JPWO2020105541A1 - 弁装置 - Google Patents

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Abstract

安定した再開弁圧を得ることができ、シール性低下を防止できる、弁装置を提供する。この弁装置10は、ハウジング15とフロート弁40とを有しており、フロート弁上方に弾性シール部材60が配置されており、弾性シール部材60は、弁座に接離するシール部61と、リテーナ70を介して、フロート弁40に対して抜け止め保持される複数の抜け止め部とを有しており、リテーナ70は、嵌合構造によってフロート弁40に取付けられていると共に、複数の抜け止め部を、フロート弁40に対して、所定距離移動可能に保持する保持部を有している。

Description

本発明は、自動車等の燃料タンクに取付けられ、燃料流出防止弁や満タン規制弁等として用いられる、弁装置に関する。
例えば、自動車等の車両の燃料タンクには、車両が傾いたり横転したりしたときに、燃料タンク内の燃料が、燃料タンク外へ漏れるのを防止する弁装置が取付けられている。このような弁装置は、一般的に、通気孔を有する仕切壁を介して、上方に通気室、下方に弁室を設けたハウジングと、弁室内に昇降可能に配置されたフロート弁とを有する。また、フロート弁上方には、通気孔に対するシール性向上を目的として、ゴム等からなるシール部材が配置されている場合がある。
例えば、下記特許文献1には、仕切壁を有し上方に通気室、下方に弁室を設けたハウジングと、弁室内に昇降可能に配置されるフロート部材とを備えた、通気弁が記載されている。仕切壁には、細長いスリット状をなした出口開口が形成されている。一方、フロート部材の上部壁には、細長いストリップ状をなした軟質膜片の一端が、固着スタッドを介して固着されている。この軟質膜片は、フロート部材に固着された一端以外の部分が、撓み変形可能となっている。
そして、燃料揺動によりフロート部材に浮力が生じると、フロート部材が上昇して、軟質膜片が出口開口を閉塞する。一方、燃料揺動が収まって、フロート部材に浮力が作用しない状態となると、フロート部材に自重が作用するが、この自重は固着スタッドを介して、軟質膜片の一端側に作用する。そのため、軟質膜片は、その一端側から出口開口より離れていき、一端以外の部分が撓み変形しながら、出口開口から徐々に引き剥がされて、出口開口を開くようになっている。
特開平8−254278号公報
上記特許文献1の通気弁のように、軟質膜片の一端のみが、フロート部材上部に固着された構造の場合、燃料タンクの揺動により傾いた、フロート部材の傾き方向によっては、出口開口からの軟質膜片の剥がれやすさに、バラツキが生じることがあった。例えば、軟質膜片の一端側が斜め上向きとなるように、フロート部材が傾いた場合には、フロート部材の自重が、軟質膜片の一端側に作用しにくくなり、軟質膜片が出口開口から剥がれにくくなる。この場合、タンク内圧が高い状態でも、弁座からフロート弁を剥がしやすくして、通気孔を開口させることができる性能、いわゆる再開弁圧にバラツキが生じる。
そのため、フロート弁上方において、シール部材を複数個所で固定して(例えば、シール部材が長板状の場合には、その長手方向両端部を固定)、フロート部材の傾き方向による、シール部材の剥がれやすさのバラツキを少なくすることも考えられる。しかし、この場合には、シール部材に燃料が付着したり浸漬したりして膨潤すると、シール部材の固定されてない部分が延びて内側に撓むことがあり(例えば、フロート弁の内径方向に向けて盛り上がるように撓む)通気孔に対するシール性が低下する恐れが生じる。
したがって、本発明の目的は、安定した再開弁圧を得ることができると共に、シール性の低下を防止することができる、弁装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係る弁装置は、仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室と前記通気室とを連通する通気孔が設けられた、ハウジングと、前記弁室内に昇降可能に収容され、前記通気孔を開閉するフロート弁とを有しており、前記仕切壁の前記弁室側には、前記通気孔に連通する弁座が設けられており、前記フロート弁の上方には、前記弁座に接離して、前記通気孔を開閉する、弾性を有する弾性シール部材が配置されており、前記弾性シール部材は、前記弁座に接離するシール部と、リテーナを介して、前記フロート弁に対して抜け止め保持される複数の抜け止め部とを有しており、前記リテーナは、前記フロート弁と前記リテーナとの間に設けられた嵌合構造によって、前記フロート弁に取付けられていると共に、前記複数の抜け止め部を、前記フロート弁に対して、所定距離移動可能に保持する保持部を有していることを特徴とする。
本発明によれば、リテーナは、弾性シール部材の複数の抜け止め部を、フロート弁に対して、所定距離移動可能に保持する保持部を有しているので、弾性シール部材に燃料が付着したり浸漬したりして膨潤しても、弾性シール部材の抜け止め部が拘束されずに、フロート弁に対して移動するため、シール部が燃料膨潤により延びて内側に撓むことを抑制することができる。その結果、弁座に対してシール部を密接させやすくして、シール性の低下を防止することができると共に、安定した再開弁圧を得ることができる。
本発明に係る燃料タンク用弁装置の、一実施形態を示す分解斜視図である。 同弁装置を構成するフロート弁の斜視図である。 同弁装置を構成する弾性シール部材の拡大斜視図である。 同弁装置を構成するリテーナを示しており、(a)はその拡大斜視図、(b)は(a)とは異なる方向から見た場合の拡大斜視図である。 同弁装置において、フロート弁上方に、リテーナを介して弾性シール部材を取付けた状態の斜視図である。 同弁装置において、フロート弁が下降して、通気孔が開口した状態の断面図である。 図6とは異なる切断方向で切断した場合の断面図である。 同弁装置において、フロート弁が上昇して、通気孔を閉じた状態の断面図である。 同弁装置において、フロート弁が通気孔を閉じた状態から、フロート弁が下降しようとする際の状態の断面図である。 (a)は図6のA部の拡大説明図、(b)は図8のB部の拡大説明図、(c)は図9のC部の拡大説明図である。 同弁装置において、フロート弁が通気孔を閉じた状態から、フロート弁が下降しようとする際の状態の、一部を切断した要部拡大斜視図である。
以下、図面を参照して、本発明に係るタンク用弁装置の、一実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「燃料」とは、液体の燃料(燃料の飛沫も含む)を意味し、「燃料蒸気」とは、蒸発した燃料を意味するものとする。
図1に示すように、この実施形態における弁装置10は、略筒状をなし、上方に仕切壁23を設けたハウジング本体20と、該ハウジング本体20の上方に装着される上部カバー30と、前記ハウジング本体20の下方に装着される下部キャップ35とを有する、ハウジング15を有している。
図1に示すように、前記ハウジング本体20は、略円筒状をなした周壁21を有しており、その上方には、通気孔25を設けた仕切壁23が配置されている。前記周壁21には、複数の通口21aが形成されていると共に、下方に係止孔21bが形成されている。前記仕切壁23は、周壁21の上方開口の内周に配置された略円板状をなしており、その外周縁部23aよりも内径側からは、シールリング装着溝24aを設けた環状壁24が突設されている。また、周壁21の外周の上方には、上部カバー30を装着するための、図示しない係合部が設けられている。
一方、前記下部キャップ35は、複数の通口36を有していると共に、その外周に複数の係止爪37が形成されている。この下部キャップ35の各係止爪37を、ハウジング本体20の各係止孔21bに係止させることで、ハウジング本体20の下方に下部キャップ35が装着される。その結果、前記仕切壁23を介して、ハウジング下方に図示しない燃料タンク内に連通する弁室Vが形成される(図6及び図7参照)。
上記弁室V内には、前記通気孔25を開閉するフロート弁40が、前記下部キャップ35との間で、コイルスプリングからなるフロート弁用付勢バネS(以下、単に「付勢バネS」ともいう)を介在させた状態で、昇降可能に収容配置されるようになっている。なお、このフロート弁40は、燃料浸漬時に自身の浮力及び付勢バネSの付勢力で上昇し、燃料の非浸漬時に自重で下降する。また、図5に示すように、このフロート弁40の上方には、リテーナ70を介して、弾性シール部材60が取付けられるようになっている。
また、前記上部カバー30は、上部が閉塞し、下方周縁部がフランジ状に広がってなる、略ハット状をなしている。この上部カバー30の周壁31の所定箇所には、通気口31a(図6参照)が形成されており、この通気口31aの外周縁部から、略円筒状をなした燃料蒸気配管32が外方に向けて延設されている。この燃料蒸気配管32には、図示しない燃料タンクの外部に配置されるキャニスター等に連通する、図示しないチューブが接続される。また、上部カバー30の下方には、ハウジング本体20側に設けた図示しない係合部に係合する、図示しない被係合部が設けられている。
そして、シールリング装着溝24aにシールリング34を装着した状態で、ハウジング本体20の上方から上部カバー30を被せることで、その周壁31と環状壁24とでシールリング34を挟持する。更に、ハウジング本体20側に設けた図示しない係合部に、上部カバー30側に設けた図示しない被係合部を係合させることによって、ハウジング本体20に上部カバー30が取付けられる。その結果、仕切壁23を介して、その上方に燃料タンク外に連通する通気室Rが形成されるようになっている(図6及び図7参照)。
ハウジング本体20の説明に戻ると、図1に示すように、この実施形態における前記仕切壁23には、その中央部に、略十字形のスリット状をなした通気孔25が形成されている。また、図6や図7に示すように、仕切壁23の弁室V側(下面側)からは、通気孔25を囲む筒状壁27が、略十字形状をなすように下方に向けて突出しており、この筒状壁27の下端部が、弾性シール部材60が接離する弁座28となっている。なお、この実施形態における弁座28は、その中央部(仕切壁23の中心に位置する部分)が最も低く、仕切壁23の外径方向に向けて、緩やかな曲面状を描きつつ次第に高くなるように形成されている(図6及び図7参照)。
図2を参照して、前記フロート弁40について、より具体的に説明する。この実施形態のフロート弁40は、下方が開口し上方が閉塞した略円筒状をなしており、軸方向下方に配置された円形周面を有する基部41と、それよりも縮径した円形周面を有する頭部43とが軸方向に連設して構成されている。前記基部41の外周面には、軸方向に沿って延びるガイドリブ41aが、周方向に均等な間隔をあけて複数個設けられている。
一方、前記頭部43の上端部の外周縁部には、平面的に見て略扇状をなしたリテーナ支持部44が、周方向に均等な間隔をあけて複数個設けられている。これらのリテーナ支持部44には、リテーナ70の後述する基部71が載置されて、同基部71を支持する部分となっている。また、周方向に隣接するリテーナ支持部44,44との間には、弾性シール部材60の、後述する延出片63(図3参照)をスライド移動させるための、スライド溝45が形成されている。このスライド溝45の内側面どうしは、互いに平行に形成されている。
更に、各スライド溝45の底面には、リテーナ70の後述するピン79を受入れる、略四角形の凹状をなしたピン受入れ凹部46がそれぞれ形成されている。このピン受入れ凹部46が、本発明における、ピンを受入れる「凹部」をなしている。なお、ピン受入れ凹部46の深さ(スライド溝45の底面からの距離)は、フロート弁40にリテーナ70が取付けられた状態での、ピン79の先端部よりも大きく形成されており、ピン79の先端部がピン受入れ凹部46の底面に当接しないようになっている(図10参照)。
また、図1や図2に示すように、頭部43の上面であって、前記リテーナ支持部44やスライド溝45よりも内径側には、弾性シール部材60の後述するシール部61(図3参照)が密接して配置可能とされた、シール配置凹部47が形成されている。このシール配置凹部47は、弁座28の形状に整合する形状をなしており、具体的には、フロート弁外径側からフロート弁中心に向けて次第に深くなるように、緩やかな曲面状をなした略すり鉢状に形成されている。
更に図6や図7に示すように、フロート弁40の内部には、内部空間49が形成されている。この内部空間49は、フロート弁底面からフロート弁上方に向けて、前記頭部43に至る位置まで形成されている。
また、図2や図7に示すように、頭部43の周方向に対向する2箇所の外周面には、リテーナ70の後述する一対の嵌合爪77,77(図4参照)がそれぞれ嵌合する、嵌合部50,50が設けられている。各嵌合部50は、頭部43の上端面側に設けられ、底が浅い凹溝状をなした爪配置凹部51と、頭部43の下端部側に、段部53aを介して連設されて、前記爪配置凹部51よりも底が深い凹溝状をなした爪嵌合凹部53とから構成されている。そして、図5や図7に示すように、爪配置凹部51には、前記嵌合爪77が配置されると共に、この嵌合爪77の先端部77aが、前記爪嵌合凹部53に入り込んで、前記段部53aに係合することで、嵌合部50に嵌合爪77が嵌合するようになっている。
更に、各嵌合部50には、フロート弁40の内部空間49を、フロート弁外部に連通させるための、貫通孔54がそれぞれ形成されている。具体的には図2や図7に示すように、各爪嵌合凹部53から、円形孔状をなした貫通孔54が、フロート弁40の内径方向に向けて水平方向(フロート弁40の軸方向に直交する方向)にそれぞれ形成されており、各貫通孔54は、前記内部空間49の上方部分で連通している。
また、図1に示すように、フロート弁40の外周の、前記一対の嵌合部50,50に直交する2箇所には、頭部43上端から基部41の下端よりも手前に至る範囲で、凹溝状に延びる一対のガイド溝55,55が形成されている。これらのガイド溝55,55には、ハウジング本体20の内面に形成された図示しない一対のガイド突起が挿入されて、フロート弁40が昇降ガイドされるようになっている。
次に、上記フロート弁40の上方に配置される、弾性シール部材60について、図3を参照して説明する。この弾性シール部材60は、前記弁座28に接離するシール部61と、リテーナ70を介して、フロート弁40に対して抜け止め保持される抜け止め部とを有している。この実施形態におけるシール部61は、正方形状をなした中央部61aと、この中央部61aの各側部から延びる4個の側部61bからなる、略十字形状をなしている。このシール部61の中央部61aが、略十字状をなした弁座28の中央部分に接離し、各側部61bが、弁座28の中央部から広がる4つの側方部分に接離して、通気孔25が開閉されるようになっている。
また、シール部61の各側部61bの延出方向先端側からは、延出片63がそれぞれ延出している。各延出片63は、リテーナ70の後述するアーチ状部73(図4参照)をくぐる(すなわち、アーチ状部73と、フロート弁40の頭部43の上面との、間隙を通る)ようになっている。
更に、各延出片63の延出方向の先端側であって、リテーナ70のアーチ状部73の外側に配置される部分には、同延出片63の延出方向に対して直交方向に屈曲する突部65が、延出片63と同一幅で突設されている。図5に示すように、この突部65は、リテーナ70を介して、フロート弁40に弾性シール部材60を取付けた際に、リテーナ70のアーチ状部73の外側(フロート弁40の径方向外側に向く側部を意味する。以下の説明でも同様)に対向して配置されており、同アーチ状部73の外側に接離可能となっている。
また、各延出片63の、前記突部65よりも基端側には、延出片63の延出方向に沿って延びる長孔67がそれぞれ形成されている。この長孔67には、リテーナ70の後述するピン79がスライド可能に挿入されるようになっている。
なお、この実施形態では、図9や図10(c)に示すように、フロート弁下降時に、弾性シール部材60に設けた前記突部65が、リテーナ70のアーチ状部73の外側に当接可能とされていると共に、長孔67の外径側端部67aが、リテーナ70の後述するピン79に当接することで、フロート弁40からの抜け止めがなされるようになっている。すなわち、この実施形態では、弾性シール部材60に設けた前記突部65及び前記長孔67が、本発明における弾性シール部材の「抜け止め部」をなしている。
なお、上記構成をなした弾性シール部材60は、シール部61、複数の延出片63、突部65の全てが、ゴムや弾性エラストマー等の弾性材料から、一体形成されている。また、弾性シール部材のシール部としては、例えば、シール部を、円板状や、楕円状、小判形状、或いは、四角形や、五角形、六角形等の角形状としたりしてもよく、弁座に接離可能であればよい。また、抜け止め部に関しても、上記の突部や長孔以外であってもよく、リテーナの保持部により抜け止め保持可能な形状で、周方向に等間隔で配置されたものであれば、特に限定はされない。
次に、上記弾性シール部材60を、フロート弁40に対して取付けるための、リテーナ70について説明する。このリテーナ70は、フロート弁40とは別体とされ、フロート弁40とリテーナ70との間に設けられた嵌合構造によって、フロート弁40に取付けられていると共に、弾性シール部材60の抜け止め部(ここでは突部65及び長孔67の外径側端部67a)を、フロート弁40に対して、所定距離移動可能に保持する保持部を有している。この実施形態では、リテーナ70は、抜け止め部を、フロート弁40の径方向X及び軸方向Y(図2及び図10(b)参照)に対して、所定距離移動可能に保持する保持部を有している。
図4(a),(b)に示すように、この実施形態のリテーナ70は、フロート弁40の頭部43の上方の外周縁部に配置される環状をなしており、周方向に所定間隔をあけて配置された、略三角板状をなした複数の基部71(ここでは4個)と、周方向に隣接した基部71,71の側部どうしを、フロート弁40の外径方向に向けて開口するように連結する、複数のアーチ状部73(ここでは4個)とを有している。図5に示すように、各アーチ状部73は、弾性シール部材60の延出片63を跨ぐようにして配置されて(すなわち、アーチ状部73が延出片63の表面(フロート弁上面との対向面とは反対側)に位置する)、同延出片63のスライド移動をガイドすると共に、フロート弁上面からの過度の浮き上がりを抑制する。なお、環状をなしたリテーナ70の径方向内側には、弾性シール部材60のシール部61が配置されるようなっており、この内側部分において、図11に示すように、シール部61が撓み変形可能となっている。
また、リテーナ70の周方向に隣接する基部71,71の、対向する側面71a,71aどうしは、互いに平行に形成されており、これらの側面71a,71aの表側部分(フロート弁40とは反対側の部分)に、アーチ状部73の長手方向両端が連結する(いわば基部71,71にアーチ状部73が架設されている)ことで、複数の基部71及び複数のアーチ状部73が環状に連結されている。また、前記アーチ状部73の開口は、環状をなしたリテーナ70の内側及び外側を連通させるものであり、更に、アーチ状部73の開口の開口方向は、リテーナ70をフロート弁40に取付けた場合に、フロート弁40の中心を通る向きとなっている。
そして、複数の基部71は、フロート弁40の頭部43に設けた複数のリテーナ支持部44の上面にそれぞれ載置されるようになっている。また、複数のアーチ状部73は、フロート弁40の頭部43に設けた複数のスライド溝45の上方に位置する。なお、この実施形態では、アーチ状部73の開口の向き及び開口幅と、前記スライド溝45の向き及び幅とは、おおむね整合するように設けられており、その結果、アーチ状部73とスライド溝45との間に、比較的大きな間隙が画成されるようになっている。これらのアーチ状部73及びスライド溝45からなる間隙に、弾性シール部材60の各延出片63がスライド可能に配置される。
また、リテーナ70の周方向に対向して配置された、一対の基部71,71の外周縁部71b,71bであって、その周方向中央からは、フロート弁40側に向けて、一対の嵌合爪77,77が互いに平行となるように延設されている。各嵌合爪77の延出方向先端側であって、その内側(相手側の嵌合爪77に対向する側部)からは、外面にテーパ面を設けた先端部77a,77aがそれぞれ突設されている。各嵌合爪77は、フロート弁40に設けた嵌合部50の爪配置凹部51に配置されると共に、前記先端部77aが、嵌合部50の爪嵌合凹部53に入り込んで、その段部53aに係合することで、嵌合部50に嵌合爪77が嵌合して、フロート弁40にリテーナ70が取付けられるようになっている(図5及び図7参照)。すなわち、この実施形態では、フロート弁40に設けた嵌合部50と、リテーナ70に設けた嵌合爪77とが、本発明における「嵌合構造」をなしている。
なお、嵌合構造としては、例えば、フロート弁側に嵌合爪を設け、リテーナ側に、嵌合爪が嵌合する、凹状又は孔状の嵌合部を設けたりしてもよく、フロート弁に対してリテーナを取付け可能であれば、特に限定はされない。
また、上記のように、嵌合爪77の先端部77aが、爪嵌合凹部53の段部53aに係合した状態では、図7に示すように、嵌合爪77の先端部77aが、フロート弁40に形成した貫通孔54を覆うようになっている(すなわち、貫通孔54の、フロート弁40の外径方向側の開口に対して、所定距離をあけて前方に配置されて、同開口を覆うようになっている)。
更に、アーチ状部73の内面側(フロート弁40に向く面側)であって、その長手方向中央からは、弾性シール部材60に形成した長孔67に挿入される、略角柱状をなしたピン79が突設されている。図10に示すように、このピン79は、前記長孔67に挿入されて、延出片63のスライドガイド及び抜け止めをなすと共に、その先端部が、フロート弁40の頭部43上面に設けたピン受入れ凹部46に挿入されて受入れられるようになっている。なお、このピン79の長さは、フロート弁40にリテーナ70が取付けられた状態で、ピン79の先端部が、前記ピン受入れ凹部46の底面に当接しない長さとなっている(図10参照)。
また、前記一対の基部71,71に対して直交して配置された、もう一対の基部71,71の外周縁部71b,71bには、切欠き71c,71cが形成されている。これらの切欠き71c,71cは、リテーナ70をフロート弁40に取付けた状態で、フロート弁40に形成した一対のガイド溝55,55と整合し(図5参照)、ハウジング本体20の内面の図示しない一対のガイド突起が挿入される部分をなしている。
そして、フロート弁40の昇降移動に伴って、弾性シール部材60のシール部61が弁座28に接離する際には(この態様については後述する)、図10(b)や図10(c)に示すように、弾性シール部材60の延出片63の外側面が、アーチ状部73の内面(フロート弁40の頭部43の上面側に対向する面))によってスライドガイドされると共に、延出片63の内側部分が、長孔67に挿入されたピン79によりスライドガイドされながら、フロート弁40の径方向X及び軸方向Yに対して移動し、かつ、延出片63の先端に設けた突部65も、フロート弁40の径方向X及び軸方向Yに対して移動する。この際に、弾性シール部材60の突部65が、リテーナ70のアーチ状部73の径方向外側に当接して引っ掛かり、また、弾性シール部材60の長孔67の外径側端部67aが、リテーナ70のピン79に当接することによって、弾性シール部材60がリテーナ70から抜け外れないように、抜け止め保持されるようになっている。なお、図10(c)に示す状態では、弾性シール部材60の突部65は、リテーナ70のアーチ状部73に当接していないが、弾性シール部材60に長孔67を形成しない場合や、長孔67が延出片先端側に長く形成されている場合には、突部65がアーチ状部73に当接することとなる。
すなわち、この実施形態では、リテーナ70に設けた前記アーチ状部73及びピン79が、本発明におけるリテーナの「保持部」をなしている。
なお、フロート弁40の昇降移動に伴って、弾性シール部材60のシール部61は、弁座28に対して、以下のように接離する。すなわち、燃料の揺動等によってフロート弁40が上昇して、図8や図10(b)に示すように、弾性シール部材60のシール部61が弁座28に当接し、通気孔25を閉じた状態から、燃料の揺動等が収まって、フロート弁40に燃料からの浮力が作用しなくなるか、又は、燃料タンク内の圧力が下がると、フロート弁40が自重によって下降する。すると、図9や図10(c)に示すように、弁座28に当接して貼り付いた状態のシール部61に対して、フロート弁40が所定距離だけ下降して、フロート弁40に取付けられたリテーナ70の複数のアーチ状部73が、複数の延出片63にそれぞれ当接して、各延出片63にフロート弁40の荷重が集中して作用する。その結果、弁座28に貼り付いた状態のシール部61に対して、複数の延出片63が斜め下方に向けて引張られるように弾性変形する。この際に、弾性シール部材60の各延出片63やその先端に設けた突部65が、フロート弁40の径方向X及び軸方向Yに対して移動することとなる。そして、上記の複数の延出片63の弾性変形に伴って、図10(c)や図11に示すように、シール部61の各側部61bが弁座28から離れていき、その後、シール部61の中央部61aが弁座28から引き剥がされて、フロート弁40が下降するようになっている。
なお、リテーナとしては、フロート弁とリテーナとの間に設けられた嵌合構造によって、フロート弁に取付けられていると共に、複数の抜け止め部を、フロート弁に対して、所定距離移動可能に保持する保持部を有するものであれば、その形状や構造は特に限定されない。
次に、上記構成からなる本発明に係る弁装置10の作用効果について説明する。
まず、フロート弁40の上方に、リテーナ70を介して弾性シール部材60を取付ける方法について説明する。すなわち、図1に示すように、弾性シール部材60の複数の延出片63を、フロート弁40の頭部43に設けた複数のスライド溝45にそれぞれ整合させて配置した後、リテーナ70の一対の嵌合爪77,77を、フロート弁40の一対の嵌合部50,50に整合させ、その状態でフロート弁40に対してリテーナ70を押し込んでいく。すると、フロート弁40の頭部43の外周面によって、嵌合爪77の先端部77aが押圧されて、一対の嵌合爪77,77が外側に撓み変形していき、先端部77aが嵌合部50の爪嵌合凹部53に至ると、一対の嵌合爪77,77が弾性復帰して、その先端部77a,77aが爪嵌合凹部53の段部53aに係合することで、嵌合部50に嵌合爪77が嵌合して、リテーナ70とフロート弁40の上面との間で、弾性シール部材60を挟み込むようにして、リテーナ70を介して弾性シール部材60をフロート弁40に取付けることができる。
そして、図6に示すように、燃料タンク内の燃料液面が上昇せず、フロート弁40が燃料に浸漬されていない状態では、弁室V内においてフロート弁40が下降して、図10(a)に示すように、通気孔25が開いて、同通気孔25を通じて、弁室Vと通気室Rとが連通した状態となっている。この状態で車両の走行等によって、燃料タンク内での燃料蒸気が増大してタンク内圧が高まると、燃料蒸気は、下部キャップ35の通口36や、ハウジング本体20の通口21aから、弁室V内に流入し、仕切壁23に形成した通気孔25を通過して、通気室R内へと流れて、燃料蒸気配管32を介して図示しないキャニスターに送られて、燃料タンク内の圧力上昇が抑制される。
そして、車両が、カーブを曲がったり、凹凸のある道や坂道等を走行したり、或いは、事故によって転倒したりして、燃料タンク内の燃料が激しく揺動して燃料液面が上昇して、フロート弁40が燃料に浸漬した状態となると、フロート弁40自体の浮力によって、フロート弁40が上昇して、図8や図10(b)に示すように、弾性シール部材60のシール部61が、弁座28に当接して、通気孔25を閉塞する。ここでは略十字形状に突出する形状をなした弁座28の形状に対応して、略十字形状をなしたシール部61が撓み変形しつつ、その表面側が弁座28に当接すると共に、シール部61の裏面側が、フロート弁40の頭部43上面に設けた、シール配置凹部47の表面に密接して、弁座28とシール配置凹部47との隙間がシールされるようになっている。
上記状態で、燃料の揺動等が収まって、フロート弁40に燃料からの浮力が作用しなくなるか、又は、燃料タンク内の圧力が下がると、図9に示すように、フロート弁40が自重によって下降する。この場合、図10(c)に示すように、弁座28に当接して貼り付いたシール部61に対して、フロート弁40が所定距離だけ下降して、リテーナ70のアーチ状部73を介して、延出片63にフロート弁40の荷重が作用するので、延出片63が斜め下方に向けて引張られるように弾性変形して、各延出片63及び突部65が、フロート弁40の径方向X及び軸方向Yに対して移動する。すると、弾性シール部材60の突部65が、リテーナ70のアーチ状部73に当接し、また、弾性シール部材60の長孔67の外径側端部67aがピン79に当接して、弾性シール部材60が抜け止め保持されるようになっている。
そして、この弁装置10においては、リテーナ70は、弾性シール部材60の複数の抜け止め部(ここでは複数の突部65及び複数の長孔67の外径側端部67a)を、フロート弁40に対して、所定距離移動可能に保持する保持部(ここではアーチ状部73及びピン79)を有している。そのため、弾性シール部材60に燃料が付着したり浸漬したりして膨潤しても、弾性シール部材60の複数の抜け止め部が拘束されずに、図8や図10(c)に示すように、例えば、フロート弁40の径方向Xや軸方向Yに移動するため、シール部61が燃料膨潤により延びて内側に撓むこと(フロート弁40の内径方向に向けて盛り上がるように撓んでしまうこと)を抑制することができる。
その結果、弁座28に対して、弾性シール部材60のシール部61を密接させやすくして、弁座28に対するシール部61のシール性の低下を防止することができる。また、弁座28からシール部61を引き剥がしやすくすることができ、特に、フロート弁40が傾いた場合において、弾性シール部材60の、弁座28からの剥がれやすさの、バラツキを少なくすることができるため、安定した再開弁圧を得ることができる。仮に、シール部61が内側に撓んだ状態で、弁座28に当接すると、フロート弁40に浮力が作用しなくなって下降する際に、フロート弁40の自重により引き剥がし力が付与されにくくなり、弁座28からシール部61が剥がれにくくなる。なお、上記の「再開弁圧」とは、タンク内圧が高い状態でも、弁座からフロート弁を剥がしやすくして、通気孔を開口させることができる性能を意味している。
また、この実施形態においては、リテーナ70の保持部はアーチ状部73を有し、弾性シール部材60は、アーチ状部73をくぐる延出片63を有し、延出片63の延出方向の先端側に、抜け止め部(ここでは突部65)が形成されているので、前記アーチ状部73によって、延出片63を抜け止め保持することができると共に、所定距離だけ径方向Xや軸方向Yにスライド移動可能にすることができる。その結果、弾性シール部材60の燃料膨潤時における、内側への撓み変形をより適切に防止して、弁座28に対するシール性低下を効果的に防止することができる。一方、フロート弁40に浮力が作用しなくなって下降する際には、アーチ状部73を介して、延出片63を撓みやすくして、弁座28からシール部61をより引き剥がしやすくすることができる。
更に、この実施形態においては、弾性シール部材60の延出片63の延出方向の先端側であって、リテーナ70のアーチ状部73の外側に配置される部分には、アーチ状部73に対向して配置される突部65が設けられており、この突部65が抜け止め部をなし、アーチ状部73が保持部をなしている。この態様によれば、アーチ状部73の開口の内側から、延出片63が抜け出ようとしても、突部65がアーチ状部73に当接するため、アーチ状部73の開口から延出片63が外れないように、確実に抜け止め保持することができると共に、延出片63のスライド距離を大きく確保することができる。
また、この実施形態においては、弾性シール部材60の延出片63には、長孔67が形成されており、この長孔67が抜け止め部をなしており、リテーナ70のアーチ状部73からは、長孔67に挿入されるピン79が突設されており、このピン79が保持部をなしている。この態様によれば、前記ピン79によって、延出片63がフロート弁40の周方向に移動することを抑制しつつ、延出片63の径方向Xや軸方向Yへのスライド移動をガイドすることができると共に、ピン79が長孔67の外径側端部67aに当接した時点で、それ以上の延出片63のスライドが規制されるので、延出片63の延出方向先端に設けた突部65が、アーチ状部73の開口に挟まって移動できなくなることを防止できる。また、ゴム等の弾性材料からなる弾性シール部材60の、延出片63側に長孔67を形成する一方、合成樹脂等で成形されるリテーナ70の、アーチ状部73からピン79を形成したので、弾性シール部材60やリテーナ70の成形が容易となる(弾性シール部材60側に、ピンを設ける場合は、成形性に難がある)。
更に、この実施形態においては、フロート弁40の上面側に、リテーナ70のピン79を受入れる凹部(ピン受入れ凹部46)が形成されており、このピン受入れ凹部46に、ピン79の先端部が挿入されるようになっているので、延出片63がスライドしたときに、同延出片63が、ピン79の先端部とフロート弁40の上面との間に挟み込まれるのを防止することができる。また、リテーナ70を、嵌合構造(ここでは嵌合部50と嵌合爪77)によってフロート弁40に取付ける際に、ピン79がフロート弁40に干渉しないようにすることができるので、リテーナ70をフロート弁40に取付けしやすくすることができる。
また、この実施形態においては、図7に示すように、前記嵌合構造は、リテーナ70に設けられた嵌合爪77と、フロート弁40に形成され、嵌合爪77が嵌合する嵌合部50とからなり、フロート弁40には、内部空間49が形成されていると共に、この内部空間49を外部に連通させる貫通孔54が、嵌合部50に位置するように形成されており、嵌合爪77は貫通孔54を覆うようにして、嵌合部50に嵌合するように構成されている。この態様によれば、燃料タンク内の揺動等によって、フロート弁40の内部空間49に入り込んだ燃料が、貫通孔54を通じてフロート弁外方に吹き出ようとしても、その吹き出しを、嵌合爪77によって阻止することができ、仕切壁23の通気孔25から通気室R内に、燃料が流入することを防止することができる。
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
10 弁装置
15 ハウジング
20 ハウジング本体
23 仕切壁
25 通気孔
28 弁座
30 上部カバー
34 シールリング
35 下部キャップ
40 フロート弁
46 ピン受入れ凹部
49 内部空間
50 嵌合部
54 貫通孔
60 弾性シール部材
61 シール部
63 延出片
65 突部
67 長孔
70 リテーナ
71 基部
73 アーチ状部
77 嵌合爪
R 通気室
S フロート弁用付勢バネ
V 弁室

Claims (6)

  1. 仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室と前記通気室とを連通する通気孔が設けられた、ハウジングと、
    前記弁室内に昇降可能に収容され、前記通気孔を開閉するフロート弁とを有しており、
    前記仕切壁の前記弁室側には、前記通気孔に連通する弁座が設けられており、
    前記フロート弁の上方には、前記弁座に接離して、前記通気孔を開閉する、弾性を有する弾性シール部材が配置されており、
    前記弾性シール部材は、前記弁座に接離するシール部と、リテーナを介して、前記フロート弁に対して抜け止め保持される複数の抜け止め部とを有しており、
    前記リテーナは、前記フロート弁と前記リテーナとの間に設けられた嵌合構造によって、前記フロート弁に取付けられていると共に、前記複数の抜け止め部を、前記フロート弁に対して、所定距離移動可能に保持する保持部を有していることを特徴とする弁装置。
  2. 前記リテーナの保持部は、アーチ状部を有し、
    前記弾性シール部材は、前記シール部から延出して、前記アーチ状部をくぐる延出片を有しており、該延出片の延出方向の先端側に、前記抜け止め部がそれぞれ形成されている請求項1記載の弁装置。
  3. 前記延出片の延出方向の先端側であって、前記アーチ状部の外側に配置される部分には、同アーチ状部に対向して配置される突部が設けられており、該突部が前記抜け止め部をなし、前記アーチ状部が前記保持部をなしている請求項2記載の弁装置。
  4. 前記延出片には、長孔が形成されており、この長孔が前記抜け止め部をなしており、
    前記アーチ状部からは、前記長孔に挿入されるピンが突設されており、このピンが前記保持部をなしている請求項2又は3記載の弁装置。
  5. 前記フロート弁の上面側には、前記ピンを受入れる凹部が形成されている請求項4記載の弁装置。
  6. 前記嵌合構造は、前記リテーナに設けられた嵌合爪と、前記フロート弁に形成され、前記嵌合爪が嵌合する嵌合部とからなり
    前記フロート弁には、内部空間が形成されていると共に、この内部空間を外部に連通させる貫通孔が、前記嵌合部に位置するように形成されており、
    前記嵌合爪は前記貫通孔を覆うようにして、前記嵌合部に嵌合する請求項1〜5のいずれか1つに記載の弁装置。
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