本発明の実施形態に係る浄化装置について添付図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
(構成及び機能)
図1は本発明の第1の実施形態に係る浄化装置の構成図であり、図2は図1に示す浄化装置の位置A−Aにおける横断面図である。
浄化装置1は、浄化対象となる気体Gを浄化する装置である。浄化対象となる気体Gの代表例としては、自動車内等の長時間密閉される空間における空気、自動車等の燃焼機関を備えた装置からの排気ガス、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド又はアンモニア等の有害物質を含む気体、インフルエンザウイルスや細菌等の有害物を含む気体が挙げられる。尚、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドは、VOCと同様にシックハウス症候群や化学物質過敏症の原因と考えられているため、VOCに分類される場合もある。従って、浄化装置1は、浄化対象となる気体Gに含まれる有害物質や病原体等の有害物を除去する装置である。
浄化装置1は、光触媒2で表面の少なくとも一部がコーティングされた板状部材3と、光触媒2に紫外線(UV)を照射するランプ4とを、筒状の筐体5に収納して構成される。筒状の筐体5の内部には、気体Gの流れを形成するための流路6が形成される。
板状部材3は、気体Gの流れが光触媒2に沿って連続的又は断続的に形成されるように、筐体5の内部に配置される。すなわち、光触媒2でコーティングされた板状部材3の表面が気体Gの流路6側となるように板状部材3が配置される。従って、板状部材3の板厚方向が、気体Gの進行方向に対して垂直となるように板状部材3を配置することが好適である。
図示された例では、横断面が矩形の角筒状の筐体5内部の底面に、矩形の板状部材3が載置されている。そして、筐体5の内部側となる矩形の板状部材3の上面側が光触媒2でコーティングされている。
尚、表面の少なくとも一部が光触媒2でコーティングされた板状部材3で筐体5の一部を構成するようにしても良い。従って、筐体5は、気体Gの流路6側における表面の少なくとも一部が光触媒2でコーティングされた板状部材3を少なくとも一部に有する構成となる。
板状部材3は、金属、セラミック又は樹脂等の多孔質でない所望の材料で構成することができる。但し、金属板で板状部材3を構成すれば、加工性が良く、安価であることから量産に適している。価格、加工性及び入手容易性等の観点から実用性が高い金属板としてはチタンやアルミニウムが挙げられる。
一方、板状部材3をコーティングする光触媒2の代表的な材料としては、二酸化チタン(TiO2)が知られている。金属板の表面の一部又は全部を二酸化チタンでコーティングする場合には、陽極酸化法によって金属板の表面に二酸化チタンの膜を形成することができる。但し、板状部材3及び光触媒2の材質に応じて任意の製法を採用することができる。例えば、光触媒2の粉末を溶液中に分散させてスプレーや刷毛による塗装によって板状部材3に塗布することもできる。
ランプ4は、筐体5に流入した気体G及び光触媒2に向けて紫外線を照射する光源である。ランプ4から照射される紫外線は、光触媒2の活性化のみならず、筐体5に流入した気体Gの浄化にも積極的に使用される。すなわち、紫外線の照射によって気体Gに含まれる有機物等の有害物を直接的又は副次的な生成物によって間接的に分解することができる。加えて、紫外線の照射によって光触媒2の活性化を行うことができる。更に、活性化された光触媒2によって、光触媒2近傍を流れる気体Gに含まれる有害物と、紫外線の照射によって副次的に生成され得る有害物の分解を行うことができる。
このため、ランプ4は、筐体5に流入した気体G及び板状部材3の双方に向けて紫外線を照射できる位置に設置される。特に、ランプ4と板状部材3との間における相対位置は、光触媒2に依らず紫外線で気体Gが浄化される第1の領域R1と、紫外線と紫外線で活性化された光触媒2の双方で気体Gが浄化される第2の領域R2が、単一かつ共通の筐体5内に形成されるように決定される。従って、筐体5の形状も、第1の領域R1と第2の領域R2を形成できるように決定される。
光触媒2に依らず紫外線のみで気体Gが直接的又は間接的に浄化される第1の領域R1と、紫外線と紫外線で活性化された光触媒2の双方で気体Gが浄化される第2の領域R2を筐体5内の流路6に形成するためには、光触媒2で気体Gに含まれる有害物を分解することが可能な範囲の外側にもランプ4で紫外線を照射するようにすれば良い。すなわち、筐体5内に形成される流路6の幅を、光触媒2で気体Gに含まれる有害物を分解することが可能な範囲よりも広くし、かつ光触媒2で有害物を分解することが可能な範囲外まで紫外線を照射できるようにすればよい。
板状部材3の表面層を形成する光触媒2で気体Gに含まれる有害物を分解することが可能な範囲は、光触媒2や紫外線の種類等の条件にも依存して変化するが、概ね光触媒2からの距離が数mm程度(具体的には2〜6mm)の範囲である。従って、ランプ4と光触媒2との間における距離が数mmよりも長くなるように、流路6の幅並びにランプ4と板状部材3との間における相対位置を決定すれば、ランプ4と光触媒2との間に、紫外線のみで気体Gを浄化する第1の領域R1と、紫外線と紫外線で活性化された光触媒2で気体Gを浄化する第2の領域R2を形成することができる。
図示された例では、筐体5の内部に形成される気体Gの流路6を挟んで板状部材3の上方から気体G及び板状部材3に向かって紫外線を照射できるようにランプ4が配置されている。また、板状部材3が配置されていないランプ4の上方を流れる気体Gにも紫外線を照射することができる。従って、光触媒2の表面から数ミリ程度の範囲にある領域が、紫外線と光触媒2で気体Gを浄化する第2の領域R2となり、紫外線の影とならないその他の筐体5内の領域が紫外線のみで気体Gを浄化する第1の領域R1となる。
すなわち、共通かつ単一の筐体5内に紫外線のみで気体Gが浄化される第1の領域R1と、紫外線と紫外線で活性化された光触媒2で気体Gが浄化される第2の領域R2が、第1の領域R1が光触媒2から離れた位置となり、第2の領域R2が光触媒2に隣接する位置となるように流路6の幅方向の異なる位置に形成される。
紫外線は、波長によりUV−A帯、UV−B帯及びUV−C帯に分類される。UV−A帯、UV−B帯及びUV−C帯の紫外線は、それぞれ波長が315nmから400nm、280nmから315nm及び280nm未満の紫外線である。このうち、UV−C帯の紫外線は、有機物の分解効果や殺菌効果が高いことが知られている。しかしながら、UV−C帯の紫外線は疾患の原因となり、人体に危険であることが知られている。このため、浄化装置1の使用環境に応じて紫外線の種類を決定することができる。
実用的な具体例として、安全性よりも気体Gの浄化能力を優先する場合には、UV−C帯の紫外線で活性化する光触媒2と、UV−C帯の紫外線を照射するランプ4で浄化装置1を構成することができる。逆に、気体Gの浄化能力よりも安全性を優先する場合には、UV−A帯又はUV−B帯の紫外線で活性化する光触媒2と、UV−A帯又はUV−B帯の紫外線を照射するランプ4で浄化装置1を構成することができる。また、1つの筐体5内でUV−A帯、UV−B帯及びUV−C帯の紫外線を照射するランプ4を1種以上用いる構成でもよい。例えば、気体Gの入口近傍に、有機物の分解効果や殺菌効果が高いUV―C帯の紫外線を照射するランプ4を配置し、気体Gの出口近傍に、UC−A帯及びUV−B帯の少なくとも一方の紫外線を照射するランプ4を配置した構成を例示することができる。
また、板状部材3を金属板で構成すれば、他の材料で構成する場合に比べて、紫外線の照射による劣化を低減させることができる。従って、板状部材3の劣化を低減させる観点からは、板状部材3を金属板で構成することが好適である。
一方、ランプ4としては、要求される気体Gの浄化能力に合わせて決定された波長と照度を有する紫外線を照射できれば、UV LED、殺菌灯、ブラックライト、半導体レーザ、水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、冷陰極放電管等の任意のランプ4を用いることができる。
矩形の光触媒2の隅々まで紫外線を照射できるようにする観点からは、図示されるように棒状のランプ4を用いることが合理的である。その場合、棒状のランプ4の両端を支持するために筒状の筐体5の両端を板状部材7A、7Bで閉塞し、筐体5の両端を閉塞する板状部材7A、7Bに形成した貫通孔に棒状のランプ4のソケット部分を挿入することができる。これにより、ランプ4の発光部分を筐体5内部に固定することができる。
ランプ4を板状部材7A、7Bに固定するか否かを問わず、気体Gの上流側における筐体5の一端を板状部材7Aで閉塞して上流側の端面を形成し、気体Gの流入口8Aを板状部材7Aに設けることができる。気体Gの流入口8Aは、筐体5内に流入した気体Gが光触媒2近傍に導かれるように板状部材7Aに光触媒2近傍となるように局所的に設けるようにしても良い。
他方、気体Gの下流側における筐体5の他端についても、板状部材7Bで閉塞して下流側の端面を形成し、気体Gの排出口8Bを板状部材7Bに設けることができる。但し、気体Gの排出口8Bのサイズと位置については、必ず光触媒2で浄化された気体Gをできるだけ多く含む気体Gが選択的に流路6から排出されるように決定される。
図3は図1に示す筐体5の右側面図であり、図4は図1に示す筐体5の左側面図である。
光触媒2でコーティングされた矩形の板状部材3が筐体5内に配置される場合には、例えば、図3に示すように、板状部材3の幅に対応する長さを有するスリットを気体Gの流入口8Aとして、光触媒2の近傍となるように板状部材7Aに局所的に設けることができる。これにより、筐体5内に流入した気体Gを光触媒2でコーティングされた板状部材3の表面付近にできるだけ導くことができる。
他方、例えば、図4に示すように、板状部材3の幅に対応する長さを有するスリットを気体Gの排出口8Bとして板状部材7Bに光触媒2の近傍となるように局所的に設けることができる。これにより、光触媒2で浄化された気体Gをできるだけ多く含む気体Gを、浄化後における気体Gとして選択的に流路6から排出することができる。
図示された例では、光触媒2の表面を通り、気体Gの排出方向に平行な直線が排出口8Bの内面を通るように排出口8の位置が決定されている。尚、光触媒2の表面を通り、気体Gの排出方向に平行な直線が排出口8Bを通るように排出口8の位置を決定するようにしても良い。
排出口8Bから排出される浄化後における気体Gに光触媒2で浄化された気体Gがどの程度含まれるかは、排出口8Bのサイズによって調整することができる。
図5は、紫外線と光触媒2で気体Gが浄化される第2の領域R2のみに気体Gの排出口8Bを設けた例を示す筐体5の部分拡大縦断面図である。
図1乃至図5に例示されるように、光触媒2の表面に垂直な方向における排出口8Bの幅Bを数mm未満となるように小さくすれば、光触媒2で気体Gが浄化される第2の領域R2のみに気体Gの排出口8Bを連結することができる。この場合、筐体5の排出口8Bからは、光触媒2で浄化された気体Gのみを選択的に排出することが可能である。このため、浄化性能を向上させることができる。
図6は、光触媒2に依らず紫外線で気体Gが浄化される第1の領域R1と、紫外線と光触媒2で気体Gが浄化される第2の領域R2に跨る一部の領域に気体Gの排出口8Bを設けた例を示す筐体5の部分拡大縦断面図である。
図6に示すように、光触媒2の表面に垂直な方向における排出口8Bの幅Bを数mmよりも大きくし、筐体5内に形成される流路6のうち、第1の領域R1と、第2の領域R2に跨る一部の領域に気体Gの排出口8Bを設けるようにしても良い。この場合には、筐体5の排出口8Bから排出される気体Gに、第2の領域R2において光触媒2で浄化された気体Gのみならず第1の領域R1から排出される気体Gも含まれることになるが、気体Gの流量を多くすることが可能である。このため、単位時間当たりに浄化さできる気体Gの流量を多くすることができる。
すなわち、図6に示すように第1の領域R1と、第2の領域R2に跨る一部の領域に設けられる排出口8Bの断面積は、図5に示すように第2の領域R2のみに設けられる排出口8Bの断面積よりも大きくすることができる。このため、第1の領域R1と、第2の領域R2に跨る一部の領域に気体Gの排出口8Bを形成すれば、第2の領域R2のみに気体Gの排出口8Bを形成する場合に比べて、筐体5の排出口8Bから排出される気体Gに流量を多くすることができる。
また、図6に示すように、第1の領域R1と第2の領域R2に跨る一部の領域に、絞られた気体Gの排出口8Bを形成すれば、筐体5の端部を板状部材7Bで閉塞せずに開口端とする場合に比べて、排出口8Bから排出される気体Gに含まれる、第2の領域R2において光触媒2で浄化された気体Gの割合を飛躍的に増加させることができる。
従って、図6に例示されるように第1の領域R1と第2の領域R2に跨る領域に排出口8Bを局所的に形成するか図5に例示されるように第2の領域R2のみに排出口8Bを局所的に形成するかに関わらず、筐体5の排出口8Bを光触媒2の近傍に局所的に形成すれば、第2の領域R2から排出される気体Gを排出口8Bから排出される浄化後における気体Gに含めることができる。
試験の結果、光触媒2の表面に垂直な方向における排出口8Bの幅Bを6mm以下とすれば、第2の領域R2から排出される気体Gを有意な量で浄化後における気体Gに含めることができるため、光触媒2と紫外線による浄化効果が得られることが確認された。従って、筐体5内に形成される流路6の幅を、筐体5から気体Gを排出するための排出口8Bの幅よりも大きくし、光触媒2の表面に垂直な方向における幅Bが6mm以下となるように排出口8Bを光触媒2の近傍に形成すれば、光触媒2と紫外線による浄化効果によって気体Gを浄化することができる。
更に、光触媒2の表面に垂直な方向における排出口8Bの幅Bを3mm以下とすれば、第2の領域R2から排出される気体Gを浄化後における気体Gに支配的な割合で含めることができるため、一層浄化性能を改善できることも確認された。
このため、気体Gの流量を確保する観点からは、光触媒2の表面に垂直な方向における排出口8Bの幅Bを2mm以上6mm以下とし、更に浄化性能を追求する場合には、光触媒2の表面に垂直な方向における排出口8Bの幅Bを2mm以上3mm以下とすることが適切であると考えられる。
また、排出口8Bの形状を図4に例示されるようにスリットとすると、排出口8Bの形状を円形の貫通孔とする場合に比べて、有害物の分解性能を向上できることも確認された。これは、排出口8Bの形状をスリットとすると、円形の貫通孔とする場合に比べて光触媒2の表面近傍を流れた気体Gをより多く排出口8Bから排出でき、かつ光触媒2と気体Gとの接触機会を確保する観点からより好ましい気体Gの流れを形成できるためであると考えられる。
このため、有害物の分解性能を向上させる観点からは、排出口8Bの形状をスリットにすることが好ましい。但し、例えば、排出口8Bから排出される気体Gを拡散させることが好ましい場合のように、浄化装置1の使用環境や使用目的に応じて任意形状の排出口8Bを筐体5に形成することができる。
筐体5の排出口8Bを光触媒2の近傍に形成すると、筐体5内における気体Gの滞留時間を長くすることができるという効果も得られる。すなわち、筐体5の排出口8Bを光触媒2の近傍に形成すれば、筐体5内における気体Gの流れが層流でない限り、筐体5内に流入した気体Gの一部が光触媒2近傍を連続的又は断続的に流れ、かつ流路6内を排出口8Bに向かって流れた気体Gの一部が筐体5から排出される一方、流路6内を排出口8Bに向かって流れた気体Gの残りの一部と、排出口8Bに向かって流れなかった気体Gは筐体5内に留まることになる。
一方、排出口8Bを絞った場合に気体Gの流れが層流になるのは稀である可能性があるが、気体Gの流れが層流である場合においても、筐体5内における流路6の断面積が排出口8Bの断面積よりも大きくなるため、筐体5内における流路6の断面積が排出口8Bの断面積と同じである場合に比べて、筐体5内における流路6を流れる気体Gの流速が低下する。
つまり、気体Gが層流であるか乱流であるかを問わず、筐体5内における流路6の断面積よりも排出口8Bの断面積を小さくすることによって、筐体5内における流路6の断面積と排出口8Bの断面積とが同じである場合に比べて、筐体5内における気体の滞留時間、すなわち流入口8Aを通って筐体5内に気体Gが流入してから排出口8Bを通って筐体5から気体Gが排出されるまでの時間を長くすることができる。筐体5内における気体Gの滞留時間を長くすることができれば、気体Gへの紫外線の照射時間が長くなり、紫外線による有害物の分解量を増加させることができる。
加えて、筐体5の排出口8Bを光触媒2の近傍に局所的に形成すれば、第2の領域Rから排出される気体Gを浄化後における気体Gに含められるのみならず、筐体5に流入した気体Gを第1の領域R1に導く効果も得られる。そして、第1の領域R1において紫外線による有害物の分解を行うことができる。
つまり、排出口8Bの適切な配置と第1の領域R1の形成によって時間的及び空間的に紫外線で分解される有害物の量を増加させることができる。その結果、光触媒2による有害物の分解量を低減することができる。すなわち、単位時間当たりに光触媒2で分割すべき有害物の量を、光触媒2の種類や表面積等で決定される浄化能力の範囲に留めることができる。
ここで、筐体5の排出口8Bは、光触媒2の表面(筐体5内に露出した面)と連続的に接続された面を備えることが好ましい。これによって、気体Gは、すなわち、筐体5の排出口8Bから所定の距離間、第2の領域R2を通過することになり、浄化の最終段階において光触媒2と気体Gとの接触機会を確保することが可能となる。また、筐体5の一端に気体Gの流入口8Aを、他端に気体Gの排出口8Bを設ける場合には、流入口8Aおよび排出口8Bが筐体5の軸方向に平行な一直線上に形成されることが好ましい。この場合において、筐体5の流入口8Aおよび排出口8Bは、いずれも光触媒2の表面(筐体5内に露出した面)と連続的に接続された面を備えることが好ましい。また、光触媒2は、筐体5の流入口8Aから排出口8Bまでの間、途切れることなく連続的に形成されていることが好ましい。これにより、第2の領域R2を通過する気体Gの流れを層流にすることができ、さらに光触媒2と気体Gとの接触機会を確保することが可能となる。
特に、光触媒2において単位時間当たりに分解すべき有害物の量が限界を超えると、光触媒2の表面に有害物が堆積し、視認できない程度の僅かな厚さを有する汚染層が形成されてしまうという現象が試験によって確認された。これは、光触媒2による有害物の分解速度が、気体G中に含まれる有害物の供給速度に追いつかないためであると考えられる。光触媒2の表面に有害物の汚染層が形成されると、汚染層によって紫外線が光触媒2の表面に十分な強度で届かなくなり、光触媒2の浄化作用が十分に得られなくなる。
このため、気体Gへの紫外線の照射時間を十分に確保し、気体Gに含まれる有害物を紫外線で十分に分解することによって光触媒2による有害物の分解量を許容範囲内に収めることができる。また、光触媒2の表面に有害物が付着したとしても紫外線で分解できる程度の付着量に留めることができる。その結果、気体Gの流量が多い場合や気体Gに含まれる有害物の濃度が高い場合のように、単位時間当たりに分解すべき有害物の量が多い場合であっても、光触媒2の浄化能力を十分に発揮させ、気体Gに含まれる有害物を分解することが可能となる。
しかも、光触媒2近傍を流れた気体Gが優先的に筐体5の排出口8Bから排出される。このため、紫外線と光触媒2の双方によって有害物が分解された気体Gを筐体5の排出口8Bから優先的に排出することができる。
尚、筐体5内において気体Gの光触媒2への接触機会が十分に確保できることが流体シミュレーションや流体実験等によって確認できれば、気体Gの流入口8Aを必ずしも光触媒2の近傍となるように局所的に配置しなくても良い。
すなわち、筐体5に流入した気体Gが第1の領域R1及び第2の領域R2に双方に導かれて最終的には紫外線に曝されながら光触媒2の近傍を流れ、光触媒2近傍を流れた気体Gが優先的に筐体5から排出されるように、筐体5に気体Gの流入口8Aと排出口8Bを形成することが肝要である。従って、気体Gの排出口8Bについては、上述したように光触媒2近傍に絞られることになる。
気体Gの流入口8A及び排出口8Bを筐体5の両端に形成する場合、紫外線が気体Gの流入口8A及び排出口8Bから漏れる可能性がある。そこで、気体Gの流入口8A及び排出口8Bから漏れる紫外線を外部から遮蔽する遮蔽部9A、9Bを設けることができる。図示された例では、横断面が矩形のボックス構造を有する第1の遮蔽部9Aで気体Gの流入口8Aが遮蔽されている。同様に、横断面が矩形のボックス構造を有する第2の遮蔽部9Bで気体Gの排出口8Bが遮蔽されている。
これにより、ユーザの安全性を確保することができる。特に、UV−C帯の紫外線を使用する場合には、UV−C帯の紫外線にユーザが曝される事態を確実に回避することができる。
筐体5への気体Gの流入口8A及び筐体5からの気体Gの排出口8Bをそれぞれ第1の遮蔽部9A及び第2の遮蔽部9Bで遮蔽する場合には、第1の遮蔽部9Aに気体Gの流入口10Aを形成する一方、第2の遮蔽部9Bに気体Gの排出口10Bを形成することが必要となる。
第1の遮蔽部9Aへの気体Gの流入口10Aは、外部への紫外線の漏れが無く、かつ浄化対象となる気体Gを浄化対象エリアから効率的に取込むことが可能な位置に形成することが適切である。同様に、第2の遮蔽部9Bからの気体Gの排出口10Bは、外部への紫外線の漏れが無く、かつ浄化後における気体Gを浄化対象エリアに効率的に供給することが可能な位置に形成することが適切である。
このため、具体例として、図示されるように第1の遮蔽部9Aの側面に気体Gの流入口10Aを形成する一方、第2の遮蔽部9Bの側面に気体Gの排出口10Bを形成することができる。
第1の遮蔽部9A及び第2の遮蔽部9Bの少なくとも一方の構造をボックス構造とする場合には、内部にファン(送風機)11を設けることができる。換言すれば、第1の遮蔽部9A及び第2の遮蔽部9Bの少なくとも一方を、ファン11のケーシングとして利用することができる。図示された例では、気体Gの吸気側である第1の遮蔽部9Aの内部にファン11が配置されている。もちろん、気体Gの排出側に当たる第2の遮蔽部9Bの内部にファン11を配置しても良いし、第1の遮蔽部9A及び第2の遮蔽部9Bの双方にファン11を配置しても良い。
第1の遮蔽部9A及び第2の遮蔽部9Bの少なくとも一方は、浄化装置1の駆動に必要な回路類のケーシングとしても利用することができる。図示された例では、直流電源から供給される直流電流を交流電流に変換してランプ4に供給するインバータ基板12と、ファン11の強弱を調節するためのスイッチ基板13が、第2の遮蔽部9Bの内部に収納されている。また、第2の遮蔽部9Bの端面の外部には、浄化装置1の動作をオン状態とオフ状態との間で切換えるための電源スイッチ14の他、ファン11の強弱を調整するための調整スイッチ15が設けられている。
このため、ユーザは、単位時間当たりの気体Gの浄化能力を増加させたい場合には、ファン11の回転数を増加させて気体Gの取込流量を増やす一方、ファン11の振動や騒音を低減させたい場合には、ファン11の回転数を低減させるといった調節を行うことができる。
浄化装置1による気体Gの浄化能力は、上述したように光触媒2による有害物の分解能力、紫外線の波長及び照度並びに気体Gの筐体5内における滞留時間等の条件に依存して変化する。このため、浄化装置1による気体Gの浄化能力と、気体Gに含まれる有害物の濃度に応じて、気体Gの流量を適切な流量に設定することが適切である。すなわち、光触媒2及び紫外線の浄化能力が高く、筐体5内における気体Gの滞留時間が長い程、気体Gの流量を増加させることができる。逆に、目的とする流量の気体Gに含まれる所定の濃度の有害物を十分に分解できるように、光触媒2の種類及び表面積、紫外線の波長及び照度並びに気体Gの流入口8Aと排出口10Bの位置、サイズ及び形状を含む筐体5の形状等を決定することが重要である。
以上のような浄化装置1は、筐体5内に形成される第1の領域R1において第1段階として紫外線のみで気体Gを浄化する一方、筐体5内に形成される第2の領域R2において第2段階として紫外線で活性化した光触媒2と紫外線での双方の作用で気体Gを浄化するようにし、光触媒2と紫外線の双方の作用で浄化された気体Gを筐体5から選択的又は優先的に排出するようにしたものである。
(効果)
上述した浄化装置1によれば、気体Gに分解対象となる有害物が多く含まれている場合であっても、有害物の一部は紫外線で分解されるため、光触媒2によって分解対象となる有害物の量を減らすことができる。このため、光触媒2の表面に有害物が付着して汚染層が形成され、光触媒2による気体Gの浄化作用が滅失するといった事態を回避し、光触媒2の性能を十分発揮させることができる。その結果、気体Gの浄化能力を向上させることができる。
しかも、光触媒2は板状部材3にコーティングされるため、多孔質のフィルタ内に気体を導く場合に生じるフィルタの目詰まりが無い。このため、メンテナンスが非常に容易である。
(第2の実施形態)
図7は本発明の第2の実施形態に係る浄化装置の構成図であり、図8は図7に示す浄化装置の位置B−Bにおける横断面図である。
図7に示された第2の実施形態における浄化装置1Aでは、光触媒2でコーティングされた板状部材3を筐体5内に複数枚配置し、共通のランプ4で各板状部材3に紫外線を照射できるようにした点が第1の実施形態における浄化装置1と相違する。第2の実施形態における浄化装置1Aの他の構成及び作用については第1の実施形態における浄化装置1と実質的に異ならないため同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
図7及び図8に例示されるように横断面の形状が矩形の筐体5内に4枚の板状部材3を配置することができる。すなわち、筐体5内の各面に板状部材3を固定することができる。この場合、筒状の筐体5内の中心に棒状のランプ4を配置すれば、1つのランプ4で各板状部材3をコーティングする光触媒2に紫外線を照射することができる。
もちろん、筐体5の横断面の形状は矩形に限らず、多角形としたり、曲線と直線を連結した閉じた線で描かれる形状とすることも可能である。そして、横断面の形状が筒状である筐体5の内部に気体Gの流路6を形成するとともに、光触媒2で表面がコーティングされた任意数の板状部材3を配置し、筒状の筐体5の内部に棒状のランプ4を配置することができる。
図9は図7に示す筐体5の右側面図であり、図10は図7に示す筐体5の左側面図である。
横断面が矩形の筐体5内の各面に板状部材3が固定される場合には、板状部材3の数及び位置に合わせて気体Gの流入口8A及び排出口8Bを、それぞれ板状部材7A及び板状部材7Bに設けることが適切である。具体的には、図9に示すように、各板状部材3の幅に対応する長さを有する複数のスリットを気体Gの流入口8Aとして、光触媒2の近傍となるように板状部材7Aに設けることができる。同様に、図10に示すように、各板状部材3の幅に対応する長さを有する複数のスリットを気体Gの排出口8Bとして、光触媒2の近傍となるように板状部材7Bに設けることができる。この場合においても、筐体5の排出口8Bは、光触媒2の表面(筐体5内に露出した面)と連続的に接続された面を備えることが好ましい。これによって、気体Gは、すなわち、筐体5の排出口8Bから所定の距離間、第2の領域R2を通過することになり、浄化の最終段階において光触媒2と気体Gとの接触機会を確保することが可能となる。
これにより、筐体5内において気体Gを光触媒2でコーティングされた板状部材3の表面付近に導く一方、光触媒2近傍を流れた気体Gを選択的又は優先的に筐体5から排出することができる。加えて、排出口8Bを絞って局所的に形成することによって、排出口8Bを絞らない場合に比べて筐体5内に流入した気体Gの滞留時間を長くすることができる。
また、光触媒2で気体Gに含まれる有害物を分解することが可能な距離よりも離れた位置にランプ4を配置することによって、第1の実施形態と同様に共通かつ単一の筐体5の内部に紫外線で有害物を分解する第1の領域R1と、紫外線で活性化した光触媒2と紫外線での双方の作用で有害物を分解する第2の領域R2をそれぞれ流路6の幅方向の異なる位置に形成することができる。
活性化した光触媒2の作用で有害物を分解できる領域は、紫外線に曝される光触媒2の表面から一定の範囲内となる。このため、図8乃至図10に例示されるように筐体5内の各面に板状部材3が固定される場合には、第2の領域R2は概ね筒状の領域となる。他方、紫外線はランプ4の周囲360度方向に照射されるため、紫外線のみで有害物を分解する第1の領域R1も概ね筒状の領域となる。すなわち、ランプ4を中心として内側に筒状の第1の領域R1が形成され、第1の領域R1の外側に筒状の第2の領域R2が形成される。また、紫外線が届くが活性化した光触媒2による反応が十分に起きない4隅の領域についても、紫外線のみで有害物を分解する第1の領域R1として機能し得る。
各排出口8の位置についても第1の実施形態と同様に、各光触媒2の表面を通り、気体Gの各排出方向に平行な直線がそれぞれ各排出口8Bの内面を通るように決定したり、或いは、光触媒2の表面を通り、気体Gの各排出方向に平行な直線がそれぞれ各排出口8Bを通るように決定することによって、それぞれ光触媒2の近傍とすることができる。
以上のような第2の実施形態によれば、第1の実施形態と比較して光触媒2の表面積を大きくすることができる。このため、単位時間当たりに浄化することが可能な気体Gの体積を増加することができる。
(第3の実施形態)
図11は本発明の第3の実施形態に係る浄化装置の構成図であり、図12は図11に示す浄化装置の位置C−Cにおける横断面図である。
図11に示された第3の実施形態における浄化装置1Bでは、板状部材3を筒状に形成し、板状部材3の内面を光触媒2でコーティングした点が第1の実施形態における浄化装置1と相違する。第3の実施形態における浄化装置1Bの他の構成及び作用については第1の実施形態における浄化装置1と実質的に異ならないため同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
図11に示すように板状部材3を筒状に形成して内面を光触媒2でコーティングする場合には、筒状に形成された板状部材3の内部を気体Gの流路6とすることができる。また、筒状に形成された板状部材3の内部に棒状のランプ4を配置することによって、共通のランプ4で板状部材3の内面をコーティングする光触媒2の各部分に紫外線を照射することができる。
板状部材3の横断面の形状は、四角筒状や六角筒状のような角筒状としても良いが、図11及び図12に例示されるように円筒状とすることが紫外線を効率的に照射する観点から好ましい。すなわち、板状部材3を円筒状に形成し、円筒状の板状部材3の内部の中心位置に棒状のランプ4を配置すれば、光触媒2の各部分に均一に紫外線を照射することができる。また、紫外線の反射光を再び気体Gの浄化及び光触媒2の活性化に利用することも容易となる。
図13は図11に示す筐体5の右側面図であり、図14は図11に示す筐体5の左側面図である。
板状部材3を円筒状に形成する場合には、筐体5についても円筒状に形成することが板状部材3の設置を容易にする観点から合理的である。この場合、棒状のランプ4を両端で支持しつつ筐体5の両端を閉塞する板状部材7A及び板状部材7Bの構造は円盤状となる。
板状部材7Aに形成すべき気体Gの流入口8A及び板状部材7Bに形成すべき気体Gの排出口8Bの位置、形状及び数は、第1及び第2の実施形態と同様に、流路6に流入した気体Gが光触媒2の近傍に導かれる一方、光触媒2の近傍を流れた気体Gが選択的又は優先的に筐体5から排出され、かつ筐体5内における気体Gの滞留時間が長くなるように決定することが適切である。
円筒状の板状部材3の内面を形成する光触媒2の近傍に気体Gを導くためには、気体Gを光触媒2の表面に平行な向きで光触媒2の近傍に導くようにすればよい。他方、光触媒2の近傍を流れた気体Gを選択的又は優先的に筐体5から排出するためには、光触媒2の近傍で気体Gを筐体5から排出すれば良い。また、筐体5内における気体Gの滞留時間を長くするためには、気体Gの排出口8Bの断面積よりも筐体5及び板状部材3内に形成される気体Gの流路6の断面積を大きくすれば良い。
そこで、例えば図13に例示されるように同一円上に配置された複数の円形の貫通孔を気体Gの流入口8Aとして光触媒2の近傍となる板状部材7Aの位置に局所的に形成することができる。同様に、例えば図14に例示されるように同一円上に配置された複数の円形の貫通孔を気体Gの排出口8Bとして光触媒2の近傍となる板状部材7Bの位置に局所的に形成することができる。或いは、同一円上に配置された複数の円形の貫通孔に代えて、同一円上に複数の円弧状に湾曲した長円形の貫通孔又はスリットを形成するようにしてもよい。
光触媒2及び光触媒2で囲まれた流路6が円筒状又は角筒状のように筒状である場合には、図12乃至図14に例示されるように紫外線のみで直接又は間接的に有害物が分解される第1の領域R1がランプ4に隣接する筒状の領域として形成され、紫外線と活性化された光触媒2の作用で有害物が分解される第2の領域R2が第1の領域R1の外側で、かつ光触媒2に隣接する筒状の領域として形成される。従って、光触媒2が円筒状であれば、円筒状の第2の領域R2から選択的又は優先的に気体Gが排出されるように、板状部材7Bの環状の領域に気体Gの排出口8Bが形成されることになる。
筐体5が円筒状である場合には、紫外線の漏れを防止するための第1の遮蔽部9A及び第2の遮蔽部9Bの構造についても円筒状のボックス構造とすることができる。このため、第1の遮蔽部9A及び第2の遮蔽部9Bの湾曲した側面にそれぞれ気体Gの流入口10A及び排出口10Bを形成することができる。尚、図11に示す例では、同一円上に配置された複数の円形の貫通孔が気体Gの流入口10A及び排出口10Bとして設けられている。
以上のような第3の実施形態によれば、光触媒2の表面積を大きくすることができるのみならず、板状部材3を円筒状に形成すれば紫外線を効率的に光触媒2に照射することが可能となる。このため、単位時間当たりに浄化することが可能な気体Gの体積を一層増加することができる。
実際に、珪酸化物と二酸化チタンとを、二酸化チタンの重量が珪酸化物の重量の2倍以上5倍以下の重量となるように混合して成る光触媒2で円筒状の板状部材3の内面を形成し、円筒状の光触媒2の内面にUV−C帯の紫外線を照射する浄化装置1Bを試作した。また、排出口8Bのサイズと形状を変えて2種類の浄化装置1Bを試作し、一方の浄化装置1Bの排出口8Bについては図14に例示されるように直径が5mmの円形の貫通孔を同一円上に配置したものとし、他方の浄化装置1Bの排出口8Bについては幅が3mmの円弧状のスリットとした。
そして、試作した浄化装置1Bを用いて濃度が25〜30ppmのアセトアルデヒドを含む気体Gと、濃度が25〜30ppmのホルムアルデヒドを含む気体Gの浄化試験を行った。その結果、いずれの浄化装置1Bでもアセトアルデヒド及びホルムアルデヒドを分解除去できることが確認された。また、インフルエンザウイルスを含む気体Gを対象とする試験も行ったところ、いずれの浄化装置1Bでもインフルエンザウイルスを無害化できることが確認された。
すなわち、気体Gが凹凸の無い光触媒2の近傍を通過するのみでも、紫外線による一次的な浄化と、排出される気体Gを光触媒2の近傍に絞ることによって、実用的なレベルで気体Gを浄化できることが確認された。
特に、幅が3mmの円弧状のスリットを排出口8Bとする浄化装置1Bの分解性能は円形の貫通孔を排出口8Bとする浄化装置1Bの分解性能に比べて一層改善され、アセトアルデヒド及びホルムアルデヒドのいずれについても30分程度で分解除去できることが確認された。また、、幅が3mmの円弧状のスリットを排出口8Bとする浄化装置1Bを用いると、インフルエンザウイルスを20分で無害化できることも確認された。この結果からも、排出口8Bの形状をスリットにすると円形の貫通孔とする場合に比べて有害物の分解性能を向上できるという性質と、排出口8Bの幅Bを小さくすると有害物の分解性能を向上できるという性質を確認することができる。
尚、第3の実施形態において、第1の実施形態において説明したように板状部材3で筐体5を構成することもできる。但し、筐体5としての強度を確保するためには、板状部材3の厚さを十分な厚さとすることが必要になる。しかしながら板状部材3を構成する素材の候補となるチタン板は強度が高く、板厚が厚くなる程、成形加工が困難となる。このため、強度を担う筐体5については板厚を厚くしても成形加工が容易なアルミニウム等の材料を用いて構成する一方、板状部材3として高価なチタン板を用いる場合には薄型にして容易に曲げられるようにした方が、素材の有効利用に繋がる。
(第4の実施形態)
図15は本発明の第4の実施形態に係る浄化装置の構成を示す縦断面面であり、図16は図15に示す浄化装置の左側面図である。
図15及び図16に示された第4の実施形態における浄化装置1Cでは、光触媒2に依らず紫外線の作用によって有害物が分解される第1の領域R1と、紫外線と活性化した光触媒2の双方の作用によって有害物が分解される第2の領域R2とを、第1の領域R1が上流側となり第2の領域R2が下流側となるように流路6の長さ方向の異なる位置に形成した点が上述した第1乃至第3の実施形態における浄化装置1、1A、1Bと相違する。第4の実施形態における浄化装置1Cの他の構成及び作用については第1乃至第3の実施形態における浄化装置1、1A、1Bと実質的に異ならないため筐体5の内部における構成のみ図示し、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
図15及び図16に例示されるように、紫外線のみで有害物を直接又は間接的に分解する第1の領域R1を、紫外線と活性化した光触媒2で有害物を分解する第2の領域R2の上流側に設けることもできる。すなわち、第1の流路6Aで第1の領域R1を形成する一方、第2の流路6Bで第2の領域R2を形成し、第1の流路6Aの下流側に第2の流路6Bを配置することができる。この場合においても、筐体5の排出口8Bは、光触媒2の表面(筐体5内に露出した面)と連続的に接続された面を備えることが好ましい。これによって、気体Gは、すなわち、筐体5の排出口8Bから所定の距離間、第2の領域R2を通過することになり、浄化の最終段階において光触媒2と気体Gとの接触機会を確保することが可能となる。
尚、図15及び図16に示す例では、単一の筐体5内に第1の領域R1を形成する第1の流路6Aと、第2の領域R2を形成する第2の流路6Bが形成されているが別々の筐体内に第1の領域R1を形成する第1の流路6Aと、第2の領域R2を形成する第2の流路6Bを形成しても良い。従って、流路6の長さ方向に複数のランプ4を配置するようにしても良い。
また、図15及び図16に示す例では、光触媒2とランプ4との間における距離が光触媒2の反応エリア以下となるように数mm以内に決定されているため、第2の流路6Bの出口となる排出口8Bを絞らずに形成することができる。すなわち、筐体5のリング状の開口端をそのまま排出口8Bとしても、光触媒2近傍を流れた気体Gのみを排出することが可能である。
図15及び図16に示す例では、光触媒2が円筒状となっているが、横断面が円形でない筒状や単一又は複数の平板状である場合には、必要に応じて光触媒2の近傍のみに排出口8Bを形成するようにしても良い。すなわち、第1の領域R1を、第2の領域R2に対して流路6の長さ方向に異なる位置に加えて、流路6の幅方向に異なる位置にも形成することができる。換言すれば、第1の流路6Aで第1の領域R1を形成するのみならず、第2の流路6Bに第1の領域R1と第2の領域R2の双方を形成するようにしても良い。
第1の領域R1を第2の領域R2の上流側に配置すると、筐体5の流入口8Aに流入した気体Gは、第1の領域R1を形成する第1の流路6Aを流れて光触媒2と接触せずに紫外線に曝された後、第2の領域R2を形成する第2の流路6Bに流入し、光触媒2近傍を流れて排出口8Bから排出されることになる。
このため、第4の実施形態によれば、光触媒2の配置方法に応じて上述した第1乃至第3の実施形態と同様な効果を得ることができる。また、筐体5の幅を小さくしたり、筐体5の構造を簡易にすることができる。
(第5の実施形態)
図17は本発明の第5の実施形態に係る浄化装置の構成を示す縦断面面であり、図18は図17に示す浄化装置の右側面図である。
図17及び図18に示された第5の実施形態における浄化装置1Dでは、単一の筐体5内に仕切り板20を配置することによって単一の筐体5内に第1の領域R1を形成する第1の流路6Aと第2の領域R2を形成する第2の流路6Bとを形成した点が上述した第4の実施形態における浄化装置1Cと相違する。第5の実施形態における浄化装置1Dの他の構成及び作用については第4の実施形態における浄化装置1Cと実質的に異ならないため筐体5の内部における構成のみ図示し、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
図17及び図18に例示されるように単一の筐体5内に形成される空間を仕切り板20で部分的に区切ることによって、単一の筐体5内に第1の領域R1を形成する第1の流路6Aと、第2の領域R2を形成する第2の流路6Bとを形成することができる。より具体的には、仕切り板20で仕切った上流側の空間にランプ4を配置し、下流側の空間に光触媒2でコーティングされた板状部材3を配置することができる。逆に、仕切り板20と光触媒2との間における距離が光触媒2によって有害物を分解することが可能な距離以下となるように、ランプ4と光触媒2との間に、仕切り板20を配置することができる。加えて、仕切り板20を紫外線を透過させる高分子化合物等の公知の素材で構成することができる。
そうすると、仕切り板20で仕切った上流側の第1の流路6Aでは気体Gを紫外線のみで浄化する一方、下流側の第2の流路6Bでは、仕切り板20を透過する紫外線と、仕切り板20を透過する紫外線で活性化した光触媒2の双方で気体Gを浄化することができる。また、仕切り板20の表面には、汚れを防止するためのコーティング層を設けてもよい。これにより、仕切り板20が汚れにくくなり、手入れが軽減される。コーティング層の材質には制限はないが、紫外線を透過する程度に薄い光触媒を用いることができる。
仕切り板20を配置すると、仕切り板20を挟む両側に第1の領域R1を形成する第1の流路6Aと、第2の領域R2を形成する第2の流路6Bが互いに異なる向きで形成される。そして、仕切り板20で区切られていない部分で気体Gが第1の流路6Aから第2の流路6Bに流れ方向を変化させながら流入することになる。この場合においても、筐体5の排出口8Bは、光触媒2の表面(筐体5内に露出した面)と連続的に接続された面を備えることが好ましい。これによって、気体Gは、すなわち、筐体5の排出口8Bから所定の距離間、第2の領域R2を通過することになり、浄化の最終段階において光触媒2と気体Gとの接触機会を確保することが可能となる。
具体例として、図17及び図18に例示されるように仕切り板20の端部を第1の流路6Aの出口とすると、第1の流路6Aを通過した気体Gが第1の流路6Aの出口を形成する仕切り板20の端部において流れの向きを変えて、典型的にはUターンしながら第2の流路6Bに流入することになる。
気体Gと気体Gに含まれる有害物との間には比重差があるため、気体Gの流れの向きが極端に変化すると、遠心力によって有害物が遠心力が働く方向に集まりやすくなる。気体Gが概ね円弧状の軌跡を描いてUターンする場合であれば、有害物の濃度はより外側において高くなると考えられる。このため、図17及び図18に例示されるように仕切り板20の端部においてUターンした気体Gが光触媒2に接触する場合、流れの向きが局所的に変化して気体Gが光触媒2に接触する部分に局所的に有害物が堆積する恐れがある。
そこで、第1の流路6Aの出口を形成する仕切り板20の端部に凹凸を設けることができる。そうすると、気体Gが第1の流路6AからUターンしながら第2の流路6Bに流入して光触媒2に接触する位置を、仕切り板20の幅方向に変化させることができる。その結果、光触媒2の表面に付着する有害物を分散することができる。更に、仕切り板20を光触媒3とは逆の方向、すなわち筐体5の内側方向に湾曲させることによって、気体GがUターンした時の流速を低下させて遠心力を抑制し、光触媒3に有害物質が堆積する部分を広げることで、局所的に有害物が堆積することを抑制することもできる。
図19は図17に示す仕切り板20を下面方向から見た形状の一例を示す図である。
図19に例示されるように仕切り板20の先端における形状をジグザグにすることができる。これにより、仕切り板20の幅方向及び長さ方向において異なる位置で気体Gの流れの向きを変えながら気体Gを第2の流路6Bに流入させることができる。すなわち、気体Gが同一直線上の位置でUターンしないようにすることができる。
言うまでもないことであるが、仕切り板20の大きさや流れ方向の長さは、光触媒2の種類、ランプ4の種類や照度並びに気体Gの流速等の条件に応じて最適なものとすることができる。
図20は図17に示す浄化装置1Dの変形例を示す縦断面面である。
気体Gを筐体5の一方側から流入させ、他方側から排出させる場合には、図17に例示されるように板状部材7Aに形成される気体Gの流入口8Aに気体Gを流す配管21を連結することによって、気体Gを第1の流路6Aの上流側に導くことができる。尚、気体Gの流入口8A及び配管21の数とサイズは、筐体5に流入させるべき気体Gの流量に応じて任意に決定することができる。
これに対して、気体Gを筐体5の同じ方向から流入及び排出できる場合には、図20に例示されるように、気体Gの排出口8Bを形成する板状部材7Bに気体Gの流入口8Aも形成することによって、気体Gを第1の流路6Aの上流側に流入させることができる。この場合においても、筐体5の排出口8Bは、光触媒2の表面(筐体5内に露出した面)と連続的に接続された面を備えることが好ましい。これによって、気体Gは、すなわち、筐体5の排出口8Bから所定の距離間、第2の領域R2を通過することになり、浄化の最終段階において光触媒2と気体Gとの接触機会を確保することが可能となる。
以上の第5の実施形態によれば、規格化されたランプ4の長さに合わせて第1の領域R1と第2の領域R2を直列に形成することが可能となる。尚、第5の実施形態は、筐体5内に形成される流路6の幅方向の異なる位置に第1の領域R1と第2の領域R2を形成し、第1の領域R1と第2の領域R2との間を仕切り板20で物理的に区切った構成と言うこともできる。
(第6の実施形態)
図21は本発明の第6の実施形態に係る浄化装置の構成を示す縦断面面、図22は図21に示す浄化装置の右側面図、図23は図21に示す浄化装置の変形例を示す縦断面面である。
図21乃至図23に示された第6の実施形態における浄化装置1Eでは、光触媒2でコーティングされた板状部材3を筐体5内に複数枚配置し、共通のランプ4で各板状部材3に紫外線を照射できるようにした点が第5の実施形態における浄化装置1Dと相違する。第6の実施形態における浄化装置1Eの他の構成及び作用については第5の実施形態における浄化装置1Dと実質的に異ならないため筐体5の内部における構成のみ図示し、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
図21及び図22に示すように光触媒2でコーティングされた複数の板状部材3を単一の筐体5内に配置する場合においても、紫外線を透過する仕切り板20を配置することによって単一の筐体5内に第1の領域R1を形成する第1の流路6Aと、第2の領域R2を形成する第2の流路6Bとを形成することができる。
実用的な例として、仕切り板20と光触媒2との間における距離が光触媒2によって有害物を分解することが可能な距離以下となるように、ランプ4を筒状の仕切り板20で囲んで内部を第1の流路6Aとし、外部を第2の流路6Bとすることができる。尚、図21及び図22に示す例では、筒状の仕切り板20の外部において気体Gが必ず光触媒2の近傍を通るように、光触媒2でコーティングされた4枚の板状部材3が、隙間が生じないように筒状構造となるように敷き詰められている。
仕切り板20を筒状とする場合においても、第1の流路6Aの出口となる仕切り板20の端部には、図19に例示されるような凹凸を設けることができる。その場合、気体Gが同一平面上の位置でUターンしないようにすることができるため、有害物による光触媒2の汚染を分散させることができる。
また、気体Gを筐体5の一方側から流入させ、他方側から排出させる場合には、板状部材7Aに形成される気体Gの流入口8Aに気体Gを流す配管21を連結することによって、気体Gを第1の流路6Aの上流側に導くことができる。逆に、気体Gを筐体5の同じ方向から流入及び排出できる場合には、図23に例示されるように、気体Gの排出口8Bを形成する板状部材7Bに気体Gの流入口8Aも形成することによって、気体Gを第1の流路6Aの上流側に流入させることができる。この場合においても、筐体5の排出口8Bは、光触媒2の表面(筐体5内に露出した面)と連続的に接続された面を備えることが好ましい。これによって、気体Gは、すなわち、筐体5の排出口8Bから所定の距離間、第2の領域R2を通過することになり、浄化の最終段階において光触媒2と気体Gとの接触機会を確保することが可能となる。
以上のような第6の実施形態によれば、第5の実施形態と比較して光触媒2の表面積を大きくすることができる。このため、単位時間当たりに浄化することが可能な気体Gの体積を増加することができる。
(第7の実施形態)
図24は本発明の第7の実施形態に係る浄化装置の構成を示す縦断面面、図25は図24に示す浄化装置の右側面図、図26は図24に示す浄化装置の変形例を示す縦断面面である。
図24乃至図26に示された第7の実施形態における浄化装置1Fでは、板状部材3を筒状に形成し、板状部材3の内面を光触媒2でコーティングした点が第5の実施形態における浄化装置1Dと相違する。第7の実施形態における浄化装置1Fの他の構成及び作用については第5の実施形態における浄化装置1Dと実質的に異ならないため筐体5の内部における構成のみ図示し、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
図24及び図26に示すように内面が光触媒2でコーティングされた筒状の板状部材3を単一の筐体5内に配置する場合においても、紫外線を透過する仕切り板20を配置することによって単一の筐体5内に第1の領域R1を形成する第1の流路6Aと、第2の領域R2を形成する第2の流路6Bとを形成することができる。実用的な例として、仕切り板20と光触媒2との間における距離が光触媒2によって有害物を分解することが可能な距離以下となるように、ランプ4を筒状の仕切り板20で囲んで内部を第1の流路6Aとし、外部を第2の流路6Bとすることができる。
図24及び図25に示す例では、光触媒2でコーティングされた板状部材3が円筒状となっている。このため、円筒状の内面を形成する光触媒2の近傍を気体Gが通過するように形成された横断面が環状の第2の流路6Bから気体Gが排出されるように、複数の円弧状のスリットが気体Gの排出口8Bとして筐体5の端面を形成する板状部材7Bに設けられている。
仕切り板20を角筒状とする場合はもちろん、円筒状とする場合においても、第1の流路6Aの出口となる仕切り板20の端部には、図19に例示されるような凹凸を設けることができる。その場合、気体Gが同一円上又は同一平面上の位置でUターンしないようにすることができるため、有害物による光触媒2の汚染を分散させることができる。
また、気体Gを筐体5の一方側から流入させ、他方側から排出させる場合には、板状部材7Aに形成される気体Gの流入口8Aに気体Gを流す配管21を連結することによって、気体Gを第1の流路6Aの上流側に導くことができる。逆に、気体Gを筐体5の同じ方向から流入及び排出できる場合には、図26に例示されるように、気体Gの排出口8Bを形成する板状部材7Bに気体Gの流入口8Aも形成することによって、気体Gを第1の流路6Aの上流側に流入させることができる。この場合においても、筐体5の排出口8Bは、光触媒2の表面(筐体5内に露出した面)と連続的に接続された面を備えることが好ましい。これによって、気体Gは、すなわち、筐体5の排出口8Bから所定の距離間、第2の領域R2を通過することになり、浄化の最終段階において光触媒2と気体Gとの接触機会を確保することが可能となる。
以上のような第7の実施形態によれば、第5の実施形態と比較して光触媒2の表面積を大きくすることができるのみならず、板状部材3を円筒状に形成すれば紫外線を効率的に光触媒2に照射することが可能となる。このため、単位時間当たりに浄化することが可能な気体Gの体積を一層増加することができる。
(第8の実施形態)
図27は本発明の第8の実施形態に係る浄化装置の構成を説明するための断面図である。
第8の実施形態における浄化装置1Gでは、図27に示すように流路6の少なくとも一部の壁面に凹凸30を設けた点が他の各実施形態における浄化装置1、1A、1B、1C、1D、1E、1Fと相違する。第8の実施形態における浄化装置1Gの他の構成及び作用については他の各実施形態における浄化装置1、1A、1B、1C、1D、1E、1Fと実質的に異ならないため凹凸30を設けた流路6の壁面のみ図示し、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して説明を省略する。
流路6の表面には、光触媒2の近傍を流れる気体Gに乱流及び旋回流の少なくとも一方を発生させるための凹凸30を設けることができる。光触媒2の近傍を流れる気体Gに乱流及び旋回流の少なくとも一方を発生させると、気体Gが光触媒2と接触する機会を向上させることができる。
凹凸30は光触媒2でコーティングされる板状部材3に設けても良いし、仕切り板20の表面や筐体5の内面に設けても良い。板状部材3に凹凸30を設ける場合には、光触媒2自体が凹凸30を有することになる。このため、光触媒2に局所的に有害物が堆積しないように滑らかな凹凸30を形成しても良い。一方、光触媒2以外の表面に凹凸30を設ける場合には、光触媒2の近傍を流れる気体Gに好ましい乱流又は旋回流が起きやすくなるように様々な形状の凹凸30を適切な位置に設けることができる。尚、図27は有害物が堆積する恐れが無い筐体5の内面に凹凸30を形成した例を示している。
以上のような第8の実施形態によれば、他の実施形態と比較して気体Gが光触媒2と接触する機会を向上させることができる。このため、単位時間当たりに浄化することが可能な気体Gの体積を一層増加することができる。この実施形態においては、光触媒2によって浄化される第2の領域R2を最大40mm、さらには最大50mmに広げることができるため、排出口8Bの幅を大きくすることができ、気体Gの流量を増加でき、浄化効率を向上することが可能である。なお、第2の領域R2の広さは、乱流及び旋回流の気体の流れ方や流量によって異なる。この実施形態は、他の実施形態にも適用することができる。
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。