本出願は、2018年10月12日に日本国に特許出願された特願2018−193317、及び2019年3月20日に日本国に特許出願された特願2019−53575の優先権を主張するものであり、これらの先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
送信された送信波が所定の物体に反射した反射波を受信することにより、当該物体を検出する技術において、利便性を向上させることが望ましい。本開示の目的は、物体検出の利便性を向上し得る電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラムを提供することにある。一実施形態によれば、物体検出の利便性を向上し得る電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラムを提供することができる。以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
一実施形態に係る電子機器は、例えば自動車などのような乗り物(移動体)に搭載されることで、当該移動体の周囲に存在する所定の物体を検出することができる。このために、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した送信アンテナから、移動体の周囲に送信波を送信することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した受信アンテナから、送信波が反射された反射波を受信することができる。送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は、例えば移動体に設置されたレーダセンサ等に備えられてもよい。
以下、典型的な例として、一実施形態に係る電子機器が、乗用車のような自動車に搭載される構成について説明する。しかしながら、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、自動車に限定されない。一実施形態に係る電子機器は、バス、トラック、オートバイ、自転車、船舶、航空機、救急車、消防車、ヘリコプター、トラクターなどの農作業装置、及びドローンなど、種々の移動体に搭載されてよい。また、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、必ずしも自らの動力で移動する移動体にも限定されない。例えば、一実施形態に係る電子機器が搭載される移動体は、トラクターにけん引されるトレーラー部分などとしてもよい。一実施形態に係る電子機器は、センサ及び所定の物体の少なくとも一方が移動し得るような状況において、センサと物体との間の距離などを測定することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、センサ及び物体の双方が静止していても、センサと物体との間の距離などを測定することができる。
まず、一実施形態に係る電子機器による物体の検出の例を説明する。
図1は、一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。図1は、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサを、移動体に設置した例を示している。
図1に示す移動体100には、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。また、図1に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載(例えば内蔵)しているものとする。電子機器1の具体的な構成については後述する。センサ5は、例えば送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方を備えるものとしてよい。また、センサ5は、電子機器1に含まれる制御部10(図2)の少なくとも一部など、他の機能部の少なくともいずれかを、適宜含んでもよい。図1に示す移動体100は、乗用車のような自動車の車両としてよいが、任意のタイプの移動体としてよい。図1において、移動体100は、例えば図に示すY軸正方向(進行方向)に移動(走行又は徐行)していてもよいし、他の方向に移動していてもよいし、また移動せずに静止していてもよい。
図1に示すように、移動体100には、送信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。図1に示す例において、送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5は、移動体100の前方に1つだけ設置されている。ここで、センサ5が移動体100に設置される位置は、図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜、他の位置としてもよい。例えば、図1に示すようなセンサ5を、移動体100の左側、右側、及び/又は、後方などに設置してもよい。また、このようなセンサ5の個数は、移動体100における測定の範囲及び/又は精度など各種の条件(又は要求)に応じて、1つ以上の任意の数としてよい。センサ5は、移動体100の内部に設置されているとしてもよい。内部とは、たとえばバンパー内の空間、ヘッドライト内の空間、運転スペースの空間などでよい。
センサ5は、送信アンテナから送信波として電磁波を送信する。例えば移動体100の周囲に所定の物体(例えば図1に示す物体200)が存在する場合、センサ5から送信された送信波の少なくとも一部は、当該物体によって反射されて反射波となる。そして、このような反射波を例えばセンサ5の受信アンテナによって受信することにより、移動体100に搭載された電子機器1は、当該物体を検出することができる。
送信アンテナを備えるセンサ5は、典型的には、電波を送受信するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))センサとしてよい。しかしながら、センサ5は、レーダセンサに限定されない。一実施形態に係るセンサ5は、例えば光波によるLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。これらのようなセンサは、例えばパッチアンテナなどを含んで構成することができる。RADAR及びLIDARのような技術は既に知られているため、詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略することがある。
図1に示す移動体100に搭載された電子機器1は、センサ5の送信アンテナから送信された送信波の反射波を受信アンテナから受信する。このようにして、電子機器1は、移動体100から所定の距離内に存在する所定の物体200を検出することができる。例えば、図1に示すように、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との間の距離Lを測定することができる。また、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との相対速度も測定することができる。さらに、電子機器1は、所定の物体200からの反射波が、自車両である移動体100に到来する方向(到来角θ)も測定することができる。
ここで、物体200とは、例えば移動体100に隣接する車線を走行する対向車、移動体100に並走する自動車、及び移動体100と同じ車線を走行する前後の自動車などの少なくともいずれかとしてよい。また、物体200とは、オートバイ、自転車、ベビーカー、歩行者、ガードレール、中央分離帯、道路標識、歩道の段差、壁、マンホール、坂道、壁、障害物など、移動体100の周囲に存在する任意の物体としてよい。さらに、物体200は、移動していてもよいし、停止していてもよい。例えば、物体200は、移動体100の周囲に駐車又は停車している自動車などとしてもよい。また、物体200は、車道にあるものだけでなく、歩道、農場、農地、駐車場、空き地、道路上の空間、店舗内、横断歩道、水上、空中、側溝、川、他の移動体の中、建物その他の構造物の内部若しくは外部など、適宜な場所にあるものとしてよい。本開示において、センサ5が検出する物体200には、無生物の他に、人、犬、猫、及び馬その他の動物などの生物も含む。本開示のセンサ5が検出する物体200は、レーダ技術により検知される、人、物、及び動物などを含む物標を含む。
図1において、センサ5の大きさと、移動体100の大きさとの比率は、必ずしも実際の比率を示すものではない。また、図1において、センサ5は、移動体100の外部に設置した状態を示してある。しかしながら、一実施形態において、センサ5は、移動体100の各種の位置に設置してよい。例えば、一実施形態において、センサ5は、移動体100のバンパーの内部に設置して、移動体100の外観に現れないようにしてもよい。
以下、典型的な例として、センサ5の送信アンテナは、ミリ波(30GHz以上)又は準ミリ波(例えば20GHz〜30GHz付近)などのような周波数帯の電波を送信するものとして説明する。例えば、センサ5の送信アンテナは、77GHz〜81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を有する電波を送信してもよい。センサ5の送信アンテナはミリ波(30GHz以上)又は準ミリ波(例えば20GHz〜30GHz付近)以外の周波数帯の電磁波を送信するとしてもよい。
図2は、一実施形態に係る電子機器1の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、一実施形態に係る電子機器1の構成の一例について説明する。
ミリ波方式のレーダによって距離などを測定する際、周波数変調連続波レーダ(以下、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)と記す)が用いられることが多い。FMCWレーダは、送信する電波の周波数を掃引して送信信号が生成される。したがって、例えば79GHzの周波数帯の電波を用いるミリ波方式のFMCWレーダにおいて、使用する電波の周波数は、例えば77GHz〜81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を持つものとなる。79GHzの周波数帯のレーダは、例えば24GHz、60GHz、76GHzの周波数帯などの他のミリ波/準ミリ波レーダよりも、使用可能な周波数帯域幅が広いという特徴がある。以下、このような実施形態について説明する。本開示で利用されるFMCWレーダ方式は、通常より短い周期でチャープ信号を送信するFCM方式(Fast-Chirp Modulation)を含むとしてもよい。信号生成部21が生成する信号は、FMCW方式の信号に限定されない。信号生成部21が生成する信号は、FMCW方式以外の各種の方式の信号としてもよい。記憶部40に記憶される送信信号列は、これら各種の方式によって異なるものとしてよい。例えば、上述のFMCW方式のレーダ信号の場合、時間サンプルごとに周波数が増加する信号及び減少する信号を使用してよい。上述の各種の方式は、公知の技術を適宜適用することができるため、より詳細な説明は省略する。
図2に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、センサ5とECU(Electronic Control Unit)50とから構成される。ECU50は、移動体100の様々な動作を制御する。ECU50は、少なくとも1以上のECUにより構成されるものとしてよい。一実施形態に係る電子機器1は、制御部10を備えている。また、一実施形態に係る電子機器1は、送信部20、受信部30A〜30D、及び記憶部40などの少なくともいずれかのような、他の機能部を適宜含んでもよい。図2に示すように、電子機器1は、受信部30A〜30Dのように、複数の受信部を備えてよい。以下、受信部30Aと、受信部30Bと、受信部30Cと、受信部30Dとを区別しない場合、単に「受信部30」と記す。
制御部10は、距離FFT処理部11、速度FFT処理部12、到来角推定部13、物体検出部14、検出範囲決定部15、及びパラメータ設定部16を備えてよい。制御部10に含まれるこれらの機能部については、さらに後述する。
送信部20は、図2に示すように、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23A及び23B、増幅器24A及び24B、並びに、送信アンテナ25A及び25Bを備えてよい。以下、位相制御部23Aと、位相制御部23Bとを区別しない場合、単に「位相制御部23」と記す。また、以下、増幅器24Aと、増幅器24Bとを区別しない場合、単に「増幅器24」と記す。また、以下、送信アンテナ25Aと、送信アンテナ25Bとを区別しない場合、単に「送信アンテナ25」と記す。
受信部30は、図2に示すように、それぞれ対応する受信アンテナ31A〜31Dを備えてよい。以下、受信アンテナ31Aと、受信アンテナ31Bと、受信アンテナ31Cと、受信アンテナ31Dとを区別しない場合、単に「受信アンテナ31」と記す。また、複数の受信部30は、それぞれ、図2に示すように、LNA32、ミキサ33、IF部34、及びAD変換部35を備えてよい。受信部30A〜30Dは、それぞれ同様の構成としてよい。図2においては、代表例として、受信部30Aのみの構成を概略的に示してある。
上述のセンサ5は、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31を備えるものとしてよい。また、センサ5は、制御部10などの他の機能部の少なくともいずれかを適宜含んでもよい。
一実施形態に係る電子機器1が備える制御部10は、電子機器1を構成する各機能部の制御をはじめとして、電子機器1全体の動作の制御を行うことができる。制御部10は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。制御部10は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、制御部10は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。制御部10は、制御部10の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。
記憶部40は、制御部10において実行されるプログラム、及び、制御部10において実行された処理の結果などを記憶してよい。また、記憶部40は、制御部10のワークメモリとして機能してよい。記憶部40は、例えば半導体メモリ又は磁気ディスク等により構成することができるが、これらに限定されず、任意の記憶装置とすることができる。また、例えば、記憶部40は、本実施形態に係る電子機器1に挿入されたメモリカードのような記憶媒体としてもよい。また、記憶部40は、上述のように、制御部10として用いられるCPUの内部メモリであってもよい。
一実施形態において、記憶部40は、送信アンテナ25から送信する送信波T及び受信アンテナ31から受信する反射波Rによって物体を検出する範囲を設定するための各種パラメータを記憶してよい。このようなパラメータについては、さらに後述する。本開示において、物体を検出する範囲とは、物体を検出する距離範囲及び物体を検出する角度範囲の少なくともいずれかを含む。本開示において、物体を検出する角度範囲は、地面に対する水平角度範囲、垂直角度範囲及びその他の任意の角度範囲を含むとしてよい
一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御することができる。この場合、制御部10は、記憶部40に記憶された各種情報に基づいて、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御してよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、信号生成部21に信号の生成を指示したり、信号生成部21が信号を生成するように制御したりしてもよい。
信号生成部21は、制御部10の制御により、送信アンテナ25から送信波Tとして送信される信号(送信信号)を生成する。信号生成部21は、送信信号を生成する際に、例えば制御部10による制御に基づいて、送信信号の周波数を割り当ててよい。具体的には、信号生成部21は、パラメータ設定部16によって設定されたパラメータにしたがって、送信信号の周波数を割り当ててよい。例えば、信号生成部21は、制御部10(パラメータ設定部16)から周波数情報を受け取ることにより、例えば77〜81GHzのような周波数帯域の所定の周波数の信号を生成する。信号生成部21は、例えば電圧制御発振器(VCO)のような機能部を含んで構成してよい。
信号生成部21は、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。以下説明する各機能部も、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、可能な場合には、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。
一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)を生成してよい。特に、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する信号(線形チャープ信号)を生成してもよい。例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで周波数が周期的に線形に増大するチャープ信号を生成するとしてもよい。例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzのいずれからの範囲で周波数が周期的に線形に増大するチャープ信号を生成するとしてもよい。また、例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで線形の増大(アップチャープ)及び減少(ダウンチャープ)を周期的に繰り返す信号を生成してもよい。信号生成部21が生成する信号は、例えば制御部10において予め設定されていてもよい。また、信号生成部21が生成する信号は、例えば記憶部40などに予め記憶されていてもよい。レーダのような技術分野で用いられるチャープ信号は既知であるため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。信号生成部21によって生成された信号は、シンセサイザ22に供給される。
図3は、信号生成部21が生成するチャープ信号の例を説明する図である。
図3において、横軸は経過する時間を表し、縦軸は周波数を表す。図3に示す例において、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する線形チャープ信号を生成する。図3においては、各チャープ信号を、c1,c2,…,c8のように示してある。図3に示すように、それぞれのチャープ信号において、時間の経過に伴って周波数が線形に増大する。
図3に示す例において、c1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含めて、1つのサブフレームとしている。すなわち、図3に示すサブフレーム1及びサブフレーム2などは、それぞれc1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含んで構成されている。また、図3に示す例において、サブフレーム1〜サブフレーム16のように16のサブフレームを含めて、1つのフレームとしている。すなわち、図3に示すフレーム1及びフレーム2など、それぞれ16のサブフレームを含んで構成されている。また、図3に示すように、フレーム同士の間には、所定の長さのフレームインターバルを含めてもよい。図3に示す1つのフレームは、例えば30ミリ秒から50ミリ秒程度の長さとしてよい。ここで、本開示の各実施形態において、フレームとは、ECU50などの処理部が処理を実行する単位となるものである。1つのフレームに含まれる各信号により少なくとも1以上の検知対象の位置、速度、及び角度などの情報を含むとしてよい。
図3において、フレーム2以降も同様の構成としてよい。また、図3において、フレーム3以降も同様の構成としてよい。図3において、フレーム2以降は、フレーム1と同様若しくは異なる構成としてよい。一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、任意の数のフレームとして送信信号を生成してよい。また、図3においては、一部のチャープ信号は省略して示している。このように、信号生成部21が生成する送信信号の時間と周波数との関係は、例えば記憶部40などに記憶しておいてよい。
このように、一実施形態に係る電子機器1は、複数のチャープ信号を含むサブフレームから構成される送信信号を送信してよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、サブフレームを所定数含むフレームから構成される送信信号を送信してよい。
以下、電子機器1は、図3に示すようなフレーム構造の送信信号を送信するものとして説明する。しかしながら、図3に示すようなフレーム構造は一例であり、例えば1つのサブフレームに含まれるチャープ信号は8つに限定されない。一実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のチャープ信号を含むサブフレームを生成してよい。また、図3に示すようなサブフレーム構造も一例であり、例えば1つのフレームに含まれるサブフレームは16に限定されない。一実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のサブフレームを含むフレームを生成してよい。
図2に戻り、シンセサイザ22は、信号生成部21が生成した信号の周波数を、所定の周波数帯の周波数まで上昇させる。シンセサイザ22は、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択された周波数まで、信号生成部21が生成した信号の周波数を上昇させてよい。送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば制御部10によって設定されてもよい。例えば、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、パラメータ設定部16によって選択された周波数としてよい。また、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば記憶部40に記憶されていてもよい。シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、位相制御部23及びミキサ33に供給される。位相制御部23が複数の場合、シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、複数の位相制御部23のそれぞれに供給されてよい。また、受信部30が複数の場合、シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、複数の受信部30におけるそれぞれのミキサ33に供給されてよい。
位相制御部23は、シンセサイザ22から供給された送信信号の位相を制御する。具体的には、位相制御部23は、例えば制御部10による制御に基づいて、シンセサイザ22から供給された信号の位相を適宜早めたり遅らせたりすることにより、送信信号の位相を調整してよい。この場合、位相制御部23は、複数の送信アンテナ25から送信されるそれぞれの送信波Tの経路差に基づいて、それぞれの送信信号の位相を調整してもよい。位相制御部23がそれぞれの送信信号の位相を適宜調整することにより、複数の送信アンテナ25から送信される送信波Tは、所定の方向において強め合ってビームを形成する(ビームフォーミング)。この場合、ビームフォーミングの方向と、複数の送信アンテナ25がそれぞれ送信する送信信号の制御すべき位相量との相関関係は、例えば記憶部40に記憶しておいてよい。位相制御部23によって位相制御された送信信号は、増幅器24に供給される。ここで、ビームフォーミングは、所定の方向に送信電力を集中させることを含む。
増幅器24は、位相制御部23から供給された送信信号のパワー(電力)を、例えば制御部10による制御に基づいて増幅させる。センサ5が複数の送信アンテナ25を備える場合、複数の増幅器24は、複数の位相制御部23のうちそれぞれ対応するものから供給された送信信号のパワー(電力)を、例えば制御部10による制御に基づいてそれぞれ増幅させてよい。送信信号のパワーを増幅させる技術自体は既に知られているため、より詳細な説明は省略する。増幅器24は、送信アンテナ25に接続される。
送信アンテナ25は、増幅器24によって増幅された送信信号を、送信波Tとして出力(送信)する。センサ5が複数の送信アンテナ25を備える場合、複数の送信アンテナ25は、複数の増幅器24のうちそれぞれ対応するものによって増幅された送信信号を、それぞれ送信波Tとして出力(送信)してよい。送信アンテナ25は、既知のレーダ技術に用いられる送信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。
このようにして、一実施形態に係る電子機器1は、送信アンテナ25備え、送信アンテナ25から送信波Tとして送信信号(例えば送信チャープ信号)を送信することができる。ここで、電子機器1を構成する各機能部のうちの少なくとも1つは、1つの筐体に収められてもよい。また、この場合、当該1つの筐体は、容易に開けることができない構造としてもよい。例えば送信アンテナ25、受信アンテナ31、増幅器24が1つの筐体に収められ、かつ、この筐体が容易に開けられない構造となっているとよい。さらに、ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、送信アンテナ25は、例えばレーダカバーのようなカバー部材を介して、移動体100の外部に送信波Tを送信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で送信アンテナ25を覆うことにより、送信アンテナ25が外部との接触により破損したり不具合が発生したりするリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある。
図2に示す電子機器1は、送信アンテナ25を2つ備える例を示している。しかしながら、一実施形態において、電子機器1は、任意の数の送信アンテナ25を備えてもよい。一方、一実施形態において、電子機器1は、送信アンテナ25から送信される送信波Tが所定方向にビームを形成するようにする場合、複数の送信アンテナ25を備えてよい。一実施形態において、電子機器1は、任意の複数の送信アンテナ25を備えてもよい。この場合、電子機器1は、複数の送信アンテナ25に対応させて、位相制御部23及び増幅器24もそれぞれ複数備えてよい。そして、複数の位相制御部23は、シンセサイザ22から供給されて複数の送信アンテナ25から送信される複数の送信波の位相を、それぞれ制御してよい。また、複数の増幅器24は、複数の送信アンテナ25から送信される複数の送信信号のパワーを、それぞれ増幅してよい。また、この場合、センサ5は、複数の送信アンテナを含んで構成してよい。このように、図2に示す電子機器1は、複数の送信アンテナ25を備える場合、当該複数の送信アンテナ25から送信波Tを送信するのに必要な機能部も、それぞれ複数含んで構成してよい。
受信アンテナ31は、反射波Rを受信する。反射波Rは、送信波Tが所定の物体200に反射したものである。受信アンテナ31は、例えば受信アンテナ31A〜受信アンテナ31Dのように、複数のアンテナを含んで構成してよい。受信アンテナ31は、既知のレーダ技術に用いられる受信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。受信アンテナ31は、LNA32に接続される。受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号は、LNA32に供給される。
一実施形態に係る電子機器1は、複数の受信アンテナ31から、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)として送信された送信波Tが所定の物体200によって反射された反射波Rを受信することができる。このように、送信波Tとして送信チャープ信号を送信する場合、受信した反射波Rに基づく受信信号は、受信チャープ信号と記す。すなわち、電子機器1は、受信アンテナ31から反射波Rとして受信信号(例えば受信チャープ信号)を受信する。ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、受信アンテナ31は、例えばレーダカバーのようなカバー部材を介して、移動体100の外部から反射波Rを受信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で受信アンテナ31を覆うことにより、受信アンテナ31が外部との接触により破損又は不具合が発生するリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある。
また、受信アンテナ31が送信アンテナ25の近くに設置される場合、これらをまとめて1つのセンサ5に含めて構成してもよい。すなわち、1つのセンサ5には、例えば少なくとも1つの送信アンテナ25及び少なくとも1つの受信アンテナ31を含めてもよい。例えば、1つのセンサ5は、複数の送信アンテナ25及び複数の受信アンテナ31を含んでもよい。このような場合、例えば1つのレーダカバーのようなカバー部材で、1つのレーダセンサを覆うようにしてもよい。
LNA32は、受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号を低ノイズで増幅する。LNA32は、低雑音増幅器(Low Noise Amplifier)としてよく、受信アンテナ31から供給された受信信号を低雑音で増幅する。LNA32によって増幅された受信信号は、ミキサ33に供給される。
ミキサ33は、LNA32から供給されるRF周波数の受信信号を、シンセサイザ22から供給される送信信号に混合する(掛け合わせる)ことにより、ビート信号を生成する。ミキサ33によって混合されたビート信号は、IF部34に供給される。
IF部34は、ミキサ33から供給されるビート信号に周波数変換を行うことにより、ビート信号の周波数を中間周波数(IF(Intermediate Frequency)周波数)まで低下させる。IF部34によって周波数を低下させたビート信号は、AD変換部35に供給される。
AD変換部35は、IF部34から供給されたアナログのビート信号をデジタル化する。AD変換部35は、任意のアナログ−デジタル変換回路(Analog to Digital Converter(ADC))で構成してよい。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、制御部10の距離FFT処理部11に供給される。受信部30が複数の場合、複数のAD変換部35によってデジタル化されたそれぞれのビート信号は、距離FFT処理部11に供給されてよい。
距離FFT処理部11は、AD変換部35から供給されたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、物体200との間の距離を推定する。距離FFT処理部11は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、距離FFT処理部11は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。
距離FFT処理部11は、AD変換部35によってデジタル化されたビート信号に対してFFT処理を行う(以下、適宜「距離FFT処理」と記す)。例えば、距離FFT処理部11は、AD変換部35から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、信号強度(電力)の時間変化として表すことができる。距離FFT処理部11は、このようなビート信号にFFT処理を行うことにより、各周波数に対応する信号強度(電力)として表すことができる。距離FFT処理部11は、距離FFT処理によって得られた結果においてピークが所定の閾値以上である場合、そのピークに対応する距離に、所定の物体200があると判断してもよい。例えば、定誤差確率(CFAR(Constant False Alarm Rate))検出処理のように、外乱信号の平均電力又は振幅から閾値以上のピーク値が検出された場合、送信波を反射する物体(反射物体)が存在するものと判断する方法が知られている。
このように、一実施形態に係る電子機器1は、送信波Tとして送信される送信信号、及び、反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する物体200を検出することができる。
距離FFT処理部11は、1つのチャープ信号(例えば図3に示すc1)に基づいて、所定の物体との間の距離を推定することができる。すなわち、電子機器1は、距離FFT処理を行うことにより、図1に示した距離Lを測定(推定)することができる。ビート信号にFFT処理を行うことにより、所定の物体との間の距離を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果(例えば距離の情報)は、速度FFT処理部12に供給されてよい。また、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果は、物体検出部14にも供給されてよい。
速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、物体200との相対速度を推定する。速度FFT処理部12は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、速度FFT処理部12は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。
速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われたビート信号に対してさらにFFT処理を行う(以下、適宜「速度FFT処理」と記す)。例えば、速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。速度FFT処理部12は、チャープ信号のサブフレーム(例えば図3に示すサブフレーム1)に基づいて、所定の物体との相対速度を推定することができる。上述のようにビート信号に距離FFT処理を行うと、複数のベクトルを生成することができる。これら複数のベクトルに対して速度FFT処理を行った結果におけるピークの位相を求めることにより、所定の物体との相対速度を推定することができる。すなわち、電子機器1は、速度FFT処理を行うことにより、図1に示した移動体100と所定の物体200との相対速度を測定(推定)することができる。距離FFT処理を行った結果に対して速度FFT処理を行うことにより、所定の物体との相対速度を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。速度FFT処理部12によって速度FFT処理が行われた結果(例えば速度の情報)は、到来角推定部13に供給されてよい。また、速度FFT処理部12によって速度FFT処理が行われた結果は、物体検出部14にも供給されてよい。
到来角推定部13は、速度FFT処理部12によって速度FFT処理が行われた結果に基づいて、所定の物体200から反射波Rが到来する方向を推定する。電子機器1は、複数の受信アンテナ31から反射波Rを受信することで、反射波Rが到来する方向を推定することができる。例えば、複数の受信アンテナ31は、所定の間隔で配置されているものとする。この場合、送信アンテナ25から送信された送信波Tが所定の物体200に反射されて反射波Rとなり、所定の間隔で配置された複数の受信アンテナ31はそれぞれ反射波Rを受信する。そして、到来角推定部13は、複数の受信アンテナ31がそれぞれ受信した反射波Rの位相、及びそれぞれの反射波Rの経路差に基づいて、反射波Rが受信アンテナ31に到来する方向を推定することができる。すなわち、電子機器1は、速度FFT処理が行われた結果に基づいて、図1に示した到来角θを測定(推定)することができる。
速度FFT処理が行われた結果に基づいて、反射波Rが到来する方向を推定する技術は各種提案されている。例えば、既知の到来方向推定のアルゴリズムとしては、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)、及びESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Technique)などが知られている。したがって、公知の技術についてのより詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。到来角推定部13によって推定された到来角θの情報(角度情報)は、物体検出部14に供給されてよい。
物体検出部14は、距離FFT処理部11、速度FFT処理部12、及び到来角推定部13の少なくともいずれかから供給される情報に基づいて、送信波Tが送信された範囲に存在する物体を検出する。物体検出部14は、供給された距離の情報、速度の情報、及び角度情報に基づいて例えばクラスタリング処理を行うことにより、物体検出を行ってもよい。データをクラスタリングする際に用いるアルゴリズムとして、例えばDBSCAN(Density-based spatial clustering of applications with noise)などが知られている。クラスタリング処理においては、例えば検出される物体を構成するポイントの平均電力を算出してもよい。物体検出部14において検出された物体の距離の情報、速度の情報、角度情報、及び電力の情報は、検出範囲決定部15に供給されてよい。また、物体検出部14において検出された物体の距離の情報、速度の情報、角度情報、及び電力の情報は、ECU50に供給されてもよい。この場合、移動体100が自動車である場合、例えばCAN(Controller Area Network)のような通信インタフェースを用いて通信を行ってもよい。
検出範囲決定部15は、送信信号及び受信信号によって送信波Tを反射する物体を検出する範囲(以下、「物体検出範囲」とも記す)を決定する。ここで、検出範囲決定部15は、例えば電子機器1が搭載された移動体100の運転者などによる操作に基づいて、複数の物体検出範囲を決定してもよい。例えば、検出範囲決定部15は、移動体100の運転者などによって駐車支援ボタンが操作された場合、駐車支援に適切な複数の物体検出範囲を決定してもよい。また、検出範囲決定部15は、例えばECU50からの指示に基づいて、複数の物体検出範囲を決定してもよい。例えば、移動体100が後進しようとしているとECU50によって判定された場合、検出範囲決定部15は、ECU50からの指示に基づいて、移動体100が後進する際に適切な複数の物体検出範囲を決定してもよい。また、検出範囲決定部15は、例えば移動体100におけるステアリング、アクセル、又はギアなどの操作状態の変化に基づいて、複数の物体検出範囲を決定してもよい。また、検出範囲決定部15は、物体検出部14によって物体を検出した結果に基づいて、複数の物体検出範囲を決定してもよい。また、検出範囲決定部15は、移動体100の周囲環境、例えば天候、人が密集しているか否かを示す混雑度、夜間か否かなどを含む時間帯等に基づいて、物体検出範囲を決定してもよい。
パラメータ設定部16は、送信波Tを反射波Rとして反射する物体を検出する送信信号及び受信信号を規定する各種のパラメータを設定する。すなわち、パラメータ設定部16は、送信アンテナ25から送信波Tを送信するための各種のパラメータ、及び受信アンテナ31から反射波Rを受信するための各種のパラメータを設定する。パラメータ設定部16は、チャープ信号の、スロープという時間に対する周波数の変化の値、及び/又は、サンプリングレートを設定するとしてよい。すなわち、パラメータ設定部16が設定するスロープにより、レーダの距離範囲が変わる。また、パラメータ設定部16が設定するサンプリングレートにより、距離精度(距離分解能)が変わる。また、パラメータ設定部16の設定により、近距離3次元センシングモードと2次元ビームフォーミングモードを切り替えることもできる。近距離3次元センシングモードは垂直方向に半波長離れたアンテナを切り替えることで、3次元のセンシングを可能にする。2次元ビームフォーミングモードは高速度検出が可能である。2次元ビームフォーミングモードは、ビームフォーミングを行うことで長距距離に飛ばすことができる。2次元ビームフォーミングモードは、ビームを絞ることで、周辺の余分な干渉を減らすことが可能である。また、パラメータ設定部16は、チャープ信号の出力、位相、振幅、周波数、周波数範囲などを制御するとしてもよい。
特に、一実施形態において、パラメータ設定部16は、上述の物体検出範囲において物体の検出を行うために、送信波Tの送信及び反射波Rの受信に係る各種のパラメータを設定してよい。例えば、パラメータ設定部16は、反射波Rを受信して物体検出範囲における物体を検出するために、反射波Rを受信したい範囲などを規定してもよい。また、例えば、パラメータ設定部16は、複数の送信アンテナ25から送信波Tを送信して物体検出範囲における物体を検出するために、送信波Tのビームを向けたい範囲などを規定してもよい。その他、パラメータ設定部16は、送信波Tの送信及び反射波Rの受信を行うための種々のパラメータを設定してよい。
パラメータ設定部16によって設定された各種のパラメータは、信号生成部21に供給されてよい。これにより、信号生成部21は、パラメータ設定部16によって設定された各種のパラメータに基づいて、送信波Tとして送信される送信信号を生成することができる。パラメータ設定部16によって設定された各種のパラメータは、物体検出部14に供給されてもよい。これにより、物体検出部14は、パラメータ設定部16によって設定された各種のパラメータに基づいて決定される物体検出範囲において、物体を検出する処理を行うことができる。
一実施形態に係る電子機器1が備えるECU50は、移動体100を構成する各機能部の制御をはじめとして、移動体100全体の動作の制御を行うことができる。ECU50は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。ECU50は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、ECU50は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。ECU50は、ECU50の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。また、制御部10の機能の少なくとも一部がECU50の機能とされてもよいし、ECU50の機能の少なくとも一部が制御部10の機能とされてもよい。
図2に示す電子機器1は、2つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えている。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1は、任意の数の送信アンテナ25及び任意の数の受信アンテナ31を備えてもよい。例えば、2つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えることにより、電子機器1は、仮想的に8本のアンテナにより構成される仮想アンテナアレイを備えるものと考えることができる。このように、電子機器1は、例えば仮想8本のアンテナを用いることにより、図3に示す16のサブフレームの反射波Rを受信してもよい。
次に、一実施形態に係る電子機器1の動作について説明する。
近年、自動車のような車両などの周辺に存在する障害物などを検出可能なセンサには、例えば、ミリ波レーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging, Laser Imaging Detection and Ranging)、又は超音波センサなど、各種のものが存在する。これらのセンサの中で、障害物を検出する精度及び信頼度、並びにコストなどの観点から、ミリ波方式のレーダが採用されることが多い。
ミリ波レーダを使用して車両周辺の障害物等を検出する技術として、例えば、死角検知(BSD:Blind Spot Detection)、後退中又は出庫時の横方向検知(CTA:Cross traffic alert)、フリースペース検知(FSD:Free space detection)などがある。これらの検知においては、ミリ波レーダのアンテナの物理的な形状に依存する電波放射範囲を予め設定して、物体検出範囲を決定するのが一般的である。すなわち、各レーダのそれぞれにおいて、それぞれの用途又は機能などに応じて、ミリ波レーダのアンテナの物理的な形状は予め決まっており、物体検出範囲も予め規定されている仕様が一般的である。このため、複数の異なるレーダの機能を実現するためには、複数の異なるレーダセンサが必要になる。
しかしながら、用途又は機能に応じて複数のレーダセンサをそれぞれ用意するのでは、コストの観点から不利である。また、例えば、アンテナの物理的形状が予め決まっていて放射範囲も決まっていると、そのアンテナの用途及び機能を変更することは困難である。また、例えば、アンテナの物理的形状及び放射範囲が決まっていて、放射範囲内の対象物全てを検出する場合、処理する情報量が増大する。この場合、不必要な物体も対象物として誤検出してしまう可能性があるため、検出の信頼度が低下し得る。また、例えば、アンテナの物理的形状及び放射範囲が決まっていて、センサの取り付け数を増やすと、車両(主にハーネス)の重量が増大するため燃費が低下したり、消費電力が増大するため燃費が低下したりし得る。さらに、複数のレーダセンサを用いて検出を行うと、センサ同士の間で遅延が発生し得るため、このような検出に基づいて自動運転又は運転アシストなどを行うと、処理に時間がかかり得る。これは、レーダの更新レートよりCANの処理速度が遅く、さらにフィードバックにも時間を要するためである。また、物体検出範囲の異なる複数のセンサを用いて検出を行うと、制御が煩雑になり得る。
したがって、一実施形態に係る電子機器1は、1つのレーダセンサを複数の機能又は用途で使用可能にする。また、一実施形態に係る電子機器1は、1つのレーダセンサによって複数の機能又は用途をあたかも同時に実現するかのような動作を可能にする。
図4は、一実施形態に係る電子機器1の動作を説明する図である。
図4に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載しているものとする。また、図4に示すように、移動体100には、右側後方に少なくとも1つのセンサ5が設置されているものとする。また、図4に示すように、センサ5は、移動体100に搭載されたECU50に接続されている。図4に示す移動体100には、右側後方以外の場所にも、右側後方に設置されたセンサ5と同様に動作するセンサ5が設置されていてもよい。以下の説明においては、右側後方に設置された1つのセンサ5のみ説明し、他のセンサについては説明を省略する。また、以下の説明において、電子機器1を構成する各機能部の制御は、制御部10、位相制御部23、及びECU50の少なくともいずれかによって制御することができるものとする。図4に示す移動体100には、左側後方、後部中央、左又は右の側面、右側前方、左側前方、前方中央など、右側後方以外のその他適宜な場所に、右側後方に設置されたセンサ5と同様に動作するセンサ5が設置されていてもよい。
図4に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、複数の検出範囲のいずれかを選択して物体を検出することができる。また、一実施形態に係る電子機器1は、複数の検出範囲のいずれかに切り替えて物体を検出することができる。図4においては、一実施形態に係る電子機器1のセンサ5が送信する送信信号及び電子機器1のセンサ5が受信する受信信号によって物体を検出する範囲の一例を表している。一実施形態に係る電子機器1のセンサ5が送信する送信信号及び電子機器1のセンサ5が受信する受信信号によって物体を検出する範囲は、図4に示される範囲に限定されるものではなく、その他適宜な範囲であるとしてもよい。
例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えば駐車支援(PA:Parking Assist)の用途又は機能で使用する場合、図4に示す(1)の範囲を物体検出範囲として、物体検出を行うことができる。図4に示す物体検出範囲(1)は、例えば駐車支援(PA)のために専用に設計されたレーダの物体検出範囲と同一又は類似の範囲としてよい。また、例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えばフリースペース検知(FSD:Free Space Detection)の用途又は機能で使用する場合、図4に示す(2)の範囲を物体検出範囲として、物体検出を行うことができる。図4に示す物体検出範囲(2)は、例えばフリースペース検知(FSD)のために専用に設計されたレーダの物体検出範囲と同一又は類似の範囲としてよい。
また、例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えば出庫時衝突検知(CTA:Cross Traffic Alert)の用途又は機能で使用する場合、図4に示す(3)の範囲を物体検出範囲として、物体検出を行うことができる。図4に示す物体検出範囲(3)は、例えば出庫時衝突検知(CTA)のために専用に設計されたレーダの物体検出範囲と同一又は類似の範囲としてよい。また、例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えば死角検知(BSD:Blind-Spot Detection)の用途又は機能で使用する場合、図4に示す(4)の範囲を物体検出範囲として、物体検出を行うことができる。図4に示す物体検出範囲(4)は、例えば死角検知(BSD)のために専用に設計されたレーダの物体検出範囲と同一又は類似の範囲としてよい。
さらに、一実施形態に係る電子機器1は、例えば図4に示す物体検出範囲(1)から(4)までのうち複数の範囲を、任意に切り替えて物体を検出することができる。この場合に切り替えられる複数の範囲は、上述したように、例えば移動体100の運転者などの操作に基づいて決定されてもよいし、制御部10又はECU50などの指示に基づいて決定されてもよい。
このように、一実施形態に係る電子機器1において、物体検出範囲(1)から(4)までうちいずれか複数の範囲によって物体検出を行う場合、検出範囲決定部15が、任意の情報に基づいて、いずれか複数の物体検出範囲を決定してよい。また、検出範囲決定部15によって複数の物体検出範囲が決定されると、パラメータ設定部16は、決定された複数の物体検出範囲において送信信号の送信及び受信信号の受信を行うための各種のパラメータを設定する。パラメータ設定部16が設定する各種のパラメータは、例えば、記憶部40に記憶しておいてよい。パラメータ設定部16が設定するパラメータとして、送信波の送信波の送信タイミング、送信波の周波数範囲、送信波周波数の時間に対する変化率、送信波の周期、送信波同士の送信タイミングの時間間隔、送信波の位相、送信波の振幅、送信波の強度、送信波を送信するアンテナを選択するための情報、送信波の送信タイミング、及び受信波を受信するアンテナを選択するための情報などのうちの任意のものが含まれるとしてよい。
このようなパラメータは、電子機器1による物体検出を行う前に、例えばテスト環境における実測等に基づいて定められてもよい。また、このようなパラメータが記憶部40に記憶されていない場合、過去の測定データなどのような所定のデータに基づいて、パラメータ設定部16が適宜推定するパラメータとしてもよい。また、このようなパラメータが記憶部40に記憶されていない場合、パラメータ設定部16は、例えば外部とネットワーク接続することにより、適当なパラメータを取得してもよい。
このように、一実施形態において、制御部10は、送信波Tとして送信される送信信号及び反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する物体を検出する。また、一実施形態において、制御部10は、送信信号及び受信信号による複数の物体検出範囲(例えば図4の物体検出範囲(1)から(4)まで)を可変にする。本開示において、可変にするとは、変更する、又は変更可能にするという意味を含むとしてよい。
さらに、一実施形態において、制御部10は、複数の物体検出範囲を切り替え可能にしてよい。例えば、制御部10は、物体検出範囲(3)において物体検出を行っていたところ、物体検出を行う範囲を物体検出範囲(3)から物体検出範囲(2)に切り替えてもよい。また、一実施形態において、制御部10は、物体を検出する目的(例えば駐車支援(PA)及び死角検知(BSD)などのような)に応じて、複数の物体検出範囲を可変にしてもよい。また、一実施形態において、制御部10は、後述のように、複数の物体検出範囲を微小時間の経過に伴って可変にしてよい。このような制御については、さらに後述する。この物体を検出する目的は、ユーザにより設定されるとしてもよいし、制御部10が、ユーザの動作、ユーザの状態、外部からの指示、周囲の環境及び移動速度若しくはこれらの組み合わせ又はその他の要素に基づいて設定するとしてもよいし、適宜の他の方法により設定されるとしてもよい。
また、一実施形態において、制御部10は、物体の検出結果に基づいて、複数の物体検出範囲を決定してもよい。例えば、物体検出によってすでに所定の物体が検出されている場合、制御部10は、その検出された物体の位置に応じて、複数の物体検出範囲を決定してもよい。また、一実施形態において、制御部10は、複数の物体検出範囲のいずれかにおける送信信号及び受信信号のみを処理してもよい。
このように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばミリ波レーダなどによる物体検出において、検出範囲の切り出し(設定及び/又は切り替え)を行うことができる。よって、一実施形態に係る電子機器1によれば、複数の物体検出範囲において物体を検出したい状況に柔軟に対応することができる。また、一実施形態に係る電子機器1は、物体の検出範囲を予め広く設定しておいて、電子機器1によって検出される距離及び/又は角度などの情報に基づいて、検出の必要な範囲のみの情報を切り出すことができる。よって、一実施形態に係る電子機器1によれば、必要な検出範囲の情報を、処理負荷を増加させずに処理することができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、物体検出の利便性を向上させることができる。
一実施形態に係る電子機器1は、図4に示したように、送信信号及び受信信号による物体検出範囲を可変にするが、さらに当該物体検出範囲に送信波Tのビームを向けるようにしてもよい。これにより、所望の切り出し範囲における物体の検出を高精度で行うことができる。
例えば、一実施形態に係る電子機器1は、上述のように、死角検知(BSD)の用途又は機能として、図4に示す複数の検出範囲のうち物体検出範囲(4)を選択して物体検出を行うことができる。一実施形態に係る電子機器1は、さらに、物体検出範囲(4)の方向に向けて、複数の送信アンテナ25から送信する送信波Tのビームを形成(ビームフォーミング)してよい。例えば遠方の物体検出を行う場合、その方向に複数の送信アンテナ25から送信する送信波のビームによってビームフォーミングを行うことで、物体検出範囲を高精度にカバーすることができる。
図5及び図6は、一実施形態に係る電子機器における送信アンテナ及び受信アンテナの配置の例を示す図である。図5及び図6に示されるX軸、Y軸、Z軸の方向は、図1に示されるX軸、Y軸、Z軸の方向と同様であるとしてよい。
一実施形態に係る電子機器1のセンサ5は、図5に示すように、例えば2つの送信アンテナ25A及び25A’を備えてよい。また、一実施形態に係る電子機器1のセンサ5は、図5に示すように、4つの受信アンテナ31A、31B、31C、及び31Dを備えてよい。
4つの受信アンテナ31A、31B、31C、及び31Dは、それぞれ水平方向(X軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、複数の受信アンテナ31を水平方向に並べて配置して、送信波Tを複数の受信アンテナ31によって受信することで、電子機器1は、反射波Rが到来する方向を推定することができる。ここで、送信波Tの波長λは、送信波Tの周波数帯域を例えば77GHzから81GHzまでとする場合、その中心周波数79GHzの送信波Tの波長としてもよい。
また、2つの送信アンテナ25A及び25A’は、それぞれ垂直方向(Z軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、複数の送信アンテナ25を垂直方向に並べて配置して、送信波Tを複数の送信アンテナ25によって送信することで、電子機器1は、送信波Tのビームの向きを、垂直方向に変化させることができる。
また、一実施形態に係る電子機器1のセンサ5は、図6に示すように、例えば4つの送信アンテナ25A、25A’、25B、及び25B’を備えてもよい。
ここで、2つの送信アンテナ25A及び25Bは、図6に示すように、それぞれ水平方向(X軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。また、2つの送信アンテナ25A’及び25B’も、図6に示すように、それぞれ水平方向(X軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、複数の送信アンテナ25を水平方向に並べて配置して、送信波Tを複数の送信アンテナ25によって送信することで、電子機器1は、送信波Tのビームの向きを、水平方向にも変化させることができる。
一方、図6に示すように、2つの送信アンテナ25A及び25A’は、それぞれ垂直方向(Z軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。また、図6に示すように、2つの送信アンテナ25B及び25B’も、それぞれ垂直方向(Z軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、図6に示す配置においても、複数の送信アンテナ25を垂直方向に並べて配置して、送信波Tを複数の送信アンテナ25によって送信することで、電子機器1は、送信波Tのビームの向きを、垂直方向に変化させることができる。
一実施形態に係る電子機器1において、複数の送信アンテナ25から送信する送信波Tのビームフォーミングを行う場合、複数の送信波Tが送信される際の経路差に基づいて、それぞれの送信波Tの位相が所定の方向において揃うようにしてよい。一実施形態に係る電子機器1において、それぞれの送信波Tの位相が所定の方向において揃うようにするために、例えば位相制御部23は、複数の送信アンテナ25から送信される送信波の少なくとも1つの位相を制御してもよい。
複数の送信波Tの位相が所定の方向において揃うようにするために制御する位相の量は、当該所定の方向に対応させて、記憶部40に記憶しておいてよい。すなわち、ビームフォーミングを行う際のビームの向きと、位相の量との関係は、記憶部40に記憶しておいてよい。
このような関係は、電子機器1による物体検出を行う前に、例えばテスト環境における実測等に基づいて定められてもよい。また、このような関係が記憶部40に記憶されていない場合、過去の測定データなどのような所定のデータに基づいて、位相制御部23が適宜推定する関係としてもよい。また、このような関係が記憶部40に記憶されていない場合、位相制御部23は、例えば外部とネットワーク接続することにより、適当な関係を取得してもよい。
一実施形態に係る電子機器1において、複数の送信アンテナ25から送信する送信波Tのビームフォーミングを行うための制御は、制御部10及び位相制御部23の少なくとも一方が行ってよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、少なくとも位相制御部23を含む機能部を、送信制御部とも記す。
このように、一実施形態に係る電子機器1において、送信アンテナ25は、複数の送信アンテナを含んでもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、受信アンテナ31も、複数の受信アンテナを含んでもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部(例えば位相制御部23)は、複数の送信アンテナ25から送信される送信波Tが所定方向にビームを形成(ビームフォーミング)するように制御してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部(例えば位相制御部23)は、物体を検出する範囲の方向にビームを形成してもよい。
また、一実施形態に係る電子機器1において、上述のように、送信アンテナ25は垂直方向成分を含んで配置された複数の送信アンテナ25を含んでよい。この場合、一実施形態に係る電子機器1において、位相制御部23(送信制御部)は、ビームの方向を、物体検出範囲の方向に、垂直方向成分を含んで変化させてもよい。
さらに、一実施形態に係る電子機器1において、上述のように、送信アンテナ25は水平方向成分を含んで配置された複数の送信アンテナ25を含んでもよい。この場合、一実施形態に係る電子機器1において、位相制御部23(送信制御部)は、ビームの方向を、物体検出範囲の方向に、水平方向成分を含んで変化させてもよい。
また、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部(例えば位相制御部23)は、物体を検出する範囲の少なくとも一部をカバーする方向にビームを形成してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部(例えば位相制御部23)は、複数の送信アンテナ25から送信されるそれぞれの送信波Tの位相が所定の方向において揃うように、複数の送信波の少なくとも1つの位相を制御してもよい。
一実施形態に係る電子機器1によれば、複数の送信アンテナ25から出力される広周波数の帯域信号(例えばFMCW信号)の周波数情報に基づいて位相の補償値を算出し、複数の送信アンテナのそれぞれに周波数依存の位相補償を実施することができる。これにより、送信信号の取り得る全周波数帯域において、特定の方向に対してビームフォーミングを高精度に行うことができる。
このようなビームフォーミングによれば、物体の検出が必要な特定の方向において、物体を検出可能な距離を拡大することができる。また、上述のようなビームフォーミングによれば、不要な方向からの反射信号を低減することができる。このため、距離・角度を検出する精度を向上させることができる。
図7は、一実施形態に係る電子機器1によって実現されるレーダの検出距離の種別を説明する図である。
一実施形態に係る電子機器1は、上述のように、物体検出範囲の切り出し及び/又は送信波のビームフォーミングを行うことができる。このような、物体検出範囲の切り出し及び送信波のビームフォーミングの少なくとも一方を採用することで、送信信号及び受信信号によって物体を検出可能な距離の範囲を規定することができる。
図7に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばr1の範囲で物体検出を行うことができる。図7に示す範囲r1は、例えば超短距離レーダ(USRR:Ultra short range radar)によって物体検出を行うことができる範囲としてよい。また、図7に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばr2の範囲で物体検出を行うことができる。図7に示す範囲r2は、例えば短距離レーダ(SRR:Short range radar)によって物体検出を行うことができる範囲としてよい。さらに、図7に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばr3の範囲で物体検出を行うことができる。図7に示す範囲r3は、例えば中距離レーダ(MRR:Mid range radar)によって物体検出を行うことができる範囲としてよい。上述のように、一実施形態に係る電子機器1は、例えば範囲r1、範囲r2、及び範囲r3のいずれかの範囲を適宜切り替えて物体検出を行うことができる。このように検出距離の異なるレーダは、検出距離が長くなればなるほど、距離の測定精度が低くなる傾向にある。
このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信信号及び受信信号によって物体を検出する距離の範囲を、複数の物体検出範囲のいずれかに応じて設定してもよい。
次に、一実施形態に係る電子機器1において、送信波Tのフレーム等ごとに複数の物体検出範囲のいずれかを設定する態様について説明する。
一実施形態に係る電子機器1は、物体検出範囲の切り出しを行うための各種設定を規定したパラメータを、例えば記憶部40に記憶してよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、物体検出範囲に向けたビームフォーミングを行うための各種設定を規定したパラメータも、例えば記憶部40に記憶してよい。さらに、一実施形態に係る電子機器1は、図7に示したようなレーダによる検出距離の種別を実現するための各種設定を規定したパラメータも、例えば記憶部40に記憶してよい。
一実施形態に係る電子機器1は、例えば送信波Tのフレームのような微小な時間区間ごとに、複数の種別のレーダの機能を実現するための動作を設定する(割り当てる)。例えば、以下、3つの種別のレーダについて、例えば送信波Tのフレームのような微小な時間区間ごとに、異なるレーダの機能を実現するための動作の設定について説明する。
以下、3つの種別のレーダを、それぞれ、便宜的に「レーダ1」、「レーダ2」、及び「レーダ3」とする。これらの「レーダ1」、「レーダ2」、及び「レーダ3」は、異なるレーダとしての機能を実現するための動作を規定したパラメータにより区別される。すなわち、「レーダ1」、「レーダ2」、及び「レーダ3」は、それぞれ物体検出範囲が異なるレーダとしてもよい。これらの種別が異なるレーダは、例えば異なるパラメータによって規定されてよい。また、「レーダ1」、「レーダ2」、及び「レーダ3」は、それぞれにおいて行われるビームフォーミングの有無、及びビームフォーミングが行われる場合の方向が異なるレーダとしてもよい。これらの種別が異なるレーダも、例えば異なるパラメータによって規定されてよい。さらに、「レーダ1」、「レーダ2」、及び「レーダ3」は、それぞれにおいて図7に示したようなレーダによる検出距離の種別が異なるレーダとしてもよい。これらの種別が異なるレーダも、例えば異なるパラメータによって規定されてよい。
図8から図10は、異なる種別のレーダの機能を、送信波Tのフレーム等ごとに設定した(割り当てた)様子を表す図である。
図8は、図3と同様に、送信波Tのフレームを表す図である。図8に示す例においては、送信波Tのフレーム1からフレーム6までを示してあるが、これ以降のフレームも続くものとしてよい。また、図8に示す各フレームは、図3に示したフレーム1と同様に、例えば16個のサブフレームを含んでよい。また、この場合、これらのサブフレームのそれぞれは、図3に示した各サブフレームと同様に、例えば8つのチャープ信号を含んでよい。
一実施形態に係る電子機器1は、例えば図8に示すように、送信波Tの少なくとも1以上のフレームごとに、異なるレーダの機能を設定して(割り当てて)よい。例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えば送信波Tのフレームごとに、複数の物体検出範囲のいずれかを設定してよい。例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えばそれぞれが1以上のフレームからなる送信波Tのフレームごとに、複数の物体検出範囲のいずれかを設定してよい。このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、複数の物体検出範囲のいずれかを、送信波Tのフレームごとに設定してよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、複数の物体検出範囲のいずれかを、送信波Tのフレームごとに切り替えて、送信信号の送信及び受信信号の受信を行ってもよい。図8に示す例においては、送信波Tのフレーム1にはレーダ1の機能が設定され、送信波Tのフレーム2にはレーダ2の機能が設定され、送信波Tのフレーム3にはレーダ3の機能が設定され、以降も同様の機能が繰り返し設定されている。一実施形態において、送信波Tの各フレームは、例えば数10マイクロ秒などのオーダとしてよい。このため、一実施形態に係る電子機器1は、非常に短い時間ごとに異なるレーダとして機能する。したがって、一実施形態に係る電子機器1は、1つのレーダセンサによって複数の機能又は用途をあたかも同時に実現するかのように動作する。一実施形態に係る電子機器1は、送信波Tのフレームごとにレーダの機能を設定する場合に、各送信波Tのフレームごとのレーダの機能の一部若しくは全部が、同じ機能であってもよい。本開示において、送信波Tの各フレームに設定されるレーダの機能は図8に示されるパターンに限定されるものではなく、適宜なパターンであるとしてよい。
図9は、図3と同様に、送信波Tのフレームに含まれるサブフレームを表す図である。図9に示す例においては、送信波Tのサブフレーム1からサブフレーム6までを示してあるが、これ以降のサブフレームも続くものとしてよい。また、図9に示すサブフレーム1からサブフレーム6までは、図3に示したフレーム1に含まれる16個のサブフレームの一部をなすものとしてよい。また、図9に示す各サブフレームのそれぞれは、図3に示した各サブフレームと同様に、それぞれ例えば8つのチャープ信号を含んでよい。
一実施形態に係る電子機器1は、例えば図9に示すように、送信波Tのサブフレームごとに、異なるレーダの機能を設定して(割り当てて)よい。例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えば送信波Tのサブフレームごとに、複数の物体検出範囲のいずれかを設定してよい。このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信信号及び受信信号による複数の物体検出範囲のいずれかを、送信波Tのフレームを構成する部分(例えばサブフレーム)ごとに設定してもよい。図9に示す例においては、送信波Tのサブフレーム1にはレーダ1の機能が設定され、送信波Tのサブフレーム2にはレーダ2の機能が設定され、送信波Tのサブフレーム3にはレーダ3の機能が設定され、以降も同様の機能が繰り返し設定されている。一実施形態において、送信波Tの各サブフレームは、例えば1フレームの時間よりも短いものとしてよい。このため、一実施形態に係る電子機器1は、より短い時間ごとに異なるレーダとして機能する。したがって、一実施形態に係る電子機器1は、1つのレーダセンサによって複数の機能又は用途をあたかも同時に実現するかのように動作する。一実施形態に係る電子機器1は、送信波Tのサブフレームごとにレーダの機能を設定する場合に、各送信波Tのサブフレームごとのレーダの機能の一部若しくは全部が、同じ機能であってもよい。本開示において、送信波Tの各サブフレームに設定されるレーダの機能は図9に示されるパターンに限定されるものではなく、適宜なパターンであるとしてよい。
図10は、図3と同様に、送信波Tのサブフレームに含まれるチャープ信号を表す図である。図10に示す例においては、送信波Tのサブフレーム1からサブフレーム2の途中までを示してあるが、サブフレーム1の後のサブフレームも、サブフレーム1と同様に続くものとしてよい。また、図10に示すサブフレーム1は、図3に示したサブフレーム1と同様に、8つのチャープ信号を含んでよい。また、図10に示す各チャープ信号のそれぞれは、図3に示した各サブフレームに含まれる8つのチャープ信号のそれぞれと同じものとしてよい。
一実施形態に係る電子機器1は、例えば図10に示すように、送信波Tのサブフレームに含まれる少なくとも1以上のチャープ信号ごとに、異なるレーダの機能を設定して(割り当てて)よい。例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えば送信波Tのチャープ信号ごとに、複数の物体検出範囲のいずれかを設定してよい。例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えばそれぞれ1以上の任意の個数からなる送信波Tのチャープ信号ごとに、複数の物体検出範囲のいずれかを設定してよい。このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信信号及び受信信号による複数の物体検出範囲のいずれかを、送信波Tのフレームを構成するチャープ信号ごとに設定してもよい。図10に示す例においては、送信波Tのチャープ信号c1にはレーダ1の機能が設定され、送信波Tのチャープ信号c2にはレーダ2の機能が設定され、送信波Tのチャープ信号c3にはレーダ3の機能が設定され、以降も同様の機能が繰り返し設定されている。一実施形態において、送信波Tの各チャープ信号は、例えば1サブフレームの時間よりも短いものとしてよい。このため、一実施形態に係る電子機器1は、より短い時間ごとに異なるレーダとして機能する。したがって、一実施形態に係る電子機器1は、1つのレーダセンサによって複数の機能又は用途をあたかも同時に実現するかのように動作する。一実施形態に係る電子機器1は、送信波Tのチャープ信号ごとにレーダの機能を設定する場合に、各送信波Tのチャープ信号ごとのレーダの機能の一部若しくは全部が同じ機能であってもよい。本開示において、送信波Tのチャープ信号に設定されるレーダの機能は図10に示されるパターンに限定されるものではなく、適宜なパターンであるとしてよい。また、図8、図9、図10の説明では、各フレーム、サブフレーム、チャープ信号に設定されるレーダ機能として、レーダ機能1、レーダ機能2、レーダ機能3としたが、本開示において、各フレーム、サブフレーム、チャープ信号に設定されるレーダ機能の数及び/又は種類はこれらに限定されるものではなく任意のものでよい。例えば、本開示において、各フレーム、サブフレーム、チャープ信号に設定されるレーダ機能の数は、2つ、又は4つ以上でもよい。本開示において、各フレーム、サブフレーム、チャープ信号に設定されるレーダ機能の種類は、PA、FSD、BSD、CTA、Rear-CTAなどを実現するためのレーダ機能が設定されるとしてもよい。
以上説明したように、一実施形態に係る電子機器1によれば、様々な用途又は機能に応じて、検出範囲の切り出しと、その切り出した検出範囲の方向に向けたビームフォーミングとを行うことができる。また、一実施形態に係る電子機器1によれば、検出範囲の切り出し及び切り出した検出範囲の方向に向けたビームフォーミングを、任意に切り替えることができる。したがって、1つのレーダセンサを複数の用途又は機能に例えば動的に切り替えて用いることができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、物体検出の利便性を向上させることができる。また、一実施形態に係る電子機器1によれば、高精度な物体検出が可能になるのみならず、コストの観点から極めて有利である。
また、一実施形態に係る電子機器1によれば、複数の送信アンテナから送信される送信波のビームの向きを適宜変化させたり、物体検出範囲を切り替えたりすることにより、1つのセンサの用途及び機能を変更することができる。つまり、一実施形態に係る電子機器1によれば、複数の送信アンテナから送信される送信波のビームの向きを適宜変化させたり、物体検出範囲を切り替えたりすることにより、物体を検知する目的に応じて、1つのセンサの用途及び機能を変更することができる。また、一実施形態に係る電子機器1によれば、送信波Tを送信する範囲内の特定部分のみを検出することができるため、処理する情報量が増大することは抑制される。また、一実施形態に係る電子機器1によれば、不必要な物体も対象物として誤検出してしまう可能性も低減するため、検出の信頼度は向上し得る。
また、一実施形態に係る電子機器1によれば、1つのセンサ5をあたかも複数のセンサとして物体検出し得る。このため、一実施形態に係る電子機器1によれば、車両(特にハーネス)の重量が増大することもない。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、センサ5を増やすことによって燃費が低下したり、消費電力が増大するため燃費が低下したりすることも回避し得る。
また、一実施形態に係る電子機器1によれば、複数のレーダセンサの機能を1つに集約することができる。したがって、複数のセンサ同士の間で発生し得るような遅延も回避し得る。よって、自動運転又は運転アシストなどを行う際に、処理に時間がかかり得るという不都合も回避され得る。さらに、一実施形態に係る電子機器1によれば、物体検出範囲の異なる複数のセンサを用いて検出を行う場合のように、制御が煩雑になり得ることも回避される。
従来、複数の物体検出範囲において物体検出を行う場合、それぞれ固有の物体検出範囲を有する複数のセンサを用いることで検出を行うことができた。しかしながら、従来、1つのセンサを用いて、例えば近距離において精度よく物体検出を行いつつ、遠方における物体も同時に検出するのは困難であった。
これに対し、一実施形態に係る電子機器1によれば、1つのセンサによって、複数の物体検出範囲において物体検出を行うことができる。また、一実施形態に係る電子機器1によれば、複数の物体検出範囲においてあたかも同時に物体検出を行うかのように動作させることができる。
図11は、一実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。以下、一実施形態に係る電子機器の動作の流れを説明する。
図11に示す動作は、例えば移動体100に搭載された電子機器1によって、移動体100の周囲に存在する物体を検出する際に開始してよい。
図11に示す動作が開始すると、制御部10の検出範囲決定部15は、切り替えて使用する複数の物体検出範囲を決定する(ステップS1)。例えば、ステップS1において、検出範囲決定部15は、図4に示した物体検出範囲(1)から(4)までのうちの複数の範囲を、物体検出範囲として決定してよい。ステップS1において、検出範囲決定部15は、例えば移動体100の運転者などの操作に基づいて複数の物体検出範囲を決定してもよいし、例えば制御部10又はECU50などの指示に基づいて複数の物体検出範囲を決定してもよい。
また、ステップS1に示す動作は、図11に示す動作の開始後に初めて行う動作ではなく、図11に示す動作が既に以前に行われた後で再び開始されたものとしてよい。再び行われたステップS1の時点で物体検出部14によって既に物体を検出した結果が存在する場合、検出範囲決定部15は、検出された物体の位置に基づいて、複数の物体検出範囲を決定してもよい。
ステップS1において複数の物体検出範囲が決定されたら、パラメータ設定部16は、決定された複数の物体検出範囲において物体を検出するために、送信波Tの各フレーム等ごとに、電子機器1における各種パラメータを設定する(ステップS2)。例えば、ステップS2において、パラメータ設定部16は、図4に示した物体検出範囲(1)から(4)までのうち複数の範囲を物体検出範囲として切り出して物体検出を行うように、各種のパラメータを送信波Tの各フレーム等ごとに設定する。ステップS2において、図8から図9に示したように、各種のパラメータを送信波Tのフレームごとに設定してもよいし、フレームを構成する部分(例えばサブフレーム)ごとに設定してもよいし、チャープ信号ごとに設定してもよい。各物体検出範囲のような検出範囲を切り出して物体検出を行うために設定される各種のパラメータは、例えば記憶部40に記憶しておくことができる。この場合、ステップS2において、パラメータ設定部16は、各種のパラメータを記憶部40から読み出して設定してもよい。ステップS2において、パラメータ設定部16は、例えば物体検出部14に対して各種のパラメータを設定してよい。本開示では、ステップS2において、図8から図9に示したように、各種のパラメータを送信波Tのフレームごとに設定してもよいし、フレームを構成する部分(例えばサブフレーム)ごとに設定してもよいし、チャープ信号ごとに設定してもよいし、これらを任意に組み合わせた設定としてもよい。
また、ステップS2において、パラメータ設定部16は、送信波Tの各フレーム等ごとに、決定されたそれぞれの物体検出範囲の向きに送信波のビームを形成するように、各種のパラメータを設定してもよい。例えば、ステップS2において、パラメータ設定部16は、送信波Tの各フレーム等ごとに、ステップS1で決定された物体検出範囲に送信波のビームが向くように、各種のパラメータを設定する。各物体検出範囲のような検出範囲に送信波のビームを向けるために設定される各種のパラメータは、例えば記憶部40に記憶しておくことができる。この場合、ステップS2において、パラメータ設定部16は、各種のパラメータを記憶部40から読み出して設定してもよい。ステップS2において、パラメータ設定部16は、送信波Tの各フレーム等ごとに、例えば位相制御部23(送信制御部)又は送信部20に対して各種のパラメータを設定してよい。
このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10のパラメータ設定部16は、送信信号及び受信信号による複数の物体検出範囲のいずれかを規定するパラメータを、送信波Tのフレーム等ごとに設定してもよい。また、パラメータ設定部16は、検出範囲の異なるレーダの種別のうち、フレームごと又はフレーム内の処理単位ごとに、レーダの種別を切り替えて信号生成部21に通知してよい。
ステップS2においてパラメータが設定されたら、制御部10は、送信波Tのフレーム等の順序に従って、送信アンテナ25から送信波Tを送信するように制御する(ステップS3)。例えば、ステップS3において、信号生成部21は、パラメータ設定部16によって設定されたパラメータに基づいて、送信波Tのフレーム等の順序に従って、各種別のレーダとして機能する送信信号を生成してよい。また、送信波Tのビームフォーミングを行う場合、ステップS3において、位相制御部23(送信制御部)は、送信波Tのフレーム等の順序に従って、複数の送信アンテナ25から送信されるそれぞれの送信波Tが所定の方向にビームを形成するように制御する。この場合、位相制御部23(送信制御部)は、各送信波Tの位相を制御してもよい。さらに、位相制御部23(送信制御部)は、ステップS1において決定された物体検出範囲の方向に、例えば物体検出範囲の少なくとも一部をカバーするように、送信波Tのフレーム等の順序に従って、送信波Tのビームを向けるように制御してもよい。
ステップS3において送信波Tが送信されたら、制御部10は、受信アンテナ31から反射波Rを受信するように制御する(ステップS4)。
ステップS4において反射波Rが受信されたら、制御部10は、移動体100の周囲に存在する物体を検出する(ステップS5)。ステップS5において、制御部10の物体検出部14は、ステップS1で決定された物体検出範囲において物体の検出を行ってよい(物体検出範囲の切り出し)。ステップS5において、制御部10の物体検出部14は、距離FFT処理部11、速度FFT処理部12、及び到来角推定部13の少なくともいずれかによる推定結果に基づいて、物体の存在を検出してもよい。
一実施形態に係る電子機器1において、制御部10の物体検出部14は、例えば、複数の異なる種別のレーダごとに得られた角度、速度、距離の情報から物体検出(例えばクラスタリング)処理を行い、その物体を構成するポイントの平均電力を算出してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、物体検出部14は、複数の異なる種別のレーダごとに得られた物体検出情報又はポイントクラウド情報を、例えばECU50のような上位の制御CPUに通知してもよい。
ステップS5における物体の検出は、公知のミリ波レーダによる技術を用いて種々のアルゴリズムなどに基づいて行うことができるため、より詳細な説明は省略する。また、図11に示すステップS5の後、制御部10は、再びステップS1の処理を開始してもよい。この場合、ステップS5において物体を検出した結果に基づいて、ステップS1において物体検出範囲を決定してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信波Tとして送信される送信信号及び反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する物体を検出してよい。
上述した実施形態においては、送信信号及び受信信号によって物体を検出する複数の範囲のいずれかを、例えばフレームごと、サブフレームごと、又はチャープ信号ごとに、設定した。一方、一実施形態において、例えばフレーム又はサブフレームにおいて、送信信号及び受信信号によって物体を検出する複数の範囲の少なくともいずれかを、より自由度をもって設定してもよい。以下、このような実施形態について説明する。
図10に示した実施形態において、送信波Tのサブフレームに含まれるチャープ信号ごとに、異なるレーダの機能が設定された(割り当てられた)。図10において、チャープ信号c1にはレーダ1の機能が設定され、チャープ信号c2にはレーダ2の機能が設定され、チャープ信号c3にはレーダ3の機能が設定され、以降も同様の機能が繰り返し設定された。また、図10に示した例において、各チャープ信号は、それぞれ、全て同じ時間の長さを有している。本開示において、チャープ信号の時間の長さとは、送信されるチャープ信号の周波数が0から増加し再び0に戻るまでの時間の長さであるとしてよい。また、本開示において、チャープ信号の時間の長さとは、送信されるチャープ信号の周期Tであるとしてよい。また、図10に示した例において、各チャープ信号の最大の周波数は全て同じである。したがって、各チャープ信号において、周波数の勾配も全て同じである。さらに、図10に示した例において、各チャープ信号は、サブフレーム又はフレームにおいて、隙間なく、すなわち時間的な間隔なく配置されている。しかしながら、一実施形態において、チャープ信号ごとに異なるレーダの機能を割り当てる際には、必ずしも図10に示した例のようなチャープ信号の配置にしなくてもよい。図10に示した例において、各チャープ信号は、それぞれ、同じ時間の長さでもよいし異なる時間の長さでもよい。図10に示した例において、各チャープ信号の最大の周波数は全て同じでもよいし異なる最大周波数としてもよい。図10に示した例において、各チャープ信号において、周波数の勾配は全て同じであるとしてもよいし異なるとしてもよい。
図12は、一実施形態に係る電子機器1が物体検出範囲をフレームにおいて設定する例を説明する図である。図12に示すように、一実施形態に係る電子機器の制御部10は、例えばフレームにおいて異なるチャープ信号を配置してもよい。図12において、図10と同様に、チャープ信号c1にはレーダ1の機能が設定され、チャープ信号c2にはレーダ2の機能が設定され、チャープ信号c3にはレーダ3の機能が設定されている。一方、図12において、各チャープ信号は、隙間を開けて、すなわち時間的な間隔を有して配置されている。特に、図12において、チャープ信号c1は、フレーム1の最初から開始していない。また、図12に示す例において、各チャープ信号は、それぞれ、全て同じ時間の長さを有していない。また、図12に示す例において、各チャープ信号の最大の周波数は全てが同じではない。したがって、各チャープ信号において、周波数の勾配も全てが同じではない。図12に示すそれぞれのチャープ信号は例示である。一実施形態に係る電子機器1は、各フレームにおいて、任意の長さ及び任意の周波数帯を有するチャープ信号を、適宜配置してよい。本開示の一実施形態に係る電子機器の制御部10は、フレームに利用するチャープ信号を、図12に示されるような互いに異なるチャープ信号若しくは同じチャープ信号を任意に組み合わせるとしてもよい。
さらに、図12に示す例において、フレーム2以降もフレーム1と同様のチャープ信号の配置を繰り返してもよいし、フレーム2以降はフレーム1とは異なるチャープ信号を配置してもよい。また、図12に示す例において、フレーム2以降はそれぞれ異なるチャープ信号の配置としてもよい。
図12に示すフレーム1におけるチャープ信号の中で、チャープ信号c1の最大周波数は最も大きく、チャープ信号c2の最大周波数は最も小さい。また、図12に示すフレーム1におけるチャープ信号の中で、チャープ信号c1の時間は比較的短く、チャープ信号c2及びチャープ信号c3の時間は比較的長い。チャープ信号の時間が長くなると、その分電力が大きくなるため、物体検出の際の精度を向上し得る。また、チャープ信号の周波数帯域が広くなると、やはり物体検出の際の精度を向上し得る。
このように、一実施形態に係る電子機器1の制御部10は、送信信号及び受信信号によって物体を検出する複数の範囲の少なくともいずれかを、送信波のフレームにおいて設定してもよい。以上説明したように、一実施形態において、例えばフレーム又はサブフレームにおいて、物体を検出する複数の範囲の少なくともいずれかを、より自由度をもって設定してもよい。図12は、各フレームにおいて、物体を検出する複数の範囲の少なくともいずれかを、自由度をもって設定する例を示してある。一方、一実施形態に係る電子機器1の制御部10は、各サブフレームにおいて、物体を検出する複数の範囲の少なくともいずれかを、自由度をもって設定してもよい。
(他の実施形態)
次に、他の実施形態に係る電子機器について説明する。他の実施形態に係る電子機器は、送信信号及び受信信号に基づいて、送信波のキャリブレーションを行う。
図13は、他の実施形態に係る電子機器の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、一実施形態に係る電子機器の構成の一例について説明する。
図13に示すように、他の実施形態に係る電子機器2は、図2に示した電子機器1と一部を除いて同じ構成としてよい。すなわち、図13に示すように、他の実施形態に係る電子機器2は、図2に示した電子機器1において、キャリブレーション処理部17を追加したものである。したがって、以下、図2において説明したのと同じ又は類似する説明は、適宜、簡略化又は省略する。
キャリブレーション処理部17は、AD変換部35によってデジタル化されたビート信号に基づいてキャリブレーション処理を行う。すなわち、キャリブレーション処理部17は、送信信号及び受信信号に基づいて、送信波のキャリブレーションを行う。キャリブレーション処理部17がキャリブレーション処理した信号は、距離FFT処理部11に供給されてよい。
図14は、他の実施形態におけるフレームの構成を例示する図である。
図14は、他の実施形態に係る電子機器2が、物体検出範囲とともにキャリブレーションに用いるチャープ信号を、フレームにおいて設定する例を説明する図である。図14に示すように、一実施形態に係る電子機器2の制御部10は、例えばフレームにおいて異なるチャープ信号を配置してもよい。図14において、チャープ信号c1にはレーダ1の機能が設定され、チャープ信号c2にはレーダ2の機能が設定されている。また、図14において、チャープ信号c3は、キャリブレーションに用いるチャープ信号として割り当てられている。図14に示すそれぞれのチャープ信号は例示である。一実施形態に係る電子機器1は、各フレームにおいて、任意の長さ及び任意の周波数帯を有するチャープ信号を、適宜配置してよい。
例えば、図14において、キャリブレーションに用いるチャープ信号c3は、フレームにおいて任意の位置に配置してよい。また、キャリブレーションに用いるチャープ信号c3は、任意の長さを有してよい。また、キャリブレーションに用いるチャープ信号c3は、任意の最大周波数を有してよい。したがって、キャリブレーションに用いるチャープ信号c3は、任意の周波数の勾配を有するものとしてよい。
図14に示す例において、キャリブレーションに用いるチャープ信号c3は1つのみとしている。しかしながら、キャリブレーションに用いるチャープ信号c3は、各フレームにおいて任意の個数としてよい。例えば、図14に示す例において、キャリブレーションに用いるチャープ信号をフレーム1に2つ以上配置してもよい。また、図14に示す例において、キャリブレーションに用いるチャープ信号をフレーム1には配置せずに、フレーム2以降に配置してもよい。
センサ5に高い測定精度が求められる場合には、キャリブレーションに用いるチャープ信号を比較的多く含ませてもよい。一方、センサ5にさほど高い測定精度が求められない場合には、キャリブレーションに用いるチャープ信号を比較的少なく含ませてもよい。例えば、キャリブレーションに用いるチャープ信号を1フレームおきに配置してもよい。また、キャリブレーションに用いるチャープ信号を、例えば5フレームおき又は10フレームおきなどに配置してもよい。
さらに、図14に示す例において、フレーム2以降もフレーム1と同様のチャープ信号の配置を繰り返してもよいし、フレーム2以降はフレーム1とは異なるチャープ信号を配置してもよい。また、図14に示す例において、フレーム2以降はそれぞれ異なるチャープ信号の配置としてもよい。
このように、他の実施形態に係る電子機器2の制御部10は、このキャリブレーション処理を行うためのチャープ信号を、フレーム又はサブフレームに含ませる。すなわち、電子機器2の制御部10は、キャリブレーション処理を行うためのチャープ信号(キャリブレーションに用いる信号)を、フレーム又はサブフレームにおいて配置する(割り当てる)。また、電子機器2の制御部10は、フレーム又はサブフレームに含まれる信号を用いてキャリブレーションを行う。
上述のように、一般的なレーダセンサは、検出対象となる物体のまでの距離、相対速度、及び角度の少なくともいずれかを算出する機能を持つ。一方で、一般的なレーダセンサは、以下のような誤差となり得る要因を有している。例えば、距離については、レーダセンサが搭載された位置(車両表面からの取付け奥行)、及び/又は、レーダセンサ内部のクロック周波数の偏差による誤差が生じ得る。また、相対速度については、車両の車速計の誤差、及び/又は、レーダセンサ内部のクロック周波数の偏差による誤差が生じ得る。また、角度については、レーダセンサが搭載された角度の偏差、及び/又は、アンテナの形状/間隔の製造時の偏差による誤差が生じ得る。
以下、一例として、角度の誤差について、さらに説明する。レーダセンサが検出する角度は、レーダセンサが車両に取付けられた角度を基準として算出される。例えば、レーダセンサが車両の基準となる角度から5度の取付け角度であるとして、レーダセンサによって角度を推定した結果、車両の基準となる角度から10度であったとする。この場合、レーダセンサは、対象物の角度は車両に対して15度の方向に検出されたと認識する。しかしながら、例えば、レーダセンサが車両の基準となる角度から7度の取付け角度であるとして、レーダセンサによって角度を推定した結果、車両の基準となる角度から10度であったとする。この場合、レーダセンサは、対象物の角度は車両に対して17度の方向に検出されたと認識してしまう。このような取付け角度の偏差は、完全になくすことは困難であり、基本的に初期偏差及び/又は経年偏差を伴う。
そこで、他の実施形態に係る電子機器2は、偏差の影響を軽減するために、例えば運用時にキャリブレーション処理を行う。キャリブレーション処理部17が行うキャリブレーション処理は、例えば電子機器2の物体検出の機能を精度良く維持するための補正機能としてよい。ここで、上述のキャリブレーション処理について説明する。
センサ5のようなレーダは、当該レーダが搭載された車両のような移動体の走行時に衝突する危険性のある物体を検知することが主目的とされることが多い。しかしながら、センサ5のようなレーダは、移動体の走行時に衝突する危険性の比較的少ない物体、例えばガードレール及び電柱等を検知することも可能である。これらの物体をレーダによって検出すると、移動体の移動方向と同じ方向であって、当該移動方向と逆向きに移動する物体として認識される。
そこで、他の実施形態に係る電子機器2は、例えば図14に示すチャープ信号c3を用いてキャリブレーションを行う。具体的には、電子機器2は、図14に示すチャープ信号c3のような送信波を送信アンテナ25から送信し、例えばガードレールによって反射された反射波を受信アンテナ31から受信する。そして、キャリブレーション処理部17は、AD変換部35によってデジタル化されたビート信号を、記憶部40に記憶された既知の物体(ガードレール)の情報と照合してもよい。ここで、キャリブレーション処理部17は、センサ5において送信アンテナ25(及び受信アンテナ31)の取付け角度を考慮して、本来検出されるべき物体の軌跡(既知データ)と照合を行ってもよい。このような照合の結果に基づいて、キャリブレーション処理部17は、各種の処理に用いる種々のパラメータを補正してもよい。
また、他の実施形態に係る電子機器2は、例えばレーダカバー又はセンサ5のハウジング内などに、所定のリフレクタなどを設置してもよい。ここで、所定のリフレクタは、その設置された位置及び/又は角度、さらにリフレクタを構成する素材の反射率などの情報の少なくともいずれかを、予め記憶部40に記憶させてよい。この場合、他の実施形態に係る電子機器2は、図14に示すチャープ信号c3のような送信波を送信アンテナ25から送信し、当該所定のリフレクタによって反射された反射波を受信アンテナ31から受信する。そして、キャリブレーション処理部17は、AD変換部35によってデジタル化されたビート信号を、記憶部40に記憶された既知の物体(所定のリフレクタ)の情報と照合してもよい。ここで、キャリブレーション処理部17は、センサ5において送信アンテナ25(及び受信アンテナ31)の取付け角度を考慮して、本来検出されるべき物体の軌跡(既知データ)と照合を行ってもよい。このような照合の結果に基づいて、キャリブレーション処理部17は、各種の処理に用いる種々のパラメータを補正してもよい。
このようにして、他の実施形態に係る電子機器2は、例えばキャリブレーションの処理を1フレームの時間内において行ってもよい。また、他の実施形態に係る電子機器2は、例えばキャリブレーションの処理をフレームごと又はサブフレームごとの各時間内において行ってもよい。このように、キャリブレーションの処理を繰り返し行う場合、それぞれの処理結果を平均化するなど、各種の統計的処理を施してもよい。このような統計的処理によれば、キャリブレーションの処理を繰り返し行うことにより、徐々に電子機器2のレーダ機能による検出の精度を高めることが期待できる。また、このような統計的処理を行う際には、ノイズと見なせるような検出結果を除外してもよい。
このように、他の実施形態に係る電子機器2において、制御部10は、送信信号及び受信信号によって物体を検出する複数の範囲の少なくともいずれかを送信波のフレームにおいて設定する。また、他の実施形態に係る電子機器2において、制御部10は、当該フレームにキャリブレーションに用いる信号を含ませてもよい。また、他の実施形態に係る電子機器2において、制御部10は、前記フレームに含まれる信号を用いてキャリブレーションを行ってもよい。
上述の実施形態において、電子機器2が行うキャリブレーションの処理により、平面的な(例えば図1に示すXY平面における)到来角θについてキャリブレーションを行うことを想定して説明した。すなわち、電子機器2は、検出される到来角θに基づいて、センサ5における送信アンテナ25(及び受信アンテナ31)の取り付け角度についてキャリブレーションを行うことができる。しかしながら、他の実施形態において、電子機器2は、他のキャリブレーションを行ってもよい。例えば、他の実施形態において、電子機器2は、センサ5における送信アンテナ25(及び受信アンテナ31)の垂直方向の(例えば図1に示すZ軸方向の)取り付け角度についてキャリブレーションを行ってもよい。また、可能な場合には、他の実施形態に係る電子機器2は、例えば検出される物体の位置、及び/又は、検出される物体との相対速度に基づいて、キャリブレーションを行ってもよい。また、例えば、他の実施形態において、電子機器2は、送信アンテナ25から送信される送信波のパワーについてキャリブレーションを行ってもよい。
ミリ波レーダを使用して車両周辺の障害物等を検出する技術として、例えば、死角検知(BSD:Blind Spot Detection)、後退中又は出庫時の横方向検知(CTA:Cross Traffic Alert)、リア・クロストラフィックアラート(Rear-CTA)、フリースペース検知(FSD:Free Space Detection)、及び駐車支援(PA:Parking Assist)などがある。これらの検知においては、ミリ波レーダのアンテナの物理的な形状に依存する電波放射範囲を予め設定して、物体検出範囲を決定するのが一般的である。すなわち、各レーダのそれぞれにおいて、それぞれの目的、用途又は機能などに応じて、ミリ波レーダのアンテナの物理的な形状は予め決まっており、物体検出範囲も予め規定されている仕様が一般的である。このため、複数の異なるレーダの機能を実現するためには、複数の異なるレーダセンサが必要になる。
しかしながら、目的、用途又は機能に応じて複数のレーダセンサをそれぞれ用意するのでは、コストの観点から不利である。また、例えば、アンテナの物理的形状が予め決まっていて放射範囲も決まっていると、そのアンテナの用途及び機能を変更することは困難である。また、例えば、アンテナの物理的形状及び放射範囲が決まっていて、放射範囲内の対象物全てを検出する場合、処理する情報量が増大する。この場合、不必要な物体も対象物として誤検出してしまう可能性があるため、検出の信頼度が低下し得る。また、例えば、アンテナの物理的形状及び放射範囲が決まっていて、センサの取り付け数を増やすと、車両(主にハーネス)の重量が増大するため燃費が低下したり、消費電力が増大するため燃費が低下したりし得る。さらに、複数のレーダセンサを用いて検出を行うと、センサ同士の間で遅延が発生し得るため、このような検出に基づいて自動運転又は運転アシストなどを行うと、処理に時間がかかり得る。これは、レーダの更新レートよりCANの処理速度が遅く、さらにフィードバックにも時間を要するためである。また、物体検出範囲の異なる複数のセンサを用いて検出を行うと、制御が煩雑になり得る。
したがって、一実施形態に係る電子機器1は、1つのレーダセンサを複数の目的、機能又は用途で使用可能にする。
ここで、本開示の各実施形態において利用される、物体検出範囲の一例について図15から図18を参照して説明する。図15から図18は、本開示の一実施形態に係る電子機器において利用される物体を検出する範囲の一例を示す概念図である。
図15は、駐車支援(PA:Parking Assist)を行う場合のセンサ5の検出範囲S1を示している。センサ5は、移動体100の右側後方端部に配置されている。センサ5の配置位置は、移動体100の右側後方端部に限定されるものではなく、左側後方端部その他の任意の位置としてもよい。また、センサ5の個数も1以上の任意の数としてよい。図15において、移動体100が直進する場合の進行方向に略平行な方向で、センサ5を通る水平な軸をY軸とする。また、Y軸から反時計回りの角度を外向き方向の角度とする。移動体100が直進する場合の進行方向に略平行な方向とは、例えば、移動体100の車体側面に略平行な方向としてもよい。
図15の駐車支援(PA)の場合、センサ5の送信波の範囲S1は、送信アンテナが搭載されているセンサ5を鉛直上側から見た場合の送信範囲S1の中心を通る軸CのY軸からの角度θ1が、Y軸から外向き方向に45°をなすとしてよい。また、図15の駐車支援(PA)の場合では、センサ5の送信波の範囲S1は、センサ5からの距離r1が最大10m以下の範囲であるとしてよい。また、送信範囲S1の角度範囲α1は、160°である。上記の図15を参照して説明した各数値は、適宜他の値に変更することが可能である。例えばθ1は45°以外の他の数値でもよい。例えば、α1は、160°以外の他の数値でもよい。例えば距離r1は、10m以外の他の数値でもよい。また、送信範囲S1の中心とは、送信波の水平範囲での中心であるとしてよい。
図16は、フリースペース検知(FSD)を行う場合のセンサ5の検出範囲S2を示している。センサ5は、移動体100の右側後方端部に配置されている。センサ5の配置位置は、移動体100の右側後方端部に限定されるものではなく、左側後方端部その他の任意の位置としてもよい。また、センサ5の個数も1以上の任意の数としてよい。図16において、移動体100が直進する場合の進行方向に略平行な方向で、センサ5を通る水平な軸をY軸とする。また、Y軸から反時計回りの角度を外向き方向の角度とする。移動体100が直進する場合の進行方向に略平行な方向とは、例えば、移動体100の車体側面に略平行な方向としてもよい。
図16のフリースペース検知(FSD)の場合、センサ5の送信波の範囲S2は、送信アンテナが搭載されているセンサ5を鉛直上側から見た場合の送信範囲S2の中心を通る軸CのY軸からの角度θ2が、Y軸から外向き方向に95°をなすとしてよい。また、図16のフリースペース検知(FSD)の場合では、センサ5の送信波の範囲S2は、センサ5からの距離r2が最大15m以下の範囲であるとしてよい。また、送信範囲S2の角度範囲α2は、20°である。上記の図16を参照して説明した各数値は、適宜他の値に変更することが可能である。例えばθ2は95°以外の他の数値でもよい。例えば、α2は、20°以外の他の数値でもよい。例えば距離r2は、15m以外の他の数値でもよい。また、送信範囲S2の中心とは、送信波の水平範囲での中心であるとしてよい。
図17は、死角検知(BSD)を行う場合のセンサ5の検出範囲S3を示している。センサ5は、移動体100の右側後方端部に配置されている。センサ5の配置位置は、移動体100の右側後方端部に限定されるものではなく、左側後方端部その他の任意の位置としてもよい。また、センサ5の個数も1以上の任意の数としてよい。図17において、移動体100が直進する場合の進行方向に略平行で、センサ5を通る水平な軸をY軸とする。また、Y軸から反時計回りの角度を外向き方向の角度とする。移動体100が直進する場合の進行方向に略平行な方向とは、例えば、移動体100の車体側面に略平行な方向としてもよい。
図17の死角検知(BSD)の場合、センサ5の送信波の範囲S3は、送信アンテナが搭載されているセンサ5を鉛直上側から見た場合の送信範囲S3の中心を通る軸CのY軸からの角度θ3が、Y軸から外向き方向に30°をなすとしてよい。また、図17の死角検知(BSD)の場合では、センサ5の送信波の範囲S3は、センサ5からの距離r3が最大100m以下の範囲であるとしてよい。また、送信範囲S3の角度範囲α3は、50°である。上記の図17を参照して説明した各数値は、適宜他の値に変更することが可能である。例えばθ3は30°以外の他の数値でもよい。例えば、α3は、50°以外の他の数値でもよい。例えば距離r3は、100m以外の他の数値でもよい。また、送信範囲S3の中心とは、送信波の水平範囲での中心であるとしてよい。
図18は、リア・クロストラフィックアラート(Rear−CTA)を行う場合のセンサ5の検出範囲S4を示している。センサ5は、移動体100の右側後方端部に配置されている。センサ5の配置位置は、移動体100の右側後方端部に限定されるものではなく、左側後方端部その他の任意の位置としてもよい。また、センサ5の個数も1以上の任意の数としてよい。図18において、移動体100が直進する場合の進行方向に略平行な方向に略平行で、センサ5を通る水平な軸をY軸とする。また、Y軸から反時計回りの角度を外向き方向の角度とする。移動体100が直進する場合の進行方向に略平行な方向とは、例えば、移動体100の車体側面に略平行な方向としてもよい。
図18のリア・クロストラフィックアラート(Rear−CTA)の場合、センサ5の送信波の範囲S4は、送信アンテナが搭載されているセンサ5を鉛直上側から見た場合の送信範囲S4の中心を通る軸CのY軸からの角度θ4が、Y軸から外向き方向に70°をなすとしてよい。また、図18のリア・クロストラフィックアラート(Rear−CTA)の場合では、センサ5の送信波の範囲S4は、センサ5からの距離r4が最大100m以下の範囲であるとしてよい。また、送信範囲S4の角度範囲α4は、50°である。上記の図18を参照して説明した各数値は、適宜他の値に変更することが可能である。例えばθ4は70°以外の他の数値でもよい。例えば、α4は、50°以外の他の数値でもよい。例えば距離r4は、100m以外の他の数値でもよい。送信範囲S4の中心とは、送信波の水平範囲での中心であるとしてよい。
図15、図16、図17、及び図18に示される例では、移動体100の進行方向として、図の左方、つまり、移動体100の前方のみを矢印の方向としているが、移動体100の進行方向は、移動体100の前方以外でもよい。つまり、移動体100の進行方向は、移動体100の前方の他、移動体100の後方、右後方、左後方、右前方、及び左前方など、任意の方向とすることができる。
また、図15の駐車支援(PA)の場合、例えば、送信範囲S1の、軸CのY軸からの角度θ1がY軸から外向き方向に45°をなし、距離r1が最大10m以下の範囲であり、角度範囲α1は160°である。各数値をこのような数値とすることにより、例えば、移動体100が車庫入れ若しくは縦列駐車などの駐車をする場合又は駐車状態から発進する際に監視する必要がある範囲において、人又は車その他の検知対象を適切に検出することができる。
また、図16のフリースペース検知(FSD)の場合、例えば、送信範囲S2の、軸CのY軸からの角度θ2がY軸から外向き方向に95°をなし、距離r2が最大15m以下の範囲であり、角度範囲α2は20°である。各数値をこのような数値とすることにより、例えば、移動体100の周囲の走行可能な範囲及び移動体100が駐車可能な範囲の検出、並びにこの範囲における人又は車その他の検知対象を適切に検出することができる。
また、図17の死角検知(BSD)の場合、例えば、送信範囲S3の、軸CのY軸からの角度θ3がY軸から外向き方向に30°をなし、距離r3が最大100m以下の範囲であり、角度範囲α3は50°である。各数値をこのような数値とすることにより、例えば、移動体100のドライバの死角となりうる移動体100の後方側面での人又は車その他の検知対象を適切に検知することができる。
また、図18のリア・クロストラフィックアラート(Rear−CTA)の場合、例えば、送信範囲S4の、軸CのY軸からの角度θ4がY軸から外向き方向に70°をなし、距離r4が最大100m以下の範囲であり、角度範囲α4は50°である。各数値をこのような数値とすることにより、例えば、移動体100が駐車場などから移動する際に、左右後方の人又は車その他の検知対象を適切に検知することができる。
本開示の電子機器1の制御部10は、送信波のフレーム、送信波のサブフレーム、及びチャープ信号、又はこれらの任意の組み合わせ毎に、送信信号及び受信信号によって物体を検出する範囲の少なくともいずれかを、上記の範囲S1、S2、S3、S4から適宜選択できる。これにより、本開示の電子機器1の制御部10は、複数の目的、用途、及び/又は機能に応じた検出を、高速で柔軟に実行することができる。また本開示の電子機器1の制御部10は、送信波のフレーム、送信波のサブフレーム、及びチャープ信号、又はこれらの任意の組み合わせ毎に、送信信号及び受信信号によって物体を検出する範囲を、上記の範囲S1、S2、S3、S4以外の範囲を任意に選択して組み合わせて利用してもよい。すなわち、本開示の電子機器1は、ミリ波レーダによりマルチなファンクションを実現することができる。
本開示の各実施形態に係る電子機器1の制御部10は、送信信号及び受信信号によって物体を検出する複数の範囲の少なくともいずれかを、上記の範囲S1、S2、S3、又はS4から適宜選択するとしてよい。上記説明では、Y軸が、センサ5を通る水平な軸をY軸としたが、Y軸は、センサ5内のいずれかの位置を通る水平な軸としてもよいし、センサ5の送信アンテナの配置位置の略中心を通る水平な軸としてもよい。
この場合、センサ5の送信アンテナの配置位置の略中心とは、複数のアンテナが水平方向にある場合に、その複数アンテナの水平方向での位置の中心であるとしてよい。センサ5の送信アンテナの配置位置の略中心とは、複数のアンテナが垂直方向にある場合に、その複数アンテナの垂直方向での位置の中心であるとしてよい。センサ5の送信アンテナの配置位置の略中心とは、複数のアンテナが水平方向及び垂直方向にある場合に、その複数アンテナの水平方向での位置の中心、かつ、垂直方向での位置の中心であるとしてよい。センサ5の送信アンテナの配置位置の略中心とは、複数のアンテナが水平方向及び垂直方向にある場合に、その複数アンテナの水平方向での位置の中心、若しくは、垂直方向での位置の中心であるとしてよい。
本開示において、送信波の範囲が、センサ5からの最大距離R[m]以下の範囲である、という意味は、センサ5が検知できる対象物の最大範囲がセンサ5から最大距離R[m]であるという意味であるとしてよい。送信波は、R[m]よりも遠方に送信するとしてもよい。このR[m]は、送信波の出力強度、対象物の散乱断面積、対象物の大きさ、対象物の材質、送信波の周波数、湿度及び温度などの送信波の送信環境、送信アンテナの利得、受信アンテナの利得、並びに受信信号に要求されるSN比などを、任意に選択的に利用して決定されるとしてよい。
本開示の各実施形態に係る電子機器1の制御部10は、送信波のフレーム、送信波のサブフレーム及びチャープ信号又はこれらの任意の組み合わせ毎に、送信信号及び受信信号によって物体を検出する範囲の少なくともいずれかを、上記の範囲S1、S2、S3、又はS4から適宜選択するとしてよい。
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
例えば、上述した実施形態においては、1つのセンサ5によって、動的に物体検出範囲を切り替える態様について説明した。しかしながら、一実施形態において、複数のセンサ5によって、決定された物体検出範囲において物体検出を行ってもよい。また、一実施形態において、複数のセンサ5によって、決定された物体検出範囲に向けてビームフォーミングを行ってもよい。
上述した実施形態は、電子機器1としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御プログラムとして実施してもよい。
一実施形態に係る電子機器1は、最小の構成としては、例えばセンサ5又は制御部10の一方のみの少なくとも一部を備えるものとしてよい。一方、一実施形態に係る電子機器1は、制御部10の他に、図2に示すような、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23、増幅器24、及び送信アンテナ25の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、上述の機能部に代えて、又は上述の機能部とともに、受信アンテナ31、LNA32、ミキサ33、IF部34、AD変換部35の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。さらに、一実施形態に係る電子機器1は、記憶部40を含んで構成してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1は、種々の構成態様を採ることができる。また、一実施形態に係る電子機器1が移動体100に搭載される場合、例えば上述の各機能部の少なくともいずれかは、移動体100内部などの適当な場所に設置されてよい。一方、一実施形態においては、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31の少なくともいずれかは、移動体100の外部に設置されてもよい。
上述した実施形態では、図8から図10を参照して、異なる種別のレーダの機能を、送信波Tのフレーム等ごとに設定した(割り当てた)場合を説明したが、本開示はこのような場合に限定されるものではない。例えば、制御部10は、送信信号及び受信信号によって物体を検出する複数の範囲のいずれかを、フレーム、フレームを構成する部分(例えばサブフレーム)、及び、チャープ信号又はこれらを任意に組み合わせたものに基づいて設定しても良い。