚などの上皮組織、脳などの神経組織からの採取によって取得することができる細胞である。本願において、「骨髄由来間葉系幹細胞」という用語は、「骨髄由来間葉系間質細胞」、「骨髄由来多能性幹細胞」または「骨髄由来多能性間質細胞」と互換的に用いられる。
一つの態様において、骨髄間葉系幹細胞および骨髄由来間葉系幹細胞は、採取後直接、あるいは一度培養皿へ付着させた細胞を生体の損傷部に投与することにより、例えば皮膚を構成するケラチノサイトなどの上皮系組織、脳を構成する神経系の組織への分化能も有するという特徴も持つ。
骨髄間葉系幹細胞および骨髄由来間葉系幹細胞は、骨芽細胞(分化を誘導するとカルシウムの沈着を認めること等で特定可能)、軟骨細胞(アルシアンブルー染色陽性、サフラニン-O染色陽性等で特定可能)、脂肪細胞(ズダンIII染色陽性等で特定可能)の他に、例えば線維芽細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、ストローマ細胞、腱細胞などの間葉系細胞、神経細胞、色素細胞、表皮細胞、毛包細胞(サイトケラチンファミリー、ヘアケラチンファミリー等を発現する)、上皮系細胞(たとえば表皮角化細胞、腸管上皮細胞はサイトケラチンファミリー等を発現する)、内皮細胞、さらに肝臓、腎臓、膵臓等の実質臓器細胞に分化する能力を有することが好ましいが、分化後の細胞は上記細胞に限定されるものではない。
ヒト間葉系幹細胞のマーカーとしては、PDGFRα陽性、PDGFRβ陽性、Lin陰性、CD45陰性、CD44陽性、CD90陽性、CD29陽性、Flk-1陰性、CD105陽性、CD73陽性、CD90陽性、CD71陽性、Stro-1陽性、CD106陽性、CD166陽性、CD31陰性、CD271陽性、CD11b陰性の全部または一部が例示できるが、これらに制限されるものではない。
マウス間葉系幹細胞のマーカーとしては、CD44陽性、PDGFRα陽性、PDGFRβ陽性、CD45陰性、Lin陰性、Sca-1陽性、c-kit陰性、CD90陽性、CD105陽性、CD29陽性、Flk-1陰性、CD271陽性、CD11b陰性の全部または一部が例示できるが、これらに制限されるものではない。
ラット間葉系幹細胞のマーカーとしては、PDGFRα陽性、CD44陽性、CD54陽性、CD73陽性、CD90陽性、CD105陽性、CD29陽性、CD271陽性、CD31陰性、CD45陰性の全部または一部が例示できるが、これらに制限されるものではない。
本願において、間葉系幹細胞としては、PDGFRα陽性の間葉系幹細胞、PDGFRα陽性の骨髄由来間葉系幹細胞、PDGFRα陽性の骨髄由来細胞であって、骨髄採取(骨髄細胞採取)または末梢血採血により得られた血液中の単核球分画細胞培養により、付着細胞として得られる細胞などが例示できるが、これらに制限されるものではない。PDGFRα陽性の間葉系幹細胞の例としては、PDGFRαおよびCD44が陽性である細胞、PDGFRαおよびCD90が陽性である細胞、PDGFRαおよびCD105が陽性である細胞、PDGFRαおよびCD29が陽性である細胞等が挙げられる。一つの態様において、PDGFRα陽性の間葉系幹細胞は、CD44が陰性の細胞であってもよい。一つの態様において、間葉系幹細胞のマーカーは、PDGFRα陽性且つLin陰性である。
本願における造血系幹細胞とは、血球系細胞に分化可能な幹細胞を指す。白血球(好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球、マクロファージ)、赤血球、血小板、肥満細胞、樹状細胞に分化可能な体性幹細胞である。血液系細胞を供給できる幹細胞であって、例えば、免疫不全マウスに移植した際に造血機構を再現できる細胞である。この造血幹細胞は、固有のマーカーによって特定可能であり、例えば、CD34、c-kit、sca-1などのマーカーが知られているが、マーカーはこれらに限定されるものではない。
本願における骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質は、骨髄間葉系幹細胞または骨髄造血系幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質である。「骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性」という用語は、「末梢血中における骨髄由来幹細胞の存在量を増大させる活性」と互換的に用いられる。
本願において、骨髄間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性は、i)骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質を投与した個体、および、該物質を投与していない個体から末梢血を回収し、culture dishに播種して培養し(数日〜10日)、形成されたコロニーの数をカウントすること、および、ii)形成されたコロニーが、固相への付着性および増殖能(自己複製能)を有し、且つ、骨芽細胞、軟骨細胞および脂肪細胞への分化能を有することを確認することによって、評価することができる。上記i)においては、回収した末梢血をculture dishに播種する前に、所望の方法により当該末梢血から赤血球を除去してもよい。
本願における骨髄間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質としては、核タンパク質またはその断片ペプチド、特定の人工ペプチド、CXCR4ケモカイン受容体阻害剤(例えばAMD-3100、ALX40-4C、T134など)(特表2012-525393)が挙げられる。
本願において、「核タンパク質」とは、核内において一定の機能を発揮するタンパク質を意味する。
本願における核タンパク質には、例えば転写調節に関与する核タンパク質が含まれるが、これに限定されない。「転写調節に関与するタンパク質」とは、核タンパク質のうち、転写のいずれかの過程を調節する機能を持ったタンパク質を意味し、例えば転写因子および転写共役因子が挙げられるが、これらに限定されない。
本願において、転写因子とは、単独で又は他のタンパク質との複合体の形でDNAに結合し、転写を制御するタンパク質であり、基本転写因子(転写装置を構成するタンパク質)、転写調節因子、転写伸長因子、転写終結プロセスへの関与によって転写を調節する因子等を含む。
本願において、転写共役因子とは、直接DNAには結合せず、タンパク質間の相互作用によって転写を調節するタンパク質であり、例えば転写調節因子と基本転写因子との間に介在(両者に結合)して転写を調節するコアクチベーターやコリプレッサー等が挙げられるが、これらに限定されない。
本願において、「核タンパク質の断片ペプチド」とは、上記核タンパク質に由来する断片ペプチドを意味する。一つの態様において、核タンパク質の断片ペプチドは、骨髄間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する断片ペプチドである。
本願において、「核タンパク質の断片ペプチド」という用語は、「核タンパク質に由来する断片ペプチド」、「核タンパク質に由来する部分ペプチド」、「核タンパク質の一部からなる断片ペプチド」、「核タンパク質の一部からなる部分ペプチド」、または、「核タンパク質の部分ペプチド」と互換的に用いられる。
本願における核タンパク質またはその断片ペプチド、または、特定の人工配列ペプチドは、それをコードするDNAを適当な発現系に組み込んで遺伝子組換え体(recombinant)として得ることができるし、または、人工的に合成することもできる。よって、該核タンパク質またはペプチドには、細胞を用いて製造された核タンパク質またはペプチド、および、人工的に合成された核タンパク質またはペプチド(すなわち、人工の(synthetic)核タンパク質またはペプチド)も含まれる。
本願における核タンパク質またはその断片ペプチド、または、特定の人工配列ペプチドを遺伝子工学的な手法によって得るためには、該核タンパク質またはペプチドをコードするDNAを適当な発現系に組み込んで発現させればよい。
本願に応用可能なホストとしては、原核生物の細胞、真核生物の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。また、本願に応用可能なホストとしては、細菌(例えば大腸菌)、酵母、動物細胞(例えばHEK293細胞やCHO細胞などの哺乳動物細胞、カイコ細胞などの昆虫細胞)、植物細胞などもまた挙げられるが、これらに制限されない。
本願に応用可能なホスト/ベクター系としては、例えば、発現ベクターpGEXと大腸菌を示すことができる。pGEXは外来遺伝子をグルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させることができる(Gene, 67:31-40, 1988)ので、本願の核タンパク質またはその断片ペプチド、または、特定の人工配列ペプチドをコードするDNAを組み込んだpGEXをヒートショックでBL21のような大腸菌株に導入し、適当な培養時間の後に isopropylthio-β-D-galactoside(IPTG)を添加してGST融合ペプチドの発現を誘導する。本願におけるGSTはグルタチオンセファロース4Bに吸着するため、発現生成物はアフィニティークロマトグラフィーによって容易に分離・精製することが可能である。
本願の核タンパク質またはその断片ペプチド、または、特定の人工配列ペプチドの遺伝子組換え体を得るためのホスト/ベクター系としては、この他にも次のようなものを応用することができる。まず細菌をホストに利用する場合には、タグ等を利用した融合タンパク質の発現用ベクターが市販されている。また、本願の遺伝子組換え体には、タグやその一部のペプチドが付加した状態のものも含まれる。
本願の核タンパク質またはその断片ペプチド、または、特定の人工配列ペプチドに付加されるタグとしては、該核タンパク質またはペプチドの活性に影響しない限り、特に制限はなく、例えば、ヒスチジンタグ(例えば6×His、10×His)、HAタグ、FLAGタグ、GSTタグ、T7-タグ、HSV-タグ、E-タグ、lckタグ、B-タグなどが挙げられる。
酵母では、Pichia属酵母が糖鎖を備えたタンパク質の発現に有効なことが公知である。糖鎖の付加という点では、昆虫細胞をホストとするバキュロウイルスベクターを利用した発現系も有用である(Bio/Technology, 6:47-55, 1988)。更に、哺乳動物の細胞を利用して、CMV、RSV、あるいはSV40等のプロモーターを利用したベクターのトランスフェクションが行われており、これらのホスト/ベクター系は、いずれも本願の核タンパク質またはその断片ペプチド、または、特定の人工配列ペプチドの発現系として利用することができる。また、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、センダイウイルスベクター、センダイウイルスエンベロープベクター、パピローマウイルスベクター等のウイルスベクターを利用して遺伝子を導入することもできるが、これらに限定されるものではない。該ベクターには、遺伝子発現を効果的に誘導するプロモーターDNA配列や、遺伝子発現を制御する因子、DNAの安定性を維持するために必要な分子が含まれてもよい。
得られた本願の核タンパク質またはその断片ペプチド、または、特定の人工配列ペプチドは、宿主細胞内または細胞外(培地など)から単離し、実質的に純粋で均一なタンパク質またはペプチドとして精製することができる。タンパク質またはペプチドの分離、精製は、通常のタンパク質の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、組み合わせればタンパク質またはペプチドを分離、精製することができる。
クロマトグラフィーとしては、例えばアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Marshak et al., Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。これらのクロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
また、本願の核タンパク質またはその断片ペプチド、または、特定の人工配列ペプチドは、実質的に精製された核タンパク質またはペプチドであることが好ましい。ここで「実質的に精製された」とは、該核タンパク質またはペプチドの精製度(タンパク質成分全体における該核タンパク質またはペプチドの割合)が、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、100%若しくは100%に近いことを意味する。100%に近い上限は当業者の精製技術や分析技術に依存するが、例えば、99.999%、99.99%、99.9%、99%などである。
また、上記の精製度を有するものであれば、如何なる精製方法によって精製されたものでも、実質的に精製された核タンパク質またはペプチドに含まれる。例えば、上述のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、または組み合わせることにより、実質的に精製された核タンパク質またはペプチドを例示できるが、これらに限定されるものではない。
一方、本願の核タンパク質またはペプチドを人工的に合成することも出来る。本願におけるペプチド合成法では、ペプチド液相合成法およびペプチド固相合成法等の方法によってペプチドを化学合成することができる。ペプチド固相合成法はペプチドを化学的に合成する際に、一般的に用いられる方法のひとつである。表面をアミノ基で修飾した直径0.1mm程度のポリスチレン高分子ゲルのビーズなどを固相として用い、ここから脱水反応によって1つずつアミノ酸鎖を伸長していく。目的とするペプチドの配列が出来上がったら固相表面から切り出し、目的の物質を得る。固相合成法により、バクテリア中で合成させることの難しいリボソームペプチドの合成や、D体や重原子置換体などの非天然アミノ酸の導入、ペプチド及びタンパク質主鎖の修飾なども可能である。固相法において70から100個を超える長いペプチド鎖を合成する場合、ネイティブケミカルライゲーション法を用いて、2つのペプチド鎖を結合させる事により合成することが可能である。本願の核タンパク質またはその断片ペプチド、または、特定の人工配列ペプチドは、該タンパク質またはペプチドの医薬上許容される塩の形態であってもよい。医薬上許容される塩としては、塩酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本願の核タンパク質またはその断片ペプチド、または、特定の人工配列ペプチドは、該タンパク質またはペプチドの溶媒和物、または、該タンパク質またはペプチドの医薬上許容される塩の溶媒和物の形態であってもよい。溶媒和物とは、溶質分子に任意の数の溶媒分子が配位しているものをいい、例えば水和物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本願における核タンパク質またはその断片ペプチド、または、特定の人工配列ペプチドのアミノ酸長としては、例えば25〜35アミノ酸、20〜40アミノ酸、10〜50アミノ酸、10〜70アミノ酸、10〜100アミノ酸等の範囲が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本願における核タンパク質またはその断片ペプチドとしては、例えば以下から選択される核タンパク質またはそれに由来する断片ペプチドが挙げられる:
1. BTF3タンパク質(Basic transcription factor 3);
2. SUPT16Hタンパク質(Suppressor of Ty 16 Homolog; またはFacilitates chromatin transcription complex subunit SPT16);
3. YBX1タンパク質(Y-Box binding protein 1; またはNuclease-sensitive element-binding protein 1);
4. NPM1タンパク質(Nucleophosmin 1);
5. PA2G4タンパク質(Proliferation-associated protein 2G4);
6. PFDN5タンパク質(Prefoldin subunit 5);
7. PSMC3タンパク質(Proteasome (Prosome, Macropain) 26S subunit, ATPase 3; または26S proteasome regulatory subunit 6A);
8. HNRNPKタンパク質(Heterogeneous nuclear ribonucleoprotein K);
9. HMGB1タンパク質(High mobility group box 1);
10. HMGB2タンパク質(High mobility group box 2);
11. HMGB3タンパク質(High mobility group box 3);
12. S100A8タンパク質(S100 calcium-binding protein A8);
13. S100A9タンパク質(S100 calcium-binding protein A9);
14. IL-1ファミリー(Interleukin-1 family);および
15. 1から14より選択されるタンパク質と機能的に同等な核タンパク質。
本願実施例に記載の断片ペプチドの例および従来技術に照らして、上記1から14より選択される核タンパク質は、骨髄間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性を有すると考えられる。よって、上記15に記載の「機能的に同等」とは、骨髄間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性に関する機能的同等を意味する。そのため、上記15に記載の核タンパク質は、1から14より選択されるタンパク質と同等な活性(同等な骨髄間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性)を有する核タンパク質と表現できる。
上記1から15より選択される核タンパク質またはその断片ペプチドは、骨髄間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性を有するため、骨髄間葉系幹細胞を末梢血中に動員する効果を有すると考えられる。
本願において、核タンパク質またはその断片ペプチドとしては、例えば以下から選択される核タンパク質またはそれに由来する断片ペプチドが挙げられる:
(I)配列番号:1から34および131から144より選択されるアミノ酸配列を含む、核タンパク質;
(II)配列番号:1から34および131から144より選択されるアミノ酸配列からなる、核タンパク質;
(III)配列番号:1から34および131から144より選択されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を含む、核タンパク質;
(IV)配列番号:1から34および131から144より選択されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなる、核タンパク質;
(V)配列番号:1から34および131から144より選択されるアミノ酸配列と約80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、核タンパク質;
(VI)配列番号:1から34および131から144より選択されるアミノ酸配列と約80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、核タンパク質;
(VII)配列番号:57から90および147から160より選択される塩基配列からなるDNAによりコードされる、核タンパク質;および
(VIII)配列番号:57から90および147から160より選択される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされる、核タンパク質。
また本願において、核タンパク質の断片ペプチドとしては、例えば以下から選択される断片ペプチドが挙げられる:
(i)配列番号:1から34および131から144より選択されるアミノ酸配列の一部からなる、核タンパク質の断片ペプチド;
(ii)配列番号:35から56および145より選択されるアミノ酸配列を含む、核タンパク質の断片ペプチド;
(iii)配列番号:35から56および145より選択されるアミノ酸配列からなる、核タンパク質の断片ペプチド;
(iv)配列番号:35から56および145より選択されるアミノ酸配列の一部からなる、核タンパク質の断片ペプチド;
(v)配列番号:35から56および145より選択されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を含む、核タンパク質の断片ペプチド;
(vi)配列番号:35から56および145より選択されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなる、核タンパク質の断片ペプチド;
(vii)配列番号:35から56および145より選択されるアミノ酸配列と約80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、核タンパク質の断片ペプチド;
(viii)配列番号:35から56および145より選択されるアミノ酸配列と約80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、核タンパク質の断片ペプチド;
(ix)配列番号:91から112および161より選択される塩基配列からなるDNAによりコードされる、核タンパク質の断片ペプチド;および
(x)配列番号:91から112および161より選択される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされる、核タンパク質の断片ペプチド。
本願において、「複数個」としては、例えば1個〜10個、1個〜9個、1個〜8個、1個〜7個、1個〜6個、1個〜5個、1個〜4個、1個〜3個、または1個若しくは2個が挙げられる。
本願において、「約80%以上」としては、例えば約85%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上または約99%以上が挙げられる。
本願において、「ストリンジェントな条件」とは、例えば 6×SSC、40%ホルムアミド、25℃でのハイブリダイゼーションと、1×SSC、55℃での洗浄といった条件を示すことができる。ストリンジェンシーは、塩濃度、ホルムアミドの濃度、あるいは温度といった条件に左右されるが、当業者であればこれらの条件を必要なストリンジェンシーを得られるように設定することができる。
ハイブリダイゼーションをストリンジェントな条件下で実施すれば、塩基配列として相同性の高いDNAが選択され、その結果として単離されるタンパク質には、配列番号:1から34および131から144より選択されるアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質(例えばホモログ)、配列番号:35から56および145より選択されるアミノ酸配列からなる断片ペプチドと機能的に同等な断片ペプチドが含まれる可能性が高まる。相同性の高い塩基配列とは、例えば約60%以上、約70%以上、または、約80%以上の同一性を示すことができる。
また本願において、核タンパク質の断片ペプチドとしては、例えば以下から選択される断片ペプチドが挙げられる:
(1)配列番号:1から2より選択されるアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:35に記載のアミノ酸配列を含む断片ペプチド;
(2)配列番号:3に記載のアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:36に記載のアミノ酸配列を含む断片ペプチド;
(3)配列番号:4に記載のアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:37から39より選択されるアミノ酸配列を含む断片ペプチド;
(4)配列番号:5から7より選択されるアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:40から41より選択されるアミノ酸配列を含む断片ペプチド;
(5)配列番号:8に記載のアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:42に記載のアミノ酸配列を含む断片ペプチド;
(6)配列番号:9に記載のアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:43に記載のアミノ酸配列を含む断片ペプチド;
(7)配列番号:10に記載のアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:44に記載のアミノ酸配列を含む断片ペプチド;
(8)配列番号:11から16より選択されるアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:45に記載のアミノ酸配列を含む断片ペプチド;
(9)配列番号:17から18より選択されるアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:46に記載のアミノ酸配列を含む断片ペプチド;
(10)配列番号:19に記載のアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:47に記載のアミノ酸配列を含む断片ペプチド;
(11)配列番号:20に記載のアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:48から50より選択されるアミノ酸配列を含む断片ペプチド;
(12)配列番号:21、23および24より選択されるアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:51に記載のアミノ酸配列を含む断片ペプチド;
(13)配列番号:21から26より選択されるアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:52に記載のアミノ酸配列を含む断片ペプチド;
(14)配列番号:27に記載のアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:53に記載のアミノ酸配列を含む断片ペプチド;
(15)配列番号:28から29より選択されるアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:54に記載のアミノ酸配列を含む断片ペプチド;
(16)配列番号:30に記載のアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:55に記載のアミノ酸配列を含む断片ペプチド;
(17)配列番号:31から34より選択されるアミノ酸配列の一部からなる断片ペプチドであって、配列番号:56に記載のアミノ酸配列を含む断片ペプチド;および
(18)以下の<1>から<74>の群より2つのアミノ酸配列(いずれも配列番号:131から133より選択されるアミノ酸配列中のアミノ酸配列)を選択し、長い方をAとし、短い方をBとするとき、配列番号:131から133より選択されるアミノ酸配列におけるAの全部または一部からなるペプチドであって、Bを含むペプチド:
<1>1番目から44番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<2>1番目から25番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<3>1番目から34番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<4>1番目から42番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<5>1番目から43番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<6>1番目から45番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<7>1番目から46番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<8>1番目から47番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<9>1番目から48番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<10>1番目から49番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<11>1番目から50番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<12>1番目から51番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<13>1番目から52番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<14>1番目から62番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<15>1番目から84番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<16>10番目から25番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<17>11番目から25番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<18>11番目から27番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<19>11番目から28番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<20>11番目から29番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<21>11番目から30番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<22>11番目から34番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<23>11番目から44番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<24>12番目から25番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<25>12番目から30番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<26>13番目から25番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<27>13番目から30番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<28>14番目から25番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<29>14番目から30番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<30>15番目から25番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<31>15番目から30番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<32>16番目から25番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<33>16番目から30番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<34>17番目から25番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<35>17番目から30番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<36>45番目から74番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<37>45番目から84番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<38>45番目から215番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<39>55番目から84番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<40>63番目から215番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<41>1番目から70番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<42>1番目から81番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<43>1番目から170番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<44>2番目から25番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<45>2番目から34番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<46>2番目から42番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<47>2番目から43番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<48>2番目から44番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<49>2番目から45番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<50>2番目から46番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<51>2番目から47番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<52>2番目から48番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<53>2番目から49番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<54>2番目から50番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<55>2番目から51番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<56>2番目から52番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<57>2番目から62番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<58>2番目から70番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<59>2番目から81番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<60>2番目から84番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<61>2番目から170番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<62>85番目から169番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<63>89番目から185番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<64>89番目から195番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<65>89番目から205番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<66>89番目から215番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<67>93番目から215番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<68>17番目から44番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<69>1番目から185番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<70>1番目から195番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<71>1番目から205番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<72>2番目から185番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;
<73>2番目から195番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列;および
<74>2番目から205番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列。
上記(18)に記載のペプチドとしては、例えば、配列番号:131から133より選択されるアミノ酸配列における1番目から84番目のアミノ酸配列の全部または一部からなるペプチドであって、以下のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドが挙げられる:
・配列番号:131から133より選択されるアミノ酸配列における17番目から25番目のアミノ酸配列;
・配列番号:131から133より選択されるアミノ酸配列における45番目から74番目のアミノ酸配列;および
・配列番号:131から133より選択されるアミノ酸配列における55番目から84番目のアミノ酸配列が挙げられる。
配列番号:1から56に記載のアミノ酸配列は、以下の表1−1および表1−2に記載のタンパク質またはペプチドのアミノ酸配列である。
Figure 2020158924
Figure 2020158924
配列番号:57から112に記載の塩基配列は、以下の表2−1および表2−2に記載のタンパク質またはペプチドをコードするDNAの塩基配列の一例である。以下の表2−1および表2−2に記載のタンパク質またはペプチドをコードする他のDNA配列は、当業者に公知のコドン表を用いて、該タンパク質または該ペプチドのアミノ酸残基を対応するコドンに変換する方法(逆翻訳)によって作成することができる。逆翻訳は、所望により、アミノ酸および核酸配列の解析用に開発されている種々のソフトウェア(プログラム、アルゴリズム等を含む)を利用して行うことができる。
Figure 2020158924
Figure 2020158924
本願において、核タンパク質またはその断片ペプチドは、例えば核移行シグナルを含む、核タンパク質またはその断片ペプチドである。核移行シグナル(NLS)とは、ある一定のパターンを持ったアミノ酸配列であって、それを有するタンパク質/ペプチドを核内へ移行させる機能を持ったものをいう。
例えば、多くの核タンパク質は、そのアミノ酸配列中にNLSを持っていることが知られており、当該NLSを認識する核輸送受容体(核輸送タンパク、核輸送因子とも称される)と結合することによって核内へと移動する。
現在知られているNLS(以下、既知NLS)の例としては、以下の表3−1および表3−2に記載のものが挙げられる:
Figure 2020158924
Figure 2020158924
また、既知NLSとしては、NLSdbデータベース(https://rostlab.org/services/nlsdb/)に登録されている配列を挙げることもできる。NLSdbに登録されている配列は、上記webサイトにおいて閲覧およびダウンロードすることができる。NLSdbに登録されているNLSの配列のうちAnnotation typeが「Experimental」または「By Expert」であるものは、タンパク質/ペプチドを核内へ移行させる機能を有していると評価できるため、本願において既知NLSとして扱う。
本願におけるNLSは、特定のプログラムを用いて予測されるNLS(以下、予測NLS)であってもよい。所望のアミノ酸配列中に予測NLSが含まれるかどうかは、次のプログラム:SeqNLS(Lin et al., PLoS One. 2013 Oct 29;8(10):e76864)またはNLStradamus(Nguyen et al., BMC Bioinformatics. 2009 Jun 29;10:202)を用いて決定することができる。
一つの態様において、NLSは既知NLSである。一つの態様において、NLSは、cNLS、PY-NLS、BIBドメインおよびBIBドメイン様配列からなる群より選択される既知NLSである。一つの態様において、cNLSはmonopartite cNLSである。一つの態様において、monopartite cNLSはKKEK(配列番号:130)である。
本願において、配列番号:131から146に記載のアミノ酸配列は、以下の表4に記載のタンパク質またはペプチドのアミノ酸配列である。
Figure 2020158924
配列番号:147から162に記載の塩基配列は、以下の表5に記載のタンパク質またはペプチドをコードするDNAの塩基配列の一例である。
Figure 2020158924
本願において、「人工配列ペプチド」とは、天然には存在しないアミノ酸配列を有するペプチドをいう。また、本願においては「人工配列ペプチド」を単に「人工ペプチド」とも称する。
本願において、人工配列ペプチドとしては、例えば以下から選択されるペプチドが挙げられる:
i. 配列番号:146のアミノ酸配列を含む、人工配列ペプチド;
ii. 配列番号:146のアミノ酸配列からなる、人工配列ペプチド;
iii. 配列番号:146のアミノ酸配列の一部からなる、人工配列ペプチド;
iv. 配列番号:146のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を含む、人工配列ペプチド;
v. 配列番号:146のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなる、人工配列ペプチド;
vi. 配列番号:146のアミノ酸配列と約90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、人工配列ペプチド;
vii. 配列番号:146のアミノ酸配列と約90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、人工配列ペプチド;
viii. 配列番号:162の塩基配列からなるDNAによりコードされる、人工配列ペプチド;および
ix. 配列番号:162の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされる、人工配列ペプチド。
本願において、「数個」としては、例えば1個〜5個、1個〜4個、1個〜3個、または1個若しくは2個が挙げられる。
本願において、「約90%以上」としては、例えば約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上または約99%以上が挙げられる。
上記iからixより選択される人工配列ペプチドは、骨髄間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する人工配列ペプチドである。よって、これら人工配列ペプチドは、骨髄間葉系幹細胞を末梢血中に動員する効果を有すると考えられる。
配列番号:146に記載のアミノ酸配列は、本願の人工配列ペプチド1r10のアミノ酸配列である。また、配列番号:162に記載の塩基配列は、本願の人工配列ペプチド1r10をコードするDNAの塩基配列の一例である。
本願では、人工配列ペプチド、核タンパク質またはその断片ペプチドに代えて、該タンパク質またはペプチドを分泌する細胞、該タンパク質またはペプチドをコードするDNAが挿入された遺伝子治療用ベクターを用いることもできる。
本願における骨髄造血系幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質としては、サイトカインとして、肝細胞増殖因子(HGF)(特開2006-104177)、G-CSF(granulocyte colony-stimulating factor)、GM-CSF(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)、IL-7、IL-12、flt-3リガンド、stem cell factor(SCF)、トロンボポエチン、および、ケモカインとして、IL-8、MIP-2(macrophage inflammatory protein-2)、BB-10010(MIP-1α)など(WO2003/043651)が挙げられるが、これらに限定されない。
本願においては、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。例えば、タンパク質を投与する場合、例えば、一回の投与につき、体重1 kgあたり0.0000001mgから1000mgの範囲で投与量が選択できる。あるいは、例えば、患者あたり0.00001から100000mg/bodyの範囲で投与量が選択できる。また、タンパク質をコードするDNAが挿入された遺伝子治療用ベクターを投与する場合も、該タンパク質の量が上記範囲内となるように投与することができる。しかしながら、本願における医薬はこれらの投与量に制限されるものではない。
本願において、「患者」という用語は、「対象」、「個体」および「動物」と互換的に用いられる。
本願の医薬は、常法に従って製剤化することができ(例えば、Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。例えば界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等が挙げられるが、これらに制限されず、その他常用の担体が適宜使用できる。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を挙げることができる。
なお、本明細書において引用されたすべての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
本発明は、下記の実施例によってさらに例示されるが、それらに限定されるものではない。
(実施例1)GFPTgマウスの骨髄細胞移植による免疫寛容誘導
移植細胞の準備
全身の細胞でGFPを発現しているGFPトランスジェニックマウス(GFPTgマウス)をドナーに用いた。まず、8週令GFPTgマウスの骨髄(大腿骨)を、26-G針を用いて採取し、採取した骨髄を40-μm メッシュナイロンフィルターに通してから、遠心力440xg、4℃、5分間遠心分離操作を行った。分離した沈殿物を溶解バッファー(RBC Lysis Buffer、BioLegend社製)に懸濁して赤血球を溶血した後、再度、遠心力440 xg、4℃、5分間遠心分離操作を行ってから上清を取り除き、沈殿物の細胞を回収した。回収した細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁し細胞懸濁液(骨髄細胞懸濁液)とした。
調整した骨髄細胞懸濁液に、複数のビオチン標識モノクローナル抗体(ビオチン標識抗CD5抗体、ビオチン標識抗CD45R抗体、ビオチン標識抗CD11b抗体、ビオチン標識抗Gr-1(Ly-6G/C)抗体、ビオチン標識抗Ly-6B.2 (7/4)抗体、ビオチン標識抗Ter-119抗体)を、上記の細胞懸濁液に加えて所定時間混合してから、洗浄済みの抗ビオチンマイクロビーズ(Miltenyi Biotec社)を加えて10分間混合し、4℃で15分静置した。続いて、かかる細胞懸濁液を磁気ビーズ細胞分離装置(装置名autoMACS Pro Separator(Miltenyi Biotec社))に導入した。そして、カラムに補足されず流出する細胞(Lineage(Lin)陰性細胞)を採取した。
採取した細胞の懸濁液にビオチン標識抗Lineage抗体および蛍光標識された抗体を加え、フロサイトメトリー(装置名FACS ARIA II(BD Biosciences社)によって、造血幹細胞(Hematopoietic stem cells(HSC))と、間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells(MSC))と、造血幹細胞および間葉系幹細胞のいずれでもない骨髄細胞(非幹細胞)とに分画した。
具体的には、造血幹細胞は、抗体(アロフィコシアニン(APC)標識抗C-kit抗体、フィコエリスリン(PE)標識抗Sca-1抗体、ビオチン標識抗Lineage抗体(ビオチン標識抗CD5抗体、ビオチン標識抗CD45R抗体、ビオチン標識抗CD11b抗体、ビオチン標識抗Gr-1(Ly-6G/C)抗体、ビオチン標識抗Ter-119抗体))を使用し、c-kit陽性、Sca-1陽性、Lineage陰性のものを選別した。
また、間葉系幹細胞は、BV421標識抗PDGFRa抗体、ビオチン標識抗Lineage抗体(ビオチン標識抗CD45R抗体、ビオチン標識抗CD31抗体)を使用し、PDGFRa陽性、Lineage陰性のものを選別した。
なお、ビオチン標識抗体で補足したLineage陽性細胞に関しては、二次抗体としてstreptavidin PerCP-Cy5.5(Thermo Fisher Scientific社)を用い、フロサイトメトリーによる選別に先立って分画した。ここで分画したもの(Lineage陽性細胞)をこの後の実験において非幹細胞(BMC-HSC-MSC)とした。BMC-HSC-MSCは、非幹細胞が、骨髄細胞(BM)から造血系幹細胞(HSC)と、間葉系幹細胞(MSC)とを除外したものであることを示す。
骨髄細胞懸濁液(骨髄細胞)、分画した造血幹細胞、間葉系幹細胞、非幹細胞の各々について、10cellsの細胞を20μlのPBSに懸濁し、更に、皮膚生着を向上させるために野生型マウスの骨細胞(WT−BMC)を2.5×10cells加えて注入剤とした。
レシピエントマウスへの細胞移植
免疫系が確立されていない生後10目頃までのマウス新生仔は、ヒトにおける胎児期に見立てることができることから、この時期のマウス新生仔をレシピエントとして採用することとし、本実施例では生後24時間以内のマウスをレシピエントとした。そして、顕微鏡下にてφ75μmのガラスニードルを用いて、準備した野生型マウス(C57BL/6)の新生仔マウス(生後24時間以内)の浅側頭静脈または顔面静脈に、上記にて準備した注入剤を総量20μl注入した。このようにすることで、GFPTgマウス由来のGFPタンパク質は、レシピエントマウスにとっての非遺伝母由来抗原のモデルとなる。
皮膚移植
GFPTgマウスの造血幹細胞、間葉系幹細胞、非幹細胞、骨髄細胞のいずれかを移植した各レシピエントマウスが6週令になったタイミングで、GFPTg(C57BL/6)マウスの尾の皮膚より10mm角の移植片を作製し、各レシピエントマウスの背部皮膚へ移植した。なお、比較のため、GFPTgマウスの細胞移植を行わなかった6週齢の野生型マウス(未処置のマウス)に対しても同様に皮膚移植を行った。移植片は、3-0吸収糸で縫合した後に、7日間バンドエイドで固定した。移植後、1週毎に移植片の残存を、GFP蛍光ライトを用いて観察した。
ELISA評価方法
皮膚移植から4週間後にレシピエントマウスの眼窩静脈叢より採血し、血清を-20℃にて保存した。組換えGFPを0.2μg/mlの濃度となるよう加えたPBS100μlを調整し、96ウェルプレートの各ウェルに注入して4℃で一晩保持した後、洗浄バッファー(washing buffer、0.05%Tween20(登録商標)含有PBS、SIGMA ALDLICH社)で2回洗浄し、ウェルに固着しなかった組換えGFPを除去した。その後、ブロッキングバッファー(blocking buffer 、1% BSA 含有PBS)を200μl加え1時間、常温で保持した後、washing bufferにて洗浄した。
保存したレシピエントマウス血清1μlを200倍に希釈し、組換えGFPを固着させた各ウェルに100μlずつ加え、常温で1時間保持した。次いで、washing bufferにて洗浄してから、西洋わさびペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(anti-mouse IgG, horseradish peroxidase, diluted 1:2500 in PBST、SIGMA ALDLICH社)100μlを加え、常温で1時間保持した。そして、washing bufferによって洗浄を行い、反応しなかった余剰の抗マウスIgG抗体を除去したのち、3,3’,5,5’-テトラメチルベンチジン(3,3’,5,5’-Tetramethyl benzidine、TMB)を各ウェルに加えた後、450nmの吸光度を吸光光度計 (装置名 TriStar2 Multimode Reader LB 942、Berthold Technologies社)を用いて計測し、計測した吸光度から皮膚移植マウスにおいて産生された抗GFP抗体の量を算出した。
ELISA評価結果
図1は実施例1のELISA評価結果を示した図である。図1は、その縦軸に抗GFP抗体量の相対比を示しており、レシピエントマウスの各グループ毎の抗GFP抗体の産生量を、抗体価が最も高い未処置のマウスの抗体生産量の最大値を1として補正して、その平均値を棒グラフで、標準偏差をエラーバーとして表したものである。「BMC」で示した棒グラフは、GFPTgマウスの骨髄細胞を移植したレシピエントマウスのグループの抗体産生量であり、「HSC」で示した棒グラフはGFPTgマウスの造血幹細胞を移植したレシピエントマウスの抗体産生量であり、「MSC」で示した棒グラフは、GFPTgマウスの間葉系幹細胞を移植したレシピエントマウスの抗体産生量である。「非幹細胞」で示した棒グラフは、GFPTgマウスの非幹細胞を移植したレシピエントマウスの抗体産生量であり、「control」で示した棒グラフは、比較のために示した細胞移植を行わなかった未処置のマウスの結果である。
図1からも分かるように、未処置のマウスに比べて、何らかの幹細胞移植を行ったマウス群において、有意に抗GFP抗体生産量が低下していた。また、非幹細胞の移植に比べて、骨髄細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞を移植したマウス群のほうが、抗GFP抗体生産量が低下する事、すなわち効果的に免疫寛容が誘導されることが認められた。なお、Student T検定にて評価したところ、骨髄細胞を移植したレシピエントマウス、造血幹細胞を移植したレシピエントマウス、間葉系幹細胞を移植したレシピエントマウスのそれぞれと、未処置のマウスとの間には有意差が認められ、T検定の結果は、それぞれp=0.005、p=0.003、p=0.0043であった(図1中に、有意差有りを「アスタリスク(*)」にて表示)。なお、未処置のマウスと非幹細胞を移植したレシピエントマウスとの比較においては、有意差なしであることが示された(図1中にてN.S.にて表示)。即ち、B細胞系免疫寛容の誘導には、骨髄細胞、造血幹細胞移植だけでなく、間葉系幹細胞移植も寄与することが明らかになった一方で、分化した細胞の移植では免疫寛容は誘導できない(誘導する能力が著しく低い)ことも明らかとなった。
Cytotoxic T-Cell (CTL)を用いたELISPOTによるGFPに対する免疫応答評価
生直後にGFPTgマウスの細胞移植を行った後、10週令および11週令に達したタイミングで、レシピエントマウスの腹腔内にGFPTgマウスの骨髄細胞を投与した。投与される骨髄細胞は、1〜2×10cellsを2回に分けて、10週令および11週令のそれぞれで投与し、合計2回の投与で1〜2×10cellsとなるように行った。
その後、レシピエントマウス生後13週令において脾臓を採取した。採取した脾臓は、フィルターを用いて細片化してから、遠心力300xgにて10分間遠心分離操作を行った。沈殿物を溶解バッファー(RBC Lysis Buffer、BioLegend社製)にて2分間処理してから、再度、遠心力440xg、4℃、5分間遠心分離操作を行った。遠心分離後のサンプルから上清を取り除き、沈殿物の細胞(脾細胞)を回収した。
GFPTgマウスから骨髄を採取し、40μmメッシュナイロンフィルターに通してから、遠心力440xg、4℃、5分間遠心分離操作を行った。分離した沈殿物を溶解バッファー(RBC Lysis Buffer、BioLegend社製)に懸濁して赤血球を溶血した後、再度、遠心力440 xg、4℃、5分間遠心分離操作を行ってから上清を取り除いて沈殿物を回収し、マイトマイシンCを加えて30分間保持した。その後、回収した脾細胞(5×10cells/ml)を懸濁したPBS10mlと、GFPTgマウス骨髄細胞(5×10cells /ml)を懸濁したPBS10mlとを合計20mlになるように混合し、組換えヒトインターロイキン2(rhIL-2)1μlを添加して、37℃、4日間、共培養を行った。
4日間の共培養後、脾細胞のみ浮遊細胞として回収し、回収した脾細胞:GFPTgマウス骨髄細胞が25:1となるように配合してから、抗インターフェロンγが1次抗体としてコートされた96ウェルプレートの各ウェルへ加え、37℃、48時間共培養した。上清を吸引し4回洗浄したのち、抗インターフェロンγ2次抗体(ビオチン標識抗体)を100μ/wellずつコートし静置した(4℃一晩)。上清を吸引し3回洗浄したのち、streptavidin-AP(R&D Systems)100μ/wellを添加し常温で2時間静置した。Washing bufferで3回洗浄したのち、遮光しBCIP/NBT chromogen (R&D systems)を100μ/wellで添加し30分静置した。蒸留水で洗浄し、37℃で15-30分加温し、プラスチックプレート底部に染色されたIFN-γをスポット数としてカウントした。
なお、比較のため、GFPTgマウスの細胞移植を行わなかった野生型マウス(未処置のマウス)に対しても、GFPTgマウスの骨髄細胞の腹腔内投与を行い、レシピエントマウスと同様の処置および評価を行った。
ELISPOT評価結果
上記ELISPOTによる評価結果を図2に示す。図2は、グラフ縦軸にスポット数を示しており、レシピエントマウスの各グループ毎に、観察されたスポット数を箱ひげにて示した箱ひげ図である。グラフ上方には、それぞれのグループに対応つけて、スポットの観察画像を表示している。
「BMC」で示した箱ひげは、GFPTgマウスの骨髄細胞を移植したレシピエントマウスのグループの結果であり、「HSC」で示した箱ひげはGFPTgマウスの造血幹細胞を移植したレシピエントマウスの結果であり、「MSC」で示した箱ひげは、GFPTgマウスの間葉系幹細胞を移植したレシピエントマウスの結果である。「非幹細胞」で示した箱ひげは、GFPTgマウスの非幹細胞を移植したレシピエントマウスの結果であり、「control」で示した箱ひげは、比較のために示した細胞移植を行わなかった未処置のマウスの結果である。
図2からも分かるように、未処置のマウスは、スポット数が多く、GFPに対して高い免疫応答性を有している事が示された。また、「非幹細胞」を移植したマウスにおいても、生じたスポットが多く、GFPに対して高い免疫応答性を有している事が示された。一方、骨髄細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞を移植したマウスは、スポットが殆ど生じておらず、有意に免疫応答性が低減している事が確認された。
なお、当該結果を統計学的な検定(StudentT検定)にて評価したところ、骨髄細胞を移植したレシピエントマウス、造血幹細胞を移植したレシピエントマウス、間葉系幹細胞を移植したレシピエントマウスのそれぞれと、未処置のマウスとの間には有意差があり、T検定の結果はそれぞれp=0.0042、p=0.0260、p=0.0244であることが示された(図2中に、有意差有りを「アスタリスク(*)」にて表示)。一方、非幹細胞を移植したレシピエントマウスと未処置のマウスとの間には有意差なしであることが示された(図2中にN.S.にて表示)。即ち、T細胞系免疫寛容の誘導には、骨髄細胞、造血幹細胞移植だけでなく、間葉系幹細胞移植も寄与することが明らかになった一方で、分化した細胞の移植では免疫寛容は誘導できない(誘導する能力が著しく低い)ことも明らかとなった。
(実施例2)PDGFRaKIマウスからレシピエントマウスへのHSC,MSC移植実験
ドナーマウスをGFPTgマウスからPDGFRaKIマウスに変更した以外は、実施例1と同様の手法にて、移植細胞(造血幹細胞および間葉系幹細胞)の準備、レシピエントへの細胞移植、皮膚移植、ELISA評価、ELISPOT評価を行った。
PDGFRaKIマウスは、PDGFRa陽性の細胞(例えば、間葉系幹細胞)でGFPを発現するマウス(ヒストンH2B-GFP融合遺伝子がPDGFRa遺伝子の遺伝子座に挿入されたヘテロ接合型ノックインマウスでPDGFRa陽性の細胞でGFPを発現するマウス)である。このPDGFRaKIマウスをドナーとして用いて実験した結果を、図3、図4に示す。本実施例において、PDGFRaKIマウス由来のGFPタンパク質は、レシピエントマウスにとっての非遺伝母由来抗原のモデルとなる。
ELISA評価結果
図3は実施例2のELISA評価結果を示した図である。図3は、その縦軸に抗GFP抗体量の相対比を示しており、レシピエントマウスの各グループ毎の抗GFP抗体の産生量を、抗体価が最も高い未処置のマウスの抗体生産量の最大値を1として補正して、その平均値を棒グラフにて、標準偏差をエラーバーとして表したものである。「HSC」で示した棒グラフはPDGFRaKIマウスの造血幹細胞を移植したレシピエントマウスの抗体産生量であり、「MSC」で示した棒グラフは、PDGFRaKIマウスの間葉系幹細胞を移植したレシピエントマウスの抗体産生量である。「control」で示した棒グラフは、比較のために示した細胞移植を行わなかった未処置のマウスの結果である。
図3からも分かるように、GFPが発現している細胞(間葉系幹細胞)をレシピエントマウスに移植した場合に、有意に抗GFP抗体産生量が抑制されており、効果的にGFPに対する免疫寛容が誘導されたことが認められた。
なお、当該結果を統計学的な検定(Student T検定)にて評価したところ、間葉系幹細胞を移植したレシピエントマウスと未処置のマウスとの間には有意差(p=0.0127)があることが示された(図3中に、有意差有りを「アスタリスク(*)」にて表示)。一方、造血幹細胞を移植したレシピエントマウスと未処置のマウスとの間には有意差なしであることが示された(図3中にN.S.にて表示)。即ち、特定の蛋白質(本実験ではGFP)に対するB細胞系免疫寛容を誘導するには、その蛋白質を発現する幹細胞や、その蛋白質を発現する細胞に分化するような幹細胞(本実験では間葉系幹細胞)の移植が関与することが明らかになった。
ELISPOT評価結果
実施例2でのELISPOTによる評価結果を図4に示す。図4は、グラフ縦軸にスポット数を示しており、レシピエントマウスの各グループ毎に、観察されたスポット数を箱ひげにて示した箱ひげ図である。また、グラフ上方には、それぞれのグループに対応つけて、スポットの観察画像を表示している。
「HSC」で示した箱ひげはPDGFRaKIマウスの造血幹細胞を移植したレシピエントマウスの結果であり、「MSC」で示した箱ひげは、PDGFRaKIマウスの間葉系幹細胞を移植したレシピエントマウスの結果である。「control」で示した箱ひげは、比較のために示した細胞移植を行わなかった未処置のマウスの結果である。
図4からも分かるように、未処置のマウスは、スポット数が多く、GFPに対して高い免疫応答性を有している事が示された。また、造血幹細胞を移植したレシピエントマウスでもGFPに対する免疫応答が生じていることが観察された。一方、間葉系幹細胞を移植したマウスは、スポットが殆ど生じておらず、有意に免疫応答性が低減している事が確認された。
なお、当該結果を統計学的な検定(Student T検定)にて評価したところ、間葉系幹細胞を移植したレシピエントマウスと未処置のマウスとの間には有意差(p=0.0265)があることが示された(図4中に、有意差有りを「アスタリスク(*)」にて表示)。一方、造血幹細胞を移植したレシピエントマウスと未処置マウスとの間には有意差が認められなかった(p=0.1378)(図4中にN.S.にて表示)。即ち、特定の蛋白質(本実験ではGFP)に対するB細胞系免疫寛容を誘導するには、その蛋白質を発現する幹細胞や、その蛋白質を発現する細胞に分化するような幹細胞(本実験では間葉系幹細胞)の移植が関与することが明らかになった。
(実施例3)PDGFRaKIマウスを用いたスキングラフト実験
メスのPDGFRaKIマウスとオスの野生型マウスとを交配させ、産まれたF1マウスの6週令に対して、実施例1と同様の方法でGFPTgマウスの皮膚移植を行った。また、比較のためにB6野生型マウス(C57BL/6)に対しても同様に皮膚移植を行った。移植片の残存を、GFP蛍光ライトを用いて観察し、生着率を評価した。生着の判断は、防護サングラスを装着した上で、紫外線ライトを照射し、目視により緑色のGFP発現が見えなくなると脱落したと判断した。
結果を図5に示す。図5は、実施例3において皮膚移植を行ったマウスの皮膚生着率を示した図である。F1マウスには、GFPを発現するマウスと、GFPを発現しないマウスとが出現するが、図5において、GFPを発現するマウスの結果をF1Paとして示し、GFPを発現しないマウスの結果をF1WTとして示す。また、比較する野生型マウスの結果をWTとして示す。本例において、F1WTにとってのGFPが非遺伝母由来抗原となる。
図5(a)は、皮膚生着率の経時変化を示したグラフであり、縦軸は、皮膚移植0日目の生着個体数に対するその後の生着個体数の割合を生着率として示しており、横軸は皮膚移植日を基準日としてその後の経過週数を示している。また、図5(b)は、各グループのマウス(F1Pa、F1WT、WT)について5週目毎の生着個体数(匹)を表した表である。
図5からもわかるように、FIWTは、GFPを発現しない(GFPが抗原となる)個体であるが、移植したGFPTgマウス皮膚の生着率が、野生型マウスよりも高く、母体を介して子マウスへ免疫寛容が誘導されていることが示された。logrank.test にてその差は有意(logrank.test p<0.05)とされた。なお、この結果は、子が本来備えていないタンパク質であっても、母体を介して免疫寛容を誘導できることを示す。
(実施例4)HMGB1投与マウスの子マウスのスキングラフト実験
メスのPDGFRaKIマウスとオスの野生型マウスとを交配させ、妊娠した母マウスの体重1kgあたり3.0mgとなる量のヒト由来のHMGB1タンパク質のアミノ酸残基1-44(配列番号:145)からなるペプチド(以下「HMGB1」と称する)を、10μlのPBSで溶解して1回分の注射液とし(3.0mg/kg、10μl/body)、妊娠中の母マウスに、子マウスが所定の胎齢(E6.5、E9.5、E13.5、E16.5)となるタイミングで全4回、尾静脈から投与した。
そして、出生した子マウス(GFPを発現しない子マウス)が6週令となった段階で、実施例1と同様の方法でGFPTgマウスの皮膚移植を行った。移植片の残存を、GFP蛍光ライトを用いて観察し、生着率として評価した。結果を図6に示す。本実施例において子マウスにとってのGFPが非遺伝母由来抗原となる。
PBS投与マウスの子マウスのスキングラフト実験
HMGB1含有PBSをPBSに変更した以外は、実施例4と同様の方法で母マウスへの投与と子マウス(GFPを発現しないマウス)に対する皮膚移植を行った。結果を実施例4と共に図6に示す。本例において子マウスにとってのGFPが非遺伝母由来抗原となる。
図6は、実施例4において皮膚移植を行ったマウスの皮膚生着率を示した図である。図6において、実施例4のHMGB1投与群の子マウス(GFPを発現しない子マウス)の結果をHMGB1として示し、また、PBS投与群の子マウス(GFPを発現しない子マウス)の結果をPBSとして示す。
図6(a)は、皮膚生着率の経時変化を示したグラフであり、縦軸は、皮膚移植0日目の生着個体数に対するその後の生着個体数の割合を生着率として示しており、横軸は皮膚移植日を基準日としてその後の経過週数を示している。また、図6(b)は、各グループのマウス(HMGB1、PBS)についての5週目毎の生着個体数(匹)を表した表である。
図6からもわかるように、HMGB1投与群の子マウスにおいては、移植皮膚(GFPTgマウス皮膚)の生着率が、40週間目においても20%を超えており、PBS投与群の子マウスの5.9%に比べて高くなった。なお、logrank.test にてその差は有意(logrank.test p<0.05)であると評価された。即ち、抗原となるはずのGFP(子マウスで発現しないタンパク質)に対する免疫寛容が効果的に誘導されていることが示された。すなわち、母体からの自然なマイクロキメリズムによって誘導される免疫寛容に比して、HMGB1の投与により、より一層、免疫寛容が誘導されることが示された。
(実施例5)核タンパク質の断片ペプチドによる間葉系幹細胞の動員
(1)材料および方法
i)ペプチドの製造
以下の表に示す核タンパク質の断片ペプチドを、固相法により化学的に合成した(得られたペプチドは、いずれもトリフルオロ酢酸(TFA)塩の形態である)。
Figure 2020158924
ii)ペプチドの投与
C57BL/6Jマウス(8週齢、雄、体重25g)を用意し、前出の表に記載のペプチドNP-1〜11を投与する群と対照群に分けた。ペプチドの投与は、生理食塩水を溶媒として1μg/μLの濃度に調整した各ペプチドの溶液を100μL/匹の量(ペプチドの投与量としては4mg/kg)で尾静脈に注入することにより行った。対照群には、生理食塩水を100μL/匹の量で尾静脈に注入した。
iii)末梢血からの細胞回収
生理食塩水またはペプチドNP-1〜11の投与から一定時間後(NP-1〜6および8は14時間後、NP-7、10および11は16時間後、NP-9は24時間後)に、全身麻酔下で心臓から末梢血を約800-1000μL採取した(ヘパリンを含有する1 mLシリンジを使用)。赤血球を除去するため、採取した血液と等量のHetasep(STEMCELL Technologies社、Cat No. ST-07906)を加え、100Gで2分間遠心し、室温で15分間インキュベートした後、上清を回収した。当該上清を、末梢血中の有核細胞を含むサンプルとして次の実験に供した。
iv)コロニーアッセイ
上記の手順によって得た上清(末梢血由来細胞含有サンプル)を、コラーゲンIでコートされた6ウェルプレート(Corning社、Cat No. 356400)に播種し、MesenCult Expansion Kit(STEMCELL Technologies社、Cat No. ST-05513)を利用して当該キットのマニュアル通りに調製したExpansion Mediumに1% L-glutamine(ナカライテスク社)、10μM ROCK inhibitor(Y27632、Tocris Bioscience社)および 1% ペニシリン/ストレプトマイシン(ナカライテスク社)を含有させた培地(数値はいずれも終濃度)を用いて、37℃、5%CO2、5%O2の条件下で10日間培養した。培養期間中は1週間に2回、培地を新鮮なものに交換した。培養10日目に、Differential Quik Stain Kit(シスメックス株式会社、Cat No. 16920)を用いてプレート上の細胞を染色し、50個以上の細胞を含むコロニーの数をカウントした。
本発明者らがこれまでに行った実験において、末梢血をディッシュやプレート等の固相上で培養した結果得られるコロニーは全て、固相への付着性と自己複製能を有することに加えて、PDGFRα陽性であり、骨、軟骨、脂肪、上皮等への分化能を有することが確認できている。
また、間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性を有するヒトHMGB1タンパク質のアミノ酸残基1-44からなるペプチド(以下、HMGB1ペプチド1-44)を投与した後の末梢血を固相上で培養した結果得られるコロニーも全て、固相への付着性と自己複製能を有し、PDGFRα陽性であることが確認できており、かつ、トランスクリプトーム解析のデータをクラスタリングし、gene ontology解析を行った結果から、間葉系幹細胞に特徴的な遺伝子発現プロファイルを有することが確認できている。
さらに、生理食塩水投与後の末梢血よりも、HMGB1ペプチド1-44を投与した後の末梢血の方が、固相培養で得られるコロニーの数が多いことも確認済みである。
したがって、末梢血を固相上で培養した結果得られるコロニーは間葉系幹細胞であり、末梢血の固相培養で検出されるコロニー数の増加は、末梢血中の間葉系幹細胞数の増加を示すと考えられる。
また、通常、間葉系幹細胞は末梢血中にはほとんど存在しないため、増加した分の間葉系幹細胞は末梢血以外の組織(例えば骨髄)から末梢血中に動員されたものと考えられる。
以上のことから、被験物質投与後の末梢血の固相培養で検出されるコロニーの数は、当該被験物質が間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性の指標として用いることができる。
(2)結果
ペプチドNP-1〜11のいずれを投与したマウスにおいても、生理食塩水を投与したマウスと比較して、末梢血由来細胞の培養によってプレート上に得られるコロニーの数が多かった(図7〜10)。
上述の通り、本明細書に記載のコロニーアッセイで検出されるコロニー数の増加は、末梢血中の間葉系幹細胞数の増加を示すから、これらの結果は核タンパク質の断片ペプチドが間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性を有することを実証するものである。
(実施例6)人工配列ペプチドによる間葉系幹細胞の動員
(1)材料および方法
i)ペプチドの製造
配列番号:146のアミノ酸配列からなる人工配列ペプチドを化学的に合成した(得られたペプチドはトリフルオロ酢酸(TFA)塩の形態である)。以下、当該ペプチドを「人工配列ペプチド1r10」または「ペプチド1r10」と称する。
ii)ペプチドの投与
C57BL/6Jマウス(8週齢、雄、体重25g)を用意し、人工配列ペプチド1r10を投与する群と対照群に分けた。ペプチドの投与は、生理食塩水を溶媒として1μg/μLの濃度に調整したペプチド1r10の溶液を100μL/匹の量(ペプチドの投与量としては4mg/kg)で尾静脈に注入することにより行った。対照群には、生理食塩水を100μL/匹の量で尾静脈に注入した。
iii)末梢血からの細胞回収
生理食塩水または人工配列ペプチド1r10の投与から14時間後に、全身麻酔下で心臓から末梢血を約800-1000μL採取した(ヘパリンを含有する1 mLシリンジを使用)。赤血球を除去するため、採取した血液と等量のHetasep(STEMCELL Technologies社、Cat No. ST-07906)を加え、100Gで2分間遠心し、室温で15分間インキュベートした後、上清を回収した。当該上清を、末梢血中の有核細胞を含むサンプルとして次の実験に供した。
iv)コロニーアッセイ
上記の手順によって得た上清(末梢血由来細胞含有サンプル)を、コラーゲンIでコートされた6ウェルプレート(Corning社、Cat No. 356400)に播種し、MesenCult Expansion Kit(STEMCELL Technologies社、Cat No. ST-05513)を利用して当該キットのマニュアル通りに調製したExpansion Mediumに1% L-glutamine(ナカライテスク社)、10μM ROCK inhibitor(Y27632、Tocris Bioscience社)および 1% ペニシリン/ストレプトマイシン(ナカライテスク社)を含有させた培地(数値はいずれも終濃度)を用いて、37℃、5%CO2、5%O2の条件下で10日間培養した。培養期間中は1週間に2回、培地を新鮮なものに交換した。培養10日目に、Differential Quik Stain Kit(シスメックス株式会社、Cat No. 16920)を用いてプレート上の細胞を染色し、50個以上の細胞を含むコロニーの数をカウントした。
上記のとおり、末梢血を固相上で培養した結果得られるコロニーは間葉系幹細胞であり、末梢血の固相培養で検出されるコロニー数の増加は、末梢血中の間葉系幹細胞数の増加を示すと考えられる。よって、被験物質投与後の末梢血の固相培養で検出されるコロニーの数は、当該被験物質が間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性の指標として用いることができる。
(2)結果
ペプチド1r10を投与したマウスでは、生理食塩水を投与したマウスと比較して、末梢血由来細胞の培養によってプレート上に得られるコロニーの数が多かった(図11)。
上述の通り、本明細書に記載のコロニーアッセイで検出されるコロニー数の増加は、末梢血中の間葉系幹細胞数の増加を示すから、これらの結果はペプチド1r10が間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性を有することを実証するものである。
本願の医薬は、将来の疾患治療に備えて、当該子の胎児期に免疫寛容を誘導するための免疫寛容化剤として用いることができる。

Claims (25)

  1. 子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬であって、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質を含む、医薬。
  2. 子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬であって、骨髄幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質を含み、該母親の骨髄由来幹細胞が該非遺伝母由来抗原を有する、医薬。
  3. 該医薬が該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための他の医薬と組み合わせて用いるための医薬である、請求項1または2に記載の医薬。
  4. 該子を懐胎している母親が、疾患を有する子を懐胎している母親であり、該医薬が該子における該疾患を治療するための医薬と組み合わせて用いるための医薬である、請求項1または2に記載の医薬。
  5. 該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、請求項4に記載の医薬:
    (a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
  6. 該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、請求項4に記載の医薬。
  7. 該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、請求項4に記載の医薬:
    (a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;
    (b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
    (c)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
  8. 該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、請求項4に記載の医薬:
    (a)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
    (b)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
  9. 該子における該疾患を治療するための医薬が、該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質を含む、新生児期以降の該子への投与により、該子における該疾患を治療するための医薬である、請求項4に記載の医薬。
  10. 該物質が、HMGB1タンパク質またはその断片ペプチドである、請求項1から9のいずれかに記載の医薬。
  11. 子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬であって、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む医薬:
    (a)子を懐胎している母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および
    (b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
  12. 該医薬が該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導するための他の医薬と組み合わせて用いるための医薬である、請求項11に記載の医薬。
  13. 該子を懐胎している母親が、疾患を有する子を懐胎している母親であり、該医薬が該子における該疾患を治療するための医薬と組み合わせて用いるための医薬である、請求項11に記載の医薬。
  14. 該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、請求項13に記載の医薬:
    (a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞;および(b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞。
  15. 該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された骨髄由来幹細胞を含む、胎児期の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、請求項13に記載の医薬。
  16. 該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有さない母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、請求項13に記載の医薬:
    (a)該母親に由来し、該非遺伝母由来抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;
    (b)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
    (c)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
  17. 該疾患を有する子を懐胎している母親が、該疾患を有する母親であり、該子における該疾患を治療するための医薬が、以下から選択される単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器を含む、新生児期以降の該子への移植により、該子における該疾患を治療するための医薬である、請求項13に記載の医薬:
    (a)該母親と同種同系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器;および
    (b)該母親と同種異系の該疾患を有さないドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する、単離された骨髄由来幹細胞、単離された組織または単離された臓器。
  18. 該子における該疾患を治療するための医薬が、該非遺伝母由来抗原と同一の単離されたタンパク質を含む、新生児期以降の該子への投与により、該子における該疾患を治療するための医薬である、請求項13に記載の医薬。
  19. 該疾患が、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容が誘導される結果として治療可能となる疾患である、請求項4から9および13から18のいずれかに記載の医薬。
  20. 該疾患が、該非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫反応が抑制される結果として治療可能となる疾患である、請求項4から9および13から18のいずれかに記載の医薬。
  21. 該幹細胞が、間葉系幹細胞または造血系幹細胞である、請求項1から20のいずれかに記載の医薬。
  22. 該幹細胞が、間葉系幹細胞である、請求項1から20のいずれかに記載の医薬。
  23. 子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬であって、間葉系幹細胞を末梢血中に動員する活性を有する物質を含み、該母親の骨髄由来幹細胞が該非遺伝母由来抗原を有する、医薬。
  24. 該物質が、HMGB1タンパク質またはその断片ペプチドである、請求項23に記載の医薬。
  25. 子を懐胎している母親への投与により、該子にとっての非遺伝母由来抗原またはそれと同一の抗原に対する該子における免疫寛容を誘導することに用いるための医薬であって、以下から選択される単離された間葉系幹細胞を含む医薬:
    (a)子を懐胎している母親に由来し、該子にとっての非遺伝母由来抗原を有する単離された間葉系幹細胞;および
    (b)該母親と同種同系のドナーに由来し、該非遺伝母由来抗原と同一の抗原を有する単離された間葉系幹細胞。
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