JPWO2020009064A1 - 積層体および合わせガラス - Google Patents

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Abstract

本発明は、剛性、遮音性および断熱性のバランスを高いレベルで実現した合わせガラスを形成可能な積層体、および該積層体からなる中間膜を備える合わせガラスを提供することを目的とする。本発明の積層体は、樹脂組成物(X)からなる少なくとも1層以上の樹脂層(X)と、樹脂組成物(Y)からなる少なくとも2層以上の樹脂層(Y)とを有する積層体(Z)であって、(a)前記樹脂層(X)が少なくとも2つの前記樹脂層(Y)の間に積層されており、(b)前記樹脂層(X)の動的粘弾性特性におけるtanδが−20℃以上20℃以下の温度範囲において極大値を有し、(c)前記積層体(Z)の動的粘弾性特性における貯蔵弾性率が−20℃以上40℃以下の温度範囲において1.0×107Pa以上5.0×108Pa以下である、ことを特徴とする。

Description

本発明は、積層体および合わせガラスに関し、特に、特定の動的粘弾性特性を有する積層体、および該積層体からなる中間膜を備える合わせガラスに関する。
合わせガラスは、衝撃を受けて破損した場合でも、衝突物の貫通やガラス破片の飛散等を防止できるため、安全性に優れている。そのため、合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶および建築物等に広く使用されている。合わせガラスは、複数のガラス板を、接着性を有する樹脂からなる中間膜を挟んで接着一体化することにより製造される。
寒冷地では、室内や車内の暖房効果を高めるために、窓ガラスに断熱性を付与することが有用である。例えば、合わせガラスの中間膜として一般的に使用されているポリビニルブチラール(以下、「PVB」ということがある。)や、合わせガラスの耐貫通性を高めるためにシート状にしてガラス板の間に介在させられるエチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、ポリカーボネートおよびポリエチレンテレフタレート等の樹脂は、ガラスに比べて熱伝導率が小さい。そのため、これらの樹脂からなる中間膜やシートを使用した合わせガラスは、同じ厚さのガラス板に比べると、合わせガラス全体としての熱伝導率が小さくなり、断熱性が高くなる。
特許文献1には、PVBからなる中間膜の厚さを厚くして熱伝導率を小さくした合わせガラスが開示されている。しかし、ガラスの厚さを変えずに中間膜の厚さを厚くした場合には、合わせガラスの剛性は維持できるものの、合わせガラスの厚さが厚くなり、また、質量が増加するという不具合が生じる。他方、中間膜の厚さを厚くしつつガラスの厚さを薄くすることで合わせガラスの厚さや質量を維持しようとした場合には、PVBからなる中間膜の弾性率が小さいために、合わせガラスの剛性が維持できなくなるという、相反する不具合があった。
特許文献2には、ガラス/PVB/ポリカーボネート/PVB/ガラスから成る、軽量で熱伝導率の小さい合わせガラスが開示されている。しかし、ガラスの厚さを薄くして単位面積当たりの質量を低減した場合には、ポリカーボネートの弾性率はガラスよりも小さいため、上記と同様に合わせガラスの剛性が低下するという不具合があった。また、合わせガラスの剛性を維持しようとした場合は、合わせガラス全体の厚さを増加する必要があり、軽量性が維持できなくなるという不具合があった。
特許文献3には、PVBからなる中間膜に替えて、アルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物を中間膜に使用した合わせガラスが開示されている。しかし、特許文献3には、合わせガラスの剛性を維持しつつ熱伝導率を低下させて断熱性を改善する技術に関しては記載されていない。
特許文献4には、アルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物を中間膜に使用し、更に中空粒子を含む断熱層をガラス間に1層以上挟持した合わせガラスが開示されている。しかし、特許文献4に記載されている中空粒子は、例えば、コロイド状炭酸カルシウムの表面にシリコンアルコキシドの加水分解反応により生成するシリカを析出させた後、酸処理により炭酸カルシウムを溶解させて製造するものであり、工業的な入手は容易ではない。
また、近年、自動車等の快適性を高めるために、遮音性を向上させた合わせガラスが使用されるようになっている。ガラスはダンピング性能が低い材料である。例えば、厚さ3mm程度のガラスを貼り合わせた合わせガラスでは、周波数2000Hz〜3000Hz付近の中高音域において、コインシデンス効果によって音響透過損失量が低下し、遮音性が低下する。このため、ダンピング性能に優れる樹脂中間膜にガラスを貼り合わせることにより、コインシデンス効果を低減して、遮音性能を向上させる方法が知られている。
遮音性能を向上させた合わせガラスとしては、例えば、(a)樹脂中間膜に2種のポリビニルアセタールに可塑剤を配合した積層中間膜を使用した合わせガラス(例えば、特許文献5〜7参照)、(b)ポリビニルアセタール系樹脂に多量の可塑剤を配合した遮音層の両側にポリビニルアセタール系樹脂等からなる接着性樹脂層を積層した中間膜を使用した合わせガラス(例えば、特許文献8参照)、(c)スチレン・ジエンブロック共重合体を主成分とした遮音層の両側にポリビニルアセタール系樹脂等からなる接着性樹脂層を積層した中間膜を使用した合わせガラス(特許文献9、10)等が挙げられる。
しかし、(b)ポリビニルアセタール系樹脂に多量の可塑剤を配合した遮音層の両面にポリビニルアセタール系樹脂等からなる接着性樹脂層を積層した中間膜や、(c)スチレン・ジエンブロック共重合体を主成分とした遮音層の両面にポリビニルアセタール系樹脂等からなる接着性樹脂層を積層した中間膜は弾性率が小さくなるために、中間膜の厚さを厚くして熱伝導率の小さい合わせガラスを製造する場合は、合わせガラスの剛性が維持できなくなるという不具合があった。
特許文献11〜13には、ブロック共重合体水素化物を主成分とする熱可塑性エラストマー組成物を遮音層とし、可塑剤を含まない、若しくは、少ない量の可塑剤を含む貯蔵弾性が高められたポリビニルアセタール系樹脂を接着剤層に使用した中間膜が開示されている。この中間膜を使用した合わせガラスは遮音性と曲げ強度に優れていることが開示されているが、ここで示されている遮音層を含む中間膜は貯蔵弾性率が高いとはいえず、中間膜の厚さを厚くして、合わせガラスの断熱性を向上させた場合に、合わせガラスの剛性が維持できないおそれがあった。
特許文献14には、ブロック共重合体水素化物を中間膜材料に使用して遮音性に優れた合わせガラスが得られることが開示されている。しかし、遮音性を付与した合わせガラスの剛性を維持し、且つ、断熱性を高めるための技術に関する示唆はない。特許文献14の実施例では、厚さ1.2mmの2枚のガラスを、厚さ0.76mmの中間膜で貼り合わせた遮音性に優れた合わせガラスが開示され、合わせガラスの熱伝導率は小さいことが予測されるが、貯蔵弾性率の低いブロック共重合体水素化物からなる遮音層の厚さが厚く合わせガラスの剛性が維持できないおそれがあった。
特開2006−137648号公報 特開平6−915号公報 国際公開第2013/176258号 特開2017−81775号公報 特開平4−254444号公報 特開平6−926号公報 特開平9−156967号公報 特開2005−144753号公報 特開2007−91491号公報 特開2011−240676号公報 特開2016−107632号公報 特開2016−108227号公報 国際公開第2016/076338号 国際公開第2016/104740号
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、剛性、遮音性および断熱性のバランスを高いレベルで実現した合わせガラスを形成可能な積層体、および該積層体からなる中間膜を備える合わせガラスを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定のブロック共重合体水素化物が樹脂の中でも小さい熱伝導率を有していることを見出した。さらに、本発明者らは、特定のブロック共重合体水素化物(D)を主成分とする樹脂組成物(X)からなる少なくとも1層以上の樹脂層(X)(遮音層)と、特定のブロック共重合体水素化物(H)および/または該特定のブロック共重合体水素化物(H)にアルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物(J)を主成分とする樹脂組成物(Y)からなる少なくとも2層以上の樹脂層(Y)(弾性層)とを有する積層体(Z)からなる中間膜を使用することで、剛性、遮音性および断熱性のバランスを高いレベルで実現した合わせガラスを形成可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
なお、本明細書において、「主成分として含有」は、「50質量%超含有」を意味する。
かくして本発明によれば、下記(1)〜(7)の積層体と、下記(8)および(9)の合わせガラスが提供される。
(1)樹脂組成物(X)からなる少なくとも1層以上の樹脂層(X)と、樹脂組成物(Y)からなる少なくとも2層以上の樹脂層(Y)とを有する積層体(Z)であって、(a)前記樹脂層(X)が少なくとも2つの前記樹脂層(Y)の間に積層されており、(b)前記樹脂層(X)の動的粘弾性特性におけるtanδが−20℃以上20℃以下の温度範囲において極大値を有し、(c)前記積層体(Z)の動的粘弾性特性における貯蔵弾性率が−20℃以上40℃以下の温度範囲において1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下である、積層体。(但し、前記樹脂層(X)の動的粘弾性特性におけるtanδおよび前記積層体(Z)の動的粘弾性特性における貯蔵弾性率は、JIS K7244−2法(ねじり振子法)に基づき、角周波数:1rad/s、測定温度範囲:−100℃以上100℃以下、昇温速度:5℃/minの条件で粘弾性スペクトルを測定して求めた値である。)
(2)前記樹脂組成物(X)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と鎖状共役ジエン化合物(直鎖共役ジエン化合物、分岐鎖共役ジエン化合物)に由来する構造単位とを含有するブロック共重合体(C)を水素化してなるブロック共重合体水素化物(D)を主成分として含み、前記ブロック共重合体(C)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位〔a〕を主成分として含有する、少なくとも2つの重合体ブロック(A)と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位〔b〕を主成分として含有する、少なくとも1つの重合体ブロック(B)とからなり、前記重合体ブロック(B)中の前記鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位〔b〕が、1,2−付加重合および3,4−付加重合に由来する構造単位を含み、前記構造単位〔a〕が前記ブロック共重合体(C)に占める質量分率をwAとし、前記構造単位〔b〕が前記ブロック共重合体(C)に占める質量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA/wB)が10/90以上35/65以下であり、前記ブロック共重合体水素化物(D)は、前記ブロック共重合体(C)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合の95%以上を水素化してなる、(1)に記載の積層体。
(3)前記重合体ブロック(B)中の前記構造単位〔b〕が、1,2−付加重合および3,4−付加重合に由来する構造単位を重合体ブロック(B)中の構造単位[b]全体に対して、40質量%以上80質量%以下含む、(2)に記載の積層体。
(4)前記樹脂組成物(Y)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位とを含有するブロック共重合体(G)を水素化してなるブロック共重合体水素化物(H)、および/または、該ブロック共重合体水素化物(H)にアルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物(J)を主成分として含み、前記ブロック共重合体(G)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位〔e〕を主成分として含有する、少なくとも2つの重合体ブロック(E)と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位〔f〕を主成分として含有する、少なくとも1つの重合体ブロック(F)とからなり、前記構造単位〔e〕が前記ブロック共重合体(G)に占める質量分率をwEとし、前記構造単位〔f〕が前記ブロック共重合体(G)に占める質量分率をwFとしたときに、wEとwFとの比(wE/wF)が40/60以上60/40以下であり、前記ブロック共重合体水素化物(H)は、前記ブロック共重合体(G)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合の95%以上を水素化してなる、(1)から(3)のいずれかに記載の積層体。
(5)前記樹脂層(X)の厚さが0.02mm以上0.6mm以下である、(1)から(4)のいずれかに記載の積層体。
(6)前記樹脂層(Y)の厚さが0.05mm以上1.0mm以下である、(1)から(5)のいずれかに記載の積層体。
(7)前記積層体(Z)の厚さが0.2mm以上2mm以下である、(1)から(6)のいずれかに記載の積層体。
(8)2枚のガラス板と、該2枚のガラス板の間に配置される、(1)〜(7)のいずれかに記載の積層体(Z)からなる中間膜とを有する合わせガラスであって、前記合わせガラスの厚み方向に対する熱伝導率が、25℃において0.5W/(m・K)以下である、合わせガラス。
(9)前記合わせガラスの曲げ弾性率が、25℃において11GPa以上である、(8)に記載の合わせガラス。
本発明によれば、剛性、遮音性および断熱性のバランスを高いレベルで実現した合わせガラスを形成可能な積層体、および該積層体からなる中間膜を備える合わせガラスが提供される。
本発明の積層体の実施形態の一例を示す図である。 本発明の合わせガラスの実施形態の一例を示す図である。 本発明の積層体の実施形態の他の一例を示す図である。 本発明の合わせガラスの実施形態の他の一例を示す図である。
以下、本発明の積層体および合わせガラスについて、(a)樹脂層(X)、(b)樹脂層(Y)、(c)積層体(Z)、(d)ガラス板、(e)合わせガラスに項分けして、詳細に説明する。
(a)樹脂層(X)
本発明における樹脂層(X)は、樹脂組成物(X)からなる層であり、動的粘弾性特性におけるtanδが−20℃以上20℃以下の温度範囲において極大値を有する層である。
少なくとも1層以上の樹脂層(X)を有する積層体(Z)を2枚のガラス板の間に配置することにより、遮音性が付与された合わせガラスが形成可能である。
樹脂層(X)の動的粘弾性特性におけるtanδの極大値が存在する温度範囲としては、−20℃以上20℃以下である限り、特に制限はないが、−15℃以上であることが好ましく、−10℃以上であることがより好ましく、−9℃以上であることが特に好ましく、また、15℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましい。
樹脂層(X)の動的粘弾性特性におけるtanδの極大値を−20℃以上20℃以下に調整する方法としては、例えば、(i)20℃以上の温度領域にガラス転移温度を有する樹脂に可塑剤や軟化剤等の添加剤を配合する方法、(ii)−20℃以上20℃以下の温度領域にガラス転移温度を有する樹脂を用いる方法、などがある。これらの中でも、(ii)−20℃以上20℃以下の温度領域にガラス転移温度を有する樹脂を用いることが、可塑剤や軟化剤等の添加剤を配合する必要がなく、可塑剤や軟化剤等の添加剤が樹脂組成物から溶出してtanδの極大値の温度が変動することを防止することができるので好ましい。また、−20℃以上20℃以下の温度領域にガラス転移温度を有する重合体ブロックと、より高温領域にガラス転移温度を有する重合体ブロックとからなるブロック共重合体を樹脂として使用することが、合わせガラスにおける中間膜としての耐熱性が維持し易くなる点で好ましい。
<樹脂組成物(X)>
樹脂組成物(X)は、樹脂(x)を主成分として含んでなり、必要に応じて、その他の成分を含んでなる。
<<樹脂(x)>>
樹脂(x)は、耐光性および遮音性の観点から、少なくとも2つの所定の重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの所定の重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体(C)を水素化してなるブロック共重合体水素化物(D)であることが好ましい。
樹脂(x)の具体例としては、例えば、ポリスチレン・ジエン系ブロック共重合体、ポリオレフィン系ブロック共重合体、ポリウレタン系ブロック共重合体、ポリエステル系ブロック共重合体、ポリアミド系ブロック共重合体、アクリル系ブロック共重合体、ポリビニルアセタール系重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、および、それらの水素化重合体、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、透明性の観点から、芳香族ビニル化合物および鎖状共役ジエン化合物等からなるポリスチレン系ブロック共重合体の水素化物、ポリオレフィン系ブロック共重合体の水素化物、アクリル系ブロック共重合体の水素化物が好ましい。
−重合体ブロック(A)−
重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位〔a〕を主成分として含有する。
−−構造単位〔a〕−−
芳香族ビニル化合物に由来する構造単位〔a〕を形成し得る芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン;α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン等の、置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有するスチレン類;4−モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン等の、置換基としてハロゲン原子を有するスチレン類;4−メトキシスチレン等の、置換基として炭素数1〜6のアルコキシ基を有するスチレン類;4−フェニルスチレン等の、置換基としてアリール基を有するスチレン類;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類;などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、吸湿性の観点から、スチレン、置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有するスチレン類等の、極性基を含有しない芳香族ビニル化合物が好ましく、工業的な入手の容易さの観点から、スチレンがより好ましい。
−−その他の構造単位−−
なお、重合体ブロック(A)は、構造単位〔a〕以外のその他の構造単位を含んでいてもよい。そのようなその他の構造単位は、例えば、後述する鎖状共役ジエン化合物(直鎖共役ジエン化合物、分岐鎖共役ジエン化合物)に由来する構造単位〔b〕であってもよい。また、その他の構成単位を形成し得る化合物としては、鎖状ビニル化合物や環状ビニル化合物が挙げられ、より具体的には、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、またはハロゲン基を有していてもよいビニル化合物、不飽和の環状酸無水物、不飽和イミド化合物、などが挙げられる。これらの中でも、吸湿性の観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等の炭素数2〜20の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルネン等の環構造を有する炭素数5〜20の環状オレフィン;などの、極性基を含有しないものが好ましく、炭素数2〜10の鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン、プロピレンがより好ましい。
−−組成等−−
そして、重合体ブロック(A)中の構造単位〔a〕の含有割合は、重合体ブロック(A)中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。重合体ブロック(A)中の構造単位〔a〕の含有割合が90質量%以上であれば、樹脂層(X)の耐熱性を十分に高く確保できる。
また、重合体ブロック(A)中の、構造単位[a]以外のその他の構造単位の含有割合は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
重合体ブロック(A)中のその他の構造単位の含有割合を上記範囲内にすることで、樹脂層(X)の耐熱性が低下することを防止することができる。
−重合体ブロック(B)−
重合体ブロック(B)は、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位[b]を主成分として含有する。
−−構造単位[b]−−
鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位[b]を形成し得る鎖状共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、(i)吸湿性の観点から、極性基を含有しないもの(1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン)が好ましく、(ii)また、工業的入手の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンがより好ましく、(iii)さらに、ブロック共重合体水素化物(D)のソフトセグメントに由来するガラス転移温度を−20℃以上20℃以下の範囲への制御し易さの観点から、イソプレンが特に好ましい。
−−その他の構造単位−−
なお、重合体ブロック(B)は、構造単位[b]以外のその他の構造単位を含んでいてもよい。そのようなその他の構造単位は、例えば、上述した芳香族ビニル化合物に由来する構造単位〔a〕であってもよい。また、その他の構成単位を形成し得る化合物として、「重合ブロック(A)」の項で上述した鎖状オレフィンおよび環状オレフィンを用いることもできる。
−−組成等−−
そして、重合体ブロック(B)中の構造単位[b]の含有割合は、重合体ブロック(B)中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。重合体ブロック(B)中の構造単位〔b〕の含有割合が90質量%以上であれば、樹脂層(X)の粘弾性特性におけるtanδが−20℃以上20℃以下の温度領域に極大値を有するように制御し易くできる。
また、重合体ブロック(B)中の、構造単位[b]以外のその他の構造単位の含有割合は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
重合体ブロック(B)中のその他の構造単位の含有割合を上記範囲内にすることで、樹脂層(X)の粘弾性特性におけるtanδが−20℃以上20℃以下の温度領域に極大値を有するように制御し易くすることができる。
重合体ブロック(B)中の構造単位[b]が、1,2−付加重合および3,4−付加重合に由来する構造単位を含み、残部は1,4−付加重合に由来する構造単位を含む。鎖状共役ジエン化合物の1,2−付加重合および3,4−付加重合に由来する構造単位の割合は、重合体ブロック(B)中の構造単位[b]全体に対して、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましく、また、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることが特に好ましい。
重合体ブロック(B)中の構造単位[b]全体に対する、鎖状共役ジエン化合物の1,2−付加重合および3,4−付加重合に由来する構造単位の含有割合を上記範囲内にすることにより、樹脂層(X)の粘弾性特性におけるtanδが−20℃以上20℃以下の温度領域に極大値を確実に有するようにすることができる。
ここで、上述した1,2−付加重合に由来する構造単位および/または3,4−付加重合に由来する構造単位を含有する重合体ブロックは、鎖状共役ジエン化合物と、必要に応じて、芳香族ビニル化合物、鎖状オレフィン、環状オレフィン等のその他の構造単位を形成し得る化合物とを、電子供与原子を有する特定の化合物(以下、「ランダム化剤」と称することがある。)の存在下で重合させることにより得ることができる。1,2−付加重合に由来する構造単位と3,4−付加重合に由来する構造単位との含有量の合計は、ランダム化剤の種類と添加量によって制御することができる。
ランダム化剤として使用し得る電子供与原子(例えば、酸素(O)、窒素(N))を有する化合物としては、エーテル化合物、アミン化合物、ホスフィン化合物、などが挙げられる。これらの中でも、重合体ブロックの分子量分布を小さくすることができ、その水素添加反応を阻害し難いという観点から、エーテル化合物が好ましい。
ランダム化剤の具体例としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジ(2−テトラヒドロフリル)メタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、テトラメチルエチレンジアミン、などが挙げられる。中でも、1,2−付加重合に由来する構造単位および/または3,4−付加重合に由来する構造単位の質量分率を制御し、得られる樹脂シートの遮音性を更に高める観点から、エチレングリコールジブチルエーテルを用いることが好ましい。
ブロック共重合体(C)の調製時におけるこれらのランダム化剤の使用量は、鎖状共役ジエン化合物100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましく、10質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
−ブロック共重合体(C)−
ブロック共重合体水素化物(D)の前駆体であるブロック共重合体(C)は、少なくとも2つの重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの重合体ブロック(B)を含有する高分子である。
ブロック共重合体(C)中の重合体ブロック(A)の数は、2つ以上である限り特に制限はないが、通常3個以下、好ましくは2個であり、ブロック共重合体(C)中の重合体ブロック(B)の数は、1つ以上である限り特に制限はないが、通常2個以下、好ましくは1個である。
ブロック共重合体(C)が重合体ブロック(A)を複数有する場合、重合体ブロック(A)中の構造単位の組成及びブロック長は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
ブロック共重合体(C)に重合体ブロック(B)を複数有する場合、重合体ブロック(B)中の構造単位の組成及びブロック長は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
ブロック共重合体(C)のブロックの形態は、特に限定されず、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでもよいが、機械的強度に優れる点で、鎖状型ブロックであることが好ましい。ブロック共重合体(C)の最も好ましい形態は、重合体ブロック(B)の両端に重合体ブロック(A)が結合したトリブロック共重合体(A−B−A)である。
−−質量分率−−
ここで、構造単位〔a〕がブロック共重合体(C)に占める質量分率をwAとし、構造単位〔b〕がブロック共重合体(C)に占める質量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA/wB)としては、10/90以上35/65以下であることが好ましく、12/88以上であることがより好ましく、15/85以上であることがさらに好ましく、18/82以上であることが特に好ましく、30/70以下であることがより好ましく、25/75以下であることがさらに好ましく、20/80以下であることが特に好ましい。
wAとwBとの比(wA/wB)を上限値以下にすることで、樹脂層(X)の遮音性能が低下することを防ぐことができる。一方、wAとwBとの比(wA/wB)を下限値以上にすることで、樹脂層(X)の耐熱性が低下することを防止することができる。
ブロック共重合体(C)の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、30,000以上であることが好ましく、40,000以上であることがより好ましく、50,000以上であることが特に好ましく、200,000以下であることが好ましく、170,000以下であることがより好ましく、150,000以下であることが特に好ましい。
また、ブロック共重合体(C)の分子量分布(Mw/Mn)は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.8以下であることが特に好ましい。
MwおよびMw/Mnを上記範囲内にすることで、ブロック共重合体(C)を水素化して得られるブロック共重合体水素化物(D)を主成分とする樹脂組成物(X)に十分な溶融成形性と耐熱性とを付与することができる。
ブロック共重合体(C)の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができ、例えば、国際公開第2003/018656号、国際公開第2011/096389号等に記載の方法が挙げられる。
−ブロック共重合体水素化物(D)−
ブロック共重合体水素化物(D)は、ブロック共重合体(C)における少なくとも鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合の95%以上を水素化してなる高分子である。
ブロック共重合体水素化物(D)は、ブロック共重合体(C)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合のみを選択的に水素化した高分子であってもよく、ブロック共重合体(C)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに、ブロック共重合体(C)における芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化した高分子であってもよく、また、これらの混合物であってもよい。
ブロック共重合体(C)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合のみを選択的に水素化する場合、ブロック共重合体水素化物(D)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましく、99%以上であることが特に好ましく、ブロック共重合体水素化物(D)における芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
ブロック共重合体(C)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合のみを選択的に水素化することにより得られるブロック共重合体水素化物(D)は、ブロック共重合体(C)に比べて、耐光性および耐熱劣化性が向上する。
ブロック共重合体(C)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率が上記下限値以上にすることで、ブロック共重合体水素化物(D)を主成分とする樹脂組成物(X)の耐光性および耐熱劣化性を向上させることができる。また、ブロック共重合体(C)における芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率を上記上限値以下にすることで、ブロック共重合体水素化物(D)を主成分とする樹脂組成物(X)の耐熱劣化性を維持し易くなる。
ブロック共重合体(C)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに、ブロック共重合体(C)における芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する場合、ブロック共重合体水素化物(D)における炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、炭素−炭素不飽和結合の全量の90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、99%以上であることが特に好ましい。ブロック共重合体水素化物(D)における炭素−炭素不飽和結合の水素化率をこの範囲内にすることにより、得られるブロック共重合体水素化物(D)は、鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合のみを選択的に水素化して得られるブロック共重合体水素化物(D)に比べて、耐光性および耐熱劣化性をより向上させ、更に熱変形温度を高くすることができる。
ブロック共重合体水素化物(D)における炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、例えば、前駆体であるブロック共重合体(C)およびブロック共重合体水素化物(D)のH−NMRを測定することにより、鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率、並びに、芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率をそれぞれ求めることができる。
ブロック共重合体(C)における不飽和結合の水素化方法や反応形態等は特に限定されず、公知の方法に従って行えばよい。
ブロック共重合体(C)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合を選択的に水素化する方法は、例えば、特開2015−78090号公報等に記載された公知の水素化方法が挙げられる。また、ブロック共重合体(C)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに、芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する方法は、例えば、国際公開第2011/096389号、国際公開第2012/043708号等に記載された方法が挙げられる。
ブロック共重合体水素化物(D)の分子量は、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)であって、30,000以上であることが好ましく、40,000以上であることがより好ましく、50,000以上であることが特に好ましく、200,000以下であることが好ましく、170,000以下であることがより好ましく、150,000以下であることが特に好ましい。
また、ブロック共重合体水素化物(D)の分子量分布(Mw/Mn)は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.8以下であることが特に好ましい。
MwおよびMw/Mnを上記範囲内にすることで、ブロック共重合体水素化物(D)を主成分とする樹脂組成物(X)に十分な溶融成形性と機械的強度とを付与することができる。
<<添加剤>>
樹脂(x)を主成分とする樹脂組成物(X)には、主成分である樹脂(x)に加えて、各種の添加剤を配合することができる。
好ましい添加剤としては、紫外線を遮蔽するための紫外線吸収剤、赤外線を遮蔽するための赤外線吸収剤、加工性等を高めるための酸化防止剤やブロッキング防止剤、耐久性を高めるための光安定剤、などが挙げられる。
−紫外線吸収剤−
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、などが挙げられる。
−赤外線吸収剤−
赤外線吸収剤としては、例えば、(i)酸化錫、アルミニウムドープ酸化錫、インジウムドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、錫ドープ酸化亜鉛、珪素ドープ酸化亜鉛、酸化チタン、ニオブドープ酸化チタン、酸化タングステン、ナトリウムドープ酸化タングステン、セシウムドープ酸化タングステン、タリウムドープ酸化タングステン、ルビジウムドープ酸化タングステン、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム等の金属酸化物微粒子;(ii)フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、イモニウム化合物、ジイモニウム化合物、ポリメチン化合物、ジフェニルメタン化合物、アントラキノン化合物、ペンタジエン化合物、アゾメチン化合物、6ホウ化ランタン等の微粒子状の近赤外線吸収色素;などが挙げられる。
−酸化防止剤−
酸化防止剤としては、例えば、リン系酸化防止剤、フェノ−ル系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、などが挙げられる。
−光安定剤−
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、などが挙げられる。
樹脂(x)に配合される、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の添加剤は、それぞれ1種単独で、あるいは2種以上を任意の比率で組み合わせて用いることができる。
紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の添加剤の配合量は、樹脂(x)100質量部に対して、合計で5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下が特に好ましい。
樹脂(x)に各種の添加剤を配合する方法としては、一般に用いられる公知の方法が適用できる。例えば、(i)樹脂(x)のペレットおよび配合剤を、タンブラー、リボンブレンダー、ヘンシェルタイプミキサー等の混合機を使用して均等に混合した後、二軸押出し機等の連続式溶融混練機により溶融混合し、押出してペレット状にする方法、(ii)樹脂(x)を、サイドフィーダーを備えた二軸押出し機により、サイドフィーダーから配合剤を連続的に添加しながら、溶融混練して押出し、ペレット状にする方法、などによって配合剤が均一に分散した樹脂(x)を主成分とする樹脂組成物を製造することができる。
動的粘弾性特性におけるtanδが極大値を示す温度領域を−20℃以上20℃以下に有する樹脂層(X)を含む中間膜を使用することにより、ガラス板のコインシデンス効果を低減して合わせガラスの遮音性能が向上する。
樹脂層(X)の厚さは、0.02mm以上が好ましく、0.03mm以上がより好ましく、0.04mm以上がさらに好ましく、0.08mm以上が特に好ましく、また、0.6mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.4mm以下が特に好ましい。
樹脂層(X)の厚さを下限値以上とすることで、中間膜に多数の樹脂層(X)を導入することなく、合わせガラスに遮音性を付与することができる。また、樹脂層(X)の厚さを上限値以下とすることで、合わせガラスの剛性が低下することを防止することができる。
樹脂層(X)の厚さが薄い場合、合わせガラスの遮音性を高めるために複数の樹脂層(X)を使用することができる。複数の樹脂層(X)を使用する場合、複数の樹脂層(X)の間に弾性率の高い樹脂層を介して複数の樹脂層(X)を積層することにより、合わせガラスの剛性の低下を抑制することができる。
(b)樹脂層(Y)
樹脂層(Y)は、樹脂組成物(Y)からなり、特定温度領域での動的粘弾性特性における特定の貯蔵弾性率を有する積層体(Z)が得られるように、樹脂層(X)を挟持するように積層される層である。樹脂層(Y)は、積層体(Z)を中間膜として用いる合わせガラスの剛性および耐衝撃性を維持して、合わせガラスの断熱性を向上させる。
<樹脂組成物(Y)>
樹脂組成物(Y)は、樹脂(y)を主成分として含んでなり、必要に応じて、その他の成分を含んでなる。
<<樹脂(y)>>
樹脂(y)としては、積層体(Z)の動的粘弾性特性における貯蔵弾性率が−20℃以上40℃以下の温度領域において1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下の値となるような樹脂であれば、特に限定されない。
樹脂(y)としては、樹脂層(Y)と樹脂層(X)との接着性の観点から、芳香族ビニル化合物および鎖状共役ジエン化合物等からなる特定のブロック共重合体水素化物(H)、および/または、それにアルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物(J)が好ましい。ここで、樹脂層(Y)が変性ブロック共重合体水素化物(J)を主成分とする樹脂組成物(Y)からなる層であれば、樹脂層(Y)とガラス板は接着剤層を介さずに強固に接着することができる。
樹脂(y)の具体例としては、例えば、ポリエステル系(共)重合体、ポリアミド系(共)重合体、ポリオレフィン系(共)重合体、ポリスチレン系(共)重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリスチレン・ジエン系ブロック共重合体、ポリオレフィン系ブロック共重合体、ポリウレタン系ブロック共重合体、ポリエステル系ブロック共重合体、ポリアミド系ブロック共重合体、アクリル系ブロック共重合体、ポリビニルアセタール系重合体、ポリビニルブチラール重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、それらの水素化重合体、およびこれらの重合体に酸無水物基、アルコキシシリル基、水酸基、エポキシ基、等の接着性を有する官能基が導入された変性重合体、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、熱伝導率の観点から、ポリスチレン系(共)重合体の水素化物、ポリプロピレン系(共)重合体の水素化物、ポリウレタン系(共)重合体の水素化物、アクリル系(共)重合体の水素化物、などが好ましく、合わせガラスに用いる中間膜にした場合の透明性の観点から、芳香族ビニル化合物および鎖状共役ジエン化合物等からなるポリスチレン系ブロック共重合体の水素化物、メチルメタクリレートおよび長鎖アルキルメタクリレート等からなるアクリル系ブロック共重合体の水素化物、および/または、それらに接着性の反応性基が導入された変性重合体がより好ましい。
また、合わせガラスの熱伝導率を小さくする観点から、樹脂(y)の熱伝導率が、温度25℃において、0.25W/(m・K)以下であることが好ましく、0.21W/(m・K)以下であることがより好ましく、0.17W/(m・K)以下であることが特に好ましい。ここで、熱伝導率は、ASTM E1530法(円板熱流計法)に基づいて測定して求めた値である。
−ブロック共重合体水素化物(H)−
ブロック共重合体水素化物(H)は、芳香族ビニル化合物および鎖状共役ジエン化合物などからなり、少なくとも2つの所定の重合体ブロック(E)と、少なくとも1つ以上の所定の重合体ブロック(F)から構成されるブロック共重合体(G)を水素化して得られる高分子である。
−−重合体ブロック(E)−−
重合体ブロック(E)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位[e]を主成分として含有する。
〔構造単位[e]〕
構造単位[e]は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位であり、構造単位[a]として上述したものと同様であり、また、その好適例も上述したものと同様である。
〔その他の構造単位〕
なお、重合体ブロック(E)は、構造単位[e]以外のその他の構造単位を含んでいてもよい。
重合体ブロック(E)に含まれ得るその他の構造単位は、重合体ブロック(A)に含まれ得るその他の構造単位として上述したものと同様であり、また、その好適例も上述したものと同様である。
〔組成等〕
そして、重合体ブロック(E)中の構造単位[e]の含有割合は、重合体ブロック(E)中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。重合体ブロック(E)中の構造単位[e]の含有割合が90質量%以上であれば、樹脂層(Y)の耐熱性を十分に高く確保できる。
また、重合体ブロック(E)中の、構造単位[e]以外のその他の構造単位の含有割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。
重合体ブロック(E)中のその他の構造単位の含有割合を上記の上限値以下とすることで、ブロック共重合体水素化物(H)を主成分とする樹脂組成物(Y)の耐熱性が低下することを防止することができる。
−−重合体ブロック(F)−−
重合体ブロック(F)は、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位[f]を主成分として含有する。
〔構造単位[f]〕
構造単位[f]は、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位であり、構造単位[b]として上述したものと同様であり、また、その好適例も上述したものと同様である。
〔その他の構造単位〕
なお、重合体ブロック(F)は、構造単位[f]以外のその他の構造単位を含んでいてもよい。
重合体ブロック(F)に含まれ得るその他の構造単位は、重合体ブロック(B)に含まれ得るその他の構造単位として上述したものと同様であり、また、その好適例も上述したものと同様である。
〔組成等〕
そして、重合体ブロック(F)中の構造単位[f]の含有割合は、重合体ブロック(F)中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。重合体ブロック(F)中の構造単位[f]の含有割合が90質量%以上であれば、ブロック共重合体水素化物(H)に柔軟性を付与することができ、ブロック共重合体水素化物(H)を樹脂組成物(Y)の主成分とした場合に、樹脂層(Y)が柔軟性を維持でき、積層体(Z)を中間膜に使用する合わせガラスに耐衝撃性を付与することができる。
また、重合体ブロック(F)中の構造単位[f]以外のその他の構造単位の含有割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。
重合体ブロック(F)中のその他の構造単位の含有割合を上限値以下とすることで、ブロック共重合体水素化物(H)の柔軟性を維持することができ、ブロック共重合体水素化物(H)を樹脂組成物(Y)の主成分とした場合に、樹脂層(Y)が柔軟性を維持でき、積層体(Z)を中間膜に使用する合わせガラスの耐衝撃性を維持することができる。
重合体ブロック(F)中の構造単位[f]は、1,4−付加重合に由来する構造単位を主成分とし、残部は1,2−付加重合および/または3,4−付加重合に由来する構造単位を含む。鎖状共役ジエン化合物の1,4−付加重合に由来する構造単位の割合は、重合体ブロック(F)中の構造単位[f]全体に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
重合体ブロック(F)中の構造単位[f]全体に対する、1,4−付加重合に由来する構造単位の含有割合を上記範囲内にすることで、ブロック共重合体水素化物(H)のソフトセグメントに由来するガラス転移温度を−60℃以上−30℃以下の範囲内に制御することができる。これにより、ブロック共重合体水素化物(H)を樹脂組成物(Y)の主成分とした場合に、樹脂層(Y)が−20℃以上40℃以下において柔軟性を維持でき、積層体(Z)を中間膜として使用する合わせガラスに−20℃以上40℃以下の広い温度範囲で耐衝撃性を付与することができる。
重合体ブロック(E)および/または重合体ブロック(F)の成分である芳香族ビニル化合物として、上記の重合体ブロック(A)および/または重合体ブロック(B)に使用するものと同様の芳香族ビニル化合物を使用することができる。
重合体ブロック(E)および/または重合体ブロック(F)の成分である鎖状共役ジエン化合物として、上記の重合体ブロック(A)および/または重合体ブロック(B)に使用するものと同様の鎖状共役ジエン化合物を使用することができる。
重合体ブロック(E)および/または重合体ブロック(F)の成分として含まれてもよいビニル化合物として、上記の重合体ブロック(A)および/または重合体ブロック(B)に使用するものと同様の鎖状ビニル化合物や環状ビニル化合物を使用することができる。
−−ブロック共重合体(G)−−
ブロック共重合体水素化物(H)の前駆体であるブロック共重合体(G)は、少なくとも2つの重合体ブロック(E)と、少なくとも1つの重合体ブロック(F)を含有する高分子である。
ブロック共重合体(G)中の重合体ブロック(E)の数は、2つ以上である限り特に制限はないが、通常3個以下、好ましくは2個であり、ブロック共重合体(G)中の重合体ブロック(F)の数は、1つ以上である限り特に制限はないが、通常2個以下、好ましくは1個である。
ブロック共重合体(G)が重合体ブロック(E)を複数有する場合は、重合体ブロック(E)中の構造単位の組成は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
ブロック共重合体(G)が重合体ブロック(F)を複数有する場合は、重合体ブロック(F)中の構造単位の組成は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
〔質量分率〕
ここで、構造単位[e]がブロック共重合体(G)に占める質量分率をwEとし、構造単位[f]がブロック共重合体(G)に占める質量分率をwFとしたときに、wEとwFとの比(wE/wF)としては、40/60以上60/40以下であることが好ましく、42/58以上であることがより好ましく、45/55以上であることがさらに好ましく、48/52以上であることが特に好ましく、また、58/42以下であることが好ましく、55/45以下であることがより好ましく、52/48以下であることが特に好ましい。
wEとwFとの比(wE/wF)を下限値以上とすることで、樹脂層(Y)の弾性率が低下することを防止することができ、一方、wEとwFとの比(wE/wF)を上限値以下とすることで、樹脂層(Y)の柔軟性が低下することを防止し、積層体(Z)を中間膜に使用した合わせガラスの耐衝撃性が低下することを防止することができる。
ブロック共重合体(G)のブロックの形態は、特に限定されず、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでもよいが、機械的強度に優れる点で、鎖状型ブロックであることが好ましい。ブロック共重合体(G)の最も好ましい形態は、重合体ブロック(F)の両端に重合体ブロック(E)が結合したトリブロック共重合体(E−F−E)である。
ブロック共重合体(G)の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、30,000以上であることが好ましく、40,000以上であることがより好ましく、50,000以上であることが特に好ましく、100,000以下であることが好ましく、90,000以下であることがより好ましく、80,000以下であることがさらに好ましく、70,000以下であることがさらにより好ましく、60,000以下であることが特に好ましい。
また、ブロック共重合体(G)の分子量分布(Mw/Mn)は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.8以下であることが特に好ましい。
MwおよびMw/Mnを上記範囲内にすることで、ブロック共重合体(G)を水素化して得られるブロック共重合体水素化物(H)を主成分とする樹脂組成物(Y)に十分な溶融成形性と機械的強度とを付与することができる。
ブロック共重合体(G)の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができ、例えば、国際公開第2003/018656号、国際公開第2011/096389号等に記載の方法が挙げられる。
ブロック共重合体水素化物(H)は、ブロック共重合体(G)における少なくとも鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合の95%以上を水素化した高分子である。
ブロック共重合体水素化物(H)は、ブロック共重合体(G)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合のみを選択的に水素化した高分子であってもよく、ブロック共重合体(G)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに、ブロック共重合体(G)における芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化した高分子であってもよく、また、これらの混合物であってもよい。
ブロック共重合体(G)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合のみを選択的に水素化する場合、ブロック共重合体水素化物(H)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましく、99%以上であることが特に好ましく、ブロック共重合体水素化物(H)における芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
ブロック共重合体(G)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合のみを選択的に水素化することにより得られるブロック共重合体水素化物(H)は、ブロック共重合体(G)に比べて、耐光性および耐熱劣化性が向上する。
ブロック共重合体(G)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率が上記下限値以上にすることで、ブロック共重合体水素化物(H)を主成分とする樹脂組成物(Y)の耐光性および耐熱劣化性を向上させることができる。また、ブロック共重合体(G)における芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率を上記上限値以下にすることで、ブロック共重合体水素化物(H)を主成分とする樹脂組成物(Y)の耐熱劣化性を維持し易くなる。
ブロック共重合体(G)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに、ブロック共重合体(G)における芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する場合、ブロック共重合体水素化物(H)における炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、炭素−炭素不飽和結合の全量の90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、99%以上であることが特に好ましい。ブロック共重合体水素化物(H)における炭素−炭素不飽和結合の水素化率をこの範囲内にすることにより、得られるブロック共重合体水素化物(H)は、鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合のみを選択的に水素化して得られるブロック共重合体水素化物(H)に比べて、耐光性および耐熱劣化性をより向上させ、更に熱変形温度を高くすることができる。
ブロック共重合体水素化物(H)における炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、例えば、前駆体であるブロック共重合体(G)およびブロック共重合体水素化物(H)のH−NMRを測定することにより、鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率、並びに、芳香族ビニル化合物に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率をそれぞれ求めることができる。
ブロック共重合体(G)における不飽和結合の水素化方法や反応形態等は、特に制限されず、上述したブロック共重合体(C)における不飽和結合の水素化方法や反応形態等と同様に行うことができる。
ブロック共重合体水素化物(H)の分子量は、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)であって、30,000以上であることが好ましく、40,000以上であることがより好ましく、50,000以上であることが特に好ましく、100,000以下であることが好ましく、90,000以下であることがより好ましく、80,000以下であることがさらに好ましく、70,000以下であることがさらにより好ましく、60,000以下であることが特に好ましい。
また、ブロック共重合体水素化物(H)の分子量分布(Mw/Mn)は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.8以下であることが特に好ましい。
MwおよびMw/Mnを上記範囲内にすることで、ブロック共重合体水素化物(H)を主成分とする樹脂組成物(Y)に十分な溶融成形性と機械的強度とを付与することができる。
−変性ブロック共重合体水素化物(J)−
変性ブロック共重合体水素化物(J)は、上記ブロック共重合体水素化物(H)に、有機過酸化物の存在下で、エチレン性不飽和シラン化合物を反応させることにより、アルコキシシリル基が導入されたものである。
ブロック共重合体水素化物(H)にアルコキシシリル基を導入することにより、変性ブロック共重合体水素化物(J)を主成分とする樹脂組成物(Y)には、弾性率や透明性を維持して、ガラスや金属に対する強固な接着性が付与される。このため、本発明の積層体(Z)の最外層が変性ブロック共重合体水素化物(J)で構成される場合、積層体(Z)とガラス板との間に接着剤を介することなく、積層体(Z)を中間膜とする合わせガラスを製造することができる。
導入するアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等の、トリ(炭素数1〜6のアルコキシ)シリル基;メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、プロピルジメトキシシリル基、プロピルジエトキシシリル基等の、(炭素数1〜20のアルキル)ジ(炭素数1〜6のアルコキシ)シリル基;フェニルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基等の、(アリール)ジ(炭素数1〜6のアルコキシ)シリル基;などが挙げられる。これらの中でも、積層体(Z)のガラス板に対する強固な接着性の観点から、トリメトキシシリル基が好ましい。
アルコキシシリル基は、ブロック共重合体水素化物(H)に、炭素数1〜20のアルキレン基や、炭素数2〜20のアルキレンオキシカルボニルアルキレン基等の2価の有機基を介して結合していてもよい。
ブロック共重合体水素化物(H)へのアルコキシシリル基の導入量は、ブロック共重合体水素化物(H)100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましく、1.0質量部以上であることが特に好ましく、5質量部以下であることが好ましく、4質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましく、2質量部以下であることが特に好ましい。
アルコキシシリル基の導入量を上限値以下とすることで、得られるアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物(J)を所望の形状に溶融成形する前に微量の水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋が進み、不溶融物を生じたり、溶融時の流動性が低下して成形性が低下したりする等の問題が生じ易くなるのを防止することができる。また、アルコキシシリル基の導入量を下限値以上とすることで、アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物(H)を主成分とする樹脂組成物(Y)からなる樹脂層(Y)をガラス板と接着する際に、十分な接着力が得られなくなることを防止することができる。
アルコキシシリル基が導入されたことは、IRスペクトルで確認することができる。また、その導入量は、H−NMRスペクトルにて算出することができる。
アルコキシシリル基の導入に用いるエチレン性不飽和シラン化合物としては、ブロック共重合体水素化物(H)とグラフト反応し、ブロック共重合体水素化物(H)にアルコキシシリル基を導入するものであれば、特に制限はなく、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せて使用してもよい。
エチレン性不飽和シラン化合物の使用量は、ブロック共重合体水素化物(H)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましく、1.0質量部以上であることが特に好ましく、また、5質量部以下であることが好ましく、4質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましく、2.5質量部以下であることが特に好ましい。
アルコキシシリル基の導入反応に使用する過酸化物としては、エチレン性不飽和シラン化合物をブロック共重合体水素化物(H)の溶融状態で有利に反応させるために、1分間半減期温度が170℃以上190℃以下であるものが好ましく使用され、例えば、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、などが好適に用いられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せて使用してもよい。
過酸化物の使用量は、ブロック共重合体水素化物(H)100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることが特に好ましく、また、2質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることが特に好ましい。
上記の変性ブロック共重合体水素化物(J)とエチレン性不飽和シラン化合物とを、過酸化物の存在下で反応させる方法は、特に制限はなく、例えば、国際公開第2012/043708号等に記載された公知の方法が挙げられる。
変性ブロック共重合体水素化物(J)の分子量は、導入されるアルコキシシリル基の量が少ないため、原料として用いたブロック共重合体水素化物(H)の分子量とほぼ同じである。一方、過酸化物の存在下で、エチレン性不飽和シラン化合物と反応させるため、重合体の切断反応、架橋反応が併発し、変性ブロック共重合体水素化物(J)の分子量分布の値は大きくなる。
変性ブロック共重合体水素化物(J)の分子量は、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、30,000以上であることが好ましく、40,000以上であることがより好ましく、50,000以上であることが特に好ましく、100,000以下であることが好ましく、90,000以下であることがより好ましく、80,000以下であることが特に好ましい。また、分子量分布(Mw/Mn)は、3.5以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることが特に好ましい。
MwおよびMw/Mnを上記範囲内にすることで、変性ブロック共重合体水素化物(J)を主成分とする樹脂組成物(Y)に十分な溶融成形性と機械的強度を付与することができる。
<<添加剤>>
樹脂(y)を主成分とする樹脂組成物(Y)には、主成分である樹脂(y)に加えて、各種の添加剤を配合することができる。
好ましい添加剤としては、樹脂層(X)と樹脂層(Y)とを含む積層体(Z)の動的粘弾性特性における貯蔵弾性率を所望の値に調整するための可塑剤や軟化剤、紫外線を遮蔽するための紫外線吸収剤、赤外線を遮蔽するための赤外線吸収剤、加工性等を高めるための酸化防止剤やブロッキング防止剤、耐久性を高めるための光安定剤、などが挙げられる。
−可塑剤−
可塑剤は、極性基を多く含む樹脂(y)に配合して、積層体(Z)の動的粘弾性特性における貯蔵弾性率を所望の値にできるものであれば、特に制限されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機可塑剤;有機リン酸化合物、有機亜リン酸化合物等のリン酸可塑剤;などが挙げられる。
上記可塑剤の具体例として、例えば、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、などが挙げられる。
可塑剤の配合量は、樹脂(y)、樹脂層(X)と樹脂層(Y)の厚さ構成、などにより積層体(Z)の貯蔵弾性率が所望の値となるように適宜選定できるが、樹脂(y)100質量部に対して、30質量部以下が好ましい。
−軟化剤−
軟化剤は、極性基を含まない炭化水素系樹脂、あるいは、樹脂(y)に添加して、積層体(Z)の動的粘弾性特性における貯蔵弾性率を所望の値にできるものであれば、特に制限はなく、例えば、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−1−オクテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、等のオレフィン系低分子量体およびその水素化物;ポリイソプレン、ポリイソプレン−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系低分子量体およびその水素化物;流動パラフィンなどのパラフィン系低分子量体などが挙げられる。
これらの中でも、積層体(Z)の透明性を維持して貯蔵弾性率を調整し易いという観点から、数平均分子量が300以上5,000以下の上記の低分子量体が好ましく、さらに、優れた透明性、耐光性を維持し、貯蔵弾性率を調整する効果に優れているという観点から、低分子量のポリイソブチレン水素化物、低分子量のポリイソプレン水素化物、がより好ましい。
軟化剤の配合量は、樹脂(y)、樹脂層(X)と樹脂層(Y)との厚さ構成、等により積層体(Z)の貯蔵弾性率が所望の値となるように適宜選定できるが、樹脂(y)100質量部に対して30質量部以下が好ましい。
可塑剤および軟化剤以外の添加剤(例えば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等)としては、上記の樹脂組成物(X)に配合した添加剤と同様の添加剤を使用することができる。これらは、それぞれ1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
可塑剤および軟化剤以外の添加剤の配合量は、樹脂(y)100質量部に対して、合計で5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることが特に好ましい。
樹脂(y)に各種の添加剤を配合する方法としては、上記の樹脂(x)に各種の添加剤を配合する方法と同様の方法が適用できる。
樹脂層(Y)は、積層体(Z)の粘弾性特性における貯蔵弾性率を所望の値に調整する。樹脂層(Y)は、積層体(Z)を合わせガラスの中間膜として使用した場合に、合わせガラスに十分な断熱性を付与する。そのため、樹脂層(Y)の厚さは、0.05mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましく、0.15mm以上であることが特に好ましく、また、1.0mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがより好ましく、0.6mm以下であることが特に好ましい。
樹脂層(Y)の厚さを下限値以上とすることで、積層体(Z)の弾性率が不十分となることを防止すると共に、積層体(Z)を中間膜とする合わせガラスの断熱性が不十分となるのを防止することができる。また、樹脂層(Y)の厚さを上限値以下とすることで、積層体(Z)をロール状に巻いて保存することが困難となるのを防止すると共に、合わせガラスの製造時の作業性が低下することを防止することができる。
(c)積層体(Z)
本発明の積層体(Z)においては、上記特性を有する少なくとも1つの樹脂層(X)が少なくとも2つの樹脂層(Y)の間に積層されている。
積層体(Z)の動的粘弾性特性における貯蔵弾性率は、−20℃以上40℃以下の温度範囲において、1.0×10Pa以上である必要があり、1.5×10Pa以上であることが好ましく、1.7×10Pa以上であることがより好ましく、2.0×10Pa以上であることがさらに好ましく、2.4×10Pa以上であることが特に好ましく、また、5.0×10Pa以下である必要があり、4.5×10Pa以下であることが好ましく、4.0×10Pa以下であることがより好ましく、3.0×10Pa以下であることが特に好ましい。
積層体(Z)は、上記の積層構造で、且つ、上記の動的粘弾性特性を有することにより、合わせガラスの中間膜として使用した場合に、合わせガラスの剛性を維持し、且つ、遮音性および断熱性に優れた合わせガラスを与えることができる。
積層体(Z)の厚さは、0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましく、0.4mm以上であることが特に好ましく、また、2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましく、1.0mm以下であることが特に好ましい。積層体(Z)の厚さを下限値以上とすることで、合わせガラスの断熱効果が不十分となることを防止することができ、積層体(Z)の厚さを上限値以下とすることで、積層体(Z)をロール状に巻いて保存することが困難となるのを防止すると共に、合わせガラスの製造時の作業性が低下することを防止することができる。
図1は、本発明の積層体(Z)の実施形態の一例を示す図である。
図1の積層体(Z)3aにおいては、1つの樹脂層(X)1aが2つの樹脂層(Y)2aおよび2bによって挟まれた、樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)からなる3層の構造を有している。
図3は、本発明の積層体の実施形態の他の一例を示す図である。
図3の積層体(Z)3bにおいては、1つの樹脂層(X)1aが2つの樹脂層(Y)2aおよび2bによって挟まれ、さらに、2つの樹脂層(Y)2bと2cとの間には赤外線反射フィルム4が挟まれた、樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/赤外線反射フィルム/樹脂層(Y)からなる5層の構造を有している。
ここで、樹脂層(Y)2a、2bおよび2cは、組成や厚さが同一であっても異なっていてもよい。
積層体(Z)における積層構成としては、目的によって適宜選択することができ、例えば、図1および図3に例示した構成、下記積層構成(i)〜(x)、などが挙げられる。
(i):樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)、
(ii):樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)、
(iii):樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)、
(iv):樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)、
(v):樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)、
(vi):樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)、
(vii):樹脂層(Y)/赤外線反射フィルム/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)、
(viii):樹脂層(Y)/調光シート/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)、
(ix):樹脂層(Y)/接着剤層/樹脂層(X)/接着剤層/樹脂層(Y)、
(x):樹脂層(Y)/他の樹脂層/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)
積層体(Z)が複数の樹脂層(X)を有する場合、各々の樹脂層(X)は組成や厚さが同一であっても異なっていてもよい。また、積層体(Z)は、(i)合わせガラスの耐貫通性を向上するための他の樹脂フィルム、(ii)合わせガラスに遮光部を形成するための着色樹脂フィルム、(iii)合わせガラスの剛性を高めるための高弾性樹脂フィルム、などの所望する機能を付与するための他の樹脂フィルム層を積層した積層構成であってもよい。
樹脂層(Y)がガラスに対する接着性を有さない場合は、樹脂層(Y)の外側に接着剤層を有してもよい。
この場合、積層体(Z)は、例えば、
(i):接着剤層/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/接着剤層、
(ii):接着剤層/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)/接着剤層、等の積層構成であってもよい。
本発明の積層体(Z)を製造するための製造方法は、特に制限されない。樹脂組成物(X)および/または樹脂組成物(Y)を、押出し成形法、カレンダー成形法、プレス成形法、キャスティング成形法、インフレーション成形法、などの公知の製造方法により樹脂層(X)および樹脂層(Y)の各層をあらかじめ製造しておき、樹脂層(X)、樹脂層(Y)および必要に応じて他の機能性樹脂層を積層して加熱圧着して積層体(Z)を製造することができる。また、上記成形方法等によりあらかじめ成形した樹脂層(Y)の片面に、押出しラミネート成形法等により、樹脂組成物(X)をフィルム上に溶融押出しして樹脂層(X)を貼り合わせて積層体(Z)を製造することもできる。さらに、樹脂組成物(X)、樹脂組成物(Y)、および必要に応じて他の機能性樹脂を共押出し成形法により、所望の層構成を有する積層体(Z)を製造することもできる。
合わせガラスの断熱性を高めるために、複数枚の同じまたは異なる樹脂層(Y)を使用することもできる。また、複数枚の樹脂層(Y)を使用する場合、複数の樹脂層(Y)の間に、例えば、(i)ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、アイオノマー樹脂フィルム等の合わせガラスの耐貫通性を高める樹脂フィルム、(ii)赤外線反射層を蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルム、などのような機能性フィルムを配置することもできる。
本発明の積層体(Z)は、表面にエンボス形状を有していてもよい。エンボス形状の具体例としては、特開平6−198809号公報、国際公開第1995/19885号、特開平9−40444号公報、特開平9−241045号公報、特開平9−295839号公報、特開平10−17338号公報、特開平10−167773号公報、特開平10−231150号公報、特開平11−35347号公報、特開平11−147735号公報、特開2000−7390号公報、特開2000−44295号公報、特開2000−203902号公報、特開2000−203900号公報、特開2000−203901号公報、特開2000−256043号公報、特開2000−290046号公報、特開2000−319045号公報、特開2001−19499号公報、特開2001−26468号公報、特開2001−48599号公報、特開2001−114538号公報、特開2001−130931号公報、特開2001−150540号公報、特開2001−163641号公報、特開2001−192244号公報、特開2001−261385号公報、特開2001−220182号公報、国際公開第2001/072509号、特開2002−037648号公報、特開2002−104846号公報、特開2003−128442号公報、特開2003−048762号公報、特開2003−212614号公報、特開2003−238218号公報、国際公開第2014/021459号、国際公開第2015/016361号、国際公開第2015/016358号、国際公開第2015/016366号公報、などに開示されている、梨地形状、連続溝形状、四角錐状の凹部形状、四角錐状の凸部形状、これらの組合せ形状等が挙げられる。
樹脂層(Y)の主成分である樹脂(y)がガラスに対する接着性官能基を有さない場合、例えば、官能基を有さないブロック共重合体水素化物(H)等である場合は、樹脂層(Y)をガラス板と貼り合わせて合わせガラスを製造する際に、樹脂層(Y)のガラス板に面する側に接着剤層を配置することができる。接着剤としては、例えば、ポリウレタン系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、変性ポリオレフィン系接着剤、変性ブロック共重合体系接着剤、などが挙げられる。これらの中でも、樹脂層(Y)とガラス板との双方に対する接着性に優れる観点から、アルコキシシリル基を有する変性ポリオレフィン系接着剤、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体系水素化物接着剤、が好ましい。
(d)ガラス板
本発明の合わせガラスに使用されるガラス板の厚さは、特に限定されない。本発明で使用されるガラス板の厚さは、通常、0.1mm以上10mm以下であり、0.2mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、0.7mm以上であることが特に好ましく、3mm以下であることが好ましく、2.5mm以下でることがより好ましく、2mm以下であることが特に好ましい。本発明で使用されるガラス板の厚さは、合わせガラスの用途(例えば、自動車や建築物等の窓材、壁材、仕切り材、床材、等)に応じて適宜選定できる。
本発明の合わせガラスにおいては、通常、2枚のガラス板、必要に応じて3枚以上のガラス板が使用される。使用される複数のガラス板の厚さは、同一でも、異なっていてもよい。
ガラス板の材質は特に限定されない。ガラス板の材質としては、例えば、アルミノシリケート酸ガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ硼珪酸ガラス、バリウム瑚珪酸ガラス、珪酸ガラス、結晶化ガラス、ゲルマニウムガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、鉛ガラス、ウランガラス、カリガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
また、本発明で使用されるガラス板の厚さ方向の熱伝導率は、通常0.9W/(m・K)以上1.3W/(m・K)以下程度である。ここで、ガラス板の厚さ方向の熱伝導率は、ASTM E1530法(円板熱流計法)に基づいて測定して求めた値である。
ガラス板には、熱線反射膜や赤外線反射膜等が形成されていてもよい。表面に極薄の金属膜や金属酸化物膜からなる熱線反射膜や赤外線反射膜等が形成されたガラス板は、遮熱性も付与される。従って、当該ガラス板を備える合わせガラスでは、ガラス板を通して熱の出入りを低減できるため、好ましい。また、ガラス板としては、製法の異なる、汎用的なフロートガラス、熱強化ガラス、化学強化ガラス等も使用できる。
(e)合わせガラス
本発明の合わせガラスは、2枚のガラス板と、当該2枚のガラス板間に配置される積層体(Z)からなる中間膜とを備えており、通常、当該ガラス板は、中間膜を介して接着一体化されている。
また、合わせガラスの厚み方向(積層方向)の熱伝導率は、0.5W/(m・K)以下であることが必要であり、0.4W/(m・K)以下であることが好ましく、0.3W/(m・K)以下であることがより好ましく、0.25W/(m・K)以下であることが特に好ましい。
ガラス板の熱伝導率が、通常約1W/(m・K)程度であるのに比較し、本発明の合わせガラスの熱伝導率は約1/2以下であり、断熱性に優れている。
なお、合わせガラスの厚み方向(積層方向)の熱伝導率は、熱伝導率測定装置を用い、ASTM E1530法(円板熱流計法)に準拠して、60℃の温度雰囲気で測定して求めた値である。
本発明の合わせガラスは、温度25℃における曲げ弾性率が、11GPa(11×10Pa)以上であることが好ましく、12GPa以上であることがより好ましく、13GPa以上であることが特に好ましい。
自動車用合わせガラスとして一般的に使用されている厚さ2mmの2枚のガラスと厚さ0.76mmのポリビニルブチラールを主成分とする中間膜から構成される合わせガラスの曲げ弾性率が約11GPaであるのに対して、本発明の合わせガラスは同等以上の曲げ弾性率を有しており、剛性に優れた合わせガラスが提供される。
なお、合わせガラスの曲げ弾性率は、オートグラフ(インストロン社製、INSTRON5582)を使用し、JIS R1602法(4点曲げ試験法)に基づいて、回転形4点曲げ試験治具を使用して、支点間距離:上部=27mm、下部=81mm、支持棒直径6mm、温度25℃の条件で測定して求めた値である。
本発明の合わせガラスは、動的粘弾性特性における貯蔵弾性率が−20℃以上40℃以下の温度範囲において1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下である積層体(Z)を中間膜として使用することにより、上記の曲げ弾性率が得られ、断熱性と剛性とを両立させることができる。
本発明の合わせガラスの厚さや形状は、特に制限されないが、通常0.3mm以上20mm以下であり、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることが特に好ましく、15mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、7mm以下であることが特に好ましい。この範囲内の厚さであれば、ディスプレイ用ガラス、自動車用ガラス、鉄道車両用ガラス、建材用ガラス等として好適に使用し得る。
また、合わせガラスの形状は、建材やディスプレイ等に使用する平板状であってもよいし、自動車用合わせガラスや鉄道車両用合わせガラス等のような曲面形状であってもよい。
図2は、本発明の合わせガラスの実施形態の一例を示す図である。
図2の合わせガラス6aにおいては、1つの樹脂層(X)1aが、2つの樹脂層(Y)2a,2bによって挟まれた、樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)からなる3層の構造を有する積層体(Z)3aを中間膜とし、この中間膜としての積層体(Z)3aが2枚のガラス板5a,5bの間に配置されている。
図4は、本発明の合わせガラスの実施形態の他の一例を示す図である。
図4の合わせガラス6bにおいては、1つの樹脂層(X)1aが、2つの樹脂層(Y)2a,2bによって挟まれ、さらに2つの樹脂層(Y)2b,2cの間には赤外線反射フィルム4が挟まれた、樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/赤外線反射フィルム/樹脂層(Y)からなる5層の構造を有する積層体(Z)3bを中間膜とし、この中間膜としての積層体(Z)3bが2枚のガラス板5a,5bの間に配置されている。
ここで、樹脂層(Y)2a,2b,2cは、組成や厚さが同一であってもよく、異なっていてもよい。ガラス板5a,5bは、材質や厚さが同一であってもよく、異なってもよい。
本発明の合わせガラスにおける積層構成としては、目的によって適宜選択することができ、例えば、図2および図4に例示した構成、下記積層構成(i)〜(xiii)、などが挙げられる。
(i):ガラス/積層体(Z)/ガラス/積層体(Z)/ガラス、
(ii):ガラス/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)/ガラス、
(iii):ガラス/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/ガラス、
(iv):ガラス/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/ガラス、
(v):ガラス/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/ガラス、
(vi):ガラス/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/ガラス、
(vii):ガラス/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/ガラス、
(viii):ガラス/樹脂層(Y)/赤外線反射フィルム/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)/ガラス、
(ix):ガラス/樹脂層(Y)/調光シート/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/ガラス、
(x):ガラス/樹脂層(Y)/調接着剤層/樹脂層(X)/接着剤層/樹脂層(Y)/ガラス、
(xi):ガラス/樹脂層(Y)/他の樹脂層/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/ガラス、
(xii):ガラス/接着剤層/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/接着剤層/ガラス、
(xiii):ガラス/接着剤層/樹脂層(Y)/樹脂層(X)/樹脂層(Y)/樹脂層(Y)/接着剤層/ガラス
本発明の合わせガラスを製造する方法は、特に制限されない。自動車用合わせガラスのような曲面形状をした合わせガラスの一般的な方法としては、例えば、ガラス板/積層体(Z)/ガラス板をこの順に重ね合わせた積層物とし、この積層物を脱気可能な可撓性の樹脂製袋に入れて内部を脱気した後、オートクレーブに入れて、温度:100℃以上150℃以下、圧力:0.5MPa以上1.5MPa以下の条件下で圧着することができる。
積層体(Z)を構成する樹脂層(Y)がガラス板に対する接着性を有しない場合は、積層体(Z)とガラス板の間に接着剤を介し、例えば、ガラス板/接着剤/積層体(Z)/接着剤/ガラス板をこの順に重ね合わせた積層物とし、上記と同様にした合わせガラスを製造することができる。
建築物用の合わせガラスのような平面形状をした合わせガラスの場合は、上記の積層物を真空ラミネータや熱プレス等を用いて加熱して接着一体化させる方法も適用できる。
本発明の合わせガラスは、中間膜として使用する積層体(Z)が、動的粘弾性特性におけるtanδが−20℃以上20℃以下の温度範囲において極大値を有する特定の樹脂層(X)を有しているため、断熱性に加えて、ガラスのコインシデンス効果を低減して遮音性能が向上されているため、特に、自動車用合わせガラスとして有用である。
また、本発明の合わせガラスにおいては、合わせガラス全体の厚さを厚くすることなく、中間膜の厚さを厚くして、ガラス板の厚さを薄くした場合であっても、剛性を維持しつつ断熱性を高めることができるため、合わせガラスの軽量化にも寄与する。このため、特に自動車用途では、サイドガラス、リアガラス、ルーフガラス、フロントガラス等として使用することにより、燃費向上にも効果を示すことが期待できる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。本実施例における測定乃至評価は、以下の方法によって行った。
(1)重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)
ブロック共重合体(C)、ブロック共重合体水素化物(D)、ブロック共重合体(G)、およびブロック共重合体水素化物(H)の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として38℃において測定し、標準ポリスチレン換算値を算出した。なお、測定装置としては、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)装置(HLC8320GPC、東ソー社製)を用いた。
(2)水素化率
ブロック共重合体水素化物(D)およびブロック共重合体水素化物(H)の主鎖、側鎖および芳香環の水素化率は、ブロック共重合体(C)、ブロック共重合体水素化物(D)、ブロック共重合体(G)、およびブロック共重合体水素化物(H)のH−NMRを測定して算出した。
(3)樹脂層(X)のtanδ
製造した樹脂層(X)を必要数重ねてプレス成形して厚さ1mm以上1.5mm以下のシートを作製した。このシートから長さ70mm、幅10mmの試験片を作製した。
この試験片を用いて、粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、ARES)を使用し、JIS K7244−2法(プラスチック−動的機械特性の試験方法−第2部:ねじり振子法)に基づいて、角周波数:1rad/s、測定温度範囲:−100℃以上100℃以下、昇温速度:5℃/minの条件で、動的粘弾性特性を測定し、tanδが極大値を示す温度を測定した。
(4)積層体(Z)の貯蔵弾性率(G’)
製造した積層体(Z)から長さ70mm、幅10mmの試験片を作製した。
この試験片を用いて、上記粘弾性測定装置を使用し、JIS K7244−2法(プラスチック−動的機械特性の試験方法−第2部:ねじり振子法)に基づいて、角周波数:1rad/s、測定温度範囲:−100℃以上150℃以下、昇温速度:5℃/minの条件で、動的粘弾性特性(粘弾性スペクトル)を測定し、−20℃以上40℃以下の温度範囲の貯蔵弾性率(G’)を測定した。
(5)合わせガラスの断熱性
円形をした2枚の青板ガラス(直径50mm、厚さ0.5mm以上1.5mm以下)の間に、少なくとも1枚以上の積層体(Z)および必要に応じて他の樹脂層、接着剤層、等を配置して接着一体化し、合わせガラスを作製し、試験片とした。
この試験片を、熱伝導率測定装置(製品名:ユニサーモ 2021型、アンター社製)を用い、ASTM E1530法(円板熱流計法)に準拠して、25℃の温度雰囲気で熱伝導率測定を行った。
合わせガラスの断熱性は、合わせガラスの熱伝導率が0.5W/(m・K)以下である場合を良好と評価し、0.5W(m・K)を超える場合を不良と評価した。
(6)合わせガラスの剛性
2枚の青板ガラス(長さ100mm、幅20mm、厚さ0.5mm以上1.5mm以下)の間に、少なくとも1枚以上の積層体(Z)および必要に応じて他の樹脂層、接着剤層、等を配置して接着一体化し、合わせガラスを作製し、試験片とした。
この試験片を、加熱オーブンを備えたオートグラフ(インストロン社製、INSTRON5582)を使用し、JIS R1602法(4点曲げ試験法)に基づいて、回転形4点曲げ試験治具を使用して、支点間距離:上部=27mm、下部=81mm、支持棒直径6mm、温度25℃の条件で曲げ試験を行い、曲げ弾性率を測定した。
合わせガラスの剛性は、合わせガラスの曲げ弾性率が11GPa(11×10Pa)以上である場合を良好と評価し、11GPa(11×10Pa)未満の場合を不良と評価した。
(7)遮音性
2枚の青板ガラス(長さ300mm、幅25mm、厚さ0.5mm以上1.5mm以下)の間に、少なくとも1枚以上の積層体(Z)および必要に応じて他の樹脂層、接着剤層、等を配置して接着一体化し、合わせガラスを作製し、試験片とした。
この合わせガラス試験片を用いて、JIS−K7391法に基づき、振動減衰試験装置(リオン社製)を使用して、中央加振法により周波数に対応した損失係数を測定した。ここで求めた損失係数と、合わせガラス試験片の共振周波数との比から、周波数に対応した音響透過損失を求めた。
遮音性は、合わせガラス試験片が、周波数2000Hz以上4000Hz以下の範囲で音響透過損失の値が35dBを下回る領域が無い場合を良好と評価し、35dBを下回る領域が有る場合を不良と評価した。
[製造例1]
<ブロック共重合体水素化物(D1)の製造>
ブロック共重合体水素化物(D1)を、以下の手順により調製した。
攪拌装置を備え、内部が十分に窒素置換された反応器に、脱水シクロヘキサン300部、脱水スチレン5部、およびエチレングリコールジブチルエーテル0.53部を投入した。全容を60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.47部を加えて重合を開始させた。引続き、全容を60℃で攪拌しながら、脱水スチレン5部を15分間に亘って連続的に反応器内に添加して重合反応を進め、添加終了後、そのまま、さらに、60℃で20分間全容を攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィー(GC)により測定したところ、この時点での重合転化率は99.5%であった。
次に、反応液に,脱水イソプレン80部を100分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま20分間攪拌を続けた。この時点で、反応液をGCにより分析した結果、重合転化率は99.5%であった。
その後、更に、反応液に脱水スチレン10部を60分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま30分間攪拌した。この時点で、反応液をGCにより分析した結果、重合転化率はほぼ100%であった。
ここで、反応液に、イソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させ、重合体溶液を得た。重合体溶液に含まれるブロック共重合体(C1)は、重合体ブロック(A)−重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)型のトリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)が83,900、分子量分布(Mw/Mn)が1.03、wA:wB=20:80、ブロック共重合体(C1)における全イソプレン由来の構造単位のうちの1,2−付加重合および3,4−付加重合に由来する構造単位の割合(ビニル結合した共役ジエンの比率)は58%であった。
なお、上記「wA:wB」は、芳香族ビニル化合物(製造例1ではスチレン)に由来する構造単位〔a〕がブロック共重合体(C1)に占める質量分率をwAとし、鎖状共役ジエン化合物(製造例1ではイソプレン)に由来する構造単位〔b〕がブロック共重合体(C1)に占める質量分率をwBしたときのwAとwBとの比(wA:wB)を表し、以下の製造例2、3においても同様である。
次に、上記の重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として、トルエン1.0部中で、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド0.042部とジエチルアルミニウムクロライド0.122部を混合した溶液を添加して混合した。
反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度90℃、圧力1.0MPaにて5時間水素化反応を行った。
水素化反応により得られた反応溶液に含まれるブロック共重合体水素化物(D1)の重量平均分子量(Mw)は88,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、であった。
水素化反応終了後、反応溶液に水0.10部を添加して、60℃で60分間攪拌した。その後、30℃以下まで冷却し、活性白土(製品名「ガレオンアース(登録商標)」、水澤化学工業社製)1.5部、および、タルク(製品名「ミクロエース(登録商標)」、日本タルク社製)1.5部を添加して、反応溶液を濾過ろ過して不溶物を除去した。濾過された溶液にフェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](SONGWON社製、製品名「Songnox1010」)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて濾過して微小な固形分を除去した後、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液からシクロヘキサン、キシレンおよびその他の揮発成分を除去した。濃縮乾燥器に直結したダイから溶融樹脂を押出し、水冷後、アンダーウォーターカッターによりブロック共重合体水素化物(D1)のペレット91部を製造した。ペレットにはブロッキング防止剤として約100ppmのエチレンビスステアリン酸アマイドの微粉を添加した。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物(D1)は、重量平均分子量(Mw)が87,800、分子量分布(Mw/Mn)が1.09、であった。鎖状共役ジエン(主鎖および側鎖)に由来の二重結合の水素化率は99%、芳香環に由来の二重結合の水素化率は3%未満であった。
製造したブロック共重合体(C1)およびブロック共重合体水素化物(D1)の物性値を表1に示す。
[製造例2]
<ブロック共重合体水素化物(D2)の製造>
ブロック共重合体水素化物(D2)を、以下の手順により調製した。
製造例1と同様の反応器に、脱水シクロヘキサン300部、脱水スチレン5部、およびエチレングリコールジブチルエーテル0.53部を投入した。全容を60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.5部を加えて重合を開始させた。引続き、全容を60℃で攪拌しながら、脱水スチレン4部を15分間に亘って連続的に反応器内に添加して重合反応を進め、添加終了後、そのまま、さらに、60℃で20分間全容を攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィー(GC)により測定したところ、この時点での重合転化率は99.5%であった。
次に、反応液に、脱水イソプレン82部を100分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま20分間攪拌を続けた。この時点で、反応液をGCにより分析した結果、重合転化率は99.5%であった。
その後、更に、反応液に脱水スチレン9部を60分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま30分間攪拌した。この時点で、反応液をGCにより分析した結果、重合転化率はほぼ100%であった。
ここで、反応液に、イソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させ、重合体溶液を得た。重合体溶液に含まれるブロック共重合体(C2)は、重合体ブロック(A)−重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)型のトリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)が78,600、分子量分布(Mw/Mn)が1.03、wA:wB=18:82、ブロック共重合体(C2)における全イソプレン由来の構造単位のうちの1,2−付加重合および3,4−付加重合に由来する構造単位の割合は58%であった。
次に、上記の重合体溶液を、製造例1と同様の耐圧反応器に移送し、水素化触媒として、珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「製品名「E22U」、ニッケル担持量60%、日揮触媒化成社製)7.0部、および脱水シクロヘキサン80部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度150℃、圧力3.0MPaにて1時間水素化反応を行い、引続いて温度190℃、圧力4.5MPaに昇温昇圧して6時間水素化反応を行った。
水素化反応により得られた反応溶液に含まれるブロック共重合体水素化物(D2)の重量平均分子量(Mw)は83,100、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、であった。
水素化反応終了後、反応溶液を濾過して水素化触媒を除去した後、製造例1と同じフェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.1部を溶解したキシレン溶液2.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を製造例1と同様に処理して、ブロック共重合体水素化物(D2)のペレット93部を製造した。
製造したペレット状のブロック共重合体水素化物(D2)は、重量平均分子量(Mw)が82,700、分子量分布(Mw/Mn)が1.09、鎖状共役ジエン(主鎖および側鎖)に由来の二重結合の水素化率および芳香環に由来の二重結合の水素化率はいずれもほぼ100%であった。
製造したブロック共重合体(C2)およびブロック共重合体水素化物(D2)の物性値を表1に示す。
[製造例3]
<ブロック共重合体水素化物(D3)の製造>
ブロック共重合体水素化物(D3)を、以下の手順により調製した。
製造例1において、エチレングリコールジブチルエーテルの量を0.55部とし、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)の量を0.55部とし、重合に供するモノマーを、脱水スチレン15部、脱水イソプレン70部、脱水スチレン15部とする以外は、製造例1と同様にして重合を行い、ブロック共重合体(C3)を含む重合体溶液を得た。ブロック共重合体(C3)は、重量平均分子量(Mw)が73,400、分子量分布(Mw/Mn)が1.04、wA:wB=30:70、ブロック共重合体(C3)における全イソプレン由来の構造単位のうちの1,2−付加重合および3,4−付加重合に由来する構造単位の割合は50%であった。
次に、上記重合体の溶液を、製造例2と同様にして水素化反応を行った。その後、製造例2と同様にして、ブロック共重合体水素化物(D3)のペレット94部を得た。得られたブロック共重合体水素化物(D3)は、重量平均分子量(Mw)が76,900、分子量分布(Mw/Mn)が1.07、鎖状共役ジエン(主鎖および側鎖)に由来の二重結合の水素化率および芳香環に由来の二重結合の水素化率がいずれもほぼ100%であった。
製造したブロック共重合体(C3)およびブロック共重合体水素化物(D3)の物性値を表1に示す。
[製造例4]
<変性ブロック共重合体水素化物(J1)の製造>
変性ブロック共重合体水素化物(J1)を、以下の手順により調製した。
製造例1と同様の反応器に、脱水シクロヘキサン400部、脱水スチレン10部、およびジブチルエーテル0.475部を投入した。全容を60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.90部を加えて重合を開始させた。引続き、全容を60℃で攪拌しながら、脱水スチレン15部を40分間に亘って連続的に反応器内に添加して重合反応を進め、添加終了後、そのまま、さらに、60℃で20分間全容を攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィー(GC)により測定したところ、この時点での重合転化率は99.5%であった。
次に、反応液に、脱水イソプレン50部を130分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま30分間攪拌を続けた。この時点で、反応液をGCにより分析した結果、重合転化率は99.5%であった。
その後、更に、反応液に脱水スチレン25部を70分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま60分攪拌した。この時点で、反応液をガスクロマトグラフィー(GC)により分析した結果、重合転化率はほぼ100%であった。
ここで、反応液に、イソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させ、重合体溶液を得た。重合体溶液に含まれるブロック共重合体(G1)は、重合体ブロック(E)−重合体ブロック(F)−重合体ブロック(E)型のトリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)が45,300、分子量分布(Mw/Mn)が1.04、wE:wF=50:50、ブロック共重合体(G1)における全イソプレン由来の構造単位のうちの1,4−付加重合に由来する構造単位の割合は91%であった。
なお、上記「wE:wF」は、芳香族ビニル化合物(製造例4ではスチレン)に由来する構造単位〔e〕がブロック共重合体(G1)に占める質量分率をwEとし、鎖状共役ジエン化合物(製造例1ではイソプレン)に由来する構造単位〔f〕がブロック共重合体(G1)に占める質量分率をwFとしたときのwEとwFとの比(wE:wF)を表し、以下の製造例5、6においても同様である。
次に、上記の重合体溶液を、製造例2と同様にして水素化反応を行った。
水素化反応により得られた反応溶液に含まれるブロック共重合体水素化物(H1)の重量平均分子量(Mw)は47,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.06、であった。
水素化反応終了後、反応溶液を濾過して水素化触媒を除去した後、製造例1と同じフェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「AO60」、ADEKA社製)0.1部を溶解したキシレン溶液2.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、製造例1と同様に処理して、ブロック共重合体水素化物(H1)からなるペレット95部を得た。
得られたペレット状のブロック共重合体水素化物(H1)は、重量平均分子量(Mw)が47,400、分子量分布(Mw/Mn)が1.10、鎖状共役ジエン(主鎖および側鎖)に由来の二重結合の水素化率および芳香環に由来の二重結合の水素化率がいずれもほぼ100%であった。
得られたブロック共重合体水素化物(H1)のペレット100部に対して、ビニルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、製品名「KBM−1003」)2.0部、および、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標)25B」、日油社製)0.1部を添加した。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度210℃、滞留時間60秒以上70秒以下で混練した。得られた混練物を、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物(J1)のペレット96部を得た。
変性ブロック共重合体水素化物(J1)のペレット0.00001部をシクロヘキサン0.001部に溶解させた後、得られた溶液を脱水メタノール0.004部中に注いで、変性ブロック共重合体水素化物(J1)を凝固させ、凝固物を濾取した。濾過物を25℃で真空乾燥して、精製した変性ブロック共重合体水素化物(J1)0.000009部を得た。
変性ブロック共重合体水素化物(J1)のFT−IRスペクトルには、1090cm−1にSi−OCH基、825cm−1と739cm−1にSi−CH基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのSi−OCH基、Si−CH基に由来する吸収帯(1075cm−1、808cm−1および766cm−1)と異なる位置に観察された。
また、変性ブロック共重合体水素化物(J1)のH−NMRスペクトル(重クロロホルム中)を測定したところ、3.6ppmにメトキシ基のプロトンに基づくピークが観察された。ピーク面積比からブロック共重合体水素化物(H1)100部に対してビニルトリメトキシシラン1.8部が結合したことが確認された。
製造したブロック共重合体(G1)、ブロック共重合体水素化物(H1)、および変性ブロック共重合体水素化物(J1)の物性値を表1に示す。
[製造例5]
<ブロック共重合体水素化物(H2)の製造>
ブロック共重合体水素化物(H2)を、以下の手順により調製した。
製造例1と同様の反応器に、脱水シクロヘキサン400部、脱水スチレン10部、およびジブチルエーテル0.475部を投入した。全容を60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.80部を加えて重合を開始させた。引続き、全容を60℃で攪拌しながら、脱水スチレン20部を40分間に亘って連続的に反応器内に添加して重合反応を進め、添加終了後、そのまま、さらに、60℃で20分間全容を攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィー(GC)により測定したところ、この時点での重合転化率は99.5%であった。
次に、反応液に、脱水イソプレン40部を110分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま30分間攪拌を続けた。この時点で、反応液をGCにより分析した結果、重合転化率は99.5%であった。
その後、更に、反応液に脱水スチレン30部を70分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま60分攪拌した。この時点で、反応液をガスクロマトグラフィー(GC)により分析した結果、重合転化率はほぼ100%であった。
ここで、反応液に、イソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させ、重合体溶液を得た。重合体溶液に含まれるブロック共重合体(G2)は、重合体ブロック(E)−重合体ブロック(F)−重合体ブロック(E)型のトリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)が52,100、分子量分布(Mw/Mn)が1.04、wE:wF=60:40、ブロック共重合体(G2)における全イソプレン由来の構造単位のうちの1,4−付加重合に由来する構造単位の割合は91%であった。
次に、上記の重合体溶液を、製造例2と同様にして水素化反応を行った。
水素化反応により得られた反応溶液に含まれるブロック共重合体水素化物(H2)の重量平均分子量(Mw)は55,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.06、であった。
水素化反応終了後、反応溶液を濾過して水素化触媒を除去した後、得られた溶液に、製造例1と同じフェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「AO60」、ADEKA社製)0.1部を溶解したキシレン溶液2.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、製造例1と同様に処理して、ブロック共重合体水素化物(H2)からなるペレット94部を得た。
得られたペレット状のブロック共重合体水素化物(H2)は、重量平均分子量(Mw)が54,600、分子量分布(Mw/Mn)が1.10、鎖状共役ジエン(主鎖および側鎖)に由来の二重結合の水素化率および芳香環に由来の二重結合の水素化率がいずれもほぼ100%であった。
製造したブロック共重合体(G2)およびブロック共重合体水素化物(H2)の物性値を表1に示す。
[製造例6]
<<変性ブロック共重合体水素化物(J3)の製造>>
変性ブロック共重合体水素化物(J3)を、以下の手順により調製した。
製造例4において、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)の量を0.90部から0.80部に変えたこと以外は、製造例4と同様にして重合を行い、ブロック共重合体(G3)を含む重合体溶液を得た。ブロック共重合体(G3)は、重量平均分子量(Mw)が51,900、分子量分布(Mw/Mn)が1.04、wE:wF=50:50、ブロック共重合体(G3)における全イソプレン由来の構造単位のうちの1,4−付加重合に由来する構造単位の割合が91%であった。
次に、上記の重合体溶液を、製造例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応により得られた反応溶液に含まれるブロック共重合体水素化物(H3)は、重量平均分子量(Mw)が55,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.05、であった。
水素化反応終了後、反応溶液を製造例1と同様に処理して水素化触媒を除去した後、製造例1と同じフェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.1部を溶解したキシレン溶液2.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を製造例1と同様に処理して、ブロック共重合体水素化物(H3)のペレット96部を製造した。
製造したペレット状のブロック共重合体水素化物(H3)は、重量平均分子量(Mw)が54,400、分子量分布(Mw/Mn)が1.08、であった。鎖状共役ジエン(主鎖および側鎖)に由来の二重結合の水素化率は99%、芳香環に由来の二重結合の水素化率は3%未満であった。
製造されたブロック共重合体水素化物(H3)のペレットを使用して、製造例4と同様に2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンの存在下でビニルトリメトキシシランを反応させ、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物(J3)のペレット93部を製造した。
得られた変性ブロック共重合体水素化物(J3)は、ブロック共重合体水素化物(H3)100部に対してビニルトリメトキシシラン1.8部が結合したことが確認された。
製造したブロック共重合体(G3)、ブロック共重合体水素化物(H3)および変性ブロック共重合体水素化物(J3)の物性値を表1に示す。
(実施例1)
<樹脂組成物(X1)>
製造例1で製造したブロック共重合体水素化物(D1)のペレット100部に、紫外線吸収剤である2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−p−クレゾール(製品名「SUMISORB(登録商標)300」、住友化学社製)0.2部を添加して均一に混合し、混合物を得た。得られた混合物を、二軸押出し機(商品名:「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて樹脂温度200℃で混練し、溶融ポリマーをダイから押出し、水冷後、アンダーウォーターカッターによりカッティングし、樹脂組成物(X1)のペレット94部を製造した。
<樹脂組成物(Y1)>
製造例4で製造した変性ブロック共重合体水素化物(J1)のペレット100部に、上記と同じ紫外線吸収剤である2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−p−クレゾール0.2部を添加して均一に混合し、混合物を得た。得られた混合物を、二軸押出し機(商品名:「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて樹脂温度210℃で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、樹脂組成物(Y1)のペレット97部を製造した。
<多層シート(W1)>
直径20mmのスクリューを備えた単軸押出し機2基、フィードブロック、Tダイ(幅400mm)、および、表面に梨地エンボスパターンを有するキャストロール(幅400mm)を備えたシート引取機からなる2種3層共押出しフィルム成形機(商品名:「SZW20−25MG」、テクノベル社製)を使用して、樹脂組成物(X1)が内層(樹脂層(X))、樹脂組成物(Y1)が外層(樹脂層(Y))となる多層シート(W1)を製造した。
ここで押出し条件は、樹脂組成物(X1)の押出し機温度200℃、樹脂組成物(Y1)の押し出し機温度210℃、キャストロール温度50℃とし、シートの端部は切除して、幅320mmの多層シート(W1)を得た。
得られた多層シート(W1)は、1つの樹脂層(X1)が2つの樹脂層(Y1)に挟まれた、樹脂層(Y1)/樹脂層(X1)/樹脂層(Y1)の三層構造を有し、多層シート(W1)の総厚さは0.80mm、各々の層の厚さは、樹脂層(Y1):0.35mm/樹脂層(X1):0.10mm/樹脂層(Y1):0.35mmであった。
<単層の樹脂組成物(X1)のシート>
上記の2種3層共押出しフィルム成形機を使用し、樹脂組成物(Y1)を押出し機に供給せず、樹脂組成物(X1)のみを1基の押出し機に供給し、押出し機温度200℃、キャストロール温度を50℃以下の条件にて、樹脂組成物(X1)で構成された単層の樹脂組成物(X1)のシート(厚さ0.50mm、幅320mm)を作製した。樹脂組成物(X1)のシートは離形性PETフィルム(東レ社製、製品名「ルミラー(登録商標)S10」、厚さ50μm)厚さ0.050mm)を重ねてロール状に巻き取り回収した。
<単層の樹脂組成物(Y1)のシート>
上記の2種3層共押出しフィルム成形機を使用し、樹脂組成物(X1)を押し出し機に供給せず、樹脂組成物(Y1)を1基の押し出し機に供給し、押出し機温度210℃、キャストロール温度を50℃とする条件にて、樹脂組成物(Y1)で構成された単層の樹脂組成物(Y1)のシート(厚さ0.10mm、幅320mm)を作製した。
<合わせガラス(LG1)>
円形の2枚の青板ガラス(直径50mm、厚さ1.1mm)の間に、多層シート(W1)(厚さ0.80mm)1枚および樹脂組成物(Y1)のシート(厚さ0.10mm)1枚を重ねて挟み、ガラス板/多層シート(W1)/樹脂組成物(Y1)のシート/ガラス板の順に重ねて配置した。
この積層物を、ナイロン/接着層/ポリプロピレンの層構成を有する厚さ75μmの樹脂製の袋に入れ、密封パック器(BH−951、パナソニック社製)を使用して、袋内を脱気しながら開口部をヒートシールして積層物を密封包装した。その後、密封包装した積層物をオートクレーブに入れて、温度140℃、圧力0.8MPaで30分間処理して、ガラス板/多層シート(W1)/樹脂組成物(Y1)のシート/ガラス板の層構成をした合わせガラス(LG1−1)を作製した。
合わせガラス(LG1−1)の厚さは3.1mmであった。合わせガラス(LG1−1)の厚さの構成は、ガラス板(1.1mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(X1)(0.10mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(Y1)(0.10mm)/ガラス板(1.1mm)であった。また、得られた合わせガラス(LG1−1)の外観は気泡等の欠陥は観察されず、良好であった。
2枚の青板ガラス(長さ100mm、幅20mm、厚さ1.1mm)を使用し、上記と同様にして、ガラス板/多層シート(W1)/樹脂組成物(Y1)のシート/ガラス板の層構成をした合わせガラス(LG1−2)を作製した。合わせガラス(LG1−2)の厚さの構成は、上記と同様にガラス板(1.1mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(X1)(0.10mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(Y1)(0.10mm)/ガラス板(1.1mm)であった。また、得られた合わせガラス(LG1−2)の外観は気泡等の欠陥は観察されず、良好であった。
2枚の青板ガラス(長さ300mm、幅25mm、厚さ1.1mm)を使用し、上記と同様にして、ガラス板/多層シート(W1)/樹脂組成物(Y1)のシート/ガラス板の層構成をした合わせガラス(LG1−3)を作製した。合わせガラス(LG1−3)の厚さの構成は、上記と同様にガラス板(1.1mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(X1)(0.10mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(Y1)(0.10mm)/ガラス板(1.1mm)であった。また、得られた合わせガラス(LG1−3)の外観は気泡等の欠陥は観察されず、良好であった。
<積層体(Z1)>
離形フィルムとしての2枚のPETフィルム(東レ社製、製品名「ルミラー(登録商標)R75」、厚さ75μm)の間に多層シート(W1)1枚および樹脂組成物(Y1)のシート1枚を重ねて挟み、PETフィルム/多層シート(W1)/樹脂組成物(Y1)のシート/PETフィルムの順に重ねて配置した。この積層物を、上記と同様にして密封包装し、オートクレーブに入れて、温度140℃、圧力0.8MPaで30分間処理して、PETフィルム/多層シート(W1)/樹脂組成物(Y1)のシート/PETフィルムの層構成をした積層物を作製した。積層物からPETフィルムを剥離して、積層体(Z1)を作製した。積層体(Z1)の厚さの構成は、樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(X1)(0.10mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(Y1)(0.10mm)であった。また、得られた積層体(Z1)の外観は気泡等の欠陥は観察されず、良好であった。
<樹脂層(X1)のtanδが極大値を示す温度>
上記で作製した樹脂組成物(X1)のシート(厚さ0.50mm)を3枚重ねてプレス成形して厚さ1.5mmのシートを作製した。このシートから作製した長さ70mm、幅10mmの試験片を用いて動的粘弾性特性を測定した。
その結果、tanδが極大値を示す温度は−9℃であった。
<積層体(Z1)の貯蔵弾性率>
上記で作製した積層体(Z1)から長さ70mm、幅10mmの試験片を切出した。この試験片を用いて動的粘弾性特性を測定した。
その結果、貯蔵弾性率(G’)は−20℃以上40℃以下の温度領域において、0.011GPa(1.1×10Pa)以上0.16GPa(1.6×10Pa)以下の範囲であった。
<合わせガラスの特性評価>
<<断熱性>>
合わせガラス(LG1−1)の熱伝導率は、25℃において0.38W/(m・K)であり、断熱性の評価は良好であった。
<<剛性>>
合わせガラス(LG1−2)の曲げ弾性率は、25℃において12GPa(12×10Pa)であり、合わせガラスの剛性の評価は良好であった。
<<遮音性>>
合わせガラス(LG1−3)の音響透過損失の値は、周波数2000Hz以上4000Hz以下の範囲で35dBを下まわる領域はなく、合わせガラスの遮音性は良好であった。
これらの結果を表2に示した。
(実施例2)
<樹脂組成物(X2)>
製造例2で製造したブロック共重合体水素化物(D2)のペレット100部に、実施例1と同様にして、紫外線吸収剤である2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−p−クレゾール0.2部を添加し、樹脂組成物(X2)のペレット95部を製造した。
<樹脂組成物(Y2)>
製造例5で製造したブロック共重合体水素化物(H2)のペレット100部に、紫外線吸収剤である2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−p−クレゾール0.4部を添加した。この混合物を、二軸押出し機を用いて樹脂温度220℃で混練し、ストランド状に押出し、水冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、樹脂組成物(Y2)のペレット95部を製造した。
<多層シート(W2)>
樹脂組成物(X1)に代えて樹脂組成物(X2)を使用する以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(X2)が内層(樹脂層(X2))、樹脂組成物(Y1)が外層(樹脂層(Y1))となる多層シート(W2)を製造した。
得られた多層シート(W2)は、1つの樹脂層(X2)が2つの樹脂層(Y1)に挟まれた、樹脂層(Y1)/樹脂層(X2)/樹脂層(Y1)の三層構造を有し、多層シート(W2)の総厚さは0.80mm、各々の層の厚さは、樹脂層(Y1):0.35mm/樹脂層(X2):0.10mm/樹脂層(Y1):0.35mmであった。
<単層の樹脂組成物(X2)のシート>
樹脂組成物(X1)に代えて樹脂組成物(X2)を使用する以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(X2)で構成された単層の樹脂組成物(X2)のシート(厚さ0.50mm、幅320mm)を作製した。
<単層の樹脂組成物(Y2)のシート>
樹脂組成物(Y1)に代えて樹脂組成物(Y2)を使用する以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(Y2)で構成された単層の樹脂組成物(Y2)のシート(厚さ0.80mm、幅320mm)を作製した。
<合わせガラス(LG2)>
多層シート(W1)1枚および樹脂組成物(Y1)のシート1枚に代えて、多層シート(W2)(厚さ0.80mm)1枚、樹脂組成物(Y2)のシート(厚さ0.80mm)1枚、および実施例1で作製した樹脂組成物(Y1)のシート(厚さ0.10mm)1枚を使用し、ガラス板/多層シート(W2)/樹脂組成物(Y2)のシート/樹脂組成物(Y1)のシート/ガラス板の順に積層する以外は、実施例1と同様にして、合わせガラス(LG2−1、LG2−2、LG2−3)を作製した。
合わせガラス(LG2−1、LG2−2、LG2−3)の厚さは3.9mmであった。合わせガラス(LG2−1、LG2−2、LG2−3)の厚さの構成はガラス板(1.1mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(X2)(0.10mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(Y2)(0.80mm)/樹脂層(Y1)(0.10mm)/ガラス板(1.1mm)であった。また、得られた合わせガラス(LG2−1、LG2−2、LG2−3)の外観は気泡等の欠陥は観察されず、良好であった。
<積層体(Z2)>
多層シート(W1)および樹脂組成物(Y1)のシートに代えて、多層シート(W2)、樹脂組成物(Y2)のシート、および樹脂組成物(Y1)のシートを使用し、PETフィルム/多層シート(W2)/樹脂組成物(Y2)のシート/樹脂組成物(Y1)のシート/PETフィルムの順に重ねて配置する以外は実施例1と同様にして、積層体(Z2)を作製した。積層体(Z2)の厚さの構成は、樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(X2)(0.10mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(Y2)(0.8mm)/樹脂層(Y1)(0.10mm)であった。また、得られた積層体(Z2)の外観は気泡等の欠陥は観察されず、良好であった。
<樹脂層(X2)のtanδが極大値を示す温度>
樹脂組成物(X1)のシートに代えて樹脂組成物(X2)のシート(厚さ0.50mm)を使用する以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(X2)のシートの動的粘弾性特性を測定した。
その結果、tanδが極大値を示す温度は−10℃であった。
<積層体(Z2)の貯蔵弾性率>
積層体(Z1)に代えて積層体(Z2)を使用する以外は、実施例1と同様にして、積層体(Z2)の動的粘弾性特性を測定した。
その結果、貯蔵弾性率(G’)は−20℃以上40℃以下の温度領域において、0.017GPa(1.7×10Pa)以上0.31GPa(3.1×10Pa)以下の範囲であった。
<合わせガラスの特性評価>
<<断熱性>>
合わせガラス(LG2−1)の熱伝導率は、25℃において0.29W/(m・K)であり、断熱性の評価は良好であった。
<<剛性>>
合わせガラス(LG2−2)の曲げ弾性率は、25℃において11GPa(11×10Pa)であり、合わせガラスの剛性の評価は良好であった。
<<遮音性>>
合わせガラス(LG2−3)の音響透過損失の値は、周波数2000Hz以上4000Hz以下の範囲で35dBを下まわる領域はなく、合わせガラスの遮音性は良好であった。
これらの結果を表2に示した。
(実施例3)
<樹脂組成物(Y3)>
製造例4で製造したブロック共重合体水素化物(H1)のペレット100部に、紫外線吸収剤である2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−p−クレゾール0.4部を添加した。この混合物を、二軸押出し機を用いて樹脂温度220℃で混練し、ストランド状に押出し、ペレタイザーによりカッティングして樹脂組成物(Y3)のペレット95部を製造した。
<単層の樹脂組成物(Y3)のシート>
樹脂組成物(Y1)に代えて樹脂組成物(Y3)を使用する以外は実施例1と同様にして、単層の樹脂組成物(Y3)のシート(厚さ0.80mm、幅320mm)を作製した。
<合わせガラス(LG3)>
多層シート(W1)1枚および樹脂組成物(Y1)のシート1枚に代えて、多層シート(W2)(厚さ0.80mm)1枚、樹脂組成物(Y3)のシート(厚さ0.80mm)2枚、および実施例1で作製した樹脂組成物(Y1)のシート(厚さ0.10mm)1枚を使用し、ガラス板/多層シート(W2)/樹脂組成物(Y3)のシート/樹脂組成物(Y3)のシート/樹脂組成物(Y1)のシート/ガラス板の順に積層する以外は実施例1と同様にして、合わせガラス(LG3−1、LG3−2、LG3−3)を作製した。
合わせガラス(LG3−1、LG3−2、LG3−3)の厚さは4.7mmであった。合わせガラス(LG3−1、LG3−2、LG3−3)の厚さの構成はガラス板(1.1mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(X2)(0.10mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(Y3)(1.60mm)/樹脂層(Y1)(0.10mm)/ガラス板(1.1mm)であった。また、得られた合わせガラス(LG3−1、LG3−2、LG3−3)の外観は気泡等の欠陥は観察されず、良好であった。
<積層体(Z3)>
多層シート(W1)および樹脂組成物(Y1)のシートに代えて、多層シート(W2)、樹脂組成物(Y3)のシート、および樹脂組成物(Y1)のシートを使用し、PETフィルム/多層シート(W2)/樹脂組成物(Y3)のシート/樹脂組成物(Y3)のシート/樹脂組成物(Y1)のシート/PETフィルムの順に重ねて配置する以外は実施例1と同様にして、積層体(Z3)を作製した。積層体(Z3)の厚さの構成は、樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(X2)(0.10mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(Y3)(1.60mm)/樹脂層(Y1)(0.10mm)であった。また、得られた積層体(Z3)の外観は気泡等の欠陥は観察されず、良好であった。
<積層体(Z3)の貯蔵弾性率>
積層体(Z1)に代えて積層体(Z3)を使用する以外は、実施例1と同様にして、積層体(Z3)の動的粘弾性特性を測定した。
その結果、貯蔵弾性率(G’)は−20℃以上40℃以下の温度領域において、0.024GPa(2.4×10Pa)以上0.45GPa(4.5×10Pa)以下の範囲であった。
<合わせガラスの特性評価>
<<断熱性>>
合わせガラス(LG3−1)の熱伝導率は、25℃において0.25W/(m・K)であり、断熱性の評価は良好であった。
<<剛性>>
合わせガラス(LG3−2)の曲げ弾性率は、25℃において12GPa(12×10Pa)であり、合わせガラスの剛性の評価は良好であった。
<<遮音性>>
合わせガラス(LG3−3)の音響透過損失の値は、周波数2000Hz以上4000Hz以下の範囲で35dBを下まわる領域はなく、合わせガラスの遮音性は良好であった。
これらの結果を表2に示した。
(実施例4)
<樹脂組成物(Y4)>
製造例6で製造した変性ブロック共重合体水素化物(J3)のペレット100部に、紫外線吸収剤である2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−p−クレゾール0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出し機を用いて樹脂温度220℃で混練し、ストランド状に押出し、ペレタイザーによりカッティングして樹脂組成物(Y4)のペレット95部を製造した。
<多層シート(W4)>
実施例1において、樹脂組成物(Y1)に代えて樹脂組成物(Y4)を使用する以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(X1)が内層(樹脂層(X1))、樹脂組成物(Y4)が外層(樹脂層(Y4))となる多層シート(W4)を製造した。
得られた多層シート(W4)は、1つの樹脂層(X1)が2つの樹脂層(Y4)に挟まれた、樹脂層(Y4)/樹脂層(X1)/樹脂層(Y4)の三層構造を有し、多層シート(W4)の総厚さは0.80mm、各々の層の厚さは、樹脂層(Y4):0.35mm/樹脂層(X1):0.10mm/樹脂層(Y4):0.35mmであった。
<単層の樹脂組成物(Y4)のシート>
樹脂組成物(Y1)に代えて、樹脂組成物(Y4)を使用する以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(Y4)で構成された単層の樹脂組成物(Y4)のシート(厚さ0.10mm、幅320mm)を作製した。
<合わせガラス(LG4)>
多層シート(W1)1枚および樹脂組成物(Y1)のシート1枚に代えて、多層シート(W4)(厚さ0.80mm)1枚および樹脂組成物(Y4)のシート(厚さ0.10mm)1枚を使用し、ガラス板/多層シート(W4)/樹脂組成物(Y4)のシート/ガラス板の順に積層する以外は実施例1と同様にして、合わせガラス(LG4−1、LG4−2、LG4−3)を作製した。
合わせガラス(LG4−1、LG4−2、LG4−3)の厚さは3.1mmであった。合わせガラス(LG4−1、LG4−2、LG4−3)の厚さの構成はガラス板(1.1mm)/樹脂層(Y4)(0.35mm)/樹脂層(X1)(0.10mm)/樹脂層(Y4)(0.35mm)/樹脂層(Y4)(0.10mm)/ガラス板(1.1mm)であった。また、得られた合わせガラス(LG4−1、LG4−2、LG4−3)の外観は気泡等の欠陥は観察されず、良好であった。
<積層体(Z4)>
多層シート(W1)および樹脂組成物(Y1)のシートに代えて、多層シート(W4)および樹脂組成物(Y4)のシートを使用し、PETフィルム/多層シート(W4)/樹脂組成物(Y4)のシート/PETフィルムの順に重ねて配置する以外は実施例1と同様にして、積層体(Z4)を製造した。積層体(Z4)の厚さの構成は、樹脂層(Y4)(0.35mm)/樹脂層(X1)(0.10mm)/樹脂層(Y4)(0.35mm)/樹脂層(Y4)(0.10mm)であった。また、得られた積層体(Z4)の外観は気泡等の欠陥は観察されず、良好であった。
<積層体(Z4)の貯蔵弾性率>
積層体(Z1)に代えて積層体(Z4)を使用する以外は、実施例1と同様にして、積層体(Z4)の動的粘弾性特性を測定した。
その結果、貯蔵弾性率(G’)は、−20℃以上40℃以下の温度領域において、0.011GPa(1.1×10Pa)以上0.17GPa(1.7×10Pa)以下の範囲であった。
<合わせガラスの特性評価>
<<断熱性>>
合わせガラス(LG4−1)の熱伝導率は、25℃において0.38W/(m・K)であり、断熱性の評価は良好であった。
<<剛性>>
合わせガラス(LG4−2)の曲げ弾性率は、25℃において12GPa(12×10)Paであり、合わせガラスの剛性の評価は良好であった。
<<遮音性>>
合わせガラス(LG4−3)の音響透過損失の値は、周波数2000Hz以上4000Hz以下の範囲で35dBを下まわる領域はなく、合わせガラスの遮音性は良好であった。
これらの結果を表2に示した。
(比較例1)
多層シート(W1)1枚および樹脂組成物(Y1)のシート1枚に代えて、多層シート(W1)(厚さ0.80mm)1枚のみを使用し、ガラス板/多層シート(W1)/ガラス板の順に積層する以外は実施例1と同様にして、合わせガラス(LG5−1、LG5−2、LG5−3)を作製した。
合わせガラス(LG5−1、LG5−2、LG5−3)の厚さは3.0mmであった。合わせガラス(LG5−1、LG5−2、LG5−3)の厚さの構成はガラス板(1.1mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(X1)(0.10mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/ガラス板(1.1mm)であった。また、得られた合わせガラス(LG5−1、LG5−2、LG5−3)の外観は気泡等の欠陥は観察されず、良好であった。
<積層体(Z5)の貯蔵弾性率>
本比較例1では2枚のガラスの貼り合わせに使用した積層体(Z5)は、多層シート(W1)と同じである。
積層体(Z1)に代えて多層シート(W1)を使用する以外は、実施例1と同様にして、多層シート(W1)の動的粘弾性特性を測定した。
その結果、貯蔵弾性率(G’)は−20℃以上40℃以下の温度領域において、0.85×10Pa以上1.4×10Pa以下の範囲であった。
<合わせガラスの特性評価>
<<断熱性>>
合わせガラス(LG5−1)の熱伝導率は、25℃において0.40W/(m・K)であり、断熱性の評価は良好であった。
<<剛性>>
合わせガラス(LG5−2)の曲げ弾性率は、25℃において10GPa(10×10Pa)であり、合わせガラスの剛性の評価は不良であった。
<<遮音性>>
合わせガラス(LG5−3)の音響透過損失の値は、周波数2000Hz以上4000Hz以下の範囲で35dBを下まわる領域はなく、合わせガラスの遮音性は良好であった。
これらの結果を表2に示した。
(比較例2)
<合わせガラス(LG6)>
多層シート(W1)1枚および樹脂組成物(Y1)のシート1枚に代えて、多層シート(W2)(厚さ0.80mm)1枚、可塑剤が配合されたPVB製シート(Y5)(ソルーシア社製、製品名「Saflex(登録商標)RF41」、厚さ0.76mm)1枚、および実施例1で作製した樹脂組成物(Y1)のシート(厚さ0.10mm)1枚を使用し、ガラス板/多層シート(W2)/PVB製シート(Y5)/樹脂組成物(Y1)のシート/ガラス板の順に積層する以外は実施例1と同様にして、合わせガラス(LG6−1、LG6−2、LG6−3)を作製した。
合わせガラス(LG6−1、LG6−2、LG6−3)の厚さは3.86mmであった。合わせガラス(LG6−1、LG6−2、LG6−3)の厚さの構成はガラス板(1.1mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(X2)(0.10mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/PVB製シート(0.76mm)/樹脂層(Y1)(0.10mm)/ガラス板(1.1mm)であった。また、得られた合わせガラス(LG6−1、LG6−2、LG6−3)の外観は気泡等の欠陥は観察されず、良好であった。
<積層体(Z6)>
多層シート(W1)および樹脂組成物(Y1)のシートに代えて、多層シート(W2)、PVB製シート(Y5)および樹脂組成物(Y1)のシートを使用し、PETフィルム/多層シート(W2)/PVB製シート(Y5)/樹脂組成物(Y1)のシート/PETフィルムの順に重ねて配置する以外は実施例1と同様にして、積層体(Z6)を作製した。積層体(Z6)の厚さの構成は、樹脂層(Y1)(0.35mm)/樹脂層(X2)(0.10mm)/樹脂層(Y1)(0.35mm)/PVB製シート(Y5)(0.76mm)/樹脂層(Y1)(0.10mm)であった。また、得られた積層体(Z6)の外観は気泡等の欠陥は観察されず、良好であった。
<積層体(Z6)の貯蔵弾性率>
積層体(Z1)に代えて積層体(Z6)を使用する以外は、実施例1と同様にして、積層体(Z6)の動的粘弾性特性を測定した。
その結果、貯蔵弾性率(G’)は−20℃以上40℃以下の温度領域において、0.0028GPa(0.28×10Pa)以上0.3GPa(3.0×10Pa)以下の範囲であった。
<合わせガラスの特性評価>
<<断熱性>>
合わせガラス(LG6−1)の熱伝導率は、25℃において0.29W/(m・K)であり、断熱性の評価は良好であった。
<<剛性>>
合わせガラス(LG6−2)の曲げ弾性率は、25℃において2GPa(2×10Pa)であり、合わせガラスの剛性の評価は不良であった。
<<遮音性>>
合わせガラス(LG6−3)の音響透過損失の値は、周波数2000Hz以上4000Hz以下の範囲で35dBを下まわる領域はなく、合わせガラスの遮音性は良好であった。
これらの結果を表2に示した。
(比較例3)
<単層の樹脂組成物(Y1)のシート>
実施例1で使用したのと同じ2種3層共押出し装置を使用し、樹脂組成物(X1)を押し出し機に供給せず、樹脂組成物(Y1)を1基の押し出し機に供給し、押出し機温度210℃、キャストロール温度を50℃とする条件にて、樹脂組成物(Y1)で構成された単層の樹脂組成物(Y1)のシート(厚さ0.80mm、幅320mm)を作製した。
<合わせガラス(LG7)>
多層シート(W1)に代えて上記の樹脂組成物(Y1)のシート(厚さ0.80mm)を使用し、樹脂組成物(Y1)のシート(厚さ0.80mm)1枚、実施例3で作製した樹脂組成物(Y3)のシート(厚さ0.80mm)2枚、および実施例1で作製した樹脂組成物(Y1)のシート(厚さ0.10mm)1枚を使用し、ガラス板/樹脂組成物(Y1)のシート(厚さ0.80mm)/樹脂組成物(Y3)のシート(厚さ0.80mm)/樹脂組成物(Y3)のシート(厚さ0.80mm)/樹脂組成物(Y1)のシート(厚さ0.10mm)/ガラス板の順に積層する以外は実施例1と同様にして、合わせガラス(LG7−1、LG7−2、LG7−3)を作製した。
合わせガラス(LG7−1、LG7−2、LG7−3)の厚さは4.7mmであった。合わせガラス(LG7−1、LG7−2、LG7−3)の厚さの構成はガラス板(1.1mm)/樹脂層(Y1)(0.80mm)/樹脂層(Y3)(0.8mm)/樹脂層(Y3)(0.80mm)/樹脂層(Y1)(0.10mm)/ガラス板(1.1mm)であった。合わせガラス(LG7)は樹脂層(X)を有さないものであった。また、得られた合わせガラス(LG7−1、LG7−2、LG7−3)の外観は気泡等の欠陥は観察されず、良好であった。
<積層体(Z7)>
多層シート(W2)に代えて、樹脂組成物(Y1)のシート(厚さ0.80mm)を使用し、PETフィルム/樹脂組成物(Y1)のシート(厚さ0.80mm)/樹脂組成物(Y3)のシート(厚さ0.80mm)/樹脂組成物(Y3)のシート(厚さ0.80mm)/樹脂組成物(Y1)のシート(厚さ0.10mm)/PETフィルムの順に重ねて配置したこと以外は、実施例3と同様にして、積層体(Z7)を作製した。積層体(Z7)の厚さの構成は、樹脂層(Y1)(0.80mm)/樹脂層(Y3)(0.80mm)/樹脂層(Y3)(0.80mm)/樹脂層(Y1)(0.10mm)であった。また、得られた積層体(Z7)の外観は気泡等の欠陥は観察されず、良好であった。
<積層体(Z7)の貯蔵弾性率>
積層体(Z1)に代えて、積層体(Z7)を使用する以外は、実施例1と同様にして、積層体(Z7)の動的粘弾性特性を測定した。
その結果、貯蔵弾性率(G’)は−20℃以上40℃以下の温度領域において、0.091GPa(9.1×10Pa)以上0.41GPa(4.1×10Pa)以下の範囲であった。
<合わせガラスの特性評価>
<<断熱性>>
合わせガラス(LG7−1)の熱伝導率は、25℃において0.25W/(m・K)であり、断熱性の評価は良好であった。
<<剛性>>
合わせガラス(LG7−2)の曲げ弾性率は、25℃において20GPa(20×10Pa)であり、合わせガラスの剛性の評価は良好であった。
<<遮音性>>
合わせガラス(LG7−3)の音響透過損失の値は、周波数2000Hz以上4000Hz以下の範囲で35dBを下まわる領域があり、合わせガラスの遮音性は不良であった。
これらの結果を表2に示した。
(比較例4)
<樹脂組成物(X3)>
製造例3で製造したブロック共重合体水素化物(D3)のペレット100部に、実施例1と同様にして、紫外線吸収剤である2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−p−クレゾール0.2部を添加し、樹脂組成物(X3)のペレット95部を製造した。
<多層シート(W8)>
樹脂組成物(X1)に代えて、樹脂組成物(X3)を使用し、実施例1で使用したのと同じ2種3層共押出しフィルム成形機の押出し量比を変更する以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(X3)が内層(樹脂層(X3))、樹脂組成物(Y1)が外層(樹脂層(Y1))となる多層シート(W8)を製造した。
得られた多層シート(W8)は、1つの樹脂層(X3)が2つの樹脂層(Y1)に挟まれた、樹脂層(Y1)/樹脂層(X3)/樹脂層(Y1)の三層構造を有し、多層シート(W8)の総厚さは0.76mm、各々の層の厚さは、樹脂層(Y1):0.08mm/樹脂層(X3):0.60mm/樹脂層(Y1):0.08mmであった。
<単層の樹脂組成物(X3)のシート>
樹脂組成物(X1)に代えて樹脂組成物(X3)を使用する以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(X3)で構成された単層の樹脂組成物(X3)のシート(厚さ0.60mm、幅320mm)を作製した。
<合わせガラス(LG8)>
多層シート(W1)1枚および樹脂組成物(Y1)のシート1枚に代えて、多層シート(W8)(厚さ0.76mm)1枚のみを使用し、厚さ1.1mmのガラス板に代えて厚さ1.2mmのガラス板を使用し、ガラス板/多層シート(W8)/ガラス板の順に積層する以外は実施例1と同様にして、合わせガラス(LG8−1、LG8−2、LG8−3)を作製した。
合わせガラス(LG8−1、LG8−2、LG8−3)の厚さは3.16mmであった。合わせガラス(LG8−1、LG8−2、LG8−3)の厚さの構成はガラス板(1.2mm)/樹脂層(Y1)(0.08mm)/樹脂層(X3)(0.60mm)/樹脂層(Y1)(0.08mm)/ガラス板(1.2mm)であった。また、得られた合わせガラス(LG8−1、LG8−2、LG8−3)の外観は気泡等の欠陥は観察されず、良好であった。
<樹脂層(X3)のtanδが極大値を示す温度>
樹脂組成物(X1)のシートに代えて樹脂組成物(X3)のシート(厚さ0.60mm)を使用する以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(X3)のシートの動的粘弾性特性を測定した。
その結果、tanδが極大値を示す温度は−14℃であった。
<積層体(Z8)の貯蔵弾性率>
本比較例4では2枚のガラスの貼り合わせに使用した積層体(Z8)は、多層シート(W8)と同じである。
積層体(Z1)に代えて多層シート(W8)を使用する以外は、実施例1と同様にして、多層シート(W8)の動的粘弾性特性を測定した。
その結果、貯蔵弾性率(G’)は−20℃以上40℃以下の温度領域において、0.0094GPa(0.94×10Pa)以上0.31GPa(3.1×10Pa)以下の範囲であった。
<合わせガラスの特性評価>
<<断熱性>>
合わせガラス(LG8−1)の熱伝導率は、25℃において0.42W/(m・K)であり、断熱性の評価は良好であった。
<<剛性>>
合わせガラス(LG8−2)の曲げ弾性率は、25℃において10GPa(10×10Pa)であり、合わせガラスの剛性の評価は不良であった。
<<遮音性>>
合わせガラス(LG8−3)の音響透過損失の値は、周波数2000Hz以上4000Hz以下の範囲で35dBを下まわる領域はなく、合わせガラスの遮音性は良好であった。
これらの結果を表2に示した。
Figure 2020009064
Figure 2020009064
本実施例および比較例の結果から以下のことがわかる。
動的粘弾性特性におけるtanδが−20℃以上20℃以下の範囲に極大値を有する樹脂層(X)を有し、動的粘弾性特性における貯蔵弾性率が−20℃以上40℃以下において0.01GPa(1.0×10Pa)以上0.5GPa(5.0×10Pa)以下である積層体(Z)を合わせガラスの中間膜として使用することにより、熱伝導率がガラスの1/2以下(0.5W/m・K以下)で断熱性に優れ、従来合わせガラスと同等の剛性を維持し、且つ、遮音性に優れた合わせガラスが提供できる(実施例1〜4)。
積層体(Z)の動的粘弾性特性における貯蔵弾性率が−20℃以上40℃以下において0.01GPa(1.0×10Pa)を下まわる範囲がある場合、積層体(Z)を中間膜として使用した合わせガラスの剛性が維持できない(比較例1、2、4)。
積層体(Z)が、動的粘弾性特性におけるtanδが−20℃以上20℃以下の範囲に極大値を有する樹脂層(X)を有さない場合、積層体(Z)を中間膜として使用した合わせガラスの遮音性が維持できない(比較例3)。
本発明の積層体(Z)は、合わせガラス用の中間膜として使用することにより、合わせガラスの断熱性を改善して冷暖房効果を高めることと共に、遮音性が付与される。本発明の合わせガラスは自動車、鉄道車両、船舶、建築物等の窓材等として使用した場合、冷暖房効果を高めるとともに遮音性も高めることができ、有用である。
また、本発明の合わせガラスは、省エネルギーの観点で、自動車用窓材、建築物用窓材、屋根材、船舶や航空機の窓材等として有用である。
1a 樹脂層(X)
2a 樹脂層(Y)
2b 樹脂層(Y)
2c 樹脂層(Y)
3a 積層体(Z)
3b 積層体(Z)
4 赤外線反射フィルム
5a ガラス板
5b ガラス板
6a 合わせガラス
6b 合わせガラス

Claims (9)

  1. 樹脂組成物(X)からなる少なくとも1層以上の樹脂層(X)と、樹脂組成物(Y)からなる少なくとも2層以上の樹脂層(Y)とを有する積層体(Z)であって、
    (a)前記樹脂層(X)が少なくとも2つの前記樹脂層(Y)の間に積層されており、
    (b)前記樹脂層(X)の動的粘弾性特性におけるtanδが−20℃以上20℃以下の温度範囲において極大値を有し、
    (c)前記積層体(Z)の動的粘弾性特性における貯蔵弾性率が−20℃以上40℃以下の温度範囲において1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下である、積層体。
    (但し、前記樹脂層(X)の動的粘弾性特性におけるtanδおよび前記積層体(Z)の動的粘弾性特性における貯蔵弾性率は、JIS K7244−2法(ねじり振子法)に基づき、角周波数:1rad/s、測定温度範囲:−100℃以上100℃以下、昇温速度:5℃/minの条件で粘弾性スペクトルを測定して求めた値である。)
  2. 前記樹脂組成物(X)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位とを含有するブロック共重合体(C)を水素化してなるブロック共重合体水素化物(D)を主成分として含み、
    前記ブロック共重合体(C)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位〔a〕を主成分として含有する、少なくとも2つの重合体ブロック(A)と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位〔b〕を主成分として含有する、少なくとも1つの重合体ブロック(B)とからなり、
    前記重合体ブロック(B)中の前記鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位〔b〕が、1,2−付加重合および3,4−付加重合に由来する構造単位を含み、
    前記構造単位〔a〕が前記ブロック共重合体(C)に占める質量分率をwAとし、前記構造単位〔b〕が前記ブロック共重合体(C)に占める質量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA/wB)が10/90以上35/65以下であり、
    前記ブロック共重合体水素化物(D)は、前記ブロック共重合体(C)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合の95%以上を水素化してなる、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記重合体ブロック(B)中の前記構造単位〔b〕が、1,2−付加重合および3,4−付加重合に由来する構造単位を重合体ブロック(B)中の構造単位[b]全体に対して、40質量%以上80質量%以下含む、請求項2に記載の積層体。
  4. 前記樹脂組成物(Y)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位とを含有するブロック共重合体(G)を水素化してなるブロック共重合体水素化物(H)、および/または、該ブロック共重合体水素化物(H)にアルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物(J)を主成分として含み、
    前記ブロック共重合体(G)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位〔e〕を主成分として含有する、少なくとも2つの重合体ブロック(E)と、鎖状共役ジエン化合物に由来する構造単位〔f〕を主成分として含有する、少なくとも1つの重合体ブロック(F)とからなり、
    前記構造単位〔e〕が前記ブロック共重合体(G)に占める質量分率をwEとし、前記構造単位〔f〕が前記ブロック共重合体(G)に占める質量分率をwFとしたときに、wEとwFとの比(wE/wF)が40/60以上60/40以下であり、
    前記ブロック共重合体水素化物(H)は、前記ブロック共重合体(G)における鎖状共役ジエン化合物に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合の95%以上を水素化してなる、請求項1から3のいずれかに記載の積層体。
  5. 前記樹脂層(X)の厚さが0.02mm以上0.6mm以下である、請求項1から4のいずれかに記載の積層体。
  6. 前記樹脂層(Y)の厚さが0.05mm以上1.0mm以下である、請求項1から5のいずれかに記載の積層体。
  7. 前記積層体(Z)の厚さが0.2mm以上2mm以下である、請求項1から6のいずれかに記載の積層体。
  8. 2枚のガラス板と、該2枚のガラス板の間に配置される、請求項1〜7のいずれかに記載の積層体(Z)からなる中間膜とを有する合わせガラスであって、
    前記合わせガラスの厚み方向に対する熱伝導率が、25℃において0.5W/(m・K)以下である、合わせガラス。
  9. 前記合わせガラスの曲げ弾性率が、25℃において11GPa以上である、請求項8に記載の合わせガラス。
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