JP6722598B2 - 関節リウマチ治療のための間葉系間質細胞 - Google Patents

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Description

本発明は、間葉系間質細胞の使用を含む、関節リウマチの治療方法に関する。
関節リウマチ(RA)は、免疫学的自己寛容の喪失によって引き起こされ、関節の慢性的炎症及びその後の軟骨の破壊及び骨侵食にいたる自己免疫疾患である。疾患の発症の元となる極めて重要なプロセスは、コラーゲンに富む関節成分に対する自己免疫の誘導と、これに続いて展開される免疫及び炎症応答と関連するその後の事象である。関節リウマチの治療は、先進諸国の医療制度にとって、そして次第に途上国にとっても重大な課題である。関節リウマチの発症率は、世界的に一般集団の0.5%〜1%の間であり、国による罹患率の変動はほとんどない。関節リウマチは全世界で2,100万人を超える患者が存在し(UN World Population Database, 2004)、患者の生活の質に大きな影響を有し、大きな経済的及び社会的コストを生じさせる。RAの治療に伴う経済的負荷は医療経済にとって大きなものであり、この疾患の年間の経済的コストを合わせると、欧州全体で455億ユーロにもなると推測されている。
伝統的に、RAは非ステロイド系抗炎症剤、グルココルチコイド及び非生物製剤DMARDで治療されてきた。関節リウマチの現在の薬理学的管理は、一般的に合成の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)を単独又は組み合わせて使用した早期の介入を含む。これらの手段によって炎症が適切に抑制できない場合、典型的には炎症性サイトカインTNFを標的とする生物学的DMARDが利用される。ここ十年の間に、生物製剤の導入によって関節リウマチ患者のための治療選択肢が向上した。生物製剤は、最初にTNF-αを中和するためのものが、新規分子の数及びそれらが対象とする標的の双方の点で、ここ数年の間に大きく発展した。一部の患者での有効性の欠如、非-忍容性又は再発する二次感染が、新たな治療法の開発を必要とする要因である。それにもかかわらず、関節リウマチでは、関節リウマチ患者のおよそ20-40%が抗-TNFに対して適切な応答をしないという、臨床的に解決されていない需要が残っている。
間葉系間質細胞療法は、関節リウマチなどの炎症性疾患及び自己免疫疾患の治療のためのアプローチとして提案されてきた。間葉系間質細胞(MSC)は、骨、軟骨、筋肉、靭帯、腱、及び脂肪等の間葉系組織に分化することができる非造血系間質細胞である。MSCは骨髄又は脂肪組織等の組織から容易に単離し、培養で急速に増大させることができる。MSCは免疫応答を調節することができ、抗増殖能及び抗炎症能を示すものであり、これが免疫介在性の炎症状態の治療のための療法候補としてこれらを使用し得る根拠である。しかしながら、関節リウマチの分野における細胞治療のための有効な臨床的投与量及び投与レジメンを確立する必要性が存在する。
間葉系間質細胞(MSC)、特にヒト脂肪組織由来間質細胞(hASC)の投与が関節リウマチの治療において有用であり得ることが見出された。
従って、本発明は、被験体における関節リウマチの治療において使用するための、例えば被験体における関節リウマチの治療方法において使用するための、間葉系間質細胞(MSC)を含有する組成物を提供する。
本発明はまた、被験体における関節リウマチを治療するための医薬の製造における間葉系間質細胞(MSC)の使用を提供する。
本発明はまた、被験体に間葉系間質細胞を含有する組成物を投与することを含む、それを必要とする被験体における関節リウマチの治療方法を提供する。
一態様において、本発明は、CDAIスコア>10〜≦22を有し、場合によってDAS28スコア>3.2〜≦5.1及び/又はRAPID3スコア>6〜≦12を有する中等度の関節リウマチを有するヒト被験体における関節リウマチの治療において使用するための間葉系間質細胞(MSC)を含有する組成物を提供する。
コラーゲン注射の21-54日後における関節炎スコア(A)及び発症率(B)を示す。「CIA」=処置なし;「CIA+ASC d15,d18,d21」=コラーゲン注射の15、18及び21日後におけるASCの静脈内注射。 1-59日目(1日目=最初のASC投与)における関節炎スコアを示す。ASCは、1、3及び5日目のみに静脈内投与するか、またはその後8、15、22及び29日目に続けて投与した。 ASC(用量あたり8,000、40,000、200,000又は1,000,000個のASC)の1、3及び5日目(1日目=最初のASC投与)における3回の静脈内投与の効果を示す。 ASC(用量あたり8,000、40,000、200,000又は1,000,000個のASC)の1、8及び15日目(1日目=最初のASC投与)における3回の静脈内投与の効果を示す。 健常マウス、未処置の関節炎マウス(「CIA」)、及び静脈内投与によってASCで処置された関節炎マウス(「CIA+ASC IV」)における22日目の(A)IL6;(B)IL17;(C)IL23;及び(D)CD3+CD25bright(調節性T細胞)のレベルを示す。 未処置の関節炎マウス(「CIA」)及び静脈内投与によってASCで処置された関節炎マウス(「CIA+ASC」)における50日目の骨ミネラル密度(A)及び骨梁(trabecular)ミネラル密度(B)を示す。 未処置の関節炎マウス(左のバー)及びリンパ管内投与によってASCで処置された関節炎マウス(右のバー)における50日目の骨ミネラル密度(A)及び骨梁ミネラル密度(B)を示す。 初期関節炎におけるリンパ管内投与の効果を示す。関節炎スコア(A及びB)及び足の体積(C及びD)。 健常マウス、未処置の関節炎マウス(「CIA」)、及びASCのリンパ管内投与後の関節炎マウス(「CIA+ASC IL」)の脾臓(A)及びリンパ節(B)における調節性T細胞(CD4+CD25+FoxP3+cells)のレベルを示す。 健常マウス、未処置の関節炎マウス(「CIA」)、及びASCのリンパ管内投与後の関節炎マウス(「CIA+ASC IL」)の脾臓(A)及びリンパ節(B)におけるIL10発現CD4細胞(TR1細胞)のレベルを示す。 数回の通院(V4-V9)にわたって記録された、ベースラインにおけるDAS28<4.5(下限)又は>5.5(上限)から開始した(A)及びベースラインに正規化した(B)におけるASC処置ヒト患者亜集団におけるDAS28応答を示す。 数回の通院(V4-V9)にわたって記録された、ベースラインにおけるCDAI<22(下限)又は>22及び<40(上限)から開始した(A)及びベースラインに正規化した(B)におけるASC処置ヒト患者亜集団におけるCDAIレベルを示す。 試験を通してACR20(A)、ACR50(B)、及びACR70(C)を達成したASC処置患者(ITT集団)を示す。 試験を通して良好なEULAR応答(A);低い疾患活性(DAS28-ESR<3.2)(B);臨床的寛解(DAS28-ESR<2.6)(C);及び試験を通して基準からのDAS28-ESR変化を示す(D)ASC処置患者(ITT集団)を示す。
定義
本明細書において使用する場合、以下の用語及び語句は、以下に示す意味を有するものとする。他に定義しない限り、本明細書において使用する全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
冠詞「a」及び「an」は、1個、又は1個より多い(すなわち少なくとも1個の)文法上の対象物品を意味する。例えば、「an element」は、1個の要素(element)、又は1個より多い要素を意味する。
用語「約(about)」は、数値と関連して使用する場合、その数値±10%に関する。
「脂肪組織(adipose tissue)」とは、任意の脂肪組織(fat tissue)を意味する。脂肪組織は、例えば皮下、大網(omental)/内臓、乳腺(mammary)、生殖腺(gonadal)、若しくは他の脂肪組織部位由来の褐色又は白色脂肪組織であり得る。好ましくは、脂肪組織は皮下の白色脂肪組織である。脂肪組織は、初代細胞培養又は不死化細胞株を含み得る。脂肪(adipose)組織は、脂肪(fat)組織を有する任意の生物由来のものであり得る。一部の実施形態において、脂肪組織は哺乳動物由来であり、更なる実施形態において、脂肪組織はヒト由来である。脂肪組織の都合の良い供給源は脂肪吸引手術である。しかしながら、脂肪組織の供給源、及び脂肪組織の単離方法のいずれも、本発明にとって重要なものではないことが理解されるであろう。本明細書に記載される細胞が被験体への自己移植のために望ましい場合、脂肪組織はその被験体から単離されるであろう。
「脂肪組織由来間質細胞(ASC)」とは、脂肪組織、一般的にヒト脂肪組織(hASC)に由来するMSCをいう。
「抵抗性」は、疾患の治療において使用する場合に有意な臨床的有益性を有さないこと、例えば症状の有意な改善若しくは軽減がないこと、疾患の後の再発又は毒性をもたらすこと等を意味するものと理解されるべきである。
用語「生物学的医薬品」は、典型的には天然の(遺伝子操作されていない)生物学的起源からの直接的な抽出以外の手段によって製造される、治療的用途のためのタンパク質又は核酸ベースの医薬的物質を意味するものと理解されるべきである。
本明細書において使用する用語「細胞/kg」は、患者の体重1kgあたりで投与される細胞(例えばMSC)数を意味するものと理解されるべきである。
用語「構成的」は、いかなる特別な誘導もない遺伝子の発現を意味するものと理解される。
用語「培養」は、培地中での細胞、生物、多細胞物、又は組織の増殖をいう。用語「培養する」は、そのような増殖を達成する任意の方法をいい、複数の段階を含み得る。用語「更に培養する」は、細胞、生物、多細胞物、又は組織を増殖の特定の段階まで培養し、次いで別の培養方法を使用して該細胞、生物、多細胞物、又は組織を増殖の別の段階まで培養することをいう。「細胞培養」とは、in vitroにおける細胞の増殖をいう。そのような培養において、細胞は、増殖するが、それ自体で組織まで構造化しない。「組織培養」は、組織、例えばその構造及び機能を維持するような始原臓器又は成体臓器のin vitroでの移植片の維持又は増殖をいう。「単層培養」は、細胞が互いにまた基質に主として接着しながら好適な媒体中で増殖する培養をいう。更に、「懸濁培養」は、細胞が好適な媒体中に懸濁しながら増殖する培養をいう。同様に、「連続流動培養」は、細胞の増殖、例えば生存を維持するための新鮮な培地の連続流中での細胞又は移植片の培養をいう。用語「条件付き培地」は、細胞によって産生され、培養中に分泌される特定のパラクリン及び/又はオートクリン因子を含むように培地が改変された、培養細胞と接触した一定時間の後に得られる、例えば培養した細胞/組織を含まない上清をいう。「コンフルエント培養」は、全ての細胞が接触し、従って培養容器の全表面がおおわれた細胞培養であり、細胞がその最大密度に達していることも意味するが、コンフルエンスは必ずしも分裂が停止すること、又はその集団が大きくならないことを意味しない。
用語「培養培地」又は「培地」は、当分野において認識されており、一般的に生きた細胞の培養のために使用される任意の物質又は調製物をいう。細胞培養に関連して使用する用語「培地」は、細胞を囲む環境の構成成分を含む。培地は固体状、液体状、気体状又は複数の相及び物質の混合物であって良い。培地には液体増殖培地、並びに細胞増殖を維持しない液体培地が含まれる。培地はまた、寒天、アガロース、ゼラチン及びコラーゲンマトリクス等のゲル状の培地も含む。気体状培地の例としては、ペトリ皿又は他の固体若しくは半固体の支持体上で増殖している細胞が暴露している気相が挙げられる。用語「培地」はまた、細胞とまだ接触していなくても、細胞培養において使用することが意図される物質をもいう。言い換えれば、細菌の培養のために調製された栄養豊富な液体は培地である。同様に、水又は他の液体と混合した場合に細胞培養に適するようになる粉末混合物は「粉末化培地」と呼ぶことがある。「規定培地」は化学的に規定された(通常は精製された)成分からなる培地をいう。「規定培地」は、酵母抽出物及びビーフブロス等の、あまり性状解析されていない生物学的抽出物は含まない。「富栄養培地」は、特定の種のほとんど又は全ての生存形態の増殖を支持するように設計されている培地を含む。富栄養培地はしばしば複雑な生物学的抽出物を含む。「高密度培養の増殖に適した培地」は、他の条件(例えば温度及び酸素移動速度)がそのような増殖を許容する場合に、細胞培養物が3以上のOD600に達することを可能とする任意の培地である。用語「基本培地」は、任意の特定の栄養補給を必要としない、多くの型の微生物の増殖を促進する培地をいう。ほとんどの基本培地は、一般的に4つの基本的な化学物質群:アミノ酸、炭水化物、無機塩、及びビタミンを含有する。基本培地は一般的に、血清、緩衝剤、増殖因子、脂質等の補給物が添加される、より複雑な培地のための基礎として機能する。基本培地の例としては、限定するものではないが、イーグル基本培地、最小必須培地、ダルベッコ改変イーグル培地、培地199、栄養混合物Ham's F-10及びHam's F-12、McCoy's 5A、ダルベッコMEM/F-I 2、RPMI 1640、及びイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)が挙げられる。
用語「含む(comprise)」及び「含有する(comprising)」は、包含的、開いた意味(open sense)で使用され、更なる要素を含めても良いことを意味する。
細胞に関連して本明細書において使用する用語「増大した(expanded)」は、当分野における通常の意味を有するもの、すなわちin vitroで増殖された細胞と理解されるべきである。MSCは、MSCの少なくとも1つの生物学的機能、典型的には標準的な培養条件下でプラスティック表面に接着する能力を保持する細胞の集団を提供するために増大させることができる。細胞の増大した集団は、1以上の細胞型に分化する能力を保持し得る。
用語「〜を含む(including)」は、本明細書において「〜を含むがこれに限定されない」ことを意味するために使用される。「〜を含む」及び「〜を含むがこれに限定されない(限定されるものではないが〜を含む)」は互換的に使用される。
「マーカー」は、その存在、濃度、活性、又はリン酸化状態を検出して細胞の表現型を特定するために使用することができる生物学的分子をいう。
「間葉系間質細胞」(本明細書において「MSC」ともいう)は多能性間質細胞であり、すなわち、複数の異なる型の細胞を生じさせることができる細胞である。
方法によって治療されるべき「患者」、「被験体」又は「宿主」は、ヒト又は非ヒト動物のいずれかを意味し得る。
用語「医薬組成物」は、治療において使用することが意図される組成物をいう。本発明の組成物は、関節リウマチの治療において使用することが意図される医薬組成物である。本発明の組成物は、MSCに加えて、非細胞性成分を含み得る。そのような非細胞性成分の例としては、限定するものではないが、タンパク質、アミノ酸、核酸、ヌクレオチド、補酵素、抗酸化剤及び金属の1種以上を含み得る細胞培養培地が挙げられる。
用語「製薬上許容される」は、本明細書において、妥当な医学的判断の範囲内で、合理的なベネフィット/リスク比と釣り合って、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題若しくは合併症なしにヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適な化合物、物質、組成物、及び/又は投与形態をいうために用いられる。
本明細書において使用される用語「製薬上許容される担体」は、ある器官若しくは身体の一部から別の器官若しくは身体の一部に対象化合物を運ぶ又は輸送するのに関わる、液体若しくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、又は溶媒カプセル化物質等の、製薬上許容される物質、組成物又はベヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合可能であるという意味で「許容される」ものでなければならず、患者にとって有害なものであってはならない。
用語「表現型」は、大きさ、形態、タンパク質発現等の細胞の観察可能な性質をいう。
「増殖(proliferation)」は、細胞数の増加をいう。「増殖する(proliferating)」及び「増殖」は、有糸分裂をしている細胞をいう。
「抵抗性」は、疾患の治療において使用する場合に、有意な臨床的有益性を有さないこと、例えば症状の有意な改善若しくは軽減がないこと、又は疾患のその後の再発を意味するものと理解されるべきである。
本明細書において使用する場合、用語「溶液」は、本発明において使用するMSCがその中で生存できる製薬上許容される担体又は希釈液を含む。
MSC集団に関して使用する用語「実質的に純粋」とは、細胞の数で少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%がMSCである細胞の集団をいう。言い換えると、MSC集団に関して使用する用語「実質的に純粋」とは、系統が拘束された細胞を細胞数で約20%未満、約10%未満、又は約5%未満含有する細胞の集団をいう。
本明細書において使用する「支持体」は、脂肪組織由来間質細胞の増殖のための土台若しくはマトリクスとして機能し得る任意のデバイス又は物質をいう。
「治療剤」又は「治療薬」とは、宿主に対して望ましい生物学的効果を有することができる薬剤をいう。化学療法剤及び遺伝毒性物質は、それぞれ、生物製剤とは異なり、化学物質起源であることが一般に知られているか、あるいは特定の作用メカニズムによって治療効果を生じる治療剤の例である。生物学的起源の治療剤の例としては、増殖因子、ホルモン、及びサイトカインが挙げられる。様々な治療剤が当分野において知られており、その効果によって特定され得る。特定の治療剤は細胞増殖及び分化を調節することができる。例としては、化学療法ヌクレオチド、薬剤、ホルモン、非特異的(非抗体)タンパク質、オリゴヌクレオチド(例えば標的核酸配列(mRNA配列等)に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド)、ペプチド、及びペプチド模倣薬が挙げられる。
本明細書において使用する「最初の診断」は、好ましくは臨床的に受け入れられている基準に基づいて、関節リウマチの適任の医師(例えばリウマチ専門医、一般開業医、MD、ナース・プラクティショナー)による最初の診断を意味するものと理解されるべきである。
「疾患期間」とは、疾患の症状が始まってからの時間を意味するものと解釈されるべきである。
適応
本発明は、炎症性関節疾患の治療における間葉系間質細胞(以下「MSC」ともいう)の新規使用、並びにそのような使用に適した間葉系間質細胞の組成物及びその調製方法を提供する。一実施形態において、炎症性関節疾患は関節リウマチである。一実施形態において、炎症性関節疾患は進行性又は多周期型(polycyclic)関節リウマチである。一実施形態において、炎症性関節疾患は中等度又は重度の関節リウマチである。
診断及び重症度の分類は、好ましくは米国リウマチ学会(American College of Rheumatology、ACR)又は欧州リウマチ学会(The European League Against Rheumatism、EULAR)によって確立されたもの等の臨床的に受け入れられた基準、例えば疾患活性スコア28-関節数(Disease Activity Score 28-joint count、DAS28)、臨床的疾患活性指標(Clinical Disease Activity Index、CDAI)、及び患者指標データのルーチン評価3(the Routine Assessment of Patient Index Data 3、RAPID3)を使用して実施する。一実施形態において、DAS28スコア>3.2〜≦5.1は中等度とみなされ、DAS28スコア>5.1は重度とみなされる。別の実施形態において、CDAIスコア>10〜≦22は中等度とみなされ、CDAIスコア>22は重度とみなされる。更なる別の実施形態において、RAPID3スコア>6〜≦12は中等度とみなされ、RAPID3スコア>12は重度とみなされる。
従って、本発明は、患者における中等度の関節リウマチの治療において使用するためのMSCを提供するものであり、ここで、疾患はDAS28スコア>3.2〜≦5.1、CDAIスコア>10〜≦22、及び/又はRAPID3スコア>6〜≦12を有する。
このような患者は、典型的には「初期の関節リウマチ」を有する。歴史的には、初期の関節リウマチは5年未満の疾患と考えられていたが、1990年代の初頭までに、これは24カ月未満にまで下げられ、最初の12カ月がより重視されるようになった。現在、多くのリウマチ専門医が、初期RA患者を最初の機会に診たいと考えている。症状の発症から6週間以内の患者を診たいと考えるリウマチ専門医の比率は、1997年の9%から2003年の17%に倍増しているが、全ての患者がそれ程早期に診察されている訳ではない(D. L. Scott, Early rheumatoid arthritis, British Medical Bulletin 2007; 81 及び 82: 97-114)。
従って、本発明はまた、患者における中等度の関節リウマチの治療における使用のためのMSCを提供するものであり、ここで疾患はCDAIスコア>10〜≦22、任意にDAS28スコア>3.2〜≦5.1及び/又はRAPID3スコア>6〜≦12であり、関節リウマチは初期関節リウマチ、例えば最初の診断若しくは疾患の症状の発症から約6カ月以内、又は最初の診断若しくは疾患の症状の発症から約12カ月以内のものである。実施例には、特に良好な治療効果がこの亜集団において達成されることが示される。
本発明はまた、患者における重度の関節リウマチの治療における使用のためのMSCを提供し、ここで疾患はDAS28スコア>5.1、CDAIスコア>22及び/又はRAPID3スコア>12を有する。
本発明の好ましい実施形態において、MSCは最初の診断から約6カ月以内、最初の診断から約12カ月以内、最初の診断から約18カ月以内、最初の診断から約2年以内、最初の診断から約3年以内、最初の診断から約4年以内、最初の診断から約5年以内の患者における関節リウマチの治療において使用される。
本発明の好ましい実施形態において、MSCは約6カ月以内の疾患期間、約12カ月以内の疾患期間、約18カ月以内の疾患期間、約2年以内の疾患期間、約3年以内の疾患期間、約4年以内の疾患期間、約5年以内の疾患期間を有する患者における関節リウマチの治療において使用される。
典型的には、MSCは疾患の急性期の患者における関節リウマチの治療において使用される。
関節リウマチの文脈における用語「急性期」は、軽度又は中等度のみの炎症ではなく、1以上の関節の顕著な炎症を経験している患者を意味するものと理解されるべきである。急性期はまた、当分野において「フレア(flares)」ともいう。
急性関節リウマチの診断方法は当分野において公知であり、赤血球沈降速度(ESR)及び/又は血清C-反応性タンパク質(CRP)レベルの分析が挙げられ、例えば50以上のESRは急性であるとみなされる。
MSCは、特に炎症部位において、免疫調節効果を付与することが見出された。炎症性マーカーの上昇によって特徴づけられる関節リウマチの急性フレアの間(すなわち急性期の間)、外部から送達されたMSCは炎症性免疫応答の調節、及び結果として生じる炎症性サイトカイン環境の抑制を介する治療剤である。従ってMSCは、不可逆的なプロセスが確立する前の急性期における関節リウマチの治療において特に効果的である。従って、本発明は、疾患の急性期の患者における関節リウマチの治療において使用するためのMSCを提供する。
本発明の好ましい実施形態において、MSCは、関節リウマチの治療のための少なくとも1種、2種又は3種の療法に対して抵抗性である患者における関節リウマチの治療において使用される。典型的には、患者は上記治療を少なくとも約6、12、18、24又は36週間受け、それでもなお活動性疾患の症状を呈する。言い換えれば、少なくとも約6、12、18、24又は36週間の治療後でさえも、疾患の重症度は軽減しない。
上記療法には、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、生物学的医薬品及びコルチコステロイドの1種以上が含まれ得る。NSAIDとしては、限定するものではないが、Cox-2阻害剤、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン、セレコキシブ、メフェナム酸、エトリコキシブ(etoricoxib)、インドメタシン及びアスピリンが挙げられる。コルチコステロイドとしては、限定するものではないが、トリアムシノロン、コルチゾン、プレドニゾン、及びメチルプレドニゾロンが挙げられる。疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)としては、限定するものではないが、アウラノフィン(auranofin)、クロロキン、シクロスポリン、シクロフォスファミド、金調製物、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド(leflunomide)、メトトレキセート、ペニシラミン、アウロチオマレイン酸ナトリウム、スルファサラジンが挙げられる。
一実施形態において、患者は、好ましくはヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキセート、ミノサイクリン、及びスルファサラジンからなる群から選択される少なくとも2種又は3種のDMARD(例えばメトトレキセート及びヒドロキシクロロキン;メトトレキセート及びレフルノミド;メトトレキセート及びスルファサラジン;スルファサラジン及びヒドロキシクロロキン;メトトレキセート、ヒドロキシクロロキン及びスルファサラジン)に対して治療抵抗性である。
これらの薬剤は、特定の抗炎症の分子的経路を標的とする。これに対して、MSCはより生理学的なアプローチを提供するものであり、複数の炎症性の経路を調節し、病的な過度の炎症応答を抑制することを含む。MSCはまた、炎症促進性サイトカイン及び抗炎症性サイトカインの生理的均衡がとれるような負のフィードバックループのためのメカニズムを提供するが、これは既定量の抗炎症性薬剤の単なる送達では不可能である。従って、本発明のMSCは、任意の抗炎症性薬剤に対して治療抵抗性である患者における関節リウマチの治療において特に有効である。一実施形態において、患者は少なくともメトトレキセートに対して治療抵抗性であることが特に好ましい。一実施形態において、患者は、メトトレキセートと、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、ミノサイクリン、及びスルファサラジンからなる群より選択される1種以上のDMARDとを含む、少なくとも2種又は3種のDMARDに対して治療抵抗性である。
更なる実施形態において、患者は、メトトレキセートと、コルチコステロイド、非ステロイド系抗炎症剤、及びDMARD(例えばレフルノミド及び/又はスルファサラジン)の少なくとも1種、2種又は全てとを含む併用療法、例えばメトトレキセート及びプレドニゾン;又はメトトレキセート、スルファサラジン及びプレドニゾンに対して治療抵抗性であることが好ましい。一実施形態において、患者は少なくともレフルノミドに対して治療抵抗性であることが特に好ましい。更なる実施形態において、患者はレフルノミド及びメトトレキセートの双方に対して少なくとも治療抵抗性であることが好ましい。
更なる実施形態において、患者はメトトレキセート及びシクロスポリンに対して治療抵抗性であることが好ましい。これらの患者はTNF療法に対して非応答者である可能性が高い。
更なる実施形態において、患者は、メトトレキセート、レフルノミド、及び、コルチコステロイド、非ステロイド系抗炎症剤、及びスルファサラジンの少なくとも1種、2種若しくは全てを含む併用療法、例えばメトトレキセート、レフルノミド、DMARD(例えばヒドロキシクロロキン及び/又はスルファサラジン)、コルチコステロイド(例えばプレドニゾン)に対して治療抵抗性であることが好ましい。
典型的には、患者は少なくともメトトレキセートで少なくとも約6、12、18、24又は36週間の治療を受けており、活動性疾患を有する。言い換えれば、少なくとも約6、12、18、24又は36週間の治療後でさえ、疾患の重症度は軽減されていない。
場合によって、患者は生物学的医薬品を投与されていても良い。生物学的医薬品としては、限定するものではないが、選択的共刺激モジュレーター、TNF-α阻害剤、IL-1阻害剤、IL-6阻害剤及びB細胞標的化治療剤が挙げられる。典型的には、患者は少なくとも1種の生物学的治療、例えばTNF-α阻害剤に対して抵抗性である。従って、本発明の一態様において、患者は、TNF-α阻害剤、典型的にはアダリムマブ(フミラ)、セルトリズマブ(シムジア)、エタネルセプト(エンブレル)、ゴリムマブ(シンポニー)、又はインフリキシマブ(レミケード)である少なくとも1種の生物学的治療に対して抵抗性である。典型的には、患者は、場合によって少なくとも一方がTNF-α阻害剤であり得る少なくとも2種の生物学的治療に対して抵抗性である。一実施形態において、患者は、少なくともメトトレキセート及びTNF-α阻害剤に対して治療抵抗性であり、ここでTNF-α阻害剤は、アダリムマブ、エタネルセプト及びインフリキシマブを含む群から選択されることが特に好ましい。
更なる実施形態において、患者は少なくともレフルノミド及びTNF-α阻害剤に対して治療抵抗性であり、ここでTNF-α阻害剤はアダリムマブ、エタネルセプト及びインフリキシマブを含む群から選択されることが特に好ましい。更なる実施形態において、患者は少なくともレフルノミド、メトトレキセート及びTNF-α阻害剤に対して治療抵抗性であり、ここでTNF-α阻害剤はアダリムマブ、エタネルセプト及びインフリキシマブを含む群から選択されることが特に好ましい。
本発明はまた、メトトレキセートに対して治療抵抗性である疾患の急性期の患者における関節リウマチの治療において使用するためのMSCを提供する。好ましくは、患者は更にDMARD、例えばシクロスポリンに対して治療抵抗性である。
実施例は、関節炎がASCを投与することによって治療され得ること、及びASCを疾患の初期/中期の段階で最初に投与する場合に治療効果が特に良好であることを示す。驚くべきことに、ASCによる処置を中断した後でさえも、有用な長期の治療効果が観察される。ASC投与、例えば1日又は1週間の間隔をあけた3回又は7回の投与の全期間にわたって有益性が観察される(図1〜4)。ASCの反復投与、例えば1日又は1週間の間隔をあけた3回の投与は、ASC投与から6カ月後でさえもヒト患者、特に中等度の関節リウマチを有する患者において有益であることが示された(図12)。
従って、一態様において、本発明は、MSCが繰り返し投与される、すなわち2以上の用量、例えば少なくとも3回用量、少なくとも4回、5回、6回、7回、8回、9回、又は10回用量が投与される、被験体における関節リウマチの治療における使用のためのMSCを提供する。投与の間隔は毎日、毎週、又は毎月であり得る。MSCは、1週間以内の期間(例えば1日おき、例えば1日目及び3日目、又は1日目、3日目及び5日目、又は1日目、3日目、5日目及び7日目)で投与することができ、あるいはMSCは1週間以上の期間(例えば1日目、8日目及び15日目、ここで1日目はMSCの最初の投与を示す)で、例えば少なくとも4週間、少なくとも1カ月間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも5カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも9カ月間、又は少なくとも12カ月間投与することができる。これらの実施形態のそれぞれにおいて、関節リウマチは、ベースライン(すなわち最初のASC投与時)で測定してCDAIスコア>10〜≦22、任意にDAS28スコア>3.2〜≦5.1、及び/又はRAPID3スコア>6〜≦12を有する中等度の関節リウマチであり得る。典型的には、MSCはASC、例えばヒトeASCであり、任意にリンパ管内に、例えばリンパ管内注入によって投与される。
実施例はまた、ASCによる処置が、未処置のマウスと比較して、炎症促進性サイトカインIL6、IL17、及びIL23のレベルを有意に低下させ、調節性T細胞(CD3+CD25bright)のレベルを上昇させることを示す(図5)。従って、一実施形態において、本発明は、被験体における関節リウマチの治療において使用するためのMSCを提供し、ここでMSCの投与は、未処置の被験体と比較して、全身のIL6、IL17及び/又はIL23のレベルを(例えば末梢血の血漿で測定して;関連する方法、例えばELISAは当業者に周知である)統計的に有意なレベルにまで低下させる。一部の実施形態において、IL6、IL17及び/又はIL23の全身レベルは、未処置の被験体における個々のサイトカインの典型的な全身レベルと比較して、80%以下、例えば75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、又は50%以下である。あるいは、又は加えて、一部の実施形態において、未処置の被験体と比較して、全身のCD3+CD25bright細胞のレベルは、(例えば末梢血の細胞画分で測定して;関連する方法、例えばFACSは当業者に周知である)統計的に有意なレベルにまで上昇する。一部の実施形態において、全身のCD3+CD25bright細胞のレベルは、未処置の被験体におけるCD3+CD25bright細胞の典型的な全身レベルと比較して、2倍以上、例えば2.5倍以上である。
リンパ管内投与は有用であることが示された(図8)。従って、上記の実施形態のいずれかにおいて、MSC、典型的にはASCを、リンパ管内経路、例えばリンパ管内注入によって投与することができる。
本発明の細胞
MSCは、他の細胞に分化する能力を有する未分化の間質細胞であり、典型的には結合組織由来であり、従って非造血性細胞である。用語「結合組織」は、間葉由来の組織をいい、それらの細胞が細胞外マトリクス内に含まれているという点で特徴付けられるいくつかの組織を含む。異なるタイプの結合組織の中に、脂肪組織及び軟骨組織が含まれる。一実施形態において、MSCは脂肪組織の間質画分由来である。別の実施形態において、MSCは軟骨細胞由来、例えば硝子軟骨由来である。別の実施形態において、MSCは皮膚から得られる。また別の実施形態において、MSCは骨髄から得られる。MSCの代替的供給源としては、限定するものではないが、骨膜、歯髄、脾臓、膵臓、靭帯、腱、骨格筋、臍帯及び胎盤が挙げられる。
MSCは、任意の好適な起源から、そしてヒトを含む任意の好適な動物から得ることができる。典型的には、上記細胞は、出生後の哺乳動物の結合組織から得られる。好ましい実施形態において、MSCは結合組織の供給源、例えば脂肪組織、硝子軟骨、骨髄、皮膚等の間質画分から得られる。また、特定の実施形態において、MSCは哺乳動物、例えばげっ歯類、霊長類等、好ましくはヒト由来である。典型的には、MSCはヒト脂肪組織の間質画分から得られる。すなわち、それらは脂肪組織由来間質細胞(ASC)である。
MSCは標準的な培養条件下においてプラスティックに接着性を有する。
MSCは、中胚葉細胞(例えば脂肪細胞、軟骨細胞、骨芽細胞)等の体細胞に、又はその方向に、そして任意に内胚葉及び/若しくは外胚葉細胞型又は系統に、又はその方向に分化する能力を有する未分化多能性細胞である。典型的には、細胞は、脂肪細胞、軟骨芽細胞及び骨芽細胞系統からなる群より選択される少なくとも2種若しくは全ての細胞型に、又はその方向に分化する能力を有する。
一実施形態において、MSCは幹細胞、典型的には脂肪組織由来幹細胞であり得る。典型的には、MSCは(i)APCに特異的なマーカーを発現せず、(ii)IDOを構成的に発現せず、(iii)MHC IIを構成的に有意に発現しない。典型的にはIDO又はMHC IIの発現はIFN-γによる刺激によって誘導され得る。
典型的には、MSCはマーカーCD9、CD10、CD13、CD29、CD44、CD49A、CD51、CD54、CD55、CD58、CD59、CD90及びCD105の1種以上(例えば2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、7種以上、8種以上、9種以上、又は10種以上(例えば13種まで))を発現し得る。例えば、MSCはマーカーCD29、CD59、CD90及びCD105の1種以上(例えば2種、3種又は全て)、例えばCD59及び/又はCD90を発現し得る。
典型的には、MSCはマーカー第VIII因子、α-アクチン、デスミン(desmin)、S-100、ケラチン、CD11b、CD11c、CD14、CD45、HLAII、CD31、CD34、CD45、STRO-1及びCD133の1種以上(例えば2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、7種以上、8種以上、9種以上、又は10種以上(例えば15種まで))を発現しない。例えばMSCはマーカーCD34、CD45、CD31及びCD14の1種以上(例えば2種、3種又は全て)、例えばCD31及び/又はCD34を発現しない。
増大したMSC
一実施形態において、MSCは、in vitro培養で増大したMSC、又はin vitro培養で増大したその後代の細胞である(以後、双方を増大したMSC又は「eMSC」と称する)。eMSCの調製方法は、例えばWO2007/039150に記載されているように当分野で公知である。eMSCはMSCの特徴的ないくつかの表現型を保持している。例えばeMSCは標準的な培養条件下でプラスティックに接着し、かつ未分化の表現型を保持する。
eMSCは、中胚葉細胞等の体細胞に分化する能力を有する未分化多能性細胞である。MSCは、限定するものではないが、脂肪細胞、軟骨芽細胞、骨芽細胞系統等の少なくとも1以上の特殊化した細胞系統に向けて分化する能力を有する一方、eMSCでは、典型的にはこの分化能は低下しているか、又はなくなっている場合さえもある。例えばMSCは少なくとも骨形成細胞及び脂肪細胞系統に向けて分化し得る一方、これに由来するeMSCは脂肪細胞系統に向けてのみ分化し得る。このことは、eMSCの予想外で潜在的に有害な分化が生じる可能性が低いことが合理的に予測され得るため、患者に細胞を投与し得る細胞の治療的適用のためには有利であり得る。
一実施形態において、eMSCは幹細胞の後代であり得る。典型的には、eMSCは(i)APCに特異的なマーカーを発現せず;(ii)IDOを構成的に発現せず;(iii)MHC IIを構成的に有意に発現しない。典型的には、IDO又はMHC IIの発現は、IFN-γによる刺激によって誘導され得る。
典型的には、eMSCはマーカーCD9、CD10、CD13、CD29、CD44、CD49A、CD51、CD54、CD55、CD58、CD59、CD90及びCD105の1種以上(例えば2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、7種以上、8種以上、9種以上、又は10種以上(例えば13種まで))を発現し得る。例えば、MSCはマーカーCD29、CD59、CD90及びCD105の1種以上(例えば2種、3種又は全て)、例えばCD59及び/又はCD90を発現し得る。
典型的には、eMSCはマーカー第VIII因子、α-アクチン、デスミン、S-100、ケラチン、CD11b、CD11c、CD14、CD45、HLAII、CD31、CD34、CD45、STRO-1及びCD133の1種以上(例えば2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、7種以上、8種以上、9種以上、又は10種以上(例えば15種まで))を発現しない。例えばMSCはマーカーCD34、CD45、CD31及びCD14の1種以上(例えば2種、3種又は全て)、例えばCD31及び/又はCD34を発現しない。更に、MSCは場合によってマーカーSTRO-1を発現しない。
細胞集団
一態様において、本発明は、本明細書に記載される治療的用途のためのMSC及び/又はeMSCの集団を提供するものであり、これらの集団を以下では「本発明の細胞集団」と呼ぶことがある。典型的には、MSCは増大したヒトASCであり、典型的には同種異系の増大したヒトASCである。典型的には、本発明の細胞集団は、均質な、若しくは実質的に均質なMSC及び/又はeMSCの集団である。本発明の細胞集団はMSC及び/又はeMSCを含むか本質的に含むが、本発明の細胞集団は他の細胞型も含み得る。従って、一実施形態において、本発明は、細胞の少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%がMSC及び/又はeMSCである本発明の細胞集団を提供する。
典型的には、本発明の細胞集団は、eMSCを含むか本質的に含むMSCの培養で増大した集団であるが、本発明の細胞集団は他の細胞型を含んでいても良い。従って、一実施形態において、本発明は、細胞の少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%がeMSCである本発明の細胞集団を提供する。一実施形態において、eMSCはeASC、例えばヒトeASCである。特定の実施形態において、細胞は、治療される被験体に対して同種異系である。
典型的には、本発明の細胞集団は、限定するものではないが、脂肪細胞系、軟骨芽細胞系、及び骨芽細胞系等の少なくとも1種又はそれ以上の特殊化した細胞系統に向けて分化する能力を有し得る。一実施形態において、本発明の細胞集団は、脂肪細胞系、軟骨芽細胞系、及び骨芽細胞系からなる群より選択される少なくとも2種又は全ての細胞型に、あるいはその細胞型に向けて分化する能力を有し得る。しかしながら、別の実施形態において、この分化能は、低下しているか、又はなくなっていさえしても良い。例えば、MSCは少なくとも骨形成系及び脂肪細胞系に向けて分化し得る一方、これに由来するeMSC集団は脂肪細胞系に向けてのみ分化し得る。このことは、細胞の治療的応用において、eMSCの予想外で有害となり得る分化が生じる可能性が少ないことが合理的に予想できるために細胞を患者に投与しても良い場合に有利であり得る。
典型的には、本発明の細胞集団は、マーカーCD9、CD10、CD13、CD29、CD44、CD49A、CD51、CD54、CD55、CD58、CD59、CD90及びCD105の1種以上(例えば2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、7種以上、8種以上、9種以上、又は10種以上(例えば13種まで))を発現し得る。例えば、MSCはマーカーCD29、CD59、CD90及びCD105の1種以上(例えば2種、3種又は全て)、例えばCD59及び/又はCD90を発現し得る。従って、一実施形態において、本発明は、細胞の少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%がマーカーCD9、CD10、CD13、CD29、CD44、CD49A、CD51、CD54、CD55、CD58、CD59、CD90及びCD105の1種以上(例えば2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、7種以上、8種以上、9種以上、又は10種以上(例えば13種まで))を発現する本発明の細胞集団を提供する。例えば、MSCはマーカーCD29、CD59、CD90及びCD105の1種以上(例えば2種、3種又は全て)、例えばCD59及び/又はCD90を発現し得る。別の実施形態において、本発明は、マーカーCD9、CD10、CD13、CD29、CD44、CD49A、CD51、CD54、CD55、CD58、CD59、CD90及びCD105の1種以上(例えば2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、7種以上、8種以上、9種以上、又は10種以上(例えば13種まで))の発現レベルが少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%である本発明の細胞集団を提供する。例えば、本発明の細胞集団は、マーカーCD29、CD59、CD90及びCD105の1種以上(例えば2種、3種又は全て)、例えばCD59及び/又はCD90を上記のレベルで発現し得る。
典型的には、本発明の細胞集団は、マーカー第VIII因子、α-アクチン、デスミン、S-100、ケラチン、CD11b、CD11c、CD14、CD45、HLAII、CD31、CD34、CD45、STRO-1及びCD133の1種以上(例えば2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、7種以上、8種以上、9種以上、又は10種以上(例えば15種まで))を発現しないものであって良い。例えばMSCはマーカーCD34、CD45、CD31及びCD14の1種以上(例えば2種、3種又は全て)、例えばCD31及び/又はCD34を発現しない。更に、MSCは場合によってマーカーSTRO-1を発現しないものであって良い。
従って、一実施形態において、本発明は、細胞の少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%がマーカー第VIII因子、α-アクチン、デスミン、S-100、ケラチン、CD11b、CD11c、CD14、CD45、HLAII、CD31、CD34、CD45、STRO-1及びCD133の1種以上(例えば2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、7種以上、8種以上、9種以上、又は10種以上(例えば15種まで))を発現しない本発明の細胞集団を提供する。例えば、MSCはマーカーCD34、CD45、CD31及びCD14の1種以上(例えば2種、3種又は全て)、例えばCD31及び/又はCD34を発現しないものであって良い。別の実施形態において、本発明は、マーカー第VIII因子、α-アクチン、デスミン、S-100、ケラチン、CD11b、CD11c、CD14、CD45、HLAII、CD31、CD34、CD45、STRO-1及びCD133の1種以上(例えば2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、7種以上、8種以上、9種以上、又は10種以上(例えば15種まで))の発現レベルが少なくとも約35%以下、少なくとも約30%以下、少なくとも約25%以下、少なくとも約20%以下、少なくとも約25%以下、少なくとも約5%以下、少なくとも約1%以下である本発明の細胞集団を提供する。例えば、本発明の細胞集団はマーカーCD34、CD45、CD31及びCD14の1種以上(例えば2種、3種又は全て)、例えばCD31及び/又はCD34を上記のレベルで発現し得る。
一部の実施形態において、MSC又はeMSCは、その増殖能力、移動能力、生存能力、治療効果及び免疫調節性の1以上を増大させるために予め刺激される。典型的には、本発明の細胞集団の少なくとも約40%(例えば少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%)が、その増殖能力、移動能力、生存能力、治療効果及び免疫調節性の1以上を増大させるために予め刺激される。一部の実施形態において、予め行われる刺激は、MSCをサイトカインと接触させることによって達成され得る。本発明の一部の実施形態において、予め行われる刺激は、MSCをIFN-γと接触させることによって達成され得る。
組成物
一実施形態において、本発明は、本発明に従う治療方法において使用するための本発明の細胞集団を含む組成物を提供する。上記組成物は医薬組成物であることが好ましい。本発明の組成物はMSC又はeMSCの実質的に純粋な集団、例えばASC又はeASC、例えばヒトeASCの実質的に純粋な集団を含み得る。MSC、eMSC、ASC又はeASCは幹細胞であり得る。本発明の組成物はまた、細胞培養成分、例えば1種以上のアミノ酸、金属及び補酵素因子を含む培養培地を含み得る。組成物は、他の間質細胞の小集団を含み得る。組成物はまた、特定の状況下、例えば移植、連続培養における増殖、又は生体材料若しくは組成物としての使用においてMSCの増殖及び生存を支持し得る他の非細胞成分を含み得る。
本発明の組成物中におけるMSC及び/又はeMSCの濃度は、少なくとも約1×104細胞/mL、少なくとも約1×105細胞/mL、少なくとも約1×106細胞/mL、少なくとも約10×106細胞/mL、又は少なくとも約40×106細胞/mLであり得る。典型的には、濃度は、約1×106細胞/mLから1×107細胞/mLの間、例えば約5×106細胞/mLから1×107細胞/mLの間である。
本発明の組成物は、一般的に製薬上許容される担体及び/又は希釈剤を含むであろう。そうした担体及び希釈剤の例は当分野において周知であり、以下のものが含まれ得る:糖類、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;粉末化トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばココアバター及び座薬用ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及びダイズ油;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;エステル類、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質除去水;等張食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;pH緩衝溶液;ポリエステル類、ポリカーボネート類及び/又はポリ無水物(polyanhydride);及び他の医薬製剤中で用いられる非毒性の適合性物質。典型的には、本発明の組成物は、担体としてDMEMを含有し、これは、場合によって血清(例えばHSA)を例えば約5%まで、約10%まで、約15%まで、約20%まで、約25%まで、約30%までの濃度で添加することができる。
本発明の組成物は、無菌及び/又はシリンジ通過が容易な程度に流動性であり得る。更に、組成物は、製造及び保存の条件下で安定であり得、及び/又は例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸及びチメロサールの使用によって細菌及び真菌等の微生物の汚染から守られ得る。
調製方法
本発明のeMSC及び細胞集団、及び本発明の細胞集団を含む組成物を提供するためのMSCの単離及び培養方法は、当分野において公知である。典型的には、細胞集団を含む組成物の調製方法は、以下のステップを含む:
(i)組織からのMSCの単離及び好適な表面、例えばプラスティックへの接着による選択
(ii)eMSCを含む本発明の細胞集団を提供するためのMSCの増殖(expansion)。
場合により、本発明の細胞集団は、増殖ステップ(ii)の間、及び/又は後に、凍結保存することができる。場合により、本発明の細胞集団の表現型を、増殖ステップ(ii)の間、及び/又は後に評価することができる。場合により、本発明の細胞集団を、増殖ステップ(ii)の後に単離し、製薬上許容される担体及び/又は希釈剤中に再懸濁することができる。
MSCの単離
本発明において使用するためのMSCは、限定するものではないが、末梢血、骨髄、胎盤、脂肪組織、骨膜、歯髄、脾臓、膵臓、靭帯、皮膚、腱、骨格筋、臍帯及び胎盤等の任意の好適な組織から単離され得る。好ましい実施形態において、MSCは結合組織、例えば脂肪組織の間質画分、硝子軟骨、骨髄、皮膚等から得られる。
一実施形態において、MSCは脂肪組織の間質画分由来である。別の実施形態において、MSCは軟骨細胞、例えば硝子軟骨から得られる。別の実施形態において、MSCは皮膚から得られる。また、別の実施形態において、MSCは骨髄から得られる。
MSCは、任意の好適な組織から、及びヒトを含む任意の好適な動物から得ることができる。典型的には、上記細胞は、出生後の哺乳動物の結合組織から得られる。
MSCはまた、被験体と同じか異なる種の任意の生物から単離することができる。MSCを有する任意の生物を本発明で使用することができる。一実施形態において、生物は哺乳動物であり得、別の実施形態において、生物はヒトである。
脂肪由来のMSCは、当分野において標準的な任意の手段によって得ることができる。典型的には、上記細胞は、起源の組織(例えば脂肪吸引物又は脂肪組織)から細胞を切り離すことによって、典型的にはコラゲナーゼ等の消化酵素で組織を処理することによって得られる。消化された組織物質は次いで、典型的には約20ミクロンから1mmのフィルターを通してろ過する。次いで、細胞を(典型的には遠心分離によって)単離し、接着表面(典型的には組織培養プレート又はフラスコ)上で培養する。このような方法は、例えば米国特許第6777231号に開示されているように、当分野において公知である。この方法論に従い、脂肪吸引物を脂肪組織から取得し、それ由来の細胞を取得する。この方法論において、細胞を、好ましくはPBSを用いて洗浄し、混入する破片及び赤血球を除去することができる。細胞をPBS中でコラゲナーゼにより(例えば37℃で30分間、0.075%コラゲナーゼ、I型、Invitrogen, Carlsbad, CA)消化する。残存する赤血球を除くために、消化したサンプルを(例えば10%ウシ胎児血清で)洗浄し、160 mmol/L ClNH4で処理し、最後にDMEM完全培地(10%FBS、2 mmol/Lグルタミン及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM)中に懸濁することができる。細胞は40μmのナイロンメッシュを通してろ過することができる。
細胞は、MSCの接着のために好適な表面、例えばプラスティックを含む好適な組織培養容器中で培養される。非接着細胞は、例えば好適な緩衝液中で洗浄することによって除去され、接着性間質細胞(例えばMSC)の単離された集団が提供される。この方法で単離された細胞を、組織培養フラスコ上にまき(好ましくは2-3×104細胞/cm2)、3-4日毎に培養培地を交換しながら37℃及び5%CO2下で増殖させることができる。細胞は、好ましくは培養物が90%のコンフルエンスに達したところで新しい培養フラスコ(1,000細胞/cm2)に移される。
細胞の単離は、好ましくは無菌下で、又はGMP条件下で実施する。
特定の実施形態において、細胞は、少なくとも約15日間、少なくとも約20日間、少なくとも約25日間、又は少なくとも約30日間培養し得る。典型的には、培養中での細胞の増殖によって、細胞集団中の細胞の表現型の均一性が向上し、実質的に純粋又は均一な集団が得られる。
細胞は、好ましくは培養物が約75%、80%、85%、90%又は95%のコンフルエンスに達したところで接着表面から(例えばトリプシンによって)剥がされ、新しい培養容器に移される(継代される)。
特定の実施形態において、細胞は少なくとも3回継代され、これは細胞が少なくとも3回の継代培養で培養中で増大されることを意味する。別の実施形態において、細胞は少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、又は少なくとも10回継代される。
特定の実施形態において、細胞は、少なくとも3回の集団倍加(population doubling)のために培養中で増加させる。特定の実施形態において、細胞は、少なくとも4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回又は15回の集団倍加のために培養中で増大させる。特定の実施形態において、細胞は、7回未満、8回未満、9回未満、10回未満、又は15回未満の集団倍加のために培養中で増大させる。特定の実施形態において、細胞は、約5〜10回の集団倍加のために培養中で増大させる。
細胞は、間質幹細胞の培養のために当分野で公知の任意の技術によって培養し得る。様々な培養技術、並びにそのスケールアップの議論は、Freshney, R.I., Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 4th Edition, Wiley-Liss 2000に見ることができる。細胞は、大規模増殖のために好適な培養フラスコ又はバイオリアクターを用いて増大させることができる。間葉系間質細胞の大規模増殖のために好適なバイオリアクターは市販されており、2D(すなわち実質的に平面状)及び3D増殖用のバイオリアクターの双方が含まれ得る。そのようなバイオリアクターの例としては、限定するものではないが、栓流(plug flow)バイオリアクター、還流バイオリアクター、連続撹拌タンク式バイオリアクター、静止層(stationary-bed)バイオリアクターが挙げられる。
特定の実施形態において、細胞は単層培養によって培養される。組織培養中でMSCを支持することができる任意の培地を使用することができる。MSCの増殖を支持するであろう培地処方としては、限定するものではないが、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、α改変最小必須培地(αMEM)、及びロズウェルパーク記念研究所培地1640(RPMI培地1640)が挙げられる。典型的には、間質細胞の増殖を支持するために、0〜20%のウシ胎児血清(FBS)が上記培地に添加されるであろう。しかしながら、間質細胞及び軟骨細胞のためにFBS中に必須の増殖因子、サイトカイン、及びホルモンが特定され、増殖培地中に適切な濃度で提供されている場合には、規定培地を使用することができるであろう。本発明の方法において有用な培地は、限定するものではないが、抗生物質、間質細胞のための分裂促進又は分化誘導化合物を含む、目的の1種以上の化合物を含有し得る。本発明の細胞は、加湿したインキュベーター中で31℃〜37℃の温度で増殖させることができる。二酸化炭素含量は2%〜10%に維持し、酸素含量は1%〜22%に維持することができる。
培地に添加することができる抗生物質としては、限定するものではないが、ペニシリン及びストレプトマイシンが挙げられる。化学的に規定された培養培地中のペニシリンの濃度は、1mlあたり約10〜約200単位であり得る。化学的に規定された培養培地中のストレプトマイシンの濃度は、約10〜約200μg/mlであり得る。
典型的には、本発明の方法において使用するMSCは、増大した細胞集団であり、好ましくは、細胞は、実質的に純粋な又は均一な集団を提供するために増殖される。
一実施形態において、上記細胞集団は、新たに単離された増大させていない細胞と比較してマーカーCD34の発現が低減するまで増大させる。例えば、細胞集団を、マーカーCD34の発現が集団中の細胞の50%未満、35%未満、30%未満、又は5%未満、例えば35-5%又は20-10%のレベルに低下するまで増大させる。典型的には、細胞集団を、マーカーCD34の発現が集団中の細胞の5%未満のレベルに低下するまで増大させる。従って、本発明のeMSCの集団は、CD34を発現する細胞を50%未満、35%未満、30%未満、又は5%未満、例えば35-5%又は20-10%含有する。
一実施形態において、上記細胞集団は、新たに単離された増大させていない細胞と比較してマーカーSTRO-1の発現が低減するまで増大させる。例えば、細胞集団を、マーカーSTRO-1の発現が集団の細胞の50%未満、35%未満、30%未満、又は5%未満、例えば35-5%又は20-10%のレベルに低下するまで増大させる。典型的には、細胞集団を、マーカーSTRO-1の発現が集団中の細胞の5%未満のレベルに低下するまで増大させる。従って、本発明のeMSCの集団は、STRO-1を発現する細胞を50%未満、35%未満、30%未満、又は5%未満、例えば35-5%又は20-10%含有する。
典型的には、細胞集団は、新たに単離された増大させていない細胞と比較してマーカーCD34及びSTRO-1の発現が低下するまで増大させる。例えば、細胞集団を、マーカーCD34及びSTRO-1の発現が集団の細胞の50%未満、35%未満、30%未満、又は5%未満、例えば35-5%又は20-10%のレベルに低下するまで増大させる。典型的には、細胞集団を、マーカーCD34及びSTRO-1の発現が集団の細胞の5%未満のレベルに低下するまで増大させる。従って、本発明のeMSCの集団は、CD34及びSTRO-1を発現する細胞を50%未満、35%未満、30%未満、又は5%未満、例えば35-5%又は20-10%含有する。
増大したMSC集団(例えばCD34及び/又はSTRO-1の発現が5%以下であるもの)は、新たに単離された細胞よりも低い多能性(multipotency)を示すため、有利である。すなわち、これらは、天然に存在する非増大MSCと比較して、他の細胞表現型に分化する能力が低いか、低下しているか、又はそうした能力がないものであり得る。
当業者には、本発明の組成物の調製方法が限定的なものではなく、任意の方法で調製した本発明の組成物が本発明の範囲内に含まれることを理解するであろう。一実施形態において、本発明は、(a)ドナーから組織を回収し;(b)酵素処理によって細胞懸濁物を取得し;(c)細胞懸濁液を沈殿させ、細胞を培養培地中に再度懸濁し;(d)少なくとも約5日間又は5回の集団倍加の間細胞を培養する、ことを含む、本発明の組成物の調製方法を提供する。
一実施形態において、細胞は、投与前に、例えば増殖中及び/又は増殖の後に凍結保存し得る。従って、本発明はまた、本発明の凍結保存細胞を提供する。細胞の凍結保存のための方法は当分野において公知であり、典型的には好適な凍結保存剤(例えばDMSO)の使用を必要とする。細胞は、単離及び/又は増殖段階の任意の時点で凍結保存し、投与前に融解することができる。典型的には、細胞は3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、12回、15回又はそれ以上の継代の時点で凍結保存して良く、例えば細胞は3〜10回、又は5〜10回の継代の時点で凍結保存し得る。場合によって、細胞は投与前に再度プレーティングし、培養しても良い。
一実施形態において、細胞は、凍結保存及び/又は培養培地から単離され、投与前に製薬上許容される担体及び/又は希釈剤(例えば任意に血清を添加したDMEM)中に再懸濁することができる。
一部の実施形態において、本発明の組成物中の本発明の細胞集団は、その増殖能、移動能、生存能、治療効果及び免疫調節性の1以上を増大させるために予め刺激することができる。一部の実施形態において、予め行う刺激は、MSCをサイトカインと接触させることによって達成し得る。本発明の一部の実施形態において、予め行う刺激は、MSCをIFN-γと接触させることによって達成し得る。
本発明の特定の実施形態において、MSCは、0.1〜100ng/mlの濃度のIFN-γを用いて予め刺激しても良い。更なる実施形態において、MSCは、0.5〜85ng/ml、1〜70ng/ml、1.5〜50ng/ml、2.5〜40ng/ml、又は3〜30ng/mlのIFN-γ濃度を使用して予め刺激することができる。予め行う刺激は、約12時間以上の刺激によって行い得る。予め行う刺激は、約13時間以上、約18時間以上、約24時間以上、約48時間以上、又は約72時間以上の刺激によって行い得る。
一実施形態において、本発明のMSCは、プラスミド、ウイルス又は他のベクター戦略を使用して目的の核酸で安定に若しくは一時的にトランスフェクト又は形質導入することができる。目的の核酸としては、限定するものではないが、修復すべき組織型、例えば腸壁又は膣壁で見られる細胞外マトリクス成分の産生を増大させる遺伝子産物をコードするものが挙げられる。
調節遺伝子を有するウイルスベクターの間質細胞への導入は、限定するものではないが、約10:1〜2000:1の感染多重度(ウイルス単位:細胞)で(例えば塩化セシウムバンド法によって)精製したアデノウイルス、レトロウイルス又はアデノ随伴ウイルスを含むウイルスベクターを用いて実施することができる。細胞は、カチオン性界面活性剤、例えばポリエチレンイミン又はリポフェクタミン(商標)の不存在下若しくは存在下で無血清培地又は血清含有培地中でウイルスに約1時間から約24時間暴露させることができる(Byk T. et al. (1998) Human Gene Therapy 9:2493-2502; Sommer B. et al. (1999) Calcif. Tissue Int. 64:45-49)。
ベクター又はプラスミドの間質細胞への他の好適な導入方法としては、例えば米国特許第5,578,475号; 第5,627,175号; 第5,705,308号; 第5,744,335号; 第5,976,567号; 第6,020,202号; 及び第6,051,429号に記載されたもの等の脂質/DNA複合体が挙げられる。好適な試薬としては、リポフェクタミン、ポリカチオン性脂質2,3-ジオレイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキシ-アミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)(ケミカルアブストラクト登録名:N-[2-(2,5-ビス[(3-アミノプロピル)アミノ]-1-オキシペンチル}アミノ)エチル]-N,N-ジメチル-2,3-ビス(9-オクタデセニルオキシ)-1-プロパナミン-イウムトリフルオロアセテート)、及び中性脂質ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)をメンブレンフィルターでろ過した水中に含む3:1(w/w)リポソーム製剤が挙げられる。例としてはリポフェクタミン 2000TM処方(Gibco/Life Technologiesより入手可能、# 11668019)がある。他の試薬としては、FuGENETM 6トランスフェクション試薬(非リポソーム形態の脂質及び他の化合物の80%エタノール中の混合物、Roche Diagnostics Corp.から入手可能、# 1814443)、及びLipoTAXITMトランスフェクション試薬(Invitrogen Corp.からの脂質製剤、# 204110)が挙げられる。間質細胞のトランスフェクションは、例えばM.L. Roach and J.D. McNeish (2002) Methods in Mol. Biol. 185:1に記載されたようにエレクトロポレーションによって実施することができる。安定な遺伝子変化を有する間質細胞の製造のための好適なウイルスベクターシステムは、アデノウイルス及びレトロウイルスに基づくものであって良く、市販のウイルス成分を使用して調製することができる。
調節遺伝子を有するプラスミドベクターのMSCへのトランスフェクションは、リン酸カルシウムDNA沈殿若しくはカチオン性界面活性剤法(リポフェクタミン(商標)、DOTAP)の使用による単層培養中で、又は生体適合性ポリマー中にプラスミドDNAベクターを直接組み込むことによる三次元培養中で達成することができる(Bonadio J. et al. (1999) Nat. Med. 5: 753-759)。
これらの遺伝子によってコードされる機能的タンパク質の追跡及び検出のために、ウイルス又はプラスミドDNAベクターは、容易に検出可能なマーカー遺伝子、例えばいずれも組織化学的手段によって追跡できる緑色蛍光タンパク質又はβ-ガラクトシダーゼ酵素を含み得る。
増殖に続いて、本発明の細胞集団を、特徴的マーカーの発現を決定するためにアッセイしてその表現型を確認することが好ましく、これは伝統的な手段を使用して実施することができる。
用語「発現」は、細胞内のマーカーの存在を記載するために使用される。発現しているとみなされるためには、マーカーは検出可能なレベルで存在していなくてはならない。「検出可能なレベル」とは、マーカーが、PCR、ブロッティング又はFACS解析等の標準的な実験室の手法の1つを使用して検出できることを意味する。MSCの集団の表現型表面マーカーの解析は、当分野において公知の任意の方法によって実施することができる。限定するものではないが、例として、この表現型の解析は、個々の細胞の染色によって実施することができる。そのような染色は、抗体の使用を介して達成できる。これは、標識抗体を使用する直接的染色であっても、あるいは細胞マーカーに特異的な一次抗体に対する第二の標識抗体を使用する間接的染色であっても良い。抗体の結合は、当分野において公知の任意の方法によって検出することができる。抗体の結合はまた、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡法又は放射線撮影によっても検出することができる。
あるいは、若しくは更に、遺伝子は、30回のPCRサイクルの後に発現が合理的に検出できる場合に、細胞あたり少なくとも約100コピーの細胞内発現レベルに相当し、本発明の集団の細胞によって発現されているとみなされる。用語「発現する」及び「発現」は対応する意味を有する。この閾値以下の発現レベルでは、マーカーは発現していないとみなされる。本発明の成体間質細胞におけるあるマーカーの発現レベルと、別の細胞、例えば胚性幹細胞における同じマーカーの発現レベルとの比較は、好ましくは同じ種から単離された2つの細胞型を比較することによって実施され得る。好ましくはこの種は哺乳動物であり、より好ましくはこの種はヒトである。このような比較は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)実験を使用して都合良く実施することができる。
細胞表面マーカーは、通常は陽性/陰性選択に基づく任意の好適な伝統的技術によって同定することができる。例えば細胞中でのその存在/不在を確認すべき細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体を使用することができるが、他の技術を使用することもできる。従って、特定の実施形態において、CD9、CD10、CD13、CD29、CD44、CD49A、CD51、CD54、CD55、CD58、CD59、CD90及びCD105の1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種又は全てに対するモノクローナル抗体を、選択された細胞中での上記マーカーの不在を確認するために使用する。また、第VIII因子、α-アクチン、デスミン、S-100、ケラチン、CD11b、CD11c、CD14、CD45、HLAII、CD31、CD34、CD45、STRO-1及びCD133の1種、2種、3種、4種、又は全てに対するモノクローナル抗体を、上記マーカーの少なくとも1種、好ましくは全ての存在又は検出可能な発現レベルを確認するために使用する。
更なる実施形態において、CD34、CD45、CD31、CD14の少なくとも1種、2種、3種又は全て、例えばCD31及び/又はCD34に対するモノクローナル抗体が、上記マーカーの存在又は検出可能な発現レベルを確認するために使用される。更なる実施形態において、CD34に対するモノクローナル抗体が、選択された細胞における上記マーカーの不在を確認するために使用される。更なる実施形態において、STRO-1に対するモノクローナル抗体が、選択された細胞における上記マーカーの不在を確認するために使用される。更なる実施形態において、CD29、CD59、CD90、CD105の少なくとも1種、2種、3種又は全て、例えばCD59及び/又はCD90に対するモノクローナル抗体が、それらの存在又は検出可能な発現レベルを確認するために使用される。
上記モノクローナル抗体は公知であり、市販されているか、又は当業者は伝統的な方法で得ることができる。
選択された細胞におけるIFN-γ誘導性IDO活性は、任意の好適な伝統的アッセイによって決定することができる。例えば、選択された細胞をIFN-γで刺激し、IDO発現についてアッセイすることができ、次いで、IDOタンパク質発現について伝統的なウェスタンブロット分析を実施することができ、選択された細胞のIFN-γ刺激後のIDO酵素活性を、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析及び読み出し値としての上清中のキヌレニン濃度の光度定量を介したトリプトファンからキヌレニンへの変換によって測定することができる。本発明の細胞は特定の条件下でIDOを発現するため、IFN-γ刺激後のIDO活性の検出を可能とする任意の好適な技術を本発明の細胞を選択するために使用することができる。選択された細胞中のIFN-γ誘導性IDO活性を決定するための好適なアッセイは、WO 2007/039150に開示されている。産生されるIDOの量は平方センチメートル当たりの細胞数に依存し、これは好ましくは5000細胞/cm2以上のレベルであるが、この濃度に限定されず、またIFN-γの濃度は理想的には3ng/ml以上であるが、この濃度に限定されない。記載された条件下で産生されるIDOの活性は、24時間以上後のμM範囲のキヌレニンの検出可能な産生をもたらすであろう。
投与
一実施形態において、本発明の組成物は全身投与(例えば直腸内、鼻内、口腔内、膣内、移植したレザーバーを介して、又は吸入を介して)のために調製し得る。別の実施形態において、本発明の組成物は局所投与のために調製し得る。本発明の組成物は、非経口経路によって投与し得る。組成物は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内(intrasternal)、髄腔内、病巣内、リンパ管内及び頭蓋内経路によって投与し得る。一実施形態において、MSCは、静脈内経路によって、例えば静脈内注入によって投与される。あるいはまた、MSCは、リンパ管内経路を介して、例えばリンパ管内注入によって、例えば、限定するものではないが、リンパ節、最も好ましくは腋窩又は鼠径リンパ節を含む末梢リンパ器官等のリンパ器官へのリンパ管内注射によって投与される。これらの実施形態のそれぞれにおいて、MSCはASC、例えばeASCであり得る。本明細書で使用する場合、用語「リンパ系」には、当分野における通常の意味が与えられるべきであり、リンパ管及び毛細リンパ管の伝導系によって接続されたリンパ器官等のリンパ組織をいう。用語「リンパ器官」はリンパ節、最も好ましくは腋窩又は鼠径リンパ節をいう。
典型的には、患者はヒトである。
従って、一実施形態において、本発明は、ヒト被験体における関節リウマチ、好ましくは中等度の関節リウマチ(CDAIスコア>10〜≦22、及び任意にDAS28スコア>3.2〜≦5.1及び/又はRAPID3スコア>6〜≦12)の治療において使用するためのASCを提供するものであり、ここで、ASCは例えばリンパ管内投与によってリンパ管内に投与される。別の実施形態において、本発明は、ヒト被験体における関節リウマチ、好ましくは中等度の関節リウマチ(CDAIスコア>10〜≦22、及び任意にDAS28スコア>3.2〜≦5.1及び/又はRAPID3スコア>6〜≦12)の治療において使用するためのASCを提供するものであり、ここで、ASCは例えば静脈内注入によって静脈内に投与される。ASCは場合によって少なくとも1日の間隔を空けて繰り返し投与され得る。
一実施形態において、本発明において使用するMSCは、治療される被験体に対して自己のものであり得る。更なる実施形態において、本発明において使用するMSCは、治療される被験体に対して同種又は異種であり得る。ドナー由来の同種MSCは、理論的にはMHCの不適合にもかかわらず、任意の患者の治療のために使用し得る。一実施形態において、本発明の組成物は、治療される被験体の1以上の標的部位に組成物を注入又は移植することによって投与され得る。更なる実施形態において、本発明の組成物は、注入又は移植による被験体への組成物の導入を容易にする送達デバイスに挿入しても良い。一実施形態において、送達デバイスは、カテーテルを含み得る。更なる実施形態において、送達デバイスはシリンジを含み得る。
投与量
MSC及び任意の更なる治療剤の投与量は、患者の症状、年齢及び体重、治療若しくは予防すべき疾患の性質及び重症度、投与経路、及び更なる治療剤の形態によって変動するであろう。本発明の組成物は、単回用量又は分割用量で投与し得る。MSC及び任意の更なる治療剤の適切な投与量は、公知の技術によって決定し得る。
典型的には、上記投与量は、被験体の体重1kgあたり約10×106細胞以下、1kgあたり約9×106細胞以下、1kgあたり約8×106細胞以下、1kgあたり約7×106細胞以下、1kgあたり約6×106細胞以下、1kgあたり約5×106細胞以下である。別の実施形態において、上記投与量は、約0.25×106細胞/kg〜約5×106細胞/kg;又はより好ましくは約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの間であり得る。従って、別の更なる実施形態において、投与量は、約0.25×106細胞/kg、約0.5×106細胞/kg、約0.6×106細胞/kg、約0.7×106細胞/kg、約0.8×106細胞/kg、約0.9×106細胞/kg、約1.1×106細胞/kg、約1.2×106細胞/kg、約1.3×106細胞/kg、約1.4×106細胞/kg、約1.5×106細胞/kg、約1.6×106細胞/kg、約1.7×106細胞/kg、約1.8×106細胞/kg、約1.9×106細胞/kg、又は約2×106細胞/kgであり得る。投与量は、別の実施形態において、0.1〜1百万細胞/kgの間、1〜2百万細胞/kgの間、2〜3百万細胞/kgの間、3〜4百万細胞/kgの間、4〜5百万細胞/kgの間、5〜6百万細胞/kgの間、6〜7百万細胞/kgの間、7〜8百万細胞/kgの間、8〜9百万細胞/kgの間、又は9〜10百万細胞/kgの間であり得る。
別の実施形態において、細胞は、患者の体重にかかわらず、固定用量で患者に投与しても良い。典型的には、該投与量は、約10百万細胞〜500百万細胞の間であり、例えば投与量は約10×106細胞、50×106細胞、10×107細胞、50×107細胞である。
一実施形態において、本発明は、ヒト被験体における関節リウマチ、例えば中等度の関節リウマチの治療における使用のためのMSC、例えばASCを提供し、ここで、MSCは、被験体の体重1kgあたり0.05〜0.25百万細胞の間、被験体の体重1kgあたり0.1〜1百万細胞の間の投与量でリンパ管内経路によって、例えばリンパ管内注入によって投与される。別の実施形態において、約0.1〜5百万細胞の間、又は約5百万細胞、又は約10百万細胞の固定用量が、リンパ管内経路によって、例えばリンパ管内注入によって投与される。
別の実施形態において、本発明は、ヒト被験体における関節リウマチ、例えば中等度の関節リウマチの治療において使用するためのMSC、例えばASCを提供し、ここで、MSCは、被験体の体重1kgあたり約0.25×106細胞〜約10×106細胞、例えば被験体の体重1kgあたり約0.25×106細胞〜約5×106細胞の投与量で、静脈内経路、例えば静脈内注入によって、投与される。典型的な投与量は被験体の体重1kgあたり4×106細胞である。被験体の体重1kgあたり8×106細胞を使用することもできる。
所定の患者において最も効果的な治療をもたらす投与の正確な時間及び任意の特定の薬剤の量は、その薬剤の活性、薬物動態、及びバイオアベイラビリティー、患者の生理的状態(年齢、性別、疾患の型及び段階、全身の身体状態、所定の投与量及び薬剤の型に対する応答性を含む)、投与経路等に依存するであろう。本明細書に提示する情報は、治療の最適化、例えば、被験体のモニタリング及び投与量及び/又はタイミングの調整等の慣用の実験の範囲程度を必要とする、投与の最適な時間及び/又は投与量の決定のために使用することができる。被験体が治療されている間、被験体の健康状態を24時間の間の予め決められた時点で関連する1以上の指標を測定することによってモニタリングすることができる。投与量、投与時間及び製剤等の治療レジメンは、そのようなモニタリングの結果に従って最適化することができる。
治療は、最適用量よりも少ないより少量から開始することができる。その後、最適の治療効果が達成されるまで、投与量を少量ずつ増やすことができる。
異なる成分の効果の発現及び持続時間は相補的(complimentary)であり得るため、数種の治療薬の併用によって、個々の成分について必要な投与量を低減し得る。このような組合せ治療において、異なる活性剤を一緒に又は別個に、そして同時に又は1日のうちの異なる時間に送達することができる。
更なる治療剤
一実施形態において、本発明の医薬組成物は、1種以上(又は2種以上、又は3種以上、例えば1種、2種、3種、4種若しくは5種)の更なる治療剤を含有しても良く、あるいは更なる治療剤と組み合わせて投与されても良い。
一部の実施形態において、MSC及び1種以上の更なる治療剤は、被験体に同時に投与されても良い。他の実施形態において、MSC及び1種以上の更なる治療剤は、被験体に連続して投与されても良い。1種以上の更なる治療剤は、MSCの投与の前若しくは後に投与されても良い。
上記の更なる治療剤は、以下から選択され得る:鎮痛剤、例えば非ステロイド系抗炎症剤、オピエートアゴニスト又はサリチル酸塩;抗感染薬、例えば駆虫薬、抗嫌気性菌薬、抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、抗真菌性抗生物質、セファロスポリン系抗生物質、マクロライド系抗生物質、β-ラクタム系抗生物質、ペニシリン系抗生物質、キノロン系抗生物質、スルホンアミド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、抗マイコバクテリア薬、抗結核抗マイコバクテリア薬、抗原虫薬、抗マラリア抗原虫薬、抗ウイルス薬、抗レトロウイルス薬、抗疥癬薬、抗炎症剤、コルチコステロイド系抗炎症剤、抗掻痒剤/局所麻酔薬、局所性抗感染薬、抗真菌性局所性抗感染薬、抗ウイルス性局所性抗感染薬;電解及び腎臓作用薬、例えば酸性化剤、アルカリ化剤、利尿薬、炭酸脱水酵素阻害剤利尿薬、ループ利尿薬、浸透圧性利尿薬、カリウム保持性利尿薬、チアジド系利尿薬、電解質置換、及び尿酸排泄薬;酵素、例えば膵酵素及び血栓溶解酵素;胃腸薬、例えば下痢止め薬、制吐薬、胃腸内抗炎症剤、サリチル酸塩胃腸内抗炎症剤、制酸抗潰瘍薬、胃酸-ポンプ阻害性抗潰瘍薬、胃粘膜抗潰瘍薬、H2ブロッカー抗潰瘍薬、胆石溶解薬(cholelitholytic agent)、消化薬、吐剤、便秘薬及び便軟化薬、及び運動促進薬;全身麻酔薬、例えば吸入麻酔薬、ハロゲン化吸入麻酔薬、静脈内麻酔薬、バルビツール酸系静脈内麻酔薬、ベンゾジアゼピン静脈内麻酔薬、及びオピエートアゴニスト静脈内麻酔薬;ホルモン又はホルモン調整剤、例えば妊娠中絶薬、副腎作用薬(adrenal agent)、コルチコステロイド副腎作用薬、アンドロゲン、抗アンドロゲン;免疫生物学的薬剤、例えば免疫グロブリン、免疫抑制剤、トキソイド、及びワクチン;局所麻酔薬、例えばアミド系局所麻酔薬及びエステル系局所麻酔薬;筋骨格作用剤(musculoskeletal agent)、例えば抗痛風抗炎症剤、コルチコステロイド系抗炎症剤、金化合物抗炎症剤、免疫抑制性抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、サリチル酸系抗炎症剤、ミネラル;及びビタミン類、例えばビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、及びビタミンK。
上記の更なる治療剤は、好ましくは疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、生物学的医薬品及びコルチコステロイドの1種以上を含む。NSAIDとしては、限定するものではないが、Cox-2阻害剤、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン、セレコキシブ、メフェナム酸、エトリコキシブ、インドメタシン及びアスピリンが挙げられる。コルチコステロイドとしては、限定するものではないが、トリアムシノロン、コルチゾン、プレドニゾン、及びメチルプレドニゾロンが挙げられる。疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)としては、限定するものではないが、アウラノフィン、クロロキン、シクロスポリン、シクロフォスファミド、金調製物、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキセート、ペニシラミン、アウロチオマレイン酸ナトリウム、スルファサラジンが挙げられる。
一実施形態において、患者は、好ましくはヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキセート、ミノサイクリン、及びスルファサラジンからなる群より選択される少なくとも2種又は3種のDMARD(例えばメトトレキセート及びヒドロキシクロロキン;メトトレキセート及びレフルノミド;メトトレキセート及びスルファサラジン;スルファサラジン及びヒドロキシクロロキン;メトトレキセート、ヒドロキシクロロキン及びスルファサラジン)で更に治療され得る。
場合によって、患者は生物学的医薬品で更に治療され得る。生物学的医薬品としては、限定するものではないが、選択的共刺激モジュレーター、Tnf-a阻害剤、IL-1阻害剤、IL-6阻害剤及びB-細胞標的化治療剤が挙げられる。典型的には、患者は更に、少なくとも1種の生物学的治療、例えばTNF-α阻害剤で治療され得る。従って、本発明の一態様において、患者は更に、TNF-α阻害剤、典型的にはアダリムマブ(フミラ)、セルトリズマブ(シムジア)、エタネルセプト(エンブレル)、ゴリムマブ(シンポニー)、及び/又はインフリキシマブ(レミケード)である少なくとも1種の生物学的治療で治療され得る。
別の実施形態において、更なる治療剤は、増殖因子、又は細胞増殖若しくは活性化に影響する他の分子であり得る。更なる実施形態において、増殖因子は最終分化を誘導し得る。別の実施形態において、増殖因子は天然の増殖因子の変異型又は断片であり得る。そのような変異型の製造方法は当分野において周知であり、例えば保存的アミノ酸変化の作製、又は突然変異誘発及び得られた変異型の必要な機能性についてのアッセイを挙げることができる。
本発明は、以下の実施例によって更に説明される。これらの実施例は例示目的のためにのみ提供されるものであり、限定することを意図するものではない。
実施例1:ASCによる初期治療は関節症の増悪を軽減する
試験開始日に、それぞれのマウス(若く健康な8週齢の雄のDBA/1(H-2q)マウス)の尾部(胴体から2-3cm)に、完全フロイントアジュバント(最終濃度2mg/mlのヒト型結核菌)中のII型ニワトリコラーゲンのエマルジョン(最終濃度1mg/ml)の1用量を0.1ml/動物の体積で皮下注射した。
各実験群への動物の分配は、試験開始時にランダムになるように行った。処置はコラーゲン注射の15日、18日及び21日後に実施した(群あたりn=12匹のマウス)。関節炎スコアは21日目からモニタリングした。ヒト脂肪吸引物から脂肪組織由来幹細胞(ASC)を取得し(実施例7参照)、乳酸リンゲル液(ビヒクル)中の懸濁液として静脈内経路(尾静脈)で投与した(200,000細胞)。
(コラーゲン注射から)21日目から試験終了時まで各動物について関節炎指標のスコアを評価した。関節炎の重症度を以下の関節炎指標スコアリングシステムに従って前足及び後ろ足の両方についてスコア付けした。最終スコアは4つの足のスコアの合計である。最大スコアは16である。
Figure 0006722598
実験群:
A) CIA、処置なし(n=12)
B) CIA、d15、d18、d21にASCを静脈内に注入(200,000細胞)(n=12)
図1に示すように、関節炎初期のマウスをASCで処置すると、疾患の経過(図1A)及び発症率(図1B)が有意に軽減された。
実施例2:ASCの長期間の処置は初期関節炎における治療効果を延長する
試験開始日に、各マウス(若く健康な8週齢の雄のDBA/1(H-2q)マウス)の尾部(胴体から2-3cm)に、完全フロインドアジュバント(最終濃度1mg/mlのヒト型結核菌)中のII型ニワトリコラーゲンのエマルジョン(最終濃度1mg/ml)の第1の用量を0.1ml/動物の体積で皮下注射した。その後、コラーゲンの最初の注射の21日後に、II型コラーゲン(0.1ml/動物)の第2の注射(ブースター)を、再び尾部ではあるが最初の注射とは異なる位置で各動物に皮下投与した。この時、コラーゲン懸濁液は不完全フロインドアジュバント(ヒト型結核菌なし)を使用して作製した。
本試験では、ASCでの処置は、関節炎の初期段階が既に確立された時(関節炎指標スコア2-4)に開始した。各実験群における関節炎指標スコアの均一性を確保するために、各実験群への動物の分配は試験開始時にランダムな方法では行わなかった。その代わり、2-4の間の関節炎指標スコアに達した動物を実験群に割り当てた(群あたりn=12)。関節炎スコアは上記のようにモニタリングした。
実験群:
A) CIA、処置なし(n=12)
B) CIA、d1、d3、d5にASCを静脈内に注入(200,000細胞)(n=12)
C) CIA、d1、d3、d5、d8、d15、d22、d29にASCを静脈内に注入(200,000細胞)(n=12)
図2に示すように、d1、d3及びd5にASCで処置すると、疾患の重症度が低減した。特に、長期の処置(d8、d15、d22及びd29)は細胞の治療効果を増大及び延長した。
実施例3:初期関節炎のASC処置の用量及びタイミングの最適化
実験群
A) 健常(n=5)
B) CIA、処置なし(n=10)
C) CIA、d1、d3、d5に培養したASCを静脈内に注入(1,000,000細胞)(n=11)
D) CIA、d1、d3、d5に培養したASCを静脈内に注入(200,000細胞)(n=11)
E) CIA、d1、d3、d5に培養したASCを静脈内に注入(40,000細胞)(n=11)
F) CIA、d1、d3、d5に培養したASCを静脈内に注入(8,000細胞)(n=11)
G) CIA、d1、d8、d15に培養したASCを静脈内に注入(1,000,000細胞)(n=11)
H) CIA、d1、d8、d15に培養したASCを静脈内に注入(200,000細胞)(n=11)
I) CIA、d1、d8、d15に培養したASCを静脈内に注入(40,000細胞)(n=11)
J) CIA、d1、d8、d15に培養したASCを静脈内に注入(8,000細胞)(n=11)
若く健康な8週齢の雄のDBA/1(H-2q)マウスを本試験で使用した。CIAは実施例2で示したように作製し、マウスが疾患の初期段階(関節炎スコア2-4)を示した後に処置を開始した。
図3及び4に示すように、1日の間隔を空けてd1、d3及びd5に(図3)、又は1週間の間隔を空けてd1、d8及びd15に(図4)ASCを3回静脈内投与した場合に、関節炎の重症度が低減した。1百万個〜0.04百万個の細胞の投与量が特に有効であった。
実施例4:ASCによる処置は血清中の炎症促進性サイトカインを低減させ、末梢血中の調節性表現型を有するT細胞を増加させる
処置開始後22日目に(1日目、8日目及び15日目に200,000個のASCでマウスを静脈内処置)、末梢血を採取し、血漿中の炎症促進性サイトカインを決定し、血液中の細胞画分における調節性T細胞集団を測定した。図5に示すように、ASCによる処置によって、IL6(図5A)、IL17(図5B)及びIL23(図5C)のレベルが低下し、調節性T細胞(図5D)のレベルが上昇した。更に、ASCによる処置によって、処置開始から50日後に、健常マウスと比較して骨(図6A)及び骨梁(図6B)ミネラル密度の損失の有意な減少によって決定されるように(マイクロCTスキャニング)、関節炎が介在する関節損傷が低減した。
実施例5:関節炎の初期段階でのASCのリンパ管内投与は関節炎スコア、足の浮腫及び関節損傷を低減する
若く健康な8週齢の雄のDBA/1(H-2q)マウスを試験に使用した。実施例2で示したようにCIAを作製し、マウスが疾患の初期段階(関節炎スコア2-4)を示した後に処置を開始した。
実験群:
A) CIA、処置なし(n=12)
B) CIA、d1、d8、d15にASCをリンパ管内処置(右及び左の鼠径リンパ節のそれぞれに48,500細胞)(n=12)
関節炎スコアに加え、後ろ足の浮腫もモニタリングした(プレチスモメーター(plethysmometer)を使用)。図8に示すように、関節炎の初期段階におけるASCのリンパ管内投与によって、群の平均関節炎スコア(図8A及びB)及び足の体積(図8C及びD)の減少によって示されるように疾患の増悪が抑制された。平均関節炎スコアは試験全体の臨床的スコアの平均である。
更に、図7に示すように、ASCのリンパ管内投与によって、50日目の関節損傷(健常マウスと比較した骨及び骨梁ミネラル密度の損失)も低減した。
実施例6:リンパ管内に投与されたASCの効果は調節性表現型を有するT細胞(CD4+CD25+FoxP3+)及び抗炎症表現型を有するT細胞(CD4+IL10+細胞)の誘導によって仲介される
関節炎(CIA)を誘導し、実施例5に記載のようにしてマウスをASCでリンパ管内処置した。処置開始から22日後、マウスを犠牲にして、脾臓及びリンパ節におけるFoxP3を発現するCD4+CD25+ T細胞(調節性T細胞)及び抗炎症性サイトカインIL10を発現するCD4 T細胞のレベルを測定した。図9に示すように、FoxP3を発現するCD4+CD25+ T細胞のレベルは、未処置のマウスと比較して、ASC処置マウスの脾臓(図9A)及びリンパ節(図9B)で上昇する。図10に示すように、IL10を発現するCD4 T細胞のレベルも、未処置のマウスと比較して、ASC処置マウスの脾臓(図10A)及びリンパ節(図10B)で上昇する。
これらの例から、特定の時間枠内(疾患が中等度の場合の疾患の初期段階)でのASCでの処置が驚くべき程に有効であることが示される。ASCが間隔をあけて、そして/又はリンパ管内経路を介して投与される場合に、特に良好な結果を達成することができる。
実施例7:ASCの投与は初期/中等度関節リウマチを有するヒト患者において特に有効である
本試験は、多施設での用量漸増ランダム化単純盲検プラセボ対照フェーズIb/IIa臨床試験であり、6カ月までの追跡期間を設けた(EudraCT no.: 2010-021602-37; clinicaltrials.gov number: NCT01663116)。
目的は、難治性関節リウマチ(RA)患者における同種異系の増大させた脂肪由来幹細胞(eASC)の静脈内投与の安全性および忍容性を評価すること、並びにこの集団における予備的な臨床的活性データを取得することであった。
eASC
脂肪吸引物を、十分な洗浄後にコラゲナーゼによって消化した。次いで、溶血によって赤血球を除去し、ろ過によって間質血管画分(stromal vascular fraction)を得た。ASCを単離し、連続的増幅的継代によってin vitro増幅を実施した。最後に、eASCを凍結保存プロセスにかけてマスター細胞バンクを得、これから新たな増幅プロセスを行って作業用細胞バンクを得て、これも凍結保存した。臨床的使用のためのバッチは作業用細胞バンクから細胞を融解し、適切な培養条件で細胞を回収し、それを対応する投与ベヒクル中に製剤化した後に得た。プロセスの様々な段階において、品質管理の中で、細胞数、生存率、集団倍加、形態、効力、同一性、純度、無菌性、マイコプラズマ及び遺伝的安定性についてeASCを試験した。臨床的使用のための製品は、確立された品質規格によってコンプライアンスを確認した後に出した(released)。
患者
試験設計時にRA患者へのeASC又は他の間葉系幹細胞の静脈内投与についての安全性及び有効性データがなかったために、サンプルのサイズは、他の適用のための間葉系幹細胞の他の臨床試験に基づいた。
適格性を有する患者は、6カ月以上のRAの診断を受けており、少なくとも1種の非生物学的薬剤で治療され、少なくとも2種の生物製剤での治療で以前に失敗している成人とした。彼らのEULAR疾患活性スコア(DAS28-ESR)は>3.2でなければならず、触診に対して圧痛のある関節4カ所及び腫脹のある関節4カ所(68/66の関節数に基づく)を有さなければならず、かつ外来患者として治療を受けていなければならない。
18箇所の試験機関で合計67名の患者を登録した。14名の患者はスクリーニングで除かれ、従って53名の患者が治験を継続し、少なくとも1用量の試験治療を受けた(ITT集団)。5名の患者で大きなプロトコル違反が生じたため、PP集団は48名の患者からなる。10名の患者が早期に試験を中断した(コホートAで4名、コホートBで1名、コホートCで2名、プラセボ群で3名)。
活性のある難治性RA(少なくとも2種の生物製剤に対して不応性)を有する53名の患者をランダム化して、1日目、8日目及び15日目に以下のeASC:1百万個/kg(コホートA;20名)、2百万個/kg(コホートB;6名)、4百万個/kg(コホートC;6名)、又はプラセボ(7名)を3回の静脈内注入(iv)で投与し、24週間追跡して治療評価を行った。バックグラウンドの非生物学的DMARD、並びにNSAID及びグルココルチコイド(≦10mg/日のプレドニゾン又は等価物)は安定を維持した。生物製剤を含む任意のDMARDでの救援治療を3カ月後に可能とした。追跡のための通院は、第1週、第2週及び第3週(通院1-3)、及び1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月及び6カ月(通院4-9)で実施した。患者の安全を可能な限り守るために、安全性評価は単純盲検(患者について盲検、医師について非盲検)とし、一方有効性評価は二重盲検とした。本試験は、対応する倫理委員会による承認を得た後に、GCPスタンダード(CPMP/ICH/135/95)に従う適用法令、及び改訂ヘルシンキ宣言(ソウル、2008年10月)に従って実施した。患者からは書面によるインフォームドコンセントを得た。
ベースラインの人口学的特性及び臨床的特性は難治性RAに典型的なものであり、全般的に処置群間で(他の群と比較してコホートCでより高かった以前のDMARDの回数を除き)同等であった。以前の生物製剤の平均(SD)回数は2.92(1.44)であった。
統計解析
身体計測データ、患者の病歴に関する変数、ベースラインで報告された有効性評価項目及びベースラインの実験室パラメーター等の記述分析を実施した。主要安全性評価項目の分析は治療意図(ITT)集団に対して実施した。AE、SAE、治療関連AE及び治療関連SAEを経験した患者の数及びパーセンテージを、集団全体について、処置群毎に、そしてグレード3-4のAEを報告した患者について記載した。これらの値は、χ2検定を使用して維持段階にある群間で比較しても良い。あるいは、フィッシャーの正確確率検定を使用した。実験室パラメーター、特に選択基準に含めるパラメーターは通院毎に記載した。
第2の有効性評価項目の分析は、ITT及びプロトコル適合(per-protocol、PP)集団について実施した。24週目におけるACR及びEULAR応答を、コクラン-マンテル-ヘンツェル(Cochran-Mantel-Haenszel)χ2検定を使用して群間で比較した。モデルにおける基底値を共変量として含む共分散分析(ANCOVA)を使用して、処置群間の主要有効性評価項目を比較した。統計解析はSASパッケージv9.2を用いて実施した。
臨床的有効性
・中等度のRA
患者を、ベースラインにおいて中等度の関節リウマチを有する集団(DAS28(PCR)値が3.2〜4.5)及び重度の関節リウマチを有する集団(DAS28(PCR)値が5.5超)に分けた。中等度のRA集団では、eASCの3回の静脈内投与後の患者の増悪が4以下のレベルに抑えられ、処置から6ヶ月間はコントロールされた。しかしながら、重度の関節リウマチを示した患者群では、疾患の抑制は5回目の通院後のより後期の段階ではそれ程コントロールされていない(図11A)。
図11Bは、ベースラインを100%とした場合の正規化したDAS28値を示す。データから、低レベルのDAS28を有する患者は、高いDAS28レベルを有する患者群と比較して、最初の3カ月間のDAS28レベルの低下がより小さいことが示される。
CDAIスコアの場合、CDAIスコアが低い患者群は複数回の通院時にわたって低いスコアを維持しており、一方スコアが高い患者は低いレベルには至らなかった。図12Aは、ベースライン(BS)及び処置6カ月後(通院4、5、6、7、8、及び9)のCDAIスコアが22以下の8名の患者の群、及びベースライン及び処置6カ月後(通院4、5、6、7、8、及び9)のCDAIスコアが22〜40の26名の患者の群の平均を示す。
図12Bは、ベースラインを100%のスコアとみなして正規化した数値を示す。データから、低レベルのCDAI(ベースラインで<22)を有する患者は高いCDAIレベル(ベースラインで>22及び<40)を有する患者群と比較してかなり大きなCDAIレベルの低下を示すことが示される。
・ACR20/50/70応答
第2の予備的な有効性評価項目は、ACR20、ACR50及びACR70患者の割合、及びEULAR応答(DAS28-ESR及びDAS28-CRP)を含んだ。考慮した他の有効性の結果は、Short Form 36 Health Survey (SF-36) 質問票、及びRA MRIスコア (RAMRIS)であった。
プールしたeASCで処置した患者を、プラセボで処置した患者と試験的に比較した。ITT集団においては、プラセボで処置した患者と比較して、eASCで処置した患者のより高い比率でACR20、ACR50及びACR70が達成された(それぞれ図13A、B及びC)。ITT及びPP集団での結果は同様であった。EULAR基準に従ってITT集団で有効性を評価すると、プラセボで処置した患者と比較して、eASCで処置した患者でより良好な臨床経過の傾向もあった。図14Aは、EULAR応答に従って良好な応答を達成した患者の割合を示し(DAS28-ESRは≦3.2のスコア及び>1.2の改善を示す)、図14B及び14Cはそれぞれ低い疾患活性を示す患者(DAS28-ESR<3.2)及び臨床的寛解を示す患者(DAS28-ESR<2.6)を示す。注目すべきことに、プールしたeASC群とは対照的に、プラセボ群の患者はいずれの時点においても良好なEULAR応答、低い疾患活性又は臨床的寛解を示さなかった。ベースラインからのDAS28-ESRの改善はeASCで処置した患者で維持され、一方プラセボ群は応答の変動を示した(図14D)。DAS28-CRPの結果はDAS28-ESRの結果と同様であった。PP集団におけるEULAR応答はITT集団で得られたものと異ならなかった。
総体的に、ACRスコアで評価した臨床応答の割合は、プラセボで処置した患者よりもeASCで処置した患者においてより高かった。有効性の証拠は、プラセボ群で生じたもの(いかなる時点でもレスポンダーとなる患者がいなかった)とは対照的に、良好なEULAR応答、低い疾患活性又は臨床的寛解等の結果を用いても見られた。eASCで処置した患者はベースラインから経時的にDAS28-ESRの持続的な改善を示した。
結論:臨床効果の評価から、プラセボで処置した群と比較して、eASCで処置した患者の群でより良好な臨床経過が得られる傾向が示された。ASC処置は、生物製剤での失敗後であっても4.5以下のDAS28レベル及び22以下のCDAIレベルを有するとして定義される中等度の関節リウマチを有する患者において、特に有効である。低いCDAIレベル(22以下)を有する患者のサブセットは、高いCDAIレベル(22〜40)を有するサブセットと比較して、ASC処置に対して最良の応答を示した。
従って、ASC処置は、DAS28スコア>3.2〜≦5.1、CDAIスコア>10〜≦22及び/又はRAPID3スコア>6〜≦12を有する中等度の関節リウマチ患者、特にCDAIスコア>10〜≦22を有する者において特に有用である。
安全性
eASCの静脈内注入は、試験した用量範囲で明白な用量関連毒性を有することなく、一般的に良く忍容された。AEの強度は、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)「AEのための一般用語基準(Common Terminology Criteria for AEs)」第4.0版に従って1〜5の範囲で評価した(National Cancer Institute NIoH, U.S. Department of Health and Human Services, Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) Version 4.0. 2010 [2014年に引用]; http://evs.nci.nih.gov/ftp1/ CTCAE/CTCAE_4.03_2010-06-14_QuickReference_5x7.pdfより入手可能)。合計141例の有害事象(AE)が報告され、そのうち41例は処置関連とみなされた。A群で17名(85%)、B群で15名(75%)、C群で6名(100%)及びプラセボ群で4名(57%)の患者が少なくとも1つのAEを経験した。2例の処置関連重症AE(コホートAで1例、プラセボ群で1例)、1例の処置関連重篤AE(SAE)が報告された(コホートA)。最も頻度の高いAE(≧5%)は発熱(9例、17%)、呼吸器感染症(8例、15%)、頭痛(6例、11%)、尿路感染症(6例、11%)、吐き気(5例、9%)、関節痛(3例、6%)、無力症(3例、6%)、倦怠感(3例、6%)及び嘔吐(3例、6%)であり、最も頻度の高い処置関連AEは発熱(7例、13%)、頭痛(4例、8%)及び無力症(3例、6%)であった。全身的には、最も高頻度で報告されたAEは感染症であった。1例の中等度の外陰膣カンジダ症及び1例の軽度の単純ヘルペスウイルス感染を除き、日和見感染は報告されなかった。4例の感染症が試験処置と関連すると考えられた:コホートAの2例の中等度の呼吸器感染症、及びいずれもコホートCの1例の軽度の尿路感染症及び1例の軽度の麦粒腫。41例の処置関連AEのうちの2例がグレード3の強度(重症)であり、1例がコホートA(ラクナ梗塞)、1例がプラセボ群(無力症)であった。3例のSAEが報告され、全てeASC処置患者で生じていた:1例がラクナ梗塞、1例が腓骨神経麻痺、1例が発熱であった。ラクナ梗塞のみが処置関連であることが疑われた。ラクナ梗塞は、先に確立された定義に従って、DLTとみなされた。この事象は、3つの連続的SAEを含む(全身性筋力低下2回及び左片側感覚鈍麻及び麻痺性失調性歩行1回、最終的にラクナ梗塞と診断)。これらの症状の出現は一時的であり、患者は後遺症なしに回復した。この患者はAEのために試験を中止した唯一の患者であった。報告されたAEに関連するもの以外には異常な実験値は報告されず、関連するバイタルサインの異常は生じなかった。悪性腫瘍及び死亡は報告されなかった。
同種異系のeASCを用いた静脈内処置は、一般的に良く忍容されるようである。eASC処置患者の83%は何らかの有害事象を経験し、そのうちのほとんどは試験処置に無関係(71%)であり、軽度又は中等度の強度のものであった(94%)。生命を脅かす事象(グレード4)又は死亡は生じなかった。
興味深いことに、用量と忍容性の間に明らかな関連性はなかった。実際には、処置関連AEの割合はコホートA及びBの双方よりもコホートCでより低かったが、これはおそらくコホートCのサイズが小さいことと関連している。更に、幹細胞のiv注入と関連する潜在的な最初のストレスのために、安全性に関する試験の非盲検の性質と関連して、AEが過度に報告される可能性はより低用量のコホートで生じ得る(試験は低用量の投与から開始した)。このことから、評価した最大用量レベルの安全性プロファイルがより低用量レベルと同様であり得ることが示唆される。
1例のDLT、ラクナ梗塞がコホートAの患者で生じた。このSAEは3つの連続したSAE(上記参照)を含み、ラクナ梗塞よりも先に生じる筋力低下がおそらく真のDLTであろう。それにもかかわらず、筋力低下はグレード2であったため、先に確立されたDLTの定義には当てはまらない。eASCで処置された患者において他のDLTはなかったが、プラセボ群で1例の重症でおそらくは処置関連事象(無力症)が報告されており、これはプロトコルで規定されたDLTが場合によっては特定のAEをDLTとして誤分類することにつながり得ることを示している。
ラクナ梗塞はeASCと関連するとみなされた唯一のSAEであった。他に明らかな原因がないために関連する可能性があると考えられたが、可能性のある基本的メカニズムは特定されていない。従って、因果関係の評価においては控えめな立場(conservative position)がとられた。
MSCに関する文献で示されているように、一時的な発熱がeASCで処置した患者で最も頻繁に生じる処置関連AEであった。発熱のメカニズムは明らかではないが、敏感な患者におけるMSCに対する急性炎症反応と関連し得る。
RA患者は、一般の集団よりも重篤な感染症のリスクが高く、プレドニゾン及び生物学的薬剤がこのリスクを高めることが示されている。抗-TNF療法で治療されたRA患者での重篤な感染症の報告されているリスク(RR 95% CI)は1.05(0.9-1.2)〜4.6(1.8-11.9)の範囲である。本試験では、4例の感染症が試験処置と関連するとみなされ、いずれも重症又は重篤ではなかった。
非常に高用量のiv MSCを投与された動物モデルで血栓事象が報告されている。しかしながら、本試験では静脈の血栓事象は報告されず、肺血栓塞栓症を示唆する徴候は検出されなかった。
更に、eASCで処置した患者において、貧血(3症例)以外には急性又は遅延型過敏症反応又は血液学的AEは報告されなかった。
これまでのところ、臨床試験で得られた臨床的経験では、MSCに基づく療法と関連する腫瘍原性が大きなリスクとなることは示されていない。本試験では、悪性腫瘍は見られなかった。
従って、結果から、RA患者への間葉系幹細胞の治療的投与と関連する短期の深刻な安全性の問題はないことが示される。
他の有効性評価項目
SF-36及び身体及び精神のサブスケールは双方の群で改善しており、群間で統計的な差はなかった。RA MRIスコア(RAMRIS)はスクリーニング時から6カ月まで改善したが、治療群間の比較は統計的に有意ではなかった。
実施例8
診断から1年未満で、以前に少なくともメトトレキセートによる治療を受けており、場合によってシクロスポリン、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、ミノサイクリン、及びスルファサラジン等の他のDMARD治療、並びにNSAIDを以前に投与されていても良い関節リウマチ患者集団で、臨床試験を実施する。メトトレキセート、レフルノミド、又はスルファサラジンを投与されている場合、患者は少なくとも16週間の治療を受け、試験開始前の少なくとも4週間から試験期間中にかけて継続して投与されていなければならない(経口メトトレキセート≦25mg/週;非経口メトトレキセート≦20mg/週;レフルノミド≦20mg/日;スルファサラジン≦3g/日)。経口コルチコイドを投与されている場合、患者はプレドニゾン≦10mg/日又は等価量をスクリーニング前の少なくとも1カ月間継続して服用していなければならない。NSAIDを投与されている場合は、スクリーニング前の少なくとも2週間継続して投与されていなければならない。
更に、試験に適格性であるためには、患者は>3.2のEULAR DAS28-ESR活性基準、並びにスクリーニング時に68/66の関節数に基づいて触診に対して圧痛を示す4つの関節と4つの腫脹を示す関節を有さなければならない。
試験に登録された患者の約半数が、乳酸リンゲル液中のドナー由来(同種異系)の増大した脂肪間質細胞(eASC)の懸濁液からなる医薬品での処置を受ける。あとの半分は乳酸リンゲル液の懸濁液からなるプラセボを投与される。処置群の患者は、患者の体重1kgあたり4百万細胞の3回の用量の医薬品を1週間の間隔をあけて投与される。プラセボ群の患者は3回の用量のプラセボを1週間の間隔をあけて投与される。いずれの場合も投与は静脈内注入による。
医薬品は、健康な個体から脂肪吸引によって得られ、in vitroで増殖された同種異系の脂肪由来間質細胞(eASC)を使い捨てバイアル中の無菌緩衝液中に含む細胞懸濁液である。医薬品は、6mLのバイアルで提供される、病巣内投与のための無菌の透明無色の懸濁液として供給される(ヒト血清アルブミンを含むダルベッコ改変イーグル培地[DMEM]1mLあたり10百万個のeASCの懸濁液)。医薬品は、乳酸リンゲル液に懸濁した後、4ml/分の注入速度で投与される。
試験のプラセボは、4ml/分の注入速度で病巣内投与するための乳酸リンゲル液である。対応するプラセボの体積(乳酸リンゲル液)がプラセボ群の各被験体に投与される。プラセボの体積は被験体の体重に従って算出される。
医薬品の調製
同種異系のeASC医薬品は、健康なドナーの皮下脂肪組織から抽出した生きた成体間質細胞の細胞懸濁液からなる。皮下脂肪組織は健康なドナーから脂肪吸引され、GMP製造施設に運ばれる。寄贈、調達、及び試験は、指令2004/23/ECの要件に従い、従って指令2006/17/EC及び2006/83/ECの元で実施される。ASCは、脂肪組織をI型コラゲナーゼで消化し、続いて遠心分離することによって単離される。得られた細胞ペレットを再懸濁し、溶血液で溶解し、遠心分離する。細胞ペレットから生じる間質血管画分(stromal vascular fraction)を、細胞培養容器内の培養培地及び抗生物質中に置き、37℃及び5%CO2及び湿潤雰囲気下でインキュベートする。播種から24-48時間後、培養培地を除去して非接着細胞画分を除く。プラスティックの培養プレートに接着したASCをin vitro条件下で増大させる。90-95%のコンフルエンスに達した後、3-4日毎に培養培地を交換し、トリプシン/EDTAで細胞を剥がし、回収し、遠心分離し、抗生物質を加えずに必要な倍加まで増大させる。次いでこれを回収し、使用時まで凍結保存する。定められた投与日前に十分な数の凍結保存バイアルを融解して投与に必要な量を準備する。ASCは、凍結保存状態から播種及び培養によって回復させ(て生存を確認す)る。バイアルに充填して梱包する日に、培養物をリン酸緩衝液及びトリプシン/EDTAで洗浄した。ASCを選択された賦形剤(ダルベッコ改変イーグル培地及びヒトアルブミン血清)中に速やかに再懸濁させて医薬品を製剤化する。
eASCは、細胞ベース医薬品のガイドライン(Guideline on Cell-Based Medicinal Products, EMEA/CHMP/410869/2006)及び幹細胞に関するリフレクションペーパー(Reflection Paper on Stem Cells, EMA/CAT/ 571134/2009)に従って、同一性(表現型プロファイル)、純度、効力、形態、生存率、及び細胞増殖動態で特徴付けられる。
本出願は、以下を開示する。
(1)被験体における関節リウマチを治療するための間葉系間質細胞を含有する組成物。
(2)被験体における関節リウマチを治療するための医薬の製造における間葉系間質細胞の使用。
(3)被験体に間葉系間質細胞を含有する組成物を投与することを含む、被験体における関節リウマチの治療方法。
(4)疾患が、DAS28スコア>3.2〜≦5.1、CDAIスコア>10〜≦22及び/又はRAPID3スコア>6〜≦12を有する中等度の関節リウマチである、(1)〜(3)のいずれか記載の組成物、使用又は方法。
(5)疾患が、DAS28スコア>5.1、CDAIスコア>22及び/又はRAPID3スコア>12を有する重度の関節リウマチである、(1)〜(3)のいずれか記載の組成物、使用又は方法。
(6)患者が疾患の急性期に処置され、及び/又は患者が最初の診断若しくは疾患の症状発症から約6カ月以内に最初に処置される、(1)〜(5)のいずれか記載の組成物、使用又は方法。
(7)MSCが被験体に反復的に、場合によって週1回の間隔で投与される、(1)〜(6)のいずれか記載の組成物、使用又は方法。
(8)少なくとも3回用量のMSCが、例えば最初のMSC用量から1、3及び5日目、又は1、8及び15日目に被験体に投与される、(1)〜(7)のいずれか記載の組成物、使用又は方法。
(9)患者がメトトレキセートに対して治療抵抗性である、(1)〜(8)のいずれか記載の組成物、使用又は方法。
(10)患者が更なるDMARDに対して治療抵抗性である、(7)記載の組成物、使用又は方法。
(11)更なるDMARDがシクロスポリンである、(8)記載の組成物、使用又は方法。
(12)間葉系間質細胞が、脂肪組織由来間質細胞、増大した間葉系間質細胞、又は増大した脂肪組織由来間質細胞である、(1)〜(11)のいずれか記載の組成物、使用又は方法。
(13)MSCが同種異系である、(1)〜(12)のいずれか記載の組成物、使用又は方法。
(14)組成物が被験体の体重1kgあたり約0.25×106細胞〜約5×106細胞を含む、(1)〜(13)のいずれか記載の組成物、使用又は方法。
(15)MSCの少なくとも約50%がマーカーCD9、CD10、CD13、CD29、CD44、CD49A、CD51、CD54、CD55、CD58、CD59、CD90及びCD105の1種以上を発現する、(1)〜(14)のいずれか記載の組成物、使用又は方法。
(16)MSCの少なくとも約50%がマーカー第VIII因子、α-アクチン、デスミン、S-100、ケラチン、CD11b、CD11c、CD14、CD45、HLAII、CD31、CD34、CD45、STRO-1及びCD133を発現しない、(1)〜(15)のいずれか記載の組成物、使用又は方法。
(17)MSCが製薬上許容される担体及び/又は希釈剤中で投与される、(1)〜(16)のいずれか記載の組成物、使用又は方法。
(18)MSCが全身投与される、(1)〜(17)のいずれか記載の組成物、使用又は方法。
(19)MSCが静脈内、リンパ管内、皮下、皮内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内(intrasternal)、髄腔内、病巣内、又は頭蓋内経路を介して投与される、(1)〜(18)のいずれか記載の組成物、使用又は方法。
(20)MSCが1種以上の更なる治療剤と共に投与される、(1)〜(19)のいずれか記載の組成物、使用又は方法。
(21)MSCが凍結保存される、(1)〜(20)のいずれか記載の組成物、使用又は方法。

Claims (15)

  1. ヒト被験体における関節リウマチ治療において使用するための間葉系多能性間質細胞(MSC)を含有する医薬組成物であって、疾患が、CDAIスコア>10〜≦22を有する中等度の関節リウマチであり、被験体が最初の診断若しくは疾患の症状発症から約12カ月以内に最初に処置される、上記組成物
  2. 疾患が、DAS28スコア>3.2〜≦5.1、及び/又はRAPID3スコア>6〜≦12を有する中等度の関節リウマチである、請求項記載の組成物。
  3. 被験体が疾患の急性期に処置され、及び/又は被験体が最初の診断若しくは疾患の症状発症から約6カ月以内に最初に処置される、請求項1又は2記載の組成物。
  4. MSCが被験体に反復的に、場合によって週1回の間隔で投与される、請求項1〜のいずれか1項記載の組成物。
  5. 少なくとも3回用量のMSCが、例えば最初のMSC用量から1、3及び5日目、又は1、8及び15日目に被験体に投与される、請求項1〜のいずれか1項記載の組成物。
  6. 被験体がメトトレキセートに対して治療抵抗性であり、場合によって被験体が更なるDMARDに対して治療抵抗性であり、場合によって更なるDMARDがシクロスポリンである、請求項1〜のいずれか1項記載の組成物。
  7. 間葉系多能性間質細胞が、脂肪組織由来間質細胞、増大した間葉系間質細胞、又は増大した脂肪組織由来間質細胞であり、場合によって、MSCが同種異系である、請求項1〜のいずれか1項記載の組成物。
  8. 組成物が被験体の体重1kgあたり約0.25×106細胞〜約5×106細胞を含む、請求項1〜のいずれか1項記載の組成物。
  9. MSCの少なくとも約50%がマーカーCD9、CD10、CD13、CD29、CD44、CD49A、CD51、CD54、CD55、CD58、CD59、CD90及びCD105の1種以上を発現する、請求項1〜のいずれか1項記載の組成物。
  10. MSCの少なくとも約50%がマーカー第VIII因子、α-アクチン、デスミン、S-100、ケラチン、CD11b、CD11c、CD14、CD45、HLAII、CD31、CD34、CD45、STRO-1及びCD133を発現しない、請求項1〜のいずれか1項記載の組成物。
  11. MSCが製薬上許容される担体及び/又は希釈剤中で投与される、請求項1〜10のいずれか1項記載の組成物。
  12. MSCが全身投与される、請求項1〜11のいずれか1項記載の組成物。
  13. MSCが静脈内、リンパ管内、皮下、皮内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内(intrasternal)、髄腔内、病巣内、又は頭蓋内経路を介して投与される、請求項1〜12のいずれか1項記載の組成物。
  14. MSCが1種以上の更なる治療剤と共に投与される、請求項1〜13のいずれか1項記載の組成物。
  15. MSCが凍結保存される、請求項1〜14のいずれか1項記載の組成物。
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