JPWO2020071040A1 - 交通指標の算出装置、算出方法、交通信号制御システム、及びコンピュータプログラム - Google Patents

交通指標の算出装置、算出方法、交通信号制御システム、及びコンピュータプログラム Download PDF

Info

Publication number
JPWO2020071040A1
JPWO2020071040A1 JP2020550222A JP2020550222A JPWO2020071040A1 JP WO2020071040 A1 JPWO2020071040 A1 JP WO2020071040A1 JP 2020550222 A JP2020550222 A JP 2020550222A JP 2020550222 A JP2020550222 A JP 2020550222A JP WO2020071040 A1 JPWO2020071040 A1 JP WO2020071040A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
traffic
intersection
normalized
calculation
vehicle
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2020550222A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7276964B2 (ja
Inventor
肇 榊原
肇 榊原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Electric System Solutions Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric System Solutions Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Electric System Solutions Co Ltd filed Critical Sumitomo Electric System Solutions Co Ltd
Publication of JPWO2020071040A1 publication Critical patent/JPWO2020071040A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7276964B2 publication Critical patent/JP7276964B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G08SIGNALLING
    • G08GTRAFFIC CONTROL SYSTEMS
    • G08G1/00Traffic control systems for road vehicles
    • G08G1/01Detecting movement of traffic to be counted or controlled
    • G08G1/0104Measuring and analyzing of parameters relative to traffic conditions
    • G08G1/0125Traffic data processing
    • G08G1/0133Traffic data processing for classifying traffic situation
    • GPHYSICS
    • G08SIGNALLING
    • G08GTRAFFIC CONTROL SYSTEMS
    • G08G1/00Traffic control systems for road vehicles
    • G08G1/01Detecting movement of traffic to be counted or controlled
    • G08G1/0104Measuring and analyzing of parameters relative to traffic conditions
    • G08G1/0137Measuring and analyzing of parameters relative to traffic conditions for specific applications
    • G08G1/0145Measuring and analyzing of parameters relative to traffic conditions for specific applications for active traffic flow control
    • GPHYSICS
    • G08SIGNALLING
    • G08GTRAFFIC CONTROL SYSTEMS
    • G08G1/00Traffic control systems for road vehicles
    • G08G1/065Traffic control systems for road vehicles by counting the vehicles in a section of the road or in a parking area, i.e. comparing incoming count with outgoing count
    • GPHYSICS
    • G08SIGNALLING
    • G08GTRAFFIC CONTROL SYSTEMS
    • G08G1/00Traffic control systems for road vehicles
    • G08G1/07Controlling traffic signals
    • G08G1/08Controlling traffic signals according to detected number or speed of vehicles

Landscapes

  • Physics & Mathematics (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Traffic Control Systems (AREA)

Abstract

本開示の一態様に係る装置は、信号制御パラメータの算出に必要となる交通指標を算出する装置であって、対象交差点の流入路の交通変数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化データを算出する第1算出部と、前記正規化データを用いて、前記流入路の交通変数が分子に含まれ前記飽和交通流率が分母に含まれる式で定義される前記交通指標を算出する第2算出部と、を備える。

Description

本発明は、交通指標の算出装置、算出方法、交通信号制御システム、及びコンピュータプログラムに関する。
本出願は、2018年10月5日出願の日本出願第2018−190437号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
交通管制センターの中央装置が行う遠隔制御の方式として、MODERATO、SCOOT及びSCATSなどが知られている。
このうち、日本で採用されているMODERATOは、交差点の流入路ごとの負荷率(=(流入交通量+待ち行列台数)/飽和交通流率)に基づいて、スプリット及びサイクル長などの信号制御パラメータを自動生成するシステムである(特許文献1参照)。
国際公開第2016/147350号
(1) 本開示の一態様に係る装置は、信号制御パラメータの算出に必要となる交通指標を算出する装置であって、対象交差点の流入路の交通変数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化データを算出する第1算出部と、前記正規化データを用いて、前記流入路の交通変数が分子に含まれ前記飽和交通流率が分母に含まれる式で定義される前記交通指標を算出する第2算出部と、を備える。
(9) 本開示の一態様に係る交通信号制御システムは、上記の算出装置と、前記交通指標から求めた前記信号制御パラメータにより、前記対象交差点の交通信号制御機を動作させる遠隔制御を行う中央装置と、を備える。
(10) 本開示の一態様に係る方法は、信号制御パラメータの算出に必要となる交通指標を算出する方法であって、対象交差点の流入路の交通変数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化データを算出する第1ステップと、前記正規化データを用いて、前記流入路の交通変数が分子に含まれ前記飽和交通流率が分母に含まれる式で定義される前記交通指標を算出する第2ステップと、を含む。
(11) 本開示の一態様に係るプログラムは、信号制御パラメータの算出に必要となる交通指標を算出する装置として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータを、対象交差点の流入路の交通変数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化データを算出する第1算出部、及び、前記正規化データを用いて、前記流入路の交通変数が分子に含まれ前記飽和交通流率が分母に含まれる式で定義される前記交通指標を算出する第2算出部、として機能させる。
交通信号制御システムの全体構成図である。 交通信号制御システムに含まれる情報処理装置、プローブ車両の車載装置及び中央装置のブロック図である。 従来の遠隔制御の概要を示すフローチャートである。 本実施形態の遠隔制御の概要を示すフローチャートである。 遠隔制御の対象交差点が単独交差点である場合の、正規化データの算出方法の一例を示す説明図である。 非飽和時における交差点の交通状況と、Sfで正規化された交通量Vinの導出に必要な関係式を示す説明図である。 過飽和時における交差点の交通状況の一例を示す説明図である。 遠隔制御の対象交差点が系統交差点である場合の、正規化データの算出方法の一例を示す説明図である。 正規化データの算出処理の一例を示すフローチャートである。 正規化された交通需要Dmの推定方法の一例を示す説明図である。 遅れ時間の誤差を考慮した飽和状態の判定方法と、交通量の算出式を示の一例を示す説明図である。
<本開示が解決しようとする課題>
流入路の交通量及び待ち行列台数は、通常、当該流入路に設置された車両感知器の感知信号から計測される。従って、流入路に車両感知器が設置されていない交差点では、MODERATOなどの遠隔制御が実行されない。
しかし、日本国内では、全体の2/3の交差点で車両感知器が設置されていないのが現状であり、更に多くの割合で車両感知器が設置されていない国もある。従って、車両感知器が未設置の交差点についても、遠隔制御を実行できることが望まれる。
本開示は、かかる従来の問題点に鑑み、車両感知器が未設置の交差点についても、遠隔制御を実行できるようにすることを目的とする。
<本開示の効果>
本開示によれば、車両感知器が未設置の交差点についても、遠隔制御を実行することができる。
<本発明の実施形態の概要>
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態の装置は、信号制御パラメータの算出に必要となる交通指標を算出する装置であって、対象交差点の流入路の交通変数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化データを算出する第1算出部と、前記正規化データを用いて、前記流入路の交通変数が分子に含まれ前記飽和交通流率が分母に含まれる式で定義される前記交通指標を算出する第2算出部と、を備える。
本実施形態の算出装置によれば、第1算出部が、対象交差点の流入路の交通変数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化データを算出し、第2算出部が、正規化データを用いて、流入路の交通変数が分子に含まれ飽和交通流率が分母に含まれる式で定義される交通指標を算出するので、プローブ情報などから推定可能な正規化データによって交通指標を算出できる。
従って、正規化データに基づく交通指標を用いて信号制御パラメータを算出することにより、車両感知器が未設置の交差点であっても、遠隔制御を実行できるようになる。
(2) 本実施形態の算出装置において、前記第1算出部は、車両のプローブ情報から求めた信号待ちによる遅れ時間を用いて、前記正規化データを算出することが好ましい。
(3) また、前記第1算出部は、前記遅れ時間と、前記対象交差点のサイクル長及び赤時間を用いて、前記正規化データを算出することが好ましい。
このようにすれば、プローブ情報と信号情報を元データとして、正規化データを算出するので、車両感知器の感知信号がなくても、正規化データを算出できるようになる。
(4) 具体的には、本実施形態の算出装置において、前記対象交差点が単独交差点であり、前記流入路が非飽和である場合には、前記第1算出部は、プローブ車両の平均旅行時間から求めた信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間と、前記単独交差点のサイクル長及び赤時間とを用いて、前記流入路の交通量を飽和交通流率に対する比率で表した正規化交通量を算出することが好ましい。
このようにすれば、プローブ情報と信号情報を元データとして、正規化交通量を算出することができる。
(5) 本実施形態の算出装置において、前記対象交差点が単独交差点であり、前記流入路が過飽和である場合には、前記第1算出部は、プローブ車両の平均旅行時間から求めた信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間と、前記単独交差点のサイクル長及び赤時間とを用いて、前記正規化交通量と前記流入路の待ち行列台数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化待ち行列台数を算出することが好ましい。
このようにすれば、プローブ情報と信号情報を元データとして、正規化交通量と正規化待ち行列台数を算出することができる。
(6) 本実施形態の算出装置において、前記対象交差点が系統交差点である場合には、前記第1算出部は、交通シミュレータに実行させた系統区間の交通流のシミュレート結果をさらに用いて、前記系統区間に含まれる交差点ごとに、前記正規化交通量を算出することが好ましい。
このようにすれば、流入路における車両挙動のモデル化が困難である系統交差点についても、正規化交通量を正確に算出することができる。
(7) 本実施形態の算出装置において、前記対象交差点の前記流入路が過飽和である場合には、前記第1算出部は、前記遅れ時間に対して前記シミュレート結果から求めた閾値と、前記対象交差点のサイクル長及び赤時間とを用いて、前記正規化交通量と前記流入路の待ち行列台数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化待ち行列台数を算出することが好ましい。
このようにすれば、シミュレート結果と信号情報を元データとして、正規化交通量と正規化待ち行列台数を算出することができる。
(8) 本実施形態の算出装置において、前記流入路の交通変数は、当該流入路の流入交通量及び待ち行列台数、或いは、当該流入路の流入交通量であることが好ましい。
その理由は、信号制御パラメータの算出に必要な交通指標の一種である、「負荷率」の定義式には、分子に流入交通量及び待ち行列台数が含まれ、分母に飽和交通流率が含まれるからである。また、信号制御パラメータの算出に必要な他の交通指標である、「現示飽和度」の定義式には、分子に流入交通量が含まれ、分母に飽和交通流率が含まれるからである。
(9) 本実施形態の交通信号制御システムは、上述の(1)〜(8)の算出装置と、前記交通指標から求めた前記信号制御パラメータにより前記対象交差点の交通信号制御機を動作させる遠隔制御を行う中央装置と、を備える。
本実施形態の交通信号制御システムによれば、中央装置が、算出装置が算出した交通指標から求めた前記信号制御パラメータにより、対象交差点の交通信号制御機を動作させるので、車両感知器が未設置であっても交通信号制御機を遠隔制御できるようになる。
(10) 本実施形態の算出方法は、上述の(1)〜(8)の算出装置が実行する判定方法である。従って、本実施形態の算出方法は、上述の(1)〜(8)の算出装置と同様の作用効果を奏する。
(11) 本実施形態のコンピュータプログラムは、上述の(1)〜(8)の算出装置として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムである。従って、本実施形態のコンピュータプログラムは、上述の(1)〜(8)の算出装置と同様の作用効果を奏する。
<本発明の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
〔用語の定義〕
本実施形態の詳細を説明するに当たり、まず、本明細書で用いる用語の定義を行う。
「車両」:道路を通行する車両全般のことをいう。従って、自動車、軽車両及びトロリーバスのほか、自動二輪車も車両に該当する。
本実施形態では、単に「車両」というときは、プローブ情報を送信可能な車載装置を有するプローブ車両と、その車載装置を有しない通常の車両の双方を含む。
「プローブ情報」:道路を走行中のプローブ車両がセンシングした当該車両に関する各種の情報のことをいう。プローブ情報は、プローブデータ或いはフローティングカーデータとも称される。プローブ情報には、プローブ車両の識別情報、車両位置、車両速度、車両方位及びこれらの発生時刻などの各種の車両データを含めることができる。プローブ情報には、車内のスマートフォンやタブレット等で取得された位置や加速度などの情報を利用するようにしてもよい。
「プローブ車両」:プローブ情報をセンシングして外部に送信する車両のことをいう。道路を通行する車両には、プローブ車両とこれ以外の車両の双方が含まれる。ただし、プローブ情報を送信可能な車載装置を有していない通常の車両であっても、車両の位置情報等のプローブ情報を外部に送信できる、上述のようなスマートフォン、タブレットPC等を有する車両はプローブ車両に含める。
「信号制御パラメータ」:信号表示の時間的要素であるサイクル長、スプリット及びオフセットを総称して信号制御パラメータ又は信号制御定数という。
「サイクル長」:交通信号機の青(又は赤)開始時刻から次の青(又は赤)開始時刻までの1サイクルの時間のことをいう。なお、日本では、緑色の信号灯色を青と呼ぶことが法令で定められている。
「スプリット」:各現示に割り当てられる時間の長さのサイクル長に対する割合のことをいう。一般に、百分率あるいは割合で表す。厳密には、有効青時間をサイクル長で割った値である。
「オフセット」:系統制御又は地域制御において、信号表示のある時点、例えば、主道路青信号の開始時点の当該信号機群に共通な基準時点からのずれ、或いは、隣接交差点間の同一表示開始点のずれのことをいう。前者を絶対オフセット、後者を相対オフセットといい、時間(秒)又は周期の百分率で表す。
「青時間」:交差点において車両に通行権がある時間帯のことをいう。青時間の終了時点は、最も早い場合で青灯器の消灯時点、最も遅い場合で黄灯器の消灯時点に設定すればよい。矢印灯器のある交差点の場合は、右折矢印の終了時点であってもよい。
「赤時間」:交差点において車両に通行権がない時間帯のことをいう。赤時間の開始時点は、最も早い場合で青灯器の消灯時点、最も遅い場合で黄灯器の消灯時点に設定すればよい。矢印灯器のある交差点の場合は、右折矢印の終了時点であってもよい。
上記の通り、本実施形態では、1サイクルに含まれる時間帯を、通行権ありの青時間と通行権なしの赤時間とに大別する。従って、青時間をG、赤時間をR、サイクル長をCとすると、C=G+Rの関係がある。
このため、Rが含まれる算出式(例えば、後述の式(10)及び式(11)など)については、Rの代わりに(C−G)を用いてもよい。すなわち、本実施形態の赤時間Rは、サイクル長Cと青時間Gから間接的に算出した値であってもよい。
「待ち行列」:赤信号による信号待ちなどのために、交差点の手前で停止している車両の行列のことをいう。
「リンク」:交差点などのノード間を繋ぐ、上り又は下りの方向を有する道路区間のことをいう。ある交差点から見て、当該交差点に向かって流入する方向のリンクのことを流入リンクといい、ある交差点から見て、当該交差点から流出する方向のリンクのことを流出リンクという。
「旅行時間」:車両がある区間を旅行するのに要した時間のことをいう。旅行時間には、途中の停止時間及び遅れ時間が含まれる。
「リンク旅行時間」:旅行時間の算出単位の道路区間が「リンク」である場合の旅行時間、すなわち、車両が1つのリンクの始端から終端までを通行するのに必要な旅行時間のことをいう。
「交通容量」:道路の交通容量は、道路の形状、幅員、勾配等の道路条件及び車種構成、速度制限等の交通条件の下で、一定時間内に一方向の道路、又は1車線の所定区間を無理なく通過できる車両の最大数をいう。ただし、2車線又は3車線の道路では両方の交通量をとる。
「交通量」:単位時間内の通過台数のことである。特に断らないときは、1時間の通過台数で表すが、制御や評価のためには、例えば秒単位、5分又は15分単位などの短時間の交通量を用いることがある。一般に交通量は、交通需要に応じて増加するが、交通需要が交通容量を超えると逆に減少する。
「負荷率」:過飽和状態においては、制御対象変量として、停止線通過交通量に捌け残り待ち行列台数を加えた「負荷交通量」を考える必要がある。
単位時間当たりの負荷交通量(交通流率)の飽和交通流率に対する比率を、負荷率という。過飽和状態による捌け残り台数が少ないときには、負荷率は需要率と等価である。
「交通需要」:ある交差点又は流入路ごと、或いは交通の方路別を対象として、一定時間内に流入路の停止線へ到着する交通量又は交通流率を交通需要という。
「交通流率」:車線又は車道のある断面をある時間(通常は1時間未満)に通過する台数を単位時間(通常は1時間)当たりに換算した値のことを、交通流率という。
例えば、15分間の交通量が90台の場合、この15分間の交通流率は360(台/時間)又は6(台/分)となる。交通流率は、対象としたある期間に通過した車両の平均車頭時間の逆数である。
「過飽和・非飽和・近飽和」:青表示終了時に信号待ち行列の捌け残りが生じる時は、交通需要は交通容量を超過している。この状態を「過飽和状態」という。
逆に、交通需要が交通容量以下の状態で、青表示終了時には信号待ち行列が解消する状態を「非飽和状態」という。過飽和ではないが、需要率が高い状態(例えば0.85以上の状態)を近飽和という。なお、需要率は1未満である。
「飽和交通流率」:交通需要が十分に存在する状態で、交差点の流入部において単位時間(例えば1秒)かつ一車線当たりに停止線を通過しうる、最大の車両数を飽和交通流率という。
直進車線の他に右折専用車線又は左折専用車線がある場合など、交通流の動線が異なると飽和交通流率の値は異なる。飽和交通流率の値は、車線幅員や大型車混入率など道路又は交通条件によっても異なる。
「地点制御」:交通信号制御を交差点数及び空間的な構成から分類すると、地点制御、系統制御、及び面制御の3つに分類できる。このうち、地点制御は、信号交差点を単独で制御する方式のことである。
「系統制御」:一連の隣接する交差点を相互に連動させて制御する方式のことをいう。この方式の特徴は,系統制御する複数の信号に対して共通のサイクル長(系統の共通サイクル長)とオフセットを定める点にある。
「面制御」:面的に広がる道路網に設置された多数の信号機を一括して制御する方式である。路線系統制御を面的に拡大したものである。
「定周期制御」:交通信号制御を信号制御パラメータの設定方式により分類すると、定周期制御、交通感応制御及び交通順応制御の3つに分類できる。
このうち、定周期制御は、時間帯に応じて予め信号制御パラメータが設定される方式である。時間帯や曜日(平日、土曜日、日曜日及び祝日)などに応じて予め設定された信号制御パラメータの組み合せ(プログラムと呼ぶ。)の中から1つを選んで実施される。
「交通感応制御」:車両感知器を用いる交通信号制御のうち、信号制御機ごとに実行される方式である。端末感応制御ともいう。
交通感応制御では、短時間の交通需要の変化に対応して青表示の開始や終了時点を決定し、その結果、青時間長及びサイクル長を変化させる。
「交通順応制御」:交通管制センターの中央装置が、重要交差点の交通信号制御機、或いは、系統制御又は面制御される複数の交差点の交通信号制御機を制御対象として、信号制御パラメータを変化させる制御方式である。中央装置が1又は複数の交通信号制御機を遠隔で制御するため、本実施形態では「遠隔制御」ともいう。
交通順応制御は、交通流の変動に対応した高度な系統制御が可能であるため、交通量やその時間変動が大きく、高い交通処理効率が要求される道路に適用される。
交通順応制御は、「プログラム選択制御」と「プログラム形成制御」の2種類に分類される。プログラム選択制御は,予め用意された複数の組合せ(プログラム)の中から、車両感知器の情報などから現時点の交通状況に適したものを選択する方式である。
プログラム形成制御は、有限個の信号制御パラメータの組み合せを用意せず、車両感知器の情報などに基づいて、即時に信号制御パラメータ又は信号灯色の切り替えタイミングを決定する方式である。
「MODERATO」(Management by Origin-DEstination Related Adaptation for Traffic Optimization):日本のUTMS(Universal Traffic Management System)におけるプログラム形成制御の名称である。
MORERATOは、交差点の流入路ごとの負荷率(=(流入交通量+待ち行列台数)/飽和交通流率)から信号制御パラメータを自動生成するシステムである。
「SCOOT」(Split Cycle Offset Optimisation Technique):英国で開発されたプログラム形成制御の方式である。特に欧州の国々で広く採用されている。
SCOOTは、道路に設置した車両感知器からのデータを使用して、現時点の交通状況にほぼリアルタイムに適応するように、交通信号機の信号灯色を自動的に調整するシステムである。
「SCATS」(Sydney Coordinated Adaptive Traffic System):オーストラリアで開発されたプログラム選択制御の方式である。概ね40カ国の1800以上の都市の約42,000の交差点に採用されている。
SCATSは、道路に設置したループ検出器などから得られたデータに応答して、ライブラリから自動計画を選択することにより、現状のトラフィックに最良の信号制御パラメータ(サイクル長、スプリット及びオフセット)を見いだすシステムである。
〔システムの全体構成〕
図1は、本実施形態に係る交通信号制御システム1の全体構成図である。
図2は、交通信号制御システム1に含まれる情報処理装置2、プローブ車両3の車載装置4及び中央装置5のブロック図である。
図1及び図2に示すように、交通信号制御システム1は、データセンタなどに設置された情報処理装置2、プローブ車両3に搭載された車載装置4、交通管制センターに設置された中央装置5、及び、各交差点に設置された交通信号制御機6などを備える。
本実施形態の交通信号制御システム1は、情報処理装置2が、車両位置とその通過時刻を含むプローブ情報をプローブ車両3から収集するとともに、交差点の信号情報を中央装置5から取得し、プローブ情報及び信号情報を用いて、交差点の信号制御パラメータを生成するのに必要な負荷率などの交通指標を算出するシステムである。
このように、本実施形態の情報処理装置2は、信号制御パラメータの生成に必要な「交通指標の算出装置」として機能する。
情報処理装置2の運用主体は、特に限定されない。例えば、情報処理装置2の運用主体は、車両3の製造メーカ又は各種の情報提供事業を行うIT企業などであってもよいし、中央装置5を運用する交通管制を担う公的な事業者であってもよい。
情報処理装置2のサーバの運用形式は、オンプレミスサーバ及びクラウドサーバのいずれであってもよい。
プローブ車両3の車載装置4は、各地の無線基地局7(例えば、携帯基地局)との無線通信が可能である。無線基地局7は、インターネットなどの公衆通信網8を介して情報処理装置2と通信可能である。
従って、車載装置4は、情報処理装置2宛てのアップリンク情報S1を無線基地局7に無線送信することができる。また、情報処理装置2は、特定の車載装置4宛てのダウンリンク情報S2を公衆通信網8に送信することができる。
〔情報処理装置の構成〕
図2に示すように、情報処理装置2は、ワークステーションよりなるサーバコンピュータ10と、サーバコンピュータ10に繋がる各種のデータベース21〜24とを備える。サーバコンピュータ10は、処理部11、記憶部12及び通信部13を備える。
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)のうちの少なくとも1つの不揮発性メモリ(記録媒体)と、ランダムアクセスメモリ等よりなる揮発性メモリ(記録媒体)とを含む記憶装置である。不揮発性メモリは、リムーバブルであってもよい。
処理部11は、記憶部12の不揮発性メモリに格納されたコンピュータプログラム14を読み出し、当該プログラム14に従って情報処理を行うCPU(Central Processing Unit)を含む演算処理装置よりなる。
情報処理装置2のコンピュータプログラム14には、プローブ車両3の信号待ちによる遅れ時間の算出、及び遅れ時間に基づく負荷率の算出など、所定の交通指標の算出処理を処理部11のCPUに実行させるプログラムなどが含まれる。
通信部13は、公衆通信網8を介して中央装置5及び無線基地局7と通信する通信インタフェースよりなる。
通信部13は、無線基地局7が自装置に送信したアップリンク情報S1を受信可能であり、自装置で生成されたダウンリンク情報S2を無線基地局7に送信可能である。アップリンク情報S1には、車載装置4が送信元のプローブ情報が含まれる。ダウンリンク情報S2には、処理部11が算出したリンク旅行時間などが含まれる。
通信部13は、中央装置5が自装置に送信した、交通管制エリアに含まれる交差点の信号情報を受信可能である。交差点の信号情報には、少なくとも交差点のサイクル長及び赤時間長が含まれる。
なお、通信部13は、公衆通信網8ではなく、専用の通信回線9を介して交通管制センターの中央装置5と接続されていてもよい。
各種のデータベース21〜24は、HDD又はSSDなどを含む大容量ストレージよりなる。これらのデータベース21〜24は、サーバコンピュータ10にそれぞれデータ転送可能に接続されている。
データベース21〜24には、地図データベース21、プローブデータベース22、会員データベース23、及び信号情報データベース24が含まれる。
地図データベース21には、国内を網羅する道路地図データ25が記録されている。道路地図データ25には、「交差点データ」と「リンクデータ」が含まれる。
「交差点データ」は、国内の交差点に付与された交差点IDと、交差点の位置情報とを対応付けたデータである。「リンクデータ」は、国内の道路に対応して付与された特定リンクのリンクIDに対して、次の情報1)〜4)を対応付けたデータよりなる。
情報1)特定リンクの始点・終点・補間点の位置情報
情報2)特定リンクの始点に接続するリンクID
情報3)特定リンクの終点に接続するリンクID
情報4)特定リンクのリンクコスト
道路地図データ25は、実際の道路線形と道路の走行方向に対応したネットワークを構成する。このため、道路地図データ25は、交差点を表すノード間の道路区間を有向リンクl(小文字のエル)で繋いだネットワークになっている。
具体的には、道路地図データ25は、交差点ごとにノードnが設定され、各ノードn間が逆向きの一対の有向リンクlで繋がった有向グラフよりなる。従って、一方通行の道路の場合は、一方向の有向リンクlのみノードnが接続される。
道路地図データ25には、地図上の各道路に対応する特定の有向リンクlが、一般道路であるか有料道路であるかを表す道路種別情報、及び、有向リンクlに含まれる料金所又はパーキングエリアなど施設の種別を表す施設情報なども含まれる。
プローブデータベース22には、情報処理装置2に予め登録されたプローブ車両3から受信したプローブ情報が、当該車両3の識別情報ごとに蓄積される。
蓄積されるプローブ情報には、少なくとも車両位置とその通過時刻が含まれる。プローブ情報には、車両速度、車両方位、車両の状態情報(停止/走行イベント)などの車両データが含まれていてもよい。プローブ情報のセンシング周期は、プローブ車両3の走行履歴を正確に特定可能な粒度であり、例えば0.5〜1.0秒である。
会員データベース23には、プローブ車両3の所有者(登録会員)の住所及び氏名などの個人情報、車両識別番号(VIN)、及び車載装置4の識別情報(例えば、MACアドレス、メールアドレス及び電話番号などのうちの少なくとも1つ)が記録される。
信号情報データベース24には、各交差点の流入路のサイクル長及び赤時間長を含む信号情報が、交差点ID及びリンクIDごとに蓄積される。
交通管制エリアの各交差点に設置された交通信号制御機6には、次の第1制御機6A及び第2制御機6Bの2種類の交通信号制御機が含まれる。
第1制御機6A:中央装置5による遠隔制御(系統制御及び面制御など)の対象ではなく、単独で信号灯色を決定する地点制御(定周期制御など)を行う交通信号制御機
第2制御機6B:中央装置5による遠隔制御(系統制御及び面制御など)の対象である交通信号制御機
中央装置5は、第1制御機6Aの信号情報については、運用が変更された場合にのみ情報処理装置2に送信する。処理部11は、信号情報データベース24に含まれる第1制御機6Aの信号情報を、受信した信号情報に更新する。
中央装置5は、第2制御機6Bの信号情報については、所定の制御周期(例えば1.0〜2.5分)ごとに情報処理装置2に送信する。処理部11は、信号情報データベース24に含まれる第2制御機6Bの信号情報を、受信した信号情報に更新する。
〔車載装置の構成〕
図2に示すように、車載装置4は、処理部31、記憶部32及び通信部33などを備えるコンピュータ装置よりなる。
処理部31は、記憶部32の不揮発性メモリに格納されたコンピュータプログラム34を読み出し、当該プログラム34に従って各種の情報処理を行うCPUを含む演算処理装置よりなる。
記憶部32は、HDD及びSSDのうちの少なくとも1つの不揮発性メモリ(記録媒体)と、ランダムアクセスメモリ等よりなる揮発性メモリ(記録媒体)とを含む記憶装置である。
車載装置4のコンピュータプログラム34には、プローブ情報のセンシング及び生成、プローブ車両3の経路探索処理、ナビゲーション装置のディスプレイに探索結果を表示するための画像処理などを処理部31のCPUに実行させるプログラムなどが含まれる。
通信部33は、プローブ車両3に恒常的に搭載された無線通信機、或いは、プローブ車両3に一時的に搭載されたデータ通信端末(例えば、スマートフォン、タブレット型コンピュータ又はノード型パソコンなど)よりなる。
通信部33は、例えばGPS(Global Positioning System )受信機を有する。処理部31は、通信部33が受信するGPSの位置情報に基づいて、自車両の現在位置をほぼリアルタイムにモニタリングしている。測位は、GPSのような全地球航法衛星システムを利用するのが好ましいが、他の方法であってもよい。
処理部31は、自車両の車両位置、車両速度、車両方位、及びCAN情報などの車両データを所定のセンシング周期(例えば0.5〜1.0秒)ごとに計測し、計測時刻とともに記憶部12に記録する。
記憶部12に所定の記録時間(例えば5分)の分だけ車両データが蓄積されると、通信部33は、蓄積された車両データと自車両の識別情報を含むプローブ情報を生成し、生成したプローブ情報を情報処理装置2宛てにアップリンク送信する。
車載装置4には、運転者の操作入力を受け付ける入力インタフェース(図示せず)が含まれる。入力インタフェースは、例えばナビゲーション装置に付随する入力機器、或いは、プローブ車両3に搭載されたデータ通信端末の入力機器などよりなる。
〔中央装置の構成〕
図2に示すように、中央装置5は、交通管制エリアに含まれる複数の交差点の交通信号制御機6を統括的に制御するサーバコンピュータよりなる。中央装置5は、処理部51、記憶部52及び通信部53などを備える。
交通管制エリア内の交通信号制御機6には、単独(スタンドアロン)で動作する地点制御方式の第1制御機6Aと、中央装置5による遠隔制御(交通順応制御)の制御対象である第2制御機6Bとが含まれる。
処理部51は、記憶部52の不揮発性メモリに格納されたコンピュータプログラム54を読み出し、当該プログラム54に従って各種の情報処理を行うCPUを含む演算処理装置よりなる。
記憶部52は、HDD及びSSDのうちの少なくとも1つの不揮発性メモリ(記録媒体)と、ランダムアクセスメモリ等よりなる揮発性メモリ(記録媒体)とを含む記憶装置である。
中央装置5のコンピュータプログラム54には、MODERATO、SCOOT及びSCATSのうちの少なくとも1つの遠隔制御(交通順応制御)を行うためのプログラムが含まれる。
処理部51は、遠隔制御により信号制御パラメータを生成すると、遠隔制御の制御対象である第2制御機6Bに実行させる信号制御指令を生成する。
信号制御指令は、新たに生成した信号制御パラメータに対応する信号灯器の灯色切り替えタイミングに関する情報であり、遠隔制御の制御周期(例えば1.0〜2.5分)ごとに生成される。
通信部53は、公衆通信網8を介して情報処理装置2と通信し、専用の通信回線9を介して第2制御機6Bと通信する通信インタフェースよりなる。通信部53は、専用の通信回線9を介して情報処理装置2と接続されていてもよい。
通信部53は、処理部51が信号制御パラメータの制御周期ごとに生成した信号制御指令を、遠隔制御の対象である第2制御機6Bに送信する。
通信部53は、第1及び第2制御機6A,6Bで運用中のサイクル長及び赤時間長を含む信号情報を、情報処理装置2に送信する。第2制御機6Bの信号情報については、遠隔制御の制御周期(例えば1.0〜2.5分)ごとに情報処理装置2に送信される。
〔従来の遠隔制御の概要と問題点〕
図3は、従来の遠隔制御(交通順応制御)の概要を示すフローチャートである。
図3に示すように、従来の遠隔制御には、「交通流の計測」(ステップS1)、「交通指標の算出」(ステップS2)、「信号制御パラメータの算出」(ステップS3)、及び「信号制御パラメータの反映」(ステップS4)が含まれる。
中央装置5の処理部51は、ステップS1〜S4の各処理を、所定の制御周期(例えば1.0〜2.5分)ごとに繰り返し実行する。
交通流の計測(ステップS1)は、対象交差点の流入路ごとの交通流を計測する処理である。従来の交通流の計測は、車両感知器の感知信号(パルス信号など)に基づいて実測データを算出する処理である。実測データには、交通量Vin、待ち行列台数Qin及び飽和交通流率Sfの実測値が含まれる。なお、Sfは道路構造に基づく設定値でもよい。
交通指標の算出(ステップS2)は、ステップS1の計測結果を用いて、信号制御パラメータの算出に必要な流入路ごとの交通指標を算出する処理である。
MODERATOで用いる交通指標は、負荷率Lrである。負荷率Lrは、1サイクル中に処理できる最大交通量に対する交通需要の比である。SCOOT及びSCATSで用いる交通指標は、現示飽和度Dsである。現示飽和度Dsは、青時間中に処理できる最大交通量に対する到着交通量の比である。
負荷率Lrの計算式は、次の式(1)の通りである。現示飽和度Dsの計算式は、次の式(2)の通りである。
Lr=(Vin+k×Qin)/Sf ……(1)
Ds=Vin×C/(Sf×G) ……(2)
ただし、Vin:交差点への流入交通量(台/秒)
k :重み係数(例えば1.0を用いる)
Qin:待ち行列台数の交通量換算値(台/秒)
Sf :飽和交通流率(台/秒)
G :有効青時間(秒)
C :サイクル長(秒)
式(1)に示すように、負荷率Lrの計算式には、流入路の交通変数として、流入交通量Vinと待ち行列台数Qinが含まれる。式(2)に示すように、現示飽和度Dsの計算式には、流入路の交通変数として、流入交通量Vinが含まれる。
中央装置5の処理部51は、ステップS1で得られたVin,Qin,Sfの実測値を式(1)又は(2)に代入し、負荷率Lr及び現示飽和度Dsのうちの少なくとも1つの交通指標を算出する。
信号制御パラメータの算出(ステップS3)は、ステップS2で算出した交通指標を用いて、制御対象の交差点のスプリット及びサイクル長などの信号制御パラメータを算出する処理である。
ここでは、中央装置5がMODRERATOを採用し、2つの現示のみを含む十字路交差点のスプリット及びサイクル長を算出する場合を想定する。また、現示の番号を「i」(i=1,2)で表し、各現示iの流入路の方向を「j」(j=1,2)で表す。
現示iの各流入路jの負荷率を「Lij」、流入路jにおける交通量を「Vij」、流入路jにおける待ち行列台数を「Qij」、流入路jにおける飽和交通流率を「Sij」とすると、負荷率Lijは、次の式(3)の通りである。
Lij=(Vij+Qij)/Sij ……(3)
中央装置5の処理部51は、現示iの負荷率Lriを次の式(4)により算出し、交差点全体の負荷率Lrtを次の式(5)により算出する。式(4)において、「maxj」は、現示iに含まれるj個の負荷率Lijのうちの最大値を意味する。
Lri=maxj(Lij) ……(4)
Lrt=Lr1+Lr2 ……(5)
そして、中央装置5の処理部51は、現示iのスプリットλi及びサイクル長Cを、次の式(6)及び(7)により算出する。なお、式(6)において、Kは損失時間を表し、a1〜a3は係数である。
λi=Lri/Lrt ……(6)
C=(a1×K+a2)/(1−a3×Lrt) ……(7)
信号制御パラメータの反映(ステップS4)は、ステップS3で算出した信号制御パラメータを対象交差点の第2制御機6Bに実行させる処理である。
具体的には、中央装置5の処理部51は、新たな信号制御パラメータから灯色切り替えタイミングを含む信号制御指令を算出し、算出した信号制御指令を第2制御機6Bに送信する。なお、信号制御パラメータから灯色切り替えタイミングを演算可能な第2制御機6Bの場合には、信号制御パラメータをそのまま第2制御機6Bに送信してもよい。
以上の通り、従来の遠隔制御では、車両感知器の感知信号から得られるVin,Qin,Sfの実測値を、交通指標Lr,Dsの定義式(式(1)又は(2))に代入することにより、交通指標Lr,Dsを算出する。
従って、従来の遠隔制御では、制御対象が、車両感知器が設置された交差点の交通信号制御機6に限られるという問題点がある。また、MODRERATOの負荷率や、SCOOT及びSCATSの現示飽和度を用いる限り、遠隔制御には車両感知器が必要であるとの固定観念があった。
ところで、式(1)及び(2)に示す通り、負荷率Lr及び現示飽和度Dsの定義式には、分子にVin及びQinが含まれ、分母に飽和交通流率Sfが含まれる。
従って、式(1)及び(2)に入力する交通量Vin及び待ち行列台数Qinを、飽和交通流率Sfに対する比率を表す変数として定義すれば、Vin,Qin及びSfの真値が不明であっても、負荷率Lr及び現示飽和度Dsを算出可能となる。
すなわち、流入路の交通量をVin=α×Sfとして定義し、待ち行列台数をQin=β×Sfとして定義し、これらを式(1)及び(2)に代入すると、次の算出式(8)及び(9)に示す通り、右辺の分子/分母でSfが相殺される。これは、αやβさえ定めることができれば、計算処理上では飽和交通流率Sfに任意の値を用いても、負荷率Lr及び現示飽和度Dsを計算できることを意味する。
Sfで正規化した交通量Vin(=α×Sf)と、Sfで正規化した待ち行列台数Qin(=β×Sf)を採用すれば、Vin,Qin及びSfのそのものの値を決定しなくても、負荷率Lr及び現示飽和度Dsを算出できる。
Lr=(Vin+k×Qin)/Sf
=(α×Sf+k×β×Sf)/Sf
=α+k×β ……(8)
Ds=Vin×C/(Sf×G)
=α×Sf×C/(Sf×G)
=α×C/G ……(9)
以下、Sfに対する比率で表す交通量Vin(=α×Sf)及び待ち行列台数Qin(=β×Sf)を、それぞれ「正規化交通量」及び「正規化待ち行列台数」という。また、「正規化交通量」及び「正規化待ち行列台数」の総称を、「正規化データ」という。上述のように、ここでの飽和交通流率Sfは任意の値を取り得る。
さらに本願発明者は、プローブ情報や交通シミュレータの算出結果を用いれば、上述のαやβを定めることができ、固定観点に反して、車両感知器がなくても負荷率Lr及び現示飽和度Dsから信号制御パラメータを算出し得ることを見出した。
かかる知見に基づき、本実施形態では、交通指標の算出に用いる流入路の交通変数を、プローブ情報又は交通シミュレータ15の算出結果に基づいて、正規化交通量Vin(=α×Sf)と正規化待ち行列台数Qin(=β×Sf)として算出する手法(決定する手法を含む)を提案する(図5及び図8参照)。
このように、プローブ情報等から求まる正規化データを用いて、信号制御パラメータの算出に用いる交通指標を算出すれば、車両感知器が未設置であっても遠隔制御を実行可能となる。以下、図4を参照して、本実施形態の遠隔制御の概要を説明する。
〔本実施形態の遠隔制御の概要〕
図4は、本実施形態の遠隔制御(交通順応制御)の概要を示すフローチャートである。
図4に示すように、本実施形態の遠隔制御には、「交通流の計測」(ステップS11)、「交通指標の算出」(ステップS12)、「信号制御パラメータの算出」(ステップS13)、及び「信号制御パラメータの反映」(ステップS14)が含まれる。
情報処理装置2の処理部11は、ステップS11〜S12の各処理を、所定の制御周期(例えば1.0〜2.5分)ごとに繰り返し実行する。
中央装置5の処理部51は、ステップS13〜S14の各処理を、同じ制御周期(例えば1.0〜2.5分)ごとに繰り返し実行する。
交通流の計測(ステップS11)は、対象交差点の流入路ごとの交通流を計測する処理である。本実施形態の交通流の計測は、プローブ情報や交通シミュレータ15(図8参照)のシミュレート結果を元データとして、正規化データを算出する処理である。正規化データには、Sfに対する比率を表す正規化交通量Vin(=α×Sf)と、Sfに対する比率を表す正規化待ち行列台数Qin(=β×Sf)が含まれる。
交通指標の算出(ステップS12)は、ステップS11の計測結果を用いて、信号制御パラメータの算出に必要な流入路ごとの交通指標を算出する処理である。
負荷率Lrの計算式は、前述の式(1)の通りである。現示飽和度Dsの計算式は、前述の式(2)の通りである。
情報処理装置2の処理部11は、ステップ11で得られた正規化データVin(=α×Sf),Qin(=β×Sf)を式(1)又は(2)に代入し、負荷率Lr及び現示飽和度Dsのうちの少なくとも1つの交通指標を算出する。
この場合、前述の式(8)及び(9)から明らかな通り、右辺の分子/分母でSfが相殺されるので、Vin,Qin及びSfの値そのものが不明であっても、負荷率Lr及び現示飽和度Dsを算出可能となる。
情報処理装置2の処理部11は、ステップS13により得られた負荷率Lr又は現示飽和度Dsの算出結果を中央装置5に送信する。
中央装置5の処理部51は、情報処理装置2から負荷率Lr又は現示飽和度Dsの算出結果を受信すると、受信した算出結果を用いてステップS13,S14の算出処理を実行する。
信号制御パラメータの算出(ステップS13)は、情報処理装置2から受信した交通指標を用いて、制御対象のスプリット及びサイクル長などの信号制御パラメータを算出する処理である。ステップ13の処理内容は、図3のステップS3と同様である。
信号制御パラメータの反映(ステップS14)は、ステップS13で算出した信号制御パラメータを対象交差点の第2制御機6Bに実行させる処理である。ステップ14の処理内容は、図3のステップS4と同様である。
〔単独交差点に関する正規化データの算出方法〕
図5は、遠隔制御の対象交差点が単独交差点である場合の、正規化データの算出方法の一例を示す説明図である。図5に含まれる変数等の意味は、次の通りである。
なお、「単独交差点」とは、遠隔制御の対象交差点であって、他の交差点とは独立して単独で制御対象とされる交差点のことである。
dav:信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間(平均値)(秒)
L :リンク長(m)
Tt :プローブ車両の平均旅行時間(秒)
Ve :想定速度(例えば規制速度)(km/時)
J1 :対象交差点の上流側の交差点
J2 :遠隔制御の対象交差点(単独交差点)
図5に示すように、単独交差点の遠隔制御の場合には、当該交差点の飽和状態(非飽和/過飽和)に応じて、次の式(10)又は式(11)により、正規化交通量Vin及び正規化待ち行列Qinを算出する。なお、式(10)及び式(11)において、「R」は赤時間(秒)である。
If dav≦R/2 (非飽和の場合)
Vin={1−R/(2×dav×C)}×Sf ……(10)
If R/2<dav (過飽和の場合)
Vin=(1−R/C)×Sf
Qin={(dav−R/2)/R}×(1−R/C)×Sf ……(11)
以下、図5〜図7を参照しつつ、式(10)及び式(11)の成立根拠を説明する。
(リンク旅行時間と遅れ時間との関係)
図5下段のグラフは、複数の車両が交差点J1,J2間のリンクを通行した場合の走行軌跡を表すグラフである。グラフの横軸は交差点J1からの距離であり、グラフの縦軸は旅行時間である。
交差点J1,J2間のリンクを複数の車両が通行した場合に、信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間davは、信号待ちの後に交差点J2を通過する全車両の総遅れ時間(三角形の面積)を車両台数で割った値である。
複数のプローブ車両3の平均旅行時間Ttには、上記の車両1台当たりの遅れ時間davが含まれると見なすことができる。
従って、信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間davは、複数のプローブ車両3の平均旅行時間Ttから、信号待ちなしでリンクを想定速度Veで走行した場合の旅行時間(=L/(Ve/3.6))を減算した値となる。すなわち、遅れ時間davは、次の式(12)で定義することができる。
dav=Tt−{L/(Ve/3.6)} ……(12)
情報処理装置2の処理部11は、プローブデータベース22に含まれるプローブ情報の位置及び時刻から、今回の制御周期に交差点J1,J2間のリンクを通過した複数のプローブ情報を抽出する。
そして、処理部11は、抽出した複数のプローブ情報の位置及び時刻に基づいて、プローブ車両3の平均旅行時間Ttを算出し、算出したTtを式(12)に代入して遅れ時間davを求める。
なお、信号待ち以外の停止が明らかなプローブ情報(例えば、駐車フラグ付きのプローブ情報)が含まれる場合には、平均旅行時間Ttの算出対象から外すことが好ましい。
また、信号待ち以外の停止時間が特定可能なプローブ情報(例えば、駐車時間を含むプローブ情報)の場合には、その停止時間を考慮して平均旅行時間Ttを算出することが好ましい。
(単独交差点が非飽和である場合)
図6は、非飽和時における交差点J2の交通状況と、Sfで正規化された交通量Vinの導出に必要な関係式を示す説明図である。
図6の例では、交差点J2手前の停止車両は、停止線の直前の同じ位置に重なって停止すると仮定する(垂直車列イメージ)。また、図6において、「D」は1サイクル中の総遅れ時間(秒)、「Gc」は、青開始時点を原点とする時刻(秒)であり、最後尾車両が交差点J2の停止線を通過する時刻を表す。
交差点J2の流入路が非飽和(dav≦R/2)の場合は、赤開始後に流入した車両台数(=(R+Gc)×Vin)は、時刻Gcまでに流入した車両台数(=Gc×Sf)と等しい。従って、最後尾車両の停止線通過時刻Gcは、次の式(13)のようになる。
Gc=Vin×R/(Sf−Vin) ……(13)
また、1サイクルにおける車列の総遅れ時間D、及び、車両1台当りの遅れ時間davの算出式は、それぞれ次の式(14)及び(15)のようになる。
D=0.5×{(R+Gc)×R×Vin} ……(14)
dav=D/(C×Vin)=0.5×{(R+Gc)×R}/C ……(15)
式(13)のGcを式(15)に代入してVinについて解けば、交差点J2が非飽和である場合の、正規化交通量Vinの算出式は、前述の式(10)となる。
(単独交差点が過飽和である場合)
図7は、過飽和時における交差点J2の交通状況の一例を示す説明図である。
図7に示すように、信号2回待ち以上の車両が含まれる過飽和状態を表すモデルとして、走行と停止のみの単純なモデルを想定する。この場合、2回目以降の信号待ち停止において、1回当たりの停止時間は赤時間Rと等しくなる。
図7のパターン1は、今回のサイクルで待ち行列が捌けた場合(0サイクル待ち)、すなわち、交差点J2がちょうど飽和状態の場合の交通状況を示す。
図7のパターン2は、次回のサイクルで待ち行列が捌けた場合(1サイクル待ち)の交通状況を示し、図7のパターン3は、次々回のサイクルで待ち行列が捌けた場合(2サイクル待ち)の交通状況を示す。
パターン1では、dav=0.5R、Qin=0となる。
パターン2では、dav=1.5R、Qin=(1−R/C)×Sfとなる。
パターン3では、dav=2.5R、Qin=2×(1−R/C)×Sfとなる。
従って、交差点J2が過飽和である場合の、正規化交通量Vin及び正規化待ち行列Qinの算出式は、前述の式(11)となる。
〔系統交差点に関する正規化データの算出方法〕
図8は、遠隔制御の対象交差点が系統交差点である場合の、正規化データの算出方法の一例を示す説明図である。図8に含まれる変数等の意味は、次の通りである。
なお、「系統交差点」とは、系統制御が行われる道路区間に含まれる複数の交差点のことである。図8の例では、4つの交差点Ji(i=1〜4)を系統交差点とする。
dav:信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間(秒)。ただし、系統交差点の場合のdavは、系統区間に含まれる交差点J1〜J4で発生する遅れ時間の合計値とする。
dsat:系統区間の交差点の飽和/非飽和を判定するための閾値である。
Ri :交差点iの赤時間
Li :交差点iと交差点i+1の間のリンク長(m)
Ofi:RiとRi+1のオフセット(秒)
Ve :想定速度(例えば規制速度)(km/時)
J1 :系統区間の最上流の交差点
J2 :系統区間の中間交差点
J3 :系統区間の中間交差点
J4 :系統区間の最下流の交差点
複数の車両が系統区間を通行する場合の信号待ちによる遅れ時間は、図5下段のグラフに示すような、単純な三角形でモデル化することは困難である。
そこで、系統区間の正規化データについては、系統区間のオフセット調整ツールを有する交通シミュレータ15を用いて、系統区間における正規化交通量Vinと遅れ時間davとの関係をシミュレートする。情報処理装置2のコンピュータプログラム14には、処理部11を上記の交通シミュレータ15として機能させるプログラムも含まれる。
具体的には、交通シミュレータ15は、系統区間の最初の交差点J1の流入路に異なる車両台数の仮想車両を発生させ、発生台数ごとの遅れ時間davを算出する。仮想車両の発生台数は、Sfで正規化した台数とし、例えば、Vin=0.1Sf→0.2Sf→0.3Sf……のように増加させるものとする。
また、交通シミュレータ15は、算出結果を纏めた対応テーブル16を生成し、生成したテーブル16を記憶部12に一時的に記憶させる。
次に、情報処理装置2の処理部11は、実際に系統区間(J1〜J4)を走行した複数のプローブ車両3の平均遅れ時間Trを算出する。Trのなかで、系統区間の飽和状態(非飽和/飽和)を判定するための判定閾値dsatは、飽和状態を想定(表では0.4Sf)したときのTrである。この場合の遅れ時間Tr(=dsat)の算出式は次の通りである。
Tr=系統区間の平均旅行時間−{ΣLi/(Ve/3.6)}
例えば、プローブ情報から求めた遅れ時間Tr(<dsat)が114秒であるとすると、これに対応する正規化交通量Vinは、0.3×Sfと0.4×Sfとの間の約3.5×Sfとなる。
情報処理装置2の処理部11は、対象交差点J1〜J4のうち、非飽和(dav≦dsat)の対象交差点については、対応テーブル16において実際の遅れ時間Tr(<dsat)に対応する交通量(=3.5×Sf)を正規化交通量とする。
If dav≦dsat (非飽和の場合)
Vin=対応テーブル相当の交通量(例えば3.5×Sf)
情報処理装置2の処理部11は、過飽和の対象交差点(ここでは交差点J4)、すなわち、dsat<davの場合は、次の式(16)により、Sfに対する比率を表す交通量Vin及び待ち行列台数Qinを算出する。
If dsat<dav (過飽和の場合)
Vin=(1−R/C)×Sf
Qin={(dav−dsat)/R}×(1−R/C)×Sf ……(16)
〔正規化データの算出処理〕
図9は、情報処理装置2の処理部11が実行する、正規化データの算出処理の一例を示すフローチャートである。情報処理装置2の処理部11は、図9の処理を対象交差点に含まれる流入路ごとに実行する。
図9に示すように、情報処理装置2の処理部11は、まず、車両1台当たりの遅れ時間davと、対象交差点のサイクル長C及び赤時間Rを取得する(ステップST1)。
具体的には、処理部11は、式(12)を用いて遅れ時間davを算出し、現時点の対象交差点のサイクル長C及び赤時間Rを中央装置5から受信する。
次に、処理部11は、対象交差点が系統交差点であるか否かを判定する(ステップST2)。ステップST2の判定結果が否定的である場合(単独交差点の場合)は、処理部11は、dav≦R/2であるか否かを判定する(ステップST3)。
ステップST3の判定結果が肯定的である場合(非飽和の場合)は、処理部11は、前述の式(10)により、Sfで正規化した交通量Vinを算出する(ステップST4)。
ステップST3の判定結果が否定的である場合(過飽和の場合)は、処理部11は、前述の式(11)により、Sfで正規化した交通量VinとSfで正規化した待ち行列台数Qinを算出する(ステップST5)。
ステップ2の判定結果が肯定的である場合(系統交差点の場合)は、処理部11は、系統区間に含まれる複数の交差点JiのRi,Li、Ofi及びVeを取得する(ステップST6)。
具体的には、処理部11は、現時点の交差点JiのRi,Li及びOfiを中央装置5から受信し、Veの設定値を記憶部12から読み出す。
なお、系統区間の交差点Jiに関する各パラメータの意味は次の通りである。
Ri :上流交差点iの赤時間(秒)
Li :各交差点間のリンク長(m)
Ofi:交差点間の青開始時間の差を表すオフセット(秒又は%)
Ve :車両の走行速度(規制又は設計値)(km/時)
dsat:系統交差点群の飽和/非飽和の判定閾値(秒)
次に、処理部11は、取得したRi,Li、Ofi及びVeを入力データとして交通シミュレータ15を起動し、Sfで正規化した交通量Vinと遅れ時間dav及び判定閾値dsatを計算させる(ステップST7)。
次に、処理部11は、交通シミュレータ15が計算した判定閾値dsatを用いて、dav≦dsatであるか否かを判定する(ステップST8)。
ステップ8の判定結果が肯定的である場合(非飽和の場合)は、処理部11は、交通シミュレータ15の算出結果を纏めた対応テーブル16(図8参照)に基づいて、Sfで正規化した交通量Vinを決定する(ステップST9)。
ステップ8の判定結果が否定的である場合(過飽和の場合)は、処理部11は、前述の式(16)により、Sfで正規化した交通量Vinと待ち行列台数Qinを算出する(ステップST10)。
〔本実施形態の効果〕
本実施形態によれば、情報処理装置2の処理部11が、Sfで正規化した交通量Vin及び待ち行列台数Qinを算出し、その算出結果を用いて遠隔制御(交通順応制御)に用いる交通指標(負荷率Lr又は現示飽和度Ds)を算出するので、交通量Vinと待ち行列台数Qinの実測値がなくても、遠隔制御に用いる交通指標を算出することができる。
従って、交通量Vin及び待ち行列台数Qinを実測するための車両感知器の感知信号が不要となり、車両感知器が設置されていない交差点についても、遠隔制御を実行できるようになる。
〔第1の変形例〕
上述の実施形態では、Sfに対する比率を表す正規化データとして、交通量Vin及び待ち行列台数Qinを採用しているが、Sfの正規化データとして、交通需要Dm(台/秒)を採用することにしてもよい。
図10は、正規化された交通需要Dmの推定方法の一例を示す説明図である。
図10に示すように、非飽和時の交通需要Dmの推定式は、次の式(17)よりなり、過飽和時の交通需要Dmの推定式は、次の式(18)よりなる。
Dm=Vin/C={1−R/(2×dav×C)}×Sf/C ……(17)
Dm={Qin(t)−Qin(t-1)+(1−R/C)×Sf}/C ……(18)
式(17)及び(18)において、サイクル長Cで除算する理由は、1サイクルごとに計算されるVin及びQinを1秒ごとの値に変換するためである。
式(17)及び(18)に基づく交通需要Dmを算出することにより、信号制御パラメータを変更した場合の交通需要Dmの改善効果を、従来通りの手法で予想できるようになる。ただし、予想可能な物理量は、交通需要Dmの絶対量(台/秒)ではなく、Sfに対する相対量(比率)である。
〔第2の変形例〕
上述の実施形態において、プローブ車両3の台数が少ないと、プローブ車両3の平均旅行時間Ttが余り正確でなく、信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間dav(式(12))の算出結果が不正確になる可能性がある。
そこで、プローブ車両3の平均旅行時間Ttがそれほど正確でないことが想定される場合、遅れ時間davの標準偏差などよりなるマージン量eを設定し、当該マージンeを車両1台当たりの遅れ時間davに加算してもよい。
図11は、遅れ時間davの誤差を考慮した飽和状態の判定方法と、交通量の算出式を示の一例を示す説明図である。
図11の判定方法及び算出式によれば、davにマージンeが加算されているので、スプリットなどの信号制御パラメータが大きめに計算され、渋滞の発生を防止できるようになる。
もっとも、想定誤差の小さい(精度の高い)方向のスプリットが削られ、不利になる可能性があるので、例えば、マージンeはすべての流入方向のうちの最大値を採用するなど、特定の方向に有利又は不利が生じないようにすることが好ましい。
上述の実施形態(変形例を含む。)は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上述の実施形態において、情報処理装置2が交通流の計測(図4のステップS11)までを実行し、交通指標の算出以降の処理(図4のステップS12〜S14)を中央装置5が実行してもよい。
また、中央装置5がプローブ情報の収集及び解析を実行可能である場合は、交通流の計測から信号制御パラメータの反映までのすべての処理(図4のステップS11〜S14)を中央装置5が行うことにしてもよい。
上述の第2の変形例ではdavにマージンeを加算したが、例えば信号待ち以外の理由で発生した遅れ時間dexを設定または取得できる場合には、次式に従ってdavを計算するようにしてもよい。
dav=Tt−{L/(Ve/3.6)}−dex
1 交通信号制御システム
2 情報処理装置(交通指標の算出装置)
3 プローブ車両
4 車載装置
5 中央装置
6 交通信号制御機
6A 第1制御機
6B 第2制御機
3 プローブ車両
7 無線基地局
8 公衆通信網
9 通信回線
10 サーバコンピュータ
11 処理部(第1算出部、第2算出部)
12 記憶部
13 通信部
14 コンピュータプログラム
15 交通シミュレータ
16 対応テーブル
21 地図データベース
22 プローブデータベース
23 会員データベース
24 信号情報データベース
25 道路地図データ
31 処理部
32 記憶部
33 通信部
34 コンピュータプログラム
51 処理部
52 記憶部
53 通信部
54 コンピュータプログラム
情報処理装置2の処理部11は、ステップS12により得られた負荷率Lr又は現示飽和度Dsの算出結果を中央装置5に送信する。
中央装置5の処理部51は、情報処理装置2から負荷率Lr又は現示飽和度Dsの算出結果を受信すると、受信した算出結果を用いてステップS13,S14の算出処理を実行する。
信号制御パラメータの算出(ステップS13)は、情報処理装置2から受信した交通指標を用いて、制御対象のスプリット及びサイクル長などの信号制御パラメータを算出する処理である。ステップS13の処理内容は、図3のステップS3と同様である。
信号制御パラメータの反映(ステップS14)は、ステップS13で算出した信号制御パラメータを対象交差点の第2制御機6Bに実行させる処理である。ステップS14の処理内容は、図3のステップS4と同様である。
次に、情報処理装置2の処理部11は、実際に系統区間(J1〜J4)を走行した複数のプローブ車両3の平均遅れ時間Trを算出する。Trのなかで、系統区間の飽和状態(非飽和/飽和)を判定するための判定閾値dsatは、飽和状態を想定(表では0.4Sf)したときのTrである。この場合の遅れ時間Tr(=dsat)の算出式は次の通りである。
Tr=系統区間の平均旅行時間−{ΣLi/(Ve/3.6)}
例えば、プローブ情報から求めた遅れ時間Tr(<dsat)が114秒であるとすると、これに対応する正規化交通量Vinは、0.3×Sfと0.4×Sfとの間の約0.35×Sfとなる。
情報処理装置2の処理部11は、対象交差点J1〜J4のうち、非飽和(dav≦dsat)の対象交差点については、対応テーブル16において実際の遅れ時間Tr(<dsat)に対応する交通量(=0.35×Sf)を正規化交通量とする。
If dav≦dsat (非飽和の場合)
Vin=対応テーブル相当の交通量(例えば0.35×Sf
ステップST2の判定結果が肯定的である場合(系統交差点の場合)は、処理部11は、系統区間に含まれる複数の交差点JiのRi,Li、Ofi及びVeを取得する(ステップST6)。
具体的には、処理部11は、現時点の交差点JiのRi,Li及びOfiを中央装置5から受信し、Veの設定値を記憶部12から読み出す。
ステップST8の判定結果が肯定的である場合(非飽和の場合)は、処理部11は、交通シミュレータ15の算出結果を纏めた対応テーブル16(図8参照)に基づいて、Sfで正規化した交通量Vinを決定する(ステップST9)。
ステップST8の判定結果が否定的である場合(過飽和の場合)は、処理部11は、前述の式(16)により、Sfで正規化した交通量Vinと待ち行列台数Qinを算出する(ステップST10)。

Claims (11)

  1. 信号制御パラメータの算出に必要となる交通指標を算出する装置であって、
    対象交差点の流入路の交通変数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化データを算出する第1算出部と、
    前記正規化データを用いて、前記流入路の交通変数が分子に含まれ前記飽和交通流率が分母に含まれる式で定義される前記交通指標を算出する第2算出部と、を備える交通指標の算出装置。
  2. 前記第1算出部は、
    車両のプローブ情報から求めた信号待ちによる遅れ時間を用いて、前記正規化データを算出する請求項1に記載の交通指標の算出装置。
  3. 前記第1算出部は、
    前記遅れ時間と、前記対象交差点のサイクル長及び赤時間を用いて、前記正規化データを算出する請求項2に記載の交通指標の算出装置。
  4. 前記対象交差点が単独交差点であり、前記流入路が非飽和である場合には、
    前記第1算出部は、
    プローブ車両の平均旅行時間から求めた信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間と、前記単独交差点のサイクル長及び赤時間とを用いて、前記流入路の交通量を飽和交通流率に対する比率で表した正規化交通量を算出する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の交通指標の算出装置。
  5. 前記対象交差点が単独交差点であり、前記流入路が過飽和である場合には、
    前記第1算出部は、
    プローブ車両の平均旅行時間から求めた信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間と、前記単独交差点のサイクル長及び赤時間とを用いて、前記正規化交通量と前記流入路の待ち行列台数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化待ち行列台数を算出する請求項4に記載の交通指標の算出装置。
  6. 前記対象交差点が系統交差点である場合には、
    前記第1算出部は、
    交通シミュレータに実行させた系統区間の交通流のシミュレート結果をさらに用いて、前記系統区間に含まれる交差点ごとに、前記正規化交通量を算出する請求項4又は請求項5に記載の交通指標の算出装置。
  7. 前記対象交差点の前記流入路が過飽和である場合には、
    前記第1算出部は、
    前記遅れ時間に対して前記シミュレート結果から求めた閾値と、前記対象交差点のサイクル長及び赤時間とを用いて、前記正規化交通量と前記流入路の待ち行列台数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化待ち行列台数を算出する請求項6に記載の交通指標の算出装置。
  8. 前記流入路の交通変数は、
    当該流入路の流入交通量及び待ち行列台数、或いは、当該流入路の流入交通量である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の交通指標の算出装置。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の算出装置と、
    前記交通指標から求めた前記信号制御パラメータにより、前記対象交差点の交通信号制御機を動作させる遠隔制御を行う中央装置と、を備える交通信号制御システム。
  10. 信号制御パラメータの算出に必要となる交通指標を算出する方法であって、
    対象交差点の流入路の交通変数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化データを算出する第1ステップと、
    前記正規化データを用いて、前記流入路の交通変数が分子に含まれ前記飽和交通流率が分母に含まれる式で定義される前記交通指標を算出する第2ステップと、を含む交通指標の算出方法。
  11. 信号制御パラメータの算出に必要となる交通指標を算出する装置として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、
    前記コンピュータを、
    対象交差点の流入路の交通変数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化データを算出する第1算出部、及び、
    前記正規化データを用いて、前記流入路の交通変数が分子に含まれ前記飽和交通流率が分母に含まれる式で定義される前記交通指標を算出する第2算出部、として機能させるためのコンピュータプログラム。
JP2020550222A 2018-10-05 2019-09-04 交通指標の算出装置、算出方法、交通信号制御システム、及びコンピュータプログラム Active JP7276964B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018190437 2018-10-05
JP2018190437 2018-10-05
PCT/JP2019/034737 WO2020071040A1 (ja) 2018-10-05 2019-09-04 交通指標の算出装置、算出方法、交通信号制御システム、及びコンピュータプログラム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2020071040A1 true JPWO2020071040A1 (ja) 2021-09-02
JP7276964B2 JP7276964B2 (ja) 2023-05-18

Family

ID=70055496

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020550222A Active JP7276964B2 (ja) 2018-10-05 2019-09-04 交通指標の算出装置、算出方法、交通信号制御システム、及びコンピュータプログラム

Country Status (4)

Country Link
US (1) US11263900B2 (ja)
JP (1) JP7276964B2 (ja)
CN (1) CN112740292A (ja)
WO (1) WO2020071040A1 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112365714B (zh) * 2020-11-11 2022-05-10 武汉工程大学 一种智轨通行主支路交叉口交通信号控制方法
CN113257012B (zh) * 2021-06-10 2022-07-26 长沙理工大学 一种自动驾驶混行交叉口车道功能与绿灯时间设置方法
WO2023188666A1 (ja) * 2022-03-28 2023-10-05 住友電気工業株式会社 情報処理装置、制御端末、情報処理方法、及びコンピュータプログラム

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011237921A (ja) * 2010-05-07 2011-11-24 Sumitomo Electric Ind Ltd 信号制御装置及びコンピュータプログラム
JP2017016554A (ja) * 2015-07-06 2017-01-19 株式会社日立製作所 信号機制御システム及び信号機制御方法

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5104729B2 (ja) * 2008-11-12 2012-12-19 住友電気工業株式会社 交通信号制御システム、信号制御装置
CN101702262B (zh) * 2009-11-06 2011-08-17 北京交通大学 一种城市交通流畅通性指标的数据融合方法
CN101976510A (zh) * 2010-10-26 2011-02-16 隋亚刚 高清视频检测条件下的交叉口机动车信号优化控制方法
CN102289937B (zh) * 2011-08-08 2013-06-12 上海电科智能系统股份有限公司 基于停车线检测器的城市地面道路交通状态自动判别方法
CN105788236B (zh) * 2014-12-26 2018-09-28 浙江大华技术股份有限公司 一种交通控制方法及装置
WO2016147350A1 (ja) 2015-03-18 2016-09-22 住友電気工業株式会社 信号制御装置、コンピュータプログラム、記録媒体及び信号制御方法
CN106297285B (zh) * 2016-08-17 2018-09-21 重庆大学 基于动态权重的高速公路交通运行状态模糊综合评价方法
US10692367B2 (en) * 2016-12-19 2020-06-23 ThruGreen, LLC Connected and adaptive vehicle traffic management system with digital prioritization
US20180292224A1 (en) * 2017-04-05 2018-10-11 Gregory Brodski System and method for traffic volume estimation
CN107945517A (zh) * 2017-12-29 2018-04-20 迈锐数据(北京)有限公司 一种交通数据处理装置

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011237921A (ja) * 2010-05-07 2011-11-24 Sumitomo Electric Ind Ltd 信号制御装置及びコンピュータプログラム
JP2017016554A (ja) * 2015-07-06 2017-01-19 株式会社日立製作所 信号機制御システム及び信号機制御方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP7276964B2 (ja) 2023-05-18
US11263900B2 (en) 2022-03-01
US20210174672A1 (en) 2021-06-10
CN112740292A (zh) 2021-04-30
WO2020071040A1 (ja) 2020-04-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7276964B2 (ja) 交通指標の算出装置、算出方法、交通信号制御システム、及びコンピュータプログラム
US20220335820A1 (en) Traffic information processing method and apparatus
CN108180919A (zh) 一种规划路线的优化方法及装置
CN110379164B (zh) 一种动态调控的公交准点控制方法及系统
JP7086195B2 (ja) 交通流シミュレータ、交通流のシミュレート方法及びコンピュータプログラム
JP6139179B2 (ja) 情報生成装置、交通シミュレータ及びコンピュータプログラム
US20200143672A1 (en) Traffic congestion estimating device, traffic congestion estimating method, and recording medium storing program thereof
CN111915893B (zh) 一种道路瓶颈点识别方法、装置、电子设备及存储介质
JP2013088888A (ja) 情報処理装置、交通指標推定装置及びコンピュータプログラム
JP2016133942A (ja) 交通指標算出装置、交通指標算出方法及びコンピュータプログラム
JP5857389B2 (ja) 交通指標推定装置及びコンピュータプログラム
JP7396169B2 (ja) 待ち行列台数の算出装置及び算出方法
JP5348104B2 (ja) プローブ情報の処理装置、コンピュータプログラム、情報処理システム及びリンク端の通過時刻算出方法
JP5381808B2 (ja) 交通情報処理装置とこれを用いた渋滞情報の検出方法
JP5110125B2 (ja) 情報処理装置及びコンピュータプログラム
JP5104916B2 (ja) 情報処理装置及びコンピュータプログラム
JP5716312B2 (ja) 情報処理装置及びコンピュータプログラム
JP5803162B2 (ja) 交通指標算出装置、交通指標算出方法および交通指標算出プログラム
WO2022085249A1 (ja) 遅れ時間の算出装置、算出方法、及びコンピュータプログラム
Cortés et al. Trajectory Simulation of Emergency Vehicles and Interactions with Surrounding Traffic
JP2012155383A (ja) 交通指標算出装置、交通指標算出方法および交通指標算出プログラム
JP5994375B2 (ja) 旅行時間算出装置及び方法、コンピュータプログラム
WO2023188666A1 (ja) 情報処理装置、制御端末、情報処理方法、及びコンピュータプログラム
Al-Mosawi et al. Estimating Base Saturation Flow Rate for Selected Signalized Intersections in Al-Najaf City
Aljamal Real-time estimation of traffic stream density using connected vehicle data

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210205

A625 Written request for application examination (by other person)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A625

Effective date: 20220321

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20221206

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230202

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230404

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230427

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7276964

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150