JPWO2020121799A1 - 熱電池 - Google Patents

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Abstract

従来よりも大きな熱起電力が得られる熱電池を提供することを目的とする。第1の電極と、前記第1の電極とは酸化還元電位の温度係数の異なる第2の電極と、電解質と、を備えた素子を有し、前記第1の電極又は第2の電極のいずれか又は両方は、温度の変化に伴って構造相転移して酸化還元電位が変化する材料を含み、前記第1の電極と前記第2の電極とはそれぞれ前記電解質と接触して設けられ、前記素子の温度を上昇又は下降させることにより前記第1の電極と前記第2の電極との間に酸化還元電位の差を生じさせ、前記素子から電力を得るよう構成されてなる、熱電池である。

Description

本発明は、温度変化により電力を発生する熱電池に関する。
我が国の未利用の産業排熱は、国内で利用されている電力量の2倍以上である。また、我が国に降り注ぐ太陽熱エネルギーは、国内で利用されている電力量の1000倍以上である。これらの熱エネルギーの一部を電気エネルギーに変換できれば、化石エネルギーの消費が抑えられ、二酸化炭素の削減に貢献することができる。
また、人体も熱エネルギーを発散しているため、この熱エネルギーを電気エネルギーに変換できれば、モバイル機器の充電が不要になる。そのためには、室温付近の熱エネルギーを安価に電気エネルギーに変換することができる「熱発電システム」が求められる。
温度差を電気エネルギーに変換する技術としては、例えば、半導体のゼーベック係数を利用した熱発電素子が知られている。この熱発電素子では、室温付近で性能が高い材料(BiTe)が用いられる。しかしながら、この材料は、高価である上に、有毒な元素を含むという問題がある。また、この熱発電素子は、温度勾配をつけるために嵩高いものとなる。
これに対して、特許文献1では、熱起電力が異なる電極を同一の電解質層に接触させ、素子全体の温度を変化させることにより、起電力を発生する熱発電素子が開示されている。特許文献1に記載されている方法を用いた熱発電が、基礎研究レベルで実証されている。
例えば、非特許文献1では、正極をNa1.6Co[Fe(CN)0.9、負極をNa0.84Co[Fe(CM)0.71、電解液を10mol/LのNaClO水溶液とした熱発電素子を作製した。この熱発電素子は、23℃と50℃との間で24mVの起電力が得られた。また、この熱発電素子は、熱効率が1.0%であった。この値は、カルノー効率が11%である。
また、非特許文献2では、正極をNa1.6Co[Fe(CN)0.9、負極をNa1.32Mn[Fe(CM)0.83、電解液を10mol/LのNaClO炭酸プロピレン水溶液とした熱発電素子を作製した。この熱発電素子は、13℃と40℃との間で39mVの起電力が得られた。また、この熱発電素子は、熱効率が2.3%であった。この値は、カルノー効率が23%である。
Na1.6Co[Fe(CN)0.9の熱起電力係数は1.3mV/K、Na0.84Co[Fe(CM)0.71の熱起電力係数は0.5mV/K、Na1.32Mn[Fe(CM)0.83の熱起電力係数は−0.3mV/Kである。より大きな熱起電力と熱効率を得るためには、より大きな熱起電力係数を示す材料を創出することが不可欠である。
特開2018−73596号公報
T.Shibata,Y.Fukuzumi,W.Kobayashi,and Y.Moritomo,Thermal power generation during heat cycle near room temperature,Appl.Phys.Express.11,017101(2018). Y.Fukuzumi,K.Amaha,W.Kobayashi,H.Niwa,and Y.Moritomo,Prussian blue analogues as promising thermal power generation materials,Energy Technology,DOI:10.1002/ente.201700952.
熱発電素子が発生する熱起電力の大きさは、正極と負極の材料の熱起電力係数の差と温度変化の積で与えられる。さらに、熱発電素子の熱効率は、熱起電力に比例する。従って、より大きな熱起電力と熱効率を得るためには、より大きな熱起電力係数を示す電極材料、それを備えた素子、及びそれを備えた熱電池の構造が望まれていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、より大きな熱起電力が得られる熱電池を提供することを目的とする。
本実施形態の熱電池は、以下のような実施の態様を含む。
[1] 第1の電極と、前記第1の電極とは酸化還元電位の温度係数の異なる第2の電極と、電解質と、を備えた素子を有し、前記第1の電極又は第2の電極のいずれか又は両方は、温度の変化に伴って構造相転移して酸化還元電位が変化する材料を含み、前記第1の電極と前記第2の電極とはそれぞれ前記電解質と接触して設けられ、前記素子の温度を上昇又は下降させることにより前記第1の電極と前記第2の電極との間に酸化還元電位の差を生じさせ、前記素子から電力を得るよう構成されてなる、熱電池。
[2] 前記素子を前記構造相転移の上部臨界温度以上の高温温度に調整して前記酸化還元電位の差を生じさせ、前記素子の温度を前記高温温度に保って、前記素子から電力を得るよう構成されてなる、又は、前記素子を前記構造相転移の下部臨界温度以下の低温温度に調整して前記酸化還元電位の差を生じさせ、前記素子の温度を前記低温温度に保って、前記素子から電力を得るよう構成されてなる、[1]に記載の熱電池。
[3] 前記素子を前記構造相転移の上部臨界温度以上の高温温度に調整して前記酸化還元電位の差を生じさせ、ついで、前記素子の温度を、前記上部臨界温度と前記構造相転移の下部臨界温度との間の使用温度に保って、前記素子から電力を得るよう構成されてなる、又は、前記素子を前記構造相転移の下部臨界温度以下の低温温度に調整して前記酸化還元電位の差を生じさせ、ついで、前記素子の温度を前記使用温度に保って、前記素子から電力を得るよう構成されてなる、[1]に記載の熱電池。
また、本発明の実施態様は、以下のような側面も含む。
[1A]第1の電極と第2の電極が、単一の電解質を介して対向してなる熱発電素子であって、前記第1の電極は、温度の上昇に伴って構造相転移し、起電力が大きく変化する材料Aを含み、前記第2の電極は、温度の上昇に伴って構造相転移し、前記材料Aとは逆の方向に起電力が変化する材料Bまたは温度の上昇に伴って構造相転移せず、前記材料Aとは逆の方向に起電力が変化する材料Cを含み、前記材料Aは、NaCo1−y[Fe(CN)(但し、AはFe、Mn、NiおよびZnからなる群から選択される少なくとも1種、0.8<x<2.0、0.0<y<1.0、0.7<z<1.0)で表される化合物からなる熱発電素子。
[2A]前記材料Cは、NaCo1−y[Fe(CN)(0.8<x<2.0、0.8<z<1.0)で表される化合物からなる[1A]に記載の熱発電素子
[3A]前記第1の電極、前記第2の電極および前記電解質を有するユニットが、一方のユニットの前記第1の電極と、他方のユニットの前記第2の電極とが隣り合うように複数積層されてなる[1A]または[2A]に記載の熱発電素子。
実験例において用いたNCF膜の相図を示すグラフ図である。 実験例において用いたNCF膜の格子定数を示すグラフ図である。 実験例において用いたNCF膜の放電曲線を示すグラフ図である。 実験例において用いたNCF/NCF90熱電池の放電を示すグラフ図である。 実験例において用いたNCMF膜の相図を示すグラフ図である。 本実施形態の熱電池の熱発電の概要を示す図である。 本発明の一実施形態における熱発電素子の断面図である。 参考実験例においてNCF膜の電位曲線を測定した結果を示す図である。 参考実験例において温度変化に対するNCF膜Aの起電力を測定した結果を示す図である。 参考実験例においてNCF膜AまたはNCF90膜Aを酸化したときの電極容量の変化を示す図である。 参考実験例で用いた熱起電力測定装置の模式図である。 参考実験例において電気化学セルの起電力を測定した結果を示す図である。 参考実験例において電気化学セルの容量の変化を示す図である。
以下、実施形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[熱電池の構成要素]
本実施形態の熱電池は、第1の電極と、第2の電極と、電解質層と、を備えた素子を有する。
(電極)
第1の電極と第2の電極とは、酸化還元電位の温度係数が異なる値を有している。第1の電極と第2の電極との酸化還元電位の温度係数が異なる値を有するとは、それぞれの電極を同じ条件で温度変化させた際に、酸化還元電位が変化し、その値が異なることを指す。例えば、同じ温度変化をさせた際に一方が大きな酸化還元電位の変化、他方が小さな酸化還元電位の変化を生じる場合などがある。また、第1の電極と第2の電極を同じ温度Tへと変化させたとき、それぞれが正と負で逆の酸化還元電位の変化を生じる(例えば、第1の電極が負の酸化還元電位の変化を生じ、第2の電極が正の酸化還元電位の変化を生じる)こともさらに好ましい。
第1の電極又は第2の電極のいずれか又は両方は、温度の変化に伴って構造相転移して酸化還元電位が変化する材料を含んでいる。構造相転移するとは、物理的性質の変化、例えば体積の変化などが生じることで、温度の変化によってどのような構造相転移が起こるかは、例えば、二種類の遷移金属の間の協力的な電荷移動に誘起される構造相転移、および、Naの秩序-無秩序に誘起される構造相転移などが挙げられる。
なお、温度の変化とは温度の上昇又は下降を指す。温度の上昇に伴って構造相転移するとは、一定温度(例えば常温)よりも高い温度に前記材料の構造相転移の上部臨界温度がある場合、前記一定温度から上部臨界温度以上に温度を上昇させた場合に、構造相転移が起こることである。このような材料の場合、一方で、温度の上昇により構造相転移していた化合物の温度を、下部臨界温度以下に下降させた場合に、前記構造相転移する前の状態に戻る(すなわち、温度の下降に伴って別の状態へと構造相転移する)ことも起こる。
具体的には、本実施形態の構造相転移する化合物は、およそ常温を挟んでおよそ20〜30℃の範囲で構造相転移を起こすことが好ましい。さらに具体的には、0〜60℃の範囲、好ましくは10〜50℃の範囲のいずれかで構造相転移を起こすことが好ましい。
また、上部臨界温度と下部臨界温度が、いずれも0〜60℃の範囲内にあることが好ましい。
酸化還元電位が変化するとは、より具体的には、温度を構造相転移の臨界温度を挟んで30℃変化させたときに、前記材料の酸化還元電位が100mV以上変化することである。また、このとき酸化還元電位が150mV以上変化することが特に好ましい。目安として、熱起電力係数の絶対値が3.3mV/K以上、特に好ましくは5.0mV/K以上であることが好ましい。従来技術における構造相転移を起こさない材料は、例えば熱起電力係数の絶対値が0.3〜1.0mV/K等であり、本実施形態の材料は、これらに比べて電位が大きく変化する。目安として、本実施形態の材料はある温度において熱起電力定数が構造相転移を起こさない材料の3倍以上、好ましくは5倍以上である。
これらの温度の変化に伴って構造相転移して酸化還元電位が変化する材料としては、従来、電極に用いられる化合物より上述の構造相転移を起こし得る化合物を選択できる。例としては、Co−PBA(コバルトプルシャンブルー型錯体)の中から構造相転移して酸化還元電位が大きく変化する材料を選択することができる。
Co−PBAのうち、具体的には、NaCo1−yy[Fe(CN)(但し、AはFe、Mn、NiおよびZnからなる群から選択される少なくとも1種、0.8<x<2.0、0.0<y<1.0、0.7<z<1.0)で表される化合物が挙げられる。三次電池材料として、xの大体の値を指定した化合物としては、例えば、Na0.1Co[Fe(CN)0.82やNa0.2Co0.44Mn0.56[Fe(CN)0.90などが挙げられる。
また、構造相転移を起こす化合物としては、構造相転移を起こし、かつ酸化還元の可能な化合物を用いることも好ましい。そのような化合物としては、前述のCo−PBAが挙げられ、また、層状酸化物(NaMO、LiMO:Mは遷移金属)、ポリアニオン材料(LiFe1−zPO、LiFe1−zSiO;Mは遷移金属)を用いることができる。
なお、前記Co−PBA及びポリアニオンは、二種類の遷移金属の間の協力的な電荷移動に誘起される構造相転移を起こし、前記層状酸化物は、Naの秩序-無秩序に誘起される構造相転移を起こす。
温度の変化に伴って構造相転移して前記酸化還元電位が変化する材料は、第1の電極又は第2の電極のいずれか一方でも、又は両方の構成素材であってもよい。
例えば、第1の電極又は第2の電極のいずれか一方が前記構造相転移する材料を構成素材とし、他方が前記構造相転移する材料でない材料を構成素材としていてもよい。この場合、素子の温度を変化させると、前記構造相転移する材料を構成素材とする電極の酸化還元電位が大きく変化し、他方の電極の酸化還元電位の変化が小さいので、酸化還元電位の差が大きくなり、大きな電力が得られる。
第1の電極又は第2の電極のいずれか一方を、温度の変化に伴って構造相転移する金属でない材料とするとき、その材料は従来電極に用いることのできる材料から適宜選択できる。例えば、一般的な電池材料である構造相転移を起こさない層状酸化物、構造相転移を起こさないポリアニオンなどが使用できる。
また、第1の電極又は第2の電極の両方が前記構造相転移する材料を構成素材としていてもよい。このとき、前記材料それぞれの構造相転移により、前記電極の間に起こる酸化還元電位の差が大きくなるように適宜選択されることが好ましい。例えば、電極の一方が温度の上昇により負の酸化還元電位の変化を生じる材料を構成素材とし、電極の他方が温度の上昇により正の酸化還元電位の変化を生じる材料を構成素材としていることもさらに好ましい。この場合、素子の温度を変化させると、前記構造相転移する材料を構成素材とする電極の酸化還元電位が変化し、一方の電極が正の、他方の電極が負の酸化還元電位の変化を生じるため、酸化還元電位の差が特に大きくなり、特に大きな電力が得られる。
構造相転移を起こす材料を電極のいずれか一方又は両方の構成素材に用いることで、従来の熱電池、すなわち構造相転移を起こさない材料を電極に用いた熱電池に比べて、特に大きな電位の差を得ることができる。例えば、従来の熱電池は常温付近の上下±20℃(例えば10〜50℃)において、温度変化30℃あたりの酸化還元電位の差は30mV前後であったが、本願発明の熱電池では100mV以上の酸化還元電位の差が得られ、従来に比べておよそ3倍以上の酸化還元電位の差が得られる。
本願の構造相転移を起こす材料を備えた熱電池は、電気エネルギーにより充電を行う従来の二次電池に対して、温度変化により充電を行うため、いわゆる三次電池ともいうことができる。
(電解質)
第1の電極と第2の電極とは、それぞれ電解質とは接触して設けられている。電解質との接触には、例えば、電解質が液体である場合は、第1の電極と第2の電極がいずれも電解質に浸漬されている形態などがある。
電解質としては、従来電池に使用されているものから適宜選択して使用できる。電解質としては、液体の電解質を用いることが好ましい。本実施形態では、電極に構造相転移により体積が変化する材料を用いるので、液体の電解質に電極を浸漬するという形態をとることで、電極の体積が変化しても電極と電解質の接触を保つことができるので、好適に用いることができる。また、液体電解質としては、電位が低いので電位窓の小さな可燃でない水系電解液が使え、安全であるという利点がある。
液体の電解質を用いる場合は、例えばアルカリ金属塩を溶媒に溶解してなる電解液を用いることができる。アルカリ金属塩としては、例えば、過塩素酸ナトリウム(NaClO)、塩化ナトリウム(NaCl)、過塩素酸リチウム(LiClO)等が挙げられる。溶媒としては、例えば、水、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)等が挙げられる。
(その他の構成)
本実施形態の熱電池は、前記素子から電力を得るための他の構成を備えていてもよい。例えば、電極から放電を行うための端子、例えばリード線等を備えていてもよい。本実施形態の熱電池は、素子を収納するケーシング等を備えていてもよい。
(熱電池による熱発電)
本実施形態の熱電池は、前記素子の温度を上昇又は下降させることにより前記第1の電極と前記第2の電極との間に酸化還元電位の差を生じさせ、前記素子から電力を得るよう構成されてなる。
上述のように構成された本実施形態の熱電池の作用として、素子全体の温度を変化させることで、第1の電極と前記第2の電極とが共に温度が変化するので、酸化還元電位の温度係数の異なる第1の電極と前記第2の電極との間に酸化還元電位の差が生じる。
素子全体の温度を変化させるには、熱電池内の素子が含まれる部位を温める又は冷やすことによって行ってもよい。また、例えば熱電池全体を温める又は冷やすことによっても行うことができる。
第1の電極と前記第2の電極との間に酸化還元電位の差が生じると、素子からは電力を取り出すことができる。すなわち、素子の温度の変化による熱のエネルギー、又は素子の置かれている温度条件による熱のエネルギーが電力のエネルギーに変換される。
さらに具体的には、本実施形態の熱電池は、以下の(1)〜(4)の過程により前記素子から電力を得てもよい。(1)〜(4)はそれぞれの過程を独立して、又は任意に組み合わせて用いることができるが、以下に説明するように、(1)ついで(2)の過程を行い、又は、(3)ついで(4)のような過程を行うことにより、前記素子から電力を得ることが好ましい。
まず(1)ついで(2)の過程により電力を得る方法について説明する。
(1)素子を構造相転移の上部臨界温度以上の高温温度に調整して、酸化還元電位の差を生じさせ、素子の温度を高温温度に保って、素子から電力を得る。
この過程を図6に示して説明すると、本実施形態の熱電池の使用前には、熱電池は温度を変化させる前の温度Tの状態にある。本実施形態では、温度Tは常温に近い(20〜35℃程度の)温度である。図6では、構造相転移する材料の一例として、NaCo[Fe(CN)0.82を用いた場合の、ナトリウム成分xごとの上部臨界温度を実線、下部臨界温度を破線で示している。
この過程では、まず素子を温度Tから、前記構造相転移する材料における、上部臨界温度以上の高温温度Tに調整する。上部臨界温度は、前記材料を低温から高温にして相転移させる際の(昇温時の)相転移の臨界温度である。上部臨界温度は材料によって異なるが、例えば本実施形態では上部臨界温度が35〜55℃の範囲になる材料を選択しており、高温温度Tは50〜55℃以上に設定できる。
素子の温度が上部臨界温度を上回ると、前記材料が構造相転移し、第1の電極と第2の電極との間の酸化還元電位の差が生じる。
ついで、素子の温度を上記した高温Tに保つ。第1の電極と第2の電極との間の酸化還元電位の差が生じた状態が維持されているので、素子からは電力を得ることができる。
ついで、(1)で構造相転移により変化した材料の化学組成を元に戻すための以下の(2)の過程を行う。
(2)素子を構造相転移の下部臨界温度以下の低温温度に調整して酸化還元電位の差を生じさせ、素子の温度を低温温度に保って、素子から電力を得る。
この過程では、まず素子を温度Tから、前記構造相転移する材料における、下部臨界温度以下の低温温度Tに調整する。下部臨界温度は、前記材料を高温から低温にして相転移させる際の(降温時の)相転移の臨界温度である。下部臨界温度は材料によって異なるが、例えば本実施形態では上部臨界温度が30〜10℃の範囲になる材料を選択しており、低温温度Tは20〜0℃以下に設定できる。
素子の温度が下部臨界温度を下回ると、前記材料が構造相転移し、第1の電極と第2の電極との間の酸化還元電位の差が生じる。
ついで、素子の温度を上記した低温温度Tに保つ。第1の電極と第2の電極との間の酸化還元電位の差が生じた状態が維持されているので、素子からは電力を得ることができる。
(1)についで(2)の過程を行うことで、(1)の放電時に材料の化学組成(x)が変化し、(2)の放電時に化学組成(x)が元に戻る。このため、(1)についで(2)を行う過程を繰り返して行うことで、放電を継続することができる。熱力学的には、(1)の過程で高温熱源から、(2)の過程で低温熱源に流れた熱エネルギーの一部が、電気エネルギーに変換されることになる。
次に、(3)ついで(4)の過程により電力を得る方法について説明する。
(3)素子を構造相転移の上部臨界温度以上の高温温度に調整して酸化還元電位の差を生じさせ、ついで、素子の温度を、上部臨界温度と構造相転移の下部臨界温度との間の使用温度に保って、素子から電力を得る。
この過程では、まず素子を温度Tから、上述した高温温度Tに調整する。
素子の温度が上部臨界温度を上回ると、前記材料が構造相転移し、第1の電極と第2の電極との間の酸化還元電位の差が生じる。
ついで、素子の温度を、上述した上部臨界温度と下部臨界温度との間の温度である、使用温度Tに調整する。使用温度Tは、上部臨界温度を超えず下部臨界温度を超える値であれば任意に選択できる。本実施形態の電極の材料を用いた場合、上部臨界温度を超えず下部臨界温度を超える値は常温付近となるが、使用温度Tは常温でもよく、使用前の温度Tと同じでもよく、異なっていてもよい。
ついで、素子の温度を、上述した使用温度Tに保つ。使用温度Tは、構造相転移の上部臨界温度よりも低いが、下部臨界温度は超えているので、構造相転移した材料が相転移前の状態に戻ることはない。そのため、第1の電極と第2の電極との間の酸化還元電位の差が生じた状態が維持されているので、素子からは電力を得ることができる。
ついで、(3)で構造相転移により変化した材料の化学組成を元に戻すための以下の(4)の過程を行う。
(4)素子を構造相転移の下部臨界温度以下の低温温度に調整して酸化還元電位の差を生じさせ、ついで、素子の温度を上部臨界温度と構造相転移の下部臨界温度との間の使用温度に保って、素子から電力を得る。
この過程では、まず素子を温度Tから、上述した低温温度Tに調整する。
素子の温度が下部臨界温度を下回ると、前記材料が構造相転移し、第1の電極と第2の電極との間の酸化還元電位の差が生じる。
ついで、素子の温度を、上述した上部臨界温度と下部臨界温度との間の温度である、上述した使用温度Tに調整する。使用温度Tは常温でもよく、使用前の温度Tと同じでもよく、異なっていてもよい。
ついで、素子の温度を、上述した使用温度Tに保つ。使用温度Tは、構造相転移の下部臨界温度よりも高いが、上部臨界温度よりも低いので、構造相転移した材料が相転移前の状態に戻ることはない。そのため、第1の電極と第2の電極との間の酸化還元電位の差が生じた状態が維持されているので、素子からは電力を得ることができる。
(3)についで(4)の過程を行うことで、(3)の放電時に材料の化学組成(x)が変化し、(4)の放電時に化学組成(x)が元に戻る。このため、(3)についで(4)を行う過程を繰り返して行うことで、放電を継続することができる。熱力学的には、(3)の過程で高温熱源から、(4)の過程で低温熱源に流れた熱エネルギーの一部が、電気エネルギーに変換されることになる。
[熱発電素子]
図7は、本実施形態の熱電池に含まれる素子の一態様である、熱発電素子の断面図である。
本実施形態の熱発電素子1は、図7に示すように、第1の電極2と、第2の電極3と、電解質4とを有するユニット5を備える。
熱発電素子1において、第1の電極2は集電極6の一方の面6aに設けられ、第2の電極3は集電極6の他方の面6bに設けられており、第1の電極2と第2の電極3は、集電極6を介して対向して配置されている。また、第1の電極2と第2の電極3は、セパレータ7を介して対向して配置されている。また、第1の電極2と第2の電極3は、セパレータ7に含浸させた単一の電解質4を介して、所定の間隔を置いて対向して配置されている。また、第1の電極2、第2の電極3および電解質4を有するユニット5が、一方のユニット5の第1の電極2と、他方のユニット5の第2の電極3とが集電極6を介して隣り合うように複数積層されている。また、第1の電極2と第2の電極3は、リード線8を介して電気的に接続されている。また、リード線8の途中には、熱発電素子1で発生した電流を取り出すための回路(図示略)や装置(図示略)が設けられていてもよい。さらに、これらの構成要素は、ラミネートフィルム9で封止されている。
なお、第1の電極2と第2の電極3との間は、短絡を防ぐため絶縁されていることが好ましい。このような絶縁の手段としては、例えば、集電極6とラミネートフィルム9の間の隙間、電解質4(セパレータ7)とラミネートフィルム9の間の隙間(それぞれ図における集電極6、電解質4の上下端など)は、絶縁材料、例えば後述するバインダ樹脂等を用いて封止されていることが好ましい。
第1の電極2および第2の電極3は、同一の金属イオンが可逆的に出入りする材料を含む。また、第1の電極2および第2の電極3は、同一の金属イオンが析出または合金化する材料を含んでいてもよい。
第1の電極2は温度の上昇に伴って構造相転移し、起電力が大きく変化する材料Aを含み、第2の電極3はアルカリ金属Bを含む。第2の電極3は、温度の上昇に伴って構造相転移し、温度の上昇に伴って材料Aとは逆の方向に起電力が変化する材料B、または、温度の上昇に伴って構造相転移せず、温度の上昇に伴って材料Aとは逆の方向に起電力が変化する材料Cを含む。なお、温度の上昇に伴う構造相転位により、材料Aの起電力が大きく変化するとは、温度の上昇に伴って構造相転位を示さない材料と比べて起電力が大きく変化するという意味である。例えば、構造相転位を示す材料Aとしては、熱起電力係数の絶対値が10mV/K程度のものがあり、構造相転位を示さない材料Cとしては、熱起電力係数の絶対値が最大で1.3mV/Kのものがある。
材料Aは、NaCo1−y[Fe(CN)、NaCo1−y[Fe(CN)(但し、AはFe、Mn、NiおよびZnからなる群から選択される少なくとも1種、0.8<x<2.0、0.0<y<1.0、0.7<z<1.0)で表される化合物からなる。このような化合物としては、具体的に、Na1.60Co0.44Mn0.56[Fe(CN)0.90等が挙げられる。
第1の電極2に温度の上昇に伴って構造相転移し、起電力が大きく変化する材料Aを用いれば、効率的に熱エネルギーから電気エネルギーへの変換を行うことができる。
材料Aとしては、熱発電素子1を使用する環境の温度変化の中点以下で構造相転移し、起電力が大きく変化する材料であることが好ましい。熱発電素子1に起電力を生じさせるために、例えば、人体熱や夏場の太陽熱を利用する場合、30℃以下で構造相転移し、起電力が大きく変化する材料であることが好ましく、冬場の室内外の温度差を利用する場合、10℃以下で構造相転移し、起電力が大きく変化する材料であることが好ましい。
材料Cは、温度の上昇に伴って構造相転移せず、温度の上昇に伴って材料Aとは逆の方向に酸化還元電位が変化する材料であってもよく、また、材料Aと同じ方向に変化する化合物、例えば、NaCo1−y[Fe(CN)(0.8<x<2.0、0.8<z<1.0)で表される化合物などであってもよい。
第1の電極2は、上記の材料A以外に、バインダー樹脂(結着剤)や導電助剤を含んでいてもよい。
バインダー樹脂として、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、フッ素ゴム等が挙げられる。
導電助剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック(AB)、ファーネスブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
電解質4としては、アルカリ金属塩を溶媒に溶解してなる電解液が用いられる。
アルカリ金属塩としては、例えば、過塩素酸ナトリウム(NaClO)、塩化ナトリウム(NaCl)、過塩素酸リチウム(LiClO)等が挙げられる。
溶媒としては、例えば、水、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)等が挙げられる。
電解質4としては、安価である点から、水系電解質が好ましく、塩化ナトリウム水溶液がより好ましい。
また、図7には、熱発電素子1において、第1の電極2、第2の電極3および電解質4を有するユニット5が、一方のユニット5の第1の電極2と、他方のユニット5の第2の電極3とが隣り合うように複数積層されている場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態の熱発電素子1が、第1の電極2、第2の電極3および電解質4を有する1つのユニット5から構成されていてもよい。
本実施形態の熱発電素子1によれば、より大きな熱起電力が得られ、素子全体の温度変化を利用して、熱エネルギーを電気エネルギーへ変換することが可能である。また、水系電解質を用いることにより、より安価で、かつ廃棄する際に環境負荷が少ない熱発電素子1が得られる。
詳細には、第1の電極2が温度の上昇に伴って構造相転移し、電位が大きく変化する材料Aを含み、第2の電極3が温度の上昇に伴って構造相転移し、温度の上昇に伴って材料Aとは逆の方向に電位が変化する材料B、または、温度の上昇に伴って構造相転移せず、温度の上昇に伴って材料Aとは逆の方向に電位が変化する材料Cを含むため、次のようにして、熱発電素子1は発電することができる。
第2の電極3が材料Bを含む場合について説明する。
人体の熱や太陽熱、気温等により、熱発電素子1の温度、すなわち、第1の電極2の温度と第2の電極3の温度を上昇させる。すると、第1の電極2に含まれる材料Aが構造相転移して、第1の電極2は電位が大きく変化する。一方、第2の電極3に含まれる材料Bが構造相転移して、第2の電極3は第1の電極2とは逆の方向に電位が変化する。これにより、第1の電極2と第2の電極3の間に電位の差が生じて、電極間に電位の変化による起電力が生じ(起電力の変化)、熱発電素子1は充電される。充電された電気エネルギーは放電で取り出すことができる。
次に、人体から遠ざける、太陽熱を遮断する、気温が下がる等により、熱発電素子1の温度、すなわち、第1の電極2の温度と第2の電極3の温度を下降させる。すると、第1の電極2に含まれる材料Aが構造相転移して、第1の電極2は電位が温度上昇時と逆の方向に大きく変化する。一方、第2の電極3に含まれる材料Bが構造相転移して、第2の電極3は第1の電極2とは逆の方向に電位が変化する。これにより、第1の電極2と第2の電極3の間に電位力差が生じて、熱発電素子1は充電される。充電された電気エネルギーは放電で取り出すことができる。
次に、第2の電極3が材料Cを含む場合について説明する。
人体の熱や太陽熱、気温等により、熱発電素子1の温度、すなわち、第1の電極2の温度と第2の電極3の温度を上昇させる。すると、第1の電極2に含まれる材料Aが構造相転移して、第1の電極2は電位が大きく変化する。一方、第2の電極3に含まれる材料Cが構造相転移しないものの、第2の電極3は第1の電極2とは逆の方向に電位が変化する。これにより、第1の電極2と第2の電極3の間に電位の差が生じて、熱発電素子1は充電される。充電された電気エネルギーは放電で取り出すことができる。
次に、人体から遠ざける、太陽熱を遮断する、気温が下がる等により、熱発電素子1の温度、すなわち、第1の電極2の温度と第2の電極3の温度を下降させる。すると、第1の電極2に含まれる材料Aが構造相転移して、第1の電極2は電位が温度上昇時と逆の方向に大きく変化する。一方、第2の電極3に含まれる材料Cが構造相転移しないものの、第2の電極3は第1の電極2とは逆の方向に電位が変化する。これにより、第1の電極2と第2の電極3の間に電位の差が生じて、熱発電素子1は充電される。充電された電気エネルギーは放電で取り出すことができる。
また、第1の電極2と第2の電極3は、単一の電解質4を介して配置されているため、熱発電素子1を薄型化かつ小型化することができる。
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
[実験例1]
(電極の作製)
[Fe(CN)]を0.8mmol/L含み、Co(NOを0.5mmol/L含み、NaNOを1mol/L含む水溶液を用い、電解析出法により、酸化インジウムスズ(ITO)電極板上に、NCF(ナトリウムコバルト鉄)膜を形成した。電解析出では、電圧を0.45V、電圧を印加する時間を10分とした。これにより、ITO電極板上にNCF膜からなる電極層を有する電極(第1の電極)を得た。
[Fe(CN)]を0.8mmol/L含み、Co(NOを0.5mmol/L含み、NaNOを5mol/L含む水溶液を用い、電解析出法により、酸化インジウムスズ(ITO)電極板上に、NCF90膜を形成した。電解析出では、電圧を0.45V、電圧を印加する時間を10分とした。これにより、ITO電極板上にNCF90膜からなる電極層を有する電極(第2の電極)を得た。
ITO電極板上に形成したNCF膜及びNCF90膜を、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により組成分析したところ、NCF膜を形成する材料がNaCo[Fe(CN)0.82であり、NCF90膜を形成する材料がNa1.6Co[Fe(CN)0.9であることが分かった。
誘導結合プラズマ(ICP)装置としては、島津製作所社製のプラズマ発光分光分析装置ICP−8100を用いた。
Ag/AgCl標準電極を対極として、第1の電極のNCF膜の温度ごとの電位を測定した。電解液としては、過塩素酸ナトリウム(NaClO)を17mol/kg含む水溶液を用いた。
図1のグラフに、縦軸をT(温度)としたNCF膜の相図を示す。図において、中空の丸は昇温時の臨界温度、黒丸は降温時の臨界温度を示している。また、このデータを用いて、昇温時の臨界温度を実線、高温時の臨界温度を破線でプロットした。
図2のグラフに、縦軸をX線回折装置で測定したa(格子定数、単位Å)としたNCF膜の図を示す。
高温相(図において実線よりも上の部分)は、Co2+が多く含まれる相で、体積が大きい。低温相(図において破線よりも下の部分)は、Co3+が多く含まれる相で、体積が小さい。NCF膜の温度上昇に伴い、Fe2+からCo3+への協力的な電子移動が起こり、体積が増大する。
すなわち、このNCF膜はx(ナトリウムの濃度)ごとに、温度が実線で示す温度を上回って上昇した際、又は、破線で示す温度を下回って下降した際に、構造の変化、すなわち構造相転移が起こる。
図3のグラフに、NCF膜の放電曲線を示す。該下部グラフの縦軸はV(起電力)、横軸はxで、NCF膜に含まれるナトリウムの含有量(濃度)を示している。
まず、電解液の温度を10℃としてNCF膜の電位曲線の測定を開始した。このときの電位曲線を破線で示す。次に、電解液の温度を50℃としてNCF膜の電位曲線を測定した。このときの電位曲線を実線で示す。ついで、再び電解液の温度を10℃としてNCF膜の電位曲線を測定した。このときの電位曲線を一点鎖線で示す。
図3の結果から、破線で示す電解液の温度を10℃とした電位曲線では、0.95V付近と0.5V付近にプラトー(曲線が横ばいしている部分)が観測された。このとき、NCF膜の温度も10℃になっている。
また、実線で示す電解液の温度を50℃とした電位曲線では、高電位側のプラトーの電位が低下しており、例えば横軸が0.2の箇所で150mV低下している。これは、電解液の温度の上昇に伴って、NCF膜の温度も上昇し(NCF膜の温度も50℃になり)、NCF膜が相転移したことに起因すると考えられる。
図3のグラフによると、横軸のxの値が0を超え0.5未満の範囲で、10℃と50℃の間で大きな電位差が生じている(実線と破線の間に間隔がある)。特に安定して大きな電位差が見られるx=0.2〜0.4の範囲では、電位差は150mV前後である。
[実験例2]
実験例1と同様の工程を用いて、NCF膜及びNCF90膜を調整した。
正極:NCF90膜
負極:NCF膜
電解液:過塩素酸ナトリウム(NaClO)を17mol/kg含む水溶液
を用いて電池セルを組んだ。
このNCF膜及びNCF90膜を、低温条件T=283K、1.01V vs AG/AgClまで酸化し、正極と負極を相互に接触させず電解液内で対向するように浸漬して、電池セル(本実施態様の素子を含む)を組んだ。この電池セルの電極に起電力(酸化還元電位の差)の測定回路を接続した。電池セルを加熱又は冷却し、また充放電を行わせて起電力(Vcell)を測定した。
図4に示すように、電池セル(NCF/NCF90熱電池)を高温条件T=323Kまで加熱すると(熱充電を行うと)、120mVの起電力が発生した(A1)。高温条件Tを保ったまま、80mVまで放電したところ、2.5mAh/g(NCF膜の重量換算)の電荷量が得られた(A2)。
ついで、電池セルを低温条件T=283Kまで冷却し、完全に低温相まで戻すために電池の充放電を行った(B1)。その結果、−40mVの起電力を得た(B1)。
低温条件T=283Kで0mVまで放電したところ、3.5mAh/gの殿下量を得た(B2)。
再度同様の温度変化、充放電の操作(2サイクル目)を行ったが、ほぼ同じ挙動を示した(A3,B3)。
[実験例3]
実験例1と同様の操作により、NCF膜の膜成分のうちMnを部分置換したコバルトプルシャンブルーを含むNCMF(ナトリウムコバルトマンガン鉄)膜を調整した。ITO電極板上に形成したNCMF膜を実験例1同様に誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により組成分析したところ、NCMF膜を形成する材料はNaCo0.44Mn0.56[Fe(CN)0.90であった。xの値を0.2〜1.3の範囲内で変更した6種類としたNCMF膜を作成した。
NCMF膜の相図を、縦軸をT(温度)、横軸をx(Na含有量、結晶内Na濃度)とした図5に示す。図において、中空の丸は昇温時の臨界温度、黒丸は降温時の臨界温度を示している。また、このデータを用いて、昇温時の臨界温度を実線、降温時の臨界温度を破線でプロットした。
高温相(図において実線よりも上の部分)は、Co2+が多く含まれる相で、体積が大きい。低温相(図において破線よりも下の部分)は、Co3+が多く含まれる相で、体積が小さい。NCMF膜の温度上昇に伴い、Fe2+からCo3+への協力的な電子移動が起こり、体積が増大する。
NCMF膜もx(ナトリウム含有量)ごとに温度によって構造相転移が起こることを示しており、NCF膜同様に温度変化に伴って電位差が生じ、熱電池に使用可能なことが示された。
[参考実験例]
(電極の作製)
[Fe(CN)]を0.8mmol/L含み、Co(NOを0.5mmol/L含み、NaNOを1mol/L含む水溶液を用い、電解析出法により、酸化インジウムスズ(ITO)電極板上に、NCF膜Aを形成した。電解析出では、電圧を0.45V、電圧を印加する時間を10分とした。これにより、ITO電極板上にNCF膜からなる電極層を有する電極(電極1A)を得た。
[Fe(CN)]を0.8mmol/L含み、Co(NOを0.5mmol/L含み、NaNOを5mol/L含む水溶液を用い、電解析出法により、酸化インジウムスズ(ITO)電極板上に、NCF90膜Aを形成した。電解析出では、電圧を0.45V、電圧を印加する時間を10分とした。これにより、ITO電極板上にNCF90膜からなる電極層を有する電極(電極2A)を得た。
ITO電極板上に形成したNCF90膜Aを、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により組成分析したところ、NCF90膜Aを形成する材料がNa1.6Co[Fe(CN)0.9であることが分かった。
誘導結合プラズマ(ICP)装置としては、島津製作所社製のプラズマ発光分光分析装置ICP−8100を用いた。
(NCF膜Aの電位曲線の測定)
Ag/AgCl標準電極を対極として、電極1AのNCF膜の電位曲線(放電曲線)を測定した。 電解液としては、過塩素酸ナトリウム(NaClO)を17mol/kg含む水溶液を用いた。
まず、電解液の温度を18.5℃としてNCF膜Aの電位曲線の測定を開始した。このときの電位曲線を、図8に実線で示す。
次に、電解液の温度を60℃としてNCF膜Aの電位曲線を測定した。このときの電位曲線を、図8に破線で示す。
最後に、電解液の温度を18.5℃としてNCF膜Aの電位曲線を測定した。このときの電位曲線を、図8に一点鎖線で示す。
図8の結果から、実線および一点鎖線で示す電解液の温度を18.5℃とした電位曲線では、0.95V付近と0.5V付近にプラトー(曲線が横ばいしている部分)が観測された。このとき、NCF膜Aの温度も18.5℃になっている。
また、破線で示す電解液の温度を60℃とした電位曲線では、高電位側のプラトーの電位が200mV低下している。これは、電解液の温度の上昇に伴って、NCF膜Aの温度も上昇し(NCF膜Aの温度も60℃になり)、NCF膜Aが相転移したことに起因すると考えられる。
NCF膜Aの温度が18.5℃から60℃に上昇したことにより、NCF膜Aの電位が200mV変化したことから、実質的な熱起電力係数は4.8mV/K程度になると期待される。
(NCF膜Aの起電力の測定)
Ag/AgCl標準電極を対極として、温度変化に対する電極1AのNCF膜Aの電位(起電力)を測定した。
電解液としては、過塩素酸ナトリウム(NaClO)を17mol/kg含む水溶液を用いた。
測定温度を290K〜340Kとした。
結果を図9に示す。
図9の結果から、330K〜340Kの間で電位が大きく変化している(起電力の変化)ことが確認された。
(起電力の評価)
図10に示すように、電極1AのNCF膜Aを0.97Vまで酸化した。このとき、印加電流を20μAとした。また、電極2AのNCF90膜Aを1.0Vまで酸化した。このとき、印加電流を16μAとした。図10には電位の変化を示す。
図11に示す電気化学セル100(NCF/NCF90熱電池に相当)を用いて、電極の熱起電力を測定した。
電気化学セル100は、第1の電極101(電極1A)と、第2の電極102(電極2A)と、電解質103とを備える。
電気化学セル100において、第1の電極101と第2の電極102は、ケース104内に収容された単一の電解質103を介して、所定の間隔を置いて対向して配置されている。また、第1の電極101と第2の電極102は、リード線105を介して電気的に接続されている。また、ケース104がヒーター106上に配置されている。
上記のNCF膜Aを有する電極を電極1A(正極)101とした。上記のNCF90膜Aを有する電極を電極2A(負極)102とした。
電解質103としては、過塩素酸ナトリウム(NaClO)を17mol/kg含む水溶液を用いた。また、動作を安定させるために、前記の水溶液に1mol/Lの塩酸を、全体の8質量%となるように加えた。
電気化学セル100の温度を20℃〜63.5℃まで上昇させながら、電気化学セル100の起電力を測定した。結果を図12に示す。
図12の結果から、温度の上昇に伴って、電気化学セル100の起電力は急激に上昇し、63.5℃で150mVに達することが確認された。実質的な熱起電力係数は3.5mV/Kであった。
さらに、63.5℃において、電気化学セル100を0Vまで放電した。このとき、印加電流を2μAとした。放電曲線を図13に示す。
図13の結果から、電気化学セル100は起電力を生じることが分かった。
本発明の熱電池は、産業排熱、太陽熱、人体熱等を電気エネルギーに変換する熱発電素子、及び熱発電システム等に利用可能である。具体的には、本発明の熱発電素子は、設置型熱発電機、モバイル発電機、及びハイブリッド太陽エネルギー発電機等として利用可能である。
1・・・熱発電素子、2・・・第1の電極(電極1A)、3・・・第2の電極(電極2A)、4・・・電解質、5・・・ユニット、6…集電極、7・・・セパレータ、8・・・リード線、9・・・ラミネートフィルム。

Claims (3)

  1. 第1の電極と、前記第1の電極とは酸化還元電位の温度係数の異なる第2の電極と、電解質と、を備えた素子を有し、
    前記第1の電極又は第2の電極のいずれか又は両方は、温度の変化に伴って構造相転移して酸化還元電位が変化する材料を含み、
    前記第1の電極と前記第2の電極とはそれぞれ前記電解質と接触して設けられ、
    前記素子の温度を上昇又は下降させることにより前記第1の電極と前記第2の電極との間に酸化還元電位の差を生じさせ、前記素子から電力を得るよう構成されてなる、熱電池。
  2. 前記素子を前記構造相転移の上部臨界温度以上の高温温度に調整して前記酸化還元電位の差を生じさせ、前記素子の温度を前記高温温度に保って、前記素子から電力を得るよう構成されてなる、又は、
    前記素子を前記構造相転移の下部臨界温度以下の低温温度に調整して前記酸化還元電位の差を生じさせ、前記素子の温度を前記低温温度に保って、前記素子から電力を得るよう構成されてなる、請求項1に記載の熱電池。
  3. 前記素子を前記構造相転移の上部臨界温度以上の高温温度に調整して前記酸化還元電位の差を生じさせ、ついで、前記素子の温度を、前記上部臨界温度と前記構造相転移の下部臨界温度との間の使用温度に保って、前記素子から電力を得るよう構成されてなる、又は、
    前記素子を前記構造相転移の下部臨界温度以下の低温温度に調整して前記酸化還元電位の差を生じさせ、ついで、前記素子の温度を前記使用温度に保って、前記素子から電力を得るよう構成されてなる、請求項1に記載の熱電池。
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