JPWO2020071040A1 - 交通指標の算出装置、算出方法、交通信号制御システム、及びコンピュータプログラム - Google Patents
交通指標の算出装置、算出方法、交通信号制御システム、及びコンピュータプログラム Download PDFInfo
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Abstract
Description
本出願は、2018年10月5日出願の日本出願第2018−190437号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
このうち、日本で採用されているMODERATOは、交差点の流入路ごとの負荷率(=(流入交通量+待ち行列台数)/飽和交通流率)に基づいて、スプリット及びサイクル長などの信号制御パラメータを自動生成するシステムである(特許文献1参照)。
流入路の交通量及び待ち行列台数は、通常、当該流入路に設置された車両感知器の感知信号から計測される。従って、流入路に車両感知器が設置されていない交差点では、MODERATOなどの遠隔制御が実行されない。
しかし、日本国内では、全体の2/3の交差点で車両感知器が設置されていないのが現状であり、更に多くの割合で車両感知器が設置されていない国もある。従って、車両感知器が未設置の交差点についても、遠隔制御を実行できることが望まれる。
本開示によれば、車両感知器が未設置の交差点についても、遠隔制御を実行することができる。
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態の装置は、信号制御パラメータの算出に必要となる交通指標を算出する装置であって、対象交差点の流入路の交通変数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化データを算出する第1算出部と、前記正規化データを用いて、前記流入路の交通変数が分子に含まれ前記飽和交通流率が分母に含まれる式で定義される前記交通指標を算出する第2算出部と、を備える。
従って、正規化データに基づく交通指標を用いて信号制御パラメータを算出することにより、車両感知器が未設置の交差点であっても、遠隔制御を実行できるようになる。
(3) また、前記第1算出部は、前記遅れ時間と、前記対象交差点のサイクル長及び赤時間を用いて、前記正規化データを算出することが好ましい。
このようにすれば、プローブ情報と信号情報を元データとして、正規化データを算出するので、車両感知器の感知信号がなくても、正規化データを算出できるようになる。
このようにすれば、プローブ情報と信号情報を元データとして、正規化交通量を算出することができる。
このようにすれば、プローブ情報と信号情報を元データとして、正規化交通量と正規化待ち行列台数を算出することができる。
このようにすれば、流入路における車両挙動のモデル化が困難である系統交差点についても、正規化交通量を正確に算出することができる。
このようにすれば、シミュレート結果と信号情報を元データとして、正規化交通量と正規化待ち行列台数を算出することができる。
その理由は、信号制御パラメータの算出に必要な交通指標の一種である、「負荷率」の定義式には、分子に流入交通量及び待ち行列台数が含まれ、分母に飽和交通流率が含まれるからである。また、信号制御パラメータの算出に必要な他の交通指標である、「現示飽和度」の定義式には、分子に流入交通量が含まれ、分母に飽和交通流率が含まれるからである。
本実施形態の交通信号制御システムによれば、中央装置が、算出装置が算出した交通指標から求めた前記信号制御パラメータにより、対象交差点の交通信号制御機を動作させるので、車両感知器が未設置であっても交通信号制御機を遠隔制御できるようになる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
本実施形態の詳細を説明するに当たり、まず、本明細書で用いる用語の定義を行う。
「車両」:道路を通行する車両全般のことをいう。従って、自動車、軽車両及びトロリーバスのほか、自動二輪車も車両に該当する。
本実施形態では、単に「車両」というときは、プローブ情報を送信可能な車載装置を有するプローブ車両と、その車載装置を有しない通常の車両の双方を含む。
「サイクル長」:交通信号機の青(又は赤)開始時刻から次の青(又は赤)開始時刻までの1サイクルの時間のことをいう。なお、日本では、緑色の信号灯色を青と呼ぶことが法令で定められている。
「オフセット」:系統制御又は地域制御において、信号表示のある時点、例えば、主道路青信号の開始時点の当該信号機群に共通な基準時点からのずれ、或いは、隣接交差点間の同一表示開始点のずれのことをいう。前者を絶対オフセット、後者を相対オフセットといい、時間(秒)又は周期の百分率で表す。
「赤時間」:交差点において車両に通行権がない時間帯のことをいう。赤時間の開始時点は、最も早い場合で青灯器の消灯時点、最も遅い場合で黄灯器の消灯時点に設定すればよい。矢印灯器のある交差点の場合は、右折矢印の終了時点であってもよい。
このため、Rが含まれる算出式(例えば、後述の式(10)及び式(11)など)については、Rの代わりに(C−G)を用いてもよい。すなわち、本実施形態の赤時間Rは、サイクル長Cと青時間Gから間接的に算出した値であってもよい。
「リンク」:交差点などのノード間を繋ぐ、上り又は下りの方向を有する道路区間のことをいう。ある交差点から見て、当該交差点に向かって流入する方向のリンクのことを流入リンクといい、ある交差点から見て、当該交差点から流出する方向のリンクのことを流出リンクという。
「リンク旅行時間」:旅行時間の算出単位の道路区間が「リンク」である場合の旅行時間、すなわち、車両が1つのリンクの始端から終端までを通行するのに必要な旅行時間のことをいう。
単位時間当たりの負荷交通量(交通流率)の飽和交通流率に対する比率を、負荷率という。過飽和状態による捌け残り台数が少ないときには、負荷率は需要率と等価である。
「交通需要」:ある交差点又は流入路ごと、或いは交通の方路別を対象として、一定時間内に流入路の停止線へ到着する交通量又は交通流率を交通需要という。
例えば、15分間の交通量が90台の場合、この15分間の交通流率は360(台/時間)又は6(台/分)となる。交通流率は、対象としたある期間に通過した車両の平均車頭時間の逆数である。
逆に、交通需要が交通容量以下の状態で、青表示終了時には信号待ち行列が解消する状態を「非飽和状態」という。過飽和ではないが、需要率が高い状態(例えば0.85以上の状態)を近飽和という。なお、需要率は1未満である。
直進車線の他に右折専用車線又は左折専用車線がある場合など、交通流の動線が異なると飽和交通流率の値は異なる。飽和交通流率の値は、車線幅員や大型車混入率など道路又は交通条件によっても異なる。
「面制御」:面的に広がる道路網に設置された多数の信号機を一括して制御する方式である。路線系統制御を面的に拡大したものである。
このうち、定周期制御は、時間帯に応じて予め信号制御パラメータが設定される方式である。時間帯や曜日(平日、土曜日、日曜日及び祝日)などに応じて予め設定された信号制御パラメータの組み合せ(プログラムと呼ぶ。)の中から1つを選んで実施される。
交通感応制御では、短時間の交通需要の変化に対応して青表示の開始や終了時点を決定し、その結果、青時間長及びサイクル長を変化させる。
交通順応制御は、交通流の変動に対応した高度な系統制御が可能であるため、交通量やその時間変動が大きく、高い交通処理効率が要求される道路に適用される。
プログラム形成制御は、有限個の信号制御パラメータの組み合せを用意せず、車両感知器の情報などに基づいて、即時に信号制御パラメータ又は信号灯色の切り替えタイミングを決定する方式である。
MORERATOは、交差点の流入路ごとの負荷率(=(流入交通量+待ち行列台数)/飽和交通流率)から信号制御パラメータを自動生成するシステムである。
SCOOTは、道路に設置した車両感知器からのデータを使用して、現時点の交通状況にほぼリアルタイムに適応するように、交通信号機の信号灯色を自動的に調整するシステムである。
SCATSは、道路に設置したループ検出器などから得られたデータに応答して、ライブラリから自動計画を選択することにより、現状のトラフィックに最良の信号制御パラメータ(サイクル長、スプリット及びオフセット)を見いだすシステムである。
図1は、本実施形態に係る交通信号制御システム1の全体構成図である。
図2は、交通信号制御システム1に含まれる情報処理装置2、プローブ車両3の車載装置4及び中央装置5のブロック図である。
図1及び図2に示すように、交通信号制御システム1は、データセンタなどに設置された情報処理装置2、プローブ車両3に搭載された車載装置4、交通管制センターに設置された中央装置5、及び、各交差点に設置された交通信号制御機6などを備える。
このように、本実施形態の情報処理装置2は、信号制御パラメータの生成に必要な「交通指標の算出装置」として機能する。
情報処理装置2のサーバの運用形式は、オンプレミスサーバ及びクラウドサーバのいずれであってもよい。
従って、車載装置4は、情報処理装置2宛てのアップリンク情報S1を無線基地局7に無線送信することができる。また、情報処理装置2は、特定の車載装置4宛てのダウンリンク情報S2を公衆通信網8に送信することができる。
図2に示すように、情報処理装置2は、ワークステーションよりなるサーバコンピュータ10と、サーバコンピュータ10に繋がる各種のデータベース21〜24とを備える。サーバコンピュータ10は、処理部11、記憶部12及び通信部13を備える。
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)のうちの少なくとも1つの不揮発性メモリ(記録媒体)と、ランダムアクセスメモリ等よりなる揮発性メモリ(記録媒体)とを含む記憶装置である。不揮発性メモリは、リムーバブルであってもよい。
情報処理装置2のコンピュータプログラム14には、プローブ車両3の信号待ちによる遅れ時間の算出、及び遅れ時間に基づく負荷率の算出など、所定の交通指標の算出処理を処理部11のCPUに実行させるプログラムなどが含まれる。
通信部13は、無線基地局7が自装置に送信したアップリンク情報S1を受信可能であり、自装置で生成されたダウンリンク情報S2を無線基地局7に送信可能である。アップリンク情報S1には、車載装置4が送信元のプローブ情報が含まれる。ダウンリンク情報S2には、処理部11が算出したリンク旅行時間などが含まれる。
なお、通信部13は、公衆通信網8ではなく、専用の通信回線9を介して交通管制センターの中央装置5と接続されていてもよい。
データベース21〜24には、地図データベース21、プローブデータベース22、会員データベース23、及び信号情報データベース24が含まれる。
「交差点データ」は、国内の交差点に付与された交差点IDと、交差点の位置情報とを対応付けたデータである。「リンクデータ」は、国内の道路に対応して付与された特定リンクのリンクIDに対して、次の情報1)〜4)を対応付けたデータよりなる。
情報2)特定リンクの始点に接続するリンクID
情報3)特定リンクの終点に接続するリンクID
情報4)特定リンクのリンクコスト
具体的には、道路地図データ25は、交差点ごとにノードnが設定され、各ノードn間が逆向きの一対の有向リンクlで繋がった有向グラフよりなる。従って、一方通行の道路の場合は、一方向の有向リンクlのみノードnが接続される。
蓄積されるプローブ情報には、少なくとも車両位置とその通過時刻が含まれる。プローブ情報には、車両速度、車両方位、車両の状態情報(停止/走行イベント)などの車両データが含まれていてもよい。プローブ情報のセンシング周期は、プローブ車両3の走行履歴を正確に特定可能な粒度であり、例えば0.5〜1.0秒である。
信号情報データベース24には、各交差点の流入路のサイクル長及び赤時間長を含む信号情報が、交差点ID及びリンクIDごとに蓄積される。
第1制御機6A:中央装置5による遠隔制御(系統制御及び面制御など)の対象ではなく、単独で信号灯色を決定する地点制御(定周期制御など)を行う交通信号制御機
第2制御機6B:中央装置5による遠隔制御(系統制御及び面制御など)の対象である交通信号制御機
中央装置5は、第2制御機6Bの信号情報については、所定の制御周期(例えば1.0〜2.5分)ごとに情報処理装置2に送信する。処理部11は、信号情報データベース24に含まれる第2制御機6Bの信号情報を、受信した信号情報に更新する。
図2に示すように、車載装置4は、処理部31、記憶部32及び通信部33などを備えるコンピュータ装置よりなる。
処理部31は、記憶部32の不揮発性メモリに格納されたコンピュータプログラム34を読み出し、当該プログラム34に従って各種の情報処理を行うCPUを含む演算処理装置よりなる。
車載装置4のコンピュータプログラム34には、プローブ情報のセンシング及び生成、プローブ車両3の経路探索処理、ナビゲーション装置のディスプレイに探索結果を表示するための画像処理などを処理部31のCPUに実行させるプログラムなどが含まれる。
通信部33は、例えばGPS(Global Positioning System )受信機を有する。処理部31は、通信部33が受信するGPSの位置情報に基づいて、自車両の現在位置をほぼリアルタイムにモニタリングしている。測位は、GPSのような全地球航法衛星システムを利用するのが好ましいが、他の方法であってもよい。
記憶部12に所定の記録時間(例えば5分)の分だけ車両データが蓄積されると、通信部33は、蓄積された車両データと自車両の識別情報を含むプローブ情報を生成し、生成したプローブ情報を情報処理装置2宛てにアップリンク送信する。
図2に示すように、中央装置5は、交通管制エリアに含まれる複数の交差点の交通信号制御機6を統括的に制御するサーバコンピュータよりなる。中央装置5は、処理部51、記憶部52及び通信部53などを備える。
処理部51は、記憶部52の不揮発性メモリに格納されたコンピュータプログラム54を読み出し、当該プログラム54に従って各種の情報処理を行うCPUを含む演算処理装置よりなる。
中央装置5のコンピュータプログラム54には、MODERATO、SCOOT及びSCATSのうちの少なくとも1つの遠隔制御(交通順応制御)を行うためのプログラムが含まれる。
信号制御指令は、新たに生成した信号制御パラメータに対応する信号灯器の灯色切り替えタイミングに関する情報であり、遠隔制御の制御周期(例えば1.0〜2.5分)ごとに生成される。
通信部53は、第1及び第2制御機6A,6Bで運用中のサイクル長及び赤時間長を含む信号情報を、情報処理装置2に送信する。第2制御機6Bの信号情報については、遠隔制御の制御周期(例えば1.0〜2.5分)ごとに情報処理装置2に送信される。
図3は、従来の遠隔制御(交通順応制御)の概要を示すフローチャートである。
図3に示すように、従来の遠隔制御には、「交通流の計測」(ステップS1)、「交通指標の算出」(ステップS2)、「信号制御パラメータの算出」(ステップS3)、及び「信号制御パラメータの反映」(ステップS4)が含まれる。
交通流の計測(ステップS1)は、対象交差点の流入路ごとの交通流を計測する処理である。従来の交通流の計測は、車両感知器の感知信号(パルス信号など)に基づいて実測データを算出する処理である。実測データには、交通量Vin、待ち行列台数Qin及び飽和交通流率Sfの実測値が含まれる。なお、Sfは道路構造に基づく設定値でもよい。
MODERATOで用いる交通指標は、負荷率Lrである。負荷率Lrは、1サイクル中に処理できる最大交通量に対する交通需要の比である。SCOOT及びSCATSで用いる交通指標は、現示飽和度Dsである。現示飽和度Dsは、青時間中に処理できる最大交通量に対する到着交通量の比である。
Lr=(Vin+k×Qin)/Sf ……(1)
Ds=Vin×C/(Sf×G) ……(2)
ただし、Vin:交差点への流入交通量(台/秒)
k :重み係数(例えば1.0を用いる)
Qin:待ち行列台数の交通量換算値(台/秒)
Sf :飽和交通流率(台/秒)
G :有効青時間(秒)
C :サイクル長(秒)
中央装置5の処理部51は、ステップS1で得られたVin,Qin,Sfの実測値を式(1)又は(2)に代入し、負荷率Lr及び現示飽和度Dsのうちの少なくとも1つの交通指標を算出する。
ここでは、中央装置5がMODRERATOを採用し、2つの現示のみを含む十字路交差点のスプリット及びサイクル長を算出する場合を想定する。また、現示の番号を「i」(i=1,2)で表し、各現示iの流入路の方向を「j」(j=1,2)で表す。
Lij=(Vij+Qij)/Sij ……(3)
Lri=maxj(Lij) ……(4)
Lrt=Lr1+Lr2 ……(5)
λi=Lri/Lrt ……(6)
C=(a1×K+a2)/(1−a3×Lrt) ……(7)
具体的には、中央装置5の処理部51は、新たな信号制御パラメータから灯色切り替えタイミングを含む信号制御指令を算出し、算出した信号制御指令を第2制御機6Bに送信する。なお、信号制御パラメータから灯色切り替えタイミングを演算可能な第2制御機6Bの場合には、信号制御パラメータをそのまま第2制御機6Bに送信してもよい。
従って、従来の遠隔制御では、制御対象が、車両感知器が設置された交差点の交通信号制御機6に限られるという問題点がある。また、MODRERATOの負荷率や、SCOOT及びSCATSの現示飽和度を用いる限り、遠隔制御には車両感知器が必要であるとの固定観念があった。
従って、式(1)及び(2)に入力する交通量Vin及び待ち行列台数Qinを、飽和交通流率Sfに対する比率を表す変数として定義すれば、Vin,Qin及びSfの真値が不明であっても、負荷率Lr及び現示飽和度Dsを算出可能となる。
Sfで正規化した交通量Vin(=α×Sf)と、Sfで正規化した待ち行列台数Qin(=β×Sf)を採用すれば、Vin,Qin及びSfのそのものの値を決定しなくても、負荷率Lr及び現示飽和度Dsを算出できる。
=(α×Sf+k×β×Sf)/Sf
=α+k×β ……(8)
Ds=Vin×C/(Sf×G)
=α×Sf×C/(Sf×G)
=α×C/G ……(9)
さらに本願発明者は、プローブ情報や交通シミュレータの算出結果を用いれば、上述のαやβを定めることができ、固定観点に反して、車両感知器がなくても負荷率Lr及び現示飽和度Dsから信号制御パラメータを算出し得ることを見出した。
このように、プローブ情報等から求まる正規化データを用いて、信号制御パラメータの算出に用いる交通指標を算出すれば、車両感知器が未設置であっても遠隔制御を実行可能となる。以下、図4を参照して、本実施形態の遠隔制御の概要を説明する。
図4は、本実施形態の遠隔制御(交通順応制御)の概要を示すフローチャートである。
図4に示すように、本実施形態の遠隔制御には、「交通流の計測」(ステップS11)、「交通指標の算出」(ステップS12)、「信号制御パラメータの算出」(ステップS13)、及び「信号制御パラメータの反映」(ステップS14)が含まれる。
中央装置5の処理部51は、ステップS13〜S14の各処理を、同じ制御周期(例えば1.0〜2.5分)ごとに繰り返し実行する。
負荷率Lrの計算式は、前述の式(1)の通りである。現示飽和度Dsの計算式は、前述の式(2)の通りである。
この場合、前述の式(8)及び(9)から明らかな通り、右辺の分子/分母でSfが相殺されるので、Vin,Qin及びSfの値そのものが不明であっても、負荷率Lr及び現示飽和度Dsを算出可能となる。
中央装置5の処理部51は、情報処理装置2から負荷率Lr又は現示飽和度Dsの算出結果を受信すると、受信した算出結果を用いてステップS13,S14の算出処理を実行する。
信号制御パラメータの反映(ステップS14)は、ステップS13で算出した信号制御パラメータを対象交差点の第2制御機6Bに実行させる処理である。ステップ14の処理内容は、図3のステップS4と同様である。
図5は、遠隔制御の対象交差点が単独交差点である場合の、正規化データの算出方法の一例を示す説明図である。図5に含まれる変数等の意味は、次の通りである。
なお、「単独交差点」とは、遠隔制御の対象交差点であって、他の交差点とは独立して単独で制御対象とされる交差点のことである。
L :リンク長(m)
Tt :プローブ車両の平均旅行時間(秒)
Ve :想定速度(例えば規制速度)(km/時)
J1 :対象交差点の上流側の交差点
J2 :遠隔制御の対象交差点(単独交差点)
Vin={1−R2/(2×dav×C)}×Sf ……(10)
If R/2<dav (過飽和の場合)
Vin=(1−R/C)×Sf
Qin={(dav−R/2)/R}×(1−R/C)×Sf ……(11)
以下、図5〜図7を参照しつつ、式(10)及び式(11)の成立根拠を説明する。
図5下段のグラフは、複数の車両が交差点J1,J2間のリンクを通行した場合の走行軌跡を表すグラフである。グラフの横軸は交差点J1からの距離であり、グラフの縦軸は旅行時間である。
複数のプローブ車両3の平均旅行時間Ttには、上記の車両1台当たりの遅れ時間davが含まれると見なすことができる。
dav=Tt−{L/(Ve/3.6)} ……(12)
そして、処理部11は、抽出した複数のプローブ情報の位置及び時刻に基づいて、プローブ車両3の平均旅行時間Ttを算出し、算出したTtを式(12)に代入して遅れ時間davを求める。
また、信号待ち以外の停止時間が特定可能なプローブ情報(例えば、駐車時間を含むプローブ情報)の場合には、その停止時間を考慮して平均旅行時間Ttを算出することが好ましい。
図6は、非飽和時における交差点J2の交通状況と、Sfで正規化された交通量Vinの導出に必要な関係式を示す説明図である。
図6の例では、交差点J2手前の停止車両は、停止線の直前の同じ位置に重なって停止すると仮定する(垂直車列イメージ)。また、図6において、「D」は1サイクル中の総遅れ時間(秒)、「Gc」は、青開始時点を原点とする時刻(秒)であり、最後尾車両が交差点J2の停止線を通過する時刻を表す。
Gc=Vin×R/(Sf−Vin) ……(13)
D=0.5×{(R+Gc)×R×Vin} ……(14)
dav=D/(C×Vin)=0.5×{(R+Gc)×R}/C ……(15)
式(13)のGcを式(15)に代入してVinについて解けば、交差点J2が非飽和である場合の、正規化交通量Vinの算出式は、前述の式(10)となる。
図7は、過飽和時における交差点J2の交通状況の一例を示す説明図である。
図7に示すように、信号2回待ち以上の車両が含まれる過飽和状態を表すモデルとして、走行と停止のみの単純なモデルを想定する。この場合、2回目以降の信号待ち停止において、1回当たりの停止時間は赤時間Rと等しくなる。
図7のパターン2は、次回のサイクルで待ち行列が捌けた場合(1サイクル待ち)の交通状況を示し、図7のパターン3は、次々回のサイクルで待ち行列が捌けた場合(2サイクル待ち)の交通状況を示す。
パターン2では、dav=1.5R、Qin=(1−R/C)×Sfとなる。
パターン3では、dav=2.5R、Qin=2×(1−R/C)×Sfとなる。
従って、交差点J2が過飽和である場合の、正規化交通量Vin及び正規化待ち行列Qinの算出式は、前述の式(11)となる。
図8は、遠隔制御の対象交差点が系統交差点である場合の、正規化データの算出方法の一例を示す説明図である。図8に含まれる変数等の意味は、次の通りである。
なお、「系統交差点」とは、系統制御が行われる道路区間に含まれる複数の交差点のことである。図8の例では、4つの交差点Ji(i=1〜4)を系統交差点とする。
dsat:系統区間の交差点の飽和/非飽和を判定するための閾値である。
Ri :交差点iの赤時間
Li :交差点iと交差点i+1の間のリンク長(m)
Ofi:RiとRi+1のオフセット(秒)
Ve :想定速度(例えば規制速度)(km/時)
J2 :系統区間の中間交差点
J3 :系統区間の中間交差点
J4 :系統区間の最下流の交差点
そこで、系統区間の正規化データについては、系統区間のオフセット調整ツールを有する交通シミュレータ15を用いて、系統区間における正規化交通量Vinと遅れ時間davとの関係をシミュレートする。情報処理装置2のコンピュータプログラム14には、処理部11を上記の交通シミュレータ15として機能させるプログラムも含まれる。
また、交通シミュレータ15は、算出結果を纏めた対応テーブル16を生成し、生成したテーブル16を記憶部12に一時的に記憶させる。
Tr=系統区間の平均旅行時間−{ΣLi/(Ve/3.6)}
例えば、プローブ情報から求めた遅れ時間Tr(<dsat)が114秒であるとすると、これに対応する正規化交通量Vinは、0.3×Sfと0.4×Sfとの間の約3.5×Sfとなる。
If dav≦dsat (非飽和の場合)
Vin=対応テーブル相当の交通量(例えば3.5×Sf)
If dsat<dav (過飽和の場合)
Vin=(1−R/C)×Sf
Qin={(dav−dsat)/R}×(1−R/C)×Sf ……(16)
図9は、情報処理装置2の処理部11が実行する、正規化データの算出処理の一例を示すフローチャートである。情報処理装置2の処理部11は、図9の処理を対象交差点に含まれる流入路ごとに実行する。
図9に示すように、情報処理装置2の処理部11は、まず、車両1台当たりの遅れ時間davと、対象交差点のサイクル長C及び赤時間Rを取得する(ステップST1)。
次に、処理部11は、対象交差点が系統交差点であるか否かを判定する(ステップST2)。ステップST2の判定結果が否定的である場合(単独交差点の場合)は、処理部11は、dav≦R/2であるか否かを判定する(ステップST3)。
ステップST3の判定結果が否定的である場合(過飽和の場合)は、処理部11は、前述の式(11)により、Sfで正規化した交通量VinとSfで正規化した待ち行列台数Qinを算出する(ステップST5)。
具体的には、処理部11は、現時点の交差点JiのRi,Li及びOfiを中央装置5から受信し、Veの設定値を記憶部12から読み出す。
Ri :上流交差点iの赤時間(秒)
Li :各交差点間のリンク長(m)
Ofi:交差点間の青開始時間の差を表すオフセット(秒又は%)
Ve :車両の走行速度(規制又は設計値)(km/時)
dsat:系統交差点群の飽和/非飽和の判定閾値(秒)
次に、処理部11は、交通シミュレータ15が計算した判定閾値dsatを用いて、dav≦dsatであるか否かを判定する(ステップST8)。
ステップ8の判定結果が否定的である場合(過飽和の場合)は、処理部11は、前述の式(16)により、Sfで正規化した交通量Vinと待ち行列台数Qinを算出する(ステップST10)。
本実施形態によれば、情報処理装置2の処理部11が、Sfで正規化した交通量Vin及び待ち行列台数Qinを算出し、その算出結果を用いて遠隔制御(交通順応制御)に用いる交通指標(負荷率Lr又は現示飽和度Ds)を算出するので、交通量Vinと待ち行列台数Qinの実測値がなくても、遠隔制御に用いる交通指標を算出することができる。
上述の実施形態では、Sfに対する比率を表す正規化データとして、交通量Vin及び待ち行列台数Qinを採用しているが、Sfの正規化データとして、交通需要Dm(台/秒)を採用することにしてもよい。
図10に示すように、非飽和時の交通需要Dmの推定式は、次の式(17)よりなり、過飽和時の交通需要Dmの推定式は、次の式(18)よりなる。
Dm=Vin/C={1−R2/(2×dav×C)}×Sf/C ……(17)
Dm={Qin(t)−Qin(t-1)+(1−R/C)×Sf}/C ……(18)
式(17)及び(18)に基づく交通需要Dmを算出することにより、信号制御パラメータを変更した場合の交通需要Dmの改善効果を、従来通りの手法で予想できるようになる。ただし、予想可能な物理量は、交通需要Dmの絶対量(台/秒)ではなく、Sfに対する相対量(比率)である。
上述の実施形態において、プローブ車両3の台数が少ないと、プローブ車両3の平均旅行時間Ttが余り正確でなく、信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間dav(式(12))の算出結果が不正確になる可能性がある。
図11は、遅れ時間davの誤差を考慮した飽和状態の判定方法と、交通量の算出式を示の一例を示す説明図である。
もっとも、想定誤差の小さい(精度の高い)方向のスプリットが削られ、不利になる可能性があるので、例えば、マージンeはすべての流入方向のうちの最大値を採用するなど、特定の方向に有利又は不利が生じないようにすることが好ましい。
例えば、上述の実施形態において、情報処理装置2が交通流の計測(図4のステップS11)までを実行し、交通指標の算出以降の処理(図4のステップS12〜S14)を中央装置5が実行してもよい。
dav=Tt−{L/(Ve/3.6)}−dex
2 情報処理装置(交通指標の算出装置)
3 プローブ車両
4 車載装置
5 中央装置
6 交通信号制御機
6A 第1制御機
6B 第2制御機
3 プローブ車両
7 無線基地局
8 公衆通信網
9 通信回線
10 サーバコンピュータ
11 処理部(第1算出部、第2算出部)
12 記憶部
13 通信部
14 コンピュータプログラム
15 交通シミュレータ
16 対応テーブル
21 地図データベース
22 プローブデータベース
23 会員データベース
24 信号情報データベース
25 道路地図データ
31 処理部
32 記憶部
33 通信部
34 コンピュータプログラム
51 処理部
52 記憶部
53 通信部
54 コンピュータプログラム
中央装置5の処理部51は、情報処理装置2から負荷率Lr又は現示飽和度Dsの算出結果を受信すると、受信した算出結果を用いてステップS13,S14の算出処理を実行する。
信号制御パラメータの反映(ステップS14)は、ステップS13で算出した信号制御パラメータを対象交差点の第2制御機6Bに実行させる処理である。ステップS14の処理内容は、図3のステップS4と同様である。
Tr=系統区間の平均旅行時間−{ΣLi/(Ve/3.6)}
例えば、プローブ情報から求めた遅れ時間Tr(<dsat)が114秒であるとすると、これに対応する正規化交通量Vinは、0.3×Sfと0.4×Sfとの間の約0.35×Sfとなる。
If dav≦dsat (非飽和の場合)
Vin=対応テーブル相当の交通量(例えば0.35×Sf)
具体的には、処理部11は、現時点の交差点JiのRi,Li及びOfiを中央装置5から受信し、Veの設定値を記憶部12から読み出す。
ステップST8の判定結果が否定的である場合(過飽和の場合)は、処理部11は、前述の式(16)により、Sfで正規化した交通量Vinと待ち行列台数Qinを算出する(ステップST10)。
Claims (11)
- 信号制御パラメータの算出に必要となる交通指標を算出する装置であって、
対象交差点の流入路の交通変数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化データを算出する第1算出部と、
前記正規化データを用いて、前記流入路の交通変数が分子に含まれ前記飽和交通流率が分母に含まれる式で定義される前記交通指標を算出する第2算出部と、を備える交通指標の算出装置。 - 前記第1算出部は、
車両のプローブ情報から求めた信号待ちによる遅れ時間を用いて、前記正規化データを算出する請求項1に記載の交通指標の算出装置。 - 前記第1算出部は、
前記遅れ時間と、前記対象交差点のサイクル長及び赤時間を用いて、前記正規化データを算出する請求項2に記載の交通指標の算出装置。 - 前記対象交差点が単独交差点であり、前記流入路が非飽和である場合には、
前記第1算出部は、
プローブ車両の平均旅行時間から求めた信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間と、前記単独交差点のサイクル長及び赤時間とを用いて、前記流入路の交通量を飽和交通流率に対する比率で表した正規化交通量を算出する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の交通指標の算出装置。 - 前記対象交差点が単独交差点であり、前記流入路が過飽和である場合には、
前記第1算出部は、
プローブ車両の平均旅行時間から求めた信号待ちによる車両1台当たりの遅れ時間と、前記単独交差点のサイクル長及び赤時間とを用いて、前記正規化交通量と前記流入路の待ち行列台数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化待ち行列台数を算出する請求項4に記載の交通指標の算出装置。 - 前記対象交差点が系統交差点である場合には、
前記第1算出部は、
交通シミュレータに実行させた系統区間の交通流のシミュレート結果をさらに用いて、前記系統区間に含まれる交差点ごとに、前記正規化交通量を算出する請求項4又は請求項5に記載の交通指標の算出装置。 - 前記対象交差点の前記流入路が過飽和である場合には、
前記第1算出部は、
前記遅れ時間に対して前記シミュレート結果から求めた閾値と、前記対象交差点のサイクル長及び赤時間とを用いて、前記正規化交通量と前記流入路の待ち行列台数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化待ち行列台数を算出する請求項6に記載の交通指標の算出装置。 - 前記流入路の交通変数は、
当該流入路の流入交通量及び待ち行列台数、或いは、当該流入路の流入交通量である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の交通指標の算出装置。 - 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の算出装置と、
前記交通指標から求めた前記信号制御パラメータにより、前記対象交差点の交通信号制御機を動作させる遠隔制御を行う中央装置と、を備える交通信号制御システム。 - 信号制御パラメータの算出に必要となる交通指標を算出する方法であって、
対象交差点の流入路の交通変数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化データを算出する第1ステップと、
前記正規化データを用いて、前記流入路の交通変数が分子に含まれ前記飽和交通流率が分母に含まれる式で定義される前記交通指標を算出する第2ステップと、を含む交通指標の算出方法。 - 信号制御パラメータの算出に必要となる交通指標を算出する装置として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
対象交差点の流入路の交通変数を飽和交通流率に対する比率で表した正規化データを算出する第1算出部、及び、
前記正規化データを用いて、前記流入路の交通変数が分子に含まれ前記飽和交通流率が分母に含まれる式で定義される前記交通指標を算出する第2算出部、として機能させるためのコンピュータプログラム。
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